1: 2010/02/10(水) 01:07:36.85 ID:qeiwmFV+O
パシャッパシャッ…パシャッパシャッ…パシャ…

記者「秋山議員!今回の収賄事件について何か一言を!」

澪「……」スタスタスタスタ

記者「無言で通り過ぎました!党幹部からお咎めを受けたのかと思われます!」

キャスター「いやぁ、相変わらずの秋山議員ですねぇ…」

コメンテーター「今回の収賄事件は秋山議員の支持基盤に対する摘発に繋がりましたから打撃が大きいんですよ」

キャスター「支持基盤を失えば、秋山議員はもはや氏に体ですね」

コメンテーター「懲罰委員会の結審も大方予想がつきますねぇ」

澪「氏にたい…か…」
けいおん!Shuffle 2巻 (まんがタイムKRコミックス)
3: 2010/02/10(水) 01:10:10.22 ID:qeiwmFV+O

澪「クソッ!何が収賄だ!票を得るために私が党にどんだけ貢献したと思っているんだ!」ダンッダンッ

キャスター「今は田井中派が勢力を伸ばしておりますね!」

コメンテーター「クリーンな政治家として評価で高いですからね」

キャスター「それとは対象的に、秋山派は古典的な政治家グループだったとも言えますかねぇ…」

4: 2010/02/10(水) 01:15:10.44 ID:qeiwmFV+O

コンコン…

澪「くっ…、どうぞっ…」

―「落ち着いたかしら?」

澪「ごめん…和…どうしても、気持ちが抑まらなくて…」

和「それは別にかまわないけど…澪だけに責任を負わせる党も党だわ…」

澪「和…私どうしたら…」グスッ

和「残酷な話だけど…もう澪は政治生命は絶たれたとしか言いようがないわね…」

澪「!! そ…そんなことって…!!」

和「政治の世界ではよくあるの。わざとマスコミや世論からの非難を集めさせて議員個人に党の責任を負わせるという方法がね…」

澪「そ…そんな…」クラッ…

6: 2010/02/10(水) 01:20:16.53 ID:qeiwmFV+O

和「……澪、あなたはここまでよく頑張って来たわ。高校の時の恥ずかしがり屋の澪とは違い、今は理念に燃えるリーダー的存在の澪になってきたじゃないの…」

澪「政治家は選挙に落ちればただの人だ…結局、私は党から使い勝手の良い票集めに使われたというわけか…」

和「澪……」

澪「私が政治家になったのは、決してやましい気からなったわけじゃない。未来の子ども達に夢を与えたいだけなんだ…高校の文化祭で私たちがやったように…」

和「澪…私が言えるのは第2の人生を歩んだ方が良いということ…それしか言えないわ…」

澪「うぐっ…くっ……」


8: 2010/02/10(水) 01:26:14.52 ID:qeiwmFV+O

澪「グスッ…グスッ…」

和「政治家は身分自体がギャンブルな職業なの…はめるかはめられるかの弱肉強食の世界…ピュアな気持ちだけではダメなの…」

澪「ごめん…和…グスッ…ここまで私を…グスッ…助けてくれたのに…」

和「何言っているのよ…私は澪の秘書を務めただけなんだし…澪のサポートぐらいしかできてなかったのだから…」

澪「うぇっぐ…グスッ…」

コンコン

和「来客よ。ほら、しっかりなさい」

澪「うん…」

ガチャッ

律「おーす!お二人さーん!元気かー!」

和「律…あっ…」

律「きししし…気にするな和!」

9: 2010/02/10(水) 01:31:54.84 ID:qeiwmFV+O

和「しかし、あなたは議員、しかも田井中派の重鎮…私は議員秘書よ…ところで、ここに来た理由は…?」

律「ふふ…テレビを見てみろよ!」


キャスター「与党の総裁選がもうすぐ始まりますね」

コメンテーター「立候補に立った田井中議員は国民からも党内からも支持が厚いものですから期待大ですね」

澪「こ…これは…?」

律「へへーん!分かっただろ?私は総裁選に出るんだ!」

澪「なっ…!」

和「ちょ…ちょっと!律!」

律「まぁまぁ、落ち着いて聞けよ。私は自慢をしにここに来たわけじゃない!」

10: 2010/02/10(水) 01:38:02.45 ID:qeiwmFV+O
和「ど…どういうことなのよ…律?」

律「んだよ、和も分かんねーのか…まず、総裁の権限は党内では絶大っつうことは分かるよな?」

和「ええ…」

律「そこで私が総裁になった暁には澪を追い払った老害共を逆に追い払うんだよ!」

澪「り…律……」じーん…

律「真面目な澪がそんな汚い金に手を出すわけないだろ?どう考えても今回のは老害共の仕組んだ罠に違いない…!」

和「でも、それって危険なことなんじゃ…?」

律「政治家は全てがギャンブルなんだ。それぐらい覚悟しなきゃどうする!それに澪の言われもない汚名をいつまでも放っておけないしな!」

澪「り…律…うわーん!」

律「おやおや…強かなイメージの秋山議員も泣きべそですか?」

澪「……バカ律…///」グスッ

11: 2010/02/10(水) 01:41:41.52 ID:qeiwmFV+O

和「総裁選までには幸い澪に議員資格はあるわ…律に投票するしかないわね!」

澪「ああ!もちろんだとも!」

律「そっか!その元気な声を聞けるだけでも安心したよ!」

澪「な~に、困った時はお互い様だろ!」

律「よーし!総裁選頑張るかー!」


12: 2010/02/10(水) 01:47:15.06 ID:qeiwmFV+O




律「すっかり、お邪魔になったな…」

澪「いや…励ましてくれて…ありがとう…律…///」

律「あーもうっ!湿っぽいのはなしなし!じゃーなー!///」

和「澪…本当にあなたは人に恵まれているわね…」

澪「ああ…そうだな…」


13: 2010/02/10(水) 01:52:11.55 ID:qeiwmFV+O






?「律っちゃん…澪ちゃんの様子はどうだったの?」

律「ははっ、あいつ完全に私のことを信じきっていやがるぜ…まぁ、総裁選の票は確実だがな」

?「なら…あと一息ね」

??「律せん…田井中議員、次の会合の時間が迫っていますよ!」

律「おっと…もっと話をしたかったが、すまんな!」

?「頑張ってね律っちゃん…いや…田井中総裁…」ニヤッ

ブロロ…

走り出す公用車を見送りながら、政治は親友をも裏切るものだと実感した私は、自分もいつか裏切られるのだとただ思うばかりだった。


14: 2010/02/10(水) 02:21:37.13 ID:qeiwmFV+O


記者「速報です!総裁選で田井中議員が総裁に任命されました!」

キャスター「いやぁ…予想通りと言えば予想通りの結果ですね…」

コメンテーター「つまり、次の選挙で別の党に政権が移らない限り、首相は確実ですねぇ…」

澪「り…律のやつ…ついにやったじゃないかっ…!」

和「祝電も用意しておかないとね…」

prrrrr…

和「はい…秋山議員事務所です…えっ!?そ…そんな!!」

澪「?……」

和「はい…はい…秋山に伝えておきます…」

ガチャンッ

澪「どうしたんだ…和…?」


15: 2010/02/10(水) 02:55:24.66 ID:qeiwmFV+O

和「残念な知らせだわ…懲罰委員会から、あなたを弾劾するという結審が出たの……」

澪「そうか…仕方ないもんなな……」

和「何を言っているの!?澪!律のこれからの頑張りをフイにするつもりなの?」

澪「律が私の汚名を返上してくれるだけでも私は嬉しい…もう、これ以上は望まないことにしたんだ…」

和「澪……」

澪「それより、和…祝電の準備は良いか?最後は政治家らしく終わりたいからさ……」ニコッ

和「……」

和「ふー…あなたには負けるわ…」


澪は田井中内閣が組閣する前に議員資格を失ったのである。


18: 2010/02/10(水) 03:23:21.92 ID:qeiwmFV+O
澪「和達と別れてもう一週間か…そういえば律達選挙で圧勝したよな…あ、テレビ、テレビっと……」

記者「田井中内閣が組閣されました!各閣僚をお伝えします!」


内閣総理大臣:田井中律
与党総裁 田井中派

外務大臣:〇〇〇〇

財務大臣兼内閣特命担当大臣(金融担当):琴吹紬
琴吹グループ元取締役 与党議員 田井中派

厚生労働大臣兼内閣特命担当大臣(少子化):平沢唯
与党議員 田井中派



澪「ふふっ…律達は喜んでいるんだろうなぁ…ムギは風格があるなぁ…唯は相変わらずだなぁ…」





内閣総理大臣補佐官:真鍋和
民間採用


澪「えっ………?」

19: 2010/02/10(水) 03:34:33.99 ID:qeiwmFV+O

澪「ど…どういうことなんだ…?なぜ和が律の内閣に…しかも、総理大臣補佐官って……」

prrrrrr…

澪「は…はい…もしもし…」

―「あ、秋山さんですか?お久しぶりです。私、田井中総理秘書の中野梓です」

澪「あっ…あ…梓か…久しぶり…だな…」

梓「あきや…いや、澪先輩ご祝電ありがとうございます。田井な…いや、律先輩も喜んでいましたよ!」

澪「そ…そうか…それは…何よりだ……」

梓「また、お会いすることがあれば是非よろしくお願い致します。律先輩も澪先輩の助けになりたいと言っていましたし…」

澪「………」フルフル…

梓「それではまたお会い出来ますように。ご支援ありがとうございました」

ガチャッ…ツーツーツー…

澪「………」フルフルフル…


20: 2010/02/10(水) 04:56:45.89 ID:qeiwmFV+O

澪(どうして…?何で…?和は私に黙って…そっちへ…)ワナワナ…

澪「クソッ!!クソッ…!!何が親友だっ!!何が第2の人生を歩めだっ!!クソッ!!裏切りやがってっ!!」ガクッ

私はその場で崩れ落ちた。
ただ、自分の握り拳を床に叩きつけるしかなかったのだ…


21: 2010/02/10(水) 05:01:53.93 ID:qeiwmFV+O


寒空の中、私はふつふつと沸き上がる感情があった。

新内閣発足に浮かれる人々に冷ややかな眼差しを向けながら、私はこれからのことを考えた。

そしたら、いろいろと案が浮かんできた…組織の策で向こうがくるならこっちも組織の策でいくしかない。

澪「ふふ…簡単じゃないか…インフォーマルな形で攻めていけば良い…」

もはや、私には新内閣への興味はなくなっていた。

ただ、親友をダシにして私を裏切ったあいつらに痛い目を会わせないと気が済まない。

澪「ふふ…細かいことは後で考えよう…今私に出来る精一杯のことをしよう!」

私の胸の高鳴りはおさまる気配がしなかった…


つづく

24: 2010/02/10(水) 06:18:15.19 ID:qeiwmFV+O

次の日の朝、二人の検察事務次官が私の自宅に訪れ、任意同行を求めた。

大阪地検特捜部に連れられる車中、かつては私の部下だった検察事務次官がつぶやいた…
「部長、へたうちましたな…」

澪「……うるさい…」ボソリッ

そして、私は事実上、逮捕されたのであった。

生まれて初めて、かけるばかりのものと思っていた手錠をかけられたのだ。

そして私は初めて詰問する場所とばかり思っていた被告席に立ったのである。

ここまで人の目を集める場所とは知らなかった。

壇のせいか私を見る裁判官の目は人間にある嫌らしさを感じさせるものであった。

澪「ふふ……」

被告人はいつもこんな状況でこんな気持ちでいたのだな…

私の前職を省みれば本当に皮肉である。

26: 2010/02/10(水) 07:02:25.04 ID:qeiwmFV+O

確かに私はまだ若い…

だが人一倍の努力と経験はしてきたと思う。

大学在学中に司法試験に通り、志望していた検事になった。

各地を転々とし、キャリアを重ね、しまいには関西の検察庁で私の名前を知らない人はいないに等しいくらい実力をつけたのだ…

だが、私の心は満たされなかった。あの時の様な――

澪・唯『♪あぁ カミサマお願い二人だけの Dream Timeください』

――どうしてもあの思い出ほど満足できることは今はできない…

人に夢を与えられることをしたくてたまらなかった…


27: 2010/02/10(水) 07:05:56.43 ID:qeiwmFV+O

正直、今さらそれが叶えられるのは国会議員しかなかった…

与党に入党し、関西での名声を利用して、もちろん一発当選した。

党の支援もあった。もちろん、家族や友達、仕事仲間からも…そして何より私の支えになったのは…



高校の時からの親友・和だ。



私のわがままを聞いて議員秘書になってくれたのだ。

最もありがたかったのは、和が私の精神的な支えとなってくれたことだ。

後援会の初めての挨拶でしくじった時も和は励ましてくれた…

まさか、あの時もまた公衆の面前でパンツを晒す羽目になるとは…///


28: 2010/02/10(水) 07:13:37.08 ID:qeiwmFV+O

でも、今はどうでも良い…

私はダシにされたのだ。

仲間だと信じていた放課後ティータイムのメンバーと和から良いように利用されたのだ。

看守「ほら1567番、今日は寒くなるからこれを使え」ガタンッ

澪「…ありがとう…ございます…」

そう…この使い捨てカイロの様に…


30: 2010/02/10(水) 07:17:35.75 ID:qeiwmFV+O


公判29日目、私はそれまでの裁判の記憶がない。

判決を読み上げる裁判官。

堅苦しく言っているのを記者が必氏に耳を傾けるのだ。







実に滑稽である。

私に言い出された刑は刑法第197条通り、5年の懲役であった。

酌量なんていらない。裁判も駆け引きなんだ。

マスコミで脚光を浴びる事件なら甘い判決は控えるべき。

裁判官の判決は妥当だと私はまるで他人事のような感じで冷静に裁判を評価していた。


32: 2010/02/10(水) 07:26:57.47 ID:qeiwmFV+O

刑務所というものはブタバコと言われるものだから臭いものかと思えばそうでもないようだ。

ここで5年近く過ごすと思うと何だか逆にこそばゆい気がした…



私が服役中、田井中政権は不調の滑り出しだった。

総務大臣のスキャンダルに、自頃する国土交通大臣、外務大臣は国際安全保障会議でイニシアティブを他国に取られるという有り様…

全部、別派閥の閣僚だが、田井中政権は無様な姿を国民に露呈してしまっていたのだ。

澪「はぁ……」

正直、それで私の気分は晴れることはない…

理由は友人の苦しみに同情しているからでも、この国の将来を憂いているわけでもない。









こいつらが苦しんでいるのは、私の手による苦しみではないからだ。


35: 2010/02/10(水) 07:47:47.11 ID:qeiwmFV+O


田井中政権発足から4年

政権は何とか持ち堪えていた。ただ未だに経済情勢は好転しない。

経済財政諮問会議終了後

紬「ふぅ……」トントン

律「お疲れさん、ムギ!」

紬「あら、律っちゃん…」

律「今晩どう?」クイッ

紬「あら、久しぶり飲むわね」

律「唯も呼んでいるんだぜ!」ニカッ

その笑顔に一瞬の疲れがにじみ出ている…

律っちゃんの方が大変なのよね…

それなのに自分よりも周りを気にしてくれる…これが律っちゃんの一番尊敬できることかな…


36: 2010/02/10(水) 07:51:03.94 ID:qeiwmFV+O

紬「梓ちゃんは?」

律「仕事終えてかららしい…多分大丈夫だろう」

紬「放課後ティータイムの再結成ね…久しぶりだわ~」

律「………」


私は少し皮肉を入れてみた。一瞬、律っちゃんは顔をこわばらせたけど、すぐに弛んだ…

律「そう…そうだな…久しぶりだな…ははっ…!」

そうよね…律っちゃんは、澪ちゃんを裏切った張本人だからね…

私は顔で許しても心では許せなかった…

いつか、澪ちゃんと共に笑い合える日を願っていた…







でも、それは最初のこと…

今はどうでも良くなっちゃったのだから♪

39: 2010/02/10(水) 08:06:08.56 ID:qeiwmFV+O

厚労省

唯「あ~ん、終わらないよ~!」カタカタ

唯「誰だぁ!こんなに仕事を残していたのはー!」

唯「………」

唯「私だ……てへっ」

コンコン

唯「はいどーぞー」

ガチャッ


40: 2010/02/10(水) 08:07:31.52 ID:qeiwmFV+O
憂「お姉ちゃん、お仕事大丈夫?」

唯「うーいー(涙)」

憂「しょうがないな…お姉ちゃん、後は私がやるから。もうすぐ、律さん達と宴会でしょ?」

唯「ありがとう~憂~やっぱり憂が秘書で良かったよ~!」パァ-

憂「私もお姉ちゃんの助けになれて嬉しいよ…」ニコッ

唯「それじゃあ、行ってくるね~!」バタバタ

憂「あっ!飲みすぎないでねー!」

唯「は~い!」バタンッ

41: 2010/02/10(水) 08:12:08.90 ID:qeiwmFV+O

憂「さてと…この仕事の山をどうにかしないとね…」カタカタ

コンコン

憂「今大臣はおりませんよー」

………

憂「……?どなたかおられますか?」ガチャッ

カチャリッ

憂「えっ…?きゃぁぁぁー!!」

ターンッ









42: 2010/02/10(水) 08:18:20.72 ID:qeiwmFV+O

内閣首相官邸

梓「も~律先輩酷いです~明日の議会スケジュールを全く確認しないなんて~」カタカタ

コンコン

梓「総理はいませんよ~」カタカタ

ガチャッ

和「あら、律はいないのね…」

梓「酷いですよ~明日の議会と閣議について私に任せっきりなんですから~」カタカタ

和「ふふ…律らしいわね…」

梓「全くです…」ぶー

和「あ、これ、報告書と書類をまとめたものね。律に目を通しておくように…って無理か…」

梓「う~…分かりました……」カタカタ


43: 2010/02/10(水) 08:31:41.84 ID:qeiwmFV+O

和「それじゃあ、私は先に失礼するわね」

梓「お疲れさまです…あっ、和先輩聞いてます?澪先輩、二ヶ月前に仮出所したらしいんですよ…」カタカタ

和「えっ…!?」ドキッ

梓「澪先輩、何で私たちに連絡をしてこないんでしょうね?澪先輩、出所してから行方が分かりませんし…」

和「さ、さぁ…出所して間もないし落ち着かないからでしょ?そ、それじゃ、お先に失礼するね…」

梓「お疲れさまでーす……」カタカタ

バタンッ

和「………」

理由はないわけではない…

澪は今の私たちをどう思っているんだろ…

特に私なんて澪から離れてのうのうと律の内閣に入っている…

せめて面会でもしていれば…


46: 2010/02/10(水) 09:03:36.36 ID:qeiwmFV+O

和「とにかく、澪と連絡を取らないと…」

コツコツ

サササッ

和「?誰かいるの…?」

物音がしたと思ったんだが…

………

私の気のせいみたいね…

コツコツ

今日は早めに寝た方が良いのかしら…

コツコツ

カチャリッ

47: 2010/02/10(水) 09:06:09.00 ID:qeiwmFV+O

赤坂・某料亭

唯「えへへ~遅れてごめんね~」

律「遅いぞ~唯~わははは!」

唯「ありゃりゃ、律っちゃん総理はもう酔いが回ってる~」

紬「ふふふ…唯ちゃん、お疲れさま♪はい、熱燗♪」

唯「ありがとう。ムギちゃん」


48: 2010/02/10(水) 09:08:33.56 ID:qeiwmFV+O

唯「そう言えば、あずにゃんは?」

紬「梓ちゃんは今日も仕事で終わり次第来る予定だったけど、無理みたいね…」

唯「律っちゃんの秘書だから大変だもんね~」

律「何だと~こいつ~」グリグリ

唯「ギブギブ!律っちゃん!ギブ!」

律「わははは…」

唯「あははは…」

紬「うふふふ…」

宴は盛り上がる…別の者の心も盛り上がる素晴らしい夜であった…

50: 2010/02/10(水) 09:28:24.99 ID:qeiwmFV+O

翌朝・内閣首相官邸

律「な…何だこりゃ…!?」

見事に荒された総理室

梓のノートPCが残ったままである…幸い機密事項に関わる所までは荒らされてはいないようだ…

律「! そういえば…梓は…!いったいどこに…!」

『現在電波の届かない所におられるか電源が切れ…』

律「くっ…なんてこった…」

いくら不法侵入とは言えど、警備の堅い首相官邸を…こうも糸も容易く破るとは…ただ者じゃない…

いったい、どんな奴だ…?

恐らくそいつらが梓を…いったいどこへ?何の為に?

カサッ

一枚のメモが落ちた。

中身は以下の通りだった。気味の悪い字体である。

『中野梓は預かった。場所は東京港湾3-A-〇倉庫
 我々の目的は現内閣を苦しませること
 身代金は要らない』

51: 2010/02/10(水) 09:44:46.04 ID:qeiwmFV+O

律「ふざけやがって!」ダンッ

律「何が梓を預かっただっ!何が我々の目的は現内閣を苦しませることだっ!」

和「ちょっとどうしたのよ!?律?何を騒いでいるの?」

律「これを見ろよ!」ピッ

和「な…何てこと……」

prrrrrr…

和「はい…こちら首相官邸…唯?」

唯『うぇっぐ…うぇっぐ…憂が…憂が…いなくなっちゃった…うわぁぁぁん!』

和「お…落ち着いて…唯…」

律「唯にも何かあったのか…?」

和「おそらく、律と同じ…秘書の誘拐よ…!」


53: 2010/02/10(水) 09:52:22.57 ID:qeiwmFV+O

律「議員秘書の誘拐…」

和「今のところは唯と律だけのようね…混乱を招くだけだから警察には一応公にしないように伝えておいたけど…」

律「梓、憂ちゃん無事でいてくれ…」

prrrrrr…

和「はぁ!?すでにマスコミに漏れているっ!?」


54: 2010/02/10(水) 10:00:45.35 ID:qeiwmFV+O
記者「こちら東京湾にある倉庫です!
   田井中首相の秘書・中野梓さんと平沢厚労大臣の秘書・平沢憂さんが監禁されていると今朝テレビ局の方に連絡が来ました!」

キャスター「番組を変更しまして生放送でお送り致しております」

キャスター「いや、しかし犯人グループはなぜこんなことを…」

コメンテーター「考えられることはこれはテロではないでしょうか?現政権で好転しない景気に苛立ちを感じた人々が蜂起した、と考えれば説明は少しつきます」

キャスター「身代金を要求していないのはそうした背景からなのでしょうか…犯人は一体どんな集団なのでしょうか?」

専門家「犯人は20代~30代あるいは40代~50代のグループと考えられます」

キャスター「…そ…そうですか…」


55: 2010/02/10(水) 10:19:51.08 ID:qeiwmFV+O
記者「速報です!二人共無事救出されました!若干衰弱していますが、命に別状はないとのことです!」

律「よ…良かった~」ヘナヘナ…

和「そうもいかないわよ、律…」

律「?」

キャスター「おや…またもや速報です。犯人からと思われる手紙が届きました。中身は…本番はこれからだ、とこれだけです!」

律「………」

律「誰だか知らんが、ふざけたことを…」ギリッ…


56: 2010/02/10(水) 10:22:53.19 ID:qeiwmFV+O


東京・某廃ビル

?「ふふ…パフォーマンスにしてはまぁまぁじゃないか?」

部下A「リーダー!次の作戦の準備は完了しております!開始命令をお願いします!」

?「まぁ、落ち着け…C4はそう簡単には見つからないさ…」

部下A「はっ!」

?「よし…午前11時より作戦を次の段階に移せ!以上だ!」

部下A「はっ!了解しました!」ビシッ


60: 2010/02/10(水) 10:37:05.77 ID:qeiwmFV+O
某ホテル・駐車場

?「……」

ガサゴソ…カチッ

『12:00』ピッ

?「……」ニヤッ

スタスタスタ


64: 2010/02/10(水) 10:46:46.72 ID:qeiwmFV+O
某ホテル会場
記者会見終了後

唯「ふわー何度やっても緊張するよ~!」

政務官「大臣しっかりしてください…まぁ、今回はお察しします……ですが、妹さんの被害が擦り傷だけとは、不幸中の幸いですね…」

唯「でも、憂にこんな危険な目に会わせるなんて酷いよ~!」

政務官「現在入院されている病室に警備を固めております」

唯「ねぇ~見舞いに行ってもいい~?」

政務官「これからの予定を考えましたら…残念ですが、次の機会に…」

唯「そんなぁ~ねぇ…ダメかな…?」うるうる

政務官「! ……///」(あぁ…この純真な目は卑怯だ…卑怯だぞ…!)

政務官「おほん…仕方ありません…予定をずらしましょう…///」

唯「わーい!分かってくれてありがとう~!」ダキッ

政務官(これなんてえろげ?///)ぽー


65: 2010/02/10(水) 10:52:38.04 ID:qeiwmFV+O

病室

党員A「いやぁ、ご無事で何より…本当に心配しておりましたよ…」

憂「ご心配をおかけしてすいません…」

党員B「平沢大臣が来られるみたいですよ?」

憂「お姉ちゃんがっ!?」ガバッ

党員A「まだ安静にしてなさい…嬉しいのはわかりますが…」

憂(何だか胸騒ぎがする…)


66: 2010/02/10(水) 10:56:49.25 ID:qeiwmFV+O

車中

政務官「もうすぐお昼になりますね。着きましたら、妹さんと食べていくのも良いでしょう」

唯「そこまで時間調整してくれたの?ごめんね~迷惑をかけて…」テヘへ

政務官「いえいえ…それにしても、大臣、気をつけてください」

唯「ほぇ?何で?」

政務官「今回の誘拐事件は一種のテロです。現内閣に対する不満であれば大臣の命も危なくなりかねません」

唯「そ、それは…怖いね…」ビクビク


67: 2010/02/10(水) 11:01:40.12 ID:qeiwmFV+O

唯「………」

唯「そんなことしたって、みんな笑顔になれないのに……」

政務官「大臣……?」

唯「怖い思いをさせるよりも手を握り合って温め合った方が思いは通じるんだよ!」ニコッ

補佐官「大臣……///」


私の記憶はその大臣の最高の笑顔から続くことはなかった…


68: 2010/02/10(水) 11:13:21.22 ID:qeiwmFV+O
財務省

紬(月が紅い…)

秘書「大臣…例の方です」

紬「あら、分かりましたわ…」くるっ


記者「速報です!平沢厚労大臣の乗っていた車が国道進行中に爆破したとの情報が入りました!現在、車に乗っていた方の状態はまだ伝えられておりません!」


紬(もう出た船は戻れないわけね…)

秘書「大臣…」

紬「は~い♪」


69: 2010/02/10(水) 11:23:17.55 ID:qeiwmFV+O
国会議事堂

野党議員「今回の与党が立てた外国人労働者の入国規制に関しまして効果が見こめず―」

律(ちっ…重箱の隅をつつくことばっか…正直聞く気にもなんねぇ…今朝のせいで余計に腹が立つ…)

官房長官「総理…」ひそ

律「ん…」

官房長官「平沢大臣が浪籍者により狩られましたよ…」ひそひそ

律「なっ…!?」

官房長官「つけいれられる所までつけいれられましたね…」ふー

律「くっ…」ギリッ


71: 2010/02/10(水) 11:37:19.54 ID:qeiwmFV+O
病室

コンコン

和「身体は大丈夫かしら?」

梓「はい、何とか…」

和「ワイドショーはあなた達で持ちきりよ…『美人議員秘書誘拐事件』ってね」

梓「そんな…美人だなんて…///」

和「ふふ…憂は擦り傷を負ったのだけど、あなたは何もなかったのね…本当に良かったわ…」

梓「はい…ご心配おかけしました…」

ドタバタガタガタ…

医師A「ストレッチャーが足りないぞっ!!」

医師B「こっちの患者から手術の準備を頼むっ!!」

ドタバタ…

和「あら、急患かしら…それにしても、騒々しいわね…」

梓「先輩…何か嫌な予感がします…」

和「私もよ……」

72: 2010/02/10(水) 11:41:05.35 ID:qeiwmFV+O

記者「平沢大臣の状態はどうなんですか!!危険な状態なんですか!!」

医師「え~現段階では~え~危篤状態でありまして~
   え~回復の~見込みは…あ~まだ分かっておりません」

キャスター「現在、平沢大臣は重体となるほどの爆発です。警察の調査はいかがでしょうか」

警視庁「現段階わかりましたことは、大臣の乗っていた公用車の下に時限爆弾が設置されており、
    爆弾は可塑性爆弾。種類はC-4と判明。
    乗車していたのは運転手、平沢大臣と〇〇政務官の3名。爆弾は政務官の座席下に設置されていたため政務官は即氏。他2名は重体。
    爆弾のルートは現段階調査中」

キャスター「氏傷者が出てしまいましたか…」

専門家「外国の爆弾が使われたことから、犯人は男性または女性あるいは外国人だと推定されます」

キャスター「…い…以上、ニュースでした…」


74: 2010/02/10(水) 11:48:28.52 ID:qeiwmFV+O

東京・某ビル

?「ふふ…これはかなり良いパフォーマンスになったぞ…」

部下A「マスコミは大騒ぎ…ははは…田井中政権に良いプレゼントですね…しかし、なぜ平沢大臣を?」

?「大臣個人には特に恨みはない…ただ…」

部下A「ただ…?」

?「田井中首相と親しい人物を攻めていく…それで田井中首相を完全に追い詰める…これが最大の精神的ダメージになるのだよ」

部下A「直接には攻めず、じわりじわりと攻め込む…リーダーも酷い方ですね…ははは…」

?「おっと、誤解するなよ?我々はあくまでもアンチ田井中だ。悪でも正義でもない…単なるアンチだ…それ以上でもそれ以下でもない…」

?・部下A「ふふふふははははは……」


77: 2010/02/10(水) 12:04:23.89 ID:qeiwmFV+O

国会議事堂

律「はっ…はっ…」タッタッ

記者「総理!平沢厚労大臣について一言を!」

律「うるせー!!」

記者「ヒイィ!!」

バタンッ

律「病院へ急いでくれっ!!急ピッチでだっ!!」

運転手「かしこまりました」

ブロロ…



78: 2010/02/10(水) 12:10:37.37 ID:qeiwmFV+O

記者会見

パシャパシャ…パシャ…

官房長官「閣議は延長となりました…緊急に閣僚を持ち直す必要があります…」

記者「田井中首相に対する私怨として考えられますが、その点について何かありますか?」

官房長官「今のところは…判断しかねます……」

記者「今回の事件について他の閣僚の反応はどうでなんですか?」

官房長官「……お察しください……以上です」スタスタスタ…

パシャパシャパシャパシャ…


80: 2010/02/10(水) 12:25:13.90 ID:qeiwmFV+O
財務省

紬「………」

?「ビジネスよりもニュースですか?大臣?」

紬「あら…私としたことが…」

?「なにやら政界が揺らいでおるとか…あなたが気にすることではありません…」

紬「ふふ…そうでしたね…」ニコッ

?「あなたはすでに我々と同じ仲間なんです。今さら抜けたいとおっしゃってもムダですよ。」

紬「………」

?「出た船は戻れないんですから…」ニヤッ


そう…私はもう戻れない…この政治社会に飲まれるしかない…

最初は窮屈に感じていたけれど、慣れれば意外と住み心地が良いものよ?





自分を棄てさえすれば良いのだから…

85: 2010/02/10(水) 13:26:56.29 ID:qeiwmFV+O
すいません。用事が入ってしまいました。
16時から再開します。

88: 2010/02/10(水) 15:23:47.70 ID:qeiwmFV+O
もうちょい待ってください

90: 2010/02/10(水) 15:30:23.75 ID:qeiwmFV+O

車中

律「おいっ!!もっと飛ばせよっ!!」

運転手「しかし、これ以上速めますと、法定速度を大幅に越えてしまいます…」

律「クソッ!」

運転手「平沢大臣は意識不明の重体なんです…あなたが迎っても意識はまだ―」

律「意識あろうがなかろうが仲間の安静を気にするのがリーダーの務めだろっ!!」

運転手「!!」ビクッ

律「ましてや、唯だ…昔からの付き合いのある奴がケガをしているのに放っておける奴があるか!」

キキィッ―!!

律「って、おいっ!!何で止まるんだよっ!!」

運転手「仲間思いで素晴らしい方ですね、あなたは…残念ながら、しばらく、お休みになってください」ニコッ

プシュー…


92: 2010/02/10(水) 15:53:50.38 ID:qeiwmFV+O

病室・ICU

ピピッ…ピピッ…

「お姉ちゃんっ!!どうしてなのっ!!どうしてっ!!うっうっ…うわ゛ぁぁぁぁぁん!!」

―電子音と共に鳴り響く悲鳴

―それでも動かない姉の体を傍らでしがみつく妹

和「憂……」

私は何て声をかけていいか分からなかった…
目の前の人間が意識を覚まさない限り何を言っても無力だと感じたからだ。

この時だけはいつも信じないカミサマにただ祈るだけしかないのか……

唯…頼むから目を覚まして……


95: 2010/02/10(水) 16:09:21.27 ID:qeiwmFV+O
和「唯を……お願いするわね……」

憂「えっぐ、うっぐ…グスッ…はい……」

私は首相官邸に戻ることにした…正直二人をこれ以上見ていられないんだもの…



病院・駐車場

コツコツ…

ササッ

和「ん?」

?「真鍋首相補佐官ですか?」

和「え、ええ…」


96: 2010/02/10(水) 16:11:02.49 ID:qeiwmFV+O

?「そうですか…藪から棒で申し訳ありませんが…我々とドライブに付き合ってくれませんかね?」パチンッ

ガシッ

和「なっ…!これはどういうつもりなのっ!?」

?「ご無礼をお許し下さい…あぁ、この男達にはやましい気がないのでご安心を…」ニヤッ

和「あなた達は一体…!!まさか…唯をあんな風にしたのもあなた達なのっ!?」

?「まぁまぁ、落ち着いてください…ここではなんですから車の中でも……」ガラッ

和「い…いやっ…!!放してっ!!」

?「すいません…私と会ったばかりに…あなたには拒否権はないのですよ」ニヤッ

和「………」

今度は私が誘拐されることになるとは…


98: 2010/02/10(水) 16:43:13.98 ID:qeiwmFV+O


律「ん…ここは…」

―「目を覚ましたかしら?」

この声は……

律「ムギっ!!」

紬「うふっ♪」

律「何で…だよ…」ワナワナ…

紬「あら?律っちゃん、何を怒っているの?」

律「私はなっ!!唯が入院している病院に行こうとしていたんだっ!!ムギ…なのにお前はどういうつもりなんだよっ!!」

カチャン…

ティーカップを置き立ち上がる紬

だが笑顔は崩れない…

ただ、昔の様な笑顔ではなかった…


99: 2010/02/10(水) 16:48:06.57 ID:qeiwmFV+O

律「な…何だよ…ムギ……」

紬「確か15時から財務省で会議がなかったかしら?忘れちゃったの?」

ズイッと近づく紬の顔

普通であれば、可愛いく思えるのに、なぜか今は恐ろしく感じる……


102: 2010/02/10(水) 17:20:53.29 ID:qeiwmFV+O

律「な、なぁ、ムギ~、お前は唯のこと…気にしていないのかよ…」

紬「ふふ…律っちゃんたら、冗談が上手いのね♪」

律「な…なにぃっ!?」

紬「国民そっちのけで閣僚一人を気にするなんて…面白い冗談だわ…一国のリーダーがそんなことをしたら世界中の笑われ者よ…」

律「……くっ…」ググッ

紬「………」

紬「……本気だったみたいね…分かったわ…」

紬「律っちゃんは澪ちゃんと同じく政治家に向いていないのよ…」
律「………」ワナワナワナ…


104: 2010/02/10(水) 17:25:11.71 ID:qeiwmFV+O

律「そ…そんな御託はどうだっていいんだよっ!!仲間がケガしているのに、そっちのけで仕事をする奴がいるかよっ!!」

律「それに担当の大臣がいなくなったら省が機能しなくなるだろ?それこそ問題だろっ!!」

紬「あら?後半はないわよ、律っちゃん…副大臣という人がいるからその心配はないわ…」

律「うぅっ……」

紬「ふふ♪難しかったかしら?国家行政組織法第16条でちゃんと定められてあるのよ♪」

紬「でもね…前半は半分正しいわ…それは律っちゃんが言う資格があればの話だけど……」

律「えっ…?」


105: 2010/02/10(水) 17:43:22.47 ID:qeiwmFV+O

律「な…なに言ってんだよ…ムギ…?」

紬「とぼけてもムダよ律っちゃん…一番の旧友である澪ちゃんを4年前、ダシにしたじゃない…」

律「!!なっ…そ、それは、ちが―」

紬「違うっていうの?4年前の総裁選で澪ちゃんから票を得たのに、懲罰委員会では律っちゃんは澪ちゃんの除名の方に投票したじゃない?」

律「…総裁選前だから、党内をまとめるしかなかったんだ…世論も党内も澪への風当たりが悪かったから…」

紬「どんな政治力学が働こうが、律っちゃんがやったことと、さっき言っていたことは矛盾するわ…」

律「わ…私…なんてことを……」

紬「でっちあげの汚職で失脚するという政治家としての傷を澪ちゃんは負っていたのよ…それを癒す、いえ治すことができたのは他でもない律っちゃんだけだったのよ?」

律「うっ…うっ…澪…澪…」

紬「もう出た船は戻れないのよ…悔やんでも仕方ないの…」


107: 2010/02/10(水) 17:59:42.06 ID:qeiwmFV+O
病室・ICU

ピピッ…ピピッ…

憂「お姉ちゃん…うっうっ…お姉ちゃん…」

梓「憂…休んだら…?寝てないじゃない…」

憂「嫌だっ!!お姉ちゃんが苦しんでいるのに、そんな…休むなんて出来ないよっ!!」

梓「憂……」ギュッ

憂「…!」

梓「もう…憂は頑張ったから…ね?後は私に任せて…グスッ……」

憂「梓ちゃん……」

あったかい…お姉ちゃんみたいにあったかい…

そうだよね…梓ちゃんもお姉ちゃんのことを心配しているんだもの…


憂「……すーすー…」

梓「やっと寝てくれた…唯先輩、今度は私と頑張りましょう。大丈夫です。唯先輩なら乗り越えられますよ。何せ憂や私達が見守っていますから…」

ピピッ…ピピッ…


109: 2010/02/10(水) 18:52:01.39 ID:qeiwmFV+O

東京・某廃ビル

和「ん…ここは……?」

?「お目覚めですか?真鍋首相補佐官」ニヤニヤ

和「! あなた達…こんなことをしてただで済むと思っているのっ!?」

?「ははは…ただドライブをしただけじゃないですか…まぁ、あなたは終始騒いでいてそれどころじゃなかったのですが…淑女がやることではありませんよ」ニヤニヤ

和「くっ…」キッ

―「おいおい、機嫌を損ねるなって言っただろ、A」

この声は…

部下A「ははは…これはお手上げですよ、リーダー」

私が何年も付き添ってきた人の声…

澪「久しぶりだな…和…」ニヤッ

和「――!?」


110: 2010/02/10(水) 19:01:49.16 ID:qeiwmFV+O

声にならなかった…

これまでのテロは全て澪が仕組んだっていうの…?

唯をあんな目に会わせたのも澪だっていうの…?

和「………」ガタガタガタ

澪「……何とか言ったらどうなんだ?ぼっーとしてないでさっ」ドカッ

和「うぐぅっ……」

突然の蹴りを入れられても私の頭はまだ真っ白だった…

和「かはっ…はぁ…はぁ……」

澪「…ったく、せっかくの感動の再会が…興ざめだな…」

部下A「リーダー、この方とは知り合いなんですか?」

澪「あぁ…忘れたくても忘れられない、そんな奴だ」ジロッ


私の知る澪の面影はどこにもなかった…


111: 2010/02/10(水) 19:10:56.63 ID:qeiwmFV+O

一方

律「うぅっ…澪…澪…」

紬「推測だけど、これまで政府を狙ったテロは澪ちゃんが関与しているかもしれないの」

律「えっ…?」

紬「梓ちゃんから聞いたんけど、二ヶ月前に澪ちゃんは仮出所したらしいの…今は澪ちゃんは既に時の人…だからマスコミは仮出所まで取り上げられことはなかったのよ」

律「それとテロと何の関連性があるんだよ!澪は…澪はそんなことをするはずがないだろっ!!」

紬「それじゃあ、今のところテロの標的は誰になっていたかしら?梓ちゃんに憂ちゃん、唯ちゃん…ここから何が導き出せるかしら?」


115: 2010/02/10(水) 20:20:33.76 ID:qeiwmFV+O
律「つまり…澪に行き着くわけか…」

紬「あくまでも、推測よ…」

律「だとしたら…何で澪は私に直接攻撃してこないんだよ…!」

紬「テロはね…相手を直接攻撃するのではなく、間接的に攻撃するのよ、目的のために」

律「………」

紬「今回の目的は、律っちゃんと関連がある人を攻めて律っちゃんを追い込む…まさに生頃しの様なもの…本当に憎んでいないと出来ないことよ」

律「澪が…私を…憎んでいる…だと…?」ガタッ

私は崩れ落ちた…

もはや取り返しのつかない所まで来てしまっているのか…?


116: 2010/02/10(水) 20:24:33.32 ID:qeiwmFV+O
病室・ICU

ピピッ…ピピッ…

「ん…ん…あれ…?」

ピピッ…ピピッ…

「ここは…あっ…憂!あずにゃん!」

ピピッ…ピピッ…

「寝ちゃっているのかな~?風邪ひくよ~二人とも!」

ピピッ…ピピッ…

「そうだ!布団をかけてあげようと!これなら二人も大丈夫だね!」

ピピッ…ピピッ…


117: 2010/02/10(水) 20:29:23.79 ID:qeiwmFV+O
「よ~し!これでばっちり!」

ピピッ…ピピッ…

「そういえば、ここ病院だね~何でここにいるんだろう…?」

ピピッ…ピピッ…

「まっ…ベッドにいたから戻るかぁ~あれ…?先に誰か寝てる…」

ピピッ…ピピッ…







「私…?」

ピピッ…ピッ…ピ――――


121: 2010/02/10(水) 20:37:05.35 ID:qeiwmFV+O

東京・某廃ビル

和「………」ガタガタガタ

澪「本当に何もしゃべんないとは…何かしゃべろよ!」ドカッ

和「うぐっ…かはっ…はぁ……」

部下A「リーダー…余りやり過ぎると…」

澪「あ?」ドカッ

和「ごほっ…げほっ、けほっ…」

部下A「いえ…」

澪「あぁ、次の作戦か…15:30からでやれ……」

部下A「は…はい……」

澪「あと、こいつを閉じ込めておけ!」

部下A「りょ…了解…しました…」


124: 2010/02/10(水) 20:52:43.12 ID:qeiwmFV+O

カシャーン

部下A「悪く思うなよ…全部あんたらが悪いんだからな…けっ!」スタスタスタ…

ここでやっと我に返った…

それと同時に目から溢れ出るものが止まることなく流れ続けた…

和「澪…どうして…どうして…」ポロポロポロ…





澪「………」

部下A「リーダー!準備・配備完了です!」

澪「そうか…ご苦労…」

部下A「次の財務省で田井中政権もおしまいですねぇ~」

澪「あぁ…実に楽しみだ…そのために私はいろんなものを捨ててきたのだからな……」


125: 2010/02/10(水) 20:55:52.52 ID:qeiwmFV+O

律「…クソッ!!バカ野郎っ!!私のバカ野郎っ!!」ダンッダンッ

紬「だとしたら…ここはもう危険ね…」

律「な…なぜ……?」

紬「あら?今までの話覚えてないの?澪ちゃんがテロに関与していると仮定したら、テロの標的が憂ちゃん、梓ちゃん、唯ちゃんと続き、律っちゃんを除く人物が次に狙われることになるのよ?」

律「む、ムギ…まさか…」














紬「そう…次に狙われるのは…私…」


126: 2010/02/10(水) 21:07:13.90 ID:qeiwmFV+O

律「そんなっ!!そんなのって…ありかよ…!!」

紬「律っちゃん、私を政界に連れて来てくれてありがとう…本当に楽しかったわ…」ニコッ

律「ムギ……」

紬「いろんな世界を見れたし、いろんな人にも会えたわ…ただ、学生時代でやったクリスマス会みたいに放課後ティータイムのメンバーと憂ちゃん、和ちゃんとで集まることが出来なかったのが一つの心残りだけどね……」

どうしてこうなったんだ…

紬「それじゃ、律っちゃん、また会いましょう♪」パチンッ

ガシッ

律「お、おいっ!!離せっ!!」

連れ出されるなか、ドアで遮られるまでムギの顔を見続けた…

結局、私はムギを守れなかったのだ…

リーダーなのに…仲間一人さえも私は救えなかったのだ……


128: 2010/02/10(水) 21:13:18.74 ID:qeiwmFV+O

律「離せぇぇー!!ムギィィー!!」

バタンッ

紬「………」

秘書「大臣…これで本当に良かったのですか…」

紬「ふふふ♪じゃなきゃ、やりずらいでしょ?」

秘書「本当にあなたは気配り上手な方でした…」カチャリッ

ターンッ

律「離せっ…!えっ…?」

「銃声がしたぞー!」
「琴吹大臣が撃たれぞー!」
「救急車はまだかー!」


律「そ…そんな……」

SP「総理…急ぎますよ…」

律「………」


130: 2010/02/10(水) 21:23:00.62 ID:qeiwmFV+O
>>129
その言い回しが好きだったから借用させてもらいやしたwww

131: 2010/02/10(水) 21:26:41.85 ID:qeiwmFV+O

記者「速報です!15:42に財務省大臣室で琴吹大臣が銃撃されたもよう!
   現場は大変混乱しております!琴吹大臣は現在、救急病院へ搬送中!意識不明の重体!」

キャスター「また番組を変更しましてお送り致しております。
      15:42頃、琴吹財務大臣が財務省大臣室にて銃撃され、意識不明の重体となっております。
      これで平沢厚労大臣の爆撃事件に続き、第2の犠牲者となりました」


澪「………」

部下A「はははっ!田井中政権、ついに墜ちましたね!」グッ

澪「そう…だな……」


133: 2010/02/10(水) 21:47:10.78 ID:qeiwmFV+O
澪「………」スタッ

部下A「リーダー…どこへ?」

澪「気分を換えたいんだ…ちょっとふらつく…」

部下A「気をつけて下さいよ…パトカーの音がしきりに外から聞こえますんで……」

澪「分かってるよ……」

バタンッ

部下A「………」

部下A「黙っていりゃぁ、良い女なのによ……」


134: 2010/02/10(水) 21:48:55.87 ID:qeiwmFV+O

燃え尽きて 我が手に残る 虚しさよ
我に言わせよ 我に聞かせよ


執念を燃やすだけの人生は、はっきり言って華がない…

ただ、血と汗を流すだけで自己満足すら得られない…

それを是としてやってきた私にはもう戻ることは出来ない…

出来るのは自分に精一杯の嘘をつくだけ…

もう、それでしか…自分を…自分の人生を…守れない…


澪「何やっていたんだろ…私……」

ふとこぼれる小口にただ苛立ちが積もる…





和「うっ…うっ…」ポロポロポロ


そして、なぜコイツの前に私は来たのだろう…


135: 2010/02/10(水) 21:56:13.06 ID:qeiwmFV+O

和「澪…うっうっ…澪…ううっ…」ポロポロポロ

澪「何だ……?」

和「!!」ビクッ

澪「何だって聞いてんだよ!」ガンッ

和「………」ガタガタガタ…

澪「……ちっ…」

澪「あぁ…そうだ…ムギも病院送りなったそうだ……」

和「!!ど、どうしてなの…?」ガタガタガタ

澪「………」

澪「何がだ……?」


136: 2010/02/10(水) 22:00:11.48 ID:qeiwmFV+O

和「どうして…私じゃなく…唯やムギをそんな目に会わせるのよっ!!」

澪「………」

和「あの二人が澪に何をしたって言うのよっ!!私だけ…私だけを苦しませれば良いじゃないっ!!」

澪「……ふっ…ふふっ……」

澪「ふふっ…ははっ…あははは……」

和「…?」


137: 2010/02/10(水) 22:04:45.00 ID:qeiwmFV+O

澪「アーハッハッハッハッハッハッ!!!!」

和「み、澪……?」

ガシッ

澪「苦しいか?あぁ、そうだよな?自分のせいで他の奴が痛い目に会っているからなっ!!お前と律だけは徹底的に苦しんでもらわんとなっ!!」

和「み…澪…ごめんなさいっ!!私…あなたを苦しませる気はなかったのよっ!!」

澪「うるさいっ!!!!今さら謝ったってもう遅いんだよっ!!!!私だけ退け者にした罰だっ!!!!
  特に和っ!!!!お前は私の味方だと言ってたはずなのに堂々と裏切りやがって…お前だけは律以上に苦しんでもらうからな…覚悟してろよっ!!!!」ギロッ

キィー、バタンッ

和「澪…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

私は澪がいなくなった先に向かってひたすら謝るしかなかった…


138: 2010/02/10(水) 22:09:32.09 ID:qeiwmFV+O

車中

律「………」

「総理、よろしいかと…」

律「………」

「総理!!」

律「あ…何だ…」

「今から総理は避難施設に隠れることになります…
 もはや首相官邸など公的機関におられましては危険です。
 一旦、公務から離れた方が身の安全かと…」

律「そうか……」

唯に続いてムギ…

もし澪がテロに関与していると仮定すれば、次に狙われるのは最後に残る私…

律「……クソッ…」ボソリッ


139: 2010/02/10(水) 22:12:59.16 ID:qeiwmFV+O

prrrrrr…

律「はい…」

『田井中総理ですか?私、警視庁公安部の者です。
 もうすぐ総理とのアクセスができなくなられるとお聞き致しましたのでご連絡させていただきました』

律「公安…?今日のテロについてか…?」

『お察しの通りです。いやぁ、大変ですね…司法省も狙われているんですよね?
 公安庁も動けないと思うと心中残念ですねぇ~』

こんな時でも管轄争いか…そんなことしている場合か

律「…早く要件を言え!」

『失礼致しました…滅多に総理でもお伝えもしない情報ですから慣れないものでしてね、お伝え致します』


140: 2010/02/10(水) 22:21:36.99 ID:qeiwmFV+O

『本日一貫して起こったテロを招いた組織を判明致しました。
 組織名もなく、人数もあまりないようなので、集団とでも言いますか…比較的新しい集団です。
 集団の目的は現政権、田井中内閣の倒閣。
 公安部員の捜査から首謀者は秋山澪…おや、昔の政敵と同姓同名ですね…こんな偶然もあるんですねぇ~』

なんてことだ…ムギの言った通りじゃねぇか…

『東京〇〇区の○○ビルでその集団の一員が出入りしているとの目撃情報があり、そこが拠点ではないかと思い…』

律「やはり…そうだったのか…後は任せる…ご苦労…」ピッ


律「……はぁ~…」

なぜか、肩の荷が降りる感じがした…

いや、力以上に何かが抜ける感じだ…

夢であって欲しい…

誰かが「これまでのは嘘です」とさえ言ってくれればもう何も要らない…

律「なんだよ…これ…私が望んだ将来ってこんなんなのかよ……」

ただうなだれるしかなかった……


142: 2010/02/10(水) 22:32:42.06 ID:qeiwmFV+O
東京・某廃ビル

澪「最後の作戦だっ!!これで田井中政権の灯火は消えるっ!!気を引き締めて挑むようにっ!!」

部下一同「「はっ!!」」

部下A「これまでの流れを受け、内閣は逃げに回り、警察が動きに回るっ!!そこで今回は厳戒警備体制のスキを狙った作戦だっ!!」

澪「警察と言えど公安…ヘマを起こせばこれまでの努力がおじゃんになる…」

部下A「現在、首都高で埼玉方面に向かう公用車に乗っている総理を狙撃するものだっ!!」

部下A「目的地点から狙撃を行うっ!!Bっ!!お前の腕にかかっているっ!!」

部下B「はっ!!」

澪「B…頼んだぞ…お前なら出来る…」

部下B「外しはしませんよ…リーダー!」

澪「その意気だ…!」

もう戻れない段階にまで私は来てしまっているのだな……

失うものはもう自分の手で潰してきたんだ…



私が心配するものなんてもうない

143: 2010/02/10(水) 22:35:38.42 ID:qeiwmFV+O

私が直接手を下すわけではない…

しかし、私の命令で着々と物事は進む…

作戦の状況はBからの無線でしか聞けない

Bが外した時の作戦も考えてある…

隠れるための移動ゆえ、警備隊は逆にいない

厳戒警備体制はヘリでの監視、車内のSPの多さを考慮した所以だ

スナイパーには手厳しい状況だ

だから、用意してあるのだ

原油をたっぷり貯めたタンクローリーと花火を大量に積んだトレーラーを…


145: 2010/02/10(水) 22:57:46.64 ID:qeiwmFV+O

ちょっと休憩!

部下A「リーダー、食事の準備が出来ましたっ!」

澪「ん…もうこんな時間か……」

澪「豆料理なんて久しぶりだなぁ……」

―「おっーす!」

澪「」

―「私は世界一美しい豆、律豆しばってんだっ!」

澪「………」

律豆しば「ねぇ、知ってる?フジツボって人間の傷口から―」

ダンッ!プチッ…

律豆しば「ドゥギャアアアアア!!!」

部下A「どうかしましたか?リーダー」

澪「い…いや、何でもない…はぁ…はぁ……」

148: 2010/02/10(水) 23:31:13.35 ID:qeiwmFV+O

首都高沿い・某廃ビル

部下B「………」カチャリッ

部下B「ターゲットを発見…(狙撃範囲に)入るまで待機……」

澪『………』

部下B「?…ヘリと共に大型車も続行している…?」

澪『気にするな。集中しろ』

部下B「はっ!!」

部下B「………」

澪『………』

部下B「……入った」

ターンッ

澪『無線を切る…退散しろ…』ブツッ

首都高はカオスと化すだろう…


149: 2010/02/10(水) 23:35:47.68 ID:qeiwmFV+O

???

カッチャカッチャ…

「う~ここのフレーズ難しいよ~!」

ガチャッ

「あら、唯ちゃん早いのね」

「ムギちゃん!遅いよ~!」

「ウフ♪ごめんなさい。早速紅茶をいれるから待っててね」

「わ~い!」



152: 2010/02/10(水) 23:41:27.31 ID:qeiwmFV+O

……………………

「さぁ、どうぞ♪」

「ありがと~ムギちゃん!」ズズッ

「ウマイ!」

「ふふ♪良かった♪」

「律っちゃんと澪ちゃんとあずにゃん遅いねぇ~早く集まってお菓子食べたいなぁ~!」

「違うわよ、唯ちゃん。私たちが早く来過ぎたたのよ……」

「ほぇ…?」


154: 2010/02/10(水) 23:52:33.30 ID:qeiwmFV+O

病室・ICU

憂「いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!」じったばった

梓「憂危ないよっ!」

医師「離れて下さい!感電しますよ!」

キュィーン…バスンッ

キュィーン…バスンッ

憂「嫌だぁ!嫌だぁ!嫌だぁぁぁぁ!お姉ちゃん!お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」

梓「憂!離れてって!危ないって!」

キュィーン…バスンッ

キュィーン…バスンッ

医師「くっ…電気マッサージの電圧を上げてくれ!」

看護師「はいっ!」

キュィーン…バスンッ



156: 2010/02/11(木) 00:07:23.71 ID:159a5MjnO

首都高

ヒュー…パンッパンッ…

バァンッ…

チリジリジリ…


律「くっ…何だっていうんだ…!はっ…ガソリン!?」スクッ…

律「早く…ここから出ないと………これも…澪の仕業か…くっ…」よろっ…

律「まさか、最後は狙撃と見せかけて事故とはな…本当に私を殺そうとしやがる…ふっ…澪にしては念を入れ過ぎじゃねぇのか?」よろっ…

―「生存者がいるぞ!大丈夫ですか!」


はは…どうやら私は神様から寵愛されているようだな…

唯やムギはどうなんだろうな…


157: 2010/02/11(木) 00:19:36.55 ID:159a5MjnO

キャスター『ニュース速報です。首都高速埼玉新都心線でタンクローリーとトレーラーが衝突する事故があり、一部通行止めとなっております』

澪「………」

部下A「………」

記者『現場では激しい火災とトレーラーに積荷であった花火の火薬で大変近づくことができません!
   乗用車1台が巻き添えをくらい、負傷者1名を近くの救急病院へ搬送…ん!!』

記者『新たな情報ですっ!!この事故で病院へ搬送された負傷者はなんと田井中総理ですっ!!
   どうやら、テロから避難しようとしたところを狙われたのだと思いますっ!!』

キャスター『現場から以上でした』





澪「何でだよ!!」ダンッ

部下A「り…リーダー…」


159: 2010/02/11(木) 00:25:38.15 ID:159a5MjnO

澪「何で総理は氏んでないんだよっ!!最後の最後でしくじりおってっ!!」

部下A「お…落ち着いて下さい…今は次をどうするか考えましょう…」

澪「……ちっ」ギロッ

部下A「………」

澪「Bは…今どこにいるんだ…?」

部下A「今掃除(証拠隠滅)をしながら配備した車に乗っているかと…」

澪「あいつを干せっ!!なすりつけろっ!!失敗の原因はそいつにあるっ!!」

部下A「い…いくらなんでも酷じゃ…ないですか…?」

澪「なん…だと…?」ギリッ…


160: 2010/02/11(木) 00:31:42.96 ID:159a5MjnO
部下A「そもそも今回は失敗する可能性があったじゃないですかっ!!」

部下A「それを部下に全部押しつけるのは…リーダーとしてはあまりにもムシが良すぎますよっ!!」

澪「言いたいことは…それだけか…?」カチャリッ

部下A「なっ…!!」

澪「計画はなっ!!実行に移ったら失敗の可能性があるかないかなんてどうだっていいんだよっ!!実行に移れば後は行うだけだっ!!」

澪「物事にはなっ!!結果への対応が全て求められんだよっ!!部下の失敗を全部上司が尻拭いだぁ?お前こそムシが良すぎじゃないのかっ!!あぁ?」

澪「失敗での対応を本人に取らせないならお前に取らせるっ!!撃つぞっ!!」

部下A「じゅ…銃を…下ろして…ください…」

澪「ふぅー…こいつも干せっ!!」

部下C「はっ!」

部下A「…ま、待ってくださ…」

澪「………」

澪「……クソッ…」ギリッ


161: 2010/02/11(木) 00:43:45.78 ID:159a5MjnO

首都高沿い・救急病院

律「くっ…あぁ…病院か…」

―「おぉ…総理、目を覚まされましたか!」

律「あぁ…副総理か…」

副総理「お察し致します…あの大事故からご無事で何よりです…!」

律「………」


162: 2010/02/11(木) 00:46:00.12 ID:159a5MjnO

副総理「今、公安がテロ集団の逮捕に動いております…ついに正義の鉄槌が下されるんですよっ!!」ワクワク

律「正義の…鉄槌か…」

副総理「抵抗すれば発砲もやむを得ませんね…」

律「!?発砲…だと…?おいっ!!公安の部隊は今どこにいるんだっ!!」

副総理「東京の〇〇の〇〇ビル―」

ガタッ

副総理「!!…総理っ!どこに行かれるんですかっ!!安静にしていないと―」

律「うっせぇっー!!」バタバタバタ



もう向かうしかない


取り返しがつかなくても…


もう手遅れだとしても…


今は向かうしかない

164: 2010/02/11(木) 01:16:57.41 ID:159a5MjnO
東京・某廃ビル

カツン…カツン…

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

この苛立ちをどうすれば良い……?

ただひたすら謝るしか能のないコイツに求めるなんて愚の骨頂だ……

では、なぜ私はコイツの所に来たんだ……?

コイツに何を私は求めているというのだ……?


澪「和……」

和「ごめんなさい、ごめんなさい…、はっ…!!」

澪「お前は何に謝っているんだ…?お前は何のために謝っているんだ…?私をどうしたいのだ…?」


167: 2010/02/11(木) 01:23:32.76 ID:159a5MjnO

和「み…澪…グスッ…わ…私は…澪に…澪に…昔の様に…昔の澪に戻って欲しいの…!」

澪「………」ギリッ

和「私は…澪を救えなかったことに謝っているの…本当に後悔しているわ…今…こんなことになって…澪がこんなに傷ついていたのに……」

和「私は…澪を本当に支えてやれなかった……私は…パートナー失格ね……」

澪「………」


168: 2010/02/11(木) 01:28:14.73 ID:159a5MjnO

和「澪…ごめんなさいね…早く気づいていれば、あなたを一人にすることがなかったのに……」

澪「………」

和「許してくれなくてもいい…私は…澪からどんなことをされたって構わない…!なぜなら……」

澪「………」













和「なぜなら…私は…澪を…心から信じているから……」ニコッ


澪「………」


何でコイツはこんなにも笑っていられるんだ……


169: 2010/02/11(木) 01:34:47.63 ID:159a5MjnO

澪「っ………」

和「! 澪……」

頬から熱いものがつたわってくる…

私は…こんな…こんなくだらない執念のために…



澪『私にできる精一杯のことをしよう』



あの時捨てた本当にくだらないものを…こんな奴を…傷つけてしまっていたのか…


私の方が…本当にくだらない…

澪「うっぐ……くっ……」ポロポロ

和「澪……」


171: 2010/02/11(木) 02:03:44.52 ID:159a5MjnO

カシャーンッ…!

『公安だ!内乱の罪でお前らを逮捕する!抵抗すれば発砲をする!無駄な抵抗は止めて投降しろ!』


「尻尾捕まれたぞ!」
「もう俺らはおしまいだ!」
「あんなリーダーに着いて行ったのが間違いだったんだ!」


数々の叫び声…

もう取り返しのつかないところまで来たのだな……

和「澪…投降しよう…」

澪「………」

和「今なら間に合うわよ…ね?取り返しのつかない前に…さぁ…」

澪「………」

和「………」

澪「……ふっ…」


172: 2010/02/11(木) 02:09:13.17 ID:159a5MjnO

澪「あぁ……そう……だな……」

和「み…澪…!!」パァ-

私の負けだ……

まったく……和には……かなわないよなぁ……







ターンッ……


ドサッ


和「!?……澪……?」





「自分だけ投降なんてムシが良すぎるんじゃないですかねぇ?」


174: 2010/02/11(木) 02:57:36.69 ID:159a5MjnO

澪「かはっ……ぐぶっ……」

部下A「アンタはやっぱり二流なんだよっ!!人質に懐柔されるなんて二流のリーダーがやることだっ!!」

部下A「いや…それ以下だっ!!」

和「澪っ!!澪っ!!ウソでしょ……?ねぇ?澪っ!!」

部下A「悪いが、アンタを干してこっちはトンズラする…これは俺をコケにしてくれたお礼だ!」ドカッ

澪「ブグッ……カハッ…カハッ……」

部下A「あーばよっ!!ペテン師めがっ!!」カツンカツンカツン…


175: 2010/02/11(木) 02:59:14.87 ID:159a5MjnO

和「み…澪……?」

澪「はぁ…はぁ……」

目が……霞む……

和「澪…ふざけるのもいい加減にして…ウソ…だよね…?」

澪「はぁ……はぁ……」

和の声が……聞こえなくなる……

和「ねぇ!澪ってばっ!」

澪「……はぁ………はぁ…………」

まぶたが……重い……

和「澪っ!!大丈夫なら返事してよっ!!」

澪「……………」




177: 2010/02/11(木) 03:47:08.96 ID:159a5MjnO

キキィッー!

律「はっ…はっ…」タタタッ

指揮官「こ…これは…田井中総理じゃないですかっ!!なぜこちらへ?危険ですっ!!離れて下さいっ!!」

律「うるせぇっー!!」タタタッ

機動隊「「………」」ポカーン…

指揮官「な…何をもたもたしているっ!!総理を護衛しろっ!!」

機動隊「「は、はいっ!!!」」


178: 2010/02/11(木) 03:55:17.06 ID:159a5MjnO


律「はぁ…はぁ……」

ビルの中は外と違い妙に静かだった…

澪たちはこっちの様子を伺っているっていうのか?



―「澪…澪!」

扉の向こうから聞き慣れた声がする……

バタンッ

律「はぁ…はぁ…和っ!!」

和「律っ!!み…み…澪が…澪が…」ポロポロ

泣き叫んばかりの声を出す和の隣には……





もはや虫の息の音ほどになっている澪がそこにいた……


186: 2010/02/11(木) 08:48:46.18 ID:159a5MjnO

律「み……澪……?」

澪「…………」

律「澪…何で…何でだよっ!!何で私より先に行こうとするんだよぉっ!!」

律「こんな再会ってありかよぉっ!!おいっ!!聞いてんのかよぉ、澪っ!!」

澪「………とぅ……り…つ…」

律「澪…今何て…?」









澪「……ありがと……律……」にこっ


その笑顔は最後の灯火かのようにすぐに消えてしまった


189: 2010/02/11(木) 08:56:28.18 ID:159a5MjnO

???

「ムギちゃ~ん、みんなまだ来ないし、二人で何か遊びをしよ~よ~!」

「あら、いいわね~何をする?」

「んーとねーえーとねー…」

ガチャッ

「「!?」」

「唯とムギか…早かったな…」

「澪ちゃ~ん!待っていたよ~!」ダキッ

「わっ…こらっ!!いきなり抱きつくなっ!!///」

「あらあら…ふふふ…」

「澪ちゃんも来たことだし、律っちゃんとあずにゃんには悪いけど、先にお菓子食べちゃおうよ!」

「そうね…そうしましょ♪」


191: 2010/02/11(木) 09:29:53.78 ID:159a5MjnO

「盛り上がっているところ…悪いんだけどさ…」

「ん?どったの澪ちゃん?」

「二人はまだ…ここにいるべきじゃない…ここに来るのは早すぎるっ!!戻るべきところに早く戻るんだっ!!」

「………」

「私のせいで二人はここに来ているんだ…せめて二人だけでも戻れるようにする義務は私にはあるっ!!」


193: 2010/02/11(木) 09:44:36.71 ID:159a5MjnO

「澪ちゃん……」ギュッ

「! ゆ…唯……///」

「澪ちゃん…苦しかったんだよね…ごめんねぇ…」

「唯ちゃん……」

「絶対寂しいもん…一人なんて…手を握りあえないし……」

「………」

「今こうして澪ちゃんの気持ちが分かり合えるのも…手を握って気持ちがつながっているからなんだよ…」

「ごめん……本当に二人とも……ごめん……」


194: 2010/02/11(木) 09:47:24.15 ID:159a5MjnO

「はい♪」サッ

「……!?」

「紅茶よ、澪ちゃんが前気に入ってくれたものよ♪」ニコッ

ズズッ

「…あったかい……」

「あったかあったか♪」

「ふふ…あったかあったか♪」

失って気づいた…

こんなあたたかさが私の周りには実はあったのだと…






195: 2010/02/11(木) 10:04:02.44 ID:159a5MjnO
「くっ……うぐっ……グスッ…」

「澪ちゃん…泣いてるの?」

「な…泣いてなんかないっ!!///」

「大丈夫よ♪律っちゃんと梓ちゃんはまだ来てないのだから…」

「まったく…二人とも…」

「アハハ~」

「うふふ♪」


196: 2010/02/11(木) 10:08:39.55 ID:159a5MjnO

「でもね~ムギちゃん…」

「ん?何だよ?唯…」

「そうね~唯ちゃん…」

「む…ムギまで何だよ?」















「どんなに離れていても私たちにはっ!!」

「放課後ティータイムというバンドの絆があるのよっ!!」


198: 2010/02/11(木) 10:30:12.89 ID:159a5MjnO

病室・ICU

キュィーン…バスンッ

憂「お姉ちゃん…どうしてなの…どうして私を一人にするのよっ!!お姉ちゃんの意地悪っ!!」

梓「憂……」

医師「もう電圧は上げれないのかっ!!」

看護師「もう最大値なんですっ!!」

憂「お姉ちゃん…先に行ったりしたら…私…お姉ちゃんのこと…嫌いになるよ…いいの?お姉ちゃん…嫌なら目を覚ましてよっ!!お姉ちゃんっ!!」

梓「う…憂……」



199: 2010/02/11(木) 10:36:20.57 ID:159a5MjnO

医師「くっ…残念ながら…最善を尽したのですが……」

梓「!?そ、そんな…唯先輩…嘘ですよね……?」

医師「……21:34…九時間という長い時間…平沢唯さんはよく闘ってくれました…」

梓「……嫌です…そんなの…嫌です…唯先輩…いつか放課後ティータイムのメンバーで集まろうって言ってたじゃないですか…」

梓「約束を破って行ってしまうなんて…最低ですっ!!約束は守って下さいよっ!!グスッ…」












ピピッ…ピピッ…

200: 2010/02/11(木) 10:49:04.84 ID:159a5MjnO

ピピッ…ピピッ…

憂「お姉…ちゃん…?」

梓「唯先輩…?」

医師「奇跡だ…本当に奇跡が起こったんだ…人工呼吸に切り替えるっ!!呼吸器をっ!!」

看護師「はいっ!!」




梓「唯先輩…信じてましたよ…グスッ……」

憂「うっうっ…お姉ちゃぁん…大好きだよぉ…ありがとぉ……」





202: 2010/02/11(木) 11:05:27.83 ID:159a5MjnO
自分…建国記念日になにやってんだろ…

205: 2010/02/11(木) 11:18:40.64 ID:159a5MjnO

病院

『手術中』フッ…

ガラッ

斎藤「先生!紬さまは…!」

執刀医「急所の近くに弾丸がありましたため苦戦しましたが…何とか成功しましたよ…」

斎藤「あぁ…ありがとうございます…何とお礼を申し上げれば良いものやら…」

執刀医「頑張ったのは彼女ですよ。私はただ、彼女の努力に手助けをしただけです…」スタスタスタ

斎藤「うぐっ……ふぐっ……」



206: 2010/02/11(木) 11:26:03.58 ID:159a5MjnO

救急車内

律「澪っ!!しっかりしろっ!!お前はそんな弱っちい奴じゃないだろっ!!」

救命士「止血しましたが…輸血が間に合わない…」

律「なぁっ!!もっと急げよっ!!澪が氏んでしまうんだぞっ!!おいっ!!急げよっ!!」

救命士「落ち着いて下さい!こちらも最短ルートかつ最速で病院に向かっておりますから!」

和「澪……澪……」



207: 2010/02/11(木) 11:35:42.07 ID:159a5MjnO

別病院

『手術中』パッ

律「澪…頼むから…氏なないでくれ…」

和「澪……」

―「総理!こんな所にいたのですか!」

律・和「!!」

副総理「心配しておりましたよ!まったく…真鍋補佐官まで…」

和「ごめんなさい…」

副総理「…?誰の手術ですか?」

律「そ…それは―」

和「秋山澪…今日一連に起きたテロの首謀者…」

副総理「ええっ!?」

和「でも……私たちの親友でもあるんです!」

副総理「(なおさら)ええっ!?」


208: 2010/02/11(木) 11:44:43.11 ID:159a5MjnO

キャスター『ニュースです。本日一連して起きた閣僚テロの被害を受けた平沢厚労大臣の意識が回復、琴吹財務大臣の手術が成功したもようです』

キャスター『今回のテロにつきまして、警視庁はテロ集団を摘発。摘発に際し負傷した首謀者が回復してから逮捕に移す方針です』

コメンテーター『いやぁ…まさか、こんな立て続けに閣僚が狙われますとは…分からない世の中ですねぇ…』

キャスター『戦後史上初のテロ事件の終焉を迎えることができ、一安心と言えば一安心ですが…』

コメンテーター『今回のテロは国民が巻き込まれなかったものの、内閣の立て直しに時間が掛かると思われます』

キャスター『これからの田井中総理の頑張りに期待したいと思います。次のニュースは…』


209: 2010/02/11(木) 11:54:21.91 ID:159a5MjnO

病室・ICU

唯「あはは!律っちゃんマスコミから応援されているよ~!」

憂「そうだね!でもお姉ちゃんも早く退院できるように頑張ってね!」

唯「ガッテンです!」ビシッ


214: 2010/02/11(木) 12:12:37.04 ID:159a5MjnO

数日後・病室

バタンッ

和「………」

澪「………」

和「…意識…戻ってるんでしょ?」

澪「バレちゃったか……」

和「当たり前よ…そんなことをしても裁判から逃れられないわよ…」

澪「うん……」

和「今さらだけど…怖いの…?」

澪「うん……」

和「もう…私よりも裁判に慣れているかと思っていたのに…クスッ」

澪「………」


217: 2010/02/11(木) 12:21:31.88 ID:159a5MjnO

澪「でも…もう良いんだ……」

和「………」

澪「私がやってきたことは決して許されないこと…それを特別に償うことができるんだ……」

澪「それなりの覚悟はある…全部正直に話すつもりだ…」

和「その調子よ…澪!頑張らないとっ!澪が償えるよう、応援しているわっ!」

澪「うん……今私にできる精一杯のことをしよう!」



同じセリフを誓ったあの日と違って今の私の心は決して重くない…

そうか…私は和に対して求めていたことはこのことだったんだ……

今やっと気づけた気がする…


ありがとう……和……


219: 2010/02/11(木) 12:33:54.29 ID:159a5MjnO

公判62日目

訴因変更などもあり、審理の長期化、異常とも思える公判日数…

3年近くもかかった……

もはや私の人生の大半は、裁判に費やされたと言ってもいい…

そう…私はこのくだらない、裁判というやりとりでピ工口を演じてきたのだ…

だが、今は心が軽い…


裁判官「主文、被告人秋山澪に8年3月の禁錮に処す」



!?


私にしては軽い刑ではないか……?



222: 2010/02/11(木) 12:41:07.44 ID:159a5MjnO

前科の仮釈放の取消しを含め、
他に爆発物取締罰則第1条違反、騒乱、殺人、監禁、住居侵入などを首謀したのだ…

それらをを鑑みたら、氏刑か検察側が主張する無期禁錮が妥当だというのに……


裁判官「この判決は、あなたの裁判に対する積極的な態度から出たものです。
    裁判は見せしめだけのものではありません…この裁判はあなたの更生のためでもあります…
    あなたにはまだやり直すことが出来るのです…
    この判決のように、あなたの頑張り次第であなたの未来はより良いものとなるでしょう…
    頑張りなさい……!」


自然と笑みが出てくる…

澪「はいっ…!」

裁判官の顔を覚えておきたい…なのに涙腺がゆるいせいか見えない……

裁判官「良い返事です…!」ニコッ

カンッ…カンッ…


生まれて初めて見たあったかい裁判であった…


224: 2010/02/11(木) 12:56:10.27 ID:159a5MjnO
数年後…

澪「………」

看守「手紙だ!」

澪「あっ!はい!」

看守「今回はいつも以上にあるなぁ…紙と鉛筆を用意するか?」

澪「あ、はい!お願いします!」

カサガサ…

澪(和からだ…)

『月一の手紙ももう数十回もやっているのね…
 元気にしているかしら?私たちは相変わらず元気にしております。
 律の内閣ももう安定していて正直ここまで持つとは思わなかったわ…(ここ律に内緒ね)
 面会が出来るまでまだ時間はかかるけど、面会出来る日を楽しみにしているわ。
 本をまた提供するね。これで寂しさを紛らわしてね!
 ………
 ………
 刑期が終わること、澪のこれからを祈って…
 あなたの親友 真鍋和より』

澪(和……いつも月一に本を数冊送ってくれるよな……)

澪(あっ…これ唯の手紙で憂ちゃんが気に入っていると言ってた本だ…すぐ読もうと…)

229: 2010/02/11(木) 13:04:41.03 ID:159a5MjnO

澪(次の手紙は…律だ…忙しいはずなのに大丈夫かよ……)


『お~す!澪!元気にやっているかー!美人総理律っちゃんさまからの手紙だー!
 ところで、私の支持率が上がったんだぜー!ついに7割を突発!
 澪にも見せてやりたかったぜ!くっー!』

澪(あいつ…前の手紙見てないな…刑務所でも新聞は読めるのに…)

『しかーし!自慢はそれだけじゃなーい!この前、国連でカッコ良い演説を披露したら、大喝采を浴びたぜ!
 もしかしたらノーベル平和賞?だったりしてな!』

澪(調子に乗ってるな…まぁ、あの演説は本当に良かったからよしとするか…)

『それよりもさ、澪も世界に目を向けて見ろよ!本だけじゃ分かんねぇことだらけだしさ!
 グローバルを感じてみろよ!出所したすぐ私の所に来い!
 律っちゃん総理がグローバルというものを体感させてやる!』

澪(律……)


230: 2010/02/11(木) 13:07:06.38 ID:159a5MjnO

私は何度も安堵した。
律を殺そうとして失敗したことに…

あの時もし成功していたら、今こうして律と文通をすることすらなかったのだから…

あの時の自分が本当に怖かった…

だが、今は律からの手紙がある…

あったかい…

これが親友なのだろうか…

私がどんなことをしても受け入れてくれる仲間なのだ…

こんな大切なことに気づくのに、時間がかかりすぎてしまったのだな…



澪(出所したら、律とどこに行こう?)

澪「ふふ…細かいことは後で考えよう…今私に出来る精一杯のことをしよう!」

私の胸の高鳴りはまたおさまる気配がしなかった…




終わり

236: 2010/02/11(木) 13:14:23.83 ID:zKRvQh+b0

引用元: 澪「私にできる精一杯のことをしよう」