シンジ「僕が?」【前編】

329: 2017/02/23(木) 14:45:42.96 ID:pxeg2dfK0
- 1週間後 総合病院前 -

シンジ「どうも、お世話になりました」

看護師「いえいえ、こちらこそ。お大事にしてくださいね」

シンジ「はい」



ブロロロ キキッ

バタンッ


ミサト「おっまたせぇ~~っ!」

シンジ「ミサトさん、どうも」

ミサト「1週間ぶりね! シンジくん! 私と会えなくてさみしかった?」

シンジ「からかうのはやめてください。部屋の掃除できてたんですか?」

ミサト「うっ……。ま、まぁ、とりあえず行きましょうか。アスカも首をなが~くして待ってるし」
エヴァンゲリオン(RADIO EVA) 碇シンジ Ver.RADIO EVA Part.2 1/7 完成品フィギュア
330: 2017/02/23(木) 15:14:52.62 ID:pxeg2dfK0
- 車内 移動中 -

ミサト「身体の具合はどぉ?」

シンジ「だいぶいいです」

ミサト「みんなから聞かれるから答え飽きちゃってるか」

シンジ「いえ、そんな」
.
ミサト「ネルフの医療スタッフ達が万全の状態で待機してるから、サポートはまかせといて」

シンジ「すみません」

ミサト「あらぁ? なんだか元気ない?」

シンジ「そ、そんなことないですよ。いつも通りです」

ミサト「シンジくんとこうやって2人なのも久しぶりになるわね。アスカが来てからは」

シンジ「そう、ですね。あの、ミサトさん。学校はどうなりますか?」

ミサト「本来なら入院していなきゃいけないところを無理に退院させてるんですもの。シンジくんにおまかせするわ」

シンジ「はい」

ミサト「シンちゃんは学校行きたいの?」

シンジ「……そうですね。みんなお見舞いに来てくれたし。お礼も言いたいから」

ミサト「わかった。放課後はネルフに通ってもらうことになるけどいい?」

シンジ「はい、わかりました」

ミサト「まったく~、もうちょっと気楽にやんなさいよっ!」ウリウリ

シンジ「う、うわ、ちょ、ミサトさん」

ミサト「アスカを惚れさせるなんて! そんなスケコマシ野郎だとは思わなかったわよ!」ウリウリ

シンジ「や、やめてくださいよっ! ……っ! ミ、ミサトさん! 前っ!」

ミサト「ん……? ――っ⁉︎」キキーッ



プーップーッ



ミサト「なに……渋滞……事故?」

シンジ「……なんだか、おかしいですよ。信号のランプが消えてる」



パタパタパタッ


ミサト「上に飛んでるあれは? 戦自のヘリ? ――っ!」

シンジ「…………」

ミサト「シンジくん! 飛ばすわよ! しっかり掴まっててっ!」

331: 2017/02/23(木) 15:21:23.79 ID:pxeg2dfK0
- 戦自 基地 -

戦自「索敵レーダーに正体不明の反応あり! 予想上陸地点は旧熱海方面!」

副司令官「おそらく、8番目の奴ですか」

司令官「ああ、使徒だろう。一応、警報シフトにしておけ。決まりだからな」

副司令官「どうせまた奴の目的地は、第3新東京市ですね」

司令官「そうだな。俺達がすることは何も無いさ」

副司令「なんでいつもネルフばかり……」

司令官「お上の決定だ。仕方ないさ」

332: 2017/02/23(木) 15:29:45.45 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 発令所 -

冬月「――どうなっている⁉︎」

マヤ「だめです! 正・副・予備の三系統、完全に落ちています!」

冬月「同時に落ちるとは考えられんな……」

ゲンドウ「と、すればやはり――」

冬月「――落とされた。と考えるべきだろうな」

ゲンドウ「…………」

冬月「ネルフの中枢はすべてMAGIに頼りっぱなしだ。電気が使えないとなると、外部から完全に孤立してしまうぞ」

ゲンドウ「……通信手段の確保は必要だ。モールス信号に切り替えろ」

シゲル「も、モールス信号ですか?」

冬月「どうした? はやくやりたまえ」

シゲル「り、了解!」

333: 2017/02/23(木) 15:36:52.05 ID:pxeg2dfK0
- 戦自 基地 -

司令官「――どうしたっ⁉︎ なぜネルフは沈黙している⁉︎」バンッ

戦自オペレーター「原因不明! ――使徒! 以前進行中! 第二防衛ライン突破されます!」

司令官「あらゆる通信手段を使って連絡を試みろ!」

副司令「俺たちの出番ですかね?」

司令官「それもありうる! 第壱師団から順次、戦闘警戒態勢! 準備を急がせろ!」

副司令「了解!」

司令官「それと、情報もかき集めろ! 潜入しているものも全て使え!」

戦自オペレータ「了解。緊急警報。緊急警報。警戒レベル最大。これは訓練ではない。繰り返す――」

334: 2017/02/23(木) 15:47:06.29 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 ゲート前 -

カシュ

アスカ「……?」

カシュ

アスカ「あ、あれ?」

カシュ カシュ カシュ

アスカ「もぉ~! なんで反応しないのよ! ぶっ壊れてんじゃないのぉこれぇ⁉︎」


『皆様の、皆様の、よい街づくりを提案し、住みやすい社会を――』


アスカ「うっさいなぁ! 市議選とか他所でやりなさいよ!」

アスカ「…………。どうしよう」


ブロロロッ キキーツ


ミサト「――とうちゃくっ! アスカ! ちょうどよかった!」

アスカ「ミサト? ――シンジッ⁉︎」

335: 2017/02/23(木) 15:56:14.81 ID:pxeg2dfK0
シンジ「……う、うっぷ」

ミサト「シンちゃん、ちょっと胃が弱ったんじゃない?」

アスカ「シンジっ! よかった! 退院できたのね!」

ミサト「アスカにサプライズしようと思って言わなかったのよ」

アスカ「ちゃんと言いなさいよ! でも、よかった……」

シンジ「……アスカ、面会謝絶になってたから、1週間ぶりだね」

アスカ「あ……。うん(あ、あれ? なんだか、まともに顔見れない)」

ミサト「感動の対面はあとあと! アスカ、ゲートはどうなってる?」

アスカ「あ、そうだった。IDカードが反応しないのよね」

ミサト「やっぱり! 異常事態だわ! レイは⁉︎」

アスカ「学校は終わってるからこっちに向かってると思うけど」

ミサト「よしよし! アスカとシンジくんは非常用通路から先におりて! レイが来たら私も急いで後を追うわ」

336: 2017/02/23(木) 16:03:38.15 ID:pxeg2dfK0
- 非常用 通路 -

シンジ「アスカ、暗いから気をつけて」

アスカ「う、うん」

シンジ「どうしたの? 暗いのだめだったっけ?」

アスカ「そ、そんなわけないじゃない! ちょっと、慎重に進んでるだけ」ドッキンコドッキンコ

シンジ「そっか。……いつっ」ガンッ

アスカ「……? ――シンジッ⁉︎ 大丈夫⁉︎」

シンジ「ごめん。少し右手に痺れが残ってて」

アスカ「そ、そうなの? ご、ごめんなさい。私、気がつかなくて」

シンジ「気にすることないよ。アスカと会えて嬉しいよ」

アスカ「…………」ドサッ

シンジ「あ、アスカ⁉︎」

アスカ「……不意をうたれて、ちょ、ちょっと力が、膝に力が入らなかっただけ」

シンジ「大丈夫⁉︎ どこか悪いの⁉︎」

アスカ「シンジ、いつからそんなこと自然に言えるようになったの?」

シンジ「えっ?」

アスカ「……な、なんでもないっ!」

337: 2017/02/23(木) 16:12:06.50 ID:pxeg2dfK0
アスカ「……あの、シンジ」

シンジ「うん?」

アスカ「ドイツ語でありがとうってなんて言うか知ってる?」

シンジ「うぅん、なんだろう」

アスカ「……ダンケ。Danke schÖn」

シンジ「……」

アスカ「浅間山のお礼。まだちゃんと言えてなかったから」

シンジ「あぁ、こちらこそお見舞いありがとう」



カランカラン



アスカ「……? 誰? 誰かいるの」

シンジ「……ミサトさん?」



シーン



アスカ「シンジ。隠れて」ヒソヒソ

シンジ「えっ、でも」

アスカ「いいから。言う通りにして」

338: 2017/02/23(木) 16:21:31.93 ID:pxeg2dfK0
シンジ「……アスカ、急がないと」

アスカ「しっ。黙って。誰かいる」

シンジ「えっ?」



スタスタスタ



シンジ「ほんとだ。誰かくるっ」

アスカ「…………」ジー

シンジ「アスカ。もうちょっとそっち詰めて」

アスカ「……えぇっ⁉︎ ちょ、ちょっとシンジ、や、やだ」

シンジ「このままじゃ向こうから見られるよ」グイグイ

アスカ「ぁ……っ」

シンジ「………なんだろう。あたりを警戒してるね」

アスカ「ぁ……ぅん……(シンジの胸に、シンジの胸に、顔うずめてる)」

シンジ「…………」ジー

アスカ「すぅー……はぁー……(消毒液の匂い。包帯の匂いもする)」トロン



スタスタスタ



アスカ「(ちょ、ちょっと舐めてもいいかな)」

シンジ「アスカ。くるよ」ギュウ

アスカ「あ、ぁん……だめっ……こんなとこで……はぁはぁ……」

シンジ「……アスカ?」

アスカ「ふぁ……シンジぃ……」



339: 2017/02/23(木) 16:30:59.83 ID:pxeg2dfK0
シンジ「……ど、どうしたの? アスカ?」

アスカ「シンジぃ……シンジ……シンジ……シンジ……」ギュゥ

シンジ「ちょ、ちょっと?」

アスカ「…………だめ……匂い嗅いでると……だめなの……」

シンジ「あの」

アスカ「内股の奥がジンジンするの……シンジ……」

シンジ「うわっ……んんっ……⁉︎」ブチュウ

アスカ「んっ………」

シンジ「……………っ」

アスカ「……っ……ちゅ……」

シンジ「……ぷはぁっ…あ、アスカ……んっ」

アスカ「……はぁっ……シンジっ……もっと……舌絡ませ……んっ………」

シンジ「ん……ちゅ……んっ………」



スタスタスタ



ネルフ作業員「あれー。ナットここらへんで落としてなかったかなー」

340: 2017/02/23(木) 16:39:22.20 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 ゲート前 -

レイ「…………」スタスタスタ

ミサト「レイっ! 待ってたわよ!」

レイ「……?」

ミサト「なんだか様子がおかしいの! シンジくんとアスカは非常用通路から降りてるから私たちも行きましょう!」

レイ「……はい」


ブロロロッ


マコト「ミサトさぁ~~~んっ!」スピーカー


ミサト「……? 日向くん⁉︎ 選挙カーに乗ってなにやってるの⁉︎」

マコト「戦自より通達あり! 現在! 使徒接近中!」

ミサト「――やっぱりね!」

342: 2017/02/23(木) 16:55:25.20 ID:pxeg2dfK0
シンジ「どうしたんだよ……」

アスカ「シンジ……」スッ

シンジ「――っ⁉︎(アスカの胸に手が……や、やわらかい)」

アスカ「シンジ、私もシンジのことが大好き。好き。好き。好き。ねぇ、心臓ドキドキいってるのわかるでしょ」

シンジ「……っ」

アスカ「――シンジだけにしかこんなことしない。ねぇ、シンジぃ……ここで抱いて……」

343: 2017/02/23(木) 17:04:26.81 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「マヤちゃん、そっち、氷ない?」

マヤ「もう全部溶けてるわよ」

ゲンドウ「……………」

シゲル「しっかし、たまんないね、この暑さ」

マヤ「碇司令と副司令を見ならいなさい」

シゲル「ん~?」

マヤ「お二人とも暑いはずなのに、いつも通りなのよ。さすがね」




ゲンドウ「…………暑いな。水バケツの水をかえるか」

冬月「……そうだな」

349: 2017/02/23(木) 18:07:41.49 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 発令所 -

冬月「――それで、今使徒はどこだ?」

マコト「到達推定時刻は不明ですが、近いのは間違いありません」

ゲンドウ「エヴァ、発信準備。急がせろ」

ミサト「シンジくんたちはまだ来てない?」

マヤ「まだ見てません。非常用通路ならもうついてないとおかしいんですけど――」

ミサト「迷ってるのかしら……」

ゲンドウ「……葛城一尉、サードチルドレンとセカンドチルドレンの捜索チームをすぐに編成しろ」

ミサト「了解!」

冬月「何事もなければいいがな。あの年頃の男子はすぐに恋慕にハマりやすい」

ゲンドウ「…………そうなったら考えがある」

冬月「碇。……息子とセカンドチルドレンでもかまわんのではないか?」

ゲンドウ「冬月。何度も言わせるな。初号機の覚醒はレイと行ってもらう」

冬月「しかし、レイ以上の存在がサードチルドレンにできれば事実上、困難だろう」

ゲンドウ「……心配は無用だ」



350: 2017/02/23(木) 18:17:22.46 ID:pxeg2dfK0
冬月「レイに固執しすぎではないか? 私達の目的がなんなのか忘れちゃおるまいな」

ゲンドウ「……理由がある」

冬月「それで納得しろというのかね」

ゲンドウ「冬月。レイは器だ。器には器の役目がある。近く、アレの移植手術を行う」

冬月「ま、まだ早すぎるのではないか⁉︎」

ゲンドウ「遅かれ早かれだ。初号機の覚醒。そして魂の解放。レイは必要なピースなのだよ」

冬月「――君の息子もかね」

ゲンドウ「アレはおまけにすぎん。初号機のパイロットとしての役目だけだ」

冬月「わかったよ。この老いぼれでよければ付き合おう」

351: 2017/02/23(木) 18:30:29.96 ID:pxeg2dfK0
- 非常用通路 -

シンジ「――はぁはぁっ……アスカ、大丈夫?」

アスカ「………う、うん……シンジ……凄かった……」

シンジ「あ、ごめん。途中から夢中で動いちゃったから」

アスカ「気失いかけたわよ……でも、すごく、幸せだった……気持ちよかった……」

シンジ「僕も。気持ちよかったよ」ムクムクッ

アスカ「もぉ……まだしたいの?」

シンジ「う、ううん。……みたい」

アスカ「シンジが好きなだけさせてあげる。でも次はゴムするわよね」

シンジ「あ、うん」

アスカ「まだタレてきてる……」

シンジ「あっ、その」

アスカ「3回もしたこと、ミサトには内緒よ」

シンジ「アスカ。……先にこんな関係になってしまったけど、僕、ちゃんと責任とるよ」

アスカ「バカね。中学生に責任なんてとれるわけないじゃない」

シンジ「アスカのことは、守ってみせる」

アスカ「ん……。でも、服きましょ。そろそろ行かないと本当にやばいかも」

352: 2017/02/23(木) 18:37:48.72 ID:pxeg2dfK0
- 非常用通路 移動中 -

アスカ「シンジ? 大丈夫?」

シンジ「身体のことなら心配ない。アスカこそなんか歩き方変だけど平気?」

アスカ「うぅ~! まだ入ってる気がするぅ~」

シンジ「えーと」

アスカ「嫌じゃないんだけど。なんかゴワゴワするってゆーか」

シンジ「……な、なんて言ったらいいか」

アスカ「なにも言わなくていいの。またしたいんでしょ?」

シンジ「う、それはまぁ」

アスカ「――私も」

シンジ「うん?」

アスカ「私もしたいって言ったの! バカシンジ!」

353: 2017/02/23(木) 18:49:38.87 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 発令所 -

ミサト「――アスカたちまだぁっ⁉︎」

シゲル「発進準備、完了しています!」

マヤ「レイだけ、先に行かせますか?」

ミサト「う~ん。電気が回復していないから通信手段がないのよね~。3人揃って個々の判断にまかせようと思ったんだけど」

リツコ「……はぁ」

ミサト「リツコ⁉︎ 今までいないと思ってたらどこに行ってたのよ⁉︎」

リツコ「エレベーター」

ミサト「はい?」

リツコ「閉じこめられてたのよ」

ミサト「あぁ~。なるほど」



タタタタッ


アスカ「――ミサト! ごめん迷っちゃった!」

シンジ「…………あの、すいません」

ミサト「待ってたわよ! すぐにエヴァに乗って! 人力で準備してあるから!」

アスカ「やっぱ、使徒?」

ミサト「レイはすでにエヴァ内で待機してる。急いで!」

アスカ「了解!」


シンジ「あの、アスカ」コショコショ

アスカ「ん? どうしたの?」

シンジ「あの僕の精子とLCL大丈夫かな」

アスカ「あぁ」

シンジ「なんで、アスカはそんな堂々としてるの?」

アスカ「女は演技者なのよ。シンジこそビクビクしてちゃだめ。私を守ってくれるんでしょ」

シンジ「……っ!」

アスカ「いこっ!」

354: 2017/02/23(木) 19:02:20.63 ID:pxeg2dfK0
ミサト「エヴァとの起動バイパスは?」

マヤ「ノートパソコンから接続します」

オペレーター「マイクテスト、マイクテスト。聞こえますか?」

作業員「聞こえてるよ! うっせーな!」

オペレーター「了解。手動でハッチ開け。パイロットは速やかに搭乗してください」

作業員「いよーいしょ! いよーいしょ!」

オペレーター「――パイロットの搭乗を肉眼で確認」

リツコ「全機補助電源で起動開始」

オペレーター「了解。起動開始。シンクロスタート」

マヤ「………あれ?」

リツコ「どうしたの? マヤ」

マヤ「こ、これはっ⁉︎ し、信じられません! 弐号機&初号機ともにシンクロ率75%を超えています!」

リツコ「――機器の故障?」

シゲル「いえっ! こちらでも同等の数値を示しています!」

リツコ「…………(この変化は……)」

ゲンドウ「……赤木博士。今は発進を急がせろ」

355: 2017/02/23(木) 19:09:15.04 ID:pxeg2dfK0
- 第三新東京都市 市街地 -

マナ「――なんで⁉︎ 必要な情報は渡したじゃない! ムサシッ! ケイタァッ!」


ブロロロッ


マナ「………うっ……うぐっ……」ゴシゴシ

マナ「助けなきゃ! 泣いてる暇なんてないっ!」



タタタタッ





マリ「ふむふむ。にゃるほど~。そういうことね」

356: 2017/02/23(木) 19:20:52.40 ID:pxeg2dfK0
- 初号機 プラグ内 通信 -

シンジ「LCLって火傷にも大丈夫なんだな」

アスカ『なに呑気なこと――シンジっ! あんた! 顔っ!』

レイ『どうしたの? ………っ」

シンジ「どうしたの? 2人とも」

アスカ『顔半分! 皮膚の色が違うじゃない!』

シンジ「あぁ。エヴァに乗るために包帯をはずしたから。えっと色素がまだ回復してないらしいよ」

アスカ『回復するのっ⁉︎』

シンジ「後は残るから、完全には回復しないみたいだけど」

アスカ『――ご、ごめん。シンジ。私のために』

レイ『…………』

シンジ「いいよ。それでよかったって思えるから」

357: 2017/02/23(木) 19:30:59.95 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 発令所 -

オペレーター「第1ロックボルト、外せ」

作業員「いよーいしょ! いよーいしょ!」

オペレーター「2番から36番までの油圧ロック、解除」

マヤ「圧力ゼロ。状況フリー」

ミサト「使徒は?」

マコト「戦自よりモールス信号を受信! 現在、この真上にて停止の模様!」

ミサト「くっ! 間に合わないわよ!」

リツコ「――作業急いで!」

ゲンドウ「かまわん。各機、自力でハッチを開けろ」

リツコ「補助バッテリーは⁉︎」

オペレーター「――搭載完了」

リツコ「ミサト!」

ミサト「ようやくね! 発進!」

358: 2017/02/23(木) 19:40:08.53 ID:pxeg2dfK0
- 弐号機 プラグ内通信 -

アスカ「なぁ~にが発進よ。この四つん這い歩行が発進なんてダサすぎる」ズシンズシン

シンジ『アスカ、仕方ないよ』

レイ『……目標は真上にいるって話だったわ』

アスカ「てことは、こっちね。よっと」バコン

シンジ『気をつけて』

アスカ「ううん、心配いらない。なんだかいつもの弐号機と違う気がするの。優しく、包み込んでくれてるみたいな。今ならなんでもできる気がする」

レイ『…………』

シンジ『わかった。もうすぐ、縦穴にでるよ』

アスカ「(本当に、暖かい。ママを思い出す……)」

アスカ「(なんだろう、ママのこと思い出すのこわかったのに、不思議)」


シンジ『アスカ! 危ないっ!』


アスカ「――えっ?」

359: 2017/02/23(木) 19:49:09.70 ID:pxeg2dfK0
シンジ『くっ! 間に合えっ!』

第9使徒マトリエル「…………」デロデロデロ


ジュウッ

パキーーーーンッ!


アスカ「………あれ?」

シンジ『は、はじいた? す、すごい。アスカがやったの?』

アスカ「わ、私じゃない。シンジがやったの?」

レイ『目標は、強力な溶解液で本部を直接攻撃するつもりね』

アスカ「……なに。この感じ。………ママ? ママなの?」

360: 2017/02/23(木) 19:53:41.23 ID:pxeg2dfK0
シンジ『どうする? フォーメーションを組んだ方がいいかな』

レイ『背中の予備電源は3分を切ってる』

アスカ「2人とも。……私にやらせてくれない……」

シンジ『アスカ? 危ないよ』

アスカ「確かめたいことがあるの。お願い」

レイ『…………』

シンジ『…………わかった。僕はいいよ』

アスカ「ファースト。あんたとも色々あったけど、今はお願い」

レイ『自信、あるの?』

アスカ「あったりまえよ」

レイ『……了解。バックアップにまわる』




アスカ「……ありがと! さぁ! いくわよ! 私の弐号機!」

361: 2017/02/23(木) 20:09:36.65 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 発令所 -

マヤ「――っ! そんなバカなっ! 弐号機!シンクロ率が……ひゃ、100パーセント⁉︎」

リツコ「なんですって⁉︎」

ミサト「どうなってるの⁉︎」

シゲル「数値の変化が凄まじすぎますっ! この端末では追いつけません! 解析不能!」

冬月「データはたしかなのか⁉︎」

マヤ「ま、間違いありませんっ!」

冬月「まさか……⁉︎」

ゲンドウ「…………」

冬月「碇! 弐号機とパイロットが覚醒してるんじゃないのか⁉︎」

362: 2017/02/23(木) 20:33:41.74 ID:pxeg2dfK0
冬月「いかん! いかんぞこれは! 我々にもゼーレにもないシナリオだ!」

ゲンドウ「…………使徒の殲滅を最優先とする」

マヤ「シンクロ率、いまだ上昇を続けています!」

リツコ「モニタリングは⁉︎」

シゲル「電力がないのでできません!」

ミサト「……アスカっ!」




ガガーピピッ





加持「耳いてぇ~。この盗聴器、感度悪いなぁ。………しかし、これで俺たちのシナリオはようやく軌道にのったと言えるかな」

マリ「まだスタートラインって感じけどねー。ヤッちゃったらすぐって姫ったらゲンキンだねぇ」

加持「精神安定的なものが大きいんだろう。ヤるだけじゃ意味ないさ。充実してないとな」

マリ「……ワンコくんのお手柄ってやつかな」

加持「あぁ……たいしたもんだよ。シンジくんは」

マリ「でも、なんでワンコくんに興奮剤投与したんだろ、ゲンドウくん」

加持「ん?」

マリ「別に興奮剤投与しなくても、あの年頃だと流されちゃうもんじゃん?」

加持「シンジくんの性格を考慮したんだろう。興奮剤と幻覚。それに伴う恋愛感情を引き出そうとしたのかもな」

マリ「…………」

加持「あの歳には、恋愛なんてものは偶像なのさ。周囲の影響やちょっとしたきっかけで好きだと感じる。思いこむ。俺たち大人も人のことは言えないがね」

マリ「まぁ、なんにせよ、これでゼーレと碇司令が黙っちゃいませんな」

加持「……そうですか」

363: 2017/02/23(木) 20:50:47.36 ID:pxeg2dfK0
- 弐号機 プラグ内 通信 -

アスカ「――わかる! こうすればいいのね!」

第9使徒マトリエル「…………」デロデロデロ


ジュウジュウ

パキーーーーンッ!


アスカ「ATフィールドの使い方! こんなに近くにママを感じるなんて! ずっと! ずっと一緒にいたのね!」ダンダンダンッ

シンジ『か、壁を』

レイ『……駆け上がってる』

アスカ「ママ! 私はここよ! うんっ! そっちにやればいいのね!」


第9使徒マトリエル「…………」

アスカ「邪魔っすんなゴルァァッ!」グシャ

第9使徒マトリエル「」


シンジ『ナイフも、ライフルも使わずに、パンチだけで……』

レイ『…………』



アスカ「はぁはぁっ……」



弐号機「…………ヴゥウウ………」

364: 2017/02/23(木) 21:05:42.19 ID:pxeg2dfK0
- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「し、使徒、活動を停止」

マヤ「エヴァの補助電源、切れました」

リツコ「――弐号機の最終的なシンクロ率は?」

マヤ「…………」

リツコ「マヤ、報告して」

マヤ「に、250%、です」

リツコ「はやめに使徒を殲滅できたのが幸いね。あのまま上昇を続ければ人に戻れなくなるところだった」

ゲンドウ「……赤木博士、後は頼む」

リツコ「セカンドチルドレンはどのようにいたしますか?」

ゲンドウ「追って知らせる。それまでは現状維持だ。冬月。行くぞ」

冬月「…………」

ミサト「リツコ! これってどういうことなのよ⁉︎」

リツコ「…………」

ミサト「エヴァのシンクロ率に上限はないの⁉︎ アスカはなんであそこまで⁉︎」

リツコ「わからないわ」

ミサト「あ、あんた。私になにか嘘ついてない?」

リツコ「なにもついてないわよ」

ミサト「ならなんでそんなに冷静でいられるのよ! 一歩間違えばアスカが!」

リツコ「私にだってわからないことはあるのよっ!」バンッ

367: 2017/02/24(金) 20:04:32.53 ID:etwe8kYs0
- ネルフ本部 医務 -

医療スタッフ『メディカルチェック異常なし』

医療スタッフ『脳波、及び主要な器官に異常は確認できません』

リツコ「…………」カキカキ

アスカ「もーっ! なんともないってばぁ!」

リツコ「あなたのシンクロ率は異常よ。必要な検査は受けてもらいます。それとも、理由、説明できる?」

アスカ「……はぁ」

リツコ「次、エコーかけて」

医療スタッフ『了解』

368: 2017/02/24(金) 20:12:34.98 ID:etwe8kYs0
- ネルフ本部 ラボ -

アスカ「それでぇ? 今度はなに?」

リツコ「ヒアリング。当時の状況を詳しく話てちょうだい」


加持『リッちゃんには少し気をつけておいてくれ』


アスカ「ん……なんかフワッとした感じがしたから。それに身を任せただけ」

リツコ「フワッと、ねぇ。空中に浮いてるような浮翌遊感。それとも眠気を感じたの?」

アスカ「よく、覚えてない。無我夢中だったから」

リツコ「ふん……記憶の混乱が見受けられるということね」カキカキ

アスカ「はぁ……ねぇ、もう帰っていい? 疲れてるのよ」

リツコ「まだよ。シンジくんとはなにか進展があった?」

アスカ「――なにも。シンジはまだ私の気持ちに気がついてない」

リツコ「どうして言わないの?」

アスカ「私からは、言いにくいわよ。それに、そんなのガラじゃない」

リツコ「そうかしら? アスカ、シンジくんに対して冷たくなってない?」

アスカ「そんなことない。シンジは私にとって大切な人だもの。話はそれだけ?」

リツコ「――ひとつ、話をしておくわ」

アスカ「なに……? めんどくさいのはパスよ」

リツコ「心理学の初歩的なことなんだけれど、なにかを隠したい時は冷たくするのよ」

369: 2017/02/24(金) 20:16:50.98 ID:etwe8kYs0
アスカ「どういう意味……?」

リツコ「いいえ。なにも思い当たる節がないのならかまわないわ」

アスカ「そう。それなら問題ないわね」

リツコ「えぇ、そうね。今日はお疲れ様」

アスカ「リツコ」

リツコ「なに?」

アスカ「私こう見えて大卒なのよ。だから初歩的な心理学なら学んでる」

リツコ「……そうだったわね」

アスカ「お疲れ様とか普段言わないくせに。人が優しくする時は、なにを引き出したい時かしらね」

リツコ「ふぅ……。さがっていいわ」

370: 2017/02/24(金) 20:26:40.49 ID:etwe8kYs0
- ネルフ本部 ??? -

冬月「まったくどうなっている! エヴァ全機のドライブレコーダーはどこにいったんだ!」

リツコ「技術班が回収しようとした時には既に持ち去られていました」

冬月「だからそれが誰の仕業かと聞いているんだ!」バンッ

リツコ「……おそらくではありますが、思い当たる人物が1人おります」

冬月「誰かね?」

リツコ「……加持リョウジ」

冬月「ちっ、まったく! こんなことならもっと早めに始末しておくべきだった!」

ゲンドウ「……セカンドチルドレンの様子はどうだ?」

リツコ「外傷など身体的損傷は見られません。精神もかなり安定しております」

冬月「弐号機のコアに気がついたんじゃないのか?」

リツコ「可能性としては高いかと。しかし、一時的な暴走状態にあったと考えられなくもありせん」

冬月「他のパイロット達はなんと言ってる」

リツコ「レイやシンジくんはアスカが興奮していたということだけ」

ゲンドウ「…………」

冬月「気がついたと考えるのが妥当だろうな。しかし、これは厄介だぞ。今はまだ弐号機は必要な戦力だ」

ゲンドウ「……あぁ。残りの使徒も多い」

冬月「コアの書き換えはどうかね?」

リツコ「候補は何名かおりますが、すぐにというわけには……」

371: 2017/02/24(金) 20:34:55.60 ID:etwe8kYs0
冬月「あの男、電力が切れた時を狙ってきおって!」バンッ

リツコ「…………」

冬月「奴からはシナリオがあるとしか聞いていないのだろう?」

リツコ「はい、申し訳ありません。元々、言葉遊びをする間柄だったのでそれ以上のことは……」

冬月「ちっ……」

ゲンドウ「……とりあえず、様子を見る」

冬月「しかし、電力を落としたのもやつの根回しではないのか?」

ゲンドウ「冬月。手はまだある。万策尽きたわけではない」

冬月「はぁ……。委員会にはどう報告する」

ゲンドウ「ありのままだ。こちらにとっても想定外の出来事だった」

372: 2017/02/24(金) 20:46:31.91 ID:etwe8kYs0
- 翌日 ミサト宅 -

ピピピッ

シンジ「ん……朝か。うぅー、まだ眠い」


ピピピッ カチ


シンジ「……あれ? 目覚まし、僕、止めてないのに――」


アスカ「グッモーニン! シンジ!」


シンジ「ふぁ?」

アスカ「なに寝ぼけてんのよ! もう朝よ」

シンジ「あれ? アスカ? 今何時……?」

アスカ「まだ5時30分」

シンジ「……あぁ、今日は早起きなんだね」

アスカ「ほら、しゃきっとしなさい」

シンジ「え? あの?」

アスカ「着替え! 制服そこに畳んでおいてあるから」

シンジ「はぁ……」

アスカ「着替えたら顔洗ってリビングにきなさい」

シンジ「あぁ……はい……」

アスカ「私、キッチンでやることあるから」

トタトタトタ

シンジ「はぁ……なんだぁ……?」



373: 2017/02/24(金) 20:51:14.58 ID:etwe8kYs0
- ミサト宅 リビング -

シンジ「ふぁ~ぁ……」

トタトタトタ

シンジ「アスカ……なにやって……えぇ?」


コトコトコト タンタンタン


アスカ「シンジ。もう顔洗ったの?」


シンジ「……まだ、です……」

アスカ「はやく顔洗ってきなさい。朝、お味噌汁でいいわよね」

シンジ「はい……」ぼけー

アスカ「まだ寝ぼけてるの?」

シンジ「あ……いえ……顔、洗って、って、僕顔洗えないんで、手洗ってきます」

アスカ「あぁ、ごめん。そうよね。それじゃ手洗って。なにか手伝うことある?」

シンジ「いえっ! ぜんぜん!」

374: 2017/02/24(金) 20:57:50.70 ID:etwe8kYs0
- ミサト宅 リビング -

ミサト「…………」

シンジ「…………」

アスカ「どうしたの? 2人とも。さ、食べるわよ」

ミサト「あの、これ。アスカが作ったの?」

アスカ「そうよ。他に誰がいるっていうのよ」

シンジ「アスカ、料理、作れたんだ?」

アスカ「いいえ。ヒカリに教わったの。1週間通いづめちゃったから」

ミサト&シンジ「そ、そうですか」

ミサト「……っは! いけない、危うく現実逃避しそうになったわ!」

アスカ「どういう意味?」

ミサト「いや、あははっ。――シンちゃんの為?」

アスカ「それもあるけど、途中からは楽しくなっちゃって」

シンジ「……そっか。よかったね。アスカ」

アスカ「そうじゃないでしょ! 味みてよ!」

シンジ「あぁ、ごめん。……いただきます」

ズズズッ

シンジ「――うん。お味噌も塩加減もちょうどいい。おいしいよ」

ミサト「あらっ! どれどれぇ? ――ほんとぉ! おいしいじゃないアスカぁ!」

アスカ「まぁ、当たり前よね」

375: 2017/02/24(金) 21:02:58.04 ID:etwe8kYs0
- ミサト宅 リビング 30分後 -

アスカ「シンジ、私教科書忘れたのあるから、あんた少し玄関で待ってて」

シンジ「うん。わかったよ」

アスカ「それと、鞄は私が持ってあげるから」

シンジ「えぇ? そんな。そこまでさせちゃ悪いよ」

アスカ「怪我人なんだから当たり前でしょ。なに遠慮してんのよ」

シンジ「でも、アスカ女の子だし」

アスカ「持てる人が持てばいいの。そういうもんなのよ」

ミサト「シンちゃん。アスカの好意に甘えておきなさい。まだ痺れ、残ってるんでしょ」

シンジ「あぁ……はい」

376: 2017/02/24(金) 21:11:33.14 ID:etwe8kYs0
- ミサト宅 アスカ部屋 -

アスカ「ええと……」ゴソゴソ

ポトッ

アスカ「……あっ」

人形「……」

アスカ「けっこう汚れ、ひどいね。あ、糸もほつれてる」

アスカ「……もう少ししたら綺麗になおしてあげるから。待ってて。ママ」



コンコンッ



アスカ「ん……? 窓?」

マリ『やっほー! ひぃめぇー!』フリフリ


ガラガラッ


アスカ「あんた。ここ何階だと思ってんのよ……いつからベランダにいたの?」

マリ「ついさっき。それよりも、ここ監視されてるから、はいこれ」

アスカ「……なに? イヤホン」

マリ「そそ。有効範囲は狭いんだけど、私が喋ってる声は聞こえるから。つけてね♪」

アスカ「はぁ……。わかった」

マリ「それじゃ、はやく行って。怪しまれない内に」

377: 2017/02/24(金) 21:21:04.08 ID:etwe8kYs0
- 登校中 -

マリ『感度はどうかにゃー? 問題なかったら髪さわってもらっていい?』

アスカ「……シンジ、歩き大丈夫?」サワッ

マリ『おっけーおっけー♪ それじゃ報告したいことがあったのでそのことなんだけど』

シンジ「うん……。大丈夫だよ、ありがとう」

マリ「いやー、実は、あの転校生の霧島マナって子なんだけど、どうやら友達が人質にされてるみたいだよー』

アスカ「それじゃ、行きましょうか」

シンジ「うん」

マリ『それで、パイロットの情報を渡すことが友達の解放に繋がると信じてるみたい。泣けてきちゃうなぁー』

アスカ「…………」スタスタ

マリ『私達ができることと言ったらたいしてないんだけど、できないこともないんだよねぇー』

シンジ「まだ時間には余裕があるね」スタスタ

マリ『でも! ちょっと味方に引きこんでおいた方が後々助かるかなーって打算もあったり! なんだけどー? 姫どうしたい?』

アスカ「そうね。ゆっくり行きましょ」スタスタ

マリ『コンタクトとるかは姫にまかせるね! それじゃまた今度♪』

アスカ「……はぁ」

378: 2017/02/24(金) 21:34:59.79 ID:etwe8kYs0
- 第三新東京都市第壱中学校 昼休み -

トウジ「シンジ、あらためまして、退院おめでとさん」

シンジ「トウジ、ケンスケもお見舞いありがとう」

ケンスケ「いいっていいって」

ヒカリ「鈴原達、なんか一緒に食べるのが普通になってない?」

トウジ「なんや、細かいこと言いなさんな! 委員長!」

ケンスケ「そーそー。大人数で食べた方がおいしいじゃないか!」

シンジ「僕が休んでる間に仲良くなったの?」

アスカ「気がついたら、いつのまにかこいつらがいただけ」

トウジ「女ばっかりじゃ寂しい思うてなぁ!」

アスカ「はぁ。はいはい」

ケンスケ「そ、それよりシンジ、後で話たいことが」

シンジ「ん? なに?」

トウジ「まぁまぁ。後で話するから」

シンジ「……?」

アスカ「もう1人、呼んでもかまわない?」ガタガタッ

ヒカリ「え? アスカ? 誰呼ぶの?」


スタスタ


トウジ「なんや? どこ行く――って」



マナ「…………あの、えっと」

アスカ「お昼休み中にごめんね」

マナ「いえ……」

アスカ「よかったら、一緒にお昼どう?」

マナ「え……でも、この前……」

アスカ「あれは私が悪かった。言いすぎよね。ごめん」

マナ「あ……」

アスカ「友達から、またやり直さない?」

379: 2017/02/24(金) 21:40:10.84 ID:etwe8kYs0
マナ「あの……本当にお邪魔じゃないですか?」

トウジ「あぁ、かまへんかまへん! なぁ! シンジ」

シンジ「うん、僕は休んでたし」

ケンスケ「そこに座りなよ」

ヒカリ「アスカ……」

マナ「どうもありがとうございますっ」

アスカ「敬語もやめやめ!」

マナ「あっ……うんっ!」

アスカ「私のことはアスカって呼んで」

マナ「私っ、マナでいいよ!」

ヒカリ「えへへ……」

380: 2017/02/24(金) 21:47:32.36 ID:etwe8kYs0
アスカ「シンジ、フォークつけておいたからこれ使って」

シンジ「ありがとう」

アスカ「あと、これお茶」スッ

シンジ「あ、うん」

アスカ「飲める?」

シンジ「大丈夫」

ヒカリ&トウジ&ケンスケ&マナ「…………」

アスカ「口元ご飯粒ついてるわよ」

シンジ「え? どこ?」

アスカ「そっちじゃない。こっち」ヒョイ パク

ヒカリ&トウジ&ケンスケ&マナ「お、おぉ」

トウジ「――お前らなんか雰囲気が変わってないか?」

アスカ「そう?」

シンジ「いつも通りだと思うけど」

ケンスケ「介護、なのかなぁ?」

381: 2017/02/24(金) 21:51:34.38 ID:etwe8kYs0
トウジ「ゴリラ女がこんなに世話をするとは……ってやば!」バッ

ヒカリ「(鈴原もこりないわねー)」

ケンスケ「(殴られにいってるんじゃないのかなぁ?)」

マナ「……ご、ゴリラ女?」

シンジ「あ、これおいしい」もぐもぐ

アスカ「うん。これもヒカリに教えてもらったの。ね? ヒカリ」

トウジ「――あ……あれ?」

ヒカリ「へぇっ? あ、あぁ! うん! そうだね!」

ケンスケ「…………な、なにがどうなってるんだぁ?」

382: 2017/02/24(金) 21:57:56.10 ID:etwe8kYs0
アスカ「あんたも、ガキみたいなこといつまでも言ってるんじゃないわよ」

トウジ「は、はぁ……」

ヒカリ「アスカ? 熱ない?」

アスカ「ん? ないわよ?」

シンジ「どうしたの? みんな」

ケンスケ「こ、これが……シンジパワーだとでも言うのか……」

マナ「あの……あはは……」

アスカ「――それはそうと、マナって親の転勤だったわよね」

マナ「そうだよ?」

アスカ「こっちはもう慣れた?」

マナ「……うん。少しだけ。あ、そうだ! アスカと碇くんってパイロットなんだよね⁉︎」

シンジ「そうだけど?」

マナ「かっこいいなぁーっ! 憧れちゃう!」

383: 2017/02/24(金) 22:06:15.29 ID:etwe8kYs0
シンジ「そうかな? 憧れることなんて何もないよ」

マナ「でも、みんなを守ってるから、そういうのってかっこいいよ」

シンジ「そうかな」

マナ「碇くん、今、怪我してるんだよね? 私もなにかあったら協力するから言ってねっ」

シンジ「シンジでいいよ。霧島さん」

マナ「……あ、うん。私もマナでいいから」


ヒカリ「…………」ゴクリ

トウジ「今度こそ雷が落ちるで」

ケンスケ「さて、避難避難――」ガタッ



アスカ「助かる。シンジもなにかあったらマナに――」


トウジ「――だ、誰やお前はっ!!」ビシッ

アスカ「はぁ?」

トウジ「そこはシンジに近づくのは! とか言うんちゃうんかい!」

アスカ「なんでそんなこと言わなきゃいけないのよ?」

ケンスケ「はぁ……?」

ヒカリ「どうなってるの……」

384: 2017/02/24(金) 22:17:06.75 ID:etwe8kYs0
ヒカリ「アスカ……。なにか悪いものでも食べたんじゃ?」

ケンスケ「もしかしてこれは……っ!」

トウジ「相田参謀! なにかわかったんか!」

ケンスケ「いかりぃ! 辛いな! 女心と秋の空って言うよなぁ!」

シンジ「……?」

ケンスケ「きっと心変わりしたんだよ! な⁉︎ そうだ――ぐへっ」ドサッ

アスカ「今のは殴るべきとこよね。……はぁ。なんだそんなこと。シンジのことは好きよ」

トウジ「す、好きってお前、シンジの前で……」

シンジ「あぁ、うん。ありがとう。アスカ」

ヒカリ「――えっ? 碇くん?」

アスカ「この話はこれでおしまい」

ヒカリ「えっ? でも、ちょっとっ」

アスカ「ま、ヤキモチばかりも妬いてられないしね」

385: 2017/02/24(金) 22:41:20.44 ID:etwe8kYs0
- 第三新東京都市 市街地 -

加持「ちょっと慌ただしくなってきたな」

マリ「そぉ? そんなこと感じないけど。平和な日々は心安らぐねぇ」

加持「刺激は好きだろう?」

マリ「むふふ。だぁいせぇかい♪」

加持「もう少し面白くしてやろうじゃないか?」

マリ「わぁぉ! それは誰に? ゲンドウくん? それともゼーレ?」

加持「さて、戦自なんてのはいかがな?」

マリ「なぁるほど~!」

加持「ちっと荒くなるかもしれないが」

マリ「――……面白いなら、いいっ!!!」

386: 2017/02/24(金) 23:29:47.57 ID:etwe8kYs0
- 第壱中学校 屋上 放課後 -

マナ「……はい……はい……あの、今日、登校してきました……はい……」

マナ「了解しました」

プツ

マナ「私がやらなくちゃ――」



マリ「なにを?」ヒョイ



マナ「わきゃぁっ⁉︎」

マリ「あれぇ~? そんなに驚かせちゃった?」

マナ「あ、あなた、い、いつから……」

マリ「いつからがい~ぃ? いや、それにしても名前が1文字違うだけって紛らわしいね」

マナ「……?」

マリ「どうしよっかなぁ~。なんて呼ぼう?」

マナ「――っ!」チャキ

マリ「おぉー。それ戦自の支給品かにゃ?」

マナ「う、動かないで! 動いたら撃つわよ!」

387: 2017/02/24(金) 23:37:51.61 ID:etwe8kYs0
マリ「……君、おもしろいね」

マナ「あなた! 一体何者! 名を名乗りなさい!」

マリ「それはちょっとできないな~。少年兵のお友達はいいのー?」

マナ「――な、なんでそれを知ってるの⁉︎」

マリ「ネタバラシってギリギリまで引っ張った方が面白くない?」

マナ「ふざけないでっ!」

マリ「父親は病院勤務ってことになってるけどそれはウソ。転勤もウソ。あれもこれも……」

マナ「う、撃つわよ!」

393: 2017/02/25(土) 15:47:11.77 ID:r4kmnMXP0
マリ「それ、USPだよね?」スタスタ

マナ「……動かないでって言ったわよ!」カチャ

マリ「40口径モデルかな。携行するにはちょっと大きすぎない? いつもどこに隠してるの?」

マナ「……っ」カチリ

マリ「手! 震えちゃってるじゃん! 肘はちゃんとあげてもっとよく狙わないとぉ~ブレちゃうよー」

マナ「な、なにを……ち、近づかないで」

マリ「手伝ってあげるよ」ヒョイ

マナ「(そんな、銃口を手で……⁉︎)」

マリ「狙うのは心臓? それとも頭かな? 確実性がほしいなら、ここ。苦しめたいなら、ああ、そんなことはどうだっていいね」

マナ「撃たないとでも思ってるのっ⁉︎」

マリ「ぜんぜん? しっかり撃って。狙うのは眉間にしておこっか♪  ――はい、どうぞ。後は引き金を引くだけ。あ、弾き方はわかる?」

マナ「くっ……あなた、な、なんなの……」

マリ「落ち着いてちょっと話したいだけなんだけどにゃー。どぉ?」

マナ「……わかった。だから、銃から、はやく手を離して」

マリ「ふふん♪ 協力してくれて嬉しいよー」

394: 2017/02/25(土) 15:56:56.40 ID:r4kmnMXP0
マナ「――……」ジー

マリ「そんな警戒しなくってもいいってぇ。ここから見る景色、綺麗じゃない?」

マナ「…………」

マリ「第三新東京市。別名、使徒迎撃専用都市。使徒がくるのわかってて人が住んでるって正気とは思えないけど♪」

マナ「…………」

マリ「独り言は得意だからいいけどさぁ。もうちょっと反応があってもいいんじゃん?」

マナ「……目的はなに?」

マリ「おぉー。単刀直入にきたねー。それじゃ、こっちも誠意を持って答えましょう♪ ズバリ、情報交換、しない?」

マナ「情報交換……?」

マリ「協力してくれるなら、お友達。なんとかしてあげてもいいよ?」

マナ「――ほ、ほんと?」

マリ「焦らない焦らない♪ まずはお互いの条件から提示しましょっか♪」

395: 2017/02/25(土) 16:06:03.79 ID:r4kmnMXP0
- 第三新東京市 市街地 -

加持「――やはり、ここもダミー会社か」

女「ええ……。これで何社目?」

加持「木を隠すなら森の中、と言うだろ。こちらの目を欺いてるのさ」

女「こちらの動きもかなり制限されてる。下手には動けない」

加持「ま、第三新東京市に住んでるのはほぼネルフ関係者だからな。まわり中敵だらけさ」

女「…………」

加持「直接、戦自に潜入する。仲間達にも伝えておいてくれ」

女「次のコンタクトは――」

加持「追って連絡する。銃を忘れるなよ」

女「了解」スタスタ




加持「――ふぅ。戦自もいいが、アスカが乗り越えたなら、次は、シンジくんだな」

396: 2017/02/25(土) 16:25:44.65 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 -

マヤ「シミュレーションプラグ。準備完了しました」

リツコ「はじめて」

マヤ「了解。テスト開始します」

オペレーター「A10神経接続、完了」

リツコ「――……これは?」

ミサト「どうしたの?」

マヤ「……? 01番。シンクロ率が上昇しません」

ミサト「居眠りしてるんじゃ?」

リツコ「シンジくん? ちゃんとリラックスして」

シンジ『はい』

リツコ「――マヤ?」

マヤ「駄目です。シンクロ率、25.3%。起動指数、ギリギリです」

ミサト「ちょっと、まずいんじゃないの?」

マヤ「昨日の使徒の時は75%だったのに……」

ミサト「どうなってるの? 火傷のせい?」

リツコ「いいえ。外傷は関係ない。……他の子は正常に計測されてる。シンジくんだけというのがおかしいわね」

ミサト「…………」

マヤ「あっ、待ってください! 01番、シンクロ率45%まで上昇!」

リツコ「……バグかしら」

ミサト「不安定なのは困るわ。原因。突き止めて」

397: 2017/02/25(土) 16:50:27.46 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 第三通路 自販機前 -

シンジ「ふぅ……」

アスカ「シンジ、どこか体調でも悪いの?」

レイ「…………」

シンジ「いや、そんなことはないんだけど」

アスカ「まぁ、そういう日もあるわよ」

シンジ「――最近、なんだか、デジャヴを感じることが多いんだ」

アスカ「……?」

シンジ「頭の中がモヤモヤしてるような、うまく言えないんだけど……そんな――うっ!」ズキンッ

アスカ「……シンジ? ちょっと! どうしたの⁉︎」


アスカ『バカシンジ!』


シンジ「(な、なんだコレ。アスカ? 早送りされてるみたいに景色が浮かびあがってくる……!)」


アスカ『加持さん。私、汚されちゃった。汚されちゃったよぅ……』

レイ『ひとつになりたいのは、私?』

○○○『……そうしなければ、人類が滅ぶことになる。さぁ、ボクを頃してくれ』


シンジ「――あ、アスカっ! 綾波っ! か、カヲ――!」


アスカ「……な、なに?」

レイ「……?」


シンジ「はっ、え――……?」

アスカ「シンジ、具合が悪いならミサトに――」

シンジ「いや、なんでも、なんでもない」

398: 2017/02/25(土) 17:16:11.97 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「シンジくん、具合はどう?」

シンジ「あ、いえ。なんとも」

リツコ「……そう。エヴァとのシンクロが不安定だったみたいだけど、なにか考え事?」

シンジ「…………」

リツコ「アスカのこと考えてたのかしら?」

シンジ「あぁ、いえ。そんなことは……」

リツコ「アスカから何か聞いたりはしてない? 例えば、エヴァのこととか」

シンジ「なにも、聞いてません……」

リツコ「質問を変えましょうか。アスカと寝た?」

シンジ「え、えぇ⁉︎」

リツコ「シンジくんはアスカと違って年頃の男の子ですもの。そういう欲求があるのは理解してるわ」

シンジ「そ、そんなことするわけないじゃないですか!」

リツコ「……そう?」

シンジ「そんなこと聞くの、おかしいですよ」

リツコ「シンジくん。いずれまわりにもわかることなのよ? だったら自分から言ってしまった方がいい」

シンジ「アスカとは……そんなんじゃ、ないですよ」

リツコ「……(口裏を合わせてるのかしら? なにかがあったのは間違いない。人の言うことを素直に聞くのが処世術だと思ってたけど)」

シンジ「……(なんで、こんなに、言いたくないんだろう)」



シンジ&リツコ「……(どうなってるのかしら(だろう))」

399: 2017/02/25(土) 17:27:07.54 ID:r4kmnMXP0
- 夜 ミサト宅 -

コトッ

アスカ「はい、シンジ」

ミサト「いやぁ~! アスカったらもう付きっきりじゃなぁ~い! シンちゃん、嬉しい?」

シンジ「あぁ、そうですね」

アスカ「――ミサト」

ミサト「もしかして2人はもうエOチしちゃったりしたのかしらぁ~? それともまだチューまで?」

アスカ「ミサト、それセクハラ」

ミサト「だっはっはっ! お姉さんにも聞かせないよ! 酒の肴にちょーどいいじゃない?」

アスカ「……はぁ。素直に言えば? シンジのシンクロ率の低下の原因。私たちにあると思ってるんでしょ?」

シンジ「そ、そうなんですか?」

ミサト「あらぁ~。バレてた?」

アスカ「遠回しにやるのが大人のやり方よね。それ、傷つけない配慮なのかもしれないけど、不信感を抱くだけよ?」

ミサト「……ごみん。でも、実際のところどうなのか思い当たるとこなら教えてほしいのよ」

アスカ「たった1度のことでしょう⁉︎ 次はうまくいくかもしれないじゃない⁉︎」

ミサト「使徒が来た時に起こってしまえば、1度が命取りになるわ」

シンジ「…………」

ミサト「エヴァに乗るのは子供の玩具でも、遊びでもないのよ」

アスカ「詰問するのが効果的とは思えないって言ってんのよ」

ミサト「…………アスカ、なんだか余裕ができたのね」

アスカ「そう? 今度は私を攻めることにしたの?」

400: 2017/02/25(土) 17:43:30.49 ID:r4kmnMXP0
シンジ「ちょっと、考え事をしてただけです」

ミサト「……その言葉に、嘘はない?」

シンジ「はい、だから、アスカを責めないでください」

ミサト「次のシンクロテストの結果、うまくいくといいわね」

アスカ「ミサトっ! いい加減に――!」ガタッ

シンジ「アスカ。いいんだ」

アスカ「…………」

ミサト「ごめんなさい。シンジくんはアスカが来るまではエースだった。だから、期待も大きいのかもしれない」

アスカ「私が倒してあげるわよ」

ミサト「アスカのシンクロ率は高いわ。前回の出撃の時はヒヤッとしたけど今日も安定してたしね」

アスカ「……(まぁ、あれでもシンクロしすぎないようにおさえてるんだけど)」

ミサト「だけど、一人で対処できない状況になった時、シンジくんの助けは必要よ。浅間山のこと、忘れてないわよね?」

アスカ「またそれ? 過去のことに過敏になりすぎよ」

ミサト「防衛本能はそれぐらいがちょうどいいのよ」

アスカ「はぁ、はいはい」

ミサト「とりあえず、この話は次のシンクロテストの結果がでるまでは忘れましょう。もしかしたら、本当にそういう日だっただけなのかもしれないし」

シンジ「…………」

ミサト「シンジくん。私は、私はあなたにはじめて会った時、あなたが初めてエヴァに乗った時、感動すら覚えたわ」

シンジ「………」

ミサト「何もわからない中学生が、よくわからないモノに乗ったんだもの。勇気も、そして守ってくれたことも賞賛してる」

シンジ「……はい」

ミサト「――私は、シンジくんのこと信じてるからね」

401: 2017/02/25(土) 18:02:57.46 ID:r4kmnMXP0
- ミサト宅 シンジ部屋 -

アスカ「はぁ。ミサトの言い方ってもうちょっとなんとかならないのかしら?」

シンジ「…………」

アスカ「まぁ、私たちはパイロットなんだし、言いたいこともわからなくないんだけど、いかにもプレッシャーかけてますって感じすんのよね」

シンジ「アスカ、なんだか、本当に変わったね」

アスカ「……本当は、シンジにいっぱい話たいことあるの」

シンジ「うん?」

アスカ「だけど、今は(誰が見てるかわからないから)話せない。ごめん」

シンジ「うん。いいよ」

アスカ「……シンジ、耳かして」

シンジ「なに?」


アスカ「今度は、どこでしよっか?」コショコショ


シンジ「……っ! あっ、あの……」

アスカ「ま、私はそう思ってるからってこと!」

シンジ「そ、そっか」

アスカ「だけど、意外。シンジ、私達のこと隠してるの? 私から言わないでって言ってなかったのに」コショコショ

シンジ「うん。なんとなく。アスカのことが大切だからかな――いつっ⁉︎」バチン

アスカ「だからさぁ! どうしてそういうこと言えるようになってんのよ!」

シンジ「し、仕方ないだろ! 本当にそう思ってるんだから!」

アスカ「な、な、な、な……(だ、だめ! ここで押し倒しちゃ! た、耐えるのよ!)」

402: 2017/02/25(土) 19:45:06.28 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 ??? -

委員会02「いかん。いかんよ。これは。由々しき事態だ」

委員会05「弐号機の覚醒はシナリオにない」

ゲンドウ「……これは不慮の事故です。電力が第三者に故意に落とされており、我々の制御下にありませんでした」

委員会06「君はコトの重大さがわかっているのかね。計画にどの程度の時と金をかけたか見当もつかん」

ゲンドウ「ご心配なさらずとも、弐号機は所詮デッドコピーです。オリジナルの初号機にはとるにたりません」

委員会03「しかし、ネズミは始末したのではなかったのか」

ゲンドウ「……想定外でした。背後に誰かついている可能性があります」

委員会02「弐号機の凍結は今はまだできない。量産計画が間に合わないからね。この責任、どう取るつもりかね?」

キール「――もうよい。碇。これまでの功績を評価し今回の失態は許そう。しかし、次はないぞ」

ゲンドウ「…………」

キール「命の選択を迫られているのは貴様も同じだ」

ゲンドウ「…………」






冬月「ふぅ……。これで我々も背水の陣というわけか」

ゲンドウ「わかっていたはずだ。世界を敵にまわすのは容易ではない」

冬月「全面的にぶつかり合うのは避けたいものだな」

ゲンドウ「やむを得ぬ場合は、それも仕方ない」

403: 2017/02/25(土) 20:09:11.67 ID:r4kmnMXP0
- 翌日 ミサト宅 -

アスカ「ふ~ふんふ~ん、よっと」

シンジ「アスカ、もうフライパンの扱いもお手の物なんだね」

アスカ「まぁね。もともと器用な私が凄いんだけど」

ミサト「臆せず自分を褒めるのはシンちゃんも見ならったら?」

シンジ「……そうですね」

アスカ「まぁ、シンジはシンジだし。なかなか変わらないところもあるんでしよ」

ミサト「おーおー。熱い熱い。なんだか部屋の温度が上がった気がするわー」

アスカ「またセクハラオヤジ化してる。ミサト、はやくネルフに行っちゃいなさいよ」

ミサト「もうちょっとしてから行くわよん。あ、それとシンジくんは少し学校遅れていくから」

アスカ「……シンクロテストさせるつもり?」

ミサト「まぁ、その、ね」

アスカ「私にも我慢の限界ってもんがあんのよ。ちょっとしつこすぎない?」

ミサト「安心できれば、もう口にはださないわ。今回だけは我慢して」

アスカ「……シンジ、大丈夫?」

シンジ「僕なら大丈夫だよ。シンクロできれば問題ないんだし。アスカ、先に学校行ってて」

アスカ「……わかった……」

404: 2017/02/25(土) 20:19:39.90 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「いらっしゃい、シンジくん、あとミサトも」

シンジ「……どうも」

ミサト「また徹夜?」

リツコ「まぁね。原因を特定できない限り、またいつ起こるとも限らないもの」

シンジ「あの、僕のせいで、すみません」

ミサト「シンちゃんは機械じゃないんだもの。リツコの仕事なんだし、そんなに気にしないで」

リツコ「ミサト? あなたもいい加減な人ね」

ミサト「シンジくんのことは、私が1番よくわかってるわ。昨日はちょっと体調が悪かっただけよ」

リツコ「医療スタッフでもないのに?」

ミサト「あら? シンちゃんと一緒のお風呂にもはいってるし、一緒のご飯だって食べてるわよん」

リツコ「今は彼、お風呂にはいれないでしょ? まさか、いれてるんじゃないでしょうね?」

ミサト「ものの例えよ」

リツコ「軽率な言動を碇司令が聞いたら、左遷されるわよ」

ミサト「なんでそこで碇司令がでてくるのぉ?」

リツコ「……っ! とにかく! 真面目にやって!」

405: 2017/02/25(土) 20:38:53.72 ID:r4kmnMXP0
カシャ


ミサト「リツコのラボに来客? めずらしー。マヤ――」

ゲンドウ「…………」

ミサト「い、碇司令っ⁉︎」ガタッ

ゲンドウ「…………」

シンジ「と、父さん」

リツコ「はぁ。申し訳ございません。テストは今から行います」

ミサト「す、すぐにとりかかりますっ!」ビシッ


ゲンドウ「…………シンジ」


シンジ「な、なに?」

ゲンドウ「昨日はシンクロが不安定だったと聞いたが」

シンジ「……あぁ、うん」

ゲンドウ「……やる気がないならば、エヴァから降りろ」

シンジ「――っ!」

ゲンドウ「そんな者は必要ない」

シンジ「……な、なんだよそれ。父さんが僕を呼びつけたんじゃないか」

ゲンドウ「…………」

シンジ「昨日はたまたま調子が悪かっただけだよ!」

ゲンドウ「不服ならば出ていけ。目障りだ」

シンジ「……くっ!」

ミサト「あ、あの、碇司令」

ゲンドウ「――葛城一尉。本日付けで三佐へ昇進だ。書面化して通達になる」

ミサト「えっ⁉︎ は、はっ! 了解いたしました!」

ゲンドウ「……以上だ」

406: 2017/02/25(土) 20:53:29.21 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 -

オペレーター「初号機パイロットエントリー準備完了しました」

リツコ「テストスタート」

オペレーター「テストスタートします。オートパイロット、記憶開始」

マヤ「了解。シミュレーションプラグを挿入」

オペレーター「システムを、模擬体と接続します」

マヤ「シミュレーションプラグ、MAGIの制御下に入りました」

リツコ「どう? シンジくん、なにか違和感はある?」

シンジ『……いえ、なにもありません』

ミサト「さっきの碇司令とのやりとり、影響がないといいけど」

リツコ「この親子はいつものことでしょ」

ミサト「だけど、精神面に関与してるなら影響ないの?」

リツコ「そうね……とりあえず、結果を見ましょう。マヤ、プロセスは?」

マヤ「問題ありません。測定解析、進んでいます。シンクロ率の上昇も順調です」

リツコ「やっぱり、バグだったのかしら」

ミサト「理由は機械じゃ、シンジくんになんだか申し訳ないわね」

リツコ「確定したわけではないわよ。ブラックボックスはまだまだ不特定な部分が多い」

マヤ「シンクロ率、52.3%」

リツコ「昨日のテストよりはいいけれど、70%には届きそうにない?」

マヤ「まだはじまったばかりですから……」

リツコ「では、検証を続けて――」

407: 2017/02/25(土) 21:07:12.15 ID:r4kmnMXP0
- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

アスカ「……はぁ」

ヒカリ「アスカ? どうしたの?」

アスカ「うん? なんだか、エヴァパイロット、やめたくなっちゃってさぁ」

マナ「――え?」

アスカ「だってさぁ、事あるごとに言われるのよ? 私達の年齢わかってるのかしらね」

トウジ「まぁ、ミサトさん達も苦労があるんやろ」

アスカ「でもしわ寄せがきてるのは私達なのよ? 子供だからってことだけじゃないのはわかってるけどさ」

ケンスケ「……まぁ、たしかに、そうだよなぁ」

マナ「……アスカたちも色々、あるんだね」

アスカ「マナだってそう思う時ないの?」

マナ「え? わ、私は――」

アスカ「子供に何を背負わせてるのって。そう思うことないの?」

マナ「――っ⁉︎ あ、アスカ⁉︎」

ヒカリ「……?」

アスカ「みんな、いろいろ、あるわよね」

マナ「……っ!あの、アスカ。少し話したい」

アスカ「私も話さないといけないと思ってたわ」

トウジ&ケンスケ「…………はぁ?」

408: 2017/02/25(土) 21:31:11.46 ID:r4kmnMXP0
- 第壱中学校 屋上 -

マナ「――アスカは、この間の人と知り合い?」

アスカ「(ここは話を合わせておいた方がいいわね)……そうだけど?」

マナ「確認をとるように言われたの?」

アスカ「直接言われたわけじゃない。ただ、どう思ってるのか確認したかったのよ」

マナ「そんなに簡単な決断じゃないよ」

アスカ「…………」

マナ「ムサシもケイタも救いたいっ! だけど、危険が大きいじゃないっ!」

アスカ「…………」

マナ「うまく逃げられたとしても私達の今後の生活はどうなるの⁉︎」

アスカ「後ろ盾があれば、いいってこと?」

マナ「不安なんだもん! ケイタやムサシが氏んじゃったらって!」

アスカ「(いまいち見えてこないわね)」

マナ「……シンジくんは信用できるの?」

アスカ「シンジ? もちろん、信用できるわよ」

マナ「本当にシンジくんが守ってくれるの⁉︎」

アスカ「(――はぁ?)」

マナ「シンジくんなら、できるって話だったじゃない⁉︎」

アスカ「……そうね。シンジなら、可能だわ」

マナ「――……わかった。戦略自衛隊の人達は信用できない。あなた達に賭けてみる」

アスカ「それで?」

マナ「もうすぐ、ロボットは、試運転にはいります」

アスカ「(ロボット?)」

マナ「パイロットには――ッ」



ゴオォォォォッ――



アスカ「うるさっ! なに? 戦闘機?」

マヤ「そんなっ⁉︎ まだ早すぎる!」

アスカ「えっ――?」

409: 2017/02/25(土) 21:49:43.41 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 発令所 -

マコト「厚木基地方面より、正体不明のアンノウン体が出現!」

ミサト「使徒⁉︎」

シゲル「パターン照合! 違います! 使徒ではありません!」

冬月「……また、厄介ごとか」

ゲンドウ「…………」

ミサト「使徒じゃないなら、私達の出番ではない、わね」

リツコ「そうも言ってられないみたいよ?」

ミサト「――え?」

マコト「戦自より出撃翌要請が来ました!」

ミサト「なんですって――⁉︎」

ゲンドウ「……初号機をただちに出撃させろ」

ミサト「し、しかし、我々の管轄外では⁉︎」

ゲンドウ「構わん。貸しは作っておいた方がいい」

ミサト「りょ、了解!」

410: 2017/02/25(土) 21:58:36.63 ID:r4kmnMXP0
- 初号機 エントリープラグ内 通信 -

ミサト『シンジくん、アスカもレイも学校に行ってて間に合わないわ。今回は1人だけで出撃になる』

シンジ「了解。目標は?」

ミサト『情報が錯交しているの。とりあえず、現場に向かって、進行を止めて。できる?」

シンジ「進行を止めるって、ただ、止めればいいんですか?」

ミサト『そうね。できれば無力化してほしいとこだけど、あとは現場の判断で臨機応変にいきましょ』

リツコ『シンジくん。目標は御殿場市方面に向かっている。エヴァの電源はそこまでは届かないのよ』

シンジ「……それじゃ、どうすれば」

ミサト『目標の位置ははっきりとしている。だから迷うことはないわ。電源供給ラインを超えたらアンビリカルケーブルを切断して最速で走って』

シンジ「了解」

リツコ『マヤ、初号機のシンクロ率は?』

マヤ『55%! 行けます!』

ミサト『さあ、シンちゃん、ひさびさの1人舞台よ!』

シンジ「(今は……余計なことは考えずに……)」

411: 2017/02/25(土) 22:08:52.32 ID:r4kmnMXP0
- 第壱中学校 屋上 -

マナ「そんな! ケイタァっ!」

アスカ「ちょ、ちょっと、なにがどうなって!」


『緊急警報、緊急警報、住民の皆さんは直ちにシェルターに避難してください』


アスカ「なんで⁉︎」

マナ「………うっ………ぐすっ……」

アスカ「ちょっとあんた! 泣いてちゃわからないじゃない! ってそんなこと言ってる場合じゃなかった、ネルフに急が――」

マナ「シンジくんが助けてくれるんでしょ⁉︎ 本当なのよね⁉︎」ガシッ

アスカ「ちょ、離しなさいってば――」


ガチャ


レイ「……あなた、何してるの」

アスカ「ファースト?」

レイ「緊急招集。碇くんが、初号機でもう出てる」

アスカ「シンジが⁉︎ シンクロは問題なかったのね!」

レイ「……先、行くから」

アスカ「わかったわ! 私もすぐにって! ちょっと!いい加減離して!」

マナ「――私もっ! 私もネルフに連れてって!」

412: 2017/02/25(土) 22:35:32.68 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 発令所 -

マコト「目標は高速で移動中! 移動速度は、マッハを超えています!」

ミサト「市街地への進入は被害拡大に繋がるわよ。シンジくん。目標の位置をデータで送るわ」

シンジ『了解!』

リツコ「急いでシンジくん。エヴァでも追いつけなくなる」

マヤ「初号機、電源供給ラインを超えます」

ミサト「アンビリカルケーブル切断」

シゲル「アンビリカルケーブルの切断を確認! 内部電源に切り替わります!」

ミサト「加速、開始」

マコト「初号機! 加速状態にはいりました! 速度上昇中! 目標を追跡中!」

シンジ『ミサトさんっ!! これじゃ追いつけない!』

シゲル「目標の速度がはやすぎます! 到達予定時刻、内部電源では間に合いません!」

ミサト「………くっ!」

マコト「厚木基地より再度入電! 目標はできるだ現状維持してほしいとのこと!」

ミサト「なに勝手なこと言ってんのよ! 戦自は!」

シンジ『ぐぅううぁぁぁっ!!』

マヤ「初号機の速度上昇! 初号機もマッハを超えました!」

ミサト「間に合う⁉︎」

リツコ「間に合った所で、電源もなしにどうやって止めるの?」

ミサト「手詰まりじゃない!」

ゲンドウ「……初号機は一旦停止。戦自には現状をそのまま伝えろ」

ミサト「しかし、よろしいんですか?」

ゲンドウ「出撃したという事実があればいい」

ミサト「了解! シンジくん――」

413: 2017/02/25(土) 22:45:57.61 ID:r4kmnMXP0
- 初号機 エントリープラグ内 通信 -

ミサト『シンジくん? 聞こえる? 残念だけど、追いつけそうにないわ!』

シンジ「――えっ⁉︎」

ミサト『初号機は戻って。また要請があれば、手を考えましょう!」

シンジ「そんな⁉︎ だってまだ、なにもしてないじゃないですか!」


ドクンッ


シンジ「(うっ、頭が……っ)」ズキンッ


ミサト『アスカ達も合流するから! きっと手はあるわよ!』


ドクンッ


シンジ「(なんだ、コレ。なんなんだよコレ)」ズキンッズキンッ


ミサト『シンジくん? 止まって!』

マヤ『初号機! さらに加速!』

ミサト『シンジくん⁉︎ どうしちゃったのよ⁉︎ シンジ――』


ドクンッ


シンジ「なんでいつも僕たちばっかりこんな目に」

シンジ「…………アスカを、綾波を、カヲルくんを………」

シンジ「みんなを、返せッッ!!!」

414: 2017/02/25(土) 23:02:56.39 ID:r4kmnMXP0
- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「初号機! 通信切断!」

ミサト「どうなってるの? おかしいところなんて特になかったわよ!」

ゲンドウ「ただちに停止信号をおくれ」

マヤ「了解! 停止信号……ダメです! 受けつけません!」

マコト「初号機! シンクロ率が上昇しています!」

リツコ「なんですって⁉︎」

ゲンドウ「プラグを強制射出しろ」

マヤ「――そんな⁉︎ こちらからの指揮系統を全て拒否⁉︎」

リツコ「そんなこと! ありえないわ!」

マコト「凄まじい速度です! 初号機、アンノウン体と接近! みるみる距離を縮めています!」

冬月「……暴走か?」

ゲンドウ「…………」

マヤ「初号機、活動限界まで1分を切りました! これ以上の追撃は危険です!」

ミサト「まったく! 浅間山からの復帰戦がコレ⁉︎ 」

リツコ「あの時とは状況が違うわ! こちらからの操作を全て受けつけないなんて!」

マコト「――目標と間もなく接触します!」

ミサト「どうするつもり? ――シンジくん」

マヤ「初号機⁉︎ 速度緩めません!」

リツコ「なるほど、体当たりするつもりね」

マヤ「し、しかし、マッハを超える速度で体当たりすれば衝撃が……!」

415: 2017/02/25(土) 23:22:45.50 ID:r4kmnMXP0
シゲル「初号機からATフィールドの発生を確認!」

ミサト「ATフィールド⁉︎ 相手が使徒じゃないと有効じゃないんじゃ⁉︎」

リツコ「……そんなことはないわ。無機物にも有効よ」

シゲル「こ、これまでにない! 強力な磁場が発生!」

ゲンドウ「発生源は……」

冬月「初号機だろうな」

マヤ「初号機! 目標と接触!」

ミサト「ど、どうなるの?」

マコト「――初号機に強い衝撃がくわわりました!」

ミサト「それだけ⁉︎ 目標は⁉︎」

シゲル「目標、速度低下! 推進力を失った模様!」

マヤ「初号機! 活動限界まで5.4.3.2――」

ミサト「――どうちゃったのよ、シンジくん」

リツコ「今回は、処置なしとはいかないわよ」

416: 2017/02/26(日) 00:23:10.42 ID:FmKNp9rU0
タタタッ

アスカ「はぁっはあっ……ミサトッ! シンジは⁉︎」

レイ「……ふぅ……ふぅ……」

マナ「………はぁ……はぁ……」

ミサト「アスカ、レイ? 部外者を勝手に発令所に――」

アスカ「私が連れてきたのよ! 目標は⁉︎ シンジはどうなったの⁉︎」

ミサト「……目標は停止したわ。シンジくんは、初号機は活動限界で停止してる」

マナ「あのっ! 目標は、大丈夫なんですよね?」

ミサト「日向くん、どう?」

マコト「信号が消えていないことからも、おそらくはたいして損害はないと見受けられます」

マナ「よ、よかったぁ」

ミサト「あなた、どちら様?」

アスカ「私の友達」

ミサト「へぇ……」

リツコ「ミサト、今はそっちよりもシンジくんよ」

ミサト「回収班をすぐに派遣して。戦自はなにか言ってきてる?」

シゲル「管制塔より連絡あり。協力を感謝する、正体不明機は我々で回収するとのことです」

ミサト「ふざけてるわね。こっちには一切情報をよこすつもりないの……」

ゲンドウ「無人機を飛ばせ」

ミサト「了解。UAVをすぐに手配して、それと衛星からの地上写真も」

アスカ「ちょっと待って……シンジになにかあったの?」

ミサト「少なくとも営倉入りになる命令違反はあったわね」

アスカ「はぁ⁉︎ なんでそんなことになってんのよ⁉︎」

420: 2017/02/26(日) 22:30:46.69 ID:FmKNp9rU0
- ネルフ本部 医務室 -

ミサト「シンジくんの容体は⁉︎」

リツコ「検査結果はなにも問題ないわよ」

ミサト「……ふぅ……碇司令からは、なにかあった?」

リツコ「今の状態を伝えたら、処置なしと判断されたわ」

ミサト「ん? ちょっとひっかかる言い方ね。検査に問題はなかったんでしょ?」

リツコ「外傷、及び疾病の心配はないと言ったつもりだけど?」

ミサト「……それじゃ、他に問題があるってこと? もしかして精神的なやつ?」

リツコ「遠からずも近からずと言ったところかしらね」

ミサト「もったいぶるじゃない、私は監督者なのよ。いい加減教えなさいよ」

リツコ「シンジくんのことを1番理解しているんでしょ? 当ててみたら?」

ミサト「ぬぐ……っ! あんた、変なところで根に持つわね」

リツコ「すぐに改善できるような症状ではないもの。ミサトで少し遊んでるだけよ」

ミサト「……シンジくんでしょ? だったら、また、乗りたくなくなったとか?」

リツコ「はずれ」

ミサト「……わかったっ! 命令違反で営倉にはいるのを怖がってるとか!」

リツコ「それもはずれ」

ミサト「ん、んん~」

リツコ「……ふぅ。あなた、それでよくシンジくんのこと1番わかってるなんて言えたものね」

ミサト「じゃあなんなのよぉ」

リツコ「シンジくんは――」

421: 2017/02/26(日) 22:44:36.94 ID:FmKNp9rU0
- ネルフ本部 女子ロッカールーム -

アスカ「――シンジが記憶喪失ぅ⁉︎」

ミサト「……みたいなのよねぇ」

アスカ「みたいなのよねぇってちょっと⁉︎ そんなにノンビリ構えてる場合⁉︎」

ミサト「私としても困惑しっぱなしなのよ~」

レイ「……碇くんは、どこまでの記憶があるんですか?」

ミサト「リツコによると、エヴァに乗る時、第三新東京都市に来てからの記憶がすっぽりと抜け落ちてるみたい」

アスカ「そんな⁉︎ それじゃ私のこともまったく覚えてないの⁉︎」

ミサト「う~ん、まぁ、そうなっちゃうわよねぇ」

マナ「…………そんな、シンジくんが」

ミサト「とにかく、これからやらなければいけないことが山積みだわ。シンジくんのシンクロテストもそうだけど、戦自の正体不明機のことも気になるし」

マナ「あの、そのことなんですけど……」

ミサト「うん? そういえば、あの時、あなた無事かって言ってわよね」

マナ「はい。私、霧島マナといいます。実は、あの正体不明がなにか知っています!」

ミサト「……詳しく聞かせてもらえるかしら」

マナ「はい、かまいませんけど、あの、安全は保障してもらえますか?」

ミサト「まずは内容を聞いてみないとなんとも。ただ、有用であった場合は出来うる限りのことは協力させてもらうわよ」

アスカ「……そんな、シンジが記憶喪失だなんて」

ミサト「――アスカ? 大丈夫?」

アスカ「シンジに会いに行く! 今は医務室よね⁉︎」

ミサト「いいけど……覚えてないの見てもショック受けないでね?」

アスカ「思い出させてやるわよ!」


422: 2017/02/26(日) 23:02:38.84 ID:FmKNp9rU0
- ネルフ本部 医務室 -

アスカ「シンジッ!」

シンジ「……?」

アスカ「大丈夫なの⁉︎」

シンジ「……平気、だけど」

アスカ「……あれ? なんだ、いつもと変わらない――」

シンジ「あの、部屋間違えてませんか?」

アスカ「……っ⁉︎ うそ⁉︎ 本当に忘れちゃったの⁉︎」

シンジ「えっと……?」

アスカ「私よ! 私のこと本当に覚えてないの⁉︎」

シンジ「あの、僕と、どこかで会ったことあった?」

アスカ「――……そ、そんなっ」

シンジ「……?!」


ガチャ


レイ「……碇くん」

シンジ「また? えーと、名前知ってるみたいだけど、どちら様ですか?」

レイ「…………」

アスカ「……ファースト」

レイ「……なに?」

アスカ「ミサトは?」

レイ「転校生と話をしてる」

アスカ「そ。それじゃ、私ミサトのところに行くから」

レイ「碇くんは、もういいの?」

アスカ「どうしてこうなったのか聞かなきゃおさまりつかないでしょ!! あったまきてんのよっ!!!」ガンッ

シンジ「ひっ⁉︎」

レイ「…………」


423: 2017/02/26(日) 23:16:08.98 ID:FmKNp9rU0
- ネルフ本部 女子ロッカールーム -

ミサト「つまり、あの正体不明機は戦自が秘密裏に開発したロボットってこと?」

マナ「はい……」

ミサト「ふぅん。でも、一体なんの為に?」

マナ「ネルフへの、対抗兵器なんだと思います。私が聞いた話だと、エヴァじゃなくても使徒と戦えるという話でした」

ミサト「……ま、使徒がきてから戦自はいつも尻拭いだもんね」

マナ「そのパイロットが、私の友人のムサシとケイタです」

ミサト「今回のは暴走か、なんらかの不都合が起きたと見ていいのかしら?」

マナ「おそらくは。テスト試行は近々行われる予定でしたが、本格的な実用化はまだまだ先の話で……」

ミサト「先っていうと、どれぐらい」

マナ「6年後、だったと思います」

ミサト「6年⁉︎ なんとも気の長い話ねぇ~」

マナ「……ですから、パイロットも20歳になるのを想定して現在14歳の両2名が選出されました」

ミサト「まるきり一般人てわけでもないんでしょ?」

マナ「はい。2人は少年兵で。もともと、志願して乗っています」

ミサト「でも、マナちゃんは2人を助けだしたいの?」

マナ「大人たちに都合のいいように利用されてるだけなんですっ! だから目を覚ませないとっ!」

ミサト「……なるほど」

マナ「……あの、どうにか、できそうですか?」

ミサト「ちょっと話が大きすぎて、私じゃなんとも言えないわね……」

424: 2017/02/26(日) 23:27:40.16 ID:FmKNp9rU0
カシャ


ミサト「あら、アスカ。 シンちゃんどうだっ――」

ガンッ!!!

マナ「っ⁉︎」

アスカ「……ミサト」

ミサト「なぁに?」

アスカ「今すぐ経緯を話すか殴り合いをするかどっちがいい?」

ミサト「人を頃しそうな迫力ね」

アスカ「望まれればやるわよ。我慢なんかとうに終わってるわ」

ミサト「……わからないって言ったら?」

アスカ「――っざけんじゃないわよっ!! シンジをどうするつもり⁉︎」

ミサト「とりあえず、経過を見るとしか言えないわね」

アスカ「はぁ? 経過を見てそれで記憶が戻るの⁉︎ もっと具体的な対策案がなにかあるでしょ⁉︎」

ミサト「赤木博士からは、すぐに戻るような状況ではないと聞いているわ」

アスカ「ネルフってそんなに無能なの⁉︎ 一流の大学出た秀才達が集まってんでしょ⁉︎ そんな奴らの見解がそれ⁉︎」

ミサト「……アスカ。わめいてもシンジくんの記憶は戻らないわよ」

アスカ「嘆いてんのよ! あんた達のあまりの頼りにならなさに!!」

ミサト「…………」

アスカ「……シンジをかえして……」

ミサト「……シンジくんはいるわよ……」



アスカ「シンジを返しなさいよっ!!!」ガンッ!!

425: 2017/02/26(日) 23:48:00.31 ID:FmKNp9rU0
- 帰宅中 -

アスカ「…………」テクテク

マナ「……あの、アスカ」テクテク

アスカ「…………」ピタッ

マナ「わっ」

アスカ「あんた、ミサトに話てよかったの?」

マナ「えっ?」

アスカ「ミサトに話するってことはネルフに話が通るってことよ?」

マナ「え? ――あの、そういう手はずだったはずじゃ?」

アスカ「……詳しく聞きたいけど、監視されてるかも」

マナ「あ、うん。そうよね」

アスカ「歩きながらでいいわ。あんたに話をしたのはメガネでいいわよね」テクテク

マナ「うん。メガネはかけてた」

アスカ「そいつと何か、計画したの?」

マナ「折り合いがついたら、やることを指示されてたの。アスカにネルフに連れていってもらったのもそれが理由」

アスカ「……それならそうと最初から言いなさいよ」

マナ「あの時は、私も気が動転してて……」

アスカ「シンジについては?」

マナ「シンジくんが私達を守ってくれるって、それだけ」

アスカ「……ふぅん」

マナ「あの、シンジくんは、記憶、取り戻せるよね?」

アスカ「取り戻せるわ。取り戻してもらわなきゃこまる」

マナ「……よ、よかった……私も安心できるし……」

アスカ「あんた、シンジのこと心配してるわけじゃないのね」

マナ「あ、ごめん……そんなこと、ないんだけど……」

アスカ「(あのメガネは次いつ現れるのよ⁉︎)」

426: 2017/02/27(月) 00:02:09.69 ID:zHGVZawt0
- 翌日 第壱中学校 ホームルーム前 -

トウジ「記憶喪失ゥ~⁉︎」

ケンスケ「そんな漫画みたいなこと本当にあるのかぁ?」

アスカ「……そうよ」

ヒカリ「碇くん、大丈夫なの?」

アスカ「うん……。外傷はとくにないから」

ヒカリ「アスカ……。辛いね」

アスカ「ありがと。ヒカリ」

トウジ「センセも火傷の次は記憶喪失とか、ほんまエヴァパイロットっちゅーもんは大変やのぉ!」

ケンスケ「記憶は戻りそうなのか?」

アスカ「まだなんとも言えない。でも、取り戻すわよ。私はそう信じてる」

トウジ&ケンスケ&ヒカリ「…………」

アスカ「ま、そういうわけだから。シンジが登校してきてもあんた達、いつも通りやんなさいよ」

トウジ「登校してきて大丈夫なんか?」

アスカ「午前は検査で、今日の昼から来るわよ」

427: 2017/02/27(月) 00:14:16.25 ID:zHGVZawt0
- 第壱中学校 昼休み -

ガラガラ

シンジ「…………」キョロキョロ


アスカ「……っ!」

ヒカリ「あ、い、いかり――」

アスカ「ヒカリ、黙って」

トウジ「なんや、話かけんのかいな?」

アスカ「……覚えてないのが嫌なのよ」

トウジ「シンジはシンジやろ! まったく! よー見ておけ!」ガタッ

ケンスケ「お、おい、トウジ――」


スタスタ


トウジ「よっ! シンジ!」

シンジ「……?」

トウジ「昼から出勤とは社長顔負けやなー! 記憶なくしたって聞いとるが?」

シンジ「あぁ、ってことは、僕が記憶をなくす前の知り合い?」

トウジ「……まぁ、そんなとこや。登校してきて大丈夫なんか?」

シンジ「うん。日常生活の中で思い出すことがあるかもしれないからって赤木博士が」

トウジ「さよか」

シンジ「あの、僕の席ってどこかな?」

トウジ「あぁ、それならあそこやで」

シンジ「ありがとう」

トウジ「なぁ、ほんまにワシたちのこと忘れてしもうたんか?」

シンジ「……うん。ごめん」

トウジ「そうかぁ……。まぁ、そゆこともあるやろ」

シンジ「なかなか、ないと思うけど」

428: 2017/02/27(月) 00:22:35.56 ID:zHGVZawt0
トウジ「…………」チラッ


アスカ&ヒカリ&ケンスケ「…………」ジー


トウジ「(あいつら、そんなに気になるなら話かければええのに、せや!)」

シンジ「……あの、まだなにか用?」

トウジ「なぁ、シンジ。記憶てどこからがないんや?」

シンジ「あ、うん。えっと数ヶ月前からなんだけど。えーと、たしか第三新東京都市にきてすぐから」

トウジ「それなら、シンジに彼女がおるのも覚えないんか?」

シンジ「えぇ⁉︎」

トウジ「ちなみに今も熱々で、昼休みになるといつも一緒に食べてたぐらいなんも?」


アスカ&ケンスケ&ヒカリ「……っ!」ガタッ


シンジ「そんな人が僕にいたの?」

トウジ「誰か知りたいか? ちょい耳貸せ」コショコショ

シンジ「――あっ。そうなんだ」

トウジ「声かけたれ。きっとあいつも待っとるからの」

429: 2017/02/27(月) 00:37:54.88 ID:zHGVZawt0

スタスタ


アスカ「こ、こっちに来るわよ」

ヒカリ「(鈴原にしてはいいことやったかも)」

ケンスケ「よっ。碇。こっちこっち」

シンジ「あっ……。ここでいいんだね」

ケンスケ「記憶喪失とは大変だったな。俺は相田ケンスケって言うんだ」

シンジ「僕は、って、自己紹介の必要はないのか」

ケンスケ「こっちに用があったんだろ?」

シンジ「あ、うん。実は僕に彼女がいるって聞いて」


アスカ「彼女って私、まだ付き合ってるって言ってないのに」コショコショ

ヒカリ「いいじゃないアスカ。碇くんがこうして来てくれたんだもの」コショコショ


シンジ「ええと、あの、うまく言えないんだけど」

アスカ「……ふん、どうせあんたの――」


シンジ「心配かけてごめんね。洞木さん」


ヒカリ「へぇっ?」

アスカ「……ヒカリ?」


シンジ「僕、記憶なくなっちゃったけど、その、なんとかやるから」スッ

ヒカリ「へ? あの? い、碇くん? やだ、手」

アスカ「…………」パクパク

シンジ「どうしたの?」


トウジ「――なはははっ! 大・成・功!」

シンジ「……?」

ヒカリ「すぅ~~~ずぅ~~はぁ~らぁ~~っ!!」

アスカ「あんたの人生も今日で終わりね」

トウジ「なはは……は……なんや。冗談にマジになるなや!」

ヒカリ「やっていいことと悪いことがあるでしょう! 碇くんを騙して!」

ケンスケ「案外、委員長もドキッとしてたりして?」

ヒカリ「な、何言ってるのよ!!」

アスカ「ヒカリ、こいつらそろそろ一度きついのが必要だと思わない――?」

430: 2017/02/28(火) 01:00:51.66 ID:u+wDA+/70
- ネルフ本部 ??? -

冬月「どうなることかと思ったが、我々にとっては良い結果だな」

リツコ「はい。シンジくんの記憶がなくなったことでアスカとの関係がなかったことになったのは僥倖と言えます」

冬月「やはり、あの2人になにかあったのは間違いないのかね?」

リツコ「間違いないかと。報告によるとクラスでも付き合っていると噂になっていたそうですわ」

ゲンドウ「子供の情報収集には子供が一番ということか」

リツコ「一概には言えませんが、往々にして距離感が近い者同士が打ち解けやすいのはたしかです」

冬月「この機会を逃す手はないな。今のうちにレイを近づけるべきか……」

リツコ「手を打ちますか?」

ゲンドウ「ああ……。邪魔がはいらないように警戒をしろ」

リツコ「承知いたしました」

431: 2017/02/28(火) 01:11:06.35 ID:u+wDA+/70
- シンジ 夢の中 -

シンジ(少年)『キミは誰?』

シンジ「碇シンジ。君は?」

シンジ(少年)『ボクもシンジだよ』

シンジ「違うっ! 僕がシンジだ!」

シンジ(少年)『ボクのこと認めるのがこわいんだね』

シンジ「な、なに言ってるんだよ……」

シンジ(少年)『失敗するのがこわい? 自分が傷つくのがこわいんでしょ?』

シンジ「違う。こわくなんかない。僕はもう、逃げないって決めたんだ」

シンジ(少年)『今も逃げてるじゃない』

シンジ「誰から?」

シンジ(少年)『自分から。ボクから。アスカから。綾波から。父さんから。まわりから』

シンジ「違う。逃げてないんだっ!」

シンジ(少年)『逃げてちゃ、守れないよ』

シンジ「逃げてない! 逃げてないんだよ!」

シンジ(少年)『見たくないものは見ない。それもいい。だけど、見なくちゃいけない時がある』

シンジ「なんなんだよお前! 僕の話を聞けよ!」

シンジ(少年)『僕はキミだよ。話を聞いてないのはキミ』

432: 2017/02/28(火) 01:20:55.22 ID:u+wDA+/70
シンジ(少年)『ボクは、子供じゃいられない。まわりが許してくれないんだ』

シンジ「うるさいっ! もうやめてくれよ!」

シンジ(少年)『子供でいたいんだね。なにもわからないふりして、見ないふりしたいんだね』

シンジ「うるさい、うるさい、うるさい! みんな守ってみせる! それでいいじゃないか!」


シンジ(少年)『クスクス。それはできない』パチン


アスカ『シンジ! 私を助けて! ひっ⁉︎』グシャァ

レイ『碇くん! 助けて……‼︎』グシャァ


シンジ「そ、そんなっ⁉︎ アスカッ⁉︎ 綾波⁉︎」


シンジ(少年)『自分を守りたいの?』

シンジ「僕は……僕は……」

シンジ(少年)『見たくないモノから、逃げてちゃだめだ』

シンジ「……ぐっ……なんで僕ばっかりこんな目に!! 見たくないモノを見なくてなにが悪いんだよぉッッッ!!!」


433: 2017/02/28(火) 01:38:47.24 ID:u+wDA+/70
- 第三新東京市立第壱中学校 授業中 -

シンジ「――……はっ!」ガタガタッ

先生「……授業中に居眠りとは、関心しませんな」


クスクス


アスカ「(あのバカっ! なにしてんのよ)」

シンジ「あ……えっと、す、すみません」

先生「授業をすすめてもよろしいですかな?」

シンジ「どうぞ……」スッ

トウジ「センセが居眠りとはめずらしいのー」コショコショ

シンジ「そ、そうかな」

トウジ「なんや? すごい汗かいとるやないか。顔色悪いが、大丈夫か?」

シンジ「いや、なんでもない……えっと、鈴原くん」

トウジ「――トウジや。鈴原くんなんてやめぇ」

シンジ「あっ、ごめん。その、後で記憶の無くなる前の僕のこと教えてもらっていいかな」

トウジ「お安い御用や。ケンスケも一緒に話した方がよさそやな」

ケンスケ「おい、トウジ! 先生が見てるぞ!」コショコショ

トウジ「おぉ、わかった」

434: 2017/02/28(火) 02:03:56.21 ID:u+wDA+/70
- 第三新東京市立第壱中学校 放課後 -

トウジ「おまっとさん」

ケンスケ「よいせっと」

アスカ「…………」むっすぅ

ヒカリ「あはは……」

マナ「…………」

シンジ「あの、こんなに?」

トウジ「まぁ、知っとる人間は多い方がええやろ」

ケンスケ「綾波も誘ったんだけどさぁ」

シンジ「あっ……えっと、綾波さんも仲が良かったの?」

トウジ「うん? まぁ、そやなぁ。他に比べたらセンセはダントツちゃうか」

シンジ「そうなんだ……」

アスカ「シンジ! なんで居眠りなんかしたの⁉︎」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ……」

シンジ「えーと、惣流さんでいいのかな」

アスカ「ちがっ……!」

ヒカリ「アスカって呼んでたよ! 前の碇くん!」

シンジ「あっ、そうなんだ。ごめん。アスカさん」

アスカ「……っ!」

ヒカリ「アスカ……」

トウジ「まぁ、シンジも悪気があるわけやない。記憶がないんや」

ケンスケ「僕たちがいつも通りにしてやらなくちゃなぁ」

トウジ「せや。ゴリラ女もホームルームの時そう言っとったやろ」

435: 2017/02/28(火) 02:11:55.14 ID:u+wDA+/70
シンジ「なんか、色々気を使わせてるみたいだね……」

マナ「あの、シンジくん?」

シンジ「えぇと」

マナ「あ、私、霧島マナっていうの。マナって呼んで」

シンジ「……ごめん。霧島さんも僕と仲良かったの?」

マナ「……うぅん。私、そんなに話したことないの。知り合って間もなかったから」

シンジ「へぇ」

マナ「だから、私だったらフラットに話せると思う。みんなもいい? 足りなかったら補足してくれる?」

トウジ&ケンスケ&アスカ&ヒカリ「…………」コクリ

シンジ「……ありがとう。それで、記憶のなくなる前の僕なんだけど」

マナ「うん。シンジくんはエヴァっていう乗り物のパイロットなのはもう知ってる?」

シンジ「赤木博士からそう聞いた」

アスカ「前のシンジはリツコさんって呼んでたわよ」

シンジ「そうなんだ……。呼び方まで、って、それはそうか」

アスカ「…………」

マナ「は、話を続けるね? それでエヴァのパイロットとしてみんなから頼りにされてたの」

436: 2017/02/28(火) 02:21:57.21 ID:u+wDA+/70
シンジ「頼りに? 僕が?」

マナ「エヴァのパイロットはみんなの生活を守ってくれてるんだもの。友達としても、もちろんだけど」

シンジ「なんだか、実感がわかないや」

マナ「使徒っていう宇宙からきてる怪獣をもう何体も倒してるんだよ?」

シンジ「それも僕が?」

アスカ「私も殲滅してるけど、半分以上はあんたの手柄ね」

トウジ「日本中から電力かき集めたのもあったなぁ」

ケンスケ「ヤシマ作戦だろ? 僕たちも参加した」

ヒカリ「うん……」

マナ「ね? 少なくとも嘘じゃないっていうのは、わかる?」

シンジ「うん、まぁ……」

マナ「シンジくんは、ネルフに通いながら学校生活を送ってたの」

トウジ「この場合、どっちが本業なんやろな?」

ケンスケ「両方だろ」

437: 2017/02/28(火) 02:31:04.30 ID:u+wDA+/70
マナ「それで、その内に、ここにいるみんなと仲良くなっていったの」

シンジ「僕ってどういう性格だった?」

トウジ「まぁ、そやなぁ、一言でいえば……」

ケンスケ「根暗かなぁ……」

シンジ「えぇ……」

アスカ「まぁ、パッと見はさえないやつよね」

ヒカリ「私も最初は関わろうとはしなかったな」

シンジ「……そ、そうなんだ」

トウジ「せやけど、悪いやつやなかったことはたしかや」

ケンスケ「ま、悩みながら前に進もうとしてたしね」

アスカ「かけてほしい言葉をかけてくれたわね」

ヒカリ「私はみんなの話を聞いて……でも、使徒から守ってもらってたから」

シンジ「…………」

マナ「私のこと、マナって呼ぶことからはじめない?」

アスカ「………」ピクッ

シンジ「でも、いいのかな」

マナ「記憶をなくす前に呼んでたわけじゃないから気にしないで。いつまでも霧島さんじゃ距離感じちゃうもの」

シンジ「……わかったよ。マナ」

アスカ「はぁ……。私はアスカ」

シンジ「うん。よろしく、アスカ」

438: 2017/02/28(火) 02:46:06.13 ID:u+wDA+/70
- 帰宅中 -

シンジ「……あの、アスカの家と僕の家って方向同じなの?」

アスカ「えぇ? なにも聞いてないのぉ?」

シンジ「……?」

アスカ「はぁ……。あんたと私、一緒に住んでるのよ」

シンジ「えぇ⁉︎」

アスカ「(シンジのバカっ! どうして思い出さないのよ!)」

シンジ「あの、理由聞いていい?」

アスカ「……エヴァパイロットだからよ」

シンジ「ぱ、パイロット同士って一緒に住むんだね……」

アスカ「詳しいことは、ミサトに聞いて。私はめんどくさいからパス」

シンジ「あ、ごめん。もしかして、僕たちってあんまり仲良くなか………っ!」


バチンッ!!!


アスカ「……あんた……」

シンジ「……いっつぅ~~。なにもいきなりビンタすること――⁉︎」

アスカ「知らないっ! 1人で帰りなさいよ!」


タタタッ


シンジ「……なんで、なんで泣くんだよ……」

440: 2017/02/28(火) 02:58:29.74 ID:u+wDA+/70
- ミサト宅 リビング -

ミサト「たっだいま~ん!」

シンジ「あ、おかえりなさい。葛城さん」

ミサト「……ミサト、でいいわよん♪」

シンジ「え? でも……」

ミサト「気にすることないわ。それよりアスカは?」

シンジ「あぁ、部屋から出てこなくて」

ミサト「ふぅ。やっぱりちょっとショックだったか」

シンジ「あの、葛城――」

ミサト「ミサトさん、でしょ?」

シンジ「み、ミサトさん、腕に痺れがあって夕食あんまり作れなかったんですけど、食べますか?」

ミサト「あらぁ? ありがと! アスカも呼んでいらっしゃい!」

シンジ「わかりました。それと、み、ミサトさんの家にはいつまでお邪魔してれば――」

ミサト「シンちゃん? ここはあなたのウチなのよ?」

シンジ「……わ、わかりました」

ミサト「はやく、呼んでいらっしゃい」

442: 2017/02/28(火) 03:12:25.93 ID:u+wDA+/70
アスカ「…………」もぐもぐ

シンジ「…………」もぐもぐ

ミサト「(き、気まずいわね)」

アスカ「……ごちそーさま」

ミサト「あら? もう食べたの?」

アスカ「私、部屋に戻ってる」

ミサト「その前にちょっと話ましょ」

アスカ「なに? シンジのことなら――」

ミサト「違う違う。シンジくんのことじゃなくて、あの霧島マナって子」

アスカ「……なに?」

ミサト「諜報部から色々と裏付けがとれたの。あの子の証言は、ほぼ信用できそうよ」

アスカ「それで?」

ミサト「内部告発しちゃったから、あの子を保護対象におくわ。それとロボットについてなんだけど、しばらく経過を見て――」

シンジ「――それじゃダメだ」

ミサト「シンジくん?」

シンジ「アスカ。マナは僕たちが守らないと。ミサトさん。戦自に潜入している諜報部から連絡があったのはいつです?」

アスカ「……シンジ?」

ミサト「は? え、ええと、さっきも言ったとおり、今日だけど?」

シンジ「なら、もう予定はそう遠くない」

ミサト「ちょ、ちょっと? シンジくん? なに言って――」

シンジ「アスカ。少し散歩に行こう」

アスカ「はぁ?


シンジ「え

444: 2017/02/28(火) 03:19:06.42 ID:u+wDA+/70
アスカ「…………」もぐもぐ

シンジ「…………」もぐもぐ

ミサト「(き、気まずいわね)」

アスカ「……ごちそーさま」

ミサト「あら? もう食べたの?」

アスカ「私、部屋に戻ってる」

ミサト「その前にちょっと話ましょ」

アスカ「なに? シンジのことなら――」

ミサト「違う違う。シンジくんのことじゃなくて、あの霧島マナって子」

アスカ「……なに?」

ミサト「諜報部から色々と裏付けがとれたの。あの子の証言は、ほぼ信用できそうよ」

アスカ「それで?」

ミサト「内部告発しちゃったから、あの子を保護対象におくわ。それとロボットについてなんだけど、しばらく経過を見て――」

シンジ「――それじゃダメだ」

ミサト「シンジくん?」

シンジ「アスカ。マナは僕たちが守らないと。ミサトさん。戦自に潜入している諜報部から連絡があったのはいつです?」

アスカ「……シンジ?」

ミサト「は? え、ええと、さっきも言ったとおり、今日だけど?」

シンジ「なら、もう予定はそう遠くない」

ミサト「ちょ、ちょっと? シンジくん? なに言って――」

シンジ「アスカ。少し散歩に行こう」グイッ

アスカ「はぁ? ちょ、ちょっと! わ、わわっ!」


タタタッ ガチャ バタンッ


ミサト「な、なんなの……?」

455: 2017/03/02(木) 21:25:48.60 ID:dHH1A+GA0
- 近くの公園 -

アスカ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、ねぇっ、シンジってば!」

シンジ「強引に連れ出してしまってごめん……。だけど、どうしても伝えたいことがあったんだ」

アスカ「……なに?」

シンジ「このままだとマナは、戦自にさらわれてしまう。僕は、それをどうしても阻止したい」

アスカ「どうしてシンジにそれがわかるのよ?」

シンジ「うまく言葉で説明できない……違う、言っても信じてもらえるかわからないから」

アスカ「話をするまでわからないでしょ? どうして決めつけるのよ!」

シンジ「――そうだね。アスカの言う通りだ。だけど、僕だってこわいんだ。プレッシャーで今にも押しつぶされそうで」

アスカ「シンジ……どうしたの? 記憶が戻ってるの……?」

シンジ「父さんの計画とゼーレの計画。そして今、進行されてるもう一つの計画。それを僕たちはきっと阻止できるはずなんだ! アスカ!」ガシッ

アスカ「……あんたがなにを抱えてるかわからないけど、考えがあるなら話して。私もそれを受け止めてみせるから」スッ

シンジ「……ぐっ」ズキンッ

アスカ「シンジ、お願い。私もあんたの味方でいたい。でもシンジのやりたいことがわからなくちゃどうしたらいいかわからないのよ」スッ

シンジ「マナの友達がのってるロボットを止めなくちゃ……ぐぅぅ」

アスカ「シンジ⁉︎ 頭痛いの⁉︎」

シンジ「綾波にも、父さんの……ダミーには……」

アスカ「シンジ⁉︎ ねぇ! なに言ってるかわからない!」

シンジ「――……はっ!」

アスカ「シンジ……?」

シンジ「――あれ……? アスカ? こんなとこでなにやってるの?」

アスカ「は、はぁ?」

シンジ「というか、なんでここに僕いるんだろう?」

アスカ「どうなってるのこれ……」

456: 2017/03/02(木) 21:48:54.62 ID:dHH1A+GA0
- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

リツコ「あら? めずらしい」

アスカ「……ふん」

リツコ「それで、今日は何のご用? カウンセリングにきたのではないみたいだけど」

アスカ「頼るのは癪だけど、意見を聞かせてほしいの」

リツコ「プライドの高いあなたが私を頭をさげるのはよっぽどのことがない限りないはず。他に頼れる人か、専門的な知識がほしいのね」

アスカ「私の分析をするなら帰るわよ」

リツコ「癖みたいなものよ。気にしないで」

アスカ「…………」

リツコ「…………」

アスカ「………ふぅ」

リツコ「コーヒー、飲む? インスタントだけど」

アスカ「(こいつに話しちゃ危険なのかもしれない。だけど、メガネに連絡がつかないから、頼れる人がいない)」

リツコ「いらないみたいね。私は飲むわよ」コポコポ

アスカ「――多重人格ってどういう症状なの?」

リツコ「解離性同一障害ともいうわね。いわゆる精神分裂症とはまた別の症状、で答えになってるかしら」

アスカ「精神病とはまた別ってこと?」

リツコ「アスカは24人のビリーミリガンというダニエルキイスの著書を読んだことがある?」コトッ

アスカ「いいえ」

リツコ「そう。かなり端折っていうと頭の中から別人達の声が聞こえるのが多重人格。精神分裂は外からの声によるものね」ふーっふーっ

アスカ「…………」

リツコ「……あつ。温めすぎたわね」

アスカ「もし、そういう人がいたら特定する方法は?」

リツコ「症状ひとつとっても重い軽いの違いがあるまのよ。重い症状の場合は、側から見てもはっきりとした違いがわかるはず」

アスカ「軽かった場合は?」

リツコ「長い時間をかけて、本当にその症状と合致するのか判断する必要があるわ」

アスカ「…………」

リツコ「シンジくんに疑いでもあるの?」

アスカ「……っ⁉︎ ち、ちがっ! 私はそんなこと一言も!」

リツコ「あなた本人にその心配がなければ、誰のために動くか考えたら自然とそうなるわよ」

アスカ「あっ……」

リツコ「(エリートといえど、根っこの部分はまだまだ子供ね)」






457: 2017/03/02(木) 22:07:27.89 ID:dHH1A+GA0
アスカ「……シンジが記憶喪失になって、私のことを覚えていないのがショックなのよ」

リツコ「気持ちはわからないでもないわよ」

アスカ「それで、不安で誰に頼っていいかわからなくて……」

リツコ「そう。夜は寝れてるの?」

アスカ「あんまり……」

リツコ「薬に頼るばかりでは依存してしまうことはおろか、効き目も悪くなる。眠れないのが続くようならいらっしゃい」

アスカ「ありがと、コーヒー少しもらうわね」

リツコ「あっ……」

アスカ「……ぬるぅ~い。もしかして、猫舌?」

リツコ「…………」

アスカ「かわいいとこもあんのね。よく見たら猫のマグカップだし。もしかして家でも、猫飼ってるの?」

リツコ「――はやくさがりなさいっ!」

458: 2017/03/02(木) 22:21:27.94 ID:dHH1A+GA0
- 第三新東京都市立第壱中学校 昼休み -

アスカ「ヒカリ、マナ」

ヒカリ&マナ「アスカ?」

マナ「今日はもうネルフはいいの?」

アスカ「あぁ、ちょっと話があっただけだから。それよりも2人とも今は暇?」

ヒカリ「どうしたの? 私達ならお弁当食べ終わって暇してたとこだけど?」

アスカ「それなら、図書室で調べ物手伝ってほしいのよ」

マナ「私は大丈夫だよ」

ヒカリ「私も。鈴原たちにも協力してもらう?」

アスカ「あいつらがいると寄り道しちゃいそうだから今回はパス。私達だけでやりましょ」

マナ「なにを調べるの? テスト範囲でわからないところあった?」

アスカ「マナは知らなかったと思うけど、こう見えて私、大卒なのよ。中学校の授業なんて幼稚なのでわからないことなんかない」

マナ「――えっ? でも、アスカってあんまりテストの成績」

ヒカリ「あ、あの、それはっ!」

アスカ「ヒカリ、なにか言ったの?」

ヒカリ「……あ、ごめん。テスト結果の時の話でアスカが赤点ギリギリだったことだけ」

アスカ「はぁ……。そういうこと」

マナ「えっと……?」

アスカ「日本語が読めなかったの。テストの問題」

マナ「え? じゃあ、それが理由で?」

アスカ「世界共通語は英語なのよ? なんで今さら日本語の読み書きなんか勉強しなくちゃ、だいたい、この教育システム自体に欠陥が――」

ヒカリ「あ、アスカ……」

アスカ「あぁっと、そうそう。そういうわけで、理由は別。とりあえず図書室に移動しましょ」

459: 2017/03/02(木) 22:34:45.45 ID:dHH1A+GA0
- 図書室 -

アスカ「それで、調べてほしいのは、多重人格についてなんだけど」

ヒカリ「多重人格? っていうと、何人も何人も別の人格がある人のことだよね?」

アスカ「そう」

マナ「どうして、そんなことを?」

アスカ「まだよくわからないんだけど、昨日、不思議なことがあったの」

ヒカリ&マナ「……?」

アスカ「……シンジが、急に記憶を取り戻したのかと思えば、わけのわからないことを言いだして」

マナ「し、シンジくんの記憶が戻ったの⁉︎」ガタッ

ヒカリ「――ちょ、ちょっとマナ! 静かに! ここ図書室だよ!」ヒソヒソ

アスカ「今思うと、記憶が戻ったのかもあやふやなところがあるの。もしかしたら一時的なものだったのかも……」

マナ「……それで、アスカはシンジくんが多重人格になったんじゃないかって?」

アスカ「一晩考えてみても答えはでなかった。シンジもその時のことはまったく身に覚えがないらしくて、その後はまた、記憶がなくなった状態だったの」

ヒカリ「…………」

アスカ「……お願い。可能性としては、万が一程度なんだと思う。だけどもしそうなら、私はシンジを助けてあげたいの」

マナ「…………」

アスカ「鈴原たちにも言わないで。誰にも。もし多重人格でなければそれはそれでかまわないのよ」

ヒカリ「ふぅ……。わかった。手分けして調べましょ」

マナ「うん。私もできる限りやる」

アスカ「ありがと……」

ヒカリ「アスカは思いこみが激しいところもあるけど、それでもアスカはアスカだもん。ほっとけないよ」

マナ「私は、アスカのこと、まだわからないこと多いけど、心配してるってのは伝わってきたから」

460: 2017/03/02(木) 22:57:49.16 ID:dHH1A+GA0
- 厚木基地 某所 -

加持「準備はいいか?」

マリ「いつでもいけるよー。でもさぁ、この旧式の対戦車ライフルって反動凄くて嫌いなんだよねー」カチャ カコン

加持「――飛距離に問題は?」

マリ「素人だと思っちゃ困るなー。目標までの距離と軌道の計算は既に終えてるって。狙った的は外さないってね」ペ口リ

加持「そいつはすまなかったな。なにしろ軍資金に乏しいもんでね。満足な装備は用意しやれない」



パタパタパタパタッ



加持「ほら、オスプレイのご登場だぞ。撃ち落としてやれ」

マリ「アイサァー♪」カチャ


マリ「…………よっと」キリキリ カチリッ


加持「――撃て」



マリ「オラァッ!」


バァーーーーーーンッ


フォンフォンフォン ドカーーーンッ


マリ「くぅ~~いっつぅ~。肩痛めるかと思った」

加持「お見事。それじゃ速やかに撤収するぞ、急げ。射撃位置はバレてる」

マリ「人使い荒いなぁ~もう」

461: 2017/03/02(木) 23:23:26.52 ID:dHH1A+GA0
- 移動中 車内 -

マリ「はぁ、疲れた~疲れた疲れた疲れたつ~か~れ~たぁ~」

加持「はぁ……人類の明日がかかってるってことわかってる?」

マリ「ゲンドウくんの狙いもゼーレの計画も私にとってはどうだっていいし。私の計画がうまくいけばいいだけ」

加持「さようですか」

マリ「姫に会いにいこっかにゃ~」

加持「おいおい、今マリに抜けてもらっちゃ困るんだが」

マリ「そっちはそっちで勝手にやってよ。私は姫を助けるのも仕事なんだし♪」

加持「しかしだなぁ、さっきのヘリに乗ってたの官房長官だぞ。やつがいなくなったことでロボットの管轄権は国防大臣に引き継がれる」

マリ「それが狙いだったんしょ? なにを今さら」

加持「無能は扱いやすいが、一歩間違えれば、予期せぬ自体を引き起こすことになる。バカとハサミは使いようというが――」

マリ「それなら、尚のことそっちで後は勝手にやって。裏工作は私の分野じゃない。加持くんの得意分野でしょ?」

加持「俺はただの内偵屋さ。元な」

マリ「とにかく! 一度、姫の様子を見にいく。ワンコくんの記憶喪失もちょっと気にかかるし」

加持「……ふぅ、わかった。こっちのことはまかせろ」

462: 2017/03/02(木) 23:43:02.35 ID:dHH1A+GA0
- 図書室 -

キーンコーンカーン コーン


ヒカリ「……やっぱりだめね。学校の図書室じゃ」

マナ「うん……。寄贈書ばかりだから、年代が古いものが多いし、専門書は少ないね」

アスカ「私が迂闊だったわ。市立の図書館に行けばもっとたくさんある?」

ヒカリ「そうね……。それだったら、少なくともここよりはあると思う」

マナ「今日の放課後にでも行ってみようか?」

アスカ「2人は時間、大丈夫なの?」

ヒカリ「私は夕飯の時間までに帰れれば」

マナ「うん。私も、あまり遅くならなければ」

アスカ「それじゃ、そうしましょ」

マナ「あの、アスカ」

アスカ「……?」

マナ「シンジくんのどこがそんなによかったの?」

アスカ「愚民を助けるのはエリートの義務……っていうのはウソ」

マナ「…………」

アスカ「なんでだろう。最初に会った時から好きになったのかもしれない。それに、懐かしく感じたっていうか」

マナ「わっ。それって、一目惚れ?」

アスカ「電撃が走ったっていうか、ビビっとこの人っていう感じではないのよ。デジャヴュみたいな」

ヒカリ「……それは、私もはじめて聞いたかも」

アスカ「そうだっけ?」

マナ「シンジくんもそう感じたとかあったの?」

アスカ「シンジに会ったことある?って聞いたら、ないって答えてたから、たぶん、気のせいなんでしょ」

マナ「そうなんだぁ。2人とも感じてたら運命みたいで素敵だなぁ」

ヒカリ「運命⁉︎ マナも少女漫画好き⁉︎」ガバッ

マナ「え? なに?」ビクッ

アスカ「ヒカリのこれは病気みたいなもんだから気にしないで」

463: 2017/03/03(金) 00:09:28.48 ID:/j+k9HQL0
- アスカ 夢の中 -

アスカ(少女)『私は一人で生きるの、パパもママもいらない! 一人で生きるの。私はもう泣かないの! 』

アスカ「でも、まだ泣いてる…なぜ、泣いてるの?」

継母『あの子、苦手なんです』

アスカ父『なんだ、弱気とは医者の君らしくないな』

継母『医者も人間ですのよ。前にも言いましたけど』

アスカ父『しかし、君のような女性が子供相手に』

継母『妙に大人で……張り詰めた絶対的な拒絶があって……時々恐いんです。あなた、そう感じたことありません?』

アスカ父『いや、とにかく君は、アスカの母親になったんだ』

継母『その前に、私はあなたの妻になったのよ』

アスカ父『……同時にだろう?』

継母『社会的立場からはそうですわ』

継母『あなたはあの子の父親を辞められないけれど、私はいつでもあの子の母親を辞めることができますのよ』

アスカ「勝手な言い草! 大人はみんな勝手! 私はなんでも1人でできるようになる!」

アスカ(少女)『止めてママ! ママを辞めるのは止めて! 私、ママに好かれるいい子になる! だから、ママを辞めないで! だから私を見て! 止めてママ! 私を殺さないで!」

アスカ「また……私?」

キョウコ『あなたのパパはママが嫌いになったの。いらなくなったの。ううん、最初から好きじゃなかったのよ。最初からいらなかったのよ、きっと』

キョウコ『だから、ママと氏にましょう。パパは私たちがいらないもの』

アスカ「私は邪魔なの? いらないの?」

キョウコ「一緒に氏んでちょうだい……」

アスカ「いや! 私はママの人形じゃない! 自分で考え、自分で生きるの!」

464: 2017/03/03(金) 00:16:34.78 ID:/j+k9HQL0
- 第三新東京都市立第壱中学校 授業中 -

アスカ「んぁ……?」ゴチンッ


シーーン


アスカ「あ、あれ? ここ、教室?」

先生「エヴァのパイロットというのは、居眠りをする癖でもあるのかな?」


クスクス


アスカ「あ、その、すみませぇん……」



トウジ「今度はゴリラ女とはお前ら夫婦は居眠りするのも一緒か!」コショコショ

シンジ「……へ?」

ケンスケ「トウジ、碇は記憶がないんだからそんなこと言っても通じないって」

465: 2017/03/03(金) 00:46:05.24 ID:/j+k9HQL0
- 第三新東京都市立図書館 -

アスカ「(なんで、今さらあんな夢。ママは、弐号機にいるってわかったのに……)」

ヒカリ「アスカ、これなんだけど……」スッ

アスカ「(ふっきれたと思ったけど。私の中でまだシコリがあるのかな……)」

ヒカリ「アスカ? 聞いてる?」

アスカ「あ、ご、ごめん。なに?」

ヒカリ「うん。多重人格って後天性の重い症状の一種でもあるみたい」

アスカ「先天性ではないの?」

ヒカリ「どちらのケースもあるって書いてある。ここ見て」ペラッ

アスカ「あんまり日本語読めないのよ」

ヒカリ「あぁ、そっか。ごめんね。えっと、生まれつきじゃない、後天性の場合、強いストレスとかで別の人格を産み出してしまうことがあるらしいの」

アスカ「ふぅん」

ヒカリ「それで、本当かどうかわからないけど、発覚するまでに二桁の人格を産み出してしまう人も少なくないんだって」

アスカ「でもそれは、診断を下した人間の主観である場合もあるわよね」

ヒカリ「うん。統計的にそうなのかわからないけど、それもちょっと怪しいし」

マナ「シンジくんの場合は、どうなんだろうね」

アスカ「多重人格だと前提しても、二桁の人格がいるようには見えないわね」

ヒカリ「アスカが見たのって少なくとももう1人? だけだもんね」

マナ「それなら、二重人格ってことになる?」

466: 2017/03/03(金) 14:03:10.47 ID:/j+k9HQL0
アスカ「見えてる範囲で、という話でならそうなるかも」

ヒカリ「あっ、でもここ見ると核となる人格があって、他の人格を隠してしまうケースもあるんって書いてるよ」

アスカ「つまり……」

マナ「わからないってことだね」

ヒカリ「ネルフに相談はできないの? 専門の人いるんじゃ?」

アスカ「午前中にその話をしてみたのよ。だけど、なぜそう思ったのか詳しくは話したくない」

マナ「うぅん」

ヒカリ「私たちだけじゃ限界があるのも事実だし……」

マナ「ねっ? いっそのことシンジくんになにかショックを与えてみたら?」

アスカ「……?」

マナ「ほら、よく漫画とかであるじゃない? 性格がオンオフで切り替わるみたいな」

ヒカリ「そ、それって眼鏡をはずしたら性格が変わる王子様とか、さっそうとピンチを助けてくれる……」

マナ「そ、そうじゃなくて! ただ何もしないよりは試してみる価値あると思うの!」

アスカ「ショックねぇ」

マナ「私たちで変わりばんこに告白でもしてみる?」

アスカ&ヒカリ「えぇ⁉︎」

マナ「……やっぱり、ダメかな?」

アスカ「な、な、な、なんでそんな話になるのよ!」

ヒカリ「そうだよ! それに碇くんはアスカの!」

マナ「でも、それぐらい外部的な衝撃を与えてみないと」

アスカ「そもそも、ショックになるの? 嬉しいだけじゃない?」

ヒカリ「戸惑いの方が強いんじゃないかな……」

マナ「それじゃ、殴ってみる? ガツーンと!」

アスカ「マナって……」

ヒカリ「意外に強引なところあるんだね……」

467: 2017/03/03(金) 14:24:15.41 ID:/j+k9HQL0
- ネルフ 本部 ??? -

リツコ「失礼いたします」

ゲンドウ「…………」

リツコ「今は副司令はいらっしゃないんですね」

ゲンドウ「わかっていて来たのだろう」

リツコ「言ってしまわれるのは野暮ですわ」スタスタ

ゲンドウ「レイとシンジの案件についてはどうなっている」

リツコ「ご心配なく、次のプラグテスト日にシンジくんを昏睡状態にさせる予定です」

ゲンドウ「アレは自分がやったという行為に責任を感じるやつだ。昏睡させては意味がない」

リツコ「ご子息のことを理解していらっしゃるのですね。前回、興奮剤を投与したのも自身の意思でやったというのを印象づけるために?」ギシッ

ゲンドウ「……椅子から降りたまえ。今はそんな気分では」

リツコ「――既成事実を作ってしまえばなんら問題はありません。責任を作ることはたやすいことです。例えあの子がどんなに受け身でも、最後に手をだすのは男ですもの」ギシギシッ

ゲンドウ「それならばいい」

リツコ「それとも、あなたが私を犯した時のように衝動的な刹那を体現させたいのですか? 私に性の昂ぶりをぶつけ、汚したように――」プチ プチ

ゲンドウ「…………」

リツコ「――もっと、私を汚して。その手で」パサッ

468: 2017/03/03(金) 14:36:13.91 ID:/j+k9HQL0
- ミサト宅 夜 -

ミサト「シンちゃん、怪我の具合はどう?」

シンジ「すこし痒くなってきてますけど、大丈夫です」

アスカ「(ショックねぇ……)」

ミサト「……? アスカ、ぼーっとシンちゃん見てどしたの?」

アスカ「別に……」

ミサト「もしかして、シンちゃんに見とれちゃってたとか?」ニマニマ

アスカ「ミサトのオヤジ化って日に日に深刻になってるわよね」

ミサト「まだ枯れちゃいないわよん」

シンジ「あの、アスカ、後で少し話がしたいんだけどいいかな?」

アスカ「……わかった。急ぎ?」

シンジ「そうじゃないよ。暇な時でいい」

ミサト「(記憶をなくしてもうまくやれそう……かな……)」

469: 2017/03/03(金) 14:49:19.27 ID:/j+k9HQL0
- シンジ 部屋 -

アスカ「(なんだか、不思議。記憶をなくしてるシンジと2人になってもぜんぜんドキドキしない)」

シンジ「家で落ち着いて、話をするのって、はじめてじゃないのかもしれないね……」

アスカ「まぁ、そうね。記憶がないあんたとは話をすることあったし」

シンジ「……やっぱり、記憶のない僕と記憶のある僕って違うのかな」

アスカ「…………」

シンジ「そうだよね。やっぱり、僕も実感ができないんだ。みんなの中の僕と今の僕がかけ離れすぎてて」

アスカ「これまでやってきたことは事実よ」

シンジ「そうだとしても、できるとは思わないんだ、僕が」

アスカ「自分で自分の限界を決めつけてるってこと?」

シンジ「…………」

アスカ「(やっぱりこんなの、コイツ、シンジじゃない。ガワだけ)」

シンジ「そうかも、しれない。自信がないのかも」

アスカ「あんたがどう思おうと勝手だけど、私たちには大切な思い出があんのよ。それを他ならないあんたが! 嘘にするな!」ビシ

シンジ「…………」

アスカ「不愉快だわ。話が終わりならでてくけど」

シンジ「あっ、まだ話は終わってなくて、あの、こんなこと言うと怒るかもしれないけど」

アスカ「ウジウジすんな。みっともないのよ。なに? 聞くだけなら聞いてあげる」

シンジ「――エヴァに乗らなくて済む方法ってないかな?」

アスカ「……はぁ?」

シンジ「こ、こわいんだ。エヴァに乗るのが。あんなわけのわからないモノに乗ってなにと戦えっていうのさ」

アスカ「…………」

シンジ「ミサトさんに言うのは最後の手段として、まずはアスカに聞いてみようと思って――」

アスカ「歯くいしばれ」

シンジ「えっ――」


――バチンッ!!!

470: 2017/03/03(金) 15:09:59.38 ID:/j+k9HQL0
- ミサト宅 リビング -

ミサト「な、なにごとっ⁉︎」


ガラガラ ピシャンッ!


アスカ「……ふん」

ミサト「あら? アスカ? シンジくんと喧嘩でもしたの?」

アスカ「あんなのシンジじゃない」

ミサト「え?」

アスカ「エヴァに乗りたくないんですってよ」

ミサト「あっちゃぁ~。シンジくんが、聞くまでもないか」

アスカ「どうするつもり? あんなのが実戦にでたところで足手まといになるのは目に見えてるわよ」

ミサト「ふぅ……。シンジくんが記憶喪失になったと聞いた時にこうなることは予想すべきだったわ」

アスカ「ミサトは予想できたっていうの?」

ミサト「こっちに来た頃のシンジくんは、それはもう臆病で、自分を表すのに不器用だったのよ。使徒三体を殲滅するまでにも家出したり色々あったもの」

アスカ「……そういえば、記憶がなくなる前にそうだったって話は少し聞いたことある。命令違反したんでしょ?」

ミサト「二体目の使徒の時かしら。鈴原くんたちをプラグ内に乗せるまではよかったんだけど、その後、私の命令を無視して独断で使徒に向かっていったの」

アスカ「やっぱり、今のシンジとは全然違うじゃない」

ミサト「それがそうでもないのよ。アスカはシンちゃんと会った時にはもう見ていないから、わからないのかもしれないけど」

アスカ「…………」

ミサト「シンジくんは? 部屋にいるの?」

アスカ「思いっきりビンタしたから、気絶してるかも。まだ手がヒリヒリする」

ミサト「あ、あんた。シンジくんはまだ怪我人なのよ?」

アスカ「はん……。氏ぬわけじゃないでしょ。それに、私だって世話してあげたいって思ってるわよ。だけど、今のシンジはなんかだめ」

ミサト「うぅ~~ん……」

471: 2017/03/03(金) 15:32:58.90 ID:/j+k9HQL0
アスカ「シンジから直接話を聞いてみたら?」

ミサト「前回と同じことになるのは私も避けたいけど、甘やかしすぎるのもシンジくんの為にならないと思うのよね」

アスカ「あっそ。それじゃ、ほっとくの?」

ミサト「ううん、悩みどころではあるわね」

アスカ「なんでもいいけど、パイロットの監督官なんだからなんとかしてよね。記憶取り戻す方法を見つけてくるとかさ」

ミサト「……えぇ」

アスカ「なんかそういう劇薬みたいなのないの?」

ミサト「そんな都合の良いものあったらとっくに使ってる――まてよ」

アスカ「え? 本当になんかあんの?」

ミサト「えぇと、たしか部屋の、アスカちょっちそこで待ってて」

アスカ「……?」

472: 2017/03/03(金) 15:47:16.04 ID:/j+k9HQL0
- ミサト宅 シンジ部屋 -

シンジ「むぐっ! むぐぐぐぅ~!(なんで僕が縛られてるんですか!)」

アスカ「とりあえずがんじがらめに縛っておいたけど、こんなもんでいい?」

ミサト「えぇ、かまわないわ」

シンジ「むふむむむぅ!(何考えてるんだこの人たち!)」ジタバタ

アスカ「黙れ、エビ男、暴れんじゃないわよ」グニ

シンジ「むぐっ!(踏むな! なんなんだよ!)」

ミサト「アスカ、シンジくんを座らせる格好にして、背中を壁に立てかけるようにすればいけるでしょ」

アスカ「はいはい。でも、本当に効果あんのぉそれぇ? 入門編って書いてあるけど」

ミサト「催眠術で記憶を呼び覚ますって映画で見たことがあんのよ。だからやってみる価値はあるでしよ」

シンジ「むぐぐぐぅ!(そんなのめちゃくちゃだ!)」

アスカ「おもっ……よっと――っ! はい、おっけー」

ミサト「それじゃぁ、シンちゃんリラックスしてこの5円玉の動きを目だけで追うのよ?」

シンジ「ふぁむむぐっむぐぅ!(リラックスできるわけないだろ!)」

アスカ「さっさとやりなさいよ」

シンジ「ぐむっ……!(仕方ない、今だけ言うことを聞いて、解放されたら出ていこう!)」


ユラ~リ ユラ~リ


ミサト「見つめているとあなたの意識がぼんやりとしてきます。ゆっくり息をすってぇ~はいてぇ~」

アスカ「はぁ……」

シンジ「ふぅー、ふぅー」

ミサト「リラックスしてぇ~。あなたは今は南の島にいます。そこでハンモックに揺られながら、ジュースを飲んでいます」

473: 2017/03/03(金) 16:00:27.54 ID:/j+k9HQL0
シンジ「ふーっ、ふーっ(はやく終わってよ!)」

ミサト「シンジくん? ちゃんとリラックスしなきゃだめよ?」

シンジ「…………」コクコク

ミサト「……ふかぁ~いふかぁ~い、海の底をイメージしてください~」

アスカ「…………」ポリポリ

ミサト「ワン、ツー、スリーを合図に指を鳴らします。すると、あなたは意識が落ちます」

シンジ「…………(バレないようにかかったふりしないと!)」

ミサト「ワン、ツー、スリー」パチン

シンジ「…………(指? どこかで聞いたような)」


シンジ(少年)『それはできない』パチン


シンジ「…………(そうだ、たしかあの夢で……あれ……本当に意識が……)」

ミサト「どう? シンちゃん? かかった?」

アスカ「……ミサトが聞いてどうすんのよ」

ミサト「あはは……そっか」

アスカ「だんだんアホらしくなってきたわ。ほら、シンジ、かかったふりしなくていいから」

ミサト「やっぱりだめかぁ~。そうね、もうやめましょうか。シンジくんの口のガムテープはがして紐もほどいてあげて」

アスカ「はいはい」ビリッ

シンジ「…………」ガクッ

アスカ「……? ちょっと? シンジ? かかったふりしなくてもいいのよ? あんなのでかかるわけないんだから」

ミサト「あらぁ? シンちゃんってば演技もできたの?」

シンジ「…………」ダラァ

アスカ「……シンジ? ねぇっ? ちょっと?」ユサユサ


474: 2017/03/03(金) 16:07:57.33 ID:/j+k9HQL0
ミサト「え? え? これって……」

アスカ「そ、そんなわけないじゃない! あんなのでかかるなんて聞いたことないわよ!」

ミサト「いやでも、ほら」

アスカ「こ、これは演技よ! そうでしょ⁉︎ こら! 起きろ!」バシバシ

シンジ「…………」グテェ

ミサト「い、息は? してるわよね?」

アスカ「……うん。息はしてる。いい? シンジ? まだ続けるつもりなら思いっきりひっぱたくわよ」

ミサト「ちょっとアスカ」

シンジ「…………」

アスカ「まだ続けるのね。いい根性じゃない。ちょっと今のあんたも見直したわ。いくわよっ!」ブンッ


バチンッ!!!


ミサト「ちょ、ちょっと!」

シンジ「…………」ダラァ

アスカ「おかしい、演技にしても表情が全然かわらないなんて……。これってもしかして……本当に……」

ミサト「うそぉ⁉︎」

アスカ「ミサト! 続けて!」

ミサト「え? どうやって?」

アスカ「はぁ? 続け方書いてるんじゃないの⁉︎」

ミサト「そ、そっか! だってかかると思ってなかったから!」

475: 2017/03/03(金) 16:14:44.82 ID:/j+k9HQL0
ミサト「えぇと」ペラペラ

アスカ「まだ⁉︎」

ミサト「急かさないでよ、あったあったここね」

アスカ「……っ」ゴクリ

ミサト「あなたは記憶をなくしてますか? YESなら首を1回、NOなら首を2回縦にふってください」

アスカ「ちょっと、もう少し踏みこんだ質問できないの? 誰でも答えられることじゃない!」

ミサト「最初は軽めの質問からだって書いてるのよ!」

シンジ「…………」コクリ

ミサト&アスカ「頷いた……」

ミサト「続けるわよ――」

476: 2017/03/03(金) 16:30:36.79 ID:/j+k9HQL0
――――
―――



ミサト「いくつか簡単な質問はしたし、それじゃぁ、いよいよ、踏みこんだ質問にいくわね」

アスカ「はやく」

ミサト「記憶を取り戻すのは可能ですか?」

シンジ「…………」コクリ

アスカ「どうすれば? 知りたいのは方法なのよ!」

ミサト「質問を変えてみましょう。催眠術で記憶を取り戻すのはできますか?」

シンジ「…………」

アスカ「首をふらない? どっちなの?」

ミサト「シンジくんにもわからないのかも」

アスカ「やってみる?」

ミサト「わからないことをやるのは危険かもしれないわ」

アスカ「ちょっとまってミサト。この質問聞いてみてくれる? シンジは多重人格なのかって」

ミサト「え? シンジくんが?」

アスカ「念のためよ。記憶喪失じゃない場合だって考えられるじゃない」

ミサト「……あなたは多重人格ですか?」

シンジ「…………」コクリコクリ

アスカ「二回……ってことは違うのね! よかったぁ!」

ミサト「肝心の記憶を取り戻す方法がわからないんだから安心できないわよ」

アスカ「ワードを言っていけいばいつかは当たるんじゃない?」

ミサト「そうねぇ。記憶を取り戻す方法はアスカですか?」

アスカ「ちょ、ちょ!」

シンジ「…………」コクリコクリ

ミサト「あらぁ~違うのね。アスカ、ドンマイ」

アスカ「ふざけてるでしょ!今の質問必要あった⁉︎」

ミサト「とにかく思い当たることは全部言っておくべきでしょ。次、私は関係ありますか?」

シンジ「…………」コクリコクリ

ミサト「あらぁ、これも違うのね。一晩ぐらいならシンちゃんと――」

アスカ「ミサト! ぶちのめすわよ!」

ミサト「おぉ、こわ。それじゃエヴァと関係ありますか?」

アスカ「お父さんとかそういうんじゃ――」

シンジ「…………」コクリ

ミサト「そうねぇ、やっぱり……って」



アスカ&ミサト「――……え?」

477: 2017/03/03(金) 20:35:11.32 ID:/j+k9HQL0
ミサト「エヴァに関係があるのか……」

アスカ「やっぱり、前の出撃の時になにかあったんじゃないのぉ?」

ミサト「いつも通りだったわよ! 途中からシンジくんがいきなり回線遮断しちゃったけど」

アスカ「その前後は?」

ミサト「エヴァの内部電源内では目標に追いつけそうになかったから、停止するように求めたわ」

アスカ「そしたら?」

ミサト「シンジくん、いきなり回線を切っちゃって」

アスカ「なら、問題はその後ね。中で何かがあったのよ」

ミサト「でも、停止するまで初号機はひたすら目標をおっかけてたし、2分ぐらいの間なのよ?」

アスカ「時間が短いかどうかなんて関係ない。問題は出来事と過ごした密度よ。なにか強烈なことがシンジに起こったんだわ」

ミサト「ふぅん。それで記憶喪失に?」

アスカ「……いえ、そうじゃないのかもしれない」

ミサト「ちょっと、わかるように説明してよ」

アスカ「昨日! 夕食のあと! シンジの様子がおかしかったでしょ」

ミサト「あぁ、そんなこともあったわね」

アスカ「しっかりしてよ。その時のシンジはなにか焦ってたのよねぇ」

ミサト「アスカとシンジくんが2人で出かけた時?」

アスカ「う~ん……(ミサトにやりとりを言えるのはここまでかな……)」

ミサト「記憶が一時的に戻りかけてたのかもしれないわね」

アスカ「きっかけは?」

ミサト「あの時を思い出してみればわかるはず、でしょ?」

アスカ「マナのことよね。でもそれもおかしいわ。シンジは記憶をなくす前も今もマナと特別仲良いってわけじゃないもの」

ミサト「マナちゃんが忘れてるだけでシンジくんと元々知り合いだったとか?」

アスカ「そんな話聞いたことないわよ。ネルフの資料にそんなデータあるの?」

ミサト「あの子の証言を調べる時に身元調査もしたんだけど、たしかに、住んでる所に接点なんかなかったわね」

478: 2017/03/03(金) 20:43:24.60 ID:/j+k9HQL0
アスカ「明日、初号機に乗せてみるってっていうのは?」

ミサト「えぇ? シミュレーションプラグじゃなくて初号機に?」

アスカ「当時の条件をできるだけ再現してみたらなにかわかるかもしれないじゃない。シミュレーションプラグの中で起こったわけじゃない」

ミサト「だけど、承認されるかどうか……。エヴァは玩具じゃないのよ」

アスカ「パイロットとして機能しなくなるほうが問題でしょ。適当に理由つけなさいよ」

ミサト「……減俸もありえるかもしれないのよ」

アスカ「そうならないように、言い訳、考えたら?」

ミサト「はぁ……。ペンペン~、おつまみ減ったらごめんねぇ~」

ペンペン「クェッ⁉︎」

アスカ「それはそうと、シンジの催眠そろそろといてあげなきゃ」

ミサト「あぁ、そうだった。それじゃー解くわよ。あなたはぁ~ワンツースリーと言って手を叩いたら目が覚めます」

シンジ「…………」

ミサト「ワン! ツー! スリー!」パンッ

シンジ「…………」

ミサト「あ、あら?」

アスカ「ちょっと?」

ミサト「慌てないの。もっかい。……ワンツースリー!」パンッ

479: 2017/03/03(金) 20:50:46.66 ID:/j+k9HQL0
シンジ「…………」グテェ

アスカ「ちょっと! 起きないじゃなぁい!」

ミサト「シンジくん! 起きなさい! 起きて! 起きるのよ!」パンッパンッパンッ

アスカ「ど、どどどどうするのよ⁉︎」

ミサト「シンちゃん⁉︎ 私、左遷は嫌よ! クビも嫌!」パンッ

アスカ「保身に走ってんじゃないわよ!」

ミサト「ネルフにバレたら困るのよ! 起きて!」

アスカ「どうするの⁉︎ 連れてった方がいいんじゃ!」

ミサト「アスカ! チューして!」

アスカ「はぁ⁉︎」

ミサト「眠れるお姫様、じゃないけど。キスで起きるとかあるじゃない!」

アスカ「そんなので起きる⁉︎」

ミサト「アスカが嫌だったら私が……!」グイッ

アスカ「ま、待ちなさいよ!」ガシッ

480: 2017/03/03(金) 20:58:12.98 ID:/j+k9HQL0
- ネルフ本部 ??? -

諜報部員「ご報告いたします。葛城三佐宅のご子息の部屋で慌ただしい動きがありますが」

冬月「こちらに映像をまわせ」

諜報部員「了解。そちらに映像をうつします」

ゲンドウ「…………」


ミサト『………!』

アスカ『………!』


冬月「音声は拾えないのか?」

諜報部員「音声は指示がなかったので」

冬月「指示がなくとも盗聴器ぐらい取り付けておけ!」

諜報部員「り、了解。失礼いたしました!」

冬月「……取っ組み合いしてなにをしているんだ? 君の息子は縛られてるようだが」

ゲンドウ「…………」

冬月「やれやれ、おおかた家族ごっこか。このご時世に呑気なものだな」

481: 2017/03/03(金) 21:17:01.45 ID:/j+k9HQL0
- ミサト宅 シンジ部屋 -

アスカ「私がやるって! 言ってんでしょぉが!」ググッ

ミサト「だから! はやくやってよ! それでもだめなら私がやるからね!」ググッ

アスカ「だから! なんでそうなるのよ! ネルフに連れてくでしょ普通!」

ミサト「ネルフにバレたくないんだってばぁ! パイロットを催眠術にかけて昏睡状態とか笑い者になるわよぉ!」

アスカ「しかたないでしょ! こうなっちゃったんだからぁ!」

ミサト「いや、いやよ。もう再就職先見つけるのだって厳しいのに」

アスカ「生々しいこと言ってんじゃないわよ!」

ミサト「……わかった。落ち着きましょ。とりあえず、アスカしてみて」

アスカ「落ち着いたら普通やめようとかならないの?」

ミサト「いいから! はやく!」

アスカ「…………わかったわよ。あっち向いてて」

ミサト「はいはい。はやくね」

アスカ「ふぅ……。なんなのよこれ」

ミサト「……どう? やった?」

アスカ「まだ!」

ミサト「はやくね……」

アスカ「……それじゃぁ、いくわよ……」スッ


シンジ「…………」

アスカ「……(ちょっと待って、ここ監視されてるってメガネが言ってなかった?)」

ミサト「まだ? アスカ」

アスカ「(もしそうだとしたら、今って筒抜け⁉︎ なんで気がつかなったのよ!)」

ミサト「どぉ? シンジくん覚めた? 覚めたわよね?」

アスカ「……ミサト」

ミサト「うん?」

アスカ「やったけど、シンジは起きなかった(やってないけど)」

ミサト「あぁ……万事休すだわぁ~」

アスカ「落ち着いて、方法は間違ってない?」

ミサト「たしかにさっきの通り書いてあるわよ」

アスカ「…………」

ミサト「……はぁ。碇司令になんて報告すればいいのよ……」

アスカ「…………」パチン

ミサト「アスカ、指なんか鳴らしても、それは導入の時に」


シンジ「……ん? あれ?」


ミサト「シンジくん⁉︎」

シンジ「僕、いったい……あっ! いっ! なんか頬が痛い……そうだ! これほどいてくださいよ!」

アスカ「…………(指の音に反応したの?)」

482: 2017/03/03(金) 21:35:29.35 ID:/j+k9HQL0
シンジ「こんなのめちゃくちゃだ! 僕はもうここを出て行きます!」

ミサト「シ、シンちゃん?」

シンジ「アスカも僕のことが嫌いならそう言えばいいだろ!」

アスカ「……なに?」

シンジ「いきなり縛って身動きするなんて考えられないよ!」

アスカ「誰が誰のこと嫌ってるって?」

ミサト「アスカ! 待ちなさい!」ガシッ

シンジ「アスカに決まってるだろ! いっ⁉︎」

アスカ「あらぁ? シンジ様。次はどこを踏みつけられたいのかしら?」ゲシッ

シンジ「ぐっ……なんなんだよ!」

ミサト「アスカ! 足だけで器用にやらないで!」

アスカ「あんた、ほどいたら出てくの?」

シンジ「出てくよ! 先生のところに帰るんだ!」

ミサト「……シンジくん。そうなったら、監視体制が24時間でつくことになるわよ」

シンジ「それでもここよりはいい!」

アスカ「ミサト、明日、朝イチで初号機に乗せましょ」

ミサト「……や、やっぱり?」

アスカ「そうしなきゃ、碇司令になんて説明するの?」

ミサト「そ、そうよね」

シンジ「な、なに言ってるんだよ! 僕はアレに乗りたくないんだ!」

アスカ「こんなに嫌がってるんだし、碇司令も事情を説明すればわかるわよ」

ミサト「でも、これって大丈夫かしらん?」

アスカ「人間、氏ぬ気になればなんでもできるものよ。シンジ、まだ口で嫌がる余裕があるでしょ」

シンジ「そ、そんな……」

ミサト「それもそっか」

シンジ「なんで納得するんですか! ミサトさん!」

アスカ「と、いうわけで」

ミサト「シンジくんはこのまま朝を迎えてもらいましょうか」

シンジ「そんなバカな……こと……」

アスカ「さぁ、シンジぃ~? 気を失うか、寝るかどっちがいいぃ~?」

シンジ「ちょ、ちょっと落ち着いてよ、アスカ」

ミサト「私はなにも見てないなにも見てないなにも見てないなにも…………」

483: 2017/03/03(金) 22:26:01.02 ID:/j+k9HQL0
- 翌日 ネルフ本部 格納庫 -

ガラガラガラガラッ

作業員「お疲れ様です、葛城三佐。お急ぎのようで ――」

ミサト「技術班は⁉︎」

作業員「はぁ、まだ時間もはやいので、チラホラ見かける程度ですが……台車に乗ってるのはサードチルドレンですか?」

ミサト「いるだけでかまわないわ!急いでかき集めて! それとプラグエントリー準備!」

作業員「なにも聞いてないですが、上からの承認はおりてるんで?」

ミサト「……せ、せせせ、責任は私が持つわ! つべこべ言わないでさっさとやる!」

作業員「り、了解しまし――」

リツコ「――なんの騒ぎ?」ヒョイ

ミサト「あっちゃぁ~。リツコ。いたのね」

リツコ「エヴァの点検に立ち会っていたのよ。それでミサトは? あら? アスカも?」

アスカ「…………」

リツコ「今日は学校のはずでしょ? テストは……そこでプラグスーツを着てるのはシンジくん⁉︎」

ミサト「……エヴァに少し乗せたいのよ」

リツコ「あなた、一体なに考えてるの! 理由を今すぐ言いなさい!」

ミサト「シンジくんがエヴァに乗るのをこわがってるから、そんなにこわいものじゃないって教えようと思って」

リツコ「気を失ってるんじゃなくて⁉︎」

ミサト「昨日、すこし暴れたのよ~」

リツコ「ミサト⁉︎ だからって気絶させたの⁉︎」

ミサト「ちょっとやり方が強引だっていうのはわかってる」

リツコ「許可できないわ! トラウマになって二度と乗らなくなる!」

ミサト「……これは必要な処置よ。私が、そう判断したの」

リツコ「何様のつもり⁉︎ 碇司令に報告したら厳罰は免れないわよ!」

ミサト「赤木博士。シンジくんの記憶が取り戻せるかもしれないのよ。そうしたら乗らなくなる心配はない」

リツコ「なんの根拠があってそんなことを言うの⁉︎」

ミサト「……その、昨日催眠術にかけたら、そうシンジくんが答えたから」

リツコ「催眠術ですって⁉︎ 素人が⁉︎ かかるはずないじゃない!」

ミサト「かかっちゃったのよぉ! それで、その時にエヴァに原因があるって」

リツコ「その話、本当なの?」

484: 2017/03/04(土) 22:31:10.51 ID:DPOdR4qy0
ミサト「まぁ、その、なんつーかね」

リツコ「どっちなのよ……」

ミサト「シンジくんの記憶さえ戻れば何も問題はないのよ! 今回だけは目を瞑って!」

リツコ「……っ! 葛城三佐!」

アスカ「チッ、また押し問答ね。シンジが戻る可能性があるなら賭けてみる。たまにはそういう荒療治やってみてもいいんじゃないの?」

リツコ「あら? 2人で結託したの?」

アスカ&ミサト「はん、まさか」

リツコ「…………」

アスカ「私たちは目的が同じであるという共通意識があるだけよ」

ミサト「普段なら止めるところなんだけど、初号機のパイロットはシンジくんしかいない。私もそう思ってる。だから、アスカのやることに協力してるわ」

リツコ「エヴァに関連があるとしても、プラグに乗せることが解決策とは限らないのよ」

ミサト「悪化を恐れる気持ちはわかる。しかし、研究者としては試してみる価値はあるんじゃなくって?」

リツコ「……(レイとのきっかけを作る為にはどうしても承認できない)」

ミサト「ね? お願い、今回だけでいいから。少しプラグに乗せるだけよ」

リツコ「却下します。くわえて今回のことは碇司令にも報告させてもらうわ」

ミサト「また碇司令? あんた最近、碇司令と距離感近くない?」

リツコ「仕事よ! 公私混同しないでちょうだい!」


485: 2017/03/04(土) 22:40:49.73 ID:DPOdR4qy0
ミサト「ふぅん?」

リツコ「碇司令が今日から不在なのが痛いわね」

ミサト「え? 碇司令、いないの?」

リツコ「南極に。今頃は飛行機の中でしょうね……」

ミサト「それじゃあ、不在の時の指揮権は?」

リツコ「それは、ミサトに……あっ」

ミサト「ナァ~~イスタイミングッ!」

リツコ「……はぁ」

ミサト「はいはぁ~い! みなさぁ~ん! サードチルドレンエントリースタンバーイ!」

リツコ「あ、あなたね! 任されてると言っても代理なのよ! わかってるの⁉︎」

ミサト「もちろん、碇司令が戻ってきたら、きちーんとご報告させてもらうわよ? でもそれまでは、私の管轄下よね? あ・か・ぎ・は・か・せ?」

リツコ「…………くっ!」

作業員「葛城三佐ぁ~! 作業にとりかかってもよろしいんですかぁ~?」

ミサト「オッケーですー! パパッと取り替かっちゃってくださーいっ!」

リツコ「失礼するわっ!」

アスカ「どこ行くの? 見てけばいいのに」

リツコ「衛生電話よ! 連絡が届く範囲になったらすぐにでもかけさせてもらうわ!」

ミサト「氏の海、南極でしょ? 電波はいらないと思うけど」

リツコ「くっ、ミサト! 覚えておきなさいよ!」コツコツ

486: 2017/03/04(土) 22:56:32.82 ID:DPOdR4qy0
- ネルフ本部 発令所 -

マヤ「初号機、エントリースタンバイにはいります」

ミサト「ごめんねぇ~。マヤちゃん、朝早くから」

マヤ「いえ。でも、どうしていきなり?」

ミサト「ま、ちょっとした事情があんのよん。それよりリツコは?」

マヤ「先輩なら衛生電話を持ってラボに引きこもってましたけど」

ミサト「……あはは」

作業員「おーい! パイロット投げるぞー!」

シゲル「MAGI、パイロットの搭乗を確認。LCL加圧スタートします」

マコト「でも、使徒も来てないのにいいんですか?」

ミサト「うっ。みんなして言わないでよ」

マコト「一応、マニュアルでは第二次警戒体制に移行する決まりですが、どうします?」

ミサト「今回はなにもしなくていいわ。シンジくんを乗せるだけだもの」

マコト「了解、あとシンジくんの意識は?」

ミサト&アスカ「あ、忘れてた」

シゲル「えぇ~?」

アスカ「私がいって起こしてこようか?」

ミサト「う~ん。それもひと手間かかっちゃうし、待つわけにもいかないし、ちょっと濃度高めてくれる?」

マコト「えぇ⁉︎ か、葛城さん! シンジくん今記憶ないんでしょ⁉︎ 慣れてないのに大丈夫なんですか⁉︎」

ミサト「ここまでやってしまったら後には引けないわ。シンジくんの根性に賭けましょ」

マヤ「シンジくん、かわいそう……」

シゲル「あ~」

マコト「無茶するなぁ、まったく」

ミサト「……ご、ごほんっ! どうしたの? はやくしなさい!」

487: 2017/03/04(土) 23:06:45.58 ID:DPOdR4qy0
- 初号機 エントリープラグ内 -

シンジ「……がはっ!……ぐぅっ……」ゴボゴボゴボゴボ

シンジ「……息が……っ!」

ミサト『おっけー! 日向くん! シンジくんおきたみたいだから元にもどして』

シンジ「……はぁっ……はぁっ……」

ミサト『シンジくん? 聞こえるー?』

シンジ「な、なんですかここっ⁉︎ なんなんですか! どうして僕ここにいるんですか!」

ミサト『そこは初号機の中よ。正確にはエントリープラグ内だけど』

シンジ「どういうことですか! なんで乗ってるんですか! 乗りたくないって言ったでしょ⁉︎」

ミサト『なにも戦わせようってわけじゃないのよ。とりあえず、シンクロしてみるだけだから』

シゲル『電源、はいります』


ブゥーン


シンジ「嫌だ! 僕は降りる! 開けて! 開けてくださいよ!」ドンドンッ

ミサト『かまわないから、シンクロはじめちゃって』

マヤ『りょ、了解。指揮系統からシンクロ、開始します」

シンジ「な、なにやるんですか! や、やめてくださいよ! ミサトさん!」

ミサト『さて、どうなるかしら』

アスカ『変化が起こるといいけど』

488: 2017/03/04(土) 23:17:34.96 ID:DPOdR4qy0
- ネルフ 本部 発令所 -

シンジ『ミサトさんっ! おろしてくださいよ!』

ミサト「数値はどう?」

マヤ「シンクロ率、40.2%。3分が経過しましたが状況に変化はありません」

シンジ『このっ!』ガンガンッ

ミサト「……そう。乗せるだけじゃだめなのかしら」

シゲル「しかし、変ですね」

アスカ「なにかあったの⁉︎」

シゲル「あぁ、いや……シンジくんのバイタルが正常値なんです」

ミサト「あれだけ嫌がってるのに?」

シゲル「えぇ、ですから、口では嫌がっても精神では嫌がっていないことになります。むしろいつも通りといった感じですね」

マコト「こちらも、なにか妙です」

ミサト「なに?」

マコト「シンクロ率にまだ余裕があります。テストプラグじゃないのに」

シンジ『ミサトさんっ! ミサトさ……ミサト……ミサ……』

アスカ「……? ねぇ、シンジの様子がなんかおかしい」

ミサト「データはどうなってる?」

シンジ『う……うぅ……うぅ……』

マヤ「なんら異常は……」

ミサト「シンジくん? どうしたの? 気分でも悪いの?」

489: 2017/03/05(日) 00:23:47.07 ID:CuFupm8M0
ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ

ミサト「エマージェンシーコール⁉︎」

アスカ「なにがはじまったの⁉︎」

ミサト「状況は⁉︎」

シンジ『く、クククククッ……』

マコト「パルス逆流! 絶対防衛線を突破します!」

シゲル「す、すべてのメーターが振り切られています! こりゃぁ、まるで、感情の波が押し寄せてるみたいだ」

マヤ「デストルドー反応増大! 危険域に入ります! このままでは自我が持ちません!」

シンジ『血の匂いが……』

ミサト「回路を強制的に切って!」

シンジ『ミサトさん。とれないんですよ』

マコト「エヴァ、信号を拒絶!」

ミサト「初号機の電源は入っていないはずでしょ⁉︎ エントリープラグだけなんじゃないの⁉︎」バンッ

シンジ『はぁ……。もういい』


アスカ「シンジッ!!!」


シンジ『アスカ……?』

アスカ「あんた! なに勝手に記憶喪失になんかなってんのよ! どういうつもり⁉︎」

シンジ『わからないんだ。僕はなにができるのか』

アスカ「あんた何かしたいことがあんでしょ⁉︎ だったらやってみればいいじゃない! やる前から諦めるな!」

シンジ『本当は、自信なんかないんだ』

アスカ「みんなそうなのよ! それでも試して、トライ&エラーで生きてんの! あんたまさか私を置いてどっかに行っちゃう気⁉︎」

490: 2017/03/05(日) 09:34:36.43 ID:CuFupm8M0
ミサト「アスカ、シンジくん記憶もどってるの⁉︎」

リツコ「まさか……」

マヤ「パイロットの精神汚染がはじまっています!」

リツコ「プラグから⁉︎」

マヤ「違います! 初号機からの侵蝕です!」

リツコ「まずいわ!」

アスカ「シンジ! あんた私を守るって言ってくれたじゃない! 全部放り投げるつもり⁉︎」

シンジ『…………』

アスカ「記憶戻ってるんでしょ! うぅん、違う、あんた本当は記憶がなくなってたんじゃない! 多重人格になってたんでもない!」

シンジ『…………』

アスカ「記憶をなくした「ふり」だったんでしょ! 本当は全部覚えてた! 違う⁉︎」

ミサト「なんですって……」

アスカ「思いかえせば全部おかしかったのよ! あんたの行動も記憶をなくしたタイミングもなにもかも!」

マヤ「……? 初号機、侵蝕、止まりました」

リツコ「…………」

アスカ「こわかったんでしょ⁉︎ だってあんた、臆病だから」

シンジ『…………』

アスカ「自分の殻に閉じこもって、エヴァに乗ってからのことをなかったことにした」

リツコ「そうか……」

ミサト「リツコ?」

アスカ「でも、見なくちゃいけないことがあるのもわかってる! だから私達にわざわざヒントを与えてたんでしょ⁉︎」

リツコ「シンジくんは記憶喪失なんかじゃない。現実と虚構の間をせめぎ合っていたのよ。危うい天秤のバランスで成り立っていたんだわ」

ミサト「……でも、演技だけで私達全員の目をごまかせる」

リツコ「嘘に真実を織り交ぜれば判断は鈍り、目が曇る。シンジくんがそのことに気がついていたのかはわからないけど、彼はそれを実践していた」

ミサト「私たちはシンジくんに記憶喪失だと思わせるようにミスリードされてたってこと?」

リツコ「おそらくね。医師の目をごまかせたのも、彼が殻に閉じこもっていたせい。多重人格とはいかないまでも、擬似的な人格を作りあげていたのよ」



アスカ「――なんとか言いなさいよっ!!! バカシンジ!!」

491: 2017/03/05(日) 09:53:50.71 ID:CuFupm8M0
シンジ『やっぱり、すごいや。アスカは』

アスカ「――っ! 私はあんたがなにを言ってるのかほとんどわからない。なにを見なくちゃいけないのかも」

シンジ『そうだね……』

アスカ「だけど、私は今のあんたを見てんのよ! エリート舐めんじゃないわよ!!」

シンジ『……ふぅ。たしかに殻を破ってくれるきっかけがほしかったのかもしれない』

ミサト「シンジくん? ……アスカの言ってることは本当なの?」

シンジ「僕自身、そうなのかわからないところもあるんです。だけど思い当たる節はありますね」

リツコ「無自覚だからできたんでしょうね。中学生がやろうと思ってできることではないわ」

ミサト「……そんな。シンジくん? なにがあったの?」

シンジ『嫌になってしまったんです。なにもかも。守りたい、けど、僕はまた、逃げることを選んでしまった』

アスカ「…………」

シンジ『守れないかもしれないというプレッシャーから。できるかわからないという不安から。見ないようにして我慢してきたけど』

リツコ「……今日、初号機に乗ったのはどういうきっかけが必要だったのか聞いてもいい?」

シンジ『僕の居場所はここしかないって……嫌でも実感できるから』

アスカ「あんたバカァ? 自分の居場所なんて自分で決めるものでしょ」

シンジ『あははっ。そうだね。アスカの言う通りだ』

シゲル「すべての数値が元に戻っています」

ミサト「安定した……?」

リツコ「(まずいわ。アスカとシンジくんの絆は確実に深くなっていっている。これでは碇司令の計画が……)」

アスカ「これぐらいで文句が済むと思ったら大間違いだからねっ! アザのひとつやふたつ覚悟しときなさいよ!」

シンジ『わかったよ。アスカ』

アスカ「ふんっ! べーーーっだ!」

493: 2017/03/05(日) 12:16:19.76 ID:CuFupm8M0
- ネルフ本部 男子シャワールーム -


ザァーーッ


シンジ「ふぅ………」

シンジ「なにもかも、見破られちゃったんだろうな」

シンジ「ロボットに体当たりしたあの時、僕は、全部思い出した。アスカのことも、綾波のことも、マナのことも、そして、カヲルくんのことも」

シンジ「(見なくちゃ、向き合わなくちゃいけないんだ。そう、僕がなぜ知っているのか、僕自身から)」


キュッ キュッ


シンジ「……冷水が気持ちいいや」

494: 2017/03/05(日) 12:29:21.42 ID:CuFupm8M0
- ネルフ本部 第三通路 -

――バチンッ!!

シンジ「……っ」

アスカ「なにも言わないのは褒めてやるわ」

シンジ「なにも言えな――」

バチンッ!!

シンジ「ぐっ……」

アスカ「よくもこのあたしに嘘をついたわね」

シンジ「…………」

アスカ「私は他の誰を騙してても別に責めたりしない。だけど! 私を騙すなんてどういうつもり!」

シンジ「悪かったよ」

アスカ「痛いでしょ! 私だって手がヒリヒリすんのよ! でも、それ以上に、心が痛いの!」

シンジ「…………」

アスカ「子供を言い訳になんでも許されると思う⁉︎ 今回のあんたは自分のことしか考えてなかった! 私のことなんか考えてなかったでしょ⁉︎」

シンジ「そうだね……」

アスカ「ふぅ……ふぅ……」

シンジ「気の済むまで殴っていい、と言いたいところだけど、アスカだって不満があるから殴ったりすんだもんね」

アスカ「…………」

シンジ「アスカがスッキリするならいい。でも、きっと、今回のことは、殴ったところでアスカの気持ちは晴れないと思うんだ」

アスカ「…………」

シンジ「だから、もうこういうことは二度としないよ。ごめんアスカ。僕から言えることはこれだけだ」

アスカ「……それだけ?」

495: 2017/03/05(日) 13:17:27.84 ID:CuFupm8M0
シンジ「僕は完璧なんかじゃないんだ。不器用で下手くそで。でも、もう嘘はつかない。だから、許してほしい」

アスカ「……そんな小難しい話をしてんじゃないのよ。私が許せないのは、あんたが私に嘘ついたこと」

シンジ「うん……」

アスカ「あんたにはあんたのペースがあって、私には私のペースがあんのよ。なにからなにまで同じって話じゃない。意味わかる?」

シンジ「みんな違うよね……」

アスカ「私も日本に来てから多くのことを知ったわ。違うから知ろうとする。わかり合おうとすんのよ。かと言って、完璧にわかり合うなんて無理な話でしょ」

シンジ「僕たちは他人だから」

アスカ「突き詰めるとそうよね。だけど、分かり合えた時、嬉しいって思える。そこに価値があんのよ」

シンジ「うん……」

アスカ「……心配したんだからね……もぅ……バカァ……」

シンジ「ごめん……」

アスカ「あんたの記憶が戻らなかったら今までのこと全部……なくなるんじゃないかって……う……うぅ……」ポロポロ

シンジ「僕が、馬鹿だったんだ」ナデナデ

アスカ「うぅ……ぐす……うっ……」ギュウ

496: 2017/03/05(日) 14:20:24.84 ID:CuFupm8M0
- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「いらっしゃい、シンジくん」

ミサト「アスカとは、仲直りできた?」

シンジ「すみません……。みなさんにも迷惑かけました」

ミサト「子供はそれぐらいのが可愛げがあんのよ」ペチン

シンジ「…………」ペコ

リツコ「シンジくん、いくつか質問してもいい?」

シンジ「はい」

リツコ「まず、あなたの記憶喪失についてなんだけど、あれは演技だったと断言していい?」

シンジ「全てが演技というわけではありません。記憶がないと思いこんでいたんでしょうけど」

リツコ「それは、エヴァのせい?」

シンジ「そうですね。戦うのが嫌になったと思います」

リツコ「そういうケースがないわけではないわね」

ミサト「ちょっと、リツコ。なにも今質問しなくっても」

リツコ「人は時間がたてばたつほど記憶が曖昧になっていくのよ。シンジくんは若いからすぐに忘れるってことはないけど、すぐに聞けば鮮明なの」

シンジ「僕はかまいませんよ」

リツコ「もうエヴァに乗るのが嫌じゃないの?」

シンジ「嫌じゃないわけじゃありません。だけど、守りたいものがあるなら、そうも言っていられません」

リツコ「守りたいものとは、アスカのこと?」

シンジ「……みんなです」

ミサト「みんな?」

シンジ「はい。ミサトさんもリツコさんも」

ミサト「ちょっとちょっとシンちゃ~ん! 嬉しいこと言ってくれるじゃない!」

リツコ「ミサト。……生憎だけど、私は子供に守られるつもりはないわ」

シンジ「精神的に守るなんて大層なことを言ってるんじゃないんです。僕はエヴァに乗ることができる。みんなを守ることができるんです」

ミサト「……シンちゃん」

リツコ「ふぅ。たしかにあなたはエヴァのパイロットね。使徒を殲滅して私たちを守ることはできるわ」

シンジ「はい」

リツコ「だから、もう乗るのはためらわないと?」

497: 2017/03/05(日) 14:25:31.91 ID:CuFupm8M0
ミサト「リツコ! いい加減にしてよ! 今の言葉が聞けただけで充分でしょ!」

リツコ「判断するのは私よ」

ミサト「シンジくんは家で休ませるわ!」

リツコ「ミサト? シンジくんに手をだすつもり?」

ミサト「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ! 私はパイロットの監督官です!」

リツコ「あなたは個人的にシンジくんを利用しているだけでしょ」

ミサト「……っ! あんた、なに言って」

リツコ「復讐」


バチンッ!!


リツコ「……っ!」キッ

ミサト「それ以上喋ったらただじゃ済まさないわよ!」

リツコ「あなたもアスカと同じね。お似合いの家族ごっこだわ!」

ミサト「なんですって!」

リツコ「シンジくんは、加持くんの代わりにはならないわよ!」

ミサト「……行くわよ、シンジくん」

シンジ「はい……」

498: 2017/03/05(日) 14:43:51.15 ID:CuFupm8M0
- 車内 移動中 -

ミサト「アスカは先に帰したから、家で待ってると思うわ」

シンジ「はい」

ミサト「今日はみんなでパーっと焼き肉でも食べに行きましょっか?」

シンジ「あの、ミサトさん」

ミサト「ん? なぁに?」

シンジ「さっきの話なんですけど」

ミサト「あぁ、リツコとのこと? シンちゃんは気にする必要ないわよ。私たちああやってたまにぶつかり合うの」

シンジ「そうじゃないんです」

ミサト「ん~?」

シンジ「僕は、ミサトさんとリツコさんの時間を知らないことばっかりだから、わかったようなこと言えません」

ミサト「…………」

シンジ「だけど、みんな違うからぶつかるのはわかります。もう、人の顔色を気にするのはやめようと思うんです」

ミサト「ほぅ」

シンジ「ミサトさんの願いも、平和の先にあることも叶うといいですね」

ミサト「平和の先って?」

シンジ「考えてみたらいいんじゃないですか。使徒がこなくなったら、全部倒したらどうするか」

ミサト「……そうね。そうかもしれない。ま、私はネルフが解体されたらどっかの職員にでもなってるんでしょうけど」

シンジ「はい」

ミサト「ぷっ、ガキがあんまり難しいこと考えてんじゃないわよ。シンジくん、若い内は、なんでもぶつかっていきなさい」

シンジ「そうします」

ミサト「行き先なかったら、シンちゃん、お嫁にもらってくれる?」

シンジ「みんなが驚きますね」

ミサト「だっはっはっ! そりゃそうよね~!」

503: 2017/03/05(日) 17:30:16.21 ID:CuFupm8M0
- ミサト宅 リビング -

ミサト「そいじゃあ! シンちゃんの記憶回復を祝ってぇ! かんぱぁ~い!」コチン

アスカ「ミサトはかこつけて飲みたいだけでしょ」

ミサト「あらハズレ。そうじゃなくても飲むわよ」

アスカ「堂々と言うこと⁉︎」

ミサト「さぁ、お肉焼くからどんどん食べてね! 野菜もちゃんと食べるのよー!」

アスカ「しかも家で焼き肉って……」

シンジ「……ミサトさん、僕にももらってもいいですか?」

ミサト&アスカ「えぇ⁉︎」

シンジ「変かな?」

ミサト「変とかそういう問題じゃないわ! あなたまだ中学生でしょ!」

アスカ「シンジ、グレたの?」

シンジ「少し、どんな味なのかなって興味があって」

ミサト「あぁ~な~る。たしかにそういうことに興味を持つお年頃でもあるわね」

アスカ「苦いわよ?」

シンジ「アスカは飲んだことあるの?」

アスカ「ドイツにいる時に少しだけ。法律ではもちろん禁止だけど、まぁ、ちょこっともらうぐらい誰にでもあるでしょ」

ミサト「シンちゃんも飲んでみたい?」

シンジ「はい」

ミサト「じゃぁ~まぁ、しょうがないっかぁ~。ただし、このことは秘密よ? アスカも言わないでね?」

アスカ「はいはい」

シンジ「ありがとうございます」

ミサト「それじゃコップ、ビールでいいわよね」

シンジ「はい」スッ

ミサト「あら? コップ傾けるの知ってるの?」

シンジ「注いでるの見たことはありますから」

ミサト「それもそっか。これはね、泡をたたせすぎないようにやるのよ。これも社会勉強の内かな」トクトクトクトク

シンジ「………ととっ」

ミサト「はい、どーぞ」

アスカ「シンジのことだから一口で酔っ払うんじゃない?」

515: 2017/03/05(日) 19:13:52.96 ID:CuFupm8M0
ミサト「私の父はね、自分の研究、夢の中に生きる人だったわ。そんな父を許せなかった。憎んでさえいたわ」

シンジ「…………」

ミサト「母や私、家族のことなど、構ってくれなかった。周りの人たちは繊細な人だといってた」

ミサト「でも……ほんとは心の弱い、現実から、私たち家族という現実から、逃げてばかりいた人だったのよ。子供みたいな人だったわ」

シンジ「…………」

ミサト「母が父と別れたときも、すぐ賛成した。母はいつも泣いてばかりいたもの」

ミサト「父はショックだったみたいだけど、その時は自業自得だと笑ったわ」

ミサト「けど、最後は私の身代わりになって、氏んだの。セカンドインパクトのときにね」

ミサト「私には分からなくなったの。父を憎んでいたのか、好きだったのか」

シンジ「…………」

ミサト「ただ一つはっきりしているのは、セカンドインパクトを起こした使徒を倒す。そのためにネルフへ入ったわ」

ミサト「結局、私はただ父への復讐を果たしたいだけなのかもしれない。父の呪縛から逃れるために」

516: 2017/03/05(日) 19:30:09.34 ID:CuFupm8M0
シンジ「僕はその代行者ってわけですか」

ミサト「…………」

シンジ「ミサトさんが指揮するネルフで僕が使徒を倒す。そうすることで、逃れようとしている」

ミサト「ご明察」

シンジ「いいんじゃないですか、それで」

ミサト「えっ」

シンジ「僕も使徒を倒したい、だから目的は一緒です」

ミサト「…………」

シンジ「僕が嫌々乗っていたり、言われるがまま、乗っていたら、どうして背負わせるのかって話になるんでしょうけど」

ミサト「…………」

シンジ「状況が変わった」

ミサト「……そうね」

シンジ「このアーモンドおいしいですね」

ミサト「ありがと……」

シンジ「女の子ってずるいですよね」

ミサト「お、女の子?」

シンジ「心の中では、感謝してないわけじゃない。けど、はっきりと区切りをつける」ガタッ

ミサト「な、なに?」

シンジ「みんながそうだとは言いませんけど。守らなければいけないルールがありますから」

ミサト「ちょ、ちょっとシンジくん、ちか」

シンジ「ミサトさんは、なにを守りたいんですか?」スッ

ミサト「……やっ……」

シンジ「……さて、寝ますか」

ミサト「………はっ?」

シンジ「僕は部屋に戻ります」

ミサト「えっ、あの、ちょっと」ポケー

517: 2017/03/05(日) 19:34:05.89 ID:CuFupm8M0
- シンジ 部屋 -


ゴロン


シンジ「(ふー、全然酔わなかったな)」

シンジ「(僕の、僕の実年齢はやっぱり……)」

シンジ「(いや、まだ子供でいられるなら子供でいよう。今はそれでいい)」

シンジ「(アスカにも全てを話せるわけじゃない。だから、今はまだ……)」

518: 2017/03/05(日) 19:37:59.28 ID:CuFupm8M0
- ミサト 部屋 -

ミサト「ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って」カリカリ

ミサト「なんであの瞬間私、キスされようとしてた?」

ミサト「はぁ⁉︎ シンジくんに⁉︎」

ミサト「……み、見事に虚をつかれた」

ミサト「うーん、男の子の成長ってすごいのねー」

519: 2017/03/05(日) 19:47:18.58 ID:CuFupm8M0
- 翌日 第三新東京市立第壱中学校 -

シンジ「おはよう、みんな」

トウジ「シンジ、おはよーさん」

シンジ「トウジ、僕を一発殴ってもらえないかな」

トウジ「はぁ? やぶからぼうになんやねん?」

アスカ「……シンジ、別に言わなくたって」

シンジ「いいんだ。僕がこうしたいだけだから」

ケンスケ「なんだなんだぁ?」

シンジ「トウジもケンスケも、ごめん。僕は記憶喪失じゃなかったんだ」

トウジ&ケンスケ「はぁ⁉︎」

シンジ「演技だったんだ。嫌なことから目を背けるための」

トウジ「演技ってお前、そんなこと、できたんか?」

ケンスケ「そ、そうだよ! とても演技には見えなかったぞ!」

シンジ「嘘をついてたんだ。だから、殴ってほしい」

トウジ「……今の話、ほんまなんか?」

アスカ「全部ってわけじゃないのよ! ただ」

シンジ「アスカ、いいんだ。アスカは僕をかばってるだけだよ」

トウジ&ケンスケ「…………」

トウジ「よし、わかった。ワシも細かいことは嫌いや。そんなワシの性格を知って言うとんのやろ」

シンジ「うん」

トウジ「せやったらワシはシンジの心意気に答えなあかん」

ケンスケ「と、トウジ」

ヒカリ「なに? どうしたの?」

マナ「なにかあったの?」

520: 2017/03/05(日) 19:52:47.60 ID:CuFupm8M0
アスカ「鈴原! あんた!」

トウジ「女はだぁっとれ! これは男同士の会話や! なぁシンジ」

シンジ「うん、そうだね」

ヒカリ「え? アスカ?」

マナ「鈴原くん?」

トウジ「思いっきり行くで。手加減なんか期待すんなや」

シンジ「いいよ」

トウジ「……っ! オラァッ!」


ガンッ ガタガタ


シンジ「いつっ……」

アスカ「シンジ!」

ヒカリ「す、鈴原ぁっ!」

マナ「あ……」

シンジ「いいんだ。洞木さんもマナもごめん。僕、記憶喪失なんかじゃなかったんだ」

ヒカリ「えぇ⁉︎」

マナ「シ、シンジくん……?」

トウジ「これでワシはチャラや!」

523: 2017/03/05(日) 22:50:49.53 ID:CuFupm8M0
- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

トウジ「なんかよーわからんのー」

ケンスケ「つまり、碇は無意識に別人になりきってたってことかぁ?」

アスカ「この単細胞ども。別人じゃないわ。記憶をなくしてたふり」

ヒカリ「そうだったんだ……」

マナ「…………」

シンジ「みんな、ごめん」

トウジ「あぁ、もう謝るのはなしや」

ヒカリ「それだけ、プレッシャーがあったってことだよね。それなら私も、なにも言えないよ」

マナ「……でよ」

ケンスケ「ん?」

マナ「なんでよ! 守ってくれるって約束だったじゃない!」

シンジ「…………」

トウジ「な、なんや?」

アスカ「ちょ、ちょっと、ここ教室」

マナ「私がどんな気持ちで賭けたかわかる⁉︎ ムサシとゲンタの安否がかかってるのに……」

シンジ「守ってみせるよ」

マナ「えっ……」

シンジ「もう逃げないって決めたから」

マナ「だって、シンジくん。一度……」

シンジ「たしかに僕は逃げた。それについては言い訳はしようがない。だけど、まだ取り返しがつく」スッ

マナ「えぅ、あの……手」

シンジ「マナは一度賭けた。後戻りはできないはずだ。だからもう一度、僕に賭けてほしい」ジッ

マナ「えっ、えぇ……」

シンジ「みんな、無事で会えるように、僕は精一杯頑張るよ。だから、もう一度、チャンスがほしいんだ」

マナ「…………」

アスカ「…………」

ヒカリ「…………」

シンジ「ダメだって言っても、僕は助ける。一度した約束なんだ、守るよ」

マナ「あ……あの……取り乱してごめんなさい」

524: 2017/03/05(日) 22:53:16.90 ID:CuFupm8M0
ヒカリ「あ、アスカ」コショコショ

アスカ「え、えっ?」

ヒカリ「碇くん、どうしちゃったの?」

アスカ「あー、うーん? えーと」

ヒカリ「ちょ、ちょっとカッコいい……」

アスカ「だ、だめよ! あれは私のだから!」

ヒカリ「あ、ちが、その、雰囲気、大人びてる、余裕を感じるの」


マナ「あの、ごめんなさい。……その、手、離してくれると……」

シンジ「信じてくれて嬉しいよ。ありがとう」

マナ「……か、かっこいぃ」ポー


ヒカリ「マナ、大丈夫かな」

アスカ「な、なにが?」アセアセ

ヒカリ「碇くん、凄く人気でると思うよ。アスカ、しっかりね」

525: 2017/03/05(日) 23:03:09.84 ID:CuFupm8M0
トウジ「ほぇ~。やるもんやのー」

ケンスケ「僕が守ってみせる! キリッ! 言ってみたいなー」

シンジ「トウジ」

トウジ「はいはい、なんや?」

シンジ「今度、一緒にお見舞いに行くよ」

トウジ「あぁー、気を使ってるんやったら……」

シンジ「そうじゃないんだ。親友の妹のお見舞いに行くのそんなに迷惑かな?」

トウジ「…………親友か、へへ、はじめてやな。シンジからそう言ってきたのは」

シンジ「ケンスケのこともそう思ってるよ」

ケンスケ「あぁ? ぼ、僕も?」

シンジ「うん。なにかあったら何でも話そう」

ケンスケ「あ、あぁ……」

トウジ「よしっ! わかった! 親友となったら紹介せんわけにはいかんわな!」

シンジ「うん。何でも、話そう。ぶつかる時があってもいいんだ。仲直りできるから」

トウジ&ケンスケ「……シンジ」

トウジ「おぉ! なんか青春しとる気になってきたぁ!」

ケンスケ「まぁ、この僕に頼みたいことがあったらなんでも言えよな!」

526: 2017/03/05(日) 23:15:49.15 ID:CuFupm8M0
マナ「……シンジくんってかわいい系だったよね……」

ヒカリ「な、なんで? 中心に立つタイプだった?」

アスカ「ま、まぁ、私が育てたっていうのかしら。まったく、シンジもまだまだね」

ヒカリ「アスカ、どんな魔法使ったの……」

シンジ「さ、続き食べよう」

アスカ「……あの、シンジ? なんか急に大人びてない? 背伸びしてんでしょ?」

シンジ「ん? そんなつもりないけど、ハナにつくかな」

アスカ「まぁ、いや! かなりキザ!」

ヒカリ「ちょっとアスカ」

シンジ「そうかな」

アスカ「……そうかなってそれだけぇ?」

シンジ「普通でいるだけだけど、まだ慣れてないんじゃない?」

アスカ「慣れてないっていうか、困惑っていうか」

シンジ「あ、それおいしそうだね。洞木さん」

ヒカリ「こ、これ? 得意なんだ。よかったら食べる? えへへ」

シンジ「そう? じゃあもらお……」

アスカ「人の話聞きなさいよ!」スパーンッ

527: 2017/03/05(日) 23:34:58.90 ID:CuFupm8M0
シンジ「いてて……」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ! 碇くん食べようとしてただけじゃない!」グイッ

シンジ「っとと」

ヒカリ「碇くん、大丈夫?」

アスカ「ヒカリ? なにしてんの?」

ヒカリ「いきなりぶつなんてひどいわよ!」

アスカ「…………」ピクッ

シンジ「いや、僕ならいいんだ」

ヒカリ「でも……」

アスカ「へぇ~~~?」ピクピクッ

シンジ「だって、2人は仲良いじゃないか。洞木さんもアスカのことわかってるはずだよ」

ヒカリ「…………」

アスカ「気に入らない気に入らない! なんかシンジ変よ!」

シンジ「どう言えばいいか」

アスカ「その困ったような感じもムカつくわ! 1人で大人になったつもり⁉︎」

シンジ「(こうなったらアスカは止まらないからなぁ)」

アスカ「私の方が全然っ!」

シンジ「(アスカはプライドが高い。同年代だからこそ負けず嫌い。でも、そこを指摘しても素直に認められない、かといって謝るのも……)」

530: 2017/03/05(日) 23:59:10.57 ID:CuFupm8M0
アスカ「聞いてるの⁉︎」

シンジ「うん、聞いてるよ」

アスカ「へぇ、じゃあなんて言ってた? 今」

シンジ「アスカの方が頭もいいし、僕はアスカにかなわないって思ってるところが多いんだ」

アスカ「そうじゃな……」

シンジ「それに、僕は、アスカと喧嘩したくないんだ」

アスカ「うっ……」

シンジ「ぶつかることが嫌なわけじゃない、ただ、仲良くできるなら、話してわかることならそうしたい」

アスカ「…………」

シンジ「アスカはどうしたい?」

アスカ「私は、1人で大人になってるつもりなのが気に入らない! それだけよ!」

シンジ「僕は、子供だよ。今もどうしていいか一生懸命考えてるんだ」

アスカ「はん。また人の顔色うかがってるじゃない」

シンジ「誰にでもじゃないよ。僕はアスカと向き合いたい。それだけだ」

アスカ「…………」

シンジ「…………」ジッ

アスカ「……ふん」

531: 2017/03/06(月) 00:04:56.04 ID:FoWh17/L0
マナ「……き、気まずいね……」

トウジ「まぁ、シンジは苦労するやろなー」

ケンスケ「僕らもこの空気に慣れた方がいいのかもしれないな」

ヒカリ「…………」

トウジ「およ? 委員長、どないしたんや」

ヒカリ「う、うぅん。なんでもない」

532: 2017/03/06(月) 00:11:29.04 ID:FoWh17/L0
シンジ「アスカ、少し屋上に行かない?」

アスカ「なんで? ここで食べればいいじゃない」

シンジ「少し話したいことがあるんだ」

アスカ「私、わかってると思うけど、今機嫌悪いのよ」

シンジ「そうだね」

アスカ「それでも行きたいわけ?」

シンジ「うん、お願いしたい」

アスカ「……はぁ。わかったわよ」

トウジ「お? ご夫婦で移動か?」

シンジ「うん。ちょっと移動するから」

ケンスケ「いやぁ、碇から愛されてるねぇ~」

アスカ「べ、別にそんなんじゃ!」

シンジ「……さ、行こうか」

アスカ「あ、うん。ちょっと待って」

533: 2017/03/06(月) 00:23:20.14 ID:FoWh17/L0
- 学校 屋上 -

アスカ「それで、話って?」

シンジ「マナのことなんだけど、アスカにも協力してほしいんだ」

アスカ「……具体的になにするの?」

シンジ「そうだな……。まずはロボットの無力化なんだけど」


マリ「やっほ~! おひさぁ~!」ヒョコ


アスカ「あっ! あんた!」

シンジ「……?」

マリ「いやぁ、ちょうどいいところに来てくれたにゃ~。学校の中はガードが固くて」

アスカ「いつもいつも屋上なのも特定されないわけ?」

マリ「ん~? まぁ、そうなったらそうなった時?」

シンジ「アスカ、この人は?」

マリ「あっれぇ~? ひどいなぁ~ワンコくん! 私のこと忘れちゃったの~?」

アスカ「…………」ピクッ

シンジ「……どこかで会った?」

マリ「会った会った! んもー! 更衣室であんなに話したのにー!」

アスカ「ちょっと、なに言ってるわけ?」ピクピクッ

シンジ「更衣室……あぁ、えぇと、マリ、さん?」

マリ「いやぁ~もうちょっと頭の回転はやかったらいいんだけどにゃ~。でも、まっ、及第点♪」

シンジ「アスカと知り合いだったの?」

マリ「いろいろあってねぇ~。改めまして、よろしく♪ ネルフのワンコくんっ♪」

534: 2017/03/06(月) 00:31:52.24 ID:FoWh17/L0
アスカ「ちょっと、現れてほしい時は出てこなくてなにやってたのよ」

マリ「戦自と政府への破壊工作やってたよー。肩がこっちゃった」

アスカ「さ、さらりと言うのね」

マリ「うん。別になんてことないし」

シンジ「…………」

マリ「ごめんねぇ、姫。本当は今日も姫に会いに来たんだけど、今、興味あるのはワンコくんなんだよねぇ」

シンジ「僕?」

マリ「君、雰囲気かわったね?」

シンジ「…………」

マリ「どこまで、思い出したの?」

シンジ「……君は、誰だ?」

マリ「さて、誰でしょ? あれ? 自己紹介してなかった?」

アスカ「……?」

シンジ「僕は、マリという人を知らない」

マリ「そりゃそうだよねぇ~。イレギュラーなんだもの」

シンジ「…………」

マリ「エヴァの呪い。実年齢、違うんでしょ?」

シンジ「……っ!」

アスカ「あんた達、なに言ってるの……?」

シンジ「どこかで落ち着いて話したいって言ったら?」

マリ「おっ♪ ワンコくんがエスコートしてくれるの?」

シンジ「そういうことになるね」

マリ「いやぁ~、心惹かれちゃうなぁ~」

535: 2017/03/06(月) 00:40:09.67 ID:FoWh17/L0
シンジ「駆け引きは好きじゃないんだ」

マリ「私は面白いことだぁ~いすき」

シンジ「僕をからかうのは楽しい?」

マリ「まぁ、退屈しのぎにはなるかにゃ?」

アスカ「んもぉ! こっちの話を聞け!」

マリ「あぁ、ごめんごめん。姫。ワンコくんに夢中になっちゃった」

アスカ「なんの話をしてるの?」

マリ「さぁて? 何の話かにゃ?」

シンジ「…………」

アスカ「し、シンジ?」

マリ「おぉ、ワンコくんそんな目もできるんだ」

シンジ「どっち側?」

マリ「ふふ~ん。どちらでもないって言ったら?」

シンジ「それじゃもう一つだね」

マリ「いいなぁ~その目。ゾクゾクするなぁ~」

アスカ「…………」

536: 2017/03/06(月) 00:50:50.53 ID:FoWh17/L0
マリ「姫がいるから、これ以上踏み込んだ話はできないねぇ~」

アスカ「私が邪魔ってこと⁉︎」

シンジ「……そうじゃないんだ」

マリ「そーそー。色々あるんだよ」

アスカ「いいわ。黙ってるから話しなさいよ。ただし、私もここで聞く」

マリ「助かるぅ~! それじゃワンコくんに質問! 思い出したのはいつ?」

シンジ「つい最近だよ。厚木基地の出撃の時に」

マリ「にゃるほどー、うーん、早すぎるなー。本当はもっと辛い思いをしてもらってからだったんだけど」

シンジ「そうか、だから知ってたんだね」

マリ「ま、そゆこと♪」

シンジ「それで、マリさんはいつから?」

マリ「にゃはは、女性に聞くのは失礼じゃない?」

シンジ「……でも、僕とは違う。だって、僕はマリさんを知らない」

マリ「…………」

シンジ「さっき、イレギュラーといったよね」

マリ「言ったっけ?」

シンジ「……イレギュラー……本来ならいるはずがない……だけど、僕と似ていて僕のことを知ってる……」

マリ「おっおっ? ちょっとヒント与えすぎ?」アセアセ

537: 2017/03/06(月) 00:59:13.04 ID:FoWh17/L0
シンジ「……もうひとつの……協力者がいるね。誰?」

マリ「ちょっとマズったかにゃ」

シンジ「アスカ」

アスカ「……なによ?」

シンジ「マリさんと知り合ったのはいつ?」

アスカ「ん、と、浅間山の出撃のあと」

シンジ「それからマリさんの知り合い誰かいた?」

アスカ「…………」

マリ「(ひめぇ~! 言わないでぇ~!)」ブンブン

アスカ「……はぁ。加持さんよ」

マリ「あちゃぁ」ガックシ

シンジ「加持さんが。…………そうか。だから最初に僕にコンタクトをとってきたのか。わざわざ印象づけるために」ブツブツ

マリ「…………」

シンジ「加持さんは、僕に打ち明けようとしてたのか。でも、なぜ? 味方に引き入れるため?」

マリ「それは違うよ。私たちは姫とワンコくんの味方。引き入れるんじゃなくて、味方なの」

シンジ「…………」

マリ「ゲンドウくんとゼーレ、そして私達。三者の対立構造はやがて激化するよ。それは避けて通れない」

シンジ「……そんなことはさせない」

538: 2017/03/06(月) 01:18:39.15 ID:FoWh17/L0
マリ「んーん、これは既定路線なのよ。決定づけられた運命といっていい」

シンジ「…………」

マリ「運命を仕組まれたチルドレン。そして、ゼーレは裏氏海文書を、ゲンドウくんは目的の為に。ワンコくんもわかってるっしょ?」

シンジ「ガフの部屋は開かせない」

マリ「それ、無理。必要なマテリアルは全て揃うよ。そうなったらもう誰にも流れは止められない」

シンジ「全部エゴじゃないか! 認められない!」

マリ「どうするつもり? 相手はネルフ、そして世界政府だよ」

シンジ「………」

マリ「エヴァで世界を滅ぼす? 量産計画が間に合ってない今なら可能かもしれないけど、本末転倒じゃん!」

シンジ「……なんとかしてみせる」

マリ「ワンコく~ん。根性論じゃどうにもならないんだって。妥協案って必要じゃない?」

シンジ「それじゃだめなんだ!」

マリ「ふぅん。それならお手並み拝見しようかな?」

シンジ「…………」

マリ「姫を助けてあげてね」

シンジ「まだ、時間は残されてる」

マリ「あ、もしかしてワンコくんって夏休みの宿題を最終日にやっちゃうタイプ? 時間なんてあっというまにすぎてくよー」

540: 2017/03/06(月) 01:34:05.38 ID:FoWh17/L0
シンジ「アスカにこだわるのはなぜ?」

マリ「さぁて? なんでかな?」

シンジ「…………ふぅ」

マリ「おりょ? 乗ってこない? もっと言葉遊びしよーよー」

シンジ「いや、情報はもう渡すつもりないんだよね」

マリ「せいかぁ~い」

シンジ「だったら、戦自の話をしようか」

マリ「気がついてた?」

シンジ「アスカに先にコンタクトをとってたのは、裏でなにかやってた。それぐらいはわかるよ」

マリ「ま、さっき破壊工作してたって言っちゃたしね」

シンジ「加持さんがルートを用意してくれてるの?」

マリ「アフターケアはおまかせあれ。ワンコくん達はロボットね」

シンジ「流れは同じか」

マリ「今までと同じだよ。おおまかな流れは一緒。だけど、微妙にズレてきてる」

シンジ「うん」

マリ「でも、最後も違うなんて希望は持たないでね。例えばAルートとBルートがあっても辿り着く場所は同じ。収束しちゃうよ」

543: 2017/03/06(月) 13:42:11.83 ID:FoWh17/L0
- 放課後 洞木宅 -

アスカ「ごめんね。ヒカリ、いきなり遊びにきて」

ヒカリ「どうしたの? 友達なんだから普通だよ」

アスカ「……うん」

ヒカリ「――碇くんとは一緒に帰らなくてよかったの?」

アスカ「うん、なんか、距離感じちゃってさ。あいつ、どう思う?」

ヒカリ「どうって……?」

アスカ「記憶戻ってからおかしいのよね。少なくとも、私に話してないことあるのはたしかだわ」

ヒカリ「なにかあったの?」

アスカ「昼休みの屋上ですこし。なにを話してるかちんぷんかんぷんだったけど」

ヒカリ「私は……今の碇くん素敵だと思うな」

アスカ「……そうかな」

ヒカリ「人ってまわりの影響で変わっていくものだもの。時には子供になったり、大人になったり。碇くんの変化をアスカが受け止めてあげなくちゃ……かわいそうだよ」

アスカ「そうなのかな……。なんか急すぎてついてけない。私が引っ張ってやってたのに、なかったことにされてるみたいで、1人で抱えこんじゃってさ」

ヒカリ「ふふっ。アスカだって最初の頃と比べてだいぶ変わったんだよ。この短い期間に」

544: 2017/03/06(月) 13:50:03.80 ID:FoWh17/L0
アスカ「あぁ~ぁ、難しい」ゴロン

ヒカリ「難しくしてるのはアスカだと思うな。考えすぎなところ、あると思う。最初の頃のアスカは碇くんのことしか見えてなかった」

アスカ「…………」

ヒカリ「今も、碇くんのこと考えてるのは変わらないんだろうけど、落ち着いて、余裕もできた分、色々と考えすぎてるんだよ」

アスカ「恋愛がめんどくさくなって投げだす人の気持ち、今なら少しわかる」

ヒカリ「まだはやいよ。見切りをつけるのは簡単だけど、焦っちゃだめ。碇くんに色々、助けてもらったんでしょ?」

アスカ「…………うん」

ヒカリ「なんで、アスカばっかり」ボソッ

アスカ「ん? なに?」

ヒカリ「うぅん。なんでもない。とにかく、一度、碇くんと話してみて。じゃないと、本当に碇くん、どこかに行っちゃうかもしれないよ」

アスカ「シンジが、どこかに、ねぇ――」

545: 2017/03/06(月) 14:07:12.83 ID:FoWh17/L0
- 夜 ミサト宅 -

シンジ「おかえり」

アスカ「……ただいま。ミサトは?」

シンジ「今日は、少し遅くなるってさっき連絡があったよ」

アスカ「ふぅん、あっそ」

シンジ「夜ご飯はどうする?」

アスカ「食べる。けど、あぁそうか、私が久しぶりに作ってあげるわ」

シンジ「いいの? 嬉しい」

アスカ「なにがいい?」

シンジ「昨日の肉がたくさんあるから野菜炒めとかどうかな?」

アスカ「いいわよ」

シンジ「あの、アスカ」

アスカ「ん? なに? あ、冷蔵庫にあったプリンなくなってる。ミサトね」ガチャ

シンジ「昼間の屋上のことなんだけど、アスカ、わからないことだらけだと思うんだ」

アスカ「…………」

シンジ「話せる時になったら、最初に言うよ」

アスカ「あたし、メガネにもあんたにもついていけてない」

シンジ「うん」

546: 2017/03/06(月) 14:08:54.10 ID:FoWh17/L0
アスカ「シンジのことは好き。だけど、ワガママになってるのね」

シンジ「…………」

アスカ「前は、シンジに見てもらうことが叶えばなんでもよかった。私だけを見てほしかった。それが全部だった」

シンジ「うん」

アスカ「今は見てもらうだけじゃいや。もっと別のこと、相手に求めることが増えてるってわかる」

シンジ「……それは、なにもおかしいことじゃないよ」

アスカ「嘘をつかれるのはいや。1人で先にいかれるのもいや。私のことを考えてくれないのもいや」

シンジ「ぜ、全部は、時と場合によっては、難しいと思うけど」

アスカ「頭の中でぐるぐる考えても、最後は、あんたのことが好きなのよ。悔しいことにね」

547: 2017/03/06(月) 14:16:31.74 ID:FoWh17/L0
シンジ「僕の方が、アスカに助けてもらってるんだ。今の僕があるのも全部アスカのおかげだよ」

アスカ「…………」

シンジ「本心なんだ。心の底からそう思ってる。これからも、アスカの助けが僕には必要だよ」

アスカ「それで?」

シンジ「お願いだよ。アスカ。どうか、僕のこと見捨てないでほしい」

アスカ「はぁ?」

シンジ「な、なんかおかしなこと言ったかな」

アスカ「普通今の流れで……ま、そっちのがあんたらしいか……」

548: 2017/03/06(月) 14:41:39.87 ID:FoWh17/L0
- ネルフ本部 発令所 -

ミサト「使徒?」

マコト「二分前に突然現れました」

オペレーター「第6サーチ、衛星軌道上へ。接触まで後2分」

シゲル「目標を映像で捕捉」


第10使徒サハクィエル「…………」


職員「おおっ……」

マヤ「お、おっきい」

シゲル「マヤちゃん、今の台詞、もっかい」

マヤ「……不潔」

ミサト「でかすぎない? 常識を疑うわね」

リツコ「見た目から推測すると、重量、質量、共に過去最高でしょうね」

マコト「探査衛星、目標と、接触します。」

オペレーター「サーチスタート。データ送信、開始します」

シゲル「受信確認……過去のデータをモニタリングします」


第10使徒サハクィエル「…………」キィィン ドーン


ミサト「ATフィールドを落とした?」

リツコ「新しい使い方ね」

ミサト「たいした破壊力ね。こんな使い方もあったなんて……」

マヤ「落下のエネルギーをも、利用しています。使徒そのものが爆弾みたいなものですね」

リツコ「とりあえず、初弾は太平洋に大外れ。で、2時間後の第2射がそこ。後は確実に誤差修正してるわ」

ミサト「学習してる、ってことか」

マコト「N2航空爆雷も、効果ありません」

シゲル「以後、使徒の消息は不明です」

ミサト「……来るわね、多分」

リツコ「次はここに、本体ごとね」

ミサト「その時は第3芦ノ湖の誕生かしら?」

リツコ「富士五湖が一つになって、太平洋とつながるわ。本部丸ごとね」

ミサト「碇司令は? まだ連絡つかないの?」

シゲル「衛星通話の有効範囲内ですが、使徒の放つ強力なジャミングのため、連絡不能です」

ミサト「MAGIの判断は?」

マヤ「全会一致で撤退を推奨しています」

リツコ「どうするの? 今の責任者はあなたよ」

ミサト「日本政府各省に通達。ネルフ権限における特別宣言D-17。半径50キロ以内の全市民は直ちに避難。松代にはMAGIのバックアップを頼んで」

549: 2017/03/06(月) 14:49:37.51 ID:FoWh17/L0
マコト「ここを放棄するんですか?」

ミサト「いいえ。ただ、みんなで危ない橋を渡ることはないわ」


放送『政府による特別宣言D-17が発令されました。市民の皆様は速やかに指定の場所へ避難してください』

放送『第6、第7ブロックを優先に、各区長の指示に従い、速やかに移動願います』


リツコ「やるの? 本気で?」

ミサト「ええ、そうよ」

リツコ「あなたの勝手な判断で、エヴァを3体とも棄てる気? 勝算は0.00001%。万に一つもないのよ」

ミサト「ゼロではないわ。エヴァに、いえ、シンジくんたちに賭けるだけよ」

リツコ「――葛城三佐っ!」

ミサト「現責任者は私です!」

ミサト「やることはやっときたいの……。使徒殲滅は私の仕事です」

リツコ「仕事? 笑わせるわね。自分のためでしょ?あなたの使徒への復讐は」

ミサト「そうよ。でもあの子たちなら、シンジくんならきっとやってくれるわよ」

550: 2017/03/06(月) 14:56:52.27 ID:FoWh17/L0
- ネルフ本部 作戦戦術室 -

アスカ「えーっ、手で、受け止める!?」

ミサト「そう。落下予測地点にエヴァを配置、ATフィールド最大で、あなたたちが直接、使徒を受け止めるのよ」

レイ「使徒がコースを大きく外れたら……?」

ミサト「その時はアウト」

アスカ「機体が衝撃に耐えられなかったら?」

ミサト「その時もアウトね」

レイ「……勝算は?」

ミサト「神のみぞ知る、と言ったところかしら」

アスカ「これでうまく行ったら、まさに奇跡ね」

ミサト「奇跡ってのは、起こしてこそ初めて価値が出るものよ」

アスカ「つまり、何とかして見せろ、って事?」

ミサト「すまないけど、ほかに方法がないの。この作戦は」

アスカ「作戦と言えるの!? これが⁉︎」

ミサト「ほんと、言えないわね。だから、いやなら辞退できるわ」

アスカ&レイ&シンジ「…………」

ミサト「みんな、いいのね。一応規則だと遺書を書くことになってるけど、どうする?」

アスカ「別にいいわ。そんなつもりないもの」

ミサト「終わったらステーキおごるから、食べに行きましょ」

レイ「……葛城三佐」

ミサト「ん?」

レイ「私、肉、嫌いです」

ミサト「あぁ、はい」

551: 2017/03/06(月) 15:13:40.74 ID:FoWh17/L0
マヤ「データ、だします。これが最後のデータです。使徒による電波撹乱のため、目標喪失」

ミサト「具体的な話にはいるわ。正確な位置の測定ができないけど、ロスト直前までのデータから、MAGIが算出した落下予想地点が、これよ」

アスカ「こんなに範囲が広いの?」

リツコ「目標のA.T.フィールドをもってすれば、そのどこに落ちても本部を根こそぎえぐることができるわ」

ミサト「ですから、エヴァ全機をこれら三個所、A、B、Cに配置します」

レイ「この配置の根拠は?」

ミサト「勘よ」

アスカ「カン?」

ミサト「そう。女の勘」

アスカ「げぇっ⁉︎ 何たるアバウト、ますます奇跡ってのが遠くなっていくイメージね」

シンジ「…………」

ミサト「シンジくん、さっきから黙ってるけど、緊張してる?」

シンジ「あ、いえ」

アスカ「ま、シンジは私が守ってあげるから心配ないわ!」

554: 2017/03/06(月) 18:06:37.13 ID:FoWh17/L0
- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「目標を最大望遠で確認!」

マコト「距離、およそ2万5千!」

ミサト「高高度からきやがったわね……エヴァ全機、スタート位置!」

アスカ&レイ&シンジ『了解!』


ピュイ ピピピ………


シンジ『アラート? この動いてるのなんですか?』

シゲル「厚木基地方面より正体不明の信号が受信! この信号は、前回と同じやつです!」

ミサト「このクソ忙しい時にっ! 距離は⁉︎」

マコト「音速を超えるスピードで接近中! 2分後にこちらに到着します!」

シンジ『――そんなっ⁉︎ 嘘だっ!』

555: 2017/03/06(月) 18:20:07.13 ID:FoWh17/L0
- 初号機 エントリープラグ内 -

ミサト『レイ、アスカ、シンジくん、時間がないわ。今回はあっちは無視して。使徒殲滅を最優先』

シンジ「(そんな、こんな流れ、僕は知らない)」

レイ&アスカ『了解!』

ミサト『シンジくん? どうしたの? 返事は?』

シンジ「ミサトさん! お願いがあります! 僕達の判断に全てをまかせてくれませんか!」

ミサト『シンジくん……?』

シンジ「必ず使徒は止めてみせます! ミサトさん! お願いします!」

ミサト『マナちゃんのことが心配なのね?』

シンジ「……っ! そうです! だから、お願いします!」

ミサト『1人と人類を天秤にはかけられないわ。悪いけど命令は……』

シンジ「くそっ! くそっ!」ガンッ

アスカ『……シンジ、どうしたいの?』

シンジ「アスカ……?」

アスカ『なにか、やりたいことあんでしょ。言ってみなさい』

ミサト『アスカ! エヴァ三機でも成功率は限りなく0なのよ⁉︎』

アスカ『どっちみち氏ぬなら同じことでしょ。今さらなにビビってんのよ。賭けるなら最後まで賭けてみなさい』

ミサト『そういうことじゃ……』

シンジ「アスカ! 戦自のロボットを止めに行ってくれ! こっちに向かってるのなら時間はかからないはず、それまでは僕が持ちこたえてみせる!」

レイ『……命令違反』

シンジ「綾波、ごめん。今回は少し痛い思いするかもしれない」

レイ『痛いのは、いい。成功する?』

シンジ「成功させるんだ!」

アスカ『ま、今のタイミングならそのあんたも悪かないかも。ミサト、シンジが熱血してるけど、どうするの?』

556: 2017/03/06(月) 18:40:15.14 ID:FoWh17/L0
ミサト『目標は光学観測による弾道計算しかできないわ。ということは、MAGIが距離1万までは誘導しか無理』

リツコ『予測落下地点に間に合わなくてもアウトよ?』

ミサト『シンジくん、あなたに、人類、いえ、私達の命全てを賭けることになる』


シンジ「それでも僕は、やるって決めたんだ! みんなを守ってみせます!」


ミサト『男はそうでなくっちゃ! 少しでも躊躇ったら撤回させるつもりだったけど、シンジくんの好きな通りやってみなさい!』

リツコ『……はぁ。私達、氏んだわね』

シンジ「アスカ! 音速は直線上じゃないと維持できない! レーダーを見ながら最速で走って! 5秒後にカウントする! マヤさん、カウントお願いします!」

アスカ『了解!』

マヤ『り、了解! カウントスタート5秒前』

シンジ「綾波は僕と一緒に使徒を止める落下地点を目視しながらだよ、マコトさん!こちらも10秒後にでます!」

マコト『了解した! カウントスタート10秒前』

マヤ「カウント開始します! 5.4.3.2……弐号機スタート!」

アスカ『……っ!」ドンッドンッドン

シゲル「アンビリカルケーブル切断を確認! 弐号機内部電源に切り替わりました! 厚木基地方面に向かい加速状態に入ります!」

557: 2017/03/06(月) 19:01:14.77 ID:FoWh17/L0
オペレーター『使徒接近中! 高度は2万3000!』

シンジ「(……母さん……)」

マヤ『初号機! シンクロ率が100%を突破!上昇を続けています!』

マコト『5.4.3.2……スタート!』

シンジ「綾波! 行くよ!」ドンッドンッドン

レイ『……っ!』ドンッドンッドン

シゲル『初号機、零号機もアンビリカルケーブル切断を確認! 内部電源に切り替わりました!』

シンジ「ぐぅぅぅ……っ!」

マコト『弐号機もシンクロ率100%を超えました!』

レイ『碇くん! 座標がずれてる!」

シンジ「ミサトさんっ!」

ミサト『緊急コース形成! 107から105! 急いで!』

オペレーター『使徒! 加速! 高度1万5000!』

レイ『――だめ! 碇くん、こっちじゃ間に合わない』

シンジ「僕が間に合う!」キーーン

アスカ『シンジっ!! 氏んだら承知しないからね!!」

シンジ「大丈夫だよ! アスカ! 通信する余裕があるかわからない! 遭遇したら動力部だけを狙って止めて!」

アスカ『了解!』

559: 2017/03/06(月) 19:21:47.44 ID:FoWh17/L0
シンジ「――ここだっ!」ズザザザザァ

オペレーター『初号機、確定地点に到達! 高度1万を切りました!』

ミサト『思ったよりもでかい!』

レイ『……っ!』

マヤ『零号機! 速度あがりません! 到達までおよそ30秒!』

レイ『碇くん!』

シンジ「――綾波、気にすることないよ。エヴァは心を写す鏡なんだ」

レイ『……っ』


シンジ「フィールド全開っ!!!」


マコト『初号機と使徒、まもなく接触します!」

マヤ『す、すごい、この数値は』

リツコ『…………』


第10使徒サハクィエル「…………」

シンジ「こいっ! 僕が受け止めてやるっ!」


アスカ『こっちもあと10秒で遭遇する! すれ違いざまに横殴りぶちかましてやる!』

レイ『くっ……』

アスカ『ファースト! 底意地の悪いところ見せてやりなさいよ! あんた! 人形じゃないんでしょ!』

レイ『……私は……私は……』

560: 2017/03/06(月) 19:38:55.88 ID:FoWh17/L0
- ネルフ本部 発令所 -

シンジ『……ぐぅぅぅう……!』ググッ

第10使徒サハクィエル「…………」


マコト「初号機に接触!」

ミサト「シンジくん! レイとアスカが来るまで持ちこたえて!」


シンジ『うあぁあああっ……!」グググゥッ


ドドーンッ!


ミサト「なに⁉︎ 衝撃波⁉︎」

シゲル「初号機より強烈な電磁波を確認! 使徒のATフィールドを中和しています!」

ミサト「ここ地下どれだけだと思って……その余波がここにとどいたの⁉︎」

レイ『フィールド全開!』

シゲル「零号機も速度あがりました!」

リツコ「マヤ、初号機のシンクロ率は?」

マヤ「300%付近です!」

リツコ「……人に戻れなくなるわよ。シンジくん」

ミサト「っ⁉︎ シンジくん! 聞こえる⁉︎」


シンジ『ぐあぁああ……な……なん……ですかぁ……!』グググゥッ

第10使徒サハクィエル『…………!』ググッ


ミサト「それ以上、シンクロ率を上げてはだめよ! 上げられるならだけど!」

マヤ「初号機、左腕、及び右腕損傷!」

レイ『碇くんが見えた! 弐号機は?』

アスカ『――こっちもそろそろ、ロボット見えたぁっ!」

561: 2017/03/06(月) 20:00:24.23 ID:FoWh17/L0
- 第三新東京都市 シェルター内 -

ヒカリ「――鈴原ぁっ! またお菓子持ってきたの⁉︎」

トウジ「ええやないか。これが人生最後のお菓子かもしれへんし」

ケンスケ「ま、シンジたちがなんとかしてくれるさ」

ヒカリ「んもぅ! でもさっきの揺れ凄かったね」

マナ「……私、ちょっと見てくる」

トウジ「はぁ⁉︎ あかん! それはあかんで! 前ワシらそれで氏にそうな目に!」

ケンスケ「悪いことは言わないからここにいろって!」

マナ「あなた達は無責任すぎる! シンジくんたちは命をかけてるのよ!」

トウジ「……まぁ……」

ヒカリ「…………」

マナ「なにかできるかじゃない、見に行かなくちゃ。友達がどんな場所で戦ってるのかを」

ケンスケ「…………」

トウジ「……わかった。せやけど、前、ワシらはえらいことしてしもうたからな。今回はシェルターでたとこから眺めるだけや」

ヒカリ「ちょ、ちょっと、だけど、こわいよ」

マナ「……シンジくんたちはもっとこわいよ。目の前にいるんだよ、わけのわからないものが」

ヒカリ「…………」ギュゥ

ケンスケ「少し、見るだけなら――」

562: 2017/03/06(月) 20:20:53.66 ID:FoWh17/L0
- 第三新東京都市 シェルター 外 -


ビュウーーー バタバタバタ


ヒカリ「空が紫……?」

ケンスケ「風が……台風みたいだ!」

トウジ「なんや、なにが起こってるんやこれ」


マナ「――……見て! あっち! 丘の上!」


ケンスケ「あれは……初号機だ!」

トウジ「シンジか! なんで1人しか! 初号機ってあんなに小さかったか?」

ケンスケ「場所が遠いってのもあるけど、体が半分以上埋まってみたいだ!」

マナ「もう1つきてるみたい!」

ヒカリ「……うそ……あの大きいの受け止めるの……碇くん……あんなことしてたの……」

ケンスケ「あっちの機体は綾波だ! うっ! 風を巻き上げてる」

ヒカリ「ゴホゴホッ……アスカは⁉︎」

トウジ「あぁ、えぇと、赤いやつやったよな?」

ケンスケ「見当たらない……」

マナ「なにかあったんだわ、なんだろう」

トウジ「おっ! 綾波もシンジと一緒に押し返すみたいやで! よっしゃー! やったれー!」

ヒカリ「なんで? こわくないの? ……私、こわい」

マナ「ヒカリ?」

ヒカリ「私、戻りたい。ねぇ、もう戻ろう」

マナ「…………」

ヒカリ「私達とは違うんだよ。シンジくん達がすごいっていうのはもうわかったから」

トウジ「委員長、それは違うで」

ケンスケ「シンジ、泣いてたからなぁ」

ヒカリ「えっ」

トウジ「ワシらが前に抜け出した時、シンジ、泣いとったんや」

ヒカリ「あっ……」

マナ「みんなこわいのよ……氏ぬのは、痛いのは、誰だってこわい」

563: 2017/03/06(月) 20:33:19.39 ID:FoWh17/L0
- 弐号機 エントリープラグ内 -

アスカ「まったく、邪魔くさいんだからぁっ!」キーーーン

ムサシ『赤い機体、引き返せ。使徒は俺たちが片付ける』

アスカ「通信回線? ってことは、あんたがマナの言ってたやつね!」

ムサシ『マナ⁉︎ マナを知ってるのか⁉︎』

アスカ「おかげで今こっちはいい迷惑よ!」

ムサシ『ま、待て、マナは今――』

アスカ「ごちゃごちゃうっさいわねぇっ! 忙しいのよ! 動力部だけ狙うから大人しくしてなさい!」

ムサシ『――こちらを落とす気か! 前回はうまくやられたが今回はそうやすやすとは!」

アスカ「黙ってろッッ!!!」

564: 2017/03/06(月) 20:48:21.75 ID:FoWh17/L0
- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「弐号機、目標とせっしょ――あ、いえ、正体不明機失速! 推進力を失った模様!」

ミサト「ナイスよアスカ!」グッ

アスカ『シンジッ! 私がつくまで持ちこたえてっ!』

リツコ「引き返すのに止まっては駄目! 勢いをたもったまま旋回して!」

アスカ『了解!』

シゲル「弐号機! 速度をたもったまま大きく迂回!」

シンジ『ぐぅぅぅ!』

レイ『……あぅっ!』

マヤ「零号機、脚部損傷!」

リツコ「やはり、エヴァ二体では無理なんだわ」

ミサト「シンジくんのシンクロ率は高いのに……!」ギリッ

リツコ「あの使徒はATフィールドそのものよ。自身を爆弾にして落下してきている。初号機が400%を超えれば可能でしょうけど」

綾波『……っ!』

シゲル「零号機が衝撃に耐えられそうにありません!」

シンジ『綾波……っ! ぐぅぅうああああっ!!!』グググゥッ

マヤ「初号機さらにシンクロ率が上昇! 310.315.320………」

リツコ「やめなさいシンジくん!」


シゲル「し、使徒を押し返しはじめています!」


シンジ『――綾波! 今だっ! プログナイフを!』

綾波『私が離したら……』

シンジ『はやくッッ!!!』

綾波『了解』ジャキン

565: 2017/03/06(月) 21:03:25.83 ID:FoWh17/L0
綾波『……っ!』 ビュン

グサッ

第10使徒サハクィエル「」


ドーーーーンッ



職員「おぉ……っ! やった! やったぁ!」パチパチ

ミサト「ふぅ……」

リツコ「シンジくん? 聞こえる? シンジくん?」

シンジ『はぁはぁ……はい、聞こえてますよ』

リツコ「はぁ。なんとか間に合ったようね」

マヤ「こ、今回は氏んじゃうかと思いました」

シゲル「俺も俺も~」

ミサト「シンジくん、アスカ、レイ、よくやったわ」

シンジ『はぁはぁ……』

レイ『碇くん、ごめんなさい』

シンジ『え? どうしたの?』

レイ『私、なんの役にもたたなかった』

シンジ『あははっ。綾波がいたから倒せたんだよ』

アスカ『シンジ! ロボットは止めといたわよ!』

シンジ『アスカもお疲れ様』

アスカ『あんなの雑魚よ。私にも残しておきなさいよねぇ~本命は使徒なんだから』

シンジ『次は、そうする……だけど、少し疲れた。ミサトさん』

ミサト「ん? なに?」

シンジ『回収班がくるまで、少し眠ります。それと、賭けてくれて、ありがとう……』

ミサト「私達はまた、シンジくんに守られたわね。ゆっくり眠りなさい――」

566: 2017/03/06(月) 21:23:47.27 ID:FoWh17/L0
- 東京第三新東京都市 某所 屋上 -

マリ「いま~わたしの~ねがぁ~いごとが~♪」

マリ「――……ふぅん……同時に処理できちゃったかぁ」ペ口リ


ゴロン


マリ「どうしよっかなぁ」


加持「――パンツ見えてるぞ」

マリ「うん? どーでもいい」

加持「シンジくんにご執心みたいじゃないか」

マリ「まぁ、流れを止めるつもりみたいだからねぇ」

加持「それが……ダブルブッキングをした理由か」

マリ「試す権利ってあるじゃん?」

加持「女に試されるのはいつものことなんでね」

マリ「まぁ~~全然違うけど、どうしよっかなぁ」

加持「…………」

マリ「私達はワンコくんと姫の味方だけど、私の計画とワンコくんのやりたいこと違うってことなんだよねぇ~……でも、味方。これって矛盾してない?」

加持「…………」

マリ「どうしよっか♪」

加持「なにを考えてる?」

マリ「ワンコくんにさぁ、きつーく睨まれた時、ゾクゾクしちゃってさぁ~。ワクワクしちゃったんだぁ~」

加持「時間は着実に進んでいる。ターニングポイントになる参号機はもうすぐさ」

マリ「――かなぁ~うならば~♪ つば~さぁ~を~…………」

568: 2017/03/06(月) 23:36:58.46 ID:FoWh17/L0
- 南極大陸 戦艦上 -

リツコ『――報告は以上です』

ゲンドウ「そうか」

リツコ『安否の心配はしてくださらないんですのね』

ゲンドウ「結果は聞いた。話せていることが無事の証明になる」

リツコ『ご子息の件はいかがいたしますか?』

ゲンドウ「なぜ、変わった」

リツコ『おそらく、セカンドチルドレンの影響だと推測されますが――』

ゲンドウ「自己犠牲もか」

リツコ『その件に関しては……』

ゲンドウ「ダミーは最終調整段階に入っている」

リツコ『はい、まだいくつかテストは必要ですが、近い内に実用化できます』

ゲンドウ「シンジはそれまでもてばいい」

リツコ『……と、言われますと』

ゲンドウ「洗脳しろ。自己犠牲は必要ない。アレに残る用途は予備の道具としての価値だけだ」

リツコ『し、しかし、どうやって』

ゲンドウ「方法はまかせる。帰国次第、葛城三佐に通達。シンジとセカンドチルドレンの同居を正式に解消する」

リツコ『……人格破綻する可能性が高いですが』

ゲンドウ「かまわん。廃人になってもいい。――以上だ」

プッ

冬月「やりすぎではないのか?」

ゲンドウ「……やりすぎということはない。遅すぎたぐらいだ」

冬月「しかし、ユイくんの息子でもあるんだぞ。廃人にまで追い詰めては……」

ゲンドウ「目的のためだ。犠牲はやむを得ない」

冬月「……うぅむ……」

ゲンドウ「冬月。これまでたくさんのものを犠牲にしてきた。無駄にしないための生贄だ」ニィ

569: 2017/03/06(月) 23:54:57.73 ID:FoWh17/L0
- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

ミサト「――はぁぁあ⁉︎」

リツコ「そんなに大きな声をださなくても聞こえるわよ」

ミサト「だ、だだだぁって! リツコが⁉︎ シンジくんと住むぅっ⁉︎」

リツコ「碇司令の命令でね」

ミサト「な、なんでぇ⁉︎」

リツコ「パイロット2人の面倒を見させるのは負担になると判断されたそうよ」

ミサト「碇司令がぁ? それ本当? 私を気づかってくれたってわけぇ??」

リツコ「もちろん、それは建前。日向くんに仕事を押しつけたのが内部監査員の報告でバレたみたいね」

ミサト「げぇっ⁉︎ まぁじぃ⁉︎」

リツコ「よってミサトはこれからは1人の面倒を見るだけでよく、尚且つデスクワークに専念できるってわけ」

ミサト「あ、あぁ~~それなら、納得」

リツコ「…………」カキカキ

ミサト「でも、シンちゃんは家庭的だから食事の心配ないし、アスカもシンちゃんのこと好きだから、2人で暮らした方がいいんじゃ?」

リツコ「2人きりでいる時間が長くなって子供でも妊娠したらどうするつもり?」

ミサト「あぁ~」

リツコ「ゴムをつけても100%避妊できるってわけではないのよ」

ミサト「それは……たしかに……」

リツコ「ミサトが帰宅しなければ、歯止めがきかなくなる可能性がある。会うなとは言ってないわ。ただ、それは避けるべきよね」

ミサト「そうね。会えないわけじゃないものね……」

リツコ「シンジくん達にはミサトの口から言う?」

ミサト「はぁ……。言いづらいけど、そっちのがいいでしょうね……アスカになんて言われるか……」

リツコ「それも監督官の仕事のうちね。がんばって」


シンジ「僕が?」【後編】へ続く


引用元: シンジ「僕が?」