2: 2010/10/13(水) 13:09:10.02 ID:QGag2Gw0

唯「ん…?」

目が覚めるとそこは見たことのない場所だった。

唯「あれ…ここどこだろ…?」

「お…おい!り…律!起きたぞ…!」
「おーやーっと起きたかー」
「大丈夫?痛いところはない?」

唯「あ…はい…大丈夫です」

急に声をかけられた。
この人達は誰なんだろう?

唯「あ…あのー……」

「ようこそ!氏後の世界へ!」「ようこそー♪」
「バカ律!いきなりそんなこと言われてもわからないだろっ!」

唯「しごの世界……?」

私語…氏語…氏後……

唯「…え!?氏後!?わたしが!?え?」

氏後って…ここは天国…または地獄…ってこと?
けいおん!highschool (まんがタイムKRコミックス)
3: 2010/10/13(水) 13:10:04.48 ID:QGag2Gw0

「そうだ。お前は氏んじまったんだ」

唯「……!?わかった!!」

「おー理解してくれたか!」
「こんなすぐに納得してくれるなんてすごいわー♪」
「おい…なんかおかしくないか?」

唯「これは夢なんだね!なるほどなるほど!すごくリアルな夢だな~」

「ズコーッ」
「やっぱりな…」
「まぁそうよね♪」

唯「夢のみなさんこんにちは!私、平沢唯っていいます!」

「…まぁ説明すればいいか……私は田井中律だ!よろしくな唯!」

「私は琴吹紬。ムギって呼んでね♪よろしく唯ちゃん♪」

「あ…秋山澪…よろしく…」

唯「りっちゃんにムギちゃんに澪ちゃんだね!よろしく~」

4: 2010/10/13(水) 13:11:03.04 ID:QGag2Gw0

澪「み…澪ちゃん…」

唯「…だめかな?」

澪「い…いや…いいよ…平沢さん…」

唯「澪ちゃんも下の名前で呼んでよ~」

澪「ゆ…唯…」

唯「ありがと~」

律「ところで唯!さっきの話の続きだけど、ここは夢の世界じゃない!れっきとした氏後の世界だ!天国か地獄かはわからないけどな!」

唯「りっちゃん、またまた~氏後の世界なんてありえないよ~」

紬「…もしかして……唯ちゃん、氏んだときの記憶…ないの?」

唯「へ…記憶…?うーんと……あれー…何も思い出せないや…なんでだろ……」

あれ…ホントに何も思い出せない…過去も…家族も…友達も…

唯「…まぁ夢だしね~」

5: 2010/10/13(水) 13:12:00.66 ID:QGag2Gw0

澪「お…おい律…唯のやつ、もしかして氏ぬときに頭を強く打ったんじゃないかな…」

律「…たぶんそうだな…」

唯「せっかくの夢の世界だからな~何しよっかな~?」

律「やっぱり信じないか……仕方ない…ムギ、アレ持ってきてくれ」

紬「…わかったわ…りっちゃん」

澪「ひぃぃぃぃぃ…」

唯「ん?何するの~?」

ムギちゃんが建物の中に入っていった。なにを取りにいったんだろう?

律「私がやる。澪とムギは向こうに行っててくれ」

紬「…ハイ……りっちゃん…コレ……行きましょ澪ちゃん」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ」

6: 2010/10/13(水) 13:13:28.38 ID:QGag2Gw0

律「おい唯」

唯「な~に~?りっちゃん?」

律「いまからお前を[ピーーー]」

唯「へ…[ピーーー]…?やだなー…りっちゃん…いくら夢でも…その冗談笑えないよ……」

律「安心しろ。苦しくないよう一発で頃してやるから」

唯「ひっ…り…りっちゃんそれ銃…?あ…わかった、それモデルガンでしょ…?もぅ驚かせないでよー…危ないからこっちに向けな」

律「許せよ唯」


パーン

9: 2010/10/13(水) 13:15:23.96 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

唯「…うわぁぁぁぁぁぁ!!?」

な…なに今の夢…?私が殺される…夢…

律「お、起きたか?」

唯「へ……?………………」


唯「」


唯「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!ころされるぅぅぅぅぅ!!!!!だれかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

律「落ち着け唯!大丈夫だから!な!とりあえず落ち着け!!」

紬「唯ちゃん起きたの!?今すごい声が……」

唯「ムギぢゃぁぁぁぁぁ!!!だぢげでぇぇぇぇぇぇ!!!!」

紬「大丈夫よ唯ちゃん!落ち着いて!!」

律「唯、ごめん!この通りだ!許してくれ!もうしないから!」

唯「うぅぅぅぅぅぅ…………」

10: 2010/10/13(水) 13:16:16.87 ID:QGag2Gw0
>>9 すいません

紬「唯ちゃん…大丈夫?落ち着いた?」

唯「はぁ…はぁ…う…うん…」

律「悪い唯!唯がどうしても信じなかったから、しかたなくなんだ!ホントーにゴメン!」

唯「うぅぅぅ…どういうこと…?」

紬「ここは氏後の世界だって言ったでしょ?だから私たちは殺されても氏なないの。時間がたてばどんな傷でも治るわ」

ってことはここは本当に…

唯「…本当の氏後の世界……」

律「…そうだ」

そっか…私氏んじゃったんだ……

唯「…でも私、ホントに何も思い出せないよ…?なんで…?」

律「唯はたぶん頭を強く打って氏んじまったんだ。時々そうやって記憶喪失でここに来ちまうやつがいるらしい」

12: 2010/10/13(水) 13:17:32.51 ID:QGag2Gw0

紬「大丈夫よ唯ちゃん。何かがきっかけで思い出せた人もいるみたいだから……それにきっと思い出しても辛いだけよ…」

律「ムギ…」

ムギちゃんすごく辛そう…
嫌な過去だったのだろうか。

律「…まぁそういうことだ唯!あんま気にすんな!ここの生活もなかなかに悪くないしな~…なっ!ムギ?」

紬「…そうね♪」

律「ということで、改めてよろしくな唯!」

紬「よろしく唯ちゃん!」

唯「…うん!」

もう氏んじゃったんだし…なるようにしかならないよね。
前向きにいかないと!

唯「あれ?そういえば澪ちゃんは?」

律「あー澪のやつはなー…」

紬「部室よりっちゃん!あれはりっちゃんにしか直せないんだから!」

律「ま、唯の案内がてら部室にいくかー」

唯「部室?」

律「そう!私たち軽音部の部室だ!」

13: 2010/10/13(水) 13:19:13.05 ID:QGag2Gw0
>>11 うわぁぁぁぁごめんなさい…

~~~~~~~~~~~~~~

ここって学校だったんだ…そういえば制服だった。

律「んで今のが理科準備室!そしてこの階段を上った先が我らが軽音部の部室だ!」

唯「ほうほう…なかなかですなーりっちゃん隊員!」

律「ありがとうございます!平沢隊長!」

りっちゃんの話によると、この学校の半数以上は私たちとは違って元からこの世界にいて、この世界で暮らしている人たちみたいだ。
そして残りが私たちと同じで氏んでしまったあと、この世界に来た人たち。
その違いは話せばわかる…らしい。

紬「軽音部、一名様ごあんないでーす♪」

さわ子「あーりっちゃん達、やっと帰ってきたのね!澪ちゃんなんとかしてよー」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ…」

律「さわちゃんわりーわりー。でも…新入部員連れてきたぜー!」

唯「平沢唯です!よろしくっす!……新入部員?」

14: 2010/10/13(水) 13:21:02.71 ID:QGag2Gw0

さわ子「あら!久々ねぇ~初めてまして。山中さわ子です。よろしくね唯ちゃん」

唯「あ、よろしくお願いします~」

すごく綺麗で優しそうな人だ…

さわ子「敬語じゃなくていいわよ。ここじゃみんな同い年みたいなもんだし」

唯「えへへ…よろしくさわちゃん~」

紬「りっちゃんはやく!澪ちゃんに!ほら!」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ…」

律「しょうがねーなー…ほら澪、もう大丈夫だぞ~よしよし」

澪「う…りつぅ…」

紬「…はぁ…はぁ…」

唯「ムギちゃん大丈夫?鼻血出てるよ」

さわ子「唯ちゃん、ほっといていいわよ」

15: 2010/10/13(水) 13:24:44.29 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

律「改めて…軽音部へようこそ唯!!」

紬「ようこそ~♪」

さわ子「これからよろしくね唯ちゃん」

澪「よ…よろしく…」

唯「えーっと…話が見えないであります!」

さわ子「りっちゃんってば話してないの?」

律「いやーこの世界の説明でいっぱいいっぱいで」

紬「いろいろあったわねー♪」

澪「うぅ…」

律「唯!単刀直入に言う!軽音部に入部してくれ!」

16: 2010/10/13(水) 13:25:53.81 ID:QGag2Gw0

唯「えーっ!?…私楽器なんて弾けないよぉー…?」

律「一から教えるから!おねげぇします!お代官様!!」

さわ子「音の厚みを増すためにギターもう一人欲しかったのよね~」

澪「え…あれで足りてなかったのか…?」

唯「えーでもー…」

紬「唯ちゃん!お菓子あるわよ!食べる?」

唯「いっただきまーす!」

17: 2010/10/13(水) 13:28:08.17 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

唯「おいしかったー!」

律「軽音部に入ったら毎日食えるぞー!な、ムギ?」

紬「ええ♪」

唯「入部させてくだせぇ!りっちゃん隊長!!」

律「よっしゃぁぁぁぁぁ!!…助かった……」

紬「やったね♪りっちゃん!」

さわ子「じゃ…まずは唯ちゃんが私たちの音楽性についていけるかテストね…」

澪「まさか…演奏するのか…?」

18: 2010/10/13(水) 13:29:55.51 ID:QGag2Gw0

さわ子「ええ…」

澪「ひぃぃぃ…」

さわ子「早く用意しろ…」

澪「あわわわわわ…」

律「おい澪っ早く準備しろっ」

紬「ちょっと待っててね唯ちゃん♪」

唯「演奏してくれるのかー楽しみだなー」

19: 2010/10/13(水) 13:31:08.43 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

澪ちゃんがベース、りっちゃんがドラム、ムギちゃんがキーボードだ。
ていうことはさわちゃんがギターかな?

ボーカルは誰なんだろう?

澪「…………」

澪ちゃんがなんだか青ざめた顔をしている…大丈夫かな…?

唯「さわちゃん遅いねー」

律「唯…心の準備だけはしとけ…」

唯「へ?」

ドンドンッ

唯「ん?」

なんだかドアを叩いてるような音がする。

20: 2010/10/13(水) 13:34:23.54 ID:QGag2Gw0

澪「ひぃぃぃぃぃ!」

律「来たか…」

紬「♪」

ドンッメキッ

唯「へ…?」


そこでドアは盛大な音を立てて吹き飛んだ。

さわ子「おるぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!おまえらぁぁぁぁぁぁぁ待たせたなぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

唯「」

21: 2010/10/13(水) 13:37:18.64 ID:QGag2Gw0

そこから先は凄かった。

蹴破られたドアからすごいメイクの人が飛び込んできて、アンプにシールドをぶっ刺したかと思えばすぐに爆音でギターを掻き鳴らし始めた。
するとみんなは申し合わせたかのように演奏を始めた。
りっちゃんは無表情だった。
澪ちゃんは完全に顔がひきつって青ざめていた。
ムギちゃんだけはニコニコしていた。
でもその激しすぎる演奏に反して歌詞は所々可愛らしい感じだ。


さわ子「ふわ゛ふわ゛ダァァァァァーイムッ!!!!!!!!」

澪「ふゎふゎ…たーぃむ…」

さわ子「おるぁ!!!!ベースッ!!!!!」

澪「!?ふ…ふわ゛ふわ゛タぁぁイムぅぅ!!!」

澪ちゃんの声はさわちゃんとは違う意味でガラガラだった。

22: 2010/10/13(水) 13:39:14.32 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

さわ子「どうよ?」

唯「あー…えーっと…あの…すごく個性的でした!!」

ほとんどさわちゃんの声とギターしか聞こえなかったけど…

さわ子「個性的だと!!?」

唯「あ…あい…」

や…やばいかも…

さわ子「お前…」

唯「ご、ごめんなさいぃ!!」

23: 2010/10/13(水) 13:40:25.23 ID:QGag2Gw0

さわ子「なかなか見所あるじゃねぇか!ボケてそうな顔だと思ったけどな!」

さわちゃん、ひどい…

律「よ…よかったな唯!」

紬「これで唯ちゃんも正式に軽音部の仲間ね♪」

さわ子「唯!お前はギターだ!いいな!!?」

唯「は…はいであります!!!」

こうして私は軽音部にギターとして入部することとなった。

唯「澪ちゃん、立ったまま気絶してる…」

24: 2010/10/13(水) 13:42:00.49 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

それから私たちは毎日お茶をしつつも練習をした。
授業もあるらしいが出ていない。
りっちゃんいわく「絶対にでるな!消えたくないならな!」とのことらしい。

ギターは主にさわちゃんから教わった。
さわちゃんやみんなの教え方が良いのか、私のギターはだいぶ上達した。
ちなみに澪ちゃんは私が入部した日にコーラスをクビになり私がコーラスになった。


唯「そういえばなんで軽音部なの?」

律「ん?あぁ…学生の青春といえばやっぱバンドだろ!」

唯「そうなんだ~」

記憶がないからだろうか…よくわからない。

唯「なんで私を誘ったのー?楽器もできないのに」

律「あーそれはな……」

さわ子「私がギターの子もう一人欲しかったんだけど、みんな演奏聴くと帰っちゃうのよね~」

澪「…そりゃそうだよ……」

さわ子「あ?」

澪「ひっ」

25: 2010/10/13(水) 13:43:26.33 ID:QGag2Gw0

紬「りっちゃんが最初に唯ちゃんを見つけたのよ~」

律「…あのさわちゃんにかなり急かされてたんだ…唯がいてくれてホント助かったよ…」

さわ子「…りっちゃん聞こえてるわよ」

律「さーっ練習練習!!」

唯「お菓子食べたいよ~」

紬「唯ちゃん後で。ね?」

澪「うぅ…いやだ……」

練習後、澪ちゃんは気絶してしまった。
お菓子二人分食べちゃった。

26: 2010/10/13(水) 13:44:38.85 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

さわ子「唯ちゃんも大分上達してきたし、そろそろライブに向けて練習ね」

律「久々だなー」

唯「ライブ?」

律「そうだ。学校の講堂でライブだ!」

紬「他のみんなも見に来てくれるのよー♪」

さわ子「ムギちゃんと澪ちゃんは新曲の作詞作曲お願いね」

紬「はい♪」

澪「うぅ私の歌詞が…あんな… 」

さわ子「よろしくね」

27: 2010/10/13(水) 13:46:07.06 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

さわ子「ムギちゃん、澪ちゃん、新曲できた?」

紬「はい~♪」

澪「うぅ…もう私の歌詞を破られるのはいやだ……」

さわ子「早く渡せ」

澪「あああぁぁぁ……」

澪ちゃんの書いてきたいくつかの歌詞カードがさわちゃんに奪われた。
ちらりと内容が見えたけど、すごくメルヘンな内容だったように思える。

さわ子「……澪ちゃんこれ……」

澪「え…?」

…なんだかさわちゃんの様子がおかしい。
いつもなら澪ちゃんのかわいすぎる歌詞を見て、怒ったさわちゃんが全部破いてしまうかさわちゃん風に書き直されてしまう。

でも今日のさわちゃんは澪ちゃんの歌詞を食い入るように見ていた。

28: 2010/10/13(水) 13:48:03.22 ID:QGag2Gw0

律「さわちゃん…どうしたんだろ…?」

澪「き…きっとさわ子にも私の歌詞のよさがわかっ…」

さわ子「こっからここまで没ね」

結局何枚かは破られてしまった。
さっきのさわちゃんはなんだったんだろうか。

澪「あぁぁぁぁぁ私のときめきシュガーがぁぁぁ…」

さわ子「さ、早速アレンジに入るわよー!」

29: 2010/10/13(水) 13:50:13.52 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

そしてライブの日になった。

唯「うわ~…結構お客さんいるね……」

律「元からこの世界にいるやつらも来てるみたいだからな」

澪「き…緊張する…」

紬「澪ちゃん!手のひらに入って書いて飲み込むのよ!」

律「なんかおかしくないか?それ」

さわ子「みんなおまたせー」

唯「あれ?さわちゃん?」

さわちゃんはいつもはかなりすごいメイクと服装なのだが今日は制服で普段のままだった。

30: 2010/10/13(水) 13:52:03.52 ID:QGag2Gw0

律「さわちゃんはやく準備しないと間に合わないぞ!」

さわ子「今日はこのままでするのよ。ライブ」

紬「なんだか新鮮な感じだわー♪」

澪「…嫌な予感がする……」

さわ子「失礼ね…まぁ演奏はいつも通りやるからね」

澪「うぅぅ……」

さわ子「…今日、この新曲は最後にやるから。はいこれ。セットリスト」

律「じゃあ準備しますか」

唯「初ライブ!楽しみだな~」

良いライブにしよう!

31: 2010/10/13(水) 13:55:08.24 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

さわちゃんがステージに立つとなんだか観客席がざわついた。
もしかしてメイクをしていないさわちゃんを見たのは初めてなのかもしれない。

もしくはメイクしてるときってさわちゃんだと気づかれてなかったのかも…

さわ子「待たせたな!!!おまえらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

でもさわちゃんがそう言うと観客席からは凄い歓声がおこった。
中にはメイクしてるさわちゃんみたいな人もいる。

さわ子「いくぞ!一曲目ぇ!!!ふわふわ時間!!!!!」

32: 2010/10/13(水) 13:57:18.83 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

唯「すごい…」

体がすごく熱い…なんだかよくわからない感情で胸の中がぐちゃぐちゃだ。
でもすごく気持ちいい。

観客席からはアンコールがおこっていた。

さわ子「じゃ…新曲やりましょうか」

律「よっしゃー!もいっちょがんばるか!!」

紬「おーっ♪」

澪「やるしかない…やらないと……」

さわ子「…じゃあ行くわよ。みんな」

この時の私は初めてのライブでの緊張感や高揚感で
さわちゃんがなんだか思い詰めたような表情をしていたことに気づかなかった。

33: 2010/10/13(水) 14:00:09.08 ID:QGag2Gw0


さわ子「…次は新曲をやらせてもらいます」

ん?なんだかさわちゃんの様子がおかしい。
みんなも不思議そうな顔をしている。

さわ子「私の恋はホッチキス!」

さわちゃんの激しいギターソロから始まるはずの曲。
でもなんだかおかしい。

唯「これって…」

いつものさわちゃんの演奏じゃない!!
みんなと目配せをすると、困惑顔だったけど曲はもう始まってしまっている。
さわちゃんに合わせるしかない!

観客席もさっきのパンクな感じから一転してポップなラブソングに変わったことに戸惑っているらしい。
だれも声を発していなかった。

34: 2010/10/13(水) 14:02:08.16 ID:QGag2Gw0

そして演奏が終わったと同時に電気が消え幕が下ろされた。

私はさっきの高揚感が失せ今はすごく不安な気持ちになっていた。

唯「さわちゃん!どうしちゃったの?」

なぜだか不安でしょうがない。

唯「さわちゃん…?」

返事がない…

そうしている内に目が暗闇に慣れてきてさわちゃんのいた位置が見えてきた。

唯「え…さわちゃん…?」

いない。そこにはさわちゃんが使っていたギターが落ちているだけだった。

律「お…おい…どうなってるんだよ…」

澪「さわ子が、き…消えた…」

紬「…………」

唯「き…きっと部室に戻ったんだよ!恥ずかしくなっちゃったんじゃないかな?ハハハ…」

そうに決まってる!

唯「みんな!早く部室に戻ろ!!」

35: 2010/10/13(水) 14:03:40.35 ID:QGag2Gw0

~~~~~~~~~~~~~~

?「あんなに評判がいいから来てみたのに、めちゃくちゃなサイドギターに走りぎみのドラム…
  アンコールは急に曲調が変わって意味わかんなかったし。ホント最悪……」

私が入れば少しはマシになるだろうけど。

40: 2010/10/14(木) 10:32:46.59 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~~

部室に戻ってもさわちゃんはいなかった。

恥ずかしくて私たちの前に出てこれないだけだろうと私たちはさわちゃんを待っていた。

でも何日経ってもさわちゃんは帰ってこなかった。


澪「さわ子…もしかして本当に消えちゃったんじゃ……」

律「澪っ!!」

澪「ご…ごめん…」

紬「……みんな聞いて」

ムギちゃんがなんだか覚悟を決めたような顔で話始めた。

紬「みんな、この世界では消えてしまうことがあるのは知ってるよね?」

41: 2010/10/14(木) 10:34:04.13 ID:RvMPdSU0

でもそれって…

律「それは真面目に授業を受けたり模範的な行動をしたらだろ!?さわちゃんは授業なんか行ってないし模範的でもなかったぞ!!」

紬「それも間違ってはいないわ…けどね、この世界で消えてしまう条件はそうじゃないの」

澪「どういうこと…?」

紬「この世界で消える条件…それは心から満足すること。いうなれば成仏かしら?」

唯「でもそれじゃ授業に出たり、模範的な行動で消えるっていうのはおかしいよね…?」

紬「…それはこの世界に来る条件が満足な学生生活を送れなかった人、だからよ」

澪「……!!」

律「っ…!」

唯「え…?」

42: 2010/10/14(木) 10:35:25.11 ID:RvMPdSU0

紬「唯ちゃんは記憶がないからわからないかもしれないけど、つまりこの世界はいろんな理由でまともに
  学生生活が送れなかったり、満足できなかった人が来る場所なの。…澪ちゃんとりっちゃんはわかるよね?」

澪「…………」

律「ムギっ!」

紬「ごめんなさい…でもこれが事実よ…少しは私の推測も入ってる……でもこれで確信したわ」

律「そんなこと信じられるかよ!」

紬「…だって私は何度も見てるもの…友達が消える所を」

律「っ……」

唯「じゃあさわちゃんが消えたのは…満足したから…?最後のあの演奏で…」

紬「…おそらくそうね……」

律「なんだよそれ!くそ!」

でもそれって良いことなんだよね…?だってさわちゃん満足して消えたのだから。

43: 2010/10/14(木) 10:37:36.35 ID:RvMPdSU0

澪「それじゃ…私たちもいずれ消えてしまうってことじゃないのか…?」

唯「……」

紬「それはわからない…でも私は悪いことだとは思わないわ。だって満足した気持ちでまた新しい人生を歩めるかもしれないもの」

澪「消えるんだぞ…?怖くないのか…?」

紬「違うわ。いままでの人生の未練をなくして新しく生まれ変わるの。だから満足して消えることは悪いことじゃない」

唯「私もムギちゃんと同じ考えだよ…」

律「お前は記憶がないからそんなことが言えるんだよ!!」

紬「りっちゃん…」

澪「律……」

唯「ごめんね…りっちゃん……」

律「くそっ…!」

りっちゃんが部室から出ていってしまった。
私の発言は無責任だったのだろうか。

44: 2010/10/14(木) 10:39:26.22 ID:RvMPdSU0

澪「律が…軽音部を作ったから…一番納得できないんだと思う。律と話してくるよ……」

紬「お願いね…澪ちゃん…」

澪ちゃんはりっちゃんを追って部室を出ていった。
ムギちゃんと二人きりだ。
さわちゃんのことやさっきのこともあってすごく気まずい。

唯「……ムギちゃん…何度も友達が消えるのを見たって言ってたよね…どういうこと?」

紬「……」

あまりの重い雰囲気に喋らずにはいられなかった。
でもこんな質問失礼だったかな…ムギちゃん黙ったままだし…

唯「ごめんねムギちゃん…いやな質問だよね…」

45: 2010/10/14(木) 10:41:42.98 ID:RvMPdSU0

紬「…いいの唯ちゃん。話すわ。…実は私、この軽音部の中ではたぶん一番最初にこの世界に来てると思う。」

唯「そうなんだ…」

紬「私がこの世界に来てすぐの何もわからない時、同じ境遇の人たちが助けてくれたの。
  そのうちの何人かは気もあって友達になったわ。すごく楽しいかった」

唯「でもそれじゃ…ムギちゃんは消えちゃうはずじゃ……」

紬「…先に私が何で氏んだのかを話さないとだめね…私はね、高校に入ってすぐの頃に殺されたの。」

唯「殺された…?」

紬「私の家はね、すごくお金持ちだったの。けどお父様方は汚いことをしてでもお金を稼ぐようなやり方の人だったから他の人からすごく恨みをかってたわ。
  そして私はお父様を脅す材料に誘拐された。高校初めての友達と一緒に帰るために付き人を全て断った日にね。」

唯「そんな…」

紬「酷いことをたくさんされた…そのあとお父様への見せしめに殺されたわ…そして気づいたらこの世界にいたわ」

唯「………」

46: 2010/10/14(木) 10:43:40.24 ID:RvMPdSU0

紬「この世界に来たときに傷は全部治ってたけど、記憶は残ってた。私ね?男の人が近くにいるだけですごく気持ち悪くなっちゃうの……
だから私は授業には行けなかった…それに私たちと同じ境遇の人にも男の人はいるわ。だから友達とも毎日会えるわけじゃなかった。
だからかな?私が消えなかったのは」

唯「ムギちゃん…」

紬「それでもね私に会いに来てくれる友達はいたわ。でもある日を境にまったく会えなくなった。他の人に聞いたわ。彼女はどこにいったの?って。
みんな知らない。消えてしまったって。…それから私は必氏でこの世界について調べたわ。我慢して男の人にも話を聞いた」

唯「だからムギちゃんはあんなに詳しかったんだね…」

紬「…でもそうしている内に私が知っている人は誰もいなくなったわ。友達が消えた真相はわかったけど、友達どころか知り合いまで誰もいなくなってしまった。
……私ね、生きてるときの趣味はピアノだったの。一人で寂しかったからかな?無性に弾きたくなっちゃって。
それでね?私が一人でピアノを弾いてるときにりっちゃんが声をかけてくれたの…」

唯「う…ムギぢゃん……」

紬「これで終わり。ごめんね?唯ちゃん」

唯「うう゛ん…こっちこそごめんね?無理やり話させて…」

紬「泣かないで唯ちゃん…お茶入れるわ。りっちゃんと澪ちゃんを待ちましょ」

唯「…うん」

こういうときは無理に励ましたりしない方がいいよね…

唯「えへへ…ムギちゃんの入れてくれたお茶おいしい…」

紬「ありがと♪」

47: 2010/10/14(木) 10:45:02.59 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~~

ムギちゃんとお茶を飲んでるとりっちゃんと澪ちゃんが帰ってきた。

澪「ほら…律」

律「ムギ…唯…ごめん…少し言い過ぎた…」

紬「ううん。私もごめんね?りっちゃん」

唯「そうだよー!気にしないでりっちゃん!」

律「ぷっ…お前は少しは気にしろー!」

唯「ぐぇっ…り…りっちゃん…ギブ……」

よかった、りっちゃんも元気になったみたいだ。

48: 2010/10/14(木) 10:46:50.75 ID:RvMPdSU0

澪「…さわ子のことはもうしょうがない…納得はできないけど満足して消えたのなら悪いことってわけでもないしな……」

律「ああ…さわちゃんのことは忘れないけど、気にしすぎるのはよくないよな」

紬「そうね…」

唯「…ねぇみんな…久々に合わせて演奏しない?」

律「おっいいねー!やるか!」

紬「やりましょやりましょ♪」

澪「…そうだな」

49: 2010/10/14(木) 10:47:22.03 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~~

?「やーっと練習を始めましたか…やる気のないバンドです」

やっぱり私が入ったほうが……


50: 2010/10/14(木) 10:48:51.40 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~~

律「そういやボーカルどうするんだ?」

紬「作詞してる澪ちゃんがいんじゃない?」

澪「む…無理無理無理!コーラスで精一杯だよ…」

律「じゃあ…」

唯「でへへへ……」

律「…ムギ!頼んだ!」

唯「りっぢゃぁぁぁぁぁん!!!!!」

51: 2010/10/14(木) 10:51:04.64 ID:RvMPdSU0

紬「唯ちゃんでいいんじゃないかしら♪」

律「しょうがねぇなー…しっかりやれよ平沢隊員!」

唯「わかりましたであります!田井中隊長!」

澪「曲調は昔の感じに戻していいよな…?」

律「そうだな…さわちゃんがいないしな」

澪「よ…よかった……」

律「んじゃ始めるか!1、2、3、4!」

52: 2010/10/14(木) 10:52:43.75 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~~

?「やっぱりあのギター、演奏が独創的すぎて浮いてます。誰かがカバーしないと…」

私が…私なら……


53: 2010/10/14(木) 10:55:24.01 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~~

唯「ふぃー久々に演奏すると疲れるねぇ~…」

律「同意~…」

澪「まだ一曲しかやってないだろ…」

紬「お茶にしましょ♪」

唯「わーい!おやつ♪おや 「失礼します」

私が肩からギターを下ろしながらお茶の席に向かっている途中、突然ドアが空き、中からツインテールの小さな女の子が入ってきた。
そしてその子は私に向かって指を指すとこう言った。

?「あなたのギターのせいでバンドが氏んでます」

唯「………」

あまりにも突然のことに呆然としている私から、肩にかかったギターをおもむろに奪い取るとその女の子はギターを演奏しだした。

唯「う…うまい……」

そして一通り演奏をやり終えると女の子はすごく胸を張り、やりきった感ありありの顔で

?「このバンドも私が入れば少しはマシになるんじゃないですか?」

と偉そうに言った。

54: 2010/10/14(木) 10:57:15.27 ID:RvMPdSU0

律「……なんだこいつ……」

澪「この子やばいよぉ…りつぅ…」

紬「うふふ♪」

唯「あのー…どちら様で…?」

?「梓です。中野梓」

相変わらず胸を張った偉そうな態度だ。

唯「どういったご用件で…?」

梓「だ・か・ら!私がこのバンドに入ってあげるって言ってるんです!物分かり悪いですね!」

頬を膨らませながら地団駄を踏んで怒っている。
小さくてかわいいなぁ。

55: 2010/10/14(木) 10:59:24.45 ID:RvMPdSU0

紬「まぁまぁ落ち着いて。梓ちゃん。お茶いかが?」

梓「…まぁ飲んでやるです」

律「…わかった…お前、喧嘩売りにきたんだな…?そうだろ?」

澪「りつ…喧嘩はよくないよぉ…」

紬「まぁまぁまぁまぁ。みんなもお茶にしましょ」

唯「おっかし~おっかし~」

56: 2010/10/14(木) 11:01:49.64 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~~

律「それで…中野梓さんはギターで入部希望と…」

梓「ま、そういうことですね」

律「っ……入部希望理由は?」

梓「あまりにもこの人のギター酷いんで私が入ってあげようと思って」

唯「へ…私?」

梓「リードギターの人はマシだったんですけどサイドギターが酷すぎです。」

唯「リードギターは私だよぉ~えへへ」

梓「ち・が・い・ま・す!ライブの時です!あとさっきのギター、大概ひどかったですよ!」

唯「が、がーん!!」

梓「ていうかリードギターの人どこですか!ライブの文句言ってやるです!」

そうか…梓ちゃんはさわちゃんのこと知らないんだよね…

57: 2010/10/14(木) 11:03:28.17 ID:RvMPdSU0

唯「あ、あのねさわちゃんは…」

梓「あの人急に曲調を変えて意味わかんないです!どうせ勝手にやったんでしょ!?せっかくのライブが台無しに…」

律「…てめぇぇ!!」

梓「がっ…!」

澪「律!!」

唯「梓ちゃん!!」

りっちゃんに殴られた梓ちゃんは、思い切り棚のカドに頭をぶつけてしまった。

紬「梓ちゃん!大丈夫!?……気絶してるわ…」

澪「バカ…やりすぎだよ…」

律「…わりぃ…さわちゃんのこと言われてついカッとなっちまった…」

唯「と、とりあえず治療しないと~」

58: 2010/10/14(木) 11:06:31.84 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~

梓「う…うーん…」

紬「あ、梓ちゃん!」

唯「大丈夫~?」

梓「あ、はい…大丈夫です……っていきなり殴るなんてどういうことですか!!」

律「…悪かったな……」

梓「意味わかんないです!正式に謝罪と賠償を…」

紬「梓ちゃん!!!」

梓「!?あ…はい…」

紬「あのね…さわちゃん…梓ちゃんの言うリードギターの人はね、消えてしまったの」

梓「消えた…?逃げたんですか?」

唯「ちがうよ…そのままの意味なんだ…」

律「私から言うよ…殴っちまったのは私だしな」

59: 2010/10/14(木) 11:08:41.04 ID:RvMPdSU0
~~~~~~~~~~~~~

梓「そんな…」

梓ちゃんにさわちゃんが消えたこと。その理由やこの世界について説明した。

紬「梓ちゃんはいつからこの世界に?」

梓「えっと…ちょっと前です…この前のライブの少し前…」

紬「…生きてたころの記憶は?」

梓「……あります」

唯「どうしてここに?」

梓「気付いたらこの世界にいて…いろんな人に話を聞いていたらライブの話があったんです…
私、生きていたころギターやってたから…ライブを見て、演奏したくなって……
それで…それに何でこの世界にいるのかわからなくて、不安で……う…うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」

梓ちゃんが泣いてしまった。さっきの偉そうな態度も強がりからくるものだったのだろう。

60: 2010/10/14(木) 11:10:20.01 ID:RvMPdSU0

澪「りつ……」

律「…ごめんな」

梓「う……ぐすっ……」

唯「梓ちゃん!」

梓「わっ」

泣いている梓ちゃんを見て、安心させてあげたくておもわず抱きついてしまった。

唯「大丈夫だよ…梓ちゃん」

梓「う……」

紬「唯ちゃん……」

律「…よし!今から梓の入部歓迎パーティといくか!」

澪「律…!」

紬「そうねー♪」

61: 2010/10/14(木) 11:11:46.22 ID:RvMPdSU0

梓「え…いいんですか…?」

唯「もちろんだよ~!梓ちゃんちっちゃくて可愛いもん!」

梓「別にちっちゃくないです!」

律「どれどれ~…んーやっぱり小さいな」

梓「どこ見ていってるんですか!!」

紬「えーい♪」

梓「なっ…なにを…!?」

紬「梓ちゃんやっぱり似合うわ~♪」

ムギちゃんがどこからか取り出したネコミミを梓ちゃんに装着した。

紬「部屋に入ってきたときから似合うとおもってたのよ~♪」

唯「すごいよ梓ちゃん!似合いすぎだよ!」

梓「うれしくないです!!」

62: 2010/10/14(木) 11:13:59.65 ID:RvMPdSU0

唯「にゃーんって言って!にゃーんって言って!」

梓「いやです!!」

律「言わないとこうだぞ~!こちょこちょ~」

梓「やっやめっ…やめてください~!」

律「ぐへへへへへへ」

紬「はぁはぁ……」

澪「うー…りつ……」

梓「いいます!いいますから~!」

律「よし!…やりました平沢隊長!」

唯「よくやった!りっちゃん隊員!」

梓「はぁ…はぁ…」

唯「じゃあ梓ちゃんどうぞ!!」

63: 2010/10/14(木) 11:16:23.77 ID:RvMPdSU0

梓「う……にゃ…にゃーん……」

唯「可愛いよぉぉぉあずにゃぁぁぁん!!」

梓「あ…あずにゃん…?」

紬「梓ちゃん+ネコミミであずにゃんなのね!」

澪「あずにゃんって…ふふっ……」

律「ぷっ…よかったな~梓!」

梓「にゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

あずにゃんもこれで軽音部の一員だね!

64: 2010/10/21(木) 11:02:37.14 ID:L1HYz160
~~~~~~~~~~~~~

それからあずにゃんを加えた五人での練習が始まった。

梓「唯先輩!そこはそうじゃなくてこうです!」

唯「おお~あずにゃんさっすが~!」

梓「基本ですよ……」

私のギターはあずにゃん曰くめちゃくちゃらしい。
さわちゃんはこれが良いって言ってたんだけどなぁ~
音楽性の違いってやつかな?

律「そろそろ休憩にしようぜ~」

紬「お茶いれるわね~」

澪「おい!もう休憩かよ!」

澪ちゃんはさわちゃんがいた頃に比べてすごく練習熱心になった。
これも音楽性の違いってやつなんだろう。

65: 2010/10/21(木) 11:05:04.22 ID:L1HYz160

この五人だとさわちゃんの時とはまた違った楽しさがあるな。

律「またそろそろライブやるか」

紬「賛成で~す♪」

唯「さんせいさんせ~い!」

梓「そうですね」

澪「ライブ……あのさ…今度は誰も消えないよな…?」

唯「あ……」

そうだよね…さわちゃんが消えたのは前のライブの時だった。

澪「私は嫌だ……さわ子の時みたいに、律やみんなと離れ離れになるのは…」

紬「澪ちゃん…」

66: 2010/10/21(木) 11:06:41.64 ID:L1HYz160

律「…大丈夫だよ。だってまだまだバンドしたいしな!」

梓「そうですよ!」

唯「そうだよ!私もまだまだみんなとバンドしたい!」

本心だけど、やっぱり心の隅では満足して消えたさわちゃんのことを考えていた。

澪「ムギも…消えないよな…?」

紬「…それはわからない。消えるかもしれないし消えないのかもしれない」

ムギちゃんも私と同じことを考えているのだろうか。

67: 2010/10/21(木) 11:08:37.94 ID:L1HYz160

律「ムギ!」

紬「…でも私もまだまだみんなとバンド、続けたいと思っているわ」

澪「ムギ……」

律「安心しろって!ムギもこう言ってるし大丈夫だよ!」

唯「そうだよ!未練タラタラだよ!」

梓「唯先輩…その表現おかしいですよ…」

律「よっしゃー!じゃあライブに向けて曲作りと練習だ!澪、ムギ、頼んだ!」

澪「……ああ…わかった」

紬「ええ♪」

68: 2010/10/21(木) 11:12:50.96 ID:L1HYz160
~~~~~~~~~~~~~

律「今日はここまでにしとくか!」

唯「ふぃ~疲れたよ~」

梓「唯先輩は今から私とギターの特訓ですよ」

唯「な……!?」

紬「作曲のアイデア、梓ちゃんにも聞きたいからお付き合いしてもいい?」

梓「もちろんですよ!ムギ先輩にはいろいろ聞きたかったんです」

澪「……律…ちょっといいか?」

律「ん?あぁ…どうしたんだ?」

澪「みんな…私と律は先に帰るよ」

梓「お疲れ様です」

69: 2010/10/21(木) 11:16:02.43 ID:L1HYz160

唯「またあした~」

紬「…また明日ね」

澪「ああ…またな」

律「ばっはは~い!」

澪ちゃんとりっちゃんが先に帰った。珍しいな。

唯「二人ともどうしたんだろ?」

梓「澪先輩が律先輩に話があるみたいでしたけど」

紬「きっと…ライブのことね」

唯「ライブのこと?なんで二人だけで……」

紬「…ライブをしたら消えてしまうんじゃないかって、不安なんじゃないかな…とくにりっちゃんが…」

梓「そういえば澪先輩っていつも律先輩と一緒ですしね…」

唯「二人、仲いいもんね~」

70: 2010/10/21(木) 11:19:28.06 ID:L1HYz160

紬「澪ちゃんにとってりっちゃんはきっとそれ以上の存在だろうから……」

唯「…?どういうこと?」

梓「それ以上の存在…?」

紬「…ごめんなさい…やっぱり今日は私も先に帰るわ。また明日ね」

唯「う…うん……」

梓「あ…はい、また明日…」

ムギちゃんが部室を出て行った。
ムギちゃんの話は気になったけどとても聞けるような感じじゃなかった。

71: 2010/10/21(木) 11:20:41.34 ID:L1HYz160

唯「…なんだか練習する感じじゃなくなっちゃったね……」

梓「…そうですね」

唯「…とりあえず晩御飯食べにいこっか」

梓「はい……」

あずにゃんがなんだかすぐれない顔だ。

唯「あずにゃん!今日は私がおごるよ!」

梓「え…別にいいですよ…」

唯「先輩命令だよ~!ほら、いこ!」

梓「あ、はい…」

あずにゃんにはいま食堂で話題になってるって噂の麻婆豆腐をおごってあげよう!
そんなに話題になってるってことは相当おいしいに違いない!

73: 2010/10/27(水) 18:21:55.64 ID:6fjsILc0
~~~~~~~~~~~~~

思っていたとおり澪ちゃんとりっちゃんはこの教室にいた。
私が教室に入るべきか悩んで、入ろうとドアに手をかけたとき中から声が聞こえてきた。

澪「…律は消えないよな!?絶対…絶対消えないよな!?」

律「大丈夫だよ…」

やっぱり澪ちゃんの話というのはりっちゃんに対するものだった。

澪「律がいなくなっちゃったら私……もうイジメられるのはいやだ…うっうぅぅ…」

律「大丈夫だって!澪を置いて消えたりしないよ…それにもし私が消えても、ムギや唯、梓がいるだろ?」

澪「いやだ!律がいなきゃいやだっ!」

律「……じゃあ澪……私と一緒に消えるか?」

え…?りっちゃん……!?

澪「え……!?」

74: 2010/10/27(水) 18:22:53.22 ID:6fjsILc0

律「…ムギの話を聞いたときからずっと考えてたんだ…ホントにこのままでいいのかなって……
  満足したら消えるってんならここに残り続けるってことは永遠に…心から満足することはできないってことだろ?」

澪「……」

律「この世界で生きてた頃の未練をなくして、新しい人生を歩めるなら…この世界に居続けるよりも…」

澪「…いやだっ!!新しい人生になったってどうせまたイジメられるんだっ…誰も助けてくれないんだっ…
  それ位なら律やみんなとずっとこの世界にいたい!!」

律「澪…それは自分勝手だよ」

澪「でも…いやだよ……」

律「心配すんな…まだ消える気はないよ…でも私だっていつかは消えてしまうかもしれないんだ」

澪「……」

律「でも…約束するよ。澪より先には消えないって」

澪「律……」

律「もう一つ。…次の世界でも私が見つけてやるよ!澪のこと!」

澪「そんなの無理だよ……」

律「ダイジョーブだって!!澪と私の仲だろ!?」

75: 2010/10/27(水) 18:23:48.26 ID:6fjsILc0

澪「ぷっ…なんだよそれ……」

律「私が駄目ならムギがみつけてくれる!!だろ?ムギ!」

え…!?気づかれてた…?

澪「え?ムギ…?」

紬「…りっちゃん…いつから気づいてたの?」

律「んー?澪が話し始める前かな…ドア越しに見えてた」

最初から気づいてたんだ…

澪「ムギ、話聞いてたのか…!?」

紬「ええ…ごめんなさい…澪ちゃん…でも私も約束するわ!澪ちゃんを絶対に見つける!!」

澪「ムギ……」

律「な!だから大丈夫だよ澪…それに今すぐ消えるわけじゃないしな~」

紬「次のライブ成功させましょ!それからまた次のライブ!」

76: 2010/10/27(水) 18:24:39.09 ID:6fjsILc0

律「はりきってんな~ムギ!」

紬「うふふっ♪」

澪「…そうだな…ライブ、成功させよう」

律「よぉーし!メシ食いにいくかー!!」

紬「おーっ!」

律「澪は麻婆豆腐なっ!」

澪「あんなもん食えるかっ!」

紬「何にしようかしら~♪」

77: 2010/10/27(水) 18:27:24.18 ID:6fjsILc0
~~~~~~~~~~~~~

律「さーって今日は何にしよっかな~…」

「にゃぁ゛ぁぁ゛ぁああ゛あぁぁっぁ゛あぁぁあ゛ああ!!!!!!!!」

澪「うっわぁぁぁぁぁ!!?」

紬「今の声って……」

唯「あずにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

梓「ぁっぁあああああぁああぁぁあぁああああ!!!!」

紬「ゆ、唯ちゃん!梓ちゃんどうしたの!?」

澪「お、おい…これもしかして麻婆豆腐じゃ……」

律「もしかして唯……」

唯「あ、あずにゃんに今おいしいって話題の麻婆豆腐をおごってあげて
  食べさせてあげたらあずにゃんが急に苦しみだして…もしかして毒!?」

78: 2010/10/27(水) 18:27:56.23 ID:6fjsILc0

律「いや毒ではないけど…うん……」

紬「あのね唯ちゃん…食堂の麻婆豆腐はおいしくて話題なんじゃなくて、すごく辛いことで有名なの…」

澪「この麻婆豆腐…結構減ってるぞ……」

唯「あずにゃんが一口食べたら涙ぐんできたから、そんなにおいしいのか~と思っていっぱい食べさせてあげたんだ……」

律「梓、おごりだから断るに断れなかったのか……?」

梓「」

澪「おい…梓が動かなくなったんだけど……」

律「と…とりあえず椅子に座らせておこう……」

紬「そ、そうね…」

79: 2010/10/27(水) 18:28:30.40 ID:6fjsILc0

唯「ご、ごめんねあずにゃ~ん…」

俯いたあずにゃんの口からは唾液と麻婆豆腐が混ざったものが垂れていた。

律「…よし晩飯食うか!!」

澪「そ、そうだな…」

紬「そうね…」

唯「わ、わたしもたーべよっと…」

その後私たちはあずにゃんから少し離れた席で食事を早々に済ませ、帰った。

80: 2010/10/27(水) 18:29:27.74 ID:6fjsILc0
~~~~~~~~~~~~~

梓「…それで朝起きたらなぜか食堂に居たんですよ…しかもなんか口とおなかが痛いし…」

唯「そ、そうなんだ…不思議なこともあるもんだね…ハハ……」

あずにゃんはあまりのショックに昨日のことを覚えていないらしい。

律「新しい曲もできたし、そろそろ本格的に練習するか!」

梓「律先輩が練習なんて言い出すの珍しいですね」

律「私だってやるときゃやるんだよ!な!澪!ムギ!」

澪「あぁ…そうだなライブに向けて練習しよう」

紬「えぇ、がんばりましょ!」

81: 2010/10/27(水) 18:29:59.04 ID:6fjsILc0

唯「…?三人、なにかあったのかな?」

梓「そうですね…何かおかしいです……」

唯「ねーねー!なにがあったのー?」

律「ま、後でな。いまはとりあえず練習だ!」

梓「律先輩が…珍しい」

律「私だってやる時はやるの!」

唯「よーし私もがんばるぞ!」

82: 2010/10/27(水) 18:32:11.26 ID:6fjsILc0
~~~~~~~~~~~~~

唯「あずにゃーん!今日もかわいいねぇ~」

梓「ちょっ…やめてください!」

律「お前ら相変わらず仲良いなー」

紬「うん…うん……いいわぁ…」

梓「私は嫌です!」

澪「でもホント仲の良い姉妹みたいだよ」

唯「え……?」

姉妹……?

83: 2010/10/27(水) 18:33:17.44 ID:6fjsILc0

律「その場合どっちがお姉ちゃんなんだ?」

紬「うーん、しっかりものの梓ちゃんがお姉さん?いや逆もあり…」

唯「おねえ…?…ぁ…え……」

お姉さん…?いもうと…?

梓「ちょっと何言って……唯先輩…?」

唯「わたしっ……」

頭が痛い

紬「唯ちゃん大丈夫!?顔色が……」

84: 2010/10/27(水) 18:33:51.59 ID:6fjsILc0

唯「…あ…あ……」

痛い痛い痛い

梓「大丈夫ですか!?唯先輩!ゆいせんぱ……」

『……ちゃん!お姉ちゃん!!』

唯「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

梓「あぐぅ!」

紬「梓ちゃん!?」

律「唯!!」

澪「唯!どこにっ……」

85: 2010/10/27(水) 18:34:28.90 ID:6fjsILc0
~~~~~~~~~~~~~

唯「はぁっ…はぁ……」

全部思い出してしまった。
自分の今までの人生から自分が氏ぬ瞬間までしっかりと。

唯「ぅ…おぇぇぇ……」

氏んだ感覚を知った瞬間、体中から冷や汗が出てその場に倒れそうになり、そのまま吐いてしまいそうだった。

みんなもこうだったのかな……

唯「はぁ…はぁ…ぅ…うぅぅぅぅぅ……」

梓「あ…唯…先輩……」

私を追ってきたのだろう。

86: 2010/10/27(水) 18:35:22.92 ID:6fjsILc0

唯「ごめ…んね……」

梓「私は…大丈夫です……」

唯「みんなは…?」

梓「唯先輩を探してます……もしかして…思い出したんですか?」

唯「……」

梓「ムギ先輩が言ってました…唯先輩が生きてたころの事、思い出したのかもしれないって」

唯「そう…だよ……」

梓「…その…大丈夫…ですか」

自分の記憶が一気に沸き起こってきて頭がぐちゃぐちゃだ。

87: 2010/10/27(水) 18:36:56.84 ID:6fjsILc0

唯「……うん…」

梓「唯先輩の…その…記憶は……」

唯「ごめんね…今は…よくわかんない……」

梓「そう…ですよね…私も最初はそうでした」

唯「あずにゃん……」

梓「…唯先輩…私が氏んだ理由…聞きたいですか?」

唯「え…?」

梓「その…もしかしたら…それで少しは整理ができるかなって……」

唯「……ありがと」

88: 2010/10/27(水) 18:38:14.69 ID:6fjsILc0

梓「…私の両親はジャズ奏者で…一人っ子だった私にすごく期待してたんです」

唯「うん……」

梓「でも…ジャズ奏者なんてもう稼げないから父も母も私をバンドで成功させようとしてました…
  …えへへ…私、生きてるころもバンドしてたんですよ」

唯「そうなんだ……」

梓「と、いっても父と母が才能のある生徒を集めてつくった作り物のバンドですけどね…
  でもそのメンバーに私も入れてもらえて…両親に期待されてるんだってすごく嬉しかったんです。
  だから友達とも遊ばないで毎日沢山練習をして絶対に売れてやるって思ってた……」

唯「……」

梓「すごく順調だったんです…優勝すればメジャーデビューができるバンドコンテストだって
  大会前から私達が優勝するのが決まってたくらい」

唯「決まってた…?」

梓「はい。父が何かしたんでしょうね…ただ普通に演奏しきればいい…それだけでメジャーデビューです…でも私はミスをした」

唯「え…?」

89: 2010/10/27(水) 18:39:29.95 ID:6fjsILc0

梓「ちょっとくらいのミスなら別にいいんです…でも違う…その少しミスの後、私は何も出来なくなった
  …勿論観客はいますから、こんな大きいミスを犯したバンドが優勝するのはおかしいわけです」

唯「……」

梓「気づけば控え室にいてバンドの仲間から罵声を浴びせられました…でもそれより…
  優しかった父も母も…お前みたいなグズはメンバーに入れなければ良かったって…私…わたし……」

唯「あずにゃん……」

梓「それでっ…全部嫌になって……知り合いからクスリをもらって…それから……」

唯「そこから先はもういいよ…あずにゃん」

梓「ごめっ…なさい……」

唯「ありがとう、あずにゃん…私も…自分の人生と向き合ってみるよ」

梓「唯先輩……」

唯「……私はね」

90: 2010/10/27(水) 18:41:38.88 ID:6fjsILc0
~~~~~~~~~~~~~

「お姉ちゃん!おかえり!」

唯「ただいま。すぐご飯作っちゃうからね」

「うん!今日はなにかな~」

唯「できてからのお楽しみだよ」

「たのしみだな~」

私の家族は両親と妹の四人家族だったんだ。でもお母さんと妹とは血が繋がってなかった。
ホントのお母さんは私が小さい頃に亡くなったから。

でも最初は色々あったけど新しいお母さんとも妹とも仲良くなれた。
特に妹は私をお姉ちゃんお姉ちゃんってすごく慕ってくれて……

お父さんもお母さんも共働きだったから家事は私がしてたんだけど、妹は私の料理を食べておいしいって
すごく嬉しそうに笑ってくれるんだ。だから私は家事だって苦にならなかったしすごく楽しかった。

91: 2010/10/27(水) 18:44:13.29 ID:6fjsILc0

唯「おまたせ~」

「やった!ハンバーグだ!」

唯「たくさんあるからね」

「いっただきまーす!」

でもお父さんとお母さんは仕事が忙しくてイライラしていたのかな?よく喧嘩するようになってた。

その日も夜、寝ていたら怒鳴り声や泣き声が聞こえてきた。
妹はそのせいで毎晩泣いてた。

私はお姉ちゃんだから妹を悲しませちゃいけない、この状況をなんとかしなきゃいけないって……
だから妹の誕生日会の日にお父さんとお母さんに仲直りをしてもらおうとしたんだ。
その日はお父さんもお母さんも早く帰ってきてもらって、楽しい誕生日会にして、また家族四人で仲良く暮らそうって。

「えへへ、ありがとうお姉ちゃん」

唯「きっとお父さんもお母さんも疲れてるだけなんだよ。今日はみんなでゆっくりして仲直りしてもらおう?」

「うん!」

92: 2010/10/27(水) 18:44:50.81 ID:6fjsILc0

でもお父さんもお母さんも日が変わるまで帰ってこなかった。
どうしても仕事から抜けられなかったらしいの。

帰ってきたお父さんとお母さんは泣いてる妹を前にまた喧嘩しだして……その日はもう掴み合いの喧嘩になってた。

それを見て私は恐くて何もできなくなって立ち尽くしてた。
でも妹はそれを見て嫌になったんだと思う、仲裁に入って……

それで…妹と一緒に飲もうねって言ってたシャンパンでお父さんが…妹を……

私は気づいたら妹を抱き締めててなんだか体がふわふわして頭が痛かった。

殴られたんだなって思ったときにはもう喋れなくなってて…妹が泣いてて……


そこから先は思い出せないや。


93: 2010/10/27(水) 18:45:48.11 ID:6fjsILc0
~~~~~~~~~~~~~

唯「…そこで…氏んじゃったみたい」

梓「……」

唯「あずにゃんに話してやっと頭の中がまとまったよ。ありがとう」

梓「…いえ」

唯「……あずにゃん…ぎゅってしていい…?」

梓「はい…私も今は……そうしてほしいです」

唯「ありがとうあずにゃん……あずにゃんはあったかいね…もう氏んじゃってるけど」

梓「ふふ…唯先輩だって……」

唯「そうだね…あはははは」

94: 2010/10/27(水) 18:46:41.08 ID:6fjsILc0

紬「…唯ちゃーん!」

唯「あ…ムギちゃん……」

紬「唯ちゃんっ…その……」

唯「…私は大丈夫だよ!うん…大丈夫」

紬「思い出した…のね」

梓「ムギ先輩っその今は……」

紬「…むぎゅぅぅぅぅぅぅ!!!」

唯「わっ……」

ムギちゃんが私とあずにゃんに抱きついてきた。
…ムギちゃんってなんだかすごくあったかい。

95: 2010/10/27(水) 18:47:43.41 ID:6fjsILc0

梓「ムギ先輩…!?」

唯「えっと…ムギちゃん?」

紬「えっと、前に唯ちゃんが梓ちゃんにしたみたいにこうすればいいのかなって…ダメだったかな……」

あずにゃんに抱きついた時とはまた違うあったかさで、なんだか安心する感じだ。

唯「んーん、すごく安心する…ありがとうムギちゃん」

梓「はい…私も」

紬「よかった…唯ちゃん、梓ちゃん。二人ともすごくつらそうな顔をしていたから」

唯「ムギちゃん……」

96: 2010/10/27(水) 18:48:09.26 ID:6fjsILc0

紬「二人とも一人で塞ぎこまないでね…私もこの世界に来たとき氏んだときの記憶が蘇って本当につらかった。
  けど周りの人が助けてくれたわ。だから二人も……」

唯「うん…もちろんだよ」

梓「はい……」

紬「じゃあ部室に戻りましょうか。りっちゃんと澪ちゃんはとりあえず戻ってると思うわ」

唯「あのねムギちゃん…もうちょっとだけ…えへへ」

梓「あのっ…私も!」

紬「どんとこいで~す♪」

97: 2010/10/27(水) 18:48:46.43 ID:6fjsILc0
~~~~~~~~~~~~~

律「あ…唯!…その…大丈夫か?」

唯「りっちゃん、澪ちゃんごめんね…思い出したことは良いことばっかりじゃなかったけど
  あずにゃんやムギちゃんのおかげで受け入れられたよ」

澪「梓も大丈夫か?その…目、真っ赤だから……」

梓「はい…私も唯先輩に生きてたころのことを話して整理をつけました。あとはムギ先輩が……」

紬「いいえ、私は何もしてないわ……そうだ!お茶にしましょう?すぐに淹れるわ」

唯「ムギちゃん…ありがとう」

梓「ありがとうございます…ムギ先輩」

律「まぁその…大丈夫ならよかった!」

澪「そうだな…」

唯「えへへ…かたじけない……」

梓「ふふっ…なんですかそれ」

紬「お待たせ。さぁみんな…ティータイムにしましょう?」

100: 2010/11/02(火) 15:34:23.84 ID:jY/f88I0
~~~~~~~~~~~~~

それから毎日皆とライブの練習やお茶をしつつお互いの生きていたころの話をしあった。

それは楽しかったことであったり辛かったことであったり……
話しているうちにそんな感情をなんだか皆と共有できたような気持ちになった。

唯「…今の、すごくうまくいったね!!」

梓「はい!この調子なら最高のライブにできそうです!!」

澪「最近はちゃんと練習してたからな…うん」

紬「澪ちゃんうれしそうね…よかった」

律「あぁ…そうだな」

101: 2010/11/02(火) 15:35:13.56 ID:jY/f88I0

澪ちゃんやりっちゃんの生きていた頃の話…もちろん辛かったことも聞いた。
澪ちゃんは虐めで、りっちゃんは虐められていた友達を助けようとしてその虐めにまきこまれてしまったらしい。

だからりっちゃんは澪ちゃんを放っておけなかったし、澪ちゃんはりっちゃんを頼りにしてるんだと思う。

唯「明日のライブ、絶対成功させようね!」

今の私たちなら成功以外はありえない。
きっときっと絶対にすごく楽しいライブになる。

…もしそれが消えてしまうことになっても。

それは良いことなのだろうか?悪いことなのだろうか?

102: 2010/11/02(火) 15:36:03.26 ID:jY/f88I0
~~~~~~~~~~~~~

唯「……わたし…明日消えちゃうのかな」

誰も居ない教室で一人呟く。

明日のライブは今までのどのライブより楽しみだ。けど、逆にそれがとてつもなく不安だった。

満足してこの世界を去って、また新しい人生を歩むことに恐怖はないけど、明日のライブで自分だけ消えてしまったり
逆に自分一人だけが取り残されてしまったり…それにもし生まれ変わっても、みんなと会うことは永遠に叶わないかもしれない。

それがただただ恐かった。

唯「んーん…大丈夫!だって、まだまだみんなとバンド…したいもん」

どうにも眠れそうにないので眠くなるまでギターの練習をすることにした。

唯「そうだ…必殺技考えよう!」

ギターを弾いているうちに楽しい気持ちになってきた。

103: 2010/11/02(火) 15:36:58.83 ID:jY/f88I0

唯「ジャーン!っと…うん今のはすごくよかったよ!ね?」

今まで一緒にがんばってきたギターに話しかける。

そういえばこのギターってさわちゃんがくれたんだよね。

名前はなんだっけ?たしか…レ…レなんとか……

唯「んー……うん!君の名前はギー太!ギー太に決定!」

さわちゃんいわくこのギターは最初からこの世界にあったみたいだ。

誰かのものだったのかな?

その人の人生はどうだったのだろう?ちゃんと満足してこの世界を旅立てたのだろうか。

唯「ギー太、覚えてない?」

肩から下ろし、教室の机に立てかけたギー太は月明かりに照らされてキレイだ。

でも表面には細かい傷や汚れがついている。

私たちと違ってどんな傷でも治るわけじゃない…この世界でもやっぱり時間は流れているんだ。

104: 2010/11/02(火) 15:37:58.83 ID:jY/f88I0

時計を見るとこの教室に来た時からだいぶ時間が経っていた。

唯「うーん…やっぱり眠れないや……緊張してるのかな」

胸がモヤモヤして眠れない。

とりあえず机に突っ伏して目を閉じた。

唯「ギー太~今日はがんばろうね~……」

しばらくするとだんだんと眠くなってきて、意識が曖昧になってきた。

眠りにつく直前、なんとなく見たギー太の姿はなんだか楽しそうだった気がする。

105: 2010/11/02(火) 15:38:57.52 ID:jY/f88I0
~~~~~~~~~~~~~

「…んぱい!ゆいせんぱい!」

唯「んあ……」

梓「…なんでこんなところにいるんですか!?」

唯「……ん…あずなん……おあよ」

すごく良い夢見てたのにー…

梓「もう始まっちゃいますよ!」

唯「始まる…なにが…?」

106: 2010/11/02(火) 15:39:51.97 ID:jY/f88I0

梓「はぁ~…ラ・イ・ブです!!」

唯「へ…?…あ…あーっ!!!」

時計を見るともう開始時間直前だった。

梓「…もうホントに……」

唯「えへへ……」

梓「ほら、早く行きますよ!!」


唯「うん……よし、行こっか…ギー太」


107: 2010/11/02(火) 15:44:29.21 ID:jY/f88I0
~~~~~~~~~~~~~

律「…まぁ……うん……」

澪「……」

梓「はぁ……」

紬「お、お茶いれてくるね……」

唯「……ごめんなざぁぁぁぁぁい!!!」

…ライブは散々な結果に終わった。

理由は寝ぼけた私の演奏ミスに始まり、焦りによって歌をど忘れし、シールドに足を引っかけ
アンプ、りっちゃんのドラムセット、ムギちゃんのキーボードを巻き込んで盛大に転んだからだ。

奇跡的に楽器に損傷がなかったのが不幸中の幸いだろう。

108: 2010/11/02(火) 15:45:24.87 ID:jY/f88I0

澪「…ふっ…ふふ…ふふふ……」

梓「み…澪先輩…?」

澪「…あはっあははははは!!」

律「澪が壊れた……」

唯「み、みおぢゃん…ごめんなざぃ~……」

怒りを通り越して笑いに達してしまったのかな…こわい……

澪「ち、違うんだ…ごめん…ふふふっ……」

澪ちゃんは目に涙をためて笑っている。

本当に可笑しいらしい。

109: 2010/11/02(火) 15:46:19.60 ID:jY/f88I0

澪「……私、もしかしたら…消えちゃうんじゃないかって思ってたんだ…このライブで」

唯「え…?」

澪「みんなと演奏してると本当に…本当に楽しいんだ…練習でだって本当に…
  ならライブなんてすれば絶対消えちゃうんじゃないかって」

律「……澪…」

澪「…でも唯があんな……ふふ…あはははは…」

唯「め…めんぼくない……」

澪「…ホントに…ホントに…ふぅ…グスッ…ぅ…うぅぅぅぅ…」

澪ちゃんも私と同じで不安な気持ちになっていたのだろう。
今度は泣き出してしまった。

110: 2010/11/02(火) 15:47:29.00 ID:jY/f88I0

唯「…ねぇみんな……もうライブするの…やめない?」

律「な!唯~お前ミスしたからって…別に気にすんなよ」

唯「…違うの」

紬「…唯ちゃん……」

唯「…最高のライブを目指してずっと練習するの。ずっと…ずっと」

梓「それって…」

唯「ライブはしない…でもいつかは最高のライブをするため練習する…ずーっと部活を続ける…」

律「目標…というか未練があるから消えないってことか……」

唯「消えるのは恐くないけど…もうみんなとバンドできなくなるのは…嫌だな」

111: 2010/11/02(火) 15:48:46.86 ID:jY/f88I0

澪「…賛成だ!そうしよう!そうすればずっと一緒に居られるんだ!みんなで!」

紬「…私は反対だわ」

澪「なんで!?なんでだよ!ムギはずっとみんなでバンド続けたくないのか!?」

律「私も…それは嫌だ」

澪「りつ!なんで!なんで……」

律「生きてた頃の記憶を引きずって本当に心から満足できないままこの世界に残り続けることになるんだぞ……」

澪「ぅ……」

唯「そう…だよね」

やっぱりそれは勝手な考え方なんだろう。

112: 2010/11/02(火) 15:51:07.76 ID:jY/f88I0

梓「…なら…本当に最高のライブを目指せばいいんじゃないですか」

唯「…どういうこと?」

梓「本当に最高のライブをするんです…私たちがみんなこの世界を旅立てるくらいの」

唯「……」

紬「そうね…そのためならいくらでも練習を続けるわ」

律「私も…それなら」

澪「…みんなで消えるのか?」

梓「言い方は悪いけど……そうです」

113: 2010/11/03(水) 13:05:07.75 ID:xbqGq2Y0

唯「……みんなで…」

魅力的な話に思えたけど、それは同時にみんなと別れることなんだよね……

澪「ぅ…グスッ…いやだよ…みんなと別れたくない……ずっと…ずっと一緒にいたい……」

梓「……澪先輩…」

律「…考える時間が必要だよ…とりあえずこの話はまた…な」

唯「……」

紬「そうね…」

そのあとみんなと別れ、帰った。

次の日から澪ちゃんは練習に来なくなった。

116: 2010/11/17(水) 01:28:35.17 ID:peIbCGg0
~~~~~~~~~~~~~

紬「あっ…りっちゃん……今日も…」

律「…あぁ」

何日たっても澪ちゃんは部室には来なかった。
食事の時や校内で私達やりっちゃんが話しかけても悲しそうな顔をするだけだ。

一度りっちゃんが無理やり連れてこようとしたときは澪ちゃんが泣き叫んでしまって大変だった。

唯「私…のせい…だよね……」

梓「唯先輩……」

律「…唯のせいじゃないよ…ただ澪はホントに…ホントにみんなと別れたくないだけなんだと思う」

紬「…やっぱり澪ちゃんがいないとライブはできないわ…もう一度話にいこう?」

唯「…あのね、澪ちゃんと二人で話がしたいんだ…いいかな?」

紬「…その…りっちゃんがいないと…」

律「…いや、頼んだよ唯」

唯「…うん」

117: 2010/11/17(水) 01:29:36.98 ID:peIbCGg0
~~~~~~~~~~~~~

澪「……!?…りつ…?」

唯「…ごめんね」

澪「…唯……私は…練習には行かないから…」

唯「…澪ちゃんは…みんなとバンドするの嫌になっちゃった?」

澪「それは違う!けど…練習したら…いつかライブをして…みんな消えちゃうんだろ…」

唯「…そうだよ」

澪「やっぱり私は嫌だ…唯だって嫌なんだろ!?だからあんな提案をしたんじゃないのか!?」

唯「…私も…みんなと…ずっと…ずっとバンドしたい」

澪「や、やっぱり唯もそう思ってたんだな!じゃあ二人で皆に言いにいこう!そうすれば皆もっ…」

118: 2010/11/17(水) 01:30:55.85 ID:peIbCGg0

唯「…あのね…澪ちゃん…私、みんなの生きていた頃の話を聞いて…
  ホントに悲しくって、もし新しい人生を始めたとしてもまた悲しいことになっちゃうかもしれない…
  それならこの世界にいた方がいい…ふとそう思ったの」

澪「そ、そうだよ!どうせ生まれ変わったってまた同じ目にあうんだ!それなら消える必要なんてない!」

唯「…でもね…この世界に残っても嫌な記憶や気持ちはずっと残ってるんだよ?
  …そんなの辛すぎるよ…」

澪「でも!みんながいれば!…みんなといるときは嫌なことだって忘れられるんだ…だから…」

唯「この世界はそんな記憶を完全に無くしちゃうくらいの喜びとか満足とかを得るためにあるんじゃないかな…」

澪「でもっ…辛いことを忘れて生まれ変わっても…また辛い目に合うかもしれないじゃないか…」

唯「りっちゃんとムギちゃんに聞いたよ…二人とも生まれ変わっても澪ちゃんを見つけるって約束をしたって」

澪「…そんなの…無理だよ…」

119: 2010/11/17(水) 01:32:34.18 ID:peIbCGg0

唯「…こんな世界があるってことは…本当にいるのかもしれない…神様が」

澪「え…?」

唯「…理不尽な人生を終えた人のための世界なら…
  次の世界で、その人の願いを一つくらい叶えてくれたっていいと思わない?…もし神様がいるなら」

澪「…唯……」

唯「…二人の約束…信じてあげてもいいんじゃないかな」

澪「……」

唯「みんなでやらなきゃ卒業できないよ…この世界から」

澪「私…は…」

唯「澪ちゃん」

澪「……?」

唯「私も約束する。きっと澪ちゃんを見つけるよ」

120: 2010/11/17(水) 01:34:18.18 ID:peIbCGg0
~~~~~~~~~~~~~

律「…お…唯」

唯「ムギちゃんとあずにゃんは?」

律「ん…先に飯食べにいったよ。ちょっと私も唯と話したくてさ…澪、どうだった?」

唯「うん…きっと大丈夫だよ」

律「そう…か…よかった」

唯「…りっちゃんはホントに澪ちゃんを大切にしてるんだね」

律「んー?まぁな…なんていうか…ほっとけなくてさ…」

唯「…そうなんだ」

律「うん……罪滅ぼしってわけじゃないけど…生きてたころ助けられなかった友達に…」

唯「りっちゃん…」

121: 2010/11/17(水) 01:35:13.54 ID:peIbCGg0

律「ま、澪が大丈夫ならよかった……でさ、唯はどうなんだ?」

唯「…?」

律「その…唯があの提案をしたときからずっと思ってたんだ…唯もずっとこの世界にいたいのかなって」

唯「…半分くらいはそうかな」

律「半分?」

唯「私も…生まれ変わって、もうみんなと永遠に会えないならずっとこの世界にいたい…」

律「そうか…」

唯「けど…それじゃ辛い気持ちをずっと引きずったままになっちゃうから…」

122: 2010/11/17(水) 01:39:10.50 ID:peIbCGg0

律「…じゃあさ…あの約束…みんなでするか」

唯「みんなで…」

律「あぁ…5人…いや、さわちゃんを入れて6人でさ……6人もいれば見つけるのなんて余裕だよ!」

唯「あはは…りっちゃん前向きだね」

律「おぅ!それだけが取り柄だからな!…だからさ唯も…」

唯「うん…最高のライブ…がんばろ」

律「よし!じゃあ今から澪誘って飯行くか!」

唯「…うん!そうだね」

律「澪が戻ってきたらさすがに練習しないとな!だいぶ鈍ってるよ」

唯「そうだね…だって最高のライブにしないといけないんだから!」

126: 2010/12/05(日) 12:43:41.41 ID:D7K0tL.0
~~~~~~~~~~~~~

澪「……ごめん、みんな」

紬「澪ちゃん…おかえりなさい」

梓「そのっ!…私も…約束します!だから…」

澪「梓…ありがとう」

唯「りっちゃん…」

律「うん…なぁ澪…みんな…」

澪「ん…?」

律「生まれ変わって…次の人生が始まっても、お互いが見つけあって
  また友達になれるように…またバンドができるよう約束しよう…みんなでさ」

紬「りっちゃん…うん…」

梓「私も…はい!」

澪「…うん…約束しよう」

唯「澪ちゃん…」

127: 2010/12/05(日) 12:44:37.52 ID:D7K0tL.0

澪「約束…破ったら承知しないからな!」

律「…あったりまえだろ!私は部長なんだからなっ!!」

唯「えぇー!?りっちゃんいつの間に!?」

梓「律先輩が部長?あり得ないです」

律「中野ぉ…言うようになったな…」

唯「私が部長だと思ってたよ!」

律「私よりあり得ないよ!」

梓「どっちもどっちです」

澪「ふっ…ふふふっ…」

紬「澪ちゃん…この五人なら…ううん、さわちゃんも入れて六人…きっと約束…守れるわ」

澪「うん…そうだな…」

128: 2010/12/05(日) 12:45:39.61 ID:D7K0tL.0

律「…んじゃあ部長はジャンケンな!」

唯「えぇ~アミダにしようよぉ~」

梓「澪先輩かムギ先輩がいいと思います」

紬「みんな~とりあえずお茶にしましょう?」

律「じゃあじゃあジャンケンにするかアミダにするかジャンケンで決めようぜ!」

唯「えぇ~…」

澪「いいかげんに…しろっ!」

律「あだっ!」

梓「澪先輩が律先輩を殴った…!?」

唯「は、初めてじゃない?」

紬「うふふふふ…」

129: 2010/12/05(日) 12:46:36.63 ID:D7K0tL.0

律「みおちゅわ~ん…よくもやってくれたなー!こちょこちょ~」

澪「うわっ…やめっ…やめっろ!」

律「ぐへぇ!」

唯「ぷっ…あはははは!りっちゃん、たんこぶ~」

本当に…本当に楽しい。

この空間をこの世界でも、次の人生でも続けていくためにもライブ…必ず成功させなきゃ。

130: 2010/12/05(日) 12:47:25.97 ID:D7K0tL.0
~~~~~~~~~~~~~

それからの私たちは授業も、練習もお茶もなんだって全力で楽しんでやった。

本当に毎日が楽しすぎて、何日経ったのかはよくわからない。

けど確実にみんなでライブをしたい、最高のライブをしたいっていう気持ちは演奏をするたび強くなっている気がする。

唯「…はぁはぁ…今の…」

練習なのに胸がすごくドキドキしている…

今の演奏なら……

131: 2010/12/05(日) 12:48:11.68 ID:D7K0tL.0

澪「…あぁ…今まで一番…すごかった…」

梓「はい……」

律「そろそろ…ライブ…するか!」

紬「そうね…これなら」

澪「…いやっ…でも、まだ律のドラムは走りぎみだしっ唯はっ…」

律「…澪っ!…わかってるだろ?」

澪「う……」

132: 2010/12/05(日) 12:49:56.98 ID:D7K0tL.0

唯「…澪ちゃん」

澪ちゃんを抱きしめると私と同じように澪ちゃんも胸がドキドキしていた。

澪「あ…唯……」

唯「私も澪ちゃんと一緒でドキドキしてるよ?…だって…すごく楽しい演奏だったんだもん」

澪「…うん…私も…楽しかった」

唯「練習でコレならライブなんてすごいよ!きっときっと、すっごく楽しいよ!」

紬「私もっ…ドキドキしてるわ…」

後ろから抱きついてきたムギちゃんの胸もドキドキしている。

梓「わ、私もですっ」

あずにゃんの胸もドキドキ。

律「私も混ぜろーっ!」

りっちゃんも加わって、私を中心にみんなで抱き合っている形になった。

みんなのドキドキが伝わってなんだか不思議な気分だ。

133: 2010/12/05(日) 12:51:52.94 ID:D7K0tL.0

唯「えへへ…ライブがんばろっ!!」

律「おぉー!!」

紬「おぉー!」

梓「お、おぉー」

澪「おー…」

唯「ぷっ…どんどん弱くなってるよ~」

律「あはは!私たちらしくていいだろ!」

紬「うふふ…そうね」

澪「…ふふっ…そうか…?」

梓「そうですよ!」

唯「うん!!」

137: 2011/01/03(月) 07:44:57.64 ID:PgVZM5.0
~~~~~~~~~~~~~~

律「明日のライブに備えて今日は麻婆豆腐パーティーだ!!」

唯「いぇ~い!!」

紬「どんどんぱふぱふー!!」

澪「おかしいだろ!明日に影響するよ!」

梓「麻婆豆腐…?なにかあるんですか?」

唯「あ、あずにゃん……」

やっぱり覚えてないんだ……

律「この世界だから大丈夫だ!!」

紬「どんな状態になっても明日には完治してるわよ~」

澪「そ…そうだけど……はぁ~…ホント、最後まで…」

律「み~おっ!最後じゃなくて、これからだって何回でもできるだろっ?…でも~…この世界ならでは、のこともしておかないとな~!」

澪「…ぷっ…あぁ…そうだな…よし!今日はやるぞ!!」

律「澪ちゅわんやるきぃ~!」

138: 2011/01/03(月) 07:46:07.47 ID:PgVZM5.0

紬「は~い、麻婆豆腐、特盛五人前で~す♪」

梓「…?普通ですね。これがどうしたんですか?…すごく美味しいとか?」

律「ぶっ…そ、そうなんだよ!めちゃくちゃ上手いんだよ!その麻婆豆腐!まずは梓から食っていいよ」

唯「り、りっちゃん!!」

ひどい!

梓「いえ、そんな…先輩方から…」

うん、そうだよね!あずにゃん!

澪「ふふっ…梓、先に食べていいよ」

紬「お皿にとってあげるね…はい、どうぞ♪」

唯「澪ちゃん!?ムギちゃん!?」

二人まで……

唯「……先に食べていいよ」

ごめんね…あずにゃん……

139: 2011/01/03(月) 07:47:24.56 ID:PgVZM5.0

梓「ありがとうございます…では、お先に……あむっ」

唯「ああぁぁあぁ……」

がっつり食べちゃったよぉ……

梓「うん、なかなかおい…し……い……」

咀嚼しながら紅潮してゆくあずにゃんの顔。

梓「あ…あが…が……」

最高に真っ赤っかになった後、急に青ざめました。

梓「あ゛……」

唯「あずっ……」

梓「んに゛ゃああああぁぁぁあ゛ぁあああ!!!!!!!」

唯「にゃぁぁぁぁぁん!!!」

椅子から転げ落ち、のたうち回るあずにゃん。

140: 2011/01/03(月) 07:49:28.89 ID:PgVZM5.0

律「だははははははっ!!」

澪「ふっ…あははははは!!」

紬「りっちゃん、澪ちゃんもそれっ!」

唯「あああああ!!」

ムギちゃんが大笑いしているりっちゃんと澪ちゃんの口に麻婆豆腐を放り込んだ。

律「おぶっ」

澪「うぐっ…」

唯「はわわわわわ……」

紬「はい、唯ちゃん♪」

唯「え…?」

紬「唯ちゃんの分♪」

唯「……ゴクリ」

そういえばまだ食べたことないんだよね……

141: 2011/01/03(月) 07:50:58.39 ID:PgVZM5.0

律「う、う…うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

澪「うぐっ……ぅええええええ!!!」

唯「……」

床をのたうち回るあずにゃんに苦しそうに喉をかきむしるりっちゃん。

澪ちゃんはどこかに駆けていってしまった。

紬「いただきまーす♪…うん、おいしい♪」

唯「……」

この地獄のような光景のなかでニコニコと麻婆豆腐を食べるムギちゃんはとても神々しい。

唯「…い、いただきます……」

そのあと麻婆豆腐はちゃんと食べきった…気がする。


…みんなと一日中騒いで楽しかったな。

142: 2011/01/03(月) 07:53:27.75 ID:PgVZM5.0
~~~~~~~~~~~~~~

律「なんか体が軽い」

梓「確かに何だかすっきりした感じです…」

ライブ当日、昨日食べた麻婆豆腐のおかげなのか、体が軽くとても調子が良い。

まさにベストコンディションだ。

澪「……」

紬「澪ちゃん…大丈夫?」

澪「…うん、大丈夫」

紬「今日のライブ、頑張りましょ?」

澪「あぁ……そうだな」

143: 2011/01/03(月) 07:56:12.08 ID:PgVZM5.0

律「んじゃ、ライブの前にティータイムといくか!」

梓「えぇ!?練習しましょうよ!」

唯「おやつ♪おやつ♪」

紬「はいは~い♪」

梓「もう~……」

澪「梓…私達らしくていいじゃないか…な?」

梓「…ふふっ…そうですね」

ムギちゃんの用意してくれたお茶やお菓子は特別だったり豪華だったりするものなんかじゃなく
いつもと変わらない普段通りのものだった。

唯「えへへ…おいしいよ~ムギちゃん!」

紬「うふふ…よかった」

144: 2011/01/03(月) 07:58:11.03 ID:PgVZM5.0


律「…じゃあ…そろそろ行くか!」

梓「はい!!」

紬「うん!」

唯「…このライブが終わったら……」

澪「……大丈夫…またみんなで…できるさ」

唯「澪ちゃん……うん…そうだね」

律「みんなで約束だ!ここにいないさわちゃんの分もな」

紬「私、ライブも、みんなとのこれからもすごく楽しみ♪」

梓「そうです!それに唯先輩にはまだまだ練習してもらわないと…」

唯「あ、あずにゃ~ん……」

澪「頑張ろう!…ほら」

手を差し出す澪ちゃん。

そこに重ねるように手を差し出すみんな。

145: 2011/01/03(月) 07:59:56.68 ID:PgVZM5.0

律「唯」

紬「唯ちゃん」

梓「唯先輩」

澪「…唯」


唯「…うん……よーっし!!やるぞ!!おーーーーっ!!!!!」

146: 2011/01/26(水) 01:19:51.36 ID:iDtLjK0l0
~~~~~~~~~~~~~~

ライブが始まった。

この世界でたくさんの時間を過ごす中で、私達が作った全ての曲を今、全力で演奏している。

りっちゃんのドラムはいつも以上に走りぎみだし、
あずにゃんもいつもの堅実な演奏とは打って変わり、聞いたことのないような激しい演奏をしている。

けどそんなりっちゃんのドラムに合わせて演奏する澪ちゃんはすごく楽しそうだし、
あずにゃんだって好き放題に弾いてるわけじゃなく私の演奏に完璧に合わせてくれる。

ムギちゃんはみんなの演奏を繋ぎ合わせて綺麗にまとめてくれている。

147: 2011/01/26(水) 01:20:40.35 ID:iDtLjK0l0

唯「…次っ!私の恋はホッチキス!!」

さわちゃんが綺麗な声で最後に歌った曲。

さわちゃんがなんで消えてしまったのかはわからなかったけど、今この曲を歌っている私と同じ気持ちだったのかな?

続きを歌う澪ちゃんに目配せすると楽しそうに笑ってくれた。

唯「…次は…ふわふわ時間!!」

私が軽音部に入る前からあった曲。
…最初はパンク調だったけど。

私のギターソロから曲が始まる。
さわちゃんやあずにゃんみたいに上手じゃないけどずっと練習してきた演奏。

こんな世界でも成長してるんだな。

唯「…みんなー!ありがとう!ラスト!『You&I』!!」

私とみんなで作った曲。

作ったきっかけは一人一人曲を作ってくるっていう遊びみたいな理由だったけど
気付けばみんなで一緒になって一生懸命作った曲だ。


すべての演奏を最高の気持ちで終わらせることができた。でも……


148: 2011/01/26(水) 01:21:23.82 ID:iDtLjK0l0

唯「まだ…消えてない……」

律「当たり前だろ…だってさ……」

客席からは今までしてきたどのライブよりも大きなアンコールが起こっていた。

澪「…行こう」

紬「澪ちゃん…」

梓「やってやるです!!」

律「よし…やるか!!」

唯「うん!!」


ホントにホントの最後の曲。


唯「最後の曲!!『Cagayake!GIRLS』!!」

149: 2011/01/26(水) 01:22:35.03 ID:iDtLjK0l0

私のギター、ムギちゃんのキーボード、あずにゃんのギター、澪ちゃんのベース、りっちゃんのドラム。
一人一人が加わって曲が始まる。

この曲は私達の最後の別れの言葉の代わりに作った曲だ。

曲はすすんでいく。

そしてそれぞれのソロ。

もうお別れだね。

150: 2011/01/26(水) 01:24:05.03 ID:iDtLjK0l0

唯「むぎ!!」

ムギちゃんはいつも通りの笑顔で微笑んでいた。

やっぱりムギちゃんは最後までいつものままなんだな。

紬「みお!!」

ムギちゃんは笑顔のまま綺麗な音を残し消えていった。

最後の声をかけられた澪ちゃんは泣いていた。

でも演奏は今までで一番、りっちゃんとぴったり息の合った演奏だ。

私、あずにゃん、りっちゃんと目配せした。

りっちゃんは澪ちゃんに笑顔で返していた。

澪「りつぅっ!!」

澪ちゃんも卒業することができた。

りっちゃんは澪ちゃんが卒業した瞬間に泣き出してしまった。

でもドラムの音は力強いままで、まるで誰かに何かを伝えているようだ。

律「うぉぉぉぉぉあずさぁぁぁ!!!」

力強くドラムにスティックを叩きつけ、大きな笑顔でりっちゃんも卒業した。

151: 2011/01/26(水) 01:25:19.60 ID:iDtLjK0l0


ついに私とあずにゃんの二人だけになってしまった。

もはや客席は完全に静まり返り、私たちの演奏だけが響いている。


目配せをするとあずにゃんは楽しそうに泣いていた。


だいじょうぶです――あずにゃんの顔はそう言っているような気がした。

梓「せーのっ!!」


『『『『ゆい!!!!』』』』


私のソロ。

みんなの姿はもう見えないけど演奏は聞こえてくるよ。

ムギちゃんのキーボード、澪ちゃんのベース、あずにゃんのギター、りっちゃんのドラム。



唯「けいおん!大好き――――」



152: 2011/01/26(水) 01:26:34.07 ID:iDtLjK0l0
…………………
……………
………



新しく…生まれ変われたら…みんなとの約束、絶対に守らなきゃ…


澪ちゃん、りっちゃん、ムギちゃん、あずにゃん、さわちゃん……


それから…もし、また私に妹ができたら…うんと優しくして今度こそ絶対に守ってあげよう……


それから…それから…またギターを始めるんだ…きっと……また…ギー太と……


…それから……それから……


…なんだっけ…………?


もう思い出せないや―――――



153: 2011/01/26(水) 01:27:51.72 ID:iDtLjK0l0
…………………
……………
………



「…わぁ!左利きなんだ!すごーい!」


「ひっ」


「みんなー!すごいよー!左利きだよー!」


「うぅぅ……」


「なにかいてたのー?」


「……」


「…どうしたの?」


「……はずかしい…」


「うーん…じゃあさ、お友達になろうよ!」


「お友達…?」


「うん!お友達どうしならはずかしくないでしょ?へへ」


「……」


「…だめ?」


「ううん…いいよ…」


「やった!じゃあ今から私たち、お友達だね!私の名前は―――」


154: 2011/01/26(水) 01:29:58.05 ID:iDtLjK0l0
…………………
……………
………



「お姉ちゃん!起きて!朝だよ」


「…おはよー……」


「はい、これ今日の用意。ご飯できてるから早く着替えて降りてきてね」


「うぃ~……」


うーん、高校生か……


せっかく高校生になったんだし、なにか新しいこと始めたいな……



…なにか……そう、なにか―――



155: 2011/01/26(水) 01:32:09.79 ID:iDtLjK0l0
…………………
……………
………



「こねー……」


「もういいだろ…私は文芸部に……」


「あのー…」


「きたぁ!!入部希望の人!?」


「えっと…合唱部に……」


「お願い!軽音部、今月中に四人集まらないと廃部になっちゃうんだ!入部して!!」


「こら…無理やり誘うなよ」


156: 2011/01/26(水) 01:33:14.50 ID:iDtLjK0l0

「…なんだよ!あの時の約束は嘘だったのか!!」


「……約束…」


「…捏造…すんなっ!」


「あだっ!!」


「ふふ……」


「あぁ…ごめん……」


「いえ…楽しそうだな、と思って。私でよろしければ是非入部させて下さい」


「ホントに!?やったぁぁ!!」


「ありがとう!…えっと……」


「はい、私の名前は―――」



157: 2011/01/26(水) 01:34:32.04 ID:iDtLjK0l0
…………………
……………
………



なにか新しいことを始めたくて軽音部に入部届を出したけど、怖い人だったら嫌だし、やっぱり辞めさせてもらおう……


「君だよね!?入部してくれるっていう子!」


「ごめんなさい!実は辞めさせて下さいって言いに来たんです!」


「え……」


「本当にごめんなさい……期待させるだけさせておいて……なんて謝ったらいいか……」


「…そっか……じゃあさ、最後に演奏だけでも聞いていってよ」


「演奏、してくれるんですか?」


「うん!……よし、やるか!ワン、ツー!」


どうしてだろう……演奏はバラバラで全然上手じゃないのに…すごく楽しそう……


「ふぅ…どうだった?」


「あの…なんだかうまく言えないんですけど……あんまりうまくないですね!でも…すごく楽しそうで……」


私も……一緒に―――



158: 2011/01/26(水) 01:35:59.23 ID:iDtLjK0l0
…………………
……………
………



「この写真…先生だよね?」


「うっ…なんでわかったの……」


「へーまさか先生にこんな過去があったとは……」


「うぅ…お淑やかなキャラでいこうと思っていたのに……」


「バラされたくなかったら顧問になってください!」


「はぁ…わかったわ」


「やったー!」


「もう…私が顧問になったからにはビシバシいくわよ―――」



159: 2011/01/26(水) 01:37:01.83 ID:iDtLjK0l0
…………………
……………
………



どうして……?


…どのバンドも軽音部より上手くてすごいのに、どうしてあの四人だとすごく良い演奏になるんだろう……


私も…私も……あの中に入れたら……きっと―――



160: 2011/01/26(水) 01:38:56.71 ID:iDtLjK0l0
…………………
……………
………



ねぇ、あたし。あの頃のあたし。


心配しなくていいよ。すぐ見つかるから。


あたしにも出来ることが、夢中になれることが、


大切な、大切な、大切な場所が―――




「けいおん!!だいすきーー!!」





おわり




161: 2011/01/26(水) 01:40:00.38 ID:iDtLjK0l0
おわりです
読んでくださった方がいらっしゃいましたらありがとうございます。

163: 2011/01/26(水) 08:13:58.01 ID:Ir0SY8jHo
完結乙
とても良かったぞ!!

引用元: 唯「死んだ世界戦線?」