1: 2013/04/26(金) 21:15:25.37 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「はい、出来上がり」

杏「あ、ありがとう、ありさせんせー」

亜里沙「うふふ、それより、ちゃんとウサギちゃん、大事にしてあげて?」

杏「いやぁ、まさか腕がポロッとしてしまうとは」

亜里沙「もうずいぶん長いこと一緒にいた子なのねぇ」

亜里沙「あんまり乱暴にされると先生もウサギちゃんもシクシクしちゃうよ?」

杏「うーん、起きたら勝手に濡れているぬいぐるみ……」

杏「……なんというホラー」

亜里沙「(夜中に化けて出てくるかもしれないウサ!)」

杏「ウサコちゃんが言うならありそうだぁ」


P「……おーい、杏!」

杏「げっ」

【持田亜里沙】アイドルマスターシンデレラガールズ ぴたコレ ラバーストラップ Vol.2 Ver.Cute

3: 2013/04/26(金) 21:16:24.77 ID:Ccgf2n5Do
P「あっ、ここにいた。お前、これから仕事だって言ってたろ!?」

杏「し、知らないよ。杏の予定帳には何もありませーん」

P「真っ白ならいくらでも仕事を入れてやる」

杏「うへぇ」

亜里沙「プロデューサーさん」

P「あっ、亜里沙さん! す、すみません、杏が迷惑をかけませんでしたか」

亜里沙「大丈夫ですよぉ、杏ちゃんのぬいぐるみを繕っていたんです」

P「そうでしたか……」

亜里沙「お仕事なんですか?」

P「そ、そうなんです! すみません、亜里沙さんの仕事はまた……」

杏「そ、そうだよ! 杏じゃなくて、せんせーが行けば……!」

P「ハピキャン(ハピハピキャンデー)のCMなんだが」

杏「う」ピクッ

4: 2013/04/26(金) 21:17:01.91 ID:Ccgf2n5Do
杏「し、仕方ないなぁ、本物を舐めさせてくれるなら……」

P「もちろん、現物だ」

杏「なにィ!」

P「行くのか? 行かないのか?」

杏「い、行くよ! 杏イク!」

P「よーし、それじゃきらり」パチン

きらり「杏ちゃーん☆」シュバッ

杏「ひっ」ビクゥ!

P「先に杏と一緒に車に乗り込んでくれ」

きらり「わかったにぃ☆」

杏「は、放せ! 聞いてないぞこんなことー!」ジタバタ

亜里沙「頑張ってきてねぇ~」

杏「覚えてろぉぉぉ~……!」

5: 2013/04/26(金) 21:18:07.62 ID:Ccgf2n5Do
P「はぁー……現場に行くだけで一苦労ですよ」

亜里沙「でも、頑張っているでしょう?」

P「ええ。面倒だからって、ほとんどの収録で一発録りしちゃいますからね」

亜里沙「それはすごい」

P「まったく、これでやる気があったら今頃どうなっていることやら……」フラッ

亜里沙「あ、プロデューサーさん!」

P「あ、と、すみません。大丈夫です……」

亜里沙「……」

P「最近、ちょっと寝る時間がね」

亜里沙「……Pくん」

P「は、はい?」

亜里沙「お仕事には休息も大事ですよぉ?」

P「……はい」

6: 2013/04/26(金) 21:18:43.70 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「先生、寝かしつけるのは得意ですから、休めないなぁって思ったら言ってくださいね?」

P「す、すみません」

亜里沙「ん、よし」

亜里沙「それじゃ、お仕事、がんばってね♪」

P「は、はい! それじゃ、亜里沙さんは今日は大丈夫ですんで!」

亜里沙「はぁ~い」


亜里沙「……」

ちひろ「慌ただしいですね」

亜里沙「ちひろさん」

ちひろ「すみません、お仕事、うまく入らなくて」

亜里沙「いいんですよぉ、人気がある子が一番大事ですから」

ちひろ「そんなことは……」

亜里沙「うふふ」

7: 2013/04/26(金) 21:20:10.77 ID:Ccgf2n5Do
ちひろ「プロデューサーさんも、目の前のことに一生懸命になりすぎちゃいますから」

亜里沙「ああ、分かります。頑張ってることがあると、他のことを……」

ちひろ「そーなんです! まったく、あれで何人勘違いさせてきたことかと」

亜里沙「何を勘違いするんでしょう?」

ちひろ「え、いやいや!」

ちひろ「……そうだ、亜里沙さん、この後は?」

亜里沙「うーん、レッスン場は埋まってるんですよね」

ちひろ「そうです、トレーナーさんもいっぱいいっぱいで」

亜里沙「じゃあ、ウサコちゃんのお洋服でも縫ってます」バサッ

ちひろ「え? いや、でも」

亜里沙「プロデューサーさんが帰ってきたら、仮眠でもさせてあげられるかなぁ?」

ちひろ「はぁ……でも、いいんですか?」

亜里沙「ええ。一人で……こうしているのも、私は」チクチク

ちひろ「……」

8: 2013/04/26(金) 21:21:17.63 ID:Ccgf2n5Do
ちひろ「あの、亜里沙さん」

亜里沙「なんですか?」

ちひろ「プロデューサーさんのこと、恨んでいるんじゃないですか?」

亜里沙「どうして?」

ちひろ「だって、せっかくスカウトされてきたのに、他の子にばっかり、かまけて……」

亜里沙「そんなこと、考えもしないですよぉ」

亜里沙「私、とっても地味な子だったから……」ヌイヌイ

亜里沙「ステージに立てただけでも、とってもうれしい」

ちひろ「……」

亜里沙「子どもたちと遊べて、大好きなうたを歌えて……」

亜里沙「こんなに幸せなこと、ないですよ?」

ちひろ「……そうですか」

亜里沙「それに……」

ちひろ「……それに?」

亜里沙「うふふっ、ひみつですよ」

9: 2013/04/26(金) 21:23:17.96 ID:Ccgf2n5Do
――少し、前の話。

P「おおー! おねえさん、ちょっと!」

亜里沙「はい?」

P「僕、芸能事務所に勤めているものなんですけど!」

P「おねえさん、アイドルって興味ないですか?」

亜里沙「はぁ……」

亜里沙(新手のナンパかしら)

P「さっき子どもをあやしてましたよね、歌で」

亜里沙「ええ、そうですけど」

P「おねえさん、あれを、もっと大勢の子どもや人たちの前で披露してみませんか」

P「僕がその後押しをしますから!」

亜里沙「えっと、結構です」タッ

P「あっ、ち、ちょっと」

10: 2013/04/26(金) 21:23:52.97 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「ふぅ、はぁ、はぁ」

亜里沙「ふーっ」

亜里沙「びっくりしちゃった、ね、ウサコちゃん?」

亜里沙「……アイドルだって」

亜里沙「私には、一番似合わなさそうなお仕事よね」

亜里沙「……」

亜里沙(そりゃあ、子どもと遊ぶのは好きだし、うたを歌うのも好きだけど……)

亜里沙(私、キレイでキラキラしたの、得意じゃないしなぁ)

亜里沙「服だって、かっこいいのなんか持ってないし……」

亜里沙「……」

亜里沙「あー、あー、コホン」

亜里沙「♪~♪~」

11: 2013/04/26(金) 21:24:43.10 ID:Ccgf2n5Do
――

園長「亜里沙さーん」

亜里沙「はいー? なんでしょう?」

園長「なんか、なんとかプロダクションって方がいらっしゃって」

亜里沙「え?」


亜里沙「あの……」

P「あ、どうもこんにちは!」

亜里沙「ええっと、先ほどは」

P「すみません、突然お声をかけてしまって」

亜里沙「それはいいんですけど、私、お断りしましたよ」

P「そう言われて、才能を簡単に見逃すような間抜けはしたくありません」

亜里沙「そ、そんなこと言われても……」

P「何かトレーニングされてましたね。やっぱり歌のうまい人は目につきますよ~」

P「さっきも、みんな見てましたし」

亜里沙「そ、そうですか……」

12: 2013/04/26(金) 21:25:51.61 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「でも、私より歌のうまい人なんか、いっぱいいますよ?」

P「そうかもしれませんね~」

亜里沙「そうですよぉ」

亜里沙「き、キレイな人だって、いっぱいいます」

P「確かに、いろんな人がいますね」

亜里沙「……でしょ?」

P「でもね、ちょっと考えてみてください」

P「歌がうまい、ダンスが得意、それってアイドルなんでしょうか?」

亜里沙「えっ……と」

P「歌うなら歌手、ダンスならダンサーがいます」

P「ステージパフォーマンスだっていろんなパフォーマーがいるでしょ」

亜里沙「……」

14: 2013/04/26(金) 21:35:03.32 ID:Ccgf2n5Do
>>13 アリシャス!

P「持田、亜里沙さん、ていうんですね」

P「僕らはアイドルというのは、歌手でもダンサーとも違う。芸人とかそういうのとも違う」

P「人をどうしようもなく惹きつける、魅力を持った人だって、考えているんです」

亜里沙「……人を」

P「少なくとも、あなたは僕を惹きつけた」

亜里沙「え、あ、はい」

P「それが、もっと大勢の人にも伝わると信じて、声をかけたんです」

亜里沙「……」

P「もし、決心がつかないようでしたら、これ」ぴらっ

P「うちのオーディションの用紙と募集要項です。僕の名刺も」

亜里沙「あ……」

P「少しでも、ステージに立ちたい気持ちが起きたなら、ぜひ来てください!」

P「僕がトップアイドルになれるよう、応援しますから!」

15: 2013/04/26(金) 21:35:34.27 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「……」

園長「あら、お茶も飲まずに帰っちゃったの?」

亜里沙「園長先生」

園長「すごいじゃない、持田さん。芸能事務所からなんて」

亜里沙「そんな、何かの間違いですよ」

園長「あら、受けないの? 先生、面白いと思うわぁ」

亜里沙「園長先生、からかってますね?」

園長「うふふ」

亜里沙「ふふ、それに、人手が足りない足りないっておっしゃってたじゃないですか」

園長「あらぁ、いいのよ? そういうのは経営者が考えることなんだから」

園長「脱いだりなんだりじゃあアレだけど、あなたのような人がみんなのために歌っているのを見たら、きっと楽しくなるわっ」

亜里沙「そんなこと……」

16: 2013/04/26(金) 21:37:08.55 ID:Ccgf2n5Do
園長「ほら、せっかくだから、受けてみなさいよ」

亜里沙「あ、え、その」

園長「ウサコちゃんも、持っていってみたら?」

亜里沙「し、失礼しますっ」ガララ バタン


亜里沙「はぁ……」


A「……ね、今のってさ?」

B「ああ、保護者じゃなくて、芸能事務所の人なんだって?」

A「持田さんが呼ばれたらしーわよ」

B「いやー、すごいわね」

A「確かに持田さんかわいいけどねぇ」

B「歌もうまいじゃない、ピアノも。それに自分で何でもつくっちゃうし」


亜里沙「……」

17: 2013/04/26(金) 21:37:53.58 ID:Ccgf2n5Do
A「けどさ、アイドルって感じじゃないわよね」

B「なに~? 嫉妬してんだ~?」

A「ちがっ、そんなんじゃないわよ」

B「確かに、こういう仕事やってると、アイドルなんて夢みたいな世界だもんね~」

A「だから、片っ端から声をかけてるだけじゃないの? って感じ」

B「はいはい負け惜しみ」

A「もう!」


亜里沙(……知ってるわ)

亜里沙(でも……)


P『僕が応援しますから!』


亜里沙「……よし」

18: 2013/04/26(金) 21:39:48.65 ID:Ccgf2n5Do
――

ちひろ「それでは、次の方、こちらでアピールをお願いしますね」

亜里沙「はーい」ごそごそ

P(おっ、亜里沙さん)

亜里沙「じゃーん、ウサコちゃんですよぉ」

亜里沙「……ふふっ、みんな~、ありさ先生とウサコちゃんとおうたを歌いましょうね♪」

ちひろ「えっ」

P「……」

亜里沙「って、だ、だめですか……? おかしいなぁ、これ子どもたちには結構人気なんですけど……」

P「採用!」

ちひろ「ええっ」

亜里沙「や、やったぁ!」

亜里沙(やった……)

19: 2013/04/26(金) 21:40:36.48 ID:Ccgf2n5Do
ちひろ「ちょっとプロデューサーさん?」

P「ダントツでかわいいじゃないですか!」

ちひろ「いやあのね」

ちひろ(この人は直感で即決しちゃうから、仕事(SR)が取れないのよねぇ)

P「いやー、良く来てくれましたね」

亜里沙「あ、プロデューサー、さん!」

P「これから、よろしくお願いします」

亜里沙「はい♪」

P「でも、どうして来る気になったんですか?」

亜里沙「それは……」

亜里沙「ふふっ、応援されちゃったから、かな?」

P「? そうですか!」

亜里沙(さって、と。がんばらないとなぁ)

20: 2013/04/26(金) 21:42:11.44 ID:Ccgf2n5Do
――レッスン。

亜里沙「それで、その、うたのおねえさん、とかどうですか?」

P「確かに、うたっておどるのは、同じようにやってますけど……」

P「けど、あの仕事だって激戦ですからね。劇団の人とか、強いですよ?」

亜里沙「でも、私が活かせるとしたら、そういうところかなって」

P「わかりました。なんとかやってみましょう」

亜里沙「あ、ありがとうございます!」

P「……あ! しまった、これから別のアイドルの収録が」

亜里沙「そ、そうですか」

P「すみません、レッスンを続けてもらっていいですか?」

亜里沙「はい、大丈夫ですよぉ」

亜里沙「でも、プロデューサーさんも、無理しちゃダメですからねっ」

P「はーい」

21: 2013/04/26(金) 21:43:22.74 ID:Ccgf2n5Do
……

亜里沙「……はぁ、はぁ」キュッキュッ

亜里沙「はぁ、はぁ」バッ、ダン

亜里沙「……はぁーっ、はぁーっ」

亜里沙「……よし」

亜里沙「このレッスンが終わったら、ウサコちゃんのお洋服を作ろうかな」

亜里沙「オーディションの時も、ウケたし」

亜里沙「そうだ、衣装と同じものを作ってみたらどうかしら」

亜里沙「そうすれば……」

亜里沙「……」

亜里沙(そうすれば、なんだろう)

亜里沙(プロデューサーさんは、今、売り出しの子に集中している)

亜里沙(今すぐ私が、ということは、ないし……)

22: 2013/04/26(金) 21:44:38.05 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「……」

亜里沙(弱ったなぁ)

亜里沙(みんな、すごくカワイイ)

亜里沙(服装だって、雰囲気だって)

亜里沙「……」

亜里沙(私は、あまり、武器がない)

亜里沙(体力くらいかなぁ、子どもを相手にしていたから)

亜里沙(でも……)

亜里沙「……」

亜里沙「そうだわ。事務所のお掃除とかしましょう」

亜里沙「気持ちよく事務所に通えれば、変わるかもしれないし」

亜里沙「レッスン場、閉めて……と」

23: 2013/04/26(金) 21:45:23.77 ID:Ccgf2n5Do
……

トレーナー「あれっ? どうしたんだ?」

亜里沙「あ、トレーナーさん」

トレーナー「あなたは確か……持田さん」

亜里沙「はい♪ ちょっと事務所のお掃除を……」

トレーナー「はは、いくらボロとはいえ、お掃除の会社は入ってるよ」

亜里沙「そうなんですか?」

トレーナー「……月一で」

亜里沙「それじゃあ、なかなか手が届かないでしょう」

亜里沙「私、前にいたところでも、お掃除は得意だったんです」

トレーナー「でも、アイドルがやることじゃないだろう?」

亜里沙「そうかもしれませんね」

トレーナー「じゃあ……」

24: 2013/04/26(金) 21:45:59.57 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「でもね、私知っているんです」

亜里沙「元気よく、お仕事をするには、それから子どもたちと遊ぶなら、こういうことが一番大事だって」

トレーナー「……」

亜里沙「お片付けは大事でしょ?」

トレーナー「……そうだな」

トレーナー「よし、私も手伝おう」

亜里沙「いいんですか?」

トレーナー「一人より、二人の方がずっとはかどるじゃないか」

亜里沙「そうですね♪」

亜里沙「~♪~♪」

トレーナー(掃除をする暇があるほどの、アイドルなのか。それとも、掃除もする、アイドルなのか)

25: 2013/04/26(金) 21:51:31.36 ID:Ccgf2n5Do
――雨の日。

かな子「わ、私がCDデビューですかぁ!?」

P「そうだ! 忙しくなるぞ~、ラジオの出演も決まってるからな!」

かな子「で、でも、その、私に取り柄なんか……」

P「何を言っているんだ。俺が見込んだんだ、お前は伸びる」

かな子「……!」

P「よし、衣装合わせも必要だからな、ちょっと待ってろ」

かな子「は、はい」

かな子「……」

かな子「私がCDデビューかぁ……」

亜里沙「……デビュー?」

かな子「あ、亜里沙せんせい!」

亜里沙「かな子ちゃん、CDデビューが決まったの?」

かな子「そ、そうみたい、です」

26: 2013/04/26(金) 21:56:00.46 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「すごいじゃない! おめでとう~」

かな子「そんな、先を、越したみたいで……」

亜里沙「う~ん、同じ衣装を着た者としては、悔しいわね」

かな子「あ……」

亜里沙「でも、先生も負けてられないわっ」

かな子「……」

かな子「……あ、あ、亜里沙せんせいも、きっとすぐに出来ますよ!」

かな子「な、なんたって、私が出来ちゃったくらいですから」

亜里沙「あらぁ? そんなことないわよ」

亜里沙「かな子ちゃん、すっごく魅力的だもの」

かな子「そ、そうですかね……?」

亜里沙「……」

27: 2013/04/26(金) 22:02:47.62 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「ほら、見て?」

かな子「あ、これ、宣材の……」

亜里沙「ふわっとした笑顔してるわ。かな子ちゃんにしか出来ない顔」

亜里沙「みんな、これにやられちゃうのよ」

かな子「そ、そうですかねー……自分じゃ分からなくって」

亜里沙「……えい」もふ

かな子「ひゃっ」

亜里沙「(ウサコもかな子ちゃんにメロメロウサ~♪)」

かな子「わっわっわ~」

亜里沙「えへへ……先生、この時、ちょっと硬い笑顔になっちゃったのよね」

かな子「そ、そうなんですか?」

28: 2013/04/26(金) 22:07:28.91 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「自信持って。かな子ちゃん、カワイイんだから」

かな子「……はい」

かな子「あの、ホントは、ちょっと、平気なんです」

亜里沙「どうして?」

かな子「Pさんが、褒めてくれたし……」

亜里沙「……うんうん」

P(入りづらい……)

亜里沙「……Pくん? 衣装合わせするんじゃなかったの?」

P「は、ははっ」ビクッ

亜里沙「はは?」

P「お待たせしましたぞ!」カクカク

かな子「……ぷっ」

亜里沙「……ふふっ」

29: 2013/04/26(金) 22:11:55.77 ID:Ccgf2n5Do
……

亜里沙「……」

亜里沙「……ふふっ」

亜里沙「プロデューサーさんったら、おかしい」

亜里沙「……」

亜里沙(先を越されちゃったか……)

亜里沙「

30: 2013/04/26(金) 22:17:48.19 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「……」

亜里沙(本当は、こう、言いたい)

亜里沙(私も、私も、プロデューサーさんに……)

亜里沙「……」

亜里沙「さ。レッスンしないと」

亜里沙「あ、そうだわ! せっかくだし、かな子ちゃんの衣装に合わせて、ウサコちゃんも新調しようかしら」

亜里沙「そうしましょう、新しい衣装にしたら、ウサコちゃんも喜ぶし……」

亜里沙「それから、事務所の衣替えも」

亜里沙「雨が上がったら、きっと、外へお出かけしたくなるし」

亜里沙「きっと……」

亜里沙「……」

32: 2013/04/26(金) 22:28:21.30 ID:Ccgf2n5Do
――晴れの日。

ちひろ「い、衣装が破れちゃったの!?」

智絵里「ひぅっ……」ビクッ

ちひろ「ああ、どうしましょう、さすがにこれは想定外……」

智絵里「す、すみ……ません……」

ちひろ「とにかく、プロデューサーさんが帰ってきてから、相談しましょう」

智絵里「あの、あの……」

ちひろ「と、とにかく、落ち着いてね!」

ちひろ(や、破れたのを買い取らせたりは出来ないかしら……)

ちひろ(いやいや! それはそれで大事だけど、Liveに間に合わないし)

智絵里「じゃなく……て。今日、プロデューサー……遅くまで……です。」

ちひろ「はっ! そうだった!」

ちひろ「とりあえず、ケータイ、と」

33: 2013/04/26(金) 22:34:12.42 ID:Ccgf2n5Do
智絵里「あ……あう……」

ちひろ「プロデューサーさん? あのですね、ちょっとご相談が」

ちひろ「え? 超得ショップ延長? 違いますよ!」

ちひろ「あの、明日のLiveの件なんですけど……」

亜里沙「……どうかしたんですか?」

ちひろ「あ……いえ、なんでもないんですよ!」

ちひろ「すみません、ちょっと、これ……」サッ

亜里沙「……?」

智絵里「あ、あの……引っ掛けちゃって、衣装が……破けちゃいました」

亜里沙「ええ?」

智絵里「わ、私、汚しちゃ……いけないって……思っていたんですけど」

亜里沙「……」

34: 2013/04/26(金) 22:40:49.21 ID:Ccgf2n5Do
ちひろ「代わりの衣装で……いや、今からじゃ間に合わないですよ!」

ちひろ「とにかく、お仕事中でしょう? 対応だけでも決めていただかないと」

ちひろ「イベント用って言われましても……」

智絵里「ご、ごめんなさい。私が……」

ちひろ「ち、ちょっと待っててね」

智絵里「で、でも……」

亜里沙「あの、私、縫います」

ちひろ「え!?」

智絵里「亜里沙さん……?」

亜里沙「このタイプの生地なら扱ったことがあるから、分かりますよぉ」

35: 2013/04/26(金) 22:48:38.79 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「明日までに間に合わせればいいんですよね?」

ちひろ「で、でも、あなたにも仕事が……あ」

亜里沙「明日も、大丈夫です♪」

ちひろ「……えーと」

智絵里「あの……私」

亜里沙「大丈夫よ? おねえさんに任せて!」

智絵里「……」

亜里沙「ほら、元気を出さないと」

智絵里「わ、私……」

智絵里「……少し、不幸、だけど、自分じゃ失敗……しないようにって、思ってたんです」

亜里沙「……うん」

智絵里「そ、れが……自分で……」

亜里沙「大丈夫」ギュッ

智絵里「!」

36: 2013/04/26(金) 22:54:38.48 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「私、智絵里ちゃんと一緒に歌ったりもしたでしょう?」

亜里沙「だから、すっごく、分かるから」

亜里沙「智絵里ちゃんが頑張ってきたこと」

智絵里「……」

亜里沙「頑張ってる人をね、応援してくれる人は、いるのよ」

亜里沙「だから、明日のことは心配しないで」

智絵里「う……」

亜里沙「ね?」

智絵里「……は、はい!」

ちひろ「……」

亜里沙「ちひろさん、会議室で少し広げてもいいですか?」

ちひろ「え、ええ」

37: 2013/04/26(金) 22:58:49.13 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「じゃあ、プロデューサーさんにも、そういうことで伝えてくださいね~」

ちひろ「い、いや、でも……大丈夫ですか?」

亜里沙「大丈夫♪」b

ちひろ「……とにかく、ダメそうだったら対応しますから」

亜里沙「分かりました。あ、ミシン、取りに戻ります」タッ

ちひろ「あ! ……仕方ない」

ちひろ「えっと、プロデューサーさん?」

ちひろ「ええ。とにかく、こちらでやれることはしますが、善後策も考えておいてください」

ちひろ「早く帰ってきてくださいね」

智絵里「あ、あの……」

ちひろ「ん?」

智絵里「プロデューサーさんに、謝り、たいです」

ちひろ「……。はい」

智絵里「あ、ありがとうございます……!」

38: 2013/04/26(金) 23:02:28.03 ID:Ccgf2n5Do
……

P「……すみません、遅くなって!」

ちひろ「……本当に、こんな時間まで」

P「……仕方ないじゃないですか」

ちひろ「まあ、確かに、ここのところ立て続けに新曲を発表してますからね」

P「智絵里も、チャンスなんです」

P「これでCDデビューが決まれば……!」

ちひろ「それより、衣装、一応チェックしてください」

P「あ、そうですね」

P「……」

P「……?」

39: 2013/04/26(金) 23:06:21.18 ID:Ccgf2n5Do
P「これですか? 破れたっていう衣装……」

ちひろ「ええ。問題ないでしょうか?」

P「どこも……破れてませんけど」

ちひろ「だから、直してもらったんです」

ちひろ「問題ないでしょうか?」

P「……」

P「大丈夫です。再度、試着も?」

ちひろ「済んでます、動いてもこれといって目立つズレはありませんでしたよ」

P「……そうですか」

ちひろ「何か物足りないって顔をしてますね?」

P「いやいや! 今月末はちょっと」

ちひろ「4STEP開催中です! ……じゃなくて」

40: 2013/04/26(金) 23:09:55.04 ID:Ccgf2n5Do
ちひろ「うちの事務所で、直せる人がいたので……」

P「そ、そうですか」

P(……そんな人、いたかな)

ちひろ「この件については不問にしてあげてくださいね?」

ちひろ「元通りになったんですから」

P「そりゃもう、智絵里にも電話口で謝られましたから」

P「……」

ちひろ「それから、スタドリだけじゃなく、ちゃんと寝て元気を出してください」

P「ち、ちひろさんが俺を心配してくれるんですか?」

ちひろ「もちろんですよ」

41: 2013/04/26(金) 23:15:04.64 ID:Ccgf2n5Do
……

亜里沙「んーっ!」

亜里沙「ふはぁ」

亜里沙「久しぶりに、がっつりやっちゃったけど」

亜里沙「うまく行って良かったね、ウサコちゃん?」

亜里沙「(智絵里ちゃんも大喜びウサ♪)」

亜里沙「うんうん、良かったわ」

亜里沙「智絵里ちゃん、遅いくらいだもの……」

亜里沙「もっとステージに上げてあげないと」

亜里沙「……」

亜里沙「私も、もっと、頑張らないと……」

亜里沙(……どれくらい?)

42: 2013/04/26(金) 23:22:42.46 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙(どれくらい、頑張ったら、いいんだろう)

亜里沙(子どもが、成長していくみたいに、周りがドンドンと先へ行ってしまう)

亜里沙(一緒にいて、すごく楽しい)

亜里沙(みんなと歌えて、すごく嬉しい)

亜里沙(だけど……)

亜里沙「……」

亜里沙(寂しいなぁ……)

亜里沙(先に、行かれてしまうのが、すごく、寂しい)

亜里沙(私は……)


P『僕が、応援しますから!』


亜里沙「……」

43: 2013/04/26(金) 23:31:03.84 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「ふふっ」

亜里沙「信じちゃったんだもの」

亜里沙「そうしてくれるって」

亜里沙「……」

亜里沙(……本当は、一人で、鼻歌をうたいながら)

亜里沙(ウサコちゃんのお洋服を、縫っているのが)

亜里沙(お似合いなのかもしれないのに)

亜里沙「……」

亜里沙「……~♪~♪」

亜里沙「私は たーだーの……」

44: 2013/04/26(金) 23:37:37.06 ID:Ccgf2n5Do
――いつか、きっと。


P「うげっ!」

P「くっそ、もうこんな時間か……」

P「もっと時間がありゃあいいのに」

P「そうしたら、あいつだって、あのひとだって……みんなトップアイドルにしてみせるのに」

P「……」

P「はぁ、事務所、に帰って、書類整理すっか」

P「誰もいないだろうな……」

P「えっ」

亜里沙「あ、プロデューサーさん」

45: 2013/04/26(金) 23:43:51.49 ID:Ccgf2n5Do
P「あ、亜里沙さん。何しているんですか」

亜里沙「んー? ちょっと、ですね。準備していたんです」

P「じ、準備?」

亜里沙「ツアーの準備ですよ、かな子ちゃんと智絵里ちゃんと……」

P「あっ、そうか」

P「……って、いやいやいや、こんな時間まで残ってどうしてたんです?」

亜里沙「ええ、二人の荷物と、いざという時の緊急連絡先のメモを」

亜里沙「海外だから、気をつけないとって」

P「それで、こんな時間まで?」

亜里沙「私が一番、おねえさんですから」

P「……」

46: 2013/04/26(金) 23:46:20.28 ID:Ccgf2n5Do
P「気持ちは分かりますが、寝ないとダメですよ?」

P「体が資本なんですからね」

亜里沙「……」じーっ

P「な、なんですか」

亜里沙「Pくん? 鏡を見てもう一度言ってみよう」

P「えっ?」

亜里沙「すっごい顔してるわよぉ? ほらほら」

P「うっ」

P(ゾンビ化しているな……)

亜里沙「……休めないなぁって思ったらって、言ったでしょう?」

47: 2013/04/26(金) 23:50:19.19 ID:Ccgf2n5Do
P「で、でもですね、ほら、忙しくって、そのあの」

P「し、書類も溜まってまして」

亜里沙「はいはい、まず仮眠を取りましょうね~」

P「いやいや!」

亜里沙「だ~め」

P「……あ、じ、じゃあ、30分だけ」

亜里沙「はい、ちゃんと起こしますから」

P「……」

P「すみません」

亜里沙「謝ることなんてありませんよぉ?」

P「いや、このことだけじゃなく……」

48: 2013/04/26(金) 23:53:31.70 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「……」

P「俺、その、俺……」

亜里沙「……ねーんねこーは、よーい子ー♪」なでなで

P「あ……」

亜里沙「……大丈夫ですよ」

亜里沙「私は、きっと、いつか」

P「……はい」

亜里沙「……あーれはー、ウーサコー♪」

P「……」

P「……」スピー

亜里沙「……」

49: 2013/04/26(金) 23:59:08.24 ID:Ccgf2n5Do
亜里沙「ん?」

亜里沙「これ、手帳からはみ出してる」

亜里沙「……あっ」かさっ

亜里沙(そっか、これ、企画書……)

亜里沙(私のを、ずっと、持ち歩いて……)

亜里沙「……」

亜里沙「……ありがとう、ございます」


亜里沙「いつか、私も」


亜里沙「なります、トップアイドル」


亜里沙「だから、その日まで……」

50: 2013/04/27(土) 00:09:15.99 ID:M8MAPbVAo
おしまいです。

亜里沙さんが選挙で上位に食い込むことはまずないと思いますが、そんな気持ちも含めて書きました
ピンクドットバルーンのメンバーでは唯一みゆきちゃんがSR来てないんで、昇格期待したいですね

引用元: 亜里沙「お針子の唄」