17: 2013/04/15(月) 21:56:39.45 ID:EmZy/eQ7o
第二夜 目


茄子「……さん、ありがとうございました。さて、お便りのコーナーはこのあたりにして、そろそろメインコーナーに参りましょう」

小梅「う、うん。今日から、インタビューしてきて……る」

ほたる「今日は……どなたのところに?」

小梅「柳清良さん……。も、元看護師さん」

茄子「ナースからアイドルに、という異色の経歴の方ですね」

小梅「う、うん。前の仕事の頃の話を……聞かせてもらえた」

ほたる「それは……楽しみ? で、いいんでしょうか」

茄子「いいんじゃないかしら」

小梅「で、では、どうぞ……」


白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

アイドルマスター シンデレラガールズ 白坂小梅 ハロウィンナイトメアVer. 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア
18: 2013/04/15(月) 21:57:08.91 ID:EmZy/eQ7o
柳清良[やなぎきよら](23)


○一言質問

小梅「ほ、ホラーは好きですか?」

清良「うーん。血は見慣れてるから、怖いとかあんまりないんですよねー。あ、日本のホラーは苦手かな?」

19: 2013/04/15(月) 21:58:15.27 ID:EmZy/eQ7o
 こんにちは、小梅ちゃん。

 あ、違いましたね。
 おはようございますでした。
 ごめんなさい、まだまだ慣れなくて。

 それで、今日は怪談……でしたっけ。

 うーん。

 病院は人の生き氏にに関わるところだから、たしかにおかしな話はありましたね。
 でも、そういうのって、正直、あんまり面白くはないと思うわ。

 だから、今日は病院に併設された女子寮の話をしましょう。

 私が最初に働くことになった病院は、とっても伝統のある……まあ、別の言い方をすると古いところだったんですね。

 だからなのか、病院の敷地の中に、ナースの寮が併設されていて。

 うん、まあ、今時は寮って言っても町中のマンションを借り上げてたりするものなんですけど。
 そこは古いだけに、土地も持ってたんですね。

 それで、私が入ることになった部屋は、三階の端から二番目の部屋でした。
 左隣はよくしてくれる先輩でしたが、右隣――一番端のお部屋には、誰も入っていないって話でした。

 空いているんじゃなく、倉庫として使っていると、私は聞かされていました。
 たしかに時折人の出入りがあるような音がしていましたね。

20: 2013/04/15(月) 21:59:40.99 ID:EmZy/eQ7o
 それで働き始めて一月くらいした頃のことでした。
 その日は準夜勤で……シフト的には零時上がりなんですが、寮に戻れたのは一時頃だったでしょうか。

 部屋に入ろうとしたら、右隣の、例の空き室のほうになにか注意が行ったんですね。

 なぜそちらを見ようと思ったのか、自分でもよくわかりませんでした。
 でも、よく見てみてわかったんです。

 その部屋は角部屋だということもあってか少し広いようで、廊下に面した窓が一つあるんです。
 ただ、いつもカーテンがぴっちり閉まっていて、中は見られませんでした。

 そのカーテンが、ひらひら動いていたんです。

 ああ、風でも吹き込んでいるのかな、と思って、気にせずにその日は部屋に入りました。

 それから、何度か、カーテンがひらひら動くのを見ていました。

 でも、なにしろ、ナースの……それも入りたてのナースなんて、もう疲れてとにかく部屋にすぐに入りたいんですよ。
 だから、あんまり気にせずにいました。
 自分の部屋にすきま風が吹き込んでいるわけでもないですしね。

 でも、ある日……見てしまったんです。

 なにをって?

21: 2013/04/15(月) 22:01:27.92 ID:EmZy/eQ7o


 目を、ですよ



 ええ、目、です。

 カーテンの隙間から、血走った目が一つだけ、見えたんです。

 じっと、その目が、私を見つめていたんです。

22: 2013/04/15(月) 22:02:26.62 ID:EmZy/eQ7o
 それに気づいた途端、ぞっとして、私は慌てて左隣の先輩の部屋の戸を叩いてました。
 自分の部屋に入ろうとは全く思いもせずに。

 先輩はもう寝ていたようでしたが、私がどんどんと扉を叩くのに起きてきて、そして私の顔色を見て、なにか察した様子でした。

『ねえ、聞くけど、患者さんが亡くなったとかじゃないよね?』

 私が違うと言うと、先輩はため息をつきました。

『あの部屋?』

 次にそう尋ねられて、私はこくこくとうなずくしかありませんでした。

『そっか。残念だけど、あんた、もうここにはいられないよ』

 先輩はそれだけ言って、熱いコーヒーを出してくれました。

 どういうことかさっぱりわからなかったですけど、そのまま先輩の部屋に泊まり、次の日には事務長に呼び出されて、辞めてくれと言われました。
 次の病院は責任をもって紹介するし、そちらのほうが条件はずっといいはずだ、と。

 私もすぐに従いました。

 寮の部屋には二度と戻りませんでした。
 荷物は、病院のほうが後で送ってくれましたよ。

 あの目がなんなのか、あの部屋がなんだったのか、私にはわかりません。

 でも、しばらく後に会った時に先輩に聞いたところによると、見る人と見ない人がいて、見ちゃったら、辞めないといけないんだそうです。
 そういうことになっているんだと。

 そうですね、一つだけ不思議なのは。

 倉庫として使われているはずの部屋に入り込んだ誰かが私を見ていた、とは思いもしなかったことでしょうか。
 周りもそう思わなかったってことは……。

 やっぱり、生きている人では、なかったんでしょうねぇ。

23: 2013/04/15(月) 22:03:18.82 ID:EmZy/eQ7o
小梅「清良さん、あ、ありがとうございました」


茄子「目……。怖いですね」

ほたる「しかも、一つ……だけ」

小梅「私、みたいに……片目を隠してる人が、隠れてたり……して」

茄子「あはは。それならいいんですけどねえ」

ほたる「普通の人でも、倉庫に隠れて見つめてるのは怖いです……」

小梅「ただ、目の正体が……なんであったとしても、特定の集団の中で、タブーがあって、それに触れた者が、は、排除されるって話は……よく、ある」

ほたる「そこで、正体を探り始めると……大変なことに……」

小梅「ホラー映画だと、そうなるけど、実際は……」

茄子「君子危うきに近寄らず、ってなりますよね」

小梅「そ、それに探っても探ってもわからないことも……多い」

ほたる「それはそれで……怖いです」

茄子「映画はともかく、怪談の場合はわからないままも余韻があっていいように思います。さて、それでは……」




 第二夜 終

24: 2013/04/15(月) 22:04:36.17 ID:EmZy/eQ7o
ストックが出来たので投下してみました。
清良さん、再登場希望。

では、また。

26: 2013/04/15(月) 22:14:30.14 ID:XtejXyQz0

ゾクッとした

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」