1: t 2012/12/25(火) 02:53:48 ID:1knH8wpY
皆、泣いてる

優しそうな人も、暖かい人も

白い服の人も、青い服の人も

皆、泣いてる

何でだろう?

僕は生まれたのに…

『ごめんなさい…ごめんなさい貴方…』

僕は生まれたよ?

頭を撫でて欲しいな?

抱き締めて欲しいな?

駄目かな…

駄目なのかな…

2: t 2012/12/25(火) 02:55:09 ID:OxzxBh3E
人は食べる

僕は食べない

口に軟らかい物を運ばない

『腹へったー』

『コンビニよる?』

僕は[お腹が空いた]が解らない

聞いても誰も答えてくれない

人が食べる物を口に運ぶ

…変なの

よく解らない

食べる方法が違うのかな?

誰か教えてくれないかな?

3: t 2012/12/25(火) 02:58:50 ID:h0f4At3.
皆は増える、鏡があれば増えていく

たくさんたくさん増えていく

僕は増えない

たった一人の僕だ

僕はたった一人しかいないんだぞ

少しだけ誇らしい

でも、羨む人はいない

きっと凄い事なのに

あ…

もう一人僕が居たら…

僕に気付いてくれるかな?

気付いてくれるよね?

会いたいな…

4: t 2012/12/25(火) 03:00:26 ID:Vu1E/9HQ
グルグルと考える

哲学だ

もしかしたら僕はすでにたくさん居て

皆、互いに気付いてない?

…少し怖くなった

きっと互いに同じ思いだろうな

なにより、たくさん居たら…

僕という[あいでんてぃてぃー]が失われてしまう

これは、ショックだ…

考えないでおこう

5: t 2012/12/25(火) 03:02:41 ID:95JeCILg
優しそうな人が笑ってる

僕が生まれた部屋から出てきた

暖かい人も笑ってる

何かを大事に抱えてる

凄く凄く気になったけど…

僕が見てはいけない[モノ]

そんな気がした

『おぎゃあ!おぎゃあ!』

五月蝿い音だ…

心が締め付けられる音

僕はそんな音は出さなかった

とても静かだったんだぞ

6: t 2012/12/25(火) 03:07:13 ID:i1AXr.PE
家にはたくさんの生き物が居る

人、僕、犬、猫、鼠、虫…

それと五月蝿い何か

『ただいま、お母さん』

帰ってきた…

良いんだ、入れ替わりで出てくから

『おかえり』

暖かい人の言葉

僕の知らない言葉

ただいま、おかえり、いってらっしゃい

誰か…誰か言ってよ

7: t 2012/12/25(火) 03:08:44 ID:KnEkOmVw
優しそうな人がうろうろ歩く

僕の生まれた部屋の前だ

中には入らないのかな?

別の誰かは入っていったのに…

『おぎゃあ!おぎゃあ!』

まただ…

あの時と違う五月蝿い音

『う、生まれたぞ…お、俺もお爺ちゃんか…お爺ちゃん…な…何をすれば…』

『貴方、落ち着いて』

どうも嫌いだ…

何が嬉しいんだろ?

二人とも笑っている

8: t 2012/12/25(火) 03:11:44 ID:KnEkOmVw
暖かい人が泣いている

優しそうな人が動かない

くしゃくしゃになって動かない

ぼんやりと光るモノが空に上がる

これは知ってる

死だ…

『お爺ちゃん寝てるー』

『お父さん…』

『貴方…』

泣いている…

僕は悲しくても泣けない

涙が見えれば、僕だって泣けるのに

良いな…

皆、良いな…

9: t 2012/12/25(火) 03:14:07 ID:OSnQGgU2
暖かい人が動かない…

暖かい人も動かない…

きっと優しそうな人と同じ場所に行く

これは絶対だ

ぼんやりと光るモノが同じ空に上ったからだ

皆には見えていないらしい

「いってらっしゃい」

何となく呟いた

別に何も起きないけど…

あの家に居る必要も無くなった

そう、感じた

11: t 2012/12/25(火) 08:17:10 ID:ah4H.Dvs
旅に出た

色んな場所に…

見えないモノが見えるって嘯く人の元に…

賑やかな町

たくさんの人が通る

誰も気付かない

こんなに居るのに…

皆、同じ

誰か一人くらい…

気付いてよ…

気付いて、欲しいな?

12: t 2012/12/25(火) 08:31:49 ID:uKblkcPw
アプローチを変えてみよう

このビル一面に絵を描く

遠くからでも見えるように…

大きな大きな絵を

僕の腕をクレヨンに変えて

ほら!こんなに綺麗な色!

ほら!こんなに素敵な絵!

大切な絵

暖かい人と優しそうな人の絵

凄くない?

褒めてくれても構わんのだよ?

…駄目か

13: t 2012/12/25(火) 08:32:36 ID:YIGa3HV2
時代は歌だ

僕は声を歌に変える

高い高いビルの上で

賑やかな町にも響き渡る様に

ほら!こんなに綺麗な歌!

ほら!こんなに優しい詩!

大切な歌

暖かい人が安らかに歌った歌

僕に向けたものじゃあ無いけれど

凄いでしょ?

皆も、一緒に歌おうよ?

…また駄目か

14: t 2012/12/25(火) 08:45:07 ID:eDmGMtAU
増えない

見えない

聞こえない

変わらない

ずっと僕

ずっとずっと僕

壁に触る、触れる

人に触る、触れる

僕以外に僕は居ない

僕以外には僕が居ない

誰か

誰か誰か!

誰か誰か誰か!!

15: t 2012/12/25(火) 09:22:03 ID:uKblkcPw
僕は居ない

この世界に僕は居ない

たぶん、きっと、おそらく…

死んでも塵の一つも残さない

たぶん、体まるごとぼんやり上がる

きっと、光りもしない

おそらく、皆と違う場所に行く

そもそも死ぬのかな?

[居ない]から死なない?

[居ない]から死んでる?

もう良いや

何も考えない…

何も考えたくない…

17: t 2012/12/25(火) 09:31:06 ID:HQWGIXVY
漂う……

漂う……

漂う……

………

………

………

……

……

……







『わぁ、綺麗な絵』

18: t 2012/12/25(火) 09:33:05 ID:fDYpR236


女の子だ





ビルを見上げる女の子

何を見てるの?



『優しそうな人…』



え?

『ほら、あまり離れないの』

『はーい』

待って

待って!

19: t 2012/12/25(火) 09:36:28 ID:u3MKOTSs
「待って!」

『…』

『またね』

届いた…

またねって…言ってくれた…

追いかけたら駄目かな?

ここで待った方が良い?

考えてたら見失った…

でも、またね

またね、だからここに居る

僕に気付いてくれるように

歌を歌った

20: t 2012/12/25(火) 09:48:27 ID:u3MKOTSs
『暖かい歌…』

来た…

女の子

「こんにちは」

『こんにちは』

挨拶

挨拶をしてる…

「ただいま」

『?』

間違えた

何を喋れば良いんだろう?

何から喋れば良いんだろう?

解らない…

21: t 2012/12/25(火) 09:49:50 ID:OSnQGgU2
『君はいつから、ここに居るの?』

「ずっと前」

『君は、ここが好き?』

「今は好き」

『君は…』

『何で泣いてるの?』

泣いてる?

僕が…泣いてる?

ああ…

ああああ…

言葉が溢れ出す

今までの事が全部

順番なんてバラバラで…

ただ言葉を並べるだけ

22: t 2012/12/25(火) 09:51:28 ID:eDmGMtAU
『…』

気が付いたら、言葉は無くなった

心が空っぽだ

『…よしよし』

撫でてくれた

『君は…とうめいにんげんかな?』

とうめいにんげん?

知らない、知らない言葉

それが僕?

『あ、もうこんな時間』

あ…

『一緒に来る?』

コトリと心に言葉が生まれた

「行きたいな」

23: t 2012/12/25(火) 09:57:59 ID:KnEkOmVw
言葉が生まれる

言葉を吐き出す

女の子が聞いてくれる

「変な服」

『新しい制服だよ、明日から高校生なの』

そして、いつもの言葉

『一緒に来る?』

「行きたいな」

いつも一緒…

迷惑じゃないのかな?

急に嫌わないかな?

『…』

撫でてくれた

いつもそれだけで安心する

24: t 2012/12/25(火) 10:00:21 ID:uKblkcPw
『あれ?』

心配そうな顔

どうしたのかな?

『君が少しだけ淡く見える』

…?

また僕は居なくなるのかな

嫌だ…

でも、なんだろう

違う気がする

『居なくならない…よね?』

解らない…

最近、酷く眠い

眠った事なんて無いのに…

25: t 2012/12/25(火) 10:07:55 ID:hfJq/CWc
『淡くぼんやりだ…』

あぁ、そうか…

僕はどうやら生きてたらしい

『行っちゃうんだね』

折角、お話しできたのに

『寂しいな…寂しいよ…』

折角、撫でてくれたのに

『君はそれで良いの?』

折角、生きてるって解ったのに

「嫌だよ」

『君の、君の名前を聞かせてよ…』

『君が生きた、君だけの名前…忘れないから、忘れたくないから』

「…」

「ーーー」

26: t 2012/12/25(火) 10:09:00 ID:Vu1E/9HQ
ゆっくりと上る

女の子が見上げてる

やっぱりだ…

塵の一つも残さない

ぼんやりまるごと消えていく

僕も光ってるのかな?

だと良いな

僕の世界は段々と暗くなるばかりだから

優しそうな人とも

暖かい人とも

違う場所に行くんだろうな

そうか…

また一つ、解った

これが…眠い、だ

27: t 2012/12/25(火) 10:11:01 ID:eiyo2i.2


ずっと暗い

真っ暗だ







まだ暗いまま



また、眠ろう





……

………

28: t 2012/12/25(火) 10:19:11 ID:fDYpR236
遥か遠く…

遥か遥か遠く…

光が見える

僕も動けるみたいだし

あれ?

体が重い?

思うように進まない

あの光はまだまだ遠くにあるのに…

ゆっくり

ゆっくりで良いんだ

初めての感覚

きつい、つらい、いたい…

29: t 2012/12/25(火) 10:19:56 ID:YIGa3HV2
やめた

もうやめた

光はまだまだ遠くのまま…

僕はまるごと痺れて痛い

『…』



頭を撫でられた気がした…

もう少しだけ頑張ろうかな?

体はとても痛いけど…

少し頑張ったら

また撫でてくれるよね?

30: t 2012/12/25(火) 10:22:24 ID:h0f4At3.
疲れた

歩くのがこんなに辛いなんて

光がほんの少し大きく見える

『…』

あ、歌だ…

懐かしい歌…

暖かい人に教えられた歌

大事な誰かに教えた歌

あと少し…

せめて歌が聞こえる間は

少しでも光を目指そう

31: t 2012/12/25(火) 10:24:42 ID:yY1UHjXw
倒れてしまった…

足が思うように動かない

ジクジクと痛む

『頑張って』

懐かしい声だ

大事な誰かの声だ

まだ手は動く、痛みも少ない

這って進む

光は大きく輝いている

32: t 2012/12/25(火) 10:32:27 ID:oGW7KN6w
『頑張って』

『頑張って』

『頑張って』

優しい、暖かい声…

でも、手伝ってはくれない

こんなに痛いのに

こんなに辛いのに

あの光を抜ければ声の人に会えるのかな?

だったら少し困らせてやろう

散々、僕を煽った罰だ

何が良いかな?

そうだ

僕には凄く嫌いな音があった

33: t 2012/12/25(火) 10:33:09 ID:YIGa3HV2
………

……



あと、少し

少し



……

………

34: t 2012/12/25(火) 10:34:42 ID:oGW7KN6w
眩しい

目が痛い、耳も、鼻も、体まるごと全部痛い…

『あぁ、ーーー』

この声だ

間違いない

大事な誰かと同じ声

暖かくて、優しい、大事な誰かの声

だから頑張ったのに…

こんなに身体中痛いじゃないか

しかし笑ってられるのも今のうちだ…

目一杯の音量で



「おぎゃあ!おぎゃあ!」


オワリ

36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/12/25(火) 11:38:52 ID:enfloGMw
つまり……どういうことだってばよ?

38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/12/26(水) 08:10:26 ID:p7fdVn/U
転生出来たのかな?

40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/12/27(木) 16:04:12 ID:riBcYs42
個人的に好きだよ

引用元: とうめいにんげんのうた