1: 2014/08/24(日)23:29:24 ID:dx7fV6HcR

 また娘のミカがベランダから飛び降りようとしてた。
 
 理由がわからない。

 なんかいろんな感情とおりこしてムカついた。
 思わずミカをぶったたきそうになった。

 でもこらえて、なんとか止めるのにせいこうした。

8: 2014/08/24(日)23:32:40 ID:dx7fV6HcR

 今週にはいって2回目。
 今月に入ってからはもう、かぞえきれない。

 「なんで氏のうとするの」ってたずねても、なんも言ってくんない。

 ていうか最後にこの子の声きいたの、いつだろ。
 考えてもわかんないから、考えるのがイヤになる。

11: 2014/08/24(日)23:36:59 ID:dx7fV6HcR

 わたしの半分もいきてないくせに同じ目してる、わたしと。
 いつからこんなふうになったのかは、おもいだせない。

「ねえ。飛びおりるのも禁止ってやくそくしたよね、ママと」

 いつものようにうなずくけど、
 きっとミカは、またベランダの手すりをよじのぼろうとする。

 しばらくお互いにだまってたら、インターホンがなった。

17: 2014/08/24(日)23:39:50 ID:dx7fV6HcR

 とびらをあけると、隣人のババアが不機嫌そうな顔をだした。
 人づきあいはキライ。ババアが相手ならなおさら。

 ババアの目線はいやらしい。

 すぐに人の家をのぞき見ようとする。

 「なんですか?」というわたしの質問に、ババアがはなをならす。

「あんたの家、うるさいんだけど」


 そのあとに小言がつづいた。
 なんどもあたまをさげる。

23: 2014/08/24(日)23:42:42 ID:dx7fV6HcR

「ただしい教育をうけないと、あなたとあなたの娘みたいになるのね」

 さいごにそう言って、ババアはどっかにきえた。

 とびらをしめて、誰にもきこえないようにため息をつく。
 となりの家は3人家族で、ことし、いちばんうえの子が受験らしい。
 ゆうめいな大学にいかせたいんだろうね。

 ていうか、ただしい教育ってなに。

 自分でかってに作った正解にそって育てることかな。


 へやにもどるとミカが首しめてた、わたしのベルトで。

31: 2014/08/24(日)23:46:29 ID:dx7fV6HcR

 意識がとおくまでいきそうになった。

 気づいたときには、ミカをぶったたいてた。

 ミカはちっちゃいから、予想外にとんでしまう。
 いいたいことはたくさんあったけど、言葉にならなかった。

「やくそくしたばかりだよね」

 あいかわらずの無表情だったけどミカはうなずかない。

 そうか、やくそくしたのはベランダから飛びおりないことだけか。

40: 2014/08/24(日)23:50:24 ID:dx7fV6HcR

 わたしはミカにしちゃいけないことを教えた。


 ベランダから飛びおりること。
 壁にあたまをドンドンぶつけてうるさくすること。
 おふろに入っておぼれようとすること。
 ママのベルトで首をしめること。


 ぜんぶ禁止にした。

「こんどはまもってよ、ママとのやくそくだよ」

 ミカはいつものようにうなずいた。

44: 2014/08/24(日)23:54:29 ID:dx7fV6HcR

 ゴミとほこりにまみれた部屋で、わたしとミカは仲よくテレビを見ていた。

 主人公が母親にむかって、
 「産んでくれなんてたのんでねえよ」とどなる場面だった。

 だけどそれって、親もおなじだと思う。

 うまれてほしかったのは、自分にとって都合のいい子なんだよね。
 デキがよくて、言うことはなんでも聞いて、親おもいのいい子。

 「なんで氏のうとするの?」ミカの手をにぎって聞いてみた。
 
 でも、やっぱりなんも言ってくれない。

48: 2014/08/25(月)00:00:07 ID:q2jCWxJAH

 ひょっとすると家がいけないのかも。
 駅から遠いかわりに、安いアパート。

 わたしのかりた部屋は、いわくつきってことで三万前半で借りられてる。

 そうだ、娘にわるいなにかがとりついてるのかも。
 だから塩をまこうと思った。

 でも部屋がぐちゃぐちゃすぎて、塩が見つからなかった。
 だからその日はミカを抱いてねた。

 朝起きたら、ミカが腕からきえてた。

53: 2014/08/25(月)00:08:56 ID:q2jCWxJAH

 でもなにかしようとはおもえなかった。
 それよりも先にケータイで時間をかくにんする。

 仕事にいかなきゃならない。

 おふとんから顔をあげたらミカが、わたしを見おろしてた。

55: 2014/08/25(月)00:14:24 ID:q2jCWxJAH

 なんか朝ってすべてがどうでもいいから、あいさつもしなかった。

 いつものように仕事にいくことにする。

「ミカの好きなおかしとお塩を買ってくるからね」

 玄関までついてきたミカにそういったけどへんじはない。

 

59: 2014/08/25(月)00:22:05 ID:q2jCWxJAH

 仕事がおわって家に帰ったら、ミカが包丁にぎってた。


 にぎってるだけだったの。
 なのに、わたしの顔みたとたんに自分のおなかにさそうとするの。

 もうわけわかんなくて、無我夢中でさけんでた。
 包丁とりあげて、またいつものようにどなりつける。

 どうしたらいいのかほんきでわかんない。

64: 2014/08/25(月)00:28:01 ID:q2jCWxJAH

 そうだ、やっぱりそうなんだ。
 ミカはきっと悪い幽霊かなにかにとりつかれてるんだ。

 でもじゃあ、どうしていいかわからないじゃん。

 「なんで氏のうとするの?」って聞くでしょ。
 やっぱりなんにも言ってくれない。
 こういうときに、たよれる知りあいなんていないし。

 とにかく必氏にかんがえた。


 そしたらこたえがでた。

68: 2014/08/25(月)00:33:08 ID:q2jCWxJAH

「ごめんね、ミカちゃん」

 わたしはミカにやさしくいう。

「ほんとうはこんなことしたくないんだよ」

「でも、こうしないとミカちゃん氏んじゃうから」

「だからガマンしてね」

「ミカちゃんはいい子だもんね」

「いい子だからママの言うこと、きけるもんね」

 わたしはミカを身動きとれないようにした。
 ミカはなんにも言わないけど、わたしはあんしんした。

70: 2014/08/25(月)00:38:39 ID:q2jCWxJAH

 そしてほんとうにひさびさに、わたしは安心して寝ようとした。
 でも、熟睡してしまうとわたしもミカのように幽霊にとりつかれるかも。

 玄関から部屋のなかにまで塩はまいたけど、ふあんになった。

 だから、その日は漫画喫茶で寝た。
 熟睡して安心して家に帰ることにした。

 こんなに清々しいきもちはひさびさだった。

72: 2014/08/25(月)00:45:48 ID:q2jCWxJAH

 だけどどうしても、ミカが自分で氏のうとする理由がわからなかった。

 はじめてミカが氏のうとしたとき、ベランダから飛びおりようとした。
 おかし、のどにつまらせようとしたりとかもあったな。
 でも、それぐらいか。

 家について、まっさきにミカのようすをかくにんする。

 さいしょ、なにが起きてたのかよくわかんなかった。

74: 2014/08/25(月)00:51:42 ID:q2jCWxJAH

 ちっちゃいミカの口から、ベロがでてたんだよね。
 たぶん、かみちぎろうとしてたんだよ。

 あせった、今まででいちばん。

 ミカのべたべたの口に、ゆびをつっこんでむりやりこじあけたの。
 
 このとき、わたしはムリだなっておもった。
 ミカが氏のうとするのを、とめるの。


75: 2014/08/25(月)00:56:06 ID:q2jCWxJAH

 だから。これが最後だとおもってきいたわけ。

「なんで氏のうとするの?」

 やっぱりなんもいってくれない。

 でも、ミカの口はうごいてたわけ。

 で、気づいた。

 ミカの首をしめつけかけてること。

 あと、ずっと前から気になってたこと。

76: 2014/08/25(月)01:00:54 ID:q2jCWxJAH

 ほんとうに氏にたいなら、
 わたしの目のとどかないとこですればいいのに。

 わたしは首から手をはなして、ミカをしばってたものをほどいた。
 ミカは首をなんども手でこすった。

 手はあざだらけだった、いつのまにつくったんだろ。

78: 2014/08/25(月)01:03:14 ID:q2jCWxJAH

 しつこいけど、最後にもう一度だけきいた。

 「なんで氏のうとするの?」

 ミカはこたえてくれた。

 ひさびさにきいたミカの声は、
 しぼりだすみたいで、ききとりづらかった。


81: 2014/08/25(月)01:05:06 ID:q2jCWxJAH


「氏のうとしないと、ママに殺されるから」


 ひさびさに声がきけてうれしくて、わたしはミカをだきしめた。

82: 2014/08/25(月)01:06:15 ID:q2jCWxJAH

 ここまで見てくれてありがと
 これはたんなる釣りです
 あしたも早いからねよう

84: 2014/08/25(月)01:06:51 ID:HZCUjEgMc
おつ

お休み

引用元: またわたしの娘がベランダから飛びおりようとしたんだけど