54: 2013/04/23(火) 00:13:00.73 ID:o5G4YNwpo
第五夜 金糸雀


ほたる「さて……今日もアイドル百物語のお時間です」

茄子「今日はどんな感じでしょう?」

小梅「こ、これまでは……みんな、体験した……自分のお話だったけど、今回は、お、お友達の話」

ほたる「伝聞……ということですか?」

小梅「うん。で、でも、怪談という意味ではそういうもののほうが……本当は多い」

茄子「そうですね。都市伝説などはその傾向が非常に強いですね。
あれの場合、たとえどこか由来がわからない状況でも『友達の友達が……』なんて感じで始まりますけど」

小梅「神話とか、伝承とかの……口承も、そう。どういう風に伝わってきても、長い間に、おきまりの形が出来てくる。
部族の先祖が語るには……なんて」

ほたる「いろんな人を伝わって……語り継がれていくと」

小梅「そう。その間に、話が変形することも……ある」

茄子「語られる間に脚色が加わることもあれば、不要な部分が減らされたり……。
つまりは話しやすいよう、皆が聞きやすいよう変化していくのかもしれませんね」

小梅「う、うん。語りの文化だから、起きること」

ほたる「語られていくうちに、変わっていくことも……怪談の性質の一つだと」

小梅「……ん。かもしれない」

茄子「そのあたりはまた機会を作って考察してみましょう。さて、今日のアイドルは、どなたでしょう?」

小梅「き、桐野アヤさん」

ほたる「では、どうぞ」


白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

アイドルマスター シンデレラガールズ 白坂小梅 ハロウィンナイトメアVer. 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア
55: 2013/04/23(火) 00:13:32.56 ID:o5G4YNwpo
桐野アヤ(19)

○一言質問
小梅「ゾンビに追いかけられたら……どうする?」
アヤ「ホームセンターになんとかたどり着いて武装する」

56: 2013/04/23(火) 00:15:12.86 ID:o5G4YNwpo
 あのさ、依頼があってから、ずっと考えてたんだけど、アタシ、怪談として話せるような経験ってないんだよね。
 人に聞いた話なら、いくつか変な話はあるんだけど……。

 あ、それでもいいんだ?

 よし、じゃあ、とっておきのを話してやるぜ。


 これはさ、趣味の友達に聞いた話なんだけど。

 彼女が小学生の頃、家でカナリヤを飼っていたらしいんだ。
 雄と雌のつがいで飼っていて、とってもかわいかったんだってさ。

 ただ、つがいでも色んな条件で、発情期がずれることがあるみたいなんだ。
 そうなると、喧嘩を始めちゃって、時にはつっつきあって頃し合うところまでいっちゃうんだそうだ。

 怖いよな。
 けど、まあ、そういうものなのかも。

 野生なら、そういう『合わない』時は避けてればいいんだろうけどさ。
 なにしろせまい鳥かごの中だもんな。

 狭い上にお互いしかいないから、エスカレートするんだろうな。

 それでさ、そういう時は鳥かごを分けて、離しておくんだって。
 その子のうちのカナリヤも、そういうことがあったんだな。

 それで、雄と雌を別々のかごに入れて、かごも離して置いておいたらしいんだ。
 そうしたらさ、ある朝、雌のほうが消えてたらしいんだよ。

 うん、かごの中に姿がなくて。

 飛んで逃げちゃったのか、と思ったけど、鳥かごもどこかが外れてたりとか、開いてたりする様子はない。

57: 2013/04/23(火) 00:16:14.39 ID:o5G4YNwpo
 その子の親も確認したんだけど、逃げられるはずないのに……って不思議がってたってさ。

 ともあれ、消えちゃったものは消えちゃったから、悲しいけど、しかたないなってことになったらしい。

 ただ、せっかくつがいで飼ってたし、その子が残念がるから、親が気を利かせて、新しい雌を連れてきたらしいんだ。
 いきなり一羽になったらかわいそうだろうって。

 それで、馴らしてから、雄と一緒にして、また飼い始めたんだ。

 そうして、しばらくして、なにかの機会で二羽が喧嘩することがあってさ。
 かごを分けて、離して置いておいたらしいんだな。

 そうしたら、また消えた。

 今度は雄のほうが消えちまったらしい。

 逃がしたはずはない。
 もしそうだとしても、家から出られるわけがない。

 玄関も窓も開け放っていたりしないわけだからな。

 さすがにおかしいってことになって、今度は親も別の雄をもらってきたりしなかった。
 それに、その子も、なんだかかわいそうになって、残ったカナリヤを、親戚にあげちゃったんだそうな。

 そのままその家に置いといたら、最後の雌も消えちゃう気がしたんだってよ。
 もちろん、当人も親もそんなことは口にしなかったみたいだけど。

 ……そりゃ、不吉だもんなあ。

 その後は、その子はペットを飼うことはなくなったらしい。

 そのことが気にかかっていたっていうより、趣味が変わっていったせいみたいだな。
 その子は、ドール……人形を集めるようになったんだよ。

58: 2013/04/23(火) 00:18:06.59 ID:o5G4YNwpo
 本格的なドールだとお金もかかるし、ペットにいじられて壊されたら大変だからな。

 まあ、でも、別にだからって動物が嫌いになったわけじゃない。
 昔飼ってたカナリヤたちはかわいかったなあと思い出すことも時折あったそうだよ。

 それでさ、最近、ドールが増えてきたこともあって、場所を空けるために、部屋を片付けてたんだって。

 そしたら、昔、誰かから貰った――それが誰なのか、当人は全然思い出せないらしいんだけど――猫の置物に肘をぶつけて、
落としちまったらしいんだ。

 妙にリアルに猫をかたどった陶器の置物でさ。
 アタシも彼女の家に行ったとき、見たことがあるよ。

 それが、落ちた拍子に、割れちまった。
 友達は、あちゃー、って思ったんだけど、ぱっかんと四つくらいに割れちまってるから、どうしようもない。

 ともかく片付けようと屈んだら、なにか出てきてる。

 そう、空っぽだと思ってた陶器の置物の中になにか入ってたみたいなんだな。

 なんだろう、この茶色いのは、とひょいと引っ張り出してみた途端。

 友達は腰を抜かしたってさ。

 そこにあったのは、しわしわにひからびた小鳥のミイラ。
 それも……二体。

 友達が言ってた台詞が忘れらんねえよ。

『ねえ、アヤ。置物でもさ、猫は鳥を獲るんだね』

 ってさ……。

59: 2013/04/23(火) 00:19:22.59 ID:o5G4YNwpo
ほたる「ちょっと……ぞっとしてしまいました。うちにある置物も調べた方が……」

小梅「に、人形……。人に限らず、なにかの形を象ったものは、ち、力を持つと、思われてる」

茄子「今回は、それが悪い方に発揮されてしまったと言うことでしょうか」

小梅「う、うん。でも、ここまでのことは……聞いたことがないかも」

茄子「普通に聞く怪談でも、動き回ったとか髪がのびるとかはあっても……」

ほたる「たしかに、食べちゃう……なんて初めて聞きました」

小梅「よっぽどなにかあったのか……。も、もしかしたら……」

ほたる「なんです?」

小梅「最初から、の、呪いの……」

ほたる「……そんな」

茄子「すでに割れてしまった以上、それもわかりませんね。
いずれにせよ置物や人形も、普通は物騒なことはありませんから、皆さんはかわいがってあげてくださいね」

ほたる「そ、そうですね」

小梅「人形と、いえば、アヤさんから、前にもらった……。球体関節……かわいい」

茄子「ほう。いつか見てみたいですね。では本日はこのあたりで……」




 第五夜 終

60: 2013/04/23(火) 00:20:08.99 ID:o5G4YNwpo
きりのんの秘密の趣味はドール集め。
ぜひSRではドールを抱えて出てきて欲しい。

そんなわけで、本日は以上です。

61: 2013/04/23(火) 00:25:32.68 ID:3LFOoIf0O
ホームセンターで武装ってチャックさんやフランクさんかよwww

それにしても、似たような話は聞いた事をあるけど、語り手が違うだけでこんなにリアリティが変わってくるのか。

乙でした。

62: 2013/04/23(火) 00:25:46.12 ID:QnYDgQTG0

あいかわらず怖い

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」