1:◆eYw0lnfieY 2018/05/21(月) 02:17:07.36 ID:ZdaH3eTj0
「歌織さんが欲しい」

夜のパーキングエリア

今は二泊三日の撮影が終了し、帰る途中
もう到着も近かったけれど、連続の運転に疲れたプロデューサーさんが少し休みたいと提案した
この後はそのまま莉緒ちゃんのお家で反省会と言う名の飲み会の予定だった

「え……と、それはその……どういった?」

一服してきますと言ってから少し経って戻ってきた彼は私の顔を見て確かに言った
私が欲しいって
ストレートに受け取れば、それは勿論そう言う意味だと思う

アイドルマスター ミリオンライブ! ぬいぐるみ 桜守歌織


2: 2018/05/21(月) 02:30:25.85 ID:ZdaH3eTj0
「歌織さんが欲しいんです。本当の事を言えば独占したいんです。けど……」

プロデューサーさんとは出会ってそろそろ一年になる
この歳でアイドルなんて……と恥ずかしかったけれどプロデューサーさんは熱心に私を口説いて、そう。口説いてきた

「完全に一目惚れだったんです。最初から恋人にしたいと思ってた。けど職業病なんですかねこれも、それと同じくらいアイドルとして輝く歌織さんが見たいと思ったんです
「頭の中ぐちゃぐちゃで、どっちにしろ俺の近くにいて欲しくて
「下心なんですよ。全部」

私はその時どうしたか

「最初考えさせてって言われた時、もう駄目だと思いました。スカウトに失敗したって言うか、フラれたんだと思ったんです
「だけど歌織さん。来てくれて」

私は、それを受け入れた

3: 2018/05/21(月) 02:31:25.22 ID:ZdaH3eTj0
「ずっと我慢してたんですよ。アイドルの歌織さんは想像を超えて輝いていて、世界中の人に見て欲しいって、俺が見つけてきたアイドルだって凄く鼻が高くて
「この間の公演も、久々にプロデューサーなりたての頃みたいに走り回って。全力だったんです
「それが落ち着いて今日撮影終わって、一息付いたなと思ったらなんだか……」

彼は深く息を吐くとジャケットの内ポケットから煙草を取り出しかけて、そっと戻した

「アイドルでいて欲しい、恋人でいたい。どっちもです、意外と欲張りなんですよ」

「ですけど」

「けど?」

言おうとして口を開けてはそれを飲み込む
今夜は先約があるから、アイドルとプロデューサーだから、急に言われても困る……色んな断り文句を自ら否定する。してしまう
嘘を吐けば、バレなければ、そもそも本当に困ってる?

優先順位が、何をやってもプロデューサーさん一番で
それに気付いたら……私はなにを渋っていたんだろうって

4: 2018/05/21(月) 02:32:11.96 ID:ZdaH3eTj0
だから私はスマホを取り出して、莉緒ちゃんに連絡を取る

『もしもしー?どうしたの?』

「あ、莉緒ちゃん?ごめんなさい。反省会、明日に伸ばせない?」

『いーけど……なにか問題?』

「撮影でミスが見つかっちゃったらしいの。一日伸びるって」

『あーららぁ、それはご愁傷様。頑張ってね』

「うん。ありがとう。じゃあ、今夜は早く寝るわね。おやすみなさい」

『おやすみー』

大切な、劇場で出会えた大切な仲間に

「プロデューサーさん」

「はい」

「歌織、嘘ついちゃいました」

「ですね」

「ですね。って……もう、プロデューサーさんがそうさせたんですよ?」

「すみません、反省はしてないんですけど」

「ふふ、駄目なプロデューサーさん…………
「もう一度、言ってくださいますか?」

「歌織が欲しい。って」

プロデューサーさんは今更少し恥ずかしげに首筋を掻くと、助手席のドアを開けて私に手を差し伸ばした

「歌織が欲しい」

そう、ただ私はその言葉に返すいい言葉が浮かばなかっただけ
だから私は

プロデューサーさんの手を取って、車に乗り込んだ

5: 2018/05/21(月) 02:34:41.37 ID:ZdaH3eTj0
おわり

8: 2018/05/21(月) 05:26:32.78 ID:p29VZljbo

良い

引用元: シタP「歌織が欲しい」