1: 2013/06/03(月) 23:12:15.20 ID:aaBoj+qPo

第十四夜 落書き


涼「松永涼のーっ! ラジオ百物語っ!」

小梅「……い、いぇーい」




白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

アイドルマスター シンデレラガールズ 白坂小梅 ハロウィンナイトメアVer. 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

3: 2013/06/03(月) 23:13:17.09 ID:aaBoj+qPo


涼「はい、みなさん、はじめまして。松永涼です。実は今日からこの時間は、新番組『松永涼のラジオ百物語』が始まるよ!」

小梅「……う、奪われた」

涼「……なーんてのは冗談。今日も変わらず『白坂小梅のラジオ百物語』だから、みんな安心して」

小梅「……ほっ」

涼「ただ、今日は第二シーズン第一回ってことで、アタシがゲストパーソナリティなんだよね。よろしく、小梅」

小梅「う、うん。よろしくお願いします、涼さん」

涼「あ、ほたるちゃんと茄子さんは次回から戻ってくるから、ファンのみんなはそこも安心しておいて」

小梅「きょ、今日だけ、お休み」

涼「うんうん。それはともかく、小梅とアタシは事務所も同じで、仲良しなんだよね」

小梅「うん。嬉しい」

4: 2013/06/03(月) 23:14:48.68 ID:aaBoj+qPo


涼「はは、照れるな。まあ、お互いホラー映画好きだからな。それがきっかけで仲良くなったのもあるよな」

小梅「うん。一緒に映画見るの……楽しいです」

涼「まあ、それがなくても、小梅はかわいいけどなー」

小梅「わわっ。……ふふっ」

涼「っと、遊んでないで進めよっか。ええと、この第二シーズンは十二回予定。だから、メインのアイドル百物語は十二人に聞くってことになるね」

小梅「……うん。その一人目が、涼さん」

涼「そう。だから、後でアタシの話をするよ。っていってもアタシはホラーは好きだけど、現実の心霊系はあんまり縁がないんだけどね」

小梅「……そう、だね。……ふふふっ」

涼「……その思わせぶりな笑いはなにかな? 小梅」

小梅「なんでもない。涼さんは大丈夫。……うん。あの子もそう言ってる」

涼「いやいや、怖いから!」

5: 2013/06/03(月) 23:15:56.30 ID:aaBoj+qPo


小梅「……今日は、そんな涼さんのお話を聞かせてもらう前に、涼さんの歌を聴いてもらいます」

涼「……うう、流された。まあ、うん、一応楽しんで歌った歌だから。聴いてくれると嬉しいよ。ARBってバンドのカバーなんだけどな」

小梅「りょ、涼さんの歌は、かっこいい……」

涼「ありがと、小梅」

小梅「じゃ、じゃあ、涼さんの歌を聴いてもらってそのまま、アイドル百物語、です」

涼「うん。まずは、松永涼で『イカレちまったぜ』」




○一言質問
小梅「ホラー映画でやるなら……何の役?」
涼「襲ってくる化け物のほう。ヒロインはすぐ氏ぬからね」

7: 2013/06/03(月) 23:17:16.62 ID:aaBoj+qPo

 さて……。

 本気でアタシはあんまりその手の経験はないんだよな。
 結構、バンド活動で夜中まで作業してたりするんだけど……。

 真奈美さんも、スタジオってのは、その手の話はよく聞くとは言ってたんだけどなあ。

 ま、それはともかく、アタシの唯一の不思議な体験を話そうか。

 あれは、アイドルにスカウトされることになる少し前のことだったかな。
 その日はライブハウスの、毎月おきまりのバンド対抗ライブの日でさ。

 五組くらいのバンドで、代わる代わるひたすら演奏し続けるんだよ。
 もちろん、客が冷めない限りって条件はつくけどね。

 そういう日だから、帰りはどうしても遅くなる。
 たいていは終電も過ぎちゃうね。

 普段はもうあきらめて始発までだらだらしてるんだ。
 ライブハウスのほうも、それくらいは許してくれるから。

 だけど、その日は夏でさ。
 暑いけど、夜風は気持ちよくて、歩いて帰ろうって気になっちゃったんだよね。


 やめときゃいいのにな。

8: 2013/06/03(月) 23:19:22.36 ID:aaBoj+qPo

 そうして、ぶらぶらと歩いてる途中に公園があってさ。トイレに寄ったのさ。

 夜の公園のトイレなんて、あんまり近づきたいとこじゃないけどさ。
 催したんだからしかたないよね。
 人の気配もなかったし。

 そうして、個室に入ったんだけど……。

 公衆トイレってさ、落書きとか結構あるんだよね。
 そのあたり、男女共用のほうがひどいみたいに言われるけど……。

 実際は、女性用のトイレだってろくでもないこと書いてあるもんなんだよ。

 え?
 どんなことって?

 いや、小梅は知らなくていいよ。

 それはともかく、座ってみたんだ。
 そしたら、正面の扉に、携帯の電話番号らしきものが書いてある。

 誰がかけるんだよ、こんなうさんくさい番号。
 ……って、そう思った。

 そうしたら、さ。

9: 2013/06/03(月) 23:20:52.28 ID:aaBoj+qPo

 急にアタシのスマホが音を鳴らしてさ。

 なんてタイミングだよって正直ちょっと動揺しながら取り出して、画面を見たら……。

 もう、アタシ、そのまま飛び出してた。

 ほんっと、かっこわるい話なんだけど。
 下着ずりあげながら、必氏でトイレを出たよ。

 あんなところ誰かに見られてたら、お嫁に行くどころか、アイドルデビューも出来なかったろうなあ。

 ともかく、そんな無様な姿になりながら逃げ出した理由はただ一つ。


 アタシのスマホにかかってきたのが、落書きされてた、その番号からだったからだよ。


 ……うん。
 わけわかんないだろ?

 たまたまそのトイレに入った奴の電話番号なんて、どうやったらわかるんだ?

 アタシが悪戯心を起こしてその番号にかけたんならともかく……。

 ああ、ちなみに、その番号には翌日明るくなってから、知り合いと一緒にかけてみたよ。

『おかけになった電話番号は現在使われておりません……』

 ってありがちな結末だったけどな。


 あれは、本当になんだったんだろうな。

10: 2013/06/03(月) 23:21:34.98 ID:aaBoj+qPo


小梅「ふ、不思議」

涼「不思議っていうか、気持ち悪いよな」

小梅「でも……携帯電話やネットが普及してから、それにまつわる不思議な話も……いっぱい出てきてる」

涼「あー、そうなんだろうなあ……。『着信アリ』とかもあったもんな」

小梅「う、うん」

涼「正直、着信音って、耳に刺さるしね。変更しておけばいいんだけど」

小梅「う、うん。それに、電話は、霊的なつながりをつけちゃう……って考えも、あったりする」

涼「へー。オカルト的にはそうなんだ」

小梅「昔は手紙……書簡もそう考えられてたりもしたから……その派生?」

涼「なるほど。化け物は招かれなきゃ入れないとかの関係かね?」

小梅「うん。……いろんなことの区別が聖と俗を分けるけど……そこをするっと通り過ぎちゃうものは、危ないってされがち」

11: 2013/06/03(月) 23:22:26.88 ID:aaBoj+qPo


涼「なるほど……。電波があれば通じちゃう携帯電話はそういう意味では無茶苦茶危ないね」

小梅「う、うん。でも……便利だし……」

涼「まあなー。というか、どんなものでもメリットデメリットはあるからね。それに加えて、普通は気づかないメリットデメリットも内に秘めてるんだろうね」

小梅「うん。でも、ネットとか携帯電話がらみの……新しい怪談は、いろいろ面白い……」

涼「お、そうなのか?」

小梅「うん。よく調べると古いものの焼き直しだったり……。あるいは思ってもみないものが生まれたり……調べるだけで、楽しい」

涼「そうかそうか。それはいいな」

小梅「……うん」

涼「じゃ、次のコーナーはそうした新しい怪談話について特集だね。まずは……」


 第十四夜 終

12: 2013/06/03(月) 23:24:07.01 ID:aaBoj+qPo
 というわけで、ネタもたまってきたので、第二シーズン開幕です。
 前スレと同様、2~3日に一本ペースで行く予定です。
 作中でも言ってますが、涼がパーソナリティなのは今回だけで、次から茄子ほたる小梅の三人体制復活です。


 なお、元ネタについてですが、オリジナルを別とすれば、自分で蒐集した話、ネットで見かけた話、書籍等で見た話と三パターンあります。
 ただ、書籍等に載っていたものが、ネットでも見られるようになった場合は、その怪談話自体がかなり広まったものと考えて、出典は明記していません。
 今後、明らかに書籍等から筋通り使用した場合には出典を明記することにします。

 第一シーズンで言えば、第十一夜 星(櫻井桃華)については、中山三柳の『醍醐随筆』(江戸前期)の中にあるお話のアレンジです。

 他は、元があるものも、アイドルに合わせてかなりアレンジしていて、オリジナルに近くなってしまっています。
 コメント等見ると気になっておられる方がいらしたようなので、一応書いておきました。

 それでは、また。

13: 2013/06/03(月) 23:27:49.53 ID:abIIjAMN0
乙です
怖いけど次回も期待してます

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」 Season 2