9:◆BAS9sRqc3g  2019/05/31(金) 23:36:56.92 ID:oks22TxK0


【番外編:伊吹と社長】



「君は何でもできるよね」


そう言われることが多かった。
ただ、それは間違いで、全て努力して出来るようになっただけだ。

そういう負けず嫌いな性格は血筋から来る遺伝で、
俺の姉もまた負けず嫌いでどんどんなんでもできるようになっていった人だ。



Pと兄貴と妹馬鹿シリーズ 

【注意事項】
・日刊更新
・ミリオンライブ四コマ漫画風SS
・キャラ崩壊



10: 2019/05/31(金) 23:38:02.03 ID:oks22TxK0


大学4年の頃、
自分が何になりたいのか分からなかった時のことだ。


急に俺に話しかけてきたのは背の高い初老の男性で、
着ている黒いスーツはくたびれている。

時計は多少高価な物を付けているようだが、
大学生になった頃に株で稼いだ金で買った俺の時計の方が高価だ。


それだけ観察していたところで、このおっさんは俺に言った。



「ティンと来た」



11: 2019/05/31(金) 23:40:28.80 ID:oks22TxK0


「は?」と思った。

こんなおっさんが俺になんの用なんだ。
訳が分からん。

何がティンと来たんだ。
ティンってなんだ。

普通はピンと来るものだろう?


おっさんはニヤニヤしながら俺の横に座る。

それから
「ん? あら? えっと、確か」とブツブツ言いながら
懐やカバンの中を探り、
ようやく出てきた名刺を俺に渡してくる。


12: 2019/05/31(金) 23:42:23.89 ID:oks22TxK0


「私は765プロダクションというアイドル事務所の社長である高木と言う」

「……」


俺は何も答えない。
というか、勝手に横に座って来るなよ。
狭いだろうが。

名刺には確かに765プロダクションと書かれている。
聞いたことの無い事務所だ。

アイドル事務所だと言ったが……俺が?
アイドルに? 冗談ではない。

そんな博打みたいな職になる方がどうかしている。


13: 2019/05/31(金) 23:43:27.79 ID:oks22TxK0

「君、何か思い悩んでいる顔をしていたね」

「……」


俺はそれでも何も答えない。
というか、話を勝手に進めないでくれ。
しかし、俺が答えられないでいたのには、
このおっさんに、見抜かれていたことがその通りだったからだ。


先にも言ったように俺は自分が何になりたいのか分からなかった。
いや、迷っていたんだ。何になるべきか。
何になれば俺は世界に貢献出来るようようになるのか。


14: 2019/05/31(金) 23:44:35.56 ID:oks22TxK0


それは、警察になろうが弁護士になろうが
政治家になろうが自衛官になろうが
どこへ行っても結局俺は慣れてしまう。

なりたい職業に簡単になれて、慣れてしまう。
嫌味に聞こえるならすまない。持つ者の悩みだ。忘れてくれ。

ともあれ、俺はそんな選択肢の中にアイドルになるという
選択肢を用意していなかった。

15: 2019/05/31(金) 23:45:56.36 ID:oks22TxK0


「ああ、もうしかして、もう別のアイドル事務所に?」

 おっさんは申し訳なさそうに名刺を引っ込めようとした。

「すみません、そうじゃなくて俺、
アイドルになるのはちょっと……向いてないというか」

そう断ろうとしたが、そのおっさんは嫌そうな顔をした。


その顔はどういう表情なんだ? 
まさか、俺が普通にその誘いを

「待ってました!」

と受け入れると思っていたのか? 
そんな馬鹿なはずがあるか。


16: 2019/05/31(金) 23:47:04.11 ID:oks22TxK0


「ああ、いやそうじゃなくて君は
アイドルじゃなくてアイドルのプロデューサーにならないか? 
と言いたかったんだ」


思考が一瞬停止した。

俺は勘違いをしていたようだ。
しかも、かなり恥ずかしい部類の勘違いだ。
いや、しかし俺がプロデューサーに? 
つまり、こいつの下に付いて働けと? そう言ってるのか?


17: 2019/05/31(金) 23:48:24.86 ID:oks22TxK0

むしろ俺を何故アイドルとして採用しない? 
こういうとまるで俺はナルシストのように聞こえるが、そこはもう仕方ない。
なぜなら俺は何1つ間違っちゃいないからだ。


その辺の女をアイドルにして俺がそいつの仕事内容を考えて
トップに導くのならば最初から俺がステージに立った方が
早いに決まってるだろ。馬鹿かこのおっさんは。


「今、我が765プロには重大なものが欠けているのだ……」

「……」



18: 2019/05/31(金) 23:50:16.58 ID:oks22TxK0


「それはブレーンだ」


脳だと? つまり俺には全ての指揮権を持たせるということなのか?


俺は一応就職活動をしていたがどこもかしこも
簡単に内定を出しやがるのが、
確かにつまらないゲームのようでもあった。


ただ、人生をかけたひとつのアイドル事務所を
再建からトップに持っていくゲームは
ちょっとやそっとじゃクリア出来ないだろう。

いや、俺ならばやり遂げてみせる自信はある。



19: 2019/05/31(金) 23:50:58.01 ID:oks22TxK0


というか、俺は何者にもなれるわけなんだし、
この際起業するのも有りかなとさえ思っていたところだ。
その方が天下を取るのに早い。


ただ、先にも言ったように
その辺の女をアイドルにしてトップになれるように
プロデュースをするのであれば
間違いなく俺がステージに立った方が早い。


俺がこの世で唯一女性として
素晴らしいと感じるのは完璧な俺の妹である伊吹翼、ただ、1人だけだ。


「ブレーンは勝手に探して欲しいが、俺はそんなものになるつもりは無い」


おっさんは「そうかあ」と言いながら
またカバンから何かを取り出す。

それを俺に見せてきた。




20: 2019/05/31(金) 23:52:42.57 ID:oks22TxK0




おっさんが俺に見せてきた紙は、
伊吹翼と書かれた履歴書だった。





そしてこれは間違いなく翼の書いた文字だった。
変に丸みを帯びた文字で可愛らしいというか、変だ。

この独特の文字、翼の手書きであることは間違いない。
が、何故このおっさんが持っているんだ。



21: 2019/05/31(金) 23:53:13.74 ID:oks22TxK0


「これはね、先日スカウトした女の子がいたのだが、
どうしてもプロデュースしてもらうなら
お兄ちゃんじゃないといやだと言うのだ」

「何っ? 翼をスカウトしたのか」

「そこで私は君を探し出し、君をスカウトしているのだ」



そうか、どうりで俺をアイドルにしないわけだ。
納得がいった。
いや、いくわけあるか。

まず、何で俺の居場所を知っているんだ。
まあ、翼から聞いたのかもしれないし、
翼から写真も見せてもらって人物の容姿を特定していたのかもしれないが。


22: 2019/05/31(金) 23:54:35.61 ID:oks22TxK0


だとしたら、
このおっさんは最初から俺を知っている癖に
見ず知らずの男子大学生をスカウトする体裁で話を振ってきたのか。
人が悪すぎないか。


「俺も……俺がアイドルをプロデュースするならば、
確実にトップを取れるダイヤの原石でなければ
嫌だと少し考えていたところです」


 「じゃあ」とおっさんが言いかけたところでそれを遮る。


23: 2019/05/31(金) 23:55:44.93 ID:oks22TxK0


「でも、翼ならばそれが可能ですね。
間違いなく彼女はトップになります。
それは俺がプロデュースをしなくても、ということですが。
俺がプロデュースすることでその期間が早いか遅いかが変化するだけです」 


「ならば君がいち早くトップにしたまえ」



まだ上司でも何でもないおっさんから命令口調で言われることが実に腹立つが、
俺にはそれをやり遂げる自信があった。

当たり前のように出来る自信が。

おっさんが空中でぶらぶらと持っていた名刺を片手で取る。
取る時に少し力を入れられて簡単には取れなかったのは何のおふざけなんだ。



「俺は……やるからには頂点を取りますよ」






24: 2019/05/31(金) 23:57:14.08 ID:oks22TxK0


次の日、

俺はおっさんの居るという事務所に行った。

おっさんは
「良く来た」
といい社長室でもない応接室で面接もしないままに会社の概要を説明し始めた。

最初から合格、ということか。
まあそんなことはどうでもいい。


だが、社長の隣に猿ぐつわをして座っているサイドポニーの女はなんなんだ。
両手両足を拘束されたままいる。
犯罪じゃないのか? 見た所まだ10代だろこいつ。


25: 2019/05/31(金) 23:58:53.79 ID:oks22TxK0


「君はあまりにも優秀だ。
だが、何でも出来るわけじゃないし、
世の中そう簡単にいくものではない」


「ほう?」



「何でもかんでも上手くいってはつまらないだろう? 私とゲームをしよう」



 何の冗談だ。
何を言っているんだ?



「君には少々足枷をつけてもらうよ。
なにせそうでもしないと他のプロデューサーたちとの
張り合いがないからね」


「張り合い……他のプロデューサーと」




そうか、俺以外にもプロデューサーはいるのか。
まあ当たり前と言えば当たり前だよな。


26: 2019/06/01(土) 00:01:28.75 ID:JxYIGbKz0


「君にはこの春日未来くんを一緒に預けたいと思う。
彼女はその……なんだ?
 まあ言えないけど、気がついたらうちに居たんだ。
そしてそんな彼女を一緒にトップに導くのだ頑張り給えよ」



「……待て」


「待たない。それじゃあ任せたよ」



「ちょ、おい待て!」と言う前に社長は自分の社長室に閉じこもってしまった。


残された俺と拘束具されたままの少女。


27: 2019/06/01(土) 00:04:16.15 ID:JxYIGbKz0


「君、大丈夫か?」


「ん゛ーーー!」



仕方ない。
俺はゆっくりと丁寧にその子の猿ぐつわを取ってやる。
すると深く深呼吸をしたあとにその子は言った。





「なんで外した……? 戻せ!!」






「……」





俺はドン引きした……。

というかこんなやつを俺は一緒に翼と一緒にトップにしないと……いけないのか?
頭がクラクラする。酷い頭痛がする。


彼女の発した言語の意味は理解できるが、
なぜ彼女はこの状態でもまず助けを求めるでもなく
こんな挑発的な発言をしたのか、まずはそれに理解に苦しむのだった。


28: 2019/06/01(土) 00:09:57.64 ID:JxYIGbKz0



……
…………
………………




「ていうのが、俺がここに入った経緯だ」




「……なるほど。春日さんはもう伊吹さんの足枷になることは確定事項で

社長に分かっていながら押し付けられたんですね」




「……そうだ」




「あの、伊吹さん……!」




「どうした七尾? 情けないよな。
妹を脅しの材料みたいに使われてプロデューサーやってるんだぜ俺は」




「そんなことないですよ。最初はどうあれ、

今は私のプロデューサーさんですから!」




「そうか、ありがとうな。さて、くだらん過去の話しは終わりだ。
今日も俺たち3人であの馬鹿2人をしばき回すに行くぞ」

「……はい、頑張りましょう。がんばれ瑞希まけるな瑞希」

「はい、伊吹さん!」



番外編:おわり

29: 2019/06/01(土) 00:16:05.62 ID:uKtorQ1sO
これがギャルゲーの導入ならば、完全に未来ちゃがパッケージヒロイン

2: 2019/05/31(金) 21:24:52.02 ID:oks22TxKo

登場人物


P(所)
恵美の兄貴。重度のシスコン。
トライスタービジョンを担当。
謎の運と才能があるが恵美のファンからは
良くも悪くも嫌われている。


所恵美
兄貴もユニットも大好きなハイテンションギャル。
親友の恋も応援する。兄貴には心から信頼を寄せる。
楽しいことが一番大事。作るはメシは不味い。


田中琴葉
だいたいPの隣にいるので色んなことに巻き込まれやすいツッコミ不憫枠。
恵美の兄貴に関わってる内に好きになって行く。愛は重い。
ネーミングセンスはない。


島原エレナ
ハイテンションの過激発言多め。
工口マッサージが得意。
本当にブラジルに6歳までいたのかは謎。
美也や美希とユニットを組んでいるマルチな才能。

3: 2019/05/31(金) 21:26:18.87 ID:oks22TxKo

伊吹P
翼のお兄ちゃん。才色兼備だがこいつも重度のシスコン。
悩みがつきない。マザーファッカー乙女アスホールの担当。


伊吹翼
好きなタイプはお兄ちゃんみたいな人。割と何でも出来る。
自分は何でもお兄ちゃんの中で一番だと思っていたが
そうでないことを知る。全員がライバル。


春日未来
このSSの癌。暴虐の限りを尽くし、
過去も未来も異世界さえも統べる山賊の王。ユニットのリーダー。
未来はどうしてそうなっちゃったの。


七尾百合子
不憫枠。妄想ジャンキー。
健常者の振りをしてるがユニットの名付け親。
伊吹のことが好きなステゴサウルス。


望月杏奈
ゲームネタに強い癌その2。
百合子に対しては当たりが強い。
伊吹ばかりで百合子が相手をしてくれなくて寂しい。


真壁瑞希
映画紹介スレが終了し参戦。
本当はボケたくて仕方ない。
優等生の殻をうち破りたい。

4: 2019/05/31(金) 21:27:06.35 ID:oks22TxKo

横山P
奈緒のアニキ。怪我での引退からPになった元プロサッカー選手。。
キャン(玉大好き)サー(クル)担当。周りからナメクジ扱いされてるが
世間的知名度はアイドルよりある。


横山奈緒
自称関西の星。ツッコミ枠。
借りてるアパートにエミリーとアオノリと住んでる。
毎日アニキが押し掛けてくる。


エミリー・スチュアート
横山が日本に来る時に英国から連れてきた子。
エミ公と呼ばれるのは意外と気に入ってる。
父親が外交官で国際問題を盾にするところがある。
大和撫子を目指すがキレるとファックって言ってくる。


木下ひなた
実家の農家で鍛えた怪力を駆使し北海道から横山に無理矢理着いてくる。
機械音痴で未だに伝書鳩を使う。
リンゴジュースを作る、拳で。


アオノリ
二階堂から貰ったアイボ。超高性能人口AIを搭載し、
ハッキングから盗聴盗撮、更にはあらゆるネットサービスを使いこなす。

5: 2019/05/31(金) 21:28:15.94 ID:oks22TxKo

二階堂
赤い彗星みたいな口ぶりでずっと蝶のマスクをしていた奴。
実兄を恨む千鶴に正体がバレないように兄の評価をあげ
バレた時に殺されないようにするのが目的だったが、
バレて苦し紛れについた記憶喪失という嘘を突き通すハメになる。
最近ではドラえもん化して色々道具を作ってくれる。


二階堂千鶴
ご存知二セレブ千鶴さん。
何かの影響で若干、頭は悪いものの常識人枠。
兄をとても恨んでおり、記憶を戻してからSATSUGAIしたい。
必殺技は虎牙破斬。


天空橋朋花
二階堂に拉致されて来た本当は15歳の普通の女の子。
あまりに普通過ぎて女王様キャラを強要される悲劇の女の子。
最近板についてきたのが悔しい。


篠宮可憐
二階堂がスカウトしたらしい子。
超人的嗅覚を持つ。この事務所はどこかオカシイと思っている。
イケメンが怖く伊吹で練習し克服しようと努力する。

6: 2019/05/31(金) 21:29:22.45 ID:oks22TxKo

高坂
海美の姉。ものすごく声が小さいので
だいたい海美が通訳する。
海外でバレエをしていたが、海美の可愛さを
広めるために参入。

高坂海美
すごい元気。




北沢りく
北沢志保の弟。公演でサッカーをしていた少年。
横山にサッカーを教えてもらう。

北沢陸
突如入ってきたプロデューサー、みんなの後輩ポジの
しっかり者。正体は不明。ということにしておく。

北沢志保
横山のことを、余計なこと教えたクソ野郎として
ぶち頃したいと思っている。弟に激甘のブラコン。

7: 2019/05/31(金) 21:30:20.96 ID:oks22TxKo

その他

松田亜利沙
チケット全般のネタに登場。
だいたい負けてる。


宮尾美也
突如現れる神出鬼没なまるで猫のようなそんな猫。
正体を知る者は少ない。一応、所P担当。

大神環
可愛いからって恵美が連れてきた子。
複雑な家庭。担当は横山。

佐竹美奈子
近所の佐竹飯店の看板娘。
男性にはついついサービスしすぎちゃう。
飯関連のことでキレるとおっかない。

8: 2019/05/31(金) 23:29:59.53 ID:oks22TxK0

お付き合いいただける方は
今後共よろしくお願いします。

引用元: 【ミリマス】恵美「Pと兄貴と妹馬鹿」その5【日刊】