1: 2023/03/20(月) 20:30:15.93 ID:tostAfuo.net
せつ菜「……」

ミア(甘くて濃厚で……さすがはステイツのロングセラー商品)

ミア「もう一個食べちゃお~」

せつ菜(……)

ミア「ん~、So delicious……」

せつ菜「……」ジーッ

ミア「……おい」

せつ菜「ひっ!?」

ミア「なんだよ。食べづらいだろ」

せつ菜「えっ、あ、すみません……」

ミア(……)

ミア「もしかしてせつ菜も食べたいの?だったら一個あげてもいいけど」

せつ菜「いいんですか!!?」

ミア「うん。この前箱で買ったんだ。そこの冷凍庫にたくさん補充してあるよ」

ミア「欲しいなら自由に取ってって」

せつ菜「あ、ありがとうござ……」

せつ菜(……)

せつ菜「ですが……やっぱり無理です!!」

ミア「は?」

2: 2023/03/20(月) 20:33:37.44 ID:ExOVTBlP.net
ミア「なんでさ。ステイツのベストセラー商品だよ?もしかして嫌いなの?」

せつ菜「そうではなくて……」

ミア「?」

せつ菜「その……お、親に間食は控えるように言われてるので~……」

ミア「……」

せつ菜「家に帰ればきっとご飯が待ってますし、だから……ご、ごめんなさい!けどお気持ちはとても嬉しかったです!」

ミア(……)

ミア「………Shit。んだよ、それ」

せつ菜「え?」

ミア「親に言われたからダメだとか、親が言ったから何かを頑張るだとか。そんな人生、ボクはくそくらえだ」

せつ菜「ミアさん……?」

3: 2023/03/20(月) 20:35:00.99 ID:ExOVTBlP.net
ミア「子供は親の道具じゃないし、親のために生きてるわけじゃない。ボクはボクだ、ミア・テイラーさ」

ミア「親の意向のままに生きるとか、親のためにやりたいことを束縛するのも、自由に生きられないってのも、ボクは嫌いだ。はっきり言って反吐が出る」

せつ菜「ミアさん……」

ミア「ん……」パクリ

せつ菜(……)

ミア「……」

せつ菜「あの……ひょっとして、怒らせちゃいましたか?」

ミア「まあね。向こうにいた時のことを少しだけ思い出しちゃっただけ」

せつ菜(……)

5: 2023/03/20(月) 20:36:30.04 ID:ExOVTBlP.net
ミア「ボクはテイラー家の意向に沿うように育てられた。テイラー家の一員ならこうあるべきで、音楽に生き、お嬢様であり、常に他人より強くあれと」

ミア「誰もボクを見てくれなかった。あの時のボクは、もはや氏んでいたも同然さ」

ミア「だからボクはランジュについて行くって決めたんだ。自分を表現するために」

せつ菜「は、はぁ……なんかカッコいいですね、ミアさんって」

せつ菜「ただの一般人の私には、到底理解できない感覚です」ぽりぽり

ミア「……せつ菜は違うの?」

せつ菜「え、私ですか!?」

ミア「ああ。心から叫びたい想い、せつ菜にだってあるんじゃないの?」

せつ菜「心から叫びたい、想い……」

ミア「別にせつ菜の家庭なんてボクは興味ない。人伝てに聞いた話も少しあるけど、所詮は他人さ。少し自分に境遇が似てるからって軽々しく同情なんてしたりしない」

ミア「でも、少しは自分の行きたいように生きてもいいんじゃないかって、ボクはそう思ってる」

せつ菜「ミアさん……」

ミア「で、もう一回聞くけど。ハーゲンダッツ、食べる?」

せつ菜(う、うぅぅぅ………)

………
……

6: 2023/03/20(月) 20:38:50.92 ID:ExOVTBlP.net
せつ菜「ん~!!美味しいです!今まで食べたどのアイスクリームよりも美味しいですよ!!」

ミア「だろ?ステイツ自慢の商品さ」

せつ菜「ミアさん!そっちのストロベリー味も一口下さい!」

ミア「いいよ。じゃあせつ菜の抹茶味と交換ね。はい、あーん」

せつ菜「あーん!」

パクリ!

せつ菜「んん~~!!幸せ~~♡♡」

せつ菜(それと、この少し良くないことをしてるかも、という背徳感が、また……)

ミア「……実はボクも、ほんとは間食は控えるように言われてるんだ」

せつ菜「え?」

8: 2023/03/20(月) 20:39:55.29 ID:ExOVTBlP.net
ミア「家ではおやつばっか食べ過ぎだっていつも怒られてる。今日のこれも、絶対バレたら怒られるだろうな」

せつ菜「そうなんですか?どこの家も似たようなものなんですね」

ミア「ふふん。だからこれでせつ菜とは共犯!accompliceさ!」

せつ菜(え?)

せつ菜「きょ、共犯って……」

ミア「むふん。怒られるときは一緒に怒られるってこと!運命共同体のようなものさ!」

せつ菜「えぇ~、そんなぁ~……」

ミア「いや~、こっちに来てから自称姉が

エマ「ミアちゃん?」

ミア「ひっ」

エマ「……」

ミア「……」

9: 2023/03/20(月) 20:41:25.11 ID:ExOVTBlP.net
ミア「な……なんだよ」

エマ「ご飯の前におやつ食べたらダメって、いつも言ってるよね?」

ミア「……」

エマ「どうして約束守れないの?」

ミア「う……うるさいな。ボクはただ自由に

エマ「それを言えるのはちゃんと言うこと聞ける人だけだよね?」

ミア「ひっ」

エマ「お野菜残さず食べられないミアちゃんには、それを言う資格はないよね?」

ミア「……」

エマ「……」

10: 2023/03/20(月) 20:43:07.46 ID:ExOVTBlP.net
エマ「……ミアちゃん?」

ミア「……」

エマ「私に内緒でおやつ食べちゃうってことは……今日こそお野菜食べてくれるってことでいいのかな?」

ミア「……」

エマ「寮母さんもすっごく悲しがってたよ。ミアちゃんが全然ご飯食べてくれないって」

ミア「……」

エマ「ミアちゃん?」

ミア「む……無理。ピーマン嫌い」

エマ「……ふーん」

ガシッ!

ミア「ひっ!?」

エマ「……」ズルズル

ミア「や、やだ!ピーマン嫌いっ!!」

エマ「好き嫌いしちゃダメっていつも言ってるよね?」

ミア「むりむりむりむりむり!!嫌いなものは嫌いなんだよ~~!!」

エマ「ふ~ん……」ズルズルズル

ミア「や、やだぁ!!助けて!Help me~~!!」

エマ「せつ菜ちゃんも、間食はほどほどにね」

せつ菜「は、はい。すみません……」

せつ菜(……)

13: 2023/03/20(月) 20:46:15.87 ID:ExOVTBlP.net
せつ菜(ミアさんは14歳で一人暮らしをしていたりと、日頃から自由に生活をしていて少し羨ましいなと思っていました)

せつ菜(私も……もう少しだけ自由に生きてみてもいいのでしょうか?)

せつ菜(周囲の人には私と両親の関係性を聞いて『毒親』という方もいますが、少なくとも私は親に感謝をしています。こうして何一つなく不自由に高校に通えているというのは、まず間違いなく親のおかげです)

せつ菜(ですが、中川菜々も今年で17歳。少しづつ『やりたいこと』が芽生えるようになってきました。それを……)

せつ菜(もう少しだけ自我を出して追いかけてみても、いいのでしょうか……?)

せつ菜「……」

パクリ

かすみ「だぁ~!練習つかれたぁ~!」ガラガラ

せつ菜「あっ、かすみさん」

かすみ「せつ菜せんぱ……ってなにやらすっごく良いもの手に持ってる!!?いいないいなぁ~!かすみんにも一口下さい~!」

せつ菜「いいですよ。はい、あーん」

かすみ「あ~……」

パクリ!

かすみ「ん~~!!高級アイスの味がするぅぅ~~♡♡♡」

せつ菜「……ふふん。これでかすみさんも共犯です!」

かすみ「うえ゛!!?」

14: 2023/03/20(月) 20:47:48.79 ID:ExOVTBlP.net
せつ菜「反逆同盟です。一緒に少しづつ、親の束縛に抗っていきましょう!」

かすみ「な、なんですか反逆って!!?かすみんなーんにも悪いコトしてないんですけど!!?」

せつ菜「練習終わりにアイスを食べちゃうって行為が既にちょっとだけ悪いのです!!有無は言わせませんよ!!」

かすみ「えぇぇ~~!?イヤです~~!!かすみんいい子だから悪い人扱いなんてイヤです~~!!」

せつ菜「♪」

せつ菜(中川菜々、17歳。もうすぐ大人です。もちろん今の時点で自立……自分の力だけで生きられるまでは遠いのかもですが、夢は、やりたいことは私の中で強く強く芽生えてきました)

せつ菜(この想いだけは、親に与えられたものじゃない。私の……中川菜々と優木せつ菜だけの感情です)

せつ菜(だから、私もいつかミアさんのように。自分の気持ちに素直に生きられるようになりたい。そして)

せつ菜(いつか私の中に芽生える気持ちを、みんなに真正面から言えたらいいな)

15: 2023/03/20(月) 20:48:54.20 ID:ExOVTBlP.net
おしまい。少しずつ大人になるせつ菜でした

16: 2023/03/20(月) 20:49:38.86 ID:xHl/Usve
めっちゃすき

引用元: ミア「ん、やっぱり部活終わりに食べるハーゲンダッツは美味しいな〜」せつ菜(……)