1:◆AO2WK0NAi. 2014/06/09(月) 23:48:52.20 ID:VQCioLVjo
諸注意
シリアス、卒業ネタ
アニメ2期と時間軸は同じですが、2期とは違う世界の話です。
アニメ1期のあとのifものという感じです。
シリアス、卒業ネタ
アニメ2期と時間軸は同じですが、2期とは違う世界の話です。
アニメ1期のあとのifものという感じです。
2: 2014/06/09(月) 23:52:22.17 ID:VQCioLVjo
introduction
家に帰るまで、ツインテールは解かない。
それが『矢澤にこ』のルールだ。
時刻は深夜1時過ぎ。
私はレギュラーの仕事を終えて帰宅した。
上着とストッキングを脱ぎ捨てて、グラス片手に座椅子に体を放り投げる。
鯖の缶詰を開けて、グラスに貰い物のスパークリングワインを注ぐと、
ふうっと一息ついて、髪留めに指をかける。
引っ張られていた頭皮が解放されるとともに、全身の緊張がすっと抜ける。
家に帰るまで、ツインテールは解かない。
それが『矢澤にこ』のルールだ。
時刻は深夜1時過ぎ。
私はレギュラーの仕事を終えて帰宅した。
上着とストッキングを脱ぎ捨てて、グラス片手に座椅子に体を放り投げる。
鯖の缶詰を開けて、グラスに貰い物のスパークリングワインを注ぐと、
ふうっと一息ついて、髪留めに指をかける。
引っ張られていた頭皮が解放されるとともに、全身の緊張がすっと抜ける。
3: 2014/06/09(月) 23:52:56.68 ID:VQCioLVjo
ここから私のプライベートタイムがはじまるのだ。
一口、二口、微発泡の柔らかい刺激が喉に心地いい。
今日は少しいいことがあったので、ささやかなお祝いだ。
ああ、気分がいいな。
こういうときは、あのCDを聴きたくなってしまう。
ブックシェルフに飾ってある一枚のCD。
ジャケット写真もない、さらのケースの表面がこちらを向いている。
一口、二口、微発泡の柔らかい刺激が喉に心地いい。
今日は少しいいことがあったので、ささやかなお祝いだ。
ああ、気分がいいな。
こういうときは、あのCDを聴きたくなってしまう。
ブックシェルフに飾ってある一枚のCD。
ジャケット写真もない、さらのケースの表面がこちらを向いている。
4: 2014/06/09(月) 23:53:23.83 ID:VQCioLVjo
この中に入っているのは、『私たち』そのものだ。
今でもときどき思い出す。
『私』が『私たち』だった、あの頃。
今なお色褪せない、私たちの奇跡が、ここにあるんだ。
のそっと立ち上がって、ディスクをプレーヤーにセットする。
再生ボタンを押せば、あの音が聞こえてくるだろう。
そう、きっと一生忘れることのない、青春の足音。
今でもときどき思い出す。
『私』が『私たち』だった、あの頃。
今なお色褪せない、私たちの奇跡が、ここにあるんだ。
のそっと立ち上がって、ディスクをプレーヤーにセットする。
再生ボタンを押せば、あの音が聞こえてくるだろう。
そう、きっと一生忘れることのない、青春の足音。
5: 2014/06/09(月) 23:53:49.94 ID:VQCioLVjo
ピアノが軽やかに踊る。
シンセベースが柔らかくうねり、スネアが陽気に跳ねる。
そして――
私たちの音楽が、はじまる。
introduction 了
シンセベースが柔らかくうねり、スネアが陽気に跳ねる。
そして――
私たちの音楽が、はじまる。
introduction 了
6: 2014/06/09(月) 23:54:38.27 ID:VQCioLVjo
Track1 『僕らは今のなかで』
ラブライブ本戦から数日後、いつもの部室。
ぎこぎこと椅子を揺らしていた穂乃果が、誰に言うでもなく口を開いた。
【穂乃果】
「それにしても、なんだか気が抜けちゃったねー」
それはあえて言葉にせずとも、みんな感じていたことだった。
ラブライブで、私たちは敗北した。
必氏で練習して、すべてを出し切った結果のことだった。
力及ばなかったのだ。悔しかった。とても。
ラブライブ本戦から数日後、いつもの部室。
ぎこぎこと椅子を揺らしていた穂乃果が、誰に言うでもなく口を開いた。
【穂乃果】
「それにしても、なんだか気が抜けちゃったねー」
それはあえて言葉にせずとも、みんな感じていたことだった。
ラブライブで、私たちは敗北した。
必氏で練習して、すべてを出し切った結果のことだった。
力及ばなかったのだ。悔しかった。とても。
7: 2014/06/09(月) 23:55:17.25 ID:VQCioLVjo
それから今に至るまで、みんなどこか上の空で、ぼんやりしていた。
だけどそれは傷心を引きずっているような感じでもなくて、
燃え尽き症候群というのだろうか、やけにゆったりした空気が支配していた。
穂乃果の言葉に海未が返した。
【海未】
「そうですね、これまで目標があってやってきたのに、
何もなくなってしまいましたから」
【にこ】
「なーに言ってんのよ」
口を挟むのは私だ。
だけどそれは傷心を引きずっているような感じでもなくて、
燃え尽き症候群というのだろうか、やけにゆったりした空気が支配していた。
穂乃果の言葉に海未が返した。
【海未】
「そうですね、これまで目標があってやってきたのに、
何もなくなってしまいましたから」
【にこ】
「なーに言ってんのよ」
口を挟むのは私だ。
8: 2014/06/09(月) 23:55:43.41 ID:VQCioLVjo
【にこ】
「あんたたち、スクールアイドル続けないわけ? 来年もきっとあるわよ、ラブライブ」
希が軽い調子で続く。
【希】
「そうそう、新入生も入ってくるやろうし、新生μ'sでがんばっていかな!」
【穂乃果】
「うん、そうなんだけどねー……」
穂乃果はやっぱり気の抜けた感じで、空を仰いでいる。
みんなが心の中でため息をついたのを、私はなんとなく感じた。
一方で真姫は本当にため息をついた。ある意味さすがである。
「あんたたち、スクールアイドル続けないわけ? 来年もきっとあるわよ、ラブライブ」
希が軽い調子で続く。
【希】
「そうそう、新入生も入ってくるやろうし、新生μ'sでがんばっていかな!」
【穂乃果】
「うん、そうなんだけどねー……」
穂乃果はやっぱり気の抜けた感じで、空を仰いでいる。
みんなが心の中でため息をついたのを、私はなんとなく感じた。
一方で真姫は本当にため息をついた。ある意味さすがである。
9: 2014/06/09(月) 23:56:23.48 ID:VQCioLVjo
と、そこに屋外から声が聞こえてきた。
【凛】
「ああ、ごめーん」
【花陽】
「だいじょうぶ、だいじょうぶー」
凛と花陽だった。
練習室の収納棚の奥から出てきた野球のグローブをぶら下げて、
球遊びに興じていたのだ。呑気なものである。
部室でだらだらすることに飽きていた私は、窓を開けて二人に声をかけた。
【凛】
「ああ、ごめーん」
【花陽】
「だいじょうぶ、だいじょうぶー」
凛と花陽だった。
練習室の収納棚の奥から出てきた野球のグローブをぶら下げて、
球遊びに興じていたのだ。呑気なものである。
部室でだらだらすることに飽きていた私は、窓を開けて二人に声をかけた。
10: 2014/06/09(月) 23:57:04.70 ID:VQCioLVjo
【にこ】
「そこにいなさいよー。私も行くから」
【希】
「あ、うちもー」
希とともに外へ出ると、凛が手を振って迎えてくれた。
【凛】
「にこちゃーん、希ちゃーん、こっちこっちー」
【花陽】
「はい、グローブ」
花陽が自分のグローブを外して手渡してくる。
「そこにいなさいよー。私も行くから」
【希】
「あ、うちもー」
希とともに外へ出ると、凛が手を振って迎えてくれた。
【凛】
「にこちゃーん、希ちゃーん、こっちこっちー」
【花陽】
「はい、グローブ」
花陽が自分のグローブを外して手渡してくる。
11: 2014/06/09(月) 23:57:31.92 ID:VQCioLVjo
私は運動は得意な方じゃないけれど、球遊びは妹たちと度々することがあったので、
まるきり下手っぴというわけではなかった。
【凛】
「いっくよー」
凛が投げたボールを見事にキャッチすると、希と花陽が感嘆の声を上げて拍手した。
【にこ】
「ふふん」
私は鼻が高かったが、同時になんだかバカにされてるような気もして癪だった。
しばしボールのやりとりを続けていると、私のすぐ横で眺めていた希が話しはじめた。
まるきり下手っぴというわけではなかった。
【凛】
「いっくよー」
凛が投げたボールを見事にキャッチすると、希と花陽が感嘆の声を上げて拍手した。
【にこ】
「ふふん」
私は鼻が高かったが、同時になんだかバカにされてるような気もして癪だった。
しばしボールのやりとりを続けていると、私のすぐ横で眺めていた希が話しはじめた。
12: 2014/06/09(月) 23:58:03.83 ID:VQCioLVjo
【希】
「これからどうするん?」
【にこ】
「別にいいんじゃない、このままで。新学期になればまた変わるわ」
【希】
「じゃなくて、にこっちのことよ」
【にこ】
「私?」
【希】
「卒業したあと、どうするのかなって」
【にこ】
「……大学にいくけど?」
【希】
「そう……」
「これからどうするん?」
【にこ】
「別にいいんじゃない、このままで。新学期になればまた変わるわ」
【希】
「じゃなくて、にこっちのことよ」
【にこ】
「私?」
【希】
「卒業したあと、どうするのかなって」
【にこ】
「……大学にいくけど?」
【希】
「そう……」
13: 2014/06/09(月) 23:58:29.93 ID:VQCioLVjo
希は言葉を切ったけど、言わんとしていることは察した。
アイドル活動を続けるかどうかを問いたいのだろう。
なんとなく口幅ったくて、今まではっきりとは言わないようにしていた。
だけど、今こいつになら話してもいい、そんな気分になった。
【にこ】
「大学に通いながら、どっかオーディション受けたり、
出演させてくれる劇場でも探して、やっていこうと思う」
希の顔がぱっと明るくなる。
アイドル活動を続けるかどうかを問いたいのだろう。
なんとなく口幅ったくて、今まではっきりとは言わないようにしていた。
だけど、今こいつになら話してもいい、そんな気分になった。
【にこ】
「大学に通いながら、どっかオーディション受けたり、
出演させてくれる劇場でも探して、やっていこうと思う」
希の顔がぱっと明るくなる。
14: 2014/06/09(月) 23:59:37.36 ID:VQCioLVjo
【希】
「そっか! うんうん、それがええよ」
【にこ】
「そんなこと気にしてたの?」
【希】
「にこっち、危なっかしいところあるやん? 勉強もちゃんとしないし……」
【にこ】
「う、うるさいわね、このお節介焼き」
【希】
「うん、そうよね」
「そっか! うんうん、それがええよ」
【にこ】
「そんなこと気にしてたの?」
【希】
「にこっち、危なっかしいところあるやん? 勉強もちゃんとしないし……」
【にこ】
「う、うるさいわね、このお節介焼き」
【希】
「うん、そうよね」
15: 2014/06/10(火) 00:00:09.76 ID:fMip50o4o
【にこ】
「ほんと、あんたはいつもそう。人のことばっかり」
【希】
「うーん、うち、そんなに何かしたかなあ?」
【にこ】
「あんたがいなかったら、今の私たちはなかったかもしれない」
【希】
「そんなことないよ」
【にこ】
「あんたが二年たちと一年たちを引き会わせて、私のところに連れてきたんでしょう」
【希】
「やだなあ、買いかぶりやって」
「ほんと、あんたはいつもそう。人のことばっかり」
【希】
「うーん、うち、そんなに何かしたかなあ?」
【にこ】
「あんたがいなかったら、今の私たちはなかったかもしれない」
【希】
「そんなことないよ」
【にこ】
「あんたが二年たちと一年たちを引き会わせて、私のところに連れてきたんでしょう」
【希】
「やだなあ、買いかぶりやって」
16: 2014/06/10(火) 00:00:47.16 ID:fMip50o4o
【にこ】
「わかってんのよ。私だって穂乃果たちのことを見てた。
そしたらね、いつもあんたが視界の端にいるわけ。私はあんたよりも外側から見てたの。
だからあんたが色々やってるのも見えてた」
【希】
「うちはちょっと突っついてただけよ。
結局、今こうあるのは、みんながそうありたいと願ったから」
飛んできたボールを、私は手の位置を少しずらしてわざと弾いた。
あさっての方へ転がっていくボールを、案の定、希が追いかけた。
戻ってきた希からボールを受け取りつつ、私はこう言う。
「わかってんのよ。私だって穂乃果たちのことを見てた。
そしたらね、いつもあんたが視界の端にいるわけ。私はあんたよりも外側から見てたの。
だからあんたが色々やってるのも見えてた」
【希】
「うちはちょっと突っついてただけよ。
結局、今こうあるのは、みんながそうありたいと願ったから」
飛んできたボールを、私は手の位置を少しずらしてわざと弾いた。
あさっての方へ転がっていくボールを、案の定、希が追いかけた。
戻ってきた希からボールを受け取りつつ、私はこう言う。
17: 2014/06/10(火) 00:01:24.34 ID:fMip50o4o
【にこ】
「ありがとう、希」
希は、一瞬ちょっと呆けた顔になって、それから「ん」と喉を鳴らし、にっこり笑った。
【希】
「ありがとうって、いい言葉やな。
人のために何かすると、こうやって嬉しい気持ちがうちに返ってくる。
ただボールを拾ってあげたくらいでも、ね」
【にこ】
「そうよ、あんたがボールを拾ってくれたからお礼を言っただけ。ただそれだけよ」
希は悪戯っぽい顔で、人差し指を口元に当てて「にしし」と笑った。
「ありがとう、希」
希は、一瞬ちょっと呆けた顔になって、それから「ん」と喉を鳴らし、にっこり笑った。
【希】
「ありがとうって、いい言葉やな。
人のために何かすると、こうやって嬉しい気持ちがうちに返ってくる。
ただボールを拾ってあげたくらいでも、ね」
【にこ】
「そうよ、あんたがボールを拾ってくれたからお礼を言っただけ。ただそれだけよ」
希は悪戯っぽい顔で、人差し指を口元に当てて「にしし」と笑った。
18: 2014/06/10(火) 00:01:52.71 ID:fMip50o4o
私はこれ以上この話をしたくなかったので、話題を変えた。
【にこ】
「ねえ、希。次の部長、誰がいいかしら」
【希】
「にこっちは考えてる?」
【にこ】
「まあ、ね」
【希】
「だったら、にこっちのしたいようにすればええと思うよ」
【にこ】
「そう? ……そうね」
【にこ】
「ねえ、希。次の部長、誰がいいかしら」
【希】
「にこっちは考えてる?」
【にこ】
「まあ、ね」
【希】
「だったら、にこっちのしたいようにすればええと思うよ」
【にこ】
「そう? ……そうね」
19: 2014/06/10(火) 00:02:21.15 ID:fMip50o4o
部室に声をかける。
【にこ】
「誰か、ペン持ってきて、ペン!」
【穂乃果】
「ほーい」
窓から穂乃果が顔を覗かせた。ペンを受け取って、ボールに字を書く。
【にこ】
「花陽! いくわよ、ちゃんと取りなさいよね!」
【花陽】
「ふえぇ?!」
【にこ】
「誰か、ペン持ってきて、ペン!」
【穂乃果】
「ほーい」
窓から穂乃果が顔を覗かせた。ペンを受け取って、ボールに字を書く。
【にこ】
「花陽! いくわよ、ちゃんと取りなさいよね!」
【花陽】
「ふえぇ?!」
20: 2014/06/10(火) 00:02:59.03 ID:fMip50o4o
突然声をかけられて慌てる花陽に、構わずボールを投げる。
花陽は覚束ない足取りでおたおたしていたけれど、
なんとか両手とお腹でボールを捕まえた。
そしてボールを見て、戸惑いの声を上げた。
【花陽】
「え? これ……なに?」
【凛】
「なになにー、かよちんどうしたのぉ?」
覗きこんだ凛が「わっ」と口を大きく開く。
【凛】
「すごいよかよちん、“当たり”って書いてある!」
花陽は覚束ない足取りでおたおたしていたけれど、
なんとか両手とお腹でボールを捕まえた。
そしてボールを見て、戸惑いの声を上げた。
【花陽】
「え? これ……なに?」
【凛】
「なになにー、かよちんどうしたのぉ?」
覗きこんだ凛が「わっ」と口を大きく開く。
【凛】
「すごいよかよちん、“当たり”って書いてある!」
21: 2014/06/10(火) 00:03:37.14 ID:fMip50o4o
【にこ】
「それを受け取ったら部長にならなくちゃいけないのよ、私もそうして部長になったの」
【花陽】
「ええ?! そ、そうなの……?」
【凛】
「そうなんだ……!」
信じられないことに花陽と凛はこの与太話を信じたようだ。
希はニコニコとニヤニヤの間みたいな顔をして見守っている。
「それを受け取ったら部長にならなくちゃいけないのよ、私もそうして部長になったの」
【花陽】
「ええ?! そ、そうなの……?」
【凛】
「そうなんだ……!」
信じられないことに花陽と凛はこの与太話を信じたようだ。
希はニコニコとニヤニヤの間みたいな顔をして見守っている。
22: 2014/06/10(火) 00:04:27.57 ID:fMip50o4o
【にこ】
「これからの部のことはあんたに任せるわ、花陽」
【花陽】
「で、でも、私、一年だし、ぶ、部長なんて……」
【にこ】
「いいのよ、私があんたにやってほしいの」
【花陽】
「でも、私なんかに、務まるでしょうか……」
【にこ】
「まったく頼りないわねえ。大丈夫よ、困ったら副部長に助けてもらいなさい」
【花陽】
「副部長って……?」
【にこ】
「あんた」
【凛】
「ええ?! 凛?!」
【にこ】
「しっかり花陽をサポートするのよ。二人で頑張っていきなさい」
【凛】
「う、うん!」
「これからの部のことはあんたに任せるわ、花陽」
【花陽】
「で、でも、私、一年だし、ぶ、部長なんて……」
【にこ】
「いいのよ、私があんたにやってほしいの」
【花陽】
「でも、私なんかに、務まるでしょうか……」
【にこ】
「まったく頼りないわねえ。大丈夫よ、困ったら副部長に助けてもらいなさい」
【花陽】
「副部長って……?」
【にこ】
「あんた」
【凛】
「ええ?! 凛?!」
【にこ】
「しっかり花陽をサポートするのよ。二人で頑張っていきなさい」
【凛】
「う、うん!」
23: 2014/06/10(火) 00:06:12.03 ID:fMip50o4o
凛の方は問題なさそうだ。花陽はまだもじもじしている。
【花陽】
「で、でも、どうして……先輩たちの方がいいんじゃ……」
【にこ】
「はぁ、仕方ないわね」
仕方ない。こっ恥ずかしいけど言わなければ納得しなさそうだ。
私は二人の肩を寄せ、できるだけ希には聞こえないように話した。
【にこ】
「あんたたちを信頼しているから。
留学騒動のとき、あんたたちだけは私についてきてくれた。活動をやめなかった。
それが大事なの。みんなが迷っている中で、あんたたちだけはアイドルでいられた。
だから、決めたの」
あのときの私にとって、二人の存在がどれほど心強かったか。
過去に部員を失ったときのように、あのときμ'sを失っていたとしたら、
私は一人で立ち上がることができただろうか――。
【花陽】
「で、でも、どうして……先輩たちの方がいいんじゃ……」
【にこ】
「はぁ、仕方ないわね」
仕方ない。こっ恥ずかしいけど言わなければ納得しなさそうだ。
私は二人の肩を寄せ、できるだけ希には聞こえないように話した。
【にこ】
「あんたたちを信頼しているから。
留学騒動のとき、あんたたちだけは私についてきてくれた。活動をやめなかった。
それが大事なの。みんなが迷っている中で、あんたたちだけはアイドルでいられた。
だから、決めたの」
あのときの私にとって、二人の存在がどれほど心強かったか。
過去に部員を失ったときのように、あのときμ'sを失っていたとしたら、
私は一人で立ち上がることができただろうか――。
24: 2014/06/10(火) 00:07:12.60 ID:fMip50o4o
【にこ】
「わかった?」
花陽は返事をしなかったが、じっと見つめ返してくる眼に狼狽の色はないように思えた。
お願いね、と声をかけて、私は二人の肩をぽんと突き放した。
花陽は、やっぱり何も言わなかったけれど、すっと姿勢を正して、深く礼をした。
それを見た凛も、慌ててこうべを垂れた。
しばしの後に頭を上げた二人に、私はにっこり笑って“にこにーポーズ”をしてみせた。
花陽は頬を緩ませて、凛も笑顔でポーズを真似した。
私は、なんだかとてもいい気分だった。
こんな時間が、ずっと続けばいいのにと、そう思った。
Track1 了
「わかった?」
花陽は返事をしなかったが、じっと見つめ返してくる眼に狼狽の色はないように思えた。
お願いね、と声をかけて、私は二人の肩をぽんと突き放した。
花陽は、やっぱり何も言わなかったけれど、すっと姿勢を正して、深く礼をした。
それを見た凛も、慌ててこうべを垂れた。
しばしの後に頭を上げた二人に、私はにっこり笑って“にこにーポーズ”をしてみせた。
花陽は頬を緩ませて、凛も笑顔でポーズを真似した。
私は、なんだかとてもいい気分だった。
こんな時間が、ずっと続けばいいのにと、そう思った。
Track1 了
25: 2014/06/10(火) 00:14:04.66 ID:fMip50o4o
今日はここまでです。まだ最後まで書き終わってないので、ペースを合わせて投下していきます。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
26: 2014/06/10(火) 00:26:31.12 ID:uuzo37A2O
乙
時間がかかってもいいから最後までやってくれよ
時間がかかってもいいから最後までやってくれよ
28: 2014/06/11(水) 00:21:44.81 ID:VCgAimupo
Track2 『ダイヤモンドプリンセスの憂鬱』
あくる日、練習室に集まって適当にストレッチをしていると、穂乃果が急に声を上げた。
【穂乃果】
「ライブだよ!」
穂乃果というやつはいつもこうなのだ。
藪から飛び出した棒に“ほTシャツ”を引っ掛ければ、
おそらく穂乃果と見分けがつかないだろう。
あくる日、練習室に集まって適当にストレッチをしていると、穂乃果が急に声を上げた。
【穂乃果】
「ライブだよ!」
穂乃果というやつはいつもこうなのだ。
藪から飛び出した棒に“ほTシャツ”を引っ掛ければ、
おそらく穂乃果と見分けがつかないだろう。
29: 2014/06/11(水) 00:22:40.98 ID:VCgAimupo
【穂乃果】
「あぁー! どうして気が付かなかったんだろう!
廃校がなくなっても、ラブライブが終わっても、
私たちはアイドル研究部なんだから、ただライブをすればいいんだよ!」
【にこ】
「なに普通のことを大声で言ってんのよ……」
【穂乃果】
「え? にこちゃんもそう思ってたの? なら言ってよぉ!」
【にこ】
「いや、思ってたっていうか、
別にラブライブが最後のライブだって決めたわけでもないし」
「あぁー! どうして気が付かなかったんだろう!
廃校がなくなっても、ラブライブが終わっても、
私たちはアイドル研究部なんだから、ただライブをすればいいんだよ!」
【にこ】
「なに普通のことを大声で言ってんのよ……」
【穂乃果】
「え? にこちゃんもそう思ってたの? なら言ってよぉ!」
【にこ】
「いや、思ってたっていうか、
別にラブライブが最後のライブだって決めたわけでもないし」
30: 2014/06/11(水) 00:23:28.34 ID:VCgAimupo
【穂乃果】
「こういうのは、はっきり『やる』って決めないと駄目なんだよ!」
同調したのは絵里と海未だ。
【絵里】
「そうね、私たち、ここのところちょっと気が抜けてたし……
やりましょうか、ライブ!」
【海未】
「ええ、やはり目標を持ってないといけません。
気を引き締めなおして頑張りましょう!」
ことりが「おー」と腕を振り上げ、穂乃果はうんうんと満足気に頷いている。
「こういうのは、はっきり『やる』って決めないと駄目なんだよ!」
同調したのは絵里と海未だ。
【絵里】
「そうね、私たち、ここのところちょっと気が抜けてたし……
やりましょうか、ライブ!」
【海未】
「ええ、やはり目標を持ってないといけません。
気を引き締めなおして頑張りましょう!」
ことりが「おー」と腕を振り上げ、穂乃果はうんうんと満足気に頷いている。
31: 2014/06/11(水) 00:23:58.34 ID:VCgAimupo
真姫が疑問を投げかけた。
【真姫】
「それで、いつするの? もうすぐ冬休みに入っちゃうけど」
【ことり】
「冬休み中がいいんじゃないかな? 期末試験中にはできないでしょ?」
【絵里】
「そして冬休みが明けたら、私たちは本格的に受験シーズンまっただ中、
やるなら冬休みしかないわ」
二人の返事を受けて、真姫がぽつりと言った。
「それが最後のライブってことね」
【真姫】
「それで、いつするの? もうすぐ冬休みに入っちゃうけど」
【ことり】
「冬休み中がいいんじゃないかな? 期末試験中にはできないでしょ?」
【絵里】
「そして冬休みが明けたら、私たちは本格的に受験シーズンまっただ中、
やるなら冬休みしかないわ」
二人の返事を受けて、真姫がぽつりと言った。
「それが最後のライブってことね」
32: 2014/06/11(水) 00:24:40.09 ID:VCgAimupo
何気ない、しかしはっきりした事実の通告に、場が少し沈んだ……ような気がした。
その空気を打ち破るかのように、穂乃果が声を張り上げた。
【穂乃果】
「よーし! 私たち9人の最後のライブ、おもいっきり楽しもう!
真姫ちゃん、新曲お願い!」
【真姫】
「はぁ?! え、この期に及んで新曲?!」
【穂乃果】
「ノリノリで盛り上がれるやつがいいなぁ」
【真姫】
「いや、ちょっと待ってよ! ねえ、海未、ことりも、なにか言って!」
その空気を打ち破るかのように、穂乃果が声を張り上げた。
【穂乃果】
「よーし! 私たち9人の最後のライブ、おもいっきり楽しもう!
真姫ちゃん、新曲お願い!」
【真姫】
「はぁ?! え、この期に及んで新曲?!」
【穂乃果】
「ノリノリで盛り上がれるやつがいいなぁ」
【真姫】
「いや、ちょっと待ってよ! ねえ、海未、ことりも、なにか言って!」
33: 2014/06/11(水) 00:25:14.17 ID:VCgAimupo
【海未】
「そうですね、詞の書き溜めは結構あるので、私は問題ないと思いますが……」
【ことり】
「冬休みまでになら、みんなにちょっと手伝ってもらえば衣装は間に合うと思うよっ」
【真姫】
「あなたたち本気なの?! ……まったくぅ!
わかったわよ! さいっこうの曲作ってやるんだから!」
【穂乃果】
「やたー! 真姫ちゃん大好きー!」
穂乃果が真姫にぐりぐりと体をすり寄せる。
【真姫】
「やめて!」
「そうですね、詞の書き溜めは結構あるので、私は問題ないと思いますが……」
【ことり】
「冬休みまでになら、みんなにちょっと手伝ってもらえば衣装は間に合うと思うよっ」
【真姫】
「あなたたち本気なの?! ……まったくぅ!
わかったわよ! さいっこうの曲作ってやるんだから!」
【穂乃果】
「やたー! 真姫ちゃん大好きー!」
穂乃果が真姫にぐりぐりと体をすり寄せる。
【真姫】
「やめて!」
34: 2014/06/11(水) 00:25:41.95 ID:VCgAimupo
なんとも愉快な仲間たちだ。
私は笑いを噛み締めてくくっと肩を揺らし、意気揚々と立ち上がった。
【にこ】
「話はまとまったわね! それじゃあ屋上でレッスンするわよ!」
部長らしく号令をかける。さあみんな、私についてきなさい!
【絵里】
「ああ、にこは待って」
【にこ】
「ってなによもう!」
唐突な絵里の一声に私はつんのめった。かっこよくキメるシーンが台無しである。
私は笑いを噛み締めてくくっと肩を揺らし、意気揚々と立ち上がった。
【にこ】
「話はまとまったわね! それじゃあ屋上でレッスンするわよ!」
部長らしく号令をかける。さあみんな、私についてきなさい!
【絵里】
「ああ、にこは待って」
【にこ】
「ってなによもう!」
唐突な絵里の一声に私はつんのめった。かっこよくキメるシーンが台無しである。
35: 2014/06/11(水) 00:26:27.42 ID:VCgAimupo
【絵里】
「ちょっとね、生徒会の手続きで、やってもらわないといけないことがあるのよ」
【にこ】
「そ、そう……じゃあみんな、先に行っててちょうだい」
向き直ったときには既にみんな部屋を出ていて、誰かが外から手だけで返事をしてきた。
無礼千万とはこのことだ。黙って部長を置いていくなど……。
しかし幸いなことに、私はこんなことには慣れっこなのである。
心に傷など、少ししか負っていない。
「ちょっとね、生徒会の手続きで、やってもらわないといけないことがあるのよ」
【にこ】
「そ、そう……じゃあみんな、先に行っててちょうだい」
向き直ったときには既にみんな部屋を出ていて、誰かが外から手だけで返事をしてきた。
無礼千万とはこのことだ。黙って部長を置いていくなど……。
しかし幸いなことに、私はこんなことには慣れっこなのである。
心に傷など、少ししか負っていない。
36: 2014/06/11(水) 00:26:59.63 ID:VCgAimupo
【にこ】
「で、なに」
【絵里】
「……大丈夫?」
【にこ】
「なにがよ! 何一つ問題ないわ!」
【絵里】
「そ、そう、ならいいのだけど」
「で、なに」
【絵里】
「……大丈夫?」
【にこ】
「なにがよ! 何一つ問題ないわ!」
【絵里】
「そ、そう、ならいいのだけど」
37: 2014/06/11(水) 00:27:25.15 ID:VCgAimupo
絵里の用事というのは、部員の登録や来年度予算に関する書類だった。
よくわからないので、全部絵里に言われるままに書いた。
私が書く意味がないじゃないかと不平を言ったら、呆れられた。
【絵里】
「あなたが部長なんだから……」
【にこ】
「私なんて名ばかり部長じゃない。あんたの方がよっぽど……」
【絵里】
「そんなこと……」
最後まで言わずに絵里は黙ってしまった。
よくわからないので、全部絵里に言われるままに書いた。
私が書く意味がないじゃないかと不平を言ったら、呆れられた。
【絵里】
「あなたが部長なんだから……」
【にこ】
「私なんて名ばかり部長じゃない。あんたの方がよっぽど……」
【絵里】
「そんなこと……」
最後まで言わずに絵里は黙ってしまった。
38: 2014/06/11(水) 00:28:00.98 ID:VCgAimupo
【にこ】
「いいのよ、別に。自分でも向いてないって気づいてるわよ」
【絵里】
「そんなことないわ」
【にこ】
「いいの。にこはアイドルとしてなら誰にも負けないもん。ニコぉ~」
【絵里】
「ちょっと、ふてくされないでよ」
【にこ】
「ふてくされてないニコー」
「いいのよ、別に。自分でも向いてないって気づいてるわよ」
【絵里】
「そんなことないわ」
【にこ】
「いいの。にこはアイドルとしてなら誰にも負けないもん。ニコぉ~」
【絵里】
「ちょっと、ふてくされないでよ」
【にこ】
「ふてくされてないニコー」
39: 2014/06/11(水) 00:28:45.31 ID:VCgAimupo
【絵里】
「ふてくされてるじゃない」
【にこ】
「……なによ、別にいいでしょ。自分で向いてないって認めてるんだから構わないで」
【絵里】
「そんなことないって言ってるでしょ!」
【にこ】
「あんたに言われても説得力ないのよ! いつもみんなをまとめるのはあんたでしょ!
みんなそれを認めてる、私だって……!」
【絵里】
「違うの! ああ、もう、この際だから言うわ……」
「ふてくされてるじゃない」
【にこ】
「……なによ、別にいいでしょ。自分で向いてないって認めてるんだから構わないで」
【絵里】
「そんなことないって言ってるでしょ!」
【にこ】
「あんたに言われても説得力ないのよ! いつもみんなをまとめるのはあんたでしょ!
みんなそれを認めてる、私だって……!」
【絵里】
「違うの! ああ、もう、この際だから言うわ……」
40: 2014/06/11(水) 00:29:17.01 ID:VCgAimupo
絵里はかぶりを振ってため息を一つ漏らした。
【絵里】
「ねえ、にこ、私、あなたのこと……あぁ、なんて言えばいいのかしら……
すごいと思ってるのよ、一目置いてるって言ったらいいのか……」
【にこ】
「……どこが? 気休めならやめて」
【絵里】
「ほんとよ! あなたは強いの……失敗しても、上手くいかなくても、
負けない気持ちの強さを持ってる……それが、私は、羨ましい……!」
【絵里】
「ねえ、にこ、私、あなたのこと……あぁ、なんて言えばいいのかしら……
すごいと思ってるのよ、一目置いてるって言ったらいいのか……」
【にこ】
「……どこが? 気休めならやめて」
【絵里】
「ほんとよ! あなたは強いの……失敗しても、上手くいかなくても、
負けない気持ちの強さを持ってる……それが、私は、羨ましい……!」
41: 2014/06/11(水) 00:30:15.16 ID:VCgAimupo
羨ましい? こいつが? 私を?
これにはさすがの私もカチンときてしまった。
握った拳がぶるぶると震える。
【にこ】
「な、何よそれ……バカにしてるわけ?!」
【絵里】
「してないわよ!」
【にこ】
「してるわ!」
声を荒らげてあらん限りの罵詈雑言をぶつける。
目の前のロシア女の欠点を、これでもかとあげつらえてやる。
これにはさすがの私もカチンときてしまった。
握った拳がぶるぶると震える。
【にこ】
「な、何よそれ……バカにしてるわけ?!」
【絵里】
「してないわよ!」
【にこ】
「してるわ!」
声を荒らげてあらん限りの罵詈雑言をぶつける。
目の前のロシア女の欠点を、これでもかとあげつらえてやる。
42: 2014/06/11(水) 00:30:53.46 ID:VCgAimupo
【にこ】
「あんたみたいな……! 歌もダンスも上手くて、スタイルもよくて、
顔も綺麗で人望もあって……そんなやつが私の何が羨ましいって?!」
【絵里】
「なんなの……嫌味のつもり?!」
【にこ】
「違うわよ! 私が欲しい物、たくさん持ってるくせに……!」
【絵里】
「それがなんだっていうの! それでも私はあなたが羨ましい!」
【にこ】
「あんたと私の何がそんなに違うってのよ!」
「あんたみたいな……! 歌もダンスも上手くて、スタイルもよくて、
顔も綺麗で人望もあって……そんなやつが私の何が羨ましいって?!」
【絵里】
「なんなの……嫌味のつもり?!」
【にこ】
「違うわよ! 私が欲しい物、たくさん持ってるくせに……!」
【絵里】
「それがなんだっていうの! それでも私はあなたが羨ましい!」
【にこ】
「あんたと私の何がそんなに違うってのよ!」
43: 2014/06/11(水) 00:31:20.40 ID:VCgAimupo
【絵里】
「あなたが夢を追っているからよ!」
【にこ】
「あんたもそうすればいいでしょう!」
【絵里】
「私は! ……私は、もう負けたのよ……!」
私たちは顔を真っ赤にして言い合った。
褒めているんだか貶しているんだかわからなかった。
はたから見れば滑稽に映っただろう。
だけど当の私たちは真剣そのものだった。
「あなたが夢を追っているからよ!」
【にこ】
「あんたもそうすればいいでしょう!」
【絵里】
「私は! ……私は、もう負けたのよ……!」
私たちは顔を真っ赤にして言い合った。
褒めているんだか貶しているんだかわからなかった。
はたから見れば滑稽に映っただろう。
だけど当の私たちは真剣そのものだった。
44: 2014/06/11(水) 00:31:46.23 ID:VCgAimupo
絵里が息も切れ切れに言葉を絞りだす。
【絵里】
「……あなたは、これからも、アイドルを目指していくんでしょう……」
【にこ】
「そうよ……」
【絵里】
「なってよ……にこ……本物のアイドルに……」
【にこ】
「なってやるわよ……!」
【絵里】
「……夢を叶えるところを、私に見せて」
【にこ】
「いいわ……ただし、あんたもよ。新しい夢を見つけて、それを叶えること」
【絵里】
「……あなたは、これからも、アイドルを目指していくんでしょう……」
【にこ】
「そうよ……」
【絵里】
「なってよ……にこ……本物のアイドルに……」
【にこ】
「なってやるわよ……!」
【絵里】
「……夢を叶えるところを、私に見せて」
【にこ】
「いいわ……ただし、あんたもよ。新しい夢を見つけて、それを叶えること」
45: 2014/06/11(水) 00:32:18.20 ID:VCgAimupo
絵里は前のめりの姿勢を直して、ゆっくりと息を吐くと、複雑な顔で少し笑った。
私はなんだか思いっきり脱力してしまった。
絵里とこんなふうに話すのははじめてだな、と思った。
なぜだか悪い気はしなかった。
しばしの間を置いて、落ち着きを取り戻した絵里が、
なにかを思い出したように視線を宙に走らせた。
【絵里】
「ねえ、にこ、私ね、聞いちゃったのよ」
【にこ】
「なにを?」
私はなんだか思いっきり脱力してしまった。
絵里とこんなふうに話すのははじめてだな、と思った。
なぜだか悪い気はしなかった。
しばしの間を置いて、落ち着きを取り戻した絵里が、
なにかを思い出したように視線を宙に走らせた。
【絵里】
「ねえ、にこ、私ね、聞いちゃったのよ」
【にこ】
「なにを?」
46: 2014/06/11(水) 00:32:57.39 ID:VCgAimupo
【絵里】
「穂乃果たちがね、話してたの。私たちのお別れライブをしたいって。
このまま終わりたくない、ふさわしい場所でちゃんとお別れをしたいって」
【にこ】
「それで急にライブとか言い出したのね」
【絵里】
「ありがたいことね」
【にこ】
「……ええ、ほんとに」
「穂乃果たちがね、話してたの。私たちのお別れライブをしたいって。
このまま終わりたくない、ふさわしい場所でちゃんとお別れをしたいって」
【にこ】
「それで急にライブとか言い出したのね」
【絵里】
「ありがたいことね」
【にこ】
「……ええ、ほんとに」
47: 2014/06/11(水) 00:33:27.28 ID:VCgAimupo
【絵里】
「さて……そろそろ、屋上いきましょうか」
【にこ】
「ああ、そうね、いつまでもさぼってられないわ」
【絵里】
「……手繋いでいく?」
【にこ】
「ばーか!」
まったく、すべて世はこともなし、だ。
Track2 了
「さて……そろそろ、屋上いきましょうか」
【にこ】
「ああ、そうね、いつまでもさぼってられないわ」
【絵里】
「……手繋いでいく?」
【にこ】
「ばーか!」
まったく、すべて世はこともなし、だ。
Track2 了
48: 2014/06/11(水) 00:34:09.86 ID:VCgAimupo
今日はここまでです。ありがとうございました。
49: 2014/06/11(水) 00:44:29.59 ID:jKHayEGgo
乙
引用元: 矢澤にこ「きっと青春が聞こえる」
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