11: 2012/03/24(土) 20:23:24.58 ID:nlYG4yBMO
P「……ヒマだ」

 765プロのプロデューサーを始めたのはもういつの頃のことだっただろうか。

 俺がプロデュースしたアイドル達は売れに売れ、今や1人余さず国民的人気を誇っている。

 そんななか。
 俺は、昔と比べ大きく小綺麗なった事務所の俺に与えられたデスクの前で、深々と溜め息を吐いていた。

 理由?
 それは、仕事が全部デスクで済むものばかりになっていたからだ。

 もう仕事は向こうのほうからやってくる。
 業界の内外にも多くのコネクションも出来たし、わざわざ走り回って仕事を取りにいく必要がなくなった。

 アイドル達も、もう数々の仕事を自分でこなせている。
 スケジュールも自分で組めているし、何か問題や頼み事があったら、俺に相談しにくるので問題無い。

 たまにアイドル達の現場に足を運んだりもするが、そうすると仕事に慣れているはずの彼女たちはむしろ緊張するようなので、最近はめっきりそれもなくなった。

 ……ああ、これって勝ち組なんだろうなぁ……でもなぁ……。
THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 10 高槻やよい

16: 2012/03/24(土) 20:35:35.33 ID:nlYG4yBMO
 今日も独り、事務所で留守番兼電話番という体で、お茶を啜って過ごす。

 社長や小鳥さんは
「貴方がここに居てくれるだけで、私たちやアイドルの子たちの力になる」
 と言ってくれたけれど。

 正直、穀潰し感が否めない。
 過去の業績からだいぶいい給金を貰っているのだけど、働き盛りに働き詰めだった反動か、趣味というものを探す気にはなれなかった。

 趣味(そんなもの)に時間を費やすくらいなら、他会社のアイドル達をリサーチしていた方が有意義だし楽しい。

 ……その行為も端から観れば「事務所でTV見て雑誌読んでネットサーフィンしてくつろいでるだけ」なので、やはり気分はよくない。

 誰も何も言わないけれど、むしろ「またお仕事のこと考えてるんですか?」と心配されるけど。

 もうこれが人生の一部なんだ。こうしていないと呼吸が止まる。


 そう言えば、小鳥さんは30歳を迎えてすぐに、「……実家に呼び出されました……」と幽鬼のような表情で呟いて去っていったきり、帰ってきていない。

26: 2012/03/24(土) 20:49:44.51 ID:nlYG4yBMO
 たまに電話や便りがあるので無事なようだ。
 なんでも実家の手伝いで座敷牢がなんたらかんたらと、非現実的なことを話していたが……。

 ──なので、いま事務所には俺1人しかいない。

 小鳥さんのデスクは、いつ帰ってきても良いように、そのまま綺麗に残してある。
 まえに亜美真美がデスク上に花を活けていたが、律子が滅茶苦茶怒ったのでその手の悪戯はしなくなった。確かに縁起でもない。

やよい「…プロデューサー?」

P「ん…おぉー、今日はやよいかぁー」

 不意に、事務所の扉を開いて声をかけてきた少女…というには、聊か大人びている女性が、明るく笑った。

やよい「はいっ、お久しぶりです!」

 高槻やよい。
 かつて“多くの弟妹を支える、頑張り屋の小さなお姉さん”だった彼女は、いまやその『お姉さん』の部分を大きくのばし、
 明るくも大人の女性を感じさせる、笑顔のかわいい女の子になった。

P「本当にしばらくぶりだな、こうやって話すの。俺は、テレビでよくやよいのこと見かけてるんだけど」

やよい「えへへ、ありがとうございます……はいっ!」

 近付いてきたやよいが、手のひらを掲げてくる。
 コレもほんと久しぶりだ。

P「たーっち!」

32: 2012/03/24(土) 21:03:25.85 ID:nlYG4yBMO

「プロデューサーがヒマしてる」

 そんな身も蓋もない噂──真実が765プロのアイドル達のあいだに流れ、彼女たちは即座に連絡を取り合って決まり事を定めたらしい。
 内容はよくは知らないのだけど、要するに、

『当番制で、1人が事務所に赴いてP(俺)の話し相手になる』

 …と言うことらしい。

 いくら765プロが売れていると言っても、休みの日は必ずある。なので、話し合ったりなどして順番を決めて、こうしてわざわざ俺のところに来てくれているのだ。

 ……実のところ、これが現状に申し訳なさを感じる理由の一つでもある。

 だっていまや誰もが振り向くアイドル達が、こんなしがない中年の話し相手になる為に貴重な休日を潰して来てくれているんだぞ?

 ……胃が痛い……。

39: 2012/03/24(土) 21:19:34.60 ID:nlYG4yBMO
P「さて、と」

やよい「はい!」

 ちょこんと、俺の隣の空きデスクに構えるやよい。
 久しぶりに間近で見た顔は、なんだかとても輝いてみえる。

P「なにをしようか。いや、なにを話そうかな…?」

やよい「久しぶりですもんね、わたし、プロデューサーに話したいこといっぱい有るんです!」

P「え? そうなのか?」

 やよいは元々面倒見のいい性格だ。それが由来してか、自己管理能力もズバ抜けている。
 だから、なにか相談事があったら迷わず俺のところに来てくれるものかと思ってたんだが……はて?

やよい「わたし、プロデューサーにお仕事の感想が訊きたかったんです! この間のドラマとか、バラエティー番組のこととか!」

P「感想…」

 そう言えば、やよいに限らず、昔現場までついて行っていた頃の俺は、よく仕事に関する感想なんか漏らしていたな。

 やよいはそれを、楽しみに感じていてくれたんだろうか。

P「……よぉし、じゃあ今日は事務所に録画してあるやよいが出た番組を見ながら過ごすとしようか」

やよい「あ…はい! わかりました!」

42: 2012/03/24(土) 21:29:31.16 ID:nlYG4yBMO

 彼女たちはもう、「完成」している。

 そんな彼女たちに俺が意見を話したところで、彼女たちの“軸”、“アイドル的指針”は揺らぐことなんかないだろう。

 でも、彼女たち…やよいが、自分から俺の話しなんかを望んでくれているのなら、どうしようもなく嬉しい。

 プロデューサーってのは、やっぱり俺から切っても切り離せないものみたいだ。

 ──俺にとってアイドルは?

 娘か、妹か。
 姉ってことはないだろうけど、恋人って言うと……

P「………」

やよい「……プロデューサー?」

P「──ん、ごめん。ちょっと立ち眩みが」

やよい「大丈夫ですか?」

58: 2012/03/24(土) 22:02:20.93 ID:nlYG4yBMO

 ──うん、ダメだ。

 彼女たちを、“そういう目”でみれない。

 仕事を通して接しすぎたせいだろうか。
 アイドルとプロデューサーという世間体のせいだろうか。

 彼女たちは、こんなにも俺に『わかりやすい好意』を向けてくれているのに。


 やよいも、春香も、千早も、真も、雪歩も、あずささんも、亜美も、真美も、伊織も、美希も、響も、貴音も、それに律子や小鳥さんだって。

 とても、なによりも、大事なもののはずなのに。

 ……いや、だからこそか。


 『俺じゃない』
 『もっと相応しいやつがいる』
 『きっと彼女たちを幸せを望み、実行できるひとがいる』

 だから、俺は。

 俺は。

 いまもプロデューサーを逃げ道にしている。

60: 2012/03/24(土) 22:11:10.06 ID:nlYG4yBMO
P「お、これは『アイドルのエプロン』だな」

やよい「もうおなじみになっちゃいましたぁ」

P「やよいは料理上手だからなぁ。こう云う番組ではお手本役になってて、観てて嬉しくなるよ」

やよい「ほんとですか? やったぁ…!」

P「あー、これは『ハチャメチャいけてる』のコーナーか」

やよい「伊織ちゃんと一緒に出たときですね」

P「やよいジャイアントスイングされてるじゃないか」

やよい「怖かったですよぉー」

P「あ、伊織に当たった」

やよい「伊織ちゃん、すごく怒っちゃって…」

P「演技じゃないなこれ」

やよい「宥めるの大変でした…」

P「やっぱりやよいおりは観ててほのぼのするな。昔からの仲だし、お前たちが仲良いと嬉しいよ」

やよい「えへへ…」

63: 2012/03/24(土) 22:25:11.98 ID:nlYG4yBMO
やよい「あ」

P「ん?」

やよい「もうお昼過ぎてますね」

P「本当だ。メシどうしよう、出前でいいか?」

やよい「だったら、わたし作ります!」

P「いや、流石に悪い」

やよい「でも、他のみんなも作ってるんですよね?」

P「う……まぁ、嬉しいは嬉しいからな…」

やよい「うっうー! じゃあわたし作りますー!」

P「あ」

やよい「…?」

P「久しぶりに聞いた。やよいの『うっうー』」

やよい「……あっ…!」

 途端に、やよいは赤面してしまった。
 ……恥ずかしかったのか?

96: 2012/03/24(土) 23:37:12.05 ID:nlYG4yBMO
ぉうえ…!?

AM09:00に仕事が明けて下番報告して着替えながらポチポチ書き始めて…ですと、
スレが立っていれば最初の投下は09:30くらいには可能です。

が、
そうなるとため無しの長期ながらになってしまいます……それでもよろしければ……
お願い致します…!!

179: 2012/03/25(日) 09:14:26.58 ID:81Vrq/NeO
やよい「お、大人になって、この口癖はなおそうと思ってたのに…」

P「いいじゃないか。俺やよいの『うっうー』は、元気の源って感じがして好きなんだけどな」

やよい「…この歳でも癖が抜けてないなんて恥ずかしいですよぉ…」

 まだ21なのに何をいうかこの子は…。

P「そんな無理に大人ぶらなくてもいいんだ。やよいにはやよいの良さがあって、それは自分では気付けないことかも知れないんだから」

 大人だとか子供だとか、そんなのは所詮人間の社会で作り出された区別に過ぎない。
 やよいは子供のままでもやよいで、
 大人になってもやよいなんだ。

P「大人になっても子供のままでも、俺はやよいのことずっと好きだよ」

やよい「えぇ!?」

183: 2012/03/25(日) 09:25:17.81 ID:81Vrq/NeO
P「どうした?」

 一瞬で、茹で上がったタコみたいに顔を赤く染めたやよいに近付く。
 反射的にか、合わせやよいも後退った。

やよい「あ、あのぉ…好きっていうのは……」

P「一やよいのファンとして…って意味だったんだけど…?」

 まずい。
 意図せず勘違いをさせたっぽい。

やよい「……あー、よくみなさんが言っていた意味がわかった気がしますー」

 ジトっとした視線を向けられる。やよいのこういった表情は珍しい。
 写真撮っておこう。

やよい「なんで急にカメラ取り出したんですか!?」

P「自分への戒めとして」

やよい「うぅー…?」

 こんなやりとりをしてから、俺とやよいは【お昼休みちゅう】と書かれた看板を入口扉に貼って、2人で買い物に向かった。

185: 2012/03/25(日) 09:38:15.33 ID:81Vrq/NeO
P「ごちそうさまでした」

やよい「うっうー! お粗末さまでした」

 昼食終了。
 社長の趣味で給湯室にシステムキッチンが備え付けられた(ほぼ全面改装)ので、やよいに限らず765プロの子たちはよく利用している。

 ……俺に料理をつくってくれる為に、だが。

P「やっぱりやよいの料理はレベルが違うなぁー」

 1人の時は電気ケトルと電子レンジくらいしか使わない俺にとって、女の子のつくってくれる料理と言うのは本当に有り難い。一種の生命線といってもいい。

 たまに小鳥さんから漬け物や干物、米などが送られてくることがある。
 添えてある手紙には「ちゃんとごはん食べてますか? 送ったものは、私だとおもって食べてください」と書かれていたりする。
 かーちゃんか。というか小鳥さんを食べたりしませんから。

 彼女は自身のもつ魅力、破壊力に気付いていなさすぎて対応に困る。

 食えるものなら食いたい。けど多分、食べたら吐く。
 失礼な意味じゃなくて、
 自己嫌悪に殺される。

189: 2012/03/25(日) 09:53:33.75 ID:81Vrq/NeO
やよい「ちょっとひとより馴れてるだけですよぉ~」

P「いや、ただ技術が上手いだけじゃなくて、家庭で食べられるレベルで最上級なものばかりなんだよ」

 765プロ(ウチ)の中では、家庭料理部門No.1の座は揺るがないだろう。

やよい「ほめてもなにも出ないですよー」

 あと片付けを手伝いながらの会話。
 やよいは社交辞令のように流しているが、やはり褒められて嬉しいんだろう、表情が緩んでいる。

 ゴキゲンになってニコニコしているやよいはまるで太陽みたいに周囲を明るくする。
 やよいと一緒に過ごしていれば節電になるかもしれない。そんなバカな。

P「お茶煎れるよ」

 インスタントですが。

やよい「あ、ならわたしついでにやっちゃいますから、プロデューサーはゴロゴロしちゃっててくださいー」

 有無を言わさずキッチンから追い出された。

 「男子厨房に入らず」という諺があるが……申し訳ない。

192: 2012/03/25(日) 10:06:34.41 ID:81Vrq/NeO
やよい「お茶です、プロデューサー」

P「すみません、やよいさん」

 自然と遜ってしまう。

やよい「芋けんぴもどうぞ」

P「なにからなにまで…すみません」

 芋けんぴを口に運ぶ。髪に芋けんぴついてるぞっ。

 痛い。歯ぐきに刺さったちくしょう。

やよい「うっうー。今日は楽しいオフになりましたー」

P「いつもは楽しくないのか?」

 せっかくの休日を潰してしまっている身としては、こんなおっさん相手にして楽しかったと言ってもらえることが逆に恐怖に感じる。

やよい「…最近は、家に帰っても寂しぃんですよ…」

 どういうことかと訪ねたら、
 やよいの話しによると、どうやら下の子たちが思春期真っ只中で昔の様にコミュニケーションがとれないのだそうだ。

 ふむ…成長の過程で仕方がないことだとはいえ、みんなの為に頑張っていたお姉ちゃんを困らせるとは何事か。

 近いうち、久しぶりにやよいの家に顔を出してみるのもいいかも知れない。
 迷惑にさえならなければ。

196: 2012/03/25(日) 10:25:02.37 ID:81Vrq/NeO
P「みんな、元気は元気なのかな?」

やよい「あ…はい! ウチの子はいつでも元気いっぱいですよ!」

P「そうか、ならよかった。……親父さんは?」

やよい「お父さんも頑張ってます!」

P「よかった…」

やよい「“また”再就職先が決まったんですよ、お祝いしてあげなきゃです!」

 Oh...
 やよいさん…それは甘やかしすぎじゃないのか…?

 まぁ…絶賛穀潰し中の俺が偉そうに言えることなんか何もないよな……。

199: 2012/03/25(日) 10:37:09.83 ID:81Vrq/NeO
P「じゃあ俺も、頑張ってるやよいになにかご褒美でもあげようかな」

やよい「う?」

 実は言うと、日頃お世話になっている765プロのみんなには、何か恩返しをしようと思ってたんだ。

 彼女たちが頑張ってくれているから、俺は生意気にも給料なんてものを貰えてるのだし。

 そもそも彼女たちがいなかったら、俺は生き甲斐にもなっている仕事にいまでも就き続けていることは出来なかっただろう。

P「演奏者がいないと、指揮者はただの凡人以下だ」

 舞台に立つ、意味すら失う。

やよい「えぇっと…?」

P「あぁ、だからさ、日頃の頑張りに感謝とお礼の意味を込めて、なんでもプレゼントをしてあげようと思って」

 家賃、光熱費、携帯代、食費、あとリサーチ代。
 俺には多すぎる給金は、上の支払いを済ませても余り続ける。
 リサーチ代を経費で落とさないのは、当然、自分で好きなことをしてでた費用を会社に負担なんかさせたくないからだ。

204: 2012/03/25(日) 10:59:39.10 ID:81Vrq/NeO
P「さぁ、なんでもいいぞ? なにがいい?」

 やよいというと…真っ先に思い浮かぶのはべろちょろか。

 あいつは長年の使用にとうとう限界がきてしまい、いまはやよいの部屋で飾ってあるのだという。

 あんなに物を大事に扱ってくれるやよいになら、何を与えても惜しくはない。

やよい「えっと…その……」

 そわそわと視線を巡らせている。

 俺知ってるぞ、あれは言いたいことが言い出せずにいるやつの挙動だ!

P「いいぞ、遠慮なくこい」

 そう諭してやると、意を決したように、ソファーに座る俺の隣まで移動してきて、ジッと視線を交えた。

 ……な、なんだこの迫力は…!

205: 2012/03/25(日) 11:01:10.66 ID:81Vrq/NeO
やよい「あ、あの、プロデューサー…」

P「うん?」

やよい「き、嫌いにならないでくださいね?」

P「…? なんのこt──」

 言いかけた言葉は、急な衝撃で遮られる。


やよい「え───いっ!!」


 “それ”が抱きついてきたやよいなのだと理解するのは、一拍の間を要した。


213: 2012/03/25(日) 11:25:19.53 ID:81Vrq/NeO
P「………」

やよい「………」

 カチ、コチ、カチ、コチ。
 静まり返った事務所の中、社長の私物の、大きな古時計(アンティーク)が時を刻む。

 動け、ない。

 なんだこれ。なんだこれ?

 なんでやよいが抱きついて? なんで俺は押し倒されて?

 密着してる。
 体温やばい。
 俺の胸に顔を預けたやよいが猫が懐くように擦り付けてる。

 なんだこれ、なんぞこれ。
 なんぞなんぞなんなんぞなんぞなんぞ。

 密着してる。
 匂いがやばい。香りがやばい。
 やよいってこんなにいい匂いするのか。
 あれ? 俺はどうだろう?
 汗臭くね? 加齢臭やばくね?

 アイドルに加齢臭つける俺。変態じゃね?

217: 2012/03/25(日) 11:36:51.30 ID:81Vrq/NeO
やよい「…プロデューサー」

 なんですか?
 あ、臭いますか?
 じゃあちょっと薬局いってきます。
 キッチンブリーチで体洗えば体臭って消せるか?

やよい「いきなりこんなことして、ごめんなさい」

P「あ、や、まぁ、びくびっくりしたったけど、平気だにょ」

 隊長!
 脳内管制が仕事をしていません!
 下腹部あたりに感じるやわっこい感触を受信するのに全力になっています!

 うろたえるな!
 我らは、目の前の女の子にそれを悟らせてはいかんのだ!

 劣情を殺せ!
 煩悩を潰せ!
 性欲を滅せ!

 ハリーハリーハリーハリーハリーハリーハリーハリーh

やよい「プロデューサー?」

P「ハリィ!?」

219: 2012/03/25(日) 11:47:39.82 ID:81Vrq/NeO
やよい「…こまります、よね、いきなりこんな……」

 背中に回した手を、更に深く回してくる。

 表情は見えない。
 けど、何かに怯えているのは理解できた。

P「……驚きはしたけど、困ったりなんかしないさ」

 ちょうどいい高さなので、頭を撫でてやる。
 こんなふうにするのも大分久しぶりだな。

 三十路間近の男が、二十歳過ぎたばかりの女の子にしてあげることでは無いかもしれないけど。

やよい「…プロデューサーに頭撫でてもらうの、好きです」

 やよいはくすぐったそうに首を振るものの、振り払おうとはしない。構わず続けることにしよう。

やよい「子供扱いされてるみたいで気になるときも有りますけど、いまは……嬉しいです…」

 やよいの体から力が抜けていく。
 …眠ったのか?
 やっぱり、オフの日にまでこうして俺の面倒をみるのは無理があったんじゃないだろうか。みんなに話しをして、これからは遠慮したほうがいいんじゃないだろうか。
 そんな考えが脳裏を過ぎる。

229: 2012/03/25(日) 12:14:46.08 ID:81Vrq/NeO
やよい「……ぷろでゅーさぁー……」

 背中に回された手が、離さんとしてシャツを握っている。

 昔から、「甘えられる人がほしい」と望んでいたやよい。
 言葉には出さなかったけど、態度というか接し方というか、それに気付くのに時間はかからなかった。

 こんな俺でもこの子の。

 もしかしたら、他の765プロの子も。

 少しでも、俺が傍にいることで、彼女たちが自分の進みたい方へ行けるというのなら。


 どこか遠く、果てしない先へ続くその分岐点までは一緒にいてあげようと、そう思えるんだ。

 彼女たちが進む道をつくるのが、
 俺の人生、俺の道なんだろうから。

 だから、やよい。
 俺は傍にいてあげるから。

 やよいが俺のことが必要なくなって、ひとりで先にいけるようになるまで。

P「おやすみ、やよい」


 彼女たちとのわかれ。
 いつかくるそのときが、できればきてほしくないなぁ、なんて思ってしまう。

231: 2012/03/25(日) 12:29:57.17 ID:81Vrq/NeO
一応「やよい」はここまで…です。
なんかキャラ崩壊ってレベルじゃ無いです。ごめんなさい。

本当はサクサクと日を変えてサクサクとアイドルたちと戯れさせたかったのですが……どうしませう……。


引用元: やよい「お茶です、プロデューサー」P「すみません、やよいさん」