42: 2013/04/20(土) 21:43:27.40 ID:/8QcRTUlo
第四夜 白蛇



茄子「……さて、それでは、今日もアイドル百物語へと参りましょう」

ほたる「今日は……どんなお話でしょうね」

小梅「杏さんと、お、お風呂つながり……ってわけでもないけど、今日も、お風呂の話」

茄子「ほほう」

ほたる「水にまつわる場所には霊がよりつく……という噂話も聞いたことがありますが、実際どうなのでしょう?」

小梅「一概に水があるから、霊が、とは、い、言えないと思う。ただ……」

ほたる「ただ?」

小梅「水は……とっても身近でとっても大事……。だから、色んなイメージが……混じっちゃう」

ほたる「イメージ……ですか?」

茄子「たとえば、農業や漁業を基として生きる場合、水は実りをもたらす根幹であると同時に、様々な害をもたらす存在でもあったりしますね」

ほたる「……水害ですか。たしかに……」

茄子「そこまで大規模でなくとも、上下水道が行き渡っていない時代には、井戸や川が日常の生活とも不可分ですから。
益と害は常に意識の中にあったと思います」

小梅「そ、それに、雨が降って川になって……海に注いでいく……。また、雲を作って……落ちてくる」

茄子「大きな循環のイメージですね」


白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

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43: 2013/04/20(土) 21:44:11.37 ID:/8QcRTUlo
小梅「う、うん。それが、竜や蛇のイメージとも……交わる。姿だけじゃなくて、脱皮して生まれ変わる……と考えられてた……から」

ほたる「輪廻転生、ですか」

茄子「そうした様々なイメージを包摂しているため、良くも悪くも意識されると」

小梅「そ、そう。清浄なイメージも、怖いイメージも……いっしょに、なる」

ほたる「なるほど……。それで霊も……ということですか」

小梅「う、うん。他にもヴァンパイアは流水を渡れないとか……古今東西、水と怪異が絡んだ話は……多い」

茄子「そんな身近な水の話ですが、今日はどなたから?」

小梅「高垣……楓さん」

ほたる「それでは、どうぞ……」

44: 2013/04/20(土) 21:44:48.92 ID:/8QcRTUlo
高垣楓(25)

○一言質問
小梅「実際に見てみたいモンスターや妖怪……いる?」
楓「天狗ですかね。あの長いお鼻がどうなっているのか……。あ、鴉天狗さんの嘴も触ってみたいかもしれません」

45: 2013/04/20(土) 21:46:41.81 ID:/8QcRTUlo
 怪談……。
 小梅ちゃんがいつも見てる映画からすると、血が出た方がいいのでしょうか?

 そうでもない?
 ふむ。

 そうですね、では、あの温泉の話でもしましょうか。

 以前……アイドルになる、ちょっとだけ前のことでした。
 一人でふらっと温泉旅行に行ったことがあるんです。

 ああ、いえ、温泉自体はよく行っていたんです。
 ただ、そのときたまたまおかしなことにでくわした、と言うべきでしょうね。

 さて、温泉です。

 その時、私、露天風呂に、入っていたんです。
 前日にも入っていて、お気に入りだったんですね。

 でも、ゆっくりしていたら、なんだか男の人の声が聞こえてきて。
 混浴ではないはずでしたから、驚きました。

 それで、これは旅館にもよるんですけど、温泉って時間によって男女のお風呂が入れ替わることがあるんです。
 露天風呂と別の湯殿が交互になってたり。

 はい、実はこのとき、露天風呂のほうは、男湯になってたんですね。

46: 2013/04/20(土) 21:47:39.35 ID:/8QcRTUlo
 でも、そのときの私は男湯になってるって気づかなくて、ただ、ああ、男の人入って来ちゃったな、困ったなって思ってて。

 しかたないから奥の方に移動したんです。
 逃げたんですね。

 奥の方でやりすごしていれば、出て行くだろうと、そう思って。
 ほら、男の人って、そこまで長く湯につかってなかったりしますし。

 それで、じゃぶじゃぶ進んでいったんですけど、だんだんとあたりが湯気に包まれて、なんだか、先が見通せなくなってしまって。
 もう、周りが真っ白に。

 でも、気にせず進んでいたんです。
 その温泉はどこかに流れ出たりはしていないはずですし、外気の温度によっては湯気がすごいことになるのはよくあることです。

 ただ、ずいぶん広い温泉だなあ、とは思いました。
 なにしろ進んでも進んでも続いているんですから。

 まあ、それも、ちょっとした探検気分が味わえて、お得だなと思ったくらいですけど。
 前日は奥のほうには行きませんでしたしね。

 そうして、ようやく湯気が晴れて、なにか見えたと思ったら、ですね。

47: 2013/04/20(土) 21:48:38.12 ID:/8QcRTUlo


 大きな、白い蛇がいました。


 お湯の中から突き出した山みたいな岩場に頭をのっけた、大きな蛇がいたんです。

 本当に大きくて。
 胴体は私の胴と同じくらいあったんじゃないでしょうか。

 長さは……どうでしょう?
 お湯の中に入ってる部分があったので、よくわかりませんけれど、五メートルはくだらなかったと思います。

 その白蛇が、鎌首をもたげ、私のことを見つけて、なにか驚いたような顔をするんですよ。

 いえ、蛇の表情がわかるというわけではないのですが、なんとなく。

 人の言葉になおすとしたら、なんでこんな所に私が入り込んできているのかわからない。
 そう戸惑っている様子でした。

48: 2013/04/20(土) 21:50:18.83 ID:/8QcRTUlo
 ああ、困らせてしまったな、とそう思いまして。

 私、持っていた温泉玉子を差し出したんですよ。
 蛇さんの邪魔をしたなら、これをお土産に、と思って

 そうしたら、白蛇がなにか考え込むように私をじーっと見てきて、ぷいっと首をある方向に向けたんですよね。

 あ、これはあっちに行けってことかなと思って。
 素直に、それに応じて、移動しました。

 少し離れてから振り返ったら、私が湯に浮かべた玉子を見て、なにかゆらゆら頭をゆらしていましたっけ。

 それで、もう一度振り向いたら、元の……奥に向かう前の場所に戻っていて。
 もう男の人もいなくなっていたので、不思議な気分のまま、湯を出ました。

 後でまた入ってみたんですけど……。
 あ、女湯に戻った後で。

 そうしたら、全然奥なんてなくて、すぐに旅館の作った板塀に突き当たりました。
 その手前もお湯が続いてるわけじゃなくて、岩地になってて……。

 きっとあの場所に行けたのは、あのときだけだったんでしょうね。

 いま思うと、残念なことをしました。

 え? なにがって?

 いえ、どうせなら、あの蛇さんと、お酒を酌み交わしてみたかったなって、そう思いまして。

49: 2013/04/20(土) 21:50:58.91 ID:/8QcRTUlo


 ほら、言うじゃないですか。



 うわばみって。

50: 2013/04/20(土) 21:51:50.06 ID:/8QcRTUlo
ほたる「……杏さんにも思いましたが、楓さんも、なんというか……」

茄子「肝が太いですね」

ほたる「……はい」

小梅「……楓さんは……冗談なのか、本気なのか……時々、わからない」

茄子「でも、嘘をおっしゃる方ではないですからねえ……」

小梅「う、うん。不思議なことは、いっぱい……ある。で、でも、戻ってこられたのは、本当に……幸運」

ほたる「不運だと……?」

小梅「……昔は、山や川の神様に……い、生贄に捧げられた人がいっぱいいた……」

ほたる「あわわわ……」

茄子「むしろ、いまどきは、そういう不思議に出会うほうがよほどの運だと思いますが」

小梅「それは……そうかも」

ほたる「で、では、今日のアイドル百物語はここまでとして、次は……」


 第四夜 終

51: 2013/04/20(土) 21:53:18.14 ID:/8QcRTUlo
温泉楓さんは素晴らしいですよね。
本日は以上です。

52: 2013/04/20(土) 22:30:53.72 ID:xKWmCfnWO
乙ー

楓さんも肝座りすぎだねー

53: 2013/04/22(月) 13:17:39.73 ID:sfBBwOZio
まあ、しかし、でかい蛇とかいたら、騒いだりとかも怖くて出来ないだろうなあ
刺激するのやだし……

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」