1: 2012/01/01(日) 20:39:03.60 ID:SKFTytedO
―16:05 海上―

エイラ「ドーバー戦線異常無しダナ」

エイラ「この間の『塔』みたいなネウロイが現れたときはどうなることかと思ったケド」

エイラ「あれのおかげでサーニャト……」

エイラ「サーニャぁ~! なんで宮藤なんかと出撃しようとしたんだヨ~」

エイラ「……ん?」

エイラ「この感ジ……ネウロイカ!」

エイラ「基地でも出現はキャッチしてるはずダ。この方向に直進するト……」

エイラ「12分後にみんなと合流できるナ! それまでは、私がもたせルッ!」

エイラ「そらそらそらそらッ! どうしたどうしたどうしたどうしたァ!」

エイラ「へへっ。この分なラ、合流前に終わ――」

ズギュウウウン

6: 2012/01/01(日) 20:41:43.50 ID:SKFTytedO
エイラ「いやー、先日のネウロイにはやられましタ。はめられましタ」

エイラ「映画とかでよくあるよナ。心を読む敵を倒す手段としテ、そんなの関係ないくらい長射程広範囲の攻撃を繰り出すってのガ」

エイラ「まあ今回はそれをまともに食らっちまったんだけド」

エイラ「以上レポっス」

サーニャ「ばかっ! 何ふざけてるの!?」

エイラ「う……」

サーニャ「心配したんだから…!」

エイラ「……ごめんナ」

サーニャ「……ん」

9: 2012/01/01(日) 20:42:37.82 ID:SKFTytedO
エイラ「それデ、私はどうなったんダ?」

サーニャ「覚えてないの?」

エイラ「被弾したとこまでは覚えてるんだけド」

サーニャ「坂本少佐たちがネウロイと交戦、撃墜した後に、哨戒に出てたエイラのストライカーユニットから救難信号が発信されてたらしいの」

エイラ「ふんふん」

サーニャ「信号のポイントまで向かうと、仰向けになって気絶してるエイラが浮いてたみたい」

エイラ「本当かヨー!? 傷なんてどこにもないゾ?」

サーニャ「それがね、被弾してたのはストライカーユニットだけで、エイラはほとんど無傷だったの。海面に叩きつけられたときの衝撃で打撲してたけど、それは芳佳ちゃんが治してくれたのよ」

11: 2012/01/01(日) 20:43:23.64 ID:SKFTytedO
エイラ「私としたことが、情けねーナ……(宮藤のこと含めて)」

サーニャ「エイラが無事だっただけで、十分じゃない」

エイラ「まぁ、そうだけどナ」

サーニャ「あとは……そうだ、ストライカーのことなんだけど」

エイラ「壊れちまったんだロ?」

サーニャ「うん。それで、新しいストライカーがスオムスから届くまで、1週間くらい基地待機だって」

エイラ「うーん」

サーニャ「仕方ないよ。そのかわり、坂本少佐が『目が覚めたら、私の部屋まで来い』ですって」

エイラ「げ、まさか特別訓練じゃあねーだろうナ……」

13: 2012/01/01(日) 20:44:53.20 ID:SKFTytedO
―物資搬入庫―

エイラ「少佐の部屋に行ったら、何故か部屋にいたミーナ隊長に『たぶん、物資搬入庫にいるはずよ』と言われてきたけド」

エイラ「こんなに荷物と運搬車が多くちゃ、どこにいるのかわかんねーナ」

「これが例の?」

エイラ「ん? 少佐カ?」

坂本「おお、起きたのか。ちょうどいい」

エイラ「しょ、少佐……そノ、まだ体調がイマイチ良くないかラ、特訓ハ……」

坂本「まあそう言うな。とりあえず、私についてこい。おい、こいつを運んでくれ」

エイラ「うう……」

15: 2012/01/01(日) 20:45:25.33 ID:SKFTytedO
―ミーティングルーム―

坂本「このへんでいいだろう。設置を頼む」

エイラ「少佐、こいつは一体何なんダ?」

坂本「ふっ、よく聞いてくれた。これは『対ネウロイ戦闘用模擬実験機』だ」

エイラ「?」

坂本「つまり、この筐体を使うことで、戦闘訓練をより実戦に近付けて行うことができるという代物だ」

エイラ「よくわかんねーナ」

坂本「そうだな……百聞は一見にしかずと言うし、早速使ってみろ」

エイラ「わ、私ガ!?」

16: 2012/01/01(日) 20:46:15.06 ID:SKFTytedO
坂本「ストライカーが届くまで、毎日3時間はここに籠れ。最も、私が直々に特別訓練を行ってやってもいいんだが……」

エイラ「あれ、なんか急に胸が苦しく……」

坂本「茶番はいい」

エイラ「よっし始めんゾ!」

坂本「やれやれ」

エイラ「それデ、具体的にどうしたらいいんダ?」

坂本「まずは座席に着け。ストライカーユニットも備え付けてあるだろう」

エイラ「これカ。随分凝ってるんだナ」

坂本「そうしたら、頭部にあるヘルメットをしっかり下げて被れ」

エイラ「こうでいいのカ?」

坂本「よし。では、起動するぞ」

17: 2012/01/01(日) 20:46:51.59 ID:SKFTytedO
坂本「ストライカーが届くまで、毎日3時間はここに籠れ。最も、私が直々に特別訓練を行ってやってもいいんだが……」

エイラ「あれ、なんか急に胸が苦しく……」

坂本「茶番はいい」

エイラ「よっし始めんゾ!」

坂本「やれやれ」

エイラ「それデ、具体的にどうしたらいいんダ?」

坂本「まずは座席に着け。ストライカーユニットも備え付けてあるだろう」

エイラ「これカ。随分凝ってるんだナ」

坂本「そうしたら、頭部にあるヘルメットをしっかり下げて被れ」

エイラ「こうでいいのカ?」

坂本「よし。では、起動するぞ」

22: 2012/01/01(日) 20:50:00.16 ID:SKFTytedO
エイラ「……うわッ!」

坂本「はっはっは」

エイラ「な、なんだよコレ! いきなりネウロイが……」

坂本「筐体に内蔵されたメモリーからヘルメットに情報が送られ、バイザーを通すことで筐体内面360゜に極めてリアルに映し出される……と取扱説明書にある」

エイラ「う、映し出されるってレベルじゃねーゾ! そこにいるっテ!」

坂本「銃火器やストライカーユニットの性能、敵ネウロイの形状及び攻撃方法、防衛や殲滅といった作戦目的の細かな設定などなど痒いところに手が届く親切設計」

エイラ「説明は後回しでいいかラ!」

坂本「さらに、ウィッチ毎のパーソナルデータを入力することで、固有魔法の使用や自分のニガテが分かる『ニガテ克服機能』を搭載……扶桑にこんな学習教材があったな」

エイラ「ダメだこの上官全然使えネェ!」

23: 2012/01/01(日) 20:50:23.04 ID:SKFTytedO
坂本「ちなみに攻撃は手元のトリガー、移動や魔力の使用は思考……つまりイメージによって行われる、とある」

エイラ「それダ! トリガーは……これだナ。そして、移動……」

坂本「あとは慣れだ。開け放していても意味がないからな、質問がなければ閉めるぞ」

エイラ「……ああ、一人にしてくレ」

25: 2012/01/01(日) 20:50:46.25 ID:SKFTytedO
―数分後―

エイラ「ふぅ」

坂本「一段落ついたか?」

エイラ「なんとかナ」

坂本「では、初めて使ってみた感想と気になった点を聞いておこう。性能に不備があれば、整備班に報告しておかないとな」

エイラ「そうだナ……映像そのものは迫真って感じデ、弾のバラけ具合とかネウロイの攻撃パターンなんかも十分実戦に即していると思ウ」

坂本「ふむ」

エイラ「ただ、ふと冷静になったときに、風圧だとか日射が全く感じられないのに気付いちまうことがあるナ。興ざめって言うのカ」

坂本「なるほど」

26: 2012/01/01(日) 20:51:23.41 ID:SKFTytedO
エイラ「……あと…これは言ってもしょうがないかもしれないけド」

坂本「なんだ?」

エイラ「やっぱり『被弾したとき』『負けたとき』の恐怖が薄れるのガ、少なからずあるんじゃあないカ。こういうの使ってるト」

坂本「……ふっ。501に『痛み』を知らないやつは一人としていないはずだがな? それに――」

エイラ「?」

27: 2012/01/01(日) 20:52:01.68 ID:SKFTytedO
坂本「各人の戦闘内容は全て記録され、逐一私に報告される。つまり……分かるな?」

エイラ「げ」

坂本「そうだエイラ、ペナルティを犯した者への特訓メニューを思案中なんだが、試しに……」

エイラ「ああっなんだか急に頭が痛いゾーこれは医務室で休まないとダメかもナー」

坂本「そうか、残念だ。しかしエイラ、急速は取った方がいい。仮想現実とはいえ、脳には負担がかかっているだろうからな」

エイラ「うーん……じゃあ、そうするカ」

坂本「ご苦労だった」



坂本「さて……そうだ、エイラの戦闘データを確認しておくか。しばらくはこれに頼りきりだろう、パーソナルデータの入力も頼んで……む?」

坂本「……これは…」

28: 2012/01/01(日) 20:54:51.15 ID:SKFTytedO
―食堂―

エイラ「もぐもぐ」

「エイラ!」

エイラ「ン?」

サーニャ「ずいぶん遅い晩ごはんね」

エイラ「サーニャ。いや、少佐が持ってきた機械で訓練してテ……」

サーニャ「少佐が……ああ、ミーティングルームにあったあれのことかしら」

エイラ「そうそウ。あの中にいると、つい時間を忘れちまうんだよナ」

サーニャ「エイラがそんなに集中するなんて、どんな機械なの?」

エイラ「それがかくかくしかじか……」

29: 2012/01/01(日) 20:55:23.34 ID:SKFTytedO
サーニャ「そんなものが開発されていたなんて……確かに訓練には良さそうだけど」

エイラ「1週間したら、前よりも強くなってるかもしれないゾ?」

サーニャ「でも、あんまり無理はしないでね。ちょっと疲れてるみたいだって……」

エイラ「だって……? それ、誰かに聞いたのカ?」

サーニャ「い、医務室のお医者様に……」

エイラ「サーニャ、もしかして私を心配して会いに来てくれたのカ?」

サーニャ「……」コクリ

エイラ「さ、サーニャ……」

サーニャ「エイラ……」

30: 2012/01/01(日) 20:55:57.94 ID:SKFTytedO
「やっぱりダメだよ、覗き見なんて……」

「リーネさんのおっしゃる通りですわ、宮藤さん!」

「でも今動いたらバレちゃうよ?」

エイラ「誰にバレちゃうっテ?」

芳佳「そりゃもちろんエイラさんに……エイラ…さん……?」

ペリーヌ「そ、そうでしたわ。私用事を思い出し」ガシッ

エイラ「ペリーヌ……」

リーネ「あ、あの……私たち」

エイラ「リーネェ……」ギロッ

リーネ「ひっ」

芳佳「さ、サーニャちゃんがエイラさんの居場所を探してて私たちも協力してたんですけどもう見つかったって知らなくて偶然」

エイラ「みやふじィィィ!」

サーニャ「……」

32: 2012/01/01(日) 20:56:43.12 ID:SKFTytedO
―ミーナの部屋―

坂本「ミーナ。少しいいか?」

ミーナ「ちょっと待って………うん、大丈夫ね。どうしたの?」

坂本「エイラのことで話がある。これを見てほしい」

ミーナ「これは?」

坂本「例の機械の戦闘データを映像化したものだ。エイラが一番最初、10分ほど使用したときに保存したんだが……」

ミーナ「エイラさん視点で録画されてるのね。この映像がどうかしたの?」

坂本「エイラの戦闘にしては、あまりに落ち着きが無さすぎると思わないか?」

ミーナ「彼女が使い方に慣れてなかっただけじゃないの? あれって、イメージで動かすとか……無理もないと思うわ」

坂本「私も最初はそう考えたが……少し進めるぞ」

ミーナ「……不安定な飛行を含めて、先ほどと変わらないようだけど?」

坂本「次だ。くるぞ!」

『バシュウウウ……』

ミーナ「!!」

34: 2012/01/01(日) 20:57:18.79 ID:SKFTytedO
坂本「イメージで動かす機械を使っているにも関わらず、エイラが普段使わないシールドを使えている。『シールド』を『イメージ』出来ているということだ」

ミーナ「……そこまで出来ているのに、『飛行』がイメージ出来ていないはずがない。つまり、エイラさんの飛行が不安定な原因は『不慣れ』という理由ではない……」

坂本「数日前のネウロイ攻略時にシールドの訓練をさせたが、結局発動したのは本番一度きりだ。後にも先にも、エイラはシールドを使っていない。本人も、普段から進んで使うつもりはないだろうからな」


ミーナ「…確かに不思議、いえ不可解だとは思う。でも、これだけじゃ『何故上手く飛べないのか』について説明出来ないわ。シールドが使えるには越したことないし……」

坂本「……これは勘、というか経験則だが」

ミーナ「なに?」

36: 2012/01/01(日) 21:00:46.73 ID:SKFTytedO
坂本「エイラはネウロイに怯えているのではないか? 昨日初めて被弾し撃墜されたことが、エイラの中でトラウマになっている」

坂本「そのせいで脳は無意識のうちに防御を優先し、恐怖で縮こまった心を無理矢理奮い立たせて戦おうとしたために、予知しているはずの攻撃ですら満足にかわせない……」

ミーナ「……美緒、このことは…」

坂本「無論、他言はしない。状況を判断するための資料が足りないからな、調べてみなければならん。しかし、いかんせん時間がな」

ミーナ「ストライカーが届いても、一日二日くらいなら隠していられるわ。私もなるべく情報を集めるようにするから、協力してちょうだい。私たち501のために」

坂本「ああ!」

37: 2012/01/01(日) 21:01:35.33 ID:SKFTytedO
―数日後―

エイラ「少佐」

坂本「エイラ…」

エイラ「……わ、私の顔に何か付いてるカ?」

坂本「な、何でもない。どうしたんだ?」

エイラ「私のストライカーユニットっていつ届くんダ?」

坂本「それが、向こうでの開発に手間取っているらしくてな。急がせてはいるが、もうしばらくかかるそうだ」

エイラ「そうカ。ならいいんダ」

坂本「いいのか?」

エイラ「い、いや、良くないナ。明日にでも完成させるさせるように言っといてくれヨ」

38: 2012/01/01(日) 21:02:06.96 ID:SKFTytedO
坂本「お前も、訓練を怠るなよ」

エイラ「うぇーい」

坂本「……」

beep! beep!

エイラ「!」

坂本「ネウロイか!? エイラ、すぐに召集がかかる。作戦会議室に急ぐぞ!」

エイラ「……分かっタ」

39: 2012/01/01(日) 21:02:51.59 ID:SKFTytedO
―作戦会議室―

ミーナ「それでは今回の作戦を説明します。敵性ネウロイは、方位西北西、距離200km、高度230mの地点を時速500kmの速さで………」
エイラ「……」

サーニャ「エイラ?」

エイラ「……はぁ、はぁ…」

サーニャ「エイラ……?」

エイラ「…ん、エ? な、何か言ったカ?」

サーニャ「何だか顔色が悪いみたいだけど……」

エイラ「ち……ネウロイと戦えなくて、残念なだけだっテ」

サーニャ「無理はしちゃダメよ?」

エイラ「うん……」

40: 2012/01/01(日) 21:03:38.89 ID:SKFTytedO
ミーナ「……バルクホルン大尉、ハルトマン大尉、フランチェスカ中尉、ビショップ曹長、宮藤曹長、以上5名は直ちに敵性ネウロイの殲滅に向かって下さい。その他は第一級戦闘配置のまま基地で待機。質問が無いようでしたら、作戦を開始します」

バルクホルン「問題無い」

ミーナ「では、各員持ち場について下さい
坂本「エイラ、お前は部屋に戻れ」

エイラ「……っ」

サーニャ「少佐!」

坂本「ん?」

サーニャ「その……ぎりぎりまでエイラが側にいたらダメですか。格納庫で、一緒に」

坂本「……作戦に支障を出すなよ」

サーニャ「ありがとうございます! 行こう、エイラ」

エイラ「う、うン」

41: 2012/01/01(日) 21:07:34.63 ID:SKFTytedO
―ストライカー格納庫―

エイラ「……」

サーニャ「エイラ」

エイラ「」ビクッ

サーニャ「何に怯えてるの?」

エイラ「だ、誰が」

サーニャ「エイラが。真っ青な顔ではぁはぁ言ってるし、召集がかかってからずっとビクビクしてるし」

エイラ「た、ため息だよため息。ストライカーさえあれば、私が進んで出撃するんだけどナー」

サーニャ「嘘つかないで」

エイラ「……嘘じゃなイ」

43: 2012/01/01(日) 21:08:43.83 ID:SKFTytedO
サーニャ「本当に?」

エイラ「本当ニ」

サーニャ「じゃあ、ネウロイともちゃんと戦える?」

エイラ「……戦えル」

サーニャ「……」

エイラ「……」

『基地内の全兵及びウィッチに告ぐ。目標の撃墜が確認されたため、現時刻をもって第一級戦闘配置を解除する』

サーニャ「あ……」

エイラ「終わった…みたいだナ」

サーニャ「大尉たちの報告があるかもしれないわ。行きましょう」

44: 2012/01/01(日) 21:09:10.88 ID:SKFTytedO
―作戦会議室―

バルクホルン「――私からは以上だ」

坂本「ふむ。特に問題はなさそうだな」

ミーナ「そうね。それでは皆さん、お疲れ様でした」

坂本「今日の訓練は早めに切り上げて、各自休息に努めろ。それからエイラ」

エイラ「!」

坂本「お前は残れ。ストライカーの件で話がある」

45: 2012/01/01(日) 21:10:13.67 ID:SKFTytedO
―ミーナの部屋―

坂本「さて……何故呼び出されたか、分かっているな?」

エイラ「す、ストライカーだロ」

ミーナ「……悪いけど、あなたの戦闘記録を見せてもらったわ。例の機械のね」

エイラ「……ッ」

ミーナ「ずいぶんと不調みたいだけれど、まだ操作に慣れていないの?」

エイラ「そ、そうなんダ。まだイマイチ……」

坂本「……」

ミーナ「……」

エイラ「…う……」シュン

46: 2012/01/01(日) 21:10:50.84 ID:SKFTytedO
坂本「……私たちは仲間だろう、エイラ。誰もお前を責めてなどいない。お前独りで戦う必要がどこにあるというんだ?」

エイラ「で、でも、これは私ノ……」

ミーナ「確かに、最終的に恐怖を克服しなければならないのは自分自身。それじゃあなたは、自分独りで戦って、サーニャさんを守れるの?」

エイラ「……!」

ミーナ「……501の大切な仲間が苦しんでいるのを、手をこまねいて見ている訳にはいかないわ。私たちにも、手伝わせてくれないかしら」

エイラ「……ありがとウ…中佐、少佐…」

坂本「よし! そうと決まれば早速」

エイラ「ひ、一つだけ……サーニャ、いや、他のみんなには黙っててくれないカ」

ミーナ「話すなと言われたらそうするけど、サーニャさんに隠し続けられるの?」

エイラ「折を見て私から話ス。それまで、余計な心配をかけたくないんダ」

ミーナ「分かったわ。美緒もお願いね」

坂本「ああ。それで、特訓の内容だが……」

47: 2012/01/01(日) 21:11:33.09 ID:SKFTytedO
―エイラの部屋―

エイラ「……」

エイラ(サーニャは哨戒カ……)

エイラ(結局、あれきりサーニャと顔を会わせなかったけド)

エイラ(やっぱり変に思われてるだろうナ……)

エイラ(早いとこ説明して、誤解を解かないト)

エイラ「ふあーあ」

エイラ(とりあえず今日は、久しぶりにゆっくり休めそうダ)

48: 2012/01/01(日) 21:11:54.74 ID:SKFTytedO
―同時刻・海上―

サーニャ「……」

サーニャ(エイラ、ちゃんと眠れてるかしら)

サーニャ(ここ数日、毎晩うなされてたみたいだし……)

サーニャ(それにしてもエイラったら、また私に隠し事してるみたい)

サーニャ(……でも、あれだけ問い詰めても話してくれなかったんだから、自分から切り出してくれるのを待つしかないかな)

サーニャ(……? この感じ…)

サーニャ「ネウロイ……!?」

50: 2012/01/01(日) 21:15:16.37 ID:SKFTytedO
―01:32 エイラの部屋―

エイラ「……ん? 基地が騒がしいナ。何かあったのカ?」

エイラ「おーイ、誰かいないカー」

エイラ「そうダ、とりあえず作戦会議室に行ってみよウ」

エイラ「……あ、ペリーヌ」

ペリーヌ「ちゅ、中尉!?」

エイラ「なんでそんなにびっくりしてんだヨ。まあいいや、みんなどうしたんダ?」

ペリーヌ「それが、哨戒に出ていたリトヴャク中尉から、大型ネウロイがこちらに進行しているとの連絡を受けて」

51: 2012/01/01(日) 21:15:38.85 ID:SKFTytedO
エイラ「……ちょ、ちょっと待てヨ。夜間哨戒でネウロイに遭遇した場合、可能な限り出撃中の戦力で撃退しろって話じゃなかったカ!?」

ペリーヌ「ですから、目標のネウロイがそれだけ強力だということでしょう。目標はリトヴャク中尉が追尾していますが、中尉の戦力だけでは」

エイラ「サーニャは無事なんだよナ!?」

ペリーヌ「く、苦しいですわ」

エイラ「あ……っと、悪イ…」

ペリーヌ「……コホン。中尉のポイントには、既にイェーガー大尉、バルクホルン大尉、ハルトマン大尉が向かわれています。リトヴャク中尉からの信号も途切れず発信されていますから、心配いりませんわ」

エイラ「そ、そうカ……」

エイラ(……ン?)

エイラ「ちょっと待ってくレ。一ついいカ」

ペリーヌ「何ですの?」

エイラ「なんで私は起こしてくれなかったんダ?」

52: 2012/01/01(日) 21:16:12.67 ID:SKFTytedO
ペリーヌ「……全く、少佐のおっしゃった通りですわ。『エイラはサーニャのことになると泳いででも助けに行こうとするから、あいつは起こすな』と言われましたのよ」

エイラ「……」

ペリーヌ「一応警戒体制維持の命令が出ていますから、そろそろ私は格納庫に行かなければなりませんの」

エイラ「そっカ。ありがとナ、ペリーヌ」

ペリーヌ「な……ご、501の仲間として、当然ですのよ!」

エイラ(……中佐たち、ちゃんと黙っててくれてるみたいだナ。一瞬疑いかけちまっタ)

エイラ(本当は起きない予定だったかラ、私も寝てた方がいいんだろうけド)

エイラ(補給の為にサーニャも戻ってくるだろうシ、しばらく待ってみるカ)

53: 2012/01/01(日) 21:18:28.14 ID:SKFTytedO
―02:20 海上―

サーニャ「ありがとうございました、大尉。昼間も出撃されていたのに、すみません」

バルクホルン「なに。私がそれだけ激戦に慣れていると、ミーナに評価されている証だからな」

ハルトマン「意訳すると『戦いバカだから』だね」

バルクホルン「どうやらもう一戦交える必要がありそうだなぁ、ハルトマン……」

ハルトマン「も、もう夜だしさ、迷惑だよ」

バルクホルン「ふふふ……基地に帰る頃には決着も付いているだろうからな、安心していいぞ……ハルトマン!」

ハルトマン「うわぁぁぁぁ」

サーニャ「……」

シャーリー「なんか元気ねーな。こんな真夜中に騒がしいのもなんだけどよ」

サーニャ「イェーガー大尉」

56: 2012/01/01(日) 21:24:50.28 ID:SKFTytedO
シャーリー「エイラとなんかあったのか?」

サーニャ「えっ」

シャーリー「お前がそんな顔してるのなんて、オラーシャのこと考えてるかエイラのこと考えてるか、その辺しかねーだろ」

サーニャ「……」

シャーリー「エイラなぁ。撃墜どころか被弾だって初めてだろ? もしかして、ビビっちまってんじゃあ……」

サーニャ「……っ」キッ

シャーリー「…おいおい、そんな睨むなよ。こんなの冗談だって」

57: 2012/01/01(日) 21:25:32.13 ID:SKFTytedO
サーニャ「多分、当たってます」

シャーリー「え?」

サーニャ「普段の様子はほとんど変わってないように見えますけど、ネウロイって言葉に反応するようになって、今日なんか今にも倒れそうでしたし……」

シャーリー「……参ったな」

サーニャ「でも、エイラは私に話してくれないんです。それとなく聞いてみても、はぐらかしてばっかりで」

サーニャ「……ちょっぴり、距離が縮まったと思ったんですけどね…」

シャーリー「不安なのか、エイラを支えていられないのが」

サーニャ「…はい」

シャーリー「エイラが独りで戦ってるのを見ているだけなのが辛いか?」

サーニャ「……」

シャーリー「なら、そいつを伝えてやるしかねーだろ!」

サーニャ「!」

58: 2012/01/01(日) 21:26:01.63 ID:SKFTytedO
シャーリー「エイラがお前に嘘ついてまで隠しておきたいことなんて、お前に知れたら二度と顔向け出来なくなるってくらい、あいつにとったら辛いことなんだろ」

シャーリー「だから、お前が何を話したところでエイラは聞く耳持たないかもしれない。でもな!」

シャーリー「自分の気持ちを伝える方法に、何も『言葉』を選ぶ必要なんかねーよ。お前も、あいつもな」

サーニャ「……」

60: 2012/01/01(日) 21:26:40.92 ID:SKFTytedO
シャーリー「ちょっと前に、私がジェットストライカーで事故ったことあったろ」

サーニャ「はい」

シャーリー「ああいう事故は初めてじゃなかったけど、あのスピードがコントロール出来なくなって暴走し始めたときは、正直言って怖かったよ」


サーニャ「大尉にも怖いものがあるんですね」

シャーリー「私だって人間なんだぞ。ネウロイが脅威じゃないって言ったら嘘だし、皆が傷つくのもいやだ。おっと、話が逸れたな」

62: 2012/01/01(日) 21:28:23.08 ID:SKFTytedO
シャーリー「で、そういった事故を何度も経験しても、戦えなくなったことは一度だってない。なんでか分かるか」

サーニャ「……ルッキーニちゃんが、いてくれたから…?」

シャーリー「半分正解だ。私の隣にいるのはルッキーニだけじゃあない。お前もエイラも、あのいけすかないカールスラント軍人も、例え言葉に表さなくたって、そばにいてくれるなら気持ちは伝わる」

シャーリー「それだけで私は、どこまでだって飛べるんだ」

シャーリー「だからなに、その、あれだ。千の言葉で愛を囁くよりも、黙って肩を抱いてやるほうが心はダイレクトに通じ合えるってことだよ!」

サーニャ「あ、愛……」

シャーリー「……なんか、ガラにもなく熱くなっちまったな。このことはみんなには内緒だぞ」

サーニャ「……はい。ありがとう、ございます」

シャーリー「ん。さて……それじゃあ、基地までふっ飛ばして行くかぁ!」

サーニャ「えっ」

63: 2012/01/01(日) 21:29:06.83 ID:SKFTytedO
シャーリー「王子様がお待ちかねだぜ。捕まりな!」

サーニャ「は、はいっ!」

バルクホルン「ん? おい、リベリアン! 勝手に先行するな!」

ハルトマン「シャーリー?」

シャーリー「悪いなお前ら! 急がないと、お姫様の魔法が解けちまうからよ!」

64: 2012/01/01(日) 21:33:25.71 ID:SKFTytedO
―02:44 ストライカー格納庫―

シャーリー「じゃあ、私は中佐たちに報告に行ってくる。初体験は雰囲気が大事だからな、上手いことやれよ」

サーニャ「はい。本当に、ありがとうございます!」

シャーリー(今のはからかったつもりなんだけど)

サーニャ「……」

サーニャ「…エイラ……」

「サーニャ…?」

サーニャ「!」

65: 2012/01/01(日) 21:34:50.25 ID:SKFTytedO

エイラ「……サーニャ、わ、私…」

サーニャ「いいの」ギュッ

エイラ「…!」

サーニャ「……これで、伝わるでしょ?」

エイラ「……うん。ごめ…いや、ありがとナ」

サーニャ「……ね」

エイラ「……こ、これ、目は閉じたらいいのカ…? い、いくゾ……」

サーニャ「…ん……」

66: 2012/01/01(日) 21:35:30.43 ID:SKFTytedO
―07:19 エイラの部屋―

チュン……チュンチュン…

「エイラ」

エイラ「……う」

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉」

エイラ「ムニャ……なんダ、サーニャは甘えんぼだナ……」

「すぅ……エイラぁっ!」

エイラ「!!」ガバッ

坂本「……訓練初日から朝寝坊とは、いいご身分だな」

エイラ「サー、じゃなくテ、少佐!? なんでここニ……」

67: 2012/01/01(日) 21:36:10.14 ID:SKFTytedO
坂本「以前から暖めておいた特訓内容を見直して克服に役立てようというのに、お前というやつは……」

エイラ「そういうつもりじゃ無くテ、昨晩はゴタゴタしてて寝たのが遅かったかラ……あト、もうちょっと静かに」

坂本「問答無用!!」

エイラ「こ、声が大きいっテ!」

坂本「速やかに身支度を済ませ、0740までに滑走路に集合するように!」

エイラ「だからうるさ」

坂本「返事はどうしたぁ!」

エイラ「は、はイッ!」

68: 2012/01/01(日) 21:36:36.18 ID:SKFTytedO
坂本「1秒遅れる毎に、訓練時間は10分伸びるからな。明日以降も遅れることの無いよう、肝に命じておけ」

バタン

エイラ「……ハァ」

エイラ「っテ、一息ついてる場合じゃねエ! サーニャ、また後でナ!」

バタン

サーニャ「……ふふっ」

69: 2012/01/01(日) 21:37:34.84 ID:SKFTytedO
―数日後―

サーニャ「お疲れ様、エイラ」

エイラ「聞いてくれよサーニャ。今日のネウロイがまたいやらしいやつでナ……」

ルッキーニ「ねーねーシャーリー」

シャーリー「ん?」

ルッキーニ「あの二人、ここ何日かでますます仲良くなったみたいだけど、なにかあったのかな?」

シャーリー「……んふふ、もしかするとあいつら『一線』ってやつを越えちまったんじゃあねーか?」

ルッキーニ「え、なにそれ。どういうこと?」

シャーリー「さーなー」

ルッキーニ「いじわるしないで教えてよー!」

サーニャ「あ、ミーナ隊長、『坂本』少佐」

エイラ「!!」ビクン

71: 2012/01/01(日) 21:38:18.37 ID:SKFTytedO
坂本「おお、丁度いいところに来たな」

ミーナ「あなたたち、昼食は済ませた?」

シャーリー「ああ。私とルッキーニは今食べてきたぜ」

ルッキーニ「ビーフコロッケだったよー」

サーニャ「エイラはさっき訓練を切り上げて、私も終わるのを待っていたのでまだ……エイラ?」

エイラ「はぁ、はぁ……ぐふっ」

シャーリー「おい、なんか顔真っ青だぞ」

ルッキーニ「だいじょぶ?」

サーニャ「『坂本』少佐、何か御用ですか?」

エイラ「うっ……」ガクガク

73: 2012/01/01(日) 21:39:10.87 ID:SKFTytedO
坂本「実は先ほどエイラのストライカーが届いてな。午後からは基礎体力作りと模擬実戦に加えて航空訓練も」

エイラ「う…あ……」

シャーリー「目が虚ろになってきたぞ」

ルッキーニ「おーい、エイラー」

サーニャ「……」

坂本「そうだ、今夜はサーニャが哨戒に出る予定だったな。エイラも連れて行って」

シャーリー「相変わらず『坂本』少佐は厳しいなぁ」

エイラ「あぐ、う、うわぁぁぁぁ!」ダッ

シャーリー「あっ、逃げたぞ」

ルッキーニ「ウジュジュアー、待てー!」

ミーナ「美緒……」

坂本「一人はみんなのために、みんなは一人のために。これこそが美しいチームの在り方だな! はーっはっはっは!」


おわり

77: 2012/01/01(日) 21:57:45.88 ID:r39Jiw4O0


たしか本当にこういう病気あるんだよね?

引用元: エイラ「わ、私がネウロイを怖がってるだっテ? そんな訳……」