3: 2010/10/23(土) 00:15:22.44 ID:KmNbqUvV0
946年ネウロイから開放された欧州各国はその蹂躙された国土の復興にいそしんでいた。

そのなかで、各国における植民地争奪戦、利害関係が激化

今度は人同士で争いかねないと言う非常にきな臭い状況となっていった。


同年(照和21年)8月下旬扶桑公国関東地方・・・

美千子「ケホン、ケホン・・・」

芳佳「どうしたのみっちゃん?大丈夫?」

美千子「うん、この頃変な咳が出るの・・・一度、芳佳ちゃんのところに行ったほうがいのかなぁ」

芳佳「そうだよ、絶対行ったほうが良いよ。このままうちにおいでよ、風邪は万病のもとって言うしね」

美千子「うん、そうする。」

お盆を過ぎた関東地方には早くも秋の気配が漂っていた・・・
それは、その次の季節の訪れを表すかのように・・・

5: 2010/10/23(土) 00:16:09.63 ID:KmNbqUvV0
宮藤診療所

美千子「こんにちは」

清佳「あら、みっちゃん。いらっしゃい」

美千子「ちょっと、この頃変な咳が出るんですけど・・・」

清佳「まぁ、遊びに来たんじゃないの。じゃあ、こっちにいらっしゃい。丁度一区切りついたとこなのよ」

美千子「はい、お願いします。」

清佳「聴診器あてるから上着を脱いでくれる?」

美千子「はい」

清佳「息を吸ってー、吐いてー」

美千子「スー、ハー」

清佳「・・・」

6: 2010/10/23(土) 00:17:01.62 ID:KmNbqUvV0
浮かない顔をする清佳

美千子「おばさん?どうかしました?」

清佳「・・・ん。いや、なんでもないわ。ちょっと気になるからついでにレントゲンも撮ってみましょう。」

美千子「えっ・・・」

清佳「大丈夫よ、ホントちょっと気になるからついでにね」

長年医師として活動を続けていた清佳にはその肺から聞こえる特異な音を聞き逃さなかった。
そして、その悪い兆候はレントゲンの撮影によって確定的なものとなった・・・

清佳「みっちゃん、今度近いうちにお父さんかお母さんと一緒に今度診療所に来てくれない?」

美千子「どうしてですか?」

清佳「ちょっと、お話しなければならないことがあるからね・・・」

美千子「わかりました。9月4日なら大丈夫だと思いますが・・・」

清佳「じゃあ、その日にお願いね」

11: 2010/10/23(土) 00:19:45.22 ID:KmNbqUvV0
9月4日宮藤診療所

美千子母「うちの娘がどうかしたんですか」

清佳「先日、お嬢さんの診察を行ったのですが、レントゲンを撮ったところ・・・肺に・・・・・・おそらく・・・・と思われます。
今後の治療方針としましては・・・」

残酷な宣告が行われている後ろで、ラジオからも風雲急を知らせる臨時ニュースが流れていた・・・

「臨時ニュースを申し上げます。ブリタニア、チェバレン首相は現地時間9月3日0時全世界に対して、
カールスラントは24時間以内にオストマルクより撤退しなかった場合我がブリタニアとガリアは
カールスラントに対し戦闘状態に入ると宣言し・・・それに伴い・・・」

それは、元501統合戦闘団に対しても全世界に対しても長い長い冬の始まりであった。

12: 2010/10/23(土) 00:21:22.22 ID:KmNbqUvV0
カールスラント帝國による機械化航空歩兵と陸戦部隊による電撃戦でガリア連邦は今度は人の手により占領されブリタニアにも迫る勢いであった。
このような血で血を洗う戦闘が欧州で続く一方で、極東の地域でも火種がくすぶり始めていた。

戦時と言う物流量が増大する中、海上通商において安さを武器にした扶桑皇国が表向きは中立国であったリベリオン合衆国の通商を圧迫、対立が激化
扶桑皇国に対してリベリオン合衆国による各種工作機器、医薬品、資源の禁輸措置が講じられ一触即発の状態となりつつあった。

この影響は民生に重くのしかかるものとなっていった・・・

美千子「ケホン、ケホン…この病気治るのかなぁ…」

芳佳「みっちゃん、そんな弱気を吐いちゃだめ。お母さんもいるしお婆ちゃんだっている。絶対治してみせるから」

美千子「うん。がんばるね…ゲホッ!ゲホッ!!」

芳佳「お母さん!!みよちゃんが血を……」

13: 2010/10/23(土) 00:23:09.88 ID:KmNbqUvV0
清佳「良くないわ……むしろどんどん悪化しているわ」

芳佳「そんなに……」

清佳「もっても秋まで、今年の冬は越せそうにないわ…」

芳佳「何とかならないの、お母さん!!」

清佳「医学はみんなが信じているほど万能ではないのよ……」

清佳「特に薬品の不足がひどいわ……、ストレプトマイシン、パス・ヒドラジット、抗生物質と名のつくものがほとんど手に入らないわ」

芳佳「……」

清佳「いくら名医でも薬なしじゃ手の出しようがないわ…」

15: 2010/10/23(土) 00:26:51.24 ID:KmNbqUvV0
美千子「また、血を吐いたの?……あまり、長くないのかなぁ…」

芳佳「みっちゃん、そんな事いっちゃだめ。お母さんだって良くなってるって言ってるし、気長に養生しなきゃ」

美千子「うそ!!」

芳佳「うそじゃないよ。顔色だって良くなってきてるし」

美千子「芳佳ちゃん。女の子は化粧品ののり具合で自分の健康が分かるのよ」

芳佳「……」

美千子「この頃ではもう紅を差すのが精一杯…」

芳佳「そんな事言っていないで、早く横になって……」



美千子「芳佳ちゃん。空の上ってどんなところ?」

芳佳「…どこまでも広くて、そのまま宇宙に吸い込まれそうなところ……無限に広くてどこまでも蒼いそんなところかなぁ…」

美千子「いいなぁ、わたしも行ってみたい……」

18: 2010/10/23(土) 00:29:16.40 ID:KmNbqUvV0
翌日

坂本「ごめんくださーい。坂本と申します。宮藤芳佳殿はおられるかー?」

芳佳「坂本さん。お久しぶりです。お元気でしたか?」

坂本「おおっ、宮藤か。わたしはこの通り元気だ。お前も元気そうで何よりだアッハッハッハッ」

芳佳「今日はいったいどうされたのですか?」

坂本「実は今日は折り入ってお願いがあってだな。軍属を離れたお前にこんなことを依頼するのはおかしいんだが、
もう一度欧州の空をストライカーユニットで飛んで欲しいんだ。」

芳佳「えっ…。欧州って…坂本さん?」

坂本「みなまで言わなくてもいい。大丈夫だ。戦争しろと言うのではない。テストパイロットとしてカールスラントに赴いて欲しいんだ。」

19: 2010/10/23(土) 00:32:21.41 ID:KmNbqUvV0
芳佳「いったいどういうわけなんです?」

坂本「うむ、実はだな、今度極秘裏に潜水艦でカールスラントと行き来し技術交流を行おうと言うことになってだな、
本来ならわたしが飛びたいのだがこのザマで飛べそうにない。そういうわけで向こうの連中と面識のあるお前に白羽の矢が当たったわけなんだ。」

芳佳「ええ、でも…」

坂本「うむ、実はこの話には続きがあってだな。技術交流の中に医薬品の製造に関するものも含まれているそうなんだ。」

芳佳「それって、坂本さん!」

坂本「取引みたいに使って申し訳ないんだが。そういうわけなんだ。なんとか頼めないだろうか…」

芳佳「……ちょっと考えさせてもらえませんか?」

坂本「ああ、一向にかまわない。また後日寄らせてもらおう。」

20: 2010/10/23(土) 00:36:18.97 ID:KmNbqUvV0
その晩

清佳「芳佳!大変よ!!」

芳佳「どうしたのっ!?お母さん!?」

清佳「みっちゃんが、大量の喀血をしたわ。」

芳佳「そんなっ…容態はどうなの?」

清佳「多分今夜がヤマになると思う…」

芳佳「……」

21: 2010/10/23(土) 00:39:36.98 ID:KmNbqUvV0
美千子「ゲホッ…、多分…私……も…ゲホッ…う、だめね…」

芳佳「そんな事言わないで、みっちゃん。お願いだから……」

美千子「ううん…、ケホッ…、いいの…、ああ、でも…ゲホッ……」

芳佳「なに、なに?みよちゃん」

美千子「一度で…いい…ケホッ…から、芳佳ちゃんと…同じ空を…飛んでみたかっ……ケホッ…たわ…」

芳佳「絶対連れて行ってあげるから、弱気になっちゃだめ」

美千子「本当…?、うれ…しい……、約…束…だよ……………」

芳佳「みっちゃん!?、ねぇ、みっちゃんってば…」

23: 2010/10/23(土) 00:43:18.17 ID:KmNbqUvV0
扶桑皇国豊後水道イー400艦上にて、

坂本「いいのか宮藤。お前にはもう飛ぶ理由はないのじゃないか?」

芳佳「いいんです坂本さん。みっちゃんと約束したんです。一緒に空を飛ぶんだって」

彼女の胸元には小さなかわいらしいツゲの櫛が握られていた…

坂本「そうか、ならいいんだが…」

芳佳「それに、501のみんながどうなっているか気になっていて…、坂本さんこそどうしたんです?」

坂本「お前と同じで501のみんながどうなってるか心配でな、それと、よからぬ話も聞いてるしな…」

芳佳「?」

坂本「いや、なんでもない。忘れてくれ」

乗組員「坂本少佐、まもなく潜行します。艦内にお戻りください。」

坂本「ああ、わかった。宮藤行くぞ」

芳佳「はい、坂本さん」

この時、ブリタニア、自由ガリア、リベリオン合衆国による反攻作戦が開始され
リベリオン合衆国軍がカールスラントと同盟関係にあるロマーニャ公国に迫りつつあった…

26: 2010/10/23(土) 00:48:51.23 ID:KmNbqUvV0
数ヵ月後、カールスラント占領下ガリア、口リアン軍港

バルクホルン「宮藤、久しぶりじゃないか、元気でやってたか?」

芳佳「バルクホルンさんじゃないですか。東部戦線にいると伺ってましたが」

ハルトマン「トゥルーデったら、芳佳が来ると聞いて、いてもたってもいられなくて戦線ほっぽりだしてきたんだよ~」

芳佳「ハルトマンさんまで。お久しぶりです。」

バルクホルン「コラッ、ハルトマン。誤解を招くようなことを言うなっ」

芳佳「え~、バルクホルンさん。抜け出してきたんですか~」

バルクホルン「そんなことはないぞ、宮藤。配置転換することになってだな。その間の休暇というか。うん、休暇だ休暇。」

ハルトマン「その配置転換願いだってミーナにかなり頼み込んだようじゃなかったっけ~。芳佳のくる本国に近いところをね。クスクス」

バルクホルン「オイッ、バルクホルン。いい加減にしないと…」

ハルトマン「あぁ~、怖い怖い~」

芳佳「相変わらず。お二人とも仲がいいんですね。」

27: 2010/10/23(土) 00:53:53.00 ID:KmNbqUvV0
芳佳「ところで、バルクホルンさん。今度はどちらのほうにいかれるんですか?」

バルクホルン「ロマーニャの戦線の方に行くことになってだな。どうもあっちの旗色が悪いらしい」

芳佳「ロマーニャと言えばルッキーニちゃんは元気でしょうか?」

バルクホルン「…ルッキーニか……」

ハルトマン「トゥルーデ……」

芳佳「?」

バルクホルン「あ、う…、いや、あっちのほうはどうなってるか東部戦線まで情報が来なくてだな…」

芳佳「そうですか…」

バルクホルン「それより宮藤、今夜は再開を祝して腕によりをかけてアイスバインを作るぞ。」

芳佳「わ~い、それはとても楽しみです。」

29: 2010/10/23(土) 01:01:45.34 ID:KmNbqUvV0
数日後、少ない休暇の後バルクホルンとハルトマンはロマーニャへ旅立っていった。
そして芳佳による震電の飛行テストが始まった…

技術士官「では、宮藤さん。震電を使っての飛行テストをお願いします。」

芳佳「はい、わかりました。」

技術士官「宮藤さんは対ネウロイ戦のときにこの機種を使用されていたそうですね。」

芳佳「はい、そうです。」

技術士官「それでは、まず3000メートルまで上昇し、水平飛行を行ってください。そこで特に問題なければ、こちらの指示で順に高度を上げていってください。」

芳佳「わかりました。」

技術士官「今日は慣らしを含めてゆっくりと行きましょう。」

30: 2010/10/23(土) 01:06:43.24 ID:KmNbqUvV0
さらにしばらくして

技術士官「では、今日は10000メートルまで行ってみましょう。」

芳佳「はい。」

………

技術士官「宮藤さん。現在高度はいくつですか?」

芳佳「現在高度は10000メートルです」

技術士官「(約15分ですか…)機関に異常は?水平飛行は行えてますか?」

芳佳「特に異常なし。水平飛行は可能です。」

芳佳(高度10000メートル、……蒼いなぁ……。みっちゃん、これが約束した「空」だよ…)

それは、どこまでもどこまでも無限に続く蒼い蒼い空であった…

………

技術士官「お疲れ様です。宮藤さん。今回でひと段落着きましたので、しばらく休暇にしませんか。」

芳佳「ありがとうございます。せっかくなんで少しゆっくりさせていただきます。」

32: 2010/10/23(土) 01:12:12.14 ID:KmNbqUvV0
翌日

坂本「宮藤大変だ!」

芳佳「どうしたんですか坂本さん?」

坂本「バルクホルンが撃墜されたらしいんだ。」

芳佳「えっ!?、いったいどういうことなんですか?怪我の程度は?今はどこにいるんですか?」

坂本「一気にまとめて聞くな。私のところにも今一報がきたんだ。ロマーニャの野戦病院にいるらしい。今から行くつもりだがお前はどうする?」

芳佳「わたしも行きます。」

坂本「よし、ならばついて来い。19時の夜行はおさえた。行くぞ。」

芳佳「はい。」

33: 2010/10/23(土) 01:18:26.27 ID:KmNbqUvV0
ロマーニャ野戦病院、首を振る医師を横目に義足をつけた空軍士官が歩いていく…

芳佳「バルクホルンさん。し、し、心配したんですよ~。ワーン」

バルクホルン「泣くな。芳佳。こんなのかすり傷だ。」

ハルトマン「ニヤニヤ」

バルクホルン「おい、ハルトマン笑うな」

坂本「しかし、バルクホルン、お前を撃ち落とした奴となると相当な腕前なんだろうな」

バルクホルン「ええ…、少佐…」

坂本「どうした、バルクホルン?」

35: 2010/10/23(土) 01:23:29.22 ID:KmNbqUvV0
ハルトマン「トゥルーデを撃ち墜としたのは、シャーリーだと思う」

芳佳「えっ!?」

バルクホルン「おい!!」

ハルトマン「多分間違いない……」

坂本「そうか…リベリオン軍が参戦していると聞いてたが…」

芳佳「そんな…そんなことって、ひどいです。」

ハルトマン「…」

坂本「宮藤、これは戦争なんだ。仕方のないことなんだ。」

芳佳「そんなのっておかしいですよ。なんでちょっと前まで一緒に過ごした仲間同士で撃ち合わなければならないんです。」

バルクホルン「宮藤…」

37: 2010/10/23(土) 01:33:59.83 ID:KmNbqUvV0
ハルトマン「芳佳、私だって軍人だ。いざとなれば、芳佳でさえ撃たなければならない」

芳佳「えっ…」

ハルトマン「誰かのために立ち上がるものは、向かってくるものに対して、それが誰であっても立ち向かわなければならないんだ…」

ハルトマン「そうそれが、たとえ寝食を共にした者であっても…」

芳佳「そんな、そんな…」

バルクホルン「ハルトマン、それは言いすぎだ!今の発言を訂正しろ!!」

ハルトマン「その覚悟がないなら、今すぐここの空から出ていって、」

芳佳「……」

39: 2010/10/23(土) 01:37:41.78 ID:KmNbqUvV0




バルクホルン「ハルトマンさっきはどうした。らしくなかったが…」

ハルトマン「多分ここはじき激戦になる。そうなったら、芳佳みたいなのが真っ先にやられる。もうこれ以上知り合いを失いたくない…」

バルクホルン「…」

ハルトマン「それに、さっきの言葉の続き、牙を持つものはその牙に斃れることもいとわない…そんな姿を芳佳には見せたくない。」

バルクホルン「ハルトマン……」

41: 2010/10/23(土) 01:44:55.13 ID:KmNbqUvV0
数日後、ロマーニャ空軍基地

芳佳「バルクホルンさん。退院おめでとうございます。」

バルクホルン「悪いな、宮藤。わざわざ来てくれて」

芳佳「いいんですよ~。」

『南部軍管区から入電、リベリオンと思われる敵機が南西方向より進入中。各隊員は至急迎撃せよ。』

バルクホルン「さっそくか…」

芳佳「バルクホルンさん」

バルクホルン「大丈夫だ宮藤。同じヘマはしないよ」

43: 2010/10/23(土) 01:46:59.81 ID:KmNbqUvV0
バルクホルン「やっぱりきたか、リベリオン」

シャーリー「…仕事だからな…」

バルクホルン「…じゃあ、その仕事だからって、ルッキーニを墜としたのか…?」

シャーリー「……」

バルクホルン「あんな小さな子に風穴を開けたのは何でだ!?」

シャーリー「…ウルサイ…」

バルクホルン「仕事だったら、あんなに慕っていた子を殺せるのか!?」

バルクホルン「なんか、言ったらどうなんだ!!??」

シャーリー「うるさい、うるさい!うるさい!!」

バルクホルン「!?」

シャーリー「私だっていやだったんだ。こんな仕事。仕事だからって仕方なくきたんだ。対峙したときだって頃す気なんてまったくなかった。」

シーャリー「撃った弾だって全部よけれるような弾筋だったはず。なのにあの子ったら、守るだけで反撃してこなかった・・・」

シャーリー「そうしているうちに、一発、たった一発だけ命中してしまったんだ。魔法力が残ってなかったのかなんなのかは分からない・・・」

46: 2010/10/23(土) 01:58:18.11 ID:KmNbqUvV0
バルクホルン「……」

シャーリー「あの子は、墜ちていきながら言ったんだ『誰も悲しまない世界がいいなぁ』って」

シャーリー「私はあの子の残した言葉をかなえる。その為に前に立ち阻むものは全て押しのける!!」

バルクホルン「リベリオン…」

芳佳「シャーリーさんルッキーニちゃんが本当に言いたかったこと違います。」

バルクホルン「宮藤、何できたんだ!!ここは作戦空域だぞ。すぐに基地に戻れ」

芳佳「ルッキーニちゃんが言いたかったのは『シャーリー』さんも含めて悲しまない世界です。」

芳佳「そんな泣きそうな顔してかなえたって、ルッキーニちゃんも誰も喜ばない…」

シャーリー「芳佳か…。そんなのわかってる。でも私は前に向かって突き進むことしか知らない。自分のできることをするしかない。」

シャーリー「バルクホルン、行くぞ。わたしの前に立ちはばかる何人もこのスピードの前には止まらせはしない。」

バルクホルン「…来い……」

芳佳「二人ともやめてっ!!」

48: 2010/10/23(土) 02:03:29.52 ID:KmNbqUvV0


シャーリー「ハァハァ、中々やるな…」

バルクホルン「ハァハァ、お前もな…前みたいにはいかないぞ…」

シャーリー「…どうやら互いに限界のようだ。どうだ、ここで一発一騎打ちといこうじゃないか」

バルクホルン「ああ、望むところだ。」



シャーリー「うおーーーーーーーっ!!」

バルクホルン「行っけーーーーーーー!!」


50: 2010/10/23(土) 02:09:56.05 ID:KmNbqUvV0
シャーリー「ふっ、負けたよ。」

バルクホルン「いや、私のほうの負けだな」

シャーリー「天国でルッキーニは待っていてくれるだろうか。こんなバカな私を」

バルクホルン「大丈夫さ、戦士は氏んだらみんなヴァルハラに行くことになってる。ルッキーニだってちゃんとそこにいるだろうさ」

芳佳「嫌ー!!二人と。氏なないで」

バルクホルン「芳佳、平和になったらこんな他人を不幸にするしかない軍人なんかより、お前の人を癒す能力が請われる時が来る。」

バルクホルン「それまで、元気でい…て…く…れ………」

シャーリー「芳佳、悪かったな。こんな姿を見せて、こんな時代不器用にしか生きれなかった私たちがいたと覚えておいてな」

シャーリー「そして、二度とこんな過ちのない世界にしてくれよな………」

芳佳「二人とも目を開けて、お願いだから、お願いだから…」

ここに、時代を駆け抜けてしまった二人の魔女の時代は終わった。
多くの悲しみに埋もれながら…

51: 2010/10/23(土) 02:10:57.08 ID:KmNbqUvV0
伝令兵「本日の戦況報告です。」

マロニー「うむ。特記事項はなしか、」

伝令兵「ハッ、左様でございます。」

マロニー「本日も西部戦線異常なしか…」



      ―了―

55: 2010/10/23(土) 02:15:58.87 ID:KmNbqUvV0
どうもでした。
初SSでお見苦しいところが多々あったと思いますが、お付き合いいただきありがとうございました。

他の面子出し損ねたのは残念だったかな。

サーニャクンカクンカ

71: 2010/10/23(土) 10:10:40.45 ID:KmNbqUvV0
一応残ってたんだ

72: 2010/10/23(土) 12:01:06.88 ID:KmNbqUvV0
オラーシャ帝国との秘密協定に基づきカールスラントのオストマルク侵攻に伴い
勃発した世界大戦は周辺小国にも多大なる影響を与えていた。
特に領土的野心の大きいオラーシャ帝国に接するスオムスもその例外ではなかった。

オラーシャ帝国はスオムスの背後にあるバルトランドの不凍港を目指してなのか、スオムスに外交的圧力をかけていった…



エイラ「ム…」

タロットカードをめくるエイラ

サーニャ「どうしたの?」

めくった先にあるのは「塔」と「皇帝」と「悪魔」
意味は「暴力」「統治」「災難」だ…

74: 2010/10/23(土) 12:02:02.62 ID:KmNbqUvV0
エイラ「イヤ、チョットナ…」

サーニャ「…そう……」

サーニャ「エイラ、実はね…」

エイラ「ン・・・?」

サーニャ「実はしばらく、エイラのところへ遊びにこれそうにないの・・・」

エイラ「エッ・・・」

サーニャ「ここのところの状況は知っているでしょ、それで、多分もうビザが下りなくなりそうなの・・・」

エイラ「ソンナ・・・」

サーニャ「私だっていやよ・・・でも・・・」

エイラ「ウン・・・」

サーニャ「終わらない冬は来ないわ・・・だからそれまで・・・」

エイラ「ワカッタ・・・次の春が来たら絶対またクルンダゾ・・・」

サーニャ「絶対に来るわ・・・」

新聞は告げる「オラーシャ帝国によるカレリア地方の割譲迫る!!」
もう開戦は避けられない状況であった…

78: 2010/10/23(土) 14:46:14.37 ID:KmNbqUvV0
オラーシャ帝国は11月30日スオムスより砲撃を受けたと言う名目を立て侵攻を開始した。
スオムス兵力250000オラーシャ兵力1000000と言う圧倒的兵力で戦線は下がらざるを得なかった。
同日夕刻には占領地域にオラーシャによる傀儡政権が樹立、スオムスとの外交交渉をこの政権のみに限ると言う
まさに、スオムスを蹂躙しつくすつもりであった・・・



エイラ「12時方向に敵影が現レソウダナ・・・」

狙撃兵「ハッ・・・」

狙撃兵「撃ち方用意。12時方向に集中!!」

観測兵「12時方向、敵影発見。オラーシャの補給部隊です。」

狙撃兵「バカなイワンめ・・・雪の中の黒い格好は格好の標的だ・・・」

エイラ「撃ち方ハジメ」

ダーン、ダーン、



79: 2010/10/23(土) 14:47:22.06 ID:KmNbqUvV0
オラーシャ兵A「いったいどこから撃ってくるんだ!?」

オラーシャ兵B「わからん!やつら白い格好で擬態をしているせいでどっから来るのかまったく分からん。ウワーッ」

オラーシャ兵A「おいしっかりしろ!!うっ・・・」



観測兵「敵兵、沈黙・・・」

狙撃兵「やった・・・」

エイラ「・・・・・・敵機の来襲の恐レアリ・・・直ちに撤退準備スルンダナ・・・」

狙撃兵「鹵獲物資はどうするんです?」

エイラ「ただでさえ人員が少ナインダ、ここは一人でも多くの敵を倒し生き残ることを優先スルンダナ・・・」

狙撃兵「はっ」

エイラ「全員スキーを履き撤退準備、基地に戻ルゾ・・・」



???「・・・補給部隊はすでに全滅したもようです・・・索敵レーダーにも反応ありません・・・一時帰投します・・・」

80: 2010/10/23(土) 16:36:43.00 ID:KmNbqUvV0
圧倒的兵力差の前にスオムス軍は直接攻撃よりも防衛線に向け遅滞戦術を取り後ろへ下がっていった。
また、オラーシャ軍はネウロイ解放後の政治的混乱の中でおきた大粛清のため将官も錬度も不足
森林帯や-40℃になる極寒の地での冬季戦の準備不足もあり防衛線より中々前に進めずにいた。
とはいえ、圧倒的な物量はいかんともしがたいものであった。


狙撃兵「エイラ隊長はウィッチですよね。」

エイラ「ソウダガ、ドウシタンダナ?」

狙撃兵「なら、何でストライカーユニットで空中戦を行わないんですか?」

エイラ「ソレハダナ、この制空権が奪われた状態で私一人が戦っても意味がナインダナ。魔法力が切れて下手すれば墜とされるカモシレナインダナ」

狙撃兵「はぁ、」

エイラ「大事な航空兵力を失ウヨリモ、今は未来予知を使って襲撃を繰り返し確実に敵の力を削ぐほうが先決ナンダナ。」

狙撃兵「なるほど・・・」

エイラ「いざと言うときはチャント空を飛ぶつもりだから安心シロ」

狙撃兵「はい。」

81: 2010/10/23(土) 16:38:08.03 ID:KmNbqUvV0
エイラ「それにしてもお前夜はチャント寝テイルカ?」

狙撃兵「隊長ご存じないんですか。狙撃兵は眠らないんですよw」

エイラ「ソウカ・・・、それでもちゃんと休ンドケヨ」

狙撃兵「はい、ありがとうございます。」

エイラ(それに今空を飛ぶと確実にサーニャとやり合わないといけナインダナ…ソレダケハナントシテデモ・・・)

エイラ「・・・・・・ムッ・・・」

狙撃兵「どうしました?」

エイラ「今夜、襲撃来ルゾ・・・」

狙撃兵「総員、戦闘準備!!」

エイラ「敵は林道を進軍シテクルゾ」

狙撃兵「この陣地はなんとしてでも氏守するぞ、ここを抜けられると戦線が分断されてしまう」

85: 2010/10/23(土) 17:35:46.11 ID:KmNbqUvV0
オラーシャ兵A「果敢なる人民諸君、銃は二人で一つだ。ありえないことだが撤退したら撃つぞ!!」

オラーシャ兵B「ウラー」

オラーシャ兵C「ウラー」

オラーシャ兵A「敵は脆弱なる白色富農の手先だ。何も恐れることはない。諸君らの革命的精神の前に敗れ去るだけだ!!」

オラーシャ兵B「ウラー!!」

オラーシャ兵C「ウラー!!」

86: 2010/10/23(土) 17:37:15.11 ID:KmNbqUvV0
エイラ「・・・ここが正念場タ・・・゙」

狙撃兵「撃ち方用意!!十分引きつけろ!!」


オラーシャ兵A「ウラー!ウラー!!」

オラーシャ兵B「ウラー!ウラー!!」

オラーシャ兵C「ウラー!ウラー!!」


エイラ「狙撃兵撃ち方ハジメ!!」

ダーン、ダーン

観測兵「まだ、敵は進軍してきます。狂気の沙汰だ…」

エイラ「機関銃用意!!」


オラーシャ兵B「ウラー!ウラー!!」

オラーシャ兵C「ウラー!ウラー!!」


エイラ「機関銃撃ち方ハジメ」

ZIP!!ZIP!!ZIP!!ZIP!!

88: 2010/10/23(土) 18:10:26.75 ID:KmNbqUvV0
観測兵「敵兵沈黙!あっ、戦車が出てきます。」

エイラ「戦車戦用意!各種カクテルはソロッテルカ?」

スオムス兵「はい、鉄の棺桶に乗って凍えてるオラーシャ兵をこのカクテルで暖めてやりましょう!」

エイラ「対戦車戦ハジメ!」

ドーン!
ダーン、ダーン

「ウワー」
「ヤメテクレー」
「オカァチャーン」

89: 2010/10/23(土) 18:11:54.03 ID:KmNbqUvV0
観測兵「地獄の釜のふたが開いたようだ・・・」

エイラ「攻撃の手を休メルナ。悲しいことだがこれが戦争ダ」

観測兵「はっ」

エイラ「・・・ムッ・・・・・・」

観測兵「敵機来ます。夜戦タイプです!」


ヒュルーーーー
ドーンドーン


スオムス兵A「うわー!」

スオムス兵B「隣の奴の首がないぞー!!」


エイラ「観測兵、機種と兵装ワカルカ!!」

観測兵「ハッ、機種はMiG I-225。兵装はフリーガーハマーと思われます。」

92: 2010/10/23(土) 18:34:25.38 ID:KmNbqUvV0
エイラ(…間違イナイ…)

エイラ「私がデルゾ!!」

観測兵「わかりました。」

エイラ「私がいない間あまり出すぎずに確実に敵を損耗サセルンダ。数の上では劣勢だと言うことをワスレルナ」

観測兵「ハッ」

エイラ「ソレト・・・」

観測兵「はい」

エイラ「この戦争が終わったら祖国を復興させるのは自分だと言うこともワスレルナヨ。」

観測兵「ハイッ!ご武運を隊長!!」

エイラ「アタリマエダ・・・ニッ・・・」

93: 2010/10/23(土) 19:01:52.77 ID:KmNbqUvV0
???「・・・フリーガーハマー弾着確認・・・攻撃成功・・・第二波準備・・・」

エイラ「ヤメルンダ・・・サーニャ・・・」

サーニャ「・・・エイラ・・・いたの・・・?」

エイラ「お願いだ・・・こんな事はヤメテクレ・・・白百合を血の朱にソメルヨウナコトハ・・・」

サーニャ「何を言ってるの・・・?エイラ・・・無辜なる人民を救うためには・・・仕方のないことなのよ・・・」

エイラ「サーニャこそ何をイッテルンダ!?」

サーニャ「偉大なる・・・指導者に異を唱えることは・・・いけないことよ、エイラ。」

エイラ「・・・ナッ・・・」

サーニャ「お父様もお母様も・・・革命的精神を持たなかったから・・・投獄されたわ・・・」

エイラ「・・・ウソダロ・・・」

94: 2010/10/23(土) 19:03:04.01 ID:KmNbqUvV0
サーニャ「だから、私はお父様お母様の分まで・・・がんばらないといけないのよ・・・」

エイラ「ウソだ!!ソンナ氏んだ目をしてイッタッテ、ワタシハシンジナイゾ!!」

サーニャ「・・・・・・」

エイラ「音楽やピアノを愛したサーニャはどこへイッタンダ・・・ウルッ」

サーニャ「・・・・・・」

『ザーッ、勇敢なるリトヴャク同志。攻撃は失敗した。直ちに帰還せよ。』

『・・・了解しました・・・』

サーニャ「・・・じゃあね・・・エイラ・・・」

エイラ「サーニャ、待ってくれー!いつでもつらかったらうちにニゲテキテイインダゾーーーーー!!」

サーニャ「・・・・・・」

エイラ「サーニャーーーーー!!」


友を呼ぶ声は冷え切った空気にこだまし消えていくだけだった・・・

96: 2010/10/23(土) 19:50:09.47 ID:KmNbqUvV0
この攻勢を乗り切ったスオムス軍は世界各国から賞賛と援助を受けることに成功した。
ところが、隣国であるバルトランドがこの時はオラーシャと友好関係にあったカールスラントの妨害工作に合い援助物資の通過を拒否。
まったく物資がない状況には変わりなくジリ貧状態には変わりなかった。

一方でオラーシャもスオムスの予想外の反撃に驚き氏傷者の増大、戦闘の泥沼化を恐れていた。
そして、春の泥濘による軍の行動不能も恐れ始めていた・・・

スオムスはこのままの継戦は困難と判断
独立のためオラーシャの出した領土割譲を含む屈辱的な講和条約に調印し一時戦争は終わりを告げた。
短い春が訪れようとしていた・・・

99: 2010/10/23(土) 20:22:07.55 ID:KmNbqUvV0
カメラマン「エイラさーん。こっちむいてくださーい」

パシャパシャ

記者「祖国の勇士としてお願いします。どうしてそんなに敵を撃破できたんですか?」

エイラ「練習だ・・・ニッ・・・」

記者「では、女性なのに前線に立つことについて一言お願いします。」

エイラ「やれと言われたことを、可能なかぎり実行したマデナンダナ・・・エヘン・・・」

記者「ありがとうございました。」

100: 2010/10/23(土) 20:45:48.17 ID:KmNbqUvV0
・・・・・・

エイラ「ツカレタンダナ・・・」

タロットカードをめくるエイラ
「恋人達」「隠者」「運命の輪」

エイラ(恋人達はともかくとして崩壊を意味する「隠者」と転機を表す「運命の輪」・・・?マサカナ・・・)

バタンッ

エイラ「タレカ!?」

サーニャ「・・・エイラ・・・たす・・・け・・・て・・・」

エイラ「サーニャ、いったいドウシタンダ?」

サーニャ「・・・お父様も・・・お母様も処刑された・・・わ・・・」

エイラ「ナッ・・・」

101: 2010/10/23(土) 20:46:30.73 ID:KmNbqUvV0
サーニャ「もう、人を頃すのもお薬もイヤ・・・・・・」

エイラ「エッ・・・」

エイラ「ちょっと、サーニャゴメン。」

サーニャを抱きかかえるとエイラは長袖の腕を捲り上げた
そこには・・・白い細腕には幾筋ものミミズ腫れが走っていた・・・

エイラ「ナンダコレハ・・・」

サーニャ「出撃の前にお薬を打つの・・・そうすると、人を頃しても何も感じなくなるの・・・」

サーニャ「命令だけを聞いてれば何も怖くなくなるの・・・でも自分じゃなくなる気がしてもういや・・・」

エイラ「・・・・・・」

友はエイラの言ったとおりに頼ってきてくれた。
しかし、それはあまりにも変わり果てた姿であった・・・
悪夢のような日々が始まる・・・

103: 2010/10/23(土) 21:31:20.31 ID:KmNbqUvV0
深夜・・・

サーニャ「イヤーッ、お父様、お母様コッチニコナイデー!!」

サーニャ「イヤーッ、怖い怖い!!体がヤケルー!!」

エイラ「シッカリシロ!!サーニャ、それは夢だ!!目を覚ませ!!」

サーニャ「ゆ・・・め・・・?ウ、ウ、ウワーンッ」

エイラ「サーニャ、大丈夫、大丈夫ダカンナ」ダキッ

105: 2010/10/23(土) 21:34:04.96 ID:KmNbqUvV0
サーニャ「ねぇ、エイラ、このまま手首を切れば全て終わるのかな・・・?」

エイラ「ナニヤッテンダサーニャ!!」

バシッ、カランカラン・・・
ツーッ

サーニャ「ウエーン・・・」

エイラ「そんなことしなくたってイインダ・・・」

106: 2010/10/23(土) 21:34:50.69 ID:KmNbqUvV0
サーニャ「痛ッ」

ポタッ

エイラ「あーあ、バラのとげがササッタンダナ」

サーニャ「ア・・・アッ・・・イヤッ・・・」

エイラ「?」

サーニャ「イヤッ・・・体中にミミズが這い回ってるの・・・」

エイラ「!?」

サーニャ「指先からあふれてきて、体を覆いつくそうと・・・イヤー!!」

エイラ「落ち着け、サーニャオチツクンダ!!そんなのゲンソウダ!!」

幼い友の体と心は確実に蝕まれていた・・・
春にはまだまだ程遠かった・・・

110: 2010/10/23(土) 22:25:11.44 ID:KmNbqUvV0
大国同士が隣り合うと火種がくすぶるのは世の常である
このことに漏れず、オストマルクと言う緩衝地帯を割譲しあい、
接するようになったカールスラントとオラーシャの仲も次第に悪くなっていった・・・

また、隣国であるバルトランドにカールスラントが侵攻
友好的であったブリタニアからの援助を受けることは絶望的となった。
結果、カールスラントとオラーシャの2勢力圏にはさまれる形となったスオムスは
カールスラントとの交流を深め援助を受けるようになる。
このことがより一層オラーシャとの関係を悪くし孤立していくことになるのだが
それはまさに嵐の中に一人立つスオムスには唯一の道であった・・・

111: 2010/10/23(土) 22:26:19.98 ID:KmNbqUvV0
オラーシャとの冬の戦争が終結した翌年の6月
ついにカールスラントはオラーシャに侵攻を始める。
友好国であったスオムスからも駐留していたカールスラント軍が侵攻を開始
それに伴いオラーシャから攻撃を受けたスオムスはオラーシャに対して宣戦を布告
前の冬の戦争の継続した戦争となった。
短い春は終わりを告げる・・・

領土的野心がほとんどないスオムス軍は基本的に割譲した土地に侵攻し防御線を張ってそれ以上動かなかった・・・
とは言え、圧倒的な物量差のあるオラーシャ軍によって戦線が押し戻されつつあるのも事実であった・・・
友好国であるカールスラントに援軍を求めることとなる・・・

113: 2010/10/23(土) 23:00:50.04 ID:KmNbqUvV0
エイラ「この領域だけは絶対敵をトオスンジャナイゾ!!」

スオムス兵「オーッ!」

エイラ「敵戦車隊が通行可能なのはここだけだ。ここを氏守スル!!」

エイラ「ここを突破されたら灰色熊に食い殺されるだけだ!!」

スオムス兵「オーッ!!」

エイラ「私は諸君らの働きを熱望する!!」

スオムス兵「オーーッ!!」

114: 2010/10/23(土) 23:01:33.96 ID:KmNbqUvV0
エイラ「ウムム・・・」

狙撃兵「どうしました?」

エイラ「やはり、戦況はキビシインダナ・・・」

狙撃兵「まぁ、仕方ないと言えば仕方ないですね・・・」

エイラ「とにかくこの防御線だけは破られるわけにはイカナインダナ」

狙撃兵「ですねぇ・・・この地峡帯を越えられると止めようがないですからね・・・」

伝令兵「エイラ中尉殿、師団本部にお越しください」

エイラ「ん…?ドウシタンダナ?」

伝令兵「いえ、私はただお呼びしろと伺っただけですので・・・」

エイラ「そうか、ワカッタ。後はタノンダゾ」

狙撃兵「了解しました。」

115: 2010/10/23(土) 23:29:32.29 ID:KmNbqUvV0
師団本部

エイラ「エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉只今トウチャクシマシタ」

???「あら、遅かったじゃない」

エイラ「エ・・・ミーナ中佐、ドウシタンダナ?」

ミーナ「あらあら、同盟国の危機に瀕して駆けつけたのにそれはないんじゃないの?」

エイラ「ソウイエバ、中佐はカールスラント人ダッタナ」

ミーナ「うふふ、そうよ。と言うことでパンツァーファウストに突撃砲受け取りなさい。」

エイラ「アリガタインダナ(なんか目がコワインダナ)」

ミーナ「それに、私も出撃するわ」

エイラ「ソレハトテモココロヅヨインダナ」

エイラ「じゃあ、一旦戦線にモドルンダナ」

ミーナ「せっかく再開したんだから少しゆっくりしていったらどう?」

エイラ「それも山々ナンダガ、戦線が気にナルンダナ。無線を傍受シタンダガ、敵の総攻撃がチカソウナンダナ。ジャア」

116: 2010/10/24(日) 00:01:37.64 ID:sUj/0h3w0
ミーナ「そんな、つれないこと言わないで、」

チャッ

エイラ「ナンノツモリナンダナ」

ミーナ「あら、私に銃口向けられる身に覚えがないとでも?」

エイラ「マッタクナインダナ」

ミーナ「私が何も知らないとでも?」

エイラ「ナンノコトナンダナ?」

ミーナ「あなた、敵のオラーシャ兵を匿っているんですって?」

エイラ「敵じゃない。サーニャだ!!」

117: 2010/10/24(日) 00:02:18.90 ID:sUj/0h3w0
ミーナ「あら敵兵よ。私はカールスラント兵であなたはスオムス兵、彼女はオラーシャ兵。なにかちがう?」

ミーナ「で、その敵兵を匿ってるあなたは裏切り者ってわけ」

エイラ「・・・ドウシテホシインダナ・・・?」

ミーナ「あら、簡単なことよ。彼女を私に引き渡せばいいのよ」

エイラ「サーニャをドウスルキダ!?」

ミーナ「そうねぇ、彼女は優秀な尉官だから、捕虜交換の人材としてはうってつけだわ」

エイラ「キサマ・・・、オラーシャ兵捕虜が本国へ帰ったらどうなるか知らないワケジャナイダロ!!」

ミーナ「そうねぇ、いいとこ強制労働所送り、まぁ尉官なら士気高揚のため銃殺刑が妥当かしら?クスッ」

118: 2010/10/24(日) 00:16:47.69 ID:sUj/0h3w0
エイラ「サーニャをそんな目にアワセルキカ!!」

ミーナ「うふふ、私は優秀なカールスラント軍人が戻ってこればそれでいいのよ。」

エイラ「ナンダト・・・、ミーナ中佐と言えどもユルサナインダゾ・・・」

ミーナ「あら、怖い怖い。でも、この銃口から逃れられるかしら?」

エイラ「弾丸なんて予知してしまえばヨケレルンダナ」

ミーナ「そうだったわね。でも、私がいないと武器の供与が受けられなくなるけどいいの?」

エイラ「グ・・・」

ミーナ「武器なしでオラーシャと渡り合えるかしら?中尉さん?」

エイラ「ググ・・・」

119: 2010/10/24(日) 00:17:47.38 ID:sUj/0h3w0
チャキ

狙撃兵「銃を置いてください。ミーナ中佐」

ミーナ「あら?」

狙撃兵「私は誇り高きスオムス兵です。傷ついた小さな子供一人守れない軍人になったつもりはありません。」

エイラ「…スマナイ……大事なことをワスレテイタヨ・・・・・・」

エイラ「私は大事な人を守るために軍人ニナッタ、それを守れないなんてアッテハナラナインダナ」

エイラ「たとえどんな不利な状況になろうとも全て絶対マモッテミセル!!」

ミーナ「あらあら二人とも怖いわね。うふふ、私の負けよ。大きくなったわねエイラ」

エイラ「中佐…」

ミーナ「今はお行きなさい。大切なものを守るんでしょ?クスッ」

エイラ「中佐アリガトウナンダナ…」

120: 2010/10/24(日) 00:18:51.14 ID:sUj/0h3w0
エイラ「行くぞ。敵の総攻撃予定は8:00ナンダナ・・・」

狙撃兵「ハッ了解しました。」


この防御戦に勝利したスオムスはオラーシャと講和条約を結ぶ、
取り戻した領土を再割譲することを迫られたが、
ほぼ全力を出し切って戦ったスオムスにしては継戦能力を失い、
オラーシャにしても資源も少ないスオムスに固執する理由はなかった。
丁度いい落としどころであったといえよう…

一方で親オラーシャになることを迫られたスオムスにおいて脱走兵であるサーニャをおいておくことは事実上不可能に近いことであった。
二人は国を捨てミーナを頼りヘルウェティアへ逃れることとなる・・・

121: 2010/10/24(日) 00:19:55.82 ID:sUj/0h3w0
サーニャ「いいの?、私なんかのために国を出て行くなんて・・・」

エイラ「約束したろ、絶対マモッテミセルッテ」

ミーナ「あらあら、おあついこと」

エイラ「中佐はこのことをミコシテタンダナ」

ミーナ「あらあら、うふふ。なんのことかしら?」


サーニャ「あっ、初雪・・・」

エイラ「もう冬なんだな・・・」

サーニャ「でも、冬が終われば春が来るのよ。エイラ」

エイラ「ソウナンダナ・・・」

冬は始まったばかりであった。だが終わらない冬はない。
そして、その冬があるからこそ春が来ることも忘れてはならない。

二人の少女が力をあわせ生きていった道を歴史は語らない。
ただ、小さな湖のほとりに立つ小さな家は帰る主がいないことを物語っていた。
欧州のもう春はすぐそこまで来ていた。


         ー了ー

122: 2010/10/24(日) 00:22:33.47 ID:sUj/0h3w0
エイラを格好よく書いてたらコウナッタンダナ

最初は第6軍に合流させて行方知れずでもいいかななんて思ってたりもしました。

134: 2010/10/24(日) 02:53:45.33 ID:/ZOjeQHo0
おつ!

引用元: サーニャ「世界大戦?」