1: 2017/02/24(金) 01:35:14.65 ID:whLr7hPA0
『第3回シンデレラガール総選挙、第1位は……』

『ここまでこれたのは応援してくれるファンのみんな……そして今まで私を支えてくれた仲間達のおかげです。だから、今日という日を私は絶対に忘れません』

『聞いてください……Never say never!』

PCの画面に映っているのは、アタシがまだアイドルとなる前の出来事
名前を呼ばれた少女は少し泣いていた。けど、涙を拭った彼女は笑顔で観客の声援に答えていた

桐生つかさ「へぇ……これが凛のホンキかよ」

そして彼女は、精一杯の声で最後まで歌い上げる
その姿は美しく、凛々しく、トップアイドルとしての力を見せつけられた気がした

つかさ「アタシも負けてらんねぇな……」




2: 2017/02/24(金) 01:36:19.71 ID:whLr7hPA0
アタシは桐生つかさ、ギャルでJKで社長、そしてアイドルをやっている
ま、アタシからすればアイドルなんて楽勝っしょとナメてたワケだけど……
世の中上には上がいたね、アタシもアイドルとしてはまだまだ修行中ってところ

つかさ「次は……第2回選抜総選挙でも見るか」カタカタカタ・・・

今日はレッスンも終わって社長業の方もひと段落してるから今はマキノがまとめた過去の映像で事務所のアイドルを研究中ってワケ
しかし、『シンデレラガール』って存在はヤバいな、みんな熱狂してやがる

ウチの事務所にはシンデレラガール総選挙という、その時のトップアイドルを決めるイベントがある
この時は世間を巻き込んで大騒ぎだ、普段アイドルに興味のない一般人にもアタシらの活動が目に留まるワケだからな、ファンの方も推しのアイドルを知ってもらおうとあの手この手で宣伝している
第4回の時まだ新人だったアタシを応援してくれたファンもいた。あの時はちょっとだけ嬉しかった
でも、それで満足したらダメ。もっと上を目指さないとな
理想は高く、シンデレラガールだ

3: 2017/02/24(金) 01:37:01.29 ID:whLr7hPA0
渋谷凛「お疲れ様です。なにしてるのつかさ?」

つかさ「ん、アイドル研究中」

凛「へぇ、つかさがアイドル研究だなんて意外」

つかさ「おい、どういうことだ」

凛「いや、つかさってそういったことをやるイメージが無かったから」

つかさ「ばーか、アタシらアイドルがファンの需要を知らないでどうすんのさ。自分の目で何が必要か見ないとな、いつもプロデューサーに頼ってるだけじゃダメだろ」

こいつは渋谷凛、この事務所のアイドル部門立ち上げ初期からいるメンバー
そして「3代目シンデレラガール」の称号を持つトップアイドルだ

つかさ「努力を怠った瞬間、周りに置いてかれるからな。気をつけろよ、センパイ」

凛「先輩……って、つかさの方が年上じゃん」

つかさ「ここじゃお前の方がキャリア的にもセンパイ、だろ? そういえば最近、新人入ってこないのな。仕事してんのかアイツ……」

アイツというのはもちろんアタシをこの道に連れてきたプロデューサーのこと
出会った当時は「コイツ大丈夫か?」って思ったけど、今はその評価は撤回しておく
間違いなくアイドルのことに関してはデキる奴だよ、アイツは

凛「もしかして……後輩欲しいの?」

つかさ「ば、バカ! ……まぁ、ずっと後輩ってのもアレだけど」

この事務所には183人のアイドルが在籍している
アタシはその中でも一番最後、183番目のアイドルだ
そして、アタシが入ってから久しく新人アイドルが入っていない
巷じゃ「面倒が見きれないからこれ以上加入しないのでは?」なんてウワサもたっている
スカウト関連はアイツとちひろさんの管轄なんでアタシの知ったことじゃやないけど

凛「ふふっ……そういえばくるみがつかさは優しくて大好きって言ってたかな」

つかさ「くるみは少し弱気な所もあるけど弱気なりの努力はしてるからな、その努力は認めてやらないと」

凛「つかさって結構面倒見がいいほう? 小さい子たちのことを結構気にかけてるし」

つかさ「そんなワケないだろ、自分が成功するためには周りの流れもそれに向かわせる。ただそれだけ」プイ

凛「ふーん……顔がちょっと赤くなってるけど、そういうことにしとくね」

なんだよ、少しニヤケやがって
くるみだけじゃない、事務所のチビ達の努力はちゃんと見ている
相手がアイドルの先輩でも人生の先輩として助言ぐらいはするもんだろ?

つかさ「それよりも凛、この時のこと教えてくんない?」

凛「うわっ……第3回総選挙の映像じゃん……どうしたのこれ?」

つかさ「ああ、マキノ特製アイドルデータファイルだよ。なんだよ、恥ずかしいのかよ」

話のペースを凛に持っていかれそうになるので、少し強引に話題を変える。
ククク……今度は凛が赤くなってやんの

凛「まぁ、少しは……目赤くなってるなぁ私」

つかさ「この時のこと、教えてくれない? 当事者の話ほど勉強になるものはないし」

凛「そっか、まだつかさはいなかったもんね……いいよ、レッスンまで時間あるからそれまでなら教えてあげる」

4: 2017/02/24(金) 01:38:00.33 ID:whLr7hPA0
凛「と、いう訳で卯月も未央も自分のことのように泣いてたよ」

つかさ「へぇ、ニュージェネのあいつらが」

凛「そしたら加蓮と奈緒もつられて泣き始めるし、あの時は少し驚いたかな」

つかさ「トラプリもか、やっぱ同じユニットのメンバーが1位になると自分の事のように喜ぶもんなのかな」

凛「そうだね、私も卯月が1位になった時はみんなと泣いちゃったし」

つかさ「泣きすぎだろお前ら! 仲良しだな!」

凛「ふふっ……楽しいことはもちろん大変なことも辛いこともあったけど、すべてがいい思い出かな」

凛「事務所のみんなは大事な仲間だよ。でもニュージェネレーションとトライアドプリムス、この2つのユニットにはたくさんの思い出をもらったよ」

つかさ(ユニット、か……)

今のアタシにはユニットと言えるものが無い
風香にクラリス、くるみといった他のアイドルと組んだことはあったけど、どれも一時的なものにすぎない
だから……長く続けているアイドルユニットには正直興味がある
レッスンや仕事、それにライブ……そのどれもで同じ苦しみを味わい、喜びを分かち合うってどんな感じなんだろな
……いっそのことアタシから提案してみるのもアリか?
そうだな、アタシが組むなら……

つかさ「アイツもいいな……いや、こっちでも面白いか……?」

凛「……ねぇ、考えてるところ悪いんだけどさ」

つかさ「なんだよ急に、難しい顔して」

凛「自分がさ、もっと早くアイドルになっていたらどうなっていたか考えたことはある?」

つかさ「早くアイドルになってたら? それは無いな、うん」

つかさ「アタシはギャルで社長だったからアイドルになった訳で、そんな仮定の話をしてもどうしようもないだろ」

凛「そっか……たまに思うことがあるんだ、もし私がアイドルになるのが遅かったら、そもそもアイドルじゃなかったらどうなっていたのかなって」

つかさ「そんなこと考えてる暇があったら、未来の事を考えろっての」

つかさ「過去はどう考えたって過去、やり直しは効かないし振り返ることしかできない」

つかさ「だから未来の事を考えて成長するしかないの、OK?」

凛「………」

凛「やっぱりつかさはすごいね……」

つかさ「褒めても何も出ないからなー、……でもありがとな、おかげでいい話が聞けた。今度アタシが漬けたキュウリをやるよ、今度のは自信があるんだ」

凛「うん……楽しみにしてる。じゃあレッスンだし私は行くね……」スタスタ

つかさ「おう、頑張んな」

5: 2017/02/24(金) 01:38:30.44 ID:whLr7hPA0
つかさ「凛のヤツ暗かったな、なんかあったか?」

つかさ「ふぁぁ……少し眠くなってきたし仮眠でもすっか」

休める時にはしっかり休まないとな
マキノから借りたUSBをポケットにしまったアタシは仮眠室に向かった

6: 2017/02/24(金) 01:39:04.41 ID:whLr7hPA0
仮眠室

「………」ガチャ

つかさ「………」

「………」ゴソゴソ

つかさ「……か…」

「!?」ビクッ!

つかさ「か……つ…よこ……」

つかさ「せ……」スヤスヤ・・・

「………」ホッ

「………」

7: 2017/02/24(金) 01:39:30.71 ID:whLr7hPA0



「ごめん……そして、みんなをよろしくね」




8: 2017/02/24(金) 01:40:34.14 ID:whLr7hPA0

チュンチュン……

つかさ「うーん……よく寝た!」

つかさ「今何時だ? げっ、嘘だろ朝かよ」

アタシとしたことがテッペン回って明け方に起きるとはな
しかも普段着のまま寝てるし……管理がなってないな

つかさ「なんで誰も起こしてくんな……」

布団から抜け出したアタシは違和感を通り越して奇妙な感覚に陥った

つかさ「いつの間に寮に帰って来たんだ?」

そう、記憶が確かならアタシは事務所の仮眠室で寝ていたはず
でも今いるのはまぎれもなく事務所から離れた女子寮の自分の部屋だった

つかさ「疲れてんのか……」

布団に飛び込みたい気持ちを抑えてメールの確認をする
最低限確認はしないとな、緊急事態とかあったら不味いし

つかさ「ん、アイツからか」

会社の部下からはメールもなく、唯一来たのはプロデューサーからのメールだけだった

つかさ「なになに……今日の10時から会議? 今の時間は」

スマホの時計を確認する
現在8時42分、ちょっと急がないとヤバい時間だ

つかさ「あれ? 写真どこいった」

身支度をしていく最中、さらにに感じた違和感の正体を掴んだ
明らかに……部屋のものが無くなっている
例えば初めてライブをした時の写真、緊張しすぎた自分を戒めるために机に置いたはずだが、それが無くなっていた。
他にも、海の家でくるみがくれた貝殻、トークイベントで清美から譲り受けた腕章……アタシの今までのアイドル活動に関わる物がすべて消えていた

つかさ(新手の空き巣か? いや、ここの警備は厳重だろ)

あり得ないはずの事態に戸惑うしかないが、今は事務所へ行くのが先
このことは帰ってから考えるとしてアタシは急いで寮を出発した

9: 2017/02/24(金) 01:41:20.75 ID:whLr7hPA0

つかさ(アタシの会社のサイトが消えているだと……)

電車での移動中、日課のエゴサをすると本来なら検索画面のトップに来るはずのアタシの会社の名前がなかった
っていうか、アタシの会社の存在自体が消えているってどういうことよ
しかも電話帳にあるはずの部下の名前も無くなっているし、連絡がこないワケだわ

つかさ(なんなんだよこれ……冗談も大概にしろっつーの!)

10: 2017/02/24(金) 01:41:55.89 ID:whLr7hPA0

積もるイライラを抑えながらも、事務所にたどり着く
流石にアタシの個人的感情で会議に穴を開けるのもダメだしな
気持ちを切り替えてアタシは会議室に入っていった

つかさ「お疲れ様です」

P「おっ、桐生さんも到着しましたね」

島村卯月「つかささん、お疲れ様です!」

つかさ(『桐生さん』……だと?)

会議室には島村卯月と本田未央そしてアタシのプロデューサーの3人が揃っていた
だが……アイドル業のパートナーとして信頼するアイツの第一声はアタシの心を大きく揺さぶった

P「それでは桐生さんも来ましたので……今日は皆さんに大事な話があります」

未央「ん~? 大事な話って何かな~☆」

卯月「なんだか緊張してきました……」

P「このたび、本田未央さん、桐生つかささん、島村卯月さんの3人によるユニットを結成することになりました! ちなみにユニット名はもう決まっています。名前は……」

P「ニュージェネレーション」

つかさ「ニュージェネレーション……」

その名前を忘れたことは一度もない
何故なら、ニュージェネレーションとはこのプロダクションに存在する最高のアイドルユニットの名前だからだ

未央「ついにデビューか~」

卯月「はいっ……やっと、やっと夢が叶うんですね……」

P「違いますよ島村さん、デビューが決まっただけです。これからが大変ですよ?」

つかさ「おい」

P「どうかしましたか桐生さん?」

つかさ「話したいことは色々あるけどさぁ……この3人でユニット? 本気か?」

P「え、ええ……皆さんのレッスンの進み具合、トレーナーさんからの報告を合わせて最終的に判断しました」

卯月「つかささん……私達とのユニット、ダメですか……」ウルウル

つかさ「ま、待て卯月! 泣くな! いきなりの話で驚いただけだから落ち着けっての」

卯月「つ゛か゛ささ゛ぁん……うぅ……」

未央「女を泣かせるとは、つかささんも罪な人ですなぁ~」

つかさ「未央は茶化すな! ややこしくなる!」

つかさ(とにかく落ち着け……そうだよ、ここにいるはずの凛がいないじゃん。アイツはどうしてるんだよ。ニュージェネはアイツのユニットだろ)

P「と、とりあえずユニット結成は決まりましたので、今後はユニット向けのレッスンもこなすようお願いします」

奇妙なユニット結成が告げられたその日から早速、アタシたち3人のレッスンが始まった

11: 2017/02/24(金) 01:42:28.39 ID:whLr7hPA0

トレーナー「はい、それではここを……桐生さんお願いします」

桐生「♪~」

ボイスレッスンするって言われたけどなにこれ、初歩中の初歩じゃん
ま、復習ってことにしとくか
でも全力で、手を抜く気はさらさらないし

卯月「つかささんの歌声キレイです……」

未央「うん、そうだね……」

トレーナー「桐生さんいい感じですよ! 次、島村さんお願いします」

卯月「は、はい!」

卯月「♪~……」

つかさ(卯月だけど、アタシの知る卯月の歌声じゃないな)

つかさ(やっぱりそういうことなのか……?)

昼休憩中、気になることがあったアタシは会社の所属アイドルについて調べた
まぁ、アタシの思った通りっていうか……そこには渋谷凛の名前は無かった
さらに言うと凛だけでなく、今までアタシと一緒に仕事をしてきた仲間達の名前もデータベースには存在しなかった

つかさ(アタシが過去に来たってか? マジありえねーだろ)

12: 2017/02/24(金) 01:42:56.01 ID:whLr7hPA0

卯月「疲れました~」

未央「いやーレッスン大変だったねー」

レッスンは特に何事もなく終わった。強いて言うなら卯月が音程を外しすぎ、未央は声に力が入りすぎって指摘されたところか
アタシ? アタシは完璧、トレーナーが「まるで昔からアイドルだったみたい」って褒めていた。実際、アイドル歴は2人より少しだけ長いからな

卯月「でも、つかささん歌がすごい上手なんですね! 私もつかささんみたいに上手く歌えるようにならないと……」

つかさ「まぁ、合同ボイスレッスンは初めてだったんだろ? こっから努力すればいいだろ」

未央「いやいや、つかささんは天才だよ! 美人で歌も上手いなんて、これでダンスも上手かったら完璧すぎるって!」

つかさ「天才、ね」

『天才』という言葉はアタシには似合わないと思っている
どんな時だって成長をする努力こそが一番大事にすべきだとアタシは思っているからな

つかさ「アタシは天才なんてもんじゃない、できないことをできるために努力をした。ただそれだけ」

つかさ「トップアイドル目指すなら、お前たちも努力を怠んなよ?」

卯月「違いますよ、つかささん」

つかさ「?」

卯月「私達、ニュージェネレーションの3人でトップアイドルを目指しましょう!」

未央「うん! まずは、目指せCDデビュー、だね!」

つかさ「そうだな、アタシらは『ユニット』だもんな」

つかさ「……よし、ご飯食べに行くか。行くぞお前たち!」

卯月・未央「「おー!」」

13: 2017/02/24(金) 01:43:22.40 ID:whLr7hPA0

つかさ「ふぅ……食べた食べた、やっぱチーズカツカレーは最高だな」

夜、寮に帰った私は不思議と心が満たされていた
夕飯に食べたカレーのせいかもしれないが、普段あまり会話をする機会のない卯月と未央について知れたってのが大きかった

つかさ「さぁて、今日のアタシのの評判は……って、無いんだったか」

つい夜のエゴサをしてしまったが、結果は朝と変わらず
会社についても、アイドルのアタシについても何も引っかからなかった

つかさ(起きたら元に戻ってるんだろうな、この夢も案外楽しかったぜ)

目覚めたら、元の生活に戻っていると考えながら
アタシは珍しく早寝をした

14: 2017/02/24(金) 01:43:49.99 ID:whLr7hPA0

つかさ「……マジかよ」

翌朝、アタシが目覚めたのは昨日と変わらず物が少なくなった部屋だった

つかさ「認めたくねーけど、タイムスリップしちまったかー……」

つかさ(こういう時は晶葉が頼りになりそうだけど、まだアイドルになってないんだよな)

つかさ「とにかく着替えるか」

桐生つかさは、ギャルでJK社長でアイドルだ
でもこの世界には社長のアタシはいない
アタシはまだ夢の中にいるのか、それとも……

つかさ「……やるか、ニュージェネレーション」

だとしても時は休むことなく流れていく
その日からアタシ、桐生つかさのニュージェネレーションとしての生活が始まった

15: 2017/02/24(金) 01:44:59.60 ID:whLr7hPA0

レッスンを終えたある日、プロデューサーから初めての仕事が決まったと連絡が来た
なんでも、原宿でのミニイベントに参加するってさ
卯月と未央は初めての仕事に心躍らせている、アタシはというと

つかさ「原宿ね……」

つかさ(マキノのデータベースによるとニュージェネレーションはここで初めて仕事をしたんだよな)

つかさ(そして、前川みくに出会うと)

アタシがこの世界?に来た時、服のポケットにはマキノのUSBが入ったままだった
なんとデータがすべて残っていたので、この先誰がいつアイドルになりどのような仕事をするのか知ることができた
恐らく、この仕事でプロデューサーはみくをスカウトするのだろう

つかさ「よし、全力でやるか」

未央「気合満タンですなーつかさ社長」

そうそう、なぜか未央はアタシの事を元の世界と同じく『つかさ社長』と呼び始めた
未央が「何だか社長っぽいんだよねー」って言ってたけど……コイツ案外鋭いな

卯月「それじゃあ今日もレッスン頑張りましょう!」

16: 2017/02/24(金) 01:45:36.36 ID:whLr7hPA0

―原宿―

みく「みくとLIVEで勝負にゃ!」

つかさ(みくのヤツ、自信満々だな)

初仕事の日、やっぱりそこには前川みくがいた
当時の彼女はセルフプロデュースながらもそこそこ知名度があったらしい
よく見るとイベント会場には彼女のファンらしき影がちらほらと見える

卯月「わ、私たちは絶対にま、負けません!」ドンッ!!

みく「み、みくに負けて泣いても知らないからね!」スタスタ

緊張しながらも卯月の気合にひるんだみくは足早に去っていた
あぁ、やっぱりアイツはみくだ

未央「し、しまむー、どどどどうしよう、緊張してきたよ~」

卯月「みみみみ、未央ちゃん、私とんでもないことを言ってしまったような気がします……」

つかさ「おいおい、始まる前から緊張してどうするよ。落ち着けって、な?」

未央「そんなこと言っても~」

緊張している2人を見ているとアタシの初仕事を思い出す
確かに初めての仕事はアタシでも緊張したな
まぁ、あの時は1人だったから周りを気にしなくていい分気楽だったけど

つかさ(でも、今のアタシはニュージェネレーションの一員)

つかさ(だったら仲間の為にもやる事は決まっているよな)

つかさ「2人とも、手を出して」

卯月「手ですか?」

つかさ「いいからさっさと出す」

未央「う、うん……」

差し出された2人の手をアタシは握る
握られた手から2人の緊張が伝わってくる

つかさ「はは、手まで震えてやんの」

つかさ「……いいか、失敗してもいいんだぜ」

卯月「えええ!? 失敗してもいってどういうことですか!」

未央「失敗したらダメでしょ!?」

つかさ「話は最後まで聞け。もちろん成功するのが一番、クライアントもそれを求めているワケだしな」

つかさ「でも、その前に全力でやってみろ」

未央「全力で……」

つかさ「失敗してもそこから学べよ、さぁ出番だぜ」

つかさ「アタシたちの力、アイツらに見せつけるぞ!」

卯月「が、がんばりますっ!」

17: 2017/02/24(金) 01:46:07.48 ID:whLr7hPA0

未央「みんなーこんにちはーーー!」

卯月「初めまして!」

つかさ「アタシたち!」

つかさ・卯月・未央「「「ニュージェネレーションです!」」」

つかさ「それじゃあ聞いてくれ!「「できたてEvo! Revo! Generation!」」」

>パチパチパチ

つかさ(ここから、新しい一歩の始まりだ)

歌い始める直前、ここにいるはずだった彼女のことを考える
どうしてアタシはここにいるのか、本当にこの歌を歌っていいのか
レッスン中、迷うことは何度もあった。だってこれはアイツら3人のための歌だからな
でも、今はアタシがニュージェネレーションの一員なんだ
だから、迷いは断ち切る。だってそうしないと前に進むことはできない

つかさ(凛、おまえが今のアタシを見たらなんて言うんだろうな)

18: 2017/02/24(金) 01:47:52.19 ID:whLr7hPA0

~~~♪

卯月「ありがとうございました!」

つかさ「気に入ったらCD買えよなー」

未央「物販スペースで販売しているのでよろしくね☆」

>ワーワー!! パチパチパチ!!

未央「やりきったー!」

卯月「な、なんとかできました~」

つかさ「おう、2人ともお疲れ……って言いたいとこだけどちょっとだけMTG(ミーティング)な」

つかさ「まず卯月、2番の始まりで少し振りが遅れてたな」

卯月「う……見えちゃってましたか?」

つかさ「未央はラスサビで歌詞間違えかけただろ」

未央「バレてた! ごめん社長……」ションボリ

つかさ「そんな落ち込むな、アタシも最初のダンスを間違えかけたからなそこは反省点だ」

つかさ「でも、楽しいライブだっただろ? 完璧じゃないけど初めてなら上出来だ」

初めてのライブは細かいミスはあったが観客はアタシらの歌で盛り上がってたし、クライアントの要求には応えられただろう
なにより……

みく「キミたち!」

つかさ「みくか……どうよアタシらニュージェネレーションは、最高のユニットだろ?」

みく「ぐぬぬ……正直舐めてた、……今日はみくの負けにゃ」

みく「でも! 次は絶対負けないからね! 覚えてろにゃ!」タッタッタ・・・

未央「あっ、行っちゃった……」

卯月「また会えるでしょうか……?」

つかさ「ふふ……すぐ会えるさ」

次の日、アタシの予想通りみくが事務所で待ち受けていた

19: 2017/02/24(金) 01:48:28.85 ID:whLr7hPA0

ある日のこと、仲間も増えて少しだけ賑やかになった事務所にニュースが飛び込んできた
シンデレラガール選抜総選挙の開催……
それは今後この事務所の恒例行事となるその第1回
当時、アイドルじゃなかったアタシにとっては未知のイベントだ

つかさ(アタシのホンキ見せてやるぜ……打倒愛梨だ!)

十時愛梨……この選挙で1位を取った彼女を超えてやる
愛梨はその屈託のない笑顔でトップになったアイドルだ
その姿は海の家でいっしょに仕事をした時にもよく見ている
その笑顔はこの世界でも健在だった。もしかしたら新人アイドルらしい初々しさもあってある意味凶悪かもしれない。正直、手ごわい相手だ
でも、負ける気はなかった

20: 2017/02/24(金) 01:49:12.68 ID:whLr7hPA0

つかさ「はぁっ……はぁ……」

総選挙の開催が発表されてから事務所に漂う雰囲気も少し変わった
誰もが今まで以上にレッスンや仕事に力を入れていた
まぁ、「フッ……順位に囚われてしまったらそこまでよ!」って人もいたけどさ
……昔からブレてないな! あの人!

トレーナー「つかささん、少し力みすぎですよ」

つかさ「おっと、いけね」

アタシも総選挙の熱に当てられたか
普段ならミスしないようなところをミスをするようになっていた

未央「つかさ社長、浮かれてますな~」

卯月「仕方ないですよ、私だってドキドキしてますから」

トレーナー「2人は気が抜けすぎですよ……」

21: 2017/02/24(金) 01:49:44.09 ID:whLr7hPA0

そんな訳であっという間に投票期間も終わり結果発表がやってきた
結果発表を行うイベントホールにはアタシたちのファンだけでなく事務所に所属しているアイドル全員が揃い、その瞬間を待ちわびていた。

>シンデレラガール総選挙、第10位は……川島瑞樹!

瑞樹「ええぇぇ! 本当に!? 私が10位なの!? ……ドッキリじゃないわよね?」

高垣楓「瑞樹さん、現実です。今日はお祝いしましょうね♪」

10位の瑞樹さんから順番に発表されていく、一人また一人と発表されるたびに会場のボルテージは高まっていた
そして……

>シンデレラガール総選挙、第1位は…………

22: 2017/02/24(金) 01:50:18.15 ID:whLr7hPA0

つかさ「あぁぁぁ! 悔しすぎる!」

イベントからの帰り道、アタシは思わず声を荒げてしまった
第1位は……過去と同じく愛梨だった
ちなみにアタシの順位は19位、145人の中では上位の部類ではある
だけど、1位を取れなかったってのはやっぱり悔しいな
だってアイドルとしてのキャリアは他のみんなよりちょっとだけ長いんだぜ
正直、ちょっとへこんだ

卯月「つかささん! 19位おめでとうございます!」

未央「いやー、2人ともランクインおめでとー! 次があったら私ももっと頑張らなきゃ……」

つかさ「……2人ともありがとな」

アタシとしては満足いく結果じゃないけど、祝福してくれる仲間がいる
その言葉は素直に嬉しかった
これが凛の言っていたユニットの仲ってヤツなのかもな

つかさ「それじゃ、アタシと卯月のお祝いと未央の残念会でもやるか!」

卯月「と、いうことは……」

未央「カレー屋さんへゴー!だね☆」

その夜食べたカレーはいつもと同じはずなのに、普段より美味しく感じられた

23: 2017/02/24(金) 01:50:49.97 ID:whLr7hPA0

つかさ「やっぱり今のアタシは……」カタカタ

第1回シンデレラガール総選挙を終えて、一つ思うことがあった私はマキノのデータベースをもう一回調べなおしていた
アタシの19位という順位、それは本来凛が居た場所だ
そして……プロデューサーからアタシが大手コンビニチェーン店のキャンペーンガールに選ばれたことを伝えれた
その仕事も本来は凛が担当するはずの仕事だった
つまり

つかさ(凛がいないからアタシがニュージェネレーションに選ばれたんじゃない)

つかさ(アタシが凛の役割を果たしているに過ぎないんだ)

ニュージェネに選ばれただけならそう考えることはなかった
だがユニットだけじゃない、アタシのソロの仕事も凛の今までの仕事とすべて一致していた
極めつけはソロCDレビュー、話を聞いたときは「やりぃ!」って意気込んでいたが……

つかさ(もしそうだとしたらこれまでの成功や失敗も、これからの成功も失敗もすべてが予定されたものになっちまうのか?)

つかさ(仮にこのまま進んでいった場合、3回目の総選挙でアタシは……)

つかさ(シンデレラガールに……)

これはまだ仮説にすぎない、でも今の状況から考えるにそうなる可能性は高い
シンデレラガールはアタシの目標だ
そのための努力は惜しむつもりはない
けどそれが、すでに決められたものだとしたら……

つかさ(そんなもの、嬉しくともなんともねぇよ)

24: 2017/02/24(金) 01:52:07.91 ID:whLr7hPA0

その日から元の世界へ戻る方法探しが始まった
え? アイドル辞めればシンデレラガールにならないんじゃね、だって?
いやいやそれは無いから
アタシはアイドルの仕事が気に入っているし、違う事務所に移籍するつもりもさらさら無いよ
だって今のアタシにはいっしょに頑張れる仲間がいるからな

つかさ「そもそも、過去へのタイムスリップなんてあり得るのか?」

池袋晶葉「ふむ、俗に言うタイムトラベルか」

浅野風香「フィクションだったら車で時を超えることもありますけど……」

こういう時、ウチの事務所って便利だよな
ロボを作れるのもいれば、超常現象まがいの事を引き起こすヤツもいる
今はこういう現象に理解がありそうな晶葉と何故か助手をしていた風香の意見を聞いている

晶葉「そもそもタイムトラベルの理論が出来上がってないからな、仮に理論があってもそれを実行する技術がない」

つかさ「そういうものなのかね」

晶葉「しかしつかさがタイムトラベルについて知りたいとは意外だな、どういう風の吹き回しだ?」

つかさ「別に、ただいろいろ勉強しねーとなーって思っただけだから、風香はなんか意見ある?」

風香「私ですかっ!? うーん……晶葉さんが科学で不可能っていうなら、魔法とか?」

つかさ・晶葉「「それはない」」

風香「え、えぇぇ……」

晶葉「魔法なんて存在したらなんでもありの世界になってしまうだろ、私は断じて認めん!」

風香「で、でも……この事務所には明らかに幽霊と会話している娘や幸運の化身とも呼ばれている人もいますし……」

つかさ「くっ……間近で見ているだけに反論しにくい……」

晶葉「ぐぬぬ……ええい! 風香よ、ファンタジーよりもっとSFモノを読め! 何なら私のオススメを持ってきてやる!」スタスタ…

風香「つかささん、晶葉ちゃん行っちゃったんですけど……」

つかさ「あー、待ってやんなよ。じゃ、アタシはレッスンだから」スタスタ…

風香「つ、つかささーん! つかささんも行っちゃいました……」

25: 2017/02/24(金) 01:52:46.20 ID:whLr7hPA0

科学じゃないなら魔法の力?
結局、どうやったら元の世界に戻れるのか
その答えは未だ見つからないままだった
その間にも新しいアイドル(と言ってもアタシは良く知っているけど)が入ってきたり
アタシもニュージェネレーションとしての活動やソロでの仕事をこなしていった
でも結局はすべてが凛の足跡を辿ってるだけなんだよな
はぁ……いまいち気合が入りきらないわー

そうこうしているうちにあの日がやってきてしまった

26: 2017/02/24(金) 01:53:20.46 ID:whLr7hPA0

>第5位は……桐生つかさ!

そう、第2回シンデレラガール選抜総選挙の発表日
第1回と比べて少しだけ大きくなった会場でアタシの名前が呼ばれた
事前にデータを調べてきたけど、卯月は29位だし他のみんなの順位もまったく同じだった

未央「つかさ社長大丈夫? 名前呼ばれてるよ?」

隣に座っていた未央が心配げな表情でアタシの顔を覗いている
ああ、そうだった……名前を呼ばれた以上はステージに向かわないとな……

未央「ほら、しまむーもあっちで手振ってるよ! さぁ、行った行った☆」

卯月がニコニコしながらアタシに手を振っている
未央はアタシを笑顔でステージに送り出そうとしてくれている
ったく……人の気も知らないで……
本当はおまえだってあっちに立ちたいだろうに……
でもな、未央がものすごい努力をしていることはニュージェネレーションの一員になったアタシは良く知っている
だから、ここでアタシが前向いて行かなきゃ他のみんなに失礼だろ?

つかさ「ちょっと、ビックリしただけだ。大丈夫、行ってくるよ」

未央「うん……ファイトだよ」

今だけは、第5位の桐生つかさでいてやるよ

27: 2017/02/24(金) 01:53:51.43 ID:whLr7hPA0

つかさ(ついに第2回総選挙が終っちまったか……)

ベッドの上で今日のことを思い起こす
今回もニュージェネメンバーでカレー屋反省会を行った
特に変わったことは無いけど卯月と未央はアタシを祝福してくれた
嬉しい、けどやっぱり複雑だよコレ
やっぱりニュージェネレーションにアタシの居場所なんて……
あーもう、何考えてんだよアタシ!
まったく……らしくない

ピロピロピロ……

つかさ「誰だよこんな時間に」

結構、遅い時間だっていうのにアタシに電話だなんて……いや、社長やってた時はよくあったか
社長業すら昔のことに思えてしまう自分にイラっとしながらも電話に出た

つかさ「なに? アタシそろそろ寝たいんだけど」

愛梨『よかった~つかさちゃんでてくれた~』

つかさ「「でてくれた~」って、そり出たから話しているワケだし」

愛梨『それもそうだね~』

つかさ「で、何か用?」

愛梨『つかさちゃん……少しだけお話し、いいかな?』

つかさ(愛梨の雰囲気が変わった……?)

普段のふわふわした感じから一転、愛梨の声がはっきりと聞こえる
こんな夜遅くに電話するんだ、何か大事な話があるのかもしれない

つかさ「ああ、いいよ。っていうかアタシの部屋にこいよ」

愛梨『うん♪ じゃあドア開けてくれるかな?』

つかさ「ああ、別にいいけど」

愛梨に促されるままに部屋のドアを開ける
そこにはドレス姿のトップアイドルが立っていた

愛梨「ふふっ、つかさちゃんこんばんは♪」

28: 2017/02/24(金) 01:54:26.14 ID:whLr7hPA0

つかさ「ほい、コーヒーだけどその格好で大丈夫か?」

流石にドレス姿の愛梨を床に座らせるわけにもいかないのでベッドに座らせている

愛梨「うん、ありがとう♪ ふーふー♪」

つかさ「で、そんな恰好でどうしたんだ? もう11時30だけど」

愛梨「ええっ? もうそんな時間なの!? 急がなきゃ!」

つかさ「なんだよ、他に用でもあるのかよ」

愛梨「ううん、ただ魔法は12時に解けちゃうから」

そう言った愛梨はカップをお盆の上に置き
先ほどとは打って変わって真面目な表情で話を始めた

愛梨「つかさちゃんは元の世界に戻りたいですか?」

つかさ「元の世界……って、お前どうして……」

愛梨「ふふっ、秘密です♪」

つかさ「いや、気になるから教えろよそこは」

愛梨「はい、分かりましたっ! つかさちゃん、今日は何の日か覚えていますか?」

つかさ「何って、今日は第2回総選挙の日だろ」

愛梨「うん、本当は蘭子ちゃんと一緒に来たかったけど……疲れちゃってたから寝かせてきましたっ」

つかさ「なんでそこで蘭子なんだ? いや待てよ、お前らって……!」

アタシの中で愛梨と蘭子を結びつけるものは1つしか思いつかない
そしてそれはここにいない凛にも関係するワードだ

つかさ「シンデレラ……ガール……」

愛梨「えへへっ、気づいちゃいましたか♪」

29: 2017/02/24(金) 01:55:25.56 ID:whLr7hPA0

愛梨「今の私は十時愛梨であって十時愛梨じゃありません」

つかさ「いや、いきなりなに言ってんの」

アタシの目の前にいるのは紛れもなく十時愛梨だ
付き合いが長い方ではないが愛梨を見間違えるほどアタシはバカじゃない

愛梨「うーん……なんて言うのかなー? 蘭子ちゃん風に言うと『魔力得し灰かぶりの姫!』って感じなのかなー? うーん……」

つかさ「あー、愛梨。 時間が無いなら元の世界に戻る方法を早く教えてくれ」

愛梨「そうでしたね、それじゃあ……」

愛梨「まず最初に、この世界は魔法がかけられた世界なんです!」

つかさ「魔法がかけられた世界?」

愛梨「はい、そしてその魔法をかけたのは……」

つかさ「渋谷凛、だろ?」

愛梨「その通り! 凛ちゃんがつかさちゃんに魔法をかけちゃったんです」

凛が私に魔法を?
いや、あり得ないだろ……って言いたいけど今のアタシには反論材料が存在しない
もしそうだとしたらいったい何のために?

つかさ「そもそも魔法なんてあるのかよ」

愛梨「魔法はありますよっ♪ 本当はみんなが魔法の力を持っているんです」

愛梨「ただ、それは本来気づかないもの。ふとしたきっかけで目覚めることもあります」

つかさ「そこでシンデレラガールってことか」

愛梨「さすがつかさちゃんは鋭いですね。はいっ、シンデレラガールに選ばれた女の子は少しだけ魔法を使うことができるんです」

愛梨「でもそれは誰かを助けるため、誰かを笑顔にするための簡単な魔法。そして、自分に対して使うことはできないんです」

愛梨「それにシンデレラガールになったからといって頻繁に魔法が使えるわけではありませんっ! 人の努力を否定する魔法なんて魔法じゃありませんから……」

つかさ「案外魔法って万能じゃないんだな。じゃあ愛梨は今、魔法が使えるのか? アタシを助けるためにここに来たんだろ?」

愛梨「それがですね……今はつかさちゃんを元の世界に戻す魔法を使うことはできないんです。凛ちゃんがかけた魔法が強すぎて私と蘭子ちゃんの力も抑えられてしまっています」

愛梨「それに私達がつかさちゃんや凛ちゃんの事を覚えていられるのも今日までなんです。シンデレラの魔法は12時になったら解けちゃいますからね……だから今日話すことができて本当に良かった~」

つかさ「じゃあ結局元の世界に戻れないのかよ」

愛梨「大丈夫です、凛ちゃん自身に魔法を解いてもらえばいいんですよ」

愛梨「そして期限は第3回総選挙の結果が発表されるまで、それまでに魔法が解かれないと……つかさちゃんは元の世界に帰れなくなってしまいます」

つかさ「マジで?」

愛梨「マジです」

30: 2017/02/24(金) 01:56:49.11 ID:whLr7hPA0

つかさ「とにかく凛を探せってことになるのか……でもどこにいるかの手がかりが何もないけど」

愛梨「手がかりは今のつかさちゃんの状態です。今のつかさちゃんは言ってしまえば凛ちゃんなんです。言いかえれば……」

つかさ「本来のアタシのポジションに凛がいるワケだな……でも待てよ、そうなると凛と出会えるのは第3回総選挙後じゃねぇか! 詰んでね?」

愛梨「はい、このままでは凛ちゃんに出会うことなく第3回総選挙が終わってしまいます。だから……今の私にできる魔法をつかさちゃんに」

愛梨が目を瞑って両手を握り始めた
その姿は結構絵になっていて……いやドレス姿でそのポーズは少し反則だろ、マジもんのお姫様かよ
そんな愛梨に見とれていると、愛梨の手からは光があふれてきて……その光はアタシを包んでいった
なんだろうこの光は……暖かくて優しくて

「ごめん……そして、みんなをよろしくね」

一瞬、凛の声が聞こえた気がした
なんだよ「ごめん」って、バカなこと言ってんじゃねぇよ

つかさ「ふふっ……」

愛梨「つかさちゃん?」

つかさ「ぜってー、凛をたたき出してやるって決めただけだからさ。ところでアタシにどんな魔法をかけたんだ? 見た感じなんも変わってないけど」

愛梨「私と蘭子ちゃんからの魔法は……未来を選ぶ力ですっ!」

つかさ「未来を……選ぶ?」

愛梨「はい! 第3回総選挙が終わるまでつかさちゃんが望めば未来を変えることができますっ!」

つかさ「未来を変える……ってことはこれからの仕事の成功も失敗もアタシ自身の力で変えられるってことか」

つかさ「……でもこれならいきなり凛のところに行けるんじゃね?」

愛梨「いいえ、凛ちゃんを迎えに行くには準備をしなきゃダメですっ! それはつかさちゃんも分かっているはずです」

つかさ「……そーいうことね、オッケー分かった」

愛梨「つかさちゃん、これからとても忙しくなると思います」

愛梨「時にはすべてを投げ出したくなる時があるかもしれません……」

愛梨「でも、今のつかさちゃんには助け合える仲間がいます」

愛梨「……どうかそれを、忘れないでくださいねっ!」

つかさ「ああ……ここまでしてくれて本当にありがとな」

愛梨「いいんですっ♪ だって私達はトップアイドルを目指す仲間なんですから……もう時間ですね、おやすみ……な……」

時計の針は24時を迎えると意識を失った愛梨の姿は美しいドレス姿から可愛い寝間着に変化していた
慌てて来たのかボタンを掛け違えている

愛梨「すぅ……すぅ……」zzz

つかさ「まったく……とことん無防備なんだから愛梨は」

心地よく寝ている彼女を起こすのも可愛そうなので布団の中に移動させる
アタシは……カーペットの上でいいか

31: 2017/02/24(金) 01:57:20.37 ID:whLr7hPA0

翌朝、愛梨を部屋に返したアタシはこれからのことを考え始めた
アタシのポジションにいる凛を迎える
愛梨の言っていた準備とはきっとアタシの以外のアイドルを集めること
アタシが最後のアイドルだったのなら、それ以外のアイドルを集めなければならない
だが、今のままでは凛に会うことなくアタシはシンデレラガールになってしまう
プロデューサーがいないアイドルをスカウトするのを待ってただけじゃダメだ
なら、アタシがやるべきことは

つかさ「プロデューサー、これ見てくんない?」

P「地方イベント計画書……ですか?」

つかさ「ああ、知名度アップのために少し地方での仕事増やしたらいいと思うんだけど」

ペラペラ……

P「岡山や長崎を回るイベントですか……とても魅力的な内容ですけど、現在つかささんには仕事のオファーがたくさん来てるんですよね」

つかさ「そこを一緒に考えるのがプロデューサーだろ? なんならアタシ1人で全部企画から運営までやっていい」

今までと同じなら総選挙前に凛のところに辿り着くことができない、なら他のアイドルのスカウトを早めるしかないだろ?
そのための地方イベントだ、ここで仲間を集めてやる!

P「そこまで言うとは本気なんですね……分かりました、今度の会議で提案してみましょう」

つかさ「おっし! じゃあちょっと時間ある? もう少し詰めたいんで意見くれない?」

P「分かりました、この資料をまとめたらやりましょうか!」

結果だけ言うとこの企画書は上層部の承認……いや、事務所主体の規模の大きなイベントとして企画されることになった
もちろんアタシの企画書で提案していた岡山、静岡、長野、愛媛、長崎、沖縄……そして福井もイベント開催地に加えてもらうことができた
話し合い中に思ったけど、やっぱアタシとプロデューサーは世界が違っても最高のパートナーかもな

32: 2017/02/24(金) 01:58:02.58 ID:whLr7hPA0

―静岡―

「ぐすっ……ううぅ……」

つかさ「何泣いてんだよ」

「だって……だって、みんなくるみのことバカだって……」

つかさ「お前はバカのままでいいのか?」

大沼くるみ「そんなのイヤだよっ! でもくるみには何もできないよ……」

つかさ「大丈夫だよ、お前はなんでもできるさ」

くるみ「ぐすっ……なんでもって、なにから始めたらいいか分かんないよ?」

つかさ「そうだな……一緒にアイドル、やろうぜ」

くるみ「ア、アイドル!? ……くるみにできるのかなぁ?」

つかさ「ああ、とびっきりキュートのな」

つかさ(お前はやればできるってこと、アタシは知っているんだぜ)

33: 2017/02/24(金) 01:58:47.68 ID:whLr7hPA0

―愛媛―

「………」ペラペラ

つかさ「………」ペラペラ

「………」ペラペラ

つかさ「………」ペラペラ

つかさ「………おい」

鷺沢文香「? どうか……なさいましたか?」

つかさ「ずっと本読んでるからさ、どこで休憩するのか気になってさ」

文香「私に気をかけるとは……不思議な方ですね……」

つかさ「アタシは不思議ちゃんかよ、まぁいいや」

つかさ「そんな不思議ちゃんからの提案だ、アイドルになってみない?」

文香「はぁ……アイドル、ですか?」

つかさ「ちょっと顔を上げてみ」

文香「こう……でしょうか?」

つかさ「そうそう、そんな感じ」

つかさ(やっぱ文香の眼はキレイだよなー。こればっかしは生まれ持ったモノだからな、少し羨ましいわー)

34: 2017/02/24(金) 01:59:30.94 ID:whLr7hPA0

―沖縄―

つかさ「ここの学食のカツカレー美味いな!! おばちゃん達には感謝だな」モグモグ

「ちょっと、なにやってるんですかあなたは!」

つかさ「カツカレー食ってるけど」モグモグ

「それは見たら分かります! なんでうちの生徒じゃない人が食堂でご飯食べているんですか!?」

つかさ「学校の食堂は学生が使うもんだし別に問題ないだろ」モグモグ

「問題しかありません! というか人が話しているんですから食べるのやめなさーい!」

つかさ「カツカレーもいいけど、やっぱチーズが欲しいな」モグモグ

「無視! そうですか、そうきますか!」

冴島清美「あなたみたいに風紀を乱す人は、この風紀委員である冴島清美が許しません! ちょっと来てもらいますよ!」

つかさ「ふぅ……ご馳走さまっと、その言葉待ってたぜ」ニヤリ

清美「な、なんなんですかその顔は……と、とにかく私についてきてくださいよ! たっくさん話がありますからね!」

つかさ「おう、こっちもイロイロと話したいことがあるんでね」

つかさ(ここのカレーのレシピ、知りてーな……)

35: 2017/02/24(金) 02:00:19.81 ID:whLr7hPA0

着々と地方でのイベントをこなしていく
もちろん本来の企画者であるアタシはすべてのイベントについて行った
自分で言うのもなんだけど少し無茶やってるな
そして、イベントが開催されている裏でプロデューサーは何人もの少女をスカウトしていった
流石に全部任せるのは申し訳ないので一部はアタシがスカウトしたけどな
たまにトラブルもあったけど何とか乗り切ることができた
その甲斐もあって岡岡山でのイベント後、所属アイドルは182名に達した
それは渋谷凛以外のアイドルが揃ったことを意味していた

つかさ(待ってろよ、凛)

36: 2017/02/24(金) 02:00:46.61 ID:whLr7hPA0

―福井―

つかさ(本来なら凱旋って言いたいけど)

卯月「今日も頑張りましょうね!」

つかさ「おう、よろしくな」

いつもと変わらず卯月は笑顔だ、今回のイベントはニュージェネレーションの3人で参加したいとプロデューサーにお願いした
2人は覚えていないだろうけど、凛に会うんだったら必ず連れてきたいと思っていたからな
なんか未央は地方新聞とにらめっこしてるけど

未央「むむむ……」

つかさ「どうした未央?」

未央「あっ、えーっと……この記事みてくれるかな?」

卯月「なになに『女子高生社長・渋谷凛に聞く、ペットと花との過ごしかた』……すごいです! 高校生で社長をやってるんですね!」

未央「すごいよねー本物の社長だよー、どしたのつかさ社長?」

つかさ「いや、ちょっと頭が痛くなっただけ、……うん、気にすんな」

未央から新聞を借りて、問題の記事を見る
何だよ、アタシのポジションだからって社長までやるかよ普通!
高校生社長だなんて絶対どこかでニュースなってるはずじゃん……高校生で社長という本来のアタシのアイデンティティを取られたのは置いといて、自分のアンテナが鈍っていたことに情けなくなっていた

つかさ(ん? この記事に書いてある凛の会社の住所って……)

37: 2017/02/24(金) 02:01:50.91 ID:whLr7hPA0

つかさ「久しぶり……な気もするな」

夕方、ホテルを抜け出したアタシは新聞に書いてあった住所……アタシの実家の前に立っていた
ここまで来たら引き返すことなんてあり得ない、アタシは覚悟を決めてインターホンを鳴らした

ガチャ……

凛「そろそろ来る頃だと思ったよ、つかさ」

38: 2017/02/24(金) 02:03:46.52 ID:whLr7hPA0
凛「久しぶりだね、みんなは元気?」

つかさ「そうだな、みんな元気にやってるよ」

アタシは今、凛の部屋にいる。もともとはアタシの部屋だっただけに、変な気分だ
部屋は……ハナコの寝床があったり、花が飾ってあったりと全然違うけどキレイに掃除はしているな、関心関心

凛「そっか、それは良かったよ」

凛「でも、地方イベントを企画するだなんて。おかげで総選挙前につかさに捕まっちゃったけど」

つかさ「それに関しては愛梨と蘭子に感謝だな、2人がきっかけをくれなかったらここまで辿りつくことはなかったし」

凛「そっか、愛梨と蘭子が……」

つかさ「魔法については愛梨から聞いた。凛、お前はアタシに何をしたんだ?」

凛「私は……つかさに後輩ができるように魔法をかけた」

つかさ「後輩ね……確かにアタシが凛のポジションにいることで、たくさんの後輩ができた。でも嘘だな、それならアタシを凛のポジションに置く必要性が感じられない。新しいアイドルが入ってくるように仕向ける方が簡単に済むからな」

つかさ「本当は別の理由があんじゃねーの?」

凛「やっぱりつかさは鋭いね……」

凛「つかさにかけた魔法は手段……本当は私がアイドルから逃げたかっただけなんだよ」

凛から発せられた言葉にアタシは耳を疑った
おい、何て言った? アイドルから逃げるだと……?

つかさ「お前、ふざけてんのかよっ! アイドル、楽しかったんだろ! だからいっぱい努力してシンデレラガールにもなったんだろ! それなのに……」

凛「確かにニュージェネレーションやトライアドプリムス……事務所のみんなとの日々は大変なこともあったけど楽しかった、そこに嘘はないよ」

つかさ「なら、別に逃げることはないだろ」

凛「そしてシンデレラガールになって、これからもっと先いろいろなことに挑戦できる、みんなと進んでいける、ずっとそう思っていた」

凛「だから、考えたんだ未来のことを」

39: 2017/02/24(金) 02:04:57.15 ID:whLr7hPA0

凛「でも……何も見えなかった。その瞬間、私には未来が無いように思えたんだ」

つかさ「だから、今までのすべてを捨てちまうのかよ……」ギリギリ・・・

凛「つかさの活躍はテレビで何度か見てたよ。うん、私以上だった。これならみんなを任せられるね」

つかさ「凛……テメェ……」

そこにアタシの目標だったトップアイドルはいなかった
目の前にいたのはただの自分を見失っている少女でしかなかった

つかさ「凛、アタシが言ったことを覚えてるか?」

凛「うん、『未来のことを考えろ?』でしょ」

つかさ「お前は何も分かっちゃいねーよ。お前は未来を考える時に誰かと相談したか? 卯月や未央、奈緒に加蓮、事務所には頼れるヤツがいっぱいいるだろ? 誰かと相談したのかよ」

凛「そんなの……私のことは自分で考えなきゃ……他の誰かを頼ることはできないよ」

おおよそ予想できた言葉にため息が出る
こいつも頑固だなぁ

つかさ「あのなぁ、確かに自分のことを決めるのは自分自身だ。でもな、誰も頼っちゃいけないなんて一言も言ってないぜ、アタシだって分からない時は誰かの意見は貰うさ。例えば、アイドルのことならプロデューサーに聞く。人生経験についてなら瑞樹さんや楓さんにも聞いてもいいだろ?」

凛「そんな、私のことなんて……」

つかさ「ばーか、大人に聞きにくくてもお前にはもっと身近に仲間がいたはずだろ?」

もちろん、それは凛も分かっているはずだ

凛「うん、卯月や未央に聞くこともできた。でも……」

つかさ「それがイヤならアタシのところに来い、アタシでよければなんでも聞いてやるよ」

凛「つかさ……私、どうすればよかったのかな」

ああもう、どうしてこんな時に泣くんだよお前は
せっかくの美人が台無しだろ
泣くならもっといい場所……ステージが終った後でもいいだろ

凛「ぐすっ……私、どこで間違えたんだろう……大切なものを捨てて、自分の可能性を閉ざして、つかさを巻き込んで……」

つかさ「お前はまだ15歳だ、アタシも18だけどさ。分からないことはいっぱいあるよ。もっと周りに頼ってもいいだろ?」

凛「ぐすっ……うん……」

つかさ「もう泣きやめって、ほらハナコも心配しているぞ」

>クゥ~ン……

凛「あはは……大丈夫だよハナコ。ありがとね」

40: 2017/02/24(金) 02:05:39.58 ID:whLr7hPA0

凛「私、これからどうすべきなのかな……」

つかさ「決まってるだろそんなの、元に戻すんだよ」

凛「つかさは元の世界に帰りたい? 今のつかさは人気アイドル、ニュージェネレーションの一員でこれからいろんな仕事ができるよ。多分、シンデレラガールにもつかさの本当の実力でなれる」

つかさ「愚問だな、アタシは元の世界に帰りたいよ」

つかさ「確かに事務所の先輩アイドルとしてみんなとする仕事は楽しかった、卯月や未央もとってもいいヤツだったからな」

つかさ「でもアタシは、ギャルでJKで社長だったからアイドルになったんだ。 それは変えたくない。 それに……アタシはアタシのやり方でトップを目指す、アイドルになった時にそう決めたんだ」

つかさ「だからアタシはみんなを追い抜く後輩アイドルに戻ってやる」

凛「……分かったよ、じゃあ魔法を解かないとね。 ベッドに寝てくれる?」

凛は何か呪文のようなものを唱えると、普段着からドレス姿に変わっていた
シンデレラガールはみんなその姿になるんだな、……アタシもそうなるところだったのか……

つかさ「ああ……頼むぜ」

凛のベッドに寝転がる。ああ、ついに元の世界に戻れる時が来た
思えば、この世界にいたのも結構長かったな
最初は戸惑ったけどニュージェネレーションとしての日々は悪くなかった
ニュージェネレーション…………ちょっと待て

つかさ「凛、ストップ」

凛「どうしたのつかさ? 寝てくれないと魔法がかけられないんだけど」

つかさ「いや、まだ時間があるよな? じゃあこれやるよ」ゴソゴソ

鞄の中から取り出したのは、明日のイベントのチケット
すぐに帰ってもいいけど、仕事をほっぽり出すのはファンにもスタッフにもそして仲間たちにも失礼だよな

凛「これは……」

つかさ「この世界でのアタシのラストステージだ。 来ないとは言わせねぇよ?」

41: 2017/02/24(金) 02:06:44.37 ID:whLr7hPA0

>ワーワー!! ガヤガヤ・・・ ニュジェネレーションッ!!

未央「わぁ、人がいっぱいだよ~」

卯月「うん! 頑張りましょうね!」

つかさ(今日が本当にラストか、分かってはいたけどやっぱり寂しいものがあるよな)

つかさ(って何言ってんだよ、アタシは元の世界に帰る……帰るんだ)ホロリ

未央「つ、つかさ社長どうしたの!?」

つかさ「あはは……あまり人前で泣きたくなかったんだけどな、少し感傷的になっちまったか」

卯月「つかささん、いつもは私たちが支えられています。だから、たまには泣いてもいいんじゃないでしょうか? それに私達は同じユニットの仲間じゃないです! 辛い時も楽しい時も一緒です!」

そう言って、卯月はアタシの右手を握ってくる。未央も続いてアタシの左手を握って……
もう、そういうのズルいだろ。ますます泣いちまうだろが……
やめろよ、他のヤツもきちゃうだろ……

くるみ「つかさしゃん! このティッシュ使ってぇ!」

つかさ「ああ、サンキューな……・」

清美「意外ですね、つかささんが泣くなんて。血も涙もない人だと思ってました」

つかさ「アタシも人間だからさ、こんな時はある」

つかさ「……っ、これで良し! ほらお前たち、アタシたちのステージを見て勉強しろよな、今日は最高のステージにしてやる」

文香「はい……勉強させていただきますね……」

このステージはきっとアタシと凛の記憶にしか残らないだろう
でも、この世界の桐生つかさはニュージェネレーションの一員にしてみんなの前に立つ先輩アイドルだ。

つかさ「それじゃ……行くか!」

そしてアタシは、たくさんのファンと今のみんなを見せたいアイツが待つ輝くステージへ走り出した

42: 2017/02/24(金) 02:08:17.52 ID:whLr7hPA0

…………………

つかさ「うーん、よく寝たわー」

つかさ「……帰ってこれたんだな」

ラストライブ終了後、またホテルを抜け出したアタシは凛の家で魔法を解いてもらった
凛にライブの感想を聞くと一言「よかったよ、でももっとよくできるところはある」ってさ、言われて初めて気づくことがあるあたり、やっぱり経験が違うな、アタシもまだまだってことか
そしてスマホの日付は……凛と総選挙について話したあの日のままだった
時間は少ししか経っていないのでまるで夢を見ていたようにも思える
でもきっと、夢じゃなかったはずだ。だってアタシの目の前には目を赤くした凛がいるんだからな

凛「おかえり、つかさ」

つかさ「ああ、ただいま。レッスン終わったのか?」

凛「さっき終わったところだよ。レッスン中に泣きかけちゃったけどなんとか抑えられた」

つかさ「そいつは良かった、それじゃあさ……カレーでも食べに行かない? 寝てただけなのに無性に腹が減っちまったよ。今は大盛りをがっつり食べたい気分だ」

凛「……いいよ、行こうか。私もつかさと同じのにしようかな」

つかさ「いけるのか? 結構量があるぜ」

凛「うっ、じゃあ普通盛りで……」

つかさ「あはは、ムリすんなって」

つかさ「道すがらあっちの世界のことでも話そうぜ、凛がどんなビジネスやったか気になるし」

凛「うん、私もつかさのニュージェネ生活について知りたいかな」

つかさ「んじゃ、さっさと行こうぜカレーがアタシ達を待っている」

分かりきった未来なんてつまらない
だけど、『分からない』からといって未来を恐れる必要はどこにもない
ネガティブな気持ちだけじゃなく、ポジティブに前向きな気持ちを持った方が絶対にいいだろ?
それでも失敗したら? なら、それを成功のチャンスと捉えて次に生かしていけばいいさ
後はそうだな……頼ったり頼られる仲間達と一緒に成長していく
それがアタシ、アイドルとしての桐生つかさの信じるもの

そうすればきっと、未来はもっと楽しくなるはずだ

43: 2017/02/24(金) 02:21:35.63 ID:whLr7hPA0

以上です。
本日2月24日は桐生つかさちゃんの誕生日です!
モバマスの方の今年の誕生日コメントは見ましたか?
祝う側のこっちが元気づけられてしまいました、カッコよすぎる……

これからの彼女の未来がもっと良いものでありますように
改めて、誕生日おめでとう!

44: 2017/02/24(金) 02:23:25.06 ID:whLr7hPA0
HTML化依頼、出してきます

45: 2017/02/24(金) 05:16:06.78 ID:jM5VJzHSo

引用元: 桐生つかさ「未来へ」