1: 2014/12/13(土) 21:36:16.33 ID:47gsr9nK.net
にこ「はぁ……」テクテク

にこ(今日のお昼もひとりぼっち。もう慣れたけど)

にこ(別にコミュ障ってわけじゃないし、むしろコミュ力はあると思う。けど一年の時にいろいろあって、みんなと距離を置いちゃってる)

にこ(唯一話しかけてくるのは東條希。にっくき巨O女)

にこ(希にはお昼を一緒にどうかと誘われたことがあったけど、変なプライドが働いてそれを断った)

にこ(でもひとりぼっちでごはん食べているのを見られるのも嫌だった。ほんと、めんどくさい性格よね)

にこ(だから私は、トイレの個室の中で食べる……いわゆる便所飯をすることにした)

4: 2014/12/13(土) 21:49:11.77 ID:47gsr9nK.net
にこ(トイレならまったく人の目を気にする必要がない。そう思ってた)

にこ(だけど、トイレに誰かが入ってくると、心臓がばくばくして、ごはんが喉を通らなくなる。便所飯をしていることがバレて、バカにされるんじゃないのか。そんなことも考えていた)

にこ(それほど、私は臆病になっていた)

にこ(でも他に手段は無かっただからこそ、私は便所飯を極めた)

にこ(と、いうか。便所飯が出来る絶好のスポットを見つけたのだ)

にこ「」キョロキョロ

にこ「」テクテク

にこ「」ガチャッ

にこ「ふう……」

にこ(そう。今私が来ているこのトイレこそ、便所飯が出来る絶好のスポット!)

にこ(このトイレ、日当たりが悪くて不気味なのか、ほとんど人が来ない)

にこ(せいぜいたまーに人が1人くるくらい。ほんとに来ない。にこの一、二年の時の経験からして、これは間違いないと言える)

にこ(……自分で言ってて悲しくなってきた。2年間便所飯って………)

5: 2014/12/13(土) 21:53:47.84 ID:47gsr9nK.net
にこ(さてと。今日も優雅に便所飯ですよーだ)

にこ(ん……?)

「………」

にこ(珍しい。誰かトイレに入ってるなんて。しかもにこよりも早く)

にこ(よっぽど漏れそうだから、授業が終わってからすぐ近くのこのトイレに入ったのかな?)

にこ(ま、どーでもいいか。にこには関係ないもん)ガチャッ

バタン

7: 2014/12/13(土) 22:03:27.83 ID:47gsr9nK.net
にこ「」モグモグ

にこ(我ながら美味しい。だって自信作だもーん)

にこ(美味しい……美味しい…………美味しくない)

にこ(味は美味しい。でも気持ちが美味しくない。一人ぼっちで惨めに食べるごはんは、ほんとに美味しくない。これはぼっち3年目に突入した今でも、同じだ)

にこ(つーか。私より先に入ってた人、まだ出てないの?まったく出た気配がしないんだけど)

にこ(ていうか。実は誰も入ってなかったりして。って怖っ!なんか不気味なんですけどそれ!)

にこ(うう。なんか鳥肌立ってきた。音楽でも聞いてよーっと……)モゾモゾ

♪~

8: 2014/12/13(土) 22:18:39.52 ID:47gsr9nK.net
にこ(はぁ……にこにもこれくらい歌唱力があればなあ……)

キーンコーンカーンコーン

にこ(ん…もうこんな時間。ついつい聞き入ってしまったわ)

にこ(昼休みに教室に戻ってもどうせぼっちだし、ギリギリまでここで時間を潰してるのよねー)ガチャッ

ガチャッ

にこ(ん?)

「……?」

にこ「……」ジー

「っ!?」カァァ

ドタドタガチャッバタンタタタタタタ……

にこ「……いたんだ、人」

にこ「ていうかあの子……一年生?」

にこ「まさか便所飯を……いや、それはないわよね……」

にこ「あ!ていうか早く教室戻らないと!」ガチャッ

バタン





にこ(これが私とあの生意気な一年生の、出会いだった)

14: 2014/12/13(土) 22:32:38.65 ID:47gsr9nK.net
にこ「」キョロキョロ

にこ(誰もいない、と)

にこ(いやーアイドルだから周りの視線が気になってしょうがないわー辛いわー)

にこ(……氏にたい。いや、本物のアイドルになるまでは絶対に氏なないけど)

にこ(さてと行きますか……)テクテク

にこ「」ピタッ

「!」ピタッ!

にこ(昨日の……)

「っ!!」バッ

にこ「ちょ!」ガシッ

「ヴェッ!?」ビクッ

にこ(げ!!つ、つい掴んじゃった!!)

15: 2014/12/13(土) 22:43:56.27 ID:47gsr9nK.net
「な、何すんのよ!!離して!!」

にこ「い、いやでも、このトイレ使いたいんでしょ?」

「べ、別に使いたくなんか無いわよ!他の場所探すし!!」

にこ「そ、そんなこと言わずにさ!にこが邪魔だっていうなら出てくから!一人で使っていいから!!」

「ど、どうしてそんなに必氏なのよ!?別にこのトイレじゃなくっても」

にこ「こ、このトイレなら人が来ないから!!何か都合がいいのかなー、って思ったから……」

「っ!!」

にこ「あ……」

「……」ウルウル

にこ(や、やばい!!泣きそうになってるよこの娘!!)

にこ(にこのせい!?もしかしてにこが悪いの!?)

にこ(ど、どうしよう……)

18: 2014/12/13(土) 23:07:55.42 ID:47gsr9nK.net
にこ(ってそうじゃないでしょ矢澤にこ!)

にこ(アイドルってのは誰かを笑顔にすることが仕事!!今こそその時じゃない!!)

にこ(さあ……覚悟を決めるわよ!)

にこ「に……にっこにっこにー♪」

「!」ビクッ

にこ「……」

「……」

にこ「な、何か言いなさいよー!!」

「ヴェェ!?」

にこ「さっきの!!何か感想!!」

「そっ、そんなこと急に言われても」

にこ「じゃあもう一回やるから!……にっこにっこにー♪……ほら、感想!!」

「い、イミワカンナイ!!」

にこ「はぁ!?何よそれー!もっとまともな感想無いわけ!?」

「だ、だからそんなこと言われても困るわよ!!」

にこ「ふん!にこのセンスが理解出来ないなんて、可哀想な人ね!」

「なんでそうなるのよ!!」

にこ「ふーんだ!私はどっか行くから、そのトイレ使いたきゃ勝手にどーぞ!」クルッ

「え……」

にこ(あーあー。何やってんだか私。せっかくの聖域を明け渡すなんて)

にこ(明日からどうしようかしら。屋上……は誰か居そうだし。他のトイレはわりと人が来るし)

にこ(そうだ。また部室で食べてみようかしら。一人であの部室を使って、優雅にお昼を過ごすの。ああ、でもあの部室で食べるごはんって、やたらしょっぱくなるのよね。それはちょっと、やだなあ)トボトボ

「ま……待って!!」

にこ「」ビクッ

21: 2014/12/13(土) 23:54:16.22 ID:47gsr9nK.net
「あなたもその……使いたいんでしょ、このトイレ」

にこ「でも、私が使ったら、あんたは使わないんでしょ?」

「そ、そんなことない!むしろ……」

にこ「むしろ?」

「つ、使いたきゃ使えばいいじゃない!!ていうか使いなさいよ!!」

にこ「じゃあ私が使うとして、あんたはどうするの?」

「わ、私も……使う、わよ。それで文句は無いんでしょ?」

にこ「ふーん……」

「ほ、ほら!早くしなさいよ!」カミノケクルクル

にこ「じゃ、お言葉に甘えて使えさせてもらうけど……」

「けど……?」

にこ「私、こー見えても三年生だから。敬語くらい使いなさいよ」

「……嘘でしょ?」

にこ「マジよ!!ほら!このリボン!!三年生の証拠!!」

「……先に入って……ます」ガチャッ

バタン

にこ「うぐぐ……小さいからってバカにして……!」

にこ(……でも)

にこ(なんでだろう。不思議と、悪い気はしない)

22: 2014/12/14(日) 00:20:17.43 ID:qQuevwTc.net
にこ(それからしばらくの間、私と赤髪の後輩ふたりのランチタイムが続いた)

にこ(ランチタイムと言ってもそんな華々しいものじゃなく、ただトイレの個室に入って、お昼ごはんを平らげるだけ)

にこ(特にしゃべることはなく、ただ黙って食べるだけ。たまーに少し話す程度。個室と個室を隔てる壁があるから、感覚的にはふたりぼっちて感じ)

にこ(トイレに入る時も別にあいさつとかなくて。あの子が先に入ってたら「あ、もう来てるんだ」と思うだけだし、あの子が後から来たら「来たみたいね」って思うだけ)

ガチャッ

にこ(そう、こんな風に)

テクテク

ガチャッ
バタン

にこ「今日は遅かったわね」

「ちょっと、先生に用事があって……」

にこ「ふーん」モグモグ

「……」

にこ「」モグモグ

「……」

にこ「」モグモグ

「……」

にこ「」ピタッ

にこ(……様子がおかしい)

にこ(まさか、何かあった?)

「……」グゥゥ

「っ!」カァァ

にこ(……ああ、なるほどね)

23: 2014/12/14(日) 00:54:32.72 ID:qQuevwTc.net
にこ「はぁ」スクッ ガチャッ

にこ「ちょい」コンコン

「な、なに……なんですか」

にこ「開けなさいよ」

「……やです」

にこ「だったら上からおかず投げ入れるから、ちゃんとこぼさないで食べなさい」

「ヴェェ!?わ、分かっ……りました!!だからそれだけは止めてよ!!」ガチャッ

にこ「そうそう、最初からそうすればいいのよ。お邪魔しまーす」

「なんなのよもう……」

にこ「はい、これ」スッ

「え……これ、先輩のお弁当じゃ……」

にこ「朝ご飯食べすぎちゃって食べられ無いの。だからあんたが食べなさい」

「でも……」

にこ「先輩命令よ!!いいからさっさと食べなさい!」ズイッ

「ちょ!せ、せんぱ……」

にこ「じゃ!」スタスタ、ガチャッバタン

「……ありがと」ボソッ

にこ「ん?何か言った?」

「別に何も。それじゃ、食べられない先輩の代わりにいただかせてもらいます」

にこ「はいはい。勝手にどーぞ」

25: 2014/12/14(日) 00:54:52.99 ID:qQuevwTc.net
にこ(まったく……弁当忘れるなんて、ドジなんだから)

「……美味しい」モグモグ

にこ「当たり前よ!なんせこの私の手作り……」グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

にこ「……」カァァ

「……ぷっ」

にこ「なっ!!わ、笑うな~!!///」

「ぷくく……だ、だって……!…ねぇ先輩、実は私少食なんだけど」

にこ「だ、だから何?」

「お弁当、残しそうなんだけど。残りは先輩に返していい?」

にこ「……好きにすれば」

「ふふ。じゃあ好きにさせてもらうわ」

38: 2014/12/14(日) 20:43:16.49 ID:qQuevwTc.net
にこ(弁当の件以降、私とあの子の距離が少し縮まった気がする)

にこ「気がするだけだけどね」ボソッ

「何か言った?」

にこ「べっつにー。独り言」

「ふーん……」

「ねぇ」

にこ「何よ」

「……ケータイくらい、持ってるわよね?」

にこ「当たり前じゃない。持ってるわよ。しかも今年買い換えたばっかの新品よ。いわゆるスマホってやつよ」

「そ、そうよね。やっぱり持ってるわよね……」

「ちなみに私も持っているんだけど」

にこ「何を?」

「何をって、それは、ケータイ、いわゆるスマホってやつ」

にこ「今時持ってない高校生なんていないでしょ」

「そ、そうなんだけど……そうじゃなくって」

にこ「何よ?何が言いた……」ピキーン

にこ「ははーん。なるほど。そーいうことね」ニヤニヤ

39: 2014/12/14(日) 21:28:05.32 ID:qQuevwTc.net
にこ「そんなに私の連絡先が欲しいなら、素直に言えばいいのに~」ニヤニヤ

「な!///べ、別に欲しいとは言ってないでしょ!!///」

にこ「んもー。ほんっっっと素直じゃないんだから」ニヤニヤ

にこ「で、あんたラインとかやってんの?」

「……ごめん。やってない」

にこ「なら、アドレスを紙に書いて渡すから。それでいい?」

「……!! う、うん」

にこ「そんじゃ今から書くから、ちょっと待っててね~」ガサゴソ

「うん……!」ドキドキ

にこ「」カキカキ

にこ(やばい……)カキカキ

にこ(頰が緩む)ニヘラ

にこ(何これ……めっちゃ嬉しいんだけど)ニヤニヤ

にこ「……出来た」

「!!」

にこ「投げ渡すから!きちんとキャッチしなさいよ!!」

「うんっ…!」

にこ(あーもう。今の顔ヤバいわよこれ。絶対にあの子に見せられない)ニヤニヤ

にこ「えいっ!」ヒョイ

「あっ」ポチャン

にこ「えっ」

42: 2014/12/14(日) 22:07:29.25 ID:qQuevwTc.net
にこ(アドレスも交換して、ますます私たちの距離は縮まった)

にこ(だけど……)

「ねぇ……」

にこ「なぁに?」モグモグ

「私、スクールアイドル……やってみようと思ってるの」

にこ「」ピクッ

にこ(最近、スクールアイドルを始めた二年生がいるのを知っている。現に、この目でも見た)

にこ(きっと、そいつらにそそのかされたんだろう)

にこ(……かつて私も、スクールアイドルだった)

にこ(私は本気で、スクールアイドルの頂を目指していた。なのに……)

にこ「……やめときなさい」

「えっ」

にこ「あんたなんかには無理よ。スクールアイドルなんて出来っこない」

44: 2014/12/14(日) 22:20:01.69 ID:qQuevwTc.net
「どうして、そんなこと言うのよ!」

にこ「私には分かるからよ。覚悟のない奴がアイドルなんかやっても、どーせ長続きなんかしない。すぐ辞めてくわよ」

「だから!なんでそう断言できるのよ!!」

にこ「見てきたから。この目で。辞めていったやつらを」

「っ!!」

にこ「誘われたから、なんて生半可な考えならやめときなさい」

「……もういい。こんなことなら先輩に言わなければよかったわ」ガチャッ

テクテク

バタン

にこ「……」

にこ「……」モグモグ

にこ(あーあ。言っちゃった。私)

にこ(ほんとに、なんでこんなに、捻くれちゃったんだろ)

にこ(素直に、頑張れって言えばよかったのに)

にこ(……素直に、もう一度、スクールアイドルをやりたいって……言えればいいのに)

にこ「しょっぱいなぁ。味付け、間違えたかしら」モグモグ

46: 2014/12/14(日) 23:43:56.34 ID:qQuevwTc.net
にこ(あの後も、なんだかんだであの子は結局ここに来る。けど、それからのランチタイムは、ひたすら居づらいものだった)

にこ(ただ、無言、無言、無言。互いに何も発さず、冷戦状態。他の場所じゃ食べにくいからここで食べてるのに、むしろすごく食べにくい。おかずの味すら分かりはしない)

にこ(全部、にこのせい。にこが招いた結果だ。きっと、あの子も居づらいと思っている筈だ。明日から、にこは食べる場所を変えよう。あの子のためにも)

にこ「」コツン

にこ(……ん?何か降ってきた?……くしゃくしゃに丸められた、紙?)

にこ「」ガサゴソ

にこ(何か書いてある。『余計なこと言って、ごめん』)

にこ(……これ、まさかあの子が?)

にこ(謝る必要なんて、ないのに。私が、悪いのに)

にこ(……謝ろう)

にこ「」ガサゴソ カキカキ

にこ(えい)ヒョイ

49: 2014/12/15(月) 00:09:39.83 ID:mK95U5pp.net
「」コツン

「……」ガサゴソ

「……」

にこ「」モグモグ

「……私、スクールアイドルになるから」

にこ「……うん」

「本気だから。絶対に最後までやり遂げる」

にこ「……そっか」

にこ「…頑張りなさいよ」

「うん」

「…先輩もね」

50: 2014/12/15(月) 00:38:45.82 ID:mK95U5pp.net
にこ(それからいろいろあった。まず、アイドル研究部の部室を求めて、あの二年生率いるメンバーが、私の元に話し合いに来た。そこにはもちろん、赤髪のあの子もいた)

にこ(最初は拒否したけど、まあいろいろあったけど、最終的には、また私はスクールアイドルになった)

にこ(そこでようやく知った。今までずっと知らなかった、赤髪のあの子の名前を)

にこ「真姫ちゃん」

真姫「何よ。にこ先輩」

にこ「んー。言ってみただけー」

真姫「はぁ?」

にこ(西木野真姫。赤い髪。私より7センチ高い身長。綺麗な顔。吊り目。生意気だけど、なぜか放っておけない子)

55: 2014/12/15(月) 01:53:12.18 ID:mK95U5pp.net
にこ(私の知らないところで真姫ちゃんは変わっていた。いや、変わろうとしていた)

真姫「あの……にこ先輩」

にこ「何よ」モグモグ

真姫「じ、実はね。同級生……凛と花陽にね、お昼ごはん一緒にどう?って誘われたんだけど、さ」

にこ「へぇ。あの2人が」

真姫「それで、どうしようかなぁ、って思って」

にこ「変に意地張ると私みたいになるわよ?素直にお誘いに乗ってみたら?」

真姫「そうだけど……」

にこ「まあ、あんたが嫌だって思うなら無理に一緒に食べなくてもいいと思うけど。ぶっちゃけあの2人って仲がいいし。その2人の輪に入っていくのって……」

真姫「べ、別に嫌ってわけじゃないのよ!ただ、その……」

にこ「……まさかあんた、私に気を遣ってる、とかじゃないわよね?」

真姫「……」

にこ「はぁ。何よ、そーんな小さなこと気にしてたんだ」

真姫「小さなことって……」

にこ「私のことは気にしなくていいのに。別に私は一人でも大丈夫よ?だから思う存分、一緒に食べてきなさいよ」

真姫「でも……」

にこ「私は2年以上ここでのソロランチを経験してるベテランよ?あんたが思ってるほどメンタル弱く無いの!」

にこ「それに、真姫ちゃんはまだ一年生でしょ?三年生のにこと違って、友人関係でこじれてもまだやり直せるんだから。挑戦できることは、挑戦していきなさいよ!」

真姫「にこ先輩……」

真姫「分かった。ありがと、にこ先輩。明日、さっそくあの2人とお昼を一緒にしてみるわ」

にこ「ん!それでいいのよ!」

56: 2014/12/15(月) 01:58:52.25 ID:mK95U5pp.net
にこ「」モグモグ

にこ「はぁ……」

にこ(久しぶりのぼっち飯。心なしか、お弁当が冷たく感じる)

にこ(まったく……なーにがベテランよ)

にこ(……ほんの少しだけの期間、隣に居てくれた後輩がいなくなるだけで、こんなに寂しくなるなんて、知らなかったわよ)

にこ「……ごちそーさま」

にこ「久しぶりに音楽でも聞いて、時間を潰そうかしら」

64: 2014/12/15(月) 22:53:06.15 ID:mK95U5pp.net
にこ(それから、いろいろあった。具体的には、希と、生徒会長の絢瀬絵里が加入して。私たちは9人になって。μ'sになった)

にこ(合宿があって。そこで先輩禁止になって。私たちは絆を深めていって)

にこ(だけど順風満帆ってわけじゃなくて。ことりが留学しそうになったり、穂乃果がスクールアイドルを辞めると言ったり)

にこ(そのせいでμ'sのみんなもバラバラになったりした)

にこ(でも、なんとかそれを乗り越えて。もう一度、9人であの舞台に立って。μ'sはまた、より一層強い絆で結ばれた)

にこ(そして今、にこもちょっと変わりつつあった)

にこ(新学期が始まって、初めてのお昼ごはん。希からお昼ごはんを一緒にどうか、と誘われた。だけど、それを私はもう一度断った。…んだけど)

にこ(断った直後、絵里に引き摺られ、無理矢理一緒に食べさせられた)

にこ(それから毎日、誘われて、断って、引き摺られて…それを繰り返して、いつしか断るのも面倒になって。気付いた時には、希と絵里と、一緒に食べるのが当たり前になっていた)

にこ(だからもう、あのトイレにはしばらく行ってない。真姫ちゃんも、凛と花陽と一緒。だからあのトイレには、今は誰もいないんだろうなぁ)

65: 2014/12/15(月) 23:09:28.11 ID:mK95U5pp.net
にこ(……なーんて考えてたら、久しぶりにここに来たくなってしまった。というか、もう来てる)

にこ(…定期テストで悪い点を取ってしまったから逃げてきた、というわけではないわよ?赤点取ったことと、このトイレに来たことは関係無いんだから)

にこ(それにしても、やっぱり誰もいな――)

にこ(――居た。誰かいる)

にこ(偶然か必然か。その誰かいる個室というのが、いつも真姫ちゃんの入っていた個室だった)

にこ(私は無言で隣の個室に入って、こう言った)

にこ「…まっきまきまー」ボソッ

真姫「…やめてよ、それ」

にこ「ふふ。やっぱり真姫ちゃんだったのね」

68: 2014/12/15(月) 23:32:39.73 ID:mK95U5pp.net
にこ「どうしたのよ真姫ちゃん。凛と花陽は一緒じゃないの?」

真姫「うっ…」

真姫「実は……今日、二人とも風邪で休みなのよ」

にこ「うっそぉ!あの2人が!?」

真姫「私もびっくりしたわよ。あの2人が休むなんて。しかも、二人揃って」

にこ「風邪を引くときも一緒って……あの2人、ほんっっっとに仲がいいわよねぇ」

真姫「まったくよ、ほんとに仲がいいんだから。あの2人」

にこ「で、2人が居なくて、一緒に食べる相手がいないから、ここに来たと」

真姫「うっ……」

真姫「……凛と花陽とは、仲良くなれたと思う」

にこ「そうねぇ。確かに、私から見ても一年組は仲が良く見えるもの」

真姫「でも……」

にこ「でも?」

真姫「……あの2人が居ないと、やっぱり私って、友達が少ないんだなって、実感しちゃうの」

にこ「……なるほどねー」

71: 2014/12/16(火) 00:00:29.90 ID:mK95U5pp.net
にこ「別に、少ないことは気にしなくていいじゃない。大切な広くて浅い付き合いより、浅くて深い付き合いよ」

真姫「まあ、そうだけどさ。でもいざ2人が居なくなると、やっぱりなんか……」

にこ「寂しい?」

真姫「うっ……ま、まあ、多少は」

にこ「……やたら素直でびっくり」

真姫「うん……自分でもびっくりしてる。ここに来ると、少し素直になれるのかしら?」

にこ「うーん、それは言えてるかも」

にこ「話は変わるけどさ、真姫ちゃん」

真姫「なに?」

にこ「真姫ちゃんってさ、にこにはちゃん付けだよね?なんで?」

真姫「……」

72: 2014/12/16(火) 00:42:38.50 ID:VOMkFSGC.net
真姫「このタイミングで聞く?」

にこ「だって、ずーーっと気になってたんだもん」

真姫「じゃあ、さっきの質問。そのまま返すわ」

にこ「と言うと?」

真姫「なんで私のこと、ちゃん付けなの?」

にこ「あー、そのことね」

にこ「真姫ちゃんと初めて出会って、真姫ちゃんとここで過ごして……そこで真姫ちゃんに抱いた印象が、なぜだか放っておけない、世話のかかる子、だからちゃん付けしたくなった、的な?」

真姫「……意味わかんないんだけど」

にこ「正直言って私もよく分からないわ。で、真姫ちゃんはどうなの」

真姫「にこちゃんって、なんか……先輩っぽくないんだもの」

にこ「ちょっとー!子供っぽいっていうの!?」

真姫「ううん。逆よ」

にこ「えっ?」

真姫「先輩っぽくないけど……にこちゃんって、時折大人っぽいこと言うときがあって。なんだかお姉さんみたいで、すっごく安心出来るの。でもそのくせ、普段は全然先輩っぽくないから……どーしてもちゃん付けしたくなっちゃうの」

にこ「……」

真姫「……な、なんだか、私も言ってることがよく分からなくなってきたわ」

にこ「うん、いいわよ別に。私は分かったから」

真姫「そ、そうなんだ」

にこ(あー。顔が熱い。なんでほんとに、こんなに素直なのよ)

74: 2014/12/16(火) 00:49:25.53 ID:VOMkFSGC.net
キーンコーンカーンコーン

真姫「あ、もうこんな時間」

真姫「じゃあね、にこちゃん。私行くから」ガチャッ

にこ「……真姫ちゃん」

真姫「ん?」

にこ「もし、明日も2人が休んだら、三年生のとこに来なさい。私も、希も絵里も、大歓迎だから」

真姫「……うん。ありがと、にこちゃん」

バタン

にこ「……」

にこ(弁当、食べ切れなかったな)

にこ(ふふ。お喋りをして、弁当を食べている暇が無かったなんて、今まで無かったのにね)

にこ(変わったなぁ。にこも、真姫ちゃんも。前向きに、変わった)

76: 2014/12/16(火) 01:12:55.60 ID:VOMkFSGC.net
にこ(そして季節は過ぎ去り……冬を迎える)

にこ(相変わらずあのトイレには誰も来ない。無論、私と真姫ちゃんも)

にこ(そして今日は、楽しい楽しいクリスマス!!)

にこ(……去年まではメリークルシミマスだったけど。今年は違った)

にこ(今年は、μ'sのみんなでクリスマスパーティをした。部室を使って、どんちゃん騒ぎ)

にこ(みんなで乾杯して。フライドチキンを奪い合って。ケーキを食べたり。一発芸を披露したり。プレゼントを交換したり。もう、楽しくってしょうがなかった)

にこ(でも、幸せな時間って、いつも早く過ぎていくのよね。今日という日はもう、あっと言う間に過ぎていった)

にこ(帰って寝たら、サンタさんがプレゼントを枕元に置いているんだろうなあ)

にこ(1人になった帰り道で、そんなことを考えてたら、まだサンタを信じている真姫ちゃんは、きっと今頃ワクワクしているんだろうなぁって考えてしまって、頰が緩んでしまった)

にこ(そんなことを考えてたら、その真姫ちゃんからメールが届いた)

にこ(メールを開くと――『明日、あの場所に来て』と、書かれていた)

83: 2014/12/16(火) 20:37:18.51 ID:VOMkFSGC.net
にこ(ん。真姫ちゃんもう来てるみたいね


ガチャッ
バタン

真姫「……遅い」

にこ「真姫ちゃんが早すぎるんでしょー。うー、さむっ」

真姫「ほんと、寒いわよね。冬のトイレがこんなに寒かったなんて、知らなかった」

にこ「まあ、暖房も無いし日当たりも最悪だからねー。もしかしたらこの学校で一番寒いところかも。防寒対策しなきゃやってらんないわ」

にこ「で。この寒い中、にこを呼び出したのはどうして?」

真姫「……実は、その」

真姫「クリスマスプレゼント、渡そうと思って」

にこ「……え?」

85: 2014/12/16(火) 21:32:19.30 ID:VOMkFSGC.net
にこ「クリスマスプレゼントって、昨日みんなでプレゼント交換したじゃない」

真姫「それとは別に、渡したいのよ。にこちゃんに」

にこ「い、一応聞くけどさ。そのプレゼントって、私だけ?」

真姫「……そう、だけど」

にこ「ふ、ふーん。そーなんだ。へぇ、私だけに、ねぇ……ふふふ」ニヘラ

真姫「な、何よ。なに笑ってんの」

にこ「いやあ、真姫ちゃんって、ほんとに好きだよねー。にこのこと」ニヤニヤ

真姫「なっ!」カァァ

真姫「べ、別にそんなんじゃないわよ!私はただ、日頃の感謝っていうか、なんていうか……!」

真姫「それに、にこちゃん三年生だし……今渡せなかったら、いつ渡せるか……分からないじゃない」

にこ「あ……」

86: 2014/12/16(火) 22:22:32.76 ID:VOMkFSGC.net
真姫「……」

にこ「……な、なんかごめん」

真姫「なんで謝ってんのよ」

にこ「なんとなく……」

真姫「……プレゼント。渡すね」

にこ「え?今?」

真姫「今から投げるから、きちんとキャッチしなさいよ」

にこ「うん。さあばっちこい!」

真姫「いくわよ。えいっ」ヒョイ

にこ「よっ。ふふ。ナイスキャッチ!」パシッ

にこ「にしても、オシャレな箱ね。何が入ってるんだろ」

真姫「さ、さあ?開けてみれば分かるでしょ。プレゼント渡したし、私もう行くから!」

にこ「待って!今ここで開けるから、真姫ちゃんもまだここにいて!」

真姫「ゔぇぇ!?な、なんで!?」

88: 2014/12/16(火) 23:06:10.04 ID:VOMkFSGC.net
にこ「ふふーん♪なーにっかなーなーにっかなー?」ガサゴソ

真姫「……」ドキドキ

にこ「ん?これ……えええ!?」カァァ

真姫「な、何よその反応!」

にこ「いや、だってこれ……指輪だし……」ドキドキ

真姫「しょ、しょうがないでしょ!プレゼントなんて滅多にしないから、何にすればいいのか分からなかったから……!!」

にこ「……ありがと。真姫ちゃん。すっごく嬉しい」

真姫「~っ!」カァァ

真姫「ど、どういたしまして……」

にこ「ひとつ気になったんだけどさ。まさかこれ、ペアリングなんじゃ――」

真姫「も、もう行くからね!!!」ガタッ

ガチャッバタン

ドタドタ……

にこ「……」

にこ(真姫ちゃん……分かり易すぎる)

にこ(やばいなー。寒さが一気にどっか行っちゃった)

にこ(あー。もう。反則でしょ)

にこ(……めっっっちゃ嬉しい。嬉し過ぎてどうにかなりそう)

にこ(一生の宝物になるかも。なんて)

にこ(真姫ちゃん。ありがと)

にこ(……大好き)

98: 2014/12/17(水) 00:07:16.48 ID:Y9acCjwa.net
にこ(あの後、嬉し過ぎてすぐ指輪をはめたんだけど、絵里と希に見つかってひたすらいじり倒された)

にこ(しかしネタは上がっている。にこは逆に2人をいじり倒し、勝利を収めた)

にこ(真姫ちゃんはどうなんだろう。凛と花陽が真姫ちゃんをいじるとは思えないし)

にこ(二年生組にいじられる、なんてことも無いだろうし)

にこ(でも以外だったなぁ。真姫ちゃんが恥ずかしがらずにあの指輪をつけてくるなんて)

にこ(……にこ、ちょっと嬉しいとおもいました。はい)

にこ(かくかくしかじか、まあ色んなことがあった一年だったんだけど。今日は今年部室にくるのは最後の日で。大掃除、とまではいかないけど、みんなで部室の掃除をした)

にこ(掃除が終わって、また来年もよろしく!って挨拶を交わして)

にこ(ふと、あのトイレを思い出した私は、いつの間にかあのトイレに足を運んでいた)

99: 2014/12/17(水) 00:28:10.69 ID:Y9acCjwa.net
にこ(なんだかんだで、今年は数えられるくらいしか、このトイレに来てないのよね)

真姫「にこちゃん?」

にこ「わっ!」ビクッ

にこ「びっくりした……真姫ちゃんだったのね」

真姫「私もびっくりしわよ。急に大声出すもんだから」

にこ「いやーごめんごめん」

真姫「それで?どうしてここに?」

にこ「分かんなーい。なんか急に来たくなっちゃって」

真姫「奇遇ね。私も」

にこ「そーだ!どうせなら、私たちで綺麗に掃除しちゃいましょ!」

真姫「掃除っていっても、ほとんど汚れてないと思うけど」

にこ「いいからいいから!さ、真姫ちゃんもやるのよ!」

真姫「ふふ。仕方ないわね」

100: 2014/12/17(水) 00:56:12.41 ID:Y9acCjwa.net
にこ(真姫ちゃんのいった通り、このトイレはほとんど汚れていなかった。誰も人が来ないから。せいぜい、誰も掃除しないから埃が溜まってる程度)

にこ「んー!終わった終わったー!」

真姫「すぐ終わったわね」

にこ「まあ、私たちくらいしか使わないからねー」

真姫「まあ、その私たちももう使って無いんだけどね」

にこ「そうねぇ。真姫ちゃんと会った時はこんなことになるなんて、思いもしなかった」

真姫「私もよ。このトイレで三年間過ごすかもしれないって、本気で考えてた時代があったくらいだもの」

にこ「ほんとに……みんなのおかげよね」

真姫「そうね。みんなと出会えて……本当に良かった」

にこ「真姫ちゃん。また来年も、よろしくね」

真姫「うん。にこちゃんこそ、良いお年を」

108: 2014/12/17(水) 20:57:18.68 ID:Y9acCjwa.net
にこ(2月14日。バレンタインデー。乙女の聖戦)

にこ(意中の相手に渡す本命チョコ以外にも、友達同士で交換する友チョコなんてものもある)

にこ(女子校であるここ音ノ木坂では、その友チョコが主流であろう。まあ、本命チョコがあると言えば、あるかもしれないが)

にこ(去年、一昨年は、チョコなんて用意してなかった。強いて言うなら、妹たちに作ってあげたくらい)

にこ(だって、チョコを交換するような友達なんていなかったし)

にこ(だけど、今年は違った。チョコを作る理由が出来た。それはもちろん、μ'sだ)

にこ(用意しなければ、きっと穂乃果や凛あたりが駄々をこねるに決まってる。ふふ。まったく、しょうがない子たちよね)

にこ(どうせ用意するからには、きちんと9人分用意しなきゃね。そう決意して、張り切ってキッチンに立った2月13日。張り切ったのは良かったんだけど……)

110: 2014/12/17(水) 22:50:32.17 ID:Y9acCjwa.net
にこ「うわぁ……にこってば、なにやってんだろ……」

にこ(にこの目の前に並べられた、9つの簡素なチョコレート。簡素とは言っても出来栄えはよく、我ながらかなり美味しそうと思った。もちろん、思っただけでなくきちんと味も保証出来る)

にこ(とまあ、これだけだったらいい。問題はこれじゃない。9つのチョコの隣にある、10こめのチョコレート。9つのチョコに比べて、やたらと気合いの入り方が違った)

にこ(ある子のことを考えていたら、自然と10こ目を作っていた。そして自然と気合いが入っていた)

にこ(ある子っていうのが誰かは聞かないでほしい。ていうか、言わなくても分かるでしょ)

にこ(うーーん。それにしても、ほんとなにやってるんだろ)

にこ(作ってる間はウキウキだったのに、いざ出来上がってまじまじと見るとすごく恥ずかしい)

にこ(流石にこれを明日持っていく勇気はない。家に置いて、帰ってきたら妹たちにあげよう)

にこ(って考えていたのに……)

114: 2014/12/17(水) 23:15:43.60 ID:Y9acCjwa.net
にこ(結局、あのチョコを持ってきてしまった)

にこ(とりあえずそのチョコのことは忘れて、ひとまず部室に向かう。部室に入るといきなり、穂乃果と凛がチョコをねだってきた。ほんとに予想通りの動きをするわよね。この2人)

にこ(それからみんなと、チョコを交換した。穂乃果と凛は2人揃って板チョコを用意してた。この子たち、ほんとにチョコは食べることにしか興味ないのね。まあ、この2人らしいか)

にこ(真姫ちゃんと絵里は、高そうなチョコを用意してた。手作りしないあたりが2人らしい。……もっとも、絵里は手作りチョコをひとつだけ用意してそうだったけど)

にこ(ことりと花陽は、手作りチョコを用意していた。2人ともと私に負けずとも劣らず、美味しいチョコを作ってきてた)

にこ(希に関しては、なんとたい焼きを用意してた。なんでたい焼きなのよと聞くと、バレンタインにたい焼きなんて新鮮やん?と返された)

にこ(たい焼きを頬張ると、中にはあんこじゃなくてチョコが入ってた。一本取られた気分でなんか悔しい。後でいじってやろう。隠してるつもりだろうけど、手作りチョコがあるのバレバレだし)

にこ(そして、海未。この子、バレンタインということをすっかり忘れて、何も用意していなかったらしい)

にこ(用意してこなかった私には食べる資格はありませんとか言って、頑なにみんなからのチョコを受け取らなかったけど)

にこ(穂乃果の説得でなんとか受け取ってくれたけど、真面目な海未はあとでもらった分はきちんと返しますと言ってた)

にこ(そして、チョコ交換会が終わった後に――あのチョコのことを、思い出した)

116: 2014/12/17(水) 23:24:57.70 ID:Y9acCjwa.net
にこ(このチョコ、どうしよう)

にこ(とてもじゃないが、恥ずかしくってこんなの渡せない)

にこ(だったら食べてしまおうと考えた)

にこ(じゃあどこで食べる?って考えたとき、家に帰ってから食べるという選択肢があったはずなのに。にこが真っ先に思いついたのは、あのトイレだった)

117: 2014/12/17(水) 23:36:22.26 ID:Y9acCjwa.net
にこ(トイレに入って、いざ食べようとあのチョコを取り出す。だけど、ここでひとつ問題が)

にこ(すでににこは、自分のチョコとみんなからもらったチョコの、合計9個ものチョコを食べていた)

にこ(ぶっちゃけ、いくら甘いものは好きとは言え、これ以上チョコを食べる気にならなかった)

にこ(だから結局、チョコを取り出すだけ取り出して、その包装をじっと眺めていた)

にこ(……でもね。本音は違うのかもしれない)

にこ(本当は、自分で食べたくないだけ。誰かに…いや、あの子に食べてほしいだけなのかも)

にこ(それに、このトイレに来た理由も、もしかしたらここに来れば、あの子と二人きりになれるかな。なんて期待していたからなのかもしれない)

にこ(そんな事を考えていたら――)

ガチャッ

テクテク

バタン

真姫「………なんで居るのよ」

にこ(あの子は、本当にやって来た)

119: 2014/12/18(木) 00:02:14.86 ID:Y9acCjwa.net
にこ「真姫ちゃんこそ。なんで来たのよ」

真姫「そ、それは……」

真姫「……ねぇ、にこちゃん。にこちゃんから、何か私に渡したいもの……あるんじゃないの?」

にこ「うぇっ!?そ、そんなもの、別に」

真姫「私は、あるんだけど。にこちゃんに渡したいものが」

にこ「!!」

真姫「もし、にこちゃんも渡したいものがあるなら……今ここで、交換って形で、互いに渡せればいいと思ったんだけど」

にこ「…………ある、わよ。渡したいものが。真姫ちゃんに」

にこ(ずるい。ずるいずるいずるい。そんな事言われたら、素直に答えるしかないじゃない。ほんとに、真姫ちゃんはずるい)

122: 2014/12/18(木) 00:35:37.77 ID:Doc0ialL.net
にこ「じ、準備できた?」

真姫「う、うん。ばっちり」

にこ「それじゃ、いくわよ!」

真姫「せーっ」

にこ「のっ」ヒョイ

ヒョイ

真姫「」パシッ

にこ「よっ」パシッ

真姫「……バレンタインのチョコをトイレで投げ渡しだなんて、よくよく考えたらおかしな話よね」クス

にこ「ま、私たちらしくていいんじゃない?」ニコ

真姫「ふふ。それもそうね。じゃ、早速開けさせてもらうわね」ガサゴソ

にこ「えええええ!?ま、待ってまだ心の準備が!!」

真姫「これ……」

にこ「……!!」ドキドキ

真姫「……なんか、すっごく恥ずかしいんだけど」カァァ

にこ「い、言わなくても分かってるわよ!」カァァ

真姫「でも」

にこ「え?」

真姫「恥ずかしい以上に、すごく嬉しい……かも」

にこ「……」

にこ「」ポンッ

にこ「そ、そりゃどうも……」プシュゥゥゥ…

125: 2014/12/18(木) 01:07:31.29 ID:Doc0ialL.net
にこ「て、ていうか味!!味もきちんと確かめてよね!!」アタフタ

真姫「もちろん分かってるわよ。……いただきます」パクッ

にこ「ど、どう?」ドキドキ

真姫「……元々、甘いものは苦手だったの。だけど、今日、みんなとチョコを交換して、チョコを食べて。チョコが好きになって。そして、にこちゃんのチョコを食べたら、今度は、チョコが大好きになっちゃった。それくらい、美味しい」

にこ「……な」

にこ「ぁによ、それぇ……意味、わかんないわよぉ……」カァァ

真姫「とにかく、とても美味しいってことよ」

にこ「分かってる、わよぉ……」カァァ

にこ(あー。もう。さっきから赤面させられっぱなし。今日の真姫ちゃん、ちょっとずるすぎない?)

129: 2014/12/18(木) 01:24:42.01 ID:Doc0ialL.net
にこ「そ、そうだ!私も真姫ちゃんのチョコを食べてやるんだから!!」

真姫「どうぞ。って、何でムキになってるのよ?」

にこ「ムキになってない!!さーて真姫ちゃんのチョコは……」ガサゴソ

にこ「す、すごっ!?めちゃくちゃオシャレな感じ……しかも美味しそうだし……」

にこ「ていうかこれ!真姫ちゃんの手作り!?」

真姫「そ、そうよ。一応、手作り……」

にこ「凄いわよ真姫ちゃん!!てっきり真姫ちゃん、こういうことはからっきしだと――もしかして真姫ちゃん、誰かに教わった?」

真姫「……」

にこ「あら。図星ね」

真姫「う……え、エリーに教わったのよ」

にこ「へぇ。わざわざにこのために、教わってきたんだ~」ニヤニヤ

真姫「……べ、別ににこちゃんのためなんかじゃ……!」

にこ「にこのためじゃ、ないの?」

真姫「ない……わけじゃ、ないけど……」

にこ「やっぱりにこのためなんだ♪嬉しいな~」

真姫「ああもう!!そんなことはいいから早く食べてみなさいよー!」

にこ「はーい」ニヤニヤ

130: 2014/12/18(木) 01:40:39.08 ID:Doc0ialL.net
にこ「あーん」パクッ

真姫「ど、どう?味はちゃんとしっかりしてる?」ドキドキ

にこ「……うん。甘くて美味しい」

真姫「ほ、ほんと!?」

にこ「うん。とっても美味しい。甘いのに、ずっと食べていられそうかも」

真姫「よ、よかった……何度も何度も失敗して、ようやく出来た最高一品だったのよ……本当によかっ……あ」

にこ「真姫ちゃん……」

真姫「ち、違っ!!忘れて今の!!」カァァ

にこ「ふふふ。ほんと、不器用なのね」

真姫「もー……なんなのよぉ……」カァァ

にこ「……凄く嬉しかったわよ。真姫ちゃん」

真姫「……ど、どういたしまして」プイッ

にこ「いやー。それにしても、ほんとに甘いわねー」

真姫「そんなに甘いの?ビター風にしたはずだけど……ちょっと間違えちゃったかしら」

にこ「ううん。ちゃんとビター風になってるわよ。でも、甘いものは甘いのよ」

真姫「ふーん。よく分からないわね……」

にこ「多分、真姫ちゃんからもらったから……こんなに甘く感じるんだと思うな」

真姫「何よそれ。あ、でも……」

真姫「ちょっと、にこちゃんの気持ちが分かったかも。だって、にこちゃんからもらったチョコ……とっても甘いんだもの」

131: 2014/12/18(木) 01:41:38.98 ID:Doc0ialL.net
寝る

たぶん明日には終わるかも

142: 2014/12/18(木) 20:03:17.19 ID:Doc0ialL.net
にこ(去年の今頃は、さっさと卒業してこの学校とおさらばしたい、なんて思ってた)

にこ(どうせこの学校に居ても惨めな思いをするだけ。だから、早く居なくなりたかった)

にこ(だけど……)

にこ(真姫ちゃんに出会って。μ'sに出会って。この一年は、本当に楽しいもので。思い出だって、たくさんできた)

にこ(願うことなら、もう一年。もう一年だけでいいから、まだこの学校に居たい。そう考えるようになっていた)

にこ(それなのに、私ってば。最後のテストは奇跡的に赤点ゼロで。ちゃんと学校、卒業出来ちゃうみたいなの)

にこ(まったく。なんでこんな時だけ、頭良くなるのよ。いつもみたいに赤点取って、あわよくば留年して――)

にこ(――ううん。ほんとは、分かってた。別れの時くらいは、きちんとケジメをつけなきゃいけないんだって)

にこ(だから。私は決めたんだ。もう逃げないって。目をそらしたりなんかしないって)

にこ(別れと、私の未来から――)

143: 2014/12/18(木) 20:26:40.95 ID:Doc0ialL.net
にこ(ついに明日、私は音ノ木坂を卒業する)

にこ(にこは自然とあのトイレに足を運んでいた。相変わらず人気のないトイレ)

にこ(扉を開けると、ひんやりした空気が頬を撫でた)

にこ(にこの特等席まで、体を震わせながら歩いていく。ふと、あることに気づく)

にこ(いつも、あの子が使っていた――あの子の特等席が、埋まっていた)

にこ(にこも、特等席へ)

にこ「……真姫ちゃん、来てたんだ」

真姫「…………うん」

145: 2014/12/18(木) 21:13:49.06 ID:Doc0ialL.net
にこ「明日、卒業式だね」

真姫「…うん」

にこ「この一年間、ほんとにいろいろあったよね。まず、真姫ちゃんとこのトイレで出会って……」

真姫「…」

にこ「それから、真姫ちゃんがスクールアイドルを始めて、私もまた、スクールアイドルに復帰して……」

にこ「それからμ'sに出会って。みんなと過ごした時間は、本当に楽しかった。私にとって、かけがえのない時間だった。たぶん、いや、間違いなく!私の人生の中で、いっっちばん、幸せな一年だった!」

真姫「……にこちゃん」

にこ「なぁに?」

真姫「……寒い」

にこ「うぇ!?いきなり何よ!!せっかく人が――」

真姫「寒い。凍え氏ぬ」

にこ「真姫ちゃん……」

にこ「……まったく、しょうがないんだから」

ガチャッ

にこ「本日限定で、にこの特等席に招待してあげる」

真姫「……」

にこ「ほーら。早く来なさいよー」

真姫「……うん。今、行く」

146: 2014/12/18(木) 21:29:06.98 ID:Doc0ialL.net
にこ「いらっしゃい、真姫ちゃん」

真姫「……」バタン

にこ「どーしたのよ。そんな辛気臭い顔して」

真姫「…別に。ていうかにこちゃん、寒いんだけど」

にこ「あー、はいはい。仕方ないわねー。ほら、にこがあっためてあげるから」

真姫「……うん」

にこ「んっ」ギュッ

真姫「……」ギュッ

にこ「ちょっと真姫ちゃーん。苦しいんだけど~」

真姫「寒いんだから、仕方ないでしょ」ギュゥゥ

にこ「まったく。わがままねぇ」ギュ

真姫「……」

にこ「それにしても、なんか新鮮よね。ここに来たときって、いっつも互いに顔を合わせる事なんて無かったのに」

真姫「………にこちゃん」

にこ「ん?」

真姫「どうして、卒業しちゃうの」

にこ「…………」

147: 2014/12/18(木) 21:48:53.90 ID:Doc0ialL.net
にこ「だって、にこは三年生だから。仕方ないわよ」

真姫「だったら!留年でもすればいいじゃない!!」

にこ「真姫ちゃ……」

真姫「どうして、どうしていなくなっちゃうの。もう一年、もう一年くらい一緒にいてくれたっていいじゃない!」

真姫「分かってるわよ!私だって、分かってる!でも!それでも!!苦しいのよ!!にこちゃんが、いなくなっちゃう事を考えるのが、苦しくて、苦しくて!!」

真姫「どうしてこんなに胸が苦しいのか、私には分からないのよ!私は、私はどうしたらいいのか、分からないのよぉ……!!」ギュゥゥゥ

にこ「真姫ちゃん………」

148: 2014/12/18(木) 22:10:10.94 ID:Doc0ialL.net
にこ「……あのね。真姫ちゃん」

にこ「にこには、夢があるんだ」

にこ「それは、アイドルになること。いや、もっと言うと――」

にこ「みんなに笑顔を届けるアイドルになること。それが、私の夢なの」

にこ「その夢を叶えるためには……ここを卒業しなきゃならないの」

にこ「……だけど、そんな、一生の別れじゃないわよ。ほんの少し、離れ離れになるだけ。離れてたって、私たちは繋がってる。そうでしょ?」

真姫「……」

にこ「……はぁ。仕方ないわねー。ほんとにわがままなんだから」

にこ「じゃあ、約束する。夢を叶えたら、一番最初に真姫ちゃんに笑顔を届けに行くから」

にこ「今はまだまだ未熟で、真姫ちゃんに笑顔を届けられそうにない。代わりに、にこの平べったい胸を貸したげる。だから今日は――」

にこ「もう、我慢しなくていいんだよ」

真姫「……」

真姫「……にこちゃんの、にこちゃんのばかぁぁぁぁ……!ぅぅうう…………ぐすっ……ばかぁ、ばかぁ、ばかぁ…………っ!」ギュッ

にこ「うん。ごめんね。ごめんね、真姫ちゃん」ナデナデ

152: 2014/12/18(木) 22:43:17.31 ID:Doc0ialL.net
にこ「どう?落ち着いた?」

真姫「うん。もう大丈夫」

にこ「ふふ。なら良かったわ」

真姫「にこちゃん」

にこ「ん?」

真姫「明日の卒業式、私は泣かないから」

にこ「あら。まーた強がり?」

真姫「強がりなんかじゃないわよ!!ほんとに、ぜーったい泣かないんだから!」

にこ「またまた~。当日わんわん泣いても知らないわよ~?」

真姫「ほんとに大丈夫よっ!私、もう行くからね!!」

真姫「あ、そうだ」

にこ「ん?まだ何かあるの?」

真姫「にこちゃんの制服の第二ボタン。今のうちに予約しておくから」

にこ「え……そ、それって」

真姫「じゃ、じゃあね!また明日!!私、もう行くから!!」ガチャッ

ドタドタ

ガチャッ

タタタタタタ……

にこ「……もう、なんなのよ……さっきまであんなに泣いてたくせに。あんな恥かしいこと言って……」

にこ「……第二ボタンの予約、確かに受け取ったからね」ギュッ

にこ「また明日、ね。真姫ちゃん。また、明日……」

153: 2014/12/18(木) 23:11:20.48 ID:Doc0ialL.net
真姫「……」テクテク

真姫(にこちゃんが卒業してから、終業式、春休みと時間が過ぎていき、そして入学式を迎えて、私は二年生になった)

真姫(にこちゃん達三年生が抜けて、μ'sじゃなくなった後も、私たちはスクールアイドルを続けている)

真姫(もちろん、私にも後輩が出来た。不器用ながらも、後輩と仲良くなれるように努力した)

真姫(二年生になってから、1人でいる時間がもっと減った気がした。いつも周りには、凛や花陽がいる)

真姫(誕生日も、みんなに祝ってもらった。4月19日。すごく早い誕生日)

真姫(すごく楽しかったし、すごく嬉しかった。誕生日なんて、パパとママ以外に祝ってもらったことなんてなかったから)

真姫(すごく楽しい誕生日パーティー、楽しかったし満足した筈だけど、何かが足りない気もした)

154: 2014/12/18(木) 23:27:24.49 ID:Doc0ialL.net
真姫(夏休みに入って、合宿を行った。新一年生も参加した。もちろん場所は、私の別荘)

真姫(今年も今年で、色んなことをやった。充実した合宿だった。特に、後輩との絆を深めた気がする)

真姫(けれど夜になって、みんなが寝た後に、ふと目が覚めて。自分の隣を見ると、そこは壁で。何か、何か物足りない気持ちになった。何か、心にポッカリ、穴が開いてしまった気分だった)

真姫(それから、また季節は巡って。秋を迎え、冬を迎え、クリスマスがやってきて)

真姫(今年も、クリスマスパーティーをやった。みんなで大騒ぎして、プレゼント交換をして……すっごく、幸せな時間を過ごした。だけど、薬指にはめた指輪を見ると、去年のことを思い出して。少しだけ、寂しくなった)

157: 2014/12/19(金) 00:04:18.08 ID:Doc0ialL.net
真姫(そして今日は、今年、部室に来るのは最後の日。だから、みんなで大掃除をした)

真姫(にこちゃんも絵里も希もいない大掃除はかなりドタバタしたけど、なんとか力を合わせて綺麗にしきった)

真姫(そして、掃除が終わった後……私はあの場所へ向かっている)

真姫「」ガチャッ

真姫「相変わらず、ほとんど使われてないみたいね」

真姫(私の思い出の場所である、あのトイレ)

真姫(ほとんど綺麗だったけど、私はやたらと真剣に掃除をしていた。ほぼ、無意識だった)

真姫(気づいた時には、掃除が終わっていて。すごく綺麗になっていた)

真姫(その後、やはり無意識に、私はいつもの個室へと向かっていた)

158: 2014/12/19(金) 00:17:48.70 ID:ccmnusMN.net
真姫「今年ももう、終わりかぁ……」

真姫(……絵里と希から聞いていた。にこちゃんのこと)

真姫(にこちゃん、オーディションに受かったらしくて。念願の、アイドルへの第一歩を踏み出したと言っていた)

真姫(だけど、それからはレッスンとかで、多忙だと言うことも聞いていた)

真姫(……知ってはいたが、やっぱり寂しかった。連絡くらい、くれたっていいじゃない)

真姫(声が聞きたい。久しぶりに顔をみたい。だけど、きっと迷惑になると思って、何も出来ずにいた)

真姫(……なーんて、そんなのただの言い訳。本当は違った)

真姫(卒業式から、ずっと音沙汰無くって。私のこと、忘れちゃったんじゃないか、とか考えちゃって)

真姫(怖かった。にこちゃんと、連絡をとること自体が……)

真姫(……誕生日くらい、祝ってくれたっていいじゃない。クリスマスプレゼントくらい、用意してくれたって、いいじゃない)

真姫(……にこちゃんの、ばか)

真姫「……ばか、にこちゃんの、ばか……」グスッ

160: 2014/12/19(金) 00:27:57.48 ID:ccmnusMN.net
ガチャッ

真姫(!?)ビクッ

真姫(だ、誰か来た!?こんな時に……!!)ゴシゴシ

スタスタ

バタン

真姫(え……?)

真姫(偶然にも、トイレにやってきた人が入った個室が――にこちゃんがいつも使ってた個室だった)

真姫(まさか……なんて、少しだけ期待した。だけど、ありえない。そんなことは絶対に、あり得る筈が…………)

「にっこにっこにー♪」

真姫「!!」

真姫(この声は――私が、ずっと聞きたいと、心焦がれていた、あの声)

「笑顔を、届けに来たよ。真姫ちゃん」

真姫(私の大好きな……あの人の声、だった)




おしまい

161: 2014/12/19(金) 00:34:14.30 ID:ccmnusMN.net
おまけ


真姫「ううううう……!!にこちゃああああああああん!!!」ガタッ

にこ「ぎゃあああ!?真姫ちゃんがよじ登って来たあああ!?」ビクゥ

真姫「にこちゃん……!!」ウルウル

にこ「ま、真姫ちゃん?ゆっくり、ゆっくり降りて――」

真姫「にこちゃあああああん!!」ガバッ

にこ「うわああああああ!?」

にこ「ぐふっ」ダキッ

真姫「わああああああん!!にこちゃん、にこちゃあああああん!!!」ギュゥゥゥ

にこ「ま、真姫ちゃん……ぐるじい……」プルプル

164: 2014/12/19(金) 00:40:16.90 ID:ccmnusMN.net
真姫「もう、ずっと会えないと思ってた!!だから……だからぁ……!!」ウルウル

にこ「あー。ごめんね。寂しい思いをさせちゃって」ナデナデ

真姫「もう二度と、ぐすっ……会えないと思ってたのよ!だって、ずーっと連絡ないから……!」

にこ「そ、そのことなんだけど、さ……」

真姫「ぐすっ……何よ?」

にこ「連絡取れなかったことには、深~い理由がありまして……」

真姫「深~い、理由……?」

にこ「じ、実は……」

166: 2014/12/19(金) 00:50:39.39 ID:ccmnusMN.net
にこ『ふんふふーん♪』prrr

にこ『ん?もしもし……』

にこ『……』

にこ『えぇ!?ほ、本当ですか!?……はい!!……はいっ!!』

にこ『どどどどどうしよう!!オーディション受かっちゃった受かっちゃったあああ!!』

にこ『ととととりあえず連絡しなきゃ!!えーっとまずは』ツルン

にこ『あー!!す、すっぽ抜けて……!!』ガシャン、ガシャン……

ブゥゥゥゥ……

グシャッ

にこ『…………え?』

にこ『えええええええええ!?そ、そんなのってありなのぉぉぉぉ!?』ガビーン

168: 2014/12/19(金) 01:21:14.94 ID:ccmnusMN.net
にこ「てなことがありまして、水没ならともかく、ぐしゃっとバイクに踏み潰されたから、データ復旧も出来なくって、連絡が取れなかったのよ……」

真姫「……にこちゃん」

にこ「な、何よ?」

真姫「どんな確率よ、それ」

にこ「私だって思ったわよっ!!」

真姫「す、滑って落とした上に、車に踏み潰されるって……」プルプル

にこ「バッキバキのベッキベキよ!?原型とどめてないんだから!!」

真姫「あれ?でもどうして絵里と希はにこちゃんがオーディションに受かったことを知ってたの?」

にこ「え?そりゃああれよ。あの2人とは直接会ったから」

真姫「あー、なるほどね」

にこ「絵里と希と会った時に、2人の連絡先はまた交換しなおしたんだけど……」

真姫「他のみんなの連絡先は、消えちゃったと?」

にこ「はい……」

真姫「私の連絡先は?」

にこ「もちろん、ございません……」

真姫「はぁ。仕方ないわねぇ。さっさと交換しましょ!」

にこ「そ、そうね!早く交換しましょ!」

169: 2014/12/19(金) 01:32:27.37 ID:ccmnusMN.net
にこ「それにしても、変よね。私たち」

真姫「変?」

にこ「最初に連絡先交換した時も、今も…トイレの個室の中で交換してるんだもん」

真姫「ふふ。確かにそうね。でも私たちらしくて――」

にこ「あ!今やっと笑ってくれたわね!」

真姫「えー?笑った?」

にこ「笑ってたわよ!せっかく真姫ちゃんに笑顔を届けに来たのに、真姫ちゃんが笑ってくれなかったから困ってたのよ!」

真姫「そんなに笑って無かった?まあ、笑ってたらならそれでいいじゃない。にこちゃんのおかげよ。ありがと」

にこ「ふふーん♪どういたしまして!」

真姫「ところでにこちゃん、休みはどんな感じかしら?」

にこ「明日は一日中フリーよ!」

真姫「なら、明日は一日中逃がさないから。誕生日の分とクリスマスの分、にこちゃんにはずっっと私に付き合ってもらうんだから!」

にこ「仕方ないわねー!明日は一日中、ずーっと真姫ちゃんに付き合ってあげるわよ!」



ほんとの
おしまい

172: 2014/12/19(金) 01:46:09.79 ID:MMkWE9mF.net
乙!

引用元: にこ「ふたりぼっち」