1: 19/08/27(火)17:52:19 ID:oP9
私は高校を卒業した後、東京の大学へ進学しましたわ

最初は東京の都会具合、華やかさに心躍ったものでしたがいつの間にかそれにも慣れ、上辺だけの付き合いや毎日バイトして学校へ繰り返しの生活が段々と機械的なものになり嫌気がさしてきたものです。


そんなときに出会ったのが車――


免許自体は高校卒業前に取得したものの進学時には到底替えるお金も無く、車の購入するのはしばらく期間が空きました


この場合は宗教上の理由とでもいうのですか、親が言うには車は新車で買いなさいという教えのために車選びにはかなり制限が掛かりました。


このご時世、マニュアル車なんて乗るには選択肢がかなり限られますからね。
数種類の車のパンフレットをめくりながら目に飛び込んできたのはこのキャッチフレーズ


「今、マニュアルに乗る」

2: 19/08/27(火)17:53:17 ID:oP9
とても攻めた、率直で心に何か引っかかるフレーズ。


カタログの2ページ目の流れるように走るあの赤に私は釘付けになってしまった――



そんな車のコックピットに座り、自分の思うように走らせるのが今の日課。

身体をすっぽりと包み込むレカロシート。しっかりと身体を密着させてシートベルトを締め、ポジションを合わせる。

それから少し間を置いてエンジンスタートのボタンを押す。


それは"儀式"と呼べるかもしれない。

3: 19/08/27(火)17:53:59 ID:oP9
車は走り出す。1速、2速とシフトチェンジを繰り返す
手のひらから伝わってくるコクリとした感触が心地よい。


ショートストローク化されたシフトレバーはスポーティー感とダイレクト感を演出する。これこそマニュアル車の醍醐味。


回転数を合わせながらクラッチを繋ぎ、右手でミッションのご機嫌を伺いながら丁寧にシフト操作していく。この操作こそがMT車を運転する楽しみ。決してATでは味わえない感触。


そして車を走らせて首都高へ―

4: 19/08/27(火)17:54:42 ID:oP9
一般道に比べてのハイペースなコーナリングと再加速。

固めの足回りから伝わってくる硬派な「コツンコツン」という感触が更に胸を昂らせる。


必要以上の演出がされていない足回りはステアリングの操作と車が動く感覚を分かりやすく教えてくれる。


コーナーが来るのが待ち遠しい。そんな感覚にさせてくれる相棒。


軽さから来る軽快なハンドリング。クロスレシオのミッションが更に回せ、踏めと心に呼びかけてくる。


大人しく走らせれば最近のエンジン特有の燃費の良さ。
回して走れば「もっともっと」と私を急かす。

この車でならどこまでも走れそう、何処へ行くにも怖くない、そう思わせてくれる。

5: 19/08/27(火)17:55:28 ID:oP9
PAに入る。

アフターアイドリングさせ、エンジンを冷やしながら取り出した煙草に火を着ける。


愛車を眺めながらの一服。それは最高の一時。


ボディを様々な角度から眺め、時が過ぎる


自然と口元が緩み 心が満たされていく




数十分が過ぎ帰路へ


身体から伝わる感触、手から伝わる感触。


耳と目で感じる感覚。


ブレーキングしてアクセルを煽って回転数を合わせてシフトダウン。

リズム良く操作を決めて横G感じながらコーナーを駆け抜けていく。

上手く決まったときの高揚感 これは言葉に出来ないとびきりの瞬間


学校のこと バイトのこと そんな日常を一切忘れて自分と車と向き合うこの時間


そんな素敵な時間も終わりを告げようとしている

6: 19/08/27(火)17:56:13 ID:oP9
至福の時間は永遠と来ないものか


家に着いたときに私はこう思う
「ありがとう」と

愛車に背を向けつつ、また明日とびきりの瞬間が来るのを待ち焦がれているのであった

7: 19/08/27(火)17:58:15 ID:oP9
終わりです。

病院の待ち時間に書きました。 書いていくうちに厨二臭いポエム感がマシマシになってしまった。

引用元: ダイヤ「今、マニュアルに乗る」