石丸「いただきます」

不二咲「いただきます」

朝日奈「いっただっきまーす!」

石丸「む?桑田君はどこかね?」

不二咲「あれ?いないねぇ…」

朝日奈「まだキッチンじゃない?なんか作ってたよ?」

石丸「そうか」モグモグ

不二咲「……」モグモグ

朝日奈「おいしー」

セレス「あら、みなさんお揃いで、どうしましたの?」

石丸「やあセレス君。いろいろあって食事をとっていなかったのでな。今更食べている」

セレス「そうですか。ところで山田君はご存知ありませんか?」

石丸「山田君なら二階で会ったが…何処かに行ってしまった」

セレス「そうですか。…これでは紅茶が飲めませんわ」

石丸「自分で淹れればいいではないか」

セレス「わたくしはそんな肉体労働はしたくありませんの」

石丸「そ、そうか…」
でふぉめmini ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 THE ANIMATION SIDE A ガチャ タカラトミーアーツ(全5種フルコンプセット)
518: 2013/10/11(金) 01:43:40.82
セレス「では、ごきげんよう」

セレス「……」

石丸「…どうしたのかね?」

セレス「…いえ」

石丸「ぼ、僕は紅茶などはいれたことがないぞ!」

セレス「誰もあなたに期待なんてしてませんわ」スタスタ



桑田「でぇーきたー!」

不二咲「あ、帰ってきたよ」

桑田「くぅうううう!久々の肉!肉!ステーキ!」ジュワアアアアアア

朝日奈「うわ分厚っ?!それもしかして置いてあった奴?」

桑田「そうだよ!あの霜降り肉見てからずっとステーキにしてえと思ってたんだよ!」

石丸「な、中まで焼けてないぞ?しっかり調理はしたのかね?!」

桑田「こういう焼き方なんだって!」

不二咲「僕の顔位ある…お、おっきいねぇ…食べられるの?」

桑田「当たり前だろ!ここんとこ殆どまともに食ってねえんだから!」

519: 2013/10/11(金) 01:44:25.32
石丸「…確かに美味しそうではあるが…脂っこくはないかね?野菜も取らなければバランスが悪いぞ!日本人の胃腸は欧米式の食事よりも…」

桑田「いいんだよ!肉だよ肉!とにかく肉!サーロイン!」

桑田「この肉汁!塩ふっただけの漢の料理!臭いだけで飯食えそうな肉臭!たまんねー!」

朝日奈「あ、あのさあ…もう少し胃にやさしいのにしといた方がいいんじゃない?碌なモン食べてなかったんでしょ?」

桑田「なんだよ!羨ましいのかよ?やらねーぞ!コレはオレのもんだよ!」

朝日奈「いやお肉腐る程あるしいらないけどさ…」

桑田「いただきまーす!」ガプ

石丸「こ、こら!ちゃんと切り分けて食べたまえ!行儀が悪いぞ!」

桑田「もがもがもごもご」モグモグ

石丸「口を開けて喋らない…というかそれは口は閉じられるのかね?!まるでハムスターのようだぞ!」

不二咲「や、野生的だぁ…」

朝日奈「カッコ良くないからね。汚いからね。真似しちゃだめだよ不二咲…君」

不二咲「で、でもちょっと憧れるかも…」

石丸「いや!しっかり噛んでキレイに食べる方が日本男児らしいぞ不二咲君!」

不二咲「確かに今の僕ができるのはこっちかも…」

石丸「では米粒一つ残さないで食べるぞ!」

不二咲「うん」

520: 2013/10/11(金) 01:45:11.77


石丸「ごちそうさまでした!」

不二咲「ごちそうさまでした」

朝日奈「ごちそうさま!ふーお腹いっぱい…」

石丸「食べてすぐに寝るとブタになるぞ!」

朝日奈「牛でしょ?!ってか女の子に言っていいセリフじゃない!」グイ

石丸「ひゃめてふれたまへ…ふまなはっは…」

朝日奈「もー!」

桑田「ぶー、じゃなくてか?」

朝日奈「桑田…?どう意味かな…?」

桑田「何でもないです」モグモグ

石丸「さてどうするか…」

不二咲「……う」

石丸「辛そうだな不二咲君」

不二咲「が、頑張って食べたけどお腹辛いよぉ…」

石丸「ではしばらくここにいよう」

不二咲「いいの?」

521: 2013/10/11(金) 01:45:47.52
石丸「どうせ兄弟はどこにも行けない。時間もまだある。…今は君の回復が先だろう」

不二咲「ごめんねぇ…」

石丸「別に謝ることでは無いだろう」

不二咲「でも…」

石丸「謝らなくてもいいことで謝っても、むしろ相手の怒りを煽ってしまうだけだぞ!」

不二咲「ご、ごめんなさい…」

石丸「い、いや僕は怒ってないぞ!怒ってしまう人もいるのではないかということだ」

不二咲「…どうすればいいのかな。わかってても謝っちゃうんだ…」

石丸「客観的に判断するのはどうだろうか?」

朝日奈「それができたら簡単だよ。できないから謝っちゃうんだからさ」

石丸「それもそうだな…」

朝日奈「簡単な解決法があるよ」

不二咲「な、なに?!」

朝日奈「自信をつけるんだよ!自信が持てたら相手に怯まなくなって、無駄に謝っちゃうってことが減るよ」

不二咲「じ、自信かぁ…で、できるかなぁ…」

石丸「前々から思っていたのだが、君は自己評価が低すぎではないかね」

不二咲「そ、そうかな」

522: 2013/10/11(金) 01:46:39.78
石丸「朝日奈君のいう通りだ。今の君の悩みは全て自信がないという事に集約されている」

石丸「…君には誇るべき能力があるだろう。プログラムのことは僕にはよくわからないが」

不二咲「でも僕、それしかできないんだ。ほかは全然駄目…」

朝日奈「苦手なことがあるなんて当たり前だよ」

不二咲「で、でも…」

石丸「不二咲君は規則正しい生活を送っているし、性格もいいし優秀だ。間違いなく模範となりうる高校生だ。それだけでも評価されるべきだと僕は思うが」

不二咲「そんなことないよぉ…石丸君の方が凄いよ」

桑田「そうやって…謙遜ばっかしてっと…嫌味に聞こえんぞ…」ゲプ

不二咲「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃないんだ…」

朝日奈「桑田…なんでこのタイミングでそーいうこというの…」

石丸「その言い方はよくないが一理あるぞ」

朝日奈「酷い逆ギレだけどね」

石丸「言葉には力がある。普段の発言、行動のの積み重ねが自分を作るのだ。弱気な発言ばかりだと本当に弱くなってしまう」

不二咲「うん…」

石丸「腐川君を見たまえ。自分を貶し続けていると、ああなってしまうぞ」

朝日奈「そこでクラスメイトを例に出すあたり容赦無いよね石丸も。…まあ、いい例だけどさ」

石丸「だから自分を貶すようなことをいうのはやめたまえ。君は優秀だ」

不二咲「うん…」

523: 2013/10/11(金) 01:47:15.98
石丸「胃はそろそろ平気かね?」

不二咲「うん。落ち着いたよ」

石丸「では食器を片付けて…」

桑田「待ってくれ…」

不二咲「どうしたの?桑田君」

桑田「気持ち悪くて氏にそー…」

朝日奈「あーあ…いわんこっちゃない」

桑田「やべえ…なんかやべえ…」

桑田「なんかこう…やべえ…」

石丸「…やべえではわからないぞ」

朝日奈「絶対胃もたれだよ。あんなステーキ無理やり食べるから」

石丸「胃が受け付けなかったのだな…」

不二咲「胃薬って倉庫にあるかなあ…?」

石丸「見にいくしかないな…」

524: 2013/10/11(金) 01:47:48.93


石丸「そっちはどうかね不二咲君!」

不二咲「こっちには無いみたい…」

朝日奈「もー桑田の奴!こんな時に世話焼かせてー」

石丸「いいではないか。よくよく考えれば桑田君は今日部屋から出たばかりなのだ」

朝日奈「わ、わかってるよ……そうだよねぇ…まだ、半日なんだよね」

不二咲「なんだかいろいろあって一日が長く感じ…あった!」

朝日奈「え?ほんと?」

石丸「お手柄だぞ不二咲君!」

不二咲「これで桑田君も大丈夫かなぁ」

石丸「では朝日奈君はこれを桑田君に頼む。僕はここを片付けて行こう」

朝日奈「わかった」タタタ

石丸「では片付けるぞ!不二咲君」

不二咲「うん!わかった。がんばるよ!」

525: 2013/10/11(金) 01:48:24.19
ガタ

石丸「物音?」

不二咲「えっ?」

大和田「なっ…」

石丸「兄弟!」

不二咲「大和田君!」

大和田「クッ…」ダッ

石丸「お、追いかけるぞ!」

不二咲「う、うん!」



大和田「な、何で追ってくんだよ!クソっ」

朝日奈「ちょっとあぶな…大和田?!」

大和田「食堂は先客かよっ…」

朝日奈「あっ待て……さくらちゃあーーーーん!大和田とめてええええええ」

大和田「なっ…そりゃ卑怯だろうが!」

朝日奈「うるさい!」

石丸「待ちたまえ兄弟!」

不二咲「ま、まってえええっ」

526: 2013/10/11(金) 01:49:07.59
大和田部屋前

大和田「くっそ!どきやがれ!大神!」

大神「退かぬ」

大和田「俺の部屋だろうが!」

大神「我はここを退かぬ。朝日奈にお前を止めろと頼まれたのでな…」

大和田「チッ…」クルッ

大神「すまぬ」サッ

大和田「うおっ?!」ドサッ

大神「すまぬ…」

大和田「すまぬじゃねーよ!足引っ掛けやがって!」

大神「そろそろ逃げるのもやめぬか。みっともない」

大和田「うるせえ…」

大神「来るぞ…ぬしの仲間が…」

大和田「来るんじゃねえよ…」

大神「…それは無理だ。友が苦しんでいる時、駆けつける…それが親友というものだ」

大神「腹を…くくれ」

大和田「クソクソクソ…」

527: 2013/10/11(金) 01:50:37.78
石丸「兄弟!」

不二咲「大和田君!」

大和田「っつ…!」

石丸「捕まえたぞ!」ガシッ

不二咲「捕まえたよぉっ!」ギュッ

大神「もう…離すでないぞ。石丸、不二咲」

石丸「無論だ!協力感謝する!」

大神「…それでは我は行こう。大和田よ、わかっているな…?」

大和田「……」

大神「…健闘を、祈る」





石丸「…兄弟」

大和田「……」

石丸「兄弟」

大和田「……」

石丸「……いいかげんにしたまえ!」

不二咲「きゃっ!?」

528: 2013/10/11(金) 01:52:25.51
石丸「何を黙りこくっている!それでは何もわからないぞ!僕たちが何のために君を捕まえたと思っているのだ!」

大和田「……」

石丸「君が何故、あのようなことをしたのか?何があったのか?何が辛かったのか?僕たちには聞く権利がある!違うか!」

大和田「……っ」

不二咲「お、大和田君。もし、僕が大和田君を傷つけるようなことをしてしまったのなら、教えて欲しいんだ…」

大和田「やめろ…」

石丸「答えたまえ!僕たちと、話をしたまえ!」

大和田「やめろ!」

不二咲「僕、頑張るから!大和田君に迷惑かけないようにするから、だから…」

大和田「やめろっつってんだろうが!」

石丸「やめるものか!」

大和田「…っ!」

石丸「…思えば、あの時。あの時しっかり君と向かい合っていればこんなことにはならなかったのかもしれない」

大和田「あの時…だと?」

石丸「そうだ!僕と君が、初めて喧嘩をした、あの時だ!」

529: 2013/10/11(金) 01:53:03.93
石丸「僕はあの時、君と真に友になれたと思っていた…だが、違ったのだ」

大和田「何…?」

石丸「君は、何一つ!僕に打ち明けてくれてはいなかった!君が何に傷ついたのか?何を抱えていたのか!僕と言い争い何を思ったのか!」

石丸「君と友として真に対話し合うこともせず、ただ気楽さだけを啜り、時を過ごした結果がこれだ!」

石丸「あと少しでも状況が違えば、僕たちはあの時、あの場所で終わっていた…氏んでしまっていたのだぞ!」

大和田「それは…」

石丸「ここまで来てまだ逃げる気なのかね…?僕から」

石丸「腰を引くな。こちらを向きたまえ。会話は、相手の目を見てするものだ」

石丸「さあ、答えたまえ!君は、何故あのようなことをしたのかね!?」

大和田「それはー」

『ぴんぽんぱんぼーん!』

石丸「なに?!」

『オマエラ、突然ですけどお知らせです』

不二咲「えっ…」

『何かもうだるいんで、ちょっと早いけどー」

『今から秘密の暴露大会、始めちゃいたいと思いまーす!』

534: 2013/10/13(日) 23:33:44.24
『誰から行こうかなぁ?とりあえず自分からバラした人たちから行こうかなー空気読めてないよね。なんで自分からバラすかな』


石丸「ど、どういうことだ?!まだ時間まで一日以上もあるんだぞ…!」


そこで僕は同意を得るように二人に振り向く。
…そこにいたのは、真っ青になりながら微かに震えている二人だった。

石丸「ふ、二人とも…」

不二咲「……」

大和田「……っ!」カチャ

石丸「?!」ガッ!

大和田「なっ…」

石丸「…痛っ。まだ…閉めるな!…行くぞ、不二咲君!」

不二咲「えっ?」


自室に逃げようとした兄弟ごと抱え込みながら、不二咲君とともに兄弟の部屋に飛び込んだ。
外では落ち着いて話が、できない。

ドアに挟まれた足と、強引に動かした手が痛いが気にしていられない

535: 2013/10/13(日) 23:36:00.42
『時間通りじゃないって思ってる人もいるかもしれないけどさー世の中予定通りに行くことの方がすくないんだよね』

『予定は未定ってこと!まあ変更の理由としては早々に事態が収集されちゃいそうでもうこの動機にあんまり価値を見出せないからってのが本音なんだけどねー」

『それではドキドキの暴露大会いってみよう!』

『とりあえずツマンナイ奴まとめていくよー!』


これから、心の処刑が始まるのだから






朝日奈「ど、どういうことなの…?時間までまだ一日以上あるんだよ?!」

桑田「こ、これさぁ…ヤバイんじゃね?」

大神「朝日奈よ」

朝日奈「さくらちゃん!ね、ねえ!これどういうこと?!」

大神「落ち着くのだ朝日奈」

朝日奈「で、でも!」

大神「おぬしに話したいことがある…」

朝日奈「え…?」

536: 2013/10/13(日) 23:37:11.09
大神「二人で話がしたいのだ…来てくれぬか?」

朝日奈「……」

桑田「いってこいよ。オレのことなんて気にすんな」

朝日奈「ありがと桑田。…じゃあさくらちゃん、行こ…」

大神「すまぬ桑田」

桑田「…頼むから誰も変なことすんなよ…」

桑田「つーか一人かよ…葉隠のアホはどこ行ったんだよ…あークソっ!」









苗木「開けて!開けてよ舞園さん!」

霧切「苗木君!」

苗木「霧切さん!どうしよう!舞園さんが返事をしてくれないんだ!」

霧切「落ち着くのよ苗木君!あなたが慌ててどうするの」

苗木「でも!舞園さんが、これを一人で聞いてると思うと…」

霧切「だからって騒いでも意味がないわ」

537: 2013/10/13(日) 23:39:34.97

苗木「じゃあ声もかけないの?!」

霧切「そんなこと言ってないわ!」

苗木「じゃあどうしろっていうんだ!」

霧切「落ち着きなさい!そんな荒げた声では意味がないわ!」

苗木「……」

苗木「開けて、開けてよ、舞園さん…」



『開けて、開けてよ、舞園さん…』

舞園「…………」

舞園「…………」








『ふー!なかなか喉がつかれるなあ…盛り上げるためだから仕方ないけど!』

石丸(朝日奈君、桑田君、十神君、葉隠君、山田君、そして僕の秘密が発表された…)

石丸(今回発表されたのはおそらく、秘密を発表されても特に問題のない者たち…ということは次は…)

539: 2013/10/13(日) 23:40:57.86
石丸(兄弟…不二咲君…)チラ

不二咲「……」

大和田「……っ」

石丸「だ、大丈夫だぞ二人とも!状況は皆同じだ!」

不二咲「うん…」

大和田「……」

石丸「…………」

石丸(な、何を僕は二人に話せばいいんだ…)









『じゃあ次!えー「やすひろさんは、餃子が好き!あといろんな人を辛い目に合わせてる!」だね』

山田「餃子…?」

セレス「これが秘密…?随分と人により差がありますのね。秘密の質も数も違うようですわ。随分と適当ですこと」

山田「やすひろ…?」

セレス「どうしました?山田君。葉隠君の好物にそこまで興味がおありなのですか?」

山田「……」

山田「セレス殿…」

セレス「…なんでしょうか」

山田「餃子が好きだったり…しませんかな」

セレス「………!?」

540: 2013/10/13(日) 23:41:56.51




『えー次ー「ジェノサイダー翔の正体は腐川冬子」』

腐川「あ、あああああああっバレた…バレたわ…おしまいよ…おしまいよぉ!」

十神「うるさい黙れ」

腐川「殺される…殺されてしまうんだわ…殺人鬼は[ピーーー]って…殺される」

十神「黙れ。誰が好き好んで殺人鬼に近づくものか」

十神「そもそもモノクマにバラされる以前に貴様の正体は割れている」

腐川「え?…ど、どうして…」

十神「自ら石丸の前でくしゃみをしてジェノサイダーになっていた」

腐川「…………!」ドサッ

十神「気絶したか…やっと静かになったな」




『はい次は江ノ島さーん「顔も胸もCGで盛りまくっててもはや別人レベルの域。趣味も実に残念」んー秘密ですら残念な人だね江ノ島さんはい次』

『霧切さんは「手がグロ注意レベルの火傷」ツマンネはい次』

541: 2013/10/13(日) 23:42:33.92
『不二咲君はー』



不二咲「っ!」

石丸「不二咲君…」

不二咲「大丈夫…だよね?みんな…僕のこと嫌ったり…しないよね?」

石丸「…も、もちろんだとも…」


『不二咲君は男の子…つまりは男の娘なのです!』

石丸(何故わざわざ二回も繰り返すのだ…!)

不二咲「ふ、ふえ…」

石丸「な、泣くんじゃないぞ不二咲君!君は乗り越えたのだ!」

不二咲「…う、うん…」

石丸(不二咲君が終わった…ということは次は)


『こいつもくだらないからちゃちゃっと行くよぉー』

542: 2013/10/13(日) 23:43:13.27
『えっとー大和田君はー』


石丸「…兄弟…?」

大和田「兄貴…俺は終わりだ…」

石丸「兄弟しっかりしてくれ…」

大和田「兄貴…すまねぇ…」

石丸「落ち着いてくれたまえ…」

大和田「…落ち着いてるだろ」

石丸「大丈夫か?」

大和田「………おう」

石丸「……大丈夫だ」

大和田「何がだよ」

石丸「大丈夫だ…」

大和田「…………」


僕は兄弟を元気付けられるような言葉を思いつけなかった。
部屋の空気を埋めて行くように「大丈夫だ」とつぶやくことしかできなかった。
その言葉は誰に向けられているのだろうか。僕にはわからない。
そして、運命の時は来る。

543: 2013/10/13(日) 23:44:16.94


『大和田君はお兄さんを頃しました。しっかもー』



横目に頭を抱える兄弟が見えた。
反対側には顔を覆って嗚咽を漏らす不二咲君がいた。
僕は

僕はどうすれば


『お兄さんが氏んだことに乗っかってチーム纏めるとか結構セコいことしてるねぇーまあ、所詮はちゃちい暴走族だもんねぇーはい次ー!』


兄弟にとって人生を揺るがす一大事であっただろう出来事はなんでも無いことのように流された。
あまりにあっけが無さすぎて、終わったように感じない。
しかし今はもう苗木君の名が流れていた。



不二咲「酷い…酷いよぉ…あんな言い方…」

大和田「兄貴…兄貴ィ…すまねえ」

石丸(兄弟は本当にお兄さんを殺害したのか…?)

石丸(…いや、頃していない筈だ…兄弟の、あの苦しみ方は殺害をしたからでは無い筈だ)

石丸(弱気になるな…今二人を支えられるのは…僕、だけなのだぞ)

石丸(弱気に……)

544: 2013/10/13(日) 23:45:06.31
石丸(僕に…何ができるだろうか)

石丸(何が、できるというのか)

石丸「くっ…う、うううっ…うう…」

大和田「兄弟……?」

石丸「うわああああああっ」ブワ

不二咲「石丸君?」

石丸「僕は無力だ…」

大和田「兄弟…」

石丸「何も、何もできない…」

大和田「……」

不二咲「……」

石丸「何故だ!何故僕はこんなにも…こんなにもっ!」

石丸「何も…できない!」

石丸「う、うう…う」

不二咲「そんなことないよ…石丸君は僕のことを元気にしてくれたよ!」

石丸「僕一人ではできなかった…桑田君が、舞園君が、皆がいなければ僕は掛けるべき言葉も見つけられなかったのだ!」

545: 2013/10/13(日) 23:45:43.27
不二咲「それでも、それでも僕は嬉しかったよ!」

石丸「しかし…しかし!」

石丸「僕は今、兄弟にかける言葉すらも見つけられないのだ!」

大和田「……」

石丸「力になりたいのだ…だが僕には…」

大和田「もういい」

石丸「何がいいんだ!何も良くないぞ!」

大和田「顔拭け」

石丸「す、すまない…」ズルズル

大和田「すまねぇ…そこまで追い込んじまって…」

石丸「兄弟?」

大和田「俺は…なんてことをしちまったんだかな…」

大和田「…今からでも俺の、話を聞いてくれるか…?」

不二咲「……」


そこから、静かに兄弟は話し始めた。
硬く握り込んだ拳に額をつけて、祈るように、懺悔するかのように。
兄のこと、暴走族のこと、自分のこと、僕とのこと、不二咲君とのこと。
心に任せた言葉はまるで文章になっていなかったが、彼の苦しみはまっすぐに、僕たちの心へと流れ込んで来た。

彼が話し終えた後、交わす言葉も見つけられずに、ただ僕たちは抱えあって静かに泣いていたー



546: 2013/10/13(日) 23:46:11.66



『舞園さやかは人頃しである!』


そのあとの言葉は届かなかった
その一言だけで私は殺されたから
すべて全て全て、終わった
今までの人生をかけて求めたものも
仲間とともに得たものも
これから追い求めようとしたものも、全て

無くしてしまった


舞園(これから、どうしましょうか)

舞園「もはや外に出ても…仕方がありませんね」

舞園(いっそのこと、苗木君とここでずっと暮らしましょうか。それもいいかもしれませんね)

舞園(自業自得なのですから、真摯に受け止めなくては…真摯に…)

舞園(……)

舞園(…そんなこと、できるわけない)

547: 2013/10/13(日) 23:46:43.86
舞園「返して…」

舞園「返して…返して返して返してよぉっ!私の、私の夢を返してええええっ」

舞園「どうしてこんなことに、なんで、なんでなんでなんでなんでっ!」

舞園「なんで…」

舞園「やりたいことがあるんです…やらなきゃいけないことがあるんです」

舞園「今までに蹴落として来た人たちとか、犠牲にしてきたこととか!」

舞園「もう後戻りできないところまで来たんですよ…」

舞園「まだまだ前に進めたのに…進めるのに!」

舞園「どうして…どうしてこんなこと!」

『自分でしたことでしょう?』

舞園「……」


唱え続けて自分に染み込ませた言葉が頭に響く


『あなたが全部自分でしたことです。自業自得です』

『何を他人のせいにして、逃げようとしているんですか?』


舞園「ああ…」

548: 2013/10/13(日) 23:47:20.14
『あなたはシンデレラではないんですよ。勘違いをしてはいけません』


苗木『舞園さん!開けて、開けてよ!返事をして!』

霧切『返事をして舞園さん!あなたは今一人でいるべきではないわ!開けなさい!』


舞園「苗木君…霧切さん…」

『虐げられているのではないんです。当然の報いなんです』

『そっちにいってはいけませんよ?どうしてかはわかりますね?あなたは…』


舞園「あな…たは、犯罪者…その場所にいる権利なんて…ない。忘れてはいけない」


舞園「苗木君…」




549: 2013/10/13(日) 23:48:05.56


石丸「兄弟…ありがとう。話してくれて…」

大和田「俺は…俺はまた…間違うところだった…マジでどうしようもねぇ」

不二咲「ううん。僕も、僕も無神経なことをいってしまってごめんなさい」

大和田「不二咲は悪くねぇ…悪りぃのは俺だ。ンなもん誰がみても分かる」

石丸「本当に皆無事で良かった…また、こうやって話し合えて…本当に」

大和田「…怪我はどうなんだよ」

石丸「なに、この程度…いっ?!さ、触らないでくれ不二咲君!」

不二咲「痛そうだよお…真っ赤…」

大和田「冷やすもんいるな…とってくるわ」

石丸「では僕も…」



『あっ言い忘れてたけどー』

『君たちの中に裏切り者がいるから』

『誰だかわかるかなぁ?答えはまた明日!』

550: 2013/10/13(日) 23:48:48.03
石丸「…今、なんと?」

大和田「どういうことだ!?今のふざけた放送は何なんだよ!」

不二咲「僕たちの中に…裏切り者?」

石丸「…………」





聞こえない筈なのに、すべての場所が静寂に包まれたのを感じた。


一難去ってまた一難
何も終えられていないのに、僕たちは強引に次のステージへと引き上げられたのだった。







…不二咲編 end

567: 2013/10/18(金) 00:22:35.69
「聞いて、アルターエゴ」

『どうしたのご主人タマ?』

「昨日はね…大変だったんだよ」

『どんなことがあったの?教えて、ご主人タマ!』

「うん。えっとね…」

………
……







『よかったぁーご主人タマも、みんなも、無事で』

「大和田君も苦しんでたんだね。石丸君も、辛かったんだね。…そう思うと僕も少し、楽になれた気がするよ」

『なんだかご主人タマ、前より男の人っぽくなってるかも!』

「そうかな?だったらうれしいな」

ガタ

「……」

『どうしたの?』

568: 2013/10/18(金) 00:24:33.00
「アルターエゴ、スリープモードにして」

『了解。スリープモードに移行するよ。おやすみなさい…』

「…おやすみなさい」パタン

「………」

「誰…」

「……?!」







石丸「……。……朝か」

石丸(やっと一日過ぎたのか…)


昨日モノクマの放送が終わった後、僕たちはしばらく動けなかった。
もちろん、互いを「裏切り者」と疑ってのためではない。
この放送を受けて、外がどうなっているのか、確認するのが少し恐ろしかったためだ。

自分たちも多少混乱していたこともあって、しばらくは立ち尽くしていた。
しかしいくらか時が経ち、さすがに状況を確認するために外に出たものの、苗木君が力なく舞園君の部屋の前でうつむき、霧切君がそのそばに立っていることを除けば、そこに人の気配はなかった。

霧切君に話しかけたところ、放送が終わった直後こそ騒ぎがあったそうだが、すぐに皆散り散りになっていったという。
内通者がわからない以上、集団で過ごすべきだという警告を霧切君から受け、僕は三人で兄弟の部屋にそのまま泊まることを提案した。異論は無かった。

怪我人は安静にしていろと兄弟も不二咲君もまるでゆずらなかったため、ベッドはありがたく使わせてもらった。二人の優しさがあたたかかった。


そして今に至る。

569: 2013/10/18(金) 00:25:08.27
早く寝たのでいつも以上に早く起きてしまった。

降ろした足の近くにはいびきをかく兄弟がいた。寝た時には少し遠くにいたはずなのでここまで転がってきたらしい。しかし掛け直されたかのように布団をきれいに被っていた。不二咲君がかけたのだろうか。


石丸(そういえば不二咲君がいない…)

石丸(先に起きたのだろうか…?)

石丸(一人でどうしたのだろうか)

ガチャ

石丸「…流石に誰も起きてな…」


「やめなさい!不二咲君から離れるのよ!」


石丸「……!?」

石丸「今の声は…霧切君?!それに不二咲君…?!」

石丸(ど、どこだ?!ランドリーか?脱衣所か?!)

石丸(とにかく行かねば…!)

570: 2013/10/18(金) 00:25:40.29
石丸(脱衣所の方から声が…)

石丸「何事かね!っだあっ!?」ドンッ

石丸「ぐあっ!」ドサッ

石丸「な、何が…」

??「…………」ダッ

石丸「だ、誰だ君は!」

霧切「追わないで!」

石丸「霧切君!」

霧切「追っては駄目。あなたではどうせ止められないわ!」

石丸「い、今のは一体…」

霧切「間違いないわ、内通者よ」

石丸「何故内通者とわかるのだ!」

霧切「奴は執拗にパソコンを狙っていたもの。脱出狙いの頃しなら真っ先に不二咲君を狙う筈よ。恐らく知られてはまずい物がそのパソコンの中に…」

石丸「…!そ、そうだ!不二咲君は無事か!?」

不二咲「僕はここだよぉ…」

石丸「不二咲君!怪我は!」

不二咲「大丈夫…霧切さんが助けてくれたから」

571: 2013/10/18(金) 00:29:07.39
石丸「一体何があったのだ!一人になってはいけないと昨日言っただろう!」

不二咲「ご、ごめんなさい…パソコンを回収しようと思ったんだ…そしたら突然あの人に襲われて…」

石丸「パソコン?」

不二咲「うん」

石丸「何故そんなものが脱衣所に?」

霧切「待って」

不二咲「え?」

霧切「今は情報を無駄に広めるべきではないわ。まだ近くに内通者が潜んでいるかもしれない」

石丸「霧切君は何か知っているのかね?」

霧切「知らないわ。私は不二咲君の悲鳴が聞こえて駆けつけただけだもの」

石丸「部屋は防音ではなかったか?」

霧切「何があるかわからないから少し開けているの」

石丸「危険ではないか!」

霧切「平気よ」

石丸「だが気をつけろと言ったのは君だぞ!」

霧切「そんなことどうだっていいわ。大事なのはそこじゃない」

572: 2013/10/18(金) 00:29:42.72
霧切「不二咲君。あなたは特に非力なのだから単独行動はやめた方がいいわ。明け方に一人なんて格好のカモのようなものよ」

不二咲「うん。ごめんね」

霧切「私たちの中に潜んで黒幕と繋がっている人がいることを忘れないで。内通者は腕も立つようだから、男子でも一人は危険よ。意識して集団でいなさい」

石丸「…そうだな。その通りだ」

霧切「これで解散よ。出来るだけ心を落ち着けさせておくべきよ。…このあときっと、モノクマから呼び出しがある筈だもの」

石丸「……ああ。では、朝食会で会おう!」







石丸「不二咲君、こんなことはもうやめてくれたまえ。肝が冷えたぞ」

不二咲「うん。心配かけてごめんね」

石丸「…それはそんなに大切なものなのか?」

不二咲「パソコン?…うん。そうだねぇ…多分、大切だよ」

石丸「そうか。では大切に持って帰ろう」

不二咲「うん…」

573: 2013/10/18(金) 00:30:17.32
石丸「…不二咲君。その…襲ってきた人物に…心当たりはないだろうか」

不二咲「…わからないけど、葉隠君ではないと思う」

石丸「…まあ、あの頭であれば確かにすぐにわかるだろうな…」

不二咲「じゃ、じゃなくて!背がそこまで高くなかったなって!」

石丸「背はどの位だったのかね?」

不二咲「僕よりは大きいけど…ずっと腰を落としてたから細かくはわからない…」

石丸「そうか…」

不二咲「ほ、本当に僕たちの中に内通者なんているのかな…」

石丸「……僕はいないと信じたい」

不二咲「…………」

石丸「し、しかしだな!今回のことで、霧切君は内通者でないとはっきりしたではないか!」

石丸「葉隠君より小さいと言うならば十神君、大神君、そしてもちろん兄弟も違うぞ!あと山田君も」

石丸「それに手を怪我している舞園君も違う!」

不二咲「…じゃあ、残りの誰かが…?」

石丸「そ、それは……」

石丸「ひとまず、部屋に戻ろうではないか。きっと兄弟も心配していることだろう」

不二咲「そ、そうだね…」

574: 2013/10/18(金) 00:30:59.39




石丸「兄弟、起きたまえ兄弟!」

大和田「…どうした、なんかあったのか?」

石丸「不二咲君が襲われた」

大和田「襲われ…ああ?!襲われただと!?」

石丸「落ち着きたまえ兄弟!」

大和田「落ち着けって…不二咲!怪我はしてねえのか?!」

不二咲「僕は霧切さんに助けてもらったから大丈夫だよ大和田君」

大和田「襲った野郎は誰だ!」

石丸「顔を隠していた。…霧切君が言うには、内通者だろうとのことだ」

大和田「裏切りモンか…クソが」

石丸「…また、一人になれば襲われてしまうかもしれない。しばらくは共に過ごすべきではないだろうか」

大和田「…おう。そうだな…まさかこんなタイミングで襲ってくるなんて思ってもなかったぜ…」

石丸「いったい…誰なのだ。こんなことをするのは…」

不二咲「……」

575: 2013/10/18(金) 00:31:31.22
大和田「そういや不二咲、なんで一人で朝っぱらから脱衣所なんて行ったんだ?風呂に入りてぇなら俺たちを起こせば良かっただろ」

不二咲「お風呂に入りたかったわけじゃないんだけど…」

石丸「不二咲君はパソコ…むぐっ!」

不二咲「…ご、ごめんね石丸君!」

石丸「むぐむぐむぐ!」

大和田「言えねぇのか?」

不二咲「えっと…あれが…」チラ

大和田「あれ…?」

大和田(…カメラか?)

不二咲(うん。だからここじゃ駄目なんだ)

石丸(なるほど!不二咲君の事情は分かった)

石丸(ここではない何処かで…ということだな)

不二咲(うん)

石丸「わかった。では気分でも変えて風呂にでもいこうではないか!…ん?」

大和田「どうしたよ」

石丸「そのまえに朝食会の時間だ!まずは食堂へ行こう!」

大和田「お、おう」

576: 2013/10/18(金) 00:33:10.09
食堂

石丸「皆!おはよう。グッモーニン!だぞ」

不二咲「おはよう」

大和田「…………よぉ」

朝日奈「あ、ああおはよ…石丸に不二咲君、それに…大和田も」

霧切「…………」

苗木「…………」

大神「…………」

石丸「…な、なんだね!この静かさは!」

朝日奈「…………」

石丸「きっ君まで黙らないでくれたまえ朝日奈君!」

朝日奈「ごめん…」

不二咲「…………」

大和田「……チッ」

苗木「………」

苗木「…ごめん、霧切さん。やっぱり僕舞園さんのところに行くよ」

霧切「…行ってどうするの?今いっても彼女は応対なんてできないわ」

577: 2013/10/18(金) 00:33:49.39
苗木「…それでも行く。きっと今、舞園さんは苦しんでるから」

霧切「…私も行くわ。一人は危険よ」

苗木「うん。ありがとう。霧切さん」

霧切「…かまわないわ。私も心配だから」


苗木「ごめんね石丸君。折角の朝食会だけどボクは休むね…」

石丸「あ、ああ。かまわないぞ。気にしないでくれたまえ」

パタパタ

石丸「……これは」

不二咲「……」

大和田「どうせ桑田とか葉隠が遅れて来るだろ。飯でも食って待ってようぜ」

石丸「…そうだな!さあ、食事だ!」






桑田「うぃーっす」

石丸「桑田君!よく来てくれた!」ガタッダッ

桑田「うおっ?!何だよその熱烈な歓迎は!やめろ男が笑顔でよるんじゃねえ!気持ちわりい!」

石丸「すまない。思わずうれしくてな…」

578: 2013/10/18(金) 00:34:39.82
桑田「うれしいって……おい何だよこの葬式みたいな空気は」

石丸「流石の僕もいたたまれないのだ…」

桑田「おいどーしたんだよ朝日奈!いつものうるせえ声はどうしたんだよ!」

朝日奈「うるさくなんてないよ…」

桑田「暗くね?」

朝日奈「暗くなんてないよ」

桑田「暗えよ!朝っぱらから何このテンション?」

大神「すまぬな桑田よ…全て我のせいなのだ」

桑田「な、なにしたんだよ大神は」

大神「それは……」

朝日奈「さくらちゃんは悪くないよ」

大神「朝日奈…」

朝日奈「……」

桑田「な、なんだよこれ…おい石丸!この空気いつものKYでぶっ壊せよ!」

石丸「KYとは何だ。物を壊すのはよくないぞ」

桑田「何そのプチKY!そんなんじゃたんねえよ!いつもみたいにもっとやれよ!」

石丸「言っている意味がわからないのだが…」

桑田「あーーもーー!何で二日連続でこんなん?!ハードすぎるっつーの!」

579: 2013/10/18(金) 00:35:35.80
江ノ島「おっはよー」

桑田「うおお江ノ島ァァァア」

江ノ島「え?な、何ちょっと。そのテンション意味わかんなすぎてキモイんだけど」

桑田「この空気がつれえんだよ!通夜かっつーの!」

江ノ島「まああんなことあったらねぇ」

朝日奈「…まさか、モノクマの言ったこと本気にしてるの?」

江ノ島「…何その態度?睨みつけてさ。何で私がそんな風に言われなきゃなんないわけ?」

朝日奈「…ごめん」

江ノ島「別にいいけどさ」

江ノ島「何食べようかなー」

朝日奈「………」

石丸「…江ノ島君」

江ノ島「ん?何?」

石丸「江ノ島君は一人かね?」

江ノ島「そうだけど?」

580: 2013/10/18(金) 00:38:03.37
石丸「一人は危険だぞ。複数でいた方がいい。もちろん桑田君もだ」

桑田「ん?おお。それもそーだなー」

江ノ島「心配しすぎじゃないの?」

石丸「用心するに越したことはない」

江ノ島「私は大丈夫だし」

石丸「何故言い切れるのかね」

江ノ島「一々襲われるかもーなんて考えてたら何もできないっしょ」

石丸「…そんな心構えでは…」



『校内放送でーす!至急体育館へ集まって下さい』



朝日奈「……!さくら…ちゃん」

大神「…我は、平気だ。朝日奈よ」

朝日奈「……」

大和田「来やがったか…」

江ノ島「行かないとモノクマ何するかわかんないし、さっさと行かない?」

石丸「そ、それはそうなのだが…」

桑田「この空気で行くわけ?」

江ノ島「行かなきゃヤバイじゃん。あたし先行くねー」

石丸「待ちたまえ!…行ってしまった」

不二咲「…僕たちも、行かないとだよね…」

桑田「あ、案外なんでもねーかもしれねーじゃん?どうせ行かねーとマジなにされるかわかんねーし!とっとと行かねえ?」

石丸「そ、そうだな……それでは、向かおう」

588: 2013/10/20(日) 23:40:30.42
石丸「…………」

霧切「…石丸君、不二咲さん」

石丸「…霧切君?どうしたのだ?」

霧切「…朝のこと、この場では黙ってなさい」

朝日奈「…朝のこと?何それ」

霧切「多分言いたくなる状況に追い込まれると思うけど…堪えるのよ」

石丸「…どういう意味だ?」

霧切「…奴を油断させるのよ」

石丸「奴…?」

霧切「ここに留まってると不審がられるわ。行きましょう」

舞園「…………」

苗木「…行こっか?舞園さん」

舞園「……」コク

苗木「………行こっか」

石丸「…ああ」

589: 2013/10/20(日) 23:41:47.37



モノクマ「うぷぷぷぷぷっ」

十神「今度はなんだ。どうせ例のつまらん動機なんだろう?早く終わらせろ」

モノクマ「そんな焦らないでよー」

十神「焦ってなどいない。心底下らないと感じているだけだ」

モノクマ「…なんかみんなテンション低くない?盛り上げて行こうぜイエーイ!」

葉隠「盛り上がるわけねーべ…」

モノクマ「…まあね。二回も寸前で止められてちゃねーテンション下がるよねー…」

石丸「僕たちはこんな理不尽に屈したりなんてしないぞ!」

モノクマ「うわぁその言い方もしかして自分を物語の主人公か何かと勘違いしてない?ちょっと雑魚Aは黙っててよ」

石丸「ざっ雑魚A…」

桑田「そこで気落ちすんなよ!言い返せっつーの!」

モノクマ「もーなんかグダグダだなぁ…もちっと気合いいれてみんな!失敗は成功の元だから!」

大和田「成功してたまるかってんだ…!」

モノクマ「あーもーそんなことしか言えないの?はいはいじゃあはいこれ」ドサドサドサドサ

山田「なんかもう本当にヤル気がゼロですな…」

590: 2013/10/20(日) 23:42:51.59
十神「…この札束はなんだ?」

モノクマ「百億円です」

十神「とうとう煽る手も無くなり金頼みか…つまらん」

モノクマ「金持ちの十神君的に微妙なのはわかるけどもうちょっと空気読んで盛り上げてよー」

十神「断る。この程度の金日常的に動かしている」

葉隠「ひゃ、百億円?!すげー金だ!」

モノクマ「おっ!いい反応だよ葉隠君!」

石丸「葉隠君!慎みたまえ!」

モノクマ「石丸君もすましちゃってー本当は欲しいんでしょ?貧乏なんでしょお家?」

石丸「このような出処もわからないもの、僕は必要ない!それに金銭とは労働の対価として得るものだ!」

十神「フン。庶民の考えることだな」

石丸「…庶民で結構だ」

桑田「ひゃ、百億はスゲーけどさぁ!あれ本物なのか?真ん中のあたりただの紙なんじゃねーの?」

霧切「そうよ。本物とは限らないわ。みんな、揺さぶられないで」

モノクマ「ん?疑う?じゃあホイっ」バサバサバサバサ

腐川「なっ投げ捨てた?!」

モノクマ「ここにあるのは一部だからね。確認してもらっていいよ?」

591: 2013/10/20(日) 23:43:27.17
葉隠「うおお百億!」ダッ

石丸「やめたまえ葉隠君!」

葉隠「うっせ!あっちがこっちに投げたんだからいいだろ別に!」

桑田「…これ全部マジもんじゃねーか!」

石丸「拾うんじゃないぞ桑田君。欲した時点でモノクマと同類になると思いたまえ」

桑田「ひっ、拾うなんてダセえマネするわけねーだろ!」

石丸「そうか。安心したぞ」

桑田「……石丸目が座ってんぞ…」

石丸「…こういった金で人をどうこうさせる行為は嫌いなのだ」

苗木「好きな人あんまりいないと思うけど…」

朝日奈「やめなよ葉隠!かっこ悪いよ!」グイグイ

葉隠「格好なんてどうでもいいべ!金がここにあんだぞ!拾って何が悪いんだべ!」

朝日奈「石丸も言ってたでしょ?!こんなお金拾うなんてモノクマの仲間になるのと一緒だよ!」グイグイ

葉隠「ちょっと離せ朝日奈っち!万札破れる!」

朝日奈「そんな床に這いつくばって拾わないでよっ」グイグイ

葉隠「金に貴賎なしだべ!」

592: 2013/10/20(日) 23:44:19.38
セレス「床に這いつくばって拾うなんて…滑稽ですわね。…葉隠君ではお似合いすぎて見せものにもなりませんが」

十神「…確かに、お似合いの姿ではあるな」

葉隠「好きにいえばいいだろ!俺は金の方が大事なんだよ!」





大神「静まらぬか!」





葉隠「オーガ…」

大神「葉隠。貴様に恥の心はないのか」

葉隠「…あるにはあるけど、金のが大事だべ」

江ノ島「このごに及んでまだ言うとか根性あるね…」

葉隠「おう!」

大神「…朝日奈に、仲間に…情けない思いをさせるでない。このようなモノ、誰も拾わぬ。あとで好きなように拾え」

葉隠「マジか?」

593: 2013/10/20(日) 23:44:56.03
石丸「……」

桑田「……」

不二咲「……」

腐川「ひ、拾わないわよ…だからこっちを見るんじゃないわよ!」

セレス「お好きに、どうぞ」

葉隠「みてーだな!じゃあ今はやめるべ!」

大神「……」

モノクマ「かっこいいねぇ大神さん。裏切り者のくせにぃー」

十神「…なに?今なんといった」

モノクマ「あれ?聞こえなかった?もう一度いうね!」



モノクマ「大神さくらが、裏切り者だよ!…つまり内通者だね!」



石丸「…なに?」

大和田「お、おい待てや今のはどう言う意味だ?」

大神「……」

594: 2013/10/20(日) 23:46:14.37
朝日奈「どうせ…アンタが何かやったんでしょ…モノクマ!」

大神「…やめよ朝日奈」

朝日奈「でもさくらちゃん!」

十神「…その反応、さては貴様大神の裏切りについて知っていたな?なぜ言わなかった」

朝日奈「う、裏切ったって言ったって…さくらちゃんは何もしてないじゃん!」

十神「貴様は馬鹿か?そんな個人的な感情のために重要な情報を黙っていたのか?貴様も同罪だな」

大神「朝日奈に話したのは昨日の夜だ。それまでは誰も知らなかった。責めるならば我にせよ」

葉隠「ま…まつべ…オーガが裏切り者…って」

葉隠「こっ殺されるーッ?!無理無理勝てねえよ!大和田っちだって勝てる気がしなくて引っ込んでたってのに!」

朝日奈「…ッ!いい加減にしてよ葉隠!アンタさっきからそんなことばっかり!」

不二咲「ちょ、ちょっとまって!大神さんが内通者って…そんなのってないよ!」

石丸「そうだぞ!僕たちは今朝…」

霧切「フンッ!」ヒュン

石丸「ぐふおォッ?!」

苗木「?!」

舞園「?!」

595: 2013/10/20(日) 23:46:49.90
大和田「きょっ兄弟!?霧切テメエっ」

霧切「言わない。…そう言ったはずよ」

石丸「ごほッかはッ…す、すまな…い」

霧切「わかればいいわ。殴ってごめんなさい」

桑田「大神が裏切り者なんてあり得ねーって!オレは大神に助けられたよーなもんなんだぞ!裏切りモンがそんなことするかよ!」

朝日奈「桑田…」

セレス「それは自分を仲間と思わせ、油断させるためでは?」

朝日奈「何いってんのセレスちゃん…?」

セレス「仲間として溶け込むなどスパイ活動の基本ではありませんか?助けられたからと何を言っているんですか?」

桑田「そ、そんなことねえよ!大神は確かにオレを…」

江ノ島「でもさ、無いとは言い切れないじゃん!てか大神は自分が内通者って認めてるし!ちょっとそこんとこどうなの大神!」

大神「我は、確かに内通者だ」

江ノ島「…マジ?素知らぬ顔して私たちに混じってたってこと?信じらんない…」

江ノ島「[ピーーー]タイミングでも探してたってわけ?サイテー!」

大神「何を言われても反論はできぬ…しかし、これだけは言わせてくれ」

大神「我はこんなことをしていたが…皆と真に仲間になりたいと思っていた…それは事実だ」

桑田「大神…」

596: 2013/10/20(日) 23:47:32.56
十神「何を馬鹿げたことを…このタイミングで言ったところで、信用は得られんぞ」

大神「分かっている。自己満足だ」

モノクマ「そろそろ次いいかな?」

朝日奈「…………」

モノクマ「そんな熱烈な視線を送らないでよぉー」

モノクマ「次のお話はね、ルール改定についてです!」

セレス「ルール改定…?」

モノクマ「そ!現在、共犯者はクロ扱いにならないとなっておりますがー」

モノクマ「共犯者の人数分、被害者を作れば実行犯以外の共犯者もクロとして扱うこととします!」

モノクマ「つまり実行犯以外も卒業できることになるんだね!」

霧切「な、なんですって!」

モノクマ「ただし、一人が頃していい人数は依然二人までですので、三人以上で卒業したいなら二人は実行犯が必要になることになるね!足りなかったら実行犯のみがクロ認定ね!」

モノクマ「これで大好きなお友達と一緒に卒業できるよ!やったね!」

十神「…つまり、アリバイが偽装しやすくなると言うことか…なおさら互いの発言について信用に値しなくなったわけだ」

セレス「なんだか急に卒業の難易度が下がりましたわね。推理の幅がかなり広がりますのでクロを当てることがより困難になりましたわ」

霧切「…ずいぶんと、焦っているのね。思い通りに事件が起こらなくて困っているのかしら?」

597: 2013/10/20(日) 23:48:48.82
モノクマ「本当だよ!ここまでゆるゆるにしてあげたんだから、今度こそ成功してよね!仏の顔も三度までだよ!」

石丸「二度あることは三度あるともいうぞ!」

モノクマ「うるさいよ!この石頭!」

モノクマ「とりあえず以上だから!細かい部分は随時お知らせってことでんじゃっ!」

霧切「……本当に焦っているのね。ルールも何もかもめちゃくちゃだわ」

苗木「…外にでよう、霧切さん」

霧切「…ええ」

石丸「うう…」

大和田「大丈夫かよ兄弟…」

石丸「やはり腹がいたいぞ…」

霧切「やりすぎたわね」

石丸「…次からは優しく頼むぞ…」

霧切「ええ」

舞園「……」ツンツン

霧切「…なに?舞園さん」

舞園「話が…」

598: 2013/10/20(日) 23:49:40.38






セレス(ルール改定…ですか。これは重要ですわね)

セレス(チームを組んで犯行を行うことがより容易になりましたわ)

セレス(ストレートに共犯者とアリバイを作り挑むもよし)

セレス(共犯者をも騙し、被害者が足りなければ実行犯のみがクロとなる、というルールを利用しクロの数を誤認させ、クロ指定を失敗させて自分だけが卒業するもよしですわ)

セレス(もっともこちらのルールはアバウトすぎて博打を打つには少しリスクが高すぎる気もしますが)

セレス(どちらにせよ、計画の幅が広がったのは確かです)

セレス(…共犯者は、一人がベスト。それ以上はターゲットの確保が困難な上、裏切りの可能性が高くなりますわ)

セレス(共犯者は山田君でいいですわね。葉隠君も操りやすさではいい線行ってますが行動が未知数過ぎて御しきれない)

セレス(江ノ島さんは孤立はしてますが操れるかといわれると疑問です)

セレス(さてターゲット候補ですが…個人のやりやすさでは不二咲君がベスト。…しかし猿とモロコシがひっついていて邪魔ですわ)

セレス(朝日奈さんも大神さんが邪魔ですわ。十神君も殺人鬼らしい腐川さんがひっついています)

セレス(桑田君は舞園さんを返り討ちにした経験があり、かつ石丸君と行動を共にしがち…となると)

599: 2013/10/20(日) 23:50:54.54
セレス(やはり舞園さんがベストですわね。怪我もしてますし。苗木君か霧切さんが共にいがちなのがネックですが、どうせターゲット候補は最低二人は必要)

セレス(苗木君ならば身長も低く男子の中では非力な方…この辺ですわね)

セレス「……」

セレス「……後ろをついて回られると、うっとおしいのですが」

セレス「何か御用でしょうか?舞園さん」

舞園「……」

セレス「用が無いなら失礼しますわ」

舞園「何をしているんですか。こんなところでたった一人で…」

セレス「それはあなたもではありませんか?怪我人が、それも女性が一人だなんてとても危険ですわ」

舞園「セレスさんみたいな人に狙われちゃいますもんね」

セレス「…どういうことでしょうか?」

舞園「一人で歩きながら何を考えていたんですか…?」

セレス「歩いてでもいなければ気が狂ってしまいそうですの」

舞園「百億円が手にはいるのが待ち遠しくて、ですか…?」

セレス「…何が、言いたいのでしょうか?よくわかりませんわ」

舞園「一人で、何を考えてたんですか…?」

セレス「…わたくしはあいにく、苗木君のようには優しくありませんので失礼しますわ」

舞園「品定めしてたんですよね」

セレス「………」

舞園「…セレスさん。謀はこんな場所でしちゃだめですよぉ」

舞園「……こんな風に、見つかっちゃいますからねぇ…」

セレス「……」

607: 2013/10/24(木) 00:30:26.34
舞園『……話が』

霧切『何かしら?』

舞園『セレスさんの様子がおかしいように感じるんです』

霧切『おかしい?』

舞園『そわそわしてるというか…その』

霧切『……』

舞園『欲しいものが手に入りそうで、待ちきれない…そんな風に見えました。何かを企んでいるのでは…と』

霧切『…つまり、セレスさんは百億円を目当てに殺人を企てている。そう言いたいのね』

舞園『…はい』

霧切『…そう言われると、気になってしまうけど…私たちにできることはあまりないわ。確証もないから拘束することもできない』

舞園『…でも、このままだと』

霧切『ギリギリで保っているこの状況…先二つの事件が止められたのは偶然でしかない。被害者が今度こそでてしまうかもしれない。そう思っているのね』

舞園『……』

霧切『…でも、相手はあのセレスさん。問い詰めたところで下手はしないでしょうね。 むしろこちらが怪しまれかねない』

霧切『できることはないわ。せめて身を守ることしか』

舞園『……』

霧切『今は孤立するべきでないわ。…人のいる食堂へいきましょう』

608: 2013/10/24(木) 00:31:29.35
舞園『私がいってきます』

霧切『…何を言っているのかしら』

舞園『私が、止めます』

霧切『やめなさい』

舞園『止めたって無駄です。私がセレスさんを止めます』

霧切『今のあなたでは無理よ』

舞園『…苗木君をこれ以上、苦しませたくないんです』

舞園『誰かが傷つけば、それだけ苗木君が傷つきます』

舞園『…もう、そんなのいやなんです』

霧切『…だからと言って…』

舞園『…私が、止めなきゃいけないんです。…もう、立ち直らないと。大丈夫だって姿を苗木君に見せないと』

舞園『私が、止める…」

霧切『こんな無理をしても仕方ないわ』

舞園『いいえ。そんなことはありません』

霧切『…どうして、そう強情なのかしら』

舞園『…すいません』

609: 2013/10/24(木) 00:32:26.03
霧切『…行ってくるといいわ。待ってるから』

舞園『…ありがとうございます』

霧切『無理をしないで。聞くだけ。危ないことはしない。いいわね?』

舞園『はい…』トコトコ








霧切(…後ろから追ってきたはいいものの…)

霧切(この、空気は…)


セレス「先ほどからブツブツと…自分がモノクマの罠にハマってしまったからといってわたくしも同じだと考えないで頂けないでしょうか?」

舞園「同じですよ。私にはわかります」

セレス「お話になりませんわ。舞園さん。あなたおかしくなってしまわれたのではありませんか?被害妄想が過ぎますわよ」

舞園「余裕がありませんよね。図星なんですよね」

セレス「…平行線、ですわね」

セレス「では逆にお聞きしますわ。わたくしが殺人を企てていたとしたら、どうなさるつもりですか?」

舞園「止めます」

610: 2013/10/24(木) 00:33:12.36
セレス「まだ起きてもいない事件をどうやって…」

舞園「止めてみせますよ…必ず」

セレス「だから、どうやってですか?」

舞園「わかりませんよ」

セレス「…呆れますわ」

舞園「だってそうじゃないですか。セレスさんがどうやって事件を起こすかなんてまだわかりませんから。それを察知してからでなければ方法なんてわかりません」

セレス「はぁ…これはどうしようもありませんわね」

舞園「馬鹿な真似はやめてください」

セレス「もういいですわ。帰ります。時間の無駄ですもの」

舞園「隠そうとしてもムダですよ!あなたは、あなたは自分の欲求に嘘をつけない!」

舞園「私の二の舞にでもなるつもりですか!また誰かを悲しませるんですか!そんなの…そんなの駄目ですよ!」

セレス「……」スタスタ

舞園「だから、だから私が止めてみせます!もう、間違いなんて起こさせませんから!」

舞園「絶対に…絶対に…」

舞園「ううっ…絶対にさせな…」

611: 2013/10/24(木) 00:33:45.19
霧切「舞園さん!」バッ

舞園「霧切さん?」

霧切「無理をしないでと言ったでしょう。帰りましょう」

舞園「ごめんなさい…ごめんなさい。失敗してしまいました。私…また感情的に…」

霧切「してしまったことは仕方がないわ。きっと牽制にはなったわ。いい影響がでることを祈りましょう」

舞園「……ごめんなさい」

霧切「…部屋に戻りましょう」







男子トイレ

石丸「…どういうことだね!大神君が内通者とは」

桑田「オレが知るか当たんなアホが!」

大和田「不二咲、さっき言ってたのはマジか?」

不二咲「うん。確かに僕がみたのは大神さんじゃはなかったよ」

612: 2013/10/24(木) 00:34:17.90
桑田「確かに大神だと襲われた時にわかるよな。一発で」

石丸「男子で一番大きい兄弟とでもあの体格差だ。一目でわかるだろう」

大和田「んじゃあよ、大神が内通者だって自白したのはなんなんだよ?話を聞く限りじゃそいつが本物の裏切り者なんだろ?」

霧切「恐らく、本命から目を背けさせるためよ」ヌッ

不二咲「えっ?」

霧切「こんにちわ」キリッ

石丸「きっ?!霧切君?!ここは男子トイレだぞ!」

桑田「えっ?おっ?おおわ?!霧切何でここにいんだよ?!」ガサゴソ

霧切「…いけない。ノックを忘れていたわ。…失礼するわ」コンコン

桑田「遅いわ!」

大和田「おっ…女が平然と男子トイレにはいんじゃねーよ!」

霧切「監視カメラが無いのは脱衣所とトイレだもの。脱衣所にいなければトイレにいると思ったのよ」

霧切「黒幕に聞かれたく無い話をしている頃だと思って」

桑田「だからって女一人で男子トイレに突撃するかフツー…ありえねー…」

霧切「…まさか本当にトイレをしているとは思わなくて…ごめんなさい」

石丸「全くだ…つつしみたまえ。女子のとっていい行動では無いぞ」

霧切「ええ」

613: 2013/10/24(木) 00:35:03.25
霧切「それで、さっきの話なのだけれど」

桑田「何でこいつこんな男子トイレに馴染んでんの?」

霧切「何故、大神さんが内通者と自白させられたか…何故だかわかる?」

不二咲「わからないなぁ…」

霧切「例えばの話をしましょう。もし誰も殺人を起こそうとしないで、全員が意気投合して信頼関係を築いてしまえばどうなるかしら?」

石丸「もちろん事件は起こらない。素晴らしいことだ!」

霧切「でも黒幕にしてみればどうしようもない事態だわ。だから保険として内通者を忍ばせたのよ」

霧切「いざという時の切り札として」

桑田「切り札って…もしかして誰も殺人をしたかった時にオレ等を[ピーーー]役ってことか?」

石丸「だが今回は事件が早期に起きてしまった。だから大神君は…」

不二咲「仕事がなくなっちゃったんだね…」

大和田「内通者としての仕事がなくなったからってよ…いくらなんでも俺達との距離が近くねーか?朝日奈となんかべったりじゃねーか」

霧切「それが最初から仕組んでいたことなのかはわからないけど…そもそも彼女に内通者という仕事は不向きだったのよ。だからここまで朝日奈さんに入れ込んでしまった」

霧切「黒幕はそんな大神さんを見て考えたのよ。このままでは『せっかくの駒が使い物にならなくなる』と」

桑田「だからバラしたっての?」

霧切「端的に言ってしまえばそうね。使えなくなる前に消費してしまおう、そういうことよ」

大和田「酷ェことしやがるぜ…」

614: 2013/10/24(木) 00:36:42.15
霧切「でも黒幕にはもう一つの思惑があった」

石丸「最初に言っていたことか…」

霧切「そう。石丸君と不二咲君は朝接触したわね」

霧切「今回の内通者暴露はそのもう一人の内通者を隠すために行われたのよ」

霧切「大神さんが内通者だと暴露すれば当然注目は大神さんに向かうわ。そうやって黒幕は「本命」の内通者を隠したのよ」

不二咲「「本命」…ってことは大神さんは本命じゃなかったの?」

霧切「大神さんも保険ではあったのでしょうけど…どちらかと言えば「舞台装置」に近いかしら。モノクマの用意した動機の一つといったところでしょうね」

霧切「大神さんのあの性格を知っていたのであれば、本気で期待はしていないはずよ」

霧切「でも本命は違う」

桑田「何が?」

霧切「本命はもっと黒幕に近い」

石丸「近い?」

霧切「本当の内通者は黒幕から情報を受け取っているはずよ。監視カメラからしか得ることのできない情報をね」

霧切「だからこそ、不二咲さんをピンポイントで狙いにきた」

不二咲「…!」

615: 2013/10/24(木) 00:37:50.28
石丸「いったい不二咲君の何を狙ってきたというのだ?」

霧切「知らないわ。…不二咲さん。あのパソコンには何が入ってるの?」

不二咲「…アルターエゴ…」

大和田「アルターエゴ?」

不二咲「僕が作った人工知能だよ」

桑田「人工知能?」

不二咲「簡単にいうと…応答とかいろいろしてくれるプログラムだよ。あのパソコンで作ってたんだ」

不二咲「何かの手がかりがあればと思って…アルターエゴを使ってあのパソコンの解析を進めてたんだ」

不二咲「見つかったらまずいと思って脱衣所のところに隠してたんだけど…」

石丸「それで朝いなかったのだな!」

霧切「…なるほど。それで姿を見られるリスクを冒してまでわざわざこんなタイミングで襲撃してきたのね」

大和田「そこまでするってこたぁ…あのパソコンの中には大事なモンが入ってるってことだよな…」

616: 2013/10/24(木) 00:38:28.21
霧切「解析はどこまで進んでるの?」

不二咲「あと少しで一つ解析が終わるよ」

霧切「……」

石丸「どうした?」

霧切「…もう、脱衣所に隠すことはできないわね」

桑田「…まあ、そーだろうな。もっかい隠しにいっても内通者のカモだろ」

大和田「また不二咲が襲われたらたまったもんじゃねぇ」

霧切「かといって、部屋では解析が進められない」

石丸「監視カメラがあるからな!」

霧切「……」

不二咲「一応、基本はもう出来てるからある程度なら放置してても大丈夫だけど…」

霧切「……」

霧切「考えがあるのだけど……協力してもらえないかしら?」

622: 2013/10/24(木) 01:06:41.45
またsaga忘れた
すみません
流石に次は気をつけます

630: 2013/10/26(土) 00:51:16.21
霧切「…これで、どうかしら?」

桑田「大丈夫かぁ…?何か穴ばっかに見えんだけど。てか作戦なのかこれ」

霧切「確かに作戦と言えるほど立派なものではないわね」

不二咲「で、でも何かしないといけないっていうのはわかるよ」

霧切「そう思ってもらえると助かるわ」

大和田「結構な荒療治だぜこりゃあ…」

霧切「…そう、かもしれないわね」

石丸「…しかし、僕は感動したぞ」

霧切「…何に?」

石丸「君は…そこまで彼女のことを大切に思っていたのだな」

霧切「……えっ?」

大和田「おう!俺もなんか熱意に押されちまったぜ!女同士の友情ってのも侮れねぇな!」

石丸「ああ。傷付き苦しむ友人を健気に支えるその姿…僕は感動した!不安はあるが是非協力しよう!」

霧切「……」

桑田「…どうしたんだよ?」

霧切「…そんなに、入れ込んでいる様に見えた?」

631: 2013/10/26(土) 00:52:09.04
石丸「入れ込んでいるも何も!心の底から心配しているといった様相だったぞ!今更何をいっているのかね!」

霧切「……」

大和田「さっきまでベラベラしゃべってたのに急に黙ったな」

不二咲「ど、どうしたの霧切さん」

霧切「いえ…何でもないわ」

霧切「…ねえ、本当にこの作戦でいいのかしら?」

桑田「立案者が速攻でそーいうこと言うなって!不安になるだろ!」

霧切「そ、そうね…」スタスタスタスタ

石丸「霧切君…?」

桑田「イソガシー女だなおい…」






霧切「おかしい。おかしいわ。自分がコントロールできていない」

霧切「…私は、何故こんなにも舞園さんを放っておけないのかしら」

霧切「静かにさせているならばまだしも、殺人を企てているかもしれない人に接触させるなんて…よくよく考えればありえないことよ」

霧切「……」

632: 2013/10/26(土) 00:53:58.04



『どうして霧切さんはここまでしてくれるんですか?』

『どうしてって…』

『霧切さんの場所はここではありませんよ…私の隣なんかじゃなくて…』



霧切「…苗木くんの隣」

霧切「…わからないわ。何故今あの言葉が…」

霧切(彼女の繰り返した言葉「私の居場所は苗木君の隣」)

霧切(言葉の意味を何故か私は問いかけることが出来なかった)

霧切(彼女が何の確信を持ってそんなことを言っているのか…何故私が「苗木君」という言葉に突き動かされてしまうのか)

霧切(きっと彼女は答えを知っている)

霧切(でもそれを知るのは…とても恐ろしい気がする)

霧切(知らない私が、そこにいる気がする)

霧切(わけのわからない焦燥感。後ろから何かが迫ってくるかのようなこの胸の圧迫感)

霧切(知らない思いに突き動かされて、歩き回って走り回って…)

霧切(気がつけば男子トイレの中で身振り手振りで熱弁していた)

霧切(…自分が、怖い)

633: 2013/10/26(土) 00:54:48.55



桑田「それでよぉー」

不二咲「ふふふ…」

石丸「…ど、どこで笑えばいいのかね?」

桑田「えっ?!わかんねぇの?」

石丸「説明してくれないか」

桑田「笑い話の笑いどころを説明するとか難易度たけぇなおい」

不二咲「あはははっ」

石丸「その顔が一番面白いぞ桑田君!」

桑田「今の発言は風紀委員的にいいのかよ!イジメじゃねーか!なぁ大和田!」

大和田(この光景…)

桑田「大和田?」

大和田「あ?ああ…」

桑田「どーしたんだよ?トイレん中で立ち止まって)

大和田「……」

634: 2013/10/26(土) 00:55:23.76
石丸「残尿感があるならば待っているぞ兄弟!安心して出し切ってきてくれたまえ!」

大和田「…なあ、兄弟」

石丸「ん?」

大和田「俺たちどこかで会ったことねーか?」

石丸「…記憶にないな!」

大和田「…どっかで見た気がすんだよ…」

桑田「何でこのタイミングでいうわけ?」

大和田「前にもあったんだよ。こういうなんかもやもやした感じがな」

大和田「霧切の必氏な顔見てたらよ…何かフッと湧いてきやがって…」

石丸「超高校級とされた高校生は何かと話題になる。メディアでも取り上げられることがあるし、それではないかね?」

大和田「兄弟はテレビとかでたことねーだろ?」

石丸「偶然映ったことはあるかもしれないが、出たことはない」

桑田「やっぱ気のせいだろ?こーいうのなんていうんだっけ?」

不二咲「デジャヴ、かな?」

桑田「何か山田も言ってたな」

石丸「そういえば…そう思うと何かあるのかと気になるぞ…」

635: 2013/10/26(土) 00:56:20.76
大和田「最初にこんな感じになったのは兄弟と部屋で雑魚寝した時なんだがよ…その時も…なんだ?デジャヴっつーのか?なんかそんな感じによ」

桑田「アバウトすぎてわけわかんねー」

大和田「だーっ!糞が!はっきりしやがれ!」

桑田「怒鳴ンなよ!うるせぇっ!」

不二咲「でも山田君も同じこと言ってたなら、少し気になるね」

石丸「本当にどこかであっていたのか?」

桑田「オレなんかはテレビ出まくりで特集組まれまくりだったぜ?」

大和田「俺はニュースなんぞ見ねえ」

不二咲「不思議だねぇ…」

石丸「まさか本当に僕たちが気づかないところで会っていたなど…」

桑田「無い無い」

石丸「……」






霧切(舞園さんの直感は鋭い)

霧切(まるで超能力のように人の細かな機微を察知する)

霧切(私の中にぽっかり空いた記憶の穴…最近見つけた記憶の穴)

霧切(もしかして彼女は私の覚えていない何かを無意識の内に察知しているのでは…)

霧切(…もし、彼女の不思議な発言が私の記憶の無い期間にあったことを根拠としているのなら、私たちはー)

霧切(…出会っていた?)

636: 2013/10/26(土) 00:57:42.56



石丸「僕はこう思う」

桑田「何が?」

石丸「もし、僕たちが気づかないところで出会っていて」

石丸「その時に築けなかった絆を今ここで築けているのだとしたら」




霧切(もし、私たちが気づかないところで出会っていて)

霧切(その時にあったことを綺麗さっぱりに忘れてしまっているのだとしたら)

霧切(もしそんなことがあるのだとしたら)





石丸「それはとても、素晴らしいことだと思う」

霧切(…それはとても、恐ろしいことだわ)






637: 2013/10/26(土) 00:58:12.09
石丸「そうは思わないか!」

大和田「…いいこと言うじゃねえか兄弟!」

桑田「オレはそーいう暑苦しいことはパスで」

石丸「なにっ?君も僕の大切な友人だぞ!」

桑田「マジパス」





霧切「何を私はバカなことを言っているのかしら」

霧切「…動き続けて疲れたのね。少し休むべきかしら…」




…そして、時は過ぎ

638: 2013/10/26(土) 00:59:03.35
図書室

十神「腐川」

腐川「何でしょう白夜様!」

十神「目当てのものが見つかった。これを全て片付けて来い」

腐川「はいい!」

十神「…どうやら俺たちを閉じ込めた奴は、相当の馬鹿者のようだ」

十神「爪が…甘い。くく…」




苗木部屋

苗木(内通者…大神さんが、まさかそんな…)

苗木(……どうして、どうしてこんなことばかりするんだ)

苗木(……)

苗木「くそっ!」

苗木(霧切さんは…内通者のことは任せてって言ってたけど…本当にそれでいいのか、ボクは…)

苗木(舞園さんのことも、内通者のことも、全部霧切さんに頼りきりで…本当にそれでいいのか?)

苗木(でも何も持っていないボクに何ができるの?)

639: 2013/10/26(土) 01:00:04.55
苗木「舞園さん…」

苗木「この、壁の向こうにいるのかな」

苗木「泣いてるのかな…」

苗木「ボクが自分の考えを押し付けたせいで…余計苦しめてしまった」

苗木(でもボクはその考えを捨てられない)

苗木(捨てるわけにはいかない…)

苗木「何とかして…舞園さんの心に届けなきゃいけないんだ…!」

苗木「どうすれば…どうすれば届くんだよ!」







大神「朝日奈よ…離れた方がいい。疑われるぞ」

朝日奈「やだよ!離れないよ!こんな状態のさくらちゃんをおいていくなんて絶対にできない!」

640: 2013/10/26(土) 01:00:33.28
大神「しかし我といるだけで裏切りを疑われる。…石丸や不二咲の元へゆけ」

朝日奈「何で!なんでそんなこと言うの!私はさくらちゃんと一緒に居たいんだよ!」

大神「我はいつ始末されてもおかしくない。危険だ」

朝日奈「し…始末って…そんなの嫌ぁ!絶対やだ!」

朝日奈「一緒にいる…さくらちゃんと一緒にいる…」

大神「朝日奈……」

朝日奈「ごめんねさくらちゃん…気づいてあげられなくて」

朝日奈「辛かったよね…苦しかったよね…」

朝日奈「ごめんねさくらちゃん…」

大神(困った…これでは黒幕に挑みにいけぬ…)




それぞれの一日が過ぎていく


641: 2013/10/26(土) 01:01:15.09
翌日 朝食会

石丸「みんな!風呂に入ろうではないか!」

桑田「あー…初っ端やらかしやがった…」

セレス「変態と呼んでかまいませんか?」

石丸「いや!僕は変態では無い!」

セレス「開口一番女性に風呂に入ろうは間違いなく変態ですわ」

石丸「違う!風呂に入りたいわけでは無い!しかし風呂にいこうではないか!」

大和田「あー…兄弟の言いてえことはわかんだろ?」

山田「それはまあ…しかし口下手にもほどがありませんかねぇ…もはや隠語として機能しておりませんぞ」

石丸「それでは皆で親交を深めようではないかーはっはっはー」

山田「語尾に(棒)とつけていいですかな?」

不二咲「やめたげてよぉ…」

江ノ島「これで演技できてると思ってんの…?どんだけ残念なのよ」

桑田「いいから行くっつってんだよ!」

642: 2013/10/26(土) 01:02:05.12


脱衣所

霧切「…集まったわね」

セレス「こんなところに全員集めて、どうなさるおつもりですか?」

霧切「これは全員が共有しておくべきだと思ったのよ」

葉隠「その割には十神っちと腐川っちがいねーぞ」

桑田「だいたいわかんだろ?誘ってもこなかったんだよ」

石丸「できれば全員で話したかったが仕方が無い。あとで知らせておこう」

大神「我まで呼びつけ…一体なんの話なのだ」

石丸「今から話す。…不二咲君」

不二咲「…………」

『こんにちわ!』

葉隠「…ん?不二咲っちの顔の映ったパソコン?不二咲っち腹話術うめえな!」

苗木「…いや待って、これは」

不二咲「これは僕が開発したプログラム「アルターエゴ」この子に今、このパソコンの中身を解析してもらってるんだ」

江ノ島「……」

643: 2013/10/26(土) 01:02:35.47
アル『ご主人タマがお世話になってます。僕はアルターエゴ。みんな、よろしくね』






その後は、騒然となった。
次々に浴びせかけられる声から必要な言葉を拾い上げ
慌てふためきながらも不二咲君は的確に答えていった。



セレス「それは何ですの?」

不二咲「人工知能搭載プログラムだよ。モデルは僕。だからアルターエゴっていうんだ」


江ノ島「何の目的で作ったわけ?」

不二咲「今はこのパソコンの中身を解析してもらってるんだ。何かの手がかりになればって」


山田「しゃ、しゃべるんですかあああああっ」

不二咲「うん。ある程度なら会話可能だよ。新しい知識を与えればそれを吸収していく」

アル『僕はまだまだ知らないことも多いから…教えてくれるとうれしいな』

山田「うほおおおおおおっ?!」

644: 2013/10/26(土) 01:03:10.74
セレス「…それで、その大切なプログラムの存在を公開したのは何故ですか?この中には裏切り者がいるんですのよ?」

大神「……」

朝日奈「…そんな目で、見ないで!」

セレス「…そうは、言われましても…」

不二咲「僕はおとといまで、ここにアルターエゴを隠してたんだ。それで一人の時にここに来て、少しずつ会発を進めてたんだ」

石丸「しかし昨日の朝、不二咲君は何者かに襲われた!」

大神「…何?!」

霧切「間一髪、私が間に入ったわ。石丸君もその時に襲撃者を目撃しているわ」

葉隠「…不二咲っちを襲ったのはオーガだべ!それで失敗して姿を見られて黒幕に切られたんだべ!」

朝日奈「…違う!さくらちゃんじゃない!」

セレス「…あら、どうしてですの?」

朝日奈「だって昨日の朝は一緒に居た!一緒に寝てた!さくらちゃんは私が起きるまでそばに居てくれたんだよ!」

葉隠「誰が信じるかっての!共謀してるんだべ!」

大神「なんだと!…朝日奈はそのようなことしてはおらぬ!」

葉隠「裏切り者にそんなこと言われてもな!」

大神「我は何と言われようとかまわぬ!しかし、朝日奈にまで濡れ衣をきせるというのならば…」

645: 2013/10/26(土) 01:03:58.02
江ノ島「暴力ふるうっての?こっわー」

大神「ぬうううっ…」

苗木「落ち着いてよみんな!不二咲クン、石丸クン。襲撃者の姿を見たんだよね?」

石丸「無論だ。この目に焼き付けたぞ」

江ノ島「それは誰なの?!」

石丸「少なくとも大神君ではない!理由は言わずともわかるだろう。彼女ほどの体格ならば見てわかる!」

葉隠「うっ…そりゃ、確かに」

苗木「じゃあ、誰かわかる?」

石丸「特定するのは難儀だ。しかし、霧切君とやりあったことから、手を怪我している舞園君は除外される!」

不二咲「葉隠君よりは小さかったよ」

石丸「つまり苗木君以外の男子がここで除外だ!もう一つ体型的な理由で山田君も違う!」

セレス「…つまり、容疑者は女性である可能性が高い、と?」

石丸「…そういうことになるな」

葉隠「じゃあ腐川だべ!あいつ連続殺人鬼なんだろ?!」

霧切「違うと思うわ。犯人の行動が石丸君たちに聞いた腐川さんの行動とはかけ離れていた。冷静そのものだったもの」

646: 2013/10/26(土) 01:06:19.02
江ノ島「…じゃあ、この中にまだ裏切り者がいるって言うの?ありえねーんだけど!」

葉隠「お、オメーじゃねえのか江ノ島!さっきからヤケに食いついてっし!」

江ノ島「はあ?ふざけんなよ!アンタ自分が違うって言われたからってテキトーいうなって!」

江ノ島「ヤッパリ朝日奈じゃないの?そーやって大神ばっかかばって、アヤシーんだよ!最初から組んでたんじゃないの?!」

朝日奈「な、なっ…違う!違うよ!」

大神「江ノ島ァァア!それ以上朝日奈を愚弄すれば我が許さぬぞ!」


霧切「落ち着いて!」

霧切「この中にいない可能性だってあるのよ!」

江ノ島「いない…?」

石丸「…普通、内通者がこれから内通者を発表しますと告知されたタイミングで襲撃をかけようと思うかね?」

セレス「思いませんわね。姿を見られてしまった場合のリスクが高過ぎますわ。おまけにもう一人の内通者は体格が個性的ですから、内通者は二人いると知られてしまいます」

石丸「そうだ。現にこのように大神君の他に襲撃をしたものがいるとしれてしまっている!」

霧切「こんな先走った行動、普通は取らない…そうね?」

江ノ島「そっ…それはそうだね」

葉隠「じゃあ誰なんだべ?」

647: 2013/10/26(土) 01:07:18.70
霧切「私は今回の襲撃者が黒幕によるものだと踏んでいるわ」

江ノ島「えっ?!」

霧切「私たちに姿を見せていない関係者…という可能性もあるけれど」

苗木「なんでなの霧切さん?」

霧切「…確たる証拠はないわ。でも黒幕では無いにしろ、二人目の内通者という線はないとおもってる」

霧切「理由はさっき述べた通りよ。15人に二人の内通者というのは多過ぎて気づかれる可能性が高いし、内通者にしては行動が迂闊すぎる」

葉隠「……黒幕」

霧切「そこで提案よ」

石丸「このアルターエゴを、皆で管理しないかね?」

セレス「管理?」

石丸「難しいことは言わない。この周辺にいる時、風呂にはいる時。パソコンに気を配っていて欲しいのだ」

霧切「この狭い中に15人いる。日中の間、みんなで気をつけあっていればそうそう簡単に奪われたりしないわ」

山田「つまり…互いを見張り合う、ということですかな?」

霧切「そうね」

セレス「夜はどうしますの?」

霧切「内通者でないことが確定している人で交代して見張るわ」

648: 2013/10/26(土) 01:08:27.85
セレス「いくらなんでも甘くはありません?いくらでもつけいるスキがありますわ」

霧切「あまり目立つ行動は取れない…黒幕に気づかれてしまうわ。私たちがこのパソコンを重要視していると知られては本気を出されかねない」

石丸「あくまでこのパソコンの重要性に気がついていない、というフリをして黒幕を油断させるのだ!」

セレス「そうして時間を稼ぎ、解析を待つ…ということですか?」

霧切「そうよ」

セレス「……」

霧切「…みんな、協力してくれるわね?」







ワイワイガヤガヤ…

石丸「みんな、出て行ってしまったな。…うまく、いくだろうか」

桑田「演技ダメダメ委員長にしてはいい演技だったぜ!」

大和田「説得力がよかったぜ兄弟!俺たちにはできねえ芸当だな!」

不二咲「う、うまくいくといいけど…」

霧切「大丈夫よ。アルターエゴは私が守るわ」

不二咲「うん。…何かあったらよんでね、アルターエゴ」

『うん!頑張ってね、みんな』

霧切「じゃあ、お疲れ様…」

石丸「お疲れ様だ!」

649: 2013/10/26(土) 01:09:56.51




霧切「待たせたわね」

舞園「いえ…」

霧切「あなたに知らせておかないといけないことがあって…」

舞園「…なんでしょうか?」

霧切「内通者のこと」

舞園「……!」

霧切「みんなには、もう一人の内通者なんていないなんて言ったけど、本当は違うのよ」

舞園「そ、それは…」

霧切「これを見て」

舞園「髪の毛…?短くて黒い」

650: 2013/10/26(土) 01:10:38.50
霧切「内通者の落し物から採取したものよ」

舞園「……!」

霧切「この黒い髪はとあるヘアピンについていた」

霧切「男子はつけないでしょうから、内通者は女子ね」

霧切「舞園さんの長さではない…そうね?」

舞園「は…はい」

霧切「では誰だと思う?」

舞園「…黒髪で短髪の方なんて男子にしか…」

霧切「…セレスさん、あの巻き毛は確か付け毛だったわね…」

舞園「…あっ?」

霧切「あの巻き毛を取れば…どんな髪型になるかしら?」

舞園「…ま、まさか…?」

霧切「ここまでいえば、わかるわね?舞園さん…」

霧切「真の内通者が…誰なのか」

659: 2013/10/29(火) 00:35:10.38
セレス「………」

舞園「…………」

セレス「チッ……」

舞園「…………」



セレス(なんなんですのこの執拗な追跡は!まるで一人になれませんわ!)

舞園「……」

セレス(おまけに明らかに視線の色が変わってますわ)

舞園「……」

セレス(うっとおしい…)

石丸「…舞園君!」

舞園「…っ?石丸君…どうしましたか?」

石丸「霧切君に頼まれてきたのだ。そろそろ骨折の包帯を変えるべきではないかとな」

舞園「だ、大丈夫ですよ!平気です」

660: 2013/10/29(火) 00:35:50.03
石丸「怪我に関してはもう平気、というタイミングが最も危ないのだ。さあ、こちらへ来たまえ」

舞園「あっ、やめてください平気です…」

石丸「大丈夫だ!手当の本を借りて来た。最悪朝日奈君に力を借りればなんとかなるだろう!」

舞園「…ま、まって…」ズルズル



セレス「…はあ。やっといなくなりましたわ」

セレス(しかしどうしましょう。ますます目をつけられてしまいましたわね)

セレス(なおさら仲間が欲しいところですが…)

セレス(声を誰かにかけるにも、必ず仲間にできる、といった状況でなければ危険ですわ)

セレス(もし仲間にできずに告発でもされれば目も当てられません)

セレス「このままでは詰みですわ…」

霧切「あら、何が?」

セレス「霧切さん…立ち聞きとはずいぶんですわね」

霧切「あなたが一人で話していたのよ」

セレス「それはそうですわね」

霧切「ずいぶんと困っているようね」

661: 2013/10/29(火) 00:37:00.18
セレス「…舞園さんのこと、見ていられたんですか?」

霧切「ええ」

セレス「このような環境であのような行動を取られては精神的に参ってしまいます。舞園さんはあなたの管轄でしょう?なんとかしてくださいな」

霧切「いいわよ?」

セレス「…その口ぶり、さては舞園さんを焚きつけたのはあなたですわね」

霧切「流石に察しがいいわね。…舞園さんに、消えて欲しいかしら?」

セレス「当然ですわ。後ろをついて回られてはプライバシーがありませんもの」

霧切「あくまでそういう態度をとるのね。当然だけど」

セレス「何か言いたいことがあるのであれば、手短にお願いしますわ」

セレス「あなたは何を求めていますの?」

霧切「……」







大和田「江ノ島!」

江ノ島「ゲッ…大和田じゃん」

大和田「あん?なんか文句あんのか?」

江ノ島「ないけどさあ…ん?どうしたの不二咲」

662: 2013/10/29(火) 00:37:39.25
不二咲「…ねえ、この髪の毛を見て」

江ノ島「……!な、なな…どこでこれを!?」

不二咲「襲われた後に気づいたんだけど…僕にくっついてた髪の毛だよ」

大和田「黒くて短い髪だ。オメエの髪とは違う色だろ?」

江ノ島「そ、そうだね」

大和田「心当たりねぇか?」

江ノ島「心当たり?……」

江ノ島「………」

不二咲「黒い髪っていうと…山田君と石丸君と葉隠君と、舞園さんとセレスさんだね」

大和田「そんでよお、今朝兄弟が違うっていうやつを除外したら…」

江ノ島「…せ、セレスが残るね」

大和田「だろ?アイツあやしくねーか?」

江ノ島「でも霧切は外部の人間だって…」

不二咲「アルターエゴにシミュレーションしてもらったけど、その可能性はやっぱり低かったんだ」

江ノ島「そ、そんなことできんのアレ!?」

不二咲「うん」

663: 2013/10/29(火) 00:38:39.35
大和田「俺たちはセレスが怪しいと思ってんだが、オメエはどう思うよ」

江ノ島「…………」

江ノ島「…………」

不二咲(凄い考えてる…)

江ノ島「………!」

江ノ島「そーじゃん?!そーだよセレスが絶対犯人だって!」

大和田「お?お、おお」

江ノ島「あたしもずっと思ってたんだよねーアイツ怪しすぎじゃん?」

不二咲「や、やっぱりそう思うよね」

江ノ島「だよね!」

江ノ島「今思うとさあーモノクマに秘密を暴露されなかったのってセレスと大神だけだったじゃん?」

不二咲「…そうだったの?僕たちそれどころじゃなくて聞いてなかったんだけど…」

江ノ島「そーなの。それでさ、放送されなかった片割れの大神が内通者だったんだから、もう一人のセレスが内通者ってのもおかしくないよ」

大和田「知らねえけどな」

江ノ島「どうせ身内だから用意してなかったんでしょ秘密!」

不二咲(そんな露骨なことはしないと思うけど…)

664: 2013/10/29(火) 00:39:26.24
大和田「まーセレスが怪しいってことを俺たちは伝えに来ただけだ。オメエも気ィつけろよ」

江ノ島「うん!」スッタスッタ


不二咲(スキップしてる…)

大和田「なんだあいつ…」








霧切「…以上よ。あなたにはいい話だと思うけど」

セレス「…何がいい話、ですか。よくも厄介ごとを押し付けてくれましたわね」

霧切「あなたがもし、本当に何もする気がないなら、身の潔白を証明できるいい機会よ?」

セレス「逆に乗らなければ……ということでしょう?」

霧切「わかっているじゃない」

セレス「それにしてもいい度胸してますわね。あれほど執着してらっしゃったのに、敵か味方かも分からない者に任せてしまうとは」

セレス「下手をすれば抵抗できずに一発ですわ」

霧切「…あなたはそれをするのかしら?」

665: 2013/10/29(火) 00:41:04.78
セレス「……もし、彼女になにかあれば真っ先に疑われるのはわたくしですわね」

霧切「……」

セレス「本当に…どちらにしても面倒なことを…」

霧切「…もし、乗ってくれるのであれば、いいことを教えてあげるわ」

セレス「……それは本当に価値のあるものなんですの?もしこれでわたくしが潔白であるならば、あなた方はわたくしにリスクだけを背負わせたことになるんですのよ?」

霧切「……」






石丸「むっ…むううううっ」

舞園「……あの…」

石丸「だっ大丈夫だっ!任せてくれたまえ!」

舞園「……」

石丸「あああ…包帯がっ!」

朝日奈「…何してるの?二人とも」

石丸「朝日奈君に大神君!よく来てくれた!これを見てくれ!」

666: 2013/10/29(火) 00:42:07.20
朝日奈「…ひどい有様だね」

大神「…なっておらん」

石丸「やってくれないか」

大神「…よいのか?」

石丸「…僕がやるよりかは、と思うが…どうかね?」

舞園「お願いします。早くしないといけないことがあるので」

大神「…では貸せ。手早く済ませよう」






大神「…これでいいだろう」

舞園「……ありがとうございます」

石丸「流石だな大神君!」

舞園「…助かりました」

大神「…我はこのようなことしか出来ぬからな…」

舞園「…ありがとうございました」

667: 2013/10/29(火) 00:42:45.44
大神「…気をつけるのだ。おぬしは特に怪我をしている」

舞園「はい。…失礼します」

朝日奈「…舞園ちゃん、少し元気になったのかな」

大神「…我には、無理をしているようにも見える」

石丸「それにしても二人とも、助かったぞ!上手く巻けずに困っていたのだ!」

大神「かまわぬ」

朝日奈「…石丸は前みたいに接してくれるんだね」

石丸「当然だ!無論兄弟も不二咲君も、桑田君も、みんな態度を変えることはないだろう!」

朝日奈「…私、先走っちゃったかな」

石丸「何をだね?」

朝日奈「思ったよりみんな優しくて…何もしなくてよかったのかな」

朝日奈「私が騒いだせいで、さくらちゃんがもっと悪印象になっちゃったのかな…って」

朝日奈「もしかして私が静かにしてたら葉隠もさくらちゃんのこと疑ったりしなかったのかな」

大神「すまぬ朝日奈…朝日奈と葉隠はよくしていたというに…我のせいだ」

朝日奈「…これは私の自己責任だよ」

石丸「………」

668: 2013/10/29(火) 00:43:44.06
石丸「……二人とも」

朝日奈「…なに?」

石丸「君たちの力を借りたい。きっと君たちの汚名を返上できるチャンスになるだろう」

大神「……荒事か?」

石丸「脱衣所の見張りを共にしてもらいたい」

朝日奈「…いいの?私がいると空気悪くなるよ?」

大神「我は内通者だったのだぞ…よいのか?」

石丸「…僕はこの通りまるでケンカ、というものが弱い。不二咲君は一度襲われた以上出す訳にはいかない。…女子もあまり出したくはない」

石丸「大神君も女子であるからあまり頼りたくはないのだが…やはり君に勝る者はいないのだ」

大神「…他の者が許すのか?」

石丸「葉隠君ならば僕たちが説得しよう。力を貸してはくれないか」

大神「断る理由はない。…尽力すると誓おう」

朝日奈「…私もやる!さくらちゃん一人に任せられないもん!」

石丸「君も運動神経は優れている。きっと皆心強く思うことだろう!」

朝日奈「…がんばる。頑張ってさくらちゃんが悪くないって…証明するんだから!」

669: 2013/10/29(火) 00:44:43.08







江ノ島「……」フンフーン

セレス「江ノ島さん」

江ノ島「セレス?どうしたの?」

セレス「…いえ」

江ノ島「…ねえセレス。もう一人の内通者って誰だと思う?」

セレス「検討もつきませんわね」

江ノ島「…そう?」

セレス「…一つ、お聞きしたいことが…」

江ノ島「何?」

セレス「わたくしの秘密、どう思いましたか?」

江ノ島「は?秘密?」

セレス「ええ。秘密です」

江ノ島「餃子が好きなのがどうしたわけ?」

セレス「…いえ」

670: 2013/10/29(火) 00:46:05.26
江ノ島「…?急いでるから行っていい?」

セレス「どうぞ」

江ノ島「……」フンフフーン







セレス(…これは何かの罠ですの?)

セレス(霧切さんに江ノ島さんが内通者だと聞いてカマをかけてみましたが…)

セレス(あっさり二つ目の「やすひろ」わたくしであることを知っているということを露呈させやがりましたわ…)

セレス(どういう狙いでわたくしの秘密(…というほどでもありせんが)をやすひろ名義で発表したのかもわかりませんが)

セレス(この警戒ゼロ感も何か裏があるのかと疑ってしまいますわ)

セレス(しかしどこかで名前を教えた覚えがない以上、彼女がわたくしの本名を知っているのはおかしいわけです)

セレス(余程抜けているのでしょうか…タイミングの悪すぎる襲撃もまさか素ですの?恐ろしい…)

セレス(ひとまずこれをもってわたくしの行動方針は決まりましたわ)

セレス(しばらくは様子をみましょう。江ノ島さんが内通者にしろ、違うにしろ、今行動を起こすのはよくありませんわ)

671: 2013/10/29(火) 00:47:21.35
セレス(しかししてやられてばかりでは面白くありませんわ)

セレス(ただの囮として思わせぶりにしていろと言われましたが、黙ってうなずくわたくしではありません)

セレス「ま、せいぜい暇を持て余したわたくしの余興になっていただこうではありませんか」

セレス「悲劇のシンデレラの仮面を…剥ぎ取ってやりますわ…フフフ」







江ノ島部屋

プルルルルルルルル

ガチャ

江ノ島「…盾子ちゃん?…うん。うん。うまくやったよ」

江ノ島「盾子ちゃんの言ってた意味がやっとわかった…うん。ちゃんとやった」

江ノ島「…あそこでセレスさんをやすひろって言ったのはこういうことだったんだね…うん。うまくなすりつけられた」

江ノ島「もう誰も私を疑ってない…しばらくはセレスさんが疑われるように動く…うん、心配しないで…じゃあ、切るね」

パサッ

戦刃「…ふう。うまくいった」

戦刃「…化粧落とそう…」







??「あははははははぎゃははははは!」

??「あれでうまくいったと思ってるとか残念過ぎて笑える!さすが過ぎてもうお腹痛い!あのスキップ何?!唐突過ぎてギャグ過ぎてもう…」

??「自分が追い詰められてることに気がつきもしないでドヤ顏してんだからホンッと絶望的!」

??「あはははははっ」

678: 2013/11/01(金) 23:05:58.14
翌日

脱衣所


石丸「集まったかね?」

大和田「俺に不二咲、桑田と葉隠…山田に大神と朝日奈、全員いるぜ」

葉隠「ちょっと待つべ!オーガがいるとか聞いてねえぞ!」

桑田「言ってねえからな」

葉隠「はあ?!オーガは内通者なんだぞ!何でアルターエゴの監視作戦会議にいるんだべ?!」

石丸「今僕たちが警戒すべきはもう一人の内通者であるからだ。大神君は敵ではない」

葉隠「こいつは黒幕と繋がってんだろ!作戦漏れんじゃねーか!」

大神「…我はもう黒幕と繋がってはおらぬ。あれから一度も接触していない」

葉隠「信じられんべ!」

大和田「ごちゃごちゃ言うんじゃねえ。手が足りねえっつってんだよ」

葉隠「だからってそこでオーガ入れて作戦が漏れても意味ねーっつうの!」

朝日奈「お願い信じて葉隠。さくらちゃんは何もしないよ」

石丸「僕も大神君はもう黒幕と繋がってはいないと思う!」

679: 2013/11/01(金) 23:07:14.72
葉隠「はあ?根拠はなんだべ?」

石丸「…無い」

葉隠「はあ?!」

石丸「しかし僕は朝日奈君と大神君の友情を信じたい。朝日奈君をあれほどに大切にしている大神君ならば彼女が傷つくようなことはしないはずだ!」

石丸「…きっとそうに違いない!」

桑田「…説得力ねーぞ」

石丸「まだ足りないかね。…しかし僕には大神君が裏切っているようには見えないのだ。…それは君も同じではないかね、葉隠君」

葉隠「う…」

石丸「共に食事をした朝を思い出したまえ!共に語り合った時間を思い出したまえ!…僕は、あの時間が嘘だったとは思わないぞ!」

葉隠「でも裏切ったらどーすんだ!何でオーガがモノクマに従ってたんだかしらねーけど!もし裏切れって命令されたらこいつは裏切んだぞ!そうしたら俺たちはお終いだべ!」

朝日奈「…しない」

葉隠「朝日奈っち…」

朝日奈「さくらちゃんは…そんなことしない」

葉隠「何で言い切れるんだべ!」

朝日奈「友達だから、だよ」

680: 2013/11/01(金) 23:09:30.00
葉隠「理由になってないべ…」

朝日奈「…わかった。これ、見て」カサッ…

大神「…それはっ!?」

山田「…何ですかな、この手紙は…」

大神「朝日奈、どこでこれを!」

朝日奈「…さくらちゃん、隠すの下手なんだもん。私見つけちゃったよ…」

朝日奈「…これはさくらちゃんの遺書だよ」

葉隠「いっ…!」

石丸「い…遺書?!君は何を考えているのだ大神君!」

大神「……」

不二咲「…ほ、本当にこれ遺書なの…?!」

大神「…そうだ」

大和田「ふざけんな!何でこんなもん書きやがった!」

山田「な、中身は?!」

朝日奈「中身は読んでない。だってさくらちゃんは氏んでないもん」

朝日奈「自分が氏ぬことを前提にして書かれた文章なんて読みたくない。たとえさくらちゃんが書いたものでも」

葉隠「……」

681: 2013/11/01(金) 23:10:29.32
朝日奈「…ねえ葉隠、さくらちゃんがどうしてこんな手紙を書いたと思う?」

葉隠「……」

朝日奈「わからない?」

朝日奈「……ねえさくらちゃん、責任を取るつもりだったでしょ?」

大神「……」

朝日奈「何をどうやって責任をとろうとしてたのかはわからないけど…でも私にはさくらちゃんが何かを覚悟していることくらいはわかったよ」

朝日奈「…酷いよ。表では私のこと慰めながら裏ではこんな風に氏ぬことを考えてたなんて」

朝日奈「二人で頑張ろうねっていったじゃん…氏んじゃうなんてやだよ…」

大神「しかし朝日奈…我は責任を取らねばならぬのだ」

朝日奈「責任ってなんの責任なの?さくらちゃんが取らなきゃいけない責任って何?!」

大神「皆を裏切った。…そのせいで関係に不和が生じている」

朝日奈「…不和が生じているように見える?さくらちゃん」

大神「……」

朝日奈「私には…さくらちゃんが氏ななきゃいけないほどのことになってるなんて思えないよ」

石丸「…そうだ。僕たちはーいや、少なくとも僕たち四人は結束している」

682: 2013/11/01(金) 23:11:11.73
山田「……」

葉隠「……」

石丸「…彼らのことは、わからないが」

朝日奈「協力してよ葉隠…私こんな手紙読みたくないよ…」

朝日奈「お願い…」

葉隠「…そうはいわれてもだべ…」

石丸「…大神君が信用ならないというならば編成は考慮しよう。彼女の手を借りることだけは了承してくれないか葉隠君」

石丸「このパソコンが奪われては元も子もない。大神君がいればそれだけ皆の負担が減るのだ」

大和田「テメーも睡眠時間減らしたくはねえだろ?」

葉隠「…まあ、仕方ないべ。背に腹は変えられねえもんな」

石丸「ありがとう」

朝日奈「…信じてくれないの?葉隠…」

桑田「…朝日奈、こういうのってよ、信じよう!と思ってもそうそう態度を変えられるもんじゃないんだぜ」

朝日奈「……」

大神「…かまわぬ。もとよりそのつもりだ。機会を与えられただけでもありがたいというものだ」

683: 2013/11/01(金) 23:11:50.80
石丸「…是非行動で証明してくれ。君たちが敵でないと。僕は信じている」

朝日奈「…うん」

不二咲「もちろん、僕たちも信じてるよ」

朝日奈「…そうだよね。辛いのはさくらちゃんなのに私ばっかり辛い顔してたら駄目だよね」

朝日奈「見ててよ葉隠。私絶対さくらちゃんが敵じゃないって分からせるからね!」

石丸「活躍に期待するぞ!」

朝日奈「うん!」

石丸「ではここからはどうアルターエゴを監視するかについて決めようと思う。ひとまずは僕の話を聞いてくれ」



石丸「…部屋以外で寝てはいけないという校則がある以上、長時間を一人に任せるのは危険だ。故に最低二人以上で監視をしてもらうことになるだろう」

石丸「この案では夜時間が始まって朝になるまでの時間を三つのグループに担当してもらうことになる」

石丸「夜時間は何があるかわからないため、一度狙われた不二咲君を行動させるのは極力避けることとする」

石丸「…グループ分けは男女の区別なく行う」

石丸「万が一、襲撃があった場合の行動はこうだ」

石丸「まず、一人はすぐに大神君を呼びに行ってもらいたい。大神君には部屋の鍵を開けて待機していてもらう予定だ」

684: 2013/11/01(金) 23:13:16.11
石丸「その間、残った一人には時間稼ぎをしてもらう」

山田「やれる気がしないんですけどー…」

石丸「時間稼ぎを行うことが無理だと感じた場合は、アルターエゴを持って逃げてくれ。相手に奪われることを避けるのだ」

桑田「それが無理な時は?」

石丸「最悪棚に片付けて鍵を閉めてくれ。相手は合鍵を所持している可能性があるが、その場合は仕方がないだろう」

石丸「それすらも無理な場合は身の安全の確保を最優先だ。無理は言わない」

朝日奈「さくらちゃんを呼んだ後はどうするの?」

石丸「計画書にはできれば捕獲…無理ならば印となるようなものを付けて逃がす、とあるな」

石丸「無理だけはしないでくれたまえ。命が最優先、次にアルターエゴ、その次に内通者の確保だ」

大神「…うむ」

石丸「その間も大神君を呼びに行った者には皆を起こしてもらいたい。数を用意するのだ」

大和田「数で戦うってわけだな」

石丸「僕たちにある武器といえば人数差しかないからな」

石丸「…以上だ。ちなみにこの殆どは霧切君が考えたものであることを明かしておこう」

石丸「では組み合わせを決め…」

ガラッ

石丸「む?」

685: 2013/11/01(金) 23:15:37.05
苗木「ボクにも…何かできることは無いかな?」

石丸「…苗木君?!」

朝日奈「苗木!」

苗木「何か話してる声が聞こえたからさ…ボクも何かしたいなって…」

苗木「霧切さんに何もかも任せてしまうのは流石にカッコ悪いかなって…あはは」

大和田「…そういやオメエも男だったな」

苗木「いくらなんでも酷く無い?」

朝日奈「…あれ?そういえば霧切ちゃんはともかく舞園ちゃんとか江ノ島ちゃんはどうしたの?苗木一人?」

苗木「何してるのかは教えてくれなかったけどセレスさんと居たよ」

朝日奈「セレスちゃんと?何してるんだろ」

石丸「彼女は怪我人だからな。どちらにせよ彼女を組み込むことは出来ない。セレス君に任せておこう」

朝日奈「まあセレスちゃんも運動が得意なタイプにはみえないしね…」

朝日奈「…ってこれだと山田も難しくない?」

山田「ふっふー!侮ってもらっては困りますなぁ…拙者こう見えても動ける[ピザ]でして…」

葉隠「確かにそれっぽいべ」

686: 2013/11/01(金) 23:16:54.46
桑田「…どーせセレスに追っ払われたんだろ?」

山田「失礼なっ!僕は自分の意思でここまで来たんですぞ!」

桑田「うそつけってのー」

石丸「こら桑田君!士気を下げるような発言はやめたまえ!」

桑田「あーはいはい。とっとと組み合わせ決めちまおうぜー」




脱衣所外

江ノ島「どうしよう…厄介なことになってる…」

江ノ島「早くパソコンを壊すなり盗むなりしないと…」

セレス「何を立ち聞きしていますの?」

江ノ島「わっ?!セレス!」

セレス「中に入りたいのならば入ればいいではありませんか」

687: 2013/11/01(金) 23:17:25.79
江ノ島「いやーパス!何かめんどくさそうな話してるし!そういうのダルいんだよね」

セレス「わたくしたちの運命を左右するかもしれないものを守るための会議ですのに…随分と協調性がありませんわね」

江ノ島「セレスに言われたく無いし…セレスこそ出ないの?山田はいるみたいよ?」

セレス「わたくしは一生ここで暮らす覚悟をしていますし…危ない橋は渡りません」

江ノ島「はぁ?マジで?頭おかしいんじゃないの?」

セレス「あなたこそ随分と適応されていらっしゃるようですが。外にでたいなどと本当は思っていないのでは?」

江ノ島「冗談!外にでたいに決まってんじゃん!」

セレス「あらそうですの」

江ノ島「あんたも嫌な慣れ方してない?こんなとこでマジで一生暮らす気?」

セレス「フフフ…一生過ごすことになるかどうかなんて、誰にもわからないですのよ?」

江ノ島「え?それってどういう…」

セレス「秘密、ですわ」



舞園「………」

690: 2013/11/04(月) 23:26:25.27

男子トイレ

霧切「悪いわね苗木君。監視の担当なのに付き合ってもらって」

苗木「監視の担当はまだだから大丈夫だよ。それに僕でもできることがあったら何でも言ってって言ったし。たださ霧切さん…」

霧切「何?」

苗木「場所間違えてない?ここ男子トイレだよ?」

霧切「間違えてないわ。時間がないから早く来て」ツカツカ

苗木「ちょ、ちょっと!」




霧切「ここを…こうよ」キイ…

苗木「うわっ?!隠し扉?!」

霧切「以前見つけたものよ。その時は調べられなかったの。入りましょう」




苗木「…埃っぽいね」

霧切「手早くここにある資料に目を通して。読む必要はないわ。私たちに必要そうな資料があれば取って」

苗木「わかった。えっと…」パラパラ

691: 2013/11/04(月) 23:27:42.69
霧切「……あれは」パラパラ

苗木「どうかしたの霧切さん」パラパラ

霧切「ここ、インターネットに繋げられるのね」

苗木「えっ?…本当だ」

霧切「アルターエゴを繋げられるかしら…」

苗木「そうだといいね…」

カタ

苗木「ん?」

霧切「誰か用でも足しに来たかしら」

苗木「えっ?それまずくない?霧切さんいるんだよ?」

霧切「ここにいれば気づかれないわ」

苗木「いやそうだけどさ…」

カタ

霧切「早く有用そうな資料を探して」

苗木「うん…」

692: 2013/11/04(月) 23:29:06.28
ドタドタ

霧切「…こっちに来てる?」

苗木「…まさか」



苗木「…止まった?」

霧切「待って、これは…!」

バァン!

??「……」

苗木「なっ……?!」

霧切「…不二咲君が襲われた時の…!」

??「……!」ダッ

霧切「……!」

苗木「危ない霧切さん!……ガアッ?!」

霧切「苗木君!」

??「…?!」

苗木「ぼ、ボクは平気だから…霧切さんは逃げて!」

霧切「無理よ!」

693: 2013/11/04(月) 23:29:54.70
苗木「人!人を呼んで!ボクがコイツを引き止めるから!」ガシッ

??「……」バッ

苗木「わっ?!」

??「……」チャキ

霧切「…苗木君を離しなさい」

苗木「……クソ。霧切さん、ボクは平気だから…逃げ…」

??「……」

霧切「…人質のつもりかしら?」ジリ…

??「……」グッ

苗木「……っ!」

霧切「…それ以上ナイフを苗木君の首に刺さないで。…あなたの要求は何?」

??「………」クイ

霧切「…資料ね。わかった。捨てるわ」パサ

苗木「霧切さん!」

霧切「苗木君は黙って。…さあ苗木君を離して」

694: 2013/11/04(月) 23:30:45.56
??「……」スッ

霧切「…私だけ、外に出ろと?」

苗木「霧切さん!言いなりになっちゃダメだ!折角の手がかりが!」

??「……」

霧切「…わかった、出るわ。苗木君に何かあったら…許さないわよ」クル

霧切「………っ」ジリ…ジリ

??「……」ダッ

苗木「霧切さん!危ない!」

霧切「……!」

??「……」バチバチバチ

霧切「がっ……!」ドサッ

苗木「霧切さん!…お前っ!」

??「……」

苗木「お前の目的は何なんだ!」

??「……」バチバチ

苗木「……っ」ドサ




??「……苗木、君…」

苗木「……」


……いく……ば…さん?

………

695: 2013/11/04(月) 23:31:58.94



深夜 脱衣所

山田「ふー!まずは拙者たちですな…」

大神「…うむ。よろしく頼む」

山田「それはそうと大神さくら殿」

大神「なんだ?」

山田「少々アルターエゴと触れ合いたいのですがよろしいですかな?」

大神「…あまり不用意に触らぬ方が良いと思うが」

山田「同人誌の作成などでパソコンの扱いには慣れているので心配無用ですぞ!」

山田「それに解析とやらがどの程度進んでいるのか聞いてみたくはありませんか?」

大神「…すまぬが我はあの手のものはどうにも苦手でな…大丈夫というならば任せよう。しかし、大切に扱うのだぞ。あれは皆の財産だ」

山田「むっふっふーアルたーん」

大神「アルたん…?」

696: 2013/11/04(月) 23:32:51.83



アル『こんにちわ!』

山田「ふぉ…」

山田(おっとっと…騒いで大神さくら殿に止められては台無しですぞ。当番の時にアルたんと触れ合うためにパソコンに不慣れであろう大神さくら殿とあえてコンビになったのですからな!)

アル『君は誰?』

山田「『山田一二三です』…っと』

アル『山田君?今は夜だよ?こんな時間に起きてて大丈夫?』

山田『実は交代でアルたんを守ることになったのです!』

アル『えっ?そうなの!どうしよう悪いよ…』

山田『そんなことはありませんぞ!アルたんを守るためならば何でもできますぞ!』

アル『…うん、ありがとう。山田君かっこいいね』

山田「ふおおおおおおおっ?!」

大神「どうした?!」

山田「うほっ?!な、何でも!何でもないです!」

大神「本当なのか?凄まじい悲鳴が聞こえたぞ…」

山田「予想以上にアルターエゴの性能が良くて驚いただけですぞ…」

大神「…あまり大きな声は出すな」

山田「いえっさー!」

697: 2013/11/04(月) 23:33:36.34
大神「では我は入り口から見張っていよう…」

アル『どうしたの?』

山田『気づかれるとマズイのでできるだけ小声で頼みます』

アル『あっ!そうだよねぇ…気がつかなくてごめんね。ボリュームを下げるよぉ…』

アル『これでいいかな?』

山田(これで外にいる大神さくら殿にも聞こえないはず…)

山田『バッチリです!』

山田(さてこれから夢のアルたんタイム…時間がくるまで心ゆくまで…楽しむだけだー!)







アル『山田君は凄くいろんなことを知ってるんだね。ご主人タマでも知らなかったことばっかり…あっ』

山田『どうしましたかな』

アル『一つファイルの解析が終了したよ!』

山田「えっ?!えええ?!」

大神「…?」チラ

山田(おっとっと…)

698: 2013/11/04(月) 23:34:27.04
山田『いっttgmpあいdmなhおイルですか?!』

アル『落ち着いて山田君!タイプがめちゃくちゃだよぉ』

アル『えっと…今のは『一体どんなファイルですか?』かなあ?えっとね…』

アル『画像ファイルだよぉ。見る?』

山田「画像ファイル…?」

山田(…見るべきなのでしょうか…しかし一人で見たとなると信用に問題が発生してしまう可能性が…)

山田『どんな画像ですか?』

アル『ご主人タマと…データによるとこれは桑田君と大和田君かな?』

山田(…あの三人?)

山田(生徒の写真ということはそう対して重要なものでも無い可能性も…)

山田『とりあえず僕に見せてください』

アル『分かったよ。…これなんだけど。見たことあるかな?』

山田(これは何とウホッ…な写真…ん?)

山田(この写真何やら違和感が…)

山田(…んん?)

山田(部屋が明るい…ああ、窓が開いて…なるほ…)

山田「どっ?!」

699: 2013/11/04(月) 23:35:17.74
山田(何故?!何故この写真の部屋の窓は開いているのです?!)

山田『何故窓があいているのですさゆ?!』

アル『おっ落ち着いて…』

アル『そうだよねぇ…不思議だよねぇ。僕に与えられた情報によると今閉じ込められている所は窓が塞がれてるんだよねぇ』

アル『ファイルの日付は××××年、××月××日だよ。心当たりは無いかな?』

山田(そして作成日付がまさかの一年後おおおおっ?!)

山田(こっこのファイルはまさか未来から来た…いやいや無い無い)

山田『このファイルなにかバグってたりしませんかな?』

アル『どうして?』

山田『そのファイルは日付がかなり未来になってますぞ』

アル『僕の入ってるパソコンの時計が狂ってる可能性もあるけど、ファイルに問題は無いよ』

山田「…そういえばこの写真何か見覚えが…」

??「……」

山田「……ハッ?!むごっ?!」

バチバチッ


山田(…え…な…に?)ドサッ

700: 2013/11/04(月) 23:35:50.97
??「……」

アル『えっ?削除しちゃうの?……うん。わかった。削除するね…消したよ!」

??「…削除できた。……これでよし。念には念をいれておかないと危ないもんね…」

山田(だ…誰…)

??「こんな写真みたら苗木君本当に思い出しちゃうし…」

??「……撤退」





大神「山田?!」

山田(……)

大神「山田!しっかりするのだ!山田!山田っ!」



701: 2013/11/04(月) 23:36:33.81







『…ちょっとやめてよ桑田君ってばぁっ』

『くらえ桑田スペシャルっ!なんてな!』

『くすぐったいって!』

『ぎゃはははっ』

『どうした楽しそうじゃねえか!』

『ぐえっ?!おいやめろ大和田!やべえって!マジしまってるっつーの!』

『……うわぁ男三連結とは…ちーたんでなければ非常にむさ苦しい図ですなあ』

『うるせぇほっとけや』

『随分と楽しそうだな兄弟!』

『おう混じるか?』

『いや僕はそれよりも…山田君、そのカメラを貸してくれないか?』

『おっ写真でも?どうぞ』

702: 2013/11/04(月) 23:37:13.94
『ありがとう!それでは三人ともーハイチーズ!だぞ!』

『ちーず!』


(これは…あの時…)

(出校日に久しぶりに会って…)

(…久しぶりに「会って」?)

(僕たちは初対面だったはずでは…)

(…初対面…ではない?)

(あっていた…)

(…そうだ。僕たちは…)








山田「……くらす、めいと…」

山田「…ハッ?!」

大神「山田!起きたか?!しっかりしろ!」

朝日奈「山田っ!」

703: 2013/11/04(月) 23:37:53.36
山田「ここは…?」

石丸「僕の部屋だ」

山田「僕は脱衣所にいたのでは…」

大神「…気を失っていた」

山田「どういうことでしょう…?」

大神「我が見張っていた時のことだ。




大神『……』

ガッシャーン!ガラガラガラガラ

大神『何ごとだ?!』

大神『廊下?!…』ダダッ

大神『いや待て。山田に知らせてから…』ダッ

山田『……』

大神『…山田っ?!』





大神「ということだ」

山田「……」

大神「そのまま石丸の部屋にお前を連れて来たのだ…」

704: 2013/11/04(月) 23:38:47.74
山田「…人は、人はいませんでしたか…?」

大神「人?」

山田「何かビリビリとするものを押し付けられたのですぞ…」

石丸「…つまり、襲われたということなのだな」

朝日奈「さ、さくらちゃんがいたのに襲いに来たの?!離れてたのは少しの間なのになんて早技…」

大神「…あの騒音は罠であったか。わかりきっていたことだが」

大神「すまぬ。あのような大口を叩いていながらこの様とは…おぬしにも怪我をさせてしまった…」

大和田「大神が居たのに襲いにきやがったっつーことは…余程腕に自信がありやがるようだな…」

桑田「…やっぱり外部の奴なんじゃねえの?大神倒す自信があるとか人間じゃなくね?」

石丸「しかし霧切君の話では…」

大和田「そもそも外の奴だったら大神を倒せんのかよ…」

桑田「あっやっぱ無理だわ」

朝日奈「何の話?」

桑田「こっちの話」

山田「…アルたんは無事ですか?!」

石丸「アル…たん?」

705: 2013/11/04(月) 23:39:35.11
桑田「アルターエゴのことか?…それならまだ脱衣所だよな?」

不二咲「今は十神君が脱衣所を調べてくれてるよぉ」

山田「十神白夜殿が?!どんな風の吹きまわしですか?!」

桑田「…まあ、その反応だわな」

石丸「どうやらアルターエゴのことが気になっていたそうなのだ」

大和田「悔しいが俺たちよりゃまともな調査ができるだろうからな…泣く泣く明け渡して来たぜ」

桑田「あの顔ムカついたよな!」

大和田「おう。思い出しただけでブン殴りたくなる顔だったぜ」

石丸「やめたまえ!十神君の態度はともかく、難しい調査を名乗り出てくれたのだから」

不二咲「霧切さんがいたら良かったんだけど…十神君アルターエゴのことよく知らないだろうし」

山田「そういえば霧切響子殿は?」

朝日奈「見てないよ」

石丸「そういえば彼女はどこに…」

桑田「寝てんじゃね?顔色ヤバかったし」

石丸「うむ…彼女は働き詰めだからな…」

不二咲「心配だねぇ…」

706: 2013/11/04(月) 23:40:27.18








舞園(…寝られない)

舞園(何故だか嫌な予感がします…悪寒が止まらない…寒い)テクテク

舞園(あれは…?)




苗木「…いてっ」

霧切「……」

苗木「体を少し打っただけだから平気…」

霧切「…迂闊だったわ。ごめんなさい」

苗木「ううん。大事にならなくてよかった」



舞園(苗木君に霧切さん…?!怪我をしている?!)

舞園「…苗木君、霧切さんっ」

苗木「舞園さん?!どうしたのこんなところで!」

舞園「そんなことより…その怪我は!その怪我はどうしたんですか!」

苗木「この怪我は…」

霧切「…調べ物をしていたら襲われたのよ」

舞園「襲われた…?!」

707: 2013/11/04(月) 23:41:07.89
舞園「誰が、誰がそんなことを!」

苗木「顔はわからなかった…けど、この間不二咲クンを襲った奴と同じだと思う」

舞園「…私が」

苗木「どうしたの舞園さん?」

舞園「私が、もっとしっかり見張っていれば…こんなことには」

苗木「どうしたの…?」

舞園「こんなことならずっとセレスさんにくっついていれば…なんで部屋に帰ってしまったんでしょう…」

霧切「…待って!違うわ、舞園さん!」

舞園「………」ダッ

苗木「待って舞園さん…いった!」

霧切「落ち着いて!あなた怪我をしているのよ」

苗木「いったいどうしたっていうんだ舞園さんは?!」

霧切「できるだけ早く降りましょう。早く舞園さんを止めにいかないと…」

苗木「…早く、行かないと」

708: 2013/11/04(月) 23:42:04.59




セレス部屋前

舞園「開けてください!開けてください!開けてええええええっ!」ガンガン

セレス「なんなんですの?もう夜時間ですわよ!迷惑ですわ静かになさい!」

舞園「でて来ましたね!どうして!どうして苗木君と霧切さんを襲ったんですか!」

セレス「はあ?」

舞園「しらばっくれても無駄ですよ!」

セレス「状況がさっぱり…」

舞園「嘘を言わないでください!苗木君と霧切さんを襲ったのはあなたでしょう!」

セレス「……」

セレス(だいたい把握しましたわ。要するに内通者か殺人を犯そうとした人かはわかりませんが、あの二人が襲われましたのね)

セレス「わたくしはずっと部屋で休んでいましたわ」

舞園「そんな嘘を…ハッ?!」

舞園「…まさか、共犯者がいるんですか?!」

舞園「…それとも、モノクマと共謀したんですか?!答えてください!」

709: 2013/11/04(月) 23:43:56.02
セレス「そう言われて素直に答える人なんていとお思いですか?」

舞園「答えて、もらいますよ…」

セレス(これ以上焦らすと刺されそうですわ)

セレス「わかりました。しかしわたくしはギャンブラー。ただ答えるというのもつまらないですわ」

舞園「どういう、ことですか…?」

セレス「賭けをしませんこと?あなたが勝てばわたくしの知っていることを全てお話しします。そしてあなたの言うことも聞きましょう」

セレス「わたくしが勝てば相応のものをいただきます。…ああ、あとわたくしの名誉を傷つけたことも償っていただきましょうか?」

セレス「いかがですか?この勝負、受けますか?」

舞園「……なんで、こんな勝負を持ちかけるんですか?言わないで扉を閉めてしまえば済むはなしじゃ無いですか?」

セレス「閉めて欲しいのですか?あなたは情報が欲しくてここに来たのでしょう?…まあ、強いていうならば」

セレス「わたくしはギャンブラーですから。スリルは全てに勝るということですわね。だから今回も賭けに出ただけのこと」

舞園「…最低です。そんな考えで苗木君たちのことも襲ったんですか」

セレス「あなたも同じ穴のムジナでしょう?人のことを言えた立場ですか?」

舞園「……」

セレス「それで?賭けますの?逃げますの?時間はあまりありませんわよ?」

舞園「…賭けます」

セレス「そうですか」

710: 2013/11/04(月) 23:44:54.45
舞園「それで勝って…あなたが何をしたのか、吐いてもらいます!それに、今後何もしないということを誓ってもらいます!」

セレス「…ではあなたは何を賭けますの?」

舞園「…万が一の時はあなたの身の潔白を、私が証明します。何があっても」

セレス「この賭けはつりあっているのでしょうか?微妙ですわ」

舞園「足りない…と?…でしたら、私の…私の体を賭けます!これで文句はありませんよね?!」

セレス「そんなものは要らないんですが…まあ構いませんわ。わたくしが欲しいのはスリル。『負けるかもしれない』というちょっぴりの恐怖ですから」

舞園「……」

セレス「もう一度お聞きします。賭けますか?」

舞園「…賭けます」

セレス「…グッド!それでは空き教室にでも行きましょう?」

舞園「……」


711: 2013/11/04(月) 23:45:35.33





霧切「やっとついたわ…」

苗木「…舞園さんは?」

霧切「…恐らく、セレスさんの所よ」

苗木「何で?!」

霧切「いいから!」


セレス室前

霧切「……」ピーンポーン

苗木「……」

霧切「……」ピーンポーン

苗木「……出ないね」

霧切「セレスさん。開けなさい。そこに舞園さんがいるでしょう?」



霧切『セレスさん。開けなさい。そこに舞園さんがいるでしょう?』

セレス「黙ってやり過ごしますわよ」

舞園「……」

霧切『舞園さん?そこにいるんでしょう?出て来てくれないかしら』

苗木『舞園さん!何があったの?出て来て!』

舞園「……」

712: 2013/11/04(月) 23:46:29.63



霧切「無視を決め込むつもりだわ…」

苗木「どうすれば…」

十神「おい」

苗木「わっ十神君!久しぶり」

十神「フン。貴様ら今までどこにいた?」

霧切「ここでは言えないわ」

十神「ほう?何処かに行っていたということか?では今何が起こっているのか知らないな?」

苗木「な…何かあったの?」

十神「山田が襲撃されアルターエゴの解析したファイルが消去された」

霧切「?!」

十神「解析された画像ファイルを見たのは山田だけだ。その山田も今は意識朦朧としているようだがな」

苗木「襲われたって…そんな」

十神「証拠などなにもなかったぞ?…いったい貴様らはなにをしていたんだ?」

霧切「みんなは、どこに?」

十神「石丸の部屋だ」

713: 2013/11/04(月) 23:47:13.65
苗木「行かなきゃ!…舞園さんは」

霧切「仕方が無いわ。後回しにしましょう」

十神「…また舞園が何かしでかしたのか?」

霧切「別に。何も」

十神「興味などないが俺に迷惑をかけることだけはするな。いいな!」




石丸の部屋

苗木「みんな!」

石丸「苗木君!…その怪我はどうした?!」

霧切「襲撃されたわ」

朝日奈「しゅ、襲撃って…山田も襲われたんだよ?!そんな一気に三人なんて…」

霧切「手がかりを探していたのだけど、気がついた時には持ち去られていたわ。…アルターエゴのデータも削除されていたそうね」

石丸「…ああ。不二咲君が復旧していたのだが…今は安全を確保するために部屋に移動した。部屋では不二咲君自身で作業が進められないために復旧の作業は停滞している」

霧切「そう」

苗木「山田君は?」

大神「先ほどまでは起きていたのだが…今は眠ってしまっている」

714: 2013/11/04(月) 23:47:51.26
苗木「…誰に襲われたか言ってた?」

石丸「…ひどく記憶が混乱していたようだった。発言の時系列がまるでめちゃくちゃになっていたのだ」

霧切「例えば?」

朝日奈「夏休み、だとか出校日だとか…前の学校のことかな…」

霧切「…そう」

石丸「今夜だけで三人も怪我をしたのか…」

朝日奈「……」

苗木「ボクは平気だよ!」

霧切「…私も平気よ」

石丸「しかし…」



大和田「おい!」

石丸「兄弟?どうかしたのかね?」

大和田「葉隠んとこがやべえ!」

桑田「葉隠まで襲われたのかよ!?」

不二咲「今石丸君の部屋にくる時に気がついたんだけど…葉隠君の部屋の扉が荒らされててすごいことになってるんだ…」

石丸「い、行こう!」

715: 2013/11/04(月) 23:48:38.20



葉隠部屋前

石丸「これは…」

十神「トランプがぶちまけられているな」

腐川「どっ…どこのどいつよ!こんな馬鹿みたいなことしたのは!」

霧切「あなたたちも来ていたのね」

十神「フン」

苗木「これ…扉にカードが刺さってる?」

十神「違う。わざわざ切れ込みを入れてから刺したのだ。上からテープで固定してあるな」

石丸「葉隠君は無事なのか?!」

朝日奈「葉隠!」

ピーンポーン

石丸「……」

ピーンポーン

朝日奈「葉隠…」

716: 2013/11/04(月) 23:49:13.77
ピーンポーン

ガチャ

葉隠「…なんだべ?」

石丸「…無事だったか!よかった…」

葉隠「どうしたべ…うお?!なんだこのトンデモデコレーションは!」

十神「気がつかなかったのか?」

霧切「防音のせいね…」

腐川「それにしたってふ、普通は何か気づくでしょ…やっぱ馬鹿なのよ」

葉隠「なんだべこれは!誰がこんなことしやがった!」

石丸「…山田君を運んだ時には無かったな」

十神「俺が調査のために脱衣所に行った時にもこんなものはなかったぞ」

霧切「私たちが来た時も無かったわね」

十神「となると…相当な短時間でなされたことになるな」

大和田「よくみりゃ扉の傷も塗装だなこりゃ。これくらいならすぐにできるぜ」

霧切「確かに。床に敷かれたトランプと刺さってるトランプが目立っているけどそれ以外は対して手はこんでいないようね」

苗木「犯人はどうしてこんなふうにトランプを…」

717: 2013/11/04(月) 23:50:10.16
十神「アリバイがあるのは誰だ」

不二咲「えっと、僕、大和田君、石丸君、山田君、大神さん、朝日奈さん、桑田君は一緒にいたよ」

十神「俺は腐川と共にいた…調査している俺たちを貴様らは見ているはずだ」

霧切「私たちは…互いに互いのことしか証明できないわ」

苗木「舞園さんを見たよ。どこに行ったかわからないけど…」

霧切「恐らくセレスさんも一緒ね」

十神「葉隠はアリバイは無いな」

葉隠「俺は被害者だろ!」

十神「あとは江ノ島か…」

江ノ島「あたしがどうかしたわけ?」

朝日奈「江ノ島ちゃん!見てこれ!」

江ノ島「うっわ!何これ?酷くない?」

葉隠「だべ!この部屋を使う身にもなれっての!」

江ノ島「これ、やったのセレスだよね!?」

苗木「…えっ?なんで?」

江ノ島「えっ?」

苗木「どうしてそこでセレスさんが出るの?確かにここにはいないけど…」

江ノ島「…いや、だってこのぶちまけられてるトランプセレスのでしょ?」

718: 2013/11/04(月) 23:50:55.48
不二咲「このトランプなら僕も持ってるよぉ」

桑田「俺も持ってるぜ?暇つぶしに使おうと思ってよ」

江ノ島「えっ?だってトランプといえばセレスでしょ?」

石丸「確かにそのイメージはあるが…このトランプ自体は倉庫のものだな。まだ予備はあったぞ。皆知っていると思うが」

江ノ島「いや、でも!その……」

石丸「……」

江ノ島「…そうだよね…トランプあったね…あはは!うっかり早とちり!ごめんごめん」

江ノ島「ごめん……」

朝日奈「……」

葉隠「……」

苗木「……」

江ノ島「あはは…」

十神「妙なやつだな?トランプを見ただけでセレスを犯人と決めつけるとは」

江ノ島「だから早とちりっつってんじゃん!」

十神「あのようにわざとらしく残された証拠を見た時は普通は『なすりつけ』と思うものだがな」

江ノ島「人の間違いをネチネチ突いて楽しい?」

719: 2013/11/04(月) 23:51:53.33
十神「確信があったのだろう?セレスがやった、というな。だから来てそうそう残された証拠の意味も考えずにセレスが犯人だと言い放った。違うか?」

十神「自分の中に出来上がったストーリーに従って証拠を作り、ストーリー通りに事が運ぶように行動したつもりだったのだろうが…先走ったな?ククク…」

十神「最も犯人をセレスに見たてるためにトランプを撒き散らすなど幼稚の極みだがな!そんなことで誤魔化せるとでも思ったのか?」

江ノ島「だから違うって…」

霧切「そこまでよ」

十神「何故止める霧切」

霧切「それは全てあなたの想像でしょう?証拠がないわ」

十神「この分かりきった状況でそれをいうのか?…周りをみろ。普段馬鹿のような発言をするような奴まで誰が何をしたのか確信している顔だぞ?江ノ島はそういうミスを犯したんだ。そして自爆した。違うか?」

霧切「だからそれはあなたの想像でしかないわ。…江ノ島さん、あなたはもう帰って」

江ノ島「で、でも…」

霧切「帰って」

江ノ島「……」トボトボ






十神「何故奴を庇った?」

霧切「…戦う準備ができてない」

720: 2013/11/04(月) 23:52:45.36
十神「戦う準備だと?」

霧切「…そうよ」

霧切「…もう少し時間をかけて行くつもりだったけど…もう持たないわね」

霧切「彼女が内通者であることに気がついていることに気がつかれたわ」

石丸「うむ…」

朝日奈「や…やっぱり葉隠のドアを荒らしたのは江ノ島ちゃんなの?!っていうか江ノ島ちゃんが内通者って…」

霧切「…もうさっきの江ノ島さんの態度で気がついたでしょう?」

葉隠「いくらなんでもあれは怪しすぎんべ…でも内通者ってのは冗談だろ?」

霧切「…いいえ、彼女が内通者よ」

苗木「……そんな」

霧切「この手に証拠は無いけど彼女が封鎖された方から出てくるのを何度も見ているわ。その近辺で彼女の私物も見つけている」

石丸「…モノクマと親しげに離している姿も目撃されている」

霧切「決めては髪の毛…彼女の私物に絡まっていた髪の毛は黒い髪よ。セレスさんと同じくらいの」

朝日奈「…江ノ島ちゃんはピンクだよ?」

722: 2013/11/04(月) 23:53:29.28
霧切「彼女の裸を見た人がいるかしら」

朝日奈「見てないけど…」

霧切「髪の毛を解いた姿は?…考えてみて、彼女は誰とも親しくなっていない。誰にも頭を触らせてない」

苗木「…カツラってこと?」

霧切「…そう。江ノ島さんは変装をしているのよ。…これって不自然じゃないかしら。本人なら変装する必要はないわよね?」

朝日奈「それは…」

霧切「仮にそういうスタイルだったのだとしても…彼女には疑惑が多すぎる」

霧切「悪いけど確信の理由を一つ一つ説明している時間は無い。今は江ノ島さんも動揺しているからいいけど…彼女が冷静になれば…どうなるかは分かるわね?」

石丸「……」

霧切「必ず仕掛けてくるわ。下手をすればモノクマごと…そうなれば勝ち目は無いわ」

桑田「ならどうするってんだよ!」

霧切「もうこちらから行くしか無い」

大和田「まさかそりゃ…」



霧切「…私たちから、仕掛けるわよ」

731: 2013/11/10(日) 01:03:03.10
江ノ島部屋

江ノ島「……」

江ノ島「……電話」

プルルルルルル

江ノ島「……」

プルルルルルル

江ノ島「……」

ガチャ

江ノ島「!じゅ…!」

『ただいま盾子ちゃんはお留守でーす!ぴぃーってなったらメッセージお願いしまぁっす!ぴぃーー!」

江ノ島「盾子ちゃん!盾子ちゃん!」

江ノ島「やっぱり…繋がらない…!」

江ノ島「毎日繋がってたのに…今朝からずっと繋がらない…どうしよう、どうしよう!」

江ノ島「やっぱり何かあったんじゃ…早く確かめにいきたい…」

江ノ島「これからどうしよう…」

江ノ島「いざとなったら自分でなんとかするって決めてたけど…やっぱり盾子ちゃんがいないと…」

732: 2013/11/10(日) 01:03:56.16
江ノ島「…それに、苗木君も…」

『…いくさば、さん?』

江ノ島「………」

江ノ島「考えないと…落ち着け…落ち着け」

江ノ島「盾子ちゃんの所へは向こうから開けてもらえないと入れない」

江ノ島「正面突破を可能にする火器類はここには無い。あるのはナイフとスタンガン」

江ノ島「このままここにいれば間違いなくこの部屋は囲まれる…」

江ノ島「…その前に方針を決め、脱出しなければ…」

733: 2013/11/10(日) 01:06:02.99


江ノ島「ぎゃっははははっ!」

江ノ島「ヤバイ!ヤバイよ!ちょーっと心配させただけでこの様?!絶望的なんだけど!」

江ノ島「毎日毎日電話かかってくるからずっと無視したらどうなるのかな?って思ってたけどまさかここまでテンパるなんてさー」

江ノ島「部屋の中では一人でわたわたするわ部屋の外では節操なく襲うわ…」

江ノ島「挙げ句の果てにはあんな余計な小細工して自爆なんて…はぁ…絶望的な残念さ…どんだけ私のこと心配してんだって…朝から電話に出てないだけなのに」

江ノ島「それに確かにセレスになすりつけろとはいったけどあそこまでしろとは言ってないしー」

江ノ島「…はあ。笑い疲れた…」

734: 2013/11/10(日) 01:06:40.58


空き教室

セレス「何で勝負しますか?」

舞園「……」

セレス「…ポーカーでは私がボロ勝ちしてしまいそうですわね」

舞園「……」

セレス「ババ抜きでもしますか?…まあ、二人ですからあっという間に決着が決まってしまいますが」

舞園「ポーカーで、お願いします」

セレス「…ルール、知っているんですの?」

舞園「あまり…」

セレス「ふざけてますわね」

舞園「……」

セレス「…はあ。まあいいですわ」

舞園「どういうことですか?」

セレス「何回か模擬戦をしましょう。本勝負はそのあとに」

舞園「あなたにそんなことをするメリットなんてあるんですか?」

セレス「ありませんわ。ただ、このつまらない勝負が少しでも面白くするために場を整えているだけですわ」

舞園「……」

セレス「…始めますわよ」

735: 2013/11/10(日) 01:07:36.40



江ノ島「もうこの変装は不要…」バサ


戦刃「……」

戦刃「…盾子ちゃんの元にたどり着く際、邪魔なのは大神さんの攻撃を持ってしても壊せないシャッター…」

戦刃「…でも各所に潜ませているモノクマ内蔵の爆弾を集めて爆発させれば突破は可能なはず…」

戦刃「…数に問題はない。失敗しても平気な数はある」

戦刃「問題は…いかに安全な場所へ持ち帰り分解するか…」

戦刃「…いや、何とかするしかない」

戦刃「ナイフ…スタンガン…防弾チョッキ…エアガン」

戦刃「男子の工具…女子の裁縫セット」

戦刃「食事、救急道具、…、よし」

戦刃「…行動を開始する」

736: 2013/11/10(日) 01:10:07.43
戦刃「……」

戦刃(外に出た…誰もいない。…散ったの?)

戦刃(……あれは?)



大和田「…よし、いねえぞ」

不二咲「…うん」

石丸「迅速に行動だ!速やかに例の部屋へ移動する」


戦刃(…不二咲君は何を持って…)


『ごめんなさい…僕がデータを削除しちゃったから…』

大和田「もういいっつってんだろ」


戦刃(アルターエゴ!)







男子トイレ・隠し部屋

石丸「どうかね?」

不二咲「……うーん」

大和田「……」イライラ

石丸「……」


戦刃(……何を)

737: 2013/11/10(日) 01:10:51.07
石丸「…線は…しっかり入ってるな」

不二咲「……」カタカタ

戦刃(…まさか、ネットに接続…!そんなことをしたら…」

戦刃「くっ!」ダッ






石丸「待ちたまえ二人とも!…おそらく、江ノ島君だぞ!」

戦刃「……」

大和田「下がれ兄弟!不二咲!」

不二咲「大和田君!」

石丸「僕の後ろに来るんだ不二咲君!」

大和田「…まさかマジで襲ってくるとは思わなかったぜ。それがテメーの本当の姿か」

戦刃「……」

大和田「ケガしたくなけりゃあとっとと何処かへ行きやがれ!女だからって容赦しねえ!」

戦刃「…私は怪我なんてしない」

大和田「ああ?」

戦刃「……アルターエゴを、渡せ」

石丸「それは出来ない!」

738: 2013/11/10(日) 01:11:48.05
戦刃「……」ダッ

大和田「……どこか行けっつってんだろうが!」ガッ

戦刃「…この狭い空間の中では、そんな風に場所を取るバットでは、不利」

大和田「うおっ?!」ガアン

戦刃「…簡単に、弾き飛ばすことができる」

石丸「兄弟!」

大和田「ちっ…得物が…!」

石丸「ぼ、僕が相手だ!」

戦刃「…石丸君は、敵ですらない」

石丸「……くっ」

戦刃「例え武器を持っていたとしても…振るう気が無ければただの邪魔でしか無い」

石丸「僕は、僕は本気だぞ!それ以上近づけば君に攻撃する!」

戦刃「…なら、やってみて」

戦刃(反応出来ないスピードで近づくだけで石丸君は無効化できる)

石丸「……てやあっ!」

戦刃(剣道の構えで真正面からの攻撃…横にそれて…)サッ

石丸「あっ?!」

739: 2013/11/10(日) 01:12:44.58
戦刃「…攻撃、武器を弾く」パン

石丸「…竹刀が!」

戦刃「……不二咲君。アルターエゴを」

不二咲「……!」

戦刃「おとなしく…渡して」

不二咲「…い、嫌だよ…」

戦刃「なら…」

大和田「こっちだっつってんだろおおおお」

戦刃「……」サッ

石丸「…避けたところで僕がいるぞ!」

戦刃「……退いて」ガッ

石丸「があっ…?!」

大和田「兄弟!テメ……?!」

戦刃「動くな」チャキ

不二咲「あ…あ…ごめんね大和田君。捕まっちゃったよお…」

戦刃「…手をあげて。従わなければ…刺す」

740: 2013/11/10(日) 01:13:49.19
大和田「…人質なんぞ取りやがって…卑怯モンが…」

石丸「やめろ!不二咲君を離すんだ!」

戦刃「…なら、この部屋を出て」

石丸「不二咲君の解放が先だ!」

戦刃「そっちが先」

大和田「くっ……」

不二咲「ごめんね…ごめんね」

戦刃「……」

不二咲(…なんで僕はこんなに弱いの…)




僕の首元に、銀色に光るナイフがあった。
冷たくて、鋭くて、黒くて、キラキラしてて、そして泣きそうな僕の顔が映っていた。
僕の体は江ノ島さんだった人に抱えられて足が浮きかけてた。


(女の子に抱きかかえられちゃうなんてやっぱり情けないな)


なんて、緊急事態なのにそんな危機感のないことばっかり頭に浮かんで、こんな時まで自分のことしか考えられない自分が情けなくて情けなくて、思わず涙が出た。
涙が顔を伝って落ちて、それを目線で追いかけていたら、服の中に潜ませたあるものの存在を思い出した。
それを使えば僕はこの腕の中から脱出できるし、現状を打破できるかもしれないけど…
それを使う勇気は僕にはない
…情けない


741: 2013/11/10(日) 01:14:51.78

不二咲「…う、うっ。ごめんねぇ…」

大和田「不二咲を泣かせてんじゃねえよ!離しやがれ!」

戦刃「……」

石丸「不二咲君!頑張ってくれ!今助けるぞ!」




涙がこぼれるたびに、僕を抱えた腕が震える。
上を見上げると、そこにあるのは僕の知ってる江ノ島さんじゃない、内通者の江ノ島さんで、まるで無表情だった。
一緒になって怒ったり笑ったりしていた江ノ島さんはどこにいっちゃったんだろう。

その時だった



石丸「……くっ!不二咲君を助ける手は…」




「石丸うううう!大和田あああああっ!どけえええええええっ!」



大和田「ああ?!」

石丸「この声は?!」

「いいからどけって!」

大和田「お前…!」

743: 2013/11/10(日) 01:16:02.25
戦刃「…待て!動くな!」

不二咲「…ひっ!」

「てめーこそ動くんじゃねえぞ!」

戦刃「誰!」

「俺だっつーの!」

不二咲「……!」

桑田「うおりゃあっ!喰らえ桑田ビーームっ!」

戦刃「くっ!」



突然、桑田君が奥から現れた。
その瞬間、江ノ島さんは体をぎゅっと縮ませた。
江ノ島さんが僕をもっと強く抱きしめるみたいにして防御したせいで、僕の足は完全に浮いてしまった。少し苦しいし目の前に迫ったナイフが怖い。きらきらしてる。

なんで江ノ島さんが防御したのかわからなくて桑田君をみたら、まるでボールを投げるみたいな動作をとってた。
…桑田君は超高校級の野球選手。こんな距離で何かを投げられたらきっと怪我をしてしまう。
思わず、目をつぶった。


不二咲「……!」


何かが飛んで来る。
僕の首元が締まる。苦しい。
飛んで来た何かは、真っ直ぐに進んで、江ノ島さんの…重ねられた手首に直撃した。

744: 2013/11/10(日) 01:17:02.01


戦刃「う……ぐ!」


僕だったら手首が折れてしまうような衝撃があったのに、それでも江ノ島さんは離してくれない。
まだ首は締まっていて、苦しくて苦しくて息が遠くなって、
思わず浮いていた足を力の限りに振った。


戦刃「あ…?!」


戦刃さんがその衝撃で手を離してくれた。
僕の体が落ちる。


不二咲「きゃっ!」ドサ

大和田「不二咲いっ!」

石丸「今だ!江ノ島君を押さえるぞ!」

戦刃「…くっ、足はまだ、動く!」

桑田「時速168km喰らって動けるとかてめーもバケモンかよ!」

戦刃「せめて誰かを無力化…」

石丸「…僕?!」

745: 2013/11/10(日) 01:17:40.40
戦刃「……動かないで!」

石丸「そんな簡単に……ぎっ…がはっ?!」ガガッ

大和田「兄弟!」

戦刃「その…パソコンは…貰う!」

不二咲「やめて!」

桑田「行かせるかっての!」

大和田「させるか!」

戦刃「……邪魔!」

大和田「ぐあっ?!」

桑田「うわあああああっ」

戦刃「くっ……よし、あとはパソコンを…」


桑田君の放ったボールが江ノ島さんの足を打った。
内出血を起こしているのが見てすぐにわかった。なのに江ノ島さんは止まらないで、二人にキックをした。

747: 2013/11/10(日) 01:28:11.06


戦刃「……」

不二咲「やめて…やめてよぉ…」

戦刃「……」バッ

不二咲「あっ…!返してっ!アルターエゴ!」

戦刃「撤退する…!」


抱えていたアルターエゴはあっけなく奪われた。
助けを求めようとして周りを見たら、石丸君も、大和田君も、桑田も体を抱えて唸ってて、無傷なのは僕だけだった。
目の前では足を引きずっている江ノ島さんがじりじりと外へと歩いて行く。
その胸にはしっかりアルターエゴが抱えられていた。
取り戻せるのは僕しかいない。
動けるのは僕しかいない。



『助けて!』

聞こえる気がする僕と同じ声



『自信を持つんだ。君はできる。優秀だ!』

『もう強えだろ…十分よ』


蘇るのは言葉の宝物




手元には、腕力差をひっくり返せる切り札。
…その時、一つの選択肢が、僕の中に生まれた

753: 2013/11/14(木) 00:01:58.68
いつだって戦うことから逃げて来た。
ひどいことを言われても泣いてるだけでやり返すことなんてできなくて、いつもすべての痛みを飲み込むばかりだった。
先生は…忍耐があるねとか、いい子だなんてほめてくれたけどそんなのは全然違う。

僕は逃げていただけなんだ。

刃向かって負けて、辛い思いをするのが恐かった。
闘って痛みを負うことが恐かった。
誰かを傷つけて痛みを負わせることが恐くて、

ずっと逃げた。


逃げて逃げて、辿り着いたのがこの無様な女装姿だった。
したくも無い女の子の恰好をやり続けた。

毎朝髪を整えて、女の子になる準備をして。
男だってバレないように動作を気をつけて、時々鏡に自分が映ったら乱れていないか再確認。


…そこに映る自分に男がみつからなくて、僕は安心するんだけど
少しずつ男だったことを忘れて行く自分の変化には恐くて目を背けていた



恐い
逃げよう

辛い
逃げよう

痛い
逃げよう

恐い
…逃げよう



…今度は何から逃げようか?


754: 2013/11/14(木) 00:03:05.00



「返してくれ!」

不二咲「…!」

不二咲(あれ…石丸君が居ない)

「返してくれ!」

不二咲「部屋の外…?」

「ぐあっ!」

「離して」

「それを返してくれ!大切なものなんだ!」

「離して!」

「嫌だ!」




部屋の外…トイレの辺りから声が聞こえる。
必氏な石丸君と、必氏な江ノ島さんの声。

755: 2013/11/14(木) 00:03:46.41
石丸「…本当の江ノ島君はどこだ!」

江ノ島「何を…言っている…!」

石丸「本物の江ノ島君を隠し、君が成り代わったのだろう!本物の江ノ島君は無事なのか!」

江ノ島「そんなのわたしが知りたいよ!」

石丸「ぐああっ?!」



陶器に何かがあたる鈍い音とどさりという音。
きっと石丸君が便器に叩きつけられたんだ。


江ノ島「…違う!私が江ノ島盾子!あたしが江ノ島盾子なんだ!本物なんていねーんだよ!」

江ノ島「あたしが裏切ったんだよ!あんたらの探す本物の江ノ島盾子なんてどこにも居ねーんだよ!」

石丸「いるはずだ!どこに隠したんだ!言え!」

江ノ島「だからこっちが聞きたいっていってるでしょっ!」



どっちも必氏なのか支離滅裂な会話が続いた。
でもそれも再びどさりという音が鳴ったあとに止まった。

756: 2013/11/14(木) 00:04:33.53



石丸「待ってくれ…返してくれ」



石丸君の小さな小さな声が聞こえた。
それはとても弱った声で、涙が滲んでいて、情けなくて、聞いてるだけで辛くなってくるものなのに

無傷で座っているだけの僕の声なんかよりもずっと、強さを感じさせる声だった。







…このままでいいの?



…終わらせて、しまうの?







『僕を助けて!』

それは確かに、自分の声だった



757: 2013/11/14(木) 00:05:11.40



戦刃「…ここにくるべきじゃなかった。不要な怪我を負ってしまった…軽症だけど手当しないと」

戦刃「防具をつけてなかったら骨が折れてた………っ?!」



「うわああああああああっ!」



戦刃「何?!」


「僕の、僕のアルターエゴを返してよおっ!」

戦刃「……不二咲君?!」






倒れた桑田君と、引きとめようとする大和田君を無視した。

トイレの床に倒れこんで今度こそ意識をなくしていた石丸君を飛び越えた。


そして全力で江ノ島さんに、喰らい付く。

758: 2013/11/14(木) 00:06:37.01
不二咲「返して、返して!」

戦刃「くっ…!」

不二咲「きゃっ!」

戦刃「離せ」



痛い、痛い、怖い、怖い、
あっけなく剥がされて叩きつけられた。痛い。

アルターエゴが持って行かれる
僕の仲間が持って行かれる。奪われる。待って。返して。
僕のアルターエゴを返して。

僕を持っていかないで
返して
みんなの希望を返して!


不二咲「返してぇ!」

戦刃「…無駄!」

不二咲「うあっ!」

戦刃「こんな子供の遊び以下の動き…抑えられるよ」

不二咲「それは大切なものなの…返して………返して!」

戦刃「まさか不二咲君が立ち向かって来るなんて思わなかった……」


そういいながら江ノ島さんが懐から何かを出すのを見て僕は青ざめた。
だってそれは僕が隠しているものと同じものだったから
もし使われたらー負ける




恐怖に駆られて僕は切り札を突き出した

759: 2013/11/14(木) 00:07:38.02
戦刃「…スタンガン?!」

不二咲「うわあああああっ!」

戦刃「きゃああああっ?!」バチバチ

戦刃「ああ…っ」

不二咲「アルターエゴっ!返して!返して返して返せえッ!」

戦刃「…駄目!返して!」

不二咲「…嫌だ!アルターエゴは渡さない!僕たちのものなんだあッ」ダッ

戦刃「待て!返せえええええっ!」






自分でもどこにいくのかもわからずにに走り続けた。
恐い恐い恐い!


760: 2013/11/14(木) 00:08:41.05




………
……

手元がびりびりする。僕も感電したのかな。恐い。
人にスタンガンを当てた。クラスメイトの、それも女の子に。痛そうだった。
足も怪我して痛そうだったのに、僕は自分を優先して追い打ち、という行為を行った。ひどいことをした。
自分の意思で誰かを傷つけるという行為は、それなりに僕にショックを与えたみたいだ。
痛かったのは江ノ島さんだったのに、どうして自分まで苦しいんだろう。
何で人を傷つけた側の僕が苦しんでるんだろう。
なんて僕は自分本位な人間なんだろう。
一気に何かがこみ上げて来て、屈み込んだ。
視界が滲んで何も見えない。
苦しい。苦しい。


不二咲「はっはあ、はあ、」

不二咲「はあ…はあ」

不二咲(苦しい…息が苦しい…胸も)

不二咲「はあ……あ」


走ったからか胸が苦しくて、息を整えるために深呼吸をした。
深呼吸をしたらそれまで頭を塗りつぶしていた興奮が口から抜けていったみたいで、それまで張り詰めていたものが弾けた。

761: 2013/11/14(木) 00:09:49.38
不二咲「………」

不二咲「……はっ」

不二咲「う、うわあっ!」ブン


ふと握りしめていた手をほどいて、僕はさっき使った凶器を見て慌てて投げ捨てた。
かしゃん、と音をたててそれは落ちた。


不二咲「ぼ…僕、まさか本当にスタンガンなんて使ったの…」

不二咲「あんな怖いものを使ったの…」

不二咲「霧切さんにもらった時は使わないって思ってたのに…」

不二咲(電撃を受けて跳ねる江ノ島さんの体の感触がまだ残ってる…)

不二咲「僕…なんてこと…」




桑田「いた!不二咲!」

不二咲「桑田君…」

桑田「…マジかよ?!アルターエゴ取り戻したのかよ?!すげーじゃん!」

不二咲「え…?」

762: 2013/11/14(木) 00:14:10.85
桑田「なんかぼーっとしてんな。おーい」

不二咲「あ…そうだアルターエゴ」

不二咲(起動させないと…)


電源を咄嗟に切っていたことを思い出して慌てて起動させる。
あとは待つだけになって手持ち無沙汰になった。黒い画面に心配そうに見つめる桑田君と…後ろから走ってくる大和田君が映った。

大和田「不二咲!無事か?!」

不二咲「大和田君…」

大和田「兄弟起きろ!不二咲がアルターエゴを奪い返したぜ!」

石丸「う……そうか。よかった」


大和田君におんぶしてもらっている石丸君がこちらを向けた。
顔に赤黒いアザが出来ていて痛そうだった。
僕がもっと早く行動を起こしていれば石丸君はこんな怪我はしなかったのに。

不二咲「酷い怪我…」

石丸「ははは…失敗してしまった。不二咲君に助けられたな」

不二咲「ぼくが…僕がもっと早く動いていればこんな怪我はしなかったのに…ごめんなさい」

大和田「何言ってんだ不二咲!闘って出来た怪我はよぉ!漢の勲章なんだよ!こんな怪我かすり傷みてーなもんだろ?なぁ兄弟!」

石丸「ああ!そうだ…いてて!」

桑田「あーいたそーオレじゃなくてよかったー」

763: 2013/11/14(木) 00:14:58.95
大和田「おいコラ」

桑田「へーへーすんません」

大和田「なんかムカつくな…ああスッキリしねえ殴らせろ桑田」

桑田「なんでだよ!」

石丸「兄弟!揺らさないでくれ落ちる!」

大和田「わっ悪りい兄弟!」


もう三人はいつもみたいな軽口を叩いていた。
僕も笑おうとしたんだけど…顔が思うように動かない。僕は怪我なんてしてないのに。


不二咲「……」

桑田「お、おい不二咲?どうしたんだよ?」

不二咲「……」

桑田「真っ青じゃねーか!熱でもあんのか?!」

大和田「………あれか」

不二咲「……」

大和田「スタンガン使ったのか」

不二咲「うん」

764: 2013/11/14(木) 00:15:50.64
桑田「…感電したとか?」

大和田「ちげえよ。……不二咲、もしかして喧嘩したの初めてか」

不二咲「……うん」

大和田「……時々よお、いるんだよなぁ。そういう奴がよ」

石丸「…というと?」

大和田「人をブン殴ってショックを受ける奴が時々いんだよ」

不二咲「……」

大和田「大体はそいつが骨無し野郎ってだけだがよ、そうじゃないけどショックを受ける奴もいやがる」

不二咲「僕…根性なしだもんね…」

大和田「違う」

不二咲「違わないよ。みんなが闘ってるのに、ずっと縮こまってて…こんな風に動けなくなって…情けないよ」

大和田「ちげえっつってんだろ!」

不二咲「…ひっ!」

石丸「きょ、兄弟…すまない。声が大きくて頭がガンガンするのだが…」

大和田「…悪りぃ」

765: 2013/11/14(木) 00:17:10.17
大和田「…別に殴る蹴るができる人間が強い訳じゃねえ。もしそうならその辺のチンピラだって強いことになんだろ」

大和田「人を傷つけることにショックを受ける奴ってのはただの力とは違う強さを持つ奴だ。そういう奴は力を外に向けることしか能の無え奴とは違う」

大和田「時々いやがるんだ…ただ殴られてるだけで、反撃なんてしてこねえくせに、ふと目線を合わせただけでこっちが負けたような気分にさせてくる奴が」

大和田「耐えることが出来る奴ってのは強い奴だ。そういう奴には腕力じゃ勝てねえ」

大和田「最後に勝つのは…そういう奴だ」

不二咲「……」

大和田「自信を持ちゃいいじゃねえか。俺たちが全員負けちまった奴に勝ったんだろ。胸張って笑えばいいじゃねえか」

大和田「勇気を振り絞って立ち向かったんだろ…だったらもうお前は根性無しの野郎なんかじゃねえ」

大和田「耐えることを知ってる強い男だ。自信持って胸張りやがれ」

不二咲「……」

『ご主人タマ!』

石丸「……よかった、無事だったか」

アル『何があったの?!みんなは無事なの?!』

桑田「『おう。不二咲が体張ってお前を取り返したんだぜ』」

766: 2013/11/14(木) 00:19:30.21
アル『…そうなの?』

不二咲「えっと……」

アル『凄いよご主人タマ!かっこいいよ!』

桑田「『だろ?雄叫び上げて走ってったんだぜ?』」

アル『…すごい。僕じゃきっとそんなことできないよ…。強くなれたんだね、ご主人タマ!』




とても、不思議な気分だった。
アルターエゴは自分を模して作られている。
自分と同じコンプレックスを持ち、悩みを持ち、憧れを抱いている。
肉体を持たないプログラムじゃ永遠に解決できない悩みを僕はアルターエゴに与えた。
その時は特に何も考えないで自分と同じ特徴を与えただけだった。
でもそれが今になってこんな不思議な状況を生むだなんて思ってなかったんだ。


アル『えへへ!なんだか僕も嬉しいなあ!僕もいつかご主人タマみたいになれるかな、ご主人タマ!』


過去の自分と話しているような感覚。
……ううん。アルターエゴは過去の僕が詰め込まれているんだからまさしくこれは過去の僕との邂逅なんだ。
僕は今あの時憧れた場所にいるんだろうか。
僕自身は何かが変わったとは思えない。体は薄いし力はないし、無様に手だって震えてるんだから。

767: 2013/11/14(木) 00:20:24.46
アル『ご主人タマ!僕を助けてくれてありがとう』


過去の自分にお礼を言われるのはとても不思議な気持ちで



アル『ご主人タマかっこいいなぁ…僕もご主人タマみたいになれるよう頑張らないと!』


ひたすら褒められるっていうのはとっても恥ずかしかった。


不二咲「アルターエゴ、異常がないか確認して」

アル『うん。わかったよ!』

不二咲「大和田君…一つ謝りたいことがあるんだ」

大和田「んだよ」

不二咲「…あの時はごめんね。僕すっごい恥ずかしいことをしていたみたい…」

大和田「……何がだよ」

不二咲「あんな風に、無邪気に自分を褒められ続けるのって凄く恥ずかしいんだね…自分の言ってたこと思い出して恥ずかしくなってきちゃった…えへへ」



悩みを打ち明けた時の自分はきっと浮かれていたんだと思う。
憧れてる大和田君の強さに近づけた気がして、はしゃいでいたんだきっと。
だからあんな無邪気に大和田君に憧れをすべて吐いてしまっちゃったんだろう。
ちょっと子供っぽかったな。ちょっと恥ずかしいな。
だから笑ってごまかそう。

768: 2013/11/14(木) 00:21:00.16
不二咲「ふふふ…なんだか恥ずかしいな」

石丸「褒められるという行為は恥ずかしいのか?胸張れることではないのかね」

桑田「おめーは黙ってろ」

大和田「…おら、とっとと安全なとこまでいくぞ。兄弟の手当をしなきゃならねえんだからよ」

桑田「あんときのイインチョ情けなかったなー」

石丸「…言わないでくれたまえ。少しは情けなく思っているのだ」

大和田「やっぱ兄弟に喧嘩はむいてねえな!」

石丸「当たり前だ!喧嘩など以ての外だぞ!本来ならば必要のない行為なのだ!」

桑田「だからってあれはひでぇよ!」

不二咲「そんなことないよ」

桑田「ん?」

不二咲「石丸君も、桑田君も、大和田君も、みんなかっこよかったよ」

不二咲「僕はそう、思うよ」





状況はよく無い。
これからどうなるのかもわからないし、校舎の窓は相変わらず締め切られている。


それでも僕の胸には青空の下にいるような、爽やかな風が吹いていた。

813: 2013/11/21(木) 22:25:38.98
桑田「石丸まだ立てねえの?ちょっと朝日奈呼んで来るわ」

大和田「おう。頼むぜ」

桑田「おう」






不二咲「そういえば朝日奈さんが手当をしてくれるんだっけ」

大和田「大神がよぉ、朝日奈は絶対に戦わせないでくれってうるさくてよ。まあ朝日奈も女だし俺はそのつもりだったんだがよ」

不二咲「朝日奈さん優しいもんね…」

大和田「まだ江ノ島のことを仲間だと思ってるとこあっからな。躊躇ったらやられちまうし朝日奈は手当係でいいだろ」

不二咲「うん。…石丸君大丈夫?」

石丸「君たちが思っているほど重症ではないのだが…」

大和田「自己申告なんざ当てになるかっつーの」






朝日奈「…来たよー!ってうっわ!石丸顔酷い!」

桑田「だろ?」

朝日奈「これ冷やさないと絶対腫れるよ!…氷が欲しいところだけど食堂閉まってるんだよね」

桑田「水ならたくさんあるぜ。トイレだけどな」

814: 2013/11/21(木) 22:27:15.96
不二咲「アルターエゴをインターネットに繋ぎたいし、あの部屋に戻らないとねぇ…」

大和田「もう江ノ島の奴は居ねえだろうな…いたら戻れねえぞ」

朝日奈「…石丸もだけど、本当に江ノ島ちゃんがこれやったの?」

桑田「まだいうか?」

大和田「俺たち全員簡単に投げられちまった。ありゃ大神以外は戦力外だな」

桑田「俺が至近距離で投げた球を喰らってもこっちきたぞ?俺の球はプロでも怪我するレベルだぜ?ありえねーだろ」

朝日奈「まだ信じられない…」

石丸「気持ちはわかるのだが…立ち会った時にそれでは僕のようになってしまうぞ」

朝日奈「うん…」

石丸「僕は心定まらない中途半端な状態で挑んだ結果、こんなことになってしまった…本気で彼女のことを敵だと思えないのであれば逃げた方がいいだろう」

石丸「君は足が速い。もし出会ってしまったならば、すぐに逃げて頼りになる者を呼んでくれ」

朝日奈「…うん。仕方…ないんだよね、こうなるのも。黙ってたら頃し合いさせられちゃうんだし…外出れないし」

石丸「…ああ」

朝日奈「……、手当しよっか」

桑田「取り敢えず顔だな」

不二咲「でも顔なんてどうするの…?」

815: 2013/11/21(木) 22:28:32.13
朝日奈「…本当に傷のところ洗って消毒してガーゼ当てるくらいしかできないね」

大和田「無いよりましだろ」

石丸「ならばガーゼを貼ってもらいたいところがあるのだが」

朝日奈「どこ?」

石丸「ここなのだが…」ヌギヌギ

朝日奈「キャーッ!ちょっと何ぬいでんの?!」パーン

石丸「ぐおおおお顔がああああっ」

桑田「…アザんとこ平手直撃…いってえ…」

大和田「おいコラ朝日奈ァ!手当はどーした手当は!」

朝日奈「ぬ、脱ぐなら脱ぐって言ってよ!びっくりすんじゃん!…って何それ」

石丸「雑誌だ!腹に巻いていた!」

大和田「おお。俺がやっとけって言っといたやつか」

石丸「うむ。これを巻いていたおかげで蹴りのダメージが減ったと思う!…が」

不二咲「が?」

石丸「蹴られた際に雑誌の角がみぞおちに食い込んだのだ…ついでに皮も剥けた…血が出ている。怪我に関してはここが一番酷いのだ。手当を頼みたい」

朝日奈「うわぁ……」

不二咲「痛そうだよぉ…」

桑田「…もーちょいかっちょいい怪我の仕方できなかったのかお前…」



816: 2013/11/21(木) 22:29:34.62
朝日奈「…はい終わり!それでこれからどうするの?」

石丸「僕たちは先ほどの部屋に残る」

不二咲「うん。さっきの部屋に戻るよ」

大和田「俺ァその辺回ってるわ」

桑田「オレも回るわ」

朝日奈「バラバラになっちゃうの?危なく無い?」

石丸「固まっていたところでどうにもできまい。まとめてやられてしまうだけだろう」

大和田「だったら少しでもバラけて時間を稼ぐってことよ」

石丸「無理はしない。安心してくれ」

桑田「オレは江ノ島探す。見つけたらテキトーにボールぶつけて怪我させとくぜ」

朝日奈「…言葉だけ聞いてるとなかなかひどいよね。やってること」

桑田「こっちだって必氏なんだっつの!」

朝日奈「…怪我、しないでよ」

不二咲「うん。頑張るよ」

朝日奈「本当だからね?碌な道具無いんだから怪我したって消毒とかしかできないんだからね?!」

石丸「ああ!分かった!」

朝日奈「なんでそんなに元気良くいえるの…怖く無いの?」

不二咲「怖いけど…いまここで頑張らないときっと、もっと怖くなっちゃうと思うから…」

朝日奈「不二咲くん…」

不二咲「朝日奈さんも、気をつけてね。怪我しないでね」

朝日奈「…うん。何かあったら呼んでね。私もその辺を回ってるから」

817: 2013/11/21(木) 22:30:32.19
大和田「んじゃ、バラけるか」

石丸「その前に頼みがあるのだが」

大和田「何だ?」

石丸「進行妨害トラップを作りたい。縄跳びかなにか紐の様なものを持ってきてくれないか」

大和田「おう。わかったぜ。桑田テメーもな」

桑田「はいはい。んじゃトイレに持ってけばいいんだろ?」

石丸「頼むぞ!」

桑田・大和田「おう」

不二咲「じゃあ僕たちは先に行くの?」

石丸「僕は取り敢えず工具をとってこよう。不二咲君も来たまえ。一人は危険だ」

不二咲「うん」

818: 2013/11/21(木) 22:31:20.51



戦刃「……く、足が腫れてきた…」

戦刃「早いところ回収したモノクマを分解できる場所を探さないと…」

戦刃「…空き教室でいいか」

戦刃「……ん、閉まってる?誰かいるの…?」

戦刃「いま接触したらまずい。隣に行こう」






セレス「……あら?」

舞園「……どうかしましたか」

セレス「いえ…気のせいのようですわ。それよりも…ポーカーの感覚は掴めましたか?」

舞園「…とても、手加減をしていただいていることは分かりました」

セレス「さすがに手加減をしていることには気がつきましたか」

舞園「…セレスさん」

セレス「なんでしょう?」

舞園「あなたの目的はなんなんですか?」

セレス「……」

819: 2013/11/21(木) 22:32:27.79
舞園「もう賭けとかする気はありませんよね?だらだらと練習を続けて…何が目的なんですか?」

セレス「……」

舞園「セレスさん…あなたは他人のために何かを我慢する人では…ありませんよね?」

セレス「そうですわね。言ってしまえばわたくしが一番大切ですわ」

舞園「私にはわかりません。そう言い切ってしまえる人が何故こんな遊びに付き合っているのか」

舞園「私にはわかるんです。エスパー…というわけではありませんが、なんとなくわかるんです」

舞園「何が目的なんですか?まさかまだ賭けポーカーをしたいから…なんて言いませんよね」

セレス「流石に冷静になりましたか」

舞園「…あの時は興奮してしまい、すいませんでした」

セレス「つきまとわれた時は流石に堪えましたわ。もうあのようなことはしないでください。わたくしは無実ですから」

舞園「…いつ、心変わりされたんですか?」

セレス「心変わりなんてしていません。わたくしはずっと真っ白、ですわよ」

舞園「……そうですか」

セレス「……」

舞園「それで…こんなことを続けるあなたの目的はなんですか?」

セレス「…あなたと話がしたかったのですわ」

舞園「…話?」

820: 2013/11/21(木) 22:33:58.20
セレス「舞園さん。あなたはつい最近まで酷く取り乱していましたわね」

舞園「…そうですね」

セレス「ですが例の秘密暴露の次の日には今のような状態でした…いったいどのような心境の変化があったのです?」

舞園「今のままじゃ駄目だと思ったんですよ」

セレス「駄目、とは?」

舞園「そのままです。苗木君や霧切さんに迷惑をかけて心配させて…これではあまりにも情けないと思って心を入れ替えたんですよ」

セレス「ずいぶんとご立派なことですわ」

舞園「…何が言いたいんですか?」

セレス「人間そこまで簡単ではありませんわよ」

舞園「……」

セレス「いい加減に自分の欲望に素直になってみてはいかがですか?」

舞園「私はそんなものありません。これからしてしまったことに償わなければいけないんですから」

セレス「見ていてイラつくのですわ」

舞園「どういう意味ですか」

821: 2013/11/21(木) 22:34:55.65
セレス「人は皆欲望を抱えています。それは金であったり、若さであったり、恋慕であったり…」

舞園「……」

セレス「形はどうであれ、欲望がなければ人は人でいられないのです」

舞園「それを抑えるのが人の理性というものです。私は間違いを犯してやっと理解したんですよ」

セレス「わたくし、内心喝采していたんですのよ?欲望を満たすために行動したあなたに」

舞園「やめてください!」

セレス「それが今ではこれですわ…口から出るのはお綺麗な言葉と安っぽい決意表明。…あなたはそんなものではないでしょう?」

舞園「一緒にしないでください」

セレス「いいえ。あなたはわたくしと同じですわ。同じ深い深い欲を持った女狐…」

舞園「違う!」

セレス「こんな場所で仲間…同類を見つけたのです。語り合ってみたいと思うのは当然のこととは思いませんか?」

舞園「私は…私は!」

セレス「あなたに真意を見抜く目があるように…わたくしにも嘘を嘘と見抜くことができる嘘つきとしての能力があります。あなたの真意が覗けずとも、欲を暴くことなど容易いことですわ」

舞園「……!」

セレス「さあ…どう薄汚く咲くのか…見せてくださいな。あなたの欲望の花を」

827: 2013/11/27(水) 00:35:21.24
葉隠「……暇だべ」

葉隠「もう寝てしまいたい気分だべ」

葉隠「作戦嫌なら部屋にいろって言われたけども状況わからん過ぎて辛いなこれ…」

葉隠「ここまで何も起きてねえんだから別に様子見に行ってもいいよな…」

葉隠「…その前にトイレ…」





葉隠「…ふぅ。いくか…」

葉隠「ん?おっ石丸…っち?え?」

石丸「やあ葉隠君!状況はどうかね?」

葉隠「ちょ、おま、石丸っちその顔…どうした?!」

石丸「…ああ、これか!恥ずかしながら江ノ島君にやられてしまったのだ」

葉隠「えっ?えええええっ?嘘だろ!?江ノ島っちがそんな風にしたって…えっ?!」

石丸「うむ。油断していた…いや、正確に言えば覚悟が足りなかったのだ」

葉隠「いや待てって!まさか本当にやりあったんか?!そんな大ケガが出るレベルで?!」

不二咲「……最初からの説明がいるねぇ、これ」

828: 2013/11/27(水) 00:36:26.63
葉隠「何があったんだよマジで!」

石丸「うむ。説明したいのは山々なのだが僕たちには時間がない。歩きながらでも説明をしようではないか!」

不二咲「ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ。葉隠君手伝ってくれないかなぁ?」

葉隠「お、おう?」







石丸「…ということがあったのだ。現在江ノ島君の居所はわかってない」

葉隠「…そ、壮絶な話だべ…まるでヤクザみてーだな江ノ島っち…」

不二咲「うん。僕もあんなのは初めてだったから今でもドキドキしてる…」

石丸「被害がこれだけであったのが幸いというものだ。もし彼女が強力な凶器を持っていたらと思うとゾッとする」

葉隠「…な、なあ。本当にこのままやりあうんか?降参しねえ?」

石丸「…最後の選択肢だ。少なくとも僕たち二人にとっては」

不二咲「…ごめん、葉隠君。僕はこれからしないといけないことがあるんだ」

葉隠「マジか?正気か?マジでやりあうってんのかそんなワケのわからんの相手に!」

829: 2013/11/27(水) 00:37:32.13
石丸「このまま抵抗しなければ何をされるのかわからない。殺人を煽られ、事件がいつ起こるとも限らない…だから抵抗する。そう皆で話し合ったではないか」

葉隠「いやそーだけども!正直あの時は空気に飲まれていたっつーか。冷静に考えたら勝てねえだろ?建物のそこらじゅうに銃はあるわカメラはあるわ。この話だって聞かれてるかもしれねえんだ!待ち伏せしようが意味はねえ」

葉隠「挙げ句の果てに生身じゃ勝てねえモノクマ!まあオーガだったらわからねぇが常識的に考えて無理ってもんだべ」

葉隠「勝てそうなところで設置されてるマシンガンぶっぱされて一網打尽。はい終了。…そんな氏に方は嫌だべ!」

石丸「……それで何かね。君は何が言いたいのだ」

葉隠「今はもちっとばかり我慢して助けを待つってのは駄目なんか?頃し合いさえしなけりゃ飯はあるし…」

石丸「…食事や身の安全といったものが黒幕の気まぐれ一つで決まってしまうという現実から目を背けてはいないか葉隠君」

葉隠「そりゃそうだけど…今すぐに殺されるってことはねぇってきっと。…まだ時間はある」

石丸「……無い!」

葉隠「う…」

石丸「あるはずが無いだろう!救出を待ってなどすればきっと玩具のように弄ばれて終いだ!」

石丸「いったい君は何がしたいのだ葉隠君!反抗に抵抗があるならば自室待機!それには誰も言及しない!それが約束だっただろう!恐ろしいというならば何故部屋から出てきてしまったのかね!」

葉隠「そ…それは…しかたないだろ」

石丸「何がだ!ここまで大事になってしまった以上、以前の穏やかな監禁生活には戻れないことは明白ではないか!もしもここで負けてしまえば何をされるかわからないのだぞ!」

葉隠「だからってこんな無茶なことする意味あんのか!めちゃくちゃ強いじゃねーか江ノ島!案の定やられてっし!」

830: 2013/11/27(水) 00:38:34.72
不二咲「違うよ!」

葉隠「不二咲っち?」

不二咲「違うよ!まだやられてなんかない!僕たちはまだ戦えるよ!」

不二咲「……まだ、まだ勝てるよ。まだ手段はここにあるから」

葉隠「…どういうことだべ」

不二咲「…僕はアルターエゴで学園のシステムにハッキングを仕掛けようと思ってる」

葉隠「ハッキングって…うまくいくわけねえべ」

不二咲「…うん。わからないよ。うまくいくか、うまくいかないかなんて…うまくいったって、どこまで電子制御されてるかなんてわからない」

葉隠「……」

不二咲「それでも僕はやるよ!もしかしたら、もしかしたら勝てるかもしれないから!負けるかどうかなんてまだわからないよ!」

不二咲「葉隠君…不安なら、占ってみて。僕たちが勝てるかどうか」

葉隠「そんなことしてどうすんだよ…」

不二咲「三割で負けてしまうなら負けない様に頑張る。七割で負けるなら…」

葉隠「負けるなら…?」

不二咲「…必ず三割を当ててみせるよ」

葉隠「結局勝つことしか考えてないんじゃねえか!少しは負けた時のこと考えろ!」

831: 2013/11/27(水) 00:40:55.75
不二咲「…そ、そうだよ。負けることなんて考えられない」

葉隠「な、泣くなって…。なんでそこまで頑張れるんだべ…怖いんだろ?」

不二咲「…うん。怖くて怖くてたまらない。もしも負けちゃったら…って考えると足が止まって…体が震えてきちゃうんだ…だから今は必氏になって強い僕を僕は忘れないようにしてる」

不二咲「……ねえ、葉隠君はどうして部屋を出てきたの?」

葉隠「…え?」

不二咲「怖かったんだよ…ね?」

葉隠「……」

不二咲「きっと僕でも同じ事をしたと思うよ。だって待ちつづける事ってとても辛い事だから。怖い事を我慢して、自分以外を信じて一人で結果を待たなきゃいけないなんて…辛いと思う」

不二咲「だからね葉隠君。もしも不安なんだったら…他に心細い気持ちで頑張ってる人のところに行ってあげて」

葉隠「…は?」

不二咲「葉隠君の他にも同じように不安な人はいると思うんだ…。…ね?石丸君。待ってる人がいるよね」

石丸「…ああ。なるほど。そうだな!葉隠君の力が必要な人がいるな!」

葉隠「えっ?お前ら何勝手に盛り上がってんだべ?」

石丸「葉隠君と話していると本当の自分になれる…そう言っていたな。そういえば」

不二咲「待ってる人のことはわかった?葉隠君」

葉隠「……」

832: 2013/11/27(水) 00:41:55.26
不二咲「わかったよね?」

石丸「行ってやりたまえ。頼りになる親友も居らず、心細い思いをしているだろう」

不二咲「信じられる人といると心が強くなれるから…行ってあげて。きっと葉隠君のこと待ってるから。…きっと葉隠君も強くなれるから」

大和田「おーおーどーした?葉隠じゃねぇか?やっと戦う気になったのかよ?部屋でビビってたくせによ」

石丸「やめたまえ兄弟!それについては何も言わない。そういう約束だろう!」

大和田「…お、おう。悪りぃ」

桑田「でもここに来たっつーことはやる気になったんだろ?」

葉隠「うんにゃ。暇すぎて出てきただけだべ」

桑田「ンだよ手伝いにきたわけじゃねーのかよ冷やかしなら帰れこのアホ」

石丸「だからそういった発言はやめたまえと先ほどから…」

葉隠「あーもー!うるっせぇ!…行きゃいいんだろ行けば!こんな危ねえとこいられるか!俺は自分の部屋に帰る!」

桑田「そういうこと言ったやつって大概次の犠牲者とかだよな?」

石丸「や め た ま え と 言 っ て い る!」

桑田「へーへー。とっとと行けよ馬鹿隠。次会ったときは思いっきり笑ってやるから待ってろよ」

石丸「葉隠君!怖いのならば気にしないで部屋に帰るのだ!僕たちは君が怖がったりしたことを笑ったり気にしたりしないぞ!大丈夫だぞ!」

大和田「兄弟。何気にその発言はきついからやめとけ」

不二咲「ご、ごめんね。僕たち行くねぇ…手伝って欲しいなんて言っちゃったけどやっぱり気にしなくていいよぉ」

桑田「じゃあなー」

833: 2013/11/27(水) 00:42:48.89


葉隠「……なんだっつーの」

葉隠「……はぁ」







葉隠「……部屋に帰るってのもなぁ…一人で居たら危ない気がするし…」

葉隠「かといってオーガあたりと居たらトンデモ戦闘に巻き込まれてエラいことになりそうだべ」

葉隠「つーかセレスっちとか何してんだ?怪我してる舞園っちはともかく……あ、」

朝日奈「…………」

葉隠「朝日奈っち…?」

朝日奈「…あ、葉隠…」

葉隠「…ど、どうしたんだべこんなところで…」

朝日奈「葉隠こそ…部屋にいたんじゃないの?」

葉隠「…暇だから出てきた」

朝日奈「…はあ?!何それ!」

834: 2013/11/27(水) 00:44:16.10
葉隠「仕方ねーだろ!」

朝日奈「何が仕方ないの?!怖いんでしょ?!帰りなよ!中途半端な思いでみんなの足でも引っ張るつもり?!」

葉隠「そ、それはそっちもだろ!朝日奈っちだってなんにもやってねーじゃねえか!」

朝日奈「それは…そうだけど」

葉隠「……」

朝日奈「……」

葉隠「……」

朝日奈「……ねぇ、やっぱり私足手まといかな」

葉隠「いきなりなんだべ」

朝日奈「私…意地だけで黒幕と戦う!なんて言ったけど葉隠の言ったとおり何もできてないんだ…」

朝日奈「霧切ちゃんやさくらちゃんみたいにセレスちゃんや黒幕を探してるわけでもなく、石丸たちみたいに戦ってるわけでもなく…本当…こんなところでなにしてるんだろ、私」

葉隠「…それが普通だろ。誰も彼もが戦えると思ったら大間違いだって。できないのが普通ってもんだべ」

朝日奈「でもさ…友達が怖くても戦ってるのに何もしないで待ってるの…?それでもし勝てたら便乗して負けたら知らんぷりするの?」

朝日奈「それって友達のすることなの…?」

葉隠「でも戦えないんだろ!戦えない奴が前に出てどうすんだ!殺されておしまいだっつの!」

朝日奈「わかってるよ!」

葉隠「……」

835: 2013/11/27(水) 00:45:22.29
朝日奈「…わかってる。さっきも石丸に似たようなこと言われたから。覚悟がないとやられちゃうって」

葉隠「あの怪我で言われると反論できねぇよな…」

朝日奈「葉隠も見たんだね。よくやるよね、みんな。…ほんと私こんなところで何やってるんだろ…」

朝日奈「嫌なの。さくらちゃんを助けるって決めたくせに守られて庇われてる自分が嫌でたまらない…」

朝日奈「こんな言い方したら悪いけどあの不二咲君だってあんなに頑張ってたのに…私は殆ど空の救急箱持ってうろうろしてるだけ」

朝日奈「そんな意味も無いことをして、何かをした気になって、みんなの力になった気でいる自分が嫌」

朝日奈「やだ……もうやだよ…」

葉隠「…はあ。なんでこうなるんだべ…」

朝日奈「…葉隠はいいよね。いつだって自分の好きなようにできるんだから」

葉隠「はあ?どういう意味だ?」

朝日奈「いつだって自分のこと最優先に行動してるじゃん。そんなの普通できないよ」

葉隠「…嫌味か?」

朝日奈「…事実でしょ?そうやって結局は逃げるんだ。自分だけよければそれでいいんだ」

葉隠「だったら逃げればいいだろ!逃げることもできねえくせに全部俺のせいにすんな!」

朝日奈「……」

葉隠「…あ、いや、今のはな…」

朝日奈「…ごめん。八つ当たりした」

葉隠「はぁ…」

836: 2013/11/27(水) 00:46:47.02
朝日奈「……」

葉隠「ここにいたってどうにもなんねえぞー」

朝日奈「……わかってる」

葉隠「……朝日奈っちは何がしたいんだべ?」

朝日奈「……わからない。でも何かをしないと多分駄目になる」

葉隠「だったら何かをすればいいだけだろ?」

朝日奈「それがわからなくて困ってるの」

葉隠「だからってなぁ……俺にはどうしようもねぇべ。んじゃさいなら……」

葉隠「……あら?」ガシッ

葉隠「……なんだべ」

朝日奈「……行かないでよ」

葉隠「……」

朝日奈「一緒にいて…葉隠」

葉隠「……ガキだなぁ朝日奈っちは…一人で帰れねえのか?」

朝日奈「…うるさい」

837: 2013/11/27(水) 00:47:47.51
葉隠「…しょうがねぇなー」

朝日奈「うるさい」

朝日奈「……うるさい!」

葉隠「なんも言ってねえって!」

朝日奈「うるさい!返事をしてよ!」

葉隠「お、おう」

朝日奈「……よし!」

葉隠「何が良しだべ…」








葉隠「おい、どこ行くんだべ!帰るんじゃねぇのか?!」

朝日奈「…帰らない!セレスちゃんたち探さないと」

葉隠「さっきまであんなに落ち込んでたろ!」

朝日奈「何か元気でた!」

葉隠「元気でたって…帰らせろ!化け物同士の戦いに巻き込まれるのはごめんだべー!」

朝日奈「なっ…それ誰のこと?!まさかさくらちゃんとか言わないよね?!」

838: 2013/11/27(水) 00:49:02.88
葉隠「化け物だろうが!」

朝日奈「はあ?!」

葉隠「はあ?じゃねえよ!何も用が無いなら手ぇ離せって!」

朝日奈「いやだ!」

葉隠「……」

朝日奈「こっち探そ!葉隠こっち来てって!」

葉隠「なんなんだって……もう勘弁してくれや…」

朝日奈「…ん?」

葉隠「どした?」

朝日奈「中に人がいる…この空き教室」

葉隠「まさか江ノ島じゃ…」

朝日奈「…様子見た方がいいかな?」

葉隠「…だべ」

朝日奈「どれどれ…」

839: 2013/11/27(水) 00:50:01.25



セレス「………」

舞園「………」

セレス「…どうしました?次カードを配るのは貴方ですわよ」

舞園「…私の欲望を暴くって…どういう意味ですか?」

セレス「急かさないでくださいな。ゆっくり、楽しみましょう?」

舞園「ふざけないでください!」

セレス「机を揺らさないでいただけますか?紅茶が零れてしまいますので」

舞園「……」

セレス「……そんなに、暴かれるのが恐ろしいですか?」

舞園「……」

セレス「改めて言いましょう。…貴方は欲の塊ですわ。言い逃れはできません」

舞園「何故、です?」

セレス「貴方は何もかもを求めすぎたのです。故に、失敗した」

舞園「……」

840: 2013/11/27(水) 00:51:22.99
セレス「外を捨てきれず、夢を捨てきれず、苗木君を捨てきれず…まあ無様ですわ」

舞園「……」

セレス「失敗した後もあの手この手で苗木君を離さないように必氏でしたわね。…こちらについては成功していたようで何よりですわ。苦労が報われましたわね。おめでとうございます」

セレス「苦悩するふりをして男を惹きつけるなど…立派な女の戦略ですわ。お見事です」

舞園「そんな…そんな違います!そんなつもりでわたしは…」

セレス「そう、貴方の最も狡猾な所はそこなのです」

舞園「……なっ」

セレス「あくまで無意識のうちにそういった行為を行っているのですわ。ああ、なんと狡猾でしょうか」

セレス「あなたは自らを清廉な人間と思い込み、そう振舞っていながらも欲を抑えきれずに本能の内にそれを達成するべく行動する…こう言った人を腹黒、というのでしょうか?」

舞園「勝手なことを…!いくらなんでも怒りますよ!あなたに何がわかるんですか!」

セレス「あらあら…生きづらそうですわね?さぞ本能と理性の狭間で苦悩したことでしょう。お察しいたしますわ」

セレス「ここで提案です。全てを解き放ってはみませんか?楽になれますわよ?」

舞園「……」

セレス「…無言ですか?答えを選ぶのが恐ろしいのですか?…それともその狭間の苦しみをお望みでしょうか」

セレス「楽に…なれますわよ?」

舞園「……セレスさん、あなたは」

セレス「わたくしを攻めようとした所で無駄ですわ。あなたにわたくしは落とせない…」

841: 2013/11/27(水) 00:52:34.21
セレス「真実は嘘に勝てないものなのです」

舞園「……」

セレス「認めてしまいなさい。あなたは、わたくしと同類ですわ」

舞園「…例えば私がそれを認めたとして、あなたに何があるんですか?」

セレス「うれしいし、楽しいですわ。それだけです」

舞園「……」

セレス「……これは忠告ですが」

舞園「なんですか?」

セレス「あまり無理をして自分を抑え続けると、壊れてしまいますわよ?…まあ、それについては身を持って経験済みでしょうが」

セレス「…勢い余って恋敵をグサリ…なんてこともあるかもしれませんわね?」

舞園「……」

セレス「…心当たりがおありのようですわね?」

舞園「……」

セレス「…もしもし?」


舞園「……」

842: 2013/11/27(水) 00:53:56.83


私はずっと、苗木君が好きだった。
中学校の頃からずっと。
アイドルを目指していた間も、アイドルになった後も。
…コロシアイ生活に巻き込まれてからも。

辛い時も嬉しい時も、胸の奥には苗木君への思いがあった。
眩しいライトと視線とカメラを受けている時も、心の何処かで苗木君のことを思っていた。

…どこかで私のこと見ていてくれますように。

そんな祈りを心の支えにしていた。
もう二度と会わないと思っていたのに、私たちはまた出会ってしまった。
嬉しかったけど、苦しかったし辛かった。


ビデオを見せられて、殺人を決意した時、初めて私の中から苗木君が消えた。
それは一瞬のことだったけど、その隙が苗木君を傷つけることになってしまった。
なんであんな残酷な作戦を思いついてしまったんだろう。
あの時から私の恋心は…憧れと優越と、罪悪と背徳が、入り乱れて鎖になり、呪いとなった。

まさしくそれは、「恋の病」と言うに相応しかった。

855: 2013/12/01(日) 02:24:58.21
舞園「もしかして…苗木君ですか?」

苗木「…えっ?」



黙っていればよかったのに。
黙ってさえいれば苗木君は私が苗木君のことを忘れていると思い込んでいたはず。
そんな他人の距離だったなら互いにこんな苦しい思いはしなかった。
でも私は、「日本一のアイドルが自分のことを覚えていた」という事実が彼に与える衝撃と、その影響に期待してしまった。
…そして、その目論見はうまくいった。




しばらくはとても幸せだった。
互いに手の届かない存在だと思っていたんだから。
苗木君は私をテレビに出てるアイドルとしてではなく、久しぶりに会った同級生として話してくれたし、優しくしてくれた。
私のことを何度も気にかけてくれた。
何度も散歩に誘ってくれたし、誘えば応じてくれた。
縋りつけば受け止めてくれた。
小さいと思っていた胸は意外と広がった。

…本当にほんとうに、苗木君はやさしかった


856: 2013/12/01(日) 02:26:30.50






包丁を用意して
模擬刀を確保しておいて
後は部屋を入れ替えてもらって準備は完了。


手紙を使って桑田君を誘惑した。
彼が罠にかかることは確信していた。彼は私に気がある。
薄汚い欲望と、確信にも似た淡い期待を胸に私に殺されにくるだろう、そう私は確信していた。


これから襲われるとも思わずに、無邪気に笑いながら、欲望を隠しきれない顔で桑田君は私を待っていた。
私はそんな桑田君を見て苛立ちしか覚えなかった。
嫌悪と憎悪。でもそれは彼が私に対して性的欲望を抱いているという事実に対してでは無かった。




私は彼が音楽を、芸能界を舐め切った発現をしたことが許せないんだ。


そう思い込もうとしたけど、
私の部屋で期待を膨らませながら私を待つその姿が、苗木君の隣でその先の未来を期待している私とどうしても重なってしまう。否定したいけど出来なかった。ああなんて醜いの


そんな矛先を間違えた憎悪と、「女」を利用している自分への嫌悪を込めて私は包丁を振りかざした。



857: 2013/12/01(日) 02:27:39.60










失敗した









858: 2013/12/01(日) 02:28:40.11


氏に物狂いでシャワー室にこもり、あかないことを必氏に祈りながら時が過ぎるのを待った。
やっと怒り狂った桑田君が去り、私は辺りを警戒しながらその場から逃げた。
命からがら逃げた先には




苗木「…どうしたの舞園さん?!」




まるで救いと破滅。

正直に告白するべきだ、苗木君をこれ以上裏切ってはいけない…でも、でももしかしたら


…もしかしたらまだ誤魔化せるかもしれない。苗木君を裏切らずにすむかもしれない。苗木君に嫌われないですむかもしれない


浅はかな思いに流されて私は嘘を吐いた。流れ着く先は破滅だと理解していたはずなのに。


859: 2013/12/01(日) 02:30:06.55


真実は嘘に勝てそうに無かった。
軽薄な印象を与える彼と怪我をした私とでは彼が勝てないことは最初からわかっていた。だから勝負を仕掛けた。
私の中の聖域であるアイドルという存在を自ら汚していっている自覚はあったけど、もう止まることはできなかった。
そして私は目の前で信じてもらえずに取り乱す桑田君にトドメを刺そうとした。



舞園「……何も、『無かった』ことにしましょう?」



あまりにも無恥な発言だった。
…勝ち誇ってすらいたかもしれない。
きっと、醜い醜い顔をしていた。









殴られた。

視界がぐるりと回って、気がついた時には身体が痛かった。
他人にこんな風に痛みを浴びせられたのは初めてのことだった。
信じられなくて正面を向けば、



裏切られて穢されて、傷ついて奪われ怒り狂っている…私がいた。
信じられなくて瞬きをしたら、そこにいるのは桑田君だった。

860: 2013/12/01(日) 02:31:16.63
私はその時理解した。
計画は失敗なんてしていなかった。私は確かに頃していたのだ。
夢と未来と自分を信じていた私自身をきっと私は頃してしまった。
ここにあるのは穢い絞りカスだけ…


桑田君の怒りに自分のしたことと罪を思い知らされ、私は泣いた。
そこには贖罪の気持ちなんてまるで無くて、歪んだ自己愛だけがあった。



霧切「…話を、聞かせてもらおうかしら」




凛とした声が聞こえた。
身体中が総毛立った。本能で彼女を敵だと理解した。
何故かは分からないけど、すべてを暴かれる確信があった。

恐る恐る目をやれば、彼女はテキパキと状況を調べていた。
裁かれる恐怖が、恨みが私を満たしていた。

861: 2013/12/01(日) 02:32:15.96

霧切「なにかしら、舞園さん」


彼女の真っ直ぐな視線に撃ち抜かれ、私は敗北した。
正義を背負い、真実を導こうとしている霧切さんは美しかった。
背筋は真っ直ぐで、目は澄んでいて、声は通り自信に溢れていた。
彼女の目に映る私は無様に暴かれる恐怖に身を曲げ、自信なさげに震え目は淀んでいた。

唯一の武器であった「女」すらも私は打ちのめされた果てに失った。








同情が疑惑に変わった。そして確信へ。
トドメを刺された。終わった。
私はむしろ楽になって、真実を吐いた。


舞園「苗木君…ごめんなさい…私が桑田君を襲ったんです…」

苗木「そんな…」



終わった。
さあ私の恋心も終わらせよう。
せめて、潔く。

862: 2013/12/01(日) 02:33:17.88
十神「つまらんな。これで終わりか。ついでにもう一つ聞いておこう。舞園、貴様苗木と部屋を交換して何をするつもりだった?」


終わってなかった。
せめて綺麗に終わらせたい…そんな欲が見透かされた。
十神君が私をみて笑っていた。
やめて

それは


知られたくない




十神「苗木、貴様は裏切られたんだ」

苗木「…そんなばかな。違うよね?舞園さん」

舞園「…………」

十神「舞園は全てが終わったあとに」

苗木「舞園さん、こっちを見てよ。こっちを見て」

舞園「…………」

十神「桑田を頃して自分につながる証拠をすべて抹消したあと」

苗木「舞園さん!ボクを、ボクを見て!」

十神「苗木にすべての罪を着せ自分だけ外に出ようとしたんだ」

苗木「違うって言ってよ舞園さん!!!」

863: 2013/12/01(日) 02:34:18.79
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
もう誰に謝っているのかもわからない。
苗木君にか、裏切った過去の自分にか、神様か。
それともそれは謝れば許されるかもしれないという期待だったのか。



舞園「うそじゃ…ありません」

十神「なに?」

舞園「苗木君への気持ちは…嘘じゃありません」

十神「だからどうだと言うのだ?やったこと、やろうとしたことに変わりはないだろう?」

舞園「ごめんなさい…苗木君」


このごに及んで私は弁解を続けていた。
止められなかった。
そんな無様に言い訳を続ける私をどこか冷静な自分が見つめていた。
見苦しい自分を見て冷笑していた。
私はもう私自身に失望していた。

864: 2013/12/01(日) 02:35:25.14

十神「まるで反省の色がないな…ここまで来て一番の被害者である桑田への謝罪は無しか?」

十神「苗木苗木と…いい加減に諦めたらどうだ?見苦しいぞ」



…その通りでしかなくて、私はまた泣いた。


(泣けば許されるとでも思ってるんですか?)


そう言われた気がした。

その後のことはあやふやで、
ただ苗木君が私のために泣いてくれていたことだけは覚えていた。

申し訳なくて悲しくて、やめてくださいって叫ぶ私もいたけど
苗木君が泣いてくれたことが嬉しくて私は黙っていた。



(どこまでも自分本位で醜いですね)



酷く歪んだ悦びであることはわかっていた。
でも、心の中で苗木君の涙に歓喜することをやめることはできなかった。


大神さんに連れられて部屋を出た。
沈みきった心の底で私は笑っていた

865: 2013/12/01(日) 02:36:57.88


大神の部屋

大神「……舞園よ」

舞園「……」

大神「……」

舞園「……」

大神「…怪我をしていたな。少し待っていろ」

舞園「……?」


大神さんが突然セーラー服を脱いだ。
驚いて固まっていると、


大神「今は我のサラシしかないが…無いよりましだろう。…巻いておこう」



私は無言だった。
大神さんはそんな私の手を引いて、優しくサラシを巻き始めた。
痛くしないように細心の注意を払っている様が伝わって来て、その優しさに私は涙をこぼしてしまった。
さっきまでの冷たい涙とは違う、熱くて溶けてしまいそうな涙だった。

866: 2013/12/01(日) 02:38:23.04
大神「…我が弱いばかりに…すまぬ。このような辛い思いをさせてしまった」


その言葉の意味がわからなくて私は黙っていた。
大神さんはもう何も言わなかった。

朝日奈さんはこのやさしさに触れて、大神さんと友達になったのだろうか。
私も、こんなことをしなければ友達になれていたのでしょうか。
女子のみんなでお菓子を手に談笑している様がありありと浮かんで、すぐにかき消えた。
何かを喪失したような、穴だけが心に残っていた。


その日はうまく眠れなかった。
何を思っていたのかは覚えていない。
ぐるぐるといろんなことを考えたのは憶えている。

寒くて寂しくて、大神さんの手に少しだけ触れた。
傷だらけで節くれた硬い指は少しだけ震えて、止まった。
指先のぬくもりだけが、灯火だった。
この冷ややかな学園に灯る、唯一確かなやさしさ。
…私はこれを消し去ろうとした。


理解したくなくて目をつぶった。すぐに私の意識は閉じた闇に呑まれていった。
深い深い、闇の中へと…

889: 2013/12/06(金) 15:21:57.83
教室の少し開いた窓から夕日が差し込んでいた。
とおくのほうで笑い声と木々の揺れる音。撫でれば馴染みのある机。
いつまでもここにいたい。そう思った。
突然人の気配を感じて私は決意したように目を開く。すると私の目の前、つまり開かれた窓の辺りに



苗木君がいた。


いつものパーカーではなくて、私と同じような茶色いデザインの制服を着ていた。
何故だろう。胸が苦しい。
ゆっくりと苗木君がこっちに振り向いた。優しい世界が崩れて行く予感に、私は声にならない声を上げていた。

意識が薄らいでいく。
最後にみた苗木君は、悲しそうな、切なそうな顔をしていた。



胸を締め付けられたように感じて、目を覚ました。
顔を触ると涙の跡ができていた……顔を洗わないと。

890: 2013/12/06(金) 15:23:04.20



桑田君がこちらを見ている。
でもその視線を遠く感じた。みんな同じ場所にいるのに、私だけ別の場所にいるみたいに、すべてが遠かった。
モノクマの視線に私の口は勝手に開いた。


舞園「私は…最初に桑田君を呼び出しました」

舞園「それから包丁で刺そうとして…逃げられて」

舞園「逆に刺されてしまいそうになって逃げました」

モノクマ「うんうん。それで?」

舞園「隠れて桑田君が居なくなるのを待って…苗木君のところに逃げ込みました…以上です」


まるで他人事みたいに話した。
話した言葉は胸に留まらず、流れて落ちた。もう何も考えられない…考えたくない。

891: 2013/12/06(金) 15:24:26.30
話が終わって、私は霧切さんに連れられて自室に戻った。
ベッドの上に座り込んで体を抱えた。震えが止まらない。


舞園「わた、私はなんてこと…」

霧切「落ち着くのよ舞園さん」


学級裁判なるものの説明を受けた。
恐ろしい内容だった。
殺人が起こった場合に発生する、裁判。
クロかクロ以外、そのどちらかが必ず氏に至る恐ろしい裁判。
その話を聞いて私は卒倒するかと思った。
私は知らず知らずのうちにこの場所にいる全員を命の危機に晒していた。

殺人を企てておいて何を考えているんだとも思うけど、それでもショックを受けた。
ここから出るためには全員を殺さないと行けないなんて…なんて悪夢だろうか。
もし殺人が成功していたらと想像して気が遠くなる。きっとそこにいる私は孤独な筈だ。外に出てアイドルなんて続けられる筈がなかったはずだ。
笑うことなんて一生できなくなるはずだ。

私は殺されないでいてくれた桑田君に感謝するしかなかった。
私は、彼に救われたんだ。命も、心も。

892: 2013/12/06(金) 15:25:24.23


それからのことはあまり覚えていない。
苗木君に屈折した思いを、霧切さんに劣等感を抱えたまま、彼らと共にいた。
あんなことをした私に優しくしてくれることはただありがたかったけど、煩わしいと思う自分もいた。
今一人にされたりなんてしたらきっと生きて行けないことはわかっていたけど、優しくされればされるほどに膨れ上がる自分勝手な感情は抑えきれなかった。
我慢ができずに時折私はヒステリーを起こした。それでも優しく根気強く接してくれる二人にまた、劣等感が膨れ上がる。そしてその事実に自己嫌悪、そんな悪循環に私はハマっていた。


しばらくして私はある一つの対策を思いついた。
鏡に向かって「お前は誰だ」と言い続けると自分がわからなくなって精神崩壊をすると聞いたことがあった。これを利用すれば自分を抑えられるかもしれない。そう思った。
それから私は必氏に自分に言い聞かせた。


『あなたは、犯罪者。その場所にいる権利なんてない。忘れてはいけない』



もう間違いを犯してしまわないように、自分の心を頃してしまおう。
…できるかどうかは、わからないけど。

眠ることすら難しくなり、夢か現実かそれすらの境界もあやふやになっていった。つぶやき続ける言葉だけが、現実と私を繋ぐ鎖だった。

893: 2013/12/06(金) 15:26:30.64


朝日奈「…なんかまずい?」

葉隠「なんかわかったんか?!ドア越しだからわかんねえべ!」

朝日奈「舞園ちゃんとセレスちゃんがいるのは分かるけど…ちょっと空気が変かも」

葉隠「変ってどういう?」

朝日奈「それは…」

戦刃「……」ガラッ

朝日奈「ん?」

戦刃「ん?」

葉隠「お?」




葉隠「お、うおおおおおおおおおおっ?!」

朝日奈「きゃああああああ?!」

戦刃「?!」

894: 2013/12/06(金) 15:27:42.09


セレス「…相変わらずフリーズ。このわたくしを放置とはいいご身分ですわね」

セレス「……暇、ですわ」



『うおおおおおおおおおおっ?!』

『きゃああああああ?!』



セレス「ぶっ?!」

舞園「……?!」ガタッ

セレス「な、なんですの今の気の抜ける悲鳴は!」

舞園「外で何かあったんじゃ…」

セレス「ならばここにいるべきですわね…わたくしたちは非力ですからもう少し様子を…ってちょっと舞園さん!?」

舞園「……」ガラッ

セレス「流れるような動作で何勝手に開けてんだこのヤンデレ女ァ!」

895: 2013/12/06(金) 15:29:20.69
舞園「……あ、」

戦刃「……舞園さん」



私は、この顔を見たことがある。
無表情の顔に頭の中の何かが引き出される。







『…舞園さん』

舞園『なんですか』

『舞園さんは苗木君のことが好きなの?』

舞園『えっ?!』

『…やっぱり。そうなんだ』

舞園「…ばれちゃいましたか』

『……』

舞園『何を笑っているんですか?』

『ううん。うれしいなぁって』

舞園『うれしい?』

『クラスの絆が育まれて行くのはいいことだよ』

舞園『…そうですね』

『盾子ちゃんも喜んでくれる。きっと盛り上がるから』

舞園『…?どういう意味ですか?』

『…その思いを大切にしてね』

舞園『…はい。黙ってて、下さいね』

『大事に大事に育ててね…』

896: 2013/12/06(金) 15:30:58.76


舞園「あ、あなたは…」

戦刃「……」

舞園「あなたは一体私たちに何をしたんですか?!あなたは誰なんですか?!」

戦刃「……」

ゆっくりと顔が歪んだ。ゾッとするような笑顔。
悪寒とともに何かがせりあがってきた。見知らぬ記憶がフラッシュバックを繰り返して頭が痛い。
待って今 私は どこに い る






ここは、どこ?

舞園『苗木君…』

苗木『舞園さん』

目の前にはかなしそうな顔の苗木君。
ああ、これは何度も見たあの夢の場所だ。

897: 2013/12/06(金) 15:32:40.28
舞園『来てくれたんですね』

苗木『話…なにかな」

舞園『しないと…だめですか?』

苗木『……』

目の前の苗木君は困ったように笑うだけ。

舞園『わかっています。わかってます』

舞園『言わなきゃだめですよね。終わらせなきゃ、答えを出さなきゃ』

苗木『……』

舞園『……』

舞園『苗木君…』

舞園『あなたが、好きです』


夕暮れ、私たちは苦しんだ末に答えを出した

その日は
恋する乙女が、病の末に氏んだ日で
一組の幸せな恋人達が生まれた日で
…後悔に生きる女が、生まれた日だった。


それが私たちの駆け抜けた、青春の一幕。

901: 2013/12/09(月) 01:37:11.77
朝日奈「な、なにこれ?!舞園ちゃんと江ノ島ちゃん友達なの?!」

葉隠「見つめあってっけどあれは友達ってやつじゃねーべどうみて…も…」

朝日奈「…どうしたの葉隠」

葉隠「いや…あれ…」

朝日奈「え?どれ?」

葉隠「いやだからあれだって!見ろ!」

朝日奈「……!」












舞園『あなたが、好きです』

苗木『……』

舞園『…言ってしまいました』

苗木『……』

舞園『黙ってないで、何か言ってくださいよ』

苗木『……』

902: 2013/12/09(月) 01:38:16.03
舞園『…言ってください。はやく、終わらせてください』

苗木『…ごめん』

舞園『……』

苗木『舞園さんのことは好きだよ。大切だし、かけがえのない人なのは確かなんだ』

苗木『…でも、ごめん。僕がそういう意味で好きな人は、別の人なんだ』

舞園『……』

苗木『…ごめん。僕も分かってたのに。舞園さんに辛い役を押し付けて』

舞園『…別にいいんですよ。いつかは…ちゃんと言いたいって思ってましたから。ちゃんと聞いてくれて、終わらせてくれて、感謝してるくらいなんです』

舞園『ちゃんと…答えを出してくれて、ありがとうございました』

苗木『…ボクは、ボクたち三人の関係をずっとこのままの形でいたいと思ってた。…わがままだって思ってたけど、舞園さんも、霧切さんも大切な仲間だから』

苗木『そのまま卒業して、時間が経って三人とも別の人を好きになって、また友達に戻れればそれでいいなんて思ってたんだ』

苗木『…甘えてたよ。舞園さんと霧切さんの優しさに。君はとっくの昔に答えを出していたのにね』

舞園『…みんな、同じですよ。私もあのままで居たかった部分はありました。…でも』

舞園『やっぱり駄目ですよ。これじゃきっと後悔が残ります。時間が経って今の思いが形を変えたって、好きだったって事実は変わらないんですから」

舞園『あの時やっぱり思いを伝えていれば…なんて気持ちを抱えて生きるなんて…辛いですよ」

舞園『終わらせるって大切なんです。終わらせなければ、新しく始められませんから』

舞園『だから、私のことは気にしないでください。私は変わりませんから。私はこれからも二人の大切な友達でいますから』

903: 2013/12/09(月) 01:39:13.57
舞園『だから苗木君も…思いを伝えて来てください。私との、約束ですよ』

苗木『うん…わかったよ』

舞園『今行ってください』

苗木『え?』

舞園『今じゃなくても、今日行ってください』

苗木『き、急じゃない?』

舞園『言って下さい。…お願いします』

苗木『……』

舞園『……』

苗木『…わかった。ちょっと霧切さん探してくるよ』

舞園『霧切さんなら、校庭に居ますよ』

苗木『えっ?!』

舞園『…私が、呼んでおきました』

苗木『あはは…最初から今言わせるつもりだったんだね』

舞園『…行ってください。早く行かなきゃ、言いたい気持ちがしぼんでしまいますよ』

苗木『…わかった。舞園さんはどうするの?』

舞園『私は帰りますから…気にしなくていいですよ』

苗木『…そっか。行ってくるね』

舞園『はい!頑張ってください!』

904: 2013/12/09(月) 01:40:09.06
舞園『……』

舞園『……』

舞園『…行きましたね』



舞園『苗木君の机…』

舞園『…許してください。今日だけ、今だけ貸してください…』

舞園『明日はもう泣かないから…』


苗木君の机にすがって泣いた。
その机は私には少し小さくて、私の涙を受け止めるには足りなかった。







次の日


苗木『…あ、霧切さん。おはよう』

霧切『お、おはよう。苗木君』

苗木『……』

霧切『……』

苗木『な、なんか恥ずかしいね』

霧切『…はやく教室へ行きましょう』

苗木『そうだね』

905: 2013/12/09(月) 01:41:01.11
苗木『おはよう!』ガラッ


パァン!

苗木『え?』




『『『『カップル成立おめでとーっ!』』』』




霧切『…何?』

朝日奈『おめでとー聞いたよ二人とも!恋人どうしになったんだって?』

苗木『えっ?!』

葉隠『苗木っちも隅におけねえなあ!ところでここに恋が続くってうわさのブレスレットがー』

江ノ島『やるじゃーん!まさか苗木が一番手なんて思って無かったしマジ聞いた時は驚いたって!』

戦刃『うん』

石丸『もごもご』モゾモゾ

苗木『どうしたの石丸君…』

セレス『空気を読まなかったので黙っててもらっているだけですわ』

山田『これはひどい』

十神『騒がしかったからな。これで本が読めるというものだ』

大和田『…まってろ!今外してやるからな兄弟!』

腐川『や、やめなさいよ…その男うるさいんだから…』

不二咲『…で、でも外してあげようよぉ…やっぱり酷いよ…』

906: 2013/12/09(月) 01:41:44.52
苗木『と、ところで誰がこんなに人を呼んだの?ボクたち誰にも言ってな…あ』

舞園『……』ニコニコ

苗木『舞園さん…』

舞園『…約束、しましたから』ニコニコ

霧切『舞園さん、私は…』

舞園『おめでとうございます』

苗木『舞園さん、えっと』

舞園『…ちょっと、やり過ぎちゃいましたか?最初は数人で驚かすだけの予定だったんですけど…気がついたら全員になってしまっていて…』

朝日奈『十神まで来たもんね!』

十神『俺はいつも通り来ただけだ!』

大神『素直でないな。あれほど準備するものについて血眼になって質問していただろう』

十神『俺はそんなこと知らん!』

山田『ツンデレですなぁー』

十神『黙れこの豚!』

石丸『ぷはぁっ!こら君たち!もうすぐ授業が始まるぞ!準備をしたまえ!』

江ノ島『ちぇー何大和田縄といてんのー?つまんない』

大和田『そもそも縛るんじゃねえよ!』

石丸『ちぇーではない!はやく席につきたまえ!』

葉隠『ほいほい解散かいさーん』

907: 2013/12/09(月) 01:42:22.47


苗木『舞園さん』

舞園『…驚かせてしまいましたね』

苗木『うん。びっくりしちゃった』

舞園『…言ったとおりでしょう?』

苗木『え?』

舞園『二人の友達のまま…私は変わらないって』

苗木『……』

舞園『苗木君!授業始まりますよ!ほら席に座りましょう。石丸君が怒ってますよ』

苗木『えっ、ああうん!座ろ、霧切さん!』

霧切『ええ』





桑田『舞園』

舞園『なんですか?』

桑田『…マジで大丈夫なのかよ?』

舞園『…当たり前じゃないですか!何言ってるんですか桑田君?』

桑田『…そうは見えねーぞ』

舞園『……授業、始まりますよ?』

桑田『……』

908: 2013/12/09(月) 01:44:02.05


私の当面の問題は、この嫉妬深い心だった。この心が、苗木君と霧切さんを傷つけるかもしれないと思うと、気が気でなかった。
そこで私はみんなの力を借りることにした。
みんなと一緒なら私はきっと間違いを起こさない。
仮に起こしたとしても、きっと誰かが止めてくれる。
そう思ってこのサプライズを企画した。


私がみんなに苗木君と霧切さんが結ばれたと告げた時、ほとんどの人は何かを察したみたいだった。
誰も事情を探ろうとしないで提案に乗ってくれた。そのやさしさはありがたいものだった。



その日からは苗木君と霧切さんから少し距離をとった。
といってもほんの少しだけ。二人が恋人同士として過ごす時間分だけ離れた。これは私と苗木君との関係に適切な距離を取っただけ。
それ以外は前と一緒だから大丈夫。私たちは大切な仲間。
変わらないで仲間として楽しい時間を過ごしましょう。
これが、私たちの出した結論。


もう大丈夫です。
始まりを耐えられたのならその先もきっと耐えられます。私には仲間がいます。
いつかこの辛い気持ちが思い出になって、笑い話にできる日が来るでしょう。

新しい恋をまた見つけて、私も幸せになって二人を安心させるんです…
そうすればきっとみんな幸せなはずだから。
私もきっと幸せになれるから。



だから二人ともそんな辛そうな顔しないで…


909: 2013/12/09(月) 01:45:09.46



「……さん!舞園さん!」

舞園「……あ…?」

苗木「…やった!起きたよ霧切さん!」

霧切「安全な場所まで舞園さんとセレスさんを下がらせて!」

苗木「こっちに来て舞園さん!」

舞園「な、何が…」

戦刃「……」

霧切「あなた、舞園さんに何をしたの?」

戦刃「何もしていない」

大神「霧切、下がるのだ!我が相手をする!」





苗木「大丈夫?!舞園さん!ボク達が駆けつけた時はもう倒れてたんだ!」

舞園「苗木君…」

苗木「セレスさんもなんで倒れたのかわからないって言うし!」

セレス「嘘なんて吐いてませんわよ」

苗木「何があったの舞園さん!」

舞園「……」

舞園(どうしよう…)

910: 2013/12/09(月) 01:46:08.55


ここで黙って苗木君に縋りつけば苗木君はきっと私の物になる。
今度こそ、霧切さんに勝てる。
幸せな恋人同士にだってなれるし、家族にだってなれる。
夢を見ていた未来が現実になる



舞園「……」

苗木「…舞園さん?」

舞園「……」

舞園「……」

苗木「どうしたの、舞園さん!」

舞園「苗木君」

苗木「なに?」

舞園「…今すぐに、霧切さんの助けに行ってください」

苗木「…え?」

舞園「私ではなく、霧切さんのところへ行ってください。それがあなたの選択です」

苗木「どうしたの舞園さん…?選択って…?」

舞園「…お願いします」

苗木「い、意味がわからないんだけど…」

911: 2013/12/09(月) 01:47:13.81
舞園「…きっと二人とも、後悔していたんですね」

苗木「えっ?」

舞園「苗木君も霧切さんも…優しい人だから…だから結ばれたことに、私を一人にしてしまったことに罪悪感を感じていたんですね…」

舞園「全てを忘れてしまっても…その後悔だけは無くせなかったんですね」

舞園「だから…私にあんなに優しくしてくれた…」

苗木「ちょっと待ってよ!それは違うよ!」

舞園「いいえ!違いません!」

苗木「違うよ!君は間違ってる!この気持ちは後悔なんかじゃないんだ!ボクは、ボクは…ボクは君のことが好きだから…!だから!」

舞園「やめてください!」

苗木「なんで!」

舞園「やめて!やめて…やめて、やめてぇ…!」

苗木「舞園さん…なんで…」

舞園「本当に…本当に間違っているんです。忘れてしまっているんです」

舞園「私たちは答えを出したんです!三人で苦しんで、苦しんで苦しんで!答えを出した後だってずっと苦しんで!」

舞園「それでも選んだ答えなんです…」

苗木「…舞園さん、何を言ってるの?!忘れてるって…ボク達が何を!」

舞園「わからない!この記憶が何なのか!それが何かすらもまだわからないんです!」

舞園「それでもわかります!この記憶は真実です!」

苗木「舞園さん…山田クンと同じことを…」

912: 2013/12/09(月) 01:48:29.65
舞園「苗木君、はやく、はやく霧切さんのところへ行ってください。はやく行ってくれなければ私は…私はまた間違ってしまう」

舞園「また、苗木君を捕えてしまいます!」

苗木「ボクはそれで構わない!ボクは君の力になりたいし、君のことが大切なんだ!ボクの気持ちは間違ってなんかない!本当の気持ちだ!」

舞園「確かにその優しさは苗木君の本当の気持ちなのかもしれません。…でも、」

舞園「でも全てがすれ違っているんですよ!私はその違いを許容できません!苗木君は、あなたは!全てを忘れてしまっている!」

舞園「私は嫌です!こんな今は望んだ未来ではありません!こんなズルみたいなことをして苗木君を手にいれたって、私は納得できません!嫌です!」

舞園「あなたのその「好き」は本当に恋ですか?!愛ですか!」

苗木「っ…」

舞園「言い切れますか!何の後悔も、憐れみも無いと言い切れますか!そうでなければ意味がないんですよ!」

舞園「後悔や憐れみなんて…私は欲しくないです…」

苗木「……」

舞園「苗木君…あなたの今出している答えは私たちの苦しみを、過去を踏みにじるものです」

苗木「…ごめん。わからないんだ…」

舞園「…わかっています。だからこそ言います」

舞園「私たちの苦しみを、出した答えを忘れてしまったまま、私を選ぶなんてそんなことしてはいけないんです…きっといつか心の底から後悔してしまう日が来ます」

舞園「私はそんなの嫌です。私を選んだことを後悔されるなんて…そんなのきっと氏んでしまいます」

舞園「だから嫌です…嫌なんです…」

苗木「…舞園さん、ごめん。ボクが間違ってた。こんなタイミングでいうことじゃ無かったよ」

舞園「……」

苗木「…舞園さんの言うとおり、ボクはあっちに加勢して来る。だから舞園さんも安全な場所に避難してよ」

舞園「…はい。ごめんなさい。取り乱してしまって…」

セレス「…あちらに動きがありますわよ」

苗木「えっ?!」

913: 2013/12/09(月) 01:49:33.62



朝日奈「霧切ちゃーん!」

戦刃「何だ!」

朝日奈「あんたじゃない!霧切ちゃん!コレ!爆弾!」

霧切「爆弾?!」

戦刃「しまった!」

大神「朝日奈!何だそれは!」

葉隠「モノクマ内臓の爆弾みてえだ!こっちの部屋に分解されたモノクマがいくつかあったから取ってきたべ!」

霧切「…あなた、何をしようとしてたの?!」

戦刃「くっ…」

霧切「…朝日奈さん、こっちに来て、爆弾を私に渡して!」ダッ

朝日奈「わかった!」ダッ

戦刃「行かせない!」ダッ

大神「行かせぬわ!」

戦刃「……!くっ!」

霧切「大神さん!例の通りに頼むわ!」

大神「わかったぞ!」

914: 2013/12/09(月) 01:50:30.22



セレス「…例の?」

舞園「は、早く!早く行ってください!霧切さんのところへ!」

苗木「…待って、ボクはしばらくここにいるよ」

舞園「どうして!」

苗木「ボクが今行くと邪魔になっちゃうから」

舞園「邪魔…どうして…」

セレス「…舞園さん。苗木君にも考えがあるのですから黙ってなさい」

舞園「……」

苗木「…大丈夫」

舞園「…え?」

苗木「舞園さんの言いたかったことはなんとなくわかったから。何のことを言っているのかは分からなかったけど…」

苗木「急いで答えを出さないで、真摯に考えてくれって…そういうことだよね?」

舞園「…苗木君」

苗木「…こんな状況で好きだなんて言っても、信じられないよね。そりゃ」

舞園「…」

苗木「だからこの騒動が終わったら…」

舞園「……」

苗木「ボクもう一度真剣に考えるから」

舞園「……」

915: 2013/12/09(月) 01:51:06.36
苗木「信じて…くれる?」

舞園「…はい」

苗木「…ありがとう、舞園さん」

舞園「…いいえ。私こそ…ありがとうございます」



セレス(この空気辛いですわ)

セレス「…あら、大神さんが戦刃さんを離しましたわ」

苗木「…えっ本当に?!ボク行ってくる!」

舞園「苗木君!」

苗木「……なに?」

舞園「…怪我なんて絶対しないで…みんなで無事に帰ってきてください!絶対ですよ!」

苗木「…うん!」

舞園「…絶対、ですよ…」

セレス「わたくしたちはとっとと安全圏行きますわよ」

舞園「…はい」

916: 2013/12/09(月) 01:51:45.29



戦刃「やっと大神さんを振り切った…!」

霧切「……」

戦刃「いた!」

霧切「…!」ダッ

戦刃「逃がさない…!」


図書室前 廊下


戦刃「…見失った……ッこれは…!」

ドォーン

戦刃「本のバリケード…!通る隙が無い!」

戦刃「霧切さんはどこへ…!」

戦刃「…図書室?」

戦刃「いやまて…どう考えても罠…」

戦刃「どう考えても開けた瞬間に何か来る…」

戦刃「…でも霧切さんは爆弾を持っている…放置は危険…」

戦刃「……警戒して行くしかない」

戦刃「せめて向こうのドアから行こう…」

917: 2013/12/09(月) 01:53:01.11
戦刃「…よし!行こう」ガラッ

戦刃「……いない?」ヒタヒタ

戦刃「…え?」ヒタヒタ

ジェノ「はいはい残念大当たりィー!」ヒュン

戦刃「うわ…っ!」

ジェノ「おおっ?!すげえ避けた!避けたぞコイツ!」

戦刃「ジェノサイダー翔!」

ジェノ「あらあらー私の名前知ってるのぉー?」

戦刃「…」ジリ

ジェノ「そんなに警戒しないでよ…」

戦刃「……」

ジェノ「同じクラスの仲間じゃん?そういうとされると傷つくんだけどむくろちゃーん」

戦刃「なっ…覚えて…!」

十神「……」ガシッ

戦刃「しまっ…!」

918: 2013/12/09(月) 01:53:33.40
十神「…ハッ!」ブンッ

戦刃「まさか本のバリケードに…!やめ…」


ドンッ バサバサバサバサ


ジェノ「さすが白夜様ァーいい投げ筋ィー!どストライクhooooo!」

十神「いいから来いジェノサイダー!本の中から抜けられる前に捕まえろ!」

霧切「縛るわよ!」

大神「積んだ本を崩されぬように気をつけろ!まだ残っている!危険だ!」

十神「縛って引きずり出せ!」








戦刃「……」

十神「フン。この俺に勝てるとでも思ったのか?」

朝日奈「みんなーっ…てわあ捕まってる!」

ジェノ「おっそ!もう終わってるっての!」

霧切「朝日奈さん、舞園さんとセレスさんに怪我は?」

朝日奈「目立ったのは無かった。今は葉隠と一緒に石丸の部屋にいる」

大神「山田と一緒だな」

十神「さて…この女をどうするかだが…」

919: 2013/12/09(月) 01:54:25.67
霧切「待って」

十神「なんだ」

霧切「時間が惜しいわ。大神さんを借りて行っていいかしら」

十神「何が目的だ」

霧切「別の階の探索よ。黒幕がまだ潜んでいる。警戒される前になんとかしなければ状況は変わらないわ」

十神「…なるほど例の爆弾を使うのか」

霧切「ええ。シャッターはあれで壊せるから、そこから先はなんとかするわ。ただ、一人だと足りないから大神さんと行きたいの」

十神「俺は構わん。好きにしろ。こんな女一人俺一人でどうにかできるからな」

霧切「助かるわ。…大神さん、危険だけど来てくれないかしら」

大神「我は構わぬ。…皆もいいか?」

朝日奈「さくらちゃん…」

大神「…安心しろ、朝日奈。我は帰ってくる」

朝日奈「……わかった。私はここで頑張るから」

大神「…他の者はよいか?」

苗木「ボクは構わないよ」

大神「…よいようだな」

霧切「…行きましょう」

920: 2013/12/09(月) 01:55:04.82
苗木「待って!」

霧切「何かしら」

苗木「ボクも行くよ!」

霧切「…あなたはここにいて。危険だから」

苗木「霧切さんだって危険なところに行くんじゃないか!」

霧切「あなたは怪我をしているじゃない。それに荒事に慣れていない。…端的に言えば邪魔だわ」

苗木「……」

霧切「…気持ちは受け取っておくわ。…行くわね」

朝日奈「さくらちゃん……霧切ちゃん」

十神「さて、こいつだが」

戦刃「……」

十神「貴様には聞きたいことがある。黙秘権はない。俺のいう通りに口を開け…でなければ、わかるな?」

戦刃「……」








江ノ島「あーあーとうとう捕まっちゃったー」

江ノ島「こっちに霧切来そうだし…そろそろ出撃って感じ?」

江ノ島「えーこほんこほん。マイクテス、マイクテース!」

モノクマ「うぷぷぷぷぷぷ。じゃあそろそろいっちゃうよぉ?」

モノクマ「世の中そんなに甘くないってこと、みんなに教えてあげないとねぇ!」

927: 2013/12/13(金) 00:16:47.58
三階へ続くシャッター前


霧切「覚えていると思うけど、現段階でシャッターの数は二つあるわ」

大神「ここと寄宿舎の方にあったものか」

霧切「ええ。でも今両方を一つずつ調べている暇はないわ」

大神「手分けして探すのだな」

霧切「そう。…どちらがどちらへ行くか、そしてどう爆弾を分配するかが重要になる」

霧切「…あなたはどちらに行きたいかしら?」

大神「…わからぬ。選択はぬしに任せよう」

霧切「…わかったわ。じゃああなたはこのまま三階に行って。いつでも十神君たちに駆けつけられる位置にいて欲しいの」

大神「…そうか」

霧切「もし何かを見つけたら十神君に知らせて。判断は彼に任せるわ。何かあったら私に知らせて頂戴」

大神「…では爆弾はどうする?」

霧切「一つは私。一つは大神さん。…後一つは十神君たちに渡しておくわ。これでどうかしら」

大神「うむ。では我はこのまま三階へ行こう」

霧切「ええ…頼んだわよ」

928: 2013/12/13(金) 00:17:57.04



石丸の個室

舞園「山田君…!」

セレス「…眠っていますわね」

葉隠「襲われたあと一瞬だけ起きてそのあとはずっとこれだべ」

舞園「ひどい…」

セレス「……」

葉隠「……」

舞園「…私、何もできないんでしょうか」

セレス「その怪我では足手まといですわ。大人しくここにいるべきでしょうね」

舞園「……」

葉隠「つーかセレスっちはなんで舞園っちと居たんだ?」

セレス「トランプゲームをしていただけですが」

葉隠「このタイミングでか?!」

セレス「誰がいつ何をしようがあなたに関係無いでしょう」

葉隠「だからって…」


ドォーーン


舞園「きゃ…!」

セレス「…爆発音?」

葉隠「さっき俺らが見つけた爆弾を霧切っちが使ったんだと思うべ」

929: 2013/12/13(金) 00:18:37.40
セレス「……ん?」

山田「……うう」

舞園「山田君!目覚めたんですね!」

山田「舞園…さやか殿?」

舞園「大丈夫ですか?!襲われたって…」

山田「……ここにいるのは…葉隠康比呂殿に安広…多恵子殿?」

葉隠「やすひろたえこ?そんなやついねえぞ?」

セレス「……」

舞園「やすひろ…たえこ?」

舞園「う…!」グラ

葉隠「どうした舞園っち!」

舞園「待ってください…その名前…何処かで…」

セレス「…この間の、放送では?」

舞園「違います…そこじゃありません…もっと何処かで…」

山田「まさか…舞園さやか殿も思い出したのですか…?」

舞園「思い、出す……あっ!」

舞園「そうです…!確かこの名前は…!」

セレス「…わたくしの本名、ですわね」

葉隠「はい?!」

930: 2013/12/13(金) 00:19:20.24
セレス「どこでこの名前を知りましたか?」

舞園「わかりません…まだ頭の中がぐちゃぐちゃで…さっき倒れたときに見た夢が原因なのはわかるんですが」

セレス「苗木君がいっておりましたわね。『山田君と同じことを言っている』と」

舞園「私と山田君が同じことを…?」

舞園「…山田君。もしかして…私と同じ記憶を持っているんですか」

山田「……今は一体何が…」

葉隠「今頃は江ノ島を捕まえたところだと思うべ!ついでに霧切っちが爆弾使ってどっか行ったと思うべ」

山田「江ノ島…江ノ島盾子殿は我々の中には居ませんでしたぞ…」

セレス「ああそういえば。彼女は変装していたのですわね。…彼女は誰なのでしょうか?」

舞園「…すいません。彼女の名前はまだ思い出せないんです」

セレス「ということは名前が思い出せないだけで存在は知っているのですわね?」

舞園「はい…」

セレス「ふむ…つまりあなたは彼女と会ったことがあり、なおかつその記憶は不自然にあやふや…ということですか。一体なんの意味があるのでしょうか」

舞園「……」

セレス「…山田君は何かを知っていそうですわね」

山田「…そこでお願いがあるのですが」

舞園「なんですか!」

山田「僕を…みんなのところに案内してくれませんか…」

931: 2013/12/13(金) 00:20:20.64


葉隠「おいおい本当に行くのか?」

舞園「行きます」

セレス「危険ですわよ。ここにいるのは非力な女子と怪我人とダメ人間しかいませんのよ」

舞園「行きます」

セレス「…はぁ…ダルいですわ」

舞園「みなさんはどこに行かれたんですか葉隠君」

葉隠「多分図書室あたりだと思うんだが…あっ?あれ霧切っちじゃね?」

舞園「えっ?」

霧切「舞園さん?」

舞園「霧切さん…」

霧切「あなたたち、どこに行くつもりなの?」

山田「図書室です」

霧切「十神君たちのところへ?どうして?」

山田「思い出したことを話に行くんですぞ」

霧切「…そう。それは私たちに必要な情報なのかしら」

舞園「はい」

霧切「…」

舞園「霧切さんにもお話ししたいことがあるんです。一緒に来てください」

霧切「私はこれから行かないといけないところがあるからあとで聞くわ」

932: 2013/12/13(金) 00:21:17.48
舞園「でも…」

霧切「ごめんなさい。急ぐから」

舞園「待って!」

霧切「…苗木君を頼むわね」

舞園「……!」

舞園「待って霧切さん!」

セレス「お待ちなさい」

舞園「離してください!私は霧切さんにしたい話が…!」

セレス「状況が読めないんですの?今追いかけたところで足手まといですわよ!」

セレス「何度言えばわかるのです!あなたは手を骨折している怪我人ですのよ!あなたが足を引っ張ってこちらが不利になったりしたらどうするおつもりですか?」

舞園「…すいません」

葉隠「早く行かね?」

舞園「そうですね…」

舞園「……」



二階

舞園「……」

舞園「ごめんなさい!やっぱり私霧切さんを追います!」

セレス「…お待ちなさい!……ああもう…行ってしまいましたわ」

葉隠「追わねえのな」

セレス「それはあなたもでしょう。それにそんなことをする義理も何もありませんわ。とっとと図書室に行きますわよ」

933: 2013/12/13(金) 00:22:16.14


隠し部屋

石丸「どうかね不二咲君。行けそうかね?」

不二咲「問題ないみたい。怖いくらいに順調…」

石丸「…罠か?」

不二咲「…わからない。でも慎重にしてる暇なんてないよね。せめてモノクマかマシンガンとかの制御だけでも何とかしないと…」

石丸「…ここにモノクマが来ればひとたまりもない。罠は張ったがそれでも歩行の邪魔にくらいにしかならないからな」

石丸「兄弟たちが見回ってくれているが…見回っているということはここにはいないということだ…なにかあった時は僕達で切り抜けなければならない」

不二咲「うん…」

石丸「…大丈夫だ!何とかなるだろう。きっと!」

不二咲「…そうだよね。僕も頑張る」

石丸「そうだ!努力こそ勝利の鍵だ!頑張ろうではないか!」





ドォーン

桑田「今の音…何だよ?!」

大和田「爆発か?!なんでンなタイミングで爆発なんて起こりやがるんだよ!」

石丸「今の音は何かね!というか君たちまだここにいたのか!」ドタドタ

大和田「兄弟、どこかで爆発したみてえだぞ」

石丸「ばっ、爆発?!何故だ!」

桑田「知らねー」

石丸「…一体何が起こっているんだ…」

934: 2013/12/13(金) 00:23:13.95


三階

ドオーン


大神「…では、いくか」

大神「…敵はいないようだな」




大神「特にめぼしい部屋もない…か。シャッターが一つあったが…爆弾はあと一つだ」

大神「十神に判断を委ねるしかないな…」




二階

十神「何とか言え。貴様に黙秘権は無いと言っているだろう」

戦刃「……拷問でもなんでもすればいい。私は耐えられる」

十神「こいつ…」

ジェノ「拷問していいの?じゃあこれブスっといっとく?」

朝日奈「ごっ…拷問?!駄目だよそんなの!」

十神「そのハサミを貸せ」

ジェノ「ほい」

苗木「ちょ、ちょっと!本気なの十神君!?」

朝日奈「やめなよ!拷問なんてダメだって!」

十神「黙れ。俺たちにはこいつしか情報源がないんだぞ!」

935: 2013/12/13(金) 00:24:02.78
朝日奈「だからって暴力するの?!そんなのモノクマと一緒だよ!」

苗木「そうだよ。もうちょっと穏便にできない?」

十神「少し黙らせろジェノサイダー!」

ジェノ「はあーい!それじゃあお黙り。雌牛ちゃんにまーくん」

朝日奈「んー!んー!」

苗木「もがもが」

十神「これで静かになったな…これが最後のチャンスだぞ。貴様の仲間はどこにいる!」

戦刃「やりたければやれ。私は口を開かない」

十神「では望むようにしよう…後悔するなよ」

戦刃「……」

大神「…何をやっている十神!」

十神「チッ…」

大神「……!腐川!貴様朝日奈に何をしている!」

十神に「朝日奈を離せジェノサイダー」

ジェノ「チッ!でもいいや。まーくんいるしぃー。ねーまーくん」

苗木「もがっ!」

朝日奈「さくらちゃん!ちょっと聞いてよ!十神が江ノ島に拷問するって…!」

大神「何だと!正気か十神!」

十神「正気に決まっているだろう」

936: 2013/12/13(金) 00:25:26.40
大神「そんなことはやめろ!」

十神「…フン。この場の決定権は俺にある。文句を言われる筋合いはない」

十神「…ところで大神。貴様はこの短時間で何をのこのこ帰ってきたんだ?収穫はあったんだろうな」

大神「…むむ。話を逸らすなと言いたいところだが…三階には何もなかった。四階へ続くシャッターは見つけたが…」

戦刃「……!」ガタッ

十神「……」

十神「…大神、これを取りにきたのだろう?使え」ポイ

戦刃「……!」ガタガタッ

大神「…爆弾。よいのか?」

十神「くくく…ああ使え。どうやら四階に黒幕がいるようだからな」

大神「……?では使わせてもらおう」

大神「…十神。情報ならば我が手にいれてくる。だから妙なことはするな。いいな」

十神「フン。とっとと行け」

戦刃「待て!」

大神「……」スタスタ

戦刃「くっ…」

十神「…よくこんなだだ漏れさせる女をスパイなどにしたものだな…」

苗木「…拷問なんてしないよね?」

十神「もはや必要無い。こいつは誘導尋問すれば容易に漏らすようだからな。むしろよくしゃべれる方がよく漏らすだろう」

苗木「よかった…」

937: 2013/12/13(金) 00:26:22.27
十神「黒幕のことは大神に任せるとしよう。質問を変える」

十神「人類史上最大最悪の絶望的事件とは何だ」

苗木「人類…何それ?」

朝日奈「そんな事件あったっけ?」

戦刃「…何故…知っている」

十神「…答えろ」

戦刃「……」

十神「…何故俺が知っているのか教えてやろうか?」

戦刃「…何?」

十神「俺がこのことを知り得たのは…」

ジェノ「はぁーい!アーターシーでぇーす!このジェノサイダー翔ちゃんが教えてあげましたぁ!」

戦刃「えっ?!」

十神「…何を驚いている?腐川が多重人格者であることを把握していたのではないのか?」

戦刃「記憶は消したはず…!何故みんな覚えているの?!」

十神「…記憶消去だと?」

ジェノ「記憶消した?ああだからみんな妙に初々しいかったのね?」

十神「腐川とジェノサイダーは記憶を共有していない。その記憶消去とやらが何かはしらんが一人分処理が足りなかったようだな?」

十神「…最も、俺とてこんなイカレた殺人鬼のいうことをただ信じたというわけではない」

十神「俺はジェノサイダーの発言を受け、この学園を調査した」

戦刃「調査…?」

938: 2013/12/13(金) 00:27:18.41
十神「それで見つかったのがこれだ」

朝日奈「紙切れ?」

十神「これはリストだ」

苗木「一体なんのリスト?」

十神「俺達の記憶に空白の期間があることを示唆する物的証拠のリストだ。中には動かせないものもあったからな。あった場所をメモしてある」

苗木「空白の期間…?」

十神「読め」

苗木「えっボク?…えっと」

苗木「…その一。日付が未来になっている新聞紙」

十神「…これは図書室の中に包められた状態で放置してあった」

朝日奈「未来の新聞紙?!」

十神「…俺たちの記憶には空白の期間があると言っただろう。故にこの新聞は未来のものなどでは無い。過去のものだ」

朝日奈「どういうこと?」

苗木「記憶消去に未来の新聞紙…つまりボクたちは過去のことを忘れてしまっているってこと…だよね」

十神「フン。ついて来られる奴がいたか。その通りだ。俺たちは現在の日時を誤認している」

苗木「ボクもさっきにたようなことを聞かされたんだ。舞園さんが…僕には忘れていることがあるって」

十神「…なるほど。山田に続いて舞園も思い出したか」

苗木「キミも何かを覚えているの?」

十神「無い。しかし俺は真実にたどり着いた」

939: 2013/12/13(金) 00:28:50.43
朝日奈「待って待って!何の話?!記憶消去とか思い出すとか!」

十神「まだわからないのか?貴様の脳は機能しているのか?」

朝日奈「いいから教えてよ!」

十神「俺たちはこの学園に来たことがある」

朝日奈「えっ?!」

十神「いや、違う。正確にいえば…俺たちはこの学園に既に在籍していた」

苗木「…そして確かにこの学園で学生生活を送っていた…そうだよね、十神クン」

十神「……フン」

苗木「…『腐川の覚えの無い新刊(発行日は未来)』『金属板に刻まれたA.AとS.Oのイニシャル』『日直:石丸との痕跡のある黒板』『葉隠の筆跡で書かれた本の落書き』『ボクたちは諦めない!と側面に刻み込まれた金属板』『苗木の名が書かれた相合傘』…ってうわっ?!何これ?!ボクの名前の相合傘?!」

十神「行けるところの隅から隅まで腐川に探させた」

朝日奈「もしかして床を舐めてたのって…」

十神「舐めるように探せとは言ったが舐めろとは言っていない」

苗木「うわぁ……ん?十神クンは葉隠クンの筆跡なんてどこで知ったの?」

十神「床に放置されていた交換日記とやらからだ」

940: 2013/12/13(金) 00:29:45.31
朝日奈「勝手に読んだの?!」

十神「フン。あんなところに置く貴様らが悪い」

朝日奈「仕方ないじゃん!あそこじゃなきゃ桑田とれなかったんだから!」

苗木「待って待って!そこまで!」

十神「そうだったな。下らん話をしている暇は無い」

十神「…これらひとつひとつはくだらん物だ。しかしここまで重なれば…どうだ。不自然だろう」

苗木「朝日奈さんと大神さんのイニシャルが刻まれた金属板。石丸君の名前の残った黒板…苗字自体はありふれた物だけど…確かにここまで揃ってると変だね」

十神「これらの証拠、そして俺たちの認識している時間と、実際の時間のズレ。そしてその女の漏らした記憶を消したはず…という言葉。ここまでいえば理解できるな朝日奈」

苗木「ボク達は確かにここで過ごしていた」

十神「それもこの学園が封鎖された後に、だ」

「その通りですぞ!」

十神「…ようやく来たか」

山田「十神白夜殿は気づいていたのですな」

十神「そうだ。貴様の発したうわごとで俺は間違っていないと確信した。豚でも役に立つことがあるものだな」

葉隠「待てって!俺たち中途半端にしか話を聞いてなくてわけわかんねーんだけど!」

セレス「もう一度最初からの説明をお願いいたしますわ」

十神「覚えている限りのことを話せ、山田。それが貴様に与えられた役割だ」

山田「実を言うとそこまで思い出していませんが…明かして見せましょう!真実はいつも一つ!なのですから!」

944: 2013/12/19(木) 00:19:23.40
ギリギリ行けそうなんで行きます!

945: 2013/12/19(木) 00:19:54.78
爆弾をセット、遠くから火を投げて爆発させた。
近場に潜り込んで音と光を耐えしのぐ。

霧切「…さて、開いたわね」

シャッターは無残な姿になっていた。



宿舎二階

霧切「…酷い有様ね。今の爆弾で壊れたわけではなさそうだわ」

霧切「…どこから調べるべきかしら。壊れていて調べられるところが存外に少ない」

霧切「…ここは、ロッカールーム?」

霧切「…鍵がかかっている。駄目だわ」

霧切「…後は、この先」








宿舎二階シャッター

舞園「シャッターが壊れて…霧切さんが先に行ったってことですよね…」

舞園「…なんですかここ?!私の記憶の中の学園はこんなに荒れてなんてないのに…」

舞園「…私の思い出せていないことがまだあるってことですか…」

舞園「この先には何があるんでしたっけ…」

舞園「とにかく急がないと…」

946: 2013/12/19(木) 00:20:59.84




山田「ふうむ…あれはいつのことだったのか…今となっては懐かしい日々…」

十神「なんだその語り口は」

山田「演出ですぞ。推理漫画なんかだとこーんな風にもったいぶって…」

十神「時間がないと言っているだろうが!」

山田「しかしですな…こんな風に拙者が注目されるなんてなかなか無い機会ですからなー」

セレス「ゴタゴタ言ってねえで話せっつってんだよこの豚が!」パシィン

山田「うほっ」デブデブ

セレス「何を悦んでんだよこの豚ァ!」パンッ

苗木「まだ持ってたのその鞭?!」

朝日奈「だからそういうのやめてってば!自分達の部屋でしてよ!」

葉隠「あの鞭捌きなかなかだべ…セレスっちに紹介したい店があんだけど…」

腐川「へっくし!……えっ?!ちょっとここどこ…」

苗木「あれっ?!腐川さん戻った!」

朝日奈「うわ本当だ!」

十神「貴様ら黙れ!おい山田!とっとと要点をまとめて話せ!できないなら箇条書きにして俺に渡せ!」

山田「それはあまりにも酷くありませんか?謎がやっとこさ解けるのですぞ」

十神「俺にとっては答え合わせでしかない。とっとと話せ」

山田「仕方がありませんなぁ…」

947: 2013/12/19(木) 00:22:07.42
山田「では単刀直入に言いましょう。ズバリ!私たちはクラスメイトだったのです!」

朝日奈「えええーっ!…えっ?」

葉隠「今もクラスメイトだべ」

山田「わざとやってませんか?!」

苗木「なんだかなぁ…」

山田「やり直します?」

十神「…呆れて言葉も出ん」

山田「はぁ…もう少しイケメンにシリアスに決めるつもりだったんですがなー」

セレス「その容姿とこのメンツでは不可能ですわ。いいからとっとと話しなさい。いつまで引っ張るつもりですの?」

山田「では真面目に言いますが…僕たちはここに来る前…いえ来る前と言うか記憶がなくなる前ですな。クラスメイトとしてここで過ごしていたのです」

十神「それはいつからだ」

山田「今がいつなのかわからないのであやふやですが記憶では二年ほど前に入学を果たしてますぞ」

朝比奈「…じゃあ、山田のあの寝言は…」

山田「あれは入学して最初の夏…秋入学ですから丁度一年くらいたった頃の話です。その頃の夢を見ていたのです」

山田「賑やかで笑いの絶えないクラスでした…アルターエゴの見せてくれた写真もそんな一幕を写したものでした」

山田「十神白夜殿も安広多恵子殿も…」

セレス「セレスですわ」

山田「セレス…殿も、一緒になって遊ぶ位には仲が良かったですぞ」

セレス「ありえませんわね」

十神「俺がこんな愚民共と…?笑わせるな」

山田「そんな二人が考えを改めてしまうほどに楽しいクラスだったのです」

948: 2013/12/19(木) 00:23:37.54
苗木「それがなんでこんなことになってるのかな。鉄板とかマシンガンとかさ。聞く限りじゃ普通の学校生活だったんだよね」

葉隠「こういうインテリアだったんだべ」

腐川「マシンガンがインテリアの学校がどこにあるのよ…なんかわけわかんないけどムカつくから言っとくわよ…」

山田「…実を言うとですな、そこがあやふやなのですぞ」

十神「…何?この役立たずが…」

朝日奈「わかってることはないの?」

山田「…例の「人類史上最大最悪の絶望的事件」…それがあったことは覚えています。ぼんやりと。世界が凄まじい勢いで変化し、荒れ果てていきました…」

苗木「荒れ…果てた?」

葉隠「荒れ果てたってどういうことだべ?」

山田「無法地帯というか…一言でいうなら世紀末状態」

朝日奈「あはは…そんな、嘘でしょ?」

十神「嘘では無い。…それでこの学園はこのような武装状態になっているのか」

山田「でしょうな」

セレス「でしょうな…ということはなるほど。そこからわからないのですか。困りましたわね」

十神「ジェノサイダーも深くは知らん様だ。主人格ではないからな」

腐川「わ、私に何か御用でしょうか…」

十神「その口を閉じろ」

腐川「はい!………」

十神「…ということは情報源はやはりこの女か…」

戦刃「……」

十神「ところで山田、この女の名前はなんだ」

山田「…彼女は戦刃むくろ」

山田「ここにはいない、江ノ島盾子の姉なのです」

949: 2013/12/19(木) 00:24:31.59



四階

大神「……」

大神「…む」

大神「情報処理室…怪しいな」

大神「鍵も掛かっている」

大神「…開けるか」

大神「…むうううっ」

大神「むっ?!」







桑田「…なんも起こんねーな」

大和田「様子でも見にいくか?」

石丸「そうだな。それでは兄弟頼む。僕は奥に戻ー


カチッ

その時だった。
たくさんのスイッチ音のような後、突然世界が闇に包まれた。右も左も分からない。


石丸「何事だ?!突然真っ暗になったぞ!」

桑田「いってェ!おいオレの足踏みやがったのは誰だよ!」

大和田「桑田この野郎!腕振り回すんじゃねェ!」

950: 2013/12/19(木) 00:25:30.67
石丸「まさかブレーカーが落とされたのか?!」


僕は慌てて奥へと走った。もしも学園の電源が落とされたのだとしたら、今進んでいるハッキング作業はどうなるのだ。

石丸「不二咲君!」

不二咲「石丸君!いきなり電気消えちゃったみたいだけどどうしたの?!」

石丸「不明だ!パソコンは無事かね?!」

不二咲「…うん。これはバッテリーで動いてるから」

アル『ご主人タマ!建物内の電灯が全部オフになってるよ!』

石丸「…ブレーカーが落ちたわけでは無いのか?」

不二咲「…みたい。操作は何処からされてるの?」

アル『一括操作されてるよ。場所は情報処理室。僕が攻撃してるところと同じ』

石丸「情報処理室…!黒幕はそこか!」

不二咲「アルターエゴ、抵抗はある?」

アル『セキリュティは働いているけどそれ以外の抵抗らしい抵抗はないよ』

不二咲「続けて」

アル『うん』

不二咲「石丸君、どうしよう。こんなに真っ暗だとみんな困っちゃうよね」

石丸「桑田君と兄弟に様子を見に行ってもらおう。…情報処理室は何処だろうか」

不二咲「アルターエゴの得た資料によると四階…だよ」

石丸「四階…まだ二階までしか開放されていないな。これでは向かえない」

不二咲「…あっ」

石丸「どうかしたかね」

951: 2013/12/19(木) 00:27:41.11
不二咲「物理的にシャッターが壊されてる…!」

石丸「何だと!?」

不二咲「さっきの爆発きっとこれだよ!誰かがシャッターを壊したんだ!」

石丸「しかしどうやって爆発など…」

不二咲「…破壊されている箇所は三階と四階に続くシャッターと、僕たちの部屋のところにあったシャッターみたい」

石丸「いったいいつの間に…」

不二咲「ここ音が届きにくいから…」

石丸「兄弟達に知らせてこよう!」





石丸「兄弟!」

大和田「何かあったか?!」

石丸「この停電は恐らくは黒幕によるものだ!情報処理室から一括操作されて建物中の明かりが消されたようだ!」

大和田「情報処理室だぁ?どこなんだよそれは!」

石丸「四階だ!」

桑田「四階…どうしようもねーじゃん!確か二階までしか開いてねーだろ?!」

952: 2013/12/19(木) 00:28:16.62
石丸「いや、開いている。先ほどの爆発音は恐らくそれだ。不二咲君によればシャッターは物理的に破壊されているらしい」

桑田「マジで?」

石丸「マジだ!僕たちの部屋のところにあったシャッターと、四階までのシャッターは全て開いている!」

石丸「そこで君たちに様子を見に行ってもらいたいのだ。恐らく霧切君や苗木君達が先へと進んでいるはずだからな」

桑田「オッケー行ってくるわ!」

大和田「任せとけ兄弟!」

石丸「うむ。ところでどちらかが残…」

桑田「大和田オレはこっちいくわ!そっちは頼むぜ!」バタバタ

大和田「おう!任せとけ!」ドドドド

石丸「残ってくれないか…って君達!」

石丸「待ちたまえーっ!人の話は最後まで聞きなさいと先生に教わっただろう!待ってくれ!どちらか一人残ってくれーっ!」

石丸「…ふ、二人とも行ってしまった」

石丸「も、もしここが襲撃されたらどうすればいいのだ?!僕一人では守りきれないぞ!」

石丸「兄弟ー!桑田君ー!」

石丸「……これは。僕も腹をくくらなくてはならないようだ…」

953: 2013/12/19(木) 00:29:33.90


十神「何が起こっている?!突然停電だと?!」

山田「はわわわわわ…」

セレス「下手に動かない方がいいですわよ」

腐川「ひっ…ひいいいっ!何よ!何が起こってんのよ!」

葉隠「ヤバイヤバイだろこれ!」

朝日奈「落ち着いてよみんな!…落ち着いてって!」

苗木「…ッああ!」

セレス「どうしましたか苗木君?」

苗木「居ない!縛ってた筈の戦刃さんが居なくなってる!ここにあるのは縄だけだよ!」

十神「何だと?!どういうことだ説明しろ苗木!」

苗木「暗くなった一瞬で抜けたんだ…」

セレス「やけに静かだと思えば…縄を抜けようとしていましたのね」

朝日奈「落ち着いてる場合じゃ無いでしょ?!こんな真っ暗じゃ追えないよ!」

腐川「だ、だからってあいつ放っておくの?黒幕に合流されたらオシマイじゃない…氏ぬなんてイヤよ!そんなの!」

セレス「これが黒幕によるものだとすればこの停電は回復などしませんわよ。回復を待つのは自殺行為と言えますわ」

葉隠「ってかそもそも戦刃はどこ行ったのかもわかんねーだろ!」

苗木「多分四階だよ!大神さんを追ったんだ!」

朝日奈「かなり動揺してたもんね。さくらちゃんが四階行くって行ったとき」

朝日奈「…ってことはまさかさくらちゃんを襲うために…?!どうしよう!真っ暗だよ!さくらちゃんが殺されちゃう!」

葉隠「オーガは殺せねーだろ!」

朝日奈「でも、でも…!さくらちゃんッ!」

十神「待て朝日奈!止まれ!…止まれと言っているだろう!」

954: 2013/12/19(木) 00:30:52.61
山田「追った方がいいのでは…」

セレス「全員で行動しますわよ。ここで別れるのは危険ですわ」

苗木「みんな生徒手帳だして!明かりにしよう!」


大和田「おいそこにいるのは誰だ!」

十神「その声…大和田か。そっちはどうなっている」

大和田「十神かよ。不二咲はまだハッキングやってんぜ。どーもこの停電は停電じゃなくて明かりを消しただけなんだとよ」

セレス「あら、そうなのですか」

大和田「ところで一つ聞いていいか?」

十神「何だ」

大和田「セレスはいるみてーだが舞園は見つかってねえのか?」

苗木「ああ舞園さんなら山田君と一緒に石丸君のへや…?!」

苗木「ちょっと待ってよ!舞園さんはどこに行ったの?!なんで一緒じゃないんだよ!」

山田「あっ…」

葉隠「言うの忘れてたべ。舞園っちなら霧切っちを追ってどっか行ったぞ」

苗木「……!そんな!」

十神「おい!何でそれを言わなかった!」

セレス「失念してましたわ」

十神「よくもヌケヌケと…!あの女が妙な真似をしたらどうするつもりだ!何故止めなかった!」

葉隠「勝手に走ってったんだよ!」

山田「止める暇などありませんでしたぞ」

955: 2013/12/19(木) 00:31:56.54
苗木「じゃ、じゃあ今舞園さんは霧切さんのところに?」

十神「霧切は宿舎二階へ行った。四階よりは可能性が低いが黒幕がいてもおかしくはない」

苗木「危険なんじゃ…」

十神「あの女は今病んでいる!俺たちに不利益を与えるような行為をしたらどうするつもりだセレス!」

セレス「わたくしにそんなことを言っても事態は好転しませんわよ。行動を取るべきですわ」

苗木「ボク行ってくるよ!舞園さんを連れ返しに行ってくる!」

十神「好きにしろ。どうせ貴様などアテにもしていない」

大和田「苗木!そっちにゃ桑田が行ってるからよ!うまく合流しとけ!」

苗木「うん!わかったよ!」







大神「停電だと…」

大神「このタイミングとは…やはりこの中に黒幕が…ハッ?!」

ギィーガガ…
ガチャン

大神「く…」

備え付けられていたマシンガンが、我にに狙いを定めていた。
静かに後退する。

大神「ここにはいくつのマシンガンがあったか…よく見ておくべきだった」

大神「これでは記憶を頼りに避けるしかない…」


暗闇の中、マシンガンは静かに我を見つめていた。すぐそこに黒幕がいるというのに、歯を軋ませながらも下がるしか無い。
機械との無言の睨みあいが続く。
その時、

956: 2013/12/19(木) 00:33:00.23
大神「!何だこの気配はッ」

大神(鋭い殺気が走ってこっちに来るな…誰だ?…ナイフを構えている。この暗闇の中迷わずに近づいて来るということは闇が見えるということか)

大神「…迎え撃つ」

大神(挟み撃ちか。敵とマシンガンに挟まれないように動かなくてはな」


足音はどんどん近づいて来る。音を殺そうともせず、力強く床を打つ音が響いていた。
迎撃すべく構えを取った。


大神「何としてでも帰らねばならぬ。朝日奈との約束だ」


そしてとうとう黒い影は姿を表した。


戦刃「大神さくらァ!そこを離れろ!」

大神「やはり貴様か」

戦刃「……はァッ!」

大神「遅いッ!」


江ノ島は隙の無いようにナイフを構え駆けた。闇の中を殺気が駆け抜ける。
それをギリギリまで引きつけると右にそらして避けた。


大神(本来ならば上に逃げてそのまま攻撃したいところだが…今上に逃げれば撃たれた時に避けられぬ)

大神(絶えず動いて翻弄するか待ち伏せるか…)

戦刃「はあ、はあ、はあ…この…ッ!」

大神「…ぬうッ!まだ来るか!」

957: 2013/12/19(木) 00:34:02.13
戦刃「…いッ!ぐ…!」

大神「何だと…?」


江ノ島の異常に気がつき暗闇の中を凝視する。すると江ノ島が足をかばっていることに気がつく。


大神(…血の臭いがするな。怪我を負っているのか)

大神(…だからといって、手加減するつもりなどさらさらないが)

大神(手を抜けばやられてしまうだろう。…恐ろしい相手だ)

「はっ、は、はあっ」

大神「……声?」

「…さくらちゃん、さくらちゃんどこ?!」

大神「……朝日奈?!」

戦刃「…そこだァッ!」

大神「…ぬゥっ!」

大神(腹を少し切られたか…!いや、かすり傷だ!それよりも…)

大神「朝日奈!来るな!」

朝日奈「さくらちゃん!」

戦刃「…朝日奈さん?」

朝日奈「…やっぱりここに居たんだ。さくらちゃんに何したの?!」

戦刃「……っ」ダッ

大神「やめろ!朝日奈に近づくな!」

戦刃「はああああああッ!」

朝日奈「ヒッ…!きゃああっ!」

大神「朝日奈あああああッ」

戦刃「ハァッ!」

958: 2013/12/19(木) 00:35:25.72

我は見ていることしかできなかった。
闇の中に何かが刺さる音がする。
一瞬にして血の気が引き、直後に沸騰したように昇る。


大神「江ェェェエノ島ァァアアア!」

戦刃「…はあ、はあ……刺さってない?!」

大神「何?!」

朝日奈「…何も準備しないで来るとでも思った?」

戦刃「これは…本?!」

大神(……本を開いて構えている?!)


朝日奈は腹のまえに構えた本をそのまま勢いよく閉じた。本に遮られていたナイフはそのまま挟まれる。そして閉じた勢いのまま、ぐるりと右に捻り後ろに引いた。
不意を突かれた江ノ島は、抵抗をする間も無くナイフを奪われた。


朝日奈「こんなもの!捨ててやるーっ!」


そういい朝日奈は力の限りに本を投げた。
本は闇の中に消え、何処かへと落ちたようだ。カランとナイフの落ちる金属音が響く。


戦刃「あ……」

大神「逃がさん!」ガシッ

戦刃「あ…!離せ!離せぇっ!」

959: 2013/12/19(木) 00:36:10.72
朝日奈「…さくらちゃん!」

大神「…朝日奈よ。助けにきてくれたのだな」

朝日奈「さくらちゃん怪我してる…!」

大神「かすり傷だ。それよりも皆を呼んできてくれ」

朝日奈「うん!わかった!」

キィ…

大神「何?」

朝日奈「あれ、そこのドアもしかして開いてる…?」

戦刃「……!」パァ…

大神「朝日奈!そのドアから離れるのだ!」

朝日奈「…え、もしかして…本物の江ノ…」


扉の隙間から白い腕が伸び、何かを外へと投げた。
投げられた黒い何かは朝日奈を通り越し、我の目の前に落ちた。落ちたそれを確認して慌てて朝日奈に駆け寄る。


朝日奈「何?!さくらちゃん!」

大神「目を閉じて耳を塞げ!」


我は朝日奈を抱えて遠くへと飛び込んだ。
次の瞬間、白い光と爆発音が炸裂した。
暗闇から突然強い光に晒され目が眩む。音に打ちのめされそうになるところを必氏に堪えた。


戦刃「盾子ちゃん…無事だったんだぁ…よか…た」ドサ

大神「…っく、ぐ…朝日奈ァ…しっかりしろ!朝日奈!」

朝日奈「……」

大神「朝日奈ァァアア!」

960: 2013/12/19(木) 00:36:55.30
男子トイレ

石丸「むむむむむ…」

石丸「不安だ…実に不安だ」

石丸「僕一人で不二咲君を守れるだろうか…いや!弱気になどなった時点で負けだ!気合を入れるのだ!」

石丸「うおおおおおおっ!」

石丸「……」

石丸「…みんなは大丈夫だろうか」

石丸「…んん?」

コツ…コツ

石丸(足音…?)

石丸「桑田君…?」

コツコツ

石丸「兄弟か…?」


返事が無い。
不二咲君の打つキーボードの音が遠くなって行く。
意識はただ、闇の中から近づいて来る足音へと向けていた。

この足音は桑田君でも兄弟のものでもない。ヒールで床を打つような音だ。
霧切君だろうか?セレス君だろうか。そんな無意味な問いを頭の中で繰り返す。
…わかっている。この足音はその二人でも、仲間のものでは無い。


こつこつ、こつこつと近づいて来る足音はやがて止まった。
ーそこに、居る。

961: 2013/12/19(木) 00:37:52.76

不二咲君に合図を送った。不二咲君の腕に緊張がこもる。
僕はゆっくりと、トラップをすり抜けて男子トイレの入口へと近づいて行く。
意を決して、入り口から顔を出した。


石丸「……いない?」ガシッ

石丸「ひっ…?!手首が…捕ま…」

石丸「…誰だ?!」

「………ぷぷ…」

石丸「…江ノ…島君?もしや本物の…?」

江ノ島「……うぷ」

石丸「そ、そうか!逃げてきたのだな!怪我はないかね?」


ぎちぎちと手首が締め上げられる。
その細腕からは想像もできない程の力だった。その力の強さに嫌な汗が出る。
そして暗闇に目が慣れ少しずつ彼女の姿が見えてきた。

その姿はニセ江ノ島君にそっくりだった。…いや、あちらがこの本物に似せていたのだから当然か。
右手は僕の手首をつかんでいる。
左手にはツルハシが掴まれていた。
そしてようやく顔を見る。その顔は…


江ノ島「うぷぷぷぷぷぷぷっ」


僕の想像していた、非力で哀れな被害者の顔などでは無く、獰猛な捕食者の顔。

962: 2013/12/19(木) 00:38:42.53
石丸「……!」

江ノ島「うわっ?!」


恐怖に襲われ咄嗟に突き飛ばした。
江ノ島らしき人物は背中から倒れる。
ドサリと音を立てて倒れる影を確認して奥に下がる。上下左右に張り巡らされた縄跳び紐をすりぬけ隠し部屋へと辿り着いた。


石丸「不二咲君!今すぐに!今すぐにアルターエゴを持って逃げたまえ!」

不二咲「何?!どうしたの?」

石丸「そこに…そこにぃっ…!」

石丸「…ッ黒幕が!」

不二咲「……!後ろ!」

石丸「え…」

江ノ島「……こんな狭いところで逃げられるとでも思ってるのか?」

石丸「うわあああああっ?!」

江ノ島「私様が直々に来てやったのよ?もっと相応しい態度を取るべきだとは思わないの?」

不二咲「ま…まさか本物の…」

江ノ島「ねえこの紐って何?もしかしてトラップのつもりだったのぉー?もしかして絶望的にお馬鹿なのかなぁー?」

石丸「……っ」


黒幕が襲ってくるならばモノクマの姿だろうと考えて張っていた進入を妨げるトラップは、細身の体には何の抵抗にもなっていないようだった。
現に僕が通るよりも早くに突破してしまっている。

石丸「…何が目的だ!」

江ノ島「一つしかないじゃん?わざわざ来るなんて」

江ノ島「よっこいしょー!」


にかりと不釣り合いな程の笑顔を向けられて体が凍りつく。
そんな僕に構うことなく江ノ島はツルハシを掲げて不二咲君の方へと向かっていった。
その足取りは軽く、まるで買い物にでも行くかのようだった。

963: 2013/12/19(木) 00:39:35.25
不二咲「……!」


不二咲君が忙しなく指先を動かす。
その間も江ノ島はゆっくりと近づいて行き
やがて辿り着く。
びくりとする不二咲の姿を見て僕はやっと動き出した。


石丸「やめろ!」

江ノ島「何度も何度もうっとおしいですね…少し黙っていていただけませんか?」

石丸「…たあッ!」


腕で顔をガードして体ごとぶつかった。この部屋は狭い上に暗い。
当然、避けられない。


江ノ島「…うわぁ!」


壁に二人で激突する。
コンクリートにぶつかる鈍い音とツルハシが落ちる音がした。
膝を多少擦りむいたが、壁と僕の間に
人というクッションがあったために僕に怪我はない。


石丸「っ…どうだ!さあ、降参したまえ!」

江ノ島「……」

石丸(……打ち所が悪かったのか?)

江ノ島「くく…」

江ノ島「………っく、ふふ、痛い痛い。…絶ッ望…的」

石丸「…わ、笑っている…本当に打ち所が悪かったのか?!」

江ノ島「頭は打つし腕も捻るし本当痛いですぅ…こんなんじゃ巻き返しなんてできない…ああ絶望的ィ…」

964: 2013/12/19(木) 00:40:51.42
石丸「何を…うがぁっ!」ガンッ


体がツルハシの側面で打ち付けられ地面に落ちた。
意識が朦朧とする中に、背中に何か尖ったものをぐりぐりと刺された。骨と骨の隙間の肉の部分にヒールを捻じ込まれているようだ。背中に激痛がはしって意識が戻る。


石丸「…い、いっ…く…不二咲君!逃げ…ろ!」

不二咲「……」


伏せっているために不二咲君の顔が見えない。しかし逃げようとすらしていないことは部屋に響くキーボードを叩く音で察せられた。最後まで足掻く算段のようだ。
上を見ればツルハシを持ち替えて構えている様子が見えた。


「やめろおおおおおおおおおっ!」

『もういいよ!早く手を離して!』

「……ッ」


悲鳴が幾重にも重なり響く。
そしてツルハシがー



アルターエゴのパソコンに突き刺さった。



「……やめてぇ!」


悲鳴にツルハシを止めることはできない。
何度も何度もリズムを刻むようにツルハシが打ち付けられる。
僕達はただそれを見ていることしかできなかった。
圧倒的な暴力に晒されると人は、動けなくなるのだと初めて知った。

そしてパソコンはガガガガガと断末魔を残し、動かなくなった。
唯一の光源が消え、部屋は完全な闇になる。

965: 2013/12/19(木) 00:42:03.03
石丸「……ガッ?!」

江ノ島「終ったとでも思った?」

石丸「が、があ……!」


暗闇から伸びて来た腕に首を掴まれる。
力が少しずつ入ってミシミシと骨が軋む。


江ノ島「確かにわたしは計画的に何かを進められたことはありません…」

江ノ島「でもな!テメーみてーなうざってえだけの馬鹿共に全てをぐっちゃぐちゃにされんのはたまん無く殴りたくなんだよ!」

江ノ島「確かにどこまでもうまく行かない苦しみに悶え喜んだことはありましたが」

江ノ島「でもそれにも…飽きちゃったっていうか…」

江ノ島「舞園さんの絶望、むくろの残念さなんかは確かに面白かった。でもわたしが求めていたのはそれじゃないんです」

江ノ島「もうその絶望も叶わなくなっちゃったけど!」

江ノ島「こんなに準備をしたのに無駄になるなんて…絶望的です」

石丸「があッ…ぐッ…ぁぁ…」

江ノ島「つーかさ?テメーは真っ先にぶっ壊れると思ってたんだけど。それがこんなうざってえことになるなんてさぁ」

江ノ島「自分が主人公だとでも思ってるんですかぁ…?痛すぎて見ていられません」

江ノ島「所詮はサブキャラだというのに…その辺で決まったセリフだけを吐くような村長程度の存在なんです」

石丸「……」

江ノ島「…えっうっそー!もう頃しちゃった?」

石丸「………」

江ノ島「…ってなんだ。気絶しただけか。次は不二咲さんをやるかな…どうしよう?」

江ノ島「そろそろ出来上がってる頃だろうし霧切さんの様子でも見にいくか」

966: 2013/12/19(木) 00:43:14.91

僕の体はどさりと投げ捨てられた。
勝者のように悠然と立ち去って行く影を見つめることしかできない。



負けた
アルターエゴは破壊された。もはや打つ手は無い。その事実に打ちひしがれる。


…あのような理不尽な暴力が許されていいのだろうか。勝者にさせていいのか。
舞園君の心を傷つけ、桑田君を傷つけ、苗木君や霧切君を苦しめ
兄弟や不二咲君の心を抉り、朝日奈君と大神君の絆を引き裂こうとする

……そんなことを許してはいけない。
このようなことが許されてはいけないのだ。
…だが、立ち上がることができない!




立ち向かえば勝てるのか?
このまま寝ていればきっと大丈夫だ。
向こうに行けば大神君や兄弟がいる。
彼らならば負けることはない筈だ。
だから僕はここで寝ていればいい…
寝ていれば…


涙が止まらない。
この涙はなんだろうか。
未知のものに触れた恐怖か
命が助かって安堵しているのか
…違う

967: 2013/12/19(木) 00:47:56.44

不甲斐ない。ただ、不甲斐ない
兄弟たちは今まさに闘っているというのに僕は戦うことを放棄するというのか
勝とうとすることを放棄するのか?

不二咲君はギリギリまで戦った。
恐れを克服し、僕たちを救ってくれた。
今だって僕の腕を止血してくれている。
彼は立ち向かったというのに僕は逃げるのか?

今ここで立ち上がらなければきっともう朝日は拝めなくなるだろう。
たとえ外にでられたとしても
どんなに早起きしたとしても
負けたままの心ではきっと光を拒絶してしまう。
…そんなあの男のような惨めな人生は嫌だ
脳裏に憎らしいくも哀しい最後だった祖父の姿がよぎる。


石丸「…ツルハシ…」


目の前に置いて行かれたツルハシがあった
思わず手を伸ばしてツルハシを掴む。なぜか懐かしさを感じた。


石丸「…暮威慈畏…大亜紋土?」


…こんな偶然があるだろうか?
ツルハシに、兄弟が背負っている文字と同じものが彫られていた。
暮威慈畏大亜紋土…兄弟の魂とも言える文字。

兄弟のことを思うと力が溢れてくる気がする。
…そうだ、このままではきっと笑われてしまう。
呆れられてしまうかもしれない。
逃げたと知られれば失望されてしまうだろう。

…そんなのは嫌だ。
君は初めてできた友達だ。親友と言ってもいい。
そんな君とは…共に並んで笑っていたい。
…こんなところで寝ていては、きっと駄目だ
僕は立たなければならない



祈りを込めて柄を掴む。

(僕にも力を…力を…勇気をくれ)

(兄弟…力を貸してくれ!)

968: 2013/12/19(木) 00:48:48.12

石丸「不思議だ…」

不二咲「大丈夫?!石丸君!」

石丸「このツルハシを掴んでいると…勇気が湧いてくる」

石丸「兄弟の力が…流れ込んでくるようだ」

不二咲「石丸君…?」

石丸「…兄弟」


不思議と炎でも灯されたかのように熱い。
そうか、これが勇気なのか。


石丸「…止めてやる」

不二咲「石丸君…?」

石丸「うおおおおおおおおッ」ダッ

不二咲「石丸君!待って!」


体が軽い
まるで君が体の中から支えていてくれるかのように。
光など無い筈なのに炎が照らしているかのように見えていた。
君が照らしてくれているのだろうか、兄弟!

969: 2013/12/19(木) 00:49:32.55

目の前に江ノ島を確認する。
そこへ向って全力で踏み込む。
僕の信じる風紀が、正義が負けてはいけない。
僕は勝つ!僕自身に、この理不尽に!


石丸「うおおおおおおおおおおおッ」

江ノ島「…げえ、マジかよ」


ツルハシを振り上げて狙いを定めて振り下ろす

石丸「食らええええっ」

「させるかぁッ!」

石丸「がっ?!」ドン

江ノ島「……」

石丸「な、何だ!」

戦刃「盾子ちゃんに…」

石丸「……!」

戦刃「盾子ちゃんに手を出すなァあ……!」


酷い姿だった。
顔は所々腫れ上がり、足の至る所に切り傷があり、血を流しているのか制服が赤黒くなっていた。
立つこともままならないのかふらふらとしている。
しかしそんな体の調子とは裏腹に顔は般若そのものだった。
目力だけで人を殺せるのでは無いかと思える程に憎しみを込めて僕のことを睨みつけていた。
膨らんでいた胸が縮み上がる。

970: 2013/12/19(木) 00:50:51.61
戦刃「よくも…よくも盾子ちゃんを…!」


おもむろに彼女は震える手でス、と胸元から黒い何かを取り出した。
それはLの字の形をしていた。
それを両手で構え、僕の顔に狙いを定めた。

石丸「……!」

銃で撃ち殺される!

石丸「うわああああああッ!」

恐怖に駆られ本能のままに脳天目掛けてツルハシを振り下ろした





「やめろ!」



突如世界は白い光に包まれた。







強い力で床に叩きつけられる。

971: 2013/12/19(木) 00:51:47.51
石丸「うわぁッ!……はぁ、はぁ」

大和田「兄弟!落ち着け!頃すんじゃねえ!」

石丸「兄弟…?」

石丸「う…眩しい」




『こちら、アルターエゴ。こちら、アルターエゴ』

『無事、コントロールを奪取したよ!みんなもう安心して大丈夫だよ!』


聞き慣れた不二咲君の声が備え付けられたモニターから流れる。
その声を合図に消えていた電灯が次々と明かりを灯していった。
久しぶりの光に、闇を受け入れていた目が拒絶反応を示して目が眩む。
ようやく光に目が慣れ、様子を確認できた頃には状況が一変していた。




十神「押さえろ!もう逃がすな!」

朝日奈「よくもあんなの使ったなー!まだ耳が痛いよ!」

大神「これだけの怪我をしていながらあれだけ動くか…恐るべし」

セレス「ようやく一件落着、ですわ」

ジェノ「マジゴキブリ並の生命力ね?!あそこからまた逃げ出すとかありえねーくらいしぶといわ!」

山田「ひいひい…追いつくのがやっとですぞー…」

葉隠「うおっ?!マジで江ノ島だべ!」

972: 2013/12/19(木) 00:52:38.83
石丸「これは…」

大和田「勝ったんだよ!」

石丸「え…?勝った…?」

大和田「おう!」


兄弟が笑顔で親指を立てた。
理解が追いつかない。

横を見れば江ノ島君は捕まっていて、黒幕だろう本物の江ノ島君も押さえつけられていた。
…勝ったのか?


石丸「しかし、兄弟」

大和田「なんだよ」

石丸「アルターエゴは壊されたはずなのだが…」

大和田「は?」

不二咲「石丸君!」

石丸「不二咲君…」

不二咲「大丈夫?」

石丸「僕は…それよりアルターエゴが…」

不二咲「黙っててごめんなさい。実はあの時もうほとんどハッキング作業は終わってたんだ」

石丸「終わってた?では何をあんなに急いでいたのかね」

不二咲「うん。あの時はアルターエゴをノートパソコンから学園のパソコンに移動させてたんだ」

石丸「…では、破壊されたパソコンにはもういなかったということか」

不二咲「いなかったわけでは無いけど…コピーが別の所に移されてるよ。明かりをつけてくれたのはその子なんだ」

石丸「そう…なのか」

973: 2013/12/19(木) 00:54:03.41

江ノ島君たちが縛られていた。
…ああ本当の名前が分からないので二人をなんと呼べばいいのかわからない。


大和田「あっちの偽もんは戦刃むくろだとよ」


では戦刃君と呼ぼう。もうひとりは江ノ島君と呼ぶことにしよう。
戦刃君は力を使い果たしたのか疲労困憊といったようだった。服の中をセレス君が調べているのを見て慌てて顔を逸らす。


セレス「…これは、エアガンですわね。それに隠しナイフ…スタンガン…よくもまあこんなに」

山田「てっきり銃かなんかを持ってるかと思いましたが…ありませんな」

セレス「…エアガンはともかく、どれも倉庫にありそうなものばかりですわ。さして特別なものは与えられていないようですわね」

戦刃「……」


戦刃君は自分を調べているセレス君を歯牙にもかけず、江ノ島君の方を気にしているようだった。
江ノ島君が戦刃君に顔を向けるたびに戦刃君は笑顔になっている。
捕らえられているという状況に不釣合いな程に二人は落ち着いていた。
江ノ島君は自室にいるかのようにリラックスをし、くつろいでいるようにも見える。
辺りを改めて見回して、僕は人が足りないことに気がついた。


石丸「桑田君はどこかね?それに苗木君や霧切君、舞園君がいないようだが」

大和田「全員あっちにいるんじゃねえか?」

朝日奈「そうなんじゃない?」

石丸「…みんな寄宿舎の方なのか。それではこの二人を捕まえたことも知らないな」

大和田「そうだな」

石丸「それでは呼びに行こう。桑田君たちも安心するだろう」

大和田「立って大丈夫か?怪我酷くなってんぞ」

石丸「平気だ!さあ、僕たちが勝ったということを彼らに知らせに行こう!」

大神「ここは我らに任せろ」

朝日奈「いってらっしゃい!」

974: 2013/12/19(木) 00:54:57.03

朝日奈君の元気な声に見送られて僕たち三人は桑田君たちのいる所へと向かうことにした。
途中、不二咲君が情報処理室に向かうと言ったので、兄弟はそれについていった。
つまり僕は今一人である。







寄宿舎二階

石丸「な、なんだこの荒れ方は…」


破壊されたシャッターをくぐり階段を登ると、そこは廃墟のようであった。

石丸「…壊れた箇所が錆びている…壊れたのはかなり前なのだろうか」

石丸「……」



黙々と進む。
やがて僕は一つの部屋に辿り着いた。
桑田君たちがいるとすればこの奥だろう。そう思い僕は力強くドアを開けた。

ドアを開けるとそこは書斎のような部屋だった。しかしその部屋は異常なほどの装飾に溢れていた。

975: 2013/12/19(木) 00:56:16.81
石丸「なんだこれは…?」


部屋に大量に飾り付けられていたのは風船だった。赤、桃、黄、青…色とりどりの風船が花のように飾り付けられていた。
部屋の入り口には『お誕生日おめでとう』とかわいらしく装飾された看板が飾られていた。
壁の殆どを風船と折り紙で作られた鎖で埋められている中、一角だけ壁の見えている場所があった。


石丸「これは…写真…?」

薄紫の髪をもつ幼い少女が男性と写っている写真が何枚も飾られていた。

石丸「この写真は…合成ではないか」


しかしまともな写真と言えるものは少なく、その殆どは別々の写真を組み合わせたものであったり、他人の写真に顔だけがコラージュされているものばかりだった。
壁から外れた風船に何かがうもれていることに気がつき風船を退ける。


石丸「なんだこの汚い字は…『きょうこちゃんと…お父さんの思いで』…響子?」

石丸「そうか…この写真は霧切君とお父さんのものなのか」

石丸「しかし何故このような写真が大量に…?」


うすら寒いものを感じる。
何故この頃し合いの舞台にこのようなものが存在しているのか、理解ができない。

石丸「桑田君たちは一体どこだ…」

石丸「…ここにも扉が」

風船と花に埋れた入り口を見つけ、開けた。

976: 2013/12/19(木) 00:57:03.53

中はまた異常な空間だった。
やはり風船や花が飾り立てる部屋の中は、その部屋の大きさには見合わない、大量のオーディオ機器とテレビが置かれていた。
壁、床、天井…所狭しととおかれたオーディオ機器は、大小に関わらずおかれているようだった。
大きいものは僕の背丈程もあり、小さいものは手のひらに乗るサイズのものもある。


そんな異常な空間の中心に、彼等はいた。

石丸「…苗木君!ここにいたのかね!」

苗木「…う…っ、…ごめん、ごめん…」

石丸「苗木…君?」

舞園「…もしかしてそこにいるのは石丸君ですか…?」


小さくしゃがみこんだ苗木君の腕の中から、不安そうに舞園君が顔を覗かせた。顔色は悪く、足は力無く垂らされており、明らかに弱っていた。
そして舞園君の腕の中には目を閉じた霧切君がいた。気を失っているようだ。
そんな苗木君たちの隣に桑田君が真っ青な表情で立っていた、微動だにしていない。


石丸「何か…あったのか」

舞園「石丸君、私の声が聞こえますか?」

石丸「あ、ああ聞こえるぞ」

舞園「聞こえますか?」

石丸「聞こえているぞ!」

舞園「やっぱりこんなにうるさいと聞こえませんか?」

石丸「…何?」


会話が成立していない。
何かが変だ。

977: 2013/12/19(木) 00:58:02.69
舞園「あの、この音を止めてもらえませんか?苗木君動けないみたいなんです」

舞園「霧切さんも気を失ってしまって…こんなにうるさい場所にいたら、耳をやられてしまいますから、ここに置いてある機械の電源を止めて欲しいんです」

石丸「……」

舞園「聞こえますか?お願いします。私は…力が入らなくて。お願いします」

舞園「早く…早くこの音を止めてください…」

石丸「舞園君…音など…鳴っていないぞ…」

舞園「すいません。もう一度近くで言ってもらえませんか…?音が…うるさくて…」

石丸「……」

桑田「………石丸」

石丸「…ここで何があったのかね」


桑田「……舞園の耳がぶっ壊れた」





沈黙が満ちる。





舞園「この音を止めてください…お願いします…」





苗木君の慟哭だけがただ響いていた。






こうして、僕たちの戦いは幕を閉じた。
僕たちの勝利という最高の形で。

978: 2013/12/19(木) 01:00:11.26
念願の全員生還まできましたよ!



ひと段落たったというわけで次スレの立て方とかこのスレの処理の方法とか調べてきます

979: 2013/12/19(木) 01:20:12.63
やったー全員生還だー!
問題が山積みだがな!チョモランマ級の!

983: 2013/12/19(木) 03:07:04.72

985: 2013/12/19(木) 07:51:22.80
やはりほのぼの詐欺だったか
とりあえず乙

引用元: 石丸「そして僕はまた間違える」