1: 2016/12/24(土)04:18:17 ID:0x1

2: 2016/12/24(土)04:18:32 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

ごめんなさい。

ごめんなさい。

Pさんとの約束、守れそうもありません。

本当に

……ごめんなさい。
アイドルマスター シンデレラガールズ アクリルキャラプレートぷち 22 イヴ・サンタクロース
4: 2016/12/24(土)04:19:55 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

12月23日、街がクリスマスムードに浮き足立つ中、俺の気分は複雑に……沈んでいた。

何日か前からイヴが家に帰って来ない。


最後に見たのは3日前だったか……俺が朝、仕事に出る時、彼女は間違いなく二階の自室で眠っていた。

クリスマス直前ということもあり、アイドル業の方は控えめにして、ゆとりを持ってスケジューリングしていた為、彼女の予定は午後からのみ、しかも簡単なレッスンだけだったのだ。

彼女の身体で膨れ上がる布団に小声で「行ってきます」と告げた俺は、いつも通り家を出て、事務所での通常業務についた。

ここまではほぼ普段通り。異変はその日の午後から起こった。

彼女がレッスンに姿を現さないのだ。

ルキトレ「イヴさんが無断でお休みなんて珍しいですね……連絡も繋がりません」

と、どこか不安そうに呟く彼女を目にしながらも俺は、どうせ寝過ごして、まだ寝続けているか、予定をど忘れしてテレビでも見ながら惚けているに違いない、などと考え、特に深刻には受け止めず、その夜、ごく気楽に自宅の門をくぐった。

5: 2016/12/24(土)04:20:34 ID:0x1

だが、戸を開けて玄関に踏み込んだ瞬間、違和感を覚えた。
冷たい。空気が冷たいのだ。

夜であるにもかかわらず、玄関はおろか、部屋の奥の方まで電灯はついておらず、暖房も一切機能していない。

あるはずの人の気配が一切ない。

まるで1年前、イヴを拾ってくる前の一人暮らしの我が家のように。

P「イヴ? どうしんだイヴ? どこかに隠れてるのか?」

家中を探し回ったが、俺の同居人、アイドル兼サンタクロース、イヴ・サンタクロースの姿を見つけることは叶わなかった。

P「…………」

家のどこにも

P「イヴがいない」

6: 2016/12/24(土)04:21:27 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

暗闇の中、思い出す。

あの日のことを。

…………。

橘ありす「青ですよ。青。もしくは蒼。妥協しても紺色です!」

櫻井桃華「赤ですわ。赤。もしくは紅。妥協しても桃色ですわ!」

佐々木千枝「ふ、二人とも落ち着いて……」

龍崎薫「ケンカはダメだよー」

ありす「みんなでネクタイを贈ろうって提案したのは私です。色くらい私に決めさせてくれてもいいじゃないですか!」

桃華「それとこれとは話が別ですわ。Pちゃまには赤。赤が似合います!」

千枝「どっちでもきっと似合うと思うけど……。じゃ、ジャンケンで決めるとか……どうかな? 」

薫「うーん。イヴさんはどう思う?」

イヴ「えっ? わ、私ですか~?
そうですね~。赤や青もいいですけど~、Pさんの嗜好からして、小さい子達から贈られるなら、ネクタイよりもトゲトゲの付いた首輪とか鎖の方が喜ぶかと~」

薫「しこう?」

千川ちひろ「イヴちゃん? ちょっとこっちに……」

イヴ「あ、あれ~? ちひろさん、笑顔が少し……怖いです~」

ちひろ「いいから、こっちに。お話をしましょう?」

イヴ「あ、あら~?」

7: 2016/12/24(土)04:22:42 ID:0x1



ありす「青です!」

桃華「赤ですわ!」

千枝「く、クジ引きとか……」

薫「…………」

薫「赤と青のシマシマじゃだめなの?」

ありす・桃華「!?」

千枝「……あっ!?」

薫「それならふたりとも納得だよねっ!」

ありす「む……」

桃華「た、確かに……その発想は……ありませんでしたわ」

千枝「すごいっ!」

千枝(ていうか、そもそも赤一色とか青一色のネクタイってあんまりないんじゃあ……)

薫「えへへ~。これでみんな仲良く、だね!」

ありす「……まいりました。それでいきましょう。
あと……少し頭に血がのぼっていたようです。
大人げなくてすみません……」

桃華「い、いえ、わたくしこそ……Pちゃまの為とはいえ、はしたないまねを……」

千枝「でも薫ちゃんはいいの? 他に希望とか……」

薫「うん。いいよー。みんなで渡せば、せんせぇもきっと喜んでくれると思いまーっ!」

ありす「うう。眩しい……」

9: 2016/12/24(土)04:24:44 ID:0x1

桃華「な、なんにせよ、これでPちゃまにはわたくし達の思いをキチンとお伝えできますわね」

千枝「……えっ? お、想い?」

桃華「ネクタイを異性に贈る事には、『貴方に首ったけです』というメッセージ性もありますの。
わたくし達の思いを伝えるには最適ではなくて?」

千枝・ありす「なっ、ななな……!?」

薫「おもいー?」

桃華「ええ。わたくし達はお友達であり、仲間であり、同時にライバルでもあります。
ですが、アイドルであり、まだ年端もいかぬ子どもである以上、皆で抜け駆けなく、同じプレゼントを贈る……とても素敵で……合理的なアイデアですわ」

ありす「わ、私はそんなつもりじゃ……。
て、ていうか! そんな意味があるなら、みんなでじゃなくて、私が一人で買って贈りますからっ!」

桃華「却下ですわ」

千枝「ぬ、抜け駆けって……」////

薫「?」

ありす「ううう……」

桃華「折角の聖なる夜ですわ。今度のパーティー……争いごとはこれきりにして、平和にいきましょう」

千枝「…………」

千枝「う、うん。そうだねっ!」

ありす「し、仕方ありません……」

薫「はい! みんなで仲良くっ! ……あっ!?」

10: 2016/12/24(土)04:25:15 ID:0x1

桃華「どうかしましたの?」

薫「ううん。なんでもないよ!
ただプレゼントといえば、千枝ちゃんの編んでたマフラーは間に合いそうなのかなーって!」

ありす・桃華「!?」

千枝「ちょっ!? そ、それは……!」

薫「かおるはねー。パーティーでシチュー担当なんだ!
まゆお姉ちゃんと響子お姉ちゃんにも「これならシチューはおまかせできます』って!」

ありす・桃華「!!?」

薫「みんなでパーティーの準備、がんばろーねっ!」

千枝「えっ……と。こ、これは抜け駆けとか、そういうのじゃなくて……」

ありす・桃華「…………」

千枝「あ、あの……?」

ありす・桃華「…………」

薫「動かなくなっちゃったねー?」


イヴ「子ども達は微笑ましくていいですね~」

ちひろ「よそ見をしない。正座を崩さない」

イヴ「も、もう、許して下さい~」

…………。

11: 2016/12/24(土)04:25:37 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

いつも通りの雑務がひと段落つき、伸びをしつつ天井を見上げる。

P(天井に……輪っかの飾り付け……ああ、仁奈や薫が作ってたやつか……)

24日には事務所でちょっとしたパーティを行う予定がある。それに向けての準備は、着々と進んでいるようだ。

飾り付けは主に年少組の子ども達が。当日の料理やスイーツの類はまゆや、葵、響子、七海……あと、愛梨やかな子が担当して積極的に進めてくれている。

明るく、楽しそうに……まるで、平静を装っている俺が平静でないことを察して気を遣ってくれているかのように。

P「……不甲斐ないな」

一応、事務所のみんなにはクリスマスの本業でイヴは事務所を離れている、と伝えてあるのだが……勘のいい子は俺の態度や様子から察しているのだろう。

イヴが……完全に失踪してしまったことを。

12: 2016/12/24(土)04:26:10 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

暗闇の中、思い出す。

あの日のことを。

…………。

佐城雪美「Pが……意識……してくれない……の……」

市原仁奈「いしきってなんでごぜーますかー?」

福山舞「えっ? そ、それは……その……」

横山千佳「意識っていうのはねー、好きってことだよっ!」

舞「!?」

仁奈「好き……でごぜーますかー」

雪美「うん……そう……」

仁奈「Pはみんなのこと大好きでごぜーますよー?」

雪美「……うん。……でも……それだけじゃ……だめ……」

舞「えーっと……」

千佳「つまり雪美ちゃんはPくんに女の子としてちゃんと意識して欲しいんだよねっ!」

舞「えっ!?」

雪美「……そう……なの」

舞「い、いや……それは……」

仁奈「よく分からねーですが、雪美ちゃんは女の子でごぜーますよ?」

千佳「うーん。なんて言ったらいいのかな?
ただ仲良くなるだけじゃなくて、一緒にいて、もっとドキドキして欲しい……ってことかなっ!」

雪美「うん……そう……。千佳ちゃん……すごい」

千佳「えっへへー!」

13: 2016/12/24(土)04:27:32 ID:0x1

14: 2016/12/24(土)04:28:50 ID:0x1


舞(プロデューサーの年齢で雪美ちゃんにドキドキしてたら変態さんだと思うんだけどなぁ)

雪美「だから……どうしたらいいと……思う?」

舞「ふぇっ!?」

千佳「うーん。手を繋いでみるとか?」

仁奈「抱っこしてもらうといいでごぜーますよ」

舞「え、えっと……」

雪美「それは……もう……した」

千佳「あー。もうお試し済みだったかー」

雪美「だから……舞は……どうしたらいいと思う?」

舞「えっ? わ、私ですかっ!?」

雪美「うん……舞……大人っぽい……。だから……教えて……欲しい」

舞「そ、そんなこと言われても……」

舞「…………」

雪美「…………」

舞「…………」

雪美「…………」

舞「……き」

雪美「……き?」

舞「……き、キス……とか?」

雪美「それも……もうやった……」

舞「やったのっ!?」

15: 2016/12/24(土)04:29:24 ID:0x1

雪美「ほっぺとか……お口にちゅーって……した……のに……頭を撫でて……かわいいなぁ……って言って……ぎゅって……してくれるだけだった……」

舞「しかもお口っ!? ていうか、これ、相談じゃなくてノロケ話ってやつじゃあ……」

雪美「ちがう……相談……」

舞「えー……」

雪美「イヴは……どう思う?」

舞「えっ!? イヴさん? どこに……」

ひょこ。

イヴ「ここですよー」

仁奈「こたつの中でごぜーます!」

千佳「何で顔だけ出してるの? かたつむりみたーい!」

イヴ「極楽過ぎて出られないんです~」

舞(ダメ人間だっ!)

雪美「イヴ……Pと……仲……いい。……ねぇ……どうしたら……いいと思う?」

イヴ「う~ん。そうですね~」

舞(その人に聞いちゃダメだよっ!)

イヴ「難しくてよく分かりませんが~。私の場合、裸になった時は~、いつもPさん、ドキドキしてたような気がします~」

雪美「……はだか……」

舞(やっぱりダメだった!)

16: 2016/12/24(土)04:29:59 ID:0x1

イヴ「特に二人きりの時、不意打ちだと効果的でしたね~」

雪美「……イヴ……すごい……!」

舞「感心してるっ!? マネしちゃダメだよっ!」

P「おーう。ちょっとゴメンなー」

千佳「わっ!? Pくん?」

舞「いつの間に!?」

仁奈「P? どうしたでごぜーますかー?」

P「いや、さすがに教育に悪いかな、と思ってな。……おら、こたつに篭ってないで出てこい。今日は俺が説教してやるっ!」

イヴ「ああ~。頭を引っ張らないで下さい~」

ずるっ!

P「って! 何で服着てないんだよっ!?」

イヴ「全裸で入ってると、また特殊な暖かさと快感が~」

P「事務所でやるなっ。せめて家でやれっ!
いや、やっぱ家でもやるなっ。人として!」

イヴ「ええ~っ。そんな~」

P「ああ、もう! いいからとっとと服を着ろっ。
金輪際こんなことするなよっ! 絶対だぞ! 約束しろ。次こんなことしたら、そのままウチから放り出すからなっ!」

イヴ「ひどいです~」

舞(……ウチからって……)

仁奈「仲良しでごぜーますねー」

千佳「おとなだねー」

雪美「……イヴ……すごい……!」

舞「憧れちゃダメだよっ!?」

…………。

17: 2016/12/24(土)04:30:23 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

P「ただいまー」

P「…………」

P「…………」

P「……いない……な」

静謐な空気に身震いしながら……台所に向かう。

P「晩飯……は作らなくでいいか」

『急にいなくなったりはしないので、心配しなくても大丈夫ですよ~』

P「……いなくなってるじゃねーか」

P「約束……どうすんだよ……」

P「…………」

P「未練たらしいなぁ、俺……」

P「…………」

今夜は……暖房をつけずに眠ろう。

18: 2016/12/24(土)04:30:54 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

暗闇の中、思い出す。

あの日のことを。

…………。

的場梨沙「イヴの夜は無理だけど、当日の夜はパパと過ごせることになったの!」

結城晴「ふーん……」

梨沙「パパと一緒に過ごすために、おしゃれなパスタのお店も予約したわ」

晴「あー。前にPに連れて行ってもらったって嬉しそうに言ってたスパゲッティ屋さんかー」

梨沙「っ! Pは関係ないでしょっ! お、お店の雰囲気は気に入ったからパパとのデートの参考にしてやったのよ。
アイツもたまには役に立つわねっ!」

晴「へーっ……」

梨沙「それにほらっ! パパにプレゼントも用意したのよ。ラッピングだって自分でしたんだから」

晴「おおー。でけー。
……張り切ってんなー。オレもプレゼント貰えるのは楽しみだけど、そこまでテンションは上がんねーわ」

梨沙「なによ。さめたフリしちゃってさ。……昨日からPの前でクリスマス当日は予定なくて暇アピールしてるくせに……」

晴「はっ? はーっ!? ねーし。してねーし。そんなんお前の気のせいだしっ!」

梨沙「……ふん。よく言うわ」

20: 2016/12/24(土)04:32:34 ID:0x1

晴「そ、そういう自分だってその大きなプレゼントの箱の横にある小さいのはなんだよ!
誰にやるんだよっ!」

梨沙「うっ。……うるさいわね。誰でもいいでしょ。なんとなく買っちゃったのよ。なんとなく。
普段ちょっぴりお世話になってるから、ついでみたいなもんで……アイツにもやっていいかなーって……」

晴「ほら、やっぱりPのじゃねーか!」

梨沙「う、うるさいうるさい。ついでよ。ついで。その証拠にパパのに比べてこんなにちっこいし……。
ほ、ほんとはパパの分はもっと大きな箱を用意して、アタシ自身が入って、プレゼントはアタシ、ってしようと思ったりもしたんだけどね!」

晴「い、いや……それは流石に……」

梨沙「そうね。流石にイタイし、ないわーって思って、思いとどまったわ」

輿水幸子「えっ!?」

梨沙「要するに、アタシのパパへの想いはそれくらい大きいってことよ!
あのヘンタイなんかにとは比べものにならないくらい!」

晴「……まぁ、お前がそういうヤツだってのは知ってたけどさ……ん?」

梨沙「……何よ? どうかした?」

晴「いや、その……その大きい方のプレゼントのラッピングは星の模様なのに、Pへプレゼントは……」

梨沙「!?」

晴「ハー…」

梨沙「ちがうからっ! たまたまお店の人が間違ってその包装紙使っちゃっただけだからっ!」

21: 2016/12/24(土)04:33:07 ID:0x1

晴「いやでも、さっきお前、ラッピングも自分でしたって……」

梨沙「ぐうぜん! 偶然、大きいのは星模様しかなかったの!」

晴「いや、それでPのぶんにハー…」

梨沙「あーっ! あーっ! あーっ!!」

佐藤心「呼んだ~?」

梨沙「呼んでないわよっ! 消えなさいっ!」

心「……ひどくね?」


イヴ「クリスマスはイヴも当日もPさんの競争率高そうですね~」

ブリッツェン「ブフルルルッ……」

…………。

22: 2016/12/24(土)04:34:22 ID:0x1

23: 2016/12/24(土)04:34:45 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

暗闇の中、身じろぎすら碌にできないまま、つぶやく。

イヴ「このままだと……Pさん争奪戦には……不参加で不戦敗ですね~」

静寂の中、自分の声だけが反響して耳に残った。

24: 2016/12/24(土)04:35:09 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

横開きのガラス戸を開け、庭の隅にいる獣に声を掛ける。

P「お前はまだいてくれるんだな……ブリッツェン」

ブリッツェン「…………」

ブリッツェン「……ブシッ」

P「…………」

P「……部屋に上がってもいいんだぞ?」

ブリッツェン「…………」

ブリッツェン「…………」フルフル

P「…………」

P「……そっか」

今となっては、このトナカイだけがイヴが居たという確かな証だ。

ほんの数日会わないだけで、彼女は夢か幻だったのではないかと思わされている。
そのくらいに……彼女の存在は、不思議で不確かだった……。

P「…………」

P「……お前のご主人様は……どこに行っちゃったんだろうな……」

ブリッツェン「…………」

ブリッツェン「……ブシッ」

P「…………」

P「……なんか……汚れてもいい毛布とか探してくるわ」

25: 2016/12/24(土)04:35:41 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

暗闇の中、思い出す。

あの日のことを。

…………。

城ヶ崎莉嘉「ねー、お姉ちゃん。クリスマスにPくんとどっか行ったりしないのー?」

城ヶ崎美嘉「は、はーっ? 別にそんな予定はないけど?
そもそもアイドルがクリスマスに、お、男の人とお出掛けってご法度でしょ」

莉嘉「ふーん……。でも、当日の夜は楓さんと食事に行くみたいだよー?」

美嘉「!?」

美嘉「ふ、ふーん。そ、そうなんだー……」

莉嘉「クリスマスはまだ先なのに、手を回すのが早いよねー。さすが楓さん」

美嘉「…………」

莉嘉「…………」

美嘉「……あ、あのさ……。P……ま、まだ当日のお昼とかだったら……予定……空いてるかな?」

莉嘉「あ。そこはアタシが予約済み」

美嘉「!?」

莉嘉「お姉ちゃんの部屋の机にあった雑誌のクリスマスデートの特集、参考にしちゃった☆」

美嘉「えっ……。ええ……」

莉嘉「あっ。でもー?」

美嘉「な、なに?」

27: 2016/12/24(土)04:37:45 ID:0x1

莉嘉「Pくんもさすがにまだ午前中までは予定……入れてないかもー?」

美嘉「!!」

莉嘉「……まぁ、時間の問題だろうけどねー」

美嘉「…………」

莉嘉「…………」

美嘉「……莉嘉」

莉嘉「ん。なに?」

美嘉「ちょ、ちょっと今から向こうの応接間で電話してくるから……ついてこないでね」

莉嘉「うん。りょうかーい☆」

美嘉「…………」

美嘉「…………よし」

バタン

莉嘉「ほんと、お姉ちゃんは世話が焼けるんだから。
……あとは当日、アタシが予定をキャンセルしたら、お姉ちゃんが半日以上Pくんを独り占めだよねー☆」

莉嘉「…………」

莉嘉「……もったいないかな?」



イヴ「仮眠室の壁って意外と薄いんですね~」

…………。

28: 2016/12/24(土)04:38:22 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

狭く息苦しい闇の中、何度目か、何十度目かの身じろぎを……抵抗を試みる。

…………!

…………!

やはり……ビクともしない。
自由になるのは辛うじて左腕だけ。
他はほとんど固定され、ほぼ完全に自由が奪われてしまっている。

ほんの下見のつもりだったのに……こんなことになってしまうとは……。

イヴ「Pさん……心配してますよね~」

ひと気のない通りの、ひと気のない民家。
そこに見つけた今時珍しい煙突に……登り、潜ってしまった結果がこれだ。

完全に引っ掛かり、動けなくなってしまった。

声をあげても筒状の空間の中、反響するばかりで、誰も助けに来ない。

自力での脱出も……かなり難しそうだ。

イヴ「…………」

イヴ「寒さには慣れていますが~」

ぐぅ~。

イヴ「お腹が空きました~」

29: 2016/12/24(土)04:38:52 ID:0x1

何度か意識は途切れ、睡眠はとっている……が、食事はどうしようもない。
体質上、凍氏の可能性は低めだが、そろそろ餓氏の可能性が出てきそうだ。

眠っている間に……意識を失っている間に、色んな夢を見たような気もする。

それこそ……走馬灯のように。

イヴ「左腕で届く範囲に……何か道具は……」

そこで……なぜ今まで気づかなかったのか、ポケットに小さな刃物を見つけた。

イヴ「いえ……」

気付かなかったわけではない。気付かないフリをしていただけだ。

これは……できれば取りたくない、最後の手段だったから……。

イヴ「でも~。もう……限界です~」

もう分かっているはずだ。

決心するべきだ。選択をすべきなのだ。

このままクリスマスをここで過ごし、誰にも気付かれないまま、独り息絶えるくらいならば……たとえ、大切なものを失うことになっても……。

取り返しがつかないことになるとしても……。

自分は覚悟を決めて、この刃を突き立てるべきなのだと……。

イヴ「すーはー。……。すーはー……」

ごめんなさい。

イヴ「…………」

イヴ「……いきます」

ひとり、そう呟き。

刃を、動かぬ右腕に向かって振り下ろした。

30: 2016/12/24(土)04:39:28 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

クリスマスイヴ。その夜。
俺は自宅の庭で一人、夜空を見上げていた。

息は白く、身は凍えるよう。

身体は10分と待たずに芯まで冷え切ってしまった。

もう暫くしたら事務所でのクリスマスパーティーが始まる。
俺もそろそろ向かわねばならない。

視線を巡らせ、庭の隅へと移す。
そこではここ何日か変わらぬ様子のトナカイ、ブリッツェンが

ブリッツェン「…………」

俺に倣うように、夜空を見上げ、白い息を吐いていた。

P「…………」

P「……なぁ、お前の……ご主人様は……」

ブリッツェン「…………」

ブリッツェン「…………!」

むくり。

P「……えっ?」

それまで忠犬のように殆ど身動きすらしなかったブリッツェンが、ふいに立ち上がる。

P「……ど、どうしたんだ? 急に……」

ブリッツェン「ブルルルルッ!!」

俺の言葉に反応したのか、してないのか、ブリッツェンは突如嘶き、そして……。

P「お、おいっ!? ブリッツェンっ!?」

庭の柵を飛び越え、走り出した。

31: 2016/12/24(土)04:40:08 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

必氏だった。

見失ってはいけない。絶対に見失ってはいけない。

あいつは、あのトナカイは、俺とイヴの間に残された最後の?がりなのだから……!

必氏に、運動不足で鈍りきった両脚を動かし、その獣の後を追う。

追いつけるはずもない。しかし見失わないように。見失っても脚音と気配を頼り、追い掛け、走り続ける。

見失ってはいけない。失ってはいけない。彼女との?がりを失ってはいけない。

彼女を、失ってはいけない。

冷気に鼻が痛い。顔は刺すように冷たいのに、全身から汗が噴き出る。

乾燥した空気に喉が痛み、少し血のような味がする。

しかし俺はどうにかその獣に食らいつき、追いつき、そして……そこに辿り着いた。

P「…………」

イヴ「…………」

P「…………」

イヴ「あ~。Pさんだ~。お、お久しぶりぶりです~?」

P「…………」

32: 2016/12/24(土)04:40:49 ID:0x1

心配するように身を寄せるブリッツェンに、力なくもたれ、弱々しい笑みを浮かべる彼女、イヴ・サンタクロース。

数日ぶりに出会えた彼女に、様々な感情が入り乱れ、俺は言葉を失う。

しかし、いつまでも黙ってはいられない。目の前の彼女の姿に……目を逸らしたくなっても、逸らし続けるわけにはいかない。

ただ一つ。たった一つ。言うべきこと、俺が言わねばならないことがある。

あるはずだ。

すーっ。

息を吸う。

はーっ。

息を吐く。

すーっ。

もう一度思い切り吸い込み、そして一息に、

P「って! なんで裸やねんっ!!」

過去何度かした記憶のある、ツッコミを叫んだ。

33: 2016/12/24(土)04:41:36 ID:0x1

イヴ「え~っと~。たまたま入った煙突が古くてボロボロだったみたいで~。
服のあちこちが引っ掛かって、まったく身動きが取れなくなっちゃったんですよ~」

P「はぁっ?」

イヴ「それで~、結構長い間、格闘してたんですけど~。
最終的には諦めて~、全身の服を切り裂いて脱出してきちゃいました~」

P「はぁっ?」

イヴ「百均の缶詰用に十徳ナイフを持ち歩いてたのが幸いしましたね~」

P「はぁっ?」

イヴ「あの~Pさん? なんだか語彙が~」

P「…………」

ブリッツェン「…………」

イヴ「…………」

P「…………」

ブリッツェン「…………」

イヴ「…………」

P「……帰るか。ブリッツェン」

ブリッツェン「…………」コクリ

イヴ「ああ~。見捨てないで下さい~」

……酷いオチだ。

34: 2016/12/24(土)04:42:56 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

P「って、全身冷え切ってるじゃねーか。
もうすぐ迎えの車がくるからこれ、羽織っておけ」

俺は下着姿のイヴに身に付けていたコートを被せ……ついでにそのコートの中から、それを取り出す。

P「って冷たっ! 両手共もう体温ゼロじゃねーか。凍傷になってないか? これも付けておけ」

俺にされるがまま、手袋をつけられながら、イヴは、ふにゃりと笑う。

イヴ「いえ~。サンタクロースなんで寒さには強いんですけどね~。さすがに指先の感覚がないです~」

P「…………」

P「……みたいだな」

ブリッツェン「……ブシッ」

イヴに寄り添う毛むくじゃらの物体が何度目かのクシャミをしたところで、遠くからクラクションの音が聞こえてきた。

イヴ「…………」

P「…………」

イヴ「……大変ですPさん」

P「……ん。どうした?」

35: 2016/12/24(土)04:43:20 ID:0x1

イヴ「……寒さのせいか、幻覚が見えるんです~」

P「……ほう」

イヴ「……あの車、運転席に誰も乗っていません」

P「……奇遇だな。俺にもそう見える」

キキッ!

ウィーン。

車のウインドウが開き、そこから声が聞こえてくる。

日下部若葉「お待たせしました~。 さぁ、乗って下さい」

センター分けのおデコと勇ましくあげられた拳の親指だけが、俺たちの視界に辛うじて存在を主張する。

P・イヴ「……ですよね~」

無事帰宅できるか否か、かなりオッズの高い賭けになりそうだ。

36: 2016/12/24(土)04:43:54 ID:0x1

37: 2016/12/24(土)04:44:37 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

P「おう。とりあえず無事だよ。この後、風呂に入れて身体を温めさせるつもりだ。
ああ、だから悪いけど、パーティーはそうしてもらえると助かる。
そうだな、それくらいで。よろしく」

ピッ

若葉「どうなりましたか~?」

通話を終えた俺に、運転席から若葉が問いかけてくる。

P「クリスマスパーティーについては、開催場所を俺の家に変更することにしました。
飾り付けをした子ども達には悪いですが、その方が色々都合が良さそうなので」

若葉「なるほど~」

P「そんなわけで、若葉さんには俺達を送り届けた後、事務所の方にみんなと料理を回収しに行って欲しいんですが……」

若葉「分かりました~。けど、本当にイヴちゃんを病院に連れて行かなくて大丈夫なんですか~?」

イヴ「ええ~。大丈夫です~。Pさんに買ってもらった缶コーヒーで大分あたたまってきました~」

P「見る見る間に血色も良くなってきましたからね。本人の言う通り、どうやら体質的に寒さには強いみたいです」

缶コーヒーを買う為に寄ったコンビニの駐車場で、たむろしていた不良達が蜘蛛の子を散らすように逃げていったことには、触れないでおいた方がいいのだろう。

近隣で亡霊ドライバーの怪談が生まれないことを祈るばかりだ。

若葉「そうですか~。でもまた体調がおかしくなったらいつでも言ってね~。イヴちゃん」

イヴ「はい~」

しかし若葉がイヴを『ちゃん』呼ばわりするのには違和感ありまくりで仕方ないな。

38: 2016/12/24(土)04:45:30 ID:0x1

イヴ「? あれ?」

人心地ついたはずのイヴがふいに、小首を傾げる。

若葉「どうかしましたか~?」

イヴ「い、いえ~。そ、その~。色々と感覚が戻ってきたら~、ちょっと違和感というか~。あれ~?」

若葉「?」

しきりに不思議そうな顔をするイヴに、若葉もまた、疑問符を浮かべる。

P「…………」

どうでもいいけど、運転に集中して下さい。もの凄く怖いです。

P「い、イヴもまだ本調子じゃないんですよ。あ、そこ、右に曲がった所で止めて下さい」

若葉「は、はい~」

キキッ

P「はい。到着。イヴ降りるぞ。自分で歩けるか?」

イヴ「は、はい~。け、けど、あの~、Pさん?」

P「よし。じゃあ、降りろ。なんなら手を貸すぞ。ほら」

イヴ「あ、す、すみません~」

若葉「…………」

若葉「むー……」

P「うん? どうかしましたか、若葉さん?」

若葉「別に……なんでもありません。ただ、この後しばらく二人きりになるからって、変なことしちゃダメですよ~」

P「な、何言ってるんですか。しませんよっ!」

若葉「ふん。どうだか~。男の人は所詮、若い娘がいいんですよね~」

P「何なんですか、それは……」

そういうことを貴女がいうと、これ以上ないくらいに違和感があるんですってば。
ていうか、イヴとほぼ同い年ですよね?

39: 2016/12/24(土)04:46:10 ID:0x1

P「よし、行くぞイヴ」

イヴ「ひゃ、ひゃいっ!?」

若葉「? イヴちゃん、お顔が真っ赤ですよ~。本当に大丈夫ですか~?」

イヴ「だ、大丈夫ですっ!!」

若葉「…………?」

P「…………」

ブロロロ……。

P「色々あったが……」

無人で走り去る車を見送り……。

無事イヴを連れて……帰宅、と。

ガチャ

P・イヴ「ただいま~」

P・イヴ「…………」

P・イヴ「…………」

P・イヴ「お帰りなさい」

P・イヴ「…………」

P・イヴ「…………」

P・イヴ「あ」

P・イヴ「ブリッツェン……忘れてきた……」

車には載せられないからね。
仕方ないね。

40: 2016/12/24(土)04:46:52 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

30分後……風呂から上がったイヴは、頭からほかほかと湯気を上げながら、リビングへと入ってきた。

イヴ「お湯、いただきました~」

P「うい。ココアとスープ作ったから、料理が届くまで、まずこれを飲んでおけ」

イヴ「はい~」

P「…………」

イヴ「ぷはぁー。あ~。染み渡りますぅ~」

P「……そっか」

イヴ「はい~。……ところで~、Pさん?」

P「…………」

P「……はい」

イヴ「私が言いたいこと~分かりますよね~?」

P「な、なんでしょうか?」

イヴ「とぼけないで下さい~。いくらなんでも、これは酷いんじゃないですか~?」

P「…………」

P「……ご、ごめんなさい?」

おそらく湯上りや、スープなどとは関係なく、顔を真っ赤にしたイヴが珍しく眉を立て、怒る。

イヴ「こういうのはちゃんとムードとか、手順を考えてくれないと~」

そう言いつつ、彼女が差し出した左手の指先には……指輪が。

41: 2016/12/24(土)04:47:29 ID:0x1

イヴ「手袋をつけさせるどさくさで、薬指に無理やりハメるなんて、ちょっとズルくないですか~?」

P「……はい。ごもっともです。ほんと、チキンですみません」

イヴ「本当に~……。チキンなんだか、大胆なんだか~」

状況はどうあれ、再会に感極まって暴走しちゃったんだよ!
本当はちゃんとクリスマスパーティーの時にみんなの目を盗んで渡すつもりだったんだよ!

イヴ「車の中で気がついて、泣きそうになったんですからね~」

P「…………」

P「……そ、それは……つまり……その……嫌では……なかったんです……よね?」

イヴ「む~。当たり前じゃないですか~。元々約束してたことではありますし~。
私がPさんを拒むわけがありません~」

P「!!」

イヴ「でも~。まだこのままじゃ受け取れませんし、返事もできません~」

P「…………」

イヴ「……わかりますよね?」

P「…………」

P「……ああ、そうだな。じゃあ、あらためて……」

イヴの手に自分の手を重ね、ゆっくりと告げる。

P「20歳の誕生日、おめでとうイヴ。その指輪は以前約束したもの、そして、俺の気持ちだ」

ここまできたら勇気は必要ない。必要なのはただ、まっすぐな言葉だけだ。

P「こんな大切な場面でもグダクダな俺だが、必ず幸せにしてみせる。
だから……俺と、結婚して下さい」

イヴ「…………」

イヴ「はい」

イヴ「よろこんで!」

こうして、何度か折れそうになりながらも、俺のプロポーズは無事成功に終わった。

42: 2016/12/24(土)04:48:11 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

P「そういえばさ」

ソファーで身を寄せ、イヴに問いかける。

P「なんでもっと早く抜け出してこなかったんだ。出ようと思えば出られたんじゃないのか?」

イヴ「……服が引っ掛かってどうしても抜け出せなかったんですよ~」

P「でも最終的には抜け出せたんだろう? もっと早くに服を捨てておけば……」

イヴ「…………」

P「…………」

イヴ「わ」

P「わ?」

イヴ「笑いませんか~?」

P「……いや、唐突にそれだけ聞かれてもな。あ、うん。笑わない笑わない。だからグーで顎を殴るな。
揺れる。脳が揺れるから」

イヴ「む~。それは~。約束だったからですよ~」

P「約束?」

イヴ「この前の、コタツの時、Pさん、怒って言ったじゃないですか~。次、裸になったら、そのままウチから放り出すって~」

P「……はい?」

イヴ「そういうんじゃないって~、分かってはいたんですけど~。けどけど~。
公衆の面前で、また全裸になったら~、今度こそPさんに捨てられちゃうんじゃないかって~心配だったんです~!」

P「……はい?」

43: 2016/12/24(土)04:48:43 ID:0x1

イヴ「だ、だって~。Pさんに捨てられたら私、どうしたらいいか~!」

P「……はい?」

イヴ「あの~? Pさん? また語彙が……」

P「あー……。すまん。なんか予想外にアレ過ぎて、ちょっとツッコミも思いつかん」

イヴ「あ、あれってなんですか~! これでも結構本気で気にしてたんですからね~」

あー、うん。わかるよ。わかるわ。
子どもの頃、よくあったよね。
親が「悪い子にはブラックサンタがやってくるよ~!」とか、「あんまり言う事聞かなかったら鈴木さん家の子になってもらうからね!」とか「あんたは実は橋の下で拾ってきた子なんだよ」とか?
言った本人はそこまで本気で言ってない、ただの冗談だったとしても、言われた当人は予想外に深刻に受け止めて、意外と傷ついてるパターン。
うん。あるある。よくあるね。

P「って、子どもかいっ!!」

イヴ「こ、子どもじゃありません~。今日から二十歳ですから大人です~!」

P「いや、子どもだね! まだ子どもだね! もう思いっきり子どもだね!」

あーあ。 なんだよこれ! なんなんだよこれ!
俺、捨てられたかも?とか本気で考えてたのに……ほんと、なんてオチだ!

イヴ「むぅ~。ひどいです~!」

ぐいっ。

P「ちょ、こらっ。まて、押すなって……あっ!?」

どん。

44: 2016/12/24(土)04:49:24 ID:0x1

P「ぐふっ!?」

急に掴み掛かってきたイヴの勢いと体重を支えきれず、俺はのしかかってきたイヴ諸共、ソファから転げ落ちる。

P「っ痛ーっ。あ、頭打った……あのなぁ、イヴ……うん? イヴさん?」

転げ落ちたままの姿勢……俺の上に馬乗りになったイヴが、今まであまり見た事がない顔で呟く。

イヴ「Pさん……私、実は……サンタじゃないんです」

P「…………」

P「……はい?」

なんか急にとんでもない事を言い出した彼女に、今日何度目かの間の抜けた疑問符を返す。

イヴ「いえ、サンタではあるんですけど、厳密にはまだ半人前のサンタなんです」

P「……はぁ」

イヴ「えーっと。サンタクロースになるには、幾つか条件がありまして……私はまだそれを全部は満たしていなかったんですよ~」

P「う、うん」

イヴ「一応、長老の直系ってことで、特例として正式なサンタライセンスは持っていましたが~。やはり業界では半人前扱いですね~」

P「ら、ライセンスって……」

どんな世界観だ。

イヴ「ちなみに、こういった一族直系のサンタクロースを、真血、もしくは純粋種っていいます~」

P「強そう」

イヴ「けど~。今日、Pさんにこの指輪を貰ったことで~、条件の一つはクリアしました~」

P「ほ、ほう?」

イヴ「ぶっちゃけ~。既婚者じゃないとダメなんですよ~、サンタクロース」

P「ま、マジでか……」

45: 2016/12/24(土)04:50:09 ID:0x1

それは知らんかった。

イヴ「はい~。だからそういう意味でもPさんには、とても感謝してます~」

P「そ、それは良かった? いや、まぁ、正式にはまだ結婚してないけどね……。うん。ど、どういたしまして?」

イヴ「それで~、Pさんはこの指輪を渡す時、誕生日おめでとう、って言ってくれたじゃないですか~?」

P「うん……言ったよ?」

イヴ「私~、誕生日プレゼントの他に、クリスマスプレゼントも欲しいです~」

P「へっ!?」

イヴ「誕生日とクリスマスが一緒だからって、まとめちゃうのはズルいと思うんですよ~」

P「厳密にはクリスマスイヴだけどね……。ていうか、さっきから要領を得ないな……。
結局……イヴは何が欲しいんだ?」

イヴ「も」

P「も?」

イヴ「もう一つの……サンタクロースの資格に必要な……ものを……私に……く、下……さい……」

P「うん? いや、まぁ、それくらいなら……構わないけど……。
ていうか、俺にあげられるものなのか?
ぶっちゃけ、金はそんなにないし、サンタ業界?へのコネもないぞ?」

46: 2016/12/24(土)04:50:35 ID:0x1

イヴ「はい~。Pさんにも出来ること~。むしろPさんにしか出来ないことですよ~」

P「ほ、ほう? なんだろうな?
あ、あと、イヴ、近い。近いよ。目もなんか怖いっ!」

イヴ「怖くないです~。怖くない。大丈夫です~。天井のシミを数えてる内に終わりますから~」

P「えっ? 何それ? 何それ? なんか嫌な予感が……」

イヴ「Pさん……」

P「い、イヴ? イヴさん!? ちょっ、何をっ!?」

イヴ「Pさんは……ど、どっちがいいですか~?」

P「な、なにがっ!?」

イヴ「そ、それも両方……欲しいです……か?」

P「だから……なんの話っ!?」

イヴ「P……さん……」

P「ちょ、まっ……んむっ!?」

…………。

………。

……。

…。

47: 2016/12/24(土)04:51:15 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

サンタクロース受験資格

①結婚している事

②子供がいる事

③サンタの活動経験がある事

④サンタにふさわしい体型であること

※ ※ ※ ※ ※



明るい家族計画エンド。

48: 2016/12/24(土)04:51:46 ID:0x1

少しまとまった時間ができたので、突貫1日で書かせて頂きました。
(洋画127時間を視聴しながら)
イヴイヴに何をしてるんでしょうか。
計画性がなくて、すみません。

イヴ誕生日おめでとう!
雪歩もおめでとう!

色々と失礼しました。

51: 2016/12/24(土)04:54:48 ID:0x1

※ ※ ※ ※ ※

キキッ。ガチャ、バタン。

佐久間まゆ「ふぅ、やっとPさんのお家に着きましたぁ」

五十嵐響子「何度もお巡りさんに止められたせいで時間が掛かっちゃいましたねー」

首藤葵「まぁ、運転手が運転手やし、仕方ないっちゃ」

若葉「むー。仕方なくないですよ~! しかも他の子のぶん、まだ何往復かしなきゃダメですし~」

薫「お巡りさん達、みんな真っ青だったねー!」

仁奈「すげー、震えてやがりました!」

浅利七海「れすー!」

まゆ(まぁ、ぱっと見、心霊現象以外の何物でもないですからねぇ)

まゆ「……あら?」

響子「どうかしたんですか……あれっ?
Pさんのお家の玄関の前に、ブリッツェンが座り込んでますね」

ブリッツェン「…………」

53: 2016/12/24(土)04:57:05 ID:0x1

若葉「どうしたんでしょうか~? 中に入らないのかな?」

仁奈「どうしたんでごぜーますかー?」

薫「寒くないのー?」

ブリッツェン「…………」

響子「身動きひとつしませんね。うーん。
あのー……。ブリッツェンさん? そこに居座られると、私達がPさんのお家に入れないんですが……」

ブリッツェン「ブルルルッ」

薫「頭ふってるー!」

まゆ「……ここを退きたくない……ってことでしょうか? 困りましたね……」

葵「りょ、料理を持ってる手が痺れてきたっちゃ……」

仁奈「うー? どうしたでごぜーますかー? お腹痛いんでごぜーますかー?」

ブリッツェン「…………」

ブリッツェン「……ブヒュルル」

仁奈「う? それはどういう意味でごぜーますか?」

ブリッツェン「……フルルル」

仁奈「ふんふん……」

響子「仁奈ちゃん……会話してる?」

薫「仁奈ちゃんはよくブリッツェンさんやアッキーやペロとお話ししてるよー?」

まゆ「言葉が分かるんでしょうか……もしそうだとしたら、すごいですねぇ」

54: 2016/12/24(土)04:58:15 ID:0x1

仁奈「ふんふん……」

仁奈「うーん? よく分からねーですが、仁奈は妹と弟だったら、妹が欲しいでごぜーます。
大きくなったら、一緒にお揃いの着ぐるみを着てーです!」

まゆ・響子「…………」ぴくっ。

若葉「妹? 弟? なんの話ですか~?」

薫「ブリッツェンさん、なんて言ってるのー?」

仁奈「よく分からねーですが、もし兄弟が生まれるとしら、男の子と女の子どっちが……」

ぶわっ!!

仁奈「!? ブリッツェンの毛が急に逆立ちやがりました!」

ブリッツェン「…………!!」

まゆ「……うふふ」

響子「……あ、まゆさん。私の……愛用のこれも使って下さい……」

まゆ「…………」カチ

葵「口に一本、両手に三本ずつの包丁……こ、これがあの有名な、まゆさんの戦闘態勢!」

七海「佐久間まゆ、セブンスソードれすー!」

若葉「ええっ!?」

まゆ「……まだです」

響子「えっ!?」

まゆ「…………」チラリ

七海・葵「!!」

55: 2016/12/24(土)04:58:40 ID:0x1

七海「これを~。七海の愛用の包丁れす~」

葵「あ、あたしのもー!」

まゆ「…………」ジャラ

響子「こ、これは!」

葵「衣装のフリルにも刃を仕込んだ全身凶器!」

七海「佐久間まゆ、フルセイバーれすーっ!」

若葉「な、なんでやねんっ!!」

薫「わっ!?」

仁奈「若葉おねーさんが関西弁でツッコンだでごぜーます!」

若葉「だ、だって~。他にいないから~」

まゆ「さぁ、ブリッツェン……いえ、まゆの恋路を邪魔する悪いトナカイさん?」

ブリッツェン「…………」

まゆ「そこを退かなければ……まゆが実力で……排除しますよぉ……」

ブリッツェン「…………」むくり。

薫「ブリッツェンさんが……立った!」

葵「二本脚で立っとるっちゃよ!?」

仁奈「チョッ◯ーみてーです」

56: 2016/12/24(土)04:59:07 ID:0x1

まゆ「なるほど、あくまで退くつもりはない。正面から受けて立つ……と」

ブリッツェン「…………」

響子「こ、これは……一体どっちが勝つか、まったく分からないっ……!」

葵「そう……これが……!」

響子「プロダクションの存亡をかけた……!」

葵・響子「対話の始まりっ!!」

七海「なんなんれすかねー。このノリは……」

若葉「ああっ!? 七海ちゃんが急速にさめて無責任なことをっ!?」

まゆ「佐久間まゆ、悪いトナカイを……駆逐します!」

仁奈「対話じゃなかったんでごぜーますかっ!?」

ブリッツェン「…………!!」

その後のまゆとブリッツェンの闘いはおよそ20分以上にも渡り続いたが、非情になりきれないブリッツェンは一瞬の隙を突かれ、玄関を突破されることとなる。

そして、まゆは無事、お風呂上がり『直後』のイヴの元へとたどり着き、Pの窮地を救ったという……。

最後まで、まゆに打撃を加えることなく、防戦一方のまま敗北したブリッツェンだったが、冬毛の何割かを失いつつも、その表情はなぜかとても満足気だったそうな……。

なお、翌日よりカリスマギャル城ヶ崎美嘉と新緑の淑女高垣楓が参戦し、独占欲を見せるようになったイヴと更なる氏闘を繰り広げることになるのだが、それはまた別のお話。


おしまい。

49: 2016/12/24(土)04:53:48 ID:0x1

引用元: 【デレマスSS】イヴ「イヴの夜に」 モバP「イヴがいない」