147: 2013/05/08(水) 01:20:57.29 ID:UC8lSrWHo
第十二夜 ゴールテープ


茄子「本日もそろそろ、アイドル百物語のお時間です」

ほたる「今日は……どんなお話が聞けるのでしょう?」

小梅「きょ、今日は、ある意味で古典的なお話……。学校、でのお話、だから」

茄子「そういえば、学校に関わる怪談話は多いですね?」

小梅「……人が集まるし……。歴史もあったり、するから……」

ほたる「なるほど……」

茄子「それに、こういうお話が好きそうな年頃の子たちがたくさん集まりますしね」

小梅「うん。ただ、今日は……校庭でのお話だから……珍しめかも?」

ほたる「たしかに校舎の中のほうが……多そうですね?」

茄子「校舎の中は人工的な闇が出来ますからね。校庭では、なにかあったら、すぐ外に逃げられそうですし」

小梅「うん。でも、部活動関係は、校庭が舞台なのも……ある」

ほたる「今回も……そうなのでしょうか?」

小梅「う、うん。陸上部の、北川真尋さんだから……」

茄子「さて、どんなお話を聞かせてくれるのでしょうか。それでは、お聞きください」


白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

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148: 2013/05/08(水) 01:21:28.65 ID:UC8lSrWHo
北川真尋(17)

○一言質問
小梅「五感のどれかで脅かされるとして……どれが一番怖い?」
真尋「うーん。音かなあ。やっぱり見えないのに音がするとか不気味だよね」

149: 2013/05/08(水) 01:23:43.69 ID:UC8lSrWHo
 やっほ!
 小梅ちゃん、久しぶり!

 元気?
 相変わらず白いねー。運動してる?

 嫌い?
 そっかあ。

 まあ、アイドルのレッスンしてたら同世代よりは体動かしてるかな?
 私もレッスン重ねてスタミナついたしね。

 ああ、違った。
 えーと、怪談だよね。

 うん、少しは知ってるよー。

 私、陸上部なんだけどさ。
 陸上にまつわるユーレイ話とか結構あるよ。

 寮の中を、壁をぶち抜きながら走り回る霊がいる話とか。
 困った寮生たちがゴールテープはっておいたら、ゴールした幽霊がそれ以来出てこなくなったんだって。

 あとは、夕暮れの校庭をぽっちゃりめの女の子が走っていて、ダイエットのために走ってるんだけど、一緒に走らないかと誘ってくるとかね。
 これは、走り始めると、一周回るごとにどんどんやせていって、最後はがりがりの骨と皮だけになった化け物に襲われちゃうんだって。

 頭からばりばり喰われちゃうらしいんだけど、どうやって伝わったんだろうね?

150: 2013/05/08(水) 01:24:52.37 ID:UC8lSrWHo
 ただ、たいていはランナーの話だよね。高跳び選手の幽霊とか砲丸投げの選手が……とか聞かないね。
 なんでだろ?

 やっぱりランナーのほうがみんな知ってるから?
 むむむ、メジャー故にか!

 今回のお話も、ランナーがらみ……かな。

 運動系の部活にはたいてい、長期休みごとに強化合宿みたいなのが設定されてるんだけどさ。

 うちの部でも、夏の間は少し涼しい地域……高原っていうのかな。
 そういうところに行くんだよね。春休みも、一年だけは行くんだけどね。

 元々はそこにあった学校の陸上部と交流を兼ねてってことだったんだけど、いまは地域が過疎化して、廃校になっててね。
 夏と春に合宿で使うときに掃除するって条件で、かなり自由に使わせてもらってたみたい。

 おかげで、初日は部員も草むしりとかにかり出されるんだけどさ。

 他の部活に遠慮せずに校庭全面使えるし、校舎に泊まるもんだから、部員以外には誰もいなくて騒ぎ放題だし、みんな楽しんで使ってたんだよ。

 草むしりだって、地域のおじいちゃんたちとか来てくれてね。そういう交流みたいなのも楽しかったしさ。

151: 2013/05/08(水) 01:25:52.45 ID:UC8lSrWHo
 ただ、一つだけ条件があって、暗くなったら、校庭を使わない。
 そういう約束はあったみたい。

 そりゃあ、照明があるわけでもないしさ。
 暗くなったら練習をやめるのが普通だよね。安全管理って意味でも、普通だと思う。

 だけど、うちの部では、それは幽霊が出るからだって言われてた。

 いつ頃から言われてたのかはわからないけど、先輩のずっと先輩から伝わってきてる、そんな噂話だったみたい。

 ただし、なにが出るかはさっぱりわからないんだよね。
 暗くなっても走ってたら、おかしなものを見ることになるよ、って脅される。
 それだけなんだよ。

 脅してくる先輩方も、この話は夜に外に出て行きたがる子供たちを抑えるために大人たちが考えたんだろうな、くらいに思ってた人も多かったと思うよ。

 うん、私もそう思ってた。
 単なる戒めみたいな感じでさ。

152: 2013/05/08(水) 01:26:43.15 ID:UC8lSrWHo
 ところが……見ちゃったんだなあ。

 うん。
 私自身がね。

 いや、どうしても納得いかなくてね。
 その日の走りに。

 もう少し、もう少しってやってたら、日が落ちて来ちゃって。
 もう先輩もコーチも中に戻っちゃってさ。

 いや、早く入れとは何度か注意されたんだけど。

 あと一回、あと一回って粘ってる間に……真っ暗になっちゃった。

 ああいう所って、日が落ちるの早いんだよね。
 もう、山の間に太陽が隠れたら、あっという間に暗くなるの。

 そんな中でも、もう何十回、何百回と走ってるコースだから、頭の中に周りの風景が浮かぶんだよね。

 ここに白線が引かれてて、あそこがゴールで……って。

 だから、最後に一走りして、それで終わろうと思った。
 うん、かなり暗い中でね。

153: 2013/05/08(水) 01:27:29.95 ID:UC8lSrWHo
 そうして、走り始めて……。
 自分でもそれなりに納得のいくスタートも切れたし、体の動きも悪くなかった。

 よしっ、ってテンション上がったんだ。

 このまま駆け抜けて、そのまま、校舎に戻ろうって。

 そうして、ふっと前を見つめたら、なにかおかしいんだよね。

 ゴールに、ゴールテープがある。

 いや、普通だよ?
 そういう形式の大会の時はね?

 でも、練習の時にゴールテープなんかはるわけないし、ましてや、真っ暗な中で、ゴールテープなんか見えるわけない。

 そう考えた途端、足の勢いが落ちちゃってさ。
 走るのやめて、歩くような感じになって。

 そうしたらね、すーっと遠ざかるの。

154: 2013/05/08(水) 01:28:12.37 ID:UC8lSrWHo
 うん、ゴールテープが。

 暗闇に白く浮かび上がるような感じのゴールテープがすーって遠ざかっていく。

 いま思い返して残念なのは、そのゴールテープの端がどうなってるのか見なかったことかな。

 いや、もうそのときは呆然としてそれを眺めるしか出来なくて、観察するとか無理だったんだけどね。
 いつの間にかどこかに溶けるように消えちゃってたし。

 いやあ、でもさあ。

 幽霊が出るとは聞いていたけど……。

 まさかゴールテープの幽霊とは……ねえ。

155: 2013/05/08(水) 01:28:50.81 ID:UC8lSrWHo
茄子「ゴールテープの幽霊……?」

ほたる「なんというか……なんなんでしょう?」

小梅「ゴールテープみたいにはっきりしたものじゃないけど……。ぬ、布みたいなものが……飛んでるっていう話は、実は、それなりに……ある」

茄子「そうなんですか?」

小梅「うん。有名なのが一反木綿」

ほたる「ああ……!」

小梅「一時期なら……UFOって言われてたものもあるかも」

ほたる「それでも、これは……」

茄子「陸上部の真尋さんがゴールテープというからには、きっと、よく似ていたのでしょうし……」

小梅「うん……。でも、本当はなんだったのか……」

ほたる「……謎ですね」

茄子「謎です。さて、次のコーナーでは、そういったよくわからないものの目撃譚について……」


 第十二夜 終

156: 2013/05/08(水) 01:29:23.19 ID:UC8lSrWHo
以上です。
今日は純粋にヘンな話。

157: 2013/05/08(水) 01:30:48.20 ID:XzAapnBl0

一反木綿だと思ったら出てた

158: 2013/05/08(水) 02:34:54.43 ID:DYKAf36G0
ただの布切れでも、そういう風に書かれると怖いな。
もし触れたら絞め殺されるのだろうか・・・・・・


159: 2013/05/08(水) 04:04:21.52 ID:2Y+BcbEAO
ゴールしてたら人生完走しちゃったのかな

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」