1: 2010/10/02(土) 01:38:10.74 ID:WOAIFKqa0
ニビジム内

タケシ「岩に電気が効くわけないだろ」
サトシ「……え?」
タケシ「それにモンスターボールで捕まえてないポケモンを使われても……」
タケシ「その……困る!」
ピカチュウ「ビガッ!?」
サトシ「え?え?」

「イワーク戻れっ」バシュウ

タケシ「真面目にジムリーダー戦する気ないなら……」
タケシ「表へ出ろ」
サトシ「タ、タケシッ!?」

4: 2010/10/02(土) 01:39:46.61 ID:WOAIFKqa0
サトシ(いったいどうなってるんだ?)

サトシは困惑した
カントー・オレンジ諸島・ジョウト・ホウエン・シンオウ
たくさんの冒険の供、いや友として歩いてきたタケシが目の前に立ちはだかっている
それも懐かしのニビジムでだ

タケシ「……ジムバッチをもとめ努力してきた者たちが足を踏み入れる場所、その一つがここだ」
タケシ「ほぼ野生のピカチュウをイワークの前に出すぐらいなら、もっといろんなポケモンを育ててくるんだ」
タケシ「君の前に来た同じぐらの年の子たちは立派だったぞ」
タケシ「さあ、別の挑戦者が来た。今日は帰りな少年」

タケシの声がやけに響く、そこにはおねいさんに目がないタケシの面影はない
サトシは目の前が真っ暗になっていくのを感じた

7: 2010/10/02(土) 01:42:42.03 ID:WOAIFKqa0
ニビシティ
サトシ「なあピカチュウ、ピカチュウはピカチュウだよな?」
ピカチュウ「ピ~カ、ピカピ……ピカチュ~」

サトシの悲しみを癒すように、抱えられたピカチュウは頷く

サトシ「よかった……グスッ」

サトシ「ん、あれは……」
サトシ「ロケット団!!」

ムサシ「ちっなんでバレたのさ!」
コジロウ「わかんねぇよ!」
二人「ガキが!それ以上騒いだらポケモンの餌にするぞ!!」

サトシ「え?」

8: 2010/10/02(土) 01:46:57.87 ID:WOAIFKqa0
ムサシ「殺されたくなかったらアンタのポケモン…」
コジロウ「なんだよピカチュウしか持ってないのかよ」
ムサシ「やなかんじぃ…とりあえず縛ってそこらへんの影にでも捨てましょ」
コジロウ「なんかムカツクし軽くボコるわ」

大人の力は強い、サトシはひとしきり殴られた後、なすすべなく縛られ草むらに放り投げられた

サトシ(いつものロケット団じゃないみたいだ……)
ピカチュウ「ピ……カァ…」

ロケット団に経験値にされたピカチュウはぐったりしている
ピカチュウや他の仲間たちと数多くの戦いを潜り抜けてきたはずの自分たちのあまりの脆弱さに
サトシは一晩中泣いた……

9: 2010/10/02(土) 01:50:08.79 ID:WOAIFKqa0
朝、サトシの足は自然とマサラタウンへ向かっていた
野生のポケモンたちもこの一人と一匹を哀れに思ったのだろう
捕食しないばかりか、縄まで切ってくれていた
傷つき倒れたピカチュウを抱きかかえ、一歩一歩見慣れた道を進んでいく

サトシ「なあピカチュウ……ごめんなぁごめんなぁ」
ピカチュウ「ピカピ……」

マサラタウンに行けばママがいるんだ
オーキド博士がいるんだ
今手元にいない仲間たちもきっと

あと少しに迫ったマサラタウンは洛陽に照らされていた

11: 2010/10/02(土) 01:54:11.17 ID:WOAIFKqa0
サトシ「あれは……ママ!!」
ピカチュウ「ぴぃ…かぁ…ちゃ…」

マサラタウンの入り口に確かにママを見たサトシは力を振り絞って駆けた
サトシ「ママ!ママぁぁぁ!」

ママ「きゃあどうしたのあなた!」

サトシはママの胸に力なく顔を埋め泣いた

サトシ「ママ…サトシだよ…ただいま……」
ママ「サトシ……おかえり……」

一番の幸せをサトシは感じていた
そう、母のぬくもりを
ママは優しく、黙って抱きしめた

空にはまんまるお月様が輝いていた。

13: 2010/10/02(土) 01:57:15.11 ID:WOAIFKqa0
半年後
某所

オーキド「本当によかったのかのぉ」
ママ「これが……一番幸せだと思いますから」
オーキド「しっかし、こんな酷い事をしたロケット団が壊滅して本当によかった」
ママ「ええ…ほんとうに……」
オーキド「これもあなたの息子さん、レッドくんのおかげじゃ」
ママ「……せめてこの子たちの魂がやすらかでありますように……」

サトシ、最愛のピカチュウとともに…
二人の前の石にはそう書かれていた。

風が塔をそっと撫でていく

ここはシオンタウン、シオンは むらさき とうとい いろ

17: 2010/10/02(土) 02:04:45.80 ID:WOAIFKqa0
タケシ「これで……いいんだな?」

暗い部屋の中、ただ一つの蝋燭が怪しくゆらめく

?「ええ、寂しくなるけどしかたがないわ」

タケシは机を叩く、自分を責め立てるように

タケシ「だからって瀕氏のサトシとピカチュウをそのまま放置したのは…!!」
?「うるさいわね」

タケシ「十歳だぞ!!無事でいられる訳がないじゃないか!!」
?「そう……だから縄を切ってあげたのね」

タケシ「カスミ……お前…」

21: 2010/10/02(土) 02:11:30.74 ID:WOAIFKqa0
タケシ「み、見てたのか?」
カスミ「信用できないもの、簡単には…ね」

寒気をタケシは感じていた

タケシ「このっ!!」
カスミ「お前は人間じゃねぇって言いたそうな顔ね」

寒気はゆっくりと悪寒に変わる

タケシ「俺は…新しい旅について行きたかった…」
カスミ「そう…」
タケシ「でもそれは叶わなかった
カスミ「それが現実よ」

タケシの細い目から涙が零れ落ちていく

24: 2010/10/02(土) 02:17:56.93 ID:WOAIFKqa0
タケシ「絶望したよ」
カスミ「それで?」

タケシは拳を握り締める
握り締められたグレーバッジは輝いてはいない

タケシ「そこでお前が現れた」
カスミ「で?」
タケシ「その時初めて解ったんだ!あの時のお前の気持ちが!」
カスミ「……」

タケシは膝から崩れ落ちた犯した罪の重さにたえられずに

25: 2010/10/02(土) 02:28:17.11 ID:WOAIFKqa0
カスミ「あっはっはっはっ!!」

タケシは目の前の女を見上げると恐怖した
目が、おてんばな少女のそれではなかったから

カスミ「だから頭まで岩タイプだって言われるのよ」

タケシはカスミの瞳から目を逸らすことすら出来ない

タケシ「これが俺の望んだ世界だったというのか?」

カスミの口元が震える

カスミ「そうよ、あなたはもうサトシと冒険できないのなら違う世界に引き篭もりたいと願ったの」

カスミは歪んだ笑みを浮かべる

カスミ「どうくつに引き篭もってますもんねぇ岩ポケモンは!あっはっはぁ!」

26: 2010/10/02(土) 02:36:38.07 ID:WOAIFKqa0
タケシ「お、俺はサトシを頃したいと思ったことは…」

もはや年下の少女に向かうというよりはただおびえる小動物と化したタケシ
嘲笑うかのように顔を近づけ微笑むカスミ

カスミ「やぁねぇタケシったら」
カスミ「あなたの祈ったのはサトシと出会わず、ジムリーダーとして充実した生活を送っている世界よ」
タケシ「…?」

タケシの中に小さな疑問が生まれた
サトシと出会わないように願った世界になぜサトシが?俺の前に?

夢を見せてくれるポケモンは不完全だったのか?

27: 2010/10/02(土) 02:44:32.68 ID:WOAIFKqa0
カスミ「でもタケシって案外外道なのねぇ」
カスミ「サトシがいない世界なんだからサトシのママもいなくるわけじゃない」

タケシの中の疑問はまだ正体を現さない

タケシ「そう…なるな」

カスミ「あいつ氏ぬとき他人のママの胸の中で氏んだのよ?」
カスミ「まぁこの世界のあいつことレッド君のママだから少しはましかぁ」

タケシの中の何かが切れた
バッジを握り締めた拳でカスミを殴り飛ばす

タケシ「おまえはカスミじゃねぇ!!」
タケシ「人の皮を被った悪魔め!!」

28: 2010/10/02(土) 02:54:49.46 ID:WOAIFKqa0
カスミ「いつつ……」

尻餅をついたカスミはよろよろと立ち上がろうとするが…
すかさずみぞおちに膝を入れられ、うずくまり倒れる

カスミ「うげぇぇ!」

タケシ「俺は確かに情けない卑怯者だ!!」
タケシ「だが情けないからこそサトシをこの俺が逃げ込んだ世界に連れ込むはずが無い!!」

カスミ「ゲホッゲホッ」
カスミ「せい…かい」

カスミ「私が…連れ込んだ…」

形勢は完全に逆転した
タケシはそびえ立つ石柱のようにたくましく見えるが、カスミはもう水を失った魚のようだ

カスミ「ゆるせ…なかった…」
タケシ「!?」

31: 2010/10/02(土) 03:03:51.72 ID:WOAIFKqa0
カスミ「ゆるせなかった!!」

少女の目は哀しく輝く
タケシはバッジをポケットにしまうと、ゆっくりと拳をゆるめていく

カスミ「私はサトシが好きだったのに……なのに…」
タケシ「ハルカ、ヒカリ……か?」

カスミはかすかに頷くとただ涙を流すばかりだった

タケシ「なにも…言わない…俺も…共犯だ…」
タケシ「だが……罪は罪さ」

きづきましたか?

タケシ「!?」

33: 2010/10/02(土) 03:16:35.21 ID:WOAIFKqa0
ともに あゆみつづける ことだけ が ゆうじょう では ありません
じぶん の おもい つよさゆえ の きょうこう は とても むなしいもの です

タケシ「あなたは……」
タケシ「伝説のポケモン?」

その いちぶ とでも いいましょうか
あなたがた を ためさせて もらいました

カスミ「サトシを…お願い神様…」

あんしん してください タケシ カスミ
あなたたち は いちど やくめ を おえました
のぞむせかいへ つれていって あげましょう

タケシ「もしかすると本当のサトシは!」

ええ いまも あたらしい ちほう で げんきに しています

カスミ「よかった……ほんとうに……ごめんなさい」

では ねがいなさい かえるせかい を いのりなさい

タケシ「俺は……」

34: 2010/10/02(土) 03:25:07.52 ID:WOAIFKqa0
「おいっ!」

この…風の匂いは…

「お~い!」

この…声は!!

「おいタケシぃ!いつまで寝てんだおいてくぞぉ!」

タケシは頬を伝う何かを感じたがもうどうでもいいことだった
急いで立ち上がり声の主の元へ駆けていく

タケシ「うぉぉ!サトシぃぃぃ!」

タケシは思わず抱きついてしまった
すかさず振り払う姿はサトシ

カントー地方の穏やかな風がタケシを包み込む

カスミ「こらぁ何やってんの二人とも!」

カスミもいる

サトシ「気持ち悪いことすんなよぉ~」

サトシがいる

35: 2010/10/02(土) 03:34:48.33 ID:WOAIFKqa0
カスミがこっそりと申し訳なさそうにタケシに微笑んだ
どこか悲しげだった

ああそうか

タケシは一人頷いた

これが俺の望んでいた世界…か

タケシ「ベストウィッシュってやつかね」

いつの間にか近くには見慣れないおねいさんがいる

タケシ「うぉふぉ!!」

女性「どこかに悪い夢を食べてくれるゆめくいポケモンがいるんですって」

タケシはふと我に返り、返答する

タケシ「自分は信じます!きっと俺の悪い夢も食べてくれたから!」

サトシ「ほんとにおいてくぞぉ~!!」

もうサトシとカスミが小さくなりかけている

タケシはポケットの中のグレーバッチに触れると目を閉じ微笑んだ

タケシ「さぁ~て、俺もポケモンゲットだぜ!」

三人の旅はいつまでもつづく……

37: 2010/10/02(土) 03:45:45.06 ID:WOAIFKqa0
もしこんな夜中までちょっとでも読んでくれた人がいるならありがとう
どうせ立たないと思ってるとスレ立っちゃって驚いたwww

正直岩に電気効かないとかのっけから間違ってたし

ポケモンのアニメが写らない場所に住んでいたせいで気づいたら知らないキャラばっかりであせったwww
という気持ちで衝動的に書いてしまいました。

正直ss書いている人たちの凄さと身の程を知ったわ

サーセンした

39: 2010/10/02(土) 04:18:32.09 ID:UnDzxFbMO
乙!

引用元: タケシ「おい、ちょっと待て」