1: 2017/05/23(火) 01:44:21.61 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「おはよっ!」

ことり「あっおはよう穂乃果ちゃん!」

海未「おはようございます。今日は遅れませんでしたね!」

穂乃果「だって、遅れたら今日1日体力もたないよ!」

ことり「そうだね、じゃあ行こうか」

海未「切符は忘れていませんか?」

穂乃果「もっちろん!走っていこー!」

ことり「ああっ!待ってよ~」

2: 2017/05/23(火) 01:47:07.28 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「何かな?今日は何かなぁ?」

ことり「お芋だけ…かな」

海未「日に日に物資の不足が目立つようになってきますね…」

穂乃果「もうお芋飽きたよー!」

海未「穂乃果っ!失礼な事言ってはいけません!」

ことり「まあまあ…ことりは好きだよ?」

穂乃果「ぶーっ!見てよこの張り紙!」

うせまべたをもいお

海未「また随分と古典的な…」

穂乃果「いくら学校が無くなってきているからって言っても、これは馬鹿にしてるよね⁉」

ことり「あはは…」

海未「私たちは運が良かったのです。丁度学徒動員の前年度に中学校を卒業することができましたから」

穂乃果「そうだね…雪穂と同じ学年の子たちは小学校でおしまいだから、一般教養を身につけられたことには感謝しなきゃ!」

ことり「ことりは応急処置、感染症予防について教わって本当に良かった!」

海未「保健所には人が絶えませんからね。ことり、毎日お疲れ様です」

ことり「えへへ、ありがとう。2人も大変だよね、お互い頑張ろ♪」

穂乃果「うん!でもね…今日から工場長が来ないんだ…」

3: 2017/05/23(火) 01:47:50.56 ID:z2KwDRZY.net
ことり「えっどうして?」

海未「遂にお国に呼ばれてしまったようです。良い方でした…」

ことり「そっか、残念だよね…」

穂乃果「いつまで続くんだろう…」

海未「勝つまで、と言われるのが世の常でしょう。私たちはいつまで苦しまなければならないのでしょうか…」

ことり「苦しい、かぁ」

穂乃果「やめよっ!こんな暗い話してもしょうがないって!今日は折角の週に一度の休み時間なんだから!」

海未「そうですね、すみません」

穂乃果「2人ともこの後どうするの?」

海未「私は武道の鍛錬を」

ことり「すごいなぁ…ことりは神社で子どもたちに漢字を教えに行くよ!」

海未「穂乃果はやはり、いつもの場所ですか?」

穂乃果「うん!今日も絵里ちゃんに英語を教えてもらうんだ!」

穂乃果「あっもう約束の時間だ!ごめんっもう行くよ!じゃあね~」

海未「迷惑をかけていなければいいのですが…」

ことり「大丈夫だよ。穂乃果ちゃんは火がつくとすっごく真面目に取り組むから!」

海未「ふふっ期待しておきましょう。では、私たちも解散としましょう、では」

ことり「ばいば~い!」

4: 2017/05/23(火) 01:48:40.74 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「おはようございま~す!」

絵里「あら、おはよう穂乃果!毎週しっかり来て偉いわね」

穂乃果「一度決めたらやり遂げるのが穂乃果だから、今日もファイトだよっ!」

絵里「相変わらず元気ね。今日の配給何か良い物でもあった?」

穂乃果「それが相変わらずお芋だけでさ~!やんなっちゃうよ!」

絵里「仕方ないわよ。こんな時代に生まれてきちゃったんだから」

穂乃果「むぅ…あれ?それどこの言葉?」

絵里「ドイツよ。おばあちゃんがドイツの有名な技術者と親交があったから、そのお孫さんと私で手紙でやり取りすることがあるの」

穂乃果「絵里ちゃんはすごいや!やっぱり夢は外交官なの?」

絵里「ええ、この時代が終わったらもっと他の国の人との結びつきを強くしたいから!」

穂乃果「日本と外国を繋ぐ夢の架け橋になるんだね!」

絵里「そうなるといいわね。それじゃあ始めましょ!先ずは先週の復習から…」

5: 2017/05/23(火) 01:49:17.49 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「今日もありがとう!すっごく勉強になった!」

絵里「どういたしまして。来る度に成長しているのが実感できるわ。この調子で頑張ればあと1年で実用レベルに達するはずよ!」

穂乃果「本当⁉やったー!来週も頑張るよ!」

絵里「ええ、楽しみにしてるわ!家での復習忘れないでよ?」

穂乃果「うん!しっかり三回通り書いて読んで覚えるよ!じゃあね~!」

絵里「気をつけて帰りなさいよー」

6: 2017/05/23(火) 01:50:38.29 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「あつまったらつーよいーじぶんになってくよー♪」

穂乃果「おおっとサビ前に着いちゃった!」

穂乃果「ただいまー!」

雪穂「あっお姉ちゃんおかえり…

ウ- ウ-

雪穂「お姉ちゃん!」

穂乃果「うん!すぐ行こう!」

雪穂「手繋いで…いい?」

穂乃果「もちろん!早く行かなきゃ!」

穂乃果「着いたね。雪穂、先入って!」

雪穂「うん、ありがとう…」

穂乃果「怖い?」

雪穂「うん…」

穂乃果「大丈夫だよ…穂乃果が守るから」

雪穂「お姉ちゃんは…怖くないの?」

穂乃果「怖いよ。でも、穂乃果にはユメがあるから!それを叶えられないことの方が怖いかなぁ」

雪穂「どんなこと?」

穂乃果「ヒミツっ!」

雪穂「えー教えてよ~」

穂乃果「またいつか、ね…あ、止んだみたいだよ。出よっか」

雪穂「いつの間にかここに逃げ込む人も私たちだけになっちゃったね…」

穂乃果「元々そんなに人の多い街でもなかったししょうがないよ!」

雪穂「そっかー魚屋のおじさん元気かな…」

穂乃果「きっと山で元気に暮らしてるよ。あそこは安全だから」

雪穂「私は、これからどうすればいいの?工場か、保健所か…」

穂乃果「どうしても山は嫌?」

雪穂「嫌じゃないんだけど、出来る限りお姉ちゃんと一緒にいたいから」

穂乃果「だったら絵里ちゃんに聞いてみるよ。雪穂にもやれることがあるかどうか!」

雪穂「ありがとう!私も誰かの役に立たなきゃ!」

7: 2017/05/23(火) 01:58:01.94 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果(穂乃果のユメ…それはちっちゃい頃からずーっと変わらない)

穂乃果(歌で世界を繋ぐこと!みんなが笑顔になれるような世界にしたい!)

穂乃果(最近はみんな暗いから…穂乃果が光で照らしたいの!)

穂乃果(それが、穂乃果のユメ…)

穂乃果(いつになるかわからないけど、きっといつか来る平和な世界で歌を届けられるように、今やれることを精一杯頑張らなきゃ!)

雪穂「お姉ちゃんどうしたの?」

穂乃果「あっなんでもない!ちょっと考えごと…」

雪穂「へー珍しい…しっかり休みなよ?」

穂乃果「うん!心配かけちゃってゴメンね」

雪穂「そんなの別に…家族なんだから!」

8: 2017/05/23(火) 02:11:18.41 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「…っ⁉そ、そうだよね…家族だもん」

穂乃果「ほら、自分で言って泣かないの!」

雪穂「うぅお父さん…お母さん…お婆ちゃん…」

穂乃果「よしよし、辛いよね…でもね、みんな辛いから、辛いことを経験したから、誰かに優しくなれるんだよ」

雪穂「ごめん…私まだまだ弱虫だ…」

穂乃果「そんなことない!いつも帰って来ると笑顔でおかえりって言ってくれることがどんなに嬉しいか、わからない?」

雪穂「えっ…」

穂乃果「なかなか出来ないよ…昼間ずっと独りぼっちなんて、すっごく寂しいはずだよ」

穂乃果「それでも必ず明るく待っててくれる…穂乃果はそれを見ると疲れなんて吹っ飛んじゃうよ!だから雪穂は弱虫なんかじゃない!」

雪穂「…ありがとう」

穂乃果「さてと、お家に帰ろっか!」

9: 2017/05/23(火) 02:17:40.04 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「よーし今日の復習!」

穂乃果「絵里ちゃんみたいに綺麗に発音出来たらいいなぁ~」

穂乃果「この単語難しいなぁ…訳する時どっちの方がいいんだろう?」

穂乃果「メモしなきゃ!絵里ちゃんも気がついたことはすぐ書き留めておきなさいって言ってたし!」

ーーー

穂乃果「わぁっ⁉もうこんな時代⁉そろそろ寝ないと…」

穂乃果「おやすみなさい…」

10: 2017/05/23(火) 02:23:51.86 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「ぅわぁ!寝坊っ⁉」

雪穂「あ、おはよーお姉ちゃんまだ大丈夫だよ」

穂乃果「おはよっ!そっか危なかったぁ…」

雪穂「最近はいつも起こしてるじゃん!」

穂乃果「そ、そうでした…」

雪穂「頑張ってね!今日からまた」

穂乃果「うん!ありがとう!今週もファイトだよっ!」

海未「おはようございます。穂乃果~?」

穂乃果「あっ海未ちゃんおはよう!今準備するから上がって待ってて!」

海未「以前に比べたら大分落ち着いて生活出来ていますね…やはり時代が人を変えると言いますか…」

穂乃果「お待たせ!行こっか!」

海未「ええ、週の始まりですから気合入れていきましょう!」

穂乃果「ねぇ、さっき何ブツブツ言ってたの?」

海未「な、なんでもありません!」

12: 2017/05/23(火) 02:29:13.70 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「おはよーございます!」

海未「おはようございます」

希「おっおはよー!それじゃ早速入ってもらうよ」

穂乃果「今日から希ちゃんが工場長の代わり?」

希「そうやね。ここももう10人しかおらんし、必然的に1番長くやってるウチが長ってことになるんやろ」

穂乃果「よろしくお願いします工場長!」

希「ふふっなんか変な響き!」

海未「私石炭回収しますので」

穂乃果「あっごめんごめん穂乃果も手伝うよ!」

14: 2017/05/23(火) 02:43:53.02 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「そっかもう10人しかいないんだね…」

海未「人が減るということは残された人への負担が大きくなるということです。今まで以上に頑張らなければいけません」

穂乃果「ひぇぇ、大変だよ…でも弱音を吐いてちゃダメだよね。代わりはいないんだから!」

海未「その通りです。同じ年齢で最前線へ立つ者もいるのですから…」

海未「ふぅ…ひとまずこれくらいで足りるでしょう。点火しますよ!」

穂乃果「オッケー!準備するよ!」

穂乃果「炉が真っ赤になって明るく燃え盛るこの瞬間、ああ、穂乃果も関わっているんだな~って感じがするよ」

海未「国民全てが糧となるのですから…」

海未「私も、あなたも、誰もがみんな…」

穂乃果「ねぇ海未ちゃん…一つ聞きたいことがあるんだけど、いい?」

海未「なんでしょうか?」

穂乃果「穂乃果に何か、隠しごとしてない?」

海未「何もしていませんよ。私はただのこの工場の作業員です。隠すようなことがあるはずがないでしょう?」

穂乃果「そっか、ありがと!じゃあ作業戻ろっか。火が弱まってきたし」

海未「ええ…」

15: 2017/05/23(火) 02:49:02.33 ID:z2KwDRZY.net
希「今日もお疲れ様。家でゆっくり…は出来んけど、少しでも疲れを取ってな!」

海未「お疲れ様でした。また明日頑張りましょう」

穂乃果「お疲れ様でした!ふぅ~今日は一体何を造ったの?」

希「………」

穂乃果「うん?」

海未「………」

穂乃果「あっ2人とも知らないの?良かった~穂乃果だけじゃなかったんだー!」

穂乃果「じゃあね~海未ちゃん希ちゃ…工場長!」

穂乃果「…でも本当に何を造っているんだろう?」

17: 2017/05/23(火) 02:57:02.11 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「ただいま~!あぁ~今日も疲れたぁ」

雪穂「あっお姉ちゃんおかえり!お風呂沸かしたから先入りなよ」

穂乃果「おっ気がきくね~ありがと!」

穂乃果「ふぅ~生き返る~」

穂乃果「今日みんな様子が変だったよね…なんだったんだろう?」

穂乃果「絵里ちゃんなら知ってるかな?今度聞いてみよ…」

穂乃果「お先に~良い気持ち!」

雪穂「すー…すー…」

穂乃果「うたた寝しちゃってる…ごめんね、待たせちゃって」

穂乃果「風邪引いちゃダメだよ?」

穂乃果「相変わらずお芋か…仕方ないよね」

穂乃果「いただきます」

18: 2017/05/23(火) 03:14:13.03 ID:z2KwDRZY.net
希「お疲れ様~今日は早上がりでええよ」

穂乃果「えっどうして?」

希「なんだか今日はお空の攻撃が激しいらしいんよ。だからいつもみたいに暗くなってからの帰りやと困るやろ?」

穂乃果「そうなんだ!ちょっと心配だなぁ…」

希「火事になると大変やからね…水の準備と、電球の黒い布は忘れんようにね」

穂乃果「うん、わかったよ!お疲れ様でした!」

穂乃果「サイレンが鳴るのは大体20時頃…それまでに用意しなきゃいけないから…」

雪穂「あっおかえり早かったね」

穂乃果「なんだか今日は激しいみたいで」

雪穂「そうなんだ…」

穂乃果「大丈夫だよっ滅多に民家には落ちてこないって!」

雪穂「ホントかなぁ」

穂乃果「ホントだよっ!さぁ今日は早めに布団入るよ!」

雪穂「眠れない…」

穂乃果「へへ、実は穂乃果も」

雪穂「お話しよっか」

穂乃果「うん!」

雪穂「今日は良い知らせがあるよ!」

穂乃果「えっなになにー?」

雪穂「花陽さんがお米持ってきてくれたんだ!明日はご飯食べられるよ!」

穂乃果「本当⁉やったーー!じゃあ穂乃果明日朝釣りに行くよ!」

雪穂「えっいいの?」

穂乃果「うんうん!せっかくの白いご飯だよ?豪華にしなきゃ!」

雪穂「やったぁお姉ちゃんありがとう!」

穂乃果「そうと決まればもう寝なきゃ!おやすみ~」

19: 2017/05/23(火) 03:23:00.39 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「うーん早起きはツラい…けど!ご飯の為なら頑張れる!」

穂乃果「行ってきまーす!」

穂乃果「ここ…落ちたんだね…焼け野原だよ」

穂乃果「近くの人は必氏で火を消したんだね、お疲れ様です」

穂乃果「地面がまだ熱いよ…川はどうなっているんだろう」

穂乃果「えっ…うそ…」

穂乃果「真っ黒くろになってる…!」

穂乃果「これは酷いよ…まるで習字に使う墨汁みたい!」

穂乃果「雪穂ごめんね…」


雪穂「おかえり~どうだった?」

穂乃果「取れなかったよ…」

雪穂「そっかぁお姉ちゃんにしては珍しいね」

穂乃果「ううん、そうじゃないんだよ」

雪穂「どうしたの?」

穂乃果「川がね、真っ黒だったの」

穂乃果「とても生き物が住める環境じゃなかった…」

雪穂「そうだったんだ…酷いね…お疲れ様」

雪穂「朝ごはん食べよう?」

穂乃果「うん…」

21: 2017/05/23(火) 03:31:42.58 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「行ってくるね」

雪穂「うん、頑張ってね!」

穂乃果「よっし行ってきまーす」

海未「おはようございます、穂乃果」

穂乃果「おはよう海未ちゃん。昨日の夜はすごかったっぽいね」

海未「実は…」

穂乃果「実は?」

海未「ことりの家の周辺に落ちたそうです。幸い大事には至らなかったようですが、軽い火傷を負ったそうで…」

穂乃果「許せない!どうして?どうして罪もない人が悲しい目に合わなきゃいけないの?許せないよ‼」

海未「少し落ち着きなさい。あなたがどうこう出来ることではないのですから」

穂乃果「じゃあこの怒りを何処へぶつければいいの?」

海未「与えられた仕事をこなす他ありません」

穂乃果「そうだけど!そうだけどさぁ‼」

穂乃果「わかったよ…やるよ…今日も1日、何かわからないものを作ることを」

海未「あなたの気持ちはわかります。ですが、今私たちのすべきことをすることが最優先です。これだけは守ってください」

22: 2017/05/23(火) 03:38:02.66 ID:z2KwDRZY.net
希「おっおはよー昨日は寝れた?」

穂乃果「おはようございます…」

希「あらっ?今日は珍しく元気ないんやね。まぁそういう日もあるか」

希「今日もよろしく~」

穂乃果「あっねぇ希ちゃん!」

希「おわっ⁉急にどうしたん?」

穂乃果「希ちゃんはここの工場長でしょ?何を造っているのか知らないの?」

希「ごめんね…」

希「申し訳ないんやけど、ウチも知らないんよ…」

穂乃果「じゃあ、希ちゃんはどうして何を造っているのかわからないここにいるの?」

希「どうしたって言われてもなぁ…それが仕事やから、としか言いようがないなぁ」

希「あっ!穂乃果ちゃんどこ行くん?」

23: 2017/05/23(火) 03:46:59.47 ID:z2KwDRZY.net
穂乃果「はぁっ…はぁっ…」

穂乃果「こんなの、絶対おかしいよ!」

穂乃果「何処かに必ず答えがあるはず!まず絵里ちゃんのとこだ…」


絵里「はーい!誰かしら」

穂乃果「急にごめん」

絵里「あら、穂乃果じゃない!どうしたのよ?」

穂乃果「絵里ちゃん!あの工場では一体何を造っているの?」

絵里「私も詳しいことはわからないんだけど、恐らく脅威に対する防衛用の何かね」

穂乃果「防衛用?」

絵里「ええ、敵の攻撃を抑えるためのね」

穂乃果「へーそうなんだ!」

そこの女!出てこい!

穂乃果「っ⁉絵里ちゃん…」

絵里「行くしかないわね…」

34: 2017/05/23(火) 11:36:19.18 ID:z2KwDRZY.net
看護婦「南さ~んこっちお願いー!」

ことり「わかりましたー!」

ことり「とは言ってもこっちも手が離せないんだよね…」

兵士「おいお姉ちゃん早くしてくれ!痒くてしょうがねぇんだよ‼」

ことり「すいません!今行きます~」

ことり「うっ…これは…」

ことり「傷口に蛆が沸いてる…」

兵士「おう!取ってくれや!」

ことり「わかりました!えーとピンセットは…」

兵士「最近物が足りてないって?」

ことり「はい、消毒液どころか蚊帳すらない状況なので、マラリアが流行っちゃって…」

兵士「そんでバッサバッサ氏んでいくんだな!ったくえらいこっちゃ」

兵士「まー頑張ってくれや」

ことり「ありがとうございます。私はまだ他の方が控えているので!」

ことり(あの兵隊さん…残念だけど、多分三日後には亡くなっちゃうよ)

ことり「はーい!今行きます~!」

35: 2017/05/23(火) 11:51:44.73 ID:z2KwDRZY.net
ゲホッゲホッゲホッ!

ことり「だ、大丈夫ですかー?」

うん、大丈夫…ゲホッ

ことり「お名前は?」

凛「星空凛にゃ」

ことり「凛ちゃんね、わかりました~」

ことり「喘息か…可哀想に」

凛「夜になると息が苦しくなって寝られないときもあるにゃ」

ことり「良くなるといいんだけど、ゴメンね…今お薬がなかなか出なくて」

凛「そっかぁゲホッゲホッ!」

凛「はぁ…はぁ…ちょっと苦しいかも…」

患者「おい!うるせぇんだよ!もうそんな治らねーガキは捨てろ!」

ことり「なんてこと言うんですか!この子もあなたと同じ人間なんですよ‼」

患者「知らねーよ!静かにしてろや‼」

ことり「酷い…どうしてあんなこと平気で言えちゃうんだろう」

凛「ねぇ、凛はもう治らないの…?」

ことり「大丈夫だよ、絶対治るから!少しだけの辛抱だよ」

39: 2017/05/24(水) 00:39:00.50 ID:rJwHHlrL.net
ことり「ふぅ…今日も1日目が回りそうだよぅ…」

看護婦「南さ~ん!大変!」

ことり「どうしたんですか?」

看護婦「隣街の患者さんコ口リで亡くなったらしいの!」

ことり「えっ本当ですか?やっぱり衛生管理が甘いですよね…」

看護婦「こっちには抗生物質がないからどうしようかねぇ…」

ことり「とにかく感染予防だけは徹底しましょう!ここで広まったら100人以上氏んでしまいます!」

看護婦「そうなったらこの街は終わりね…絶対それだけは阻止しなきゃ」

ことり「飲食の注意を促してください!基本的に経口感染ですから」

看護婦「他の人にも伝えないとねぇ」

ことり「大変なことになっちゃったな…」

40: 2017/05/24(水) 00:57:07.65 ID:rJwHHlrL.net
海未「明日から…ですか」

海未「絶対に帰ってきてくださいね!」

海未「お姉さまは誰よりも強い方ですから!」

海未姉「ありがとう。これも園田家に生まれたら必ず付いて回る運命、もしかしたらあなたも前線に出なければならなくなるかもしれない…その時は覚悟を決めなさい」

海未「重々承知しています。お国のために…ですか?」

海未姉「それは言わないでおく。口に出せば迷いがうまれるから」

海未姉「では、海未。元気で」

海未「ずっとずっと待っていますから!」

海未「んっ……‼バンザーイ!うぐっ…バンザーイ‼」

海未姉「ふふ、行ってきます」


海未「おかしいですよ…こんな若い女性が戦地へ送り出されるなど…あってはならないはずですよ…」

41: 2017/05/24(水) 01:05:07.82 ID:rJwHHlrL.net
海未「1.2.3.4.5.6.7.8!」

海未「もっと強く!私は強くならなければ‼守りたいものも守れません‼」

海未「はっ!はっ!はっ!」

海未「…そろそろ出勤ですね、行きましょう」


海未「上を見上げた空はこんなに青く綺麗なのに…下を向いて広がる地べたは一帯真っ黒な焦土です…」

海未「いつの間にか工場に着いていました…」

海未「おはようございま…ええっ⁉」

海未「希先輩!一体どうしたのですか?」

43: 2017/05/24(水) 11:50:42.56 ID:rJwHHlrL.net
兵士「手を上げろ!」

絵里「………」

絵里「穂乃果もよ」

穂乃果「わわっ!」

兵士「近隣の住民からこの家から異国語が聞こえるという連絡が入った。中調べさせてもらう」

穂乃果「ちょっと!どうして勝手に人の家入って…

絵里「穂乃果…今は我慢よ」

穂乃果「でも…うん」

兵士「おい!この本はなんだ⁉」

兵士「全く読めん…貴様!連合のスパイだな⁉」

絵里(バレたわね…)

絵里「私は通訳をしている者です。あなたが今手に持っているのは私の祖母の代から受け継がれてきたアメリカ、イギリス、ロシア、ドイツ、イタリアとの国交の歴史が記された由緒ある書物です」

穂乃果「え、絵里ちゃん通訳してたの?」

絵里「今は黙ってて」

兵士「そんな物今は必要ない!」

絵里「今後の日本の発展に必要不可欠な大切なものです!」

兵士「他の国の蛮族と交わるつもりはないぞ!」

絵里「鎖国の文化はとうの昔に終わりました!他国の優れた文化を取り入れて発展していくことがこの国の良き習慣であったはず…

兵士「…わかった」

44: 2017/05/24(水) 11:51:22.52 ID:rJwHHlrL.net
穂乃果「よかったぁ…」

兵士「悪く思うなよ」

穂乃果「っ⁉何して…」

兵士「貴様の思想は極めて危険と見た。よってここで処分することに決めた」

絵里「………」

穂乃果「おかしいよ!立派なこと言ってるのに!絵里ちゃんは間違ってなんか

絵里「穂乃果っ‼」

穂乃果「ぅ…絵里ちゃん?」

絵里「…正しい大人になってね」

兵士「さらば非国民」

絵里「かっ…はっ………」

穂乃果「絵里ちゃん‼しっかりして!今止血するよっ!」

穂乃果「絵里ちゃん!絵里ちゃん‼…どうして」

穂乃果「絵里ちゃんの身体が…どんどん冷たくなってく…」

穂乃果「どうして?ねぇどうして⁇」

穂乃果「正しい人が氏んじゃって…間違った人がのうのうと生きてる…変だよ」

穂乃果「教えてよ…絵里ちゃん…」

48: 2017/05/24(水) 12:20:20.29 ID:rJwHHlrL.net
兵士「おい、どけ」

穂乃果「いやだ」

兵士「どけって言ってるのがわからないのか!」

穂乃果「……‼」

穂乃果「この人頃し!鬼!悪魔!絶対に許さない‼」

兵士「許さなくていい、早くその女を引き渡せ」

穂乃果「持って行ってどうするのさ!」

兵士「若い女の身体はいろいろ使い道があるからな」

穂乃果「待って!行かないでっ!」

兵士「静かにしろ!このクソガキが」

穂乃果「うっ…待ってよ…」

穂乃果「悔しいよ…何も出来ないなんて…!」

穂乃果「…決めたよ、穂乃果の目標」

穂乃果「………」

49: 2017/05/24(水) 12:34:22.32 ID:rJwHHlrL.net
傷は?

左胸に一箇所のみです

悪くない。特筆すべきことはあるか?

かなりの言語に対応しているとのことです

ほう、なかなかだな、顔もいい

どうですか?

こいつでいこう…ふふふ

57: 2017/05/24(水) 19:21:13.56 ID:rJwHHlrL.net
希「ウチは反対!防衛用の備品は造っても兵器には手を出さんって前の工場長の時からの決まりやから!」

希「あっ海未ちゃん…」

希「ごめん、なんだかみっともないとこ見せちゃったなぁ」

海未「彼らは?」

希「下士官さんや。ウチらにも武器を造れって無理強いしに来た」

兵士「別に君らが兵器を使って人を殺せと言っているわけではないだろう」

下士官「我々には時間がない」

希「言っとるやろ!ウチは認めん!」

海未(私は…なんとも言えません。どうすればいいのでしょうか)

希「自分が製造した物が何であれ、それらが人を傷つけたらもう凶器と一緒や!」

兵士「強情張りやがって…どうせ奥には火薬庫があるんだろう?なら今更変わらないだろ!」

希「………」

希「悪いけど、海未ちゃん。今日は仕事無しや。この人らを工場に招くから」

海未「?わかりました。お疲れ様です」

59: 2017/05/24(水) 19:34:27.65 ID:rJwHHlrL.net
希「ウチの条件飲むなら協力してもええ」

下士官「条件?何でもいい」

希「…工場の中を一緒に巡回してほしい。それだけや」

兵士「また訳のわからないことを言い出した…」

下士官「黙ってついてこい」

兵士「申し訳ありません!」

希「ほな、行くで」


希「本当はウチは防衛用でさえ嫌やった。でも、この街の現状を打破するには従う他なかった」

下士官「製糸場と繋がっていたんだな」

希「そうや、だから実際ウチらが何を造っているのか知らない人も結構いたんや」

希「ここが一番奥、火薬庫」

希「砲弾等の製造を強いられる度にここに溜めてきた」

下士官「ほう、これほどとは…!かなりの戦力になり得るな!」

希「……‼」

希「ふふっやっぱりあなたたちはそういう考えなんやね」

兵士「なんだと?貴様軍人が勝利を求めないとでも思ったか‼」

希「そんな人ばっかやからこんな時代になってしまうんや!」

下士官「なっ…⁉き、貴様…やめろ…」

希「悪に手を貸すくらいなら…」

希「氏んだ方がマシや‼」

60: 2017/05/24(水) 19:37:29.01 ID:rJwHHlrL.net
なぁ、海未ちゃん知ってた?

工場の裏にはな…

綺麗な白百合が一輪だけ咲いてるんや

なんでやろな?

荒れ果てた大地でも力強く咲き誇っている

ウチはこの白百合が

大好き

62: 2017/05/24(水) 19:50:03.77 ID:rJwHHlrL.net
海未「胸騒ぎがします。ざわざわと、嫌な感じが胸の中で蠢いていて気持ちが悪いです…」

海未「明日はいつも通りの希先輩を見られたらいいのですが…」

65: 2017/05/24(水) 20:12:54.04 ID:rJwHHlrL.net
海未「やはり気になります!放っておけませんよ!」

海未「すぐ行かなければ…」

海未「あれは…野焼きの煙…?」

海未「ですが今はそんな季節ではないはず」

海未「何でしょうか」

海未「…っ‼工場が…⁉」

海未「大変です!すぐに火を消さなければ!」

海未「きゃっ⁉急に強まってきた…?」

海未「逃げなければ…ですが希先輩がっ!」

海未「どうすれば…んっ何か蹴ってしまいましたね」

海未「これは…手榴弾?」

海未「もしかして、あの時…‼」

海未「馬鹿っ!私は…最低です‼」

海未「少しでも疑問を持っていれば…!私がもっと工場のことを知っていれば…こんなことには!こんなことにはならなかったのです‼」

海未「希先輩…私…」

66: 2017/05/24(水) 21:26:53.47 ID:rJwHHlrL.net
凛「ゲホッゲホッゲホッくる…し…ぃ」

ことり「ごめんね、辛いよね…今お薬だすから待っててね」

おい!包帯はないのか⁉

ことり「今行きま~す!」

ことり「すいません、私向こうで手当てしてくるのでこの子にお薬出してあげてください」

看護婦「えっ?私が⁉どうすれば」

凛「いたたた…うぅ」

看護婦「耐えられないほど痛みます?」

凛「うん…」

看護婦「鎮痛剤を打っておきますね…」

68: 2017/05/24(水) 21:52:21.00 ID:rJwHHlrL.net
凛「ヒュー…ヒュー」

看護婦「よかった。落ち着いたかな」

ことり「凛ちゃんの様子はどうですか?」

看護婦「顔色が良く…ない?」

ことり「呼吸に異常があります!窒息している可能性があります!」

ことり「何を飲ませましたか?」

看護婦「痛い痛いって言ってたから鎮痛剤を…」

ことり「っ⁉もしかしてモルヒネを…⁉」

看護婦「ええ、はい」

ことり「…‼駄目ですよそれは!喘息にモルヒネは禁忌なんです!」

看護婦「うそ…知りませんでした…私の先生はすぐに鎮痛剤打てとおっしゃっていたので」

ことり「今はそんなこと言ってる場合じゃないです!」

凛「ゼェ…ゼェ…くるしい…」

ことり「ああっチアノーゼを起こしちゃってます!酸素投与を!」

凛「おねえさん……たすけ…」

凛「………」

ことり「氏んだ…」

ことり「私のせいで…治ったかもしれない患者の命を奪っちゃった…」

ことり「ごめんなさい…本当にごめんなさい‼」

ことり「ううっ…凛ちゃん…約束したのに…ごめんね…」

70: 2017/05/24(水) 22:04:01.82 ID:rJwHHlrL.net
穂乃果「あ…今日は配給の日だ」

穂乃果「行かなきゃ」

穂乃果「………」

71: 2017/05/24(水) 22:05:40.33 ID:rJwHHlrL.net
海未「今日…いつもの日ですね…」

海未「行かなければ…」

海未「……はぁ」

海未「あの炎が…ずっと頭の中から離れません」

72: 2017/05/24(水) 22:06:57.38 ID:rJwHHlrL.net
ことり「…配給かぁ」

ことり「行きたくない。もう何も口に入れたくない」

ことり「でも2人が心配しちゃうから…行かなきゃ」

73: 2017/05/24(水) 22:20:20.38 ID:rJwHHlrL.net
穂乃果「あ…おはよう…」

海未「おはよう…ございます」

ことり「…おはよう」

穂乃果「みんな…なんか、暗いね」

海未「そう言うあなたこそ…珍しいじゃないですか」

ことり「あ、今日もお芋かぁ」

穂乃果「あるだけマシだよ」

海未「そうですね、食いつなげる事象に感謝です」

ことり「どうしちゃったの…」

穂乃果「ごめん…今日はもう解散にしよう」

海未「私も今言おうと思っていました」

ことり「そっか。来週もここで会おうね」

穂乃果「うん…ねぇ海未ちゃん!」

海未「どうしたのですか?」

穂乃果「穂乃果、もっともっと強くなりたい!だから鍛えて!遅刻しない!弱音も吐かないから!」

海未「いいでしょう。私もなんだかみっともない姿を晒していたので丁度良かったです」

海未「泊まり込みでもいいですが、どうしますか?」

穂乃果「うーんちょっと考えてから行くよ。ほら、雪穂もいるから」

海未「わかりました。家で待っていますので」

74: 2017/05/24(水) 23:00:54.00 ID:rJwHHlrL.net
穂乃果「ただいまー」

雪穂「あっおかえり!私もうもらってきたよ」

穂乃果「早いね~偉いよ雪穂は」

雪穂「えへへ、ありがと」

穂乃果「ちょっと大事な話してもいい?」

雪穂「いいよ、どうぞ」

穂乃果「私ね、海未ちゃんの元で心身共に鍛えてもらおうと思ってて」

穂乃果「でも、そうなると雪穂を家で1人にしちゃうから…」

穂乃果「雪穂はどういう選択をしたいのか聞きたいの!」

雪穂「私は、花陽さんのとこで働かせてもらうよ。いいって言ってもらえたらの話だけど…」

穂乃果「そんな即決で大丈夫?」

雪穂「うん、いつまでも甘えていられないし!」

穂乃果「悪いけど…よろしくね。かよちゃんには何か持って行ってあげて」

雪穂「わかったよ。頑張ってね!強くなったお姉ちゃん見るの楽しみにしてるから!」

穂乃果「雪穂…ありがと!」

雪穂「わっ⁉ちょっとびっくりしたよ~」

75: 2017/05/24(水) 23:12:58.40 ID:rJwHHlrL.net
穂乃果「穂乃果です!お邪魔しま~す!」

海未「いらっしゃいませ。私しかいませんから、くつろいで構いませんよ」

海未「それより、どうしたのですか?その荷物…辞書ですか?」

穂乃果「これはね…絵里ちゃんのユメ。ほの…私が引き継いで色んな国を繋ぎたいの!」

海未「そうですか…立派な心がけです!ですが、武道の鍛錬は厳しいですから、程々に、疲れを残さない程度に勉学に励みましょう」

穂乃果「うん!よろしくね!今日はどうするの?」

海未「今日は畑仕事以外何もしません」

穂乃果「あれ…そうなんだ」

海未「最も効率良く鍛えるのであれば、休息が必要不可欠です!休みなし動き続けても身体を壊してしまい元も子もないですよ?」

穂乃果「そっか、流石だね。じゃあ今日はちょっと勉強したら休むよ」

82: 2017/05/25(木) 01:26:45.45 ID:5/0toWhS.net
海未「1.2.3.4.5.6.7.8!」

穂乃果「はっはっはっはっ!はっはっはっはっ!」

海未「もう少し脇を締めて振りましょう。それと、竹刀を地面に付けてはいけません」

穂乃果「わかったよ!こう⁉」

海未「いい感じです!次は、先ほど教えた通りに私の胴を狙ってください!」

穂乃果「よーし!行くよっ!どーうっ!」

海未「残心を忘れていますよ」

穂乃果「あっそうだった!ごめん、もう1回いいかな?」

海未「どうぞ。思い切り、且つ今までを忘れずに!」

83: 2017/05/25(木) 01:36:58.64 ID:5/0toWhS.net
穂乃果「ふぅー疲れた!ありがとう海未ちゃん!」

海未「武芸に励むことで流す汗は美しいとよく言われますが、どういうことかわかったでしょう?」

穂乃果「うん!また1つ成長できた気がするよ」

海未「基本の型は大分出来てきましたね。これからは剣道以外も身につけていきましょう」

海未「ここで復習です。穂乃果、立って礼をし、また座ってください」

穂乃果「えーと右で立ち上がって…海未ちゃんは先生だから45°の礼で…左から座る…こうかな?」

海未「はい!よく出来ました。左座右起は全ての武道に必要な礼儀の根底ですよ」

海未「今日はこのくらいにしておきましょうか」

穂乃果「はーい!お疲れ様!」

84: 2017/05/25(木) 01:59:07.40 ID:5/0toWhS.net
海未「そろそろ消灯しますよ」

穂乃果「わかったよ。準備するね」

穂乃果「ちょっと寝る前に聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」

海未「何ですか?」

穂乃果「海未ちゃんの将来のユメって何かな?」

海未「ユメ、ですか。私は…あなたやことり、それから、これから出会う大切な人を守れるような強く大きな私になりたいです」

海未「あなたも知っての通り…私は異変に気づくことが出来ずに尊敬すべき人を失ってしまいました。こんな後悔をしないためにも強くならなければならないのです」

穂乃果「私、海未ちゃんはいつも自分に厳しくてすごく尊敬してるよ」

海未「ふふ、そう言われると少し照れますね。穂乃果は何か目指す道はありますか?」

穂乃果「今頑張ってることとは矛盾しているかもしれないけれど…」

穂乃果「言葉の壁を越えて、歌を通じて世界の橋渡しをする…それが私のユメ!」

海未「大きな夢ですね。ですが、努力は自分の気がつかないところでも必ず何処かで自分の糧となっています。是非叶えてください。あなたのユメを」

穂乃果「もちろん!聞いてくれてありがとう。今日はおやすみ」

85: 2017/05/25(木) 02:16:03.03 ID:5/0toWhS.net
雪穂「花陽さん!実は…」

花陽「なるほど、そうなんだ…あの…ごめん!」

花陽「実はね、私も祖父のいる田舎へ疎開するんだよ…本当にごめん!」

雪穂「いえいえ、私が一方的に無理言っただけなので、気にしないでください!」

花陽「でもこれから1人で大変だよね…私も何かしてあげたいけど…」

雪穂「いいんですよ!ありがとうございました!」

雪穂「1人かぁ…ちょっと寂しいなぁ…」

雪穂「やっぱり頼れる人がいるのってすごく有り難いことなんだね」

雪穂「はぁ…わっ⁉」

いったいわね!どこ見て歩いてんのよ⁉

雪穂「すいません!考えごとしてて…」

私で良ければ聞くだけ聞いてあげるけど?

雪穂「いいんですか?つまらないことですが…」

雪穂「あ、お名前は?」

にこ「矢澤にこよ。にこって呼んで」

86: 2017/05/25(木) 02:26:40.98 ID:5/0toWhS.net
にこ「両親、祖母が氏んじゃって姉と2人暮らしで姉が修行に行って今1人?」

雪穂「そうです」

にこ「あんた…本当にさ、」

雪穂「はい?」

にこ「よく頑張ったわね。親がいないと辛いわよね…私も親いないから、あんたの気持ちがよくわかる」

にこ「雪穂、よね?来なさい!私の家に」

雪穂「本当に、いいんですか?ありがとうございます!」


にこ「勤勉な姉ねぇ、すごいじゃない」

雪穂「はい!よく出来た人です」

にこ「ふふっ」

雪穂「どうしたんですか?」

にこ「私にも妹がいてね、今は山で他所の子と疎開してるの」

雪穂「そうだったんですか」

にこ「なんかまた妹がいるみたいで久しぶりに嬉しいわ。ホント、奇妙な巡り合わせよね」

雪穂「なんでも言ってくださいね!家事土いじりなんでもやりますから!」

にこ「頼もしいわね。また必要な時に頼むから、そん時お願い」

雪穂「よろしくお願いします!」

87: 2017/05/25(木) 02:42:20.46 ID:5/0toWhS.net
にこ「ねぇ、突然で悪いんだけどさぁ…」

雪穂「何ですか?」

にこ「雪穂隣組最後まで歌える?」

雪穂「それはもちろん…あれだけ聴かされたら嫌でも覚えますよ」

にこ「ちょっと歌ってくれない?」

雪穂「ええっ?いいですけど…」

にこ「はい、じゃぁ~いちにのさんっはいっ!」

88: 2017/05/25(木) 02:48:08.96 ID:5/0toWhS.net
~♪

とんとん とんからりと 隣組

格子こうしを開ければ 顔馴染み

廻して頂戴ちょうだい 回覧板

知らせられたり 知らせたり

とんとん とんからりと 隣組

あれこれ面倒 味噌醤油

御飯の炊き方 垣根越し

教えられたり 教えたり

とんとん とんからりと 隣組

地震や雷 火事泥棒

互いに役立つ 用心棒

助けられたり 助けたり

とんとん とんからりと 隣組

何軒あろうと 一所帯ひとしょたい

心は一つの 屋根の月

纏まとめられたり 纏めたり

※既に著作権が消滅しています
※余談ですが…ド、ド、ドリフの大爆笑~♪はこの歌からきています

90: 2017/05/25(木) 03:20:20.72 ID:5/0toWhS.net
雪穂「なんか人前で歌うのすごく久しぶり…」

にこ「ありがとね」

にこ「私、この歌嫌いなのよ…なんでかわかる?」

雪穂「うーん…」

にこ「まだ難しいか…この歌はね、私たち一般市民の社会を歌ってるのよ」

雪穂「どういうことですか?」

にこ「一番の真ん中は?」

雪穂「格子を開ければ顔馴染」

にこ「まぁまだ普通よね。ちょっと飛んで三番の後半は?」

雪穂「互いに役立つ用心棒助けられたり助けたり」

にこ「うん、じゃあ最後に四番全部」

雪穂「とんとんとんからりと隣組 何軒あろうと一所帯心は一つの屋根の月 纏められたり纏めたり …あっ…」

にこ「気づいた?」

雪穂「今までどうして気がつかなかったんだろう…」

にこ「この歌はね、この制度によって常にお互いを監視しなさい、全ては連帯責任ですって言っているのよ。普段何気なく聞いてたりするけど、恐ろしいと思わない?」

雪穂「初めて知りました…」

にこ「どうせみんなそんなもんよ。銃後の私たちは日々気がつかない間にまた何か統制されるものが増えていくんだから…」

雪穂「自由って、何でしょうか…」

にこ「さぁね、今の国民には知る由もないわね」

91: 2017/05/25(木) 03:22:46.68 ID:5/0toWhS.net
ここまで
文量少なくて申し訳ないです
また順次更新します

95: 2017/05/25(木) 17:35:21.44 ID:5/0toWhS.net
1つ問題がありました

何だ?

着弾点からの出血量が多かったです

そうか…残念だがまだ実用には至らないな。所長に報告しろ

わかりました!

恐らく世に出るのは10年後だろう…針の改善だな

96: 2017/05/25(木) 17:45:58.93 ID:5/0toWhS.net
25218番は冷体温、それから高温耐久に回せ

あり得ないが、両方一定温度を超えた場合、休憩をとらせろ。体力が回復した後は集団と合流させてアイヒマンテストを行う

相変わらず所長も物好きで…

これら全て平常に潜り抜けたというならそいつは最早人間ではないな

普通後遺症どころか、冷体温の時点で氏亡が確定しますよ

そういうことだ

97: 2017/05/25(木) 18:33:46.83 ID:5/0toWhS.net
ことり「手が足りないなぁ」

ことり「腕が4本あればいいのに」

ことり「それなら2人ずつ回診できるのに」

ことり「不可能なこと言ってもしょうがないや」

ことり「綿は…あれ?さっきまであったはずなのに…使っちゃったのかなぁ?」

看護婦「南さ~ん!一度食事とってきたら?」

ことり「ありがとうございます!今行きます~」

ことり「あっお芋がない!困ったなぁ誰か食べちゃったのかなぁ」

ことり「お腹空いたなぁ…」


ことり「今日は帰りが遅くなっちゃった」

ことり「急いで帰らなきゃ」

ことり「人、少なくなったなぁ…だれもいない…」

ことり「…きゃっ!や、やめてください!」

うっ…

ことり「あれ、全然力がない…」

ことり「軍服着てるのにまだ起きない…どんな人だろう」

ことり「えっ…?女の子…?」

ことり「気を失ってる…」

ことり「わっ酷い傷!連れて行かなきゃ」

98: 2017/05/25(木) 18:45:14.73 ID:5/0toWhS.net
…⁉ここは?民家?

私いつの間に…

ことり「あっ起きたんですね!」

(さっきの看護婦…?)

ごめんなさい…

ことり「もう!怖かったですよ!」

ことり「あなたの名前は?」

真姫…

真姫「西木野真姫」

ことり「真姫さん、あなたの年齢は?」

真姫「16…」

ことり「えっ私より1つ年下なんだ…」

真姫「敬語外してよ」

ことり「あ、うん。ねぇ真姫ちゃん、どうしてあんなことしたの?」

真姫「ごめんなさい…何も無くて」

真姫「怪我の治療で綿と、お腹が空いて芋を盗んだのも私」

ことり「そうだったんだ…正直に言ってくれてありがとう」

真姫「っ⁉怒らないの?」

ことり「うーん…あっでもやっぱ怒ることあった!」

ことり「どうして頼ってくれないの?」

99: 2017/05/25(木) 19:40:09.00 ID:5/0toWhS.net
真姫「私はもう表を歩けないの」

ことり「どうして?」

真姫「脱走兵だから…」

真姫「情けなくて…恥ずかしい話よ」

100: 2017/05/25(木) 20:17:14.19 ID:5/0toWhS.net
兵士「敵が接近しています!」

将校「絶対に本土に侵入させてはならん!」

兵士「ですがもう、撃てる物は何も…」

将校「…この船をぶつける」

将校「奴らを上陸させて女子供に手を出させるのは私の、氏んでいった友の意思に反する。貴様らはどうだ、文句があるやつは今ここで私を頃しても構わん」

将校「…誰もいないか?」

元から玉砕覚悟です!

沈めてやりましょう!

将校「わかった…ふふ、ありがとう。君らのような肝の座った者と戦えて、私は幸せだった」

真姫「………」

将校「君は逃げなさい」

真姫「私も覚悟を決めたので!この船と最期を共にします!」

将校「君には将来がある。ここで巻き込むわけにはいかない」

将校「私の生涯最後の我儘聞いてくれんかな」

真姫「そんなこと…私には…」

将校「ここで氏にゆく盟友たちが、誰にも知られずに散っていくのは少し心残りだ。誰かに語り継いでほしい」

真姫「ううっ…無理です」

将校「これを着てくれ。たとえ海に放り出されても寒くないだろう」

真姫「ぐすっ…わかりました」

真姫「ほたーるのーひかーり!まーどーのゆーきー!」

ーーー
真姫「うわぁぁぁぁん‼」

101: 2017/05/25(木) 20:24:39.91 ID:5/0toWhS.net
真姫「気がついたら岸に打ち揚げられていたの」

真姫「彼らの雄姿は、ずっと忘れない」

ことり「そうなんだね…でも、どうしてそんな隠れて生活しているの?」

真姫「言ったでしょ。私は戦場から逃げたのよ」

ことり「真姫ちゃんは逃げてなんかないよ!」

真姫「っ!あなたがそう言っても!世間からは非国民だって思われるの…」

ことり「そんな…」

真姫「仕方ないのよ。みんな生きるのに必氏だから…」

真姫「今日は悪かったわね。もうこれ以上あなたに迷惑かけるわけにもいかないから、帰るわ」

ことり「何処へ帰るの?どうせ帰る場所なんてないでしょ?」

真姫「言ってくれるじゃない…!この馬鹿っ!」

ことり「ああっ待って!」

102: 2017/05/25(木) 20:35:54.93 ID:5/0toWhS.net
真姫「本当は嬉しかった。涙が出るほど嬉しかった!」

真姫「でも、もう泣かないって決めたの。目を閉じると、頑張れ!しっかりしろ!って彼らの声が聞こえてくるから」

真姫「ちゃんと伝えて別れたらよかったのに…いつも素直に言えない自分が嫌になるわね」

真姫「今度は私の番。誰かのために、戦うの」

103: 2017/05/25(木) 20:44:37.67 ID:5/0toWhS.net
来たわ!逃げなきゃ!

ここに隠れよう…まず見つからないはず

…‼

見つけたぜ

あっ…ああっ‼

命だけは勘弁してください!

2人仲良くあの世へい…

………

見て!日本の兵隊さんが助けてくれたよ!

ありがとうござ…ってもういない…?

真姫「気がつかれなくたっていいの。お礼なんて言われなくたっていい」

真姫「誰も知らない、私だけの戦い」

真姫「あなたに誓うわ。全員私が仕留めるって」

106: 2017/05/26(金) 02:02:37.86 ID:1hcPMEFb.net
花陽「おじいちゃん私田んぼ行ってくるね」

花陽祖父「ああ、気をつけてな」

花陽「実がなってきて嬉しいな。一面緑の絨毯みたい!」

花陽「強く逞しく育ってね」

花陽「ふふっ♪」

兵士「綺麗な景色だねぇ。早くも収穫が楽しみかい?」

花陽「はい!すっごく!」

兵士「頑張ってくれよ。この田んぼが華やかな黄色に染まるように、我々も秋には華やかな勝利を収めるから」

花陽「ありがとうございます!兵隊さんもファイト…です!」

112: 2017/05/27(土) 01:18:23.83 ID:kablmUpG.net
花陽「おじいちゃん!さっき兵隊さんに褒められたよ!」

祖父「そうかい、よかったねぇ」

花陽「うん!いっぱい働いたらちょっと疲れちゃった。お昼寝してもいい?」

祖父「はなよちゃんは働き者だからねぇ。少し休みなさい」

ーーー

祖父「申し訳ないですが、私たちも自分らの分を賄うことで精一杯で」

村民「そこをなんとか!」

祖父「収穫の時期になったら喜んで差し出すことができるのですが…」

花陽「…うーん」

花陽「うん?おじいちゃんどうしたの?」

祖父「お隣さんが食べるものがなくって困っているんだってねぇ…」

花陽「そっかぁ…私は大丈夫だよ?」

花陽「少しなら問題無いです!今野菜の種類も増やしているので!」

村民「悪いねぇ…ありがとうございます」

祖父「本当に大丈夫かね?無理しちゃいかんよ」

花陽「心配してくれてありがとね。大変だったら誰かに譲るからいいよ」

113: 2017/05/27(土) 01:36:59.88 ID:kablmUpG.net
花陽「はーい誰ですかー?」

別の村人「いやーうちも困っててさ、食い物分けてくれない?」

花陽「申し訳ないのですが…私と祖父の2人分しかないので…すいません!」

村人「他のやつは貰えたのに俺にはやらねぇってのか⁉」

村人「贔屓すんじゃねぇぞクソガキが!」

やめろ!

村人「ごはっ⁉いってぇ…誰だ?」

真姫「日本帝国海軍将校西木野真姫だ」

村人「う、嘘こいてんじゃねぇ!軍人様はそんなチビじゃねぇんだ!証拠を出せ証拠を!」

真姫「この帽子の徽章を見てまだ戯言を言うか!」

村人「はっ⁉す、すいませんでしたぁ!」

真姫「帰れ!猿は山にでも篭っていろ!」

真姫「はぁ…またくだらないとこで体力使っちゃった」

花陽「あのぅ…」

真姫「うぇっ⁉」

花陽「ありがとうございました!すごく格好良かったです!」

真姫「べ、別にいいの。腹が立っただけ」

花陽「あの…」

真姫「何?はっきり言いなさい!」

花陽「きゃっ!ごめんなさい!」

真姫「…?変なの」

114: 2017/05/27(土) 01:41:46.02 ID:kablmUpG.net
花陽(私は声が小さくて…はっきりしなくて…)

花陽(だからいつも怒られちゃう)

花陽(でも、あの人はすごくはっきり話してて、威厳もあって)

花陽(とても素敵な人だった…)

花陽(もし…また会えたら、私のダメな部分を直してくれないかなぁ)

花陽「はぁ…本当にダメだなぁ、私」

115: 2017/05/27(土) 01:49:11.67 ID:kablmUpG.net
真姫「そっか…さっきの私、怒ってるように見えたんだ…」

真姫「昔から不器用なんだから…」

真姫「かわいそうだからあの子に一言謝った方がいいかも」

真姫「でも、これ以上関わることなんて無いんだからそんなことする必要なんてないわ」

真姫「どうしよう…」

真姫「やっぱもう一回戻りましょ」

116: 2017/05/27(土) 01:51:22.83 ID:kablmUpG.net
今日も朝あるため一旦ここまでです
早ければ昼再開

123: 2017/05/27(土) 23:04:25.51 ID:kablmUpG.net
花陽「はぁ…」

真姫「はぁ…」

花陽「わっ⁉」

真姫「えっ⁉」

花陽「…あのっ!」

真姫「…ねぇ!」

花陽「あ、先言ってください」

真姫「ありがと…あの、私!別に怒ってないから!」

花陽「いっ⁉ああ、そうだったんですかぁ…!」

花陽「あのぅ…どうしたらはっきり自分の意志を伝えられるようになれますか?」

真姫「知らないわ」

花陽「ええっ⁉あんなに堂々としていたのに…」

真姫「頭にきたら勝手に動いてるだけよ。私も普段素直に言いたいこと言えなくてよく自分が嫌になるの」

花陽「…知りませんでした」

真姫「難しいわね、上手く物事を伝えるのって」

花陽「はい…」

真姫「あの時…私は…」

花陽「どうしました?」

真姫「あっ!なんでもないわ。ちょっとね…」

花陽「質問ばかりで申し訳ないのですが、兵隊さんは、どうしてこちらにいらしたのですか?」

真姫「…約束したの。ここには絶対に敵を侵入させないって。私が一方的に決めたんだけど」

花陽「誰と…ですか?」

真姫「…っ⁉そうね…愛する人よ。冷静で、勇敢で、最後まで大和魂を体現した人」

124: 2017/05/27(土) 23:12:38.84 ID:kablmUpG.net
花陽「す、すいません!先の無礼深くお詫びします!」

真姫「そんなのいいのよ。私のせいなんだから」

真姫「いつも考えてる。あの瞬間のこと。もっといい判断が出来たんじゃないか、もっと前から戦況を予測していれば、なんていろいろ…」

花陽「………」

真姫「ごめん、つまらないこと喋っちゃって。もうこの話はおしまい」

花陽「いえ、とんでもありません!私…あまり年が変わらないのに何やってるんだろ、なんて思って」

真姫「何言ってるの!あなたはあなたのやるべきことがあるでしょ。お祖父さんを大切にしなさい」

花陽「は、はい!」

真姫「それと、えと…あ、ありがとう」

真姫「それだけっ!」

花陽「行っちゃった…恥ずかしがり屋さんなのかな。少しだけ、私と似てるところもあるのかも」

125: 2017/05/27(土) 23:37:12.16 ID:kablmUpG.net
真姫「ちょっとせこい方法だったかしら」

真姫「でも、さっきよりすっかりした気がする」

真姫「ふふっ…」

見つけたぜ!氏ね!

真姫「………」

ゔ…な、なんだこいつ…

真姫「…敵でよかったわ」

真姫「抵抗なく撃ち抜けるから」

あいつ…笑ってやがる!

頭おかしいな…所謂中毒ってやつだ

ここは一旦引くぞ!近づくやつの腹わた掻っ捌く気だ

真姫「何とでも言えばいいじゃない。鬼でも悪魔でも構わないわ」

真姫「この腰抜け共が」

126: 2017/05/28(日) 00:24:10.59 ID:vbc8egiH.net
海未「腰が引けていますよ!」

穂乃果「わっ!」

海未「その状態だと引き手が不十分になり、自分が崩れてしまいます」

穂乃果「そうなんだ…」

海未「ですからこうしていとも簡単に投げられてしまうのです」

穂乃果「なるほどね!」

穂乃果「確かに私が一歩後ろに下がった時に海未ちゃんが技をかけに来てたね」

穂乃果「どうすればいいの?」

海未「すぐに答えを出すのもいいのですが…少し自分で考えてみてください」

穂乃果「うん!えーと、先に攻めるのは?」

海未「えー、あながち間違ってはいないのですが…」

海未「穂乃果、私に投げられるのが怖くないですか?」

穂乃果「…‼うん、まだちょっと怖いかも…」

海未「そうでしょう。やはりもう一度受け身の練習からにしましょうか。恐れを無くす事でいつ投げられてもいいという心の余裕ができ、より積極的に技をかけにいけますよ」

穂乃果「基礎って大事だよね。わかった!また最初からお願いします!」

海未「はい!何でも、何度でも、やり直しましょう。出来るようになるまで!」

127: 2017/05/28(日) 00:41:21.39 ID:vbc8egiH.net
穂乃果「海未ちゃんさ」

穂乃果「その何でも何度でもやり直しましょうっていう言葉、よく使うよね」

海未「ふふっ実はこの言葉、生前父がよく私に言ってくださったものなのです」

海未「おまえはまだ若いから、若い内に何度も失敗しておけばいい。その度にやり直せ。大人になり、自立した時過去に犯した過ちとその時のやり直しを振り返ればつまらないことで周囲に迷惑をかけずに済む、と」

穂乃果「へーいい言葉だね!やり直しかぁ」

海未「穂乃果にはもう一度振り返りたいことはありますか?」

穂乃果「うん!たくさんあるよ…でも、今は前に進むとき!」

海未「穂乃果らしいですね。ずっとそのままのあなたを大事にしてください」

海未「では、この後は…お茶でも飲みましょうか」

穂乃果「やったー!海未ちゃんお疲れ様!今日もありがとう」

128: 2017/05/28(日) 01:09:05.38 ID:vbc8egiH.net
ことり「…?こんな夜中に誰だろう」

ことり「こんばんは~」

ことり「…っ⁉あ、あ…」

凛「こんばんは!」

ことり「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

ことり「私が悪かったの!ごめんなさい!」

凛「ん?お姉さんはなんで謝ってるの?」

ことり「ちゃんと私が診てあげていれば凛ちゃんは…」

凛「凛はお礼を言いに来たんだよ?」

凛「凛と最後まで一緒にいてくれてありがとにゃ!こんなに優しい人に出会ったのはお姉さんが初めてだったにゃ!」

凛「これからも、頑張ってね!凛も応援してるから!」

ことり「凛ちゃん…」

ことり「ありが…いない」

ことり「…夢?違うよ。だって」

ことり「最期に凛ちゃんの手に握らせてあげた御守り。こんなところにあるんだもん」

ことり「私、頑張るよ。1人でも多くの人を助けるために」

129: 2017/05/28(日) 01:16:27.24 ID:vbc8egiH.net
ことり「…危ないけど少し散歩しよう」

ことり「お墓の前で、青白い火の玉みたいなものが、ぽうっと夜を彷徨ってる」

ことり「どうしてかな、あんまり驚かないの」

ことり「一つだけ、飛び回っているのが…私にはなんとなく誰なのかわかるよ」

ことり「ありがとね、凛ちゃん」

130: 2017/05/28(日) 01:20:19.25 ID:vbc8egiH.net
生まれてきてくれてありがとう

元気に育ってくれてありがとう

一生懸命働いてくれてありがとう

ずっと励ましてくれてありがとう



一緒に氏んでくれて

ありがとう


あなたのことは

忘れない

131: 2017/05/28(日) 01:24:57.96 ID:vbc8egiH.net
にこ「はっ⁉」

にこ「すごい汗…またイヤな夢みたわね…」

雪穂「すー…すー…」

にこ「起きるの先でよかったわ。この子は本当にいい子だけど、心配性なところがあるから…」

にこ「頭痛い…イヤな夢みたあといつもこうなるのよ」

にこ「そんで」

にこ「大体その日に良くないことが起きる」

132: 2017/05/28(日) 01:42:52.13 ID:vbc8egiH.net
雪穂「おはようございます」

にこ「ん、おはよう」

雪穂「どうかしました?」

にこ「え?なんで?」

雪穂「あまり顔色が良くないような…」

にこ(鋭いわね…)

にこ「なんか体調悪いみたいで、まぁ大したことないんだけど」

雪穂「駄目ですよ!しっかり休んでください!」

にこ「今日中に収穫しないといくつかダメになるわ」

雪穂「それなら私がやりますから!」

にこ「あんた、私に逆らおうって?」

雪穂「す、すいません」

雪穂「で、でも…」

にこ「ごめん雪穂、あんたしっかりしてるから、キツく言わなきゃ絶対引かないと思って」

にこ「許して、今日はなるべく家にいたくないのよ」

雪穂「わかりました…ホントに無理はしないでくださいね」

134: 2017/05/28(日) 02:15:36.88 ID:vbc8egiH.net
にこ「………」

雪穂(絶対大丈夫じゃない…額の汗がすごいよ)

雪穂「にこさん、全部掘りましたよ」

にこ「おつかれさっ…」

雪穂「大丈夫ですか⁉立てますか?」

にこ「だ、大丈夫よ…」

雪穂「無理しないでくださいって言ったじゃないですか!」

にこ「ごめん、お願い。今日だけは…」

にこ「…‼雪穂!家の裏行って‼」

にこ「私も…行くから…」

雪穂「私がおんぶしますから!乗ってください!」

にこ「ダメよ、それじゃあ遅い…」

雪穂「今度は譲りません!乗ってくれるまで私は動きませんから!」

にこ「…悪いわね」

135: 2017/05/28(日) 02:16:44.05 ID:vbc8egiH.net
雪穂「どうして家の裏なんですか?」

にこ「ありがと、降ろして」

にこ「そこの肥料全部どけるわよ」

雪穂「え?」

にこ「早く!」

雪穂「わかりました…あっ‼」

にこ「ほら、鳴り出した!急ぐわよ」

雪穂「結構狭いですね…」

にこ「わざとよ。わざと私が少人数用に作ったんだから」

雪穂「え…1人で⁉」

にこ「ええ、妹たちには内緒でね」

にこ「いざって時に家族だけ避難させるように掘っておいたの。なかなかしんどかったわ」

雪穂「わっ⁉大きな音…」

にこ「…燃えたわね、あの山」

雪穂「…あの、」

雪穂「何故全てわかるんですか?」

にこ「…他言禁止よ?」

にこ「いつからかね…ぼんやりとなんだけど、予知夢みたいなのがあるのよ」

136: 2017/05/28(日) 02:35:02.21 ID:vbc8egiH.net
にこ「確か最初に雪穂と会った時に妹は疎開させたって言ったでしょ」

雪穂「はい」

にこ「あれ、嘘なの」

雪穂「ええっ⁉じゃあ妹がいるっていうのは…」

にこ「それは本当よ」

雪穂「まさか…」

にこ「可哀想に…母が氏んで、一週間後に後を追うようにして氏んだわ」

にこ「私はその時一度氏んだ」

にこ「怠いような、肩に重りがついたような、どんよりとしたものに取り憑かれて」

にこ「何もかもが真っ白で、何もかもが真っ黒にしか見えなくなった」

にこ「人間の不思議なことは、あまりに衝撃を受けると何も見えなくなるのよ」

にこ「しばらくしたら、本当に片目の視力を失った。雪穂には言ってなかったけど、今も右の目には光さえ映らないの」

にこ「そんでね、光を失うのと引き換えに…不吉な夢を見えるようになった」

にこ「まぁみたくてみてるわけじゃないんだけど」

にこ「どう?私のこと、おかしい人間だと思った?」

雪穂「おかしいとは思いません…でも」

雪穂「何故私に嘘を吐いたのですか?」

にこ「…あの日も、イヤな夢をみた」

にこ「目の前で妹が熱い熱いって言いながら炎に包まれるのに、私は縛られたように動かない夢」

にこ「気分が悪いから歩いてた。そしたら…あんたがいた。それも姉と離れた妹」

にこ「気がついたら声をかけてて…私は…」

雪穂「にこさん!にこさん‼」

137: 2017/05/28(日) 02:46:30.79 ID:vbc8egiH.net
にこ「はっ⁉」

にこ「ここは⁉」

雪穂「あ、起きたんですね!よかった~お家ですよ」

にこ「家?私の⁉」

雪穂「そうですよ」

にこ「ふふっ!あっはっはっは‼」

にこ「あっはっはっは‼変ねぇ~おかしいったらないわ‼」

雪穂「ど、どうしたんですか?」

にこ「外したのよ!」

にこ「何もなかったわ!ただ空襲から逃げただけ‼」

にこ「何もなかったことをこんなに嬉しいと思うの、初めてよ」

雪穂「何はともあれ、無事でよかったです」

にこ「ええ、そうね…でもなんか気持ち悪いから今日は寝るわ」

雪穂「はい、ゆっくり休んでくださいね…」

にこ「すー…」

にこ「母さん…」

138: 2017/05/28(日) 02:53:48.37 ID:vbc8egiH.net
何してるの?

母さん⁉なんで?

なんでって…逆になんでそんなこと聞くのよ?

…‼母さん!母さん‼

どうしたのよにこったら…お姉さんでしょ

あら?どうして泣いてるの?

嬉しくって…ずっと寂しかったの

お姉さま!おかえりなさい!

姉ちゃんおかえりー!

こころ!ここあ!ダメじゃない遠くへ行っちゃ!

もうずっと一緒よ?勝手に離れちゃダメよ?

お姉さま、どうしてずっと泣いてるんですか?

…‼ごめん!いつもの笑顔のおまじないしなきゃね!

にっこにっこにー!

139: 2017/05/28(日) 03:08:28.32 ID:vbc8egiH.net
その後、にこさんが夢の世界から帰ってくることはありませんでした

お医者さんに駆けつけて、氏因を調べてもらったところ、急性くも膜下出血だそうです

突然の氏にただひたすら泣きじゃくっていた私に、お医者さんは不思議そうに言いました

普通なら2日前に倒れて亡くなっているはずなのに、1日活動していたというのが奇妙だ、と

時間でいうと、私に防空壕へ避難させた辺りで、既ににこさんの脳はほとんど氏んでいる状態だったそうです

あの時話してくれたことの全てが本当かどうかはわかりません…

にこさんの遺体は、私を助けてくれたあの防空壕へ埋葬しました

あまり綺麗な場所ではないですが、にこさんもきっとそこがいいと思うでしょう

お姉ちゃん…私、またひとりぼっちになっちゃったよ

143: 2017/05/28(日) 12:59:12.01 ID:vbc8egiH.net
海未「いつの間にか夏ですね…暑くなってきました」

穂乃果「うーん寒いよりはいいかなぁ?」

海未「草刈りをして、風通しを良くしましょうか」

穂乃果「そうだね!手伝うよっ」

海未「蚊に刺されないように蚊取りに火をつけておきますから」

穂乃果「夜になると痒くて痒くて嫌だよねー」

海未「では、先に外へ出ていますから、きりがついたらあなたも来てください」

穂乃果「うん!」

海未「?誰でしょうか…はい、園田です」

召集令状をもってまいりました

おめでとうございます

海未「…ありがとうございます」

海未「穂乃果…」

144: 2017/05/28(日) 13:15:05.97 ID:vbc8egiH.net
海未「今日の夜までに伝えなければ…」

穂乃果「海未ちゃんどうかしたのー?」

海未「わっ⁉何でもないです!行きましょう…」

穂乃果「悩みがあったら言ってね、私もなるべく力になるから!」

海未「あ、ありがとうございます」

海未「私は…元気ですから…心配しないでください」

穂乃果「ん?はは、海未ちゃん変なの~」

海未「そうかもしれませんね…」

穂乃果「ホントにどうしたの⁉」

海未「後で必ず言いますから…」

穂乃果「わかったよ。後でね」

145: 2017/05/28(日) 13:21:34.54 ID:vbc8egiH.net
花陽「もう夏かぁ…」

花陽「食中毒に気をつけなきゃいけない季節だね」

花陽「と言っても食べ物なんて全然ないんだけど…」

花陽「さて、そろそろ一仕事しなきゃ」

花陽「うう…暑い…」

花陽「後で川行こ…」

146: 2017/05/28(日) 13:31:36.37 ID:vbc8egiH.net
ちっ……

お前最近ずっとイライラしてないか?

チョコ食うか?

いらん。そんなもんもう体が慣れちまった

…川行ってこいよ。頭冷やせ

ちっ…うるせぇな

出してないんだろ?1人くらいパクってこいよ

ふん…


あいつキレさせると俺が殺されるからな…

147: 2017/05/28(日) 13:37:47.16 ID:vbc8egiH.net
花陽「ふぅ…冷たくて気持ちいい…」

花陽「人…減ったなぁ…」

今日はついてるぜ

あの娘にするか…


おい!氏ぬか言うこと聞くか、どっちだ⁉

花陽「きゃっ⁉だっ誰か助けてぇー!」

153: 2017/05/29(月) 00:47:07.54 ID:Gcajd6Ny.net
花陽「こ、こないでぇーっ!」

うるせぇ!動くんじゃねぇ‼

花陽「ああっ…ぅ脚が…」

花陽「動けな…い…」

花陽「いっ嫌っ!やめて…」

花陽「誰かたすけ…むぐっ」

ちっ手間かけさせんなクソが…

おら、さっさと股開け!

花陽「あっ…やめ…」

用が済んだら楽にしてや…ぐあっ‼



真姫「言ったじゃない…ここは危ないって」

花陽「あわわ…お、鬼…!」

花陽「助けてぇ!」

真姫「っ……⁉ちょっと!」

真姫「待って!そっちは行っちゃダメ!」

花陽「食べないでー!」

真姫「止まって!行っちゃダメよ‼」

真姫「そっちには地雷が埋まって…」

真姫「馬鹿ーっ!」

154: 2017/05/29(月) 00:53:12.65 ID:Gcajd6Ny.net
今思えばとても失礼なことをしてしまいました

それにもかかわらず彼女はすぐ私の元へ駆けつけてくれたそうです

私を背負って町の病院まで連れていってくださった時、お医者さんや看護婦さんたちは恐れ慄いたと聞きました

返り血を全身に浴びて必氏の表情で私の治療を求める彼女の姿はまるで村の伝承の赤鬼そのものであったと…

155: 2017/05/29(月) 01:08:51.35 ID:Gcajd6Ny.net
ゆっくり起き上がってくださいね!

花陽「あ、ありがとうございます…えと、名前は?私は小泉花陽…」

亜里沙「絢瀬亜里沙です!1年前疎開してきました」

花陽「実は私もなんだ」

亜里沙「花陽さんもですか!よろしくお願いします」

花陽「亜里沙ちゃんはどうしてここの病院に?」

亜里沙「私は…ただのお手伝いです!不器用だから何か運ぶことくらいしか出来ないですが…花陽さんは?」

花陽「私はね…恩人の忠告も聞かずに危険な場所に入っちゃったせいで…」

花陽「左腕と左足の腿から下を失ったの…」

158: 2017/05/29(月) 01:34:36.70 ID:Gcajd6Ny.net
亜里沙「本当だ…痛々しいです…」

花陽「私は馬鹿だよ…何度も私を助けてくれたのに…あんなに酷いこと言っちゃって…多分これはなるべくしてなった当然の報いだね」

亜里沙「恩人ってあの赤鬼さんですか?」

花陽「っ…そ、そうだよ」

亜里沙「あの人花陽さんが起きる少し前まで何時間もずうっとそこで座って心配そうにみてましたよ」

花陽「…⁉それ…本当?」

花陽「言わなきゃ!申し訳ありませんって謝罪とありがとうございますって感謝を…」

亜里沙「今は動かない方がいいですよ!」

花陽「でも…わぁっ!」

花陽「いたた…」

亜里沙「私が何か伝えておきますから、安静にしててくださいね」

花陽「ごめんね…でも、私が直接言いたいから、待っててって言っておいて」

亜里沙「わかりましたー!お大事に~」

159: 2017/05/29(月) 01:45:40.92 ID:Gcajd6Ny.net
亜里沙「えっ…うそ…そうです、か」

亜里沙「わかりました。言っておきます」

亜里沙「そんなことあるんだ…」

亜里沙「花陽さんに何て言えばいいんだろう」

亜里沙「そのまま伝えるしかないか…」

160: 2017/05/29(月) 01:55:24.53 ID:Gcajd6Ny.net
花陽「はぁ…はぁ…もう少し…」

亜里沙「あ!何やってるんですか!安静にしてって言ったのに!」

花陽「早く動けるようにならなきゃ…お家へ帰らなきゃ…!おじいちゃんが心配してるの!」

亜里沙「もう連絡入れましたよ」

亜里沙「悲しんでいるそうですが、ゆっくり治せ、とのことです。あと、今日から私、亜里沙があなたの監視…担当です。よろしくお願いします!」

花陽「そっか、ならよかったよ…あ、真姫さんは?早く会わなきゃ…」

亜里沙「残念ですが…会わない方がいいですよ」

花陽「どうして?そんなの悲しいよ!」

亜里沙「会ってもいいですが…とても辛い思いをすることになるんじゃないかと」

花陽「それでもいいよ!お願い‼」

亜里沙「はぁ…わかりました」

左肩を寄せてくださいね」

161: 2017/05/29(月) 02:32:00.43 ID:Gcajd6Ny.net
亜里沙「よいしょ…よいしょ…1.2…1.2…」

花陽「はっ…はっ…ふぅ…」

花陽「頑丈そうな扉だねぇ」

亜里沙「開けますよ…いいですか?」

亜里沙「はーい大丈夫です、では、花陽さん中に入ってください」

花陽「うん…」

166: 2017/05/30(火) 02:27:16.98 ID:3DrR8yLi.net
扉を開けた先に見えたのはー

見世物小屋のように鎖で繋がれた恩人の姿でした…

167: 2017/05/30(火) 02:44:52.32 ID:3DrR8yLi.net
花陽「なっ…⁉ど、どうしてこんなこと…」

亜里沙「強い衝撃か何かで精神が不安定となってしまったそうです…外へ出歩くと危険なのでここで秘匿するように、と先生が…」

花陽「私を何度も助けてくれたんだよ⁉こんなのって…あんまりだよ!」

真姫「私はおかしくない!こんなところにいつまでもいられないの!出して‼」

花陽「真姫さんっ!」

真姫「花陽…よかったわ…でも左側なくなっちゃったのね、可哀想に」

花陽「今は自分の心配をしてください!」

花陽「ねぇ亜里沙ちゃん!どうしてこんな酷いことするの?」

亜里沙「ごめんなさい…私には…」

真姫「お願い!出してよ!私にはやらなければいけないことが…」

医師「頃しをか?」

真姫「あんた…!」

医師「見なさい、この瞳を。こんな殺意の塊のような獣を外へ出せると思うかね?」

花陽「その獣が私を何度も救ってくださったんです!」

医師「君は黙っていなさい」

医師「私が用があるのはおまえだ…今までに何人頃した?」

真姫「そんなの…覚えてないわ」

真姫「絶対に本土への敵の侵入を許すべからず…これが私の部隊の鉄則なの。ここでぐずぐず出来ない」

医師「関係ない人を巻き込む危険性がある以上無理だ…諦めなさい」

真姫「意味わかんない…ふざけないでよ!」

168: 2017/05/30(火) 02:56:39.90 ID:3DrR8yLi.net
医師「もう一度聞く。今までに何人頃した?」

真姫「知らない!」

医師「今素直に答えれば開放するつもりだったが…やめだな。残念」

真姫「っ⁉汚い手使って…それでも日本男児か!恥を知れ!」

医師「自分の行為に恥じることはある、なんせおまえが言うように日本は恥の文化だからな」

真姫「くそっ…出してください、お願いします」

医師「誠意が足りないな」

真姫「お願いします‼」

医師「やはり開放はやめようか…ぐはっ!」

花陽「この地域一帯を守ってくださっているのは彼女なんですよ⁉こんなところへ閉じ込めていたらあなたも敵に命を狙われるかもしれなくなるんですよ!」

医師「お、おまえっ誰が瀕氏のおまえの治療をしたと思って

亜里沙「治療をしたのは臨時で入ってくれた新人の方です」

医師「き、君っ!何を言って…!」

花陽「今のうちですよ?」

医師「申し訳ございません…!」

169: 2017/05/30(火) 02:57:13.95 ID:3DrR8yLi.net
続きは後で更新再開します

171: 2017/05/30(火) 11:27:10.83 ID:3DrR8yLi.net
真姫「早くしなさいよ」

医師「まずい…私の責任だ…院長になんて言えば…がっ⁉」

真姫「そうやって年上にはへこへこと頭下げて年下には虐待⁉舐めんじゃないわよ‼」

医師「いっ…」

花陽「ちょ、ちょっと真姫さんやりすぎじゃ…

真姫「うるさい‼」

花陽「す、すいません…」

医師「ぐっ…」

真姫「くだらない時間を過ごしたわ。もう行く」

亜里沙「………」

亜里沙「大丈夫ですか…?」

医師「やってくれたな…!」

医師「あの子は本当に戦闘依存症なんだぞ!しっかり精神鑑定した結果だ‼」

医師「私だって若者の命の散るのを見過ごしたくわない…だから多少強引にでも引き留めたんだ!」

医師「陸軍だと兵士の精神がおかしくなったらその場で処分なんだぞ…理由はさっき私があの子に言った通り…敵味方見境いなく暴れ出すかもしれないからだ」

医師「全く…どうすれば…」

173: 2017/05/30(火) 18:57:45.83 ID:3DrR8yLi.net
医師「追うぞ!あのままではあの子もあの子の周りも危険だ」

花陽「………」

医師「聞いているのか⁉」

花陽「…‼はいっ」

医師「身体が不自然に震えて笑い出す、大声を出すといった症状が確認できたら…良くて気絶、最悪頃すしかない」

花陽「花陽そんなのダメですっ!」

医師「その最悪の事態になることを防ぐ為に行くんだろう。これは君が招いたものだぞ!しっかり責任を取れ!」

花陽「すいません…」

花陽「どうして私は間違いばかりなんだろう…」

174: 2017/05/30(火) 19:14:24.68 ID:3DrR8yLi.net
頑張れ!まだやれるだろう!

当たり前じゃない。これくらい余裕よ

頼もしいな、期待してるぞ

ありがとう、見てて…私、戦い続けるから!終わるまで‼

ふふっ…

175: 2017/05/30(火) 19:23:15.16 ID:3DrR8yLi.net
穂乃果「あははは!見て見て海未ちゃん変な虫捕まえた~!」

海未「………」

穂乃果「あれ?いつもならひっ⁉やめてください!って言うのに…」

穂乃果(そっとしておこう…)

穂乃果「ちょっと疲れたね!私今日はこの辺で終わりたいかな」

海未「…はい、終わりましょう」

穂乃果「うん…」

穂乃果(後でそれとなく聞こう…)

176: 2017/05/30(火) 20:08:00.60 ID:3DrR8yLi.net
穂乃果「海未ちゃん今日元気なかったけど…どうしたの?」

海未「実は…」

海未「うっうぅぅ…」

穂乃果「…⁉ど、どうしたの?どこか痛い?」

海未「違うんです…」

海未「お国から…赤紙が…と、届きました…」

穂乃果「っ…そっか…」

穂乃果「私はいつまでも待っているから、心配しないで行ってきて」

海未「穂乃果…!」

海未「約束しますよ…あなたがユメを掴むまでに帰ってくると!」

穂乃果「…今日は一緒に寝よう。明日早いなら私も頑張って起きるから」

海未「うぅっ…ありがとうございます」

178: 2017/05/30(火) 23:10:20.36 ID:3DrR8yLi.net
穂乃果「…おはよう」

海未「私が起こさずとも早く起きられましたね」

穂乃果「だって今までで一番大事な時だもん海未ちゃん、ファイトだよっ!」

穂乃果「海未ちゃん…」

穂乃果「ねぇ!穂乃果も連れてって!やっぱり海未ちゃん1人戦場へ向かわせるなんて出来ない!」

海未「こんな時になって何を言い出すかと思えば…」

海未「無理言わないでください」

穂乃果「大丈夫だよ!みんなに混ざって合流すればなんとか…」

海未「穂乃果、私はあなたのなんでも言ったことを実現する姿勢を心の底から尊敬しています」

海未「ですが今度ばかりは別。あなたを連れて行くことは不可能です、物理的にも精神的にも」

穂乃果「行くよ!行くったら行く!」

海未「っ…これ以上私を困らせないでください‼」

穂乃果「駄目!絶対引き下がらない!」

海未「あなたって人はぁ…!」

海未「このっ馬鹿者っ!」

穂乃果「いだっ!」

海未「立て!」

穂乃果「ぐっ…わっ!」

海未「馬鹿!」

穂乃果「がっ…」

海未「不孝者!」

穂乃果「けほっ…」

海未「歯ぁ食いしばれ‼」

穂乃果「あぁっ…うっおぇぇ…」

海未「この程度で嘔吐するような軟弱者は軍の足手まといだ!帰れ‼」

穂乃果「けほっけほっ…ごめんね…ほのかずっとまってるから」

海未「うっ…!し、知るか!私は行く‼」

穂乃果「こんな別れ方、したくなかっよ…」

179: 2017/05/30(火) 23:17:58.33 ID:3DrR8yLi.net
海未「ぅ…ぐすっごめんなさい穂乃果…私は最低な人間です!」

海未「あなたは本当に優しい人だから、絶対に引き下がらないとわかっていました。あなたを止めるには…こうするしかなかったのです…許してください…!」

海未「前日、顔は泣きそうてあっても落ち着いて話を聞いてくれた時も…本当によくできた人だと思いました!そんな親友を殴り倒して逃げるように出陣して…私はなんて愚かなんでしょう…!」

海未「神様…どうか穂乃果をお守りください」

海未「…電車が…来ましたね」

海未「穂乃果…必ず戻りますから」

186: 2017/05/31(水) 23:49:40.78 ID:xUGHFiDM.net
雪穂「今日、何曜日だっけ…」

雪穂「もう何日歩いたんだろう…」

雪穂「つかれ…た…」

雪穂「お姉ちゃん…」

雪穂「………」

187: 2017/05/31(水) 23:54:12.37 ID:xUGHFiDM.net
人が倒れています!周囲の状況よし!

大丈夫ですかー?もしもーし?もしもーし⁉

反応ない…呼吸の確認!1.2.3.4…

雪穂「ん…わっ私こんなところで…」

ことり「あ…起きた!よかったぁ…って雪穂ちゃん⁉」

雪穂「ことりさん…久しぶりです」

ことり「こんなところで危ないよ!どうしたの?」

雪穂「すいません、所謂行倒れです…」

ことり「とりあえず保健所行こう!」

188: 2017/06/01(木) 00:02:14.26 ID:OjT6LbzP.net
ことり「そっかぁ…それは本当に残念だね…」

ことり「でも、そのにこさんは絶対満足してお空へ行ったよ。今雪穂ちゃんが生きているのはにこさんのおかげ、だからあの人のぶんまで精一杯生きなきゃ」

雪穂「そうですね…私前向かなきゃ」

ことり「あとね、悪いんだけど…ちょっと手を貸してくれるかな?今人手が足りなくててんやわんやなの!」

雪穂「勿論!私に出来ることがあればなんでもお申し付けを!」

ことり「ありがとう!いきなりだけど、まず気をつけなきゃいけないことから説明するね。えと、感染症が流行った時は…

189: 2017/06/01(木) 01:39:15.27 ID:OjT6LbzP.net
真姫「うっ!つっ…」

真姫「こんなの痛くもなんともない!」

真姫「私はまだやれるわ!」

真姫「氏ね!氏ね!氏ね‼」

真姫「あはははははは‼」

あいつおかしいぜ…撃つか?

いや待て、下手に刺激するな…聞いた話本物の化け物らしい。なんでも氏体を蜂の巣にするまで帰らないんだと

だがほっとけば俺たちも全滅だぞ!ここで仕留めるしかないだろ

…気が乗らんな。仕方ない

撃て!

…外した?っ‼

真姫「終わりよ」

ぐ…

てめぇよくも…!氏ね!

真姫「ふふふ」

があっ!クソが…

真姫「もっと!もっと!私はっ…ここ!」


花陽「いました!真姫さんっ!」

医師「待て!すぐに近づいていけない」

花陽「すいません、わかりました」

医師「大分狂ってるな…怖いとは思うが…正面から声をかけなさい」

医師「自我を保てていないと判断した場合…私が後ろから撃つ」

花陽「わ、わかりました。行きます…」

190: 2017/06/01(木) 01:48:15.69 ID:OjT6LbzP.net
花陽「真姫さん!私です!花陽ですっ!」

真姫「邪魔するな!頃すぞ‼」

花陽「ひっ⁉真姫さん…」

花陽「ううん、ここで引いちゃダメ!」

花陽「武器を降ろしてください。私はあなたの仲間です」

真姫「私の仲間は全滅した!敵艦へ特攻し勇ましい最期を飾ったのをこの目で見届けた‼」

花陽「今のあなたをかつての戦友が見たらどう思うでしょうか?」

真姫「黙れ!このっ……」

真姫「はな…よ…?」

花陽「真姫さん…!よかったぁ…」

真姫「ダメじゃないこんなとこにいちゃ…流れ弾で氏ぬわよ」

花陽「もう敵は退避しました…帰りましょう」

真姫「?わかったわ…」

真姫「…‼いたっ…ううう…痛いっ腕が…んっ!」

医師「…これはもう手遅れかな」

191: 2017/06/01(木) 02:04:45.85 ID:OjT6LbzP.net
医師「左腕を見なさい。小指の壊氏が進行して腕全体が壊疽している。残念だが切断するしかないが…いいな?」

真姫「…お願い」

医師「麻酔は必要か?」

真姫「いらない」

医師「…そうか。辛いぞ」

医師「君はどこかへ行っていなさい。かなり血を見るぞ?ショックで倒れても助けないからな」

花陽「はい、わかりました」

医師「目閉じてなさい」


真姫「ぃあああぁぁあああ‼」

真姫「ぅぅぅっああっ…‼」

医師「よく耐えたな、偉いぞ。痛みに耐えかねてそのままショック氏する兵士が結構いるから…大したもんだ」

真姫「はあっ…はっはあっ…ふぅ…くっ…!」

真姫「…ありがとう」

医師「私はこれくらいしかしてやれんからな…」

真姫「外の攻撃は?」

医師「君が全部やってくれたおかげでしばらく無いよ。流石といったところか」

真姫「でも、またすぐ…」

医師「一つ約束だ」

真姫「何よ?」

医師「手続きは済ましてやるから…君はもう戦場へ行くな」

192: 2017/06/01(木) 02:13:38.61 ID:OjT6LbzP.net
医師「ここに義手がある。負傷して腕を損壊した兵士の為のものだ。君が休むというなら付けてやる」

真姫「そんなのいらない」

医師「君を慕ってくれる人がいるんだぞ!あの子の意思を尊重する気はないのか?」

真姫「…花陽」

真姫「悪いけど、私の氏ぬ場所は戦いの中って決めてるから」

医師「揺るがないな…仕方ない…後悔してもしらんよ」

真姫「あの時以上の後悔なんてないわ」

医師「左腕、出しなさい…」

199: 2017/06/02(金) 22:40:54.82 ID:Hd4awzwE.net
真姫「前衛的でいいじゃない」

真姫「行ってくるわ」

医師「もう君の判断に口は出さんよ。日の丸背負って、存分に暴れてきなさい」

真姫「…ありがとう」


花陽「あれ?真姫さんは何処ですか?」

医師「行ったよ。私には止められなかった」

医師「言伝を預かっている」

医師「お揃いじゃなくてごめん、だそうだ」

花陽「そんなっ!いつ帰ってくるんです⁉」

医師「帰ってこないよ。そんなつもりはない、と顔に出ていたしあの子もそう言っただろう」

花陽「どうして…ずるいよ…私まだ…」

200: 2017/06/02(金) 22:54:02.38 ID:Hd4awzwE.net
花陽へ

もう、ずっと一人で戦ってきた

仲間なんていらないって思ってた

でも

何故かずっと私に付き纏う同年代の子がいて

その子の性格は私とは全然違うのに何処か自分に似てるところを探していた

ある時はっと気がついた

中々譲らないところがそっくりなことに

直接言うのは恥ずかしかったから言わず終いだったけれど…

それは素晴らしい個性だから、いつまでも大事にして

私も腹に括った覚悟の一太刀だけは

誰にも折られないから

真姫

201: 2017/06/02(金) 23:35:20.61 ID:Hd4awzwE.net
真姫「私、西木野真姫のこの命、日ノ本一の兵と共に鎮むことを誇りに思う」

真姫「突撃‼」

来たぞ!赫悪魔だ‼

ぶち殺せ!

真姫「蜂の巣にしてやるわ!いけっ!」


真姫「一両爆破!次は!」

真姫「背中ががら空き‼」

がはっ…

真姫「本気?」

真姫「ちんたら歩いてる奴から串刺しにしてあげる」

ぬあっ!

真姫「まだまだ‼」

ぎゃぁぁあ‼

真姫「終わらないわ!」

202: 2017/06/02(金) 23:35:57.51 ID:Hd4awzwE.net
真姫「うっ…!ふん!これくらい…」

真姫「何ともない‼」

真姫「そこっ‼」

ぐっ…

真姫「あと…少し…」

真姫「うあっ!いった…」

真姫「…⁉まず…」

真姫「うっ…まだ……」

真姫「おわれな…い…‼」

がっ…クソ…やられたぜ…

真姫「ふ…ふふっ…全滅…ね」

真姫「私も…ここまで」

真姫「ふふふ…見てた?私…やり遂げたわ、最期…まで…」

真姫「やっとあなと元へ行けるわね…」

ご苦労様、ゆっくり休みなさい

真姫「あ…がと……い…て…る………」

真姫「げほっ‼」

真姫「あいしてる」

203: 2017/06/03(土) 00:37:34.15 ID:9FLpt1Mn.net
雪穂「また一人目の前で…」

雪穂「氏んでいった…」

ことり「辛いことさせちゃってごめんね」

雪穂「いえ、大丈夫…です」

ことり「実はね、ずっと言おうと思っていたのになかなか言えなくて…今言っていい?」

雪穂「…なんですか?」

ことり「私ね、軍医として島行かなくちゃいけなくなったの…」

雪穂「…⁉えっ…」

ことり「向こうでは亡くなった人を焼却炉へ運ぶんだけど…あまりの多さに人手が足りなくて」

雪穂「………」

雪穂「私が、行きます」

ことり「なっ!どうして?」

雪穂「ことりさんはここにいなきゃダメなんです!みんなあなたを頼りにしている…だから離れないでください!私が代わりに行きますから!」

ことり「雪穂ちゃん…本当にいいの?」

雪穂「はい…それに、この仕事は私がやらなければいけないんです」

雪穂「土に還すのが…私の使命な気がするので」

ことり「そっか…ごめんね、よろしくお願いします。雪穂ちゃんの分まで私、本土で頑張るから!」

ことり「あっちにいるおじさんに声掛けて。いつ舟を出すか知っているはずだから」

雪穂「わかりました…行ってきます」

204: 2017/06/03(土) 01:06:55.37 ID:9FLpt1Mn.net
雪穂「ここが…」

雪穂「っ…着いていきなり…」

雪穂「海の方から腕が流されてる…」

軍医「半分以上は力仕事だが頼む。女がどうこうって話はしないから」

雪穂「わかりました。よろしくお願いします」

雪穂「うっ…酷い臭い!」

軍医「最初はきついが慣れるとわからないもんだ」

軍医「氏にそうな人間じゃなくて助かりそうな人間を探してくれ」

雪穂「どうこうことですか?」

軍医「焼けた人間の大半は助からない。我々がこんなこと言うのは本来おかしいが、心を鬼にしてくれ。助かりそうにない人は…見捨ててほしい」

雪穂(何より辛いのは…私がこの人の考えを何の抵抗もなく受け入れられていること)

雪穂(人でなしって思われるかもしれない…怨み妬まれるかもしれない…でも)

雪穂「やらなければいけない時は無慈悲に来るんだよね…」

205: 2017/06/03(土) 01:16:51.83 ID:9FLpt1Mn.net
兵隊さん、兵隊さん

雪穂「…?あっ…!」

雪穂(そっか、私ももう守られる側にいるんじゃなくて、誰かを守る側の立場なんだ…)

雪穂「どうしましたか?」

水を…水をください

雪穂「っわかりました」

雪穂「ゆっくり飲んでくださいね」

ありがとう…

雪穂「えっ…?」

雪穂「うそ…氏んじゃった…」

雪穂「私のせいで…!」

軍医「泣くな」

雪穂「んっ…‼」

軍医「君の行動は間違っていないが正しくもない。全身に火傷を負った人は水を飲むとこうしてすぐ氏ぬ。覚えておいてくれ」

雪穂「わかり…ました」

水をくれ…水をくれ…!

雪穂「ひっ…今治療しますから!」

水…!みず…たのむ…くれ…

雪穂「うぅぅ…ごめんなさい」

207: 2017/06/03(土) 01:33:37.92 ID:9FLpt1Mn.net
雪穂「眠い…ぶっ通しで治療してるからか」

雪穂「臭いと相まって倒れそう…」

雪穂「あっ糸切れちゃった…ごめんなさい!」

う…う…う…

雪穂(この人はもう無理かな…)

あぁぁあああ‼

雪穂「何処へ行くんですか⁉」

いや!いや!いやっ‼

雪穂「窓に足掛けてると危ないですよ!どうしたんです…

あ…あ………

雪穂「そのまま亡くなった…」

雪穂「きっと…建物の中で爆撃にあって…思い出したのかな、その時の瞬間を…」

雪穂「みんな同じ場所で折り重なって亡くなっていく…」

雪穂「これは、もしかすると」

雪穂「明日の私かもしれない…」

218: 2017/06/06(火) 01:07:22.26 ID:Yw0DGo2s.net
穂乃果「海未ちゃん…」

穂乃果「あんなに広かったお家が今ではびっくりするほどがらんとしちゃったよ」

穂乃果「毎日掃除するよ。毎日稽古つけるよ。語学も頑張るよ。だから」

穂乃果「心配しないで、ゆっくり帰ってきてね」

穂乃果「私は待ってるよ、ここで」

219: 2017/06/06(火) 01:40:10.57 ID:Yw0DGo2s.net
海未「満員ですね…窮屈です」

海未「田舎へ戻る者、戦地へ向かう者、それから………車内は三者三様老若男女入り混じっていて変な感じです」

あなた…国から召集がかかったのね

海未「う…どうしてわかるのですか…?それと貴女は?」

ツバサ「綺羅ツバサよ、あなたの上官にあたるわ」

海未「わっ!失礼しました!私は園田海未と申しますっよろしくお願いします!」

ツバサ「元気があるのはいいことよ。えと、なんでわかったか、だったかしら」

海未「ええ…」

ツバサ「不安な人間は目が不自然に泳いでいるからすぐにわかるわ。ただきょろきょろするんじゃあなくて、体も忙しなく動いてた。もうあなたみたいな人を何回も見てきたから…そうなんだなぁって」

海未「上官は何故この電車に乗られているのですか?」

ツバサ「移動よ。補給の手伝いに行っていたから」

海未「そうでしたか。戦場へ行かれるのは何度目ですか?」

ツバサ「本土は2回目よ。島では…生き地獄だった。思い出すだけで震えが止まらない」

海未「っ…不遜なことをお聞きしてしまい申し訳ありません!」

ツバサ「余計なこと、ではないわ」

ツバサ「また目の前で地獄を見ないようにと、自分への戒めよ」

220: 2017/06/06(火) 01:47:41.18 ID:Yw0DGo2s.net
ツバサ「着いたわ」

海未「は、はいっ」

ツバサ「少し落ち着きなさい。色々支障が出るわ」

海未「申し訳ありません…」

ツバサ「すぐに謝るなっ!」

海未「っ…‼」

ツバサ「敬意は払えど強い態度でいろ!そんな調子で戦場へ行けば真っ先に氏ぬぞ‼」

海未「わ、わかりました!」

ツバサ「わかりましたじゃない!はいでいい‼」

海未「はいっ」

ツバサ「声が小さい‼」

海未「はいっ‼」

ツバサ「…よし」

ツバサ「緊張しないで、今言ったの全部本当だから」

ツバサ「弱気になったら氏ぬわ。忘れないで」

221: 2017/06/06(火) 02:10:12.56 ID:Yw0DGo2s.net
海未「また…お会いできて嬉しいです」

ツバサ「偶然じゃない、必然よ。待っていたのだから」

海未「集められてからは意外と早く散らばるのですね」

ツバサ「どうせあなたも『君たちは国の宝だ!』なんて言われたでしょう?」

海未「はい…仰る通りです」

ツバサ「国の宝だというならどうして徒らに若人を特攻させるのかしらね」

海未「………」

ツバサ「ふふっごめんなさい、お喋りが過ぎた。今の聞かれてたらだるまにされちゃうわね。気をつけなきゃ」

海未「…それは冗談でしょうか?」

ツバサ「本当よ。あなたと同じくらいの歳の工場の娘が、私の目の前で不満垂れたのを陸軍の、えーと、偉い人に聞かれて四肢全部切り離された挙句彼らの駐屯地へ連れて行かれたわ。その後どんなことをされたのかは…私は、知らない」

海未「そんな…」

ツバサ「今の世の中ありえないことを平気でやれてしまう人がその辺歩き回っているわ。あなたも気をつけて」

海未「はい…っ!上官‼」

ツバサ「しっ!静かに…」

222: 2017/06/06(火) 02:21:27.93 ID:Yw0DGo2s.net
海未「あわっ…はっ…はっ…はぁ」

ツバサ「海未、後ろ向いて」

ツバサ「深呼吸、すーはーすーはー…ほら、やってなさい」

海未「はい…すー…はー…」

ツバサ「いけっ…!」

うぐっ…!

ツバサ「命中、ど真ん中」

ツバサ「はい前向いて!」

海未「はい…きゃっ⁉」

ツバサ「こうなりたくなかったら覚悟を決めなさい」

ツバサ「戦場に情けは無用よ」

海未「う…はい‼」

223: 2017/06/06(火) 02:39:28.56 ID:Yw0DGo2s.net
ツバサ「あと、敵の遺留品に手を出しちゃダメ。もちろん情が湧くからよ」

海未「放っておくのですか…」

ツバサ「ええ、たとえ相手が頃した戦果に首を持っていってしまう人間でも、耳を切り落としてネックレスにしてしまう人間でも、ね」

ツバサ「敵だから」

ツバサ「自分を頃し、敵を頃すの。ここは、そういう場所」

海未「私も…いつかは上官のようになることができるでしょうか」

ツバサ「ずっと鍛えていたんでしょう?しなやかな筋肉が武道に励んでいたことを物語っているわ。大丈夫、あなたは私よりずっと強い」

海未「えっ…?」

ツバサ「私は今も怖いから…怖くて、こんなところ逃げ出したくてたまらない。だからそんな弱い自分の首を毎日締めてるの、心の中で」

海未「そうですか…」

ツバサ「何も戦いを知らない人間は頭おかしくなければ平然と頃すことなんて出来ないわ…」

224: 2017/06/06(火) 02:42:01.62 ID:Yw0DGo2s.net
一旦ここまで
出来れば今日の夜更新

226: 2017/06/07(水) 00:17:27.05 ID:NJmzc/ra.net
雪穂「すいません、道開けてくださ~い」

雪穂「ぅわっ!ごめんなさっ!…あ」

雪穂「もう氏んじゃってる…」

雪穂「すっかり慣れちゃったなぁ」

軍医「燃やすぞ、運んでくれ」

雪穂「わかりました」

軍医「だんだん人の氏体を運んでいるって感覚がなくなってきているだろ」

軍医「私がそうだ。亡くなった人たちには申し訳ないが…」

雪穂「もう何人積みましたか?」

軍医「ここに来てから自分一人で軽く200…全員合わせれば1000を超えるはず」

雪穂「1000人も…こんな簡単に頃してしまうなんて」

雪穂「みんな真っ黒で判別がつかないのに、不思議と家族はわかってしまうんですよね…小さな女の子がお母さんを探して氏体置き場をずっと歩き回っていました」

雪穂「真っ黒な山から、見つけたんです、母さんを。賢い子で、口を開けて歯型を見て確信したのでしょう。安心したのかそのまま息を引き取りました」

雪穂「2人折り重なるように…」

227: 2017/06/07(水) 00:42:47.83 ID:NJmzc/ra.net
軍医「今日はやけに静かだな…」

雪穂「こんな日があってもいいじゃないですか」

軍医「減ったんだな、人が」

軍医「この島で被害にあった人も、我々軍の人間も」

雪穂「そういえばもう3~4人で作業していますからね…」

軍医「…⁉あれは…!」

雪穂「えっ?」

軍医「戦闘機だ…鳴ってないよな⁉」

雪穂「はい…日本のではないですか?」

軍医「あれは違うぞ…間違いない」

軍医「避難だ!急げ‼」

雪穂「っ…了解しました」

軍医「来たっ!激しいぞ!」

雪穂「向こうの家屋がまた火の海に…」

軍医「あいつら…島ごと焼き払うつもりだな」

軍医「とりあえず生存者用に船を出すが…準備に時間を要する」

軍医「私が出られるようにしておくから、君は助かる見込みのある人を連れて来てくれ!無理は承知の上だ…すまない」

雪穂「…行って来ます」

228: 2017/06/07(水) 00:53:51.45 ID:NJmzc/ra.net
雪穂「あっつ…ただでさえ夏なのに」

雪穂「今歩ける方いますか~?いたら返事してくださ~い!」

雪穂「私、最低だ…」

歩けます~

雪穂「でしたら海の方へ向かってください!他の方もよろしくお願いします!」

雪穂「歩ける方いますか~⁉」

助けて!助けて!

雪穂「ん、どこだろ…あっ!」

身体が挟まって出られないの!お願い出して‼

雪穂(どうしよう…)

うう…誰か助けて!

雪穂「手を出してください!」

ああ…!ありがとうございます!

雪穂「せーのっ!」

助かりました…ありがとうございます

雪穂「海の方へ向かってください。船を出しますので」

わかりました!

雪穂(なんですぐ助けられたのかはわからない)

雪穂(でも…あの子が走っていく時なんとなく思ったんだよね)

雪穂(あの子、お姉ちゃんに似てるなって)

雪穂「一旦戻らなきゃ」

229: 2017/06/07(水) 01:02:58.09 ID:NJmzc/ra.net
軍医「ご苦労様。船出すぞ」

雪穂「わかりました…あれ?あの子がいない‼」

軍医「どうしたんだ?」

雪穂「海の方へ行ってって言ったのに…!私もう1回見て来ます!」

軍医「馬鹿、よせっ!」


雪穂「はぁ…はぁ…いた!」

雪穂「駄目でしょこんなとこにいちゃあ!海の方へ行って!船出すよ」

雪穂「…聞いてる?」

お姉さん、海見てください、海。ほら

雪穂「え?あ……」

雪穂「船が…沈んで…」

雪穂「遅かったんだ…」

私、この島で氏ぬって決めてたんです

だから、不満はないです

雪穂「…そうなんだ」

雪穂「ごめん、私は…」

雪穂「もうちょっとだけでも、生きたかったなぁ…」

雪穂「お姉ちゃん…」

230: 2017/06/07(水) 02:00:04.03 ID:NJmzc/ra.net
看護婦「南さん!急いで!」

ことり「今行きますっ!」

看護婦「真っ暗ねぇ…」

ことり「熱も篭ります…あつ…」

-お腹すいた~

-痛いよ~!お母さ~ん

-うるせぇ静かにしろっ!

-落ち着いてください!

ことり「今日も慌しいなぁ」

ことり「人の声と、空襲の爆撃音」

ことり「ずっと耳に残るんだよ…」

231: 2017/06/07(水) 02:05:50.93 ID:NJmzc/ra.net
ことり「もう休ませて…疲れちゃったの」

ことり「音は止まない」

看護婦「南さーん!南さーん‼ねぇ、いない⁉」

ことり「うっ…!」

ことり「うるさい!うるさいうるさいうるさい‼みんな静かにしてよ‼」

ーーー

ことり「っ!静かになった!外も何も音がしないなんて!すごいよ」

ことり「やっと落ち着いて寝られる…」

239: 2017/06/08(木) 22:52:43.28 ID:bGYYsEfN.net
海未「もう身を隠す場所もありませんね…」

ツバサ「ええ、こんなにも広かったのかってくらいね」

ツバサ「何もかも焼き払ってしまうんだから…」

ツバサ「はぁ…」

ツバサ「……ん⁉」

海未「どうなさいましたか?」

ツバサ「白い服で歩いてたら…狙われるじゃない…!」

海未「上官っ⁉」

ツバサ「ちょっと行ってくる!」

ツバサ「ちょっとあなた!危険よ⁉家へ帰りなさい‼」

あんじゅ「ええっどうして?」

ツバサ「白いの着てたら目立つじゃない!」

ツバサ「ほら、早く!」

あんじゅ「わかったわかったわ、戻るから~」

240: 2017/06/08(木) 22:53:20.36 ID:bGYYsEfN.net
ツバサ「本当に危ないんだか…らっ…⁉」

ツバサ「ぐっ…ったぁ…やっぱ狙われてたか…」

海未「上官?上官⁉」

ツバサ「馬鹿ねぇ…一本取られたわ…」

海未「誰ですか!誰に⁉」

ツバサ「結構遠く…ね」

海未「追います!絶対仇をとりますから!」

ツバサ「そうして頂戴」

海未「何処ですか⁉絶対額に風穴を開けてやります‼」


ツバサ「…行ったわね、よかった」

ツバサ「こんな情けないとこ、とてもみせられないわ」

まだ生きてたぞ、こいつ

ツバサ「うっ…はぁ…はぁ…」

しぶといやつだぜ

ツバサ「くっ…み、見てなさい!」

おい、逃げろ!あいつに近づくな!

ツバサ「これが日本の…ハラキリよ」

242: 2017/06/08(木) 23:01:12.17 ID:bGYYsEfN.net
海未「いけっ!」

がっ…

海未「んっ…未だに慣れません…人が氏ぬのは」

海未「この方にも家族がいて、友人がいて…」

海未「ずっと帰りを待っている…」

海未「…‼そんなこと、私だって同じです!」

海未「仕方がなかったんですよ…やらなければこっちがやられますから」

海未「また、探さなければ」


海未「上官!上官‼」

海未「どこへ行ったのでしょうか…」

海未「街へ出ますか」

248: 2017/06/10(土) 01:46:41.28 ID:pKx9BjNM.net
海未「警報鳴り始めましたね…」

海未「…あれ、どうしたのでしょうか…」

子ども「行っちゃったねー」

海未「珍しいですね、こんな朝早くに」

子ども「ねぇ、兵隊さん!日本は絶対勝てるよね⁉」

海未「っ…ええ、もちろんです!」

海未(もう今や悪足掻き状態です…人も資源も尽きてしまいました…)

海未「私と同じくらいの歳の兵を見ませんでしたか?」

子ども「見てないー」

海未「そうですか…わかりました」


海未「見ませんでしたか?」

見てないです

海未「見ませんでしたか」

うーんわかりませんね…

海未「やはり山でしょうか…何処へ行ったのでしょう」

海未「不氏身の人です、今も何処かで冗談を言っているはず…」

249: 2017/06/10(土) 01:51:01.80 ID:pKx9BjNM.net
海未「流石に何度も山を越えるのはしんどいです…」

海未「ふぅ…ひと休みしましょう」

海未「…おや?また敵の戦闘機が上空に…」

海未「急速旋回して帰っていって…?」

海未「ああ…な、何ですかあれ…」

海未「………」

250: 2017/06/10(土) 01:56:03.34 ID:pKx9BjNM.net
祖父が、亡くなりました

私が保健所を行ったり来たりしている間に…年だったんだと思います

せめて、ありがとうや、お疲れ様って言ってあげたかった

せめて、花の一輪でも添えてあげたかった…

私は本当に親不孝者です

…だから、こんな生き地獄を味合うことになってしまったんだと思います

251: 2017/06/10(土) 02:03:04.74 ID:pKx9BjNM.net
亜里沙「またぼーっとしてますけど…」

亜里沙「元気出してください」

花陽「身体の半分を失って、更にはおじいちゃんもいなくなって、元気出せって…」

花陽「そんな器用なこと、私には出来ないよ」

亜里沙「ごめんなさい」

花陽「謝らないで」

花陽「悪いのは私だよ…いつまでも引きずって…」

亜里沙「何かやれること探すといいって先生が言っていました」

亜里沙「また後で来ます。失礼しました…」

花陽「私に出来ること…」

花陽「花を眺めるくらいしかないよ」

花陽「花かぁ…」

花陽「あれ?書き留め用の筆…なんでこんなところに」

花陽「…ありがとう」

花陽「もしかしたら、私にも出来ることがあったのかもしれない」

255: 2017/06/11(日) 12:55:58.05 ID:7A9Fxnh8.net
海未「大きな大きなキノコのような形をした雲が」

海未「街の真ん中から立ち昇っていきました…」

海未「あんなもの、今迄見たことがありません」

海未「少し億劫ですが、今はそんなこと言っていられません!引き返しましょう」

海未「これは…」

海未「地獄、そのものじゃないですか…」

海未「なぜ、」

海未「何故ここまで人の道に反したことを為すことができるのでしょうか」

海未「ここまで徹底的に潰す必要は、あるのでしょうか」

256: 2017/06/11(日) 13:19:47.50 ID:7A9Fxnh8.net
海未「家屋にべったりとついた大きな染みのようなもの」

海未「人の形をしていますが…」

誰か取って!目が開かないの

海未「どうしたのです…わっ⁉」

海未「顔一面に硝子が刺さって見るだけでも痛々しいです…」

海未「大きいものだけ今取りますから、少し待ってください」

ありがとうございます…

海未「目鼻の判別もつかないような焼氏体が至る所に転がっています…酷い…」

海未「先程から腐った臭いと、鉄のような臭いが充満していて鼻につんと刺さります」

海未「私も、作業に参加しなくては」

257: 2017/06/11(日) 13:37:04.15 ID:7A9Fxnh8.net
そっち上げてくれ~

こっち消火完了ー!

海未「ふぅ…夜になっても終わりません」

海未「なんだか、いつもより疲れが取れない気がします」

おっ⁉姉ちゃん腹!どうした⁉

海未「私…ですか?」

腹のあたりひでぇぞ!

海未「なんともな…⁉」

海未「いつの間にこんな血がべったり…」

大丈夫か⁉

海未「ええ、特には」

海未「ゲホッ…⁉」

血ぃ吐いてるじゃねぇか!こりゃ大変だ

海未「う…何故でしょう…」

海未「身体から血が止まりません…!」

海未「あっ………」

大丈夫か⁉しっかり!

海未「なんとか…立てます…」

258: 2017/06/11(日) 14:06:01.87 ID:7A9Fxnh8.net
穂乃果「そういえば今日放送あるんだっけ、ラヂオつけよ」

~ー~ー

私は深く世界の大勢と日本国の現状とを振り返り…





あなたがた国民は、これから私の意をよく理解して行動せよ…

穂乃果「よく、わからなかったけれど…」

穂乃果「終わったんだね…」

259: 2017/06/11(日) 17:20:26.46 ID:7A9Fxnh8.net
穂乃果「手紙来てる、なんだろう?」

穂乃果「ことりちゃんからだ!」

穂乃果「最寄りの病院へ来てください…?」

穂乃果「とりあえずすぐ向かわなきゃ!」

穂乃果「いってきます」

260: 2017/06/11(日) 17:25:33.79 ID:7A9Fxnh8.net
穂乃果「ことりちゃん!久しぶり」

穂乃果「ことりちゃん…?」

ことり「…あっ!穂乃果ちゃん!久しぶりだね」

穂乃果「あれ?いきなり何か書き出してどうしたの?」

ことり「突然でごめんね、私耳聞こえなくなっちゃったの」

穂乃果「…そ、そうだったんだ…」

穂乃果「この紙に書けばいい?」

ことり「うん、お願い」

穂乃果『今日はどうしたの?』

ことり「ここにね、来てるの」

ことり「海未ちゃん」

261: 2017/06/11(日) 21:55:25.60 ID:7A9Fxnh8.net
穂乃果「えっ?本当⁉」

穂乃果「あっごめん!」

穂乃果『本当?どこに?』

ことり「うん…向こうの病室だよ」

穂乃果『せっかく帰ってきたのに元気ないね どうして?』

ことり「…ごめん」

穂乃果『行こ行こ!』

穂乃果「失礼しま~す」

穂乃果「海未ちゃん…?」

海未「………」

ことり「寝ているんだよ、少し待ってあげて」

穂乃果「うん、それなら起きるまで待ってるよ」

262: 2017/06/11(日) 22:51:52.33 ID:7A9Fxnh8.net
ことり「…⁉穂乃果ちゃん…いつから来てたの?」

穂乃果「あ、ことりちゃん!」

穂乃果『3日前からいるよ~』

ことり「駄目だよ穂乃果ちゃん倒れちゃう!自分の心配もして!」

ことり「今日は私がいるから、ゆっくり休んで」

穂乃果「でも…」

ことり「海未ちゃん起きた時に怒られちゃうよ?」

穂乃果「…そうだね、今日は帰るよ」


ことり「…今日も起きないね。どうしちゃったんだろう」

ことり「原因がわからないなんて…」

264: 2017/06/11(日) 23:23:56.57 ID:7A9Fxnh8.net
医者「おおよその原因はわかりました」

穂乃果「何ですか?」

医者「恐らく多量の放射性物質が体内に蓄積して細胞へ侵食してしまっています」

医者「所謂、癌ですね。残念ながら…」

穂乃果「そんな…な、治る見込みはありますか…?」

医者「身体の衰弱が止まりません。このままであれば危険です」

穂乃果「っ…なんとかできないんですか⁉」

医者「我々もこのような有害物質による癌は今まで診たことがないため…」

医者「ですが、可能性が残っている限り最善を尽くします」

穂乃果「…そうですか」

265: 2017/06/11(日) 23:49:58.18 ID:7A9Fxnh8.net
穂乃果『で、明日手術だって…』

ことり「うそ…信じられない」

穂乃果「……」

穂乃果『私も信じられない、信じたくないよ』

穂乃果『でも、海未ちゃんは強いから、信じてあげよ』

ことり「うん…」

穂乃果『今日もありがとう!海未ちゃんの様子見てくるね』

ことり「いってらっしゃい」

穂乃果「海未ちゃん、明日手術だって」

海未「………」

穂乃果「怖いよね、逃げたいよね…」

海未「……」

穂乃果「お地蔵さんにお祈りしてくるよ。海未ちゃんが元気になれるように手術成功させてくださいって」

海未「…」

穂乃果「私まだ勉強してるよ。ユメのためだもん。まだまだ続けていくよ。それから…

海未「穂乃果…」

穂乃果「海未ちゃん…!」

海未「立ち上がる時は?」

穂乃果「右足から!」

海未「座る時は?」

穂乃果「左足から!」

海未「そうです。最初に右足を上げて立ち最後は同じく右足を下ろして座る。つまり、何でも始まりと終わりは同じ一つの場所にあるのです」

海未「それは、人の世も同じ。人の生命の始まりと終わりを表す一生という言葉の中にもありますよね、一つの場所で生まれ氏ぬ生涯と」

海未「私が私でいられると思えるようになった始まりは貴女と出会えた時からでした。ですから終えるのも貴女の元…で…いられたら…

穂乃果「まだ終わらないよ!海未ちゃんはこれからなんだからっ‼」

医者「緊急で今日行います。やれることはやりますから…!」

266: 2017/06/12(月) 00:05:54.63 ID:uOvGROtS.net
ことり「海未ちゃん…帰って来たよ。こんなに細くなって…」

穂乃果「う…嘘だ!嘘だよ‼そんなはずない!約束したんだから!」

穂乃果「こんなの違うよっ!違う!違うの‼」

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「嘘だ!嘘だ!嘘だよ‼」

穂乃果「ぁぁぁあああ‼」

穂乃果「こんなの…信じない!」

穂乃果「どうせ海未ちゃんのことだから、明日になったら遅れてすいませんとか言いながら帰ってくるんだよ」

穂乃果「そうだよ」

穂乃果「ふふっ…」

267: 2017/06/12(月) 02:53:53.31 ID:uOvGROtS.net
穂乃果「遅いなぁ、今日あたりくると思ったけど…」

穂乃果「まぁ明日か。えへへ、ご飯作って待っててあげよ」

穂乃果「3日待ってもまだ来ない…まだ寝ているのかな」

穂乃果「1週間…うん、そろそろ…来るよね」

穂乃果「1ヶ月経ったよ…海未ちゃん…」

穂乃果「…まだなの?」

272: 2017/06/12(月) 23:05:57.36 ID:uOvGROtS.net
穂乃果「ずうっと待ってるんだよ⁉そろそろ来てもいいんじゃない?」

穂乃果「もう待ちくたびれたよ…」

穂乃果「まぁいいか、掃除しておこっか」

穂乃果「~♪」

穂乃果「あ、これ何だろう」

穂乃果「書き置き…?」

穂乃果「海未ちゃんから…私宛て⁉」

穂乃果「どれ…」

穂乃果へ

あなたは、前を向いてみんなを引っ張るのが仕事です

園田

穂乃果「ぷっこんな短いの、書いたってしょうがないじゃん…」

穂乃果「………」

穂乃果「そうだよ、しょうがないんだよ…」

穂乃果「本当はとっくにわかっていたのに、いつまでも知らんぷりして…」

穂乃果「現実から逃げてばっかで…駄目だね、私」

穂乃果「泣かないよ。泣いたら、海未ちゃん怒るでしょ?」

穂乃果「何もしてあげられなくてごめんね」

穂乃果「次は、必ず、行くよ」

273: 2017/06/12(月) 23:06:39.80 ID:uOvGROtS.net
あれから一年、私はある場所へ行きました

燃えるように暑い、夏の真っ盛りに

たった一人で

275: 2017/06/12(月) 23:22:08.34 ID:uOvGROtS.net
穂乃果「…来てたんだ」

ことり「うん…だって今日は…海未ちゃんが帰ってきた日だから」

穂乃果「聞こえるの?」

ことり「ううん、全く聞こえないよ」

ことり「唇の動きで何を話しているのかわかるようになって」

穂乃果「そっかぁすごいねぇ」

穂乃果「…ごめんね、迷惑かけちゃって」

ことり「ううん、いいの」

穂乃果「お線香焚いたあげなきゃ…」

276: 2017/06/12(月) 23:29:50.17 ID:uOvGROtS.net
えー続きまして、今期待の新人、登場です

日本を明るく華のある歌で活気づけるのは高坂穂乃果さん、21歳

今日歌ってくれるのはもちろん、彼女の十八番であるあの歌です

すゝめ→明日へ

穂乃果「だって 可能性感じたんだ そうだ すす~め~!」

穂乃果「後悔したくない 目の前に僕らの道がある…」




海未さんへ

私は、嫌という程多くの人とお別れをしました

非情に心が荒んでいました

前も上も向けずずっと何かを待っていました

もちろん、何も、ありませんでした

当然、どこかへ行こうとも思えません

暗い日陰で、過去を思い出しては泣いていました

ですが、そんな日々とはゆびきりさよなら

今は、あなたの遺した言葉の通り、みんなを引っ張る太陽になれるように前を向いて走り続けております

叶えたい!

ではなく、叶える私のユメ

歌で世界を渡ること

必ず実現させます

どうか期待していてください

高坂 穂乃果

279: 2017/06/12(月) 23:44:19.87 ID:uOvGROtS.net
穂乃果「非常に緊張しましたが、歌いきれて本当によかったです。ありがとうございました!」

よかったら最後に一言、どうぞ

穂乃果「私は…”戦争”で多くの友人、家族を失いました」

穂乃果「友人は放射能に殺されました」

穂乃果「先輩は自ら命を絶ちました」

穂乃果「友人の患者はずさんな管理によって殺されました」

穂乃果「妹を預かってくださった方は突然の病によって亡くなりました」

穂乃果「妹は、今も行方不明です…」

おい、誰か止めろ!

穂乃果「知り合いは身体の半分を失いました」

穂乃果「知り合いを守ってくださった兵士の方は戦場で力尽きました」

穂乃果「友人は聴力を失いました」

穂乃果「私の先生は…理不尽に撃たれ…ぐっ」

取り押さえたぞ!

穂乃果「放して!まだ終わらない‼」

黙れっ危険思想を持ったやつを野放しには出来ない

穂乃果「隠しちゃダメなんだよ…誰かが…伝えなきゃ!」

280: 2017/06/12(月) 23:50:46.54 ID:uOvGROtS.net
ーーー

今回の作品の特徴は何ですか?

花陽「みんなで遊んでいるのを眺めている私です」

そうですか。こちらには一体どんな意味があるんです?

花陽「みんな、私を置いていってしまった。その離れた場所でみんな楽しそうに遊んでいる。私も仲間に加わりたいけど、怖くて入れない、ということです」

すいません、聞くの忘れていました

この作品のタイトルは?

花陽「なわとび…です」

281: 2017/06/13(火) 00:01:58.96 ID:m+EceL8Q.net
そう…思想が危ない、と

でもあなたにはどうしても伝えたいことだったんでしょう?

穂乃果(こんな暗い部屋で…弁護士の方の顔も見れないよ)

穂乃果「はい…こんな悲惨なこと、忘れてはいけない…」

ごめんなさい、少し待ってて


穂乃果「結構時間経ったなぁ…」

高坂穂乃果さん

穂乃果「はいっ?」

不起訴が決まったわ。帰りましょう

穂乃果「…!本当ですか⁉でも…どうやって?」

向こうの知識不足といったところね。憲法も法律も何もわかっていない…あんなのが判決を出していると思うとふざけているわ。国ごと変えなきゃ

暗いでしょう、早く出ましょ

穂乃果「はい!あの…ありがとうございます‼」

いいの、これが私たちの仕事だから

282: 2017/06/13(火) 00:15:35.75 ID:m+EceL8Q.net
さ、車乗って?

…どうしたの?そんなに顔見て

穂乃果「うそ、信じられない…」

穂乃果「絵里ちゃんだよね…?」

穂乃果「でも、5年前のあの時から一切変わっていない…声も、見た目も」

絵里「私のこと、知っているの?」

穂乃果「っ…‼当然だよ!ずっと私の憧れだったんだから!賢くて、可愛くて、いつも優しい絵里ちゃんのこと、忘れるわけない‼」

絵里「そう…」

絵里「ごめんなさい」

穂乃果「ん?」

絵里「私は、あなたのこと知らないわ」

穂乃果「…?な、何を言っているの…?絵里ちゃん…ふざけているの?」

絵里「ふざけていないわ。本当に知らないの。子どもの頃のことは一切覚えていなくて、頭に残っているのは、暗く冷たい部屋にいたこと…その後徹底的にいろいろな訓練を受けたこと、そして、仕事のこと。それだけよ」

穂乃果「本当に…本当に何も覚えていないの…?」

絵里「ええ、ごめんなさい」

穂乃果「なら…これを見て!」

絵里「厚い本ね…辞書?」

穂乃果「そう、いつも持ち歩いているの!」

穂乃果「絵里ちゃんと一緒に勉強した思い出がこれには全部詰まっているから絶対離さないんだ」

穂乃果「…覚えていないなら、仕方ないか…御免なさい」

絵里「……」

絵里「単語の確認、するわよ」

穂乃果「…‼おかえり‼」

283: 2017/06/13(火) 00:16:46.56 ID:m+EceL8Q.net
終わりです

長い間お付き合いありがとうございました

284: 2017/06/13(火) 00:29:14.29 ID:5dssqR+V.net
えりちは改造されちゃったのか?

285: 2017/06/13(火) 00:37:26.51 ID:p7O4/Cn4.net
乙でした

286: 2017/06/13(火) 00:41:33.86 ID:m+EceL8Q.net
>>284
学校や教材となる媒体では教えてくれない戦争について書きたかったんで、えりちもその一つです
どの国でも訳のわからない人体実験をし、大勢の方が亡くなりました
仮に生き残っても後遺症に悩まされる人がほとんどで、大抵が若くして亡くなりました
誤った治療を施されて氏んでいく子どももたくさんいました
戦争ストレス反応で同胞を射頃することもありました
そういった中々語られることのない、「私の戦争」について触れて貰えると嬉しいです

引用元: 穂乃果「お線香焚いてあげなきゃ…」