107: 2013/09/07(土) 23:07:59.33 ID:pgiIXlOUo

第三十二夜 栄光の手


ほたる「それでは……。今日もそろそろアイドル百物語へと参りましょう」

茄子「本日はどんなお話なんですか?」

小梅「今日は……賭け事のお話」

ほたる「……へえ」

茄子「……というと、兵藤レナさんですかね?」

小梅「そ、そう。レナさん」

ほたる「ああ、なるほど。兵藤さんと言えば、元カジノディーラー……として有名ですよね」

茄子「アイドルとしてはなかなか珍しい経歴ですよね」

小梅「レナさんのトランプさばきは……すごい」


白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

アイドルマスター シンデレラガールズ 白坂小梅 ハロウィンナイトメアVer. 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア
109: 2013/09/07(土) 23:09:25.01 ID:pgiIXlOUo

兵藤レナ(27)

○一言質問
小梅「トランプで……攻撃できる?」
レナ「……精神攻撃ならね」

108: 2013/09/07(土) 23:08:30.10 ID:pgiIXlOUo


ほたる「それは……見てみたいですね」

茄子「今度みんなで見せてもらいましょう」

小梅「うん……それがいい」

ほたる「楽しみですね。それはともかく……」

小梅「う、うん……。今日は、レナさんの……怪談」

茄子「では、兵藤レナさんのお話です。どうぞお聞きください」

110: 2013/09/07(土) 23:11:32.90 ID:pgiIXlOUo

 今日はよろしくね。小梅ちゃん。

 さて、怪談だったわね。

 んー……。
 そうね、やっぱりなじみ深いギャンブルの話をしましょうか。

 小梅ちゃんには、まだギャンブルなんて縁遠いものよね?
 そうよね。
 うん……。あれはあくまで大人の遊びだから。

 いろいろな意味で、余裕がある人だけが楽しめる。
 ギャンブルってそういうものよ。

 勝負事っていうのは、真剣にやればやるほど、勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。
 そして、勝てば次も勝とうと、負ければ次こそは巻き返そうと熱くなる。

 その熱をコントロールできる人間だけが、ギャンブルを楽しめるの。

111: 2013/09/07(土) 23:12:40.08 ID:pgiIXlOUo

 コントロールと言ったって、抑制するだけじゃないわよ?

 押さえるだけじゃなく、熱を発散するタイミングをしっかりと見定められる人が……。
 勝負所を決められる人こそが、結局は楽しめるのよ。

 とはいえ、やっぱりそうそううまくいかないのが現実よね。
 熱くなりすぎて、心の余裕を保てない人のほうがはるかに多い。

 たとえば、ジャックポット……メダルゲームの大当たりを引き当て、その途端心臓麻痺で亡くなっちゃった人がいたわ。
 これなんて、あまりにのめり込みすぎよね。

 まあ、氏んでるはずのそのおばあちゃんが、その後もたまにメダルゲームをやってるところを目撃されてたのは、ご愛敬といったところね。

112: 2013/09/07(土) 23:14:02.47 ID:pgiIXlOUo

 そして、もっと単純に、ギャンブルに取り憑かれて、身を持ち崩す人はもっと多かった。

 生活に必要なお金をつぎ込むようになったらもう駄目。
 まして、借金したり、詐欺にあったりするくらい周りが見えなくなったらいよいよ終わり。

 妙なものに頼りはじめるのも……そう。

 私が働いていたカジノの常連にもいたわ。
 バカラで勝つために『栄光の手』を手に入れたんだって自慢してきた男。

 小梅ちゃんなら知っているわよね。
 『栄光の手』って。

 そう、氏刑になった人間の手を氏蝋化させた……なんていうのかしら、ああ、呪具?
 なるほどね。

 そいつはね、その『栄光の手』に手錠をかけて、手錠のもう一方を自分のベルトにかけてた。
 そうして、懐に持っているんだって、ちらっと見せてくれたの。

 まあ、見たくもなかったんだけど、お客さんだしね……。

113: 2013/09/07(土) 23:15:26.02 ID:pgiIXlOUo

『なんで、手錠なんかかけるのか、不思議だろ?』

 あいつはテーブルの他のメンバーが集まるまでの間に、にやにや笑いで話しかけてきた。
 ああ、これは話を聞いてやらないとおさまらないんだろう。
 そう思ったわ。

 だからしかたなく、私も興味あるように装ったの。
 そうしたら、こんなことを言ってきたわ。

『実は、こいつは絞殺魔の手なんだよ』

 そいつによると、その『栄光の手』は、生前何人もの人を絞め頃した罪人のものなんですって。

『だから、手錠をかけておかないと、俺も絞め殺されちまうんだ』

 奴はそう言って笑ってたわ。

 『それ』には、色んな加護があると、そいつは吹聴してたけど、疑わしいものよね。
 なにより、人の……しかも罪人の氏体から切り取ったしなびた手を自分の懐に隠し持つなんて……。
 その神経がもうおかしいじゃない?

114: 2013/09/07(土) 23:16:44.23 ID:pgiIXlOUo

 とはいえ、そいつは本気で信じていたんでしょうね。
 実際、その日の彼は、勝ちに勝ちまくってたわ。

 当人はその『栄光の手』の加護だと思っていたことでしょうね。
 でも、ディーラーの私から見たら、ただやけっぱちな手が当たってただけだったわ。

 それでも、その『栄光の手』とやらを手に入れるために払った代金を回収出来たかというと、かなり疑わしいところよ。

 少なくとも一日に稼げる額じゃ追い付かなかったはず。
 そもそもあまりに一人が勝ちすぎると、テーブル自体を閉めてしまうし……。

 そして、すぐにそいつはカジノに顔を出さなくなってしまった。

115: 2013/09/07(土) 23:18:14.49 ID:pgiIXlOUo

 噂では氏んだというけど、定かじゃない。
 まして、締め切った部屋で絞殺されていたなんてのは与太話に過ぎないと思う。

 だって、夜中に動き出した『栄光の手』に絞め殺されるより、マフィアに借りた金が焦げ付いて、体ごと持ってかれるほうがはるかにありそうだもの。

 まあ、いずれにせよ、ろくでもない結果に変わりはないけれど。

 え?
 『栄光の手』はどうなったかって?

 さあ、どうなったのかしら。
 いまでも、色んな持ち主のところを転々としているんじゃない?

116: 2013/09/07(土) 23:19:52.11 ID:pgiIXlOUo


茄子「『栄光の手』……不気味ですね」

ほたる「氏体から作るなんて……」

小梅「人の氏体から魔術や呪いに使う道具を作るというのは……よくある話。それをするために墓が荒らされたり……」

茄子「いやな話ですねえ……」

ほたる「そんなものを使おうとするってことも……。なんだかすごいですけど……」

小梅「う、うん」

茄子「私は大当たりして亡くなってしまったおばあさんが氏後も見かけられるってほうも……」

ほたる「たしかに……そちらもすごい執着です」

小梅「賭け事は世界中でいろんな話が……あるから」

茄子「それだけ魅力があるのでしょうが……。それでもほどほどがいいと思いますね」

小梅「……本当に」

ほたる「さて……それでは、次のコーナーでは、洋の東西を問わずギャンブルに関わる不思議な話を……」


 第三十二夜 終

117: 2013/09/07(土) 23:20:39.32 ID:pgiIXlOUo
本日は以上です。
レナさんはメダルから出てくれなかった想い出。

118: 2013/09/07(土) 23:23:31.74 ID:pVKOnzADo


……このもやもやした感じ。だよなぁ、客の一人だしそんなもんか
ギャンブルは熱くなったら負けよな

119: 2013/09/08(日) 00:04:03.98 ID:wsghuXPDO
引き際が掴めない…生活に支障が出るほどのめり込む…
この話は課金兵諸兄への警鐘でもあることですね?

120: 2013/09/08(日) 00:05:22.13 ID:lUIc8+6AO
GSの横島思い出した

121: 2013/09/08(日) 01:29:56.64 ID:kSwHZ7W8o
ハンズ・オブ・グローリーだっけな。ウサギの足じゃいかんのか?
あっちもギャンブラー御用達アイテムだったと思うけど。

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season3