523: 2019/04/10(水) 21:08:23.11 ID:OV68Ckl5o

524: 2019/04/10(水) 21:12:29.13 ID:OV68Ckl5o
奏「ええ、そうなの」

武内P「速水さんは、恋愛映画が苦手なのですか?」

奏「……見てて、恥ずかしくなるし」

武内P「それは……意外ですね」


奏「でも、演技のためならそうも言ってられないでしょう?」

奏「それに……プロデューサーさんとなら、悪くないかな、って」


武内P「そう、ですか……」

武内P「……それが、貴女にとって必要な事ならば――」

武内P「――協力、させて頂きます」

525: 2019/04/10(水) 21:17:46.54 ID:OV68Ckl5o
奏「ふふっ、貴方ならそう言ってくれると思ってたわ」

武内P「いえ、プロデューサーとして当然の事です」

奏「実は、もう見る映画は……ホラ、用意して来てるの」

武内P「準備が良いですね」


奏「物静かな大人の男と、大人に憧れる少女の……」

奏「キスから始まって――キスで終わる、愛の物語」

奏「……ふふっ! ネタバレは、控えた方が良いかしら?」


武内P「……」

武内P「その……兎に角、映画を見てみましょう」

526: 2019/04/10(水) 21:20:34.32 ID:OV68Ckl5o
  ・  ・  ・

武内P「――速水さん」

奏「ん……」

武内P「速水さん、起きてください」

奏「あら……私、寝ちゃってたの?」


武内P「……はい」

武内P「開始十分のキスシーンで、こう……顔を手で隠して」

武内P「はい……そのまま……」


奏「……ふふっ」

奏「起きてたわよ、寝てなんか無いわ」

527: 2019/04/10(水) 21:23:23.24 ID:OV68Ckl5o
武内P「えっ? 今、寝ちゃってたの、と……」

奏「冗談に決まってるでしょう?」

武内P「……内容は、どういったものだったでしょうか?」

奏「もうっ、私を疑ってるの?」


奏「物静かな大人の男と、大人に憧れる少女の……」

奏「きっききキスから始まって――キスで終わる、愛の物語」

奏「……ふふっ! 合ってるでしょう?」


武内P「……」

武内P「あの……合っては、いますが……」

528: 2019/04/10(水) 21:28:48.48 ID:OV68Ckl5o
武内P「……速水さん」

奏「あら、どうしたの?」

武内P「失礼ですが、映画を鑑賞中の様子を……撮影していました」

奏「ふぅん? そうなんだ」


奏「――それじゃあね、私はもう行くわ」

奏「ふふっ! さよならのキスはして貰えるのかな?」


武内P「いえ、それは出来ません」

武内P「――苦手克服のため、現状を正しく把握しましょう」

529: 2019/04/10(水) 21:34:25.96 ID:OV68Ckl5o
武内P「速水さんは、本当に恋愛映画が苦手なようですね」

奏「う~ん……自分じゃ、よくわからないわ」

武内P「この映像を見て頂ければ、おわかりになるかと」

奏「それじゃあ、見せて貰おうかな」

武内P「はい」

ピッ!

  ・  ・  ・

奏『終わった? ねえ、キスシーン終わった?』

  ・  ・  ・

奏「……へぇ」

奏「最近のCGって、良く出来てるわね」

武内P「映像には、一切手を加えていません」

530: 2019/04/10(水) 21:39:03.81 ID:OV68Ckl5o
奏「そんな筈ないでしょう? だって、記憶に無いもの」

武内P「……覚えていないのですか?」

奏「当たり前でしょう? 私、こんな事しないわ」

武内P「……」

  ・  ・  ・

武内P『は、速水さん? 見なくては、克服も何も……』

奏『ふふっ、確かに貴方の言う通りね……』

奏『……あっ、駄目! えっ、エOチ! 駄目、エOチ!』

  ・  ・  ・

奏「……エOチ、って」

奏「今どき、そんな風に言ったりする?」

武内P「……言うようです」

531: 2019/04/10(水) 21:45:46.02 ID:OV68Ckl5o
奏「もう……こんな、手の込んだ映像まで用意して」

武内P「いえ、素材そのままです」

奏「ふぅん……まだ、言い張るの?」

武内P「……」

  ・  ・  ・

奏『もう、終わったわよね? ねえ、終わった?』

武内P『……終わりました』

奏『……ふふっ! 案外、アッサリ――嘘つき!』

奏『もう! もうっ! エOチ! 馬鹿、エOチ!』

  ・  ・  ・

奏「……」

武内P「……」


武内P・奏「……」

532: 2019/04/10(水) 21:51:19.48 ID:OV68Ckl5o
奏「はぁ……貴方って、意地悪なのね」

武内P「えっ?」

奏「だって、そうでしょう?」

武内P「あの……何故、そう思われ――」

  ・  ・  ・

奏『もう騙されないわよ?』

奏『……この両手のヴェールが上がる時』

奏『それは――唇が触れ合う時だけ』

武内P『……』

奏『…………すぅ……すぅ……』…コテンッ

  ・  ・  ・

武内P「――何故、そう思われたのですか?」

奏「その前に、ちょっと映像を止めて」

533: 2019/04/10(水) 21:57:31.68 ID:OV68Ckl5o
武内P「……止めました」

奏「もし、仮に。仮に、あの映像が本物だったとしてよ?」

武内P「はあ……」

奏「私、恋愛映画は苦手だって言ったわよね?」


奏「だったら――そういうシーンに差し掛かったら」

奏「終わっていそうなタイミングまで、注意を逸してくれないと」

奏「……でしょう?」


武内P「あの……速水さん?」

武内P「貴女は、その……映画のラブシーンが流れた時の、両親的な」

武内P「……そんな助けを私に期待していたのですか?」

534: 2019/04/10(水) 22:04:46.66 ID:OV68Ckl5o
奏「はぁ……貴方には、期待してたんだけどな」

武内P「すみません……失望されるのは、釈然としません」

奏「何? もしかして、チャンスが欲しいのかしら」

武内P「いえ、それは……結構です」

奏「……」


奏「…………」…ウルッ!


武内P「……チャンスをください」


奏「……ふふっ! お願いされちゃ、仕方ないわね」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「ですが……泣き落としは、やめてください」

535: 2019/04/10(水) 22:13:44.24 ID:OV68Ckl5o
  ・  ・  ・

奏「――ふぅ……見終わったわね」

武内P「……ええ、まあ」

奏「セクシーなシーンもあったし……とっても、大胆だったわ」

武内P「……はい、そうですね」


武内P「速水さん」

武内P「何故、映画をもう一本用意していたのですか?」

武内P「それも……ジャッキー・チェン主演の映画を」


奏「? 安心して見られるでしょう?」


武内P「……すみません」

武内P「私も、その……普通に楽しんでしまいました」

536: 2019/04/10(水) 22:19:12.37 ID:OV68Ckl5o
武内P「最初のキスシーンに差し掛かり……」

奏「ええ、貴方が声をかけてくれたのよね」

武内P「その……うめき声を上げだしたので」

奏「うめき声? ふふっ、なぁにそれ?」

武内P「……」

ピッ!

  ・  ・  ・

奏『あっ……あーあー、うーううー!』

  ・  ・  ・

武内P「……」

ピッ!

奏「発声練習よ。アイドルには、重要でしょう?」

537: 2019/04/10(水) 22:27:18.13 ID:OV68Ckl5o
武内P「その後、鞄からもう一枚のDVDを取り出し……」

奏「……こっちにしましょう、って貴方に渡した」

武内P「ケースを持って、バタバタしていただけでしたが……?」

奏「そうだったかしら? 覚えてないわ」


武内P「……」

ピッ!


奏「……」

ピッ!


奏「ふふっ、貴方ってとってもチャーミングね」

武内P「今、このタイミングで言う必要がありましたか?」

538: 2019/04/10(水) 22:35:37.10 ID:OV68Ckl5o
武内P「しかし……本当に、恋愛映画が苦手なのですね」

奏「そうね……でも、これで少しは克服出来たかしら」

武内P「貴女が何をもってそう判断されたのか、まるでわかりません」

奏「あら、だってそうでしょう?」


奏「物静かな大人の男と、大人に憧れる少女の……」

奏「プロデューサーと、アイドルの物語」

奏「どんな物語になるかは……貴方次第」

奏「……ふふっ! なんて、ね」ニコッ!


武内P「速水さん……」

武内P「……良い、笑顔です」

539: 2019/04/10(水) 22:42:32.10 ID:OV68Ckl5o
武内P「――ですが、一点だけ」

奏「? どうしたの?」

武内P「ジャッキー映画を見る時は、注意してください」

奏「あら、どうして?」


武内P「あの……速水さんは、ですね……」

武内P「アクションシーンに魅入っている時、その……」

武内P「……こう、口がパッカリと開いています」


奏「……ふふっ!」

奏「嫌ね、そんな筈無いでしょう?」

540: 2019/04/10(水) 22:51:21.94 ID:OV68Ckl5o
武内P「……今後は、気をつけてください」

奏「閉じてるわ。キスする時の、瞼みたいにね」

武内P「……映像は、全て消去しておきます」

奏「あら、そう?」


武内P「この映像が、万が一世に出回ってしまったら……」

武内P「……貴女のイメージに、傷がついてしまいます」


奏「そんな私の姿を……貴方だけが、知ってるのね」

奏「もしかして、傷物にされちゃった?」

奏「ふふっ! この責任は、どう取ってくれるのかしら?」ニコリ!


武内P「映像を全て消去します」

武内P「そして……なるべく早く、忘れます」

541: 2019/04/10(水) 23:03:41.40 ID:OV68Ckl5o
奏「さて……それじゃ、もう行こうかな」

武内P「はい、もう良い時間ですから」

奏「恋愛映画も、完全に克服出来たし」

武内P「いいえ、微塵も」


奏「そうそう……皆には、内緒にしておくわ」

奏「でないと、何を言われるかわからないもの」

奏「……二人だけの秘密、出来ちゃったわね」ニコッ!


武内P「ええ……そうして頂けると、助かります」

武内P「そして……これっきりにして貰えると、幸いです」

542: 2019/04/10(水) 23:27:56.70 ID:OV68Ckl5o
  ・  ・  ・

武内P「……成る程」

武内P「速水さんが、他人事の様に話題にし……」

武内P「……確認してみたら全員そうだった、と」


奏・美嘉・周子・志希・フレデリカ「……」…コクリ


武内P「ジャッキー映画のアクションシーンで――」

武内P「――皆さん、口がパッカリ開いていた、と」

武内P「それを克服したい、と……そういう事ですか」


奏・美嘉・周子・志希・フレデリカ「♪」ニコッ!


武内P「映画を見る時は……口は、閉じるものですからね」


奏・美嘉・周子・志希・フレデリカ「応援上映は?」


武内P「…………」

武内P「すみません、さすがに閉口してしまいました」



おわり

543: 2019/04/10(水) 23:37:36.84 ID:dy5EacLwo
ふたりきりで恋愛映画とか一部アイドルが黙ってませんねこれは

545: 2019/04/11(木) 01:24:16.55 ID:8YFZrRluo
てっきり乗じてなだれ込む作戦かと

引用元: 武内P「泥酔、ですか」