1: ◆BAS9sRqc3g  2018/04/12(木) 15:41:53.23 ID:A8+vi4vxO

Pと兄貴と妹馬鹿シリーズ 

【注意事項】
・日刊更新
・ミリオンライブ四コマ漫画風SS
・キャラ崩壊




8: 2018/04/12(木) 20:48:08.72 ID:R+5dVQFE0

以降番外編
読まない方はちょっとだけスクロールお願いします。

9: 2018/04/12(木) 20:49:36.50 ID:R+5dVQFE0

番外編
【田中琴葉とプロデューサー】


あの人の印象についてはあんまり良くはなかった。
いつもふらふらっと現れては仕事しているのかしていないのか分からない。
それでも私は、あなたの担当アイドルなのだからもっと私のことを見てほしかった。
まあ、今思うとそれは無理な話だった、って分かっているけれど。



私が事務所に入った時のこと。



高校二年の三学期の試験が終わり、学校の先生はいよいよ進路の話を本格的に始める。
私も周囲と何も変わらずに大学に進学することを視野に入れている。
特別に学びたいことはないけれど。
それが世間一般の”普通”であるならば、私はそれに従うし、それがやっぱり無難な選択なのだと思う。


10: 2018/04/12(木) 20:52:47.19 ID:R+5dVQFE0

「田中、少しいいか?」



帰り支度をしているところにクラスの担任の教師に呼び止められる。
担任の先生は私の所属しいる演劇部の顧問もしてくれている。


してくれている、というのは私の高校の演劇部は特別力の入れられている部活ではないから、
どこか別の部活などの顧問をしている先生が兼任してくれる形になっている。


「はい」


11: 2018/04/12(木) 20:53:20.24 ID:R+5dVQFE0


私は先生の呼びかけに返事をして、カバンを机に降ろして、
教卓に寄りかかる担任教師の元へ行く。
手持ちのクリアファイルの中から一枚の紙を私に渡す。
『推薦』と書かれた紙で、あとはあまり読まないでいた。



「君が普段から優秀なことは皆知ってる。恐らく学校側からも
 うちが推薦枠を抱えている学校ならどこでも推薦状を書くだろう」

「ありがとうございます」

「もちろん、うちが持っている推薦枠から
 行きたい学校がないというのであれば
 受け取る必要はないが、
 何か……本当はやりたいことがあるんじゃないのか?」

「……」


12: 2018/04/12(木) 20:54:23.25 ID:R+5dVQFE0

そういって担任教師は紙を私に押し付けて、
私を置いて教室を出ていってしまった。
私も自分の机に戻り帰り支度を続ける。


勉強道具で少し重くなったカバンを持ち、教室を出る。
何人かのクラスの友人に「また明日」と声かけられて私もそれに応える。
もう、演劇部に寄ることはないので私はまっすぐに校舎の昇降口に向かう。


演劇部は2年の三学期には引退をする。
そういう、何となくの決まりがある。殆どが形だけなのであまり関係がないが
重要な役はこれ以上居ても貰えることはなくなる。


13: 2018/04/12(木) 20:55:30.60 ID:R+5dVQFE0


その代わり、今まで培ってきた衣装の制作や大道具の制作の手伝いに回ることになる。
役だけを演じていたい、という人たちはこの引退の時期にもう来なくなってしまう子も大勢いる。


私も実際それでもいいかと思っていたけれど、自分が残って衣装や道具制作を手伝ってくれていた
先輩達に助けられたことを思い出すと、やっぱり自分も手伝いたくなる。


何よりも、自分はあの自由に演技ができて、衣装も自由で、道具も自由に作って
自分たちで工夫をして作り上げる時間がすごく好きだった。


昇降口に向かう途中でさっき担任教師に言われたことを思い出す。


14: 2018/04/12(木) 20:56:04.18 ID:R+5dVQFE0

やりたいこと。
そうだ。



薄々気づいていたけれど、私は……演技をしていたい。
何かを演じることで何者でもない私に役割を与えたい。
あの瞬間が好きだ。


物語を演じる、その上で重要な役割を得ている私が好きだ。
普段、何気ない私でも、あまりクラスで目立たないタイプの私が、
何者でもなくなる瞬間。それが演技をしている瞬間だった。

16: 2018/04/12(木) 20:57:53.13 ID:R+5dVQFE0

だから、特別に学びたいことがないという、さっきの言葉は実は……嘘になる。
でも、私の母親もあまりそういう特殊な職業に就くことをどう思っているのかは分からないが
いざ自分の娘がそうなりたいということを言ったら、きっと反対するだろうな。
だって、恐らくそれは……”普通”じゃないから。


担任教師から貰った紙をもう一度読み直す。
紙を貰っても、私のやりたいことを再確認したところで方法なんて分からない。
どうやってなるのか。それこそいきなり魔法少女よろしく変身でもして今日から私は女優です、と。
そんなことが通じる世界ならばよかったかもしれないが。
この現実世界はそう甘くはいかないもので。


演技について学びたいけれど、どこから学べばいいものやら。
私は途方に暮れていた。

17: 2018/04/12(木) 20:59:14.94 ID:R+5dVQFE0

マフラーを首に巻き直して、校舎を出る。
やりたいことが見えても、歩くべき道が見えない私は結局の所、
書店に寄って参考書を手に取っていた。
そうやって自分でも大学に進学するという進路を逃げ道として残せられるように。



「君、その量子力学に興味があるのかな? 
 私も粒子について研究を重ねていてね。
 君はミノフスキー粒子というものを知っているかね?」


書店で声をかけてきたのは大柄な男性だった。
ビクン、と身体が凍りつく。
本棚に手をかけ行く手を阻むように私の前に立ちふさがる。
ナンパ? というよりもっとたちの悪い「変質者」だ。


18: 2018/04/12(木) 21:01:25.18 ID:R+5dVQFE0

私は声が出なかった。
大柄で背の高い金髪の……いかにもチャラそうで、袖のない服を着たその男は
振り返り足早に去ろうとした私の肩を掴み
「どこかその辺の茶店にでも入って私と意見交換会でもしないか。
 ああ、もしかしてプラフスキー粒子の方がお好みだったかな?」
と頭に入ってこない言葉をぶつける。


その時、別の誰かが私にかかった手を振りほどき、そのまま肩を組んでくる。


19: 2018/04/12(木) 21:01:56.38 ID:R+5dVQFE0

「ちょっと失礼~。ほら、行くよ」

「あ、でも」

「しっ、いーからいーから。アタシに合わせて」


肩を組んできたのは同じ年齢くらいの学生服を着た女性で、
短いスカートからは長く細い、白く綺麗な脚がのびて、
私の首に周る腕は細いのに密着した身体からは
大きく柔らかな感触が広く伝わる。

20: 2018/04/12(木) 21:03:00.50 ID:R+5dVQFE0

「店員さーん」


店員を大声で呼び、彼女は男を軽く追い払ってみせた。
そして私達も店員が来る前に店を出ることにした。
せっかく呼んだ店員さんには悪いことをしたし、
私は結局参考書を買えてないが、こうなってしまっては諦める他なかった。



「いやー、あんなお店で声かけてくるなんて、非常識にも程があるよねー」

「そ、そうですね。あの、ありがとうございます」


21: 2018/04/12(木) 21:04:14.63 ID:R+5dVQFE0

そっと未だに肩を組んだままの彼女の腕から抜け出してお礼を言う。
いきなりの初対面の子に助けてもらっておいて私は少しこの空間が気まずかった。
しかし彼女は


「いいよ別に」


そういって笑ってくれる。

まあ――、みんななんとなく気がついてると思うけれど、これが私と恵美が初めて会った時の話。
今でもこういう誰彼構わずに困っている人が居たら助ける手を差し伸べるのが恵美。


22: 2018/04/12(木) 21:04:52.98 ID:R+5dVQFE0

私はこのあと、颯爽と立ち去ろうとする恵美を引き止めてお礼をさせて欲しいと頭を下げる。
多分、この人のことだと、後日改めて、とか言うと断られそうだったから、今からにする。


なんというか、
今の笑顔に私は一目惚れに近い形で
今出会ったばかりの少女のキラキラと輝くオーラに魅了されていた。
気がついたら私は嫌だなぁと思ってたナンパ側に成り下がっていた。


それから、他に用事もないからいいよ、
と付き合ってもらう事ができた私は一先ず近くにあったファミレスに入ることにした。



曰くドリンクバーさえあれば何時間でもおしゃべりできるよ。という彼女。
この日、彼女のマシンガントークは約3時間以上の時間をあっという間に流した。


23: 2018/04/12(木) 21:05:38.41 ID:R+5dVQFE0

だけど、彼女の話は決して嫌なものじゃなかった。
とても楽しく私も彼女に自分のことを何でも話してしまうのだった。
とても気持ちよく話を聞いてくれる。


気がついた時には日が暮れていた。


「ねえ、さっきからスマホ、電話かかってるみたいだけどいいの?」


喋っている間、何度か恵美のスマホが光っていた気がして
気にはなっていたが本人が全く気にしていなかったので「いいのかな?」と
思っていたがどうやら違ったようで、恵美は私の指摘に驚いていた。


24: 2018/04/12(木) 21:06:15.58 ID:R+5dVQFE0


「え? うっそ。やば! 兄貴だ!」

「お兄さんから電話かかってくるの?」

「うーん、アタシの兄貴ってちょっと行き過ぎた心配性だからさー」



私はこの時から薄っすらではあるけれど、
お兄さんがシスコンなのではないかということには気づいていた。


恵美は「ちょっとごめんね」と言いながら電話に出る。
しばらく「うんうん」と頷いていたり私といるファミレスの場所を言ったりしている。
まさか、この場所まで来たりするのだろうか。


25: 2018/04/12(木) 21:07:06.79 ID:R+5dVQFE0

電話を終えた恵美は「なんかこっち来るんだって」と軽く言う。
私はさっきまで男性のナンパに遭い喜ばしくないことに巻き込まれていたので
この場に男性が加わることに警戒していた。


それを察したのか、どうかは分からないが恵美は
「大丈夫、兄貴はアタシ以外に興味ってないみたいだから」
と言っていた。


私はこの時、「あ、やっぱりシスコンなんだ」と納得していた。
今思えば恵美も大概ブラコンなのだけど、まあそれは友達として言わないでおく。


26: 2018/04/12(木) 21:08:04.82 ID:R+5dVQFE0

しばらくの恵美との談笑の後に現れたスーツ姿の男性は、
私のことを全く無視して恵美にいきなり

「レッスンあるって言ったじゃん」

と少しふてくされたように言い放った。


「えっ!? あー、うーん。ごめん!忘れてたんだってば」


私もいるんだけど……という気持ちを抑えて私は普通に挨拶をする。


「初めまして、田中琴葉っていいます。私、実は今日恵美さんに助けられて……
 えっと、それで……もし私のせいで恵美さんがお兄さんとの
 約束を忘れてしまっていたなら、私が謝ります。すみませんでした」


27: 2018/04/12(木) 21:08:37.36 ID:R+5dVQFE0


そして、その私の挨拶を……無視して
恵美への注意を続けるのだった。


いや、今のはきっとタイミングが悪かっただけなんだ。
と自分に言い聞かせることにして。私は一度立ち上がっていたが、
仕方なく座り直す。きっと恵美が私のことを紹介してくれる……たぶん。


「あ、兄貴!この子ね、琴葉って言うの。どう?
 可愛いでしょう?」


思わぬ恵美の紹介の仕方に驚いて
変にもじもじしてしまう。
今思うと恥ずかしいことだけど。


28: 2018/04/12(木) 21:09:03.65 ID:R+5dVQFE0

「え? ああ、……うん。いいね」

二人して私の顔をじろじろと見る。
何か変なものでも顔についてるのかと思って
私は自分の顔をぺたぺた触って確かめる。
大丈夫、デキモノは何もない……はず。



「よし……君。まだ時間はあるかい?」

「え、はい」

29: 2018/04/12(木) 21:09:45.60 ID:R+5dVQFE0

とお兄さんに聞かれた瞬間に私は後悔した。
しまった……このまま何か悪いことに巻き込まれるのであれば
今のうちにすみませんと断って帰れば良かった。


そして私は流されるままにファミレスから出ていき
恵美とお兄さんと一緒に夜の街を歩き
ダンススタジオに入っていく。


そこで私は「何が始まるの?」と聞くが2人とも
「いいからいいから」と言って何も教えてくれない。
そのまま私は成り行きでダンススタジオのフロアに
恵美のレッスン着を着て立っている。

30: 2018/04/12(木) 21:11:06.66 ID:R+5dVQFE0

広い鏡の前に立つ私と恵美。
それにお兄さんがいる。



「鏡見ながらでいいから恵美の動きに合わせてリズムよく動いてみてよ」

「……はい?」


そういえば恵美はさっきお兄さんに「レッスンが」どうとか言われていた。
これは何かのレッスン……?
恵美は……何者なの?


思い切り動き回るのかと思ったら恵美の踏むステップは
どれも演劇部の準備運動でもやるような単純なステップだった。

31: 2018/04/12(木) 21:11:45.76 ID:R+5dVQFE0

「なんだ、これなら」と踏んだステップがきっかけで
私は10分後には汗だくになっていた。



恵美に向かって小さい声で良く分からないステップだったり
振り付けの種類だったりを
吹き込んでいるお兄さんだったが、
それに対して瞬時に恵美は対応していく。


最初は脚だけの簡単なステップだったはずなのに、
気がつけば手の振りが入り、大きな動きも加わって
本格的なダンスになっていた。

32: 2018/04/12(木) 21:12:13.54 ID:R+5dVQFE0

必氏になって付いていったが、
結局何か分からないままお兄さんの「よし、そこまでにしよう」
という言葉を聞き、”それ”は終わる。


「合格だな」

「合格……?」

「すごいじゃん琴葉!」

「え……えっと、何が……」


33: 2018/04/12(木) 21:14:00.64 ID:R+5dVQFE0

ハァハァと息切れが治らないまま、2人の声を聞くが
中々頭に入ってこない。
3人きりのダンススタジオに私の荒れた息づかいが響きわたる。


結局、私が何に合格したのかハッキリと答えを言わないまま、
着替えてきて、と言われてしまう。
あまり腑に落ちない私だったが、借りた服なのに汗だくになった申し訳無さに
汗が染み込まないようにすぐにでも脱ぎたくて更衣室に向かう。


34: 2018/04/12(木) 21:14:38.42 ID:R+5dVQFE0


更衣室にて簡単に汗を拭いて制服に着替える。
隣で着替えていた恵美にレッスン着は
洗って返すと告げると、にやりと笑い「じゃあ~、2つ約束ね……!」


そして、恵美は私に2つの約束を取り付けた。
半ば強引ではあったけれど、
私はもう一度恵美という人物に会えるのだと思うと、
その強引さは特に気にならなかった。


1つはレッスン着を洗って返すこと。


もう1つの約束の内容はもう一度恵美に会うことだった。
返却するために会うのだから当たり前なのだけど、
その言い方はまるで、何か別の目的で会いに来いと言わんばかりだった。
私は恵美に借りたレッスン着を洗って返すことにしてこの日は帰ることにした。


35: 2018/04/12(木) 21:15:46.69 ID:R+5dVQFE0


家で、ぐるぐる回る洗濯機の中を見ながら今日のことを思い出していく。
恵美は人を乗せるのが上手で、
私もいい気になってどんどん難しいステップや振り付けに挑戦していたけれど、
それでも恵美は私がちょっと躓くと支えてくれて応援してくれた。
こんな今日会ったばかりの人に。

でも、楽しかった。


そんな思いも抱えながら次の休みに恵美に会った。


36: 2018/04/12(木) 21:16:28.59 ID:R+5dVQFE0


交換したメッセージアプリで恵美からは動ける格好と汗で濡れてもいいようなインナー、
それから着替えの下着とか靴下を持ってくるようにと言われていた。
私はこの前みたいなダンスをやるのかと思ったけれど、
今日は様子が違った。


待ち合わせ場所には同じように恵美とそのお兄さんが居て、
軽く挨拶を済ますと私は車に押し込まれた。
一瞬拉致か何かだと思ったが、いや結局拉致なのだけど、
それは私の全く想像しているものではなかった。



待ち合わせから数時間後、私はふりふりの衣装を着てステージの上に立っていた。




37: 2018/04/12(木) 21:17:19.44 ID:R+5dVQFE0


拉致されてからの数時間を端的に話すと、
行き先が小さいライブ会場で、
衣装を着せられて(恐らく恵美のサイズに合わせて作ってあるもの)、
歌はカラオケみたいなものだから好きな歌を恵美と順番に歌えばいいと言われ、
ダンスはこの前やったステップを適当に踏んでいればそれっぽくなると言われ、
私は恵美と一緒にステージに放り出されたのだ。



なんて適当、というか……雑なのだろう。



だだっ広い平な空間にチラホラと客が数人いる。
何の打ち合わせもなしで不安に押しつぶされそうな私は
ステージ脇にいるお兄さんを見るもスマホでどこかに電話している。



38: 2018/04/12(木) 21:18:40.78 ID:R+5dVQFE0


一方、恵美は何回かこういうことをしているみたいなので
少し慣れている風だった。


「やっほー! みんな元気? いやーごめんねー! 待たせちゃって。
 アタシ、765プロの所恵美って言いまーす! よろしくゥー!」



本当に数える程度しか居ないお客さんたちはチラホラと恵美の方に寄ってくる。
ステージもライブハウスのような手すりの柵もなく
上がろうと思えばステージに上がってこれるくらいの距離感。


「あー! この前も居たよね! 元気?アタシのこと覚えてる?
 っかー!覚えてないかー!じゃあ今日ね!覚えて帰ってね!」


39: 2018/04/12(木) 21:19:30.34 ID:R+5dVQFE0


恵美が容赦なく絡んでいくのに対しお客さんは申し訳なさそうに軽く手を振る。
それから恵美は私の腰に手を回して私を紹介する。


「この子は私の友達の琴葉!」


会場には数人の人しか居ないけれど、それでもその目が私に集まるのは、
急に宙へと飛ばされるような威圧を感じる。


固まる私に恵美がマイクを通さずに「簡単に名前だけ名乗ってあげて」と言う。
それを聞いて「た、田中琴葉です」と言うがマイクに私の声は乗らなかった。


恵美が私の手を下から上へ少しぐいっと持ち上げてようやく私の言葉は会場に響くようになる。


40: 2018/04/12(木) 21:20:18.78 ID:R+5dVQFE0


「よ、よろしくお願いいたします!」

「にゃははは!じゃあ何か歌おっか!琴葉何歌えるー?」

「えっ、歌!?」


それからカラオケ音源に合わせて私と恵美は歌を歌った。
国民的アイドルグループの大ヒット曲。私もなんとなく踊りが特徴的で覚えてたりする。


歌はステップにいっぱいいっぱいで音を外すわ、
マイクに乗らないわだし、ステップもぐちゃぐちゃで時々止まって恵美の方を
確認しちゃうくらいだった。

もう一曲は少し格好いいアップテンポな曲。
これは恵美のソロに任せて私はステージ脇に待機。


41: 2018/04/12(木) 21:21:17.39 ID:R+5dVQFE0



「どう?恵美、かっこいい曲も可愛い曲もできるんだぜ」


ステージ袖にあるパイプ椅子に座って汗を拭く私の横に立つお兄さんは、
私のことなんて一切見ていなかった。
ずっとステージを見ていた。


「あの……こんなんでいいんでしょうか。
 お客さんは全然見ていてくれない気がするんですが」

「いや、アレで実はみんな見てるんだぜ。あとでエゴサすりゃあ分かる。
 さて、次でラストの曲にするけど、移動の車で聞いてた曲は分かるか?」

「いえ、でもなんとなく覚えてます」


42: 2018/04/12(木) 21:22:19.92 ID:R+5dVQFE0

「どうせカラオケだからそこに歌詞は出てるけど。ステップは恵美に合わせて
 腕のフリは遅れてもいい、恵美の見よう見真似でいい」

「そんな無茶な……」

「大丈夫大丈夫。難しいフリなんて1個もないから」


そう言うとお兄さんはほらほらと私の背中を押し、
ステージ上に押し出した。
今度は恵美が故意かは分からないけれど、
私の腕のがっちり掴んでステージ真ん中に引っ張っていく。
私は中央まで連れて行かれ恵美に囁かれる。


43: 2018/04/12(木) 21:22:55.54 ID:R+5dVQFE0


「どうせ誰も見てないから、思いっきりやろ? 2人だけのカラオケにしちゃおう」

「いいのそんなこと……」

「大丈夫大丈夫、アタシに任せて」



恵美に引っ張られるように私は、恵美のテンションに付いていく。
「高校生なのに落ち着いている」
なんて良く褒められていい気になっていたんだ、とこの時分かった。


本当は私だって年相応に馬鹿みたいにはしゃぎたいんだ。
そういう居場所を今、恵美がくれている。
本当はこんなに、こんなに私は騒ぎ回りたかったんだ。


44: 2018/04/12(木) 21:23:59.00 ID:R+5dVQFE0



この瞬間、小さなライブ会場で、誰の曲かもよく分からない曲を、
歌って踊り続けて朝日を見る勢いで大騒ぎした。

こんな時間が何時間も続いていけばいいのに。
曲が終わり、打ち合わせで1度も話にしたことない決めポーズを二人で決めていた時、
やっと自分たちがどこにいるのか思い出す。


45: 2018/04/12(木) 21:29:04.44 ID:R+5dVQFE0


会場はまばらな拍手に包まれた。
恵美は何か締めの挨拶をしているが頭に入ってこない。
スポットライトの熱が伝わり、流れる汗が止まらない。息が切れ肩で息をする。


それから私は引っ張られながらステージをあとにする。
そして……。


46: 2018/04/12(木) 21:29:34.99 ID:R+5dVQFE0


「どういうつもりなんですか!?」

「ど、どうって」

「こんなことするなんて聞いてなかったです!」

「こんなことって言いながら最後ノリノリだったじゃないか」

「ぐ……そういう問題ではないんです!私、これでも学校では優等生で通っているんですよ」


「まあ、見たらわかる。な?」

「うん。喋り方が頭いい子なんだよねー琴葉は」


隣に座る恵美も同意する。
夜のファミレスで今日の打ち上げは行われていた。


47: 2018/04/12(木) 21:30:09.72 ID:R+5dVQFE0


「何が問題だったんだよ」


そう言いながらお兄さんはスマホでどこかとやり取りをしている。本当に仕事してる……?


「ですから……こういった芸能活動は学校にも許可が必要ですし」

「え?そうなの?」と恵美。

「一応、親には進学のことも考えていると伝えているんです」



「進学ならすりゃあいいじゃん」と軽く返すお兄さんは恵美にスマホを向け、
カシャと恵美の写真を撮る。
恵美もお兄さんのカメラに合せてピースしたりポーズを簡単に取る。
あ、これSNS載せる用のやつだな。


48: 2018/04/12(木) 21:31:53.50 ID:R+5dVQFE0

「ですが、やるからにはちゃんと築きたいものもあるんです。大学学歴とか……」

「今の成績で問題あるのか?そうは見えないけど」

「問題あるわけないじゃないですか」

「だろうね。じゃあアイドルやってたって変わらないよ」

「そうだよ!やろう?」


恵美はお兄さんのカバンの中から名刺入れを取り出して
私に差し出してくる。貰うのを躊躇う私に恵美は無理やり握らせてくる。

49: 2018/04/12(木) 21:32:49.21 ID:R+5dVQFE0

「アタシさ、琴葉とならずっと楽しくアイドルやってられると思うんだよね。にゃはは」


「演劇部って言ったな? 演劇ってのは難しい。が、楽しさも十分にある。
 たぶんそんなこと君はもうとっくに気がついて出来ればそっちの道に進みたいと思ってるな?」

「えっ、はい」

「近道はアイドルだ。間違いない。
 曲が売れて、顔が売れりゃテレビは君を使う」

「そんなに簡単なものじゃ……」

「頼れる相棒も横にいるんだ。
 いっきに近道しようぜ」


50: 2018/04/12(木) 21:33:20.20 ID:R+5dVQFE0

私はその言葉をあまりにも無責任で、適当で、いい加減な発言だと思いながらも
頭の片隅で「成功している自分」を描いてしまっていた。
忘れかけた童心を取り戻したように妄想が加速する。


それから、ファミレスを出ても、恵美が私に向けた笑顔がしばらく脳裏から離れなかった。
帰宅してからもしばらく恵美のことや、今日のステージのことを考えていた。
あの瞬間、確かにあの場所には私と恵美しかいなかった。


それくらい集中していたということでもあるけど、
何か極限の中の集中という感じではなく、
ふわふわと舞い上がるような心地いい高揚感だった。

51: 2018/04/12(木) 21:33:49.25 ID:R+5dVQFE0

目を閉じて、あの時のステージから見た光景を思い出すだけで、また心臓が鼓動を早める。
私は恵美から貰ったお兄さんの名刺を見る。
事務所の住所を確認する。
そして私は1人、ベッドの上で覚悟を決めた。


――都内某所。


「ははは、待ちくたびれていたよ」


52: 2018/04/12(木) 21:34:15.36 ID:R+5dVQFE0

そう言ったのは事務所で迎えてくれたお兄さんだった。
まあ当然と言えば当然だったのだろうけど、恵美はいなかった。来ていないだけ?


「さて、軽く面接を予定しているけど、大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です」

「君はどんなアイドルになりたい?」

「私は――」

53: 2018/04/12(木) 21:34:49.01 ID:R+5dVQFE0

私は765プロに入った。
偶然出会った恵美と偶然それに着いて行っただけなのに、でもきっとこれもなにかの運命なんだ。
そうやって良いように捉えておこう。

だから私は恵美のために……そう思って始めたアイドルも今じゃ恵美以外にも、エレナもいる、それからプロデューサーもいる。

だから私は……私と、仲間のためのアイドルになるんだ。


54: 2018/04/12(木) 21:36:56.98 ID:R+5dVQFE0
以降通常営業に戻ります。

2: 2018/04/12(木) 15:43:08.04 ID:A8+vi4vxO


登場人物


P(所)
恵美の兄貴。重度のシスコン。
トライスタービジョンを担当。
謎の運と才能があるが恵美のファンからは嫌われている。

所恵美
兄貴もユニットも大好きなハイテンションギャル。
親友の恋も応援する。兄貴には心から信頼を寄せる。

田中琴葉
ツッコミ不憫枠。
あまりネーミングセンスはない。
恵美の兄貴に関わってる内に好きになって行く。愛は重い。

島原エレナ
ハイテンションの過激発言多め。
工口マッサージが得意。
本当にブラジルに6歳までいたのかは謎。
美也や美希とユニットを組んでいるマルチ野郎。


5: 2018/04/12(木) 15:44:45.35 ID:A8+vi4vxO

パピヨンマスクの男(通称パピ)
おそらく千鶴の兄(?)。
赤い彗星みたいな口ぶりでずっとマスクをしている変態。
実兄を恨む千鶴に正体がバレないように兄の評価をあげ
バレた時に殺されないようにするのが目的。
なのでトップアイドルがどうとかはあんまり興味ないが仕事なのでやる。

二階堂千鶴
ご存知二セレブ千鶴さん。
何かの影響で若干、頭は悪いものの常識人枠。
兄をとても恨んでおり、捕まるとしてもSATSUGAIしたい。

天空橋朋花
パピに拉致されて来た本当は15歳の普通の女の子。
あまりに普通過ぎて女王様キャラを強要される悲劇の女の子。
何故か所Pには厳しい。

6: 2018/04/12(木) 15:45:18.59 ID:A8+vi4vxO

その他

松田亜利沙
チケット全般のネタに登場。

宮尾美也
突如現れる神出鬼没なまるで猫のような
そんな猫。正体を知る者は少ない。一応、所P担当。

大神環
可愛いからって恵美が連れてきた子。
複雑な家庭。担当は横山。

引用元: 【ミリマス】恵美「Pと兄貴と妹馬鹿」その3【日刊】