1: 2013/08/31(土) 23:57:37.71 ID:m7H96jeP0
石丸「風紀が乱れている!」

石丸「兄弟、そうは思わないか?」

大和田「突然なに言ってんだ兄弟」

石丸「だから風紀が乱れているといったのだよ兄弟」

大和田「いつものことじゃねぇか?それとも何かあったのか?」

石丸「兄弟、最近皆の雰囲気が変わったとは思わないか?」

大和田「そりゃ変わらねぇわけねーだろ…あんなことがありゃ」

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2: 2013/09/01(日) 00:02:32.94 ID:MY313ymx0
石丸「そうだ。あの舞園くんと桑田くんの一件以来、皆険しい顔をしていた」

大和田「舞園なんてずっと一人でいるしなぁ…自業自得とはいえ見てて辛ェもんがあるぜありゃ」

石丸「桑田くんも疑心暗鬼に陥って僕たちとまともに会話をしようともしてくれなくなった」

大和田「ま、当然だな」

石丸「しかしあれからまたしばらく経って空気が変わったとは思わないかね?」

大和田「ん?たしかに空気が柔らかくなったが思うがそりゃ時間が経ったからだろ?」

石丸「違う!風紀が乱れているのだ!風紀が!」ガタッ

大和田(うるせえ)

3: 2013/09/01(日) 00:06:25.64 ID:MY313ymx0
大和田「いやだからどう風紀が乱れてんだよ?そもそもどいつもこいつも風紀破りまくりだろーが」

石丸「それもあるがそれでは無いのだよ!もう我慢の限界だ!食堂に行く!今の時間なら彼女も居るだろう」

大和田「は?食堂?…っておいまて兄弟!」

4: 2013/09/01(日) 00:08:18.40 ID:MY313ymx0

食堂

朝日奈「お、石丸に大和田おはよー」

石丸「もうおはようの時間ではないぞ朝日奈くん!もうこんにちはの時間だ!」

朝日奈「そんなのわかってるよー朝会ったし。なんとなくだよ」

大神「何かあったのか?…やけに急いで来たようだが…」

石丸「ああ!それなのだが今日は朝日奈君に話があって来た!」

朝日奈「え?私?珍しいね。何ー?」

石丸「単刀直入に聞こう。朝日奈君!君は葉隠君の部屋で毎晩何をしているのだね?」

大和田・朝日奈「?!」

大神「……」

5: 2013/09/01(日) 00:12:02.70 ID:MY313ymx0
大和田「…毎晩、葉隠の部屋で…だと…」

朝日奈「な、なななななな何言ってんの石丸!あたしが葉隠の部屋で毎晩って…ちょ、冗談にしたって笑えないんですけど!」

石丸「いや、確かに僕は見ている!葉隠君の部屋を訪れる君を!」

朝日奈「私は葉隠の部屋なんて行ってないし!誰かと見間違えたんじゃないの!?ありえないよ!」

セレス「あら、何をおっしゃいますの朝日奈さん?」ヒョコ

朝日奈「セ、セレスちゃん!?」

7: 2013/09/01(日) 00:14:03.10 ID:MY313ymx0
セレス「わたくし、困っていますの」

朝日奈「困る?」

セレス「ええ…毎晩あのように音を立てられてはまるで眠れませんわ」

朝日奈「お、音?!」

セレス「ええ…あのような下品な音を聞かせられるとストレスが溜まりまして」

朝日奈「な、わ、私達はそんな音を出すようなことなんてしてないよ!デタラメ言わないでよ!」

セレス「私達、ですか。誰かと居たことは認めるんですのね」

朝日奈「あっ?!」

セレス「というか部屋は防音ですので何をしても他の部屋には聞こえませんわよ。自爆しましたわね」

朝日奈「あ、あああああああ?!」

8: 2013/09/01(日) 00:17:08.45 ID:MY313ymx0
大和田「夜に葉隠と二人…?!ま、マジかよ…ヤったのか?!」

朝日奈「ば、馬鹿言わないでよ!そこまで行ってないよ!」

石丸「そこまで?」

セレス「あら…大胆告白ですわね」

朝日奈「あああああああああああああああ」

大神「落ち着け朝日奈…」

朝日奈「さ、さくらちゃん、えっと、これは、ちがうんだよ、これは、これには…そ、そう!わけが!」

大神「我のことなら気にするな…既に知っている…」

朝日奈「へ?知ってる?」

9: 2013/09/01(日) 00:20:27.69 ID:MY313ymx0
書き溜めすぎて辞めどきがわからないんだが


石丸「ちょうどいいセレスくん!君にも聞きたいことがある!」

セレス「あら、なんでしょうか」

石丸「君の部屋に時々山田くんが行っているようだが一体何をやっているのだ?男女が部屋で二人きりなど不純だぞ!」

セレス「……ああ、それですか?それなら彼は…」

ガチャ
苗木「皆、どうしたの?」

石丸「む、苗木くんか。ちょうどいい。実は今セレスくんに山田くんの件について聞いていたのだ。君もしっているだろう?」

苗木「山田くんの事?」

11: 2013/09/01(日) 00:24:45.93 ID:MY313ymx0
セレス「そうですわ、彼には部屋で時々ロイヤルミルクティーをいれてもらっていますの。飲んだ後には自分の部屋に帰ってもらっていますわ」

石丸「お茶なら食堂でもいいのではないかね?」

セレス「食堂は騒がしいので…静かに飲みたい気分の時もあるんですわ」

苗木「お茶…?それは違うよ!」

セレス「……はい?」

苗木「いやだって山田くんがセレスさんの部屋に入るところ、ボクも何度も見てるけど紅茶を淹れる道具を持ってはいるところを一度も見ていない」

セレス「たまたまでは?それ以外の用でも時々呼んでいますから」

苗木「いや…それはそうだけど…」

セレス「お茶を淹れてもらうのになにか問題でも?」

12: 2013/09/01(日) 00:26:59.82 ID:MY313ymx0
石丸「山田くんといえば少し気になる事があるのだが」

大神「気になる事…?」

石丸「ああ。風呂場での話だが、彼の体に不可解な跡が残っていたのだ」

セレス「……!」

苗木「跡?」

大和田「俺も見たな。何かミミズみてえな跡だったぜ」

石丸「消えかかる頃にまた増えていた。不可解だ」

大和田「タオルで胸まで隠すなんて気持ちの悪いことしやがるから剥ぎ取ったんだがよ」

朝日奈「うわ…」

大和田「そしたら隠してた部分にでっけえ跡があった」

石丸「流石に無理やり剥ぎ取るのは僕もどうかと思ったのだが妙な跡があったのでな…少し気になった」

大和田「あいつ誰かになにかされてるんじゃねーか?って話になったんだよな。忘れてたわ」

13: 2013/09/01(日) 00:30:31.92 ID:MY313ymx0

大神「体にミミズのような…鞭打ちか?」

朝日奈「む、鞭打ち?!いくら山田でもそんなの酷いよ!」

セレス「……」

石丸「山田くんは誰かに暴行されているではないだろうか…セレスくん、何か知らないか?」

セレス「知りませんわ。モノクマの仕業では?」

霧切「それは考えにくいんじゃないかしら?」

苗木「あ、霧切さん」

セレス「あら、どうしてですの?」

霧切「モノクマが直接暴力をふるってきたことなんてあったかしら?殺人を煽ってきたことはあっても、そんなことはなかったはずよ」

セレス「今までなかったからと言ってこれからも無いとは言い切れないでしょう?そもそも…」

14: 2013/09/01(日) 00:33:26.25 ID:MY313ymx0

苗木「あっ」

霧切「どうしたの苗木君」

苗木「あ、あー…えっと」

朝日奈「何?!何かあるならはっきり言ってよ苗木!」

苗木「じ、じゃあ…えっとセレスさん、ボクさ…」

苗木「セレスさんに鞭っぽいのプレゼントしなかったっけ?」

霧切「鞭?!」
舞園「?!」


15: 2013/09/01(日) 00:36:08.85 ID:MY313ymx0
セレス「……」

苗木「やっぱりあげたよね?ほらモノモノマシーンで出てきたあれ。セレスさんが欲しいって…」

セレス「言ってませんわ」

苗木「でもあげたよ?」

セレス「だから言っていないと…」

石丸「む!山田くん!」

セレス「…なっ?」

山田「皆さんお揃いで…どうしましたかな?」

石丸「今君の体にあるミミズ跡の件について話し合っていたのだ!もし何かあるなら言って欲しい!」

山田「な…何ですと?!」

17: 2013/09/01(日) 00:38:55.42 ID:MY313ymx0


石丸「真実を話すのは辛いことかもしれない…しかしもし君が暴行されて苦しい思いをしているのであれば是非話して欲しい。僕たちが力になろう!」

山田「結構ですぞ!」

霧切「何故?あなた誰かに暴力を受けているのでしょう?話してもらわなければ困るわ。これは私達にも関係することなのよ」

山田「し、しかし…」チラッ

セレス「(こっちみんな)」

霧切「山田くん、あなた今セレスさんに目配せをしたわね?」

山田「し…してませんぞ…」

霧切「したわよ」

山田「」チラッ

霧切「また見たわ」

苗木「もしかして山田くんに鞭打ったのってセレスさん…?」

石丸「セレスくん!まさか君なのか?!山田くんに怪我をさせているのは!」

18: 2013/09/01(日) 00:41:29.49 ID:MY313ymx0
山田「怪我はしておりませんぞ!セレス様は絶妙な力加減で跡のみを残し必要以上に痛みを与えない鞭打ちの達人なのですから!」


セレス「おいブタ」

山田「あっいえこれはその」

朝日奈「セレス様?」

霧切「…まさかあなたたちは…」

セレス「…テメエのせいで全部バレバレじゃねえかこのブタが!」

苗木「えっ」

20: 2013/09/01(日) 00:43:34.94 ID:MY313ymx0

セレス「何跡を残して大風呂なんて入ってんだコラ!誰が見せていいっていった!命令も満足に聞けねえのかこの家畜が!」パシーン

山田「ぶひい!」

大和田「お、おい何だありゃあ…」

石丸「やめたまえ!仲間にそのような暴言は…」

霧切「ほおっておいていいわよ」

石丸「なぜだ?!明らかにあれはイジメだろう!止めなくてどうする!」

霧切「よく見なさい…山田君がよだれを垂らして喜んでいるわ…つまりあの二人はああいう関係なのよ」

朝日奈「ああいう関係…?ちょっとやめて理解したく無い」

苗木「つまりあの二人は…SMプレイを日々ああやって楽しんでいるってこと…?」

霧切「そうよ」

大神「理解できん…」

霧切「周りが見えなくなってるわ。余程楽しいのでしょうね」

21: 2013/09/01(日) 00:45:09.01 ID:MY313ymx0
朝日奈「……知りたくなかったよ」

石丸「本当にあのままでいいのか?」

霧切「関わっても何にもならないわ。当人達は楽しそうだしほおっておきましょう」

石丸「うむ。ならば霧切くん。君に聞きたいことがあるのだが」

大和田「…おいまて兄弟その話は」チラッ

舞園「……………………」

霧切「何かしら」

石丸「君も連日苗木くんの部屋で何をやっているのかね?」

苗木「?!」
舞園「?!」

大和田(……やっちまった…)

22: 2013/09/01(日) 00:47:11.29 ID:MY313ymx0
霧切「…何か?」

石丸「何かもなにも!不純ではないか!朝日奈くんもそうだが君たちは一体異性と二人きりで何をやっているのだね?!未成年の男女が夜に部屋で二人きりなど言語道断だ!けしからん!」

霧切「あれは勉強を教えてるだけよ」

舞園「……」

苗木「そ、そうだよ!僕は霧切さんに勉強を教えてもらってるだけだよ!っていうか!」

苗木「朝日奈さんが異性と二人きりってなに?!」

朝日奈「そ、それは今関係ないでしょ!」

山田「むむっ!何やら工口スの香りが…」

セレス「いいから黙ってろ豚が!まだ折檻は終わってねえんだよ!」

山田「ぶひいいいいいい」

24: 2013/09/01(日) 00:49:01.35 ID:MY313ymx0
舞園「夜に…二人きり」

朝日奈「舞園ちゃん!?」

舞園「…………」

石丸「何も夜しなくても時間はいくらでもあるだろう!」

霧切「別にいつやろうと自由でしょう。それに昼間からやるような内容でもないわ」

大神「どんな内容をしているのだ?」

霧切「氏体の検分のやり方よ」

大和田「は?」

霧切「後はどんなことがあればどんな証拠が残るだとか…とにかくそんなことよ」

大和田「お、おう」

苗木「だから石丸くんが心配してるようなことなんて何にもないから!」

26: 2013/09/01(日) 00:50:29.28 ID:MY313ymx0
石丸「た、確かに昼やるような内容ではないな…だが二人きりはやはりだめだ。他に知りたい人を集めて勉強会では駄目かね?」

霧切「あまり知っている人が増えるとクロが証拠を残しにくくなるわ…あまりやりたくないわね」

大和田「殺人が起こるの前提かよ…オレたちを信用してねーのか?あぁ?」

霧切「そういうわけではないわ。あくまで、可能生の話よ」

舞園「でも苗木くんには教えてあげるんですね」

霧切「…久しぶりね、舞園さん。なに?何がいいたいの?」

舞園「いえ…確かに苗木くんなら信用できますしね。私と違って…」

苗木「舞園さん…」

舞園「信頼しあってるんですね…羨ましいです」

霧切「……」

27: 2013/09/01(日) 00:51:30.75 ID:MY313ymx0
舞園「霧切さんも苗木くんと居たいからわざわざ教えてるんですよね。二人きりの時間が欲しくて…」

霧切「…何か不服でもあるのかしら。はっきり言って欲しいわ」

舞園「いえ………すいません、変なことを言ってしまって。じゃあ…」ダッ


苗木「まって!舞園さん!」ダッ

28: 2013/09/01(日) 00:52:42.74 ID:MY313ymx0





朝日奈「………じ、じゃあ私部屋に帰るね…さくらちゃん、部屋でドーナツでもたべよ…ちょっと話したいことがあるの…」

大神「……うむ」

霧切「……私は二人を追うわ」



大和田「……」

石丸「…さ、先ほどまであんなに和やかだったのに…もしや僕は何か大変なことをしてしまったのか…?」

大和田「兄弟」

石丸「…何だ」

大和田「サウナでも…行こうぜ。話してえことがある」

29: 2013/09/01(日) 00:54:16.62 ID:MY313ymx0
大和田「なあ兄弟。おめーは何か隠したいこととかあるか?」

石丸「隠したいこと?…進んで話したいわけでは無い話はあるにはある。だが…」

大和田「隠すような事はねえ、か?」

石丸「そうだな!人に言えないような後ろ暗いことはなにもないぞ!」

大和田「後ろ暗い…か…。確かにそうかもな」

石丸「兄弟?」

30: 2013/09/01(日) 00:56:47.10 ID:MY313ymx0
大和田「兄弟、空気が読めねえって言われたことはねえか?」

石丸「たまに言われるな!しかし空気を読めと言われても読み方がわからなくていつも困っている!」

大和田「兄弟のその単純明快な性格は俺も好きだぜ。だがよ」

石丸「?」

大和田「誰だって兄弟みてえにスッパリした性格ってワケじゃねえ。…俺だってそうだ」

石丸「…兄弟も?…まさか!兄弟ほどきっぱりした男もいないだろう!」

大和田「…………」

31: 2013/09/01(日) 00:58:16.41 ID:MY313ymx0
大和田「さっきの連中だってそうだ。朝日奈みてーに何も考えてなさそうに見えてもよ…何かを抱えてるもんだ。兄弟は違うか?」

石丸「僕は何も抱えてなどいないぞ?」

大和田「何も…か?…なあ、隠し事ってのは悪なのか?兄弟の中では」

石丸「確かに隠していることが必ず悪いことであるというわけでは無いだろう。しかし、隠しているということは何か後ろ暗いことがあるということだ」

大和田「……」

石丸「いや、僕自身は隠し事ということをしないのでよくわからないのだが」

石丸「積極的に言わないでいることと、隠し事というのはやはり違うものではないのかね?」

大和田「ああ?」

石丸「…すまない、うまく言えない。のぼせたのだろうか」

32: 2013/09/01(日) 01:01:01.30 ID:MY313ymx0
大和田「出るか?」

石丸「まだいい。それよりやはり兄弟にも隠し事はあるのかね?」

大和田「…何ィ?」

石丸「兄弟は食堂での僕の行きすぎた言動を咎めたくてサウナで話をしようと持ちかけてきたのだろう?」

大和田「…まあな」

石丸「僕には隠し事をするという心理が分からない。だからこそ食堂の和やかな雰囲気を壊してしまうような真似をしてしまった」

石丸「しかし兄弟には彼らが何を思ったのかわかったのだろう?」

大和田「だから俺も隠し事をしてるんじゃねえかってか…?」ピク

石丸「先ほどきいただろう,隠し事は悪いことか?と。それは隠し事をした経験があるからこその発言だ」

大和田「……何が言いてェ」ピクピク

石丸「僕は隠し事をできるような人間関係すら無かったのだ。だからー」

33: 2013/09/01(日) 01:02:40.25 ID:MY313ymx0
大和田「だから族纏めてて人付き合いの多かった俺は人に言えねえ何かを隠してるってか?!ああ?!」バン!

石丸「僕はまだまだ人間関係においては未熟ーどうした兄弟?!」

大和田「自分は潔白で何でも言えますってか?!それで俺は隠し事してるから悪だっていいてえのかつってんだよ!」

石丸「待ってくれ兄弟!どうしたんだ突然!」

大和田「うるっせえな!テメエはよォ無神経なんだよ!自分がそうだから他人もそうだなんて押し付けやがって!」

石丸「待ってくれ!何か気に障ることを言っただろうか?それならば謝る!」

大和田「……」

石丸「その…僕はご覧の通り人間関係においてはまだ未熟だ。だから!教えて欲しい!」

石丸「僕は一体何を間違えたんだ!」

大和田「知るか!一生考えてろクソが!」ガラッ

石丸「兄弟!」



石丸「…また、間違えてしまったのか…?」

46: 2013/09/02(月) 00:26:00.32 ID:oI3oRwG70

石丸(どうするべきだろうか。朝日奈くんたちに謝るべきだろうか?)

石丸(いや、意味も分からずに謝っても誠意が無い。失礼だ)

石丸(探さなければ…正解を)

石丸「もごァ!」ドン

江ノ島「痛っ!」

石丸「はっ…すまない江ノ島君!少し考え事をしていた!」

江ノ島「あのスピードでまえ見えてないってちょっとヤバイよ…」

石丸「スピードは抑えているつもりだったのだが…本当にすまない」

47: 2013/09/02(月) 00:34:09.87 ID:oI3oRwG70
遅くなりました。すいません

48: 2013/09/02(月) 00:40:06.65 ID:oI3oRwG70
いろいろミスってますね。本当にすみません。



江ノ島「徒歩であんなスピード出せるとか何者なわけ?てか当たったのがあたしだったから良かったけどさ、これがもし苗木とか不二咲とかだったら怪我してるよ?」

石丸「気をつけよう」

江ノ島「ほんとー?頼むよー?」




江ノ島「ちょっと」

石丸「…………」

江ノ島「ちょっと!」

石丸「はっ!」

江ノ島「なんなの?後ろにずっとついてこられると凄い気持ち悪いんですけど!何か用でもあんの?!」

石丸「ん?江ノ島君奇遇だな。また会うとは」

江ノ島「無意識なの?!どんだけ重症なのよ」

49: 2013/09/02(月) 00:41:26.76 ID:oI3oRwG70
石丸「……君に聞いて見たいことがあるのだが…」

江ノ島「え?なにもしかして話を聞く流れ?」

石丸「君はモデルもやっていたし…人付き合いが多かっただろう」

江ノ島「ん…そうみたいだね」

石丸「そこで君に聞きたいのだが…空気を読むとはなんだろうか?」

江ノ島「いや、知らねーよ…つーか唐突すぎ」

50: 2013/09/02(月) 00:42:53.75 ID:oI3oRwG70
石丸「僕はどうも空気を読むという能力に欠けているらしいのだ。そのせいで今日は何人も傷つけてしまった」

江ノ島「さっき食堂がうるさかったの はあんたたち?」

石丸「そうだ。僕だ。だからこんな間違いを再び繰り返さないように自分の問題点を解消したいのだ。だから空気を読むとはどういうことなのか教えてくれないか」

江ノ島「そう言われても…」

石丸「頼む!僕が酷く未熟なのは理解している。人にわざわざ聞くまでもない一般常識であることも理解している!しかし僕は早急にこの短所を改善しなくてはならないのだ!だから江ノ島君、空気の読み方を教えてくれないか!」

江ノ島「あ、あたしなんかより舞園とかの方が空気読めるんじゃないの?アイドルでしょ?」

石丸「無理だ!今彼女は追い詰められている。話を聞くどころではないだろう」

江ノ島「じゃあ不二咲!」

石丸「確かに彼女に聞くのもいいかも知れない。しかし僕は複数の意見が欲しい」

51: 2013/09/02(月) 00:44:15.41 ID:oI3oRwG70
江ノ島「えーと、えーとモノクマ?」

石丸「モノクマ?モノクマが論外であることは僕にもわかるぞ」

モノクマ「ちょっと!君にだけは言われたくないんだけど!」

石丸「う、うわあああああああモノクマ?!」

モノクマ「君にだけは空気読めないとか言われたくないよ」

石丸「な、何故ここに…」

モノクマ「そんなのどうだっていいでしょ!というか君さ~」

石丸「な、なんだね?」

モノクマ「本当に君って馬鹿だよね!さっきは見てて笑いが止まらなかったよ!」

石丸「…見ていたのか」

52: 2013/09/02(月) 00:46:58.92 ID:oI3oRwG70
モノクマ「当然でしょ!もー地雷踏みまくりで空気ぶち壊しまくり!よくなりかけてた雰囲気も悪くしちゃって僕の仕事なくなっちゃったよ!」

石丸「ぐ……」

モノクマ「そろそろ空気が停滞しかけてたし新しい動機を用意してたんだけどしばらく要らなそうだね!」

石丸「動機だと…まさかまた殺人を煽ろうとしたのか!」

モノクマ「当然でしょ?せっかく舞園さんと桑田君が頃しあおうとしてくれたのに葉隠の馬鹿がとめちゃうんだもん。たまに何かしたかと思えばこれだよ!マジ空気読めてないよね!」

石丸「葉隠くんは正しいことをした。…それにたとえどんな脅しがあろうともう殺人などという過ちを犯す人などいないはずだ」

モノクマ「確かにねー。誰かが殺されて後戻りできなくなる前に裁判のこととかバラさなきゃいけなくなったのは痛かったかな?あんな賭けしなければよかったかな?」

モノクマ「みんな罪を暴かれるかもしれないって二の足踏んでさーほんと最近のガキって根性ないし優柔不断だよね!」

モノクマ「桑田君も舞園さんにやり返せばいいのに引きこもってるし!なにあいつずっと寝てるんだけどニートなの?見ててつまんないよ!」

53: 2013/09/02(月) 00:51:24.21 ID:oI3oRwG70
石丸「彼に何かしたのか!」

モノクマ「してないからまだニートしてるんだろ!話しかけても徹底して無視だし!さすがのモノクマもハートブレイクしそうだよ?」

石丸「桑田君…そんなに酷かったのか」

モノクマ「まあニートのことは置いといて。しかし絶妙なナイスフォローだったね!さすがみんなの委員長だよ!模範的だよ!みんなの嫌なことを進んでするなんてさ!」

モノクマ「朝日奈さんとセレスさんは君に悪印象を持つだろうし、苗木君と霧切さんと舞園さんの三角関係なんてもう最高だね!舞園さんがいつ嫉妬でグサッてやらないかドキドキでさぁ!」

石丸「そ、そんなつもりではなかったんだ!僕はただ乱れかけた風紀を正そうとしただけだったんだ!」

モノクマ「もうどんな言い訳しても無駄だよ?せっかく大和田くんが止めようとしてくれたのに無視だしさー」

石丸「それは…」

モノクマ「舞園さんなんてこれみよがしに立ってたのに気づかなかったの?あのモロコシすら舞園さんが苗木君が好きって気がついてたのに気がつかなかったの?」

石丸「……」

54: 2013/09/02(月) 00:53:32.50 ID:oI3oRwG70

モノクマ「もしかしてめちゃくちゃ視界が狭いのかな?その目には何も映ってないのかな?だから大事な大事な兄弟の警告を無視したのかなー?」

石丸「あ……」

モノクマ「もうこの空気のよめなさは天賦の才だよ!天才だよ!」

石丸「黙れ!僕を天才と呼ぶな!愚弄しているのか!」

モノクマ「あーあーせっかく友達出来たのに早速無くしそうだね?でも仕方ないよね。だって君は何も見ていなかったんだもの!」

モノクマ「リーダーになろうとしたくせに自分のしたいことばっかりしてさ!よく考えもしないで他人の心を抉る様なことばっかりして風紀を正した気になってすっごい独りよがり!」

石丸「……!独り…よがり」

モノクマ「そうだよ!ずっと友達いなかったんでしょ?何が原因か考えたことなかったの?改善しようとは思わなかったの?君優等生なんでしょ?この程度の問題もわかんなかったの?」

石丸「自分のことばかり…」

55: 2013/09/02(月) 00:56:02.17 ID:oI3oRwG70
モノクマ「まあわかんなかったからずっとぼっちだったんだけどね!石丸君、これからは超高校級のぼっちって名乗ったら?その方がいいんじゃないの?うぷぷぷぷぷぷっ!」

モノクマ「あっでもそうすると霧切さんとかぶるなどうしよ」

モノクマ「どうしようか石丸君?」

石丸「…………」

石丸「ありがとう!」ブワッ

モノクマ「は?!なんなの突然!頭おかしくなったの?!クマに罵られてありがとうとかもしかしてドMなの?山田君と同類なの?」

モノクマ「っていうか何泣いてんの!よだれ出てるし誰が掃除すると思ってんのちょっと!」

石丸「モノクマ…僕が最初に言ったことを撤回させて欲しい…すまなかった!」

モノクマ「やめろこっちくんな頭を振るな!涙が散る!あああ涎とばすなー!」

56: 2013/09/02(月) 00:59:31.09 ID:oI3oRwG70
石丸「全て君のいう通りだ…僕は…僕はなんて独りよがりだったのだ…!」

モノクマ「ちょっとおね…江ノ島さん雑巾!雑巾持ってきて!汚れてるやつ!新しいの出さないでよ!」

石丸「容赦のない心を抉る様な言葉…僕に必要なものはそれだったのだ!」

モノクマ「なんでこの液体ねちょねちょしてんの?涙じゃないの?」

石丸「辛辣な言葉を浴びせられて当然だ!僕は自分を省みることもできない恥知らずだったのだから!」

モノクマ「粘度高すぎんだろ!時々落ちてた謎の液体さてはお前か!」ゴシゴシゴシゴシ

57: 2013/09/02(月) 01:00:45.76 ID:oI3oRwG70
石丸「親身に迫る言葉をどうもありがとう!ではしなければならないことがあるので失礼する!」スタスタスタ

モノクマ「ああもうどうでもいいよ!これ以上汚さないならどうでもいいよ!」ゴシゴシゴシゴシ

江ノ島「………あ…」ゴシゴシ

モノクマ「なに!?」ゴシゴシゴシゴシ

江ノ島「続いてる…」ゴシゴシ

モノクマ「石丸の歩いてった跡に粘着質な涙が……!」




石丸「(しかし…どうするか…)

58: 2013/09/02(月) 01:03:08.95 ID:oI3oRwG70
石丸「(兄弟に会うのはまだ……無理だ……)

石丸「先ほどまであんなに心には勢いがあったのに…少し時間が経っただけでこれか…」

石丸「僕はなんて情けない男なんだ…!」ブワ


不二咲「あっ!いた!石丸君!」

石丸「不二咲君…」

不二咲「あのねぇ、えっとねぇ、はあはあ…」

石丸「走ってきたのか…?廊下は走ってはいけないぞ…」

不二咲「あ…ごめんねぇ…」

石丸「……いや、すまない。僕のことを探しに来てくれたのに」

不二咲「ううん。確かに走っちゃ危ないよねぇ。ごめんね石丸君」

59: 2013/09/02(月) 01:30:09.29 ID:oI3oRwG70


不二咲「…石丸君、大和田君とケンカしたってほんとう…?」

石丸「ああ…僕が不用意な発言で兄弟を傷つけてしまった」

不二咲「うん…大和田君凄く…落ち込んでた」

石丸「僕は…僕は風紀委員失格だ!」

不二咲「あ、違う、違うのぉ!大和田君は、君を傷つけたって言って落ち込んでたんだよぉ…」

石丸「なぜだ…?僕が彼を傷つけたのだ。兄弟はなにも悪くない」

不二咲「大和田君もおんなじこと言ってたよ?……その…仲直りできないかな…?」

石丸「仲直り…か、僕に許されるだろうか」

不二咲「うん…」

60: 2013/09/02(月) 01:33:26.01 ID:oI3oRwG70
石丸「僕は大和田君の兄弟と名乗ってもいい男なのだろうか…」

不二咲「二人がケンカしたままは悲しいよぉ…」

石丸「確かに…皆の空気を悪くしてしまうかも知れないな」

不二咲「そうじゃないの…二人には仲良くしていて欲しいんだ」

石丸「不二咲君……」

不二咲「…………えっと、えっとねぇ、二人が仲良くなった時、うれしかったんだ…」

石丸「………嬉しい?」

不二咲「みんな疑いあって…暗くなってて、とっても不安だったんだ。でも…」

不二咲「でも、そんな時大和田君と石丸君が肩を組んで笑いあってて、とても勇気付けられたんだ」

石丸「僕と兄弟が?」

不二咲「うん。こんな場所でも、状況でも、友達になれるんだなって。みんな、仲良くできるのかな…って」

石丸「……」

61: 2013/09/02(月) 01:35:30.73 ID:oI3oRwG70
不二咲「石丸君も大和田君も笑いあいながらキラキラしてて、少し羨ましかったんだぁ…あんな風に笑いあえたらなって…だから…」

不二咲「だから、二人には仲良しでいてほしいんだ…これでおしまいなんて悲し過ぎるよぉ」

石丸「不二咲君……」

不二咲「ごめんねぇ…困るよね、こんなこと言われても」

石丸「いや、そんなことは無い。僕も少し落ち込んでいたのだ。励まされたよ」

不二咲「……うん」

石丸「必ず、兄弟とは話をしよう。しかし、もう少し待ってもらえないか」

不二咲「え?」

石丸「先に他の皆に謝ってくる。最後に、兄弟のところへ行く」

不二咲「……うん、待ってるよ」

石丸「うむ。待っていてくれたまえ」

不二咲「待ってるよ、待ってるからね」


石丸「……さて、皆のところへ行かなくては」

66: 2013/09/03(火) 00:38:11.88 ID:AoxTbu740
食堂


セレス「…………」

石丸「む、セレス君!」

セレス「……あら、石丸君ですか」

石丸「先ほどは失礼した!」

セレス「また唐突ですわね」

石丸「君と山田君のことだ!なにも皆の前でいう事ではなかった。すまなかった」

セレス「いまさらですわ。まあ、あなたにバレていた時点である程度は覚悟していましたので…」

石丸「実に無神経だった。次からは大勢の前で話さない様にする」

セレス「謝罪の全てが無意味ですわ。そんな配慮よりも、もう関わらないでいてくれた方が助かるのですが」

石丸「それは無理だ!風紀を正すのが、僕の役目だと思っているからな!」

67: 2013/09/03(火) 00:39:48.59 ID:AoxTbu740

セレス「反省してるのかしてないのか、ハッキリしてほしいですわね。それよりあなたの暑苦しいカオを見ていると美味しい紅茶が不味くなりますので何処かへ行ってくださいな」

石丸「では失礼する!山田君にはもう少し優しくしたまえよ!」

セレス「本当にうるさいですわね」

山田「今のは…石丸清多夏殿?」

セレス「ほっといてかまいませんわ。それよりも山田君、紅茶のお代わりを」

山田「(美味しい紅茶…セレス殿も大分デレてきましたな。好感度をあげ続けた甲斐があったというものですぞ)

セレス「早く」

山田「(素直になれないセレス殿萌え」

セレス「心の声が漏れてんぞ!気味の悪い声を出してないでとっとと淹れろってんだよ!」

山田「はいよろこんでぇ!」

68: 2013/09/03(火) 00:44:38.33 ID:AoxTbu740


<ココガイイノカブタガァ!
<アヒーン
石丸「…何か食堂が騒がしい…ん?」

???「…………」

石丸「今倉庫へ誰か入ったな…」



何か必要なものがあれば倉庫へくらい誰でも行くだろう。誰が入ってもおかしくないのだから、人影が倉庫に入ったからと特別気にかける必要も無い。
しかし何故か気になったのだ。あの誰の物とも似つかない、怯えた背が。
胸騒ぎを抱えながら、人影の消えた扉へ近づく。

石丸「…………」

中に入り、辺りを見回す。
ひたすら物の積まれた空間は狭く、薄暗かった。昨日もここへノートを取りに来たというのに、まるで別の空間の様に感じる。
通路の明かりを背に受けているのに中が見通せず、酷く不安になった。

69: 2013/09/03(火) 00:48:54.29 ID:AoxTbu740
石丸「誰か…いるだろう?」

返事は無い。
足を半歩進める。狭い空間だ、少し進めば奥に辿り着く。物がひしめき合っていて人探しはしにくいが、探そうと思えばすぐに見つかるはずだ。

石丸「さっき入るのを見た。誰かいるのだろう?」

微かにヒュウヒュウと風の音が聞こえる。おかしい。この部屋には窓や換気扇の類は無い。
更に半歩前へ進む。何かに拒まれているような気がして、足がどうにも進まない。僕の足ならもう少し根性がもってほしいものだ。

石丸「はは…何も隠れなくてもいいだろう?」

乾いた笑いをはきながら、また、半歩。ドサリと近くで何かが落ちた音がする。それと同時に息を飲むような音と体の倒れるような音が、聞こえた。

石丸「大丈夫かね?!」

入り難い空気に押され固まっていた身体が級友の危機に動きだし、音の発生した方へと向かう。

70: 2013/09/03(火) 00:50:05.98 ID:AoxTbu740
石丸「…………!」




距離にして約2m、一瞬だった。
棚を曲がったすぐそこに

石丸「桑田…くん…」

桑田「…………!」





座り込み目を見開いた、桑田君がそこにいた

71: 2013/09/03(火) 00:53:14.32 ID:AoxTbu740
石丸「……だ、大丈夫かね?何か落としたようだが」

桑田「……、…………」

桑田君は酷い有様だった。彼なりに整えていたのであろう髭はだらしない無精髭と化していた。
上下左右にふらふらと行き来する目線には溌剌とした力は無く、不安げだった。何に怯えているのか、僕の後方辺りを覗き、カタカタと震えていた。

石丸「桑田君、大丈夫かね?」

桑田君は口をパクパクさせて喉を抑えていた。パクパクさせるたびに声にならない声が飛び出す。どうやら話せないらしい。埃でも吸い込んだのだろうか。

石丸「立てるかね?」

手を差し出すも桑田君は取ろうとしない。顔も身体も強張っているのが見ているだけでわかった。

石丸「た、立てないのかね?ならば手を貸す。さあ、立ちたまえ」

ゆっくりと手を掴み、身体を支えながら引っ張り上げた。…その時だった。

72: 2013/09/03(火) 00:55:31.80 ID:AoxTbu740
桑田「…………ぁ、ぁぁぁぁぁぁ」


突然、耳元で聞き落としてしまいそうなほど小さな小さな悲鳴が聞こえたかと思うと、僕を突き飛ばし桑田君は走り出した。
僕が身体を立て直そうとモタモタしている間に、彼は棚に身体をぶつけ、落ちてくる菓子を払いながらもフラフラと駆けて行く。
転んだのか、部屋の外でドサリと聞こえた。慌てて出る。

石丸「い、いない?!」


そこには誰もいなかった。そのすぐ後、少し離れたところから乱暴にドアが閉まる音が聞こえた。それと同時に誰かの叫ぶ声も。

石丸「桑田君は部屋か!」


桑田君が消えたのでは無く、超高校級の野球選手としての脚力で駆け抜けたのだと理解し、僕は彼の部屋へ急いで向かった。




苗木「あ、石丸君!」

石丸「苗木君に霧切君も!こちらに桑田君が来なかったかね?!」

73: 2013/09/03(火) 00:56:45.63 ID:AoxTbu740
霧切「来たわ。でも、捕まえられなかった」

苗木「凄いスピードで自分の部屋にはいっちゃったんだ。止める隙なんてなかったよ」

石丸「どんな、様子だったかね?」

霧切「少ししか見えなかったけど、怯えていたわ。…石丸君、あなた何かしたの?」

苗木「ちょっと霧切さん!」

石丸「何もしていない。倉庫で見かけたので話しかけたのだ。転んで立てない様子だったので立たせてやろうとしたのだが…」

霧切「それね…桑田君は今、ひどく怯えているわ。だから突然話しかけられて気が動転したんでしょうね」

苗木「桑田君…」

石丸「あんなに…酷い様子だとは思わなかった。最初見た時は彼だと思わなかった」

倉庫に入る影が赤い髪を持っていたことは最初からわかっていた。赤い髪を持っている者など、この学園が閉鎖されている限り桑田君しかいないのに、僕の脳はその影が桑田君であると判断しなかった。…その背中があまりに小さく、自分の知っている桑田君と結び付けられなかったからだ。

74: 2013/09/03(火) 00:58:23.78 ID:AoxTbu740
霧切「…最悪の事態を想定する必要があるかもしれない」

苗木「最悪の事態?」

霧切「彼が殺人、もしくは…自殺をするかもしれないということよ」

石丸「まさか…そんな…ハ、ハハハハハ…冗談はよしたまえ」

霧切「冗談なんかじゃないわ。本気で彼は間違いを犯してしまうかもしれない。…それでもいいの?」

石丸「…………」

霧切「これからは彼の挙動により気をつけるようにしましょう。妙な物を持ち込んだ時は…危険信号よ」

苗木「……そうだね」

霧切「それに…もちろん舞園さんも」

石丸「そうだ…舞園君に話がしたいのだが知らないか?」

75: 2013/09/03(火) 01:00:13.78 ID:AoxTbu740
霧切「やめておきなさい。今むやみに刺激をしてはまずいわ。彼女もまた、不安定な状態よ。また何かをするかもしれない」

苗木「舞園さんは、もう何もしないよ」

霧切「どこにそんな確証があるの?むしろ彼女は一度一線を超えているわ。心理的ハードルは桑田君よりも低いはずよ」

苗木「それでも、それでも舞園さんはもうあんな間違いは犯さない!」

霧切「希望的観測でモノを言うのはやめた方がいいわ。その予測が外れた時、あなたはまた傷つくことになるのよ?」

苗木「…それでも、ボクは舞園さんを信じたい」

霧切「…舞園さんを信じるという行為と、彼女に注意すると言う行為は同時に行うことができる。舞園さんが心配なら、なおさら気をつけておくべきよ」

苗木「…うん」

石丸「……」

76: 2013/09/03(火) 01:01:21.46 ID:AoxTbu740
霧切「あなたも。あまりあんな風に高圧的に話すのはやめた方がいいわよ」

石丸「僕は高圧的に話しているわけではないが」

霧切「あなたにそんなつもりが無くても、あなたの大きな声と、その目は相手に威圧感を与えてしまうわ。気をつけた方がいい…特に、桑田君と舞園さん相手には…ね」

石丸「すまない…できる限り気をつけよう」

霧切「行きましょう、苗木君。ここにいても、今は何もできないわ」

苗木「…そうだね。それじゃ、石丸君」

石丸「桑田君…舞園君…」


僕は、名残惜しくも桑田君の部屋を離れた。

77: 2013/09/03(火) 01:03:33.53 ID:AoxTbu740
石丸「朝日奈君はプールだろうか…む?」



腐川「スリスリスリスリスリスリ」


腐川君が廊下に顔をすりつけていた。あまりに異様な光景に僕は口を開けて固まっていた。

腐川「はあ…はあ…白夜様ぁ」

石丸「…………」

腐川「スリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリ」


何と声をかければいいのかわからず、されとて彼女から目を離すこともできず、カニ歩きで僕はプールへと向かった。

78: 2013/09/03(火) 01:04:46.26 ID:AoxTbu740
更衣室前



石丸「…不二咲君?」

不二咲「あっ、石丸君!」ビク

石丸「どうしたのかね?入らないのかね?」

不二咲「う、ううん。今は見てただけなんだぁ。用は無いんだ」

石丸「そうか…朝日奈君をみなかったか?」

不二咲「朝日奈さんなら中にはいっていったよ」

石丸「そうか、ありがとう」


ピッと電子生徒手帳を男子更衣室側のリーダーに当てる。その瞬間、背後の不二咲くんから強い視線を感じ振り向いたが、彼女は微笑みながら手を降っているだけだった。

79: 2013/09/03(火) 01:06:41.46 ID:AoxTbu740

特に着替えることもせず、プールへと向かう。靴を変えるべきかとも思ったが、プールに近づかなければ平気だろうと判断した。




石丸「朝日奈君!」

朝日奈「わっ、石丸!」

石丸「話があって来た!」

大神「朝日奈に話?」

朝日奈「な、なに?食堂の話の続き?またなんかいいにわざわざプールまで来たの?」

石丸「そうだ!朝日奈君。食堂では、本当にすまなかった!」

朝日奈「…………へ?」

石丸「君のプライバシーな話をするには、皆の前では不適切だった!僕に配慮が足りず、あのような思いをさせてすまなかった!」

朝日奈「ちょ、ちょっと石丸!もういいよ!わかったから!頭下げなくていいから!」

80: 2013/09/03(火) 01:07:52.27 ID:AoxTbu740
石丸「本当に、すまなかった…僕は自分がどれだけ自分本位な行動をとっていたのか、理解していなかったのだ」

朝日奈「ほんともういいよ。石丸が悪かったわけじゃないんだし、黙ってた私も悪かったし。」

石丸「そういってもらえると、助かる」

朝日奈「うん。謝りに来てくれてありがとう」

石丸「ただし君の乱れた行動を認めたわけではないぞ!」

朝日奈「ぶっっっっ!」

石丸「毎晩、遅くまで男子と二人きりなど…破廉恥だ!」

朝日奈「結局そこにもどるの?!もうしないんじゃないの?!」

石丸「皆の前ですることはしない。これからは君に話に行く!」

朝日奈「っていうか、本当に葉隠とはなんにもないんだよ!葉隠とはただ…」

石丸「ただ?」

朝日奈「ほんとうに…話しているだけなの

81: 2013/09/03(火) 01:09:08.28 ID:AoxTbu740
石丸「夜で無くてもいいのではないか?」

朝日奈「そうなんだけどさ…その、夜になると怖くなっちゃってさ…」

石丸「…………」

朝日奈「不安で不安で仕方が無くなって…」

大神「……」

朝日奈「きっかけは…舞園ちゃんが桑田君を襲ってしばらくの頃なんだ。どうしても眠れなくて…外を歩いてたら葉隠と会ってね。どっちもイライラしてたからついケンカしちゃったんだ」

石丸「ケンカ?」

朝日奈「うん。今思うとすごく馬鹿みたいな理由でさ、そんなくだらないことで朝方まで言い合いしちゃったんだよね」

朝日奈「すっごく疲れて、そのままぐっすり寝ちゃったんだ。それで…起きたらすごく楽になってたの」

朝日奈「黙ってた物を全て吐き出したみたいにさ。不安で不安でたまらなかったのがキレイに無くなってて、久しぶりに心の底からおはよう、って言えたんだ」

82: 2013/09/03(火) 01:10:37.91 ID:AoxTbu740
朝日奈「それからかな…葉隠と話をするようになったのは。時間になったら葉隠の部屋に行ってケンカふっかけるの。昨日はたけのこかきのこかだったかな?」

朝日奈「そのまえはきつねかたぬきか。そのまえはポッキーかトッポか」

朝日奈「とにかく、そんなくだらないことばかりやってたんだ」

朝日奈「本気で叫んで葉隠にぶつけるとね、葉隠も本気で返してくるんだ。本当のケンカになっちゃいそうになるときもあるけど、大体はまたくだらないことで言い合っちゃったね?って笑うの」

石丸「そうか…」

朝日奈「怒ったり笑ったりしてると私がどんな自分だったか思い出せるの。それで次の日私らしくおはよう!ってみんなに会えるんだ」

石丸「君も、大変だったのだな」

朝日奈「みんな大変だよ。私はただ葉隠に八つ当たりしてるだけだし」

83: 2013/09/03(火) 01:11:59.95 ID:AoxTbu740
石丸「…不健全だなどといってすまなかった。許してほしい」

朝日奈「だからもういいって。たぶん、みんな似たような事やってると思うんだ。だからあんまり責めないであげて!」

大神「こんな場所だ…絆を紡ぐのに、性別を選んではおれんだろう…」

石丸「そうだな…その通りだ!僕は固定観念にとらわれ本質を見誤っていた!朝日奈君!大神君!素晴らしい話を感謝する!では鍛錬中失礼した!」

朝日奈「うわっ!来るのも突然だったけど帰るのも突然だよ!」

ツルーン バチャツ

朝日奈「石丸こけたーあははー」

大神「朝日奈…」

朝日奈「なに?さくらちゃん」

大神「葉隠のことはどう思っている…」

朝日奈「それは話したでしょ?大切な仲間だよ!時々どうしようもないこともあるけどね!」

84: 2013/09/03(火) 01:13:30.91 ID:AoxTbu740
大神「本当にそれだけか?」

朝日奈「どういうこと?」

大神「そのままの意味だ…」

朝日奈「えっと…なんだかんだで大人だよね。私の八つ当たりを受け止めてくれるし。どうしようもない馬鹿だけど」

大神「……ふふ」

朝日奈「もーなにーさくらちゃーん!なにわらってるのー!」

大神「いや…我は願っているぞ…朝日奈…主の幸をな」

朝日奈「……さくらちゃん」

大神「朝日奈…」

朝日奈「ーっもーさくらちゃんカッコよすぎ!私さくらちゃんと結婚するー!」

大神「我は女だぞ?」

朝日奈「さくらちゃんが一番かっこいいよ!」

大神「褒め言葉としてうけとっておこう」

朝日奈「褒めてるんだよ!もうドンドン泳ご!何か元気湧いてきた!」

大神「ああ」

大神(朝日奈が自分の気持ちに気づくのは…まだ先か)

朝日奈「さくらちゃんこっち!」

大神「今行く」

85: 2013/09/03(火) 01:15:00.37 ID:AoxTbu740
石丸「プールの床で濡れてしまった…風邪を引くまえに着替えなくては」

石丸「いや、いっそ風呂に入るか」






石丸「……ふう」ジャー

石丸「今日は…いろいろあったな…」

石丸「…明日は兄弟に会いに行こう。そして、謝らなければ」

石丸「……サウナにでも入って気合をいれよう」

86: 2013/09/03(火) 01:16:45.43 ID:AoxTbu740
サウナ前



石丸「兄弟とは…ここで仲を深めたのだったな」

石丸「また、一緒に入れるだろうか」

石丸「…そのためにも明日は心から謝らなければ」ガラッ






石丸「……なっ」

大和田「……よお。待ってたぜ。話があんだろ?…来いよ」

石丸「きょ、兄弟…」

95: 2013/09/03(火) 17:08:56.55 ID:+ljoOJdH0
石丸「…………」

大和田「…………」

石丸「………隣、いいかね?」

大和田「……おう」


少し離れた場所に座って手を組む。兄弟も同じポーズを取りながら俯いていた。
互いに沈黙していた。サウナの熱気に流れでる汗が焦燥感を煽る。
しかし言葉が出てこない。
いや、いいたいことは既に定まっている。定まっているのだが、

96: 2013/09/03(火) 17:12:22.29 ID:abzJgorH0
石丸「…………」

大和田「…………」


ただの沈黙が兄弟からの牽制に感じてしまう。しかしそれでも切り出さなくてはならない。
不二咲君と兄弟と話をすると約束した。何より僕が彼と話をしたい。僕の友だと言い放ってくれた彼と。
意を決して口を開く。


石丸「……きょ」
大和田「……おい」

互いの言葉が出だしから被る。互いに目線が交錯し、再び沈黙。最初の構図に逆戻りしてしまった。


やってしまった


完全に出鼻を挫かれ言葉を無くす。何で僕はこうもタイミングが読めないのだと頭を抱えたくなる気持ちを無理やり抑え込んだ。
沈黙の時間が経てば立つほどに気まずさが増し、不安が募る。

97: 2013/09/03(火) 17:14:53.23 ID:abzJgorH0
何かうまい言葉は無いかと思いあぐねているうちに、サウナの熱気は体力を奪って行く。
今思ったのだがサウナという場所は話し合いに向いていない気がする。高温多湿の環境は集中力を奪う。僕や兄弟のように体力に自信のある者なら多少は平気だが、例えば不二咲君のような小柄な女性ではあっという間に体力を失ってしまうだろう。いや不二咲君は女性であるからサウナにはそんなに入らないかもしれないな。そういえば兄弟が僕が兄弟に話があることを知っていたようだがもしや不二咲君が伝えてくれたのだろうか。不二咲君には後でお礼を言いにいかなくては。あとは………






ドサッ






石丸「…はっ?!」



突然の物音に意識が覚醒する。完全に横道にそれていた考え事が霧散し、現実に引き戻される。
隣をみれば兄弟がうずくまっていた。

98: 2013/09/03(火) 17:16:26.36 ID:abzJgorH0

石丸「だ、大丈夫か!」

大和田「うるせえ…話があんだろうが。話せよ…」

石丸「そんなことを言っている場合ではない!意識が朦朧としているのではないのか!」

兄弟の言葉に覇気がない。発言は間延びし、目の焦点があっていない。身体は以前共にサウナに入った時とは比べものにならない量の汗が流れていた。

大和田「へへ…こんなもん暑いのうちにもはいんねぇんだよォ…汗だってもうかいてねー…」

危険信号だ。汗が出ないということは脱水症状が進行し、汗を出すほどの水分が体内に残っていないことを示している。

石丸「外へ出て、水を飲むぞ!」

大和田「ァア?!テメエ馬鹿にしてんのか!話は終わってねーだろうが!俺ァへいきっつてんなよ!」

石丸「静かにしたまえ!」

大和田「…………」

石丸「本当にこれ以上は危険だと言っているのだ!立てないのではないのかね?!」

大和田「ぐ……!」

石丸「無理に立とうとするな!外へでよう。僕が手伝う」

99: 2013/09/03(火) 17:17:48.53 ID:abzJgorH0
汗で滑る身体を支えてサウナの戸を開ける。僕より大きい兄弟の身体を引きずりながら転ばないように注意する。
脱衣所まで何とかたどり着いた。湿気があるものの、浴室とは比べものにならない快適さだ。


石丸「……よし、僕が水をとってこよう。兄弟はここで待っていたまえ」

大和田「あ、ああ。すまねぇな」

石丸「かまわない」


食堂へ急ぐ。水。水。水。
塩も必要だろうか。水、塩、水、塩。そう口に唱えながららしくもなく通路を駆け抜ける。
バンと音がなるほどに乱暴に食堂の戸を開け放った。すると


朝日奈「ん?……きゃ、きゃあああああああああ」

大神「…………なっ?!」

霧切「!?」

不二咲「え?え?石丸君?!その格好…」

僕はおそるおそる自分を見る。タオル一枚の、水も拭いていない己の身体がそこにあった。
食堂内は、騒然となった。

100: 2013/09/03(火) 17:19:18.67 ID:abzJgorH0
朝日奈「そ、そういうことは早く言ってよ!大和田やばいよそれ!」

ひとしきり僕が裸で現れたことについて、変態だとか露出狂だとか非難しきった彼女たちは、僕の話を聞いて行動を始めた。

大神「朝日奈!水を作ってきたぞ!これを飲ませれば大丈夫だ!」

石丸「それは?」

朝日奈「脱水状態になった人に飲ませるやつ!ほら、早く!」

不二咲「大和田君…」

霧切「大丈夫よ、不二咲さん。適切に対処すれば問題はないわ」




その後、女性陣の的確な対応で兄弟は無事危機から脱した。
その後、朝日奈君と大神君から正座で水分補給がいかに大切であるか正座で説かれた。
朝日奈君の体験談を下にする話の間に霧切君の知識によるサポートが冴え渡り、駄目押しに不二咲君が涙ながらにいかに心配したかを話され、僕たちは見せる顔もなく背を小さくして小一時間ひたすら謝っていた。
その間、僕たちはずっとタオル一丁であった。

101: 2013/09/03(火) 17:20:52.85 ID:abzJgorH0
霧切「とにかく!男の勝負かなにかは知らないわ。ただサウナで話し合いはやめなさい。サウナは長時間いていい場所ではないわ」

石丸「すいません」

朝日奈「ほんとだよ!根性勝負だかなんだか知らないけど、そんなくだらないことで不二咲ちゃん泣かせて心配させてあんたたちなにやってんの?!情けなくないの?!」

大和田「まったくもってその通りです」

大神「本当に…理解したのか?」

石丸「しました」
大和田「しました」

不二咲「二人とも、あんまり無理はしないでねぇ…あと、今日はあったかくして寝てね。風邪ひいたら大変だから」

大和田「おう。不二咲、ありがとな!」

石丸「不二咲君!今回は迷惑をかけた!」

朝日奈「ちょっと二人とも!なに不二咲ちゃん相手だと元気になってんの?!ほんとにわかってんの?!」

石丸・大和田「わかりました!すいませんでした!」

朝日奈「まったくもー!脱水舐めたら氏んじゃうんだからね!くだらないことで心配させないでよね!」

102: 2013/09/03(火) 17:22:56.38 ID:abzJgorH0
大神「朝日奈よ…もういいだろう。二人も話があるはずだ。我等はここで引こう」

朝日奈「うん。……もう一度いっとくけど、次同じことしても絶対助けないからね!馬鹿なことしないでよ!」





大和田「行ったか……助かったぜ、兄弟」

石丸「当然のことをしただけだ」

大和田「さっきは…悪かったな」

石丸「……僕の方こそ、すまなかった」

大和田「…くくく、!何やってんだ俺たちはタオル一丁でよ!女どもに説教されて情けねえな!」

石丸「…………!全くだな兄弟!僕たちはなんて情けないんだ!あははははっ!」

僕等は二人で、笑いあっていた
そのまま僕たちは話の盛り上がるままに夜通し話し、






二人とも、盛大に風邪をひいた。


「そして僕はまた間違える」

111: 2013/09/05(木) 01:04:45.38 ID:xFze3zB60
遅くなりました
短いですが大和田編始めます

112: 2013/09/05(木) 01:06:36.70 ID:xFze3zB60
頃し合い生活を強要されて十数日。動機という爆弾をあのクソモノクマは落として行きやがった。
それを見た俺は正直、動揺した。内容についてはここじゃ言えねえが、周りを見る限りほとんどの奴が似たようなモンだったんだろう。

さらに次の日だった。一番人頃しとは程遠そうな奴が行動を起こしやがった。
そして俺はようやくここが互いの腹を探り合い、出し抜き合うようなことを無理やりやらされるような胸糞悪い場所だってことを理解した。

モノクマ「えー?なんだ舞園さん止められちゃったの?つまんないなー」

苗木「お…お前っ!」

石丸「駄目だ苗木君!手を出せば君が!」

苗木「離して石丸君!ボクは…アイツが許せないっ!」

石丸「駄目だ!危ない!」

大和田「離してやれよ!そいつはあのボケを殴りてえって言ってんだ!止めんじゃねえ!」

石丸「暴力は駄目だ!」

大和田「暴力は駄目だぁ?どーせテメーはモノクマのお仕置きとかなんとかにビビってっからそんなこと言ってんだろこの腰抜け野郎が!」

石丸「な…何だと!」

113: 2013/09/05(木) 01:21:47.79 ID:xFze3zB60

大和田「違うのかよ!それとも何か?風紀委員様はそんなに規則が好きなのか?だったらテメー一人で守ってろこのクソボケが!」

石丸「き、君という奴は…!」

モノクマ「うぷぷぷぷっ。何かな?仲間割れかな?いいねいいね。盛り上がってまいりましたね!」

苗木「…二人とも、喧嘩はやめてよ」

大和田「んだぁ?テメーのために言ってんだろうが!」

苗木「僕はもういいから!」

霧切「やめなさい。こんなことで争っても思う壺よ」

モノクマ「なに?もうおしまいなの?つまんないなあ。じゃあボクも忙しいからサヨナラっ!」

苗木「待て!」

霧切「…行ってしまったわね」

114: 2013/09/05(木) 01:25:40.54 ID:xFze3zB60
大和田「この馬鹿が止めなきゃ殴れたのによ!」

石丸「何だと!」

霧切「やめなさい!大和田君、もし苗木君が怒りに任せてモノクマを殴っていたらどうなっていたかわからないのかしら」

大和田「あぁ?」

霧切「モノクマに手を出そうとした時のことをもう忘れてしまったの?」

大和田「……ちっ」

モノクマを殴ろうとして爆氏されそうになった記憶がよぎる。確かに奴の方が正しい。俺は気まずさを覚えながら舌打ちした。






石丸「君!待ちたまえ!」

大和田「……んだよ?」

115: 2013/09/05(木) 01:29:45.96 ID:xFze3zB60
石丸「さっきの君の態度は何なのだ!すぐ何かあれば暴力とは…けしからん!」

大和田「わざわざ蒸し返しにきたってか…」

石丸「根性が足りんのだ!だから暴力に頼る!」

大和田「だったらテメェは根性あんのかよ!」

石丸「無論だ!」

大和田「上等だ!だったら勝負しやがれ!」

石丸「いいだろう!君に根性が足りないということを証明してあげよう!」


後は知っての通りだ。俺と石丸はその夜意気投合し、兄弟となった。
風紀風紀と俺たちの在り方を否定するだけのつまんねー奴かと思ったが、話してみれば案外面白え奴だった。
こんな場所にもこういう気持ちいい野郎が居るとは思わなくて、柄にも無くテンションが上がっちまった。
それから兄弟とつるむようになってしばらくのことだ。



石丸「君も連日苗木くんの部屋で何をやっているのかね?」

116: 2013/09/05(木) 01:32:32.77 ID:xFze3zB60
兄弟が、やらかした。





「逃避」





その後、俺たち以外の連中が食堂を出て行った。
残されたのは、俺と頭を抱えて困惑している兄弟だった。

石丸「…さ、先ほどまであんなに和やかだったのに…もしや僕は何か大変なことをしてしまったのか…?」


俺も正直頭を抱えたかった。兄弟に悪気が無いことはわかっちゃいるが、それが逆にタチが悪い。隣をみれば、あの妙に目力の強い目線が俺に助けを求めていた。





兄弟の出す答えが分かっていても、聞かずにはいられなかった

117: 2013/09/05(木) 01:34:07.49 ID:xFze3zB60
大和田「なあ、隠し事ってのは悪なのか?兄弟の中では」

ここまで語り合った兄弟なら何かを察して『隠し事などよくあることだ』と笑い飛ばしてはくれないかと期待していた


石丸「確かに隠していることが必ず悪いことであるというわけでは無いだろう。しかし」

やめろ

石丸「隠しているということは何か後ろ暗いことがあるということだ」

兄弟の心からの言葉が、俺の闇をブチ刺した。
兄弟は俺の問いに真剣に悩み、真剣に答えたんだろう。そして俺の予想通りの答えを出した。
笑えるほどにわかりやすい奴だ。そう頭の中の俺は笑い飛ばして兄弟の肩を叩いているのに
現実の俺は少しずつおかしくなっていく

石丸「いや、僕自身は隠し事ということをしないのでよくわからないのだが」

大和田(…………兄貴)

大和田(兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴……」

フラッシュバックするのは、赤い血を流した兄貴と、その氏を利用し頂点に立つ俺の姿

石丸「積極的に言わないでいることと、隠し事というのはやはり違うものではないのかね?」

大和田(……何も知らねェくせにこいつは…!」

121: 2013/09/05(木) 02:27:26.90 ID:xFze3zB60
大和田「ああ?」

石丸「…すまない、うまく言えない。のぼせたのだろうか」


あの目が少し弱くなった。今なら逃げられる。

大和田「出るか?」

石丸「まだいい。それよりやはり兄弟にも隠し事はあるのかね?」

大和田「…何ィ?」


逃げることに失敗し、さらに追い打ちを掛けられた俺はもはや冷静ではいられなかった。奴は真剣な顔で俺の地雷を踏み抜いて行った。
本当に空気が読めねえな、お前は、と頭の隅でいつもみてえに笑いながら冷静に語りかける俺がいたのに
その姿は溢れかえった黒い感情に塗りつぶされて行った。







石丸「兄弟!」

大和田「クソが、クソが、クソがクソがクソがクソがァ!」

122: 2013/09/05(木) 02:29:55.93 ID:xFze3zB60

口汚く吐き捨てながら服を下だけ乱暴に穿いて走る。背後から兄弟の小さい声が聞こえた。

「…また、間違えてしまったのか…?」


走り抜けながら、胸にはここに来て一番の胸糞悪さが襲っていた。








歩き続けてしばらく、流石に俺は冷静になっていた

大和田「……クソ、やっちまった」


感情のままに理不尽な言葉を友にぶつけてしまった後味の悪さにどうすればいいのかわからず、ただ歩き回っていた。俺は行き先を自分の足に任せ、どう兄弟に話をつけるか考えていた。しかし考えはまとまらない。
まとまらない頭の中に、俺の心を逆撫でしたアイツが悪いんだという自分勝手な感情がじわじわと浸透していく。そんな己の弱さに俺は見ないふりをした。


気がつけば俺は図書室の前にいた。俺よりは兄弟の方が似合うだろうその場所は、勿論馴染みが無え。俺は深く考えずにドアを開けた。そこに居たのはー

十神「…だれだ、ここは俺の場所だぞ。今すぐに出ていけ」

123: 2013/09/05(木) 02:31:54.91 ID:xFze3zB60
大和田「…ちっ。テメェか十神」

十神「誰かと思えば貴様かプランクトン。目障りだ。消えろ」

大和田「あぁ?」

十神「わめくことしかできんのか。それともまともに人語を話せないのか?ならば仕方があるまい。所詮はプランクトンだからな」

大和田「んだとテメェ!殴られてえのか?!」

十神「俺とやりあいたいのか?辞めておけ。そのちっぽけなプライドが粉々に砕け散るぞ」

大和田「そんなヒョロヒョロした体で勝てると思ってんのか?」

十神「俺は十神の跡取りとして、全てを修めている。当然、武道もトップクラスだ。貴様の基本もなっていない不良の格闘など俺の足元にも及ばん」

大和田「だったらやってみるか…?」

十神「フン。微生物にわざわざ勝負を挑む者がいるのか?…おい、腐川、氏なん程度にやれ」

腐川「は、はい白夜様…っクッシュン!」

大和田「ああ…?テメェ、女にやらせんのか?!男の風上にもおけねェ腐れ野郎が!」

124: 2013/09/05(木) 02:32:57.44 ID:xFze3zB60
十神「大和田。忠告だ」

大和田「ああ?」

十神「逃げなければ…氏ぬぞ?クク…」

大和田「何言ってんだ?…………なっ?!」

腐川「いっえ?い!白夜様からのご命令よ!テンション上がるゥ!」

咄嗟に下がる。頭のあった位置にドサドサとクソ分厚い本が投げ捨てられた。当たったらヤバかった。

大和田「なっ、な、なぁっ?!」

腐川「ホラホラホラホラホラホラホラホラァ!」ブンブン

大和田「……っ!」

十神「おい。本が痛む。辞めろ」

腐川「えー?だって白夜様が[ピーーー]なって言ったのに??まーどうせこんな奴たいして萌えねぇからわざわざ殺さねえけどーめんどくせえし?ここじゃマイハサミも満足に作れねーしー」

125: 2013/09/05(木) 02:35:18.61 ID:xFze3zB60
腐川「あーでももういいや!ハサミ使ってとっとと終わらせて白夜様とのロマンスタイムをフライングゲット!!ってなわけではーい本気で逃げないと氏ぬわよモンちゃ?ん?…ってあれ?モンちゃんいないじゃん?」

十神「もういいぞジェノサイダー。戻れ。あとこっちに寄るな。臭い」

ジェノ「白夜様?モロコシは何処へ行ったの??」

十神「あの負け犬ならとっくに逃げたぞ。どうやら低脳生物でも命の危機だけは理解したらしいな…ククク」






俺は気がついたら、体育館にいた。
さっきの記憶が無い。十神の隣にいたのは一体誰だったんだ?
とりあえず体でも動かして気分でも変えるかと体育館の中を進むとそこにはボールを持った不二咲がいた。

大和田「不二咲?」

不二咲「あっ、あっ?!お、大和田君?!」

130: 2013/09/07(土) 02:41:44.48 ID:02m+882X0

不二咲「大和田君、どうしてここにきたのぉ?」

大和田「テメーこそ…」

不二咲「え?ぼっ、私?えっと…一人になりたくて…かなぁ?」

大和田「何で疑問系なんだよ」

不二咲「それよりも大和田君」

大和田「ん?なんだ」

不二咲「顔色酷いよぉ…もしかして体調悪いの?」

大和田「…気のせいだろ」

不二咲「ううん。悪夢でも見たって感じのかおだよぉ」

大和田「…実はよお」


それから俺は図書室での腐川の豹変ぶりについて話した。最初はそれだけを話すつもりだったんだが、不二咲が聞き上手なのか兄弟との言い争いのことまで話しちまってた。

131: 2013/09/07(土) 02:43:04.70 ID:02m+882X0
不二咲「石丸君とケンカしちゃって落ち込んでたんだね…」

大和田「言葉にされると何か情けねえな…」

不二咲「仲直り…しないのぉ?」

大和田「…………」

不二咲「…………」

大和田「兄弟にひでぇことをいっちまった…」

不二咲「……うん」

大和田「アイツは何も悪くねえのに…別にワリいことをやった訳じゃねえってのによ」

大和田「間違ったことは何もいってねえのに図星指されて逆ギレってダセえにもほどがあんだろ……」

不二咲「石丸君のことだから、きっと石丸君も同じように大和田君を傷つけたと思ってるよきっと」

大和田「なおさら情けねえ。兄弟は何も悪くないってのによ…」

不二咲「でも仲直りしたいんだよねぇ?」

大和田「…………」

不二咲「ボクはしてほしぃよぉ…」ポロ

大和田「お、お前が泣くんじゃねえ!」

不二咲「っ!ごめんなさい…」ポロポロ

大和田「あ…怒鳴って悪りぃ…」

132: 2013/09/07(土) 02:44:21.93 ID:02m+882X0
不二咲「余計なことをいってごめんなさい…」

大和田「だーもー!泣くんじゃねえ!お前は悪く無いだろ!」

不二咲「ごめんなさい…」

大和田「これじゃ堂々巡りじゃねーか……おい不二咲」

不二咲「?」

大和田「話してたら何かスッキリしたぜ。…ありがとよ。だから泣くんじゃねえ」

不二咲「…え?あ、うん!ど、どういたしまして。…えへへ…」

大和田「…そうやって笑ってろ。そっちの方がずっといいぜ」

不二咲「…ふふふ。大和田君なんだか恋愛ドラマの人みたいだねぇ」

大和田「………!?(あークソが!何だこのむずがゆさはよォ!何かすげー臭えセリフ言っちまったし!今は兄弟のことだろうが!何浮かれてんだ糞が!)」

不二咲「…大和田君」

大和田「な、何だよ」

不二咲「ボク、石丸くんに話してくるよ」

大和田「な、何でだよ!ほっとけってんだよ!」

134: 2013/09/07(土) 02:45:41.40 ID:02m+882X0

不二咲「ほっとくなんてできないよぉ…ボクは二人に仲良くしていて欲しいから」

大和田「あ?!」

不二咲「食堂で肩を組んでる大和田君と石丸君を見て、うらやましかったんだ」

不二咲「ボクもいつかあんな風に誰かと友達になりたいんなぁ。肩を組んで、笑えたらなぁって」

大和田「俺たちみてえに?」

不二咲「うん。石丸君と大和田君みたいに。対等な、友達に。大声で笑ったり、言い合ったり、助け合ったり…そういうことをしてみたい」

不二咲「でもボクは弱いから。まだ二人とは同じ場所に立てない…」

大和田「そんなこと思ってやがったのか…」

不二咲「うん…」

大和田「馬鹿じゃねえのか」

不二咲「え?」

大和田「ダチになりてえって思ってんのに黙って見てるだけだと?馬鹿じゃねえのか?」

不二咲「で、でもボク何かじゃ釣り合わないよぉ…」

大和田「関係ねーだろ!」

135: 2013/09/07(土) 03:00:47.87 ID:02m+882X0
某新訳とか含めていろいろ参考に読んだんで影響受けた部分はかなりあるかもしれない
あの辺のは苦手な人多そうなんでこれから下げますね。不快にさせてすいませんでした






不二咲「でも…」

大和田「…………俺も兄弟もおめーのことは嫌いじゃねえ。だから…」

不二咲「?」

大和田「あーもうツベコベ言うな!そんな一歩引いたところで見てんじゃねえ!ダチになりてぇってんならこっちに来ればいいだろ!そんだけの話じゃねえか!」

大和田「対等だとか何とかはダチになった後だ!ダチになりてえ!そう互いに思ったらそいつ等はもうダチなんだよ!不二咲!俺はテメーとダチになりてえって思ったぜ!」

大和田「兄弟は女にはわかんねえなんて言ってたがよ!もしそれがテメーに躊躇させてたってんなら俺が撤回してやる!」

不二咲「お、大和田君…」

大和田「…不二咲、頼みがある」

不二咲「な、なにかな!」

大和田「ダチだから頼むんだぜ」

不二咲「……うん」

大和田「もし兄弟が俺のことで落ち込んでたら慰めてやってくれ」

不二咲「…そんなこと、で、できるかなぁ?」

大和田「俺にいったことと同じこと言えばいい。そうすりゃ大丈夫だ」

136: 2013/09/07(土) 03:06:29.01 ID:02m+882X0
なんかもうすいませんでした
でも始めたからにはいけるところまで行くんで
恥ずかしくなってきたけど







不二咲「うん。大和田君は?」

大和田「俺は兄弟の来そうな所で謝ることでも考えてるぜ。だから不二咲、頼んだ。礼は今度する」

不二咲「うん!わかったよ!行ってくるよ!」ダッ

大和田「不二咲!別に走らねーでも……」

不二咲「キャッ!」コテン

大和田「不二咲!」

不二咲「大丈夫だよぉ!……い、急がなくちゃ」ダダッ

大和田「大丈夫かあいつは…」



それから俺は、気合を入れ直すために風呂に行った。
体洗ってる時にサウナに居れば兄弟も来るんじゃねーか?と思いついてそのままサウナに行った。
緊張してんのかやたら喉が乾いてたが気にしちゃいられなかった。根性だ根性。


137: 2013/09/07(土) 03:07:55.87 ID:02m+882X0
大和田「(お、おせえ…!兄弟はなにやってやがる!)」

大和田「(ケツがびっちょびちょだ…)」



大和田「きょ…兄弟はまだか…」

大和田「くそ…髪がヘタってきやがった…」


ガラッ

大和田「あ…誰かはいってきやがったか…?」

大和田「…体洗ってんのか?こっちにこねえな」

大和田「そういやここにきてどんだけ、たったんだ…?」

大和田「あの時はたのしかったなあ。ぽーずとか考えたっけなあ」

大和田「…わすれろびーむ!こんなんだっけか?」

大和田「なんでけんかなんてしたんだっけ?」

138: 2013/09/07(土) 03:08:42.23 ID:02m+882X0
大和田「あたま ぼーっと すんなあ。 まああちーしなあ」

ドタドタ

大和田「お?だれか こっちに くんなあ」

大和田「だれだ?」

石丸「兄弟とは…ここで仲を深めたのだったな」


兄弟!
瞬間気の抜けていた顔に力が入り、手は拳を握る。
姿勢が変わったせいで限界だった髪がほぐれ顔に影を作った。
気合の足りねえ髪だと撫で付けたが髪は重力には逆らえなかった。


石丸「また、一緒に入れるだろうか」


兄弟の声が聞こえる
すまねえ、といいてえのに声が上手くでねえ。もしかしてヤバイのか?

139: 2013/09/07(土) 03:09:25.18 ID:02m+882X0
石丸「…そのためにも明日は心から謝らなければ」ガラッ


そしてサウナの戸は開いた。


石丸「……なっ」

大和田「……よお。待ってたぜ。話があんだろ?…来いよ」


汗で疲れた体だが、ポーズだけは決める。声が出ねえのを無理やり出してしゃがれ声みてえになった。これじゃ威嚇してるみてーだ。もっと水をのんどきゃ良かったぜ。
しかしみっともねえ姿は見せられねえ。これは男と男の語り合いなんだからな。





男らしく決めるはずだった
倒れこんだ身体が動かねえ
やべえ。
なんでこんなんで倒れるんだ。あの時なんか服着てたのに兄弟に勝ったんだぜ?
意識が朦朧としてきた。過去のどんなケンカをした時よりもやべえ感じがする

140: 2013/09/07(土) 03:10:10.92 ID:02m+882X0
石丸「だ、大丈夫か!」

大和田「うるせえ…話があんだろうが。話せよ…」

石丸「そんなことを言っている場合ではない!意識が朦朧としているのではないのか!」


図星だ。だがあんなことをしちまった上に心配なんてかけられねえ

大和田「へへ…こんなもん暑いのうちにもはいんねぇんだよォ…汗だってもうかいてねー…」


そうだ。汗が出てねーんだから平気にきまってんだろ。汗が出ねえってことは熱くねえってことなんだからよ。

石丸「外へ出て、水を飲むぞ!」

大和田「ァア?!テメエ馬鹿にしてんのか!話は終わってねーだろうが!俺ァへいきっつてんなよ!」



石丸「静かにしたまえ!」

大和田「…………」


一喝された。今まで先公や警察から受けたどの声よりもその声は俺の中に響いた。
一点の揺らぎもなく発された声が実に兄弟らしくて笑ってしまう。…顔は動かねえが

141: 2013/09/07(土) 03:32:56.16 ID:02m+882X0
石丸「本当にこれ以上は危険だと言っているのだ!立てないのではないのかね?!

大和田「ぐ……!」


悪い兄弟、心配かけたな。俺はこの通り平気だ。
そう口を動かそうとしながら膝を立てようとするが動かねえ。筋肉がつっぱったみたいになっている。
それでも立てようとして無理に足を動かしたら攣ってバランスを崩した。

石丸「無理に立とうとするな!外へでよう。僕が手伝う」


腰に手が回される。滑るのか何度も何度も角度を変えて掴まれる腰の皮が正直痛え。それでも兄弟は俺を落とさずに一歩一歩歩いていく。
俺はと言えば兄弟にしがみついてへっぴり腰で引きづられていた。




石丸「……よし、僕が水をとってこよう。兄弟はここで待っていたまえ」


上の空で返事をした。ちゃんと言えただろうか。
想像以上に俺の身体はヤバイらしく、兄弟が居なくなった途端に床に倒れた。
床が冷たくて気持ちいい。その心地よさに俺は、そのまま眠ってしまった。

142: 2013/09/07(土) 03:34:04.39 ID:02m+882X0
お?なんか硬いもんが口に当たってる気がする
なんだこれ


大和田「なんだこrごぼごぼごぼごぼ」

朝日奈「さくらちゃん!抑えて!大和田が気がついたよ!」

大神「承知したぞ」

朝日奈「大和田暴れないの!ストロー咥えて!ほら飲んで飲んで!」

大和田「やめろ!溺れちまうだろうが!いてええええええ」

大神「暴れるな。処置ができん」

不二咲「大和田君…」

霧切「大丈夫よ。こういうことに関して二人は詳しいから」

大和田「これガキが使う蓋付きコップじゃねえか!やめろ!」

朝日奈「これだとこぼれないからちょうどよかったの!いいから飲め!」

石丸「兄弟!しっかりするんだ!」

霧切「あなたは服をきなさい」

144: 2013/09/07(土) 03:35:35.94 ID:02m+882X0
石丸「そんな暇はない!兄弟!しっかりしてくれ!」

大和田「おい馬鹿やめろ揺らすな」

朝日奈「こら大和田こぼすな!」

大神「一滴たりとて残すな。血肉にしろ」



そして俺は復活した。極度の脱水症状でヤバかったと聞いて正直青ざめた。
朝日奈と大神にひたすら頭を下げるというかなり情けない時間を過ごした後、兄弟と話し合った。
馬鹿笑いして、盛り上がって話し込んだ。


ふと気がつくと朝だった

大和田「あ……なんだ寝ちまってたのかよ」

大和田「兄弟までいるじゃねーか。ここで寝たのかよ」

145: 2013/09/07(土) 03:36:05.14 ID:02m+882X0
大和田「飯とってくるか」

大和田(なんだ…この既視感は)


ドアを開けるその瞬間、俺は不思議な感傷に陥った。
デジャヴってやつか?昔同じようなことがあった気がする

謎の懐かしさに軽い寒気を感じながら、外に出た。





しばらくして俺は風邪を盛大にひいた

146: 2013/09/07(土) 03:40:02.99 ID:02m+882X0
やっと終わったよ大和田編
想像以上に進みが遅いので申し訳ないんですがちょっと次に進ませていただきます
不二咲編は回想を別の話に、朝日奈編はとても短いのでそのうちに

次回から桑田編です

149: 2013/09/08(日) 01:12:47.88 ID:xC4he2o90
遅いけど行きます

150: 2013/09/08(日) 01:15:14.87 ID:xC4he2o90
舞園「桑田君、どうぞ」

桑田「おじゃましまーす!」

舞園「少し待っていてくださいね。お茶をいれてきます」





桑田「まさか舞園ちゃんが俺を誘ってくれるなんてな」

桑田「このベッド舞園ちゃんが使ってるんだよな…なんかいい匂いがする気がするぜ」

桑田「自分の部屋に呼ぶってことはアレだよな?俺に気を持ってるってことでいいんだよな?」

桑田「こんな所に閉じ込められてふざけんなとか思ったけど、日本一のアイドルが彼女なら最高じゃねーか!」

桑田「それにしても遅えなー」

舞園「………っ…」

桑田「あっ舞園ちゃん。どうした…………ってうぉあっ」

舞園「くっ……避けた…」

桑田「な、な、な、なんだそりゃあ!ほ、包丁…!」

舞園「……氏んでください!」

桑田「うわああああああーっ」

151: 2013/09/08(日) 01:17:00.90 ID:xC4he2o90
葉隠「あーくそ、どこやったかなー俺の水晶~」

葉隠「億するんだぞー盗まれてたらどうすんべ…」

葉隠「取り敢えずこういう時は落ち着いて占いだべ…えー…」

桑田「」バン!

葉隠「お、桑田っちだべ!おーい桑田っちー」

桑田「……」

葉隠「桑田っち!」

桑田「!は、葉隠?!」

葉隠「よう!ところで桑田っち、俺の水晶玉しらん?」

桑田「知るか!俺はそれどころじゃねーんだよ!」

葉隠「そう言わずにいっしょに探してくれよー」

桑田「さわんじゃねえ!頃すぞ!」

葉隠「うおっ?!おお!なんだべそのきんきらきんの刀は!高く売れそうだべ!」

桑田「おい馬鹿はなせっつってんだろ!」

葉隠「…げっ金箔がべっとり…これじゃ対した価値はないべ。返すべ」

桑田「んなもん要らねえよ!」

152: 2013/09/08(日) 01:19:01.67 ID:xC4he2o90
葉隠「じゃあとりあえずもらうわ。金ではあるし、なんかご利益とかありそうだべ」

桑田「あるわけねーだろ!馬鹿か!」

葉隠「ん?…桑田っちどうして包丁なんか持ってるべ?」

桑田「……あ、」

桑田「あ、あああああああ」

桑田(……舞園のこと忘れてた…どうする、言うか?)」

葉隠「いやマジにどうしたべ。よく見たら顔面蒼白だべ」

桑田(と、ドドメを刺すなんて意気込んでみたが立ち止まったら怖くなって来やがった…)

桑田(葉隠と一瞬なら舞園なんかよりでけーし男だし大丈夫か?…よし)

桑田「ま、舞園が、オレを頃しにきた」

葉隠「え?」

桑田「だから舞園が包丁でオレを襲ってきたんだよ!」

153: 2013/09/08(日) 01:21:17.06 ID:xC4he2o90
葉隠「いやいやいやいや待つべ!舞園っちがそんなことするわけねえ!」

桑田「オレだって思ってた!だけどオレは襲われたんだよ!この包丁でな!」

葉隠「うわあああ包丁向けるな!これじゃ桑田っちの方が殺人犯だべ!」

桑田「オレはちげえって言ってんだろこのアホ!」




葉隠「と、いうわけでとりあえずオーガんとこきたべ」

大神「夜時間に男二人で何かと思えば…そんなことが起こっていたのか」

葉隠「オーガんとこなら桑田っちももう安心だべ。俺も襲われずに済むべ」

大神「…………しかし話は聞いたが、にわかには信じられん」

桑田「てめえもオレのこと信じねえってのかよ!この包丁は舞園が落としたのを拾っただけなんだよ!」

大神「信じないとは言っておらん。だが、無条件に信じろと言われてもな……」

桑田「じゃあどうなんだよ!」

154: 2013/09/08(日) 01:22:28.46 ID:xC4he2o90
大神「一度現場に戻らぬか?話によると舞園はシャワールームに閉じこもったそうだが、もう出ているかもしれぬ。舞園がいないのであれば調べることもできるだろう」

桑田「も、戻る?!馬鹿いってんじゃねえ!殺されたらどうすんだよ!」

大神「我がいる。舞園では我には勝てぬ」

葉隠「安心と信頼のオーガセコムだべ」

大神「百聞は一見にしかず…事実を見て判断しよう」

桑田「マジに戻るってのか…」

大神「恐ろしいならば我の後ろにいろ。恐ろしいかもしれぬが、確認することは大切なことだ」

桑田「…………」




舞園の部屋

大神「これは……」

葉隠「こ、こういうデザインの部屋…ってことはなさそうだな……恐ろしいべ」

桑田「こ、コレでも信じねえのか?!」

大神「この部屋の傷…間違いなく争った後だ…まさか、本当に舞園が…?」

155: 2013/09/08(日) 01:23:29.35 ID:xC4he2o90
葉隠「オーガ!シャワールーム開けてくれ!カギ掛かってて開かねえ!」

大神「…下がれ………むんっ!」ドォン

葉隠「…おろ?開いてねえべ?なんで手を抜いたんだべオーガ」

大神「いや…中に舞園がいたら危ないと思ってな…。しかしこれだけ音を立てても起きぬか」

桑田「ドライバーだ!ドライバー!コレでこじ開けろ!」

葉隠「ナイス桑田っち!」ガチャガチャバキッ

桑田「開いた!」

大神「……おらぬな」

桑田「あり?」

葉隠「舞園っちがいねーべ!カギは掛かってたのに!さては桑田っち嘘をついたな!」

桑田「ついてねーよ!なんで舞園居ねえんだ!カギ掛かってたのに!」

大神「いやまて。カギがないぞ!」

葉隠「オーガが壊したんだろ?」

大神「壊してなどおらぬ!我の部屋にはこの位置にカギがついている」

葉隠「なんでねえんだ?あっ欠陥住宅だべ!」

大神「ちがうと思うが。…しかし何故だ。何故カギが無いのに開かなかったのだ…それに舞園はどこへ…」

156: 2013/09/08(日) 01:25:41.07 ID:xC4he2o90
ガチャ

苗木「大神さん?!葉隠君、それに……桑田君も」

桑田「苗木…………後ろにいるのは…!」

舞園「…………」

桑田「舞園…!てめえ…!!」

大神さん「落ち着け。桑田よ」

桑田「落ち着いてられるか!こいつが!こいつがぁっ!」

大神「葉隠、下がらせるぞ。抑えておいてくれ」

葉隠「お、おう。わかったべ」


石丸「なんの騒ぎだね?今は夜時間だぞ」

苗木「あっ石丸君…みんなを呼んできてくれないかな」

石丸「……ど、どうしたのだ?なんだねこの部屋の傷は!」

苗木「…舞園さんが襲われたんだ」

石丸「…な、なんだと?!そんな馬鹿な!」

舞園「…………」

157: 2013/09/08(日) 01:27:41.72 ID:xC4he2o90
桑田「そんな奴のいうことを信じんじゃねえ苗木!俺の方が襲われたんだよ!」

石丸「く、桑田君?どういうことかね?!」

大神「話は後だ。我らは見ての通り動けぬ。皆を呼んできてくれ」

石丸「わ、わかった!呼んでこよう!」ドタドタ

桑田「おいコラ舞園!テメエ嘘ついてんじゃねーよ!誰が誰を襲ったって?!テメエがオレを襲ったんだろうが!」

苗木「そんな!舞園さんがそんなことをする訳がないよ!」

大神「しかしこの部屋の惨状は…何もなかったというわけではあるまい。正直に話せ、二人とも」

桑田「オレはずっと本当のことしか言ってねえよ!」




朝日奈「さくらちゃん!」

大神「朝日奈…」

朝日奈「舞園ちゃんが襲われたってどういうこと!?」

158: 2013/09/08(日) 01:33:37.26 ID:xC4he2o90
桑田「ああ?!なんで舞園が襲われたことになってんだよ!」

朝日奈「だ、だって石丸が『舞園君の部屋で事件があったようだ』って」

桑田「ちげーよ!舞園がオレを頃しにきたんだよ!この包丁でな!」

苗木「でも、舞園さんは桑田君に襲われたって言ってる」

桑田「ウソだ!このアホ女ァ!都合のいいこと言いやがって!」

大神「刃物を向けるな桑田!」

桑田「逆にコッチが頃してやろうか?!オイコラ!なんとか言えよ舞園!」

朝日奈「ちょっと桑田!怯えてる女の子になんてこというのよ!」

桑田「その女は怯えてなんかねーよ!なんか言ったらバレそうで黙ってるだけだろ!」

朝日奈「あんなに青ざめた顔してるのに?大体舞園ちゃん怪我してんじゃん!アンタは無傷だよ!」

葉隠「ま、マジだべ!ありゃ手がポッキリいってるべ!なんか自分まで痛くなってきた」

桑田「こ、それは反撃した時だよ!」

159: 2013/09/08(日) 01:34:30.23 ID:xC4he2o90
大和田「おい、どうした!何があった!」

山田「舞園さやか殿が襲われたと聞いて!」

江ノ島「ちょっと、何があったの?石丸の奴がなんか慌ててたんだけど」

朝日奈「聞いてよ!桑田が舞園ちゃんを襲ったんだよ!」

桑田「だからちげーって言ってんだろうがアホ!」

大和田「て、テメエ!女に手ェ出しやがったのか!」

山田「この部屋の傷…相当ですぞ」

江ノ島「………………」

朝日奈「大体、舞園ちゃん女の子なんだから男の桑田を襲うわけないじゃん!勝てないもん!だから桑田が襲ったんでしょ?」

葉隠「そ、そうだべ!オーガならともかく、舞園っちが桑田を襲って勝てるとは思えねえべ!」

桑田「だからオレは無事なんだろうが!」

朝日奈「言ってることがあべこべだよ!」

苗木「ちょっと落ちついてみんな!」

160: 2013/09/08(日) 01:35:21.87 ID:xC4he2o90
舞園「苗木……君」

苗木「舞園さん、大丈夫?」

舞園「怖かった…です。氏んじゃうかと…思いました」

朝日奈「無理しないで舞園ちゃん!怖いなら部屋に行ってていいよ!この馬鹿は私たちでなんとかするから!」

桑田「このアホ女ァ!」

朝日奈「アンタそれしか言えないの?!」

大和田「本当のことを言え!」

桑田「違うっつってんだろ!」


舞園「襲われました…」

桑田「…………は?」

舞園「桑田君に…」


苗木「舞園さん、大丈夫なの?」

舞園「はい…大丈夫です。私、話します。ここであった事を」

桑田「おい。おい待てよ。何を話すつもりだよ?」

161: 2013/09/08(日) 01:37:39.84 ID:xC4he2o90

舞園「少し前のことです。桑田君が私の部屋を訪れました…」

桑田「待てよ!黙れ!」

大和田「テメエが黙れ!」

舞園「私は、少し不安だったので桑田君とお話しようと思ってドアを少し開けたんです。そしたら…そしたら、桑田君に襲われて…」

舞園「怖くて…必氏で逃げました。シャワールームの中に逃げ込んだんです」

舞園「それで桑田君が居なくなったのを見計らって苗木君に助けを求めました」

苗木「舞園さん、もういいよ」

舞園「頃してやる…頃してやるって…ずっと…ドアの外で」

朝日奈「…だってさ、桑田。アンタ、最ッ低!」

山田「工口ゲーだったら間違いなくここで…ですなあ」

江ノ島「あんた…もう黙ってたら?」

朝日奈「女の子の不安につけ込んで襲うなんて!酷いよ!」

桑田「オレが舞園に部屋に誘われたんだよ!」

山田「妄想乙ですぞ!舞園さやか殿はアイドルですぞ!そんなことをするはずがないのです!」

桑田「てめーはどこまで脳みそ異次元に飛んでんだよ!アホアホ!」

大和田「うるせえ黙れこのアホが!」

桑田「なんで誰もオレの事信じてくれねえんだよ!本当にオレが襲ったと思ってんのか?!」

162: 2013/09/08(日) 01:38:59.19 ID:xC4he2o90
舞園「いい加減に…して…ください。もう言い逃れはできないんですよ」

舞園「あなたが…私を殺そうとしたんです」

朝日奈「…いい加減に、みとめたら?」

苗木「きっと今なら、まだ戻ってこれるよ」

大神「うむ…」

葉隠「…………」

大和田「……おう。観念しろや」

山田「………」

舞園「桑田君…あなたも、何か理由があったんですよね?だからこんな事をしてしまったんですよね?」

舞園「私は怖かったけど…大丈夫です。話せばきっとみなさんわかってくれます。許してくれますよ…」

桑田「なんでだよ…なんで…なんでお前が『許す側』なんだよ…」

舞園「あんなDVDを見せられたら焦ってしまうのもわかります。…私もそうでしたから」

朝日奈「…桑田、何があったの?何を見せられてこんな事を…」

桑田「………やめろ…」

舞園「……何も、『無かった』ことにしましょう?」

163: 2013/09/08(日) 01:39:48.03 ID:xC4he2o90
桑田「ふざけんなああああああああ」バキッ

舞園「きゃああああああっ」ドサッ

苗木「舞園さん!」

山田「アイドルを殴ったああああああ?!」

朝日奈「な、な…く、桑田あああああああっ!」

大和田「この腐れ野郎が!」ドス

桑田「ぐあっ」

大神「やめろ大和田!」

大和田「離せ大神!この野郎追い詰められて女を殴りやがった!男の風上にもおけねえクソ野郎だ!」

大神「まて、もう気を失っている」

大和田「くっ…」

苗木「舞園さん!舞園さん!」

舞園「……あ……ごめんなさい」ポロポロ

大神「桑田を部屋に連れて行く。我が見ていよう」

165: 2013/09/08(日) 01:40:50.96 ID:xC4he2o90
霧切「ちょっと、何があったの?」

不二咲「部屋が傷だらけだよぉ…」

大和田「桑田の野郎が逆ギレして舞園を殴りやがった」

霧切「…話を、聞かせてもらおうかしら」






霧切「なるほどね。両者の話に食い違いがあるのね」

朝日奈「でも、桑田が襲ったんだよ」

霧切「何故?何故言い切れるの?証拠はあったのかしら」

朝日奈「それは…」

霧切「もっと調べて見ましょう。何か見落としがあるかもしれないわ」

霧切「調べてもいないのに、互いの言い争いだけで決めつけるのは早計よ」

舞園「…………」

霧切「なにかしら、舞園さん」

舞園「いえ……」

霧切「……まず、聞きたい事があるのだけど苗木君」

苗木「?どうしたの?」

167: 2013/09/08(日) 01:43:43.80 ID:xC4he2o90
霧切「ここ、生徒手帳を見ると苗木君の部屋よね。どうしてここに舞園さんがいるのかしら」

舞園「…交換してもらいました。怖かったので」

霧切「そう。…使われた凶器は包丁と模擬刀」

葉隠「模擬刀はこれだな。金箔がすぐ取れてうっとおしいべ」

霧切「舞園さんの手首を怪我させたものね。舞園さんの手首にも金箔がついているわね」

セレス「と、いうことはこれを持っていたのは桑田君で間違いありませんわね」

山田「セレス殿、遅かったですな」

セレス「女性はいろいろと時間がかかりますの。…するとこちらの包丁は舞園さんが持っていたことになりますわね」

大和田「なんでだ?」

セレス「桑田君はおそらく模擬刀で利き手が塞がっていたはずです。両手で模擬刀と包丁を持ち二刀流…というのは流石に無理がありますわ」

朝日奈「どうして?持てばいいじゃん」

江ノ島「素人が片手で人を[ピーーー]ってのは案外難しいよ。相手は動くし抵抗もするから」

霧切「舞園さんの手の平に金粉もついてないし、正しいと思うのだけど。舞園さん、どうかしら?」

舞園「……その通りです。私は持ってた包丁で応戦しました」

霧切「…包丁の出処は食堂ね。あそこにしかないもの」

十神「何故反撃したことを言わなかった舞園」

霧切「十神君。…来てたのね」

十神「石丸がしつこくてな。腐川は臭いので置いて来た。…話は聞いたぞ?舞園」

168: 2013/09/08(日) 01:46:29.63 ID:xC4he2o90
霧切「ここ、生徒手帳を見ると苗木君の部屋よね。どうしてここに舞園さんがいるのかしら」

舞園「…交換してもらいました。怖かったので」

霧切「そう。…使われた凶器は包丁と模擬刀」

葉隠「模擬刀はこれだな。金箔がすぐ取れてうっとおしいべ」

霧切「舞園さんの手首を怪我させたものね。舞園さんの手首にも金箔がついているわね」

セレス「と、いうことはこれを持っていたのは桑田君で間違いありませんわね」

山田「セレス殿、遅かったですな」

セレス「女性はいろいろと時間がかかりますの。…するとこちらの包丁は舞園さんが持っていたことになりますわね」

大和田「なんでだ?」

セレス「桑田君はおそらく模擬刀で利き手が塞がっていたはずです。両手で模擬刀と包丁を持ち二刀流…というのは流石に無理がありますわ」

朝日奈「どうして?持てばいいじゃん」

江ノ島「素人が片手で人を[ピーーー]ってのは案外難しいよ。相手は動くし抵抗もするから」

霧切「舞園さんの手の平に金粉もついてないし、正しいと思うのだけど。舞園さん、どうかしら?」

舞園「……その通りです。私は持ってた包丁で応戦しました」

霧切「包丁の出処は食堂ね。あそこにしかないもの」

十神「何故反撃したことを言わなかった舞園」

霧切「十神君。来てたのね」

十神「石丸がしつこくてな。腐川は臭いので置いて来た。…話は聞いたぞ?舞園」

169: 2013/09/08(日) 01:48:41.48 ID:xC4he2o90
舞園「…………」

十神「貴様の話と、残された現場から受ける印象がかなり違うように感じるのは気のせいか?」

朝日奈「ちょっと十神、何がいいたいの?」

十神「わからないのか?…舞園は自分に都合がいいように事態を説明したんだ。あくまで自分が被害者のように印象づくようにな」

朝日奈「舞園ちゃんがウソついたっての?」

十神「逆に聞くが何故舞園の話を信じ切っているんだ?」

朝日奈「何故って…舞園ちゃんが人を襲うなんてありえないよ…」

十神「では桑田なら襲うだろうと踏んだのだな」

朝日奈「…それは」

十神「何の証拠もなしに桑田が犯人だと決めつけたのはお前らだぞ?指摘をされて何故吃る」

十神「ここで何があったのか…俺には大体想像がつく。実に下らん事件だ」

石丸「待ちたまえ!わかっているというのなら、説明してくれないか?」

十神「…ほっておいても、そこの女が説明するだろう。まあいい。俺は見学させて貰うとするか」

霧切「では続けるわよ」

霧切「シャワールームは…壊されているわね」

葉隠「桑田の持ってたドライバーでこじ開けたべ。鍵掛かってたからな!」

170: 2013/09/08(日) 01:55:53.74 ID:xC4he2o90
セレス「あら?ここは苗木君の部屋ですわよね?…男子のシャワールームに鍵は無かったはずでは?」

苗木「鍵はついてないよ。建て付けが悪いんだよ。この部屋だけさ。舞園さんには教えてたんだ。部屋を交換した時に」

セレス「そうですか。あまり事件には関係ありませんわね」

霧切「二人とも無事だった以上、ここで重要なのはどちらが先にしかけたか、だわ。何かないかしら」

石丸「…?ここは苗木君の部屋なのかね?」

セレス「先ほどそう言ったでしょう。舞園さんが、襲われると思うと怖くて変えてもらったと」

石丸「ここは舞園君の部屋だろう?ネームプレートも舞園君だぞ?」

葉隠「そういやネームプレートは舞園っちだべな!」

江ノ島「せっかく部屋変えて貰ったのにネームプレートも変えたの?部屋変えた意味なくない?」

舞園「…………」

苗木君「え?僕プレートなんて変えてないよ?」

十神「皮が剥がれてきたな…ククク」

霧切「…………」

大神「すまん」

石丸「大神君?どうしたのかね?」

大神「桑田が目を覚ました。…それで、これを渡された」

171: 2013/09/08(日) 01:59:35.31 ID:xC4he2o90
霧切「紙?」

セレス「あら…これは」

舞園「……!」

朝日奈「『二人きりで話したいことがあります。五分後に、私の部屋に来てください。部屋を間違えないようにちゃんと部屋のネームプレートを確認してくださいね。舞園』…これって」

苗木「これ、舞園さんが書いたの?」

舞園「…………」

霧切「この紙…部屋備え付けのものね…これだわ」

不二咲「どうしたのぉ?鉛筆なんか出して」

霧切「こうするのよ」

葉隠「おっ!なんか浮かび上がってきたべ!」

朝日奈「さっきの紙と同じ文章だ…」

十神「筆跡も同一のものだな」

霧切「苗木君…このメモを使用したことは?」

苗木「…………」

霧切「答えて。重要なことよ」

苗木「使って…ない」

セレス「チェックメイト…ですわね」

十神「少なくとも舞園が桑田を誘いいれたことは確定したな。さて、どうする舞園?どう挽回する?」

172: 2013/09/08(日) 02:00:54.60 ID:xC4he2o90
舞園「ごめん…なさい…」

苗木「え?」

舞園「苗木君…ごめんなさい…私が桑田君を襲ったんです…」

舞園「桑田君は…何も悪くありません」

苗木「そんな…」

十神「つまらんな。これで終わりか。ついでにもう一つ聞いておこう。舞園、貴様苗木と部屋を交換して何をするつもりだった?」

苗木「え…?」

舞園「…………」

十神「自分で言わなくていいのか?俺が言ってしまうぞ?」

霧切「そこまででいいわ。十神君」

十神「駄目だ。ここで指摘しなければ舞園は逃げ切ることになるんだぞ。…罪には裁きが必要だろう。俺が与えてやる」

十神「苗木、貴様は裏切られたんだ」

苗木「…そんなばかな。違うよね?舞園さん」

舞園「…………」

十神「舞園は全てが終わったあとに」

苗木「舞園さん、こっちを見てよ。こっちを見て」

舞園「…………」

十神「桑田を頃して自分につながる証拠をすべて抹消したあと」

苗木「舞園さん!ボクを、ボクを見て!」

173: 2013/09/08(日) 02:02:17.43 ID:xC4he2o90
十神「苗木にすべての罪を着せ自分だけ外に出ようとしたんだ」

苗木「違うって言ってよ舞園さん!!!」

舞園「…………」

十神「とんでもない奴だ。親しく話しかけたのも、泣きついたのも、頼ったことも、全てが演技だったわけだ。そこは完璧だったな。肝心の殺人計画が駄目だったようだがな」

舞園「うそじゃ…ありません」

十神「なに?」

舞園「苗木君への気持ちは…嘘じゃありません」

十神「だからどうだと言うのだ?やったこと、やろうとしたことに変わりはないだろう?」

舞園「ごめんなさい…苗木君」

十神「まるで反省の色がないな…ここまで来て一番の被害者である桑田への謝罪は無しか?」

舞園「…………」

十神「苗木苗木と…いい加減に諦めたらどうだ?見苦しいぞ」

苗木「もうやめてよ」

十神「…ふん。こんな奴相手に時間を浪費するつもりなどない。俺は寝るぞ」

霧切「…今夜はもう解散した方がいいわね」

大神「舞園は…そうだな。我の部屋に泊めよう」

174: 2013/09/08(日) 02:03:49.57 ID:xC4he2o90
朝日奈「あ、危ないよ!さくらちゃん!」

苗木「…なんで危ないの?」

朝日奈「だって舞園ちゃんは…!」

舞園「…………」

朝日奈「舞園…ちゃんは…」

苗木「どうして、危ないの?」

霧切「苗木君」

苗木「なんでみんなそんな目で舞園さんをみるんだよ」

霧切「苗木君」

苗木「どうしてだよ!」

霧切「苗木君!」

苗木「!」

霧切「舞園さんは…人を殺そうとしたのよ」

舞園「…………」

霧切「そこから目を離してはいけないわ」

大神「……舞園よ」

舞園「……はい」

苗木「舞園さん!」

大和田「待て苗木!」

175: 2013/09/08(日) 02:06:23.76 ID:xC4he2o90
苗木「どうして…どうしてだよ…」

苗木「どうして…舞園さんがこんなこと…!」

石丸「…苗木君を僕の部屋に連れて行くべきだろうか?」

霧切「あなたじゃ不安だわ。葉隠君、お願い」

葉隠「は?俺?!ええええええ」

霧切「あなたが一番ましよ。年長でしょ?」

葉隠「うーわ、わかったべ。仕方ねえべ。苗木ー寝るぞー」

苗木「や、やめてよ葉隠クン!」

葉隠「じゃ、俺は寝るべ。…みんなも早く寝ろよ」



朝日奈「ど、どうしよう…舞園ちゃんもだけど、桑田にひどいこと言っちゃった…」

石丸「一体何があったのかね?」

大和田「そうか、石丸は十神を呼んでたせいで知らねえのか…」

不二咲「何があったのぉ?」

セレス「大体想像つきますわね。大方桑田君を犯人だと決めつけ、大勢で責め立てたのでしょう?彼は無罪どころか被害者であったのに」

山田「おおう…言葉にされますとなおさらキますな」

セレス「事実ですわ。早いところ自分の犯した間違いを受け入れた方が楽ですわよ」

176: 2013/09/08(日) 02:08:21.23 ID:xC4he2o90
江ノ島「そーいわれてもねぇ…これはキツイっしょ…」

大和田「俺なんか殴っちまったぞ…気絶なんてさせちまったぞ…」

朝日奈「桑田がもし…自殺とかしちゃったりとか…無いよね?」

山田「な…ないないないない!」

霧切「無いとは言いきれないわ」

石丸「今すぐ桑田君のところに行こう!止めるんだ!」

霧切「あなたが行ってどうするの!追い込むだけだわ」

朝日奈「で、でももし本当に自頃しちゃったら…」

霧切「包丁のある食堂は閉鎖、飛びおれるような高さがあるところは体育館だけ。気をつけることはできるわ。不安なら見ていることも可能よ」

セレス「気がかりは工具セットですが…これはどうしようもありませんわね。祈るしかありませんわ」

霧切「皆疲れてるわ…寝た方がいいんじゃないかしら」

石丸「僕が、朝一番で彼の部屋を見に行こう」

霧切「分かったわ」

大和田「じゃあよ…俺が石丸が来るまで桑田の野郎を見てるぜ…中にゃはいれねーがな」

セレス「決まりですわね。それ以外の皆さんはいつも通り寝ると言うことで。外出も夜時間の間はやめた方がいいですわよ?」

朝日奈「寝られないよ…」

セレス「寝ないのは勝手ですが睡眠不足は慢性的な疲れ、ストレスを呼び込みますわ。無理にでも寝た方がいいと思いますわよ?」




セレス「ここでは…適応した者のみが、生き残れるのですから」

192: 2013/09/09(月) 17:00:53.48 ID:3/vL/Jje0
石丸「…起きたまえ、起きたまえ大和田君」

大和田「……寝てねえよ」

石丸「当たり前だ。個室以外での就寝は校則違反だ」

大和田「ギリギリセーフ…ってとこだな。何もない場所で徹夜ってのは予想以上にきついな」

石丸「早く部屋に行った方がいい。眠いのだろう?」

大和田「そうさせてもらうわ…桑田なら出てこなかったぞ」

石丸「わかった。さあ、寝て来たまえ」

大和田「んじゃ、頼んだぞ…」

『オマエラ、おはようございます』

大和田「もう時間か?」

石丸「いや、まだ起床時間には余裕があるはずだが」

『昨日は何かがあったようですねえ。モノクマから大切なお話があるので至急、体育館へお集まりください』

石丸「これは…」

『どんなに辛くても来るんだよお?先生、待ってるからね?あ、こないのは無しだから。オシオキしちゃうからね?うぷぷぷぷぷ』

石丸「…どうする?」

大和田「どうするって…桑田を連れてかねえとマズイだろうよ…」

石丸「…よし。インターホンを押すぞ」

193: 2013/09/09(月) 17:01:44.75 ID:3/vL/Jje0
大和田「出て…来ねえな」

石丸「…桑田君!出て来てくれないか?!体育館へ行こう!僕と一緒に!大和田君もいるぞ!」

大和田「聞こえてねえよ。防音だぞ」

石丸「それでも語りかけなければ通じない!桑田君!開けたまえ!」

大和田「だから無駄だって言ってんだろ…チャイム鳴らすぞ」

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン

石丸「出て来ないな」

大和田「もっかいならすか」

モノクマ「うるさいからやめてくんないかな」

石丸「うおっ?!」

大和田「なっ…モノクマ?!」

モノクマ「もー桑田君は。ちょっと襲われたくらいで引きこもりになるなんてどんだけメンタル豆腐なの?」

石丸「本気で言ってるのか?!」

モノクマ「仕方ないから開けてあげるよ」

石丸「何?」

大和田「どういう風の吹きまわしだ?」

モノクマ「ボク君たちの友情に感動しちゃってさー。素晴らしいよね、友情って」

モノクマ「だからその友情に免じて助けてあげようかなって」

モノクマ「これからお話しなきゃだし、桑田君を理由に体育館に来ないってなってもだめだからね。…開いたよーじゃあ体育館に連れて来てね!」

194: 2013/09/09(月) 17:02:46.42 ID:3/vL/Jje0
ガチャ


石丸「開いている…」

大和田「…開けてくれ」

石丸「わかった。…桑田君?出て来てくれないか?」


桑田「…………」

石丸「桑田君!」

桑田「…なんだよ?」

石丸「放送は聞いていただろう?辛いかもしれないが、行かなければ何をされるかわからない。来てくれないか?」

桑田「今更仲間面か?」

大和田「…何?」

桑田「それとも俺をまだ犯人だと思ってんのか?だから監視しようとしてんのか?そうか?そうなんだろ?だから夜中ずっと見張ってたんだろ?」

大和田「ちげえよ!俺達はテメーが氏のうとしないか心配で…」

桑田「嘘を言うんじゃねえ!どうせ逃げ出さないか見てたんだろ?結局は舞園のことを信用してんだろまだ!」

石丸「いや!君が大神君に渡した手紙で君の疑惑は晴れた。舞園くんは犯行を自供した。君のことは誰も疑ってないし、みんな謝りたいとも言っている!」

桑田「だからなんだ?許された事に泣いて喜んでオメーらを許せばいいのか?だからって俺が真っ先に疑われた事実は変わんねえだろ!」

大和田「それは…」

195: 2013/09/09(月) 17:03:52.28 ID:3/vL/Jje0
桑田「お前ら全員、舞園は悪い事なんてしない善人で俺が人を襲うような悪人だって勝手に思い込んでたんだろ?だから証拠なんて無かったのに俺を真っ先に疑ったんだろ?そんな奴らを信じろってのかよ?!ふざけんじゃねえぞ!」

石丸「桑田君…僕達のことはいい。どれだけ言われても仕方のないことをした。しかし、体育館へは来てくれ。相手はモノクマなのだ」

桑田「もうどうだっていい…オシオキがなんだよ…そんなもんかってに喰らっとけ。俺はここにいる」

大神「……桑田」

桑田「大神…」

大神「許してくれとは言わぬ。最初から真実のみを話していたお前を先入観から信じなかったのは我等だ」

大神「しかし体育館へは来てくれぬか。舞園が恐ろしいというなら我の後ろにいろ。笑う者は我が止めよう」

桑田「…………」

大神「モノクマがわざわざ集めるということは、何か重要なことがあるということだ。知らなければさらなる不利益を被るかもしれぬ」

桑田「…後で行く。さっさとどこか行けよ。顔も見たくねえ!」

大神「その言葉、信じるぞ。桑田」

石丸「僕達は…先に行くしかないな…」

大神「我らがここにいれば桑田は外に出て来ないだろう。離れるぞ」

大和田「くそ…」

196: 2013/09/09(月) 17:06:46.40 ID:3/vL/Jje0
モノクマ「おっ?ちゃーんとみんな来たみたいだね!感心感心!」

朝日奈「あんな脅しかけておいてよく言うよ」

モノクマ「それよりもさぁー昨日はずいぶんと面白いことがあったみたいだねぇ?」

苗木「…………」

モノクマ「でもボク寝てたから分からないんだよね?誰か説明してくれないかなぁ?」

大和田「はぁ?!テメー知ってんだろ?!さっき話しかけてきただろうが!」

モノクマ「ボク知らないよ?誰か説明してよ。そうだ!舞園さんがいいな!」

舞園「……!」

苗木「なっ……!」

霧切「必要ないわ。説明なら現場を調べた私が一番知ってるわ」

モノクマ「でもボクは舞園さんに聞きたいなぁ?舞園さんアイドルだからお話しするのも得意だよねぇ?」

舞園「あ……」

モノクマ「はやく!はやく!」

舞園「苗木…くん…」

苗木「やめろモノクマ!」

モノクマ「早く話してくれないとこの朝会解散出来ないよぉ?大和田君とかなんでか寝不足みたいだし、こんな場所で居眠りなんてしたらどうなるのか真面目な舞園さんならわかるよねぇ?」

舞園「…………」

大和田「俺なら平気だっつってんだ!」

舞園「…………」

霧切「舞園さん…」

大神「舞園……」

桑田(なんでこいつは加害者なのに)

桑田(俺よりずっと守られてるんだろう)

桑田(なんで…俺は……こんなに…一人なんだ)

208: 2013/09/10(火) 02:17:42.98 ID:0Gt4+V940
最初から桑田舞園話はするつもりでしたが
ここまで深刻になる予定はありませんでした

落として別スレでやり直すことも考えましたが、今は続けようと思っています
不快になった方がいれば申し訳ありません

ただ最初の話に続くように書きますんでもうすぐ鬱全開は終わります
時間軸で言うとそろそろ大和田編冒頭の辺りです

212: 2013/09/10(火) 21:41:58.35 ID:0Gt4+V940
舞園「私は…最初に桑田君を呼び出しました」

舞園「それから包丁で刺そうとして…逃げられて」

舞園「逆に刺されてしまいそうになって逃げました」

モノクマ「うんうん。それで?」

舞園「隠れて桑田君が居なくなるのを待って…苗木君のところに逃げ込みました…以上です」

モノクマ「もっと情感たっぷりに話して欲しかったけど、こんなもんかな?」

モノクマ「感想としてはね、えー?なんだ舞園さん止められちゃったの?つまんないなーって感じ!」

モノクマ「もったいないよね。せっかく舞園さんが決心してくれたのに」

石丸「どういう意味だ…?」

モノクマ「だってさ、殺人が起こってればオタノシミの学級sおっといけない。ここまでだね」

セレス「今言いかけた言葉はなんですか?」

モノクマ「ちょっと言えないねーそれで今回のことを受けてボクは少し反省したんだ」

葉隠「反省ってなんだべ?!あっ!ここから出してくれるのか?」

モノクマ「違うよぉー。ただ、流石に行動範囲が狭すぎたかなーって」

モノクマ「よく考えたらそうだよね。一階だけじゃ狭すぎたよね。そりゃ見つかっちゃうよね。だから二階も解放します!」

霧切「何が目的なの…?」

モノクマ「これで人目につかない場所が増えて殺せる場所が増えたでしょ?あと倉庫も解放しておくね。倉庫には縄も鈍器も武器になりそうなものも豊富だから活用してね!」

213: 2013/09/10(火) 21:44:36.28 ID:0Gt4+V940
モノクマ「舞園さん。諦めちゃだめだよ。誰よりも先に難題に取り掛かる姿勢、ボクは評価するからね?この施設解放は君のガッツを讃えるものでもあるんだから」

モノクマ「さらなる挑戦あるのみだよ。リベンジ!」

舞園「…………」

モノクマ「桑田君もやられっぱなしじゃ悔しいでしょ?やっちゃってもいいんだよ。いや、むしろやるべきだね」

桑田「だ…誰がやるかっ!舞園みてえになんかならねぇ!」

モノクマ「えーそう?じゃあ舞園さん、頑張ってね。興奮はその後にあるんだからさ」

舞園「………っ」

苗木「お…お前っ!」

石丸「駄目だ苗木君!手を出せば君が!

苗木「離して石丸君!ボクは…アイツが許せないっ!」

石丸「駄目だ!危ない!大体、一時の感情で動いて、それがどのような結果になったのか!昨日あったばかりだろう!」

苗木「…っ!」

大和田「離してやれよ!そいつはあのボケを殴りてえって言ってんだ!止めんじゃねえ!

214: 2013/09/10(火) 21:46:15.04 ID:0Gt4+V940
石丸「暴力は駄目だ!」

大和田「暴力は駄目だぁ?どーせテメーはモノクマのお仕置きとかなんとかにビビってっからそんなこと言ってんだろこの腰抜け野郎が!」

石丸「な…何だと!」

大和田「違うのかよ!それとも何か?風紀委員様はそんなに規則が好きなのか?だったらテメー一人で守ってろこのクソボケが!」

石丸「き、君という奴は…!なぜそうも暴力的なのだ!君には自制心というものが無いのかね?!」

モノクマ「うぷぷぷぷっ。何かな?仲間割れかな?いいねいいね。盛り上がってまいりましたね!」

苗木「…二人とも、喧嘩はやめてよ。ボクが悪かったよ」

大和田「んだぁ?テメーのために言ってんだろうが!」

霧切「やめなさい。こんなことで争っても思う壺よ」

モノクマ「なに?もうおしまいなの?つまんないなあ。じゃあボクも忙しいからサヨナラっ!」

苗木「待て!」

霧切「…行ってしまったわね」




桑田(終わった…やっと。早く部屋へ帰ろう…)

石丸「待ってくれ桑田君!」

桑田「石丸に大神…」

215: 2013/09/10(火) 21:48:02.78 ID:0Gt4+V940
石丸「来てくれると信じていた!約束を守ってくれてありがとう!」

桑田「離せよ…帰りてえんだよ」

大神「待ってくれ。我はぬしと話がしたいのだ」

石丸「そうだ!大神君が君と話があるそうなのだ!大神君は二人で話がしたいそうなので僕は失礼する!大和田君と話をしなければならないのでな!」



桑田「大神…」

大神「我が相手であれば多少は話せるだろう…?言いたいことを言え。吐き出せばすっきりする」

桑田「……じゃあ言わせてもらうが大神よぉ…俺の話を信じて証拠を持ってってくれたことには感謝はしてる…だがな!」

桑田「今ので理解した!テメーら全員舞園の味方なんだろ!あんなことがあったのによ!」

桑田「俺が何したってんだよ!何で…何でだよ…」

大神「…………」

桑田「何とかいえよ!」

大神「…我には何も言えぬ。我等全員がお主を追い詰め、責め、傷つけた。我らに許されるのはお主の叫びを受け止めることのみだ」

桑田「じゃあなんで舞園を庇うんだよ!あいつはヘタすりゃ殺人鬼だったんだぞ!また、やらかすかもしれねーんだぞ!」

216: 2013/09/10(火) 21:49:22.67 ID:0Gt4+V940
大神「…これを伝えるために来たようなものなのだが、先程セレスがモノクマに掛けを仕掛け情報を得た」

桑田「情報…?」

大神「やはり聞いていなかったか。常に上の空であったからな」

桑田「な、なんだよその情報ってのは!」

大神「何らかの殺人事件があったあと、学級裁判というものが開かれるらしい」

桑田「学級裁判…?」

大神「うむ。何でも我等生徒全員が捜査をし、クロを見つけるというものだ」

大神「クロを間違えたらクロ以外が処刑、クロを見つけられればクロのみを処刑。そういうものらしい」

大神「舞園はこれを聞き青ざめていた。どういう理由かは分からぬが、己のしようとしたことの重大さを理解したことは確かだろう。もう間違いは起こさぬと我は確信した」

桑田「だから…庇うのか?」

大神「苗木は舞園と同じ中学だ。思い入れがあるのは仕方が無い。霧切は…苗木に対して不安を抱いて共に行動しているそうだ。舞園に対しての監視もあるらしい」

桑田「…………」

大神「朝日奈や葉隠、大和田が舞園を擁護しているように見えるのは…あやつらは感情的になりがちだ。その場その場で怒りを発散させてしまうのだ。何もおぬしを嫌ってのことではない」

桑田「だからって許せねえよ」

217: 2013/09/10(火) 21:50:44.24 ID:0Gt4+V940
大神「わかっている。許せとは言わぬ。…これが今回モノクマから得られた情報だ。読んで覚えておけ」

桑田「二階の解放…倉庫の解放?」

大神「そしてこれが石丸からの伝言だ。読め」

桑田「『僕達は明日解放された場所の捜索を行う!そこで得られた情報はもちろん君と共有するつもりだ!だから捜索が終わったあと、僕と話をして欲しい!石丸』」

大神「石丸はこう言ってもいた。…よければ一緒に捜索したいとも。…どうだ?」

桑田「…両方NOだ。話す気になんかなれねえよ…」

大神「…そうか。ならば手紙を書く。それは受け取ってくれ」

桑田「……」

大神「情報は共有したい。頼む」

桑田「…なんで大神はここまですんだ?大神は悪くねえだろ」

大神「我は我のためだけに動いているのではない。他の者たち…皆の思いも背負い、行動しているつもりだ。」

桑田「…そうかよ」

大神「…明日、手紙を届けるぞ。チャイムを鳴らす。それが合図だ」

桑田「…………」

大神「朗報を、待っていろ」

218: 2013/09/10(火) 21:52:11.04 ID:0Gt4+V940
その後は一日中寝た
何をする気も起こらなくて、ただ眠くて、ひたすら寝た
まともに目覚めたのは翌日の昼前だった

ピンポーン

桑田(うるせえ…)

かさり

桑田(紙?…そういや大神が手紙を…)

桑田(…達筆すぎて読めねえぞ)

桑田(図書室内…PC発見…廃校…)

桑田(プール…『共に泳がないか!』…風呂…『サウナに入ろう!』んだこれ…紙突き抜けて穴が開いてやがる…石丸の字か?)

桑田(倉庫…食材の確保が可能…その他いろいろあり…)

桑田(…『桑田、この状況では食堂には来にくいだろう。倉庫に行くといい。偏ってはいるがある食べ物があった。何かあれば紙に記して部屋の前に置いておいてくれ。我や石丸、無論それ以外にも、遠慮なくモノを頼め』)

桑田(大神…流石にここまでしてもらうとと何も言わねえわけには…)

桑田(とりあえず返事を書かねえとな…)

219: 2013/09/10(火) 21:53:02.61 ID:0Gt4+V940
朝食会



大神「…石丸」

石丸「大神くんか。どうかしたのか?」

大神「桑田から返事だ」

石丸「何?!」

大和田「マジか大神!」

大神「読む。『大神。いろいろサンキュ。助かったぜ。だが、誰かと話をするつもりは無い。食堂には行かないし外にも出ねえ』」

大神「『一日寝て少しは落ち着いたが、それでも一人でいてえ。正直なにも信じられない。しばらく一人にしてくれ』…以上だ」

不二咲「…桑田君、きっと辛いよね」

朝日奈「流石にね……私、どうすればいいんだろう。謝らなきゃいけないのはわかるけど…」

大和田「俺もだな…」

大神「今はそっとしておくべきだろうな…」

石丸「う、うむ。多少は落ち着いたようだしな…」

葉隠「その自己申告がどこまで正確かは分からんがな……それはそうとあっちはあっちで空気がやばいべ。この朝食会、アレのせいでどこにいてもキツイべ」

220: 2013/09/10(火) 21:54:35.20 ID:0Gt4+V940
朝日奈「舞園ちゃん…朝食会に来たんだね」

大和田「あの根性はすげえぜ…俺なら無理だ」

石丸「今は苗木君と霧切君が応対しているのか…」

不二咲「舞園さんは私たちじゃ、無理だよねぇ…」

葉隠「どこに地雷があるか分からんべ。踏んだりしたら殺されるべ」

朝日奈「葉隠…言っていいことと悪いことがあるんだよ…」

葉隠「わ、悪かったべ!」

石丸「十神君は相変わらず単独行動、腐川君もそれに同行、山田君とセレス君、江ノ島君は僕達と朝食にはくるものの、単独行動…」

朝日奈「あまりよくない状況だね…」

大神「しかしこればかりは仕方のない事だ…しばらくは耐えねばなるまい。我等だけでも、しっかりせねばな」

朝日奈「うん……よ、よし!元気だして行こうよ!私たちが元気に明るくやっていれば桑田も気になって部屋から出て来てくれるよ!」

葉隠「朝日奈っちが元気にやってても部屋は防音だべ。桑田っちには聞こえねえべ」

朝日奈「そういうことは言わないの!」

石丸「朝日奈君の言う通りだ。桑田君、それ以外の者も過ごしやすい空気を作るよう心がけよう」

大神「それしかないな…まずは自分たちから…だな」

221: 2013/09/10(火) 21:56:16.45 ID:0Gt4+V940
朝日奈「舞園ちゃん…朝食会に来たんだね」

大和田「あの根性はすげえぜ…俺なら無理だ」

石丸「今は苗木君と霧切君が応対しているのか…」

不二咲「舞園さんは私たちじゃ、無理だよねぇ…」

葉隠「どこに地雷があるか分からんべ。踏んだりしたら殺されるべ」

朝日奈「葉隠…言っていいことと悪いことがあるんだよ…」

葉隠「わ、悪かったべ!」

石丸「十神君は相変わらず単独行動、腐川君もそれに同行、山田君とセレス君、江ノ島君は僕達と朝食にはくるものの、単独行動…」

朝日奈「あまりよくない状況だね…」

大神「しかしこればかりは仕方のない事だ…しばらくは耐えねばなるまい。我等だけでも、しっかりせねばな」

朝日奈「うん……よ、よし!元気だして行こうよ!私たちが元気に明るくやっていれば桑田も気になって部屋から出て来てくれるよ!」

葉隠「朝日奈っちが元気にやってても部屋は防音だべ。桑田っちには聞こえねえべ」

朝日奈「そういうことは言わないの!」

石丸「朝日奈君の言う通りだ。桑田君、それ以外の者も過ごしやすい空気を作るよう心がけよう」

大神「それしかないな…まずは自分たちから…だな」

222: 2013/09/10(火) 21:58:45.15 ID:0Gt4+V940
石丸「大神君、すまないのだが桑田君との会話は君にお願いしたい。君が相手であるならば多少は話せるようだ」

大神「ああ…対したことは出来ぬが、任せておけ」

石丸「ではこれで解散しよう。ごちそうさま!」

不二咲「ごちそうさま」

朝日奈「ご馳走さまっ!」

葉隠「ご馳走さまがゲシュタルト崩壊しそうだべ」

朝日奈「葉隠うるさい」

葉隠「流石に酷いべ」

大神「ふふ…」

石丸「そうだ!この空気だ!この調子で頼むぞ!」

朝日奈「おー!」

223: 2013/09/10(火) 22:00:48.10 ID:0Gt4+V940
それからしばらく、大神と桑田のやり取りは続いた



大神「む…桑田か。『倉庫とランドリーに人がいない時間を教えてくれ』…む、なかなか難問だ。皆に聞かねば」

大神「今朝の返事か…『ランドリーのことは助かった。ありがとう』」


大神「…む、桑田か。『他の奴らはどうしている?』…これもまたむずかしい…。桑田を責めた者と舞園と苗木は書かない方がよいだろうな…」

大神「返事が来たな…『サンキュ』か…」


大神「『倉庫からドーナツが消えた。何か知らないか?』……朝日奈……」

大神「…『とある者が独り占めしていた。少し戻しておくそうだ』…朝日奈の名は、出さぬ方がいいのだろうか…」

大神「返事か『ドーナツうまかった』…少しは、マシになったのだろうか」

………
……





朝食会

大神「これがしばらくの桑田とのやり取りだ」バサ

石丸「この調子なら、もう大丈夫そうだな!」

大神「ああ…最初のころは必要事項のみのやり取りだったのだが、今は話題がもう少し増え、文章も増えている」

石丸「もう少し…と言ったところだな!少し安心した」

224: 2013/09/10(火) 22:01:44.27 ID:0Gt4+V940
朝日奈「私たちのことは話題にだしてないんだね」

大神「うむ。すまないが、朝日奈たちの名は出さぬようにしている。あまり刺激したくなかったのでな」

霧切「それは正しい判断だと思うわ」

大和田「霧切じゃねえか。苗木はどうした?」

霧切「…ふう。ずっと彼らといると息が詰まるのよ」

山田「でしょうなあ」

セレス「山田君、お茶を」

山田「はい只今」

大和田「山田の奴、ずいぶんと従順じゃねーか」

セレス「教え込みましたの。大変でしたわ」

朝日奈「教え込んだ?どうやって?」

セレス「ただのしつけですわ」

葉隠「しつけっておい…」


不二咲「霧切さん、大丈夫?疲れてるよぉ?」

霧切「ええ…」

石丸「舞園君のことを押し付けてしまっているからな…」

225: 2013/09/10(火) 22:03:21.18 ID:0Gt4+V940
霧切「舞園さんはある意味安定しているわ。…問題は苗木君よ」

石丸「どういうことかね?」

霧切「舞園さんはずっと移動しているの。どこか一箇所に留まらずにずっとね」

江ノ島「へー。普通は閉じこもるもんじゃないの?桑田みたいに」

霧切「人それぞれだと思うわ。…それで、舞園さんは移動しながら人がいる場所では、空気みたいに振舞って、人がいない場所ではひたすら自分のしたことを反省しようとするのよ」

霧切「鏡があれば鏡に向かって、無ければ床や壁や机に向かって自分のやったことを話しているの。それで、『あなたは犯罪者、その場所にいる権利なんて無い。忘れてはいけない』って繰り返し繰り返しつぶやいているわ」

霧切「内容が変化することはあるけど、全て罪を責め、自己否定するような内容ばかりね」

葉隠「きっついべ…」

大和田「よく我慢してられるな…」

石丸「それはとても安定とは言えない気がするのだが」

霧切「人と話す時は極めて静かよ。冷静になろうと務めているの。むしろ自己否定しかしようとしないからある意味安定と言ったのよ。他人に危害を加えることはあまり無いでしょうね」

霧切「問題は…苗木君」

朝日奈「苗木は舞園ちゃんを励まそうとしてるんでしょ?どこが悪いの?」

霧切「本人のもとめていない励ましは逆効果よ。特に彼と彼女の場合は」

セレス「…苗木君は何をしでかしているのですか?」

霧切「自己否定を始める舞園さんの横で、ひたすらに「君は悪くないよ」とか「悪いのはモノクマなんだ!」とか「みんなきっとゆるしてくれるよ」「桑田クンと話してみようよ」「ボクは君を守りたいんだ!」とかよ」

セレス「はあ…苗木君は割とランク高かったのですが下げてもよろしいでしょうか?」

226: 2013/09/10(火) 22:05:43.58 ID:0Gt4+V940
石丸「なにがいけないのかね?励ますいい言葉だと思うが」

霧切「本人が自分のしたことを受け入れようとしてるのに、苗木君が受け入れられなくて維持になって否定しているのよ」

霧切「相手のことを心から思っての言葉ではない励ましなんて、怒りを煽るか辛くさせるだけでしかないわ」

大神「…むずかしいな。苗木が舞園のことを大切にしていることもあって複雑だ」

霧切「まさか苗木君がここまで何も見えなくなるなんて思ってなかったわ。初めのうちに離すべきだったかしら」

セレス「そうでしたのでしょうけど、舞園さんも本心では彼といたいでしょうし、苗木君も離れようとはしないでしょうから…無理ですわね」

葉隠「…酷い泥沼だべ。底なし沼かよ」

セレス「葉隠君にしては真理をついていますわね。そういっても過言では無いでしょう。このままいけば互いに依存し、破滅してしまいかねませんわ」

不二咲「そ、そんなぁ…」

セレス「わたくし達にはどうすることもできませんわね。関われば爆発しかねません。今の二人は危険物のようなものです」

霧切「…しばらくしたら戻るわ。舞園さんもそろそろお風呂終わるだろうし」

霧切「(私は、こんな時間を彼と過ごしたいわけじゃない)」

石丸「…今何か言ったかね?」

霧切「忘れて構わないわ。…行くわね」

朝日奈「霧切ちゃん!」

大神「…苦しいな」

227: 2013/09/10(火) 22:08:35.62 ID:0Gt4+V940
葉隠「つーかさぁ、アレ霧切っちも意地になってんなぁ…なんかあんのかねぇ」

セレス「あるでしょうね」

葉隠「恐ろしい三角関係だべ…」

江ノ島「きっつ…」

大和田「リアル昼ドラかよ…」

石丸「……?それでは僕たちは桑田君に専念しよう。…とは言ってもしばらくは大神君に頼ることになるが」

朝日奈「大丈夫さくらちゃん?」

大神「手紙を書くくらいだ。心配はいらぬ」

不二咲「はやくでてきてくれるといいねぇ」

石丸「この調子が続けば大丈夫だ!彼を信じよう!」

228: 2013/09/10(火) 22:10:17.08 ID:0Gt4+V940
桑田(…メシが無え。そろそろ取りに行くか)

桑田(あれから…5日か)

情報源は大神からの(時折石丸の文字も混じる)短い手紙だけだ
今、部屋の外がどうなっているのか…俺には殆ど分からなかった

このしばらく、大神(と石丸)にちょくちょく朝食を分けてもらいつつ、おやつのような食事で生活していた
飲み物も甘い物ばかりで、いくらなんでも飽きてきたところだった

桑田(今は…夜中の三時か。今なら誰も居ねえだろう)

目標はモノモノマシーンだ。モノモノマシーンは時々食べ物が出てくるらしいと聞いて、ずっと迷っていた

桑田(絶対出るって保証は無えが、気分転換にはなるはずだ)

桑田(………でるぞ!)

最近、人と対話してないせいか、人と会うことがひどく恐ろしいことのように感じて仕方が無い。
外に出ることも恐ろしく感じるようになって、その自分の変化に流石にマズイと感じているところだ。

桑田(このままじゃ行き着く先は引きこもりだ…ンなダセえ真似はごめんだ!)

思い切って外に出る。

桑田(静かだな…)

桑田(…購買部だ。俺が持ってるコインは少しだが…いいのが当たるといいな)

229: 2013/09/10(火) 22:11:57.36 ID:0Gt4+V940
桑田(…ユーレイとか出ねえよな)

パシン

桑田(…なんの音だ…?気のせいか?)

パシン

桑田(気のせいじゃねえ…なんだこの音は…離れよう)

桑田(…購買部だ。やっとついた。やたら離れて感じたな)

桑田(…イイモン出ますように)

ゴロン

桑田(…ゲッ!ドクロ?!)

桑田(初っ端縁起悪い!…だが水晶か。綺麗だな)

ゴロン

桑田(…今度は悪趣味な人形…もっとマシなもんはねえのかよ)

ゴロン

桑田(…これは)

桑田(野球…ボール…?)



ガチャ




桑田(……なんで、ドアの開く音が…)

230: 2013/09/10(火) 22:13:22.40 ID:0Gt4+V940
「…………」

桑田(……振り向けねえ)

桑田「……ッ!……ァ!」

桑田(声も出ねえ!何でだよ!)






「今は夜の三時ですよ……」





桑田(ーーーー!)

231: 2013/09/10(火) 22:15:07.74 ID:0Gt4+V940
??「危ないですよ…」

桑田(この…声は…)

舞園「よくない人も歩いているんですから…」

桑田(舞園ォォォォォッ?!)

舞園「桑田君…」

桑田(おちつけ、おちつけ、おちつけ俺!)

舞園「…そうですよね、怖いですよね。…殺そうとした挙句、犯人にしたてあげようとしたんですから」チャキ

桑田(舞園……?何を持って……)

桑田(銀色の…ハサミ?!)


大きく切れ味の良さそうなハサミを、舞園は抱えていた

舞園「ごめんなさい…謝って許されるとは思っていません。でも、謝りたいんです。ごめんなさい」チャキチャキ

桑田(舞園が…刃物を持ってなんで俺のところに…?!)

舞園「……これですか?…よく切れるハサミみたいです。落ちてたんですよ。危ないですよね。…ほら、さっきも間違えて刃の部分持っちゃって…切ってしまったんですよ」チャキ

舞園が差し出した手には、トロトロと真っ赤な血がポタポタポタポタポタポタポタポタ

舞園「危ない…ですよね」

桑田「あ、あ、うわあああああああああっ」

232: 2013/09/10(火) 22:16:01.05 ID:0Gt4+V940
桑田「はあ、はあ、はあ、はあ」

桑田(遠い!なんでこんなに遠いんだ俺の部屋は!)

こんなに俺の部屋は遠いところにあったか?
足がもつれて転ける

桑田(痛え……立てねえ…こんなに体力落ちてたのか…)

桑田(ここは…脱衣所…?)

桑田(なんで明かりが…)

パシーン

桑田(…この音はさっきも…)

パシーンパシーン

桑田(何の音だ!誰か、誰かいるのか!)

パシーンパシーンパシーン

桑田(助けを呼ばねえと!舞園にこんどこそ殺される!)

ウオオオオオオ

桑田(…悲鳴?!)

233: 2013/09/10(火) 22:17:28.27 ID:0Gt4+V940
オラァ!ココカ!ブタガ!
ヒイイイイイイイ

桑田(なんだ、なにがおこってる?!なにが…)ドン

桑田(…背中に、何か)

桑田(…ロングスカート?舞園じゃない?)

桑田(………?)

桑田(腐川…?)

腐川「あー?またやってんのかあのドリルとひふみんは」

桑田(腐川…?こんな話し方するやつだったか…?)

腐川「毎日毎日お盛んだねぇ!理解できねーけどォ!あーでも白夜様とならいーかもぉー!」

桑田(………)

腐川「白夜様の白い背中に映える鞭の跡!悲鳴!やべークッソ萌える!」

桑田(腐川……?)

腐川「……あ?アレ?桑田ちゃん?ひっさしぶりぃ!久々のシャバはどーよ?まあここ外じゃねーけどな!あひゃひゃひゃ!」

桑田(…誰だ、コイツ!)

234: 2013/09/10(火) 22:18:54.96 ID:0Gt4+V940
汗が引く。
腐川の顔を少しずつ見上げれば真っ先に目に入ったのは…舌。長い長い舌。
目は赤い気がしたが目を合わせたらマズイ気がして目を逸らす

腐川「ねーねーそーいやさー聞きたいことがあるんだよねー」

桑田(なんだ)

腐川「この素敵無敵なマイハサミちゃん知らない?落としちゃったんだよねー!ここじゃマイハサミ作れないからさー見つけたいんだけどー」


腐川がふとももからハサミを二つ取り出して構える。
赤いライトに照らされそれはグロテスクに光る。

腐川「あり?フリーズ?おーい桑田ちゃーん?」

ヒタヒタとハサミで顔を叩かれる。
命の危機を感じた。それはそれは強烈に。

腐川「うおぁっ!?」ドン

桑田(逃げろ逃げろ逃げろ逃げろォ!)

235: 2013/09/10(火) 22:20:15.21 ID:0Gt4+V940
腐川「おーすげー毛虫みてーな走り方ー」



桑田(俺の部屋だ!)

バタン


桑田「はあ…はあ…」

桑田(外は…外は一体どうなってやがるんだ!)

桑田(まさか、まさか全員あんな風におかしくなってんのか?!)

桑田(外に出たら……殺される?)


塞がりかけていた傷が、再び口を開けた






そして、更にしばらく
時は冒頭へと進み、石丸が騒ぎを起こすのだった

256: 2013/09/12(木) 13:34:41.29 ID:IShhipRo0
朝食会

石丸「皆!おはよう!二日ぶりだな!」

大和田「…うっす」

朝日奈「あー石丸!風邪治った?」

石丸「バッチリだぞ!」

大神「大和田はまだ不調か?」

大和田「…無理やり兄弟に起こされてねみいんだよ」

不二咲「風邪はもう平気…?部屋に行きたかったんだけど、流行らせたらマズイからって…いけなかったんだぁ」

石丸「その気持ちだけで充分だぞ!なあ兄弟!」

大和田「おう。ありがとな不二咲」

石丸「ところで、何か変化は無かったかね?」

朝日奈「変化?」

大神「…セレスと山田が雰囲気が変わった…気がする」

石丸「気がする?」

257: 2013/09/12(木) 13:36:12.42 ID:IShhipRo0
朝日奈「なんとなくだけどね。前はべったりって感じだったのが適切?っていったら変だけど距離が離れた感じがするよ」

石丸「僕のせいか…」

大和田「むしろ正気に戻ったんじゃねえか?連日SMプレイはやり過ぎだろ」

朝日奈「私もそう思うな。別に仲が悪くなったようには感じなかったよ」

石丸「では次は舞園君のことなのだが」

大神「まるで見ないぞ」

朝日奈「いや、見ないってことは無いんだけど、いるのかいないのかわからなくなることが多いっていうか…」

大神「気配を消しているな。苗木と霧切を振り切って一人でいることが多いようだ」

石丸「とうとう一人になっているのか…」

朝日奈「霧切ちゃんは意図的に一人にしてるみたい。…ほら、苗木が舞園ちゃんに構い過ぎて逆効果だって前に言ってたじゃん?」

朝日奈「だから夜は苗木を苗木の部屋か霧切ちゃんの部屋に無理やり居座らせてるって」

大神「霧切の行っていた夜の『個人授業』はこれが目的だったようだ」

大和田「苗木と舞園を離すにしてもそれは流石に不器用すぎんだろ…夜中に氏体の授業…」

石丸「むむむ…やはり僕は余計なお世話というものをしてしまっていたのか…」

大和田「過ぎたことはしょうがねえ。正直俺も舞園ほっぽって何をよろしくやってんだ、とは思ってたしな」

石丸「そうだな!仕方ないな!」

朝日奈「もうちょっと反省しようよ」

石丸「反省なら体が動かない間散々した。ここからは体で示すと誓おう!」

258: 2013/09/12(木) 13:36:50.89 ID:IShhipRo0
石丸「ところで大神君」

大神「なんだ」

石丸「桑田君はどうなっている?」

大神「以前より手紙の数は大幅に減った。自分で行動するように頑張っているようだが」

石丸「その桑田君なのだが、先日会ったのだ」

朝日奈「どうだった?良くなってた?」

石丸「…悪化しているようにしか見えなかった」

大神「悪化…?何故だ?確かに数は大幅に減ったが内容に悪い変化は…」

石丸「少し見せてはくれないか?その手紙を」

大神「…とってこよう。待っていろ」

朝日奈「いってらっしゃい」

259: 2013/09/12(木) 13:37:44.36 ID:IShhipRo0
大和田「…舞園と苗木だ」

石丸「霧切君は…キッチンか」

不二咲「…久しぶりだね、舞園さんが朝食会にくるの。一週間くらいかなぁ?」

朝日奈「そんなには経ってないと思うけど…来てないのは…5日くらいかな?」

石丸「本当に苗木君は舞園君から離れないな…」

大和田「苗木の奴はなにやってんだ?」

朝日奈「…あれ?舞園ちゃん怪我してる?」

不二咲「あ、本当だ!包帯が両手になってるよぉ!」

石丸「前に朝食会に来た時は無かった…ということは」

大和田「その間か」

朝日奈「怪我の度合いは分からないけど、苗木が世話してるってことは…酷いのかな…」

不二咲「ま、まさか自分で…」

石丸「それは無いと思うが…」

朝日奈「なんで?」

石丸「そんなことがあれば苗木君が取り乱していてもおかしく無いと思うのだが」

朝日奈「それもそっか」

260: 2013/09/12(木) 13:39:12.33 ID:IShhipRo0
大和田「じゃあ事故か。舞園も災難だな」

石丸「あれではなおさら苗木君は離れたがらないだろうな…」

江ノ島「やっほー。舞園の世話は霧切がしてるみたいだよ」

石丸「おはよう!江ノ島君!」

江ノ島「おっす。舞園は女性だからなんとかで苗木を丸め込んだらしいよ」

朝日奈「だからしばらく苗木は舞園ちゃんから少し離れてたんだね」

大和田「じゃあ今苗木が舞園にべったりなのは…」

石丸「…僕の、せいだろうな」

大和田「兄弟…」

石丸「僕が兄弟の警告を聞いていれば良かったのだ…」

不二咲「石丸…くん…」

石丸「しかし気にしていても仕方が無い!なんとかしよう!」

朝日奈「切り替えはやっ!」

石丸「反省ならば散々したと言っただろう!これ以上はただの後悔だ!」

261: 2013/09/12(木) 13:40:08.95 ID:IShhipRo0
大神「持ってきたぞ」

朝日奈「どれどれー?」

石丸「…『朝飯ありがとう。魚うまかったぜ』『ドーナツは好きな奴に譲っていいぜ』『今度は自分で食べにいってみる』…なるほど。たしかに大神君の言うとおりだな」

朝日奈「うん。悪くなってるようには見えないよ」

大神「置き手紙の数が減ったのはこの辺だ…丁度、自分で行ってみると桑田が言ったあたりだ」

大和田「これを見るだけじゃよお、自分で自分にハッパかけるために大神に頼ろうとしなくなっただけに見えるぜ」

不二咲「本当に桑田君は悪くなってたの?石丸君」

石丸「見間違いなどでは無い。尋常ではなかった。桑田君の様子は霧切君と苗木君が見ている」

大和田「…聞きにいくか?」

朝日奈「ごめん無理…」

葉隠「俺も無理だべ」

大和田「何をさらりと混じってんだ葉隠。おせーよ」

葉隠「大方大和田っちも石丸っちに連れてこられたんだろ?人のこといえんのかよ」

大神「石丸が嘘をつく理由も無い。それに…桑田の様子が気になるのも事実」

石丸「様子を見にいかないか?皆で」

262: 2013/09/12(木) 13:41:28.54 ID:IShhipRo0
朝日奈「全員はやめておいた方がいいんじゃない?」

大和田「俺は行かねえ。…怖がらせちまうだろうしな」

朝日奈「私も…」

石丸「む…ではどうするか…」

葉隠「いつものメンバーでいいべ。それに不二咲っちを足せば無害さUPだべ」

大神「では我、石丸、不二咲でいいか?」

石丸「いいかね?不二咲君」

不二咲「うん。…パン持っていってあげよう」







石丸「…押すべきか、押さないべきか」

不二咲「手紙だといつ返事がもらえるか分からないよねぇ…」

大神「確認したところ返事の数も減っていた…」

石丸「…筆談でもなんでもいい。応対してくれれば御の字だ」

不二咲「…そんなに酷いんだぁ」

石丸「…こちらが意気込みを失ってはいかん。押すぞ!」

263: 2013/09/12(木) 13:42:26.97 ID:IShhipRo0
ぴーんぽーん


石丸「…当然だが、出ないな」

大神「では筆談だ。…『桑田、大神だ。石丸と不二咲もいる。久々に話がしたい』」

不二咲「お願い…」

石丸「………」



大神「紙は部屋に入ったが、返事が来ぬな」

石丸「むむ…」

不二咲「…………」

大神「…………」

石丸「僕が、書いてみよう」

石丸「『おはよう!桑田君。この間は驚かせてしまってすまなかった。怪我などはしていないだろうか。あの後取りに行ったものは取れただろうか?取れていないのであればお詫びも兼ねて取りに行きたい。返事だけでも頼む』」



石丸「…む!来たぞ!なになに…『もう必用無くなった。いらねえ』…これだけか」

大神「ずっと玄関前にいれば圧迫してしまうかも知れぬ。…一旦引くぞ。皆に報告だ」

不二咲「『不二咲です。パン食べてね。今朝みんなで食べたんだ。おいしいかったよ(・ω・)』」

264: 2013/09/12(木) 13:43:24.93 ID:IShhipRo0
石丸「…と、いうわけだ。返事はこれだけだった」

大和田「大神、何か感じたか?」

大神「石丸の話を聞いて、我への応対の印象が変わった。先に話を聞くといい」

石丸「では話そう。あれは、二日前だ」

大和田「つまり俺と兄弟が喧嘩したときだな」

石丸「そうだ。皆に話を聞いているときに倉庫に桑田君が入ったのに気がついたのだ」

朝日奈「外に出てたの?」

石丸「ああ。だが、ひどく怯えていた。僕が彼に話しかけると驚いてものを落としてしまったのだ。そのときに彼の姿を見たのだが」

葉隠「どんな感じだべ?」

石丸「悪い言い方をさせて貰えば、清潔な浮浪者のようだった。それほど痩せてはいないはずなのに、やつれているように見えた」

朝日奈「ふ、浮浪者ぁ?!」

葉隠「石丸っち、浮浪者見たことあんのか?!結構ひどいぞ?」

石丸「それほどやつれて、顔色が悪かったのだ。食事をロクにとっていないのか、精神的なものか、あるいは両方か。それは分からないが」

大和田「そんなに…ひでえのか」

265: 2013/09/12(木) 13:44:31.91 ID:IShhipRo0
石丸「桑田君は僕を見た後、酷く狼狽しながら、叫びを上げて逃げて行った」

朝日奈「まるでよくなってないね…」

石丸「叫び声を上げるのがやっと、といったようだった。声を出そうとしても出ないらしい」

不二咲「桑田君…」

石丸「以上だ」

大神「この話を聞く限り、手紙の内容が簡潔になったのは、安定したのでは無く、長文を書けなくなったためだったのか?と感じた。皆はどうだ」

朝日奈「…私もそう思う。…でもさ、よくなりかけてたのは本当じゃん!何があったの桑田に!」

大神「声をだす気力もない…以前話したときは我に怒りをぶつけて来れる程度には活力はあった…」

石丸「…この手紙を見る限り、桑田君は外に出る決意をしていたようだ。…外に出て何かあったのでは…」

不二咲「何かあったって…何が?」

石丸「その間にあった変化を述べて見てくれ。何かがあるはずだ」

朝日奈「変化って…そんなことあったら私たちだって…あ!」

大神「どうした?」

朝日奈「舞園ちゃんの怪我!」

大和田「…まさか、だよな?」

朝日奈「…でも、それっぽいのってこれじゃない?」

266: 2013/09/12(木) 13:46:47.78 ID:IShhipRo0

葉隠「まさか、舞園っちがまた桑田っちを襲って返り討ち…ってことか?」

石丸「…それは」

大神「無いとは言えぬが、我は舞園がまたあのような間違いを犯すとは思えぬ」

不二咲「舞園さん、学級裁判のこと聞いて、ショック受けてたもんねぇ…」

葉隠「心変わりしたんじゃね?ありえねーとは言えねえべ」

石丸「…舞園君がそのような行動を起こして霧切君が気がつかないだろうか」

葉隠「霧切っちだって人間だべ。寝てることもあるし、風呂にだってはいんべ」

朝日奈「でもさ、桑田を氏なせたら学級裁判になって、自分か自分以外かが氏んじゃうんだよ!苗木や霧切ちゃんだって氏なせちゃうんだよ?!」

葉隠「舞園だってふつうじゃねーだろ!そこまで気が回らなくてもおかしくねーべ!」

石丸「そうだ。舞園君も、桑田君と同じように精神的にダメージを受けている。…二人が意図せず遭遇し、共に錯乱…という線は考えられないだろうか」

大和田「ありえるな」

大神「我としてもそう思う。…襲われたのであれば助けを求めるはずだ」

267: 2013/09/12(木) 13:47:23.92 ID:IShhipRo0
葉隠「襲われて恐くて外に出られないって線はどうだべ?」

大神「無くは無いが……証拠がない以上、何も言えぬな」

石丸「…苗木君か、霧切君から話を聞くしかあるまい」

葉隠「やめといたほうがいいべ…昼ドラに足突っ込めば待っているのは刺して刺されての愛憎劇だべ…」

朝日奈「なんで葉隠がいうと説得力ますんだろ…」

大和田「ああ…それっぽいしなぁ…」

葉隠「酷いべ」

石丸「…僕が彼らから話をうまく聞こう!」

朝日奈「えー不安…」

石丸「さあ行こう!ここで管を巻いていても仕方が無いのだ!」

276: 2013/09/14(土) 01:53:45.90 ID:wPG8knpP0
葉隠「…いたべ!苗木っちだべ!」

朝日奈「…食堂にいたんだ…」

大神「この時間は舞園は風呂だな」

朝日奈「お昼なのに?」

不二咲「お風呂に人が居ない時間だからかなぁ…」

石丸「ということは霧切君は舞園君と一緒か…できれば霧切君が良かったのだが」

大和田「…出直すか?」

石丸「…いや何事も挑戦だ。聞いてみよう。苗木くーん!」スタスタ

朝日奈「ちょ、石丸!…本当にノンストップだよ!」

大神「我らはひとまず見守るとしよう」

不二咲「大丈夫かなぁ…」



石丸「苗木くん。ぐっイブニン!朝は挨拶ができずにすまなかった!」

苗木「…ああ、石丸君。風邪はもういいの?」

石丸「もちろんだ!心配してくれてありがとう苗木君!」

277: 2013/09/14(土) 01:54:59.72 ID:wPG8knpP0
朝日奈「(結構うまくやってるね)」

大和田「(たりめーだろ!兄弟だぞ!)」

朝日奈「(ごめんごめん。あれでも優等生だもんね。石丸)」

大和田「(なんだよその言い草はよ)」

葉隠「(でもなんか嫌な予感すんべー)」

大和田「(おいバカやめろ)」

朝日奈「(占い師の嫌な予感とか怖すぎるよ!)」



石丸「実は聞きたいことがあるのだ」

苗木「何かな…」

石丸「舞園君の怪我のことなのだが」

苗木「……うん」



葉隠「いきなり直球行った!」

不二咲「(お、おっきいよぉ!葉隠君!)」

葉隠「(すまんべ)」モゴモゴ

278: 2013/09/14(土) 01:55:53.30 ID:wPG8knpP0
石丸「ああ。今朝、舞園が怪我をしていたようなのだが、どういうことなのか説明してくれないかね?」

苗木「…それは、どういう意味かな」

石丸「骨折した方でない手の怪我のことだ。包帯をしていただろう」

苗木「……だから?」

石丸「実は桑田君が…」

苗木「桑田君がなんなんだよっ!!」

石丸「(あっしまった)」



葉隠「おうふ」

朝日奈「あああああ」

大和田「兄弟…」

葉隠「やってもうた…」

大神「あきらめるな!まだ修正は可能だ」

葉隠「そうだべ!対険悪兵器ほのぼの不二咲丸出陣だべ!」

不二咲丸「え?え?!」

朝日奈「あっ!まって!石丸がなんかもごもごしてる!」

279: 2013/09/14(土) 01:57:10.97 ID:wPG8knpP0
石丸「いや…その、…!!桑田君がだな!怪我をしたのだよ!」

苗木「…それで?舞園さんと何が関係あるのかな」



葉隠「(行って!不二咲丸っち行って!あそこの空気もう限界!)」

不二咲「(で、でも…ボクなんかがいってもぉ…)」

大和田「おちつけー!落ち着け兄弟ー!」

朝日奈「うるさいよ大和田!(ああああ石丸ううううう)」

大神「皆…落ち着くのだ」



ギャーギャー

苗木「……。」チラ

石丸「ま、舞園君も怪我をしていただろう!」

苗木「…………」

苗木「…舞園さんが桑田君を襲ったって思ってる?」

石丸「そ、それは思っていない!」

苗木「………」

石丸「本当だ!」

280: 2013/09/14(土) 01:58:00.50 ID:wPG8knpP0
石丸「た、ただ、怪我をした理由を教えて欲しいのだ。短期間に二人も怪我をしたのならば対策が必要だろう?」

苗木「まあ…そうだね」

石丸「特に舞園君は両手を怪我している。なおさら気をつけなければならない。ロクな手当道具がない以上、用心して損はない。そうは思わないかね?」

苗木「うん。ボクもそう思うよ」

石丸「では、舞園君が怪我をした理由を教えてくれないか?」

苗木「…でも、ごめん。ボクが何度聞いても舞園さんは怪我をした理由を教えてくれなかったんだ」

石丸「…そうか」

苗木「でも信じて!舞園さんは何もしてないよ!」

石丸「ああ。もちろん!僕は信じているぞ」

苗木「…よかったよ」

「よくありませんよ苗木君」

苗木「…おかえり」

舞園「石丸君、桑田君のことについて、話があります」

苗木「……舞園さん?何をいってるの?」

石丸「舞園君?!」

舞園「黙っていたことがあります。話したいのでこちらにきてください」

281: 2013/09/14(土) 01:59:22.28 ID:wPG8knpP0
苗木「ど、どうしたの舞園さん…」

舞園「…ごめんなさい。苗木君」



朝日奈「ごめん石丸!突然舞園ちゃんが!」

大和田「悪い兄弟!抑えられなかった!なんでこんなに素早いんだよ!クソが!」

大神「離せ霧切!」

霧切「…………」

石丸「兄弟に朝日奈君?!これは…?!」

苗木「どうして?どうして謝るの舞園さん!」

舞園「私、嘘をついてました」

苗木「え?」

舞園「怪我をしたあの日…桑田君と会ってるんです」

苗木「え…」

舞園「ごめんなさい。ごめんなさい。あんなに優しくしてもらっているのに嘘をついてごめんなさい」

苗木「な、なんで…」

舞園「言えなかったんです…」

苗木「どうして!」

282: 2013/09/14(土) 02:00:24.80 ID:wPG8knpP0
霧切「話してきなさい。舞園さん」

苗木「ちょ…どいてよ!霧切さん!」

霧切「嫌よ」

舞園「ごめんなさい霧切さん…」

霧切「…早く行きなさい」

舞園「石丸君…対した話はできないけれど…お話します…こちらへ」

石丸「あ、ああ」

大神「我等も行こう」

苗木「待って舞園さん!…ちょっと待て!舞園さんに何をするつもりだよ君たち!」

朝日奈「私たちは何もしないよ!ただ桑田のことについて聞きたいだけだよ!」

苗木「だから舞園さんは何もしてないんだ!それは一番近くにいたボクが知ってるんだ!」

大和田「相手にしてもラチがあかねえ!いくぞ!」

苗木「待て!待って!舞園さん!舞園さんっ!」

苗木「君は何も悪くないのに!どうして君ばっかり悲しまなきゃならないんだよっ!」

霧切「いいかげんにして…いいかげんにして苗木君!」

舞園「…っ。はやく、行きましょう」

葉隠「早くここから離れるべ!苗木の奴頭まで湯気上がってるべ!」

石丸「し、しかし」

葉隠「いいから行くんだよ!」

石丸「離したまえ葉隠君!」

葉隠「いいからいくべ!」

283: 2013/09/14(土) 02:01:09.95 ID:wPG8knpP0
舞園の部屋

石丸「…苗木君の部屋をそのまま使っているのだな」

舞園「シャワールームのドアを壊してしまいましたから…苗木君はいいと言ってくれたんですが。壊させてしまったのは私のせいですし」

石丸「これもどうにかしなくてはな…女子の部屋の鍵が壊れているなどは流石に…」

舞園「いいんですよ。自業自得ですから」



舞園「桑田君…どうですか?」

石丸「…くわしくはわからないのだよ。返事はくれるが簡潔過ぎてわからないのだ」

舞園「そうですか。ごめんなさい」

朝日奈「…何かあったの?桑田と」

舞園「はい…数日前の…夜のことです」

舞園「夜中の三時ごろに私は一人で歩いていました。…理由は特にありません」

舞園「どこか一箇所にとどまっているのが辛かったんです。それで…部屋の外をふらついていました」

舞園「私は桑田君が外を歩いているのをそこで見つけたんです。危ないと、思って彼を…追いかけました」

朝日奈「危ない?」

284: 2013/09/14(土) 02:02:20.00 ID:wPG8knpP0
舞園「だって夜の三時ですよ…危ないじゃないですか」

朝日奈「そりゃ、そうだけどさ…それを言えば舞園ちゃんだって危ないじゃん…」

舞園「私なんてもうどうでもいいんですよ」

舞園「…最近は変な人もいるみたいですね…」

大神「変な人…誰のことだ?」

舞園「わかりませんよ」

石丸「しかしここは閉鎖空間だぞ?いるとしたら僕達だけだ」

舞園「ハサミを持っている人です。接触はしていません…ハサミを持っている人に太刀打ちできる気がしなかったので」

大和田「なんでハサミを持ってるって知ってるんだ?」

舞園「その人の歩いた後に見覚えのないハサミが落ちてたんです…この手は、それを拾ったときに誤って切りました」

舞園「奇声をあげて走っているようなようなこともしているみたいで…危ない人物だと思います」

石丸「待ってくれ。その話も知りたいが先に桑田君の話の続きを頼む」

舞園「…そうですね。…私は落ちていたハサミを拾ったあと、桑田君を追いかけました。彼はモノモノマシーンをしていたみたいです」

舞園「私はそれを見ていました。でもドアに当たってしまって音を出してしまったんです。それで桑田君に気がつかれてしまって…名乗り出ました」

舞園「そしたら流石に怖がらせてしまったみたいで…走って行ってしまいました。…私が知ってるのはここまでです」

285: 2013/09/14(土) 02:03:28.66 ID:wPG8knpP0
石丸「…む。腑に落ちないぞ。これだけのことで桑田君がああなるだろうか?」

葉隠「何か隠してんじゃ…いてっ」

朝日奈「葉隠黙ってて!なにか忘れてることはない?なんでもいいからさ!」

舞園「…と、言われても」

朝日奈「こういう時どうすればいいのかな?」

不二咲「再現してみる…とかかなぁ?」

朝日奈「何を?」

不二咲「え、えっとぉ…」

石丸「とりあえず桑田君とあった時どんなことをしていたか思い出して見てくれないだろうか」

舞園「えっと…私は、購買部前のドアにこう立ち…こうハサミを持って…あっ」ドスッ

葉隠「うおおっ?!床に刺さった?!」

舞園「これが拾ったハサミです…これを…こう…あ…」チャキ

朝日奈「あっ…包帯が血に滲んでる…もしかして傷が開いたんじゃ」

舞園「こう…持って……えっと…滑りますね…」チャキ…ズル…チャキ

舞園「こう…こうやって…」ズル…チャキ

舞園「きゃ…」ドス

葉隠「ま、また!もうそれ離すべ!怪我した手でンなもん掴むな!危ねえ!」

286: 2013/09/14(土) 02:04:20.19 ID:wPG8knpP0
舞園「すいません!手に力が入らなくて…」

不二咲「舞園さん…血が滲んでるよぉ」

舞園「平気ですよ」

舞園「桑田君の時も、こうやって落としちゃって指を切ってしまって………血で、滑りますね…」チャキ

葉隠「もういいって!」

朝日奈「(も、もしかして桑田の前でこれやったのかな?)」

大和田「(真夜中にこれはきっついぞ。見てて背筋がぞわぞわすんだが)」

石丸「(これは…流石にマズイな。桑田君が見たとしたら…)」

舞園「…………」

大和田「ん?」

朝日奈「どうしたの大和田」

大和田「このハサミ…何処かで…」

石丸「どこだね?」

大和田「あー?どこだー?」

葉隠「出てこなそうだべ」

朝日奈「むー思い出してよ大和田!手がかりだよ」

大和田「どこだー?しっかり見た覚えはねぇなあ」

287: 2013/09/14(土) 02:05:24.54 ID:wPG8knpP0
石丸「…こうしていても仕方がない。そろそろ桑田君のところへ行こう。もう一度彼に話を聞いてみるのだ」

朝日奈「…舞園ちゃんも来ない?」

舞園「…何を言ってるんですか?…私は殺人犯ですよ?」

朝日奈「未遂、だね」

舞園「ついて行っても桑田君が怯えるだけですよ?」

朝日奈「あ、そっか。じゃあ私はここにいるよ」

舞園「結構です」

朝日奈「なんで?」

舞園「朝日奈さんこそなんでそんなことを言うんですか?」

朝日奈「それは…舞園ちゃんが辛そうに見えたから…かな。ずっとピリピリしてる空気の中にいて辛くない?気でも抜こうよ。駄目になっちゃうよ」

舞園「苗木君たちがあんな辛そうな顔をしているのは私のせいなんです。守ってもらっているのにそんなこと言えません」

朝日奈「でもさあ、あの空気の中にいたら駄目になっちゃうよ。気分転換も必要だと思う」

舞園「いりません。そんなことを私はする権利もないんです」

朝日奈「そんなことないよ!…そうだ!ドーナツ、ドーナツ食べよ!そしたらその後一緒に泳ごう!楽しくなれるよ、きっと」

舞園「やめてください!」

朝日奈「?!」

舞園「やめてください!優しくしないでください!今、いまやさしくされると頼ってしまうんです!」

288: 2013/09/14(土) 02:07:48.39 ID:wPG8knpP0
朝日奈「…頼ってくれてもいいよ!だって見てるだけで舞園ちゃんたち辛そうなんだもん!」

舞園「ダメなんです!やさしくされると、どうしても…どうしても…救われたくなってしまう…優しさに甘えてしまう」

舞園「こんな甘いこといっちゃいけないのに…いっちゃいけないのに…」

舞園「どうして!どうしてこんな私にやさしくするんですか!苗木君も、霧切さんも!どうして!どうして誰も責めてくれないんですか!私は、私は…!」

朝日奈「舞園…ちゃん」

舞園「…はっ。…ごめんなさい!ごめんなさい!出て行ってください!」

朝日奈「待って!舞園ちゃん!」



朝日奈「…追い出されちゃったね」

石丸「舞園君…」

不二咲「何で…なんでこんなに悲しいことになっちゃうのぉ…」

大神「…桑田のところへ行こう。…全員でだ」

石丸「ああ…そうしよう…」

朝日奈「…舞園ちゃんのばか」




舞園「苗木君…苗木君っ…ごめんなさい…ごめんなさい」

舞園「…それでも…それでも私は、あなたのそばにいたい…」

舞園「いたいんです…」

舞園「わがままなことも、傲慢すぎることも、分かっています…それでも」

舞園「一人に…しないで…っ」

303: 2013/09/15(日) 00:40:23.57 ID:7oy2o6/d0
石丸「…考えをまとめる時間もなく桑田君の部屋の前なのだが」

大和田「まあそっからそこだからな」

石丸「ひとまずチャイムを鳴らす。出て来ないとは思うが」


ぴんぽーん


不二咲「…返事はないね」

大神「手紙を…」スッ…

朝日奈「なんて書いたの?」

大神「ひとまず話がある…とだけだ」

石丸「おそらく返事はない。このまま二通目を出す。書きたい人はいるかね?」

「…………」

石丸「では僕が代表としてかく。…『君は、舞園君と会ったかね?舞園君と話を…」

葉隠「ストップだべ!そこで舞園はマズくね?」

石丸「む…確かに」

朝日奈「刺激しちゃまずいよね…」

大神「…例の不審者の話はどうだ?」

不二咲「そうだねぇ。桑田君も見ているかも…」

304: 2013/09/15(日) 00:41:20.83 ID:7oy2o6/d0
石丸「よし。『…最近、ハサミを持った不審者が目撃されている。桑田君はなにか無かったかね?』ひとまずこれだ」スッ



石丸「来た!」

大和田「内容は?!」

石丸「『見た』」

朝日奈「!」

葉隠「誰なんだべ?!早く!」

石丸「これだけだ。続きは…『どうせ信じねえだろうけど』…すぐに信じると続きを…」スッ…



石丸「来ないな…」

大神「今までの経験上、返事は帰ってくる時はすぐに返ってくる。これは…」

石丸「どうすればいいのか…案は無いかね?」

朝日奈「うーん」

不二咲「桑田君の立場で考えなきゃ…だよねぇ」

葉隠「真面目に考えてよぉ…『信じねえんだろ』って思ってる奴が『信じる』って筆談で言われたところで信じてもらえると思うか?」

朝日奈「微妙だね」

大神「せめて顔を合わせて話せれば…」

石丸「何とかして心を開いてもらえないか…

305: 2013/09/15(日) 00:43:36.92 ID:7oy2o6/d0
朝日奈「うーん…そういえばさ、さっき大和田が不審者のハサミを見たことがあるっていってたけど、まだ思い出せないの?」

大和田「……見た覚えはあんだけどよ」

不二咲「あっ!大和田君、そういえば腐川さんに襲われたって言ってなかった?」

大和田「……あっ!」

石丸「思い出したのかね?」

大和田「そうだ!腐川だ!腐川の奴の太ももにハサミがあった!」

石丸「そうか!腐川君の太ももにか!……ちょっと待ちたまえ」

葉隠「…なんで大和田っちが腐川の太もも見てんだべ?」

朝日奈「まさかあんた…」

大和田「んなっ…どんな勘違いしてやがる!誰があんな奴のスカート覗くかってんだ!」

石丸「そうだ!兄弟が覗きなどするものか!」

朝日奈「言い出しっぺ石丸でしょ!」

石丸「いや僕は…」

大神「今はそのことはどうでもいいだろう。…大和田、腐川の足にハサミがあったというのは本当か」

大和田「おう。腐川に襲われた時、一瞬だけ見えた」

不二咲「ボクもその話は聞いたよ。その時の大和田君真っ青だったよ」

306: 2013/09/15(日) 00:44:46.88 ID:7oy2o6/d0
朝日奈「腐川ちゃんに襲われたって…それどういうこと?!」

大和田「図書室に行った時なんだがよ…十神の野郎に命じられたとたんに腐川が豹変して襲ってきやがったんだよ」

葉隠「それで大和田っちが真っ青に?いや無いべ。腐川っちがそんな強いとは思えねーべ」

大和田「誰がこんな情けねー嘘つくか!」

朝日奈「いやまあそれはそうなんだけど…信じられないよ。だって腐川ちゃんだよ?」

石丸「確かに情緒不安定なところはあるが…」

大神「我らが信じずにどうする。ひとまずその情報を桑田に出すべきだと思うが」

石丸「ほかに手もない。ひとまず差し出そう。兄弟、ペンだ」

大和田「字を書くってのは苦手なんだがな『お前が見たってのは腐川か?ハサミは持ってたか?』っと…」スッ

朝日奈「汚い字…」

大和田「うるせえ」




石丸「来たな…『今の字は誰だ?俺が見たのも腐川だ』」

朝日奈「本当だったんだ…」

大和田「おい」

朝日奈「ごめんごめん。もう少し桑田と話しをしようよ!」

石丸「無論だ」

石丸「『腐川君を見た時のことを教えてくれ』」スッ

307: 2013/09/15(日) 00:46:14.36 ID:7oy2o6/d0
石丸「…『夜中に飯を探してたら、突然脱衣所から変な音と悲鳴が聞こえた。それで後ろをみたら腐川が立ってて、何か変だった』」

朝日奈「ひ、悲鳴?!」

葉隠「なんだべ!まだ何かあんのかよ!今度はなんだべ!」

石丸「待つんだ。それについて聞こう」スッ

石丸「『舌が長くて、目がぎょろぎょろしてて、話し方が荒くなっていた。悲鳴の方は腐川がドリルと何とかっつってた』」

不二咲「ドリル?」

葉隠「セレスっちじゃね?」

朝日奈「…じゃあ悲鳴と異音ってもしかして…」

大和田「脱衣所でもヤッてやがったのかあいつら…」

朝日奈「うわあ…」

石丸「何をやっていたのだ?」

大和田「いやだからセレスの奴と山田の野郎が…」

朝日奈「言葉にしないでええ!想像しちゃう!」

大神「そんなことよりだ。これからどうする?」

石丸「ひとまずは腐川君に話しを聞くべきだろうな」

葉隠「本人に聞くのかあ?事実だったとして言うか?」

大神「聞いて見て反応を見るしかあるまい」

石丸「腐川君は図書室だろう。十神君と一緒のはずだ」

石丸「聞きに行こう!」

308: 2013/09/15(日) 00:47:17.89 ID:7oy2o6/d0

大神「待て。桑田をほおっておくこともできまい」

朝日奈「じゃあ二手に別れようよ」

石丸「それはいい考えだ!」

朝日奈「じゃあ行くよ!グーとパーでわっかれましょっ!」






石丸「十神君!」

十神「なんだぞろぞろと…ここは俺の場所だ。出ていけ」

石丸「図書室はみんなの場所だぞ!独り占めはよくない!」

十神「特に貴様は不愉快だ。即刻出ていけ」

大神「落ち着け。争いに来たわけではないだろう。十神、腐川はどこだ?」

十神「なぜ俺に聞く…」

朝日奈「一緒にいるんでしょ?呼んで」

十神「何故俺がそんなことをしなくてはならんのだ。帰れ」

腐川「白夜様ぁー命じられた本を見つけて来ましたぁー」

十神「ちっ…タイミングの悪い」

石丸「腐川君!」

腐川「げっ…石丸に朝日奈じゃないの……こ、ここは白夜様の場所よ!かえんなさいよ!」

石丸「君に聞きたいことがあるのだ」

腐川「な、なによ…」

石丸「太ももを見せてくれないかね?」

309: 2013/09/15(日) 00:48:25.00 ID:7oy2o6/d0
腐川「な、ななななねななな?!」

朝日奈「…その言い方は…」

十神「こんな奴の足を見たがるとは…さては変態か」

腐川「な、なななななななんでなんでよお!なんで見せなきゃいけないのよ!さては貧相なこの足をみ、見てあざ笑う気なのね?!そうなんでしょ!」

石丸「あざ笑う気など無い!君の太ももにあるものに用があるのだよ!」

十神「…………!」

朝日奈「もう黙って石丸…」

腐川「変態よ…あんたあんなに風紀風紀言ってたくせに…変態!」

石丸「僕は変態ではない!」

朝日奈「今の言い草は間違いなく変態…」

石丸「なぜだ!何故そうなるのだ!」

十神「そんなくだらない話をしに来たのか?帰れ!目障りだ!」

石丸「押さないでくれ十神君!あ、危ない!足元に物が…!」

腐川「そうよ…出て行きなさいよ!ここはわ、私と白夜様の…愛の巣なんだから!」

十神「それは違う」

腐川「へ?…あっ」ドサチャキン

大神「(…金属音)」

朝日奈「危なっ!…ちょっと、大丈夫?」

310: 2013/09/15(日) 00:49:32.67 ID:7oy2o6/d0
腐川「さ、触るんじゃないわよ!へっくし!」

朝日奈「し、心配してあげたのに!何それ!」

十神「……!出ていけ!邪魔だ!」

腐川「うひひーあらあらきよたんじゃないのー」

石丸「きよたん?」

腐川「ご機嫌いかが?うるわしゅう?いっひひひっ」

石丸「はい?」

朝日奈「なにこれ?どうしたの?頭打ったの?」

十神「………」

十神「…そうだ。こいつは精神に異常を起こしている。何をするかわからんぞ。だから帰れ」

石丸「い、異常?!」

朝日奈「大丈夫なの?!」

十神「大丈夫ではない!面倒なことになるまえに消えろ!」



朝日奈「え?ってうわあ!」

石丸「締め出されたな」

大神「不審者の正体は腐川か…ハサミも隠し持っているようだ」

朝日奈「うん…そうとしか思えないよね」

石丸「それが確認できただけ十分だろう…戻ろう」

311: 2013/09/15(日) 00:51:10.48 ID:7oy2o6/d0
十神「この駄目殺人鬼が!外に出るなと言っただろう!」

ジェノ「そんなこといわれてもねぇ。出ちゃうもんは出ちゃう」

十神「そこを抑えろと言っている!演技の一つでもしろ!」

ジェノ「でもぉ…我慢…できないのぉ…っ」

十神「変な声をだすな!(隠し玉として活用するつもりが…!)」

ジェノ「でも実際どうすんの?全員に知れ渡るまえに消しちゃう?本当は萌え系男子しか殺さないけど白夜様のためなら…いいよ?」

ジェノ「なんちゃって!あはははははは」

十神「ふん。もはや貴様には何も期待などしていない。あとで自己紹介でもしてこい」

ジェノ「え?何で?」

十神「殺人鬼にわざわざ近寄る馬鹿はいない。せいぜい俺のボディガードとして活用させてもらう」

ジェノ「あのさあ…白夜様」

十神「なんだ?」

ジェノ「実はアタシとの生活気に入ってるでしょ?」

十神「……ふん、くだらんな。そんなことあるはずがないだろう」

ジェノ「白夜様ってツンデレ?」

十神「よし表に出ろ」

ジェノ「ここ閉鎖されてんべ?出れんべ?」

十神「……………」


312: 2013/09/15(日) 00:52:41.10 ID:7oy2o6/d0
葉隠「だめだべー桑田っち応答なしだべー」

不二咲「…えっと、実は、考えがあるんだ」

大和田「なんだ不二咲?何かいい考えでもあんのか?」

不二咲「えっと、本当にくだらないことなんだ…ごめんね」

大和田「言ってみねーとわかんねーだろ?」

不二咲「うん…桑田君と話しをするときって筆談だよねぇ」

葉隠「だべ」

不二咲「筆談で仲良くなる方法って何かないかなあって考えたんだ。それで答えが」

不二咲「えっと…これなんだ」

葉隠「ノート?」

不二咲「みんなで…桑田君と」

不二咲「交換日記とか…どうかな?」

320: 2013/09/17(火) 03:19:06.09 ID:WCHPuq640
石丸「やあ。不二咲君、葉隠君、兄弟!何かあったか?」

大和田「おう。不二咲がいい考えがあるっつってな」

不二咲「い、いい考えなんてほどの物でもないよぉ」

石丸「何だね?」

葉隠「交換日記だとよー正直微妙だべ」

石丸「いいではないか!」

葉隠「マジか?」

朝日奈「交換日記かぁーなんか懐かしいなぁ。小学校の頃はやったなあ」

大神「我もやったことがあるな」

葉隠「いやだからって交換日記はないべ?いくらなんでも…だべ?」

大和田「んだよ?不二咲の案に文句でもあんのかよ?」

葉隠「でもよお!」

石丸「しかし理にかなっているとは思わないかね?」

葉隠「例えば?」

石丸「まず、僕たちと桑田君は現在筆談で対話している。交換日記もにたような物だ」

葉隠「で?」

石丸「筆談では一度にかける量も人数も限られる。その点交換日記ならば解決だな」

葉隠「だがそれは手紙でも出来るべ」

321: 2013/09/17(火) 03:21:21.53 ID:WCHPuq640
石丸「ノートは手紙と違いドアの隙間を通らない。読むにはドアを開けて取らなくてはならない」

大和田「情報が欲しけりゃドアを開けなきゃならねえわけだな」

石丸「そうだ。そしてドアを開けることが習慣づけられれば、外に誘うこともより容易になる…とは考えられないだろうか」

葉隠「手紙でもできね?」

石丸「まあ…そうなのだが…食事などの必要にかられて、ではなく、外部との接点を得るために自主的にドアを開かせるといったことが重要だと思うのだ」

石丸「それに書ける量の増加と、繰り返し読み直すことが容易という点は魅力的ではないかね?」

葉隠「否定する理由はないわな」

石丸「うむ」

大神「たしかに一対一の筆談では限界がある。それに…いつまでも対話を避けていては、部屋の外に対する恐怖も薄れないだろう」

朝日奈「…そうだよね。そろそろ本気で桑田に謝らないといけないね…」

石丸「逃げてばかりではいけないな」

大和田「おう…」

石丸「…書いて、みないかね?」

朝日奈「……」

大和田「……」

322: 2013/09/17(火) 03:23:04.68 ID:WCHPuq640


桑田(…あれから、何日経ったんだっけ)

桑田(…つーか今何時だよ…寝過ぎて頭いてえ)

桑田(…腹、減ったな)

桑田「……」ガチャ

桑田(ん…飯とノートと手紙…?)

桑田(とりあえず部屋に)



桑田(もぐもぐ)

『桑田君へ!体調はどうかね?何もないかね?何かあればこのノートに書いて出して欲しい。
このノートは皆が書き込む。好きなことを書き込んでもらって構わない。
君が何も書き込まなくても、僕達が連絡事項などを書き込むので、できればドアの前に置いておいて欲しい!でも何か書いてくれれば嬉しいぞ!石丸。』

桑田(なんだこりゃ)




桑田(一応持って帰って来ちまったが…このノートどうすりゃいいんだ…)


ピンク色のノートの上に、様々なペンで彩られた『交換日記帳』という文字が乗っていた。ハートマークが乱舞している。
書いたのは朝日奈か不二咲だろうか。


『やあ桑田君!読んでくれているか?最初は僕だ!石丸清多夏だ!一つ頼みがあるのだが…』


ページを捲ると字だけですでに暑苦しい石丸の文章があった。

323: 2013/09/17(火) 03:24:00.80 ID:WCHPuq640
『出来ればこのノートは朝、昼、晩の決められた時間に外に置いておいて欲しい。その際、君が書き込んでいなくてもいい!(書いて欲しいけどね!)
朝日奈君!書くのならば別のページに頼む!ここはルールの欄だぞ!』


石丸の字と逆さの文字が混じり出した。どうやら朝日奈らしい。
共に書きながら会話でもしてたんだろうか


『何か書きたいことがあるのならば書け…好きなようにだ』

『ご覧の通りすでに朝日奈っちが暴走してるべ。石丸っちは一人一ページとか抜かしてるけどもう無いようなもんだな』

毛筆の字と印刷みたいな文字が並ぶ。前半の大神はともかく後半は誰だ。代筆か?


『書きにくいかもしれないけど、なんでもいいからね?欲しい物とか書いてくれると嬉しいなあ(@⌒ー⌒@)』

『かわいい!これかわいいよ不二咲ちゃん!私も書く!( ^ω^ )』

『なんかちがくね?』

『(U^ω^)』

『大和田それはなんだ…犬か?』

『おう。犬だ』

『(U^ω^)わんわん!(U^ω^)わんわん!大和田のもかわいい!』

『朝日奈君!順番を守りたまえ!すでにレイアウトがぐちゃぐちゃではないか!これでは読みにくい!』

『(U^ω^)わんわん石丸許してわん』

『犬はかわいいがダメな物は駄目だ!』



ノートを閉じた。なんか見てて辛かった。


桑田(何がしたいんだこいつら…)

324: 2013/09/17(火) 03:24:58.88 ID:WCHPuq640
引きこもって、まだまだ10日が過ぎたくらいだ。
ケータイとかネットとかがあるんなら、そう苦痛な時間じゃねーんだろう。それでもオレにはキツイが。

桑田(この部屋には何もねえ…あるのは、ゴミと、食いかけと、布団だけだ…)


寝れば寝るほど何かが削れて行くような錯覚がする。寝るってのは回復手段なはずなのに。
しかし狭い上に何も無いこの部屋では、寝る以外にすることはなく、オレは一日中横になっている。


桑田(ここはどこだ…どこなんだ)

桑田(オレは今起きてんのか…寝てんのか?)

桑田(この部屋に何をしに来たんだっけオレは…)

桑田(…………)

桑田(………)

(……)





桑田(…何時だ?寝てたのか?起きたのか?)

桑田(腹は…減ってねえ)

桑田(することなんてねえ…寝よう)


桑田(寝るんだ…寝る)




ピンポーン

桑田(?!)

325: 2013/09/17(火) 03:26:03.09 ID:WCHPuq640
桑田(今、今何時だ!?)

桑田(6時、50分?!)

桑田(だ、誰だ?!)


久しぶりのチャイムにオレは目が覚めた。
久しぶりと言っても、一日程度だが、変化に乏しいこの部屋では、たった一日がひどく冗長に感じるんだ。



桑田(そういや昨日は一日…誰も来なかった)

桑田(いや…昨日なのか?本当にまだ一日しか経ってないのか?あの時計は朝なのか?夜なのか?)

桑田(わからねえ…今は何日だ)

桑田(くそ…)

桑田(……何も考えられねえ…)

桑田(……)


『お前ら!朝です!』

桑田(?!)

桑田(も、モノクマの放送!今は朝か?!)

桑田(あれから何時間経った………7時?まだ十分しか経ってねえのか?それとも半日経ったのか?!)

桑田(わからねえ…わからねえ)

桑田(……何も…考えられねえ)

桑田(…………)

326: 2013/09/17(火) 03:27:14.91 ID:WCHPuq640
桑田(腹…減った)

桑田(外…何かねえかな…)

桑田(……)


桑田(久しぶりにドア開けたな…今は何時だ…)

桑田(空気がうめえ…ここも中なんだがな…)

桑田(…パン………お茶……ノート)

桑田(ノート?)

桑田(そういや…この間のノート…返してねえ…)



桑田(………)


表紙には、印刷された字で交換日記と書かれていた

『20:00 石丸 桑田君!ノートが帰ってこなかったので新しいノートをおろしたぞ!表紙は葉隠君作だ!誰にでも取り柄くらいはあるものだな!』

『酷いべ』

『でも葉隠の字が綺麗だなんてショックだよ!綺麗過ぎて嘘くさいってのは葉隠っぽいけど!』

『カラフルな文字でさらに追い打ちはやめるべ。俺も引きこもるぞ』

『好きにすればいいんじゃねえか?おれは知らねえ』

『酷いべ!差別だべ!』

327: 2013/09/17(火) 03:28:08.18 ID:WCHPuq640
『7:00 石丸 おはよう!いい朝だな!言い忘れていたのだが、君を毎日起こしにくるぞ!』

『この世で最も嬉しくないモーニングコールだべ。せめて不二咲っちじゃないとやる気おこんねーよ』

『葉がくれんとこにゃ オレがいってやろうか?』

『朝からモロコシはノーテンキューだべ。つーか人の名前くらいちゃんと書けや』

『んだと?!』

『おはよう桑田君(・ω・)ノ今日は大神さんが味噌汁を作ってくれたよ。美味しかったよ』

『そういわれると照れるな…』

『さくらちゃんはいいお嫁さんになれるよ!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆』


桑田(まだ一日しか経ってねえのか)


石丸が几帳面に時間を書き込んでいたおかげで、オレはあっさりと落ち着きを取り戻した。
さっきのチャイムはどうやら石丸が起こしに来たものらしい。

桑田(今は九時…朝なのか、夜なのか)

桑田(多分…朝か。寝過ぎのせいで長時間寝れなくなってやがんのかな)


桑田(…………)

ドアの前に、ノートを二冊、置いておいた。一言、ごちそうさまとだけ、書いた。

328: 2013/09/17(火) 03:29:10.84 ID:WCHPuq640
桑田(……!)

桑田(今は…3時?)

桑田(……)

パニックを起こしそうになる頭を抑えて、ドアを開ける。そこには

桑田(ノート…と、メロンパン)

『14:00 石丸 返事をありがとう桑田君!この調子で頼むぞ!』

『お昼ごはんのメロンパンだよ(・ω・)夜はおにぎりとスープを持って行くから、待っててね 不二咲』

『桑田ああああああ返事ありがとおおおおお」

『朝日奈っちは文章だとキャラ変わり過ぎだべ。あと蛍光色は読みにくいからやめるべきだべ』

『お前も人のこと言えんのかうさんくせー字ィしてるくせによ』

『いつまでも同じネタ繰り返すのは二流の証だべ』

『仲がいいな…』


桑田(………)

桑田『……』

『外に出るのが怖い』

『体に力が入らねえ。気がつくと時間がたってるんだ。正直これが一番怖い。どこにいるのかわからなくなる』

『ずいぶんとオレは、弱くなっちまったみたいで、何をするにも気力がわかねえ。生きてるのに氏んでるみてえだ。殺されてねえのに。怖い』

『怖いんだ、助けてくれ』

329: 2013/09/17(火) 03:30:11.35 ID:WCHPuq640
桑田(何を書いてんだオレは…消そ)

桑田(……よし、消えた)

桑田(元の場所に戻しとこう)






桑田(……ここは?)

熱い。ここはどこだ?


『桑田ー!やれー!あと一球だ!』

桑田(……これはボールか?)

桑田(…マウンド?)

何処かで見たことがある場所。見覚えのあるチームメイトが全員こっちを見ていた。

桑田「おう!見てろ!今優勝させてやっからよ!」

桑田(今の声…オレ?久々だ…)

いつか発した記憶のある言葉。これはいつの記憶だろう。

桑田「…うぉらぁっ!」ヒュン

バスッ!

330: 2013/09/17(火) 03:31:00.68 ID:WCHPuq640
『ストライク!スリーアウト!』

審判がそう叫んだ一瞬後、鋭い太陽に負けない位の喝采がオレを包んだ。


桑田「よっしゃああああああっ!」


心から叫ぶ。内にあるのは喜びだけだった

『桑田あああああっ!』
『やったあああああああっ』
『やった!優勝だぞ!』

桑田「おいバカ!痛えから殴んなよ!タックルもやめろ!つーかこれくらい当たり前だっつーの!オレを誰だと思ってんだよ!」

『ああ!桑田のおかげだよ!優勝なんてできたのは』
『ありがとう桑田!』
『お前がいなかったら俺たち、こんな場所に立ててねえ!』
『ありがとう!』
『胴上げすんぞ!とっとと集まれ!』

桑田「何いってんだよ!お前らがいてこそだろ?」

『桑田…』



桑田「野球は一人じゃできねえんだからよ!」





桑田「……はっ?!」

331: 2013/09/17(火) 03:31:59.08 ID:WCHPuq640
桑田(今のは…甲子園に出た時の…)

桑田(何で今頃あんな夢…あ?)

桑田(何だこれ…野球…ボールか?)

桑田(そういえばモノモノマシーンで引いたんだっけか…いつの間に掴んで寝てたんだ…)

桑田(野球…)

桑田(あの時はヤバイくらい楽しかった……それが今じゃこれか)

桑田(引きこもりなんてだせえ、なんてバカにしてたが人って簡単に堕ちるんだな)

桑田(…何でよりによってこんなもん引いたんだか)

桑田(…………)ポイ

手の中にあったボールを壁に向かって投げた。ボールは跳ね返って戻ってくる…筈が

ガシャン

桑田(あ?……あ、これボールじゃねえじゃんか)


よくみればそれには『速球大臣』とあった。これはボールじゃねえ。
ボールの形をした機械だ。


桑田(つまんね)

332: 2013/09/17(火) 03:32:57.99 ID:WCHPuq640
桑田(何でこんなガッカリしてんだオレ)

桑田(何でこんな悲しいんだよ…何で…涙が…)


周りを見渡した
ここには一人しかいない。優勝を分かち合ってくれる仲間はいない
さっきまでいた夢の世界とは真逆の、静寂しか無い
急に世界に一人だけになってしまったような気持ちに陥った。


桑田「…ッ…ァッ」

桑田(声出してねえせいで声でねえのか…)


声を出して泣くことも叶わず、心で泣いた。
辛さばかりが、増した






桑田(…また、寝てたのか)

桑田(今、何時だ…?)

桑田(…ノート)

桑田(ノートをみれば、時間がわかる)


『20:00 石丸 桑田君!素直な気持ちを書いてくれてありがとう。君の心からの叫びは、僕達にそれなりにショックを与えた』

桑田(…率直な気持ちだと?オレは何も書いてな…)

333: 2013/09/17(火) 03:35:21.79 ID:WCHPuq640
『君の気持ちを暴くようで心が痛かったが、何かを書いたような跡があったので、鉛筆を使って確認させてもらったよ』

桑田(…!消した文字の下のページが鉛筆で浮かび上がって…)

『僕が今は代わりに謝ろう。そこまで追い込んでしまってすまなかった。これは、僕達全員の責任だ』

『だが忘れないで欲しい。君は生きているぞ。証拠はこのノートだ。
君と、僕達を繋ぐこのノートだ。このノートには君が生きている証…叫びが書き込まれている』

『君は今、とても弱っている。密室で長時間を過ごしたことと、偏った食生活、重大な精神的ダメージにより、身体機能は恐ろしいまでに落ちている』

『今君に足りないものは運動だ。体を動かせば、直ぐに体力は戻る。
精神にもいい影響を及ぼすだろう』

『外に出て来てはくれないか?』

334: 2013/09/17(火) 03:36:37.38 ID:WCHPuq640
『7:00 石丸 おはよう!今日もいい朝だぞ。
昨日の書き込みを君が見てくれたのかどうかは分からない。しかし、読んでくれたと信じて今日も書く』

『出て来てくれと書いて、直ぐに出てこれるなどとは誰も思っていない。
それぐらい、外が理解できるほどに君は傷ついている。君の言葉で再認識させられた』

『だから焦らなくてもいい。僕達は待っているぞ。
明日も、あさっても。誰にも、もうあんなことは起こさせないで待っている。
今日は出てこれなかったが、明日も起こしに行くぞ』

桑田「あ…ああ…あああ…」

『いつもパンじゃ飽きちゃうよね。
今日は朝日奈さん推薦のドーナツと大神さん特性の冷製野菜スープだよ(・ω・)
冷たくても美味しくできてるから、食べて元気つけてね。』

『あの時ドーナツを全部持ってったのは私です。ごめんなさい。ドーナツは元気出るよね。食べてね!』

桑田「ドーナツ…持ってったのお前かよ朝日奈…」

『野菜を食え…野菜は大事だ。体力が落ちているようだから、スープにプロテインをいれておいた。飲むのだ』

『スープにプロテインはねーよ』

『オーガに意見するとか命知らずだな大和田っちは』

『そりゃちょう高校級のぼう走ぞくだからな』

『族くらい漢字で書きなよ大和田!一瞬何のことかわからなかったよ』

『書けねえわけじゃ、ねえよ!族が漢字駄目でどうすんだよ!』

335: 2013/09/17(火) 03:37:17.90 ID:WCHPuq640
『どうせ辞書引いたんだろ?これは酷い馬鹿だべ』

『葉隠はだまれ』

『これは理不尽すぎね?』

『兄弟!漢字練習なら付き合うぞ!』

桑田(スープ…あったけえのも飲みてえなあ)


気がついたら泣きながら、笑いながら飯を食っていた。





桑田(野球がしてえ…ボールを握りてえ)

桑田(こんなニセもんじゃなくて、マジもんのボール…)

桑田(外に出ねえと…外に…)


それまで馬鹿みたいに眠ることしかしなかったのに
もう、眠れなかった

336: 2013/09/17(火) 03:38:02.08 ID:WCHPuq640
時計は6:00を指している。
あれからオレはずっと起きていた
待ちきれなかった。寝て待つなどもうできなかった。

早く

速く

そう願えばそう願うほど、時間が遅くなる気がして吐き気がした。
石丸は起こしに来てくれるだろうか。

桑田(あのバカ正直が来ないわけねえ)


6:30


6:45

6:47

6:49

6:50
時計がそう示した瞬間に、モノクマよりも正確に、7時より10分前に奴は来た

337: 2013/09/17(火) 03:38:41.99 ID:WCHPuq640
ピンポーン



桑田(来た!)

ドタン

桑田(何でココで転ぶんだよ!行っちまう!石丸が行っちまう!)

桑田(早く、早く早く速く!)

桑田(開けろ!開けねえと、速く開けねえと!)

桑田(外に、出るんだッ!)



ガチャ







石丸「…………やあ、桑田君。グッドモーニンだ!」

338: 2013/09/17(火) 03:39:51.63 ID:WCHPuq640
桑田「…、…!」

石丸「いい、朝だな!」

桑田「あ、ああ…」

桑田(泣いちまう…かっこわりい…)

石丸「ど、どうしたのかね?!何処か辛いのかね?!」

石丸「さ、僕につかまりたまえ!」





喉がつっかえて熱い。顔も熱い。目が特に熱い。
だが言わなければならない。オレにはやりてえことがあるって。
氏ぬほどやりたくて、我慢できなくて、ホイホイ外に出てきた。
遠足を待つガキみてーに寝れないで待ってたって言わねえと。

桑田(くっそー声が…出ねえ)

桑田(だけどよ、伝える方法はあるんだぜ!)

339: 2013/09/17(火) 03:40:49.11 ID:WCHPuq640
あわててページをそこに開いた。
我慢できなくてページいっぱいに書きなぐった言葉。
所々にあるシミについては聞かないでくれ



石丸「…はははっ!そうだな!みんなでやろう!きっと盛り上がるだろう!」


石丸が泣きながら笑った。オレもつられて笑う。









『すっげー野球がしてえ!!!』










…桑田編 end

347: 2013/09/17(火) 10:33:23.99 ID:WCHPuq640
石丸「立てるかね?」

桑田「お、おう」

石丸「…皆!桑田君が出て来てくれたぞ!」

朝日奈「え?……あ、桑田ぁ!?」

江ノ島「桑田?桑田出て来たの?」

不二咲「桑田君…出てきてくれたんだぁ」

大神「…そうか。出てきたか。大変だったな、桑田」

桑田「あはは…悪りぃ。心配掛けちまったな…」

石丸「こうして出てきてくれたのだ!何もいう必要など無いぞ!」

桑田「真横で叫ぶんじゃねえよ石丸」

石丸「すまない!」

桑田「うっせえ…」

朝日奈「石丸!桑田が困ってるよ!」

不二咲「ふふふ」




『オマエラ、おはようございます!朝っぱらから悪いんだけど、至急、体育館まで集合してください!』




石丸「…は?」

348: 2013/09/17(火) 10:35:00.34 ID:WCHPuq640
朝日奈「え?ちょ、いまの何?」

江ノ島「今の声ってモノクマ?だよね。また集められんのー?」

桑田「モノクマが呼んでるって何でだよ?!」

石丸「落ち着くのだ!と、とりあえず体育館だ!」

大神「モノクマめ…何を仕掛けてくるつもりだ」






モノクマ「やあ!みんなきてくれたんだね!」

苗木「なんでそんなに嬉しそうなんだよ…」

モノクマ「桑田君もちゃーんときてくれたみたいでボクうれしいよ!引きこもりニート脱出おめでとう桑田君!」

十神「なるほど。桑田が外に出てきたから、俺たちを読んだのか」

モノクマ「別に出て来なくても呼んだけどねぇ。桑田君も無事出てきたしわざわざ連れてくる面倒が減ったからさーここらでやっとくかな?って感じかな」

十神「とっとと要件を済ませろ。この俺に時間を無駄にさせるな」

モノクマ「あせらないの!ででーん!」

朝日奈「何それ?」

モノクマ「見てのお楽しみってやつさ!はいどーぞ!名前の書いてあるやつとってね!」

349: 2013/09/17(火) 10:35:40.70 ID:WCHPuq640
石丸「…これは?!」

石丸(『石丸清多夏の祖父は汚職事件をおこした総理大臣!石丸寅之助)

石丸「は?」

桑田「あ、ああああっ?!なんでこんな写真持ってんだよ!」

朝日奈「きゃーっ?!ちょ、何これ!」

舞園「…………」

苗木「…こ、これは…」

十神「ふん…これがどうしたモノクマ?」

モノクマ「みなさんの秘密です」

石丸「秘密…?」

モノクマ「今後制限時間内に事件が起こらなければ、世間様にバラ撒きます。ついでにみんなに公表するよ」

苗木「……なっ?!」

朝日奈「ちょっとやめてよー!」

モノクマ「嫌だったら人を頃してね!そしたらやめてあげるからさ!」

桑田「て、てめえ…」

十神「いいたいことはそれだけか?下らんな」

350: 2013/09/17(火) 10:37:03.03 ID:WCHPuq640
石丸「そ、そうだ!皆で秘密を言い合おう!それで解決だ!」

十神「なんの解決にもなっていないぞ。それが嫌なやつが今は煽られているんだ。言い合うと思うのか愚民が」

石丸「う……」

モノクマ「それじゃあみんな!よく考えてねー」





桑田「ま、またか…?また誰か襲われんのか…」

石丸「大丈夫だ!このようなことで人を襲う人などいないはずだ!」

朝日奈「そ、そうだよね!大丈夫だよ桑田!」

石丸「よし秘密を言い合うぞ!僕は…」

江ノ島「い、いっちゃうの?!」

石丸「僕の秘密は祖父が石丸寅之助であるということだ!」

セレス「石丸寅之助…ああ…なるほど。道理で風紀風紀とうるさいわけですわね」

朝日奈「え?!石丸のおじいちゃん総理大臣なの?!」

十神「『元』がつく。…負け犬の孫か。だがそれが秘密なのか?調べればすぐにわかることだろう」

石丸「そこが不可解なのだ。僕は確かにこの事実を言いふらしてはいないが、祖父が石丸寅之助であるという事実は、周知の事実だ!皆の秘密はどうなのだ?」

351: 2013/09/17(火) 10:38:12.30 ID:WCHPuq640
朝日奈「わ、私はコレ」

葉隠「写真?朝日奈っち、この水着写真のどこが…ってあっ!この朝日奈っち、水着の下からハミパンしてんべ!」

朝日奈「葉隠の馬鹿!」

葉隠「見せたのはそっちだろ!」

石丸「破廉恥だぞ!」

朝日奈「うるさい!…これは、撮影が入る時にうっかりパンツ脱ぎ忘れて写真撮っちゃった時のだよ」

桑田「つーことはこれ朝日奈のパンツか。ちょっと貸せよ葉隠!」

葉隠「嫌だべ!マニアに高く売る!」

石丸「やめたまえ!なんだね?!売るとは何なのだね?!どうしてそのようなものが売れるのだね?!」

朝日奈「やめてよ!返して葉隠!」

葉隠「ああー俺の写真…」

朝日奈「何がいつアンタのになったの!…この写真自体は小さい記事だったけど新聞に載ったよ。だから秘密でも何でも無いよ」

葉隠「なんだ価値半減したべ」

朝日奈「怒るよ?」

石丸「桑田君。君は出せるかね?」

桑田「…俺は甲子園にでた時の写真だよ」

352: 2013/09/17(火) 10:39:25.36 ID:WCHPuq640
石丸「実にいい写真ではないか!」

桑田「はぁ?お前マジで言ってんの?ボーズだぞ?ボーズ!ありえねぇんだけど!」

石丸「実にさわやかだ。僕はこっちの桑田君の方がいいと思うぞ」

桑田「マジ勘弁」

十神「もはや秘密でも無くなったぞ…まともな奴はいないのか?」

朝日奈「葉隠見せて」

葉隠「やめるべ!」

朝日奈「えーと。…うわ、何これ!酷い!」

桑田「ど、どうしたんだよ?」

朝日奈「な、何これ…葉隠、これ本当なの?」

葉隠「マジだべ」

朝日奈「酷い酷いとは思ってたけどまさか本当にこんなことしてたなんて…」

桑田「…うわっ?!なんじゃこりゃ!」

石丸「みせたまえ!」

桑田「やめろって!石丸が見たら卒倒する!」

十神「くだらんな。汚らわしい過去の数々か」

353: 2013/09/17(火) 10:40:32.89 ID:WCHPuq640
葉隠「そ、そういう十神っちはどうなんだべ?!」

十神「何故いう必要がある?」

朝日奈「そういう流れだったでしょ?」

十神「そういう流れ?見せたがっているのは貴様らだけだぞ?」

朝日奈「え?」

苗木「…………」

舞園「……」

大和田「…………」

不二咲「えっと…」

大神「むう…」

朝日奈「さ、さくらちゃんまで?」

大神「すまぬ…」

十神「フン。どうせこんなこと無駄なことだ」

桑田「ど、どういうことだよ?」

十神「フン。事件が起これば秘密の公表はされない。事件が起らなければどうせバラされる。ココで秘密をいう必要があるのか?」

石丸「う…」

354: 2013/09/17(火) 10:41:19.93 ID:WCHPuq640
十神「お前の望むように、事件が起こらないことを前提とするならばここで公表しなくともいいわけだ。時間が経てばモノクマによって暴露されるからな」

石丸「うう」

十神「本当は事件が起こるかもがしれない…そう思っているのでは無いのか?石丸。だからわざわざ暴露しあおうなどと無意味極まりない行為を提案したのだろう?」

石丸「ぐ………」

十神「くだらん。俺は帰るぞ。奴らをみればわかる。どうせ誰かが事件を起こすだろう。何かあったら呼べ」

腐川「お待ちください白夜様ぁ」





朝日奈「なんか、変な空気になっちゃったね」

石丸「…そういえば、朝食会がまだじゃないか!気分を変えて桑田君のことも祝いながら、皆で食べようではないか!」

桑田「…そ、そだよな!オレもまともな飯食いてえしな!」

石丸「それに確かに十神君のいう通りだった!事件は起らないのだから、ここで秘密を言い合う必要がないもいう意見は最もだ!」

石丸「自分からはいいにくい人もいるだろうに、全く僕という奴は!まるで進歩が無いな!すまなかった!」

朝日奈「そ、そうだよね!私たちみたいにくだらないことの人の方が少ないよね!全く!石丸ったらデリカシー無いんだから!」

石丸「いや、すまなかった!次からは気をつけよう!」

石丸「はっはっは!では、食堂に向かおうでは無いか!」

大和田「………」

不二咲「………」

石丸「どうしたのかね?兄弟」

大和田「お、おう。そうだな!まず飯を食わねえとな!」

石丸「朝の朝食は大事だからな!さあ食べようではないか!」

大和田「おう!」

大和田「…………」

355: 2013/09/17(火) 10:52:53.32 ID:WCHPuq640
終わりです。こっから新章行きます

このssの初期コンセプトがssで人気なキャラ以外で進行させてみよう!だったので
苗木とか霧切さんとか噛ませさん妹様戦刃辺りが凄い逆補正喰らってます

なので今更だけどこの辺のキャラが好きな人は気をつけてください
本当に今更ですけど

356: 2013/09/17(火) 11:00:25.17 ID:DC7nxTK0o
あかん、泣いてまう
桑田には幸せになって欲しい

372: 2013/09/19(木) 02:27:00.92
不二咲「…ねえ、大和田君」

大和田「どうした、不二咲」

不二咲「お願いが…あるんだ」

大和田「いいぜ、言ってみな」

不二咲「…えっとねぇ」







食堂

桑田「やっと出てきたのにこれかよ…」

葉隠「…まあ、世の中そんなもんだべ」

桑田「どんだけハードモードだよ…」

朝日奈「さくらちゃんもどこかいっちゃったよー…」

石丸「セレス君と山田君、十神君も例の如く、だ。腐川君が動揺していたが」

朝日奈「…はあー」

葉隠「ため息つくと幸せ逃げんぞーって言わね?」

朝日奈「オカルトは信じないんじゃ無かったの?」

葉隠「これは気分の問題だべ」

373: 2013/09/19(木) 02:28:46.38
桑田「落ち込み方悪りぃとズブズブ行くからな…」

朝日奈「何という説得力…」

葉隠「あまり深く考えるとヤバイからあんま考えねーようにしとこ」

朝日奈「葉隠はもっと考えた方がいいよ」

石丸「それにしても人数が少ないな…兄弟と不二咲君がいないのか」

桑田「あの二人仲良いのか?」

葉隠「ちょっと怪しいとこはあんべ」

桑田「マジで?大和田って口リ趣味なのか?」

朝日奈「え?何々?あの二人ってもしかしてそうなの?」

石丸「何の話をしているのかね…」

葉隠「おっとここには風紀が居たべ」

桑田「何でもないですよーっと」

石丸「いや別に話くらいならしたければ構わないが…」

葉隠「ど、どういう風の吹き溜まりだべ?!」

朝日奈「溜まってどうするの」

葉隠「ここは閉鎖されてるから溜まるしかねえべ」

石丸「その言葉はそういう意味では無いだろう…」

374: 2013/09/19(木) 02:29:59.13
石丸「それよりも桑田君」

桑田「ん?」

石丸「体育館にバットとグローブがあったぞ。ボールはまだ見つけていないが、まああるだろう」

朝日奈「おっ!やったじゃん桑田!野球できるよ!」

桑田「……」

石丸「どうしたのかね?したいのではないのか?」

桑田「別に…」

葉隠「なーに照れてんだよ!さっきまでは涙ながらに野球がしたいです!って叫んでたじゃねーか」

朝日奈「そーだよ!照れなくていいじゃん!」

桑田「別に…」

石丸「しないのかね?…では仕方が無い。片付けて…」

桑田「あーまてまてまてまて!」

石丸「ど、どうしたのかね桑田君?」

桑田「あ、あー」

朝日奈「桑田ぁー素直になりなよー」

葉隠「野球相手に意地張ってどうすんだべ?」

375: 2013/09/19(木) 02:30:59.67
石丸「何も無いなら僕は行くぞ?」

桑田「さ、察しろよ!」

葉隠「石丸相手にそりゃ無理ゲーだべ」

朝日奈「ちゃんと言わなきゃ伝わん無いよ?」

石丸「?」

桑田「…るよ」

石丸「?」

桑田「貸せよそのグローブ!」

石丸「お、おお!やる気が出たのだな!」

桑田「いいからかせってんだよ!クッソ!朝日奈、葉隠ェ!テメーらも来い!」

朝日奈「さくらちゃんいないし一人で泳いでもね。もちろん行くよ。ね、葉隠!」

石丸「そうだな!せめてここにいるみんなでやるべきだな!そうだろう葉隠君!」

葉隠「うわあ両腕掴まれたべ。引っ張るな!伸び、伸びるって!やめろって!」

桑田「行くぞっ!」

葉隠「声が裏返ってんぞ桑田っち!つーかだから腹巻きひっぱんのやめれって!」

朝日奈「凄い伸縮性だねこの腹巻きー」スタスタ


376: 2013/09/19(木) 02:32:01.83



霧切「33時間以内に殺人がなければ秘密を暴露…」

霧切「間違いなくモノクマは焦りを煽ってくるわ」

霧切「……苗木君、耐えて」

苗木「……大丈夫だよ、霧切さん。…だってボクの秘密はボクのものじゃない。耐えるのはボクじゃないんだよ」

霧切「だから、心配なのよ」

苗木「…舞園さんが、耐えてるんだからボクが耐えなくてどうするの?…まあ、ボクが耐えるってのも変な話なんだけど」

苗木「大丈夫だよ。きっと何も起らないよ」

霧切「……」

霧切「……そうだと、いいのだけど」



舞園(…………)

舞園(私が…アイドルでいられるのもあと…33時間…)

377: 2013/09/19(木) 02:32:42.62
大和田「鍛えて欲しい?」

不二咲「うん」

大和田「何でだよ」

不二咲「大和田君みたいに強くなりたいんだ」

大和田「女なんだから別に弱くてもいいだろ?」

不二咲「強くなりたいんだ」

大和田「……」

不二咲「……」

大和田「じゃ、どこでやりてえんだよ」

不二咲「…!え、えっとねぇ、夜時間に更衣室でやりたいんだ」

大和田「夜時間だぁ?」

不二咲「だ、だめかな?」

大和田「まずくねーか?確か夜中はハサミ持った腐川が暴れてんじゃなかったか?」

不二咲「あっ」

大和田「別に夜じゃなくてもいいだろ」

不二咲「……でも、」

大和田「…そんなに夜やりてえってんなら今道具取りに行って、夜どっかの部屋でやっか?」

不二咲「……うん!それがいいなぁ」

大和田「じゃあ行くか」

不二咲「うん」

378: 2013/09/19(木) 02:33:30.22
大和田「…やるにしてもよ」

不二咲「うん」

大和田「夜にどこでやるかが問題だな」

不二咲「僕か大和田君の部屋じゃ駄目かなぁ?」

大和田「…へ?…いや、兄弟が黙ってねえだろ?!そりゃ、なあ?」

不二咲「どうして?」

大和田「どうしてってオメー…」

不二咲「あっ、着いたよお!」

大和田「お、おう!」




大和田「…ん?更衣室ってのは生徒手帳がいんのか?」

不二咲「そうだよぉ」

大和田「あー…俺中に入れねえわ」

不二咲「どうして?」

大和田「…サウナに持ち込んで手帳ブッ壊した」

不二咲「だ、大丈夫なのぉ?!それ!」

大和田「こりゃモノクマ辺りにでも直してもらうしかねーな…」

379: 2013/09/19(木) 02:34:04.60
不二咲「ど、どうしよう」

大和田「道具だけ取ってこいよ。帰りは俺が持つからよ」

不二咲「…そ、そうだね」

不二咲「…………」

大和田「どうした?」

不二咲「わ、わかったよ。行くね」

大和田「そっちは男子更衣室だろ?」

不二咲「…僕、こっちじゃなきゃ入れないんだ」

大和田「……?」

不二咲「……」ピッ ガチャ

大和田「……んなぁっ?!なんで開くんだよ!」

不二咲「……僕、男なんだ」

大和田「な、なあ、なっ…」

不二咲「…取ってくるねぇ」



大和田「不二咲が…男…?!」

大和田「うそだろ…ンな馬鹿な?!」

大和田「…………」

380: 2013/09/19(木) 02:34:57.58
不二咲「大和田くーん!」

大和田「お?!おう!どうした不二咲!」

不二咲「道具が重くて持てないよぉ!」

大和田「軽いのがあんだろ!軽いの取ってこい!」

不二咲「高いところにあって取れないよぉ!」

大和田「…だ、誰だよそんなところに置いた奴は!」

不二咲「ど、どうしよう」

大和田「…俺が不二咲の手帳で入ると校則違反…だよな?」

不二咲「うん。生徒間の手帳の貸与禁止…かな」

大和田「……体育館に行こうぜ。何かあるだろ」

不二咲「…うん」




大和田「男って本当か不二咲」

不二咲「うん」

大和田「まあ…男子更衣室に入ってたしな」

不二咲「うん」

大和田「…何で俺に言った?」

不二咲「…大和田君なら、言えるかなって思ったんだ」

381: 2013/09/19(木) 02:35:56.28
大和田「…兄弟もいんだろ?」

不二咲「…石丸君も、頼りになる人だし、優しい人なのはわかるんだ。でも…」

不二咲「こんな嘘ついてた僕を石丸君は許してくれるかな…って思っちゃったんだ」

不二咲「石丸君は頑張らない人が嫌いだから、努力から逃げた僕は軽蔑されるのかな…って思うと、怖くて言えなかった」

大和田「なんで言おうと思ったんだよ。黙っててもバレなかったろ」

不二咲「…封筒に入ってた僕の秘密が、これだったから」

大和田「…ま、だよな」

不二咲「僕、いつか男らしくなれたら女の子の服は脱ごうって決めてたんだけど…このままだと、男らしくなれる前に、男って知られてしまう…」

不二咲「だからって!僕のこんな情けない秘密のために誰かが犠牲になるなんて……そんなの駄目だよ」

不二咲「だから思ったんだ。変わらなきゃって」

大和田「…………」

不二咲「…このまま待ってたんじゃ、駄目なんだ。変わらなきゃ、変わろうとしなきゃ、男ってバレたとしてもずっと弱い僕のままなんだ」

大和田「…だから、か?」

不二咲「うん」

大和田「もう強えだろ…十分よ」

不二咲「ううん!僕、強くなりたいんだ!大和田君みたいに、強くて男らしく!」

大和田「…………」

382: 2013/09/19(木) 02:36:58.88
体育館

石丸「ん?あれは兄弟と不二咲君ではないか!」

朝日奈「ほんとだ!おーい!二人とも!」

不二咲「…みんなここでどうしたのぉ?」

朝日奈「キャッチボールだよ!」

石丸「桑田君が野球をしたいと言ったのでな!」

桑田「言ってねえ!」

石丸「言ったぞ!それで野球をしようとここにきたのだが、人数が足りなくてな!」

朝日奈「流石に四人じゃね。何もできなくて」

大和田「それでキャッチボールか」

桑田「まあな。…お前らはどうしたんだよ?」

大和田「…………」

不二咲「……えっとぉ」

葉隠「お?この反応は?」

桑田「言わずとも分かるぜ…」

不二咲「えっ?!何が?!」

石丸「…不二咲君たちは何故体育館に?」

不二咲「え?えっとぉ…運動する道具を探しに…かなぁ」

383: 2013/09/19(木) 02:38:08.79
石丸「そうか!ではここで僕たちと運動していかないか?」

不二咲「えっ?」

石丸「人数が足りず、簡単なゲームもできずに困っていたのだ!」

不二咲「で、でもぉ…僕なんかじゃ」

大和田「…鍛えてえんだろ?やってみろよ」

朝日奈「そうだよ!ただの遊びだから気を抜いて不二咲ちゃん!」

石丸「おお!兄弟もやる気だな!では道具を取ってこよう!このままではグローブが足りないからな!兄弟はバットを持っていてくれ」

朝日奈「じゃあ私飲み物とか持ってくるよ」

葉隠「んじゃあ俺も行くべ!つまみ食いすんべ」

石丸「つまみ食いは駄目だぞ!では桑田君!僕を手伝ってくれ!」

桑田「…おお、なるほどな。いいぜ石丸!」


不二咲「……二人になっちゃったね」

大和田「…………」

不二咲「…大和田君。さっきは僕の背中を押してくれてありがとう」

大和田「……」

不二咲「やっぱり大和田君は優しいねぇ」

大和田「………」

384: 2013/09/19(木) 02:39:38.22
体育倉庫

桑田「石丸も案外気がきくんじゃん?」

石丸「何がだね?」

桑田「何がって…アイツら二人きりにしてやったんだろ?」

桑田「さっきも『風紀が乱れるような話はやめたまえ!』とかいうと思ったら言わねえし、あんがい融通きくんじゃねえか風紀委員長!」

桑田「二人きりになれる場所を探しに来たカップルに気を使うなんてよ!」

石丸「意味がわからないぞ…あの二人は恋人などでは無いだろう?」

桑田「照れんなって!石丸が案外話のわかる奴ってのは分かったからよ!」

石丸「話が噛み合ってないぞ!……確かに、以前の僕なら男女が二人きりとはけしからんと言っていたところだろうな」

桑田「あ、やっぱり?」

石丸「しかしここに来て考えが変わった。信頼のおける関係に、性別は関係ない。そこを一括りにして全てを不埒な関係と言いきってしまうのは、よくないことだ」

石丸「形に囚われ、心の繋がりまでを否定してはならない…そう僕は教えられた」

桑田「…なんか、真面目な話だな」

石丸「真面目な話ではなかったのかね?」

桑田「オレ的にはあんまし」

石丸「…そうかね」

桑田「怒るなって!」

石丸「…早く兄弟のところへ戻るぞ」

桑田「あれ?二人きりにするんじゃねえの?んで、覗きしてニヤニヤするんじゃねえの?」

石丸「何を言っているんだ君は…」ハア

385: 2013/09/19(木) 02:41:01.26
石丸「む…?」

桑田「うおっ?!急にとまんじゃねーよ!」


大和田「だから…だからなんなんだよ!」


石丸「兄弟…?」ドサ

桑田「お、おい?どうした石丸!なんで荷物下ろしたんだ?!」

石丸「兄弟?」ダッ

桑田「おい!石丸!」




ガラ

石丸「きょ……」


そこで見たのはバットを持ち、鬼のような形相をした兄弟と
不二咲君の後姿だった

嫌な予感に僕は走り出していた
マズイマズイマズイマズイマズイ!





必氏になって不二咲君の前に飛び込み、兄弟を見上げた先にあったのは



目の前に迫る、バットだった

咄嗟に頭を庇おうとして一瞬のこと




衝撃とともに意識が飛び散った

401: 2013/09/22(日) 14:13:51.91
石丸「………うぅ」

「…!石丸!起きたか?!」

石丸「誰だ…君は?」

桑田「俺だよ!俺!くーわーたーだっ!」

石丸「桑田君…どうかしたのか…ぐっ?!」

桑田「あっ馬鹿!動くんじゃねえ!」

石丸「うううう。頭が…たんこぶ?」

桑田「そろそろ変えとくか。ホレ。氷」

石丸「す、すまない…」

桑田「何があったか覚えてんのか?」

石丸「あまり…」

桑田「まあ頭ブン殴られたわけだしな…」

石丸「…僕は倉庫を出て…それから…」

石丸「………それから」

石丸「……」

桑田「だ、大丈夫かよ?もしかしてキオクソーシツとかいうやつか?」

402: 2013/09/22(日) 14:14:47.26
石丸「…いや、そうではない。混乱はあるが正常だ。大丈夫だ」

桑田「そうかーよかったぜー」

石丸「僕はどの程度気を失っていた?」

桑田「ざっと一時間半ってとこか?」

石丸「そんなにか…」

石丸「心配をかけてしまったな」

桑田「……聞かねぇのか?」

石丸「…なんの、ことだ?」

桑田「なんのことって…覚えてねーんだろ?」

石丸「…何がだね」

桑田「…お前が殴られた時のことだよ」

石丸「……」

石丸「あれは、事故だろう?」

桑田「…なに馬鹿言ってんだよ。事故じゃねえよ」

石丸「事故でなければなんだというのだね」

桑田「殺人未遂事件…オレと舞園と同じだ」

桑田「また…起こっちまったんだよ…」

404: 2013/09/22(日) 14:15:54.14
石丸「……馬鹿を言わないでくれ…」

桑田「信じたくねえのはわかるけどさ…」

石丸「きっと、きっとなにか訳があったんだ!素振りをしていたら僕が割り込んだとか、きっと」

桑田「バットはそんな風には振らねえ」

石丸「ではきっとバットを持ってた手が滑ったんだ。それで掴み直そうとして…」

桑田「その言い訳はキツイだろ」

石丸「では、では何だというのだ!」

桑田「もうほんとは気づいてたんじゃねーの?」

石丸「……」

桑田「やべえと思ったから、不二咲を庇ったんだろ?」

石丸「………」

桑田「…………」

桑田「大和田のアホはな、モノクマの罠にまんまとハマりやがったんだよ」

石丸「違う…ちがう」

桑田「違わねえ」

石丸「違うに決まっている!」

405: 2013/09/22(日) 14:16:37.53
桑田「…ッいい加減にしろよ!認めろよ!何がちがうんだよ!大和田はなぁ!」

石丸「違う…」

桑田「不二咲を殺そうとして止めに入ったお前のことを殴っちまったんだよ!」

石丸「ちがう!」

石丸「そんなことをするはずが無いだろう!」

石丸「そんなことを…兄弟はしない」

石丸「兄弟は優しい男だ。強い男だ!そんな兄弟が…」

桑田「…………」

石丸「そんな過ちを犯すはずが無いんだ!」

桑田「石丸…」

石丸「ありえないはずだ…」

桑田「……ここでじっとしてろよ。動き回るとかマジですんなよ。安静にしてろよマジで」

石丸「…………」

桑田「オレは他の奴らにお前が起きたっていってくっから…」

石丸「違う…絶対に…」

406: 2013/09/22(日) 14:17:43.15
霧切「……また、起こってしまったのね」

朝日奈「うん…」

霧切「状況はどんな感じかしら」

朝日奈「石丸は…殴られてから意識がないよ…」

霧切「怪我は?」

朝日奈「血は出てなかったから、桑田に氷当てて貰ってる」

霧切「…よかったわ」

苗木「…うん」

朝日奈「不二咲ちゃんはショックだったみたいで…呆然としてたから、私が部屋につれていった」

霧切「不二咲さんに怪我は?」

朝日奈「石丸が不二咲ちゃんのそばに倒れこんだ時巻き込まれて腰を少し打ったみたいだけど怪我は無かったよ」

朝日奈「大和田は……」

苗木「……大和田クンは…?」

朝日奈「…大和田もしばらくぼーっとしてたって…でもしばらくして錯乱し始めて…そこをさくらちゃんが抑えてくれた」

霧切「今はどうしてるの?」

朝日奈「部屋にいるみたい。さくらちゃんが部屋の前にいるよ」

407: 2013/09/22(日) 14:18:39.43
霧切「…そう。あなたも大変だったわね」

朝日奈「ううん。私はなにもやってないよ。何もできなくてさくらちゃんをよんだだけ」

苗木「仕方ないよ。まさか、こんなことが起こるなんて思わないよ」

朝日奈「なんで…どうしてなの?なんで大和田が不二咲ちゃんを…?」

朝日奈「石丸は倒れちゃうし、さ、さっきまではみんな笑いながらキャッチボールしてたんだよ?」

朝日奈「何かの間違いだよ。何かの間違いに決まってる」

朝日奈「あんなに不二咲ちゃんも大和田も仲良くしてたのに…まさか大和田、そんなに外に出たかったの…?」

苗木「モノクマのせいだ…」

霧切「苗木君…」

苗木「やっとみんな笑えるようになってたのに…友達になれていたのに」

苗木「モノクマがあんなことを繰り返すせいで…モノクマが…」

霧切「落ち着いて。苗木君」

苗木「…くっ」

霧切「確かに、この事態はモノクマが全て悪いわ…でも、そこで思考を停止させてしまえば、この状況を脱することはできないのよ」

苗木「でも…どうしろっていうんだよ!」

霧切「このまま手招いていれば…モノクマはまた攻めてくるわ。そうなれば、手遅れになってしまうかもしれない」

苗木「……」

408: 2013/09/22(日) 14:20:39.08
霧切「でもまだ時間はある。まだその時まで一日以上あるわ。フォローは可能よ」

朝日奈「あ…そっか、秘密の暴露のこと忘れてた…」

霧切「…大和田君が、外に出たくて不二咲さんを襲ったとは思えないわ。彼が演技をできるタイプには見えないもの」

朝日奈「あ、当たり前だよ!大和田だって皆と一緒に真剣に桑田を心配してたもん!絶対!」

霧切「そうね。私もそう見えたわ。…彼の取り乱し方を聞く限り、咄嗟の犯行だった可能性が高いわ」

苗木「…つまり、モノクマの動機のせいで不安定になってて、何かのきっかけにあんなことを…ってことだよね」

霧切「そうでしょうね。モノクマの狙いは大和田君だったのよ。…彼は感情的になりやすいうえ、攻撃的だから、狙いやすかったのでしょうね」

苗木「モノクマ……!」

霧切「落ち着いてと言っているでしょう。今回もまた、殺人を防ぐことができたのよ。…石丸君の勇気ある行動でね」

霧切「もう一度言うわよ。…まだ、彼らへのフォロー可能よ。…いえ、むしろ今の状態の彼らをこのまま時を迎えてさせてしまうのはとても危険」

霧切「…このままでは、秘密の暴露でトドメを刺されかねない」

苗木「……!」

霧切「できることはきっとあるわ。…ここまで言えばわかるわよね?苗木君」

苗木「舞園さんをあんなに傷つけたボクなんかじゃきっと何もできないよ」

霧切「…そうだと思うなら、そこでじっとしていればいいわ」

苗木「…………」

霧切「…行くわね」

409: 2013/09/22(日) 14:22:06.12
朝日奈「霧切ちゃん!……行っちゃった」

苗木「ははは…情けないな」

苗木「前向きなことだけが取り柄だと思ってたんだけどな」

朝日奈「苗木」

苗木「……」

朝日奈「苗木!」

苗木「な、なに?!」

朝日奈「いつまでも落ち込んでちゃやっぱりだめだよ!」

苗木「……」

朝日奈「きっと舞園ちゃんも、苗木が元気になるのを願ってるよ!」

苗木「…わかってるんだ。でもさ、でもさ…」

朝日奈「…苗木が尻込みしちゃうのはわかるよ。失敗すると怖くなっちゃうよね」

朝日奈「…でも、苗木のそのやさしさはきっと間違ってないよ」

苗木「…………」

朝日奈「た、確かに今の舞園ちゃんには逆効果かもしれなかったけどさ…」

苗木「…………」

410: 2013/09/22(日) 14:23:22.86
朝日奈「…苗木」

苗木「なに?」

朝日奈「今も本気で、舞園ちゃんは悪くないって思ってる?」

苗木「…思ってる。悪いのは…あんな風に人を追い詰めるモノクマだよ」

朝日奈「私も、そう思う」

苗木「…舞園さんはそうは思ってないみたいだけど」

朝日奈「舞園ちゃんは真面目だもん。…これが葉隠とかならすぐ元気になりそうなもんなんだけどね」

苗木「そうだね」

朝日奈「…誰かを励ますのってむずかしいよね」

苗木「…そうだね。本当にそう思うよ」

朝日奈「…頑張って、苗木。きっといつかは苗木のやさしさも届くと思うから」

朝日奈「苗木が本気でそう思って、そう伝えたいと思うならそれでいいと思う。私、応援するよ!」

苗木「ありがとう。朝日奈さん」

朝日奈「行くね!…どこ行けばいいのかわかんないけどさ。…石丸とか大和田が桑田みたいになっちゃったら嫌だから」

朝日奈「もし、石丸たちを励ますのを手伝ってくれるならお願い。苦しんだ苗木の言葉なら、きっと届くから」

朝日奈「じゃ、じゃね!」




苗木「…本当に、このままじゃダメだよな…」

苗木「…きっと、舞園さんもボクがこんなんじゃ…困るよね」

苗木「……ちょっと、歩こう」

419: 2013/09/26(木) 00:39:12.45
本当に遅くてすみません
もう少ししたら来ます

422: 2013/09/26(木) 01:42:15.14
苗木「…ここに、来ちゃった…」

苗木「舞園さんの部屋…」

苗木「ここもとはボクの部屋だったんだよな…そう思うとなんか変だな…」

苗木「……」

苗木(話しかけるか…このままどこか行こうか…)

苗木「…………」

ガチャ

苗木「……は?」

舞園「やっぱり…苗木君でした…」

苗木「舞園さん?!」

舞園「…驚きましたか?」

苗木「そりゃ、ね。何でドアの前にいるってわかったの?まさかこれも…」

舞園「ふふ…『だって私、エスパーですから』」

苗木「はは…久しぶりだね。そのフレーズ」

舞園「そうですね」

423: 2013/09/26(木) 01:43:11.79
苗木「…舞園さん。大丈夫?」

舞園「…何が、ですか?」

苗木「モノクマの動機」

舞園「ああ…苗木君こそ、大丈夫ですか?」

苗木「ボクはどうでもいいよ。ただ…」

舞園「…また、ご迷惑をかけてしまったみたいですね」

苗木「め、迷惑なんかじゃないよ!」

舞園「…私のことなんかで悩ませてしまってすみません」

苗木「……」

舞園「…『舞園さやかは自分の欲望に負け人を殺そうとした!おまけに女であることを利用し無実の者を陥れた!』」

苗木「………」

舞園「監視映像も流すそうです」

苗木「…ボクのも似たような物だよ」

苗木「酷い言い草だよねこれ…」

舞園「…こんなものを背負わせてしまってごめんなさい…」

苗木「…ううん」

424: 2013/09/26(木) 01:44:01.71
舞園「…私なら平気です。自分のしたことですから」

苗木「あまり考えこまないほうがいいと思う。モノクマは秘密を暴露するって言ってたけど、本当にするのかどうかなんて分からないし」

苗木「だから、大丈夫だよ。きっと。…根拠はないけど」

苗木「…それにさ、超人気アイドルがまさか………」

舞園「まさか……なんですか?」

苗木「…いや、ごめん。口が滑っただけなんだ。なんでもないよ」

舞園「なんでもないならどうぞ。言ってください」

苗木「…ごめん。君を傷つけるような内容だった。言えないよ」

舞園「…言ってください」

苗木「……」

舞園「…苗木くんはきっと『まさか人気アイドルが人を殺そうとしたなんて世間も信じないよ』と言おうとしたんですよね」

苗木「……ご、ごめん。舞園さんの気持ちを考えないようなことだったね」

舞園「私は苗木君を責めたい訳ではないんです。苗木君は何も悪くないんです」

舞園「それに苗木君の言うとおりですよ。まさかアイドルが人を殺そうとしたなんて誰も信じないでしょうね」

舞園「まあ私はその『まさか』を犯した上、その先入観を利用したんですけどね」

425: 2013/09/26(木) 01:45:02.74
苗木「…そんな風に自分を追い詰めるのはもうやめてよ舞園さん」

舞園「やめてください」

苗木「…やめない。君が自分を責めることをやらなくなるまでいい続ける」

舞園「やめてください」

苗木「いやだ」

舞園「…本当に、もう大丈夫ですから」

苗木「ボクには、大丈夫には見えないよ。…今も、すごく泣きそうだよ」

舞園「泣きそうになんてなってませんよ」

苗木「泣きそうだよ!」

舞園「泣きそうになんてなってません!」

苗木「!!」

舞園「…すみません。大きな声を出して」

苗木「…ボクもごめん」

舞園「…でも本当に、大丈夫なんですよ?むしろ、今回のことで覚悟がついたんです」

苗木「覚悟?」

426: 2013/09/26(木) 01:45:42.05
舞園「…はい。ようやく自分のしたことと向き合えそうなんです。…もしこんなことが公表されれば私はアイドルを続けられないでしょう」

舞園「…だから今は、頑張って"アイドルじゃない"舞園さやかに戻ろうと頑張ってるんです」

苗木「舞園さん…」

舞園「…責任を、取らなければなりません」

苗木「…ボクたちは閉じ込められて、追いつめられて、脅迫されてるんだ。だからあんな行動をとってしまってもおかしくないんだよ」

苗木「舞園さんが一人で抱え込む必要なんてどこにもない。悪いのはモノクマなんだから。だから…」

舞園「…桑田君が殺されていたとしても、同じことを言ってくれましたか?」

苗木「…それは」

舞園「……」

苗木「……言うよ!言うに決まってる!君は悪くない!悪いのはあんな方法で殺人を強要するモノクマだよ!」

舞園「それでも行動を起こしたのは私です」

舞園「多少の差はありますが、みんな追いつめられているのは同じです。…みんなが頑張って耐えているなか、殺人という行為に走ったのは私だけでした」

舞園「…私の弱さが招いた結果です。責任は私にあります」

舞園「私はむしろ幸運でした。桑田君に救われたんです。もし彼が私から逃れていてくれなければ…学級裁判で私か、苗木君たちのどちらかが氏んでいたんです」

舞園「…知らなかったとはいえ、私はとんでもないことをしでかすところでした。…今でも、みんなを氏なせてしまうような夢を見るんです」

舞園「みんなを氏なせてしまって、苗木君もいなくて、なんだか暗くて寒い場所にずっと一人…なんて恐ろしい夢を見るんです」

舞園「それが現実になっていたらと思うと、アイドルでなくなってしまうことなんて、なんでもありません」

427: 2013/09/26(木) 01:46:28.36
苗木「舞園さん…ボクは、本当に君が悪くないと思っているんだ。同情とか、意地とかそんなものじゃないんだ」

苗木「今度は大和田クンが事件を起こしてしまったけど、大和田クンも悪くないってボクは思ってるよ」

舞園「え…?大和田君が…」

苗木「…舞園さんだけじゃない。もうみんな限界なんだよ」

舞園「また、私のような人が…」

苗木「そうだよ!舞園さんだけが弱かったわけじゃない!だから!」ガシッ

舞園「……?!」

苗木「だから舞園さん!ボクと…」

舞園「やっぱり私、苗木君のそばにはいられません!」バッ

舞園「…苗木君のそのやさしさは、苦しんでいる他の人にかけてあげてください」

苗木「え?舞園さん?」

舞園「私なんか大丈夫です。それよりも、他の傷ついている誰かのそばにいてあげてください」

苗木「まって舞園さん!何を…」

舞園「私は平気です。大丈夫です」

苗木「どうしたの舞園さん!」

428: 2013/09/26(木) 01:47:51.58
舞園「私は十分苗木君からやさしさを頂きました」

舞園「だから、もう他の人のところに行ってあげてください」

舞園「苗木君なら、きっと誰かを助けられますから」

舞園「…今までありがとうございました」ダッ

苗木「ま、待って!待ってよ舞園さん!」

苗木「舞園…さん」





舞園(どうしてどうしてどうして!)

舞園(どうしてあんな顔をして私の手なんて握るんですか!)

舞園(苗木君から私は離れたいのに。これ以上苗木君を困らせたくないのに)

舞園(どうして…!)

舞園(もう苗木君のそばにいてはいけない)

舞園(あそこにふさわしいのは…霧切さん)

舞園(離れないと…離れないと苗木君を苦しめてしまう)

舞園「さよなら、さようなら苗木君…」

432: 2013/09/28(土) 00:13:14.02
桑田「…飛び出して来たけどもよォ」

桑田「誰に石丸が起きたことを伝えりゃいいんだ?」

桑田「大神?大神でいいんか?」


桑田「大神!」

大神「桑田…どうした?」

桑田「石丸が起きた」

大神「む…そうか」

桑田「そんだけ?」

大神「朝日奈たちにも知らせてくれ。朝日奈ならば食堂か不二咲の部屋…不二咲のそばにいるはずだ」

桑田「おう。ところで大和田はどうよ?」

大神「…頭を冷やさせている。今はもう落ち着いているだろう」

桑田「そーかよ…」

433: 2013/09/28(土) 00:13:56.91
大神「我がおらぬ間に何があったというのだ…石丸も大和田も不二咲も仲は良かっただろう」

桑田「朝日奈から聞いてねーの?」

大神「朝日奈もその時は慌てていてな。…そもそも朝日奈は事件を見ていない。桑田、お主は知らぬのか?見ていたのだろう」

桑田「…オレにも詳しいことは分からねえ。石丸が突然飛び出して…オレも外に出たら石丸が倒れてたんだよ」

桑田「大和田はなんかヤベーしよ、不二咲はなんか魂抜けたみたいでさ」

大神「そうか」

桑田「…なんでこの馬鹿はこんなことしちまったんだよ」

大神「わからぬ。…追いつめられていたのだろうな」

桑田「追いつめられてたら襲ってもいいのかよ……」

大神「…桑田。その怒りは今は収めておけ」

桑田「…朝日奈ンとこ行って来る」

大神「ああ…頼むぞ」




桑田「朝日奈ー?」

朝日奈「あっ桑田!どうしたの?」

434: 2013/09/28(土) 00:15:21.92
桑田「石丸が目ェ覚ましたぞ」

朝日奈「本当?良かったー」

桑田「お前はなにやってんの?」

朝日奈「ドーナツ!あとホットミルク作ってるよ!」

桑田「またドーナツかよ…」

朝日奈「…えへへ。私といえばこれかなって」

桑田「不二咲に持ってくのか?」

朝日奈「うん。疲れてるみたいだから。桑田も来る?」

桑田「行く。石丸のこといわねえとだし」

朝日奈「じゃあ行こっか」



朝日奈「不二咲ちゃーん!ドーナツ持って来たよ!」

不二咲「朝日奈さん…ごめんねぇ…迷惑かけて」

朝日奈「仕方ないよ。さ、気分変えよ!ドーナツドーナツ!」

桑田「不二咲。石丸が起きたぜ」

不二咲「石丸君が?!」

桑田「頭痛がってたけど平気そうだった」

435: 2013/09/28(土) 00:16:53.90
不二咲「…石丸君にあやまらなきゃ…」

桑田「なんでだよ」

不二咲「だって、ぼ…私のせいで怪我させちゃったし…」

桑田「不二咲のせいじゃなくね?元はと言えば大和田のアホが…」

不二咲「大和田君を怒らせちゃったのは私だから…」

桑田「キレたら殴ってもいいわけじゃないだろ。石丸を殴った大和田が100%悪いじゃねーか」

不二咲「で、でも…」

朝日奈「…まあまあ、とりあえず食べようよ!ホットミルクもあるから!あったかいもの飲んだら眠くなるよ」

朝日奈「辛い時は、おいしいもの食べて、あったかくして寝るのが一番いいんだから」

不二咲「ご、ごめんねぇ…」

桑田「だーからなんで不二咲があやまんだよ…」

不二咲「ごめんなさい…」

朝日奈「いいんだよ。不二咲ちゃんはあやまらなくて」

不二咲「僕が大和田君を追い詰めちゃったんだ…傷つけたんだ…」

不二咲「大和田君だって辛かったのに僕があんな風に思い込んで頼り切って…それのせいで石丸君も怪我させちゃうし…」

不二咲「僕が弱かったから……」

不二咲「強くなるって決めたのに…こんなに情けなくって…やっぱり僕なんてどうしようもないんだ…」

桑田「……」

436: 2013/09/28(土) 00:19:02.58
朝日奈「(桑田)」

桑田「(なんだ)」

朝日奈「(不二咲ちゃんは私に任せて。石丸のとこに行ったげてよ)」

桑田「(まあ男のオレよか朝日奈のほうが不二咲も気が楽だよな…わかった。行って来る)」




桑田「…はあ。なんで不二咲の奴は大和田なんて庇うんだよ…」

桑田「アイツは信頼してくれた奴を裏切ったっつーのに…」

桑田「オレの時なんか何もしてなかったのにボッコボコだったんだぞ…」

桑田「そーいや大和田にはマジで殴られたな…やべぇ…思い出したらなんか腹立って来た」


石丸の部屋


桑田「…あれ?閉まってる?」

桑田「おーい石丸ー?」

桑田「チャイムならしても出てこねえな…寝たのか?それとも外に…」

桑田「くっそ!どいつもこいつも好き勝手やりやがってー!」

437: 2013/09/28(土) 00:20:06.10
桑田「あーっ!いやがったな石丸!」

大神「桑田!石丸を連れて帰ってくれ!」

石丸「駄目だ!僕は彼に話があるのだ!」

桑田「歩き回るなっつったろーが!帰るぞ!」

石丸「嫌だ!」

石丸「兄弟!兄弟!出て来てくれ!話がしたい!兄弟!」

桑田「やめろって!お前頭殴られたんだぞ!」

石丸「そんなことはどうでもいい!兄弟!話をしよう!」

大神「落ち着くのだ石丸!」

石丸「兄弟!兄弟ィーッ」

ガチャ

大和田「…………」

石丸「兄弟!」

桑田「大和田…」

石丸「出て来てくれて感謝するぞ兄弟!さ、みんなに話をしに行こう!」

大和田「話…?なんの話だよ」

438: 2013/09/28(土) 00:20:59.52
石丸「もちろん君の身の潔白についてだ!あんなことをしたのには大方何か理由があったのだろう?」

大和田「…………」

石丸「僕はわかっているぞ兄弟!」

石丸「君が訳もなく人を殴るなどあり得ない!ましてや相手は不二咲君だ!女性に手をあげることを忌避していた君が不二咲君を殴るなどあり得ないだろう?」

石丸「さあ、真実を話に行こう!手が滑ったのかね?それとも何でもないところに僕が割り込んでしまったのかね?また同じ失敗を繰り返さないためにも、身の振り返りは大事だぞ!」

大和田「もう黙れ…」

石丸「ん?」

大和田「もう黙ってくれ…」

石丸「なぜだ?」

大和田「そんな目で見んじゃねえ」

石丸「どういう意味だね?」

大和田「…そんな目で見んなっつってんだよ!」ドン

石丸「うわっ?!」ドサ

桑田「石丸!おいコラ大和田!」

石丸「どうしたのだね兄弟…何か僕は気に障ることでも言っただろうか…」

大和田「……」

439: 2013/09/28(土) 00:22:08.52
石丸「兄弟…違うと言ってくれ」

大和田「……」

石丸「君は不二咲君を殺そうとなんてしていない…そうだろう?」

石丸「そうだと一言言ってくれればそれでいいんだ…言ってくれ」

大和田「俺は…俺は」

大和田「……っ」

石丸「どこへ行く気だ!」ガシッ

大和田「離せ!」

石丸「離さないぞ!僕と話をしてくれ!」

石丸「僕から逃げるのか!」

大和田「うるせえっ!」

石丸「なぜだ!何故逃げようとする!一言本当のことを言えばいいだけなんだぞ!」

石丸「不二咲君を殺そうとなどとしていないと、言ってくれ!」

大和田「……」

石丸「黙らないでくれ!」

440: 2013/09/28(土) 00:22:59.38
大和田「離せ」

石丸「言わなければ離さないぞ…」

大和田「何でそんなこといわねぇといけねーんだよ」

石丸「僕が…僕が君の友達だからだ!」

石丸「友達である君のことが心配なのだ!」

大和田「石丸…」

石丸「何故兄弟と呼ばない?!いつものように呼べばいいだろう!」

大和田「そんな資格…俺にはねぇ…」

石丸「……!?」

大和田「俺にはお前の隣に立つ資格なんてねえ…」

大和田「そんな真っ直ぐな目でみんなよ…余計に情けなくなんだよ…」

大和田「俺は強くねえと駄目なんだよ…。強く…強く強く強く」

石丸「兄弟は…十分強いだろう…?喧嘩はよくないが腕っ節もいいし、暴走族とはいえ立派に人をまとめているではないか…」

大和田「馬鹿にしてんのか…」

石丸「してなどいない…」

441: 2013/09/28(土) 00:23:50.51
大和田「そんなこと思ってねえんだろ!どうせすぐキレる馬鹿だとおもってんだろ!」

石丸「そんなことは!」


桑田「思ってるに決まってんだろ!」


石丸「桑田…君?」

桑田「オイ…大和田…歯ァ食いしばっとけ…」

大神「…まて、何をする気だ桑田!」

桑田「ブン殴るに決まってんだろ!」

大和田「……!ガッ…」バキ

石丸「兄弟!」

桑田「あーいてててて久しぶりで失敗した…でーも少しスッキリしたぜ」

大和田「…ッ何すんだコラァ!」

桑田「何すんだもクソもねーよ!この前オレのこと殴ったろーが!その仕返しだっつーの!言っとくがテメーにやり返す権利は無えぞ!」

桑田「お前オレにあの時言ったよな?女に手をあげんなってよ?なのになんだオマエ?何不二咲殴ろうとしてんの?アホか?自分の言ったことも覚えてられねーの?」

大和田「グッ……」

442: 2013/09/28(土) 00:25:01.21
桑田「正直さあムカついてたんだよなあ…オマエが言うなってな!」

桑田「大体こっちは勘違いで殴られたってのにまだ謝られてねーしよ。族っつーのはスジ通す生き物なんじゃねーのかよ?」

桑田「しかもオレに謝りもしないうちから逆ギレして不二咲殴るとか…マジサイテーだなオマエ。マジありえんわ」

石丸「やめてくれ桑田君」

桑田「やだね。オレはこいつにムカついてんだからよ」

桑田「…それで今度は自分を庇ったダチに八つ当たりか?バカ?」

桑田「責められないで庇われて…どんだけ自分が恵まれた状況にいるのかわかんねーのかよ!」

桑田「オレなんか被害者なのに散々疑われたんだぞ?!舞園だってずっと通夜みてーな顔してんだぞ?!」

桑田「なのになんだテメーは!謝りもしねーで被害者みてえな顔しやがって!ムカつくんだよ!」

大神「そこまでにしろ桑田!」

桑田「おさまんねえよ!不二咲だって石丸だってこのアホのためにこんな泣いてんだぞ!わりーのはコイツなのによ!なのにこのアホは…!」

大神「桑田!」

桑田「チッ…おい石丸。部屋戻んぞ」

石丸「離してくれ!僕は兄弟と話を…」

443: 2013/09/28(土) 00:25:37.84
桑田「もうコイツは駄目だ。ほっとけ」

石丸「嫌だ!兄弟!兄弟は悪くないはずなんだ!」

大和田「……」

桑田「大和田…こんなコイツを見て何か言えねえ?」

大和田「……」

桑田「そこで黙んなよ。マジどうしよーもねーな。…くっだらねえ奴」

石丸「離してくれ…離せえええっ」ズルズル


大神「大和田…」

大和田「…………」

大神「何があったのか…我は知らぬ」

大神「しかし…今のぬしはまるで覇気を感じぬ。まるで頭を務めていたとは思えぬ姿をしている」

大神「自分のしたことについてもう一度考え直せ…桑田の言った言葉についてもな」

大神「そうでなければ…友を、絆を失うぞ…」

大和田「兄弟…」

大神「石丸が体を張ってぬし等を守ったのだ。…その思いを無駄にするな…」

大神「我はここを離れるが…妙なことは考えるな」

大神「一人でじっくり考えろ」

大和田「兄弟…不二咲…」

450: 2013/09/28(土) 20:14:07.95
石丸「離せ!離してくれ!」

桑田「怪我人がジタバタすんじゃねーよ!」

石丸「何故僕の邪魔をするんだ!」

桑田「邪魔なんかしてねえよ!」

石丸「しているだろう!」

桑田「しつけーな!マジでもう一回寝かすぞ?!」

石丸「やれるものならやってみたまえ!」

桑田「くっ…この…!」グッ

桑田(……落ち着け…落ち着け)

桑田(大和田と同じ間違いを犯すつもりかオレは…)

桑田(石丸は混乱してんだ。あん時のオレと同じだ…)

桑田(冷静に…なんて期待すんのは無理だ…オレが冷静にならねえと)

桑田「…………」

石丸「…どうしたのかね?寝かせるのだろう?やればいいではないか!」

桑田「…ああ、寝かす。テメーの部屋いくぞ」

石丸「離せ!」

桑田「同じことばっか叫ぶんじゃねーよ…あーうるせえ」

451: 2013/09/28(土) 20:14:48.37
石丸の部屋


桑田「ほれ寝ろ」

石丸「うおっ?!」ボフ

桑田「しばらくオレは離れねーぞ。あんな馬鹿みてえなことされたらめんどくせーしよ」

桑田「だから寝ろ」

石丸「僕に寝ている暇などない…!」

桑田「いいから寝ろって!」

石丸「ぐぐぐ…」

桑田「ね…ろ…よぉっ!」

石丸「うわっ」ボフ

桑田「よく見たら手首まで腫れてんじゃねーか!殴られた時か?それともさっき飛ばされた時か?」

石丸「…………」

桑田「言えよ」

石丸「…わからない」

桑田「そうか。……」テクテク

石丸(…出て行くのか?)

452: 2013/09/28(土) 20:15:25.01
ガチャ

桑田「誰かー!氷持ってこーい!石丸が怪我してんぜー!」

石丸「なっ…!」

桑田「誰かいねーのかよー?!おいコラ葉隠ええええ!どうせテメー何もしてねーでサボッてんだろ!来いよ!」

石丸「…部屋にいるとしたら防音だから聞こえないぞ?」

桑田「あー?クソめんどくせーな」

石丸「…この程度、平気だ。気にしないでくれ」

桑田「冷やさねーと腫れんだろ?おーい誰かー!」

石丸「……ならば自分で取りに行く」

桑田「駄目だっつってんだろ!どうせまた大和田んとこ行くんだろうが!」

石丸「…行かない」

桑田「嘘こけ!」

石丸「…不二咲君が気になる。会いたい」

桑田「はい駄目ー!」

石丸「な…何故だ!」

453: 2013/09/28(土) 20:16:04.55
桑田「不二咲も今は落ち込んでんだよ!朝日奈が相手してっから心配すんな!」

石丸「し…しかし!」

石丸「彼女に何があったのか聞きたい。兄弟と何があったのか!」

桑田「させねえ」

石丸「何故だ!」

桑田「だァかァーら!不二咲も落ち込んでるっっつってんだろ!追い込む気かっつーの!」

石丸「な…」

桑田「今不二咲はひたすら自分のせいだって言って落ちこんでんだよ!そこにテメーが行って見ろ!どーなるかわかんだろ!」

石丸「何故だ!不二咲君に落ち度は無いだろう!そう言いに行かなければ!」

桑田「いやだから寝ろって」ガシッ

石丸「何故だ!」

桑田「…オマエ、今回のことは誰が一番悪いと思ってる?」

石丸「え……?」

桑田「誰が悪い?」

石丸「そ、それは…」

454: 2013/09/28(土) 20:21:12.96
桑田「誰も悪くない、は無えぞ?」

桑田「…不二咲を殺そうとした大和田か?」

石丸「きょ、兄弟は悪くない!そんなことをするはずが無い!何か理由があるはずだ!」

桑田「じゃあ大和田を怒らせたっつってる不二咲か?」

石丸「ち…違う!不二咲君は悪くない!」

桑田「じゃあ突然飛び出して不二咲を庇っただけのオマエが悪いのか?」

石丸「あ……」

桑田「じゃあ誰が悪いんだ?どうなんだよ」

石丸「それは…」

桑田「自分を責める不二咲を励ますにゃ、それじゃ駄目だろ」

石丸「ぼ、僕が兄弟の苦しみに気づけなかったから…」

桑田「そりゃ理由にならねえ。つーか不二咲も同じこと言ってっし、それじゃ励ますことはできねーな」

桑田「説得力がねーんだよ!今のテメーのセリフにはな!」

桑田「冷静になれよ!オレが落ち込んでた時のお前はどこ行っちまったんだよ」

桑田「オレを引っ張り出した時のお前はどこ行ったんだよ!」

石丸「あの時の僕は…」

455: 2013/09/28(土) 20:22:27.84
桑田「……ちょっと前までは無駄に自信満々だったじゃんかよ」

石丸「わからない…一体誰に責任があるのか…」

石丸「当事者になって初めて分かった…この状況は、想像以上に辛い…」

桑田「ざまあみろ…オレの苦しみをもっと味わえばいいんだよこのアホ」

石丸「確かに、状況だけをみれば兄弟が一番悪いのはわかるのだ」

桑田「…………」

石丸「なにがあろうと暴力はいけないことだ…だが」

石丸「だが殴られる瞬間に見えた兄弟の顔は…理不尽な暴力を振るう者の顔ではなかった」

石丸「何かに傷つけられたような…そんな顔をしていた」

石丸「あんな顔をみてしまえば…兄弟を責めることなど出来ない…」

桑田「……」

石丸「何故…何故あんな顔をしていた…」

石丸「何故あのような苦しみを抱えていながら兄弟は僕を頼ってはくれなかったのだ…」

桑田「石丸…」

石丸「あんなことをしてしまうくらいなら…僕に、打ち明けて欲しかった…苦しみを分かち合いたかった…」

石丸「僕は…そこまで頼りなかっただろうか…信用に値しなかっただろうか」

石丸「僕一人が舞い上がっていただけだったのか…?初めて友達ができたなどと」

456: 2013/09/28(土) 20:23:21.40
桑田「…そんなこた無えだろ。多分」

石丸「…ならば何故…」

桑田「…会ってまだ一月たってねえじゃんオレ等。そんな奴相手に秘密を打ち明ける…ってやつも少ねえと思うぞ?」

石丸「そうか…それもそうだな…そういうものだな」

桑田「え?おい石丸?」

石丸「僕にとって彼は唯一無二の友だ…しかし兄弟にとっては会って一月も経たない、出会ったばかりの人間でしかない…」

桑田「い、いやそれは言い過ぎじゃね?そこまで酷くないって!」

石丸「兄弟が僕のことをそんな風に、軽んじる人間ではないと思ってはいるのだ。しかし…」

石丸「しかしどうにも考えが偏ってしまう。嫌な方に嫌な方へと流れてしまうのだ」

桑田「…疲れてんだよ。なあ、もう寝ちまえって」

石丸「眠れない…目が冴えている…」

桑田「目ぇつぶってるだけでもいいって言うじゃん?横になっとけよ!」

石丸「…ああ、いまなら苗木君の気持ちがわかる」

桑田「苗木?」

石丸「苗木君は、ずっと「舞園君は悪くない」と言い続けていた。…僕もそうしたくてたまらない…」

石丸「だが、僕にはモノクマが全て悪いのだと断ずることができるほどの強さがない。何処かで兄弟の行動を許せない自分もいる…」

桑田「それが普通だっつーの」

石丸「苗木君のような強さが欲しい…君たちは悪くないと、悪いのはモノクマだと、兄弟たちに伝えられたらどれだけいいか…」

457: 2013/09/28(土) 20:24:18.22



「それでは駄目なんですよ、石丸君」



桑田「……その声、舞園か」

舞園「…それでは誰も救われませんよ、石丸君」

石丸「ま、舞園君…」

舞園「ドアが開いてた所から声が聞こえました。他に誰もいなかったので私が氷を…」チャプン

舞園「不恰好ですみません…片手じゃ辛くて…」

桑田「……貸せ」

舞園「お願いします」

桑田「………何しにきた…」

舞園「石丸君と、話をしに」

石丸「僕と…?」

舞園「私と話をしましょう。石丸君」

石丸「………ッ」

舞園「そんな顔をしないでください。とって食べたりだなんてしませんよ」

桑田「…妙なことすんなよ…」

舞園「はい。…石丸君」

石丸「…………」

舞園「ここ、座りますよ?」

石丸「あ、ああ…」

舞園「それでは……話をしましょうか」

465: 2013/10/03(木) 02:11:25.06
舞園「…石丸君は、苗木君のことをどう思いましたか?」

石丸「どう、とは?」

舞園「そのままの意味です」

石丸「……苦しそうだった」

舞園「そうですよね。苦しそうですよね。どうしてですか?」

石丸「どうしてといわれても…」

舞園「考えてください」

石丸「…………」

石丸「君が…苦しんでいるのを、助けられないからだろうか」

舞園「優しい答えですね…」

石丸「ま、間違えてしまっただろうか」

舞園「わかりません。少なくとも、苗木君自身はそう思ってるのではないでしょうか」

石丸「苗木君は?」

舞園「ええ。苗木君自身は」

石丸「その言い方はどういう意味かね」

466: 2013/10/03(木) 02:12:27.90
舞園「……」

舞園「……苗木君はあなたです」

石丸「僕…?」

舞園「石丸君と苗木君は、いま全く同じ立場にいます」

舞園「信用していた人に、裏切られました。裏切られて傷つきました」

桑田「……」

舞園「…ですから、自分がどうすればいいのかわからないのなら、苗木君のことについて考えてみればいいんです」

舞園「自分の心にはまっすぐになれなくても、他の人の気持ちならまっすぐに見つめられます。…他人のことになれば、冷静に考えられませんか?」

石丸「苗木君の気持ちになって…」

舞園「その先の答えはあなたに任せます。私では答えを出せませんから。ですから、次の話に行きますね」

舞園「…苗木君は、ずっと私に張り付いて、『あなたは悪くない』そうずっと言い続けてくれました」

舞園「…今のあなたと被る部分がありますよね?これについては、どう思います?」

石丸「僕は…素晴らしいことだと思った…だが、霧切君やセレス君はその行為を否定していた」

石丸「意地になっていると…」

舞園「そうですね。意地になっている部分もあったでしょうね」

467: 2013/10/03(木) 02:13:06.15
石丸「…しかし、苗木君は君のことを思って…」

舞園「そんなの…関係ないんですよ」

石丸「!」

舞園「誰が何を思ったとかは関係ないんです。そんなものに意味はないんですから」

桑田「……」

舞園「苗木君に間違った慰めをしてもらい続けて、私はどうなったと思いますか?」

石丸「……」

舞園「…私は苗木君ではありませんから、苗木君のことはわかりません。なのでここからは私が私について話します」

舞園「…私は、とても辛かったです。あんなことをしておいて、何様のつもりだと言われてしまえばそうなんですが、正直な気持ちをいえばそうでした」

舞園「大事なことは伝わることなんです。受け入れてもらえることなんです。いくら相手のことを思っていても…伝わらなければ、傷つけてしまえば、その思いは無いのと同じなんですよ」

舞園「苗木君の気持ちは…私には伝わりました。…でもそれは、私の救いにはならなかったんです」

舞園「私はその優しさを利用しようとしたのに…苗木君は責めもせず、態度も変えず、ずっと私のそばにいてくれました…」

舞園「苗木君は約束を守ってずっとずっとずっとずっと、私の味方でいてくれました。周囲から何を言われようとも、私のそばにいてくれました」

舞園「でも私には…私にはその優しさが辛かった…!」

桑田「……」

468: 2013/10/03(木) 02:13:42.92
舞園「苗木君がやさしくしてくれればしてくれるほど…彼を裏切り利用した私の醜さが際立って行くようで…」

舞園「際限のない優しさをぶつけられて、私はどうすればよかったんでしょうか。甘えて苗木君の胸にでも飛び込めばよかったんでしょうか」

舞園「それはできませんでした。…いえ、本当は飛び込みたかった。飛び込んでしまえたら、どんなによかったか…」

舞園「でも…でも私は桑田君を襲ったあの日、その権利を自分で投げ捨てたんです。外に出たいという欲望と、苗木君や他のみんなの命を測りにかけて外を選んだんですから」

石丸「誰も学級裁判のことなど知らなかった。仕方が無かった…」

舞園「少なくとも桑田君は氏んでもいいと思いましたよ。私は…だから桑田君を選んだんですから」

桑田「それ以上バカいってっと流石にキレんぞ?」

舞園「かまいませんよ。あなたにはその権利があります」

桑田「……オレに苗木の代わりに怒鳴ってくれっての?ふざけんじゃねえよ。どこまで自分勝手なんだよテメー」

舞園「べ、別にそんなつもりは…」

桑田「そんなつもりもクソもねえだろ?さっきから聞いてりゃベラベラベラベラ、何がいいてえんだよ?石丸に話があるっていってたけどさあ、どうせ自分が辛くなったから吐き出しにきたんだろ?」

舞園「…………」

桑田「それであわよくばオレをキレさせて怒鳴らせて自分の良心慰めようとしてんだろ?誰がそんな都合のいいことしてやるかっての散々利用されてバカみてーじゃんオレ」

舞園「そんなつもりはありません」

桑田「ぁあ?!オレはまだ謝罪すらされてねーんだぞ?今更謝られてもどーもしねーけどな!」

舞園「…………」

石丸「ま、待ちたまえ二人とも!争うのならば…外でやってくれ」

桑田「………」

469: 2013/10/03(木) 02:15:15.41
舞園「…桑田君。怒らせるようなことをいってしまってすいませんでした」

桑田「……」

舞園「……とにかく、私が言いたいのは、間違った思いやりは相手を追い詰めてしまうからやめてくださいということだけです」

舞園「自分の思いを押し付けないでください。彼のしたことを、してしまったことを認めてあげてください」

舞園「あなたがいくら否定しようとも、大和田君が不二咲さんを殺そうとした事実は変わりません。あなたを傷つけた件もそうです」

舞園「だからまずは、認めてあげてください。受け止めてください。…彼を救いたいと思うなら」

舞園「…傷つけた、裏切ってしまったと後悔している相手に守られ慰められることは彼の自尊心と良心を嬲るでしょう」

舞園「あなたたちをさらに大和田君は傷つけてしまうかもしれません。…そんなときは、自分の気持ちに正直になって、正面からぶつかってください」

舞園「間違っても、『この人は傷ついているんだ』とか、『守ってあげなきゃ』なんて思わないでくださいね。大和田君はきっとそんな思いやりは求めていないと思います」

舞園「私が経験から言えることはこれだけです。あくまでこれは私の経験を元にした提案ですから、うまくいくかどうかは保証できないけど」

舞園「…助けてあげて、くださいね。間違っても…私みたいな辛い思いをさせてあげないでください。彼は…私と違いますから。助けてあげてください」

舞園「私みたいに…私達みたいに…間違えたりしないでくださいね」

石丸「…ああ」

舞園「言いたかったのは、それだけです。長居してしまってすいませんでした」

石丸「…氷を持ってきてくれてありがとう。助かったぞ!」

舞園「……」

石丸「桑田君」

桑田「んだよ」

石丸「外に出てもいいだろうか。不二咲君にやはり会いたい」

桑田「…オレも行く」

舞園「私も外に出ます」

470: 2013/10/03(木) 02:15:49.84
舞園「……」

石丸「舞園君。貴重な話をありがとう。…そして僕も僕なりに考えたのだが」

舞園「……」

石丸「僕が苗木君だったなら、君がもし兄弟だったなら、やはり僕は君に元気になって欲しいと願うと思う。…いや、僕は僕としてそう願う」

石丸「君が桑田君にしたことはともかく…あとは、苗木君の言っている通りだと思うぞ。…悪いのはきっと、モノクマだ」

舞園「…その発言を、否定するために私はきたんですよ?」

石丸「しかし考えは変わらなかった。…君の忠告通り兄弟には言わないが、やはりどう考えても、悪いのはモノクマだとしか思えない」

石丸「あまり、じぶんを追い詰めすぎないでくれたまえ。…それでは行こう、桑田君」

桑田「おう。…舞園」

舞園「なんですか?」

桑田「…オレはテメーを許すつもりはねえ」

舞園「…はい」

桑田「でも………ああやっぱいいわ。じゃな」

舞園「………」



舞園「…酷い自己満足ですね。こんなことをして私は…」

舞園「……一人にならないと」

舞園「………部屋に、戻りましょうか…」

481: 2013/10/05(土) 21:05:46.04
石丸「む…もう部屋のまえか」

桑田「マジで心の準備ってやつができねえ距離っていうか…」

石丸「…すこし、学内を歩かないかね?」

桑田「オレは別に構わねえけど」

石丸「言いたいことがまとまらないのだ」

桑田「んじゃぐるっとするか」




二階

霧切「…あら、石丸君。起きてたのね。話は聞いたわ」

石丸「やあ霧切君!心配をかけてしまったな」

霧切「無事でよかったわ」

石丸「ああ。ありがとう」

桑田「霧切ここで何やってんの?」

霧切「…少し、用が出来てしまって…」

石丸「用?」

482: 2013/10/05(土) 21:06:50.63
霧切「これに見覚えは無いかしら?」

桑田「ヘアピン?」

石丸「…聞くならば女子ではないかね?」

霧切「一応聞いただけよ。心当たりが無いなら構わないわ」

江ノ島「あ?霧切に石丸?こんなとこで何してんの?」

石丸「江ノ島君か。…そうだ、江ノ島君の物では無いのかね?そのヘアピンは」

江ノ島「ヘアピン?…あ、これ使ってるやつだ」

霧切「……では、あなたの物で間違いないわね?」

江ノ島「じゃないの?使うやつなんてあたしか舞園か朝日奈くらいじゃん?」

霧切「舞園さんは使ってない…大神さんに聞いたけど朝日奈さんもこれは使ってないと言っていたわ」

江ノ島「じゃあやっぱアタシのじゃん?」

霧切「返すわ」

江ノ島「どーもー。どこに落ちてたの?」

霧切「階段のまえよ」

江ノ島「気をつけないとなーここじゃかわいいヘアピンも貴重だし。んじゃねー」

483: 2013/10/05(土) 21:07:44.98
桑田「たかが黒のヘアピン一つで几帳面だよな霧切も」

石丸「いいことではないか」

霧切「…二人とも」

石丸「ん?」

霧切「彼女に気をつけて」

桑田「どういう意味だよ?」

霧切「私が言えるのはこれだけ…」スッ

桑田「おーい霧切?」

桑田「…何だったんだ?」

石丸「さあ…」



石丸「…またか」

桑田「またって何が…ってうおっ?!」

石丸「腐川君がまた奇行を…」

腐川「」ジイイイイイイイイ

桑田「窓の鉄板なんて眺めてなにやってんの?」

484: 2013/10/05(土) 21:08:20.44
石丸「あの舐めるような視線…脱出できる場所を探しているのかもしれないな」

桑田「でもあそこはもう調べたんだろ?」

石丸「…そうだが…自分でも調べているのだろう」

桑田「うわー気持ちわりー…離れっぞ」

石丸「そのような言い方はよくないぞ桑田君…」

桑田「触らぬなんたらだって!ほれ行くぞ!」ズイッ

石丸「ぶむっ!」ボヨン

桑田「おわっ?!」

山田「ごふぁ!」

石丸「山田君!怪我はないかね?!」

山田「じ、自分でいうのもなんですがこの大きさの人間に何故気づけませんかな!?」

桑田「ああ…わりわり。アレみててさあ」

山田「うおっぷ…腹を押されたせいで油芋がリバースしそうですぞ…ヴッ」

石丸「し、しずめたまえ!しずめたまえええっ」

桑田「やめろ!やめてくれ!」

山田「ふぬおおおお…」


485: 2013/10/05(土) 21:09:43.40
山田「…ふう。酷い目にあいましたぞ」

桑田「ふう。ハラハラしたぜ」

石丸「桑田君!これでわかったかね?前を見ないで歩くという行為や、人を押すという行為がどれだけ危険か!」

桑田「わーったわかった!悪かったって!」

石丸「本当か…常々思っていたのだが、君は落ち着きがなさすぎるぞ!その軽薄な態度も問題だ!」

桑田「なんでそっからそこに飛び火すんの?!」

石丸「いい機会だったから言っただけだ!」

桑田「何がいい機会だわりとゴリ押しだったろ今の発言!」

山田「…………」

桑田「な、なんだよ山田」

石丸「ど、どうしたのかね山田君?やはり気分が悪いのかね」

山田「なーんなんでしょうなあ…」

桑田「何が?」

山田「今の光景、何処かで見たような気が…」

486: 2013/10/05(土) 21:10:17.44
桑田「腐川がか?あんなん見たら忘れられねーだろ?」

山田「いえ腐川冬子殿ではなくてですな…」

山田「なんでしたかなぁ…考えていたら一体何にデジャブったのかすらわからなくなって…」

山田「………」

桑田「お、おーい!山田?」

石丸「行ってしまった…」

桑田「あの図体がフラフラ…軽い殺人兵器だろ…」

石丸「なにか妙だったな…心配だ」

桑田「オレ等にゃどうしようもねえな。こっちだっていろいろ抱えてんだ。構ってられねえだろ」

石丸「それもそうなのだが…」

桑田「そろそろ、不二咲んとこ行かね?」

石丸「…………」

桑田「言いたいことがまとまらねえっていうけどさあ…そういうのってやっぱ相手と話してみねえとまとまんねえもんじゃね?」

石丸「それは…」

桑田「で?行くの?行かねえの?どっちだ」

石丸「…行く」

桑田「さーとっとといって終わらせっぞ!こーいうネチネチしたのは嫌いなんだよウザってえからな!」

石丸「う、うむ!ではゴーだ!」

495: 2013/10/08(火) 22:30:25.61
不二咲部屋前

石丸「よ、よし!」ピーンポーン

朝日奈「はい?…石丸!」ガチャ

石丸「ふ、不二咲君いますか?!」

朝日奈「いやいるけど…っていうかそのフレーズ久々に聞いたよ」

桑田「オメーは遊びに誘いに来た小学生か」





石丸「し、失礼する!」

不二咲「…石丸くん」

石丸「不二咲君!会いに来たぞ!」

不二咲「…来てくれたんだね」

石丸「こ、こんなに目を腫らして…」

不二咲「ごめんね、ごめんね石丸君…」

石丸「待ってくれ。謝らなくてもいい」

不二咲「でも…でも僕のせいで大和田君と石丸君が…辛い目に…」

496: 2013/10/08(火) 22:31:45.64
不二咲「ごめんなさい。ごめんなさい…」

石丸「…………」クルッ

桑田(助け求めてくんの早すぎんだろ!こっちみんな自分でやれドアホ!)クイクイ

朝日奈(ファイト!)

石丸「………不二咲君、顔をあげてくれ。これでは顔が見えないぞ」

不二咲「うっ…うう…」

石丸「泣いていても仕方が無い」

石丸「僕と話をしよう。これから僕たちがどうすればいいのか話そうではないか」

不二咲「……うん」

石丸「…よし!その調子だ!まずは顔を拭きたまえ。女子がそのような顔をしていては…」

朝日奈「はい。不二咲ちゃんこれ使って。濡れタオルだよ」

不二咲「あ、ありがとう」

朝日奈「どういたしまして」

石丸「…僕は察しの通り、誰かを思いやるという行為が苦手だ!だから単刀直入に聞く」

石丸「兄弟と何があったのかね?」

497: 2013/10/08(火) 22:32:46.05
不二咲「……」

朝日奈「…不二咲ちゃん大丈夫?」

石丸「答えてくれないか不二咲君。君しか何があったのか知っている者はいないんだ」

不二咲「……」

石丸「…では質問を変えよう。何故、言えないのか教えてくれないか」

不二咲「…僕の、秘密が関わってるんだ…」

石丸「…やはり秘密、か」

朝日奈「ね、ねえ石丸。無理に聞かなくてもいいんじゃない?不二咲ちゃんだって辛いことがあったばっかりなんだからさ!」

石丸「……」

不二咲「……」

朝日奈「ねえ?」

石丸「ではそこを避けて事情を話してくれ」

石丸「…しかし先に言っておくぞ不二咲君。遅かれ早かれ、犠牲者が出なければ君の秘密は最悪の形で暴露されることになるだろう」

不二咲「うん…」

石丸「…やはり今、この場でいう気にはなれないか?」

不二咲「……」

朝日奈「ちょっと石丸…」

498: 2013/10/08(火) 22:33:42.98
不二咲「…きっと、軽蔑される…」

石丸「…誰に?」

不二咲「…みんなにきっと気持ち悪いって思われるよぉ…」

不二咲「それが、恐い…」

石丸「……君は、体を鍛えたいのだったな」

不二咲「……え?」

石丸「兄弟が言っていたではないか。あの時の君の目は輝いていた。目標を見つけ、まえに進むことを決めた者の顔だった」

不二咲「……」

石丸「あのタイミング…ということは「体を鍛える」ということが何か秘密に関係あるのだろう?」

石丸「君は秘密の暴露という恐怖を乗り越え、前に進んだ。…ということは、その秘密とやらはすでに君の中では過去の物なのではないだろうか」

石丸「乗り越えたのであれば、何ら恥ずかしがることはない。むしろ過去を乗り越えたことを誇るべきだ!僕はそう思うぞ!」

不二咲「……」

石丸「…僕にも、打ち明けてくれないだろうか」

不二咲「う……」

石丸「確かに僕は偏見の塊で、兄弟のように頼りがいがあるわけでもなく、他人の気持ちも推し量れない情けない男であるだろう」

不二咲「そ、そんなことないよぉ!石丸君は真面目だし、意思も僕と違って強いし…何より、男らしいよぉ…」

石丸「…ならば君が兄弟に打ち明けたように、どうか僕にも苦しみを分けて欲しい。こんなに頼りない人間ではあるが、僕も君を支えたいと思っている」

499: 2013/10/08(火) 22:35:37.48
不二咲「……笑わない?」

石丸「笑わない」

不二咲「…失望したりしない?」

石丸「するものか」

不二咲「ほ、ほんとぉ?」

石丸「無論だ!心から誓う」

不二咲「わ、わかった…じゃあ言うね…」

不二咲「ぼ、僕…」

石丸「うむ」

不二咲「ぼ、僕は…」

朝日奈(頑張れ!)

桑田(行け不二咲!)

500: 2013/10/08(火) 22:36:35.15
不二咲「男なんだ!」






桑田「what?」

石丸「そうかそうか…何?」

朝日奈「へ?」

不二咲「あ…ああ…言っちゃったよお…」

桑田「いやいやまてまてありえねえってちょっとまて」

石丸「あ…あ?おと…おと、乙女の間違いではないのかね…」

朝日奈「えーっと…え、あれ?」

不二咲「し、信じて…嘘なんて言ってないよぉ…」

石丸「そ、そうだな!不二咲君は勇気を振り絞ってくれたのだ!嘘なんてつくはずがな…い?むむむむむむ…」

桑田「いやまってマジでまっちょ、え?男?ついてんの?え?どこに?」

朝日奈「あ、あれ?おかしいな?男の子?なんで?」

501: 2013/10/08(火) 22:37:13.13
不二咲「…えっと、石丸君、手を貸して」

石丸「は、はい!」

不二咲「…ほら、胸ないよ」ペタ

石丸「う、うわああああああふ、不二咲君!胸、胸が!胸がああああああ」

石丸「は、破廉恥だぞ!い、異性に胸を触らせるなど!」

不二咲「異性じゃないよぉ…」グス

朝日奈「こ、こここら!二人とも!不二咲ちゃん泣かせないでよ!」

桑田「お、オレのせいかよ!」

不二咲「ぼ、僕のせいでまたケンカが…」グスグス

石丸「やめたまえ二人とも!不二咲君が困っている!」

桑田「うるせえ!一番テンパってるやつが偉ソーな口聞くんじゃねーし!」

不二咲「…あ、そうだ。アレを見せれば信じてもらえるよね」

桑田「アレ?」

石丸「あれとは?」

朝日奈「…まさか!」

502: 2013/10/08(火) 22:38:11.50
不二咲「…こっちに来て、みんな」

朝日奈「ままままままぱ、パス!パス!流石にそれはちょっと!」

桑田「ええええ?!そこ?そこで降りんのお前!」

朝日奈「だ、だってアレでしょ!女の子が見るのはマズイよ!」

桑田「お前が行けよ!万が一女だったらどーすんだ!オレ等変態扱いされんじゃねーか!」

朝日奈「男の子だったらどうすんのさ!」

石丸「わかった。行こう」

桑田「うわあやめろ石丸!」

朝日奈「まって!まって!」

石丸「待たない。不二咲君の覚悟を無駄にしてはいけない」

桑田「お前これから何みせられんのかわかってんのか?」

石丸「わからない!」

桑田「じゃあ黙ってここにいろよ!」

石丸「なぜだ!」

桑田「何故も糞もねーよ!男か女かわかるものっつったら一つだろうが!」

503: 2013/10/08(火) 22:40:59.60
石丸「…なるほど!」

桑田「やーっとわかったか」

石丸「なおさら君たちが躊躇する意味がわからないぞ」

朝日奈「なんで?!」

桑田「何と勘違いしてんだテメェ!」

石丸「何って…生徒手帳だろう!」

朝日奈「へ?」

桑田「生徒手帳?」

不二咲「お待たせ。持って来たよう」

石丸「やはり生徒手帳か」

不二咲「うん。…ここ、見て」

桑田「性別…男」

朝日奈「あ、ああ…しっかり載ってるね」

桑田「なんだよ…オレ等がアホみてえじゃねーか…」

朝日奈「というかバカそのものだったね…」

不二咲「?」

504: 2013/10/08(火) 22:42:10.34
石丸「これでは疑う余地がないな…あのような大口を叩いて疑うことをしてすまなかった。不二咲君」

不二咲「ううん。仕方ないよ」

不二咲「…で、僕のことどう思ったのかな…」

石丸「驚いたぞ」

不二咲「うん。それで…?」

石丸「とても驚いたぞ」

不二咲「う、うん。それで?」

石丸「本当に驚いた」

桑田「それだけかよ!」

石丸「…正直なことを言わせてもらうとまだ理解が追いついていない。君が男だと言われても実感が無いというのが本音だ」

不二咲「……」

石丸「だが、打ち明けてくれたことは正直に嬉しい。難しいが、正面から受け止められるよう努力する。今僕にできるのはそれくらいだ」

不二咲「…今僕は女装をしているんだけど…どう思う?男の子が、女の子の服を着るってことにどう感じるかな?」

石丸「何か事情があってのことではないのかね?」

不二咲「…事情なんて、ないんだ。僕は…逃げただけなんだ…」

石丸「逃げた?」

505: 2013/10/08(火) 22:43:51.99
不二咲「む、昔から体が弱くて…女々しいとか、女っぽいとかバカにされてて…それが嫌で逃げたんだ…」

不二咲「最初から女の子の格好をしていればそんなことは言われないから…守ってもらえるから…」

不二咲「だから、逃げた」

石丸「……」

不二咲「な、情けないってわかってても…僕はやめられなかった。女の子でいることが楽だったから…」

石丸「それで、体を鍛えようと?」

不二咲「うん…それで、大和田君に手伝ってもらおうとしたんだ…」

石丸「なるほど」

不二咲「…大和田君に頼りすぎちゃったのかな。だから大和田君怒ったのかな」

石丸「そんな理由であのような行為をしたのであれば僕は兄弟を許さないぞ」

不二咲「……」

朝日奈「不二咲ちゃん、なにか心当たりはない?」

不二咲「……」

石丸「……」

506: 2013/10/08(火) 22:44:43.27
不二咲「わ、わからない…どうしてあんなことになったのかなんて、わからないよぉ」

不二咲「大和田君と体育館に行くまでは普通だったよ。そのあと、みんなを待ってる間に…」

桑田「あ、あの短時間でか?!」

石丸「あの時、何を言い争っていたのだ?」

不二咲「僕は…大和田君に助けてくれてありがとう…って」

石丸「他に何かいったかね」

不二咲「僕よりずっと強いねって…そういうこと、いってたよ」

桑田「ますますわかんねぇな。なんでキレたんだあいつ」

朝日奈「これはもう大和田にしかわからないね…」

不二咲「でも、僕がなにかしちゃったはずなんだ。大和田君が何もなく怒るはずない…」

石丸「…そうとも、言い切れない」

不二咲「お、大和田君はそんな人じゃないよ!」

石丸「閉鎖空間に長時間…皆ストレスが溜まっている…おまけにモノクマの動機…何かの拍子に、ということもありえないわけでは…」

不二咲「そ、そんなあ…そんなこと」

507: 2013/10/08(火) 22:45:16.27
石丸「…いかにせよ、もはや兄弟自身に聞かなければ答えは出ないな…」

石丸「一緒に行こう、不二咲君」

不二咲「む、無理だよぅ…僕なんか行っても…」

石丸「…不二咲君。今回のことで悪いのは誰かね?」

不二咲「え?」

石丸「君を殴ろうとした兄弟か?」

不二咲「う…」

石丸「殴られそうになった君か?」

不二咲「…えっと…」

石丸「殴られた僕か」

不二咲「…わからないよぉ…誰が悪いかなんてわからない…」

石丸「僕もわからない」

不二咲「石丸君も?」

石丸「そうだ。僕にもわからない」

石丸「だから少し安心したまえ。答えが出せないのは君だけではない。僕も同じだ」

508: 2013/10/08(火) 22:46:55.45
不二咲「ふっ…ひっく」

石丸「涙は、止められないかね?」

不二咲「うん…ごめんね…弱くて…」

石丸「涙を流すからと言って弱いわけではない。確かに自分の為だけに流される涙は…弱い」

石丸「しかし誰かの為に流されている涙は…非難されるべきではない。君は、弱くなんてないぞ」

石丸「だから泣きたいのであれば、泣きたいだけ今、泣きたまえ。止める必要など無い!」

石丸「むしろ止めようと無理をするから少しずつ溢れてくるのだ。いっそのこと全部出したまえ!スッキリするぞ!」

不二咲「う、うん…」ピタッ

石丸「…何故止めてしまうのかね?遠慮はいらないぞ。さあ泣きたまえ!」

不二咲「泣こうと思ってるのに…止まっちゃったよ…」

石丸「しかし辛そうだ」

不二咲「でも出ない…」

石丸「いや、後に引かないためにも、出し切ってしまうべきだ!泣きたまえ!」

不二咲「…ひっく、出ないよぉ…」

石丸「ガンバだ!」

不二咲「う…ううっ」

509: 2013/10/08(火) 22:47:53.91
桑田「泣くことを強制すんなアホが」

朝日奈「とりあえずお腹すいたし何か食べにいかない?」

不二咲「む、むむ…」ジワ…

不二咲「で、出たよ石丸君!」

石丸「そのいきだ!」

桑田「だからやめろこのアホが!」ペシッ

石丸「ぼ、暴力はいけないぞ!やめたまえ桑田君!」

桑田「これはツッコミっていうんだよ!バーカ!」

石丸「な、なんと!…これがあのツッコミか…つまり僕はボケ…ここからどんなリアクションを取ればいいのだ?」

桑田「いるかアホが」

石丸「なんでやねん」ペチ

桑田「お前こそなんでやねん!」ベシッ

石丸「なるほどキレが違う…」

桑田「もうコイツやだ…」

朝日奈「バカやってないで食べに行こうよー」

不二咲「……ふふ。楽しそう、だねぇ」

朝日奈「えーそう?バカやってるようにしか見えないよー?」

不二咲「…いいなぁ」

桑田「もーいいから行くぞ。腹減ってしょうがねえ。つーかまだオレまともに食ってねえ」

石丸「…ではいくぞ、不二咲『君』」

不二咲「…うん。そうだね。ありがとう石丸君…」

510: 2013/10/08(火) 22:51:14.94
以上です
それではまた

511: 2013/10/08(火) 22:57:07.14

512: 2013/10/08(火) 23:00:39.90

引用元: 石丸「そして僕はまた間違える」