1: 2014/12/24(水) 23:27:32.57 ID:K2JjDLa60
悪魔のリドルssです。


一部のキャラは少しキャラ崩壊しています。苦手な方はご注意を。


短めの山も谷も無いコメディですが、よろしければお付き合いください。



2: 2014/12/24(水) 23:28:52.95 ID:K2JjDLa60
兎角「何してるんだ、一ノ瀬」


晴「あっ、兎角さん。クリスマス用に靴下を準備してるんですよ」


兎角「靴下?」


晴「はい。だって今日はクリスマス・イヴじゃないですか。プレゼントをもらうならちゃんと用意しておかないと!」


兎角「お前、まだサンタなんて信じてるのか」


晴「勿論です! えへへ、晴のところにもサンタさん、来てくれるといいなぁ……」


兎角「…………」

3: 2014/12/24(水) 23:37:17.13 ID:K2JjDLa60
点呼が終わると、晴はサンタクロースにプレゼントを貰う為、早々に寝てしまった。


しかし、それはこちらにとっても好都合だ。晴を起こさないよう、私は用事を速やかに済ませるべく、静かに寮を抜け出した。


兎角「さて……」


そして、用事を済ませた私は今、金星寮の敷地の入り口に居る。


開いている店が中々発見出来ず時間がかかったが、目的の物は何とか手に入れることが出来た。


時刻は既に十二時を過ぎている。あまり部屋を留守にすると晴に気付かれてしまうかもしれない。急がなくては。


思い、足早に金星寮の敷地に足を踏み入れる、と。


「あっ」

「あっ」

6: 2014/12/24(水) 23:50:52.94 ID:K2JjDLa60
そこで出会ったのは――。


兎角「……寒河江」


春紀「おお、誰かと思えば兎角サンじゃないか」


金星寮の方から、荷物を持った寒河江春紀が歩いてきた。


春紀「どうしたんだい? こんな夜更けに」


兎角「野暮用だ。お前こそどうしたんだ」


春紀「あたしはこれから家族のとこに行くんだよ。ほら、今日クリスマスだからさ。あたしが寒河江家のサンタってわけ」


それでその大荷物というわけか。


春紀「兎角サンは……あー、成程」


寒河江は私の持つ紙袋を見るなりニヤッと笑みを浮かべる。


兎角「何だ」


春紀「いやいや別に。冬でもお熱いねェ、一号室は」


何か反論してやろうと思ったが、それよりも早く寒河江が「じゃーなー」と笑いながら私の肩をぽんっと叩いて歩き去ってしまった。何だか心を見透かされたようで少し腹が立つ。


しかし、こんなところで道草を喰ってるわけにはいかないので、私は再び金星寮へと歩き出した。


すると――。

7: 2014/12/25(木) 00:05:27.62 ID:c9N0TZA+0
「あっ」

「あっ」


2マスくらい進んで即エンカウント。


時間にして3秒も経ってないぞ。


兎角「…………理事長?」


百合「あらこんばんは、東さん」


ミョウジョウ学園の理事長こと百合目一と出くわした。


百合「こんな夜遅くにどうしたのかしら東さん。女の子の一人歩きは危なくてよ」


兎角「いや私には用事が……それより理事長その恰好」


百合「あら、だって今宵はクリスマスでしょう?」


平然と言う理事長はサンタルックだった。


しかも何故かミニスカート。ミニスカサンタ理事長だ。寒くはないのだろうか。


百合「ところで東さん。話は変わるのだけど、悪魔のリドル~黒組公式ガイドブック~はもう読んで?」


兎角「あんたは一体何を言ってるんだ」


何だガイドブックって。でも理事長はそんな私の疑問には答えずに話を進める。

8: 2014/12/25(木) 00:14:59.72 ID:c9N0TZA+0
百合「それによれば鳰さんの平均睡眠時間は何と2時間。私は眩暈がしてしまいましてね」


兎角「はあ……」


百合「だから今から鳰さんの部屋にプレゼントを渡しに行くついでに、少しお灸を据えてあげる予定なの。どうせ一人部屋なのを良いことに今日も夜更かしをしているでしょうからね」


あんたは走りの母親か。


百合「ああそれと」


まだ何かあるのか。


百合「晴ちゃんとはどのくらいまで進展しているのかしら?」


兎角「は?」


百合「私も四六時中二人を見ていられるわけではありませんから。どうか晴ちゃんと仲良くね」


兎角「いやあの――」


百合「ああでも杞憂だったかしら。“それ”があるなら」


紙袋を一瞥して小さく笑みをを浮かべる理事長。


兎角「いやこれは……」


最後まで言い終わる前に「それじゃあね東さん。あなた達の営みにはいつも期待しているわ」と言い残して、ミニスカサンタ理事長は行ってしまった。


それと、何だかプライベートなことを赤裸々にされたような奇妙な感覚があるが、今はとにかく部屋へ戻る為に私は再び足を進めた。

9: 2014/12/25(木) 00:25:55.44 ID:c9N0TZA+0
しかし、人と会う度に紙袋についてからかわれるのは何故だろうか。中身も分からない筈なのに。


何にせよ紙袋について言及されることは、私の精神衛生上あまりよろしくないので、次からはもっと注意しなければ。


と、思った矢先――。


「あっ」

「あっ」


二度あることは三度ある。またしてもエンカウント。


私は紙袋を咄嗟に体の後ろに隠す。今度の来客は――。


兎角「……番場か」


真夜「よお、東じゃねえか」


私は少し胸を撫で下ろす。番場なら、そういったことに関してあまり口を挟まないと思ったからだ。

10: 2014/12/25(木) 00:31:11.01 ID:c9N0TZA+0

真夜「で、その紙袋の中身は何なんだよ」


がっつり挟んできた。


兎角「……何故そんなことを聞く?」


真夜「ひひっ、真昼が気になるんだとよお」


指摘したのは真昼の方だったのか。何か意外だな。というかまだ起きてたのか。


兎角「別に何だっていいだろう」


真夜「そりゃあ残念。良い聖遺物になったかもしれねえのになあ」


狂気的な笑顔を浮かべながら物騒なことを言う真夜。だがそれよりも、私には突っ込みたいことがあった。


兎角「お前その恰好……」


真夜「これか? こいつは純恋子の奴が用意してくれたんだよ。冬の寒さも平気なんだぜえ」


と、相変わらずの笑顔でサンタルックの番場は振舞う。理事長といい、クリスマスにサンタの格好をするのが流行っているのか? 私たちは来てもらう立場なのに?


真夜「こいつがあれば心おきなくランニングに行けるぜえ」


兎角「待て、今からか?」


真夜「純恋子がパーティを企画しててな。豪勢な御馳走が出るそうだ。そうすると――」


兎角「すると?」

12: 2014/12/25(木) 00:41:35.05 ID:c9N0TZA+0
真夜「確実にデブる。だから今のうちに脂肪は燃焼させておくってわけだ」


じゃあにぃー、と言い残して真夜は走り去っていった。今思えば、真昼が紙袋のことを指摘したのはささやかな抵抗だったのかもしれない。


少し同情しつつ、私は再び足を進める――が。


「あっ」

「「あっ」」


どういうわけか、さっきからちっとも前に進めない。


どいつもこいつも夜中に抜け出し過ぎだろう。私が言えた義理ではないけども。


出会ったのは――。


兎角「……首藤、と桐ヶ谷か」


涼「おや、東ではないか」


柩「こんばんは、東さん」


桐ヶ谷はいつも生田目にくっついているので、珍しい組み合わせだと思った。


しかし、気は抜けない。比較的常識人寄りな二人だが、意外にこういう人物が何食わぬ顔で人の痛いところを突いてきそうだったからだ。


なので、取り敢えず私は先手を打つことにした。

14: 2014/12/25(木) 00:51:44.69 ID:c9N0TZA+0
兎角「どうしたんだ、こんな夜遅くに」


涼「わしはこれから墓参りに行くところじゃ」


兎角「こんな夜中に?」


涼「香子ちゃんは真面目だからのう。当然夜の外出なぞ許してくれなかったから、思いのほか時間がかかってしもうたわ」


兎角「昼に行けば良かったんじゃないのか」


涼「昼間は香子ちゃんとゆっくりしてたんでな」


兎角「桐ヶ谷は?」


柩「ぼくも似たような感じです。ぼくが寝付くまで千足さんが隣で添い寝をしていてくれたんですけど、寝たふりをして千足さんが眠ったところでこっそり抜け出してきました」


兎角「そうか」


柩「でも千足さんの寝顔を眺めていたら、思ったより遅くなってしまって……」


いやそこまで聞いてないが。


柩「いつもは凛々しくて格好いいけど寝顔は少しあどけなくてですね、そのいつもとのギャップが胸に来るものがあって気が付いたら1時間は見入ってましたよ。千足さんは本当に素敵な人だと再認識できました。ああでも、可愛い千足さんも良いんですけど、やっぱりいつも見せてくれるあの爽やかで包容力のある笑顔もとても素晴らしいことを再認識して、自分の中の千足さんとの思い出を初めて出会った時から一つ一つ丁寧にそれはもう鮮明に再確認してたら更に1時間くらい――」


兎角「私も野暮用で出てこれから戻るところだ、それじゃ」


あのまま話を聞いていたら、それこそ1時間くらい待たされそうだったので、私は強引に話を終わらせて足を進めた。

15: 2014/12/25(木) 01:02:18.21 ID:c9N0TZA+0
涼「それじゃあの。一ノ瀬、喜んでくれるといいな」


柩「東さんからの贈り物なら、きっと何だって喜んでくれますよ」


ギギギと、私の首が錆びたネジの様に回る。振り返れば、こちらに向けられる生暖かい二つの笑顔。


小柄な外見の割に、この二人は妙に大人びているような気がするのは私の気のせいだろうか。

16: 2014/12/25(木) 01:08:31.62 ID:c9N0TZA+0
そして、やっとのことで金星寮の玄関に到着した。


当然ながら既に玄関の鍵は閉まっているので、私は出ていく時と同じようにベランダから部屋に戻る為、寮の側面に回り込む。


「あっ」

「あっ」


これからは夜出歩くことは控えようと思った。


兎角「……剣持か」


しえな「あ、東か……!?」


かどを曲がると剣持しえなと出くわした。何かすごく慌てているようだった。


しえな「ちょうど良かった! 武智の奴が――」

17: 2014/12/25(木) 01:15:22.63 ID:c9N0TZA+0
兎角「それじゃ」


しえな「プレゼントはボクのおさげが良いとか言い出して――って、おおい!」


兎角「世知辛いようだが、これも裏の世界の悲しい宿命。強く生きろよ」


しえな「本音は?」


兎角「正直もうめんどくさい」


乙哉「しーえーなーちゃーん、どーこー?」


しえな「ひっ、来た……!」


まずいな、ここは1号室の真下。ここで騒げば晴が起きてしまうかもしれない。


仕方なく私はその場から走り出す。何故か剣持もついてくる。ええい、ついてくるんじゃない。


ああ、私はいつになったら晴の元に帰れるのだろうか……。

18: 2014/12/25(木) 01:25:14.16 ID:c9N0TZA+0
晴「兎角さん! 起きて起きて!」


兎角「う……」


自分のベッドで寝ていたところを上機嫌な様子の晴に起こされた。


結局あの後、真冬の外で1時間程鬼ごっこする羽目になり、その後犬飼伊介の親を名乗る人物と出くわして、犬飼の部屋を教えてから心身ともにくたくたの状態で帰宅した。


因みにそいつもサンタの格好をしていた。本当に流行ってるのか、サンタルック。


晴「見て兎角さん! 晴、サンタさんからプレゼント貰えたんだよ!」


兎角「そうか……」


サンタクロースからのプレゼント――だと思っている――晴の手にはオレンジ色のマフラーが握られていた。
余程嬉しいのか、部屋の中だというのに暖色のマフラーを身に着けてはしゃいでいる。


その笑顔を見ると、私の疲労も幾分和らいだ気がした。
晴にはそういう明るくて暖かな色が似合うと思っていたので、喜んでもらえて何よりだ。


兎角「良かったな」


晴「うん! 兎角さんは何を貰ったの?」


兎角「私か? 私は何も――」


晴「ええっ!」


私の分のプレゼントがないと知ると、さっきまでの明るい雰囲気が一転して、まるで自分のことのように晴は落ち込んでしまった。

19: 2014/12/25(木) 01:30:51.77 ID:c9N0TZA+0
兎角「まあ、元々私はサンタなんて信じていなかったしな」


晴「でも、兎角さんはいつも晴の為に頑張ってくれてるのに、晴だけにしかプレゼントが貰えないなんて……」


兎角「私のことは気にするな。欲しかったものが手に入ったんだから、もっと喜んだ方がいいぞ」


お前の笑顔を見れるだけで私は十分満足だから、などという台詞は私は生田目ではないので言葉には出来ないが、ともあれ晴には笑顔でいてほしかった。


しかし、その肝心の晴は私に遠慮しているのか中々顔を明るくしてくれない。


こんなことなら私の分も適当に用意しておくべきだったと後悔していると、晴は何か思いついたように声を上げた。


晴「兎角さん、ちょっとこっちに来てくれるかな」


兎角「ああ」


晴の言われるがままにベッドを出て晴の元まで歩いて行く。
すると、晴はマフラーを外して私の肩に寄り添うと、私と晴両方の首にマフラーがかかるようにしてマフラーを巻き直した。


兎角「お、おい一ノ瀬……」


晴「えへへ、サンタさんは晴と兎角さん二人にこのマフラーをくれたんだよ、きっと」


触れ合った肩から晴の体温が伝わってくる。
息遣いが分かる程、晴の顔が間近にあった。大好きな香りも。


何だか自分の顔が熱くなるのを感じた。部屋の暖房が効き過ぎているせいだ、きっと。
それに心臓の音もやけにうるさい。

20: 2014/12/25(木) 01:39:53.10 ID:c9N0TZA+0
晴「それじゃ、パーティの買い出しに行こっか」


兎角「……パーティ?」


晴「今日やるクリスマスパーティのことですよ。兎角さん珍しく寝坊してたから、まだ眠いですか?」


兎角「いや、私は大丈夫だ。それより、この格好で外を出歩くのは、流石にその……」


私が指摘すると、晴は小さく「あっ」と声を上げて頬赤らめた。
どうやら気付いていなかったようだ。


晴「ご、ごめんなさい。今外すから」


兎角「ああ」


少し慌てながら、でも丁寧に晴はマフラーをほどいていく。
その際、頬と頬が密かに擦れ合って、顔が更に熱くなった。


晴「よし、じゃあ改めて行こっか。兎角さん、マフラー使う?」


兎角「……私は大丈夫だから、マフラーはお前が使ってくれ。外は寒いだろうしな」

21: 2014/12/25(木) 01:47:43.00 ID:c9N0TZA+0
外に出てみると案の定雪が積もっており、冷たい空気が私たちを出迎えた。


晴「うう、外はやっぱり寒いねえ……」


晴は身震いして暖めるように両手を擦り合わせる。やはりマフラーをしていても、この寒さは堪えるようだ。


兎角「晴、手」


晴「え?」


晴の片手を取り、ぎゅっと握る。


晴「あっ……」


兎角「これで少しは楽になったか?」


晴は一瞬呆けたような顔をしたが、すぐににっこり笑って「ありがとう」とお礼を言ってきた。
さっきよりも晴の顔が少し赤いような気がしたが、体が暖まったということなのだろう、と思った。


晴「兎角さんの体、あったかい……」


そう言って、晴は更に密着して私の片腕を抱き、寄り添う形となった。


晴の体温を、匂いを感じて、日向の笑顔を眺める。
そうしているだけで、この寒さも昨夜の疲れも一切吹き飛んでしまうのだった。
私だけの、暖かな日だまり。


晴「あっそうだ。兎角さんにまだ言ってなかったね」


兎角「?」






晴「兎角さん――――メリークリスマス!」



終わり

23: 2014/12/25(木) 01:53:03.52 ID:c9N0TZA+0
読んでいただいた方、ありがとうございました。



リドルssは初めてだったのですが、書いていてとても楽しかったです。



機会があればまたリドルssを書いてみたいので、その時はよろしくお願いします。

24: 2014/12/25(木) 04:05:24.46 ID:Fpxn+Pn0o
乙!いいね

引用元: 兎角「12月24日、任務を開始する」