765: 2023/02/24(金) 21:08:33.06 ID:QvLQwGsg0
西城樹里「タケウチ」【中編】
~クイーンズゲートドーム~
ブロロロロロ… キキィ!
ガチャッ! バタン!
武内P「……ッ」タタタ…!
ギイィィ…
武内P「……」コツコツ…
武内P「……ッ」
ピタッ
武内P「せ、千川さん……!」
766: 2023/02/24(金) 21:09:22.48 ID:QvLQwGsg0
ちひろ「…………ぅ」
武内P「千川さん! 大丈夫ですか!?」ダッ!
シャニP「ぷ、プロデューサーさん!」ザッ
武内P「!?」
武内P「……っ」
シャニP「これは、一体……!?」
武内P「よくものうのうと……」
武内P「あなたこそ、ご事情をよく承知した上で私を呼んだのではないですか?」
武内P「千川さん! 大丈夫ですか!?」ダッ!
シャニP「ぷ、プロデューサーさん!」ザッ
武内P「!?」
武内P「……っ」
シャニP「これは、一体……!?」
武内P「よくものうのうと……」
武内P「あなたこそ、ご事情をよく承知した上で私を呼んだのではないですか?」
767: 2023/02/24(金) 21:14:18.24 ID:QvLQwGsg0
シャニP「!? え、い、いや……ま、待ってください」
シャニP「俺は今西部長に呼ばれて来ただけです!
千川さんがこんな事になっているなんて何も…!」
シャニP「ていうか、こんな話してるより、まず千川さんを助けないと!」
武内P「! それは、確かに……!」
「それには至らない」
武内P・シャニP「!?」クルッ
コツ…
コツ…
今西「……彼女は気を失っているだけだ。
もうじき、目を覚ますだろう」
シャニP「俺は今西部長に呼ばれて来ただけです!
千川さんがこんな事になっているなんて何も…!」
シャニP「ていうか、こんな話してるより、まず千川さんを助けないと!」
武内P「! それは、確かに……!」
「それには至らない」
武内P・シャニP「!?」クルッ
コツ…
コツ…
今西「……彼女は気を失っているだけだ。
もうじき、目を覚ますだろう」
768: 2023/02/24(金) 21:15:50.43 ID:QvLQwGsg0
シャニP「今西部長……?」
武内P「……ご説明願います、あなたの意図を」
武内P「『過去の清算』という話を額面通りに受け取るならば、
これは私とあなたの問題であり、関係の無い彼を呼び出す理由が無い」
武内P「無論、千川さんをこのような目に遭わせる事も!」
今西「君の言う通りだね」
今西「しかし、だからこそ無関係でいさせたくない、という気持ちもある」
武内P「な、何を……」
今西「283プロのプロデューサーさん」
シャニP「は、はい」
今西「あなたと千川君には、生き証人になってもらいたい」
シャニP「は? ……い、生き証人?」
今西「あなたのそばにある、その機材のスイッチを押してもらえますか?」
武内P「……ご説明願います、あなたの意図を」
武内P「『過去の清算』という話を額面通りに受け取るならば、
これは私とあなたの問題であり、関係の無い彼を呼び出す理由が無い」
武内P「無論、千川さんをこのような目に遭わせる事も!」
今西「君の言う通りだね」
今西「しかし、だからこそ無関係でいさせたくない、という気持ちもある」
武内P「な、何を……」
今西「283プロのプロデューサーさん」
シャニP「は、はい」
今西「あなたと千川君には、生き証人になってもらいたい」
シャニP「は? ……い、生き証人?」
今西「あなたのそばにある、その機材のスイッチを押してもらえますか?」
769: 2023/02/24(金) 21:17:15.53 ID:QvLQwGsg0
シャニP「この……赤くてデカいスイッチですか?」
今西「そう」
カチッ
ヴィン…!
シャニP「う、うわ!?」
武内P「モニターが……これは……」
『……それでは見事優勝した『TAKE-UC』のスピーチに移りたいと思います。
しかし圧巻のステージでした! ご覧ください、まだ拍手が鳴り止みません!』
『ワアァァァァァァァ…!!! パチパチパチ…!!』
『……あ、えっと……あ、ありがとうございます。
まだその、アタシ達……ていうか、アタシ、実感が無い、っていうか……』
武内P「西城さん……これは、『クリスタルウィンター』の?」
今西「そう」
カチッ
ヴィン…!
シャニP「う、うわ!?」
武内P「モニターが……これは……」
『……それでは見事優勝した『TAKE-UC』のスピーチに移りたいと思います。
しかし圧巻のステージでした! ご覧ください、まだ拍手が鳴り止みません!』
『ワアァァァァァァァ…!!! パチパチパチ…!!』
『……あ、えっと……あ、ありがとうございます。
まだその、アタシ達……ていうか、アタシ、実感が無い、っていうか……』
武内P「西城さん……これは、『クリスタルウィンター』の?」
770: 2023/02/24(金) 21:22:31.63 ID:QvLQwGsg0
今西「中継の模様を映し出しているだけさ」
今西「だが、行いたいのはそれではない」
シャニP「え?」
今西「知らないかね?」
今西「『クリスタルウィンター』の会場であるスターリットドームは、
ライブイベントをはじめとした世界的な情報発信基地として、最新鋭の機能を有している」
今西「そして、このクイーンズゲートドームもまた、
規模こそ譲るものの、スターリットドームに見劣りしない通信設備を有し、そして……」
今西「両ドームの通信は、既に繋がっている」
今西「つまり、ここから送った映像をあちらの会場のモニターに映し出し、
それを全国に発信することだって可能、という訳だ」
武内P「! ……」
『すっごく嬉しいです! 嬉しいんですけど……
アタシや、アタシ達だけの力で勝ち取れたとは思っていません』
『ずっと支え続けてきてくれた人がいて、その……ソイツに、ちゃんと届けたくて……』
今西「だが、行いたいのはそれではない」
シャニP「え?」
今西「知らないかね?」
今西「『クリスタルウィンター』の会場であるスターリットドームは、
ライブイベントをはじめとした世界的な情報発信基地として、最新鋭の機能を有している」
今西「そして、このクイーンズゲートドームもまた、
規模こそ譲るものの、スターリットドームに見劣りしない通信設備を有し、そして……」
今西「両ドームの通信は、既に繋がっている」
今西「つまり、ここから送った映像をあちらの会場のモニターに映し出し、
それを全国に発信することだって可能、という訳だ」
武内P「! ……」
『すっごく嬉しいです! 嬉しいんですけど……
アタシや、アタシ達だけの力で勝ち取れたとは思っていません』
『ずっと支え続けてきてくれた人がいて、その……ソイツに、ちゃんと届けたくて……』
771: 2023/02/24(金) 21:27:01.69 ID:QvLQwGsg0
シャニP「ちょ、ちょっと待ってください!
細かい話は俺にはよく分からないですが……!」
シャニP「今まさに進行している彼女達の晴れ姿を、台無しにしようと言うのですか!?」
武内P「おそらく、それに留まるものでは無いでしょう」
シャニP「えっ……」
武内P「今西部長……最初から、あなたが行うつもりだったのですね」
武内P「有栖川さんや高垣さんではなく、あなたが……」
今西「……我々が行ってきたことだ」
今西「その所業を、アイドルの口から言わせるのは、あまりに忍びない」
シャニP「しょ、所業……?」
今西「……ところで、君は961プロとの“契約”の当事者が自分だけと思っていないかね?」
武内P「え?」
スチャッ
細かい話は俺にはよく分からないですが……!」
シャニP「今まさに進行している彼女達の晴れ姿を、台無しにしようと言うのですか!?」
武内P「おそらく、それに留まるものでは無いでしょう」
シャニP「えっ……」
武内P「今西部長……最初から、あなたが行うつもりだったのですね」
武内P「有栖川さんや高垣さんではなく、あなたが……」
今西「……我々が行ってきたことだ」
今西「その所業を、アイドルの口から言わせるのは、あまりに忍びない」
シャニP「しょ、所業……?」
今西「……ところで、君は961プロとの“契約”の当事者が自分だけと思っていないかね?」
武内P「え?」
スチャッ
772: 2023/02/24(金) 21:28:02.85 ID:QvLQwGsg0
武内P「! 離れて!」ドンッ!
シャニP「うわ!?」
ダァンッ!!
バスッ!
武内P「ッ!! ……ッ」ガクッ
シャニP「!? ちょ、え……えっ!?」
ちひろ「……!」パチッ
武内P「……ぅ…………!」ドサッ
ちひろ「!! ぷ、プロデューサーさん!!」
今西「立場的には、私は君の“先輩”に当たるんだ」
シャニP「うわ!?」
ダァンッ!!
バスッ!
武内P「ッ!! ……ッ」ガクッ
シャニP「!? ちょ、え……えっ!?」
ちひろ「……!」パチッ
武内P「……ぅ…………!」ドサッ
ちひろ「!! ぷ、プロデューサーさん!!」
今西「立場的には、私は君の“先輩”に当たるんだ」
773: 2023/02/24(金) 21:31:04.94 ID:QvLQwGsg0
シャニP「ち、血が!? え、本当に拳銃……!」
ジャキ!
シャニP「うっ…!?」ピタッ
今西「言わずとも分かると思うが、余計な行動は慎んでいただこう」
シャニP「あ、あなたは……何者なんですか」
ちひろ「プロデューサーさん!
しっかりしてください、プロデューサーさんっ!!」
今西「どうして、私がここの設備に精通していると思うかね?」
今西「私も、建造に携わった者の一人だからだ。
このクイーンズゲートドームのね」
武内P「……ッ」カヒュッ…
今西「もっと言えば、有栖川夏葉君をかのオーディションで勝たせた際、
黒井社長は君にこう伝えたはずだ」
今西「今回は“他の者”に依頼する、と」
武内P「……!」
ちひろ「ぶ、部長が手引きしていたんですか……!?」
ジャキ!
シャニP「うっ…!?」ピタッ
今西「言わずとも分かると思うが、余計な行動は慎んでいただこう」
シャニP「あ、あなたは……何者なんですか」
ちひろ「プロデューサーさん!
しっかりしてください、プロデューサーさんっ!!」
今西「どうして、私がここの設備に精通していると思うかね?」
今西「私も、建造に携わった者の一人だからだ。
このクイーンズゲートドームのね」
武内P「……ッ」カヒュッ…
今西「もっと言えば、有栖川夏葉君をかのオーディションで勝たせた際、
黒井社長は君にこう伝えたはずだ」
今西「今回は“他の者”に依頼する、と」
武内P「……!」
ちひろ「ぶ、部長が手引きしていたんですか……!?」
774: 2023/02/24(金) 21:32:44.96 ID:QvLQwGsg0
今西「346と961の間にある“契約”は、昔から続いていたんだ」
今西「だが、私も歳を重ねてしまったし、何より社内での役職もできた。
昔のように、満足な活動ができなくなってね」
今西「“契約”を続けるための後継者が、346側に必要となった」
武内P「…………ま、さか……」
武内P「黒井、社長に…………かのじょ、を……?」
今西「黒井社長に、君と当時の担当アイドルに関する情報を渡したのは、私だ」
今西「……君にはすまない事をしたと思っている」
ちひろ「そんな……」
武内P「………………ッ」ズズッ
シャニP「し、しっかり! 無理しないでください!」
今西「だが、私も歳を重ねてしまったし、何より社内での役職もできた。
昔のように、満足な活動ができなくなってね」
今西「“契約”を続けるための後継者が、346側に必要となった」
武内P「…………ま、さか……」
武内P「黒井、社長に…………かのじょ、を……?」
今西「黒井社長に、君と当時の担当アイドルに関する情報を渡したのは、私だ」
今西「……君にはすまない事をしたと思っている」
ちひろ「そんな……」
武内P「………………ッ」ズズッ
シャニP「し、しっかり! 無理しないでください!」
775: 2023/02/24(金) 21:39:40.48 ID:QvLQwGsg0
今西「このクイーンズゲートドームの地下には、施設の全動力を担う設備室が備わっている。
文字通りの心臓部であり、血管に相当する幹線がドームの至る所に経由している」
今西「普段は過負荷がかからないようセーフティーが機能しているし、
何より全容量での稼働などせずとも十分に施設の運用には支障が無い」
今西「それほど過剰な設備のセーフティーを解除し、一気に臨界点まで稼働させたらどうなると思う?」
武内P「…………」
今西「彼女達のセレモニーが終わったタイミングで、モニターの映像をこちらに切り替える」
今西「そして、私達が重ねてきたことを、公表する……
既に映像データは作成済みだから、それを流すだけだ」
今西「映像が最後まで流れる頃合に……地下の動力が臨界点まで作動し、
このドームは地下から一気に崩れ落ちる」
今西「私と君は、闇に葬られるということだ……忌むべき歴史としてね」
今西「283プロのプロデューサーさん」
今西「あなたは千川君を連れて、このドームから退避してください」
文字通りの心臓部であり、血管に相当する幹線がドームの至る所に経由している」
今西「普段は過負荷がかからないようセーフティーが機能しているし、
何より全容量での稼働などせずとも十分に施設の運用には支障が無い」
今西「それほど過剰な設備のセーフティーを解除し、一気に臨界点まで稼働させたらどうなると思う?」
武内P「…………」
今西「彼女達のセレモニーが終わったタイミングで、モニターの映像をこちらに切り替える」
今西「そして、私達が重ねてきたことを、公表する……
既に映像データは作成済みだから、それを流すだけだ」
今西「映像が最後まで流れる頃合に……地下の動力が臨界点まで作動し、
このドームは地下から一気に崩れ落ちる」
今西「私と君は、闇に葬られるということだ……忌むべき歴史としてね」
今西「283プロのプロデューサーさん」
今西「あなたは千川君を連れて、このドームから退避してください」
776: 2023/02/24(金) 21:40:59.19 ID:QvLQwGsg0
シャニP「い、今西部長……氏ぬってことですか?」
シャニP「あなたもこの人も、氏ななければならない人だとは俺には思えません」
シャニP「彼を慕うアイドル達の事はどうなるんですか!? どうして…!」
武内P「か、まいません……」
シャニP「! プロデューサーさん……」
武内P「いって……ください…………」
今西「……私も同じ気持ちです」
今西「きっと、私も彼も、大罪人として世間には周知される事となるでしょう」
今西「だが、私はともかく、彼は……彼の真実を知る人だけは、どうか残したかった」
今西「だから、あなたと千川君にここへ来てもらったのです」
シャニP「あなたもこの人も、氏ななければならない人だとは俺には思えません」
シャニP「彼を慕うアイドル達の事はどうなるんですか!? どうして…!」
武内P「か、まいません……」
シャニP「! プロデューサーさん……」
武内P「いって……ください…………」
今西「……私も同じ気持ちです」
今西「きっと、私も彼も、大罪人として世間には周知される事となるでしょう」
今西「だが、私はともかく、彼は……彼の真実を知る人だけは、どうか残したかった」
今西「だから、あなたと千川君にここへ来てもらったのです」
777: 2023/02/24(金) 21:43:34.25 ID:QvLQwGsg0
シャニP「……俺は」
ちひろ「どうにも……ならないんですか……?」ポロポロ
今西「アイドル達の未来を守るためには、こうするのが一番合理的だ」
今西「常務には詳しい事情を明かさなかったが……
私の動向を監視しながら、こうして泳がせている当たり、彼女も私の思惑に気づいていたのだろう」
今西「まぁ……会社の不都合を一部の社員が丸ごと被って消えるとなれば、
彼女として止める理由など無いだろうね、ハハハ」ポリポリ
ちひろ「い、いや……ぁ、うぁ……!」
『だから、今はその、なんか離れたトコに行っちゃったんですけど……
もし見ていたら、こう伝えてやりたいんです』
『もっと目の離せないアイドルになってやるから、首を洗って待ってろ、って』
『じゅ、樹里ちゃん、ちょっとそれ言い方が物騒じゃぁ……!』
『うるせーな、良いんだよ。
それくらいガツンと言ってやんなきゃどうせ分かりゃしねぇんだ、あんなヤツ』
『アハハハ…!』
ちひろ「どうにも……ならないんですか……?」ポロポロ
今西「アイドル達の未来を守るためには、こうするのが一番合理的だ」
今西「常務には詳しい事情を明かさなかったが……
私の動向を監視しながら、こうして泳がせている当たり、彼女も私の思惑に気づいていたのだろう」
今西「まぁ……会社の不都合を一部の社員が丸ごと被って消えるとなれば、
彼女として止める理由など無いだろうね、ハハハ」ポリポリ
ちひろ「い、いや……ぁ、うぁ……!」
『だから、今はその、なんか離れたトコに行っちゃったんですけど……
もし見ていたら、こう伝えてやりたいんです』
『もっと目の離せないアイドルになってやるから、首を洗って待ってろ、って』
『じゅ、樹里ちゃん、ちょっとそれ言い方が物騒じゃぁ……!』
『うるせーな、良いんだよ。
それくらいガツンと言ってやんなきゃどうせ分かりゃしねぇんだ、あんなヤツ』
『アハハハ…!』
778: 2023/02/24(金) 21:45:29.33 ID:QvLQwGsg0
今西「……そろそろだな」
ちひろ「そ、そうだ黒井社長! 黒井社長に応援を…!」スチャッ
今西「無駄だよ。
彼らの連絡網は、既にアカウント情報が錯綜して機能不全に陥っている」
今西「このドームに突入すべきなのか、ドームへ侵入者しようとする者を守るのか……
どちらの指示が正しいのかも、もはや彼の部隊には判断がつかない」
ちひろ「う、うぅ……!」
シャニP「……天井社長は、あなたの考えに賛同されたんですね?」
今西「あなたをここへ呼ぶことも含めて、ね」
シャニP「分かりました」
シャニP「千川さん、ここを離れましょう」グッ
ちひろ「い、嫌です! そんなの、私嫌ですっ!!」
シャニP「でも、一つだけ約束させてください、今西部長」
ちひろ「そ、そうだ黒井社長! 黒井社長に応援を…!」スチャッ
今西「無駄だよ。
彼らの連絡網は、既にアカウント情報が錯綜して機能不全に陥っている」
今西「このドームに突入すべきなのか、ドームへ侵入者しようとする者を守るのか……
どちらの指示が正しいのかも、もはや彼の部隊には判断がつかない」
ちひろ「う、うぅ……!」
シャニP「……天井社長は、あなたの考えに賛同されたんですね?」
今西「あなたをここへ呼ぶことも含めて、ね」
シャニP「分かりました」
シャニP「千川さん、ここを離れましょう」グッ
ちひろ「い、嫌です! そんなの、私嫌ですっ!!」
シャニP「でも、一つだけ約束させてください、今西部長」
779: 2023/02/24(金) 21:46:57.69 ID:QvLQwGsg0
シャニP「俺はこんな幕切れが正しい事だとは決して思いません」
シャニP「だから、あなたの事を認めることは出来ません」
シャニP「ですが、俺は俺のやり方であの子達と向き合い、トップアイドルへと導いてみせます」
シャニP「それがきっと、あなた方が望んでいたアイドルの未来であると信じて」
今西「……聞いたかね? 彼の言葉を」
武内P「…………」コクッ
今西「納得したようだ」
シャニP「……失礼します」グイッ
ちひろ「うぁ、あぅぅ……!!」ボロボロ
スタスタ…
シャニP「だから、あなたの事を認めることは出来ません」
シャニP「ですが、俺は俺のやり方であの子達と向き合い、トップアイドルへと導いてみせます」
シャニP「それがきっと、あなた方が望んでいたアイドルの未来であると信じて」
今西「……聞いたかね? 彼の言葉を」
武内P「…………」コクッ
今西「納得したようだ」
シャニP「……失礼します」グイッ
ちひろ「うぁ、あぅぅ……!!」ボロボロ
スタスタ…
780: 2023/02/24(金) 21:49:25.33 ID:QvLQwGsg0
今西「……静かになったね」
武内P「…………」
今西「あと1分ほどで、映像が切り替わる……」
『……えー、なおも興奮冷めやらぬこのスターリットドームですが、
最後にこの方にもコメントをいただく必要があるでしょう』
『高垣楓さん。今回は当初出場予定だった283プロの白瀬咲耶さんから、
急遽バトンを託されての『TAKE-UC』入りだったそうですが、今のお気持ちを』
『はい……これほど非常な精神で、ステージに望んだことはありませんでした』
『疑いなく、私のアイドル人生で生涯記憶に残るものになったと感じています』
『それは、ここにいる樹里ちゃん達『TAKE-UC』の皆さん。
そして、今日会場にお越しいただいたファンの方々……』
『皆さんのおかげで、もう少しだけ私も自分の翼を信じ、羽ばたける気がしました』
『心より感謝を。
ありがとうございます……これを観てくれている、あなたにも』
武内P「…………」
今西「あと1分ほどで、映像が切り替わる……」
『……えー、なおも興奮冷めやらぬこのスターリットドームですが、
最後にこの方にもコメントをいただく必要があるでしょう』
『高垣楓さん。今回は当初出場予定だった283プロの白瀬咲耶さんから、
急遽バトンを託されての『TAKE-UC』入りだったそうですが、今のお気持ちを』
『はい……これほど非常な精神で、ステージに望んだことはありませんでした』
『疑いなく、私のアイドル人生で生涯記憶に残るものになったと感じています』
『それは、ここにいる樹里ちゃん達『TAKE-UC』の皆さん。
そして、今日会場にお越しいただいたファンの方々……』
『皆さんのおかげで、もう少しだけ私も自分の翼を信じ、羽ばたける気がしました』
『心より感謝を。
ありがとうございます……これを観てくれている、あなたにも』
781: 2023/02/24(金) 21:50:06.44 ID:QvLQwGsg0
武内P「た、かがき……さん……」
『ウィンターフェスの優勝者『TAKE-UC』の皆さんでした!
皆さん、改めてどうか惜しみない拍手をお送りください! おめでとうございます!』
『ワアアアアァァァァァァ!!! パチパチパチパチ…!!』
ヴィン…!
武内P「……!」
今西「……始まったようだね」
『ウィンターフェスの優勝者『TAKE-UC』の皆さんでした!
皆さん、改めてどうか惜しみない拍手をお送りください! おめでとうございます!』
『ワアアアアァァァァァァ!!! パチパチパチパチ…!!』
ヴィン…!
武内P「……!」
今西「……始まったようだね」
782: 2023/02/24(金) 21:50:57.75 ID:QvLQwGsg0
~スターリットドーム~
司会者「? あれ?」
ザワザワ…
樹里「何だ?」
凛「あのモニター、急に画面が真っ暗に……」
智代子「あそこだけじゃないよ! 会場中のモニターが……!」
夏葉「何者かにジャックされている……!?」
楓「…………」
ザワザワ…! オイオイ…!
パッ!
『……私は346プロダクションアイドル事業部長、今西と申します』
司会者「? あれ?」
ザワザワ…
樹里「何だ?」
凛「あのモニター、急に画面が真っ暗に……」
智代子「あそこだけじゃないよ! 会場中のモニターが……!」
夏葉「何者かにジャックされている……!?」
楓「…………」
ザワザワ…! オイオイ…!
パッ!
『……私は346プロダクションアイドル事業部長、今西と申します』
783: 2023/02/24(金) 21:51:57.02 ID:QvLQwGsg0
「お、何だ?」
「何か始まったぞ」
ザワザワ…
未央「い、今西部長!?」
卯月「どういう事ですか!? どうして……!」
『この場をお借りして、皆様にお伝えしなくてはならない事があります』
『我が346プロダクションと、黒井祟男氏を代表とする961プロダクションは……』
咲耶「これは……まさか……!?」
『自らの利益を追い求めるために、罪も無い他社のアイドル達や、芸能関係者を……』
「何か始まったぞ」
ザワザワ…
未央「い、今西部長!?」
卯月「どういう事ですか!? どうして……!」
『この場をお借りして、皆様にお伝えしなくてはならない事があります』
『我が346プロダクションと、黒井祟男氏を代表とする961プロダクションは……』
咲耶「これは……まさか……!?」
『自らの利益を追い求めるために、罪も無い他社のアイドル達や、芸能関係者を……』
784: 2023/02/24(金) 21:53:10.93 ID:QvLQwGsg0
ダァンッ!!
今西「!?」
ガィンッ!!
ギィッ ギギー!! ガガガ…!
ブスブス…!
今西「! き、機材が……!」
武内P「はぁ…………はぁ……」スチャッ
今西「拳銃……君は、一体どこでそんなものを……!?」
『ジジッ…! ザザッ!』
『ブツッ!』
今西「!?」
ガィンッ!!
ギィッ ギギー!! ガガガ…!
ブスブス…!
今西「! き、機材が……!」
武内P「はぁ…………はぁ……」スチャッ
今西「拳銃……君は、一体どこでそんなものを……!?」
『ジジッ…! ザザッ!』
『ブツッ!』
785: 2023/02/24(金) 21:53:46.72 ID:QvLQwGsg0
智代子「あ、あれ……?」
卯月「切れ……た?」
武内P「彼女達に……伝えたい事が……」グッ
今西「君は……」
武内P「予備の、回線は……ぐっ…………」ヨロヨロ…
武内P「ありますか……?」
今西「……もう、時間は無いぞ」
今西「臨界は始まっている」スッ
カチッ
パッ!
卯月「切れ……た?」
武内P「彼女達に……伝えたい事が……」グッ
今西「君は……」
武内P「予備の、回線は……ぐっ…………」ヨロヨロ…
武内P「ありますか……?」
今西「……もう、時間は無いぞ」
今西「臨界は始まっている」スッ
カチッ
パッ!
786: 2023/02/24(金) 21:55:53.37 ID:QvLQwGsg0
未央「ん? ……えっ!?」
「え、何だ?」
「男?」
「誰……?」
ザワザワ…
樹里「ぷ、プロデューサー……!?」
『皆さん……さ、西城さん……』
樹里「!」
『申し訳…… ゴォォォ…! ござ……ゴゴゴ…! …せ……ゴゴゴゴ…!』
『どうか…… ゴゴゴゴゴ…!』
「え、何だ?」
「男?」
「誰……?」
ザワザワ…
樹里「ぷ、プロデューサー……!?」
『皆さん……さ、西城さん……』
樹里「!」
『申し訳…… ゴォォォ…! ござ……ゴゴゴ…! …せ……ゴゴゴゴ…!』
『どうか…… ゴゴゴゴゴ…!』
787: 2023/02/24(金) 21:56:20.20 ID:QvLQwGsg0
ゴゴゴゴゴ…!!
今西「律儀だね、君は……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!
武内P「…………」ガクッ
ドドドドドドドドオオォォォーーーー!!!!
プツッ!
今西「律儀だね、君は……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!
武内P「…………」ガクッ
ドドドドドドドドオオォォォーーーー!!!!
プツッ!
788: 2023/02/24(金) 21:58:05.66 ID:QvLQwGsg0
凛「切れ、た……」
咲耶「ぷ、プロデューサー……?」
ザワザワ…!
楓「…………」
樹里「…………何だよ、これ」
樹里「ふ、ふざけ……ふざけんなよ、なぁ……!?」
樹里「ウソだろ? ……プロデューサー…………?」
樹里「プロデューサーッ!!!」
樹里「未央、卯月! アタシのスマホ!! 早くっ!!」ダッ!
咲耶「ぷ、プロデューサー……?」
ザワザワ…!
楓「…………」
樹里「…………何だよ、これ」
樹里「ふ、ふざけ……ふざけんなよ、なぁ……!?」
樹里「ウソだろ? ……プロデューサー…………?」
樹里「プロデューサーッ!!!」
樹里「未央、卯月! アタシのスマホ!! 早くっ!!」ダッ!
789: 2023/02/24(金) 22:01:22.21 ID:QvLQwGsg0
未央「じゅ、ジュリアン落ち着いて! な、何が起きたか…!」
樹里「誰か連絡取れよ!! 何ボサッとしてんだよ!?
どうなってんだよふざっけんな!! アイツどこだよ、さっさと…!!」ツカツカ…!
卯月「樹里ちゃんっ!!」ダキッ!
樹里「は、放せっ! 放せよぉ!!」
樹里「あ、アイツのトコに、行くんだよ……!
何だよ……ウソだ……う、ぅ、ウソだ……ウソだっ……!」ジワ…
卯月「樹里ちゃん……!」
樹里「ウソだ! う、ウソだ……!!」
樹里「どこだよ、プロデューサー……? プロデューサー……!」
樹里「どこ行ったんだよ……!?」
樹里「プロ、でぅ……ぁ、うあ……あ……!!!」
樹里「うああぁ、あぁぁぁ……!!!」ポロポロ
――――
――――――
樹里「誰か連絡取れよ!! 何ボサッとしてんだよ!?
どうなってんだよふざっけんな!! アイツどこだよ、さっさと…!!」ツカツカ…!
卯月「樹里ちゃんっ!!」ダキッ!
樹里「は、放せっ! 放せよぉ!!」
樹里「あ、アイツのトコに、行くんだよ……!
何だよ……ウソだ……う、ぅ、ウソだ……ウソだっ……!」ジワ…
卯月「樹里ちゃん……!」
樹里「ウソだ! う、ウソだ……!!」
樹里「どこだよ、プロデューサー……? プロデューサー……!」
樹里「どこ行ったんだよ……!?」
樹里「プロ、でぅ……ぁ、うあ……あ……!!!」
樹里「うああぁ、あぁぁぁ……!!!」ポロポロ
――――
――――――
790: 2023/02/24(金) 22:07:10.47 ID:QvLQwGsg0
――――――
――――
『先日起きた961プロダクション所有のドーム爆破事故について、
代表の黒井祟男社長はこの日会見を開き、
改めて同社の管理体制に問題は無かったとする見解を明らかにしました』
『……えぇー、こちらの事故調査報告書によりますと、
我がクイーンズゲートドームの爆破の原因につきましては、
地下の設備ルームに急激な負荷がかかり、臨界に達した事が挙げられまして』
『これは通常の管理・運用においては考えられない操作がなされたとのことです。
加えまして、事故が起きた当日、我が961プロの“正規の社員”はこのドームに出入りしておらずぅ!』
『以上のことから導き出される事実は、何者かが故意にッ! 我が施設に侵入し操作した!
つまり事故ではなく、大いに事件性のあるものと考えられましたので、
961プロとして断固! 厳正に! 対処していく次第であります』
『週刊慎重です。黒井社長。
今インターネット上で広がっている動画の件につきまして、コメントをお願いします』
『ハッ! あんなもの、どこの馬の骨か分からぬものが勝手に作った代物でしょう。
出所すら確認できんものに、信憑性の有無を議論することはナンセンスと考えますな』
『しかし、幾人かの芸能関係者からも、これを検証すべきとのご意見が…』
『我が961プロが愉快犯の戯れ事に屈する事は無い!
むしろ名誉毀損でこちらから…!』
――――
『先日起きた961プロダクション所有のドーム爆破事故について、
代表の黒井祟男社長はこの日会見を開き、
改めて同社の管理体制に問題は無かったとする見解を明らかにしました』
『……えぇー、こちらの事故調査報告書によりますと、
我がクイーンズゲートドームの爆破の原因につきましては、
地下の設備ルームに急激な負荷がかかり、臨界に達した事が挙げられまして』
『これは通常の管理・運用においては考えられない操作がなされたとのことです。
加えまして、事故が起きた当日、我が961プロの“正規の社員”はこのドームに出入りしておらずぅ!』
『以上のことから導き出される事実は、何者かが故意にッ! 我が施設に侵入し操作した!
つまり事故ではなく、大いに事件性のあるものと考えられましたので、
961プロとして断固! 厳正に! 対処していく次第であります』
『週刊慎重です。黒井社長。
今インターネット上で広がっている動画の件につきまして、コメントをお願いします』
『ハッ! あんなもの、どこの馬の骨か分からぬものが勝手に作った代物でしょう。
出所すら確認できんものに、信憑性の有無を議論することはナンセンスと考えますな』
『しかし、幾人かの芸能関係者からも、これを検証すべきとのご意見が…』
『我が961プロが愉快犯の戯れ事に屈する事は無い!
むしろ名誉毀損でこちらから…!』
791: 2023/02/24(金) 22:14:31.85 ID:QvLQwGsg0
>とんでもない爆弾案件が出てきたな
>令和最大ぶっちぎりで更新しただろコレ
>実際にいた人なんだっけ? 動画に出てた白髪のオッサン
>自己紹介の通り、346プロダクションアイドル事業部の今西って人で確定らしい
>ドームのネットワークを通じて346のデータクラウドからサルベージされたんだっけ?
出所も信憑性も十分やんけ
>あの歳で部長って凄いの?
>普通に行けば専務とか取締役クラスでもおかしくないし、そうでもなくね?
>最大手で役職就いてる時点でレジェンド定期
>レジェンド(笑
>346のアイドル部門立ち上げたのが本当ならガチレジェンドやろ
>「346プロアイドル事業部長です。今すべてをお話します」
>↑これ系でマジなの初めて見たわ
>楓さんのことも結構言ってたよな
さすがにヤバない? 楓さん見れなくなるんか?
>本当だったら高垣楓どころか、アイドル業界のビジネスモデルが終わる
>この間降臨してた考察班の言ってること当たっとるやんけ
>チョコちゃん回のヤツ?
>あのクッソ意味深な話して実況勢が軒並み混乱したヤツか
>上がってたから見てきたけど、何だこれ……もう答え合わせできてるだろ
>346プロサイドの沈黙が怖すぎる
>令和最大ぶっちぎりで更新しただろコレ
>実際にいた人なんだっけ? 動画に出てた白髪のオッサン
>自己紹介の通り、346プロダクションアイドル事業部の今西って人で確定らしい
>ドームのネットワークを通じて346のデータクラウドからサルベージされたんだっけ?
出所も信憑性も十分やんけ
>あの歳で部長って凄いの?
>普通に行けば専務とか取締役クラスでもおかしくないし、そうでもなくね?
>最大手で役職就いてる時点でレジェンド定期
>レジェンド(笑
>346のアイドル部門立ち上げたのが本当ならガチレジェンドやろ
>「346プロアイドル事業部長です。今すべてをお話します」
>↑これ系でマジなの初めて見たわ
>楓さんのことも結構言ってたよな
さすがにヤバない? 楓さん見れなくなるんか?
>本当だったら高垣楓どころか、アイドル業界のビジネスモデルが終わる
>この間降臨してた考察班の言ってること当たっとるやんけ
>チョコちゃん回のヤツ?
>あのクッソ意味深な話して実況勢が軒並み混乱したヤツか
>上がってたから見てきたけど、何だこれ……もう答え合わせできてるだろ
>346プロサイドの沈黙が怖すぎる
792: 2023/02/24(金) 22:17:15.04 ID:QvLQwGsg0
>樹里ちゃんが大泣きしてたのもヤベー雰囲気出てたよな
>演技に決まってんだろ、全部台本だよこんなの
>演出で事務所のドーム爆破してたらすげーわww
>西城樹里の言ってたプロデューサーって、当日会場で一瞬映ってたヤツ?
>アイツが業界人の頃しやネガキャンとか全部やってたんだよな?
ガチモンの極悪人やんけ
>アイツのせいで一生懸命頑張ってた他のアイドルの子らも日の目見れなくなるのクソすぎ
>そういうレベル超えてるわ、人として絶許
>悪いことするヤツってマジで自分の事しか考えないよな。なんなん?
>ていうかTAKE-UCの子ら、アレから全然出てこないな、大丈夫か?
>事務所から口止めされてんじゃねーの(適当)
>樹里ちゃんまた鬱になってそう
>そりゃゴリ押しの後ろ盾が無くなればギャン泣きもするわな
>まだ言ってんのかお前
>ましてセンターだしな、そら入れ食いさせまくったんだろ
>↑通報した
>今裁判所の開示手続きクッソ早いからな、震えて眠るんやで
>こんだけ誹謗中傷が問題視されてんのにまだやる馬鹿いるんだな
>馬鹿はニュース見ないからな
>素直に寂しいわ、テレビつければ大抵誰かが映ってたし
>まさか西城樹里ロスを感じる時が来るとは……
>も一切流れないの自粛ムードすごいわ
>このまま引退しちゃうのかな……
>演技に決まってんだろ、全部台本だよこんなの
>演出で事務所のドーム爆破してたらすげーわww
>西城樹里の言ってたプロデューサーって、当日会場で一瞬映ってたヤツ?
>アイツが業界人の頃しやネガキャンとか全部やってたんだよな?
ガチモンの極悪人やんけ
>アイツのせいで一生懸命頑張ってた他のアイドルの子らも日の目見れなくなるのクソすぎ
>そういうレベル超えてるわ、人として絶許
>悪いことするヤツってマジで自分の事しか考えないよな。なんなん?
>ていうかTAKE-UCの子ら、アレから全然出てこないな、大丈夫か?
>事務所から口止めされてんじゃねーの(適当)
>樹里ちゃんまた鬱になってそう
>そりゃゴリ押しの後ろ盾が無くなればギャン泣きもするわな
>まだ言ってんのかお前
>ましてセンターだしな、そら入れ食いさせまくったんだろ
>↑通報した
>今裁判所の開示手続きクッソ早いからな、震えて眠るんやで
>こんだけ誹謗中傷が問題視されてんのにまだやる馬鹿いるんだな
>馬鹿はニュース見ないからな
>素直に寂しいわ、テレビつければ大抵誰かが映ってたし
>まさか西城樹里ロスを感じる時が来るとは……
>も一切流れないの自粛ムードすごいわ
>このまま引退しちゃうのかな……
793: 2023/02/24(金) 22:18:56.18 ID:QvLQwGsg0
~346プロ 会議室~
美城「……適性を考慮した結果、
君には渋谷凜とのデュオユニットで活動してもらう事を検討している」パラ…
美城「先日の『TAKE-UC』のステージは、私も感銘を受けた。
それに、お互いに気心の知れた者同士の方が、何かと動きやすいだろう」
美城「優秀なプロデューサーもつけよう。
君に無理をさせるような事は無いはずだ」パラ…
パラ…
美城「……君にとって、悪くない話を提示したつもりだが、いかがだろうか」
樹里「…………」
美城「……なら、君の希望を聞かせてほしい」
美城「君の境遇は理解しているつもりだ。
アイドル事業部の常務として、君の待遇には最大限の配慮をする用意がある」
美城「……適性を考慮した結果、
君には渋谷凜とのデュオユニットで活動してもらう事を検討している」パラ…
美城「先日の『TAKE-UC』のステージは、私も感銘を受けた。
それに、お互いに気心の知れた者同士の方が、何かと動きやすいだろう」
美城「優秀なプロデューサーもつけよう。
君に無理をさせるような事は無いはずだ」パラ…
パラ…
美城「……君にとって、悪くない話を提示したつもりだが、いかがだろうか」
樹里「…………」
美城「……なら、君の希望を聞かせてほしい」
美城「君の境遇は理解しているつもりだ。
アイドル事業部の常務として、君の待遇には最大限の配慮をする用意がある」
794: 2023/02/24(金) 22:22:05.21 ID:QvLQwGsg0
樹里「……じゃあ、聞いてもいいですか」
美城「どうぞ」
樹里「アイツの……あのプロデューサーの事は、どうするつもりなんですか」
美城「…………」
樹里「アンタにしてみりゃ、何も痛いトコなんかねぇよな」
樹里「あの動画の通り……アイツと今西って人が961プロと勝手にやった事にすりゃあよ」
美城「…………」
樹里「沈黙を守ってさえいれば、どうせ黒井社長は遅かれ早かれボロを出す。
ネットの検証が黒井社長のウソを暴いて、いずれ炎上して961プロは窮地に陥る」
樹里「それでズルズルと自滅すりゃ、結果としてアンタら346プロの一人勝ち……
アンタの狙いは、そんなトコだろ」
美城「…………」
美城「どうぞ」
樹里「アイツの……あのプロデューサーの事は、どうするつもりなんですか」
美城「…………」
樹里「アンタにしてみりゃ、何も痛いトコなんかねぇよな」
樹里「あの動画の通り……アイツと今西って人が961プロと勝手にやった事にすりゃあよ」
美城「…………」
樹里「沈黙を守ってさえいれば、どうせ黒井社長は遅かれ早かれボロを出す。
ネットの検証が黒井社長のウソを暴いて、いずれ炎上して961プロは窮地に陥る」
樹里「それでズルズルと自滅すりゃ、結果としてアンタら346プロの一人勝ち……
アンタの狙いは、そんなトコだろ」
美城「…………」
795: 2023/02/24(金) 22:26:16.43 ID:QvLQwGsg0
樹里「ふざけやがって……!」ギリッ
ダンッ!
樹里「アイツを悪者にして、テメェの手を汚さず城の外へ一歩も出ねぇ王様気取りかよ!!」
樹里「アイツを追い詰めたのはアンタらお偉いさんだろうがっ!!」
美城「そうだ」
樹里「! ……」
美城「私とて、このような結末は本意ではない」
美城「だが、私は常務としてこの事務所を、そして社員の生活を守る責務がある」
樹里「だから、切り捨てるってのかよ……!?」
美城「仕事柄、憎まれ役は慣れている。
それが私の仕事であるとも」
樹里「馬鹿にすんじゃねぇよっ!! 大人ぶりやがって!!」
美城「割り切らなければ、私達は前に進めないのも事実だ」
ダンッ!
樹里「アイツを悪者にして、テメェの手を汚さず城の外へ一歩も出ねぇ王様気取りかよ!!」
樹里「アイツを追い詰めたのはアンタらお偉いさんだろうがっ!!」
美城「そうだ」
樹里「! ……」
美城「私とて、このような結末は本意ではない」
美城「だが、私は常務としてこの事務所を、そして社員の生活を守る責務がある」
樹里「だから、切り捨てるってのかよ……!?」
美城「仕事柄、憎まれ役は慣れている。
それが私の仕事であるとも」
樹里「馬鹿にすんじゃねぇよっ!! 大人ぶりやがって!!」
美城「割り切らなければ、私達は前に進めないのも事実だ」
796: 2023/02/24(金) 22:28:32.58 ID:QvLQwGsg0
樹里「……ハッ、簡単に言ってくれるぜ。他人事だと思ってよ」
樹里「アタシの希望を教えろっつったな。聞かせてやる」
樹里「アイツを返せ」
美城「…………」
樹里「アタシの……『TAKE-UC』のプロデューサーはな。
冷蔵庫には変なドリンクしか入ってねぇし、自炊もままならねぇ」
樹里「かと思えば、ハンバーグを弁当に何個入れても空にしてくるし……
バスケをやらせりゃ、信じらんねぇプレーでアタシの度肝を抜いてきやがる」
樹里「それで、淡泊な受け答えしかしなくて……
さん付けなんかやめて、下の名前で呼び捨てにするって、約束してたのに」
樹里「とうとう、一度も呼んでもらえなくて……」
樹里「でも……」
樹里「アグラオネマって鉢植えを、あんま正しくねーけど大切に、
丁寧に愛情を持って育てるようなヤツで……」
樹里「それと同じくらい、アタシの……
アタシ達アイドルの事は、ずっと一番に考えてくれて……」
樹里「自分の事なんかより、よほど大事に……」ツー…
ポタッ
樹里「アタシの希望を教えろっつったな。聞かせてやる」
樹里「アイツを返せ」
美城「…………」
樹里「アタシの……『TAKE-UC』のプロデューサーはな。
冷蔵庫には変なドリンクしか入ってねぇし、自炊もままならねぇ」
樹里「かと思えば、ハンバーグを弁当に何個入れても空にしてくるし……
バスケをやらせりゃ、信じらんねぇプレーでアタシの度肝を抜いてきやがる」
樹里「それで、淡泊な受け答えしかしなくて……
さん付けなんかやめて、下の名前で呼び捨てにするって、約束してたのに」
樹里「とうとう、一度も呼んでもらえなくて……」
樹里「でも……」
樹里「アグラオネマって鉢植えを、あんま正しくねーけど大切に、
丁寧に愛情を持って育てるようなヤツで……」
樹里「それと同じくらい、アタシの……
アタシ達アイドルの事は、ずっと一番に考えてくれて……」
樹里「自分の事なんかより、よほど大事に……」ツー…
ポタッ
797: 2023/02/24(金) 22:31:09.85 ID:QvLQwGsg0
美城「…………」
樹里「そんな……そんな献身的なヤツがさ」
樹里「私利私欲、のため、に……悪いことばっかして……ッ……」
樹里「それで……961と問題を起こして、勝手にし、しん……!」ポロポロ
樹里「あ……うぁ、ぁ……!!」ポロポロ
美城「………」
樹里「そんな……ひっ、ぐ……そんなさ……!」
樹里「そんな酷いヤツだったんだ、って! 世間に報道されて終わるなんてよ!!」
樹里「あんまりじゃねぇか……!!」グッ
樹里「返せよ……」
樹里「アイツを、返せよ」
美城「…………」
樹里「それが出来ねぇなら、せめてアイツは立派なプロデューサーだったんだ、って、
アンタの口から公表しろ」
樹里「そしたら、アンタの条件を飲んでやる」
樹里「そんな……そんな献身的なヤツがさ」
樹里「私利私欲、のため、に……悪いことばっかして……ッ……」
樹里「それで……961と問題を起こして、勝手にし、しん……!」ポロポロ
樹里「あ……うぁ、ぁ……!!」ポロポロ
美城「………」
樹里「そんな……ひっ、ぐ……そんなさ……!」
樹里「そんな酷いヤツだったんだ、って! 世間に報道されて終わるなんてよ!!」
樹里「あんまりじゃねぇか……!!」グッ
樹里「返せよ……」
樹里「アイツを、返せよ」
美城「…………」
樹里「それが出来ねぇなら、せめてアイツは立派なプロデューサーだったんだ、って、
アンタの口から公表しろ」
樹里「そしたら、アンタの条件を飲んでやる」
798: 2023/02/24(金) 22:33:00.20 ID:QvLQwGsg0
美城「…………」
美城「……帰りの交通費にでも使いなさい」スッ
樹里「! ……~~~~ッ!!」ガシッ!
ビリッ!!
美城「…………」
樹里「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
樹里「どんだけコケにすりゃ気が済むんだ……!」
美城「……残念だ」
樹里「アタシはちっともだよ。逆に清々した」
クルッ
樹里「アタシは346のアイドルになんかならねぇよ。絶対にな」
樹里「アイツを……アイツをとことん、ヒドい目に遭わせた所になんか……!」ギリッ
ツカツカ…!
美城「……彼の名誉は、保証できない」
美城「しかし、別の人物の名誉を回復させる段取りは進んでいる」
美城「……帰りの交通費にでも使いなさい」スッ
樹里「! ……~~~~ッ!!」ガシッ!
ビリッ!!
美城「…………」
樹里「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
樹里「どんだけコケにすりゃ気が済むんだ……!」
美城「……残念だ」
樹里「アタシはちっともだよ。逆に清々した」
クルッ
樹里「アタシは346のアイドルになんかならねぇよ。絶対にな」
樹里「アイツを……アイツをとことん、ヒドい目に遭わせた所になんか……!」ギリッ
ツカツカ…!
美城「……彼の名誉は、保証できない」
美城「しかし、別の人物の名誉を回復させる段取りは進んでいる」
799: 2023/02/24(金) 22:35:00.94 ID:QvLQwGsg0
樹里「……!?」ピタッ
美城「君の見立てにも一理ある。
だが、かの問題について、我々346プロが沈黙を貫くことは、本来望ましい事ではない」
美城「その気になれば、この機に乗じて、
多少のリスクを被ってでも961を糾弾した方が、商売敵を一気に潰せるからだ」
美城「それをしない事の交換条件として、我々が961プロ側に要求した事項が一つある」
樹里「……?」
美城「とある一人のアイドルの名誉を、回復するようにと」
美城「961と346の契約のために、過去に犠牲となったアイドル……
かつて彼が担当していたその子が、またステージに立つことができるように」
樹里「……!」
美城「既に一定の報道はなされている。
再びこの事務所に顔を出してくれる日も近いだろう」
美城「君の見立てにも一理ある。
だが、かの問題について、我々346プロが沈黙を貫くことは、本来望ましい事ではない」
美城「その気になれば、この機に乗じて、
多少のリスクを被ってでも961を糾弾した方が、商売敵を一気に潰せるからだ」
美城「それをしない事の交換条件として、我々が961プロ側に要求した事項が一つある」
樹里「……?」
美城「とある一人のアイドルの名誉を、回復するようにと」
美城「961と346の契約のために、過去に犠牲となったアイドル……
かつて彼が担当していたその子が、またステージに立つことができるように」
樹里「……!」
美城「既に一定の報道はなされている。
再びこの事務所に顔を出してくれる日も近いだろう」
800: 2023/02/24(金) 22:48:14.53 ID:QvLQwGsg0
ウィーン…
テクテク…
未央「……あっ、ジュリアン!」
卯月「樹里ちゃん!」タッ
凛「……樹里」
樹里「……皆、悪ぃ」
樹里「やっぱアタシ……ここには居られねぇわ」
凛「うん……何も謝ることなんか、ないよ」フルフル
樹里「でも……!」
テクテク…
未央「……あっ、ジュリアン!」
卯月「樹里ちゃん!」タッ
凛「……樹里」
樹里「……皆、悪ぃ」
樹里「やっぱアタシ……ここには居られねぇわ」
凛「うん……何も謝ることなんか、ないよ」フルフル
樹里「でも……!」
801: 2023/02/24(金) 22:50:10.55 ID:QvLQwGsg0
卯月「樹里ちゃんとは私達、ずっと一緒の友達です。
たとえ同じ事務所でいられなくたって」
未央「そうそう。何かあったら……ううん、何も無くても連絡取り合おうよ!
この未央ちゃん、電話一本ですぐジュリアンのとこに飛んでいっちゃうんだから!」
樹里「ハハ……またお前、そうやって調子の良い……」
未央「それが私の良い所でしょー?」ウリウリ
樹里「ハハ、ハ……」
凛「……そうだ。ねぇ樹里、コレなんだけど」スッ
樹里「あぁ、そうだったな」
卯月「アグラオネマ、ですか」
未央「プロデューサーの部屋に、あったヤツだよね……」
たとえ同じ事務所でいられなくたって」
未央「そうそう。何かあったら……ううん、何も無くても連絡取り合おうよ!
この未央ちゃん、電話一本ですぐジュリアンのとこに飛んでいっちゃうんだから!」
樹里「ハハ……またお前、そうやって調子の良い……」
未央「それが私の良い所でしょー?」ウリウリ
樹里「ハハ、ハ……」
凛「……そうだ。ねぇ樹里、コレなんだけど」スッ
樹里「あぁ、そうだったな」
卯月「アグラオネマ、ですか」
未央「プロデューサーの部屋に、あったヤツだよね……」
802: 2023/02/24(金) 22:56:54.71 ID:QvLQwGsg0
樹里「本当は、アタシが決めることじゃないって、分かってんだけどさ……」
樹里「やっぱコレは……346プロの誰かに、面倒見てもらった方がいいと思うんだ。
花壇かどっかに植えて……ドサクサ紛れみたいで、カッコつかねぇけど」
凛「うん……私も、そう考えてた」
樹里「凛が引き取ってもいいんだぜ?
お前なら、ちゃんと世話してくれそうだしさ」
凛「ううん」フルフル
凛「樹里が引き取らないんだったら……私も、引き取れない」
凛「何ていうか、その……フェアじゃない、でしょ?」
樹里「……何だそりゃ」
凛「ふふっ……さぁ、何だろうね」クスッ
樹里「うるせぇ」ハハッ
樹里「やっぱコレは……346プロの誰かに、面倒見てもらった方がいいと思うんだ。
花壇かどっかに植えて……ドサクサ紛れみたいで、カッコつかねぇけど」
凛「うん……私も、そう考えてた」
樹里「凛が引き取ってもいいんだぜ?
お前なら、ちゃんと世話してくれそうだしさ」
凛「ううん」フルフル
凛「樹里が引き取らないんだったら……私も、引き取れない」
凛「何ていうか、その……フェアじゃない、でしょ?」
樹里「……何だそりゃ」
凛「ふふっ……さぁ、何だろうね」クスッ
樹里「うるせぇ」ハハッ
803: 2023/02/24(金) 22:58:07.24 ID:QvLQwGsg0
~中庭~
テクテク…
樹里「……こんなに広い中庭、あったんだな」
未央「結構さ、日当たりも良いんだよ」
卯月「私もたまに、日向ぼっこしたりしています」
樹里「ふーん……」
凛「どこに植える? 樹里」
樹里「……あそこがいい」スッ
卯月「噴水の……」
未央「おぉー、こりゃ一番目立つ所だねぇ」
凛「……恥ずかしいって、嫌がりそうだけどね」クスッ
樹里「そんくらいがちょうどいいんだよ、コイツには」
テクテク…
樹里「……こんなに広い中庭、あったんだな」
未央「結構さ、日当たりも良いんだよ」
卯月「私もたまに、日向ぼっこしたりしています」
樹里「ふーん……」
凛「どこに植える? 樹里」
樹里「……あそこがいい」スッ
卯月「噴水の……」
未央「おぉー、こりゃ一番目立つ所だねぇ」
凛「……恥ずかしいって、嫌がりそうだけどね」クスッ
樹里「そんくらいがちょうどいいんだよ、コイツには」
804: 2023/02/24(金) 22:59:19.10 ID:QvLQwGsg0
ザクッ ザクッ
樹里「……」ザック ザック
凛「…………」
樹里「そういやさ……今さらだけどよ」ザク ザク…
樹里「寒さに弱いんじゃなかったっけ、これ。
もしかして、外に植えるのって、まずいのか?」
凛「うん……本当はね。
まぁ、最近暖かい日も多くなってきたから、大丈夫かも」
凛「でも……次の冬は、越えられないと思う……」
樹里「それでも……反対しねーのか?
アタシが、ここに植えるの」
凛「……私は、お世話していないから」
凛「今まで世話していた樹里に……口出しできる筋合い、無いよ」
樹里「…………」
ザクッ
樹里「ごめんな……部外者のアタシが、ワガママ言って」ザクザク…
樹里「……」ザック ザック
凛「…………」
樹里「そういやさ……今さらだけどよ」ザク ザク…
樹里「寒さに弱いんじゃなかったっけ、これ。
もしかして、外に植えるのって、まずいのか?」
凛「うん……本当はね。
まぁ、最近暖かい日も多くなってきたから、大丈夫かも」
凛「でも……次の冬は、越えられないと思う……」
樹里「それでも……反対しねーのか?
アタシが、ここに植えるの」
凛「……私は、お世話していないから」
凛「今まで世話していた樹里に……口出しできる筋合い、無いよ」
樹里「…………」
ザクッ
樹里「ごめんな……部外者のアタシが、ワガママ言って」ザクザク…
805: 2023/02/24(金) 23:00:20.39 ID:QvLQwGsg0
凛「部外者なんかじゃ……」
樹里「アタシよりも、お前らの方が付き合い長いだろ」ザッ ザッ…
卯月「…………」
未央「そういうの……関係ないっていうか、さ」
ザクッ…
樹里「……アタシは、何を残してやれたのかな」
樹里「最期、アイツ……何を言いたかったのかな……」
凛「樹里……」
樹里「……ヘッ、なんてな。今さら考えたってしょうがねぇ」
樹里「よっと」スッ
樹里「こんな、感じで……と」ソォー…
樹里「ん? もうちょい掘った方がいいか?
どう思う、凛?」
凛「……私は」
???「あっ! ちょっと待ってぇー!」タタタ!
樹里「アタシよりも、お前らの方が付き合い長いだろ」ザッ ザッ…
卯月「…………」
未央「そういうの……関係ないっていうか、さ」
ザクッ…
樹里「……アタシは、何を残してやれたのかな」
樹里「最期、アイツ……何を言いたかったのかな……」
凛「樹里……」
樹里「……ヘッ、なんてな。今さら考えたってしょうがねぇ」
樹里「よっと」スッ
樹里「こんな、感じで……と」ソォー…
樹里「ん? もうちょい掘った方がいいか?
どう思う、凛?」
凛「……私は」
???「あっ! ちょっと待ってぇー!」タタタ!
806: 2023/02/24(金) 23:05:46.20 ID:QvLQwGsg0
樹里「へ?」
タタタ…!
???「よっこい、しょ! っと!
えへへ、お花のお世話をしてくれてるんだねっ。ありがとう!」
???「うーん、穴はもう少し広い方が良いかなぁ?
ちょっとスコップ貸して」ヒョイッ
樹里「あ……」
???「よっ。ほっ」ザク ザクッ
???「あっ、でもこれ、よく見たらアグラオネマ?」
???「ダメだよ、この子は日当たりの良いお外に植えるのは良くない品種なの。
それに今はまだ寒いから、きっとすぐに枯れちゃう」
卯月「……あなたは」
???「だから、どうしても植えたいんだったら、あそこの、うーん……そう!
春になってから、あの大きなけやきの下に植えてあげると良いんじゃないかなっ」
???「人目にも付きやすいし、木陰で休みながら皆に撫でてもらえたりするかも?
この中庭の新しい人気者になれるかもね、なんて、えへへ♪」
未央「ひょっとして……」
タタタ…!
???「よっこい、しょ! っと!
えへへ、お花のお世話をしてくれてるんだねっ。ありがとう!」
???「うーん、穴はもう少し広い方が良いかなぁ?
ちょっとスコップ貸して」ヒョイッ
樹里「あ……」
???「よっ。ほっ」ザク ザクッ
???「あっ、でもこれ、よく見たらアグラオネマ?」
???「ダメだよ、この子は日当たりの良いお外に植えるのは良くない品種なの。
それに今はまだ寒いから、きっとすぐに枯れちゃう」
卯月「……あなたは」
???「だから、どうしても植えたいんだったら、あそこの、うーん……そう!
春になってから、あの大きなけやきの下に植えてあげると良いんじゃないかなっ」
???「人目にも付きやすいし、木陰で休みながら皆に撫でてもらえたりするかも?
この中庭の新しい人気者になれるかもね、なんて、えへへ♪」
未央「ひょっとして……」
807: 2023/02/24(金) 23:07:24.77 ID:QvLQwGsg0
???「でも、勝手に植えたりしたらちひろさんに怒られちゃうからね。
私の方から許可もらえるか聞いてくる! ちょっと待ってて!」
樹里「いや、いい」
???「ん?」ピタッ
樹里「日当たりの良いトコが……寒いのがNGなのは、知ってる。
けど……コイツは、ここでいいんだ」
樹里「アンタみたいな専門家に言ったら……怒られちまうかもだけど……」
???「ううん、怒んないよっ」ニコッ
樹里「……え?」
凛「…………相葉、夕美」
相葉夕美「この子も、日当たりの良い所が好きみたいっ」
夕美「お花の気持ちが分かってくれる人に面倒見てもらえて、幸せな子だね♪」
樹里「何で……どうして、分かるんだ?」
夕美「そりゃあ、私の選んだ子だもんっ」ニコッ
樹里「!!」
私の方から許可もらえるか聞いてくる! ちょっと待ってて!」
樹里「いや、いい」
???「ん?」ピタッ
樹里「日当たりの良いトコが……寒いのがNGなのは、知ってる。
けど……コイツは、ここでいいんだ」
樹里「アンタみたいな専門家に言ったら……怒られちまうかもだけど……」
???「ううん、怒んないよっ」ニコッ
樹里「……え?」
凛「…………相葉、夕美」
相葉夕美「この子も、日当たりの良い所が好きみたいっ」
夕美「お花の気持ちが分かってくれる人に面倒見てもらえて、幸せな子だね♪」
樹里「何で……どうして、分かるんだ?」
夕美「そりゃあ、私の選んだ子だもんっ」ニコッ
樹里「!!」
808: 2023/02/24(金) 23:08:52.25 ID:QvLQwGsg0
夕美「あの人に、プレゼントしてあげた子だったからね」
樹里「……あ、アタシは」
樹里「アタシは……!」ジワ…!
夕美「あなたが、西城樹里ちゃんだよね?」
樹里「……ずっと、アタシ……アンタに……!」
夕美「あの人と一緒に、ずっとこの子の面倒、見てくれてたんでしょう?」
樹里「ずっとアンタに、会いたくて……!!」ポロポロ
樹里「会って、あや、ぁ……謝らなくちゃ、って……!」
夕美「どうして?」
樹里「アタシは何もできやしなかった!!」
樹里「あの時、無理やりにでもアイツを引き留めていれば……!」
樹里「きっと、こんな事なんか……ごめん、う、ぅ……!!」ボロボロ
樹里「……あ、アタシは」
樹里「アタシは……!」ジワ…!
夕美「あなたが、西城樹里ちゃんだよね?」
樹里「……ずっと、アタシ……アンタに……!」
夕美「あの人と一緒に、ずっとこの子の面倒、見てくれてたんでしょう?」
樹里「ずっとアンタに、会いたくて……!!」ポロポロ
樹里「会って、あや、ぁ……謝らなくちゃ、って……!」
夕美「どうして?」
樹里「アタシは何もできやしなかった!!」
樹里「あの時、無理やりにでもアイツを引き留めていれば……!」
樹里「きっと、こんな事なんか……ごめん、う、ぅ……!!」ボロボロ
809: 2023/02/24(金) 23:10:33.61 ID:QvLQwGsg0
夕美「ううん、許さない」
樹里「!」
夕美「樹里ちゃんはもっと笑っていい人なんだよっ」
樹里「……え」
夕美「あの人だって、きっとそう言っていたでしょう?」
夕美「二言目には、笑顔って言う人なんだから、
きっと樹里ちゃんの泣いてる姿なんて、見たくないはずだよ」
夕美「それに、樹里ちゃんはあの人のそばにいてくれたんだから……」
夕美「きっと私のことで傷ついていたあの人に、親身に寄り添って、
前を向いてもらえるようにしてくれたのが樹里ちゃんだって」
夕美「何となく分かるの。
あなたに会って、こうしてお話をしていると、ひしひしと」スッ
樹里「!」
夕美「樹里ちゃんはもっと笑っていい人なんだよっ」
樹里「……え」
夕美「あの人だって、きっとそう言っていたでしょう?」
夕美「二言目には、笑顔って言う人なんだから、
きっと樹里ちゃんの泣いてる姿なんて、見たくないはずだよ」
夕美「それに、樹里ちゃんはあの人のそばにいてくれたんだから……」
夕美「きっと私のことで傷ついていたあの人に、親身に寄り添って、
前を向いてもらえるようにしてくれたのが樹里ちゃんだって」
夕美「何となく分かるの。
あなたに会って、こうしてお話をしていると、ひしひしと」スッ
810: 2023/02/24(金) 23:12:20.59 ID:QvLQwGsg0
ギュッ
樹里「あ……」
夕美「だから、笑おう?
あの人のためにも、樹里ちゃんのためにも」
夕美「そうしてくれないと、私、許さないんだからっ。なんてね♪」ニコッ
樹里「やめてくれよ……」
樹里「もうそういうの、ウンザリなんだよ……!! アタシは…!」
夕美「あっと、穴ぼこ広げなきゃだねっ。ちょっと待って、もう少しで終わ…」
樹里「許されていいヤツじゃねぇんだよアタシはっ!!」
夕美「…………」
樹里「……ッ」ダッ!
卯月「あ、樹里ちゃん!?」
未央「ジュリアン、どこ行くの!?」
タタタ…!
樹里「あ……」
夕美「だから、笑おう?
あの人のためにも、樹里ちゃんのためにも」
夕美「そうしてくれないと、私、許さないんだからっ。なんてね♪」ニコッ
樹里「やめてくれよ……」
樹里「もうそういうの、ウンザリなんだよ……!! アタシは…!」
夕美「あっと、穴ぼこ広げなきゃだねっ。ちょっと待って、もう少しで終わ…」
樹里「許されていいヤツじゃねぇんだよアタシはっ!!」
夕美「…………」
樹里「……ッ」ダッ!
卯月「あ、樹里ちゃん!?」
未央「ジュリアン、どこ行くの!?」
タタタ…!
811: 2023/02/24(金) 23:19:25.00 ID:QvLQwGsg0
卯月「樹里ちゃん……」
凛「……アンタが、相葉夕美」
夕美「…………」ザック ザック…
夕美「追い詰めるような事、言っちゃったかな……」ザク ザクッ
凛「ううん。でも……」
凛「今は……そっとしておいてあげた方が、いいと思う」
夕美「お花ってね」
凛「?」
夕美「お世話してくれる人に、ちゃんと答えてくれるの」スッ
凛「……」
夕美「逆に放っといたら、すぐに元気を無くして枯れちゃう」ソォー
夕美「もちろん、品種にもよるけどね……っと。こんなもんかな?」ギュッ
夕美「……こんなに立派なアグラオネマ見るの、私、初めてだよ」
夕美「あの人も、樹里ちゃんも……本当に、大事にしてくれてたんだなぁ……」
夕美「皆も出来ると思うんだ……樹里ちゃんに、この子と同じことを」
凛「……アンタが、相葉夕美」
夕美「…………」ザック ザック…
夕美「追い詰めるような事、言っちゃったかな……」ザク ザクッ
凛「ううん。でも……」
凛「今は……そっとしておいてあげた方が、いいと思う」
夕美「お花ってね」
凛「?」
夕美「お世話してくれる人に、ちゃんと答えてくれるの」スッ
凛「……」
夕美「逆に放っといたら、すぐに元気を無くして枯れちゃう」ソォー
夕美「もちろん、品種にもよるけどね……っと。こんなもんかな?」ギュッ
夕美「……こんなに立派なアグラオネマ見るの、私、初めてだよ」
夕美「あの人も、樹里ちゃんも……本当に、大事にしてくれてたんだなぁ……」
夕美「皆も出来ると思うんだ……樹里ちゃんに、この子と同じことを」
812: 2023/02/24(金) 23:20:18.13 ID:QvLQwGsg0
凛「え……?」
夕美「樹里ちゃんを、支えてあげること。元気づけてあげること」
夕美「私では、ちょっと難しかったみたいだけど……
樹里ちゃんと友達でいてくれた、皆なら」
凛「…………」
凛「未央」
未央「へ?」
凛「確か、バスケやったことあるって言ったっけ?」
未央「わ、私?
えぇ、まぁ、部活の助っ人とか。あと、弟とたまに……」
凛「家にバスケボールある?」
未央「あ、ありますけど…」
凛「取ってきて」
未央「へぁ!?」
卯月「り、凛ちゃん?」
夕美「樹里ちゃんを、支えてあげること。元気づけてあげること」
夕美「私では、ちょっと難しかったみたいだけど……
樹里ちゃんと友達でいてくれた、皆なら」
凛「…………」
凛「未央」
未央「へ?」
凛「確か、バスケやったことあるって言ったっけ?」
未央「わ、私?
えぇ、まぁ、部活の助っ人とか。あと、弟とたまに……」
凛「家にバスケボールある?」
未央「あ、ありますけど…」
凛「取ってきて」
未央「へぁ!?」
卯月「り、凛ちゃん?」
813: 2023/02/24(金) 23:21:31.37 ID:QvLQwGsg0
未央「そ、それは構わないけど、私んち結構電車乗り継ぐから時間かかるよ!?」
凛「じゃあタクシーで行って。お金はちひろさんと相談するから」
未央「思い立ったら唐突に頑固だねしぶりんは!?」
未央「でも……何か考えがあるんだよね、しぶりん?」
凛「うん」コクッ
未央「よーし、じゃあ任された!」ダッ!
卯月「あ、未央ちゃん!」
凛「卯月、樹里を追いかけよう!」
卯月「凛ちゃん……はいっ!」ギュッ
夕美「……ありがとう」
凛「きっと何とかする。待ってて」
夕美「うんっ」コクッ
タタタ…
凛「じゃあタクシーで行って。お金はちひろさんと相談するから」
未央「思い立ったら唐突に頑固だねしぶりんは!?」
未央「でも……何か考えがあるんだよね、しぶりん?」
凛「うん」コクッ
未央「よーし、じゃあ任された!」ダッ!
卯月「あ、未央ちゃん!」
凛「卯月、樹里を追いかけよう!」
卯月「凛ちゃん……はいっ!」ギュッ
夕美「……ありがとう」
凛「きっと何とかする。待ってて」
夕美「うんっ」コクッ
タタタ…
814: 2023/02/24(金) 23:22:24.56 ID:QvLQwGsg0
夕美「……よし、じゃあ私は、っと」ヒョイッ
夕美「…………」ザッ ザッ
ちひろ「来てくれてたんですね……」スッ
夕美「……うん、おかげさまで」
ちひろ「ありがとうございます。それと……」
ちひろ「ごめ…」
夕美「言わないで、ちひろさん」
ちひろ「…………」
夕美「……あぁ、樹里ちゃんの気持ち、ちょっと分かるなぁ」
夕美「…………」ザッ ザッ
ちひろ「来てくれてたんですね……」スッ
夕美「……うん、おかげさまで」
ちひろ「ありがとうございます。それと……」
ちひろ「ごめ…」
夕美「言わないで、ちひろさん」
ちひろ「…………」
夕美「……あぁ、樹里ちゃんの気持ち、ちょっと分かるなぁ」
815: 2023/02/24(金) 23:23:38.85 ID:QvLQwGsg0
ちひろ「夕美ちゃん……」
夕美「やっぱり、悲しいな……本当に、ちょっと、ううん……」
夕美「悲しんだり……寂しがった方が、良いのかな」
夕美「樹里ちゃん達みたいに……」
夕美「えへへ……分かんないや……」
ちひろ「強がらなくて、いいんです」
夕美「…………」
ちひろ「あなたの素直な気持ちなんですから……悲しいのも、寂しいのも」
ちひろ「どうか……夕美ちゃんのためにも、我慢しないであげてください」
ツー…
ポタッ
夕美「……うんっ」ポロポロ
夕美「やっぱり、悲しいな……本当に、ちょっと、ううん……」
夕美「悲しんだり……寂しがった方が、良いのかな」
夕美「樹里ちゃん達みたいに……」
夕美「えへへ……分かんないや……」
ちひろ「強がらなくて、いいんです」
夕美「…………」
ちひろ「あなたの素直な気持ちなんですから……悲しいのも、寂しいのも」
ちひろ「どうか……夕美ちゃんのためにも、我慢しないであげてください」
ツー…
ポタッ
夕美「……うんっ」ポロポロ
816: 2023/02/24(金) 23:24:58.76 ID:QvLQwGsg0
タタタ…!
未央「と、とは言ったものの……!」
ブロロロロ…! ププー…!
未央「タクシーなんて、そんな都合良く捕まらないよぉしぶりん!
も、もっと駅の方まで歩かなきゃダメかなぁ……?」
ブロロロロロ…!
キキィッ!
未央「……へ?」
未央(何か、すっごい高そうな車が止まったけど……)
ウィーーン
夏葉「お急ぎかしら? 未央」
未央「と、とは言ったものの……!」
ブロロロロ…! ププー…!
未央「タクシーなんて、そんな都合良く捕まらないよぉしぶりん!
も、もっと駅の方まで歩かなきゃダメかなぁ……?」
ブロロロロロ…!
キキィッ!
未央「……へ?」
未央(何か、すっごい高そうな車が止まったけど……)
ウィーーン
夏葉「お急ぎかしら? 未央」
817: 2023/02/24(金) 23:26:13.87 ID:QvLQwGsg0
未央「な、なつはし!?」
智代子「私もいるよ、未央ちゃん!」ニュッ
未央「チョコまで! 二人ともどうしたの!?」
夏葉「咲耶が楓の説得に向かっていてね。迎えに行く所なのよ」
未央「説得……」
智代子「ほ、ほら。楓さん、その……」
未央「う、うん。分かってる」
未央「引退説……」
未央「一応、同じ事務所だし……色々聞こえてきちゃったりするし」
夏葉「やはり、本当なの?」
未央「普段見かけないような偉い人達が、フロアを大慌てで走り回ってるのを見ちゃうと、ね」
智代子「咲耶ちゃん……楓さんと話、できたのかな……?」
智代子「私もいるよ、未央ちゃん!」ニュッ
未央「チョコまで! 二人ともどうしたの!?」
夏葉「咲耶が楓の説得に向かっていてね。迎えに行く所なのよ」
未央「説得……」
智代子「ほ、ほら。楓さん、その……」
未央「う、うん。分かってる」
未央「引退説……」
未央「一応、同じ事務所だし……色々聞こえてきちゃったりするし」
夏葉「やはり、本当なの?」
未央「普段見かけないような偉い人達が、フロアを大慌てで走り回ってるのを見ちゃうと、ね」
智代子「咲耶ちゃん……楓さんと話、できたのかな……?」
818: 2023/02/24(金) 23:28:24.05 ID:QvLQwGsg0
夏葉「それはそうと、未央はどこへ行くつもりなの?」
未央「えっ? あ、えっと、家に急ぐ用事があって!」
智代子「家? 未央ちゃんの?」
未央「そう! ちょっと忘れ物というか、取りに行きたい物が…!」
夏葉「乗りなさい。送るわ」クイッ
未央「ええっ!? い、いやいや! さくやんと楓さんを迎えに行くんでしょ!?」
夏葉「あの二人の事なら、咲耶に連絡をすれば足りるわよ」
夏葉「咲耶だって、きっと楓との時間を大事にしたいでしょうし」ニコッ
智代子「めくるめく二人きりのアブナイひととき……
あっ、い、今のはちょっと不謹慎でした! 失敬!」ブンブン!
未央「……ありがとう! じゃあお言葉に甘えて!」ガチャッ
ササッ バタン
未央「えっ? あ、えっと、家に急ぐ用事があって!」
智代子「家? 未央ちゃんの?」
未央「そう! ちょっと忘れ物というか、取りに行きたい物が…!」
夏葉「乗りなさい。送るわ」クイッ
未央「ええっ!? い、いやいや! さくやんと楓さんを迎えに行くんでしょ!?」
夏葉「あの二人の事なら、咲耶に連絡をすれば足りるわよ」
夏葉「咲耶だって、きっと楓との時間を大事にしたいでしょうし」ニコッ
智代子「めくるめく二人きりのアブナイひととき……
あっ、い、今のはちょっと不謹慎でした! 失敬!」ブンブン!
未央「……ありがとう! じゃあお言葉に甘えて!」ガチャッ
ササッ バタン
819: 2023/02/24(金) 23:30:04.13 ID:QvLQwGsg0
夏葉「ところで、家まで取りに行きたい物って何?」
未央「あぁ、バスケットボール」カチャッ
未央「何に使うか分かんないけど、しぶりんがすぐに取ってきて、って」
夏葉「そう言われただけで取りに行く未央も、随分とお人好しね」クスッ
未央「なつはしも、でしょ?」ニカッ
夏葉「フッ……ご自宅はどこかしら?
モタモタする気は無いわ! しっかり掴まっていなさい!」グッ!
未央「ちょっ、法定速度は守ってよなつはし!?」
智代子「あ、あの……ちょっといいかな?」スッ
未央「ん?」
夏葉「どうしたの、智代子?」
智代子「か、買えばいいんじゃないかな? って……バスケットボール」
智代子「わざわざ未央ちゃんの家まで行かなくても、その辺のスポーツショップで……」
未央・夏葉「……ッッッ!!?」
智代子「顔ッッッッ!!!」
未央「あぁ、バスケットボール」カチャッ
未央「何に使うか分かんないけど、しぶりんがすぐに取ってきて、って」
夏葉「そう言われただけで取りに行く未央も、随分とお人好しね」クスッ
未央「なつはしも、でしょ?」ニカッ
夏葉「フッ……ご自宅はどこかしら?
モタモタする気は無いわ! しっかり掴まっていなさい!」グッ!
未央「ちょっ、法定速度は守ってよなつはし!?」
智代子「あ、あの……ちょっといいかな?」スッ
未央「ん?」
夏葉「どうしたの、智代子?」
智代子「か、買えばいいんじゃないかな? って……バスケットボール」
智代子「わざわざ未央ちゃんの家まで行かなくても、その辺のスポーツショップで……」
未央・夏葉「……ッッッ!!?」
智代子「顔ッッッッ!!!」
820: 2023/02/24(金) 23:30:47.78 ID:QvLQwGsg0
~駅前~
タタタ…!
凛「はぁ、はぁ……!」タタタ…!
『こっちの方はいません、凛ちゃん!』
凛「うん……もう少し探そう!」
『はいっ!』
凛「くっ……樹里……!」タタタ…!
凛「……!」
凛「あ、あのー!!」
オォォ…? ドヨドヨ…
タタタ…!
凛「はぁ、はぁ……!」タタタ…!
『こっちの方はいません、凛ちゃん!』
凛「うん……もう少し探そう!」
『はいっ!』
凛「くっ……樹里……!」タタタ…!
凛「……!」
凛「あ、あのー!!」
オォォ…? ドヨドヨ…
821: 2023/02/24(金) 23:31:54.61 ID:QvLQwGsg0
「え、ウソ? しぶりんじゃない!?」
「ずっとテレビとか出てなかったよね?」
「制服着てる。オフかな……」
「めっちゃ可愛い~……!」
ザワザワ…!
凛「じゅ、樹里を……西城樹里を探していますっ!!
凛「誰か、樹里を見た人はいませんか!?
こっちの方に走っていったと思うんです!!」
ザワザワ… エェェ…?
凛「すみません! どんな情報でもいいんです!!」
凛「誰か……誰か、西城樹里を知りませんか!?」
ザワザワ…
凛(くっ……反応ナシ、か)
女の子「あ、あの……」スッ
「ずっとテレビとか出てなかったよね?」
「制服着てる。オフかな……」
「めっちゃ可愛い~……!」
ザワザワ…!
凛「じゅ、樹里を……西城樹里を探していますっ!!
凛「誰か、樹里を見た人はいませんか!?
こっちの方に走っていったと思うんです!!」
ザワザワ… エェェ…?
凛「すみません! どんな情報でもいいんです!!」
凛「誰か……誰か、西城樹里を知りませんか!?」
ザワザワ…
凛(くっ……反応ナシ、か)
女の子「あ、あの……」スッ
822: 2023/02/24(金) 23:33:03.73 ID:QvLQwGsg0
凛「!?」クルッ
女の子「ひぇっ! あ、す、すみません…!」
凛「あ、ううん、こちらこそ……何か知っているんですか?」
女の子「もしかしたら、っていうレベルなんですけど……」
女の子「金髪の子が、あっちの方に歩いて行くのが、見えた気がして……」スッ
凛「……行ってみます!」ダッ!
女の子「じゅ、樹里ちゃんは……」
凛「え?」ピタッ
女の子「樹里ちゃん……前に一度、握手してもらったこと、あって……」
女の子「きっと、迷惑かけちゃったのに……樹里ちゃん、すごく優しく応じてくれて」
女の子「ありがとな、って……照れ臭そうに、な、何度も、握り返してくれたんです」
凛「……そうなんだ」ニコッ
女の子「ひぇっ! あ、す、すみません…!」
凛「あ、ううん、こちらこそ……何か知っているんですか?」
女の子「もしかしたら、っていうレベルなんですけど……」
女の子「金髪の子が、あっちの方に歩いて行くのが、見えた気がして……」スッ
凛「……行ってみます!」ダッ!
女の子「じゅ、樹里ちゃんは……」
凛「え?」ピタッ
女の子「樹里ちゃん……前に一度、握手してもらったこと、あって……」
女の子「きっと、迷惑かけちゃったのに……樹里ちゃん、すごく優しく応じてくれて」
女の子「ありがとな、って……照れ臭そうに、な、何度も、握り返してくれたんです」
凛「……そうなんだ」ニコッ
823: 2023/02/24(金) 23:37:30.31 ID:QvLQwGsg0
女の子「樹里ちゃん、応援しています……凛ちゃんも」
女の子「もし困ってるなら……樹里ちゃん、助けてあげてくださいっ」
凛「ありがとう!」ダッ!
タタタ…!
凛「卯月! 道玄坂の方に行って!」タタタ…!
凛「今ツイスタ見たら、それっぽい目撃情報呟いてる人も結構いる!」
『わ、分かりました!』
凛「樹里……!」タタタ…!
――許されていいヤツじゃねぇんだよアタシはっ!!
凛「勝手なこと、言わないでよ……馬鹿……!」
女の子「もし困ってるなら……樹里ちゃん、助けてあげてくださいっ」
凛「ありがとう!」ダッ!
タタタ…!
凛「卯月! 道玄坂の方に行って!」タタタ…!
凛「今ツイスタ見たら、それっぽい目撃情報呟いてる人も結構いる!」
『わ、分かりました!』
凛「樹里……!」タタタ…!
――許されていいヤツじゃねぇんだよアタシはっ!!
凛「勝手なこと、言わないでよ……馬鹿……!」
824: 2023/02/24(金) 23:38:54.16 ID:QvLQwGsg0
~夏葉の車~
ブロロロロロ…!
未央「うええぇぇっ!? し、しぶりん何してんの!?」ギョッ!?
智代子「ツイスタですごい拡散されてるね、凛ちゃんが駅前で大声上げてる動画」
夏葉「ふふ、凛もやるわね」
未央「笑ってる場合じゃないってなつはし!
一応私達、事務所から謹慎っていうか自粛命令みたいなの出てるんだよ!?」
未央「こんなに目立っちゃう事したら、どんなお咎めが待っているか…!」ハラハラ…!
夏葉「それでも、樹里のためを思っての行動なのでしょう?」
夏葉「……敵わないわね、凛には」フッ
智代子「ん? どうしたの、夏葉ちゃん?」
夏葉「何でも無いわ」
ブロロロロロ…!
未央「うええぇぇっ!? し、しぶりん何してんの!?」ギョッ!?
智代子「ツイスタですごい拡散されてるね、凛ちゃんが駅前で大声上げてる動画」
夏葉「ふふ、凛もやるわね」
未央「笑ってる場合じゃないってなつはし!
一応私達、事務所から謹慎っていうか自粛命令みたいなの出てるんだよ!?」
未央「こんなに目立っちゃう事したら、どんなお咎めが待っているか…!」ハラハラ…!
夏葉「それでも、樹里のためを思っての行動なのでしょう?」
夏葉「……敵わないわね、凛には」フッ
智代子「ん? どうしたの、夏葉ちゃん?」
夏葉「何でも無いわ」
825: 2023/02/24(金) 23:40:14.36 ID:QvLQwGsg0
~カフェ~
店員「有栖川様よりお聞きしております。ごゆっくりどうぞ」カチャッ
咲耶「どうも」
スタスタ…
咲耶「聞いての通り、夏葉から教えてもらったお店なんだ」
咲耶「ここなら、人目を気にせずゆっくりアナタと話ができると思ってね」
楓「…………」
咲耶「お酒が好きなのは聞いている。だが、生憎私は未成年だからね」フッ
咲耶「それとも、お酒が入っていた方が、アナタの素直な気持ちを聴けただろうか」
店員「有栖川様よりお聞きしております。ごゆっくりどうぞ」カチャッ
咲耶「どうも」
スタスタ…
咲耶「聞いての通り、夏葉から教えてもらったお店なんだ」
咲耶「ここなら、人目を気にせずゆっくりアナタと話ができると思ってね」
楓「…………」
咲耶「お酒が好きなのは聞いている。だが、生憎私は未成年だからね」フッ
咲耶「それとも、お酒が入っていた方が、アナタの素直な気持ちを聴けただろうか」
826: 2023/02/24(金) 23:41:25.31 ID:QvLQwGsg0
楓「…………」
咲耶「……本題に入ろう」
咲耶「楓……アイドルを辞める意向があるというのは、本当かい?」
楓「……今西部長は、346プロのアイドル事業部を立ち上げた人でした」
楓「第一期のメンバーに、私もお声がけいただいて……」
咲耶「…………」
楓「その際、当時モデル部門にいた私を、スカウトに来たのが……あの人だったんです」
咲耶「プロデューサーが……?」
咲耶「あの人は……かつて、アナタの担当プロデューサーでもあったのかい?」
咲耶「……本題に入ろう」
咲耶「楓……アイドルを辞める意向があるというのは、本当かい?」
楓「……今西部長は、346プロのアイドル事業部を立ち上げた人でした」
楓「第一期のメンバーに、私もお声がけいただいて……」
咲耶「…………」
楓「その際、当時モデル部門にいた私を、スカウトに来たのが……あの人だったんです」
咲耶「プロデューサーが……?」
咲耶「あの人は……かつて、アナタの担当プロデューサーでもあったのかい?」
827: 2023/02/24(金) 23:43:57.64 ID:QvLQwGsg0
楓「右も左も分からない私を、あの人は親身に支えてくれました」
楓「もちろんあの人自身も、アイドル部門は未知の領域で、
四苦八苦されていた所も、あったでしょうけれど……」
楓「不器用ながら、私と向き合ってくれる……とても誠実で真摯な方であると、感じました」
咲耶「…………」
楓「でも……人事異動があって、あの人は私の担当を外されました」
楓「私は大人ですし、一人でもある程度活動はできますから、
若い子達をサポートする方が良い、との判断があったそうです」
楓「それはもっともだと、私も納得しました。
そして、私の後にあの人が担当したのが……」
咲耶「……相葉夕美、だね?」
楓「とても快活で、心根の優しい、良い子でした」
楓「彼女と接した人は皆、笑顔になれる……
私などよりも、ずっとアイドルに向いている、本当に花のような子でした」
楓「もちろんあの人自身も、アイドル部門は未知の領域で、
四苦八苦されていた所も、あったでしょうけれど……」
楓「不器用ながら、私と向き合ってくれる……とても誠実で真摯な方であると、感じました」
咲耶「…………」
楓「でも……人事異動があって、あの人は私の担当を外されました」
楓「私は大人ですし、一人でもある程度活動はできますから、
若い子達をサポートする方が良い、との判断があったそうです」
楓「それはもっともだと、私も納得しました。
そして、私の後にあの人が担当したのが……」
咲耶「……相葉夕美、だね?」
楓「とても快活で、心根の優しい、良い子でした」
楓「彼女と接した人は皆、笑顔になれる……
私などよりも、ずっとアイドルに向いている、本当に花のような子でした」
828: 2023/02/24(金) 23:47:13.91 ID:QvLQwGsg0
楓「……彼女が不幸な事件の被害者となった時、私は……とても悲しみました」
楓「でも……ふと、思ったんです」
咲耶「……?」
楓「彼女に対する嫉妬心は、本当に無かったと言えるのだろうか、と」
楓「あの子さえいなければ、私はまだ、あの人の担当アイドルでいられたのではないか」
楓「その気持ちが、無意識のうちに態度に表れて、どこかへ伝わって誰かに…!」
咲耶「楓っ!」ガタッ!
咲耶「アナタは誰かの不幸を願い、喜べるような人じゃないっ!」
楓「……咲耶ちゃんにそれが、分かるのですか?」
咲耶「え……」
楓「軽々しく……知った風に、言わないで」
楓「私でさえ、自分自身が……もう、分かりません……でも!」ギュッ
楓「私さえいなければ……あの人も……!」
楓「でも……ふと、思ったんです」
咲耶「……?」
楓「彼女に対する嫉妬心は、本当に無かったと言えるのだろうか、と」
楓「あの子さえいなければ、私はまだ、あの人の担当アイドルでいられたのではないか」
楓「その気持ちが、無意識のうちに態度に表れて、どこかへ伝わって誰かに…!」
咲耶「楓っ!」ガタッ!
咲耶「アナタは誰かの不幸を願い、喜べるような人じゃないっ!」
楓「……咲耶ちゃんにそれが、分かるのですか?」
咲耶「え……」
楓「軽々しく……知った風に、言わないで」
楓「私でさえ、自分自身が……もう、分かりません……でも!」ギュッ
楓「私さえいなければ……あの人も……!」
829: 2023/02/24(金) 23:49:29.93 ID:QvLQwGsg0
咲耶「分かるさ」
楓「……安い慰めを、言ってもらいたいのではありません」
咲耶「“安い”だって?」
咲耶「アナタだって知った風に決めつけているじゃないか! 私の気持ちをっ!」
楓「……!」ピクッ
咲耶「……楓の言う通りさ。
私はアナタのことを、私という一方向の視点でしか理解できていない」
咲耶「いや、そもそも誰かを真に理解することなんて、本当は不可能なのかも知れない」
咲耶「だから私達は、寄り添い合おうとすることが出来るんだ、って……
そう想うのは“安い”ことなのかい?」
楓「さ、咲耶ちゃん……」
咲耶「未央からさっき、連絡があった」
咲耶「私と一緒に、来て欲しい所があるんだ、楓」
楓「……安い慰めを、言ってもらいたいのではありません」
咲耶「“安い”だって?」
咲耶「アナタだって知った風に決めつけているじゃないか! 私の気持ちをっ!」
楓「……!」ピクッ
咲耶「……楓の言う通りさ。
私はアナタのことを、私という一方向の視点でしか理解できていない」
咲耶「いや、そもそも誰かを真に理解することなんて、本当は不可能なのかも知れない」
咲耶「だから私達は、寄り添い合おうとすることが出来るんだ、って……
そう想うのは“安い”ことなのかい?」
楓「さ、咲耶ちゃん……」
咲耶「未央からさっき、連絡があった」
咲耶「私と一緒に、来て欲しい所があるんだ、楓」
830: 2023/02/24(金) 23:50:53.74 ID:QvLQwGsg0
~街中~
凛「はぁ……はぁ……!」タタタ…!
「あ、マジでいた!」
「凛ちゃーん!」
「さっき樹里ちゃんもいたよな?」
凛「……!」ピクッ
「え、やっぱあれ樹里ちゃんだったの?」
「番組の企画とかかなぁ……」
凛「ど、どっちですか!?」ズイッ
男A「うわっ!?」
凛「樹里は、どこに……!?」
男B「な、生しぶりんだ……じゃなくて、あ、あっちの方っす」スッ
凛「ありがとうございます!」ダッ!
凛「はぁ……はぁ……!」タタタ…!
「あ、マジでいた!」
「凛ちゃーん!」
「さっき樹里ちゃんもいたよな?」
凛「……!」ピクッ
「え、やっぱあれ樹里ちゃんだったの?」
「番組の企画とかかなぁ……」
凛「ど、どっちですか!?」ズイッ
男A「うわっ!?」
凛「樹里は、どこに……!?」
男B「な、生しぶりんだ……じゃなくて、あ、あっちの方っす」スッ
凛「ありがとうございます!」ダッ!
831: 2023/02/24(金) 23:51:24.97 ID:QvLQwGsg0
トボトボ…
樹里「…………」
樹里「……ちきしょう…………」
子供「あれ?」
樹里「?」ピタッ
子供「おねえちゃん?」
樹里「…………」
樹里「……ちきしょう…………」
子供「あれ?」
樹里「?」ピタッ
子供「おねえちゃん?」
832: 2023/02/24(金) 23:52:36.38 ID:QvLQwGsg0
樹里「……! あ、お前……あん時の迷子か!?」
子供「おねえちゃんだー!」タタタ ダキッ
樹里「わっ! たっ、と……ちょ、どうしたんだよ、ママは一緒じゃねぇのか?」
子供「ううん、あっちでおかいもの」スッ
樹里「はぁ……この間迷子になったばかりだってのに、暢気なもんだな」
子供「おねえちゃんは、まいご?」
樹里「!」ピクッ
子供「……?」ジーッ
樹里「そ……そんなワケねぇだろ」ポリポリ
樹里「ただまぁ、ちょっと、その……気晴らしっつーか」
子供「きばらし?」
樹里「だーもう。いいんだよ気にしなくて」
樹里「ほら、ママが心配するといけねぇから、さっさと帰んな」
子供「おねえちゃんだー!」タタタ ダキッ
樹里「わっ! たっ、と……ちょ、どうしたんだよ、ママは一緒じゃねぇのか?」
子供「ううん、あっちでおかいもの」スッ
樹里「はぁ……この間迷子になったばかりだってのに、暢気なもんだな」
子供「おねえちゃんは、まいご?」
樹里「!」ピクッ
子供「……?」ジーッ
樹里「そ……そんなワケねぇだろ」ポリポリ
樹里「ただまぁ、ちょっと、その……気晴らしっつーか」
子供「きばらし?」
樹里「だーもう。いいんだよ気にしなくて」
樹里「ほら、ママが心配するといけねぇから、さっさと帰んな」
833: 2023/02/24(金) 23:53:40.58 ID:QvLQwGsg0
子供「おねえちゃん、たのしくなさそう?」
樹里「た……?」
子供「たのしいこと、してないの?」
子供「ママがいってた」
子供「かえでさん、っていうアイドルと、おねえちゃんはおんなじだって」
子供「ぼくやみんなをえがおにしてくれる、すごいひとなんだよって」
子供「たのしいこと、たくさんしてもらえてよかったねって」
樹里「……そっか」
樹里「ただ、ごめんな……
今はちょっとおねえちゃん、アイドルはおやすみ中なんだ」ナデナデ
子供「どうして?」
樹里「どうしても」
樹里「た……?」
子供「たのしいこと、してないの?」
子供「ママがいってた」
子供「かえでさん、っていうアイドルと、おねえちゃんはおんなじだって」
子供「ぼくやみんなをえがおにしてくれる、すごいひとなんだよって」
子供「たのしいこと、たくさんしてもらえてよかったねって」
樹里「……そっか」
樹里「ただ、ごめんな……
今はちょっとおねえちゃん、アイドルはおやすみ中なんだ」ナデナデ
子供「どうして?」
樹里「どうしても」
834: 2023/02/24(金) 23:55:23.15 ID:QvLQwGsg0
子供「どうして、たのしいことをしないの?」
子供「アイドルって、たのしくないの?」
樹里「……楽しいさ」
樹里「本当にな……楽しいこと、たくさんやりたいに決まってるよな」
樹里「でも……ハハハ、うーん」
樹里「悪ぃ、ちょっと……説明すんの、難しいや」
子供「?」キョトン
タタタ…!
凛「……!」
凛「樹里っ!!」
子供「アイドルって、たのしくないの?」
樹里「……楽しいさ」
樹里「本当にな……楽しいこと、たくさんやりたいに決まってるよな」
樹里「でも……ハハハ、うーん」
樹里「悪ぃ、ちょっと……説明すんの、難しいや」
子供「?」キョトン
タタタ…!
凛「……!」
凛「樹里っ!!」
835: 2023/02/24(金) 23:55:49.62 ID:QvLQwGsg0
樹里「!?」
ダッ!
子供「あっ」
凛「待って、樹里!!」ダッ!
タタタ…!
タタタ…
樹里「クッソ……はぁ、はぁ……!」
ダッ!
子供「あっ」
凛「待って、樹里!!」ダッ!
タタタ…!
タタタ…
樹里「クッソ……はぁ、はぁ……!」
836: 2023/02/24(金) 23:57:07.04 ID:QvLQwGsg0
凛「……!」タタタ! バッ
ガシッ!
樹里「くっ……!」グッ…!
凛「じゅ、樹里っ……!」グイッ
樹里「放せ……クソ、放せよ!!」ガバッ
バシッ!
凛「うっ! ……ッ!」ガクッ
樹里「!? り、凛っ!」
樹里「わ、悪ぃ……つい、力入っちまって、手が……大丈夫か!?」
凛「……ッ!」スッ
バチンッ!
樹里「ぐぁ、いって!? ……!?」
樹里「な……何すんだよ!」
凛「おあいこだよ」
凛「これで、樹里が私に引け目や負い目を感じる必要なんて、無いよね?」
ガシッ!
樹里「くっ……!」グッ…!
凛「じゅ、樹里っ……!」グイッ
樹里「放せ……クソ、放せよ!!」ガバッ
バシッ!
凛「うっ! ……ッ!」ガクッ
樹里「!? り、凛っ!」
樹里「わ、悪ぃ……つい、力入っちまって、手が……大丈夫か!?」
凛「……ッ!」スッ
バチンッ!
樹里「ぐぁ、いって!? ……!?」
樹里「な……何すんだよ!」
凛「おあいこだよ」
凛「これで、樹里が私に引け目や負い目を感じる必要なんて、無いよね?」
837: 2023/02/24(金) 23:59:03.03 ID:QvLQwGsg0
樹里「……調子乗んな」
樹里「そんなんでチャラにできるほど、アタシのやった事は安かねぇんだよ」
凛「じゃあ、もっとぶてばいいってこと?」スッ
樹里「それで凛の気が済むならな。ふざけやがって」
凛「ふざけた事言ってんのは樹里でしょ」
樹里「あ? 何だと?」ピクッ
凛「私がそんな事して満足するとでも思ってんの?」
凛「殴らせることで気を済ませたいのは、私じゃなくて樹里の方だよね?」
樹里「てめぇ……!」ツカツカ…!
ガッ!
凛「……ッ」グイッ!
樹里「そんなにアタシにケンカ売りてぇかよ!!」
樹里「そんなんでチャラにできるほど、アタシのやった事は安かねぇんだよ」
凛「じゃあ、もっとぶてばいいってこと?」スッ
樹里「それで凛の気が済むならな。ふざけやがって」
凛「ふざけた事言ってんのは樹里でしょ」
樹里「あ? 何だと?」ピクッ
凛「私がそんな事して満足するとでも思ってんの?」
凛「殴らせることで気を済ませたいのは、私じゃなくて樹里の方だよね?」
樹里「てめぇ……!」ツカツカ…!
ガッ!
凛「……ッ」グイッ!
樹里「そんなにアタシにケンカ売りてぇかよ!!」
839: 2023/02/25(土) 00:01:24.49 ID:mUoeDtH10
タタタ…!
卯月「……あ、いた! って、じゅ、樹里ちゃん!?」
凛「そうだと言ったら?」
樹里「もうアタシに構うんじゃねぇってんだよ!!」
樹里「ウンザリだっつってんだろ! 気持ち悪いんだよお前らっ!!」
卯月「……っ!」ビクッ
樹里「! 卯月……」
卯月「じゅ、樹里ちゃん……」
樹里「……チッ……あぁそうだよ、気持ち悪いね」
樹里「今さらそういう上っ面な仲良しこよしなんざ……ウンザリなんだよ」
卯月「……ッ」ウルウル
卯月「……あ、いた! って、じゅ、樹里ちゃん!?」
凛「そうだと言ったら?」
樹里「もうアタシに構うんじゃねぇってんだよ!!」
樹里「ウンザリだっつってんだろ! 気持ち悪いんだよお前らっ!!」
卯月「……っ!」ビクッ
樹里「! 卯月……」
卯月「じゅ、樹里ちゃん……」
樹里「……チッ……あぁそうだよ、気持ち悪いね」
樹里「今さらそういう上っ面な仲良しこよしなんざ……ウンザリなんだよ」
卯月「……ッ」ウルウル
840: 2023/02/25(土) 00:03:21.00 ID:mUoeDtH10
凛「心にも無いこと言って、私達を遠ざけようとしないでよ」
樹里「…………」
凛「来て」ガシッ
樹里「放せ……!」
凛「来てっ!」
樹里「……!?」
凛「プロデューサーに会いたいんでしょ?」
樹里「……ふざけてんのか?」
樹里「アイツはもういねぇ。アタシが…!」
凛「いるっ!」
樹里「ふざけんなっ!! アイツはもう、もういねぇんだよ!!」
樹里「いい加減、目ぇ覚ませっ!!」ガバッ
樹里「…………」
凛「来て」ガシッ
樹里「放せ……!」
凛「来てっ!」
樹里「……!?」
凛「プロデューサーに会いたいんでしょ?」
樹里「……ふざけてんのか?」
樹里「アイツはもういねぇ。アタシが…!」
凛「いるっ!」
樹里「ふざけんなっ!! アイツはもう、もういねぇんだよ!!」
樹里「いい加減、目ぇ覚ませっ!!」ガバッ
841: 2023/02/25(土) 00:04:42.73 ID:mUoeDtH10
パシッ
樹里「!?」
凛「……樹里の方こそ、目、覚ましてよ」
樹里「お前……」
凛「プロデューサーはいる。生きてる……私達の中に、ずっと」
樹里「……ポエムなら勝手にやってろ」
凛「それを誰よりも分かっているのは自分自身だ、って……樹里は気づいてる」
樹里「やめろ……!」
凛「誰よりも許せないのも自分だから、塞ぎ込んでる……
また同じ事をするつもりなの? バスケの時と同じように」
樹里「うるせぇんだよ!! やめろっ!!」
凛「やだ。やめない……!」ジワ…!
樹里「! り、凛……」
樹里「!?」
凛「……樹里の方こそ、目、覚ましてよ」
樹里「お前……」
凛「プロデューサーはいる。生きてる……私達の中に、ずっと」
樹里「……ポエムなら勝手にやってろ」
凛「それを誰よりも分かっているのは自分自身だ、って……樹里は気づいてる」
樹里「やめろ……!」
凛「誰よりも許せないのも自分だから、塞ぎ込んでる……
また同じ事をするつもりなの? バスケの時と同じように」
樹里「うるせぇんだよ!! やめろっ!!」
凛「やだ。やめない……!」ジワ…!
樹里「! り、凛……」
842: 2023/02/25(土) 00:07:09.31 ID:mUoeDtH10
凛「放っておけなんて……構うな、って!」ツー
卯月「凛ちゃん……」
凛「そんな自分勝手なこと、言わないでよ!」
凛「あの人が樹里を放っておけなかったのと同じように、
私だって樹里を放ってなんてできない!」
樹里「!」
凛「ずっと、友達でいさせてよ!」
凛「勝手なこと、言わないでよ……!」
樹里「…………」
凛「……来て。賭けをしよう」
樹里「……? 賭け?」
凛「一緒に公園に来て」
卯月「凛ちゃん……」
凛「そんな自分勝手なこと、言わないでよ!」
凛「あの人が樹里を放っておけなかったのと同じように、
私だって樹里を放ってなんてできない!」
樹里「!」
凛「ずっと、友達でいさせてよ!」
凛「勝手なこと、言わないでよ……!」
樹里「…………」
凛「……来て。賭けをしよう」
樹里「……? 賭け?」
凛「一緒に公園に来て」
843: 2023/02/25(土) 00:09:35.14 ID:mUoeDtH10
~公園~
キュッ! キュキュッ!
ダムッ!
未央「あ、あぁっ!?」
パスッ!
智代子「おぉ~、さすが夏葉ちゃん!」パチパチ
夏葉「……ふぅ、こんな所かしらね」
未央「この未央ちゃんをあっさり抜くとは、やるではないかなつはし」フフン
夏葉「私も、兄と少し嗜んでいた時期はあったから」
楓「…………」
キュッ! キュキュッ!
ダムッ!
未央「あ、あぁっ!?」
パスッ!
智代子「おぉ~、さすが夏葉ちゃん!」パチパチ
夏葉「……ふぅ、こんな所かしらね」
未央「この未央ちゃんをあっさり抜くとは、やるではないかなつはし」フフン
夏葉「私も、兄と少し嗜んでいた時期はあったから」
楓「…………」
844: 2023/02/25(土) 00:10:30.57 ID:mUoeDtH10
咲耶「皆、どうやらお遊びはそこまでのようだ」
一同「!」
楓「……樹里ちゃん」
テクテク…
ザッ
樹里「……皆」
凛「お待たせ」
夏葉「えぇ……待っていたわ」
卯月「あ、未央ちゃん。バスケットボール……」
未央「えへへ。なつはしに買ってもらっちゃった」
一同「!」
楓「……樹里ちゃん」
テクテク…
ザッ
樹里「……皆」
凛「お待たせ」
夏葉「えぇ……待っていたわ」
卯月「あ、未央ちゃん。バスケットボール……」
未央「えへへ。なつはしに買ってもらっちゃった」
845: 2023/02/25(土) 00:11:32.04 ID:mUoeDtH10
夏葉「はい、凛。ボールを」スッ
凛「ありがとう」
樹里「……こんな所で、何しようってんだよ」
樹里「賭けとか言ったな。まさかアタシと1on1でもする気か?」
ダムッ!
凛「私がシュートする」
樹里「……」
凛「もし入ったら、樹里はアイドルを続ける。
入らなかったら……樹里の好きにする」
凛「どう?」
凛「ありがとう」
樹里「……こんな所で、何しようってんだよ」
樹里「賭けとか言ったな。まさかアタシと1on1でもする気か?」
ダムッ!
凛「私がシュートする」
樹里「……」
凛「もし入ったら、樹里はアイドルを続ける。
入らなかったら……樹里の好きにする」
凛「どう?」
846: 2023/02/25(土) 00:13:20.24 ID:mUoeDtH10
樹里「……凛。バスケの経験は?」
凛「学校の体育の時間くらい、かな」
樹里「無理だな」
樹里「アタシでさえ、この距離は一度も入った事がねぇ。
凛だって見たろ? あの日のアタシのシュート」
樹里「お前じゃあ、決められっこねぇよ」
凛「ふーん……賭けに乗った、って事でいいんだよね?」スッ
智代子「え、凛ちゃん……!?」
ダムッ! ダムッ!
樹里「素人が投げて入るような距離じゃねぇ」
凛「分かった」
ダムッ
凛「…………」
卯月「り、凛ちゃん……」
未央「まさか、マジで入れる気……?」
凛「学校の体育の時間くらい、かな」
樹里「無理だな」
樹里「アタシでさえ、この距離は一度も入った事がねぇ。
凛だって見たろ? あの日のアタシのシュート」
樹里「お前じゃあ、決められっこねぇよ」
凛「ふーん……賭けに乗った、って事でいいんだよね?」スッ
智代子「え、凛ちゃん……!?」
ダムッ! ダムッ!
樹里「素人が投げて入るような距離じゃねぇ」
凛「分かった」
ダムッ
凛「…………」
卯月「り、凛ちゃん……」
未央「まさか、マジで入れる気……?」
847: 2023/02/25(土) 00:14:27.15 ID:mUoeDtH10
テクテク…
冬馬「……チッ」
北斗「最近元気が無いじゃないか、冬馬」
翔太「冬馬君、TAKE-UCの大ファンだったもんね。僕も心配だなぁ」
冬馬「なっ!? ち、ちげぇよ! 誰があんなヤツら……!」
シャニP「でも、こうして捜索に手を貸してくれるのは嬉しいよ」
冬馬「だからアンタの用事なんか関係ねえって!」
シャニP「俺も社長から、西城さんを保護するように言われたけど、心当たりのある場所が…」
冬馬「聞けよ、人の話っ!!」
冬馬「ん?」ピタッ
ダムッ ダムッ…
冬馬「……チッ」
北斗「最近元気が無いじゃないか、冬馬」
翔太「冬馬君、TAKE-UCの大ファンだったもんね。僕も心配だなぁ」
冬馬「なっ!? ち、ちげぇよ! 誰があんなヤツら……!」
シャニP「でも、こうして捜索に手を貸してくれるのは嬉しいよ」
冬馬「だからアンタの用事なんか関係ねえって!」
シャニP「俺も社長から、西城さんを保護するように言われたけど、心当たりのある場所が…」
冬馬「聞けよ、人の話っ!!」
冬馬「ん?」ピタッ
ダムッ ダムッ…
848: 2023/02/25(土) 00:16:47.90 ID:mUoeDtH10
翔太「あれ……凛ちゃんと、樹里ちゃん達だ」
冬馬「高垣楓までいるじゃねーか」
シャニP「夏葉達も一緒か……しかし、あんなに勢揃いしていては…」
北斗「えぇ、目立ちすぎる。
誰かが見つけて騒ぎ立てれば、この一帯は混乱するでしょうね」
冬馬「……」チラッ
アハハ…!
女の子A「マジだってほら! 樹里ちゃんと凛ちゃん!」
女の子B「うっそぉ~!? 目撃情報こんなにあるのヤバくない!?」
女の子C「しかも結構近いじゃん! 今もその辺にいたりして」
冬馬「…………」
冬馬「北斗、翔太」
冬馬「高垣楓までいるじゃねーか」
シャニP「夏葉達も一緒か……しかし、あんなに勢揃いしていては…」
北斗「えぇ、目立ちすぎる。
誰かが見つけて騒ぎ立てれば、この一帯は混乱するでしょうね」
冬馬「……」チラッ
アハハ…!
女の子A「マジだってほら! 樹里ちゃんと凛ちゃん!」
女の子B「うっそぉ~!? 目撃情報こんなにあるのヤバくない!?」
女の子C「しかも結構近いじゃん! 今もその辺にいたりして」
冬馬「…………」
冬馬「北斗、翔太」
849: 2023/02/25(土) 00:17:20.21 ID:mUoeDtH10
翔太「オッケー♪」
北斗「お前もよくよく、お人好しだな」フッ
冬馬「そんなんじゃねぇ。
アイツらが俺達より目立つのが許せねぇだけだ」
シャニP「えっ? ど、どうしたんだ皆……?」
冬馬「アンタはさっさとアイツらのトコに行ってこい」プイッ
スタスタ…
シャニP「……?」
北斗「お前もよくよく、お人好しだな」フッ
冬馬「そんなんじゃねぇ。
アイツらが俺達より目立つのが許せねぇだけだ」
シャニP「えっ? ど、どうしたんだ皆……?」
冬馬「アンタはさっさとアイツらのトコに行ってこい」プイッ
スタスタ…
シャニP「……?」
850: 2023/02/25(土) 00:19:13.17 ID:mUoeDtH10
女の子B「絶対いるって! ちょ、ツイスタ見てみよ…!」
女の子A「アハハ、ちょっと興奮しすぎ! 何マジになってんの?」
「「ゲッチュウ!!」」
女の子C「へ……?」ピタッ
冬馬「ちょっとした気まぐれ! だぜ!!」
北斗「往来の皆さん、お騒がせしてすまない」
翔太「僕達ジュピターの、野外ゲリラライブ! あっちでオンステージだよー!!」
女の子達「きゃああぁっ!!?」「え、ジュピター!?」「冬馬クン!!」
冬馬「あっちの広場でやるぜ!! 皆、ついてきな!!」
北斗「はーい、ジュピターを見たい人達はこちらへどうぞー」
翔太「バスケコート使ってる人達の迷惑にならないようにねー♪」フリフリ
キャアァァァ! ガヤガヤ…! ゾロゾロ…!
女の子A「アハハ、ちょっと興奮しすぎ! 何マジになってんの?」
「「ゲッチュウ!!」」
女の子C「へ……?」ピタッ
冬馬「ちょっとした気まぐれ! だぜ!!」
北斗「往来の皆さん、お騒がせしてすまない」
翔太「僕達ジュピターの、野外ゲリラライブ! あっちでオンステージだよー!!」
女の子達「きゃああぁっ!!?」「え、ジュピター!?」「冬馬クン!!」
冬馬「あっちの広場でやるぜ!! 皆、ついてきな!!」
北斗「はーい、ジュピターを見たい人達はこちらへどうぞー」
翔太「バスケコート使ってる人達の迷惑にならないようにねー♪」フリフリ
キャアァァァ! ガヤガヤ…! ゾロゾロ…!
851: 2023/02/25(土) 00:19:53.70 ID:mUoeDtH10
凛「…………」スゥーッ
凛「……」スッ
シュッ!
咲耶「……これは」
夏葉「…………」
楓(全然、届かない……)
スカッ
テンッ テン テン テテテテ…
智代子「あ、あぁ……!」
凛「……」スッ
シュッ!
咲耶「……これは」
夏葉「…………」
楓(全然、届かない……)
スカッ
テンッ テン テン テテテテ…
智代子「あ、あぁ……!」
852: 2023/02/25(土) 00:20:56.58 ID:mUoeDtH10
凛「…………」
卯月「凛ちゃん……」
樹里「………………」
スタスタ
ヒョイッ
樹里「……チッ、ほら見ろ」
凛「樹里……?」
樹里「全然なってねぇな、ったく。そこに直れ」ダムッ
卯月「凛ちゃん……」
樹里「………………」
スタスタ
ヒョイッ
樹里「……チッ、ほら見ろ」
凛「樹里……?」
樹里「全然なってねぇな、ったく。そこに直れ」ダムッ
853: 2023/02/25(土) 00:23:34.63 ID:mUoeDtH10
未央「あ、あれ? ジュリアン……」
凛「なってねぇな、って……これでも、左手は添えたけど」
樹里「他のやるべき事を色々やった上で、最後に“左手は添えるだけ”なんだよ。
凛のは本当にただ左手を添えてるだけじゃねーか」
樹里「いいか? まず膝」パシッ
樹里「ここをちゃんと柔らかく使って、その屈伸の力を上体に伝えんだよ」グッ
凛「うわ、何か本格的…」
樹里「真面目に聞け。その場で屈伸、やってみな」
凛「?」スッ スッ
樹里「体幹は曲げんな。真っ直ぐのまま屈伸」
凛「体幹?」
樹里「上体を地面に対して垂直のまま屈伸しろってこと。こう」スッ スッ
凛「なってねぇな、って……これでも、左手は添えたけど」
樹里「他のやるべき事を色々やった上で、最後に“左手は添えるだけ”なんだよ。
凛のは本当にただ左手を添えてるだけじゃねーか」
樹里「いいか? まず膝」パシッ
樹里「ここをちゃんと柔らかく使って、その屈伸の力を上体に伝えんだよ」グッ
凛「うわ、何か本格的…」
樹里「真面目に聞け。その場で屈伸、やってみな」
凛「?」スッ スッ
樹里「体幹は曲げんな。真っ直ぐのまま屈伸」
凛「体幹?」
樹里「上体を地面に対して垂直のまま屈伸しろってこと。こう」スッ スッ
854: 2023/02/25(土) 00:24:52.52 ID:mUoeDtH10
卯月「……樹里ちゃん」
凛「……」スッ スッ
樹里「うん、まぁいいか。
それで、膝と上体を意識して投げてみな」スッ
樹里「未央っ! ボール!」
未央「は、はい!?」ピシッ
樹里「そこに立って、凛がシュートしたヤツを拾ってくんねぇか」
未央「……あぁ、なるほど! オッケー、ジュリアン!」タタタ!
卯月「未央ちゃん、私も手伝います!」タッ
未央「よーし、じゃあそっちから半分、しまむーお願いね!」
卯月「はいっ!」ギュッ
樹里「ほら、凛。膝からの力を上体へ連動させるように」
凛「う、うん……」
凛「……」スッ スッ
樹里「うん、まぁいいか。
それで、膝と上体を意識して投げてみな」スッ
樹里「未央っ! ボール!」
未央「は、はい!?」ピシッ
樹里「そこに立って、凛がシュートしたヤツを拾ってくんねぇか」
未央「……あぁ、なるほど! オッケー、ジュリアン!」タタタ!
卯月「未央ちゃん、私も手伝います!」タッ
未央「よーし、じゃあそっちから半分、しまむーお願いね!」
卯月「はいっ!」ギュッ
樹里「ほら、凛。膝からの力を上体へ連動させるように」
凛「う、うん……」
855: 2023/02/25(土) 00:26:16.21 ID:mUoeDtH10
凛「……」スッ
シュッ!
スカッ
テンッ テン
未央「ああぁ、まだ届かない……」パシッ
樹里「片手じゃ無理そうだから、両手投げだな」
凛「えっ。でも、バスケって普通片手で皆シュートしてない?
樹里だって片手で……」
樹里「ボースハンドシュートっつって、女バスは両手打ちも普通だよ。
アタシは片手の方がやりやすいってだけ」
樹里「ていうか、リングに届かなきゃ話になんねーだろ」
凛「まぁ、そっか」
樹里「素人が一丁前に口出しすんな。
未央ー、ボール」
未央「あ、はーい、ごめーん!」ヒュッ
シュッ!
スカッ
テンッ テン
未央「ああぁ、まだ届かない……」パシッ
樹里「片手じゃ無理そうだから、両手投げだな」
凛「えっ。でも、バスケって普通片手で皆シュートしてない?
樹里だって片手で……」
樹里「ボースハンドシュートっつって、女バスは両手打ちも普通だよ。
アタシは片手の方がやりやすいってだけ」
樹里「ていうか、リングに届かなきゃ話になんねーだろ」
凛「まぁ、そっか」
樹里「素人が一丁前に口出しすんな。
未央ー、ボール」
未央「あ、はーい、ごめーん!」ヒュッ
856: 2023/02/25(土) 00:27:30.33 ID:mUoeDtH10
樹里「よっ、と」パシッ
樹里「手首を柔らかく、スナップを利かせる感じで打ってみな」スッ
凛「……」スッ
シュッ!
スカッ
卯月「わっ! っとと」パシッ
未央「距離は出てるよ、しぶりーん!」
卯月「樹里ちゃん、パス! えいっ!」ヒュッ
ダムッ
樹里「サンキュー、卯月。はい、次」パシッ スッ
凛「ちょ、ちょっと休ませて…」
樹里「始めたばっかじゃねーか。甘ったれんな、ほら」
樹里「手首を柔らかく、スナップを利かせる感じで打ってみな」スッ
凛「……」スッ
シュッ!
スカッ
卯月「わっ! っとと」パシッ
未央「距離は出てるよ、しぶりーん!」
卯月「樹里ちゃん、パス! えいっ!」ヒュッ
ダムッ
樹里「サンキュー、卯月。はい、次」パシッ スッ
凛「ちょ、ちょっと休ませて…」
樹里「始めたばっかじゃねーか。甘ったれんな、ほら」
857: 2023/02/25(土) 00:29:14.68 ID:mUoeDtH10
樹里「リリースポイントは高めに、山なりの軌道を描く感じで、だぞ」
凛「もう……!」スッ
シュッ!
楓「…………」
智代子「な、何か……いつの間にか、樹里ちゃんのバスケ教室が……?」
夏葉「当初の趣旨と変わっている気がするわね」
咲耶「……だけど、楽しそうだ」フッ
夏葉「そうね、ふふっ」
智代子「えへへ」
楓「…………」
樹里「手首の使い方がブレブレなんだよ。
もっとカチッと固定させろ。じゃないと方向も定まらねぇだろうが」
凛「さっき、手首は柔らかく使えって言ったじゃん」ムスッ
樹里「そ、ソレはソレだよ、うるせぇな! ほら次!」ムッ!
凛「もう……!」スッ
シュッ!
楓「…………」
智代子「な、何か……いつの間にか、樹里ちゃんのバスケ教室が……?」
夏葉「当初の趣旨と変わっている気がするわね」
咲耶「……だけど、楽しそうだ」フッ
夏葉「そうね、ふふっ」
智代子「えへへ」
楓「…………」
樹里「手首の使い方がブレブレなんだよ。
もっとカチッと固定させろ。じゃないと方向も定まらねぇだろうが」
凛「さっき、手首は柔らかく使えって言ったじゃん」ムスッ
樹里「そ、ソレはソレだよ、うるせぇな! ほら次!」ムッ!
858: 2023/02/25(土) 00:32:26.45 ID:mUoeDtH10
楓「樹里ちゃん……」
咲耶「……ねぇ、楓」
咲耶「アナタは言っていたね。
自分さえいなければ、こんな事にはならなかったと」
咲耶「でも、あの二人の姿を見てごらん」
楓「…………」
樹里「だからぁ! 肘を曲げんなっての!」
凛「肘曲げなきゃ投げれないじゃん!」
樹里「変な風に曲げんなっつってんだよ! こう!」
凛「こう?」
樹里「ちげぇよ! 何つーか、真っ直ぐ曲げんの!」
凛「……樹里、教え方下手だね」
樹里「ああっ!?」カチン!
咲耶「……ねぇ、楓」
咲耶「アナタは言っていたね。
自分さえいなければ、こんな事にはならなかったと」
咲耶「でも、あの二人の姿を見てごらん」
楓「…………」
樹里「だからぁ! 肘を曲げんなっての!」
凛「肘曲げなきゃ投げれないじゃん!」
樹里「変な風に曲げんなっつってんだよ! こう!」
凛「こう?」
樹里「ちげぇよ! 何つーか、真っ直ぐ曲げんの!」
凛「……樹里、教え方下手だね」
樹里「ああっ!?」カチン!
859: 2023/02/25(土) 00:34:48.41 ID:mUoeDtH10
咲耶「確かにあのオーディションは、
智代子や夏葉をはじめ、多くの人達を傷つけたのかも知れない」
智代子「……」
咲耶「でも……結果論ではあるけれど、
あの出来事が無かったら、今目の前で起きている事は存在し得なかった」
咲耶「私達が出会い、こうして絆を深め合うことも無かったかも知れない」
咲耶「あの凛と樹里の姿を……アナタは否定できるかい?」
楓「…………」
樹里「貸せ! 手本を見せてやる!」パシッ
樹里「よっ」シュッ!
ガコンッ!
凛「入ってないじゃん」
樹里「お前のよりは数段マシだろうが! 卯月、ボール!」
卯月「はいっ!」ヒュッ
夏葉「……それを言うなら、私の方こそ」
楓「夏葉ちゃん……?」
智代子や夏葉をはじめ、多くの人達を傷つけたのかも知れない」
智代子「……」
咲耶「でも……結果論ではあるけれど、
あの出来事が無かったら、今目の前で起きている事は存在し得なかった」
咲耶「私達が出会い、こうして絆を深め合うことも無かったかも知れない」
咲耶「あの凛と樹里の姿を……アナタは否定できるかい?」
楓「…………」
樹里「貸せ! 手本を見せてやる!」パシッ
樹里「よっ」シュッ!
ガコンッ!
凛「入ってないじゃん」
樹里「お前のよりは数段マシだろうが! 卯月、ボール!」
卯月「はいっ!」ヒュッ
夏葉「……それを言うなら、私の方こそ」
楓「夏葉ちゃん……?」
860: 2023/02/25(土) 00:36:37.10 ID:mUoeDtH10
夏葉「もしあのオーディションで、私がミスをしなければ……」
夏葉「そう思わなかった日は無いわ」
楓「…………」
夏葉「全力を出し切った上で智代子と戦い、勝利を収めたのなら、
きっと私は何も疑うことなく、その合格を受け入れていた」
夏葉「智代子も、きっと必要以上に落ちこむことも無かったでしょうね」
智代子「夏葉ちゃん……」
夏葉「楓……あなたは何も悪くないわ。全て私のせいなのよ」
夏葉「私がミスさえしなければ、誰もあのオーディションで不条理に傷つく人などいなかった」
夏葉「そう。でも……でもね、楓?」ギュッ…!
夏葉「こんなの……到底許される感情でないのは、理解しているつもりよ」
夏葉「とてもロジカルに説明なんてつくものじゃない、だけど……!」
夏葉「そう思わなかった日は無いわ」
楓「…………」
夏葉「全力を出し切った上で智代子と戦い、勝利を収めたのなら、
きっと私は何も疑うことなく、その合格を受け入れていた」
夏葉「智代子も、きっと必要以上に落ちこむことも無かったでしょうね」
智代子「夏葉ちゃん……」
夏葉「楓……あなたは何も悪くないわ。全て私のせいなのよ」
夏葉「私がミスさえしなければ、誰もあのオーディションで不条理に傷つく人などいなかった」
夏葉「そう。でも……でもね、楓?」ギュッ…!
夏葉「こんなの……到底許される感情でないのは、理解しているつもりよ」
夏葉「とてもロジカルに説明なんてつくものじゃない、だけど……!」
861: 2023/02/25(土) 00:40:53.94 ID:mUoeDtH10
夏葉「私には……今流れているこの時を否定することが、とても出来ない」
夏葉「本当に、どうしようもなく自分勝手だけれど、私は……愛おしいの」
夏葉「肯定できない出来事も含めて幾重にも偶然が折り重なった末にある今が、私には……」
樹里「モーションが雑になってきてんぞ! 焦んな!」
凛「はぁ、はぁ……急かしてるの、そっちのクセに……!」
樹里「何か言ったか?
おら、アタシから言われたこと一コずつ整理してみろ」スッ
凛「くっ……
ひ、膝を柔らかくして、上体を真っ直ぐ……手首を柔らかく、でも打つ瞬間は……」
楓「……夏葉ちゃん。それは違います」
楓「夏葉ちゃんがあのオーディションに来てくれたのも、私が原因なんです」
楓「全て私が…!」
智代子「私はっ!」ピョンッ
楓「! ち、智代子ちゃん……」
智代子「私は、自分の意志で346プロのオーディションを受けに来ました!」
夏葉「本当に、どうしようもなく自分勝手だけれど、私は……愛おしいの」
夏葉「肯定できない出来事も含めて幾重にも偶然が折り重なった末にある今が、私には……」
樹里「モーションが雑になってきてんぞ! 焦んな!」
凛「はぁ、はぁ……急かしてるの、そっちのクセに……!」
樹里「何か言ったか?
おら、アタシから言われたこと一コずつ整理してみろ」スッ
凛「くっ……
ひ、膝を柔らかくして、上体を真っ直ぐ……手首を柔らかく、でも打つ瞬間は……」
楓「……夏葉ちゃん。それは違います」
楓「夏葉ちゃんがあのオーディションに来てくれたのも、私が原因なんです」
楓「全て私が…!」
智代子「私はっ!」ピョンッ
楓「! ち、智代子ちゃん……」
智代子「私は、自分の意志で346プロのオーディションを受けに来ました!」
862: 2023/02/25(土) 00:42:50.82 ID:mUoeDtH10
智代子「そりゃあ、楓さんみたいに素敵なアイドルになれたらなーって気持ちもありましたけど、えへへ……でも」
智代子「私がアイドルを目指したのは、楓さんにお願いされたからじゃなくて、
自分でなりたかったからで……」
智代子「あっ!? ちょ、ちょっと今の言い方はナマイキだったかもですけど!
す、すみません!」ペコペコ!
楓「いえ、大丈夫です、お気になさらないで…」
智代子「はい……で、えぇと、確かにあの時は、本当に悲しかったんですけど……
でも、今だから思えることがあるんです」
智代子「本気で一生懸命に頑張っていたから、あれだけ「悲しい!」って気持ちになれたんだ、って」
楓「悲しい気持ちになれた……?」
ガゴッ!
未央「オッケーイ、しぶりん!」パシッ
卯月「あとは方向さえちゃんとなったら、入りそうですっ!」
ヒュッ
樹里「卯月の言う通りだぜ。ほら、もう一踏ん張り」パシッ スッ
凛「はぁ、はぁ……!」
智代子「私がアイドルを目指したのは、楓さんにお願いされたからじゃなくて、
自分でなりたかったからで……」
智代子「あっ!? ちょ、ちょっと今の言い方はナマイキだったかもですけど!
す、すみません!」ペコペコ!
楓「いえ、大丈夫です、お気になさらないで…」
智代子「はい……で、えぇと、確かにあの時は、本当に悲しかったんですけど……
でも、今だから思えることがあるんです」
智代子「本気で一生懸命に頑張っていたから、あれだけ「悲しい!」って気持ちになれたんだ、って」
楓「悲しい気持ちになれた……?」
ガゴッ!
未央「オッケーイ、しぶりん!」パシッ
卯月「あとは方向さえちゃんとなったら、入りそうですっ!」
ヒュッ
樹里「卯月の言う通りだぜ。ほら、もう一踏ん張り」パシッ スッ
凛「はぁ、はぁ……!」
863: 2023/02/25(土) 00:46:39.75 ID:mUoeDtH10
智代子「アレが無かったら、今私はこんなにアイドルの事を、
本気でしっかり考えていなかったんじゃないかなぁって」
智代子「確かに、一時はすっごくアイドルが嫌になったりもしたんですけど……」
智代子「すごく頑張ったから……好きだったからこそ、嫌いになって。
それだけ本気で向き合えるものが、私にはどれだけあるんだろう、って」
智代子「こんなに悲しいのは、何よりもアイドルが好きな証拠なんだって気づけたんです」
智代子「私のために、一生懸命にアイドルを頑張ってくれた樹里ちゃんのおかげで」
楓「智代子ちゃん……」
智代子「えへへ、だから! 私も、夏葉ちゃんと同じ気持ちでありますっ!」ムフン
夏葉「……ありがとう、智代子」
咲耶「“原因”とアナタは言ったけれど……私達にとっては、そうじゃない」
咲耶「アナタは“きっかけ”だったんだ、楓」
楓「……!」
本気でしっかり考えていなかったんじゃないかなぁって」
智代子「確かに、一時はすっごくアイドルが嫌になったりもしたんですけど……」
智代子「すごく頑張ったから……好きだったからこそ、嫌いになって。
それだけ本気で向き合えるものが、私にはどれだけあるんだろう、って」
智代子「こんなに悲しいのは、何よりもアイドルが好きな証拠なんだって気づけたんです」
智代子「私のために、一生懸命にアイドルを頑張ってくれた樹里ちゃんのおかげで」
楓「智代子ちゃん……」
智代子「えへへ、だから! 私も、夏葉ちゃんと同じ気持ちでありますっ!」ムフン
夏葉「……ありがとう、智代子」
咲耶「“原因”とアナタは言ったけれど……私達にとっては、そうじゃない」
咲耶「アナタは“きっかけ”だったんだ、楓」
楓「……!」
864: 2023/02/25(土) 00:52:54.00 ID:mUoeDtH10
ガゴンッ!
樹里「よーし、そうそう! 雰囲気出てるぜ」
凛「ちょ、ちょっと……もう、腕が上がらない……!」ガクッ
ヒュッ パシッ
樹里「いつもこんなのよりずっとハードなレッスンしてるじゃねーか。
頑張れ、ほら」スッ
樹里「大丈夫だ。凛ならやれる」
凛「……もうっ」クスッ
咲耶「アナタはあまりに優しすぎて、臆病で、心の弱い部分も持っているのだろう」
咲耶「だから、自分の行いに正しさを求めている」
咲耶「確かに、アナタや私達が招いたものは、いつも正しいものばかりじゃなかった」
咲耶「だけど……正しさでは測れないものも、きっとあったんだ、楓」
咲耶「アナタが無自覚に弾いた石は、たとえ一時の智代子達を傷つけたとしても、
その石が生んだ波紋は、私達をこの場所に引き寄せた」
咲耶「今の私達が抱いている気持ちのように……決してマイナスばかりなんかじゃない」
樹里「よーし、そうそう! 雰囲気出てるぜ」
凛「ちょ、ちょっと……もう、腕が上がらない……!」ガクッ
ヒュッ パシッ
樹里「いつもこんなのよりずっとハードなレッスンしてるじゃねーか。
頑張れ、ほら」スッ
樹里「大丈夫だ。凛ならやれる」
凛「……もうっ」クスッ
咲耶「アナタはあまりに優しすぎて、臆病で、心の弱い部分も持っているのだろう」
咲耶「だから、自分の行いに正しさを求めている」
咲耶「確かに、アナタや私達が招いたものは、いつも正しいものばかりじゃなかった」
咲耶「だけど……正しさでは測れないものも、きっとあったんだ、楓」
咲耶「アナタが無自覚に弾いた石は、たとえ一時の智代子達を傷つけたとしても、
その石が生んだ波紋は、私達をこの場所に引き寄せた」
咲耶「今の私達が抱いている気持ちのように……決してマイナスばかりなんかじゃない」
865: 2023/02/25(土) 00:59:00.84 ID:mUoeDtH10
咲耶「私達だけじゃない。きっとアナタのファンだって同じさ」
咲耶「アナタの歌声を愛おしいと思わないアイドルファンはどこにもいない。
たとえアナタが言うように、それが作り上げられた虚構の偶像だったとしても」
咲耶「アナタのファンが抱く気持ちに、嘘なんかどこにも無いんだ」
楓「…………」
咲耶「だって……だって、私がそうなのだから……!」
咲耶「今の私達が立っている場所は、マイナスなんかじゃないんだと信じたい」
咲耶「もっと高垣楓を応援したい……寄り添い、肩を並べて、同じ夢を見ていたい」
咲耶「そんな私達の……私の気持ちまで、否定するようなこと、しないでよ……!」
楓「…………ッ」ポロポロ…!
ガゴゴンッ!
卯月「ああぁ~~!! おっしぃ~~!」パシッ
未央「もうほぼ入ってたじゃん今のー! このイジワルリング~~!!」
ヒュッ
樹里「ハハハ。ついてねーな、凛」パシッ
凛「くっ……はぁ、はぁ……!」
咲耶「アナタの歌声を愛おしいと思わないアイドルファンはどこにもいない。
たとえアナタが言うように、それが作り上げられた虚構の偶像だったとしても」
咲耶「アナタのファンが抱く気持ちに、嘘なんかどこにも無いんだ」
楓「…………」
咲耶「だって……だって、私がそうなのだから……!」
咲耶「今の私達が立っている場所は、マイナスなんかじゃないんだと信じたい」
咲耶「もっと高垣楓を応援したい……寄り添い、肩を並べて、同じ夢を見ていたい」
咲耶「そんな私達の……私の気持ちまで、否定するようなこと、しないでよ……!」
楓「…………ッ」ポロポロ…!
ガゴゴンッ!
卯月「ああぁ~~!! おっしぃ~~!」パシッ
未央「もうほぼ入ってたじゃん今のー! このイジワルリング~~!!」
ヒュッ
樹里「ハハハ。ついてねーな、凛」パシッ
凛「くっ……はぁ、はぁ……!」
866: 2023/02/25(土) 00:59:53.00 ID:mUoeDtH10
樹里「でも、逆に言やぁ、運以外の要素はもう出来てる」
凛「……そう、かな」
樹里「あとちょっとだ、凛」スッ
凛「……うん」コクッ
凛「………………」スゥー…
凛「……ッ」スッ
シュッ!
フワッ…
パスッ!
未央「…………ッ!!」パシッ
卯月「は……!」
凛「入った……!」
凛「……そう、かな」
樹里「あとちょっとだ、凛」スッ
凛「……うん」コクッ
凛「………………」スゥー…
凛「……ッ」スッ
シュッ!
フワッ…
パスッ!
未央「…………ッ!!」パシッ
卯月「は……!」
凛「入った……!」
867: 2023/02/25(土) 01:00:55.28 ID:mUoeDtH10
智代子「ぃやったあーー!!」ピョンッ
夏葉「ナイスシュートだったわ、凛!」
咲耶「……」パチパチ
凛「樹里……!」クルッ
樹里「ヘヘッ……やったな、凛」
凛「うん……!」
凛「……樹里」
樹里「ん?」
凛「入ったよ」
凛「私のシュート……入った」
樹里「…………」
夏葉「ナイスシュートだったわ、凛!」
咲耶「……」パチパチ
凛「樹里……!」クルッ
樹里「ヘヘッ……やったな、凛」
凛「うん……!」
凛「……樹里」
樹里「ん?」
凛「入ったよ」
凛「私のシュート……入った」
樹里「…………」
868: 2023/02/25(土) 01:02:53.75 ID:mUoeDtH10
凛「さっきの賭け……樹里も、気づいていたんでしょ?」
凛「私のシュートの回数に、制限なんて無いってこと」
凛「だから、私の勝ち……そうだよね?」
樹里「……いいや、賭けはアタシの勝ちだ」
凛「……」
樹里「だから、アタシは賭けのルールに従った」
樹里「入らなかったから……アタシの好きにしたまでだ」
凛「樹里……」
樹里「弁当の時といい……お前もしたたかなヤツだよな」
樹里「どっちに転んでも、アタシがそうなるように仕向けたんだろ?」
凛「ううん、違うよ」フルフル
凛「樹里なら、自分の気持ちに気づいてくれる……その背中を、私は押したかっただけ」
凛「私のシュートの回数に、制限なんて無いってこと」
凛「だから、私の勝ち……そうだよね?」
樹里「……いいや、賭けはアタシの勝ちだ」
凛「……」
樹里「だから、アタシは賭けのルールに従った」
樹里「入らなかったから……アタシの好きにしたまでだ」
凛「樹里……」
樹里「弁当の時といい……お前もしたたかなヤツだよな」
樹里「どっちに転んでも、アタシがそうなるように仕向けたんだろ?」
凛「ううん、違うよ」フルフル
凛「樹里なら、自分の気持ちに気づいてくれる……その背中を、私は押したかっただけ」
869: 2023/02/25(土) 01:06:51.23 ID:mUoeDtH10
樹里「……ほんとさ」
樹里「本当に……大したお節介焼きだぜ」
樹里「余計なお世話なんだよ……そういうのもう、嫌なんだよ……!」
樹里「嫌だって……思いたいのによ……!」グッ
未央「ジュリアン……」
樹里「どこにもいないんだ……アイツはもう」
樹里「そう自分に言い聞かせて、納得して……受け入れたつもりでいたかった」
樹里「そうするフリして……アタシは、忘れたかった。
逃げたかったんだ」
樹里「大切なものを失うことの辛さから……
アイツのことだって、さ、最初っからさ……!」
樹里「あんなヤツ、最初からいなかったんだ、って……!」ジワ…
凛「樹里……」
樹里「全部……ぜんぶ、忘れたかった!
無かったことすりゃ、アタシは何も失ってないって!!」
樹里「なのによ……!」ポロポロ
樹里「本当に……大したお節介焼きだぜ」
樹里「余計なお世話なんだよ……そういうのもう、嫌なんだよ……!」
樹里「嫌だって……思いたいのによ……!」グッ
未央「ジュリアン……」
樹里「どこにもいないんだ……アイツはもう」
樹里「そう自分に言い聞かせて、納得して……受け入れたつもりでいたかった」
樹里「そうするフリして……アタシは、忘れたかった。
逃げたかったんだ」
樹里「大切なものを失うことの辛さから……
アイツのことだって、さ、最初っからさ……!」
樹里「あんなヤツ、最初からいなかったんだ、って……!」ジワ…
凛「樹里……」
樹里「全部……ぜんぶ、忘れたかった!
無かったことすりゃ、アタシは何も失ってないって!!」
樹里「なのによ……!」ポロポロ
870: 2023/02/25(土) 01:08:21.16 ID:mUoeDtH10
卯月「樹里ちゃん……」
樹里「どうしようもねぇんだよ!! あ、うぁ……ぅ……!」
樹里「アタシ、ずっと目瞑ってるのに、気づけばアイツを探してて!
どこにも見つかんなくって!! 逃げたいのに追っかけて!!」ボロボロ
樹里「忘れたいのに……アイツ、あ、ぁ、い……ひ、ぃ……!!」
樹里「アイツに会いた、て……話、したくて……!」
凛「樹里……」スッ
ダキッ
樹里「うあぁっ、ぁ……! ぃやだ……や、ぁ……!」ボロボロ
凛「いたでしょ、プロデューサー……?」
凛「私達や……樹里の中に、たくさん……たくさんっ」ギュッ
樹里「あぁ……プロデューサー……!」
樹里「プロデューサー……! ひ、あぁぁ……!!」ギュゥ
樹里「どうしようもねぇんだよ!! あ、うぁ……ぅ……!」
樹里「アタシ、ずっと目瞑ってるのに、気づけばアイツを探してて!
どこにも見つかんなくって!! 逃げたいのに追っかけて!!」ボロボロ
樹里「忘れたいのに……アイツ、あ、ぁ、い……ひ、ぃ……!!」
樹里「アイツに会いた、て……話、したくて……!」
凛「樹里……」スッ
ダキッ
樹里「うあぁっ、ぁ……! ぃやだ……や、ぁ……!」ボロボロ
凛「いたでしょ、プロデューサー……?」
凛「私達や……樹里の中に、たくさん……たくさんっ」ギュッ
樹里「あぁ……プロデューサー……!」
樹里「プロデューサー……! ひ、あぁぁ……!!」ギュゥ
871: 2023/02/25(土) 01:09:47.29 ID:mUoeDtH10
凛「寂しいよね…………悲しいよね……
でも、寂しくないよ」
凛「私達だって、寂しいから……!」
凛「樹里の悲しみが、痛いほどに分かるから……!」ギュゥ…!
樹里「ぃやだ…………うぁ、やだ、ぁあ、ああぁぁ……!」ポロポロ
凛「だから、一緒に探していこうよ……プロデューサーとの、思い出の欠片を」
凛「皆と一緒に、たくさん……」
凛「私の中にいるプロデューサーも…………樹里のものだから……」
樹里「プロデューサー……うぁっ! あぁぁ……!」ボロボロ
樹里「プロデューサぁぁぁ……!!」ギュゥ…!
凛「…………」ナデナデ
でも、寂しくないよ」
凛「私達だって、寂しいから……!」
凛「樹里の悲しみが、痛いほどに分かるから……!」ギュゥ…!
樹里「ぃやだ…………うぁ、やだ、ぁあ、ああぁぁ……!」ポロポロ
凛「だから、一緒に探していこうよ……プロデューサーとの、思い出の欠片を」
凛「皆と一緒に、たくさん……」
凛「私の中にいるプロデューサーも…………樹里のものだから……」
樹里「プロデューサー……うぁっ! あぁぁ……!」ボロボロ
樹里「プロデューサぁぁぁ……!!」ギュゥ…!
凛「…………」ナデナデ
872: 2023/02/25(土) 01:11:27.93 ID:mUoeDtH10
楓「樹里ちゃん……」
夏葉「謝ってはダメよ、楓」
楓「……夏葉ちゃん」
智代子「…………」ポロポロ
楓「……はい」
樹里「ヒック……ヒック……!」
樹里「…………」
樹里「……」
スッ
凛「……落ち着いた?」
夏葉「謝ってはダメよ、楓」
楓「……夏葉ちゃん」
智代子「…………」ポロポロ
楓「……はい」
樹里「ヒック……ヒック……!」
樹里「…………」
樹里「……」
スッ
凛「……落ち着いた?」
873: 2023/02/25(土) 01:12:50.43 ID:mUoeDtH10
樹里「……うん。ありがとう、凛」
凛「もう……服がベチャベチャ」クスッ
樹里「うるせぇ」
ザッ
シャニP「……さ、西城さんっ」
樹里「? あ、アンタ……283プロの……」
シャニP「すまない。ちょっと、声を掛けるタイミングが無くて……」
咲耶「もっと早く入ってきてくれて良かったのに」クスッ
シャニP「えっ、き、気づいていたのか、咲耶!?」
夏葉「咲耶だけじゃないわ。当たり前でしょう、ねっ、智代子?」
智代子「もっ、も、もちろん……!」
凛「もう……服がベチャベチャ」クスッ
樹里「うるせぇ」
ザッ
シャニP「……さ、西城さんっ」
樹里「? あ、アンタ……283プロの……」
シャニP「すまない。ちょっと、声を掛けるタイミングが無くて……」
咲耶「もっと早く入ってきてくれて良かったのに」クスッ
シャニP「えっ、き、気づいていたのか、咲耶!?」
夏葉「咲耶だけじゃないわ。当たり前でしょう、ねっ、智代子?」
智代子「もっ、も、もちろん……!」
874: 2023/02/25(土) 01:18:01.71 ID:mUoeDtH10
凛「樹里」
樹里「あぁ、分かってるよ」
シャニP「……君を迎えに来た、西城さん」
シャニP「社長は俺に、君のことを保護するようにと言った」
樹里「保護?」
シャニP「その意図は、俺にもよく分からないのだけど……
でも、それとは関係無く、俺は君に用があったんだ」
樹里「……何だよ」
シャニP「単刀直入に言おう、西城さん」
シャニP「君を283プロのアイドルとして、スカウトさせてほしい」
シャニP「俺は……まだ彼のような立派なプロデューサーではないのかも知れない。
だけど、俺にも託されたものがある」
シャニP「その答えが何なのか、君と一緒に、探していきたいんだ」
樹里「あぁ、分かってるよ」
シャニP「……君を迎えに来た、西城さん」
シャニP「社長は俺に、君のことを保護するようにと言った」
樹里「保護?」
シャニP「その意図は、俺にもよく分からないのだけど……
でも、それとは関係無く、俺は君に用があったんだ」
樹里「……何だよ」
シャニP「単刀直入に言おう、西城さん」
シャニP「君を283プロのアイドルとして、スカウトさせてほしい」
シャニP「俺は……まだ彼のような立派なプロデューサーではないのかも知れない。
だけど、俺にも託されたものがある」
シャニP「その答えが何なのか、君と一緒に、探していきたいんだ」
875: 2023/02/25(土) 01:19:18.88 ID:mUoeDtH10
樹里「いいぜ」
シャニP「えっ!?」
樹里「何で誘った方がビックリしてんだよ」
シャニP「い、いや、あまりにアッサリとしていて……良いのか?」
樹里「むしろアタシの方からお願いしたいと思ってたんだ」
樹里「アイツも、アタシには283プロが合ってるって、言ってたし……」
樹里「さっき、賭けにも“勝っちまった”からな」ニカッ
凛「ふふっ」クスッ
智代子「やったぁ、樹里ちゃん!」
夏葉「こんなに嬉しいことは無いわ、樹里」ニコッ
樹里「ヘッ。なんか……新鮮さはねーけどな」
咲耶「それだけ深め合ったものがあるということさ」バチコーン☆
樹里「やめろってそういうの」
シャニP「えっ!?」
樹里「何で誘った方がビックリしてんだよ」
シャニP「い、いや、あまりにアッサリとしていて……良いのか?」
樹里「むしろアタシの方からお願いしたいと思ってたんだ」
樹里「アイツも、アタシには283プロが合ってるって、言ってたし……」
樹里「さっき、賭けにも“勝っちまった”からな」ニカッ
凛「ふふっ」クスッ
智代子「やったぁ、樹里ちゃん!」
夏葉「こんなに嬉しいことは無いわ、樹里」ニコッ
樹里「ヘッ。なんか……新鮮さはねーけどな」
咲耶「それだけ深め合ったものがあるということさ」バチコーン☆
樹里「やめろってそういうの」
876: 2023/02/25(土) 01:21:05.86 ID:mUoeDtH10
シャニP「ありがとう……これからよろしく頼むよ、西城さん」ペコリ
樹里「樹里だ」
シャニP「えっ?」
樹里「アタシのことは、樹里って呼んでくれよ」
シャニP「あぁ……分かった、樹里」
樹里「……ヘヘッ」
樹里「それと……」クルッ
楓「……? 樹里ちゃん?」
樹里「なぁ、楓さん」
樹里「樹里だ」
シャニP「えっ?」
樹里「アタシのことは、樹里って呼んでくれよ」
シャニP「あぁ……分かった、樹里」
樹里「……ヘヘッ」
樹里「それと……」クルッ
楓「……? 樹里ちゃん?」
樹里「なぁ、楓さん」
877: 2023/02/25(土) 01:23:11.34 ID:mUoeDtH10
樹里「アタシと、賭けをしてみませんか?」
楓「賭け……」
ダムッ!
樹里「さっきの凛と同じ、この位置からアタシがシュートを打つ」
楓「…………」
樹里「……引退の噂があったのは、知っています」
樹里「もしそれが本当だってのなら……
このボールが入ったら、楓さんはアイドルを続けてください」
楓「……入らなかったら、私の好きに、ですか?」
樹里「ハハハ。あぁ、そう」
楓「……樹里ちゃん」
楓「私は……やはり、メディアに全てを打ち明けたいと思います」
楓「賭け……」
ダムッ!
樹里「さっきの凛と同じ、この位置からアタシがシュートを打つ」
楓「…………」
樹里「……引退の噂があったのは、知っています」
樹里「もしそれが本当だってのなら……
このボールが入ったら、楓さんはアイドルを続けてください」
楓「……入らなかったら、私の好きに、ですか?」
樹里「ハハハ。あぁ、そう」
楓「……樹里ちゃん」
楓「私は……やはり、メディアに全てを打ち明けたいと思います」
878: 2023/02/25(土) 01:27:46.82 ID:mUoeDtH10
智代子「えっ……!」
卯月「ちょ、楓さん……!?」
シャニP「……それは、今世間を騒がせているあの動画の内容について、
公式に真偽を言及するという事ですか?」
シャニP「あなたほどの人がそれを発言したら……」
楓「分かっています……私はもう、アイドル業界にいられなくなるかも知れません。
それどころか、多くの人をご迷惑に……」
楓「でも、やはりそれは、ケジメなんです」
咲耶「楓……」
楓「その上で、私は……樹里ちゃんの投げたボールが入る事を、信じたいと思います」
夏葉「……損な性格をしているわね、楓」
未央「でも、楓さんらしい、かな?」
樹里「……一応もう一度、言っときますけど」ダムッ
樹里「アタシ、ここからシュートして入ったこと無いけど、いいんですか?」
卯月「ちょ、楓さん……!?」
シャニP「……それは、今世間を騒がせているあの動画の内容について、
公式に真偽を言及するという事ですか?」
シャニP「あなたほどの人がそれを発言したら……」
楓「分かっています……私はもう、アイドル業界にいられなくなるかも知れません。
それどころか、多くの人をご迷惑に……」
楓「でも、やはりそれは、ケジメなんです」
咲耶「楓……」
楓「その上で、私は……樹里ちゃんの投げたボールが入る事を、信じたいと思います」
夏葉「……損な性格をしているわね、楓」
未央「でも、楓さんらしい、かな?」
樹里「……一応もう一度、言っときますけど」ダムッ
樹里「アタシ、ここからシュートして入ったこと無いけど、いいんですか?」
879: 2023/02/25(土) 01:29:20.41 ID:mUoeDtH10
楓「やる前から結果が分かっているものは、賭けとは言いません」
楓「そうでしょう?」ニコッ
樹里「……ヘヘッ」
樹里「みんな! ゴール下についてくれ!」
凛「うんっ」
未央「ほい来た!」
卯月「任せてください!」
咲耶「私はこちらで良いかな」
智代子「じゃあ私はこの辺で!」
ザザッ
シャニP「まさか……入らなかったボールを処理して、皆で入れようと?」
シャニP「た、確かに“ボールが入ったら”という条件ではあるが……何か、ずる…」
夏葉「プロデューサー! あなたも早く配置につきなさい!」
シャニP「あ、あぁ!」ザッ
楓「そうでしょう?」ニコッ
樹里「……ヘヘッ」
樹里「みんな! ゴール下についてくれ!」
凛「うんっ」
未央「ほい来た!」
卯月「任せてください!」
咲耶「私はこちらで良いかな」
智代子「じゃあ私はこの辺で!」
ザザッ
シャニP「まさか……入らなかったボールを処理して、皆で入れようと?」
シャニP「た、確かに“ボールが入ったら”という条件ではあるが……何か、ずる…」
夏葉「プロデューサー! あなたも早く配置につきなさい!」
シャニP「あ、あぁ!」ザッ
880: 2023/02/25(土) 01:31:13.12 ID:mUoeDtH10
樹里「よし……いいですね?」
楓「はい。お願いします、樹里ちゃん」
樹里「…………」ダムッ ダムッ
樹里(きっと、これから先も……アタシ一人の力じゃ届かねぇんだろうな)
ダムッ
樹里(でも、アタシは一人じゃない)
樹里(皆と一緒だから……アタシは、勝てる)
樹里(どこまでも、羽ばたいていける……)
樹里「…………」
樹里「……」スッ
樹里(そうだろ? プロデューサー)
シュッ!
――――
――――――
楓「はい。お願いします、樹里ちゃん」
樹里「…………」ダムッ ダムッ
樹里(きっと、これから先も……アタシ一人の力じゃ届かねぇんだろうな)
ダムッ
樹里(でも、アタシは一人じゃない)
樹里(皆と一緒だから……アタシは、勝てる)
樹里(どこまでも、羽ばたいていける……)
樹里「…………」
樹里「……」スッ
樹里(そうだろ? プロデューサー)
シュッ!
――――
――――――
881: 2023/02/25(土) 01:36:38.29 ID:mUoeDtH10
――――――
――――
>今日のステージにタケウチ出るんだっけ?
>出るもなにも大トリだぞ、運営も明らかに狙ってやってる
>注目度だけじゃなくて、期待を裏切らない実力を見せてくるのはさすがだわ
>ワイは最初からタケウチが来るって分かってた
>ずっと思ってたんだけどさ
『タケウチ』じゃなくて『タケウチャー』じゃね? どちらかと言うと
>タケちゃん定期
>今さら呼称を覆すのは無理だろ、明らかにタケウチが浸透しすぎた
>実際呼びやすいしな
全国のタケウチさんはネタにされちゃうだろうけど
>カラオケでタケウチの曲を歌わされるタケウチさん続出してそう
>しかしまさか楓さんが復活するとは思わなかったわ
>いや、当たり前やろ
楓さん何も悪いことしてないじゃん
>その辺りは俺らには知る由も無いけどな
>何でもいいよ、これからも上手に俺達を騙してほしいってだけ
>樹里ちゃんも収まる所に収まった感あるわ
>あの子もなんか雰囲気落ち着いたよな
961にいた頃は必氏な感じがしてウザかったけど
>今ではすっかり283プロの良心
>牙を抜かれたどころか、周りに濃いメンツいすぎてツッコミが追いつかない
>胃薬のCM出始めたのほんと草生える
――――
>今日のステージにタケウチ出るんだっけ?
>出るもなにも大トリだぞ、運営も明らかに狙ってやってる
>注目度だけじゃなくて、期待を裏切らない実力を見せてくるのはさすがだわ
>ワイは最初からタケウチが来るって分かってた
>ずっと思ってたんだけどさ
『タケウチ』じゃなくて『タケウチャー』じゃね? どちらかと言うと
>タケちゃん定期
>今さら呼称を覆すのは無理だろ、明らかにタケウチが浸透しすぎた
>実際呼びやすいしな
全国のタケウチさんはネタにされちゃうだろうけど
>カラオケでタケウチの曲を歌わされるタケウチさん続出してそう
>しかしまさか楓さんが復活するとは思わなかったわ
>いや、当たり前やろ
楓さん何も悪いことしてないじゃん
>その辺りは俺らには知る由も無いけどな
>何でもいいよ、これからも上手に俺達を騙してほしいってだけ
>樹里ちゃんも収まる所に収まった感あるわ
>あの子もなんか雰囲気落ち着いたよな
961にいた頃は必氏な感じがしてウザかったけど
>今ではすっかり283プロの良心
>牙を抜かれたどころか、周りに濃いメンツいすぎてツッコミが追いつかない
>胃薬のCM出始めたのほんと草生える
882: 2023/02/25(土) 01:40:31.08 ID:mUoeDtH10
『……さぁ、ここでアイドル・アルティメイト決勝戦にコマを進めた、
その最後のユニットのご紹介になります』
『さぁ見えました、『TAKE-UC HIGHER』!』
『以前行われたクリスタルウィンターにおいて優勝を果たした『TAKE-UC』、
その5名に、283プロの白瀬咲耶さんを加えた6人組のユニットとなります』
『いえ、正確には『TAKE-UC』本来のメンバーには白瀬さんも入っていたのですが、
アクシデントにより急遽346プロの高垣楓さんが代わりのメンバーとなっていたとのことで』
『ある意味では最終進化形と言えるユニットになったということでしょうか』
『ところで、この『TAKE-UC HIGHER』について、
ファンの間でユニークな愛称が流行っているそうですね』
『あぁ、“タケウチ”という』
『ユニット名をローマ字読みした発音から、そう呼ばれていると。
彼女達自身も気に入っているそうですよ』
『さぁ、その“タケウチ”ですが、今日のステージで披露する楽曲は、
メンバーの皆が胸に秘めたある想いがテーマになっているそうです』
その最後のユニットのご紹介になります』
『さぁ見えました、『TAKE-UC HIGHER』!』
『以前行われたクリスタルウィンターにおいて優勝を果たした『TAKE-UC』、
その5名に、283プロの白瀬咲耶さんを加えた6人組のユニットとなります』
『いえ、正確には『TAKE-UC』本来のメンバーには白瀬さんも入っていたのですが、
アクシデントにより急遽346プロの高垣楓さんが代わりのメンバーとなっていたとのことで』
『ある意味では最終進化形と言えるユニットになったということでしょうか』
『ところで、この『TAKE-UC HIGHER』について、
ファンの間でユニークな愛称が流行っているそうですね』
『あぁ、“タケウチ”という』
『ユニット名をローマ字読みした発音から、そう呼ばれていると。
彼女達自身も気に入っているそうですよ』
『さぁ、その“タケウチ”ですが、今日のステージで披露する楽曲は、
メンバーの皆が胸に秘めたある想いがテーマになっているそうです』
883: 2023/02/25(土) 01:43:56.13 ID:mUoeDtH10
ワアアアァァァァァァァァ…!!!
樹里「……またこの花束かよ」ポリポリ
凛「夕美もマメだよね」
夏葉「黄色のラナンキュラス……」
咲耶「花言葉は、「優しい心遣い」」
智代子「見た目といい、樹里ちゃんにピッタリのお花だね!」
樹里「うるせぇ」プイッ
楓「会場の皆さん、お待ちかねのようです」
樹里「……ですね」
樹里「じゃあプロデューサー、行ってくる」
シャニP「あぁ」
シャニP「届けてきてくれ。お前達の笑顔を」
一同「はいっ!!」
樹里「……またこの花束かよ」ポリポリ
凛「夕美もマメだよね」
夏葉「黄色のラナンキュラス……」
咲耶「花言葉は、「優しい心遣い」」
智代子「見た目といい、樹里ちゃんにピッタリのお花だね!」
樹里「うるせぇ」プイッ
楓「会場の皆さん、お待ちかねのようです」
樹里「……ですね」
樹里「じゃあプロデューサー、行ってくる」
シャニP「あぁ」
シャニP「届けてきてくれ。お前達の笑顔を」
一同「はいっ!!」
884: 2023/02/25(土) 01:45:37.53 ID:mUoeDtH10
TAKE-UC HIGHER 【 FUTURITY SMILE 】
――――
ドタドタドタ…!
モバP「こ、こら志希! またそうやってふざけた事を……この、待てっ!」
一ノ瀬志希「ふざけてないよー、からかってるだけー♪」
塩見周子「まーまー。大人しくしといた方がかえってダメージ少ないよ、プロデューサーさん」
モバP「悪いことをする側の理屈じゃないか、それ……」
夕美「こらー、二人とも!
プロデューサーさんを困らせちゃダメって言ったでしょ!」ムンズ
志希「ありゃりゃ、捕まっちゃったー、にゃははー♪」
周子「我が家のママがお出ましだねぇ、頼りになるわ」
夕美「ふざけた事言ってないで、ほら! 早くレッスン行こ!」
885: 2023/02/25(土) 01:46:54.40 ID:mUoeDtH10
モバP「夕美、いつもありがとう。本当に助かるよ」
モバP「でも……すまない、夕美。ちょうど伝えようと思っていたんだが」
夕美「え?」
モバP「実は、トレーナーさんが風邪ひいちゃって、お休みしてるらしい。
だから、今日のレッスンはキャンセルだ」
周子「あらら、そりゃ心配だね。そういう人達でも体調を崩すことあるんだ」
志希「絶対の事象なんて無いからねー。
とりあえずゴシュウショウサマ……ん? 違うか。ぷりーずていくけあ、ゆーとぅー」
夕美「ううん、プロデューサーさんは何も悪くないよっ」フルフル
夕美「それに、レッスンがお休みなら、代わりにやりたい事もあるんだ♪」
モバP「でも……すまない、夕美。ちょうど伝えようと思っていたんだが」
夕美「え?」
モバP「実は、トレーナーさんが風邪ひいちゃって、お休みしてるらしい。
だから、今日のレッスンはキャンセルだ」
周子「あらら、そりゃ心配だね。そういう人達でも体調を崩すことあるんだ」
志希「絶対の事象なんて無いからねー。
とりあえずゴシュウショウサマ……ん? 違うか。ぷりーずていくけあ、ゆーとぅー」
夕美「ううん、プロデューサーさんは何も悪くないよっ」フルフル
夕美「それに、レッスンがお休みなら、代わりにやりたい事もあるんだ♪」
886: 2023/02/25(土) 01:48:21.33 ID:mUoeDtH10
モバP「中庭の花壇の手入れか?」
夕美「うんっ! ほら、志希ちゃんと周子ちゃんも行こう?」
志希(ふむふむ、これはヤダって言っても無理やり連れてかれるヤツと見た)
周子(下手に逆らわない方が身のためよ、志希ちゃん)ヒソヒソ
夕美「行こう??」ズイッ
志希・周子「はい」
モバP「お達者でなー」フリフリ
――――
当たり前にある今日も
奇跡だって思うよ
どうすれば変われるのかを
考えて過ごしてたの
――――
テクテク…
志希「わぁーっ! 綺麗なお花畑ー!」
夕美「えへへ。そりゃあ、私がお手入れしているからねっ♪」
夕美「うんっ! ほら、志希ちゃんと周子ちゃんも行こう?」
志希(ふむふむ、これはヤダって言っても無理やり連れてかれるヤツと見た)
周子(下手に逆らわない方が身のためよ、志希ちゃん)ヒソヒソ
夕美「行こう??」ズイッ
志希・周子「はい」
モバP「お達者でなー」フリフリ
――――
当たり前にある今日も
奇跡だって思うよ
どうすれば変われるのかを
考えて過ごしてたの
――――
テクテク…
志希「わぁーっ! 綺麗なお花畑ー!」
夕美「えへへ。そりゃあ、私がお手入れしているからねっ♪」
887: 2023/02/25(土) 01:49:41.95 ID:mUoeDtH10
周子「本当、お花に関しては丁寧だよねー」
夕美「ちょ、ちょっと!? アイドルのお仕事もちゃんとやってるでしょ!」プンスコ!
志希「アハハハ」
――――
トキメキを形にできる場所
見つけたから 溢れる希望
その“始まり”を あなたがくれた
まっすぐ見つめてくれた
――――
志希「ん?」ピタッ
周子「どうかした?」
志希「これ……アグラオネマだよね? こんな所に植えてていいの?」
夕美「あぁ、それはね」
スッ
夕美「この子は、ここでいいの」
夕美「ちょ、ちょっと!? アイドルのお仕事もちゃんとやってるでしょ!」プンスコ!
志希「アハハハ」
――――
トキメキを形にできる場所
見つけたから 溢れる希望
その“始まり”を あなたがくれた
まっすぐ見つめてくれた
――――
志希「ん?」ピタッ
周子「どうかした?」
志希「これ……アグラオネマだよね? こんな所に植えてていいの?」
夕美「あぁ、それはね」
スッ
夕美「この子は、ここでいいの」
888: 2023/02/25(土) 01:53:05.45 ID:mUoeDtH10
夕美「もちろん、本当は日当たりの良い所に植えちゃいけない品種なんだけどね」
夕美「この子は、大切な人からの……」
――――
舞い上がり ぶつかって 何度でも
思い出すあの瞬間(とき) 最初の1ページ
信じあう 響きあう 高鳴りを
永遠に そう 忘れない
――――
周子「へぇー、お日様の日光が良くない植物とかあるんだ?」
周子「でもこの、アグラオネマさんは、日当たりが好き?
色々と変わり者屋さんだね」
志希「まぁ何にでもイレギュラーはあるからねー」
周子「志希ちゃんが言うと説得力あるわぁ」
夕美「えへへ……変わり者なんかじゃないよ」
周子・志希「?」
夕美「この子は、大切な人からの……」
――――
舞い上がり ぶつかって 何度でも
思い出すあの瞬間(とき) 最初の1ページ
信じあう 響きあう 高鳴りを
永遠に そう 忘れない
――――
周子「へぇー、お日様の日光が良くない植物とかあるんだ?」
周子「でもこの、アグラオネマさんは、日当たりが好き?
色々と変わり者屋さんだね」
志希「まぁ何にでもイレギュラーはあるからねー」
周子「志希ちゃんが言うと説得力あるわぁ」
夕美「えへへ……変わり者なんかじゃないよ」
周子・志希「?」
889: 2023/02/25(土) 01:56:24.67 ID:mUoeDtH10
輝こう…!
大きな空で あなたが誇れる星になろう
限りない“ありがとう”繋いでゆく 希望のステージ
羽ばたこう…!
夢見ることに 全力出せる“今”があるの
眩しい世界へ いつまでも Stand by Me
ワアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!! パチパチパチパチ…!!!!
樹里「はぁ……はぁ……はぁ……」
樹里「……これで安心だろ? プロデューサー」
フッ…
夕美「あっ! ふふ……」
夕美「良い笑顔だねっ!」ニコッ
~おしまい~
大きな空で あなたが誇れる星になろう
限りない“ありがとう”繋いでゆく 希望のステージ
羽ばたこう…!
夢見ることに 全力出せる“今”があるの
眩しい世界へ いつまでも Stand by Me
ワアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!! パチパチパチパチ…!!!!
樹里「はぁ……はぁ……はぁ……」
樹里「……これで安心だろ? プロデューサー」
フッ…
夕美「あっ! ふふ……」
夕美「良い笑顔だねっ!」ニコッ
~おしまい~
890: 2023/02/25(土) 02:02:26.51 ID:mUoeDtH10
洋画『レオン』のパロディを書こうとしていたのですが、全然違うものになりました。
色々おかしい所もあるかと思います。
アイドルマスターシリーズの楽曲から、『オーバーマスター』、『1st Call』、『Ambitious Eve』、『FUTURITY SMILE』の歌詞をそれぞれ一部引用している箇所があります。
ひたすら長くなり、すみません。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
色々おかしい所もあるかと思います。
アイドルマスターシリーズの楽曲から、『オーバーマスター』、『1st Call』、『Ambitious Eve』、『FUTURITY SMILE』の歌詞をそれぞれ一部引用している箇所があります。
ひたすら長くなり、すみません。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
引用元: 西城樹里「タケウチ」



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