396: 2019/04/06(土) 21:15:59.40 ID:fMe4IiPho

397: 2019/04/06(土) 21:18:50.13 ID:fMe4IiPho
部長「ああ、そうだ。良い考えだとは思わないかい?」

武内P「そう、ですね……」

部長「どうした、歯切れが悪いじゃないか」

武内P「あの……何故、それを私に?」


部長「キミに仕事を頼みたい」

部長「……やってくれるね?」


武内P「……」

武内P「一体、どんな内容なのでしょうか――」

398: 2019/04/06(土) 21:22:50.87 ID:fMe4IiPho
  ・  ・  ・

早朝


武内P「……場所取り、か」


武内P「……」

武内P(……部長の事だ)

武内P(きっと、働き詰めの自分に気を遣ってくれたのだろう)


武内P「花見の場所取りがてら、一日ゆっくり休め、と」

武内P「……そういう事ですね、部長」


武内P「……」

武内P「……そうであって欲しいものだ」

400: 2019/04/06(土) 21:25:54.71 ID:fMe4IiPho
武内P「……花見は、明日」

武内P(今日は、一日読書でもしていよう)

武内P(……幸い、このテントは広い)

武内P(閉塞感を感じることなく、ゆっくり出来る)


武内P「……」

…ごろんっ

武内P「下に敷いたマットレスも……」

武内P「……良い、塩梅です」


「ワンッ! ワンッ! ワンッ! ワンッ!」


武内P「っ!?」ビクッ!

401: 2019/04/06(土) 21:28:38.79 ID:fMe4IiPho
武内P「一体、何が……!?」


「――こら! ちょっと、ハナコ!」

「ワンッ! ワンワンッ! ワンッ!」


武内P「この声は……」

ジイイッ…!

武内P「!……やはり」


凛「……プロデューサー?」

ハナコ「ワンッ! ワンッ!」フリフリ!


武内P「……渋谷さん」

武内P「その……おはよう、ございます」

402: 2019/04/06(土) 21:33:07.66 ID:fMe4IiPho
凛「おはよう……って、何してるの?」

武内P「明日の花見の場所取り、ですね」

凛「……テントまで張って?」

武内P「ええ……そう、ですね」


凛「……ふーん」

凛「あ、結構中は広いんだ」

凛「もしかして、後から誰か来たりするの?」

凛「そうじゃないんだったら、ちょっとだけお邪魔しても良い?」

凛「ハナコの散歩をして、気付いたらかなり遠くまで来てて疲れちゃって」

凛「良い?」


武内P「……」

403: 2019/04/06(土) 21:38:26.72 ID:fMe4IiPho
武内P「……渋谷さん」

凛「駄目なの?」

武内P「すみません、お聞きしたい事が」

凛「何?」


武内P「今は――朝の五時半なのですが」


凛「朝の空気って澄んでて、気持ち良いよね」

凛「だから、たまに早起きしたら……ちょっと得した気分」


武内P「此処は――渋谷さんのご自宅から、かなりの距離が」


凛「アイドルになって、レッスンをして体力ついたと思う」

凛「運動は得意じゃなかったけど、大分成長したんじゃないかな」


武内P「……」


凛「何?」

404: 2019/04/06(土) 21:43:56.18 ID:fMe4IiPho
  ・  ・  ・

正午


武内P「……何とか、帰って頂けた」


武内P「……」

武内P(しかし……渋谷さんの鬼気迫る表情は、一体?)

武内P(……親御さんに連絡して、来て頂いて正解だったか)


武内P「彼女が此処に来たのは……きっと、偶然だろう」

武内P「……そうですよね、渋谷さん」


武内P「……」

武内P「……ええ、そうに違いありません」

405: 2019/04/06(土) 21:51:09.52 ID:fMe4IiPho
武内P「……このまま、何事も無ければいいのだが」

武内P(いや……ある筈が無い)

武内P(……余計な事を考えるのは、やめよう)

武内P(部長の計らいを無駄にしては……ならない)


武内P「……」

…ごろんっ…ごろんっ

武内P「シートの下全てに、マットレスを……」

武内P「……かなり、くつろげます」


「プロデューサーさーん」


武内P「……この声は」

406: 2019/04/06(土) 21:54:00.91 ID:fMe4IiPho
武内P「いや……そんな筈がない」


「あれ? もしかして、居ないのかしら……?」

「だけど、このテントは……もしかして、寝てる?」


武内P「……やはり」

ジイイッ…!

武内P「いえ……起きています」


ちひろ「あっ、良かった~!」

ちひろ「差し入れ持ってきましたよ、プロデューサーさん♪」ニコッ!


武内P「……千川さん」

武内P「その……ありがとう、ございます」

407: 2019/04/06(土) 21:57:57.62 ID:fMe4IiPho
ちひろ「ログインボーナスの、スタミナドリンクです♪」

武内P「は……はい、ありがとうございます」

ちひろ「これを飲んで、頑張ってくださいね!」ニコッ!

武内P「ええ……そう、ですね」


ちひろ「……へー」

ちひろ「実際に見てみると、結構広々としてますね」

ちひろ「プロデューサーさん体が大きいから、不安だったんです」

ちひろ「私、丁度今はお昼休みなので、ちょっとだけお邪魔しても良いですか?」

ちひろ「駄目ですか?」


武内P「……」

408: 2019/04/06(土) 22:02:57.29 ID:fMe4IiPho
武内P「……千川さん」

ちひろ「はい?」

武内P「すみません、お聞きしたい事が」

ちひろ「どうかしましたか?」


武内P「休憩時間は――一時間です、よね?」


ちひろ「はい、そうですね」

ちひろ「それが、どうかしましたか?」ニコッ!


武内P「此処は――事務所から、かなりの距離が」


ちひろ「はい、そうですね」

ちひろ「それが、どうかしましたか?」ニコッ!


武内P「……」


ちひろ「サンドイッチ、作ってきたんですよ♪」ニコッ!

409: 2019/04/06(土) 22:09:17.44 ID:fMe4IiPho
  ・  ・  ・




武内P「……良い、サンドイッチでした」


武内P「……」

武内P(しかし……千川さんの移動手段は、一体?)

武内P(……休憩時間終了の五分前まで、此処に居たが)


武内P「ですが……とても、良い笑顔をしていました」

武内P「……詮索してはいけないのですね、千川さん」


武内P「……」

武内P「……深く考えるのは、やめよう」

410: 2019/04/06(土) 22:16:04.00 ID:fMe4IiPho
武内P「……さすがに、もう誰も来ないだろう」

武内P(来客はあったが……大分、ゆっくり出来た)

武内P(たまには、こうやってゆっくりするのも……良いかも知れない)

武内P(いや……仕事と思うから、こうしていられるのか)


武内P「……今は」

…ごろんっ

武内P「……仕事が、恋人のようなものですから」


「ここに居るって話だけど、わかるー?」

「わかるわ。テントの色は、調べてきたから」

「ふふっ♪ いざ、夜桜! うふふっ♪」


武内P「……」

武内P「!?」

412: 2019/04/06(土) 22:22:40.83 ID:fMe4IiPho
武内P「……!」


「確か……あっ、あれよ。きっとそうだわ」

「へー! かなり立派なテントじゃないの!」

「あら? シートの下に……敷いてあるのに、マットレス! うふふっ♪」


武内P「……!?」

武内P(何故……彼女達、三人が!?)


「キャハッ! あれなら、ゆっくり出来そうですね!」

「やーん、お酒買っといて良かった☆ 飲むぞ☆」

「スマホもあるし、夜桜見ながらの野球観戦! くうーっ、サイコー!」


武内P「……!?」

武内P(……三人ではない!?)

413: 2019/04/06(土) 22:32:42.28 ID:fMe4IiPho
武内P「……!」

武内P(ろ……六人も、外に!?)


「あっ、こっちよこっちー! 見つけたわー!」

「でも……こんな大人数になるだなんて」

「今晩が、丁度皆の都合が良かった日だったからね」


武内P「!?」

武内P(皆……!? 皆とは、一体……!?)

武内P「っ……!」

ジイイッ…


大人組「……」


武内P「……」

…ジイイッ

415: 2019/04/06(土) 22:44:44.09 ID:fMe4IiPho
  ・  ・  ・

部長「ああ、そうだ。いい考えだとは思わないかい?」

武内P「そう、ですね……」

部長「どうした、歯切れが悪いじゃないか」

武内P「あの……何故、内密で私に?」


部長「キミに仕事を頼みたい」

部長「……だが、断ったね?」


武内P「……」

武内P「ええ、こんな内容とわかっていたら……」


大人組「カンパ~~イッ♪」ニコニコ!


部長「――酒なくて、何が己の桜かな」


武内P「…………」


武内P(……明日ありと、思う心の仇桜)




おわり

416: 2019/04/06(土) 22:48:44.73 ID:fMe4IiPho
補注

○酒なくて、何が己の桜かな

花見と言ったらやっぱ酒でしょ!


○明日ありと、思う心の仇桜

桜が明日も咲いてると思っても、夜に嵐で散っちゃうかもよ
何が起きるかわからない、嗚呼、無常

引用元: 武内P「泥酔、ですか」