458: 2015/02/04(水) 00:33:42.22 ID:UF3aUYYNo
1日1試合でも処理できたら1週間で終わることに気が付いたしコツコツやります
卯月「心に愛がなければスーパーアイドルじゃないんですよ……!」【前編】

459: 2015/02/04(水) 00:50:32.51 ID:UF3aUYYNo

<本戦当日 346プロダクション内特別スタジオ>


凛「……」

凛(あまり眠れなかったな……)

未央「おっはよー!」

凛「あ、おはよ」

未央「遅かったね」

凛「うん、ちょっとね」

凛「……卯月は?」

未央「それが、まだ……」

ブウウウウウン

未央「……」

未央「あ、あれ……」

凛「ん?」

鈴帆「ブウウウウウウウウウウウウウウウンwwwwwwwwwwww」

鈴帆「ドルンドルンドルンwwwwwwwww」

鈴帆「鈴帆バイク便じゃーーーー」

凛「バイクコスプレの変な人が卯月を負ぶって走ってきてる……」

未央「うーん他人のふりしたい」

凛「顔覆ってるけど、恥ずかしいのか、一応アイドルだから見られたらまずいと思ってるのか……」

未央「泣いてるんじゃない?」
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(9) (電撃コミックスEX)
460: 2015/02/04(水) 01:08:07.58 ID:UF3aUYYNo

凛「いろんな意味ですごい注目されてる……」

未央「ある意味、さっき通りがかった高垣楓以上かもねえ」

凛「あ、見たんだ」

未央「うん」

未央「恐いくらい気迫を感じたよ」

凛「……他の出場者は?」

未央「皆もう来てるよ」

未央「最初に来たのは莉嘉ちゃんだったね」

未央「結構真面目な顔で、宣戦布告されたよ」 タハハ

凛「え?」

未央「相手がしぶりんでも容赦しないんだってさ」

未央「ほら、私らニュージェネレーションズ名乗ってるじゃん?」

未央「莉嘉ちゃんとみりあちゃんは――」

未央「ああ、あと、みくパイセン?もか」

未央「まあとにかく、シンデレラプロジェクトでも、やっぱり先にいた三人と私達ニュージェネレーションズじゃちょっと違うみたい」

未央「だから、認めてもらうためにも――」

未央「私の分も勝ってよ、しぶりんっ!」

凛「……うん」

461: 2015/02/04(水) 01:18:40.29 ID:UF3aUYYNo

未央「あと、ブルーナポレオンの人達は皆揃ってたね」

凛「そっか」

未央「負けた人も決勝戦の椅子を賭けて闘う可能性がある相手とも一緒とはねー」

未央「こりゃ結束じゃシンデレラプロジェクトは一歩遅れちゃったかなー」 アハハ

凛「……」

未央「あ、それとブルーナポレオンの人達が通る時メガネ配ってたから拾ったけど、いる?」

凛「いらない」

凛「っていうか、度の合わないメガネなんて欲しがる人いるの?」

未央「さあ……」

未央「やっぱり、ファン的にはほしいものじゃない?」

凛「……貰って何をするんだろう」

未央「かけるんじゃない?」

凛「まあそうだろうけど、度数が合わないと気分が――」

未央「汁を」

凛「汁!?」

462: 2015/02/04(水) 01:26:00.60 ID:UF3aUYYNo

未央「あと、夏樹サンはバイクで乗り付けてたしなー」

鈴帆「何ぃ~~~~!!」

鈴帆「それじゃあ被ってもーとるがね!」

凛(もう方言めちゃくちゃ……)

卯月「恥ずかしかった……」

鈴帆「こんなことなら、やっぱり初心に帰って白馬になるべきだったばい~~~!!」

鈴帆「そんでもってセクシーに腰を振る卯月ツツキ双方で来場者の視線を釘付けにすればよかったのね~~~~~!!」

未央「この人脳味噌も馬並みなのね」

凛「多分プチトマトくらいのサイズなんじゃないのかな」

463: 2015/02/04(水) 01:47:04.94 ID:UF3aUYYNo

菜々「ウサミン星では、白馬の代わりに白兎に乗るんですよっ☆」

卯月「……ッ!」

鈴帆「安部菜々っ……!」

凛「白兎って……それすっごく揺れるんじゃ……」

菜々「ウサミン星は重力が違うから、白兎さんが地面を蹴る力は地球より真横に使われるの☆」

菜々「その一歩はチーターを凌駕するんですよっ?」

未央「設定がバイオレンスでメルヘン要素薄らいでるッッ」

卯月「……」

卯月(これが……昨日鈴帆さんに言われた安倍さんのファイトスタイル……)

菜々「だから地球では重力が軽すぎて一歩踏み出すと高く飛んじゃうの☆」

鈴帆「相変わらず……卑怯な戦法たいね……」

鈴帆「ウチも卑怯な飛び道具の自覚はあるが、奴はその上を行くっ……」

卯月「見た目だけじゃない……話だけでもない……」

卯月「あらゆる面で、あらゆる話題を、ウサミン星を絡めることで自分の話に持っていく……」

鈴帆「無理矢理話題を奪い取り、全てを自分の“フリ'に使う」

鈴帆「まさにトークバトルの残虐アイドル」

鈴帆「自分の世界に持ち込む天才相手に、どう闘うかお手並み拝見させてもらうばい、卯月しゃん……!」

464: 2015/02/04(水) 02:07:04.26 ID:UF3aUYYNo

ちひろ「さあ、ついに始まりますよっ!」

ちひろ「トークバトルショーッッ!!」

ちひろ「今日も実況アナウンサーはブルーナポレオンの川島瑞樹さんと」

瑞樹「よろしく」

ちひろ「私、スーパー事務員千川ちひろがお送りします!」

ちひろ「この番組は、『何時間でもライブが出来る!』モバドリンク製作所の提供でお送りします」

ちひろ「そして、今回のバトルフィールドが、こちらァァァーーーーーーッ!」

ゴゴゴゴゴゴゴ

未央「げえーーーーっ、ステージがせり上がってきたーーーーっ!」

凛「こ、これは……」

ちひろ「これが今回のバトルステージ」

ちひろ「急傾斜デスマッチリングですっ!」

465: 2015/02/04(水) 02:22:35.67 ID:UF3aUYYNo

ちひろ「参加者の皆さんには、特殊なブーツを履いていただきます」

卯月「うわ、重たい……」

凛「確かに……」 ガッポガッポ

春菜「見た目は美容院にあるメガネ入れみたいなのに……」

夏樹「……こんなもん履いて何させようってーんだ?」

ちひろ「その靴には軽いスパイクや、グリップを聞かせる特殊なコーティングがしてあります」

莉嘉「へえ」

沙理奈「あ、ほんとだ。ちょっとなら壁にもくっつく」

卯月「わわっ、それじゃあ壁走りなんかも……」

菜々「ウサミン星のときみたいに、壁に貼り付けるようになるかも☆」

ちひろ「何せ一缶飲めば何kmも走った疲れが一瞬で消し飛ぶドリンクを開発した我が社の新製品」

ちひろ「技術の結晶ですからねっ」

卯月「あ……例のドリンク、自社製品だったんだ……」

夏樹「あれの売上で事務所こんだけでかくなったんだとさ」

ちひろ「確かにこのブーツの裏面はものすごく吸着性があります」

ちひろ「ですが――このままだと、ゲームにならない」

ちひろ「これは、『トークバトルショー』ですからね」 ニッコリ

466: 2015/02/04(水) 02:33:22.56 ID:UF3aUYYNo

ちひろ「芸能界はまさに戦場ッ」

ちひろ「例えバーターで出たとしても!」

ちひろ「年末年始需要でテレビに出られたとしてもっ!」

ちひろ「少ないチャンスをものにして、しっかり目立たなくちゃいけません!」

ちひろ「ただ黙って話を聞くだけや、相槌を打つだけなら誰にでも出来ます」

ちひろ「大事なのは、会話の主導権を握ることッ!」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「話の中心にいれば、その話題が絡む流れに少しでも面白い余地があれば自分はカットされない……」

瑞樹「何か流れを生み出すネタで主導権を握るというのは、存外大切なこと」

ちひろ「そこで皆さんには、あの斜面で闘いながらトークをしてもらいます」

ちひろ「ルールは簡単」

ちひろ「さきに相手を下のプールまで落下させた方の勝ちッッ」

ちひろ「基本的にルール無用ですからねっ」

夏樹「なるほどこいつはいい感じに狂ってやがるな」

莉嘉「トークも大事だけど、肉弾戦も必要ってことかな」

凛「よもや、トークバトルショーが『トークのバトル』とか『トークでバトル』とかでなく」

凛「『トークとバトル』の略だとは思わなかった……」

467: 2015/02/04(水) 03:02:02.08 ID:UF3aUYYNo

ちひろ「トーク要素は至ってシンプル」

ちひろ「真面目に落とし合いながらも、会話の主導権を握る」

ちひろ「真のアイドルだとしたら、それくらい実践できるものです」

ちひろ「今回はウェブ配信ということで、リスナーの方々にも参加していただきますっ!」

ちひろ「ルールは簡単」

ちひろ「リスナーさんは、定期的に現れるかもしれない投票ボタンで、今主導権を握っていると思う方に投票するだけ」

ちひろ「ただそれだけです」

ザワザワ

ちひろ「まず、私や審査員が簡単に投票します」

ちひろ「そして、そこに生放送参加者さんの票数が加味されます」

ちひろ「そして――」

ちひろ「負けた方のブーツからは、遠隔である液体が染み出します」

卯月「ふえ!?」

ちひろ「まずは徐々にグリップ能力を失わさせる液体を流し、次いで滑りやすい液体が染み出てきます」

ちひろ「つまり!」

ちひろ「このトークバトルショーでの勝ちパターンは概ね2つ」

ちひろ「短期決戦に持ち込み、武力を持って相手を落とすか」

ちひろ「持久戦に持ち込み、トーク力を持って相手を落とすか」

卯月「……」

ちひろ「それでは早速行ってみましょう!」

卯月「え!?」

ちひろ「一回戦!」

ちひろ「島村卯月選手対、安部菜々選手ゥゥゥゥゥ!!」

ワアアアアアアアアアアアアアア

卯月「あ、あわわ……」

卯月(はじまるんだ、本戦が……!)

468: 2015/02/04(水) 03:02:42.30 ID:UF3aUYYNo
意識飛んでいたし試合開始すらできませんでしたが誤字とかぼろぼろだし寝ます、申し訳ない

474: 2015/02/04(水) 23:52:29.23 ID:UF3aUYYNo

<346プロダクションメイン広場特設会場>

ワァァァァァァァァ

夏樹「すっげえ声援……」

沙理奈「でもこれ、大半が高垣楓のものかと思うとちょっとムカつくわ……」

莉嘉「……でも、関係ない」

莉嘉「この超満員の視線を最後に一人占めするのは――」

3人(((この私だッッ)))

楓「……」

楓(観客席とは対照的に、後ろの視線、厳しいわね……)

楓「……」

楓(やっぱり、こっちの会場には来てない、か……)

莉嘉「……負けないよっ」

楓「……そう」

楓(この娘も、あの人のプロジェクトの……)

楓「……」

楓「私も、よ」 ポソ

楓(こんなに多くの視線より、今は、ただ――――)

475: 2015/02/05(木) 00:05:25.66 ID:AEIFw0b4o

<246プロダクション倉庫裏公衆便所横特設会場>

未央「ちょっと待てーーーーい!」

未央「移動しろとは言われたけど、この扱いの差はなんじゃーーー!」

卯月「うわあ、壮絶……」

凛「確かに広いし観客席があるにはあるけど……」

春菜「確かにこれは差別意識を感じますね……」

ちひろ「えーっと、あちらのAステージの方からクレームが出てますが……」

ちひろ「このステージ、靴のギミックからいろんな液体出したりするじゃないですか」

ちひろ「おかげで次の対決ができるようになるまで時間があいちゃって……」

ちひろ「それに高垣楓さんが出るから観客席も多かったので、ステージを二つに分けたんです」

未央「それにしてもさあ!」

ちひろ「ちゃんとこうして相互に大型モニターとカメラで中継つなげていますから?」

卯月「なんだ、よかった~」 ホッ

菜々「むしろそのおかげでこっちのファンも向こうの会場残ってる人多いよーな……」

春菜「私のファンも、沙理奈ちゃんの応援も兼ねて大分無効に残っちゃいましたからね……」

未央「くっそー、ちひろさん、いい人だと思ったのに……」

476: 2015/02/05(木) 00:40:57.40 ID:AEIFw0b4o

P「……」

P「確かに、酷いステージかもしれません」

P「この日陰のステージにくるまでの努力を考ると、そう思うかもしれません」

未央「で、でしょ?」

春菜(あれ?)

菜々(ん?)

卯月(未央ちゃんは……)

凛(このステージまで来られてな……いややめよう、口に出すのは……)

P「……」

P「アイドルとは、そういうものです」

P「激しい戦いに勝利して、辿り着くのも、最初はこういう小さなステージ」

P「あちらのステージにいらっしゃるのは、そのステージを積み重ねて、信頼を得た人達です」

未央「……」

菜々「まあ、そうかもね」

春菜「沙理奈ちゃん、ブルーナポレオンの顔としてグラビア大分頑張ってくれてたし……」

卯月「夏樹さんも、路上でギター弾いたりしてたって聞きますね……」

凛「それに……莉嘉ちゃんも……」

未央「……そう、だね」

477: 2015/02/05(木) 00:52:51.63 ID:AEIFw0b4o

P「ですが――」

P「悔しいと、思うことは、いいことです」

未央「プロデューサー……」

P「目の前のステージは、あちらと比べて、低いかもしれない」

P「それが、もしも、不満ならば」

卯月「踏み台にしていく、ですよねっ!」 バッ

未央「しまむー!?」

卯月「私だって!」 シュタッ

卯月「私だって、あっちで輝けるくらいのアイドルになりたいです!」

卯月「それに……思い出したんです、好きだったアイドルさん達は、皆、画面越しでも私を笑顔にしてくれたって!」

卯月「だから私も、あっちのモニターを見てる人たちを、このステージのうえで笑顔にしてみせますっ!」

菜々「ふふ……」 ピョーン

菜々「いいねっ、今まさに青い春☆って感じで」 シュタッ

菜々「ゴングは、いらないですよねっ☆」

菜々「ウサミン星では、二人の心がピョンピョンしたとき、試合は始まるんですよっ☆」

卯月「はいっ、いきますっ!」 ダッ



【1回戦第1試合 ―― 試合開始(ゴング)】

478: 2015/02/05(木) 01:00:38.19 ID:AEIFw0b4o

鈴帆「く~~~~っ、やっぱりゴングのきぐるみ着てても、殴打されたら痛かばいね」

未央「そ、それより、あれをーーーーっ!」

鈴帆「げえーーーーっ、これはっ!」

菜々「心ピョンピョ~ン☆」 ピョーン

菜々「ウッサミーン☆」 ピョイイーン

卯月「わわわっ、すごい……!」

未央「あの急斜面であんな跳躍を……!?」

鈴帆「た、確かにあれはリスキーな動きではあるばい……」

鈴帆「でも、上から顔面を蹴られたらバランスを崩して真っ逆さまである以上、うかつに近づくことはできん」

鈴帆「ばってん、トークで追い込もうにも、すでに奴はウサミン星の話題を始め自分の土俵に持ち込んどるばい!」

未央「卯月ーーーっ、その宇宙レスリングに付きあわずにさっさとケリをつけてーーーー!」

鈴帆「惑わされずに、奴の会話をぶった切るんじゃーーーー!」

菜々(無駄無駄☆) ホッ

菜々(何度も世界の隅に追いやられてきたんだもん☆)

菜々(その度に、ウサミン星の話題で居場所を奪い取ってきた……) ホッホーウ

菜々(どれだけ厳しい話題でも、ウサミン星をねじ込むことが出来ますよーーー!)

菜々(みててくださいね、プロデューサー!) ヒャアッフーーーーーーウ

479: 2015/02/05(木) 02:33:00.10 ID:AEIFw0b4o

菜々(得意のスタイルは昔からず^ーっとAKIBA)

菜々(ミニスカートだって、スカート翻すダンスだって、いっぱいやった……)

菜々(誰よりも足を晒した!)

菜々(今のジュニアアイドルが、まだ精子だった時代から、ずっと!)

菜々(足だけは、磨き上げてきたッッ)

ビョオオオーーーーーン

未央「た、高いッ!」

卯月「わあ……」

菜々「重力が違うせいで、ウサミン星でほど飛べないですよお!」

菜々「で・もぉ……」

菜々「ウサウサウサウサウサウサウサウサ」 ドコドコドコドコドコドコ

菜々「ウサウサウサウサウサウサウサウサ」 ドコドコドコドコドコドコ

菜々「ウサウサウサウサウサウサウサウサウッサミーーーーーーン」 ドゴァァァ

菜々「誰かを足場に何度も浮くのはできるんですっ☆」 キャハ

未央「し、しまむーーーーーーっ!」

鈴帆「う、卯月ーーーーーっ!」

480: 2015/02/05(木) 02:42:42.69 ID:AEIFw0b4o

春菜「いや、あれをよく見て下さい」 スチャッ

未央「おわーーーっ、あれは!」

鈴帆「卯月しゃんが、しっかりと立っておるーーーーっ!」

春菜「メガネをしていれば、この展開もしっかり見れていましたよ」

春菜「メガネどうです?」

未央「ちょっとほしくなってきた」

鈴帆「しかし、どうやって……」

凛「安定感」

鈴帆「ん?」

凛「卯月の動きには、謎の安定感がある」

凛「それこそ一度根付いたら、なかなか動かせないような」

未央「それこそ将来総選挙とかしても、順位が変わらないんじゃないかってくらいに不動のね」

凛「相手がふわふわ浮いてきても、卯月は変わらない」

凛「ただ純粋に笑って地に足の着いた戦いをする」

凛「それが、卯月……!」

481: 2015/02/05(木) 02:51:19.19 ID:AEIFw0b4o

菜々「……っ!」 ビョン

菜々(高く跳ぶために軽量化しすぎたのが裏目に……っ!)

卯月「あのっ!」

菜々「!?」

卯月「ウサミン星って、重力違うんですよねっ」

菜々「!」

菜々(僥倖ッ)

菜々(向こうからトークを仕掛けてきたっ)

菜々(やはり中空への攻撃対処はまだできてないっ!)

菜々(このままウサミンワールドに引きずり込むッッ)

菜々「そう、ついでに酸素濃度なんかも違うんですよっ♪」

484: 2015/02/05(木) 07:45:20.96 ID:AEIFw0b4o

未央「ああ~~~~~っ」

未央「ダメだ、すっかり話の内容がウサミン星一色に……」

鈴帆「そんでもって、あの飛び跳ね……」

鈴帆「まさにこのトークバトルショーのために生まれてきたようなアイドルたい……」

凛「これが……アイドルのバトル……」 ゴクリ

鈴帆「もともと卯月しゃんのブロックにはヤバいのが集まっとったばい」

鈴帆「安部菜々のみならず、高垣楓も、木村夏樹も」

鈴帆「全員が、己の世界ば持っとる」

鈴帆「そこに引きずり込み、個性を存分にアピールし、相手の個性を完封する」

鈴帆「まさに残虐アイドルはびこるブロックたい」

未央「しまむー……」

凛「そっか……デビュー前の私達じゃ、この話題と言えばこのアイドル的なものがないんだ……」

鈴帆「このトークバトルショーでそれをアピールし、フレッシュさで話題を掻っ攫えれば、まだチャンスはあったと」

鈴帆「しかし……さすがは安部菜々。新人にも容赦がないばい」

鈴帆「伊達に貪欲に話題を奪う『ハイエナのウサミー』の蔑称を持っとらんね……!」

485: 2015/02/05(木) 08:08:18.16 ID:AEIFw0b4o

菜々(いけるっ!)

菜々(今までで一番調子がいいっ!)

菜々(ウサミントークもキレッキレ)

菜々(負ける理由が見当たらな――)



ズルッ



菜々「……えっ?」

菜々(足が滑――)

菜々(違うッ)

菜々(ブーツのグリップが……!)

菜々(何で!?)

菜々(今、間違いなくトークを占拠してるのはウサミンなのに――!)

486: 2015/02/05(木) 08:10:59.14 ID:AEIFw0b4o

卯月「わあ、それじゃあウサミン星では、毎月お月見団子が食べられるんですねえ」 パァ

菜々「……っ!」

菜々(そっか……)

菜々(私が絶好調だったんじゃない……)

菜々(この娘が――)

菜々(この娘が喋りやすいように、質問を投げかけてくれてたんだ……!)

菜々(謂わば、こちらはゲストで、この娘が司会のトーク番組っ……)

菜々(その構図なら、主導権を握っているとみなされるのは――――!!)

鈴帆「はは……」

未央「?」

鈴帆「まっこと恐ろしき少女ばい」

鈴帆「ウサミン星を封じるのではない」

鈴帆「ウサミン星に話題を占拠させながらも、主導権を奪い取っとるばい」

487: 2015/02/05(木) 08:14:44.80 ID:AEIFw0b4o

凛「……違うよ」

鈴帆「ふえ?」

凛「多分、主導権を奪うとか、そんなんじゃない」

凛「卯月は、ただ――」

凛「きちんと、“対話'をしてるだけ」

凛「闘いながらも、相手の話に興味を持って、相手のことを知ろうとしてる」

凛「ただ、それだけだよ」

未央「それを平然とやってのけるのが、しまむーのすごいところだよねえ」 ハハ

494: 2015/02/06(金) 01:13:11.48 ID:Vn6yS6r5o

菜々(滑るっ、もう地面にまともに足をついてられないっ) バッ

菜々「そしてッこれがッッ」

菜々「ウサミン星の成人の儀!」

菜々「歳の数だけの――」

ドコドコドコドコドコドコ

菜々「激励ピョンピョンキーーーック!」

卯月「きゃっ……!」

未央「ふらついたっ!」

菜々「アーンド……」

菜々「きゃろっと☆すてぃっく☆くらーーーっしゅ!」

鈴帆「重力を加えての、膝を逆にへし折りに行くローーーーーーーッ」

未央「こ、これにはたまらずしまむーの体が崩れるーーーーーっ!」

菜々「かーらーのー」 グルングルングルン

菜々「エアスピンドライバーーーーーーーーッ!!」 ズドーーーーーーン


495: 2015/02/06(金) 01:28:59.38 ID:Vn6yS6r5o

菜々「っはあ……はあ……」

菜々(頼むから立ってこないで……)

菜々(こっちはもう若くないし、無駄に飛び跳ねてバテバテだし、足ももうパンパン……)

卯月「」 ズズズ

未央「駄目、このままじゃ倒れたまま滑り落ちるッ!」

鈴帆「目を覚ますばい、卯月しゃーーーーん!!」

菜々(お願い、落ちてっ)

菜々(もう、後には引けない……)

菜々(この歳まできたら、もう引けないっ……)

菜々(だからどうか……このまま、せめて、高垣楓と闘う機会を――)

496: 2015/02/06(金) 01:37:48.02 ID:Vn6yS6r5o

ガシッ

凛「!!」

未央「しまむー!」

卯月「あわわ、危うく落ちかけました……」

菜々「……っ!」

菜々(ヘリを掴んで一命を……!)

菜々(でも、こっからあのギリギリまで飛び跳ねる余力は、多分、もう……)

卯月「さすが、ウサミン星の成人の儀ですねっ!」 キラキラー

菜々「……」

菜々「ふふ」

卯月「ほえ?」

菜々「結構ピンチな状況なのに、笑う余裕はあるんですね」 クスクス

卯月「ウサミンさんこそっ!」 アハハ

未央「もうすっかりウサミンってフレーズしか覚えてないし、相手の名前忘れたなしまむー」

鈴帆「目ぇ輝かせて聞いてた割に言うほど頭に多分入っとらんなあいつ」

凛「そ、そこもまた魅力なんだよ……多分」

497: 2015/02/06(金) 01:57:30.83 ID:Vn6yS6r5o

菜々「……卯月ちゃんは……」

菜々「こういう戦い、得意なのかな?」

卯月「ふえ!?」

卯月「そ、そんなことないですよっ!」

卯月「……あ、でも」

卯月「転んでも、立ち上がるのは得意かもしれません」 アハハ

菜々「……ふふ」

菜々「そっか」

菜々(……もう、まともな攻撃は出せそうにないなあ)

菜々(でも……)

菜々(ウサミン星からやってきた、スーパーアイドルだもんね)

菜々(このまま……無様に足を滑らせるくらいなら……)

498: 2015/02/06(金) 02:09:29.24 ID:Vn6yS6r5o

菜々「卯月ちゃん!」

卯月「ふぁい!」

菜々「成人の儀式・エアスピンドライバーを受けきった卯月ちゃんを!」

菜々「ウサミン成人に認定しますっ☆」

卯月「ええ~~~~~!?」

春菜「あ、このコメント閲覧用V……」

未央「すごい……草でいっぱい……」

凛「あー、なるほど、成人と星人を引っ掛けたんだ……」

菜々「……これが、その認定証書」 グッ

凛「構えたッッ」

鈴帆「ここにきて、安部奈々が完全に主導権を……!」

菜々「ウサミン星では、はあとのマークで受け取るんですよ」

菜々「こう、頭の上で、両手でハートのマークを作って……」

卯月「こ、こうですか?」

菜々「そうそう、上手上手」 フフ

499: 2015/02/06(金) 02:24:20.09 ID:Vn6yS6r5o

菜々「それじゃ――受け止めてねっ☆」 ダッ

未央「行ったッッ」

菜々(足はガクガクだけど、斜面を駆け降りるだけならなんとかなる……)

卯月「……っ」 ドキドキ

菜々(……不思議だなあ)

菜々(追い込まれてるのに、なんか、楽しい)

菜々(……相手が卯月ちゃんだからこそのやりとりが、できたからかな)

菜々(もっと……)

菜々(ウサミン星の話をするにしろ、相手のこと、いろいろ知って興味を持ってきたらよかったな……)

菜々「うー……」 バッ

未央「跳ぶんだッッ」

凛「いや、低い……」

春菜「あれだと、顔面への膝蹴りに……!」

菜々(意地でも……足をもっと高くあげるっ!)

菜々「さああああああっ」

ドガッ

凛「ドロップキックッッ」

未央「しまむー!」

鈴帆「あのハートマークを撃ちぬいたと……!」

500: 2015/02/06(金) 02:26:25.81 ID:Vn6yS6r5o

卯月「も……無理っ」 バチッ

未央「弾いたッ! まるでバレーのトスみたいにっ!」

鈴帆「後方に倒れてまうばい!!」

菜々(もう、多分、何も絞り出せないなあ)

菜々(でも、せめて)

菜々(最後まで、ウサミンアイドルとしてっ!)

菜々「みーーーーーーーーん!」 ビョオオーーーーン

未央「しまむーのハートを踏み台に、さらなる跳躍!?」

鈴帆「いや、ばってん、あの角度で飛び上がったら……!」

501: 2015/02/06(金) 02:40:52.22 ID:Vn6yS6r5o

菜々(いつから……ウサミン星を喋っても、楽しくなくなってたのかなあ)

菜々(いつまで経っても下積みで、一生バイトで終わりそうで、変に焦ってた)

菜々(相手の顔も、自分の顔も、ろくに見ないで)

菜々「あ……」

菜々(こんなに、跳べたんだ)

菜々(それに……)

ウサミーーーーン

菜々(こんなザマなのに、応援に来てくれてる人、いたんだ……)

菜々(何にも、見えてなかったなあ)

菜々「菜々は、あのウサミン星まで帰るから!」

菜々(思ったより、重力が来ない)

菜々(このまま空、飛べたらいいのになあ)

菜々「じゃあね、卯月ちゃん!」

菜々(ああ、気持ちいいなあ)

菜々(跳べるとこまでただ飛び上がっただけなのに)

菜々(伸ばした手は、結局何も掴めないままなのに)

菜々「後は任せたわ!」

菜々(ずうっと憧れていたお月様にも、今だったら、指先くらい、とどくかな――――)



ドッパーーーーーーーーーーン

502: 2015/02/06(金) 02:52:40.75 ID:Vn6yS6r5o

未央「落ちた!!」

凛「何で……」

凛「自爆……?」

春菜「……負けを悟ったんでしょうね」

鈴帆「だけど、それでも、このステージを演じきった」

春菜「あくまでもウサミン星人として飛び回り、最後はよく分からない名目で最後の一撃」

鈴帆「どちらが先に落ちるかというハラハラ感と同時に、画面から消えるほどのスーパージャンプで心をつかむ」

鈴帆「更にはそのまま負けることで水でメイクが落ちることもなく、また実質自爆に草を生やすリスナーもおるばい」

春菜「最後の方の立ち回り、負けてなお地下アイドルとしてのキャリアを感じる老練のテクニックでしたね」

凛「それよりも、卯月は――」

卯月「あ、あわわ」

未央「またしても縁にしがみついてる!」

鈴帆「卯月しゃんの勝利ばい!」



【1回戦第1試合 勝者・島村卯月】

503: 2015/02/06(金) 02:55:50.00 ID:Vn6yS6r5o

卯月「……何だかあんまり勝ったっていう実感が……」

凛「まあ、そうかもね」

未央「途中まで、いつものしまむーって感じで話聞いてただけだもんねえ」

卯月「ウサミンさんも、最後は自分から跳んで脱落してくれたような気がするし……」

卯月「予選でも、自分で勝ったんじゃなくて助けられただけだし……」

凛「卯月……」

504: 2015/02/06(金) 03:00:59.87 ID:Vn6yS6r5o

P「それも立派な、貴女の一つの力ですよ」

卯月「プロデューサーさん……」

P「人間とは、全ての人を助けられるわけではありません」

P「助けてもらえる人というのは、相応の魅力があるということです」

未央「そうだよ、しまむー!」

鈴帆「ウチも、卯月しゃんを見ていると、協力したろかなって気分になるばい」

卯月「そ、そうかな…….///」 テレッ

未央「でもプロデューサーが言うとイマイチ現実感がないよね」

凛「いろんな人を助けまくってそうなイメージが……・」

P「……そんなこと、ありませんよ」

P(最後まで、面倒を見て助けてあげられなかったヒトなら――――)

505: 2015/02/06(金) 03:09:01.66 ID:Vn6yS6r5o

<Bブロック>

楓「……」

楓(あの娘の笑顔も、仕草も、会話のテクニックも、周囲との関係性も…・…)

楓(全部、真似が出来ないもの)

楓(…あの人の隣で、そうして笑っていることも……)

楓「……」

楓「……」 ギリッ

楓(負けられない)

楓(負けたくない)

楓「絶対に…・…」 ズズズ

506: 2015/02/06(金) 03:25:48.04 ID:Vn6yS6r5o

夏樹「向こうのブロックが気になる、ねえ」

夏樹「気持ちはわかるけどさ」

夏樹「別に次に進むのは、アンタに決まったわけじゃないだろ?」 ニイ

楓「……」

夏樹「そのゴミを見る目、いいねえ」

夏樹「倒し甲斐がある」 ヒョイ

楓「……」 シュタッ

ちひろ「今、両者がリングインッ!!」

夏樹「こんな髪の毛してる時点で見世物みたいなのには慣れっこだ」

夏樹「アウェーってのも、テンション上がるねえ」

夏樹「覚えていきなよ、お上品なアイドルさん」

楓「…………」

夏樹「ロックンロールってのは、油断したえら~い奴をぶん殴るのが得意ってな」 ニヤリ



【1回戦第2試合 ―― 試合開始(ゴング)】

511: 2015/02/07(土) 01:03:46.59 ID:2YcBxcP8o

夏樹「346プロのエースアイドルであることを、尊敬してるからさ」

夏樹「だから――」 スチャッ

ちひろ「わわっ、鉄パイプですか!?」

瑞樹「いえ……あれは……」

夏樹「ステージには、こーいうもんは持ち込んでいーんだろ?」 ニィ

ちひろ「マイクスタンド……!」

瑞樹「ライブステージに使う小道具は持ち込みが可能……」

瑞樹「おそらくその中でも有数の破壊力を持つ得物があのマイクスタンド……」

ちひろ「それなら演出に使う火薬でも使うほうが効率はいいような」

瑞樹「しれっととんでもないこと言うわね」

512: 2015/02/07(土) 01:41:01.59 ID:2YcBxcP8o

瑞樹「でも実際、アイドルがトークバトルショーで火薬を使って頃しにかかったら、さすがに次から仕事なくなるわ」

ちひろ「そうですねえ」

瑞樹「でも、あのマイクスタンドなら」

瑞樹「こと、木村夏樹においては」

夏樹「こんなナリだしさ」

夏樹「意外と悪くない組み合わせだと思わないか?」

楓「……ええ」

楓「でも、別に、勿体ぶらなくても」 クス

夏樹「ま、そーだな」 カッ

瑞樹「マイクスタンドを蹴ったッ」

ちひろ「当然マイクスタンドは大きく円を描くように動――」

夏樹「こっちは挑戦者、オープニングアクト様さ」 ヒュッ

夏樹「遠慮無く先にヤらせてもらおうかな」 ヒュン

沙理奈「まるでヌンチャクのようにマイクスタンドを……」

みりあ「わあ、すごい……!」

夏樹「喰われちまっても知らないぜっ」 ダッ


513: 2015/02/07(土) 01:43:22.80 ID:2YcBxcP8o

ズガガガガガガ

ちひろ「あーっと、どんどん振り回されるマイクスタンドのスピードが上がっていく~~~~っ」

瑞樹「射程に入るもの全てを叩き潰さんばかりね」

夏樹「マイクスタンドを持ちながら踊るくらい、ロックスターならば余裕」

夏樹「可愛いキャピキャピアイドルになんてなれないけどッ」

夏樹「別の世界を切り開けるってことを、アンタに勝って証明するッ」 ダッ

瑞樹「制空権に入ったッッ」

夏樹「白い暴動(ホワイト・ライオット)ーーーーーーーッ!!」

ドゴォ

514: 2015/02/07(土) 02:35:58.26 ID:2YcBxcP8o

瑞穂「なっ……!?」

ちひろ「攻撃力を”いなし”ましたね……」




卯月すごい……」

凛「何をどうしたら、あんなふうに…・…」

未央「そういえば聞いたことがある……」

未央「高垣楓は元々実力派トップアイドルなのに、集中力がそれについてきていない、と」

凛「それって単なる注意力散漫なんじゃあ」

未央「たしかにね」

未央「でも――高垣楓の場合は、そうじゃない」

未央「例えば今日の夕飯のことを考えていても、そういう余計な考えがライブに影響を与えることはない」

未央「まさに超トップクラスの才能がある者にだけ許された、圧倒的王者の風格があるサボり方ッ」

未央「他のことを考えていても天辺が取れる――それが彼女の底知れぬ怖さッ」

鈴帆「そんな少女が集中しとるんばい」

鈴帆「ちょっと速い程度のマイクスタンドくらい見切れないでどうすっと」

未央「ましてや、他のことを考えながら仕事をきっちりこなすために、事前に相手の出方を予測したりもしてきてるはず」

未央「染み付いた技術を駆使すれば、一定リズムで振り回されるマイクスタンドくらい余裕で止められるッ!」

凛「なるほど……」


515: 2015/02/07(土) 02:51:03.12 ID:2YcBxcP8o

楓「ホワイト・ライオット――クラッシュかしら」

鈴帆「それに加えて、あの博識勤勉さ」

菜々「なんでも、前のプロデューサーさんと、一緒に色々勉強したらしいですよ」

卯月「ウサミンさん!」

鈴帆「どんな話題にも対応出来る彼女をトークで負かすのもまた、至難の業ばい」

菜々「……確かにそれもあると思います」

菜々「実際、思わぬトークの切り出しに、夏樹ちゃんも嬉しさ半分戸惑い半分という表情」

菜々「でも、その表情と場の空気を、楓ちゃんは――」

楓「まったくほんと、ロックでもない」 ププ

鈴帆「くだらないギャグを持ちだして、オチを全部持っていく」

鈴帆「そして、一区切りをつけてしまうことで、その話題を連続して使いにくくする」

鈴帆「強引に自分の領域であるダジャレを使うだけでなく、相手まで封じ込める老練のテクニック」

鈴帆「一体どう立ち向かうのか、見せてもらうばい……」

516: 2015/02/07(土) 03:16:49.57 ID:2YcBxcP8o

ズルッ

夏樹「!?」

みりあ「え!?」

莉嘉「滑った……!?」

沙理奈「なんだかんだでファンばかり」

沙理奈「数が圧倒的有利に繋がるこのバトルで、しかも接戦」

沙理奈「どっちの方が優勢扱いされるかは自明の理よ」

楓「……」 ガッシーーーン

未央「げえーーーーっ、あれはっ!」

鈴帆「リフトアップされた木村夏樹の、ノックダウンされて横になった酔っぱらいが如き姿勢ッ!」

菜々「まるで飲み放題で調子にのってサワーばっかり頼み潰れる大学生みたいだからってことで、ついたフェイバリットホールドの名前は――」

楓「サワーブリッジッ」 ボキボキボキ

517: 2015/02/07(土) 10:27:43.49 ID:2YcBxcP8o

楓(……)

楓(もう、誰にも負けないアイドルになれた……)

楓(……)

楓(プロデューサー……)

夏樹「」  ドサッ

ちひろ「木村夏樹選手、ダーーーーウン」

瑞樹「気絶したまま斜面を滑っていく……」

瑞樹「このままKO勝ちを宣言した方がいいんじゃ」

ちひろ「まあ、落下シーンがあった方が映えますから」

瑞樹(いつか問題映像に発展して炎上しなきゃいいけど)

518: 2015/02/07(土) 10:32:36.67 ID:2YcBxcP8o

楓「……」

楓「ライブと言えば」

楓「ライブハウスによって、出てくるお酒って異なるのよね」

莉嘉「!」

沙理奈「一人トーク……追撃する気!?」

ちひろ「あーっと、ラジオの仕事で鍛えたひとり語りによって、木村夏樹選手の靴からグリップ力が消えるーーー!」

ちひろ「確実にとどめをさす……ということでしょうか」 ゴクリ

瑞樹「わかるわ……さすがは、エースアイドル……」

瑞樹「油断なんて、ないのかもしれない……」

519: 2015/02/07(土) 10:49:34.07 ID:2YcBxcP8o

楓(……)

楓(完勝できた)

楓(この勝利も、プロデューサーのおかげ)

楓(……)

楓(この大会で圧倒的な優勝をして、もっと大きくなったら……)

楓(ワガママを、言えるくらいのアイドルになれるかしら)

楓(プロデューサーを……指名できるくらいに……)

ガゴッ

楓「……!?」

夏樹「アンタの相手は私なんだしさっ……」

夏樹「目ぇ離すなよ、寂しいだろ」

520: 2015/02/07(土) 10:57:31.71 ID:2YcBxcP8o

ちひろ「は、入ったァァァァ~~~~~!」

ちひろ「さすがにこれは読めなかったんですかねっ」

ちひろ「木村夏樹選手の拳が、ついに高垣楓選手の頬を捉えましたッッ」

沙理奈「そりゃ読めないわ……」

みりあ「すっごい……」

みりあ「マイクスタンドって、あんなこともできるんだ……」 ウワァ

莉嘉「落下地点ギリギリでマイクスタンドを突き刺して、滑った勢いを使いマイクスタンドを使って回転」

莉嘉「そのまま上向きに変わった勢いを見方に、力任せにぶん殴る、かあ」

楓「無茶苦茶で、デタラメ……ね」

夏樹「そういうもんさ」

夏樹「アイドルも、ロックンローラーもな」

521: 2015/02/07(土) 11:00:48.23 ID:2YcBxcP8o

夏樹「でも、まあ、感謝はしてるよ」

楓「?」

夏樹「アンタが高垣楓だから、たちあがれた」

楓「……」

夏樹「一撃入れるだけで盛り上がる」

夏樹「もしも無理でも、最強王者のアピールになる」

夏樹「流れやカメラ映りを考慮しても、無様に粘ることが許される」

夏樹「だからまた立ち上がれた」 スッ

莉嘉「かまえた!」

沙理奈「徒手空拳……!」

夏樹「マイクスタンドほど威力はないけど、こっちの方が手数を出せる」

夏樹「さばかれるなら――さばけないほどの手数で押すッッ」 ダッ

瑞樹「行ったッッ」

夏樹「ドララララララララァァァッ」 ドコドコドコドコドコドコ

522: 2015/02/07(土) 11:09:39.47 ID:2YcBxcP8o

楓(圧倒的な手数)

楓(なんとなくで他事を考えながらさばける量じゃない)

楓(集中しても、全部を防ぐのは――――)

ガシッ

夏樹「!?」

楓「確かに、全部さばくのは無理……」

楓「だから、捕まえさせてもらったわ」 フフ

夏樹「こんにゃろッ――――」 ゾクッ

夏樹(こっちは連打のためにソッコー殴った拳を引いてるってーのに……!)

夏樹「捕まえる方が難しいだろ……!」

楓「そうかしら?」

楓「……ああ、悪役っぽい流れならば、こう言っておくべきだったかしら」

楓「無駄な努力、ご苦労様」 ニッコリ

ドッゴォ!

ちひろ「ヘッドバットォォォォォォ」

楓「ワックスでガチガチのその頭と、どっちが堅いか勝負してみてもよかったかもしれないわね……」

楓「どっちが強いか、わくワックスる対決だったのに……」 フフ

夏樹「ははっ……」

夏樹「グレートだな……」 グラァ



ドッパーーーーーーーーーーーーーーーン



ちひろ「決着ゥゥゥゥゥーーーーー!!」

ちひろ「1回戦第2試合、一撃こそ入れられど、高垣楓選手がその圧倒的強さを見せつけ2回戦進出を決めましたッ!」



【1回戦第2試合 勝者・高垣楓】

532: 2015/02/08(日) 22:15:53.07 ID:iTvjYNtOo

夏樹「……ッ」 バッ

夏樹「……ここは……」

みりあ「あ、起きた!」

ちひろ「あ、恐い落下の仕方してましたけど、何とか無事みたいですね」

夏樹「……」

夏樹「……そっか、まけたのか……」

莉嘉「……」

夏樹「悔しいなあ、くそっ」

莉嘉「……笑ってるじゃん」

夏樹「笑えるさ、全部出しきってこのザマならな」

夏樹「ああ、でも、くそ」

夏樹「ちったぁ見なおしたかよ、くらい言える一撃入れたかったんだけどなあ」

莉嘉「高垣楓相手にそんなこと言えるってすごいなあ」

みりあ「んー……」

みりあ「莉嘉ちゃんなら出来ると思うけど」

莉嘉「え!?」

みりあ「だいじょーぶ!」

みりあ「お姉ちゃんとの舞台が近いからって、キンチョーしなければ!」

みりあ「いつもの莉嘉ちゃんらしく、ゴーゴーだよ!」

莉嘉「……だね」

莉嘉(初戦は大事)

莉嘉(でも……同じくらい、ステージをかけた準決勝も大事)

莉嘉(しっかりと、見ておかなきゃ)

533: 2015/02/08(日) 22:37:31.94 ID:iTvjYNtOo

春菜「ついに私達の出番ですね!」

凛「え、あ、うん……」

春菜「緊張してるんですか?」

春菜「メガネかけるとリラックスできると」

凛「いらない」

春菜「これはあの音瓶大学の研究によって科学的にも」

凛「いらないから」

春菜「……」

春菜「わかりました」

春菜「アイドルは舞台裏で争うことがあるように、テレビじゃプロレス的に争っても水面下で仲がいいこともよくあります」

春菜「ですので!」

春菜「プライベートでこれからどうなるかはともかく!」

春菜「今このリングの上では徹底的に叩き潰す怨敵とみなしますっ!」 ビシィ

凛(調子狂うな……)

534: 2015/02/08(日) 23:05:52.70 ID:iTvjYNtOo

春菜「ふっふっふ」

春菜「私には秘策があるんですよ」 キラーン

凛「……?」

春菜「あちらの会場に、ブルーナポレオンのファンがいっぱいいる」

春菜「一見するとこの場にいないのは不利にも見えますが、言うならば場外のやりとりを見られないということ!」

春菜「そして、途中からはファンもかけつけるという寸法ですよ」 ククククク,キラーン

凛(光った……)

卯月(メガネが光った……)

未央(わざわざメガネを触って光るように位置や角度を調整した……)

菜々(こだわりがあるんですねえ……)


535: 2015/02/08(日) 23:35:48.38 ID:iTvjYNtOo

春菜「比奈ちゃんっ!」

比奈「準備万端っすよ~」 ゴソゴソ

鈴帆「な、あの袋はーーーー!!」

春菜「私は先程の四人みたいに、勝手にリングにあがったりはしません!」

春菜「さあ、モニターの向こうのちひろさん、コールを!」

ちひろ「なんて進行にやさしい……」

瑞樹「伊達にそこそこ露出してないわね」

ちひろ「それでは、順に入場いただきましょう!」

ちひろ「まずは奇数コーナー!」

ちひろ「ブルーナポレオンのトーク担当!」

ちひろ「1にメガネ2にメガネ、隙あらば100までメガネ!」

ちひろ「彼女のメガネから逃げられるか!?」

ちひろ「最終予選順位4位、上条春菜ァァァァ~~~~~!」

春菜「比奈ちゃん!」

比奈「うぃっす!」 ブワァーーー

未央「ゲェーーーー! 紙吹雪ばりにメガネを投げているーーーーーっ!」

春菜「さあさあ皆さん、メガネをどうぞっ!」

536: 2015/02/08(日) 23:45:39.31 ID:iTvjYNtOo

ちひろ「続きまして偶数コーナー!」

ちひろ「クールな瞳に熱いパッション!」

ちひろ「キュートな少女が殴りこみ!」

ちひろ「出演番組・ステージともに一切なしッ!」

ちひろ「勢いに乗って根こそぎ下克上を果たせるか!」

ちひろ「時代を変えるは我にありッ!」

ちひろ「最終予選順位8位、渋谷ァァァァりィィィィンンンンンンンンン!!」

凛(は、恥ずかしい……)

537: 2015/02/08(日) 23:50:23.48 ID:iTvjYNtOo

春菜「っとと」

春菜「正直この斜めのリングで動ける程の身体能力はないですけど……」

春菜「メガネがあれば、こんな斜面も大丈夫なんですよっ!」

凛「宗教じゃん、もはや……」

ちひろ「それでは、第3試合!」

ちひろ「ロボトルぅ~~~~」

瑞樹「多分若い子は知らないしツッコみようがないわよ」

ちひろ「ふぁいと……」

瑞樹「露骨に凹まないでよ」

ちひろ「気がついたら若さってなくなっているんですね……」

瑞樹「分かるわ……」

春菜「あっれー!?」

春菜「ゴング鳴りましたよ!?」

春菜「なんかこっち無視してそこそこリスナー受けしそうなトーク始めようとしてません!?」




【1回戦第3試合 ―― 試合開始(ゴング)】


538: 2015/02/08(日) 23:56:37.52 ID:iTvjYNtOo

春菜「さて」

春菜「凛ちゃん……」

春菜「あ、渋谷さんって呼んだ方がいいですかね」

凛「え?」

凛「別に好きなように呼んでいいけど……」

春菜「じゃあフェルナンデス」

凛「なんで」

春菜「それでフェルナンデスさんは」

凛「そのまま進行しようとしないで」

539: 2015/02/08(日) 23:59:52.42 ID:iTvjYNtOo

春菜「フェルナンデスは不服ですか?」

凛「そりゃ、まあ」

春菜「それじゃあメガネの似合う渋谷凛ちゃんって呼ぶことにしますね」

凛「待って」

春菜「それともやっぱりフェルナンデスの方が」

凛「ムチャな要求を最初にして小さな要求押し通すテクニックなのかもしれないけど、言うほど小さくないからね」

春菜「それで、メガネンデスさんは」

凛「混ざってる」

春菜「略してメガデスさんは」

凛「どちらかというとそれさっきの木村夏樹さんの領域じゃ」

540: 2015/02/09(月) 00:29:56.10 ID:1DKg7nyXo

凛「……っとと」 グラッ

凛「……」

凛「え?」

凛(今、なんで、何もないのにふらつい――)

未央「しぶりーーーん!」

未央「相手のペースに飲まれちゃ駄目!」

未央「さっきから、全部メガネワールドに吸収されてる!」

凛「!」

菜々「うーん、なかなか大胆なことしますねー」

菜々「ナナと違って、自分のトークに引きずり込む際に肉弾戦は仕掛けてない」

菜々「相手のバランスを崩しにくいというデメリットがあるんですけど……」

菜々「殺気を隠し、気付かず自分の領域に引きずり込むことに注力して、メリットにデメリットを上回らせてますねっ」

卯月「すごい……」

鈴帆「あれが……テレビにも出てる、ブルーナポレオンっちゅーことばい」

541: 2015/02/09(月) 00:48:46.46 ID:1DKg7nyXo

春菜「どうしましたか?」

春菜「やっぱり乱視でよく見えていないからふらついているのでは?」

春菜「そんな貴方にはこれ」

凛「だからいらないって」

春菜「2000年メガネ」

凛「本当に心からいらないっていうか乱視全然関係ないし!」

春菜「世紀末から未来を見通すメガネをかければ、まあ概ねなんとかなる気がしますっぽい」

凛「そこだけ弱気なんだ……」

凛「……ハッ!」

凛(ま、まずい……)

凛(完全にペースを握られてる……) グラグラ

凛(なんとかしないと、為す術もなく――――!)

542: 2015/02/09(月) 01:14:02.98 ID:1DKg7nyXo

凛(そうだ、卯月みたいに……)

凛「でも、そんなメガネ一体どうやって……」

春菜「いやー、これ、2000年を記念して作られた色物メガネで」

春菜「実は親戚のおじちゃんが買ったやつだから、私には度が合わないんですよねえ」

春菜「おじさんったら、これがお年玉代わりだーなんて言っちゃって」

春菜「まったく最高のお年玉ですよ!」

凛「あ、嬉しいんだ」

凛「……」

凛(しまった、ついツッコミを――)

春菜「そりゃ嬉しいですよ!」

春菜「確かにお金をもらえるのは嬉しいですけど……」

春菜「お金をもらうより、自分のために誰かが用意してくれた品物をもらう方が、嬉しいってなりませんか?」

凛「うっ……た、確かに……」

春菜「メガネンデスさんにも、そういうのあるでしょ?」

凛「そのアダ名まだ生きてたんだ」

春菜「ほら、小さい頃、それこそアダ名をつけあった娘が転校とかして、その際に鉛筆もらったりとか……」

凛「そういえば昔、手作りのバトエンを……」

春菜「ああ、100億万ダメージとかの」

凛「いや、さすがにもうちょっとバランス考えたやつだったから……」

543: 2015/02/09(月) 01:17:51.05 ID:1DKg7nyXo

未央「ぐ、ぐむーっ」

未央「まずいよ、終始相手ペースだ」

鈴帆「安部菜々と違って、メガネをごり押すボケからツッコミまで、あやつは幅広くできる」

菜々「バトルスタイルや、ポジションはまだ不透明」

菜々「でも、メガネという武器はある……」

菜々「今の露出くらいが、一番どこからでもトークで攻められる時期ですよねえ」

鈴帆「なにより、渋谷凛もまたボケからツッコミまでいけてしまうのが裏目ばい」

未央「確かに……」

未央「凛が手を変えるのに合わせて、立ち位置を変えられてる……」

卯月「それに……なにか、全体的に、堅い気が……」

未央「確かに……」

鈴帆「似たようなゴリ押しタイプの安部菜々に、卯月しゃんが勝利しとるばい」

鈴帆「意識してもーて、自分のスタイルを貫けとらんのかもしれんとね」

545: 2015/02/09(月) 01:43:40.71 ID:1DKg7nyXo

卯月「凛ッちゃーーーーーん!」

凛「!」

凛「卯月……」

卯月「思い出して!」

卯月「これは、トーク『バトル』ショーだよー!」

未央「自分のスタイルを貫いてけーーーっ!」

凛「バトルショー……」

凛(そうだ……そうだよ……)

凛(律儀に舌戦で挑まなくても!)

凛「直接叩き潰せばいいっ」 ダァッ

未央「よし、そのままぶちかませーーーーっ!」

546: 2015/02/09(月) 01:46:20.41 ID:1DKg7nyXo

凛「カーフブランd――」 ズルッ

凛(しまっ……!)

春菜「くく……」 キラーン

春菜(やはり焦って肉弾戦に出ましたか)

春菜(でももう遅いですよっ)

春菜「そのまま滑って落下して下さいッ」

春菜「水中メガネでよければいくつでもお貸ししますよっ!」

凛「お、落ち――――」

凛(卯月みたいに、ヘリを掴m――) スカッ

凛「……っ!」

凛(ああ……私じゃあ、卯月みたいに――――)



ドッパーーーーーーーーーーーーーーーン

547: 2015/02/09(月) 01:55:22.25 ID:1DKg7nyXo

春菜「イエス!」 ガッツポ

春菜「これでまず1勝!」

春菜「あとは沙理奈ちゃんが勝利すれば、ブルーナポレオンは2勝!」

春菜「しかも1人は確実に決勝戦に……!」

春菜「さーて、勝利の宣言を――」

ガシッ

春菜「……え?」

凛「危なかった……」

春菜「な、なんで!」

春菜「落ちたはずじゃあッ……!」

凛「紙吹雪代わりに宙を待っていたメガネの残骸がなければ、落ちていたと思うけど……」

春菜「!」

春菜「そのフレームの歪み……」

春菜「まさか!」

春菜「メガネのツルを、ヘリに引っ掛けたというんですかッッ!!」

凛「さすがオススメ、いいフレーム使ってるよ」

凛「人一人ぶら下がってもなんとかなるんだもん」

凛「……まあ、さすがにもげそうだったから、ケータイは落とさなくちゃいけなかったけど」

548: 2015/02/09(月) 02:03:08.64 ID:1DKg7nyXo

凛「この高さで、決めるッ」

凛「子牛の焼き印押し、なんて軽さじゃない!」

春菜「暴力に訴えるのよくないですよ!」

凛「何を今更!」

凛「ガーデニングと花屋の手伝いで培った、土いじりによる筋力で攻めるっ!」 クワッ

凛「カーフ・ガーデニングーーーーーーッ!」 ズガァッ

凛「……」

凛「!!」

春菜「フフフ……」 キラーン

春菜「なかなかにやりますねえ」 ガバッ

卯月「そんな……」

未央「効いてない……だと……」

春菜「ですが!」

春菜「呑気にトークしてただけあって、奇襲対策はバッチリなんですよ!」 バッ

未央「ゲェーーーー! 体中にメガネが!!」

春菜「防弾メガネ……」

春菜「強化ガラスのメガネ達が、私の体には巻かれています」

春菜「例えどんな衝撃だって、メガネが全て吸収してくれるのですよっ!」

549: 2015/02/09(月) 02:10:46.29 ID:1DKg7nyXo

春菜「どうです?」

春菜「バトルにおいても、メガネはとても有用なんです」

春菜「メガネが必要じゃない場面なんて、ないんですよ!」

未央「……ん?」

未央「し、しぶりーーーん!」

凛「?」

卯月「?」

卯月「……!」

卯月「り、凛ちゃん!」

卯月「スカート!!」

凛「スカート……?」 ソッ

凛「……」

凛「!?!?!?///」

春菜「あー……」

春菜「メガネ一本で体を支えるのに夢中で、ギミック付き足場の側面が機械仕掛でネジとかいっぱいなことに気が付かなかったんですね」

春菜「裂けちゃってますよ、スカート」 ニッコリ

556: 2015/02/10(火) 00:34:46.36 ID:OHMUPIxPo

凛「~~~~ッッ」 ペタン

春菜「ふっふっふ」

春菜「やはりまだ素人に毛が生えたようなもの」

春菜「今までの比ではない性的視線に耐えられないみたいですね」 キラーン

春菜「今楽にしてあげましょう」 ザッザッザッ

未央「た、立って、しぶりーーーん!」

凛「む、無理……」

凛「きょ、今日のぱんつ、そんな可愛いやつじゃないし……」 ウウ

未央「照れるポイントがちょっとズレてるよしぶりん!」

卯月「は、春菜ちゃんが近付いてますよ!!」

凛「……」

凛(全国ネットでぱんつを晒して……)

凛(いろんな人の夢を奪って……)

凛(そこまでして立ち上がる意味って、一体、なんなんだろう……)

557: 2015/02/10(火) 00:44:06.02 ID:OHMUPIxPo

春菜「ふっふっふ」

春菜「今終わりにしてあg――」 ズルッ

春菜「へ?」

春菜「わわわわわわわっ」 ツルツルツル

春菜「な、なんで急にグリップが――!」 バッ

シマパンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!

ヌイタ

スコートハイテナイwwwwwwwwwwwwww

アイドルヨリ ボクノムスコガ タチマシタ

春菜「こ、これは――!」

春菜(しまったッ)

春菜(視線に慣れていないというのが、プラスに出てしまってる……!)

春菜(リングコスチュームでなく、私服でぱんつまでプライベートのものな点)

春菜(あくまで自然なハプニングであり、露出を演出しようという意図のもと用意されたものではない点)

春菜(全てが、視聴者に、“今の試合の中心は渋谷凛のぱんつ'という印象を与えて――!)

春菜「ぱ、ぱんつなんて無機物に負けてたまるもんですかーーーーっ!」

未央「ゲェーーーー! メガネを一気に組み上げた!」

鈴帆「そしてターザンのようにぶら下がり、振り子運動で舞台に戻ったとーーーー!?」

春菜「勝つのはぱんつじゃありません、メガネです!」 クワッ

未央「無機物だよメガネも」



558: 2015/02/10(火) 00:57:57.54 ID:OHMUPIxPo

春菜「くっ……」

春菜「あまり肉弾戦は得意じゃないんですが、仕方ないですね」 クイッ

春菜「この流れを断ち切らせてもらいますよ」 バッ

比奈「!!」

比奈「アレをやる気っスか!?」

春菜「ええ」

春菜「素人とはいえ、それを武器に出来る強さをこの娘は持ってる」

春菜「全部出し尽くさないと、この場を勝ち切ることは不可能」

春菜「それに、相手に食われたままラッキーで勝ったら、次の沙理奈ちゃん戦が盛り上がらないですからね」

春菜「そこで盛り上がって弾みを得て決勝に行かないと、高垣楓落としは不可能!」

春菜「ここで奥の手を出しましょう!」

比奈「……」

比奈「分かったッス」

比奈「信じてるッスよーーーー!」 バッ

未央「げ、げえーーーーーーっ! なんだあれは~~~~~~!?」

鈴帆「なんだか嫌な予感がするのう……」

560: 2015/02/10(火) 02:18:28.66 ID:OHMUPIxPo
眠そうどころか寝てたよ、すまんな

561: 2015/02/10(火) 02:25:23.25 ID:OHMUPIxPo

春菜「全てのレンズはメガネに通ずる」

春菜「そしてメガネもまた、レンズに通じているーーーーっ!」

未央「な、何を言ってるんだか全然分からないけど、何かすごいことが起きそうな気がするーーーーっ!」

春菜「クックック」

春菜「ご覧あれ!」

春菜「これが!」

春菜「私が持参したメガネをばらし再構成することで誕生した!」

春菜「ギネス級最大サイズのスペシャルメガネです!」

バァァァーーーーン

未央「で、でかいっ! まるでゴジラがかけるメガネみたいに……!」

鈴帆「し、しかしあんなもん持ちだして何をする気たい?」

春菜「ソーラーエナジーヒート」 ニヤリ

563: 2015/02/10(火) 02:26:59.10 ID:OHMUPIxPo

春菜「太陽!」

春菜「私に貴女の強力無比なパワーをお貸し下さいッ!」

凛「何……この光……」

春菜「地獄の光ですよ!」 ククク

ジリジリジリジリ

凛「あっつ!」 ガバッ

凛「……!」 ハッ

ちひろ「あーっと、渋谷凛選手、太ももに太陽光を受け思わず立ち上がってしまいましたー」

瑞樹「わかるわ……煙草の火とか、押し付けられると熱くてたまらないものね……」

ちひろ「それは分からないでほしかったですね」

564: 2015/02/10(火) 02:30:47.91 ID:OHMUPIxPo

みりあ「???」

みりあ「どうしてあんなに熱がってるんだろ」

夏樹「レンズで光を集めると、ものすげー熱いんだ」

夏樹「よくガキの頃虫眼鏡でやったなー」

莉嘉「紙を燃やしたりねー」

みりあ「え!? 神を!?」

夏樹「私は蟻を頃しちゃってたなー」

みりあ「(モハメド)アリを!?」

夏樹「今思うとかわいそうなことをしたよ」

みりあ「レンズってこわいんだね……」

夏樹「?」

莉嘉「そんなことないよ?」

沙理奈「レOの方がよっぽど恐いわよ」

夏樹「子供相手に何吹き込もうとしてんだよ」

565: 2015/02/10(火) 02:37:59.20 ID:OHMUPIxPo

春菜「ぐっふっふ」

春菜「思わず立ち上がったことで、そのスカートから一瞬かわいい縞模様の下着が見えちゃいましたねえ」 キラリ

凛「……ッ!」

春菜「トーク対決をやめたことを、後悔させてあげますよ!」

春菜「ソーラーメガネエナジーヒート!」

未央「無理矢理メガネ追加してきた!!!」

凛「わっ……!」

ちひろ「あーっと、何とか下着を隠そうとしながら逃げる渋谷選手を、執拗に太陽光のレーザーが襲ってくるー!」

春菜(よし、支持率回復!)

春菜(工口で奪われた浮動票は工口で取り戻す!)

春菜(ハプニング工口で主導権を持って行かれたのなら――)

春菜(脱がし役になることで、場の主導権を握ればいい!!) ニヤリ

566: 2015/02/10(火) 02:48:50.26 ID:OHMUPIxPo

未央「つ、強い……」

未央「こ、これが346プロ売り出し中のアイドル『ブルーナポレオン』の力ってことなの……?」

菜々「個性がメガネ一点特化で、ボケもツッコミも出来て、同時にヒールもベビーフェイスも出来る」

菜々「それを柔軟に活かせてるのは、あの娘自身の努力と才能ですからねぇ」

菜々「あまり敵に回したくない相手ですよ」

鈴帆「トークで攻め、ハプニングで有利を取られても今度は脱がし役として主導権を奪い返す……」

鈴帆「そして、支持を受けながら、あのレーザーで追い込む」

鈴帆「おそろしか作戦ばい……」

春菜「ふっふっふ」

春菜「それじゃあみなさん、これより……」

春菜「渋谷凛ちゃんの衣服を燃やしてセクシーにしてあげようの時間ですよっ」

ウオオオオオオオオオオオオ

凛「……っ!」

春菜「私のこのレンズからは逃げられませんよ」

春菜「メガネで補強すれば、それだけ先を見通せるということですから」 ムフー

567: 2015/02/10(火) 03:04:29.82 ID:OHMUPIxPo

ウオオオオオオオオオオオオ

パンツウウウウ

春菜「さあ、みなさんも一緒にメガネをかけましょう!」

春菜「そうすれば一瞬のチラめきであるぱんつだって見逃しませんし、洋服だって燃やせますよ!」

ウオオオオオオオオオオオオ

ハールーナ!

ハールーナ!

春菜「出来ることなら、メガネにも声をかけてあげてください!」

メーガーネ!

メーガーネ!

春菜「ありがとうございます!!」

メーガーネ!

メーガーネ!

ちひろ「メガネを投げないでください!」

ちひろ「他のお客様のご迷惑になります!」

ちひろ「特にメインステージで見ている方はメガネを投げないでください!!」

573: 2015/02/11(水) 00:24:38.71 ID:CaDKW6ibo

春菜(今私がやるべきはヒール!)

春菜(脱がし役として、あの娘を倒すッ)

春菜(一瞬でも主導権を奪われては駄目)

春菜(油断は出来ない!)

凛「こ……のッ!」 ダッ

春菜「ふっふっふ」

春菜「向かってきても、下着をかばってのノロイ動きじゃあ、駄目ですよ!」

春菜「メガネを装備したこの瞳には、止まってるように見えます!」 ガッ

春菜「メガ・ネックブリーカーーーーーーッ!!」

ドゴォォォ

凛「あ……」

グラァ

卯月「り、凛ちゃーーーーーん!」

574: 2015/02/11(水) 00:47:32.68 ID:CaDKW6ibo

凛(い、痛い……)

凛(体が重たい……)

凛(こんな痛い想いをして……)

凛(ぱんつを、見られて……)

凛(一体、何をしようとしてたんだろう……)

春菜「そのまま眠れば楽になりますよ」 フフ

未央「あ、あれは!」

鈴帆「倒れた相手への容赦無い追撃っ……」

鈴帆「あやつ、ヒールとしてこのトーナメントのスポットライトを得ることを選びおったばい!」

春菜「メガネ固めーーーーーっ!」

未央「両の掌をメガネのレンズに見立て、相手の目を覆いながらキャメルクラッチの体勢に入るーーーっ!」

鈴帆「もう駄目たいね……」

卯月「ええ!?」

未央「せめて失禁はしないよう祈っておこう、友として」

卯月「え!?」

鈴帆「後日ソフト化するとき、あの丸出しの縞パンには修正かかるかのう」

未央「縞パンだけに、しまむーの顔とかで隠せば面白いんじゃないかなあ」

鈴帆「なるほど」

卯月「ちゃ、ちゃんと応援してあげようよ!」

未央「これで乳輪見えてたらしぶりんのにゅうりんってなってちょっとおもしろかったのになあ」

卯月「してあげようよ!」

鈴帆「さすがにここまで綺麗に決まると、もう……」

未央「……まあ、厳しいよね……」

575: 2015/02/11(水) 01:20:54.01 ID:CaDKW6ibo

凛(アイドル……何で、なりたかったんだっけ……)

卯月「凛ちゃーーーん!!」

凛(ああ……そうだ……)

凛(卯月だ……)

凛(卯月を見て、私は……)

春菜「悪く思わないでくださいねっ」

春菜「メガネのため」

春菜「そして、ブルーナポレオンが上にいくため!」

春菜「容赦はできないんですよッ」

凛(でも……無理だよ……)

凛(こんなに苦しいし……)

凛(卯月みたいには笑えない……)

凛(笑顔にだって、出来ない……)

凛(私、では……)

ボキン!!

576: 2015/02/11(水) 01:50:29.35 ID:CaDKW6ibo

未央「き、聞いた? しまむー……」

卯月「う、うん……」

卯月「凛ちゃんの……心が折れる音……」

春菜「……」

春菜「ん?」

春菜「あれは――」

スルリ

未央「!?」

未央「目の拘束をといた!?」

春菜「何、こうやって……」

春菜「巨大レンズを操作して洋服に焦げ目をつけようと思いましてね」

春菜「リスナーの皆様には待たれていますし!」

春菜「それに――」

春菜「あそこにいる、みくちゃんもね」 ニヤリ

みく「……」

577: 2015/02/11(水) 02:05:51.35 ID:CaDKW6ibo

未央「せ、先輩……!」

みく「……」

未央「な、何でそんな全身傷だらけ……」

鈴帆「遅刻ばいとか揶揄出来る空気じゃなかとね……」

春菜「どうやら……」

春菜「天は私にヒールとして輝けと囁きたいらしいですよ」 ククク

春菜「貴女を恨むみくちゃんの前で、もう少しだけ辱めてあげましょう」 キラーン

みく「……」

凛「う……あ……」

凛(そんな……)

凛(やっぱり……生半可な覚悟なのに、椅子を奪ってしまったから……?)

凛(だから……)

凛(そんな目で、こっちを……)

みく「無様だにゃ」 ボソ

凛「うっ……」

凛(私じゃ卯月にはなれない)

凛(勝っても、頑張っても、誰かに恨まれるだけで、誰も笑顔に出来ないんだ……)

凛「もう……疲れた……」

凛「勝って、恨まれるのは、もう……」

578: 2015/02/11(水) 02:11:52.17 ID:CaDKW6ibo

春菜「……」

春菜「無理ですよ」

春菜「誰かを踏み台にせず、上には決してあがれない」

春菜「夢見る少女が大勢いるのに、スターになれるのは一握り」

春菜「だからこそ、私達全員が精一杯輝くために戦っているんですっ」

春菜「輝くつもりがないのなら、流れ星として消えてしまいなさい!」

春菜「メガ・ネックブリーカドロップーーーーーーっ!!」

ズッドオオオオン

凛「ぐげあっ」

ドサッ

みく「……」

未央「あーーーーっ、しぶりんの体が大の字になって斜面を滑っていくーーーーっ!」

卯月「もうダメっ……凛ちゃんっ……!」

579: 2015/02/11(水) 02:32:12.78 ID:CaDKW6ibo

凛(ダメだ……もう、立てない……)

春菜「立てませんよね?」

春菜「私の渾身の技に、衆人環視のそのまま下着を晒して寝ていろという圧力」

春菜「そして――呪い」

卯月「呪い……?」

春菜「ぽっと出の貴女にステージを取られ、ずっと恨んで悶々としていたんでしょうね」

春菜「覚悟がないのにステージに立つと、この呪いを発する側になるか、呪いに耐え切れずに潰れるかのどちらかなんですよ!」

凛「そ……・ん、な……」

春菜「アイドル同士は仲良しだし、恨みっこなんてなしとは言います」

春菜「でも所詮は勝った負けた、枠の奪い合い」

春菜「恨みも背負う覚悟がない者に、恨みっこなしなんて出来ないんですよ」

春菜「それが分かったらこのまま大人しく落ちて行きなさい」

春菜「そうじゃなきゃ――」

春菜「みくちゃんが満足できるくらい、また傷めつけないといけなくなっちゃいますから」

580: 2015/02/11(水) 02:44:30.75 ID:CaDKW6ibo

卯月「立って、凛ちゃん!」

凛「……」

凛(無理だよ、卯月……)

凛(もう、頑張る理由も見つからない……)

凛(せめて……)

凛(誰かを笑顔には出来なくても、せめて……)

凛(もう、恨まれないように生きたい……)

凛(学校での妬みでも、ステージ上の怨嗟もない)

凛(せめて、恨まれない、静かな人生を……)

みく「がんばれ、凛チャン」

凛(……え……?)

凛(幻、聴……?)

みく「頑張れ、凛チャン!!」

凛「空耳じゃない」

みく「みくがここに来たのは、みくを押しのけて本戦に出た渋谷凛の力が、本物だったのかどうか確かめるためにゃ!」

みく「それなのに……凛チャンにそんな、惨めな弱い姿を晒されちゃ……」

みく「これから偉大で華麗なるアイドル生活を送る予定のみくに、唯一の汚点が残るじゃにゃいかーーーっ!」

ヘレン「華麗になるにはもう手遅れでしょその戦績じゃ」

581: 2015/02/11(水) 03:12:58.65 ID:CaDKW6ibo

みく「……しーぶーにゃん」

みく「しーぶーにゃん」

春菜「!?」

みく「しーぶーにゃん!!」

未央「……」 ハハーン

未央「しーぶーにゃーん!!」

鈴帆「しーぶーにゃん!」

卯月「え、えっと、しーぶーにゃん!」

シーブーニャン!

シーブーニャン!

凛「みんな……」

ちひろ「なんと!」

ちひろ「ここにきて、なんと熱い手のひら返し!」

ちひろ「こちら特設会場も、いつしかしぶにゃんコールに包まれてますっ」

582: 2015/02/11(水) 03:30:54.08 ID:CaDKW6ibo

薫「おねえちゃーん!」

薫「がんばれー!」

シーブーニャン!

シーブーニャン!

春菜「ぐ、ぐむ~~~~っ!」

春菜(よせばよかった、みくにゃんを出汁にさらなるヒールアピールなんて!)

春菜(この状況、この演出……!)

春菜(今容赦なく叩き落とすことはできないっ!)

シーブーニャン!

シーブーニャン!

凛(なんだろう……)

凛(体が、熱い……)

凛(胸の底から、力が沸き上がってくるみたい……)

シーブーニャン!

シーブーニャン!

凛「うわああああああっ!」 ギリッ

未央「た、立ったッッ!!」

卯月「凛ちゃんっ……!」

589: 2015/02/12(木) 00:28:20.39 ID:qhqZmvMno

凛(立ったはいいけど……膝が笑ってる……)

凛(あのレンズの攻略法もまだ見えない……)

春菜「ふっ……」

春菜「立ち上がったことは、褒めてあげます!」

春菜「でも、このソーラーメガネエナジーヒートからは逃れられませんよ!」 キラーン

凛(何か……)

凛(何か打開策は……) フラッ

???「アオーーーーーーン」

凛「この声……」

凛「ハナコ!?」

ハナコ「キャインキャイーン」

凛「そ、それにお父さん、お母さん……!」

ビュッ

ギュオオオオオオオオ

凛「っ!」 パシッ

凛「これは……」

凛「実家の花屋の植木鉢!!」

未央「お、親父さんもスモーキーなのに、容易くキャッチ……だと……」 ゴクリ

鈴帆「それはさておき、入場フリーの会場で、武器の持ち込みをすでにされてて咎められないのが功を奏したばいね」

鈴帆「これであやつにも武器が出来たばい!」

590: 2015/02/12(木) 00:44:21.45 ID:qhqZmvMno

春菜「ふん!」

春菜「そんなチンケなお花で何が出来るって言うんですか!」

春菜「私のソーラーメガネエナジーヒートで、燃え上がらせてあげますよ!」 ダッ

凛(足もふらつく……)

凛(もうこれしかない!)

凛「植木鉢ボンバーーーーー!!」 グワッシャーン

比奈「な、殴ったーーーーーっ!?」

未央「普通に植木鉢で満力込めて頭を殴ったーーーーっ!」

鈴帆「普通にえぐかーーーーーーっ!」

591: 2015/02/12(木) 00:56:34.29 ID:qhqZmvMno

春菜「おごが……」 ドサ

凛「植木鉢ボンバーーーーー!」 ドガシャ

未央「お、追い打ちだーーーーー!!」

凛「ボンバー!」 ガシャン

凛「ボンバー!!」 ガシャン

凛「植木鉢ボンバーーーーー!!」 グワラガシャーーン

未央「え、えげつねえ……」

卯月「凛ちゃんのお父さん、さっきからひたすら植木鉢投げ渡してる……」

鈴帆「まるでわんこそばばいね」

比奈「あれ氏なないッスか?」

592: 2015/02/12(木) 01:20:05.27 ID:qhqZmvMno

春菜「いーかげんにしてください!!」 ガバッ

春菜「ソーラーメガネエナジーヒート!」

ボワッ

凛「あっつ!」

春菜「このまま直に叩き落としてあげますよ!」

春菜「メガ・ネックブリーカドローーーーーーップ!!」

ザッパーーーーーーン

卯月「そんな……」

未央「しぶりんが、あそこから負けるなんて……」

比奈「高垣楓やらにばかり意識を取られてたんじゃないッスか?」

比奈「ブルーナポレオンだって、一流アイドルなんッスよ?」 フフン



『1回戦第3試合 勝者・上条春菜』

593: 2015/02/12(木) 01:52:51.05 ID:qhqZmvMno

メーガーネ!

メーガーネ!

春菜「ふふふ」

春菜「やはりメガネが勝敗を分けましたね!」 キラーン

メーガーネ!

メーガーネ!

比奈「やっぱりメガネ組はサイコーッス!」

未央「私にも……私にもメガネをくれーーーっ!」

卯月「わ、私も!」

菜々「ナナも!!!!」

春菜「はっはっは、押さなくてもいいんですよ!」

春菜「きちんと皆さんの分までありますからねー!」

楓「私にももらえるかしら」

春菜「た、高垣楓ーーーーっ!」

楓「なんて素晴らしいの……」

楓「このレンズを通して見た世界、素晴らしいわ……」

楓「どうやら真のアイドルは、このレンズの素晴らしさを布教した貴女をおいて他ないわ」

春菜のP「そのとおりだ、春菜」

春菜「ぷ、プロデューサーーー!!」

春菜のP「お前こそが真のアイドルであると、社長も認めているぞ」

春菜「しゃ、社長が……!」

春菜のP「更に電○のお偉いさんも、春菜を誰より推してくれると約束してくれた」

春菜「わ、私なんかを……」 ジーン

春菜のP「更にアメリカ合衆国大統領も春菜のことを認め、TPPを盾に日本人のメガネ着用を義務付けてくれたぞ」

大統領「YES, We can」

大統領「このメガネとレンズに一点の曇りなし。メガネが正義だ」

春菜「だ、大統領……」

春菜「私……私、メガネ拭きを最初に取れるアイドルになります!!」

メーガーネ!

メーガーネ!

ハールーナ!

メーガーネ!

春菜「ありがとう、みんなありがとう……!」

597: 2015/02/12(木) 02:00:29.02 ID:qhqZmvMno






未央「……ねえ、しまむー」

未央「どんな夢見てると思う?」

卯月「さあ……」

卯月「でも、なんか楽しい夢なんじゃないかな……」

春菜「あはははは、メガネ大臣だなんてそんな恐れ多くてそんな」 アハハハハー

未央「頭の上でピヨピヨ回るひよこまでメガネかけとる」

600: 2015/02/12(木) 02:15:51.26 ID:qhqZmvMno

鈴帆「殴られすぎておかしなってもーたっちゃね……」

菜々「……多分、それだけじゃないですよ」

未央「え?」

菜々「あれ、植木鉢の花の効果もあるはず……」

卯月「花の幻覚作用も使うなんて……」

卯月「凛ちゃんらしいファイトスタイル、確立出来たんだ……」

凛「はーっ……はーっ……」

凛(まだ、駄目)

凛(アイドルは、魅せなくちゃいけない)

凛(動けなくしてからじゃないと、決まらないけど)

凛「今なら、出来るっ!」 ガッ

凛「」 クワッ

未央「あの気迫の顔――まだ何かやるつもりだ!」

卯月「まさか、凛ちゃんのフェイバリットホールド!?」

601: 2015/02/12(木) 02:31:46.76 ID:qhqZmvMno

凛(所詮は新人アイドル)

凛(複雑な技なんて出来ない)

凛(でも!)

凛(卯月達と必氏にやってきた基礎ならば、他のアイドルにだって負けないッ!)

凛「疾きこと風の如し!」

グルグルグルグル

未央「ゲエーーーーッ! あのふらついた足で回り始めたーーーーっ!」

凛「静かなること林の如く!」

菜々「ろ、ローリングクレイドルでウサギさん並に飛び上がってますよ!?」

凛「侵掠すること火の如く!」

ドゴォォォ

未央「散らばった薔薇の花の中に突っ込ませたーーーーっ!?」

凛「そして!」

凛「動かざること……山の如しーーーーーーーっ!!」

未央「き、決まったーーーーーっ!」

未央「これがプロレスならゴングが鳴っているーーーーっ!」

ズルリ……

ボシャーーーーーン

未央「決着ゥゥゥーーーーー!」

未央「しぶりんのフェイバリットホールドで大逆転勝利だーーーーっ!」



【1回戦第3試合 勝者・渋谷凛】

602: 2015/02/12(木) 02:36:24.13 ID:qhqZmvMno

凛「ふう……」

卯月「すごーい!」

卯月「すごいよ、最後のフェイバリットホールド!」

凛「いや……単なる基本の組み合わせだよ」

未央「それをバシーって決められちゃうのがしぶりんのすごいところだよねえ」

未央「それで、さっきの技、もう名前つけてあるの?」

凛「え?」

凛「…………」

凛「ふ、風林火山……」 ボソ

卯月「?」

未央「よく聞こえなかったけど、なんだって?」

未央「しぶりん火山?」

凛「えっ」

卯月「なるほど~、自分の名前と風林火山を引っ掛けたんですね!」

未央「それじゃあカザンも花で斬るって書いた方がソレっぽくない?」

卯月「しぶ凛花斬かあ……」

凛「いや、その……」

未央「やるねえ、ナイスしぶ凛花斬!」

卯月「すごかったですよ、しぶ凛花斬!!」

凛「……」

凛(まあ、その字面も、あんまり嫌いじゃないからいっか……)

604: 2015/02/12(木) 02:40:13.96 ID:qhqZmvMno

菜々「うーん、いいですねえ」 ウンウン

菜々「本名でなくあだ名っていうのが、なんというか、こう、青春ーって」

菜々「若いって羨ま……じゃなくって!」

比奈「いくつなんッスか……」

菜々「あ、その、しぶりんって可愛いアダ名だなーって! って!!」

凛「……まあ、嫌いじゃないけど」

未央「でしょー?」

未央「しぶりんもしまむーも、私が言い出しっぺだからね」 ドヤァ

卯月「あ……でもしまむーはちょっとかっこ悪いかも……」

未央「え!?」

卯月「その……私も下の名前を絡んだやつの方がいいなあって」

未央「そうは言っても、アダ名なんてインスピレーションわくかどうかだからなあ」

鈴帆「せめて他に候補があれば、そっから選べるんじゃなかとね」

未央「う~~~~~~ん……」

未央「あ、じゃあ、ファッションセンター」

卯月「」

未央「これも苗字発祥で申し訳ないんだけど」

卯月「しまむーで」

未央「でもファッションリーダー目指すうえで有利になりそうだs」

卯月「しまむーで」

未央「何よりこのアダ名のインパクトでテレビに出れば、苗字も覚えてもらいやすk」

卯月「しまむー」

605: 2015/02/12(木) 02:48:55.85 ID:qhqZmvMno

みく「しぶりんよりも、しぶにゃんの方が可愛いと思うけどにゃ」

凛「先輩……」

凛「その……ありがとうございました」 ペッコリン

みく「……」

みく「ま、むかつくけど、しょーがないにゃ」

みく「それに、しぶにゃん達には優勝して、シンデレラプロジェクトの宣伝をしてもらわないとみくも困るし」

みく「……」

みく「それと……」

みく「346プロは実力主義だし、みくとしぶにゃん達は同じシンデレラプロジェクトのメンバーだから格は一緒」

未央「こっちは本戦出場だから同格かって言われると……」

鈴帆「正論ばってん、きさんが言うとね」

みく「それに、もうみく達は友達だから……」

みく「気軽に、みくにゃんって呼んでくれたらいいにゃ」

卯月「……!」 パァァァ

卯月「これからよろしくね、みくちゃん!」

凛「うん……よろしく」

未央「へへ……よろしくね、みくにゃん」

菜々「今まさに青い春って感じですねえ」 ウンウン

606: 2015/02/12(木) 03:04:01.42 ID:qhqZmvMno

みく「まあ、これでシンデレラプロジェクト6人中2人が準決勝進出」

みく「莉嘉チャンも勝てば、3/4がシンデレラプロジェクトのメンバーになるにゃ」

未央「おっ、優秀~」

みく「ほんとそれ」

ヘレン「虎の威を借りすぎて首が回らなくなるわよ」

みく「まーとにかく!」

みく「高垣楓の存在にさえ目をつぶれば!」

みく「まだ我々から優勝者が出る可能性はあるにゃ!」

みく「……でも莉嘉ちゃんが勝っても多分指名であげてくれるのはみりあちゃんだにゃ」

みく「まあでもそれはしょうがないにゃ」

みく「ところで今シンデレラプロジェクト6人中3人が生き残りで2で割れるわけだけど」

未央「あ、その二人には昨日の内に指名は私にするようお願いしてるから」

みく「ちくしょーーー!!」

みく「せめて、せめてどっちかだけでも!!」

みく「同じキュートなアイドルとして、卯月ちゃん!!」

卯月「あ、あはは……約束、もう、しちゃってますし……」

みく「う、うう……」

みく「あ、アダ名で呼ぶもの同士!」

みく「卯月ちゃんに高垣楓を疲れさせてもらっておいて、しれっと優勝してくれるって信じてるにゃ、しぶにゃん!」

凛「……」 プイッ

みく「目をそらされた……!」 ガーン

みく「わーーん、やっぱり皆嫌いだにゃーーー氏んじゃえーーーーっ!」 ダダダダダ

未央「マジ泣き!? この歳で逆ギレしながらマジ泣き!?」

卯月「い、行っちゃった……」

凛「悪いことしたかな……」

607: 2015/02/12(木) 03:15:57.02 ID:qhqZmvMno

卯月「……でも、シンデレラプロジェクト、かぁ」

未央「……莉嘉ちゃん、勝てるかな」

凛「……」

凛「応援、行こう」

凛「この会場は、もう使わないはずだし」

卯月「そ、その体で!?」

卯月「だ、大丈夫?」

凛「うん……」

凛「間に合うかは、はっきり言って微妙だけど……」

凛「でも……」

凛「応援の力を、誰よりも知ってるから……」

未央「……しょうがないなあ」

未央「まあモニターから離れちゃうせいで声は送りにくいけど――」

ヘレン「それは視野が狭いってもんよ」 ズイッ

ヘレン「ワールドワイドに見つめてみれば、その程度問題にはならないわ」

未央「ゲエーーーーッ! テレビカメラを担いで……!」

鈴帆「モニター代わりにはウチのタブレットを使いんしゃい!」

菜々「これで向こうに映像も送れるし、試合も見られますよっ」 フフン

凛「みんな……」

比奈「走りながらタブレットが見難いなら、このメガネを……」

凛「それはいらないかな……」

未央「メガネネタ、やってくるんだ……」

比奈「まあ、一応……友達ッスから」


608: 2015/02/12(木) 03:23:35.16 ID:qhqZmvMno

【メインステージ】

ちひろ「さあ、盛り上がってますトークバトルショー!」

ちひろ「ここでは4強最後の椅子をかけて、1回戦最終試合が行われようとしていますっ!」

沙理奈「……じゃ、行ってくるわ」

千枝「あの……」

沙理奈「だいじょーぶだって」

沙理奈「心配するなら、ヤバいくらい殴られた春菜ちゃんをしてあげて」

沙理奈「私は問題なく勝ってくるから」

沙理奈「そして優勝までいく」

沙理奈「それなら、結果だけ見れば、春菜ちゃんが勝ってても負けてても変わりなかったから問題ないって言えるでしょ」

609: 2015/02/12(木) 03:25:10.91 ID:qhqZmvMno

みりあ「莉嘉ちゃん!」 バッ

莉嘉「……」

莉嘉(応援旗、かあ)

莉嘉(あんなにステージで歌いたがってたのに……)

莉嘉(私のために、そこで応援旗を振ってるんだ……)

莉嘉「……」 グッ

みりあ「えへへ……がんばれー!」

莉嘉(だから……)

莉嘉(絶対、一緒にステージに立たせるッ)

莉嘉「絶対、負けない……!」



611: 2015/02/12(木) 03:46:39.74 ID:qhqZmvMno

ちひろ「さあ、今、幼女に見守られつつ、二人のアイドルがリングに立ちます!」

莉嘉「……」 ザッ

ちひろ「その前にCMを」

莉嘉「」 ズコー

ちひろ「346印のスタミナドリンクに、この度コーヒー味が出ました!」

ちひろ「観客席の皆さんに先程お配りしたやつですね!」

ちひろ「まろやかミルクがたっぷり入って、これでお目目もバッチリです!」

ちひろ「それでは皆様・キャンペーンガールの及川雫ちゃんに拍手をー!」

雫「も、もお~~~っ!」

キャーーー

ヒューヒュー

ナイスオッパーイ

莉嘉「ぐう、本戦にも出てないアイドルの告知に使われるなんて……」 イラッ

612: 2015/02/12(木) 03:54:45.79 ID:qhqZmvMno

ちひろ「それでは、このまま雫ちゃんに入場コールもしてもらいましょう!」

雫「はいっ!」

雫「ま、まずは奇数コーナー!」

雫「姉のバックダンサーの座を賭け、ギャルの血を引く少女が来た!」

雫「成せるか、姉のようなサクセスストーリー!」

雫「城ヶ崎莉嘉選手ですっ!」

莉嘉「……」

莉嘉(おっき……)

莉嘉「……」 ペタペタ

莉嘉「お、おっきさだけじゃないってこと、教えてあげる!」

雫「?」

雫「えっと、対戦相手は私では……」

莉嘉「わかってる!」

莉嘉「アンタにも……あの人にも」

莉嘉「胸のサイズだけがアイドルじゃないし、それだけがセクシーさじゃないってことを、教えてあげなくちゃ」



613: 2015/02/12(木) 04:15:24.75 ID:qhqZmvMno

雫「続きまして偶数コーナー」

雫「青い英雄ブルーナポレオンの色気担当!」

雫「子供相手にオトナの魅力を見せつけろ!」

雫「セクシーダイナマイツ・松本沙理奈選手です!」

沙理奈「……」

沙理奈「その胸で、人のことをダイナマイツ呼ばわりねえ」

沙理奈「少し癪だわ」

雫「えっ?」

沙理奈「でも……」

沙理奈「サイズじゃ負けても、扱いじゃ負けないわよ」 ブルルン

雫「?」

バッツーーーーン

雫「ひゃあ!?」

ウオオオオオオオオオオオオ

ちひろ「な、なんとーーー!?」

ちひろ「突如、雫ちゃんのボタンがはじけ飛びましたーーーっ!」

614: 2015/02/12(木) 04:19:08.90 ID:qhqZmvMno

沙理奈「チャーム・ポイントに氾濫されるようじゃあまだまだね」 フフ

莉嘉「……」

莉嘉(違う)

莉嘉(今のは事故じゃないっ)

莉嘉(やったんだ、あの一瞬で!)

莉嘉(すれ違い様におっOいを揺らし、相手の胸のボタンに当てて弾き飛ばした!)

莉嘉(あのサイズにもかかわらず、とても繊細なバストコントロール……)

莉嘉「伊達にブルーナポレオンでお色気担当してない、かあ」

沙理奈「ま、コントロールするものがない娘よりはマシだけど」 チラ

莉嘉「……」

雫「もーっ」 バタバタ

ちひろ「あはは、胸抑えて可愛らしいハプニングでしたね」

沙理奈「可愛らしいけど、男達は可愛らしさより工口が頭に残ってるんじゃないかしら」 フフ

ちひろ「それでは皆様、雫ちゃんにもう一度拍手ー」

パチパチパチー

イイゾー

ナイスオッパーイ

莉嘉「……」 パチパチパチ・・・

615: 2015/02/12(木) 04:23:28.27 ID:qhqZmvMno

雫(は、はずかしい~~っ///) ドタドタ

莉嘉「…………」 パチ・・・

雫「……」 ドタドタ

莉嘉「」 パチ・・・

ヒュンッ

バリバリバリッ

沙理奈「!!」

ちひろ「え!?」

瑞樹「及川雫の洋服がはじけ飛んだ……!?」

雫「……?」 ドタドタ

雫(なんか妙に涼しかったりして……)

莉嘉「あーらら、もっとセクシーになっちゃった」

沙理奈(あの娘……すれ違いざまの一瞬で、拍手の挙動に織り交ぜて技を出していたッ)

沙理奈(手首のスナップと強靭なつけ爪だけで、本人に気付かれず衣服だけ引き裂くなんて……)

沙理奈「伊達にあの城ヶ崎美嘉の妹じゃない、ってことね……」 ギリッ

莉嘉「おっOいがあるだけがセクシーじゃないってこと、教えてあげる……!」 イヒヒ



【1回戦第4試合 ―― 試合開始(ゴング)】

625: 2015/02/13(金) 00:41:14.42 ID:XpWLq8Nqo

ちひろ「さあ、ゴングです」

ちひろ「果たして最初に動くのはどちらなのか!」

莉嘉(相手の動きを見て対処……)

莉嘉(なんてこと、私には無理!)

莉嘉(今はただ、戦いたいって気持ちを爆発させる!)

莉嘉「たりゃーーーっ!」

ちひろ「おーーっと、まずは城ヶ崎莉嘉選手が飛びかかったーっ!」

沙理奈「なってないわね!」

ちひろ「なんとォォォ!」

ちひろ「丸太をも引き裂く城ヶ崎莉嘉選手の爪を、豊満なバストで白刃取りだーーーーっ!」

沙理奈「爪が長いとシにくいのよ?」

沙理奈「飛び跳ねるだけが遊びじゃないってこと、教えてアゲる」

626: 2015/02/13(金) 01:08:16.92 ID:XpWLq8Nqo

莉嘉「……?」

沙理奈「オトナびようとするなら、そーいうところをしっかりしないと」

沙理奈「貴女……実はまだ、オトコ居たことないんじゃない?」 フフ

莉嘉「……っ!」

ちひろ「あーーーっと、鋭いジャブーーーーっ!」

瑞樹「本来、アイドルにとってオトコについてのトークはタブー……」

瑞樹「けれども、セクシャリティを全面に押し出すことで、彼女はそのタブーに踏み込んでいる」

沙理奈(AV待ったなしだの、工口担当だの、色々言われてることは知ってる)

沙理奈(でも、それが私の武器ならばッ)

沙理奈(その武器でこその戦いをしていくッ)

沙理奈「いい、本当のセクシーさは、爪から始まるのよ!」

沙理奈「撫でたり挿れたりするときに痛くないようにね!」

ちひろ「い、いいんでしょうかあの発言」

瑞樹「普通は駄目」

瑞樹「でも……」

瑞樹「あのキャラクターと見た目が、アンチと同数のファンを作る」

瑞樹「それこそ、歯に衣着せず色々喋るスタイルには、女性のファンも多いくらい」

瑞樹「アイドルという神聖な場において性の話題を持ち出せる」

瑞樹「それが何よりの彼女の強み」

627: 2015/02/13(金) 01:42:21.79 ID:XpWLq8Nqo

ちひろ「コメントが草でいっぱいに……」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「仮にも年頃の娘のアダルトトークですもの」

瑞樹「ひと目を引いて、草を生やさせるには十分」

沙理奈「どう?」

沙理奈「これがッ」

沙理奈「オトナの味よーーーーっ!」

ちひろ「あーっと、ここで松本沙理奈選手、オトナのジャーマンスープレックスだーーーーっ!」

莉嘉「うぐっ……」

莉嘉(つ、強い……)

莉嘉(それに、何より……)

莉嘉「何言ってるのか、全ッ然分からない!」

ウオオオオオオオオオオオオ

莉嘉「!?」

沙理奈「ま、需要はそーなるわよね」

沙理奈「そして、その言葉を引き出した私に賞賛が集まる」

沙理奈「ビXチぶっててもまだまだお子様なのよ」

莉嘉「うぐっ……」

沙理奈「ただちょっと胸元を強調すれば工口いとでも思ってる内は二流」

沙理奈「乳だけアイドルだってねェ」

沙理奈「多くの努力と研究の末に、たった1つの武器で挑んでいるんだから!」

バッチーン

ちひろ「で、出たーーーーっ!」

ちひろ「松本沙理奈選手の乳ビンタだーーーっ!」

629: 2015/02/13(金) 02:35:35.44 ID:XpWLq8Nqo

莉嘉「ぐ……ぅ……」

莉嘉(つ、強い……)

莉嘉(ナメていたわけじゃない……)

莉嘉(でも……)

莉嘉(お姉ちゃんと同じくテレビに出るアイドルが、こんなにも強いだなんて……)

沙理奈「さあ、観念なさい」 ブルルン

莉嘉(でも……)

莉嘉「私にだって、武器はあるよ!」

莉嘉「ずっとずっと、お姉ちゃんを見てきた!」

莉嘉「セクシーな体験談はなくったって!」

莉嘉「お姉ちゃんというセクシークイーンを見てきたんだから!」

莉嘉「お姉ちゃんを追いかけてきた私が、セクシーになれないわけがない!」

瑞樹「言われてるわよセクシークイーン(笑)」

ちひろ「何で目を逸らすんですか、セクシークイーンさん」

美嘉「勘弁して」

瑞樹「きっと経験豊富なんでしょうね」

ちひろ「なんといってもセクシークイーンですからね」

美嘉「ほんとマジで勘弁して」

630: 2015/02/13(金) 02:57:58.11 ID:XpWLq8Nqo

莉嘉(こうなったら、もう、これしか――)

莉嘉「見せてあげる、私なりのセクシーダイナマイツを!」

沙理奈「腕を上げた……」

沙理奈「その程度でお色気ポーズのつもりなのかしら」

沙理奈(油断は出来ない)

沙理奈(何を繰り出してくるのか分からないッ……)

莉嘉(見ててね、お姉ちゃん)

莉嘉(お姉ちゃんの必殺技に、これを捧げるッ)

632: 2015/02/13(金) 09:35:19.26 ID:XpWLq8Nqo

莉嘉「森の木の葉の如くに体軽やかに」

莉嘉「胸を弓の如くに張り、流れ星の如くに腰振り下ろす」

莉嘉「その時手刀筋骨”壮”となる!」

莉嘉「その壮拳もって肉擦れば炎立つ!」

莉嘉「敵の懐に深く入り、肉斬り骨断てば」

莉嘉「ギャルに赤い雨が降る!」

美嘉「あの動き、私の……!」

莉嘉「ギャルリンの赤い姉ーーーーっ!」

シュバッ

沙理奈「円は線を包む!」

沙理奈「いくら鋭い爪で肉を裂こうとも、この胸が全てを封頃す――」

ハラリ

沙理奈「!!」

ちひろ「あ~~~~っと!」

ちひろ「松本沙理奈選手の衣装が、乳首部分を残して全て切り裂かれたーーーーっ!」

莉嘉「肉を切れぬなら布を断つ!」

莉嘉「お色気を誘発すればいいことは、さっきの試合が教えてくれたっ!」

沙理奈「くっ……」

莉嘉「そして如何にえOちなアイドルとはいえ、この衆人環視の中服を裂かれたら両手で胸を隠さないといけない!」

莉嘉「これで放送コードに阻まれて、その胸は自在には使えないよねっ!」 フフン

沙理奈「このッ……」 ギリッ

633: 2015/02/13(金) 09:46:21.41 ID:XpWLq8Nqo

沙理奈「セクシーポイントは胸だけじゃないのよーーーっ!」 タリャァッ

ちひろ「あーっと、ここで松本沙理奈選手、ハイキックに打って出るーーーーっ!」

瑞樹「この試合初めての足技ね」

ちひろ「果敢に肉弾戦を仕掛けるのも初ですね」

瑞樹「焦っているのでしょうね」

瑞樹「ここで決着をつけないと主導権を取り返すのは難しい」

瑞樹「ましてや武器である胸を封じられては」

莉嘉(そう、胸を封じたら、あとはもう蹴りに頼るしか無い)

莉嘉「それでも下着が見えそうで見えない蹴りを放つあたり、さすがだよ」 バッ

ちひろ「あーっと、城ヶ崎莉嘉選手、ハイキックの足を掴んだーーーっ!」

美嘉「あれは、私の……」

莉嘉「肉欲の甘味ハンマー(ビーフケーク・ハマー)!!」

ズドォォン

634: 2015/02/13(金) 09:48:06.91 ID:XpWLq8Nqo

沙理奈「がっ……」

沙理奈(ああ……やっぱり、胸じゃなきゃ駄目かあ……)

沙理奈(若さにも勝てないなんてね……) グラァ

沙理奈「……」

瑞樹「……」

沙理奈(……ごめん)

沙理奈(勝つこと、できなかっt――)



ドッポーーーーーーーーーーーーーーン



莉嘉「……強かったし、楽しかったよ」

莉嘉「また遊ぼうね」 ニコッ

莉嘉「いつかまた、一緒にセクシートークしよ」

莉嘉「今度はお姉ちゃんも混じえて、さ」



【1回戦第4試合 勝者・城ヶ崎莉嘉】

641: 2015/02/15(日) 01:02:22.35 ID:l8XyhcY6o

<特設会場>

ちひろ「はい、以上、飛び入り芸人上田鈴帆さんの一人コントでしたー!」

美嘉「……」

美嘉(莉嘉に声かける時間、なかったなあ)

美嘉(……まあ、ちょっとずるいし、できなくてよかったかもしれないけれど)

ちひろ「……と、それでは準備出来たようですので、準決勝に進出した4人のアイドルを紹介しましょうっ」

ワアアアアアアアアア

ちひろ「まずは白虎の方向から!」

ちひろ「天然元気系娘、島村卯月!」

ちひろ「その無垢な心でどこまで戦いを勝ち残れるのでしょうかっ」

642: 2015/02/15(日) 01:45:25.02 ID:l8XyhcY6o

ちひろ「そして青龍の方角からは高垣楓ッッ」

ちひろ「一人圧倒的知名度でのこの参戦」

ちひろ「果たしてこの強大な壁を、新世代は打ち破れるのかッ!?」

楓「……よろしくお願いします」 ペコリ

卯月「あっ、はい」

卯月「よろしくお願いします」 ペコリ

ちひろ「そして玄武の方角からは渋谷凛ッ」

ちひろ「内に秘めたるクールな闘士でベテラン上条春菜を撃破!」

ちひろ「そのまま駆け上がり、ニュージェネレーション対決を実現できるのでしょうかっ!?」

凛「……」

ちひろ「そして最後は焼き鳥の方向!」

莉嘉「焼き鳥!?」

ちひろ「七光とは言わせない!」

ちひろ「姉のスピリットを受け継いで、城ヶ崎莉嘉の登場ですっ!」

莉嘉「何で焼き鳥」

ちひろ「じゃあ、とりさんの方角で」

莉嘉「子供だと思って……」 プクゥ


644: 2015/02/15(日) 02:05:16.95 ID:l8XyhcY6o

ちひろ「共にシンデレラプロジェクトの仲間!」

ちひろ「片や姉の背を追いかけて!」

ちひろ「片やその姉に指名を受けて!」

ちひろ「この大会の開催理由になったという因縁の対決!」

ちひろ「果たしてどうなるのでしょうかっ!」

莉嘉「……負けないよ」

凛「……私だって」

ちひろ「静かに火花が飛び散っています!」

美嘉(うーん、ちひろさん、いい人なんだけど、盛り上げるためなら色々ペラペラ喋るのがなあ)

ちひろ「それではあ、闘う選手の皆さんには、簡単なインタビューを行いたいと思います!」

ちひろ「……ので、まずはそのためのドリンクの注文をどうぞ!」

645: 2015/02/15(日) 02:34:27.84 ID:l8XyhcY6o

卯月「わあ、メニューがいっぱい……」

菜々「ご注文をどうぞ!」

卯月「あれっ!?」

菜々「えへへ」

菜々「バイトの役得というか、ウエイトレスの役どころでもうちょっと画面に出られることになりました」 ニッコリ

卯月「そうなんですか……!」

菜々「それに、1回戦では結構凄惨な状況でしたしねえ」

菜々「夏樹ちゃんも結構怪我してましたし」

菜々「沙理奈ちゃんは怪我に加えて消えない醜態がネットに残りますし……」

卯月「最後のフェイバリットも、足広げさせられてましたしね……」

菜々「ちゃんと沙理奈ちゃんは見せパンだったけどね」

菜々「そして春菜ちゃんに至っては集中治療室……」

卯月「うわあ」

菜々「とりあえず安全ですよアピールで、1回戦唯一無傷のナナに出番が与えられたのかもしれないですねえ」

卯月「こわい」

646: 2015/02/15(日) 02:39:19.51 ID:l8XyhcY6o

菜々「それで、お飲み物は?」

卯月「じゃあ……オレンジジュースで!」

菜々「かしこまりましたー♪」

菜々「あったかいのと冷たいのがありますけど」

卯月「えっ」

菜々「キンキンに冷えたオレンジジュースか、あっつあつのオレンジジュース」

卯月「キンキンので」

菜々「ちなみにあっつあつのオレンジジュースは沸騰の有無を選べます」

卯月「キンキンので」

648: 2015/02/15(日) 02:44:50.15 ID:l8XyhcY6o

菜々「そんなわけでお飲み物をおうかがいします!」

楓「とりあえず生で」

菜々「ないです」

楓「キンキンに冷えた黒ラベr」

菜々「ないです」

楓「じゃあライムチューハイ」

菜々「アルコールはちょっと」

楓「じゃあ、超神水」

菜々「ムチャ言わないでくださいよっ」

楓「仕方ないわ、それじゃあ力水で」

未央「こ、この僅かなやりとりでもジョークを入れてカメラを独占するとは……」 ゴクリ

未央(こんなのに本当に勝てるの、卯月――!?)

650: 2015/02/15(日) 02:53:42.09 ID:l8XyhcY6o

菜々「ご注文は……」

凛「ハーブティーで」

菜々「あー、ごめんなさい」

菜々「メニューはこれで……」

凛「じゃあ、アイスミルクで」

莉嘉「樹液」

菜々「虫かな」

莉嘉「甘い匂いに誘われたワタシは城ヶ崎」

菜々「歳ごまかしてない?」

莉嘉「おねーちゃんの影響」

莉嘉「おねーちゃんみたいなアダルティーになるためにも、ホットコーヒーで!」

菜々「コーヒー系なら、ラテとかがいいと思いますけど」

菜々「ラテアートもできますし」

莉嘉「……」

莉嘉「じゃあそれで」

菜々「ラテアートに希望とかありますかっ?」

莉嘉「メタルビートル」

菜々「影響与えてる方もなかなか歳ごまかしてるんじゃないかな」

651: 2015/02/15(日) 03:17:52.85 ID:l8XyhcY6o

菜々「おまたせいたしましたっ!」

菜々「ご注文のドリンクと――」

菜々「準決勝の舞台です?」

卯月「!?」

楓「……!」

凛「ッ」

莉嘉「っ!」

菜々「準決勝の舞台は、注文内容に合わせておきましたっ」

菜々「今回のステージは3ステージです!」

ちひろ「まずはこちら、氷のリングで闘う氷上デスマッチ!」

ちひろ「そして灼熱のサウナで闘う蜃気楼デスマッチ!」

ちひろ「最後に、暖かさと寒さの共演、気候の激しく変わるジャングルデスマッチです!」

菜々「そして対戦者が二人共冷たいものを頼んだら氷上デスマッチ!」

菜々「両者温かいもので蜃気楼デスマッチ」

菜々「そして両者別の温度のものを頼んだらジャングルデスマッチです!」

卯月「……ってことは……」

楓「私達は、氷上デスマッチ……ね」

凛(ジャングルデスマッチ、か……)

莉嘉「……」

莉嘉(ラテアート可愛いけど、それはそれとしてジャングルかあ……)

652: 2015/02/15(日) 03:39:13.35 ID:l8XyhcY6o

ちひろ「それでは、ドリンクを飲んだら特設リングのあるエリアに移動をお願いしますっ!」

ちひろ「リスナーの皆様は、それまで予選敗退者の傑作選映像をごらんください」

卯月「……」

卯月(はじまるんだ、準決勝が……)

卯月(あのステージを賭けた戦いが……)

楓「……」

卯月(戦わないと、いけないんだ……)

卯月(絶対に、勝たないと……!)

653: 2015/02/15(日) 03:50:47.02 ID:l8XyhcY6o
短いですが投下を終了します

656: 2015/02/17(火) 00:55:41.14 ID:3zz/IUDLo

<控室>

未央「頑張れ、しまむー!」

凛「苦しいだろうけど、頑張って」

卯月「あわわ」

卯月「あ、あまり実感が……」

みく「まあ、今までの相手と違って、今回はマジでテレビでよく見るアイドルだからにゃあ」

みく「どっかの自称世界クラスと違って、本物のワールドクラスのアイドルにゃ」

ヘレン「一々腹立たしいわね」

みく「まあ、でも、臆しててもしょうがないからにゃー」

みく「あたってくだけろ、イケイケゴーゴー!」

卯月「う、うん……」 カチンコチン

ヘレン「……ま、好きにやって無様を晒してきたら?」

ヘレン「世界の広さを知ることが、世界を獲る第一歩よ」

みく「で、広さを知りまくってる世界博士はいつになったら世界を獲るのかにゃ?」 プップクプー

ヘレン「それにどれだけ無様を晒しても、あの馬鹿猫よりマシだから」

みく「にゃにぃ!」

657: 2015/02/17(火) 01:13:38.05 ID:3zz/IUDLo

卯月「はは……」

凛「……」

凛「控室、戻るね」

卯月「えっ?」

凛「卯月を応援したいけど……」

凛「私も、油断できない相手だし」

みく「確かににゃー」

みく「お姉ちゃんが絡むととたんに強くなるからにゃあ……」

P「私は……」

凛「プロデューサーは、卯月についてあげていて」

凛「……一応こっちはシンデレラプロジェクトの潰し合いだし、どっちかに肩入れするわけにもいかないでしょ」

みく「それにゃ」

未央「どっち応援すればいいのか困るんだよねえ、もちろんステージにあげてもらう都合でしぶりん応援だけどさ」

未央「さっきまでと違って、しぶりんの試合じゃ応援旗掲げられそうにないし」

凛「……卯月の試合ではまた掲げるの?」

未央「まあ、そりゃ」

凛「……」

凛「どうせあれっきりだろうから黙ってたけど……」

凛「それ、卵月になってるよ」

未央「えっ、ウソ!?」

未央「卯月ってこういう字じゃないの!?」

未央「だよね、しまむー!?」

卯月「ふえ!?は、はい!」 ビクン

ヘレン「ガッチガチねエッグムーンちゃん」

みく「あ、タイムシフト見ると応援旗への草コメントめちゃくちゃ多いにゃ」

658: 2015/02/17(火) 01:44:12.18 ID:3zz/IUDLo

凛「……それじゃ、いくね」

卯月「……うん」

ヘレン「ほら、全員出た出た」

みく「ちょ、何するにゃ!」

みく「向こうのブロックは潰し合いだから混ざりに行きにくいんだにゃ!」

ヘレン「世界的な常識で言うと、王者との対戦前は、ゆっくり精神統一をするものなのよ」

ヘレン「トレーナー、いや、プロデューサーを残してね」

ヘレン「ほら、出た出た」

未央「わわっ、押さないでよっ」

みく「蹴られてる!」

みく「なんかミクだけ押されるとかじゃなくてめっちゃ蹴られてるッッ」

659: 2015/02/17(火) 01:51:03.98 ID:3zz/IUDLo

バタム

卯月「……」

P「……」

卯月「……」

P「……何か、飲まれますか?」

卯月「……あ、はい」

P「……」

卯月「……」

P「……お茶で、よろしいでしょうか」

卯月「あっ、はい、大丈夫ですっ」

P「……」 コポコポコポ

卯月「……」

卯月(し、思春期の娘とパパみたい……)

660: 2015/02/17(火) 02:16:20.02 ID:3zz/IUDLo

P「……緊張、してるんですね」

卯月「……」

卯月「何だかよく分からない内にアイドルになれて、こんなすごいステージに立てて……」

卯月「でも、ヘレンさんの時もナナさんの時も、自分のチカラで勝ち取れたって実感はなくて……」

P「……」

P「そうですね」

卯月「!」

P「まだ、実力的には、不釣り合いなステージと言えます」

卯月「……っ!」

P「もう少し、下積みを積んでからと、正直に言うと考えていました」

P「それでも――」

P「貴女はここまでやってきた」

P「こちらの予想を超えて、愚直なまでの努力の果てに、この場所まで」

卯月「プロデューサー……」

P「例え、どんな結果になったとしても」

P「例えそれが、誰かの力を借りるという形だとしても」

P「この場まで駆け上がれたのは間違いなく貴女の力」

P「人をひきつけ、味方にする」

P「……私にはなく、とても大切な力です」

661: 2015/02/17(火) 02:38:45.57 ID:3zz/IUDLo

卯月「プロデューサー……」

P「例え相手が、トークの流れをぶったぎりして場を凍らせる名人で」

P「フェイバリットのサワーブリッジで背骨を折られて社会復帰できない方もいる」

P「それでも」

P「それでも立ち向かう姿勢を、羨ましく思います」

卯月「プロデューサー……」 ジョワッ

卯月「恐怖でおしっこ漏らしちゃってても、ですか……?」 チョロチョロ

P「……」

P「戦場ではよくあることです」

卯月(それはそれで嫌だな……9

P「ご安心下さい」

P「このことは墓場まで持っていきますし、次の試合は水着です」

P「多少恐怖でもらしたところで大丈夫ですよ」

P「それに、控室の掃除もやっておきますので」

卯月「……ふふ」

卯月「そう、ですね」

卯月「皆がついているってことも」

卯月「プロデューサーがいてくれるってことも」

卯月「忘れないように、しなくっちゃ」

663: 2015/02/17(火) 02:45:06.10 ID:3zz/IUDLo

<高垣楓控室>

楓「……」

楓(誰かが訪ねてくることも、今のプロデューサーが激励にくることもない)

楓(……あの娘は、今頃皆と一緒に……)

楓「……孤独だと、こう、毒を吐きたくなるわね」 フフ

楓(最初の内は、ちやほやとされていても)

楓(売れてきたり、オトナになると、人は離れる)

楓(12時すぎのシンデレラのように、それまで見ていた夢から解放されてしまう)

楓(……プロデューサーと二人っきり、という夢は、個人的に、いらだちを覚えるから)

楓(だから――)

楓「夢の時間はもうおしまい」

楓「――行くわ、夢を終わらせに」

670: 2015/02/17(火) 23:41:31.33 ID:fsI2JsSgo

ちひろ「おまたせいたしましたっ!」

ちひろ「ここ、特設氷上リングにおいて、ついに準決勝の火蓋が切って落とされようとしていますっ」

鈴帆「火蓋でもなんでも点火しないと、寒くてやっちょれんばい」 ブルブル

ちひろ「……」

ちひろ「あれ?」

ちひろ「川島さんは……」

鈴帆「寒さにやられて歯がカチカチいうし喋れんからと交代を」

ちひろ「まあ、冷え性ですからねえ」

鈴帆「腹巻きが手放せなくなる年齢ばいねえ」

未央「やめたれ」

671: 2015/02/18(水) 00:04:45.75 ID:KyCS1vPso

ちひろ「それではルールを説明します」

ちひろ「今回の勝負は、ズバリ氷上相撲デスマッチです!」

鈴帆「ほほう、相撲とね」

ちひろ「はい」

ちひろ「場外になったり手をついたり、概ね相撲と同じルールで行われます」

鈴帆「ばってん、それだとトークの要素が」

ちひろ「もちろんそれだけじゃありませんよっ」

ちひろ「今回は、スペシャルなギミックを用意しました!」

鈴帆「このゲージは……」

ちひろ「ファンが主導権を握っていると思う方に投票し、そしてそれを数値化したものです」

ちひろ「票を得れば得るほど、彼女たちの衣服に装備した機械が体を温めてくれます」

ちひろ「逆に差をつけられると、冷気を発せられて、身動きが取りにくく!」

ちひろ「ちなみにこのオーバーテクノロジーは、晶葉研究所の提供でお送りしてます」

鈴帆「露骨にCM打ってきおった」

ちひろ「それが提供の条件でしたので」

672: 2015/02/18(水) 00:22:51.89 ID:KyCS1vPso

ちひろ「それでは入場いただきましょうっ!」

ちひろ「元気印のスーパールーキー!」

ちひろ「氷の女王のクールな顔も、その太陽なほほ笑みで溶かし切れるのでしょうか!?」

ちひろ「ニュージェネレーションズ・島村ァァァァァ卯月ィィィィィィィィィ!」

ワァァァァァァ

未央「この熱気……すごいな……」

未央「さっきまでと大違いだ」

みく「……大違いすぎて、ガチガチにならないといいんだけど」

卯月「わあ、すごくたくさんの人――」

卯月「寒ッ!」

卯月「うええ!?」

卯月「さ、寒いですよ!?」 ガチガチガチガチ

ちひろ「今はまだ暖房機能はOFFですからねえ」

鈴帆「スクール水着とはやるたいね」

ちひろ「胸の3文字がいい具合に名前を推してますねー」

鈴帆「つい見やってまうものを持ってるし、なかなかに知能犯ばいね」

673: 2015/02/18(水) 00:56:31.91 ID:KyCS1vPso

卯月「さ、寒い……」 ガチガチガチガチ

未央「うーん、そういう方面にガッチガチになっちゃったかー」

みく「さすがにあの全面氷のリングでスクール水着は酷だにゃ」

ヘレン「世界ではあのくらい当たり前よ」

ヘレン「ロシアのアイドルとか、とんでもないんだから」

ちひろ「続きまして、逆サイド!」

ちひろ「クールな仮面のその下に、一体何を秘めるのでしょうか!」

ちひろ「新人の祭典に一人乗り込み勝利を重ねるスーパーアイドル」

ちひろ「高垣ィィィィィィ楓ェェェェェェェェェェエ」

楓「確かに、少し冷たいわ……」

卯月「!?」

ちひろ「セクシィィィィィ!」

ちひろ「オトナの魅力をたっぷり詰め込んだ水着ですっ!」

鈴帆「そしてあの氷上でも動じる気配のない、いつもどうりの微笑……」

鈴帆「まさに仮面の微笑士たい……」

楓「ごめんなさい、氷上にいるとき、どんな氷上すればいいのかわからないの」 プッ

674: 2015/02/18(水) 01:10:24.07 ID:KyCS1vPso

卯月「あわわわわ」 ワタワタ

楓「……」 キリッ

ヘレン「まずいわね」

未央「え?」

ヘレン「入場順が高垣楓に味方しているわ」

ヘレン「島村卯月が氷で滑りそうになったり、寒さに慄くことで、リスナーにもその恐ろしさが伝わっている」

ヘレン「ソレは紛れも無く彼女の才能」

ヘレン「けれども……」

ヘレン「ソレをやればやるほどに、その環境下で平然としている高垣楓の異質性が際立ってしまう」

ヘレン「ただポーカーフェイスで突っ立っているだけで、今の高垣楓は注目を集められる」

ヘレン「圧倒的不利な状況でのスタートよ」

ヘレン「さあ――どうするのか、見せてもらうわよ……!」



【準決勝第1試合 ―― 試合開始(ゴング)】

681: 2015/02/19(木) 01:21:21.65 ID:g1D0Yoq4o

卯月「うう、寒い……」 ブルブル

楓「こんな日には、ゆっくりと温泉に――」

卯月「あ、いいですね~」

楓「温泉に入れば、降り積もる雪ですら体を温める一因に」

卯月「お、おお~……」






未央「な、なんか思ったより普通にトークを……」

ヘレン「貴女の目は節ホールなのかしら」

未央「え?」

みく「単に喋りで主導権を握るなんてもんじゃにゃい」

みく「ただ得意な話題に持っていくだけでもにゃい」

ヘレン「合間合間に具体例を出し、こちらに自然と温泉を想像させる」

ヘレン「寒い所にまだいるはずの島村卯月が、想像だけで暖かそうに頬を緩めているのが何よりの証拠」

みく「細かな所作で、温泉での自分を想像させるのも忘れてないにゃ」

未央「そ、そうか!」

未央「だからこそのあの水着ッ」

みく「そう……あの露出の高い水着は肉付きを魅せ、温泉における裸体の妄想を誘発させる」

みく「しかも……普段はグラビアすら珍しい高垣楓の露出」

みく「折角動きや普通のわちゃわちゃで目立っても、それも全て高垣楓の引き立てに終わってしまっている……!」

未央「こ、これがトップアイドル……!」

682: 2015/02/19(木) 02:00:15.63 ID:g1D0Yoq4o

卯月「温泉卵、実は食べたことがないんですよね」

楓「そう。それじゃあ、今度一緒に食べましょう」



ヘレン「何よりヤバいのは、考えていることをかけらも表に出さず、別の会話を出来る点」

ヘレン「腹に一物をかかえ、まるでそれを表に出さない」

未央「はっ!」

未央「いつの間にかあんな近くに……!」

凛「だめっ……」

凛「トークに意識を持って行かれたけど、これはあくまでも――」



楓「私の祝勝会で……ね」 ガッ

卯月「!?」

683: 2015/02/19(木) 02:32:45.92 ID:g1D0Yoq4o

紗枝「あの格好……」

紗枝「有利なんは、やはり高垣楓はん」

美穂「え?」

紗枝「……日本舞踊の弱点」

紗枝「何だか分かるかえ?」

美穂「……動きにくい、とか……」

紗枝「それもあるわなぁ」

紗枝「それを克服するための足捌きや」

紗枝「そしてもう一つの弱点が、その布面積の広さによる“つかみやすさ'や」

紗枝「克服のために常に舞うわけや」

紗枝「……水着の方が早く動けたんやけど、うちは着物の防御力がやっぱり恋しかったけどな」

紗枝「とにかく、や」

紗枝「衣服というのは、戦闘スタイルに大きく関わる」

紗枝「せやから、着物みたいに掴むところが多い衣装だと、“投げ'を警戒するんや」

美穂「あ、っていうことは……」

紗枝「ビキニじゃあ、体を掴むしかない」

紗枝「せやけど、スクール水着なら――」




未央「ゲエーーーーッ!」

未央「ゼッケン部分のたるみを掴まれたーーーーーッ!!」

みく「そ、そのまま一本背負いにゃとーーーー!?」

ヘレン「トークのみならず、筋力も申し分なし、ね」

685: 2015/02/19(木) 02:44:10.27 ID:g1D0Yoq4o

卯月「わわっ!」

未央「おおっ、なんとか相手の体に足を巻き付けて投げを防いだ!」

ヘレン「……」

ヘレン「防いで“しまった'になるのかどうかは、これからね」

未央「え?」

楓「これはトークバトルショー」

楓「黙ってたら駄目じゃない」

未央「ゲエーーーーッ!」

未央「こらえるしまむーをリフトアップし、サワーブリッジの体勢にとらえたーーーーっ!」

卯月「がっ……かはっ……」

未央「も、もうだめだ~~~~~っ!」

未央「あの技からは逃れられないよ!」

未央「破壊されるまで、脱出なんて……!」

686: 2015/02/19(木) 02:51:06.70 ID:g1D0Yoq4o

ビリビリビリビリィッ

楓「!?」

未央「あ、ああ~~~~~~っ」

未央「しまむーの水着がーーーっ!」

凛(スクール水着がやぶれる威力……デタラメすぎるっ……)

みく「!?」

みく「あ、あれはーーーーーっ!」






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






卯月『わあっ……』

卯月『こんな可愛い水着、貰ってもいいんですか!?』

P『はい……』

P『予定外に早く大舞台が決まりましたので』

P『きちんとした衣装をと』

卯月『嬉しいです……本当に……』 エヘヘ


687: 2015/02/19(木) 03:03:41.97 ID:g1D0Yoq4o

卯月『プロデューサーさんは、こういう水着が好みなんですねえ……』

P『……ああ、いえ、違います』

P『そちらの水着は、専門のスタッフに選んでもらったものです』

卯月『そうなんですか?』

P『……ええ』

P『どうやら自分が思っていた以上に、センスがないタチらしいので……』

卯月『へえ、ちょっと意外です』

卯月『でも……』

卯月『やっぱりとても嬉しいです!』

卯月『プロデューサーさんが、私のためにって動いてくれた結果ですから……』 ギュッ

P『……』

P『喜んでいただけで、光栄です』

688: 2015/02/19(木) 03:23:17.77 ID:g1D0Yoq4o

卯月『折角だし、この水着で……』

P『ですが、このスクール水着も、需要がないわけではないかと』

卯月『うーん……』

卯月『あっ、それじゃあこんなのはどうですか!?』






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






未央「ゲエーーーーッ!」

未央「やぶれたスク水の向こうに、さらに水着が……!」

みく「にゃるほどー!」

みく「確かに水着は1枚までなんてルールはない!」

卯月(水着を破いた瞬間に出来る隙)

卯月(そこを――――!) グイイッ

未央「あ、あのポーズは!」

みく「フランケンシュタイナーに行く気にゃ!」

697: 2015/02/20(金) 01:16:19.95 ID:8TxnkRAbo

卯月「うわあああああっ」

卯月(お願い、決まって!)

未央「いけーーーっ、しまむー!」

未央「高垣楓の頭部をはじけて♪ラストサマーさせちゃえ!」

卯月「スティール・ノウ・シュタイナーーーーーッ」

凛「……っ!」

未央「なっ……」

ちひろ「あ~~~~~っと、これは~~~~~~~っ!」

鈴帆「ゲエーーーーッ、ブリッジのような姿勢で、ぎりぎり踏ん張っておる!」

楓「今まで……血反吐を吐きながら何度も踊り狂ってきたわ」

楓「そして鍛えたこの体」

楓「筋力・柔軟性、いずれを取っても、負ける気は――」 グググググ

卯月「そ、そんなっ」

卯月(体重をかけているのに、腹筋のチカラだけで私ごと持ち上げ……!?)

楓「しないッ」

ちひろ「あーっと、島村卯月選手、ついに弾き飛ばされたーっ!」

卯月「わわっ」

鈴帆「弾き飛ばされたのは正解たい」

鈴帆「あれ以上粘っとったら、サワーブリッジの犠牲になっちょった」

鈴帆「なんとか着地して仕切り直せただけ、上出来たい」

698: 2015/02/20(金) 01:27:33.75 ID:8TxnkRAbo

ヘレン「上出来?」

ヘレン「一見すればそうでしょうけど……」

ヘレン「奇襲のネタを使ってなおノーダメージ」

ヘレン「何一つ好転させられなかった時点で、どの道ジリ貧」

楓「可愛い水着……」

楓「思わず胸がキューっトなるわね」 フフ

卯月「……」

ビュオオオオオオ

卯月「さ、寒い……」 ガタガタ

ヘレン「しかも相手は高垣楓」

ヘレン「トークの手も緩めてはこない」

卯月「や、焼きそばっ」

卯月「あったかい焼きそばが食べたくなりますねっ」

みく「……」

みく「例え頑張って喋ろうとしても、高垣楓にはアレがある」

卯月「水着の季節でも、寒い時でも食べたくなるし、焼きそばってすごいですよねっ」

楓「そうね」

楓「ソースの香りが、まさに理ソーっス(理想っす)」 フフ

ビュオオオオオオ

凛「ダジャレ……」

凛「話の流れをぶったぎり、相手の主導権を無理矢理失わせ五分まで持っていく……」

凛「なんて残虐な技っ……」

ヘレン「そして彼女は、その引き出しを無限に持つ」

みく「トークではどんな場面からでも五分に戻され、地力の高さでそこからまた会話を持っていかれる……」

みく「ほんっと、こんな番組に出てるのがおかしいくらいのA級アイドルのスキルだにゃ」

699: 2015/02/20(金) 02:07:11.63 ID:8TxnkRAbo

卯月(うう……隙がないっ)

卯月(どうすれば……) チラッ

P「……」 パシャパシャ

卯月(しゃ、写真撮ってるーーーーーっ!?)

卯月(あ、アドバイスとかがあるわけじゃないんですね……)

卯月(うう、どうすれば……)

楓「……」

楓(あの人は、何でもやってくれる)

楓(器用さと不器用さが同居していて、とても不思議なのだけれど)

楓(器用に裏で動いているのに、目に見える場所でのフォローは下手くそで……)

楓(どれだけこちらを愛してくれて、頑張ってくれているのか、伝えるのが苦手で)

楓(あれほどまでに愛されてるのに、気付かないまま見捨てられてるのかと不安になって)

楓(まるで……)

楓「まるで昔の私、ね」 ボソ

卯月「え?」

楓「なんでもない」

楓「……なんでもない、本当になんてことない些細な――」

卯月「……」

卯月(あれ、今、楓さんの瞳が……)

卯月(演技とは違いそうな、何だか複雑な揺れ方を……)

卯月「……」

卯月(ええい、自分を信じる!)

卯月(アイドルになりたくて、ずーっとスーパーアイドル高垣楓を画面越しにでも見つめ続けた自分を!)

卯月「今が攻め時っ!」 ダッ

700: 2015/02/20(金) 02:16:34.08 ID:8TxnkRAbo

卯月(投技は駄目)

卯月(失敗した時に、サワーブリッジに移行されるおそれがある)

卯月(だから、ここは!)

卯月「てやあああああっ!」

未央「しまむーっ、必殺技名は叫ばなきゃだよしまむー!」

卯月「え!?」

凛「私達はアイドル」

凛「言葉にはチカラがあるって、誰より信じなくちゃ駄目だし」

卯月「う、うん」

卯月「ええと――」

卯月「島村リアーーーーーーーーット!」

701: 2015/02/20(金) 02:23:28.69 ID:8TxnkRAbo

ふわっ

卯月「えっ……」

凛「嘘……」

紗枝「まるで楓の葉が舞うように、華麗なチカラの受け流し……」

紗枝「間違いない、あれは薫風の舞」

美穂「知ってるの?」

紗枝「ああ……」

紗枝「風に舞う葉のように力を受け流し、そしてそれを全て攻撃エネルギーへと変換する超技術や」

美穂「……」 ゴクリ

紗枝「まあ、ようするに――」

ガッシィ

楓「もう逃さない」

楓「掴みやすいひらひらのおかげで、もう逃げられることもない」

卯月「あ、あわわ」

楓「それとも今度は、この布を破いて脱出してみる?」

卯月「……」

卯月「そ、それは出来ません」

卯月「だ、だって……」

卯月「プロデューサーが……私の、ために……」

楓「!」

楓「……そう」

楓「それじゃあ――もう、容赦はしないわ」 ミシミシミシ

702: 2015/02/20(金) 02:33:13.12 ID:8TxnkRAbo

ベキバキボキベキィ

楓「……」

楓(いい子、ね……)

楓(真っ直ぐで、自分に正直で、感情表現が豊かで――)

楓(私には、ないものばかり)

卯月「あ……が……」

卯月(い、いたい……)

卯月(寒いし……痛いし……眠くも……なって……)

ギリギリギイ

卯月「あぎっ」

卯月(ま、まずいことに……)

卯月(さっき漏らしてるからとトイレに行かなかったけど。これだけ寒いと……!)

卯月(し、しかも体を弓なりに持たれるせいで、膀胱が…・・!)

楓「さ、ギブアップなさい」

楓「さもないと、このまま――」 ポタポタ

楓「……?」

楓(水滴……?) チラッ

卯月「」 チョロチョロチョロ

楓「……」

楓(この液体……この娘の股間から出てる……)

楓(まるで呆けたような氷上で、少し色が濃くなった水着で……) クン

楓「!?!?」

楓(この匂い……ま、まさか、私の上でおしっ――!) バッ

楓「き、汚らしいっ」 バッ

ちひろ「あーっと、どうしたことか」

ちひろ「サワーブリッジを解いてきましたね」

鈴帆「ここからじゃよく見えんばってん、何が起きたのか……」

鈴帆「いずれにせよ、この試合で2度もサワーブリッジを不発にした島村卯月選手を褒めるしか無かとね」

704: 2015/02/20(金) 02:53:19.81 ID:8TxnkRAbo

楓「くっ……」

楓(鼻にも口にも入っちゃったわ……)

楓(さすがにこれで冷静にいるなんてのは無理ッ)

楓(でも……)

楓(相手は、あのプロデューサーが認めたアイドルの卵)

楓(私よりも、よっぽど“持って”る)

楓(カメラの位置や角度的に、失禁を明示するような映像は収められてない)

楓(尿による水着の色の変更も誤差の範囲)

楓(そしてひらひらした装飾部が漏らした尿をまき散らさず私の顔へと運ぶ役割を果たした……)

楓(自分へのダメージを最小限に、相手にダメージを与える)

楓(恐ろしいくらい持ってる)

楓(だから――)

楓(サワーブリッジだけで倒すのはやめる)

楓(全霊を持って、叩き潰す!)

705: 2015/02/20(金) 03:02:35.46 ID:8TxnkRAbo

楓(あの娘が、さっきからダブる自分と同じだとすれば)

楓(かつての自分と一緒に、この壁を乗り越える)

楓(そして――あの人との思い出をも、踏み越えていくッ!)

楓「高垣ーーーーーック!」

ドガッ

鈴帆「あーーーーっと!

ちひろ「何やら呆然としている島村卯月選手、これには反応できないっ」

卯月「ごはっ……」

711: 2015/02/20(金) 22:55:26.84 ID:8TxnkRAbo

未央「しまむーーーーっ!」

凛「まずい、あの飛ばされ方は……!」

未央「飛ばされ方……?」

ヘレン「さっきまでは高い位置からの落下だった」

ヘレン「故に跳ねるような力が働くため、それこそ飛び上がり急場しのぎをすることが出来た」

ヘレン「事実そうやって数度飛び跳ねるような動作を経て体勢を立て直せたわ」

みく「言うならば……」 ボヨーン

みく未央「「スーパーボール」」

ヘレン「真面目に聞かないなら喋るのやめるわよ」

凛「……そのスーパーボールみたいな飛ばされ方と、蹴りによる飛ばされ方は違う」

凛「純粋な横滑りだし、蹴られた箇所によっては上体が倒れるように力が働く」

凛「地面から足を離さず体勢を建てなおさないといけない」

凛「……ですよね?」

ヘレン「ええ」

ヘレン「相撲と銘打っているし、つかみ合いでのバランス崩し合いが想定されていたけど……」

ヘレン「ここをしのいでも、打撃合戦になるかもしれないわね」

未央「あ、あのフィジカル相手に打撃合戦……」

凛「卯月ーーーーーっ!」

713: 2015/02/20(金) 23:04:09.37 ID:8TxnkRAbo

卯月(ごめんなさい……)

卯月(私じゃ、楓さんには……)

ギュムッ

卯月「わっ」

楓「!?」

鈴帆「あ~~~~~っと!」

鈴帆「なんと脱ぎ捨てられた水着部分のゼッケンを踏みつけたーーーっ!」

卯月「っ!」 グルン

未央「ゲエーーーーッ!」

未央「まるでバナナの皮を踏んだかの如くサマーソルト!」

凛「ちゃ、着地した!」

凛「しゃがみこんだけど、手はついてないっ!」

卯月「……」 バックンバックン

みく「運がいいにゃー」

みく「まあ、みくなら猫なみのしなやかさであれくらい――」

P「偶然でも、運でもありませんよ」

みく「ふえ?」

P「視界がめまぐるしく回っても、決して動きを止めない」

P「どんな時でも、意地と気迫で踊り続ける」

P「たった一人の養成所でも踊ることを辞めなかったからこその動き」

P「体に染み付いた、努力の結晶です」

P「偶然などでは、ありません」

みく「……」

みく「まっ、それなりに認めてやらんこともないにゃ」

714: 2015/02/20(金) 23:20:26.16 ID:8TxnkRAbo

卯月「た、助かった……」 ホッ

卯月「……」

卯月(たす、かった……?)

卯月(また、楓さんと戦わなきゃいけないのに……?) チラッ

楓「……しぶといのね」

卯月「ひっ」 ジョロッ…

卯月「わわわ……」 アタフタ

ちひろ「こ、これは……」

鈴帆「逃走たいね」

ちひろ「なんとお!」

ちひろ「島村卯月選手、リング上を逃げまわっています!」

卯月「こ、こわい……」 ガクガク

715: 2015/02/20(金) 23:36:27.76 ID:8TxnkRAbo

凛「つ、強すぎる……」

未央「ムチャだったんだ……こんな相手に……」

楓「……アイドルは……」

楓「究極の無差別級異種格闘技戦」

未央「え?」

楓「キャラによって需要はあるし、同じキャラ同士喰い合うこともある」

楓「売れているからと無条件で来る仕事もあれば、新人だからと回してもらえる仕事もある」

楓「けれど……」

楓「結局の所、限られた椅子を奪い合う過酷な世界」

楓「どれだけ美しくても、どれだけ優れていても」

楓「闘う気概を持たない者では勝ち残れない」

楓「まさに価値残れない……」 フフ

凛「……っ」

未央「うぐっ……こっち見て好き放題言って……!」

楓「確かに文字にすれば同じ『アイドル』なのかもしれないけど……」

楓「アイドル意識もないまま美貌にかまけてデビューだけする娘とは違い……」

楓「私達一流とされるアイドルは――」

楓「鍛え方が違う!」

楓「性根が違う!」

楓「理想が違う!」

楓「決意が違う!」

楓「血が違う!」 ププッ

卯月「う、うう~~~っ」 ブルブル

楓「負ける理由なんてないわ……」

717: 2015/02/21(土) 00:43:24.24 ID:0sbelV3Eo

卯月「あ、ああ……」 ジョロロロ

卯月(こ、これが圧倒的オーラ……)

卯月「ぷ、プロデューサーさん……」 チラッ…

武内P「……っ」 パシャ

凛「撮るのやめなよ」

719: 2015/02/21(土) 00:53:31.33 ID:0sbelV3Eo

卯月「誰か……」 ガクガク

楓「ステージの上では一人」

楓「声援を力に変えることは出来ても、力を借りることはできない……」

卯月「……」

卯月「プロデューサー……」

武内P「……」 パシャ

卯月「ここに立ってるのは、プロデューサーや、凛ちゃん……」

卯月「脱落した皆の力があってこそ……」

卯月「だから……」

卯月「こんなこと言っちゃ駄目だってわかってるし……」

卯月「一人呟くだけならよくても、人に言っちゃ駄目ってことくらいわかってます……」

卯月「アイドルは、いつでも笑顔でいなきゃいけないってことも……」

卯月「でもっ……」

卯月「こわいよ、プロデューサー……」

武内P「島村さん……っ!」 パシャ

720: 2015/02/21(土) 01:05:36.12 ID:0sbelV3Eo

武内P「……ッ」 ギリッ

武内P「頑張って、ください」

武内P「もう頑張り尽くしてることは承知しています」

武内P「こんな言葉に意味がないことも、そんな言葉を求めているのではないことも……」

武内P「全て、理解しています……」

『君のやり方は、少し古いというか、不器用というかだね』

『違うプロジェクトでやり直してみてはどうだね?』

『今のままでは、君もやりづらいだろう』

『……今のまま、プロデュースを続けることは出来ない。わかるね?』

武内P「それでも……」

武内P「頑張ってください」

武内P「今は何も出来ません」

武内P「でも……倒れたあと、一緒に這い上がることはできます」

武内P「一緒に苦しむことも、心ない世間の目から守ることもします」

武内P「ステージを降りた後は、全力で、全てを賭けてフォローします」

武内P「だから、島村さんも……」

武内P「いつものように、全力で、悔いのないよう、少しでも前のめりで倒れてきてください……っ」

未央「そんな、無責任でムチャなことを……!」

武内P「島村さんになら、できます」

武内P「だって――」

武内P「だってまだ、怯えて醜態を晒しながらも、ステージを降りてないじゃないですか……っ」

卯月「――――っ!」

721: 2015/02/21(土) 01:28:00.13 ID:0sbelV3Eo

卯月「……」

卯月「プロデューサー」

卯月「……負けちゃったら、ちゃんと慰めてくださいね」

武内P「……はい」

卯月「凛ちゃん……」

凛「……」

卯月「ちゃんと、見ててね……」

卯月「少しでも何かを残せるよう、最後まで立ち向かいますからっ……」

凛「卯月……」

卯月「未央ちゃん……」

未央「なに、しまむー!?」

卯月「……」

未央「……」

卯月「……」

未央「……」

卯月「……」

未央「何もないんかい」

722: 2015/02/21(土) 01:49:56.74 ID:0sbelV3Eo

楓「……」

楓「変わらないですね……」 ポツリ

卯月「え?」

楓「……」

楓(やっぱり、根本は何も変わっていない)

楓(私や皆をプロデュースしていた頃から、何も……)

楓(あの頃の、あの人のまま)

楓(でも……)

楓(もう、その隣に私はいない)

楓「……」 ギリッ

卯月「……?」

卯月(プロデューサー達のおかげで……)

卯月(まだ恐いけど、しっかりと相手を見られる……)

卯月「楓さん……」

卯月「楓さんは……」

卯月「私のこと、嫌っているんですか?」

724: 2015/02/21(土) 01:59:46.01 ID:0sbelV3Eo

菜々「ブフォッ」

夏樹「すごいなあ、あのクソ天然」 ケラケラ

菜々「あ、医務室はもういいんですか」

夏樹「まあ、こんな面白い試合は現地で見なくちゃいけないしな」

夏樹「高垣楓は確かにすごい」

夏樹「さっきの強気の宣誓も、相手の弱腰を批判することでヒール化を回避してた」

夏樹「1回戦でメガネが犯した失敗は繰り返さないってとこか」

菜々「相手にヒールをおっかぶせ、でもかっこ良く決める……」

菜々「なかなか出来ることじゃないですよ」

夏樹「普通はそうやって見栄えを気にするし、真っ向から主導権を奪いに行く」

菜々「……でも、あの娘はそれをしませんよね」

夏樹「天然なのか何なのか」

夏樹「普通聞かねえことでも平気で聞く」

夏樹「恐いねえ、ブレーキを知らないほんわかモンスターってのは」

725: 2015/02/21(土) 02:06:32.35 ID:0sbelV3Eo

卯月「楓さんは……すごいです」

卯月「誰よりも強いし、アイドルとして、本当に尊敬しています」

卯月「初めて自分のお小遣いで買ったのも、楓さんのCDですし……」

楓「……」

卯月「だから――気付いたんです」

卯月「あの日の、昔の楓さんと、今の楓さんの違いに」

楓「……」

卯月「今の楓さん……」

卯月「ちっとも、楽しくなさそうです」

楓「――っ!」

卯月「無邪気なオトナって感じだったあの時と違って」

卯月「何を考えているのか分からないのに、それでもトップアイドルを目指していたんだろうなって瞳と違って」

卯月「今はただ、目的もなく、惰性でアイドルをやっているかのようで……」

楓「……」

楓(そう……)

楓(だって……もう、夢は叶わないってこと、知ってるもの……)

楓(どれだけ頑張っても、あの人は、もう――)


726: 2015/02/21(土) 02:33:11.00 ID:0sbelV3Eo

卯月「……私が戦った人達は……」

卯月「皆個性的で、ちょっと変わってましたけど……」

卯月「皆、自分を魅せようとしてました」

卯月「自分の信じる道と、愛するものを、アピールするために」

卯月「そのために互いを尊敬しあって、互いに高め合いながら試合をしていました」

楓「……」

卯月「もし、楓さんが、何も愛せていないなら」

卯月「もしも楓さんが、私というアイドルを蹴落とすためだけに戦っているのだとしたら」

卯月「なんだか……勝てるかもしれないって思えてきました」

楓「……」

楓「まだ震えてるくせに」

卯月「怖いですから」

楓「恐怖という強風で煽られて、心だって氏にそうじじゃない」

卯月「それでも……」

卯月「今は震えながらでも、立ち向かっていけます」

卯月「……知ってますか?」

卯月「心に愛がなければスーパーアイドルじゃないんですよ……!」

731: 2015/02/22(日) 02:22:35.09 ID:up1sgI9so

卯月「私は……」

卯月「皆に貰った愛と!」

卯月「皆を愛する気持ちと!」

卯月「アイドルへの想いを胸に」

卯月「全力でまえのめりますっ」

未央「おおっ、滑り始めた!」

凛「さらに踊り始めている……!」

P「島村さんは……」

P「誰よりも努力家で、誰よりもダンスの課題がたくさんありました……」

P「ずっと踊り続けた彼女にとって」

P「体が追いつかなかろうが構わず踊ってきた彼女にとって」

P「氷上で滑りながら危ういバランスの元それでも踊り続けるくらい、出来るんでしょう」

卯月「私には、これしかできません」

卯月「だから!」 グルグル

紗枝「舞踏、か……」

ヘレン「高垣楓に捉えきれない速度じゃない」

菜々「でも――」

夏樹「ブレーキをかけず、倒れることを恐れないあいつは、どんどん速くなるっ……!」

732: 2015/02/22(日) 02:31:26.84 ID:up1sgI9so

楓「……」 スッ

未央「腕を上げた……?」

凛「なに、あの構え……」

P「あれは――」 ゴクリ

未央「知っているのプロデューサー!?」

P「……いえ」

P「その……」

凛「教えてよ、なんなのあれ!」

P「……」

P「言えません」

P「今は敵とは言え、同じ事務所のアイドルです」

P「それに……」

P「言葉で言うより、目にした方が……」

瑞樹「昔の担当の技をばらすのは忍びない、かしら」

P「!?」

未央「わわわっ、川島瑞樹!」

瑞樹「突然カーテン開けられて以来ね」

未央「ナンノコトデスカ」

凛「な、なんか解説もお休みしてたんじゃ……」

瑞樹「ええ」

瑞樹「寒いし、休む予定だったのだけれど」

瑞樹「とりあえず股引に腹巻きつけたら寒さはしのげたから……」

凛「おっさんか」

733: 2015/02/22(日) 02:37:03.18 ID:up1sgI9so

凛「なんでここに……」

瑞樹「一応、教えておいてあげようかと思って」

未央「何を?」

みく「高垣楓の技を知ってるとかいう中年自慢にゃ」

未央「うへえ」

凛「しっ、長く生きてると知識くらいしか自慢出来るものなくなるんだから」

瑞樹「春菜ちゃんが意識取り戻したことを教えにきてあげたのに」

瑞樹「悲しいわ、ニュージェネレーションズのファンレターに使用済みあぶらとり紙混入させちゃいそう」

凛「すみませんでした」

未央「本当に申し訳ない許して」

734: 2015/02/22(日) 02:38:35.10 ID:up1sgI9so

凛「っていうか、意識を取り戻したって――」

瑞樹「ええ」

瑞樹「ついさっき、無事に覚醒したわ」

凛「そうなんだ……よかった……」

凛(正直ちょっと忘れつつあったけど)

未央(多分忘れてたよなあしぶりん)

みく(忘れてたんじゃないかにゃあ)

瑞樹「本当に目を覚まさないんじゃないかってことで呼ばれたんだけど……」

瑞樹「なんとメガネをかけさせたら無事意識を取り戻したわ」

未央「なにそれこわい」

735: 2015/02/22(日) 02:52:32.61 ID:up1sgI9so

ヘレン「どうしても手術や入院だと過剰な装飾は外されてしまうわ」

みく「みくも見た目でアイドルスイッチを切り替えるから、気持ちはわかるにゃ」

未央「えっ、そんなもん!?」

瑞樹「まあ、何にせよ、戻ってきてよかったわ」

瑞樹「私も、春菜ちゃんの意識も」

凛「ですね……」

瑞樹「それに――あの技が見られる」

P「か、川島さんっ」

P「ご本人の意思確認もないしに、勝手に特技をバラすというのは――」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「でも、どうせ、いつかは知ることよ」

P「……」

瑞樹「あの技も――」

瑞樹「あの娘との関係も」

凛「……?」

736: 2015/02/22(日) 03:14:18.60 ID:up1sgI9so

瑞樹「……まあ、いいわ」

瑞樹「時が来たら、直接教えるつもりなのかもしれないし」

未央「ええ!?」

未央「なになに、気になる~っ!」

瑞樹「昔色々あったって話よ」

瑞樹「そしてあの技は、その“色々”の延長線上」

凛「?」

瑞樹「大好きな人と離れ離れになった悲しみを酒で誤魔化してた時の遺産」

凛「遺産よりも負債に近そうな雰囲気を感じ取れるんだけれど」

ヘレン「借金も遺産ではあるわよ」

瑞樹「居酒屋で、そのストレスを酔っ払い相手にぶちまけた――」

瑞樹「さすがにもみ消し切れるものでなく、あれはフライデーされたのよね」

未央「あ、それなら知ってるかも……」

みく「確か、その記事がきっかけで、それまでの完全神秘お姉さんキャラから、子どもじみた所もある面白キャラに半分転身したと……」

瑞樹「結果として、まだ真面目なクールビューティとしての仕事が多いけれど、それでもダジャレを平気で言うようにはなったわ……」

凛「今の芸風に影響を与えた事件なんだ……」

瑞樹「その時酔っぱらいだろうとなんだろうとなぎ倒したのが、この技」

瑞樹「……あの時以来、今まで使ってこなかったのに、一体どうして……」

楓「居酒屋ボンバー……」 ヌッ

瑞樹「その技で、自ら仕掛けるのでなく、返り討ちにするつもりでいる……」

瑞樹「決着の時は近いわね」

741: 2015/02/24(火) 02:06:31.42 ID:p8NBdoAko

楓(……私だって、諦めなかった)

楓(私だって、一生懸命だった)

楓(仕事だって色々こなしてきた)

楓(でも……あの人は……)

楓「……」 ギリッ

楓(これは、くだらない嫉妬)

楓(貴女に罪はないわ。でも――)

卯月「うあああああああああっ!」

楓(私は貴女が、あの人の愛を受けて闘う貴女が、憎いっ!)

楓「居酒屋ボンバァァァッ!」

ボゴォォッ

凛「っ!」

未央「う、卯月がふっ飛ばされたっ……!」

742: 2015/02/24(火) 02:15:04.17 ID:p8NBdoAko

ガクッ

楓「……!?」

楓(インパクトの瞬間に、足をとられ――)

楓「こ、これは……くぼみ!?」

楓(なんで、こんな……)

楓「!!」

楓(まさかこれは、さっき垂れ流しになっていたあの娘のおしっ……!)

楓(温かいアンモニア水によって氷が僅かに溶けていたとでも……)

楓(それで私の居酒屋ボンバーの威力が減ったなんて……)

楓(……)

楓(これが……私に足りないもの……?)

楓(あの人が、私のプロデューサーから外れたのは、私にコレが足りなかったからとでも言うの……?)

743: 2015/02/24(火) 02:24:21.70 ID:p8NBdoAko

卯月「くっ……」

卯月(やっぱり当たり負けはする……)

卯月「でも……背中さえ!」

卯月「体さえ地面につけなければッ!」

未央「ゲエーーーーッ!」

未央「イナバウアーばりに体を反ってるのに、体は決して地面についてないっ!」

凛「でも、ラリアットの衝撃で完全に頭から場外に向かって滑っていっている!」

凛「あの体勢からは挽回なんてとても……」

卯月「プロデューサー……」

卯月「一緒に考えたオーバー水着作戦を、今こそ!」

鈴帆「おわーーーーっ、なんじゃあれはーーーーー!」

ちひろ「あれは……敗れた水着の残骸!?」

美穂「わわっ、水着の切れ端をリング横のカメラに引っ掛けて……」

紗枝「カメラを軸に回転しおった……!」

夏樹「やろー、私がさっきの試合でやったのを見て、狙ってやがったな」

菜々「相手の力を利用するため――ですね」

卯月(もう私にも立ち止まることはできないし、ただただ慣性の法則に流されるだけ) シャアアアア

卯月「でも!」 シャアアアア

卯月「流されて滑るだけの私でも、皆に貰った力と一緒に、やれることは全部やりますよ……!」 シャアアアア

744: 2015/02/24(火) 02:32:01.55 ID:p8NBdoAko

未央「おおっ」

未央「ありえないほどの速度でしまむーが滑って突っ込んでいくッ!」

凛「誰かの力を借りる」

凛「努力して成長する」

凛「そして、何度でも無様を晒して、それでも必氏に立ち向かう」

凛「……どれも、卯月だけの、とても大切な個性」

凛「いけ、卯月」

凛「あんたの魅力が詰まったその一撃ならば!」

凛「油断なのか考え事をしている高垣楓に一撃入れられるッ!」

745: 2015/02/24(火) 02:51:52.28 ID:p8NBdoAko

鈴帆「ちゅーか、衣服の仕様とかは相撲としてありなんか?」

ちひろ「今回のルールじゃ禁止してませんからありです」

未央「いっけえええええええ!」

菜々「あたって!」

夏樹「ぶちかませよ、くそったれーーーーーーっ!!!!」

楓「!!」

凛「いけないっ」

凛「皆が反応したことで気付かれた!」

みく「いや、でもあの速度なら避けられないにゃ!」

楓「ぬっ!?」

楓(返り討t……無理ッ)

楓(居酒屋ボンバーのせいで体勢が崩れてるし、足をとられ……)

楓「はーーーーーーーっ!」 ブアッ

ちひろ「な、なんとお!」

ちひろ「高垣楓選手、しゃがみこんだ体勢から、一気に飛び上がり島村卯月選手を回避~~~~~~~っ!」

未央「はずされたーーーーーーーーっ!!!」

みく「もうダメにゃーーーーーーっ!!!!」

746: 2015/02/24(火) 02:55:46.10 ID:p8NBdoAko

凛「卯月っ……!」

凛「逆境なんて跳ね返して、卯月っ!!」

凛「観客は味方になったっ!!」

凛「今なら、高垣楓のダジャレによる主導権強奪だってはねかえせるはずだよっ!!」

卯月「くっ……」

卯月(もう一度、水着を引っ掛け――――)

ビリビリビリィ

卯月「あっ……」

卯月(ダメ……止まれない……他に、布も……!)

ドサッ・・・

747: 2015/02/24(火) 03:12:09.15 ID:p8NBdoAko

未央「そんな……」

みく「うそ……」

鈴帆「落ち……た……」

ヘレン「……」

ヘレン「……よく、やったわよ。あの高垣楓を相手に」

P「……っ!」 ギュッ

水樹「やはり強いわね……」

凛「リングアウト……?」

凛「うそ、でしょ……」

凛「卯月が――――負けた?」

754: 2015/02/25(水) 00:52:06.02 ID:YJ4lf4l2o

楓「……っ」

楓(危なかったわ……)

楓(さすがはあの人の担当アイドル)

楓(最後まで油断ならない相手だった……) シュタッ

未央「くっ……」

未央「しっかりと両足で着地した……」

凛「せめて膝から落ちてきたら、引き分けだっていちゃもんもつけられたのに……」

武内P「……」 パシャ

武内P「いえ……」

武内P「あれを見て下さい」 パシャッ


755: 2015/02/25(水) 00:54:14.81 ID:YJ4lf4l2o

楓「……」

楓「?」

楓(何か、違和感が――――)

ザワザワザワザワ

楓(寒……)

楓「…………え?」

ちひろ「な、ななななんとォォォォォーーーー!!」

ちひろ「島村卯月選手の意地の一撃が掠っていたのか、高垣楓選手の水着の下が!」

ちひろ「紐を破かれ、無残にも落下しています」

楓「…………」

ウオオオオオオオ

楓「~~~~~~~~ッ////!?!?!?」 カァァァァァ

757: 2015/02/25(水) 01:10:44.29 ID:YJ4lf4l2o

楓「ッッ」 ペタン

未央「あっ、しゃがみこんだ!」

凛「膝はついたけど、でも、卯月のリングアウトの方が先、か……」

未央「いや、でもすごいよ」

未央「あの高垣楓に膝をつかせるなんて」

未央「多分、しまむーが初めてじゃない?」

凛「……」

未央「……しぶりん?」

凛「……確かに、膝をついたのは卯月が落ちてから」

凛「でも、水着が脱げたのは……?」

未央「え?」

凛「これがあくまで氷上“相撲”デスマッチなら」

凛「相撲の名を冠するのならッ」

凛「まわし――つまり下の水着を取られた時点で、敗れているはず……!」

未央「そ、そうかーーーー!」

未央「しまむーが落下するより先に水着が脱げていたら……」

みく「先に負けの条件を満たしたのは高垣楓ってことに……!!」

758: 2015/02/25(水) 01:21:23.68 ID:YJ4lf4l2o

ちひろ「ええと、物言いがつきました」

ちひろ「確かに相撲では回しを取られると負けですからね」

鈴帆「……となると、ビデオ判定とね?」

ちひろ「そうなりますねえ」

鈴帆「……その場合、リスナーには?」

ちひろ「コメント欄がどっちが勝ったか揉めまくってますし、映像を流さないと納得しないでしょうねえ」

鈴帆「……流すんか……」

ちひろ「一応、スタッフが今懸命にモザイクを入れていますが……」

760: 2015/02/25(水) 01:29:03.68 ID:YJ4lf4l2o

楓「……」

楓「……でいいわ」 ボソリ

ちひろ「はい?」

楓「私の、負けでいいわ……」

ちひろ「え、でも、リスナーのアンケートだと優勢なのは――」

楓「負けでいいから」 フラッ

ちひろ「あ、ちょっと……!」

鈴帆「……まあ、そうなるばいね」

鈴帆「すでに売れっ子である以上、あんな醜態をリプレイされてまでバックダンサーになる理由なんてないっちゃ」

鈴帆「……負けと引き換えに検証再生を避けるのは当然のことばい」

ちひろ「そんな……」

ちひろ「リプレイした方が絶対再生数増えるしプレミアム会員も増えるのにっ……」 クッ

鈴帆「鬼か」

761: 2015/02/25(水) 01:38:09.97 ID:YJ4lf4l2o

ちひろ「えー」

ちひろ「まことに残念ながら、高垣楓選手から決勝戦辞退の申告がありました!」

ザワザワザワ

卯月「……ふえ!?」

ちひろ「よって、まことに口惜しいですがビデオ判定は無しとし、決勝には島村卯月選手を進めたいと思います!」

ワアアアアアア

卯月「え!? え!?」

未央「うおおおおおおお!!」

みく「大逆転勝利にゃーーーーー!!」

卯月「い、いいんでしょうか、こんな棚ぼたで……」

凛「いいんだよ」

凛「……あの人は、すでに一流アイドルだから、失うものの大きさの前に辞退を選んだ」

凛「でも、卯月なら……」

卯月「……?」

凛「……卯月があの人の立場だったら、どうしてた?」

凛「ビデオ判定、してた?」

卯月「……」

卯月「恥ずかしいですけど……」

卯月「それで、勝てる可能性が1でも生まれるのならば……」

凛「……」

凛「そういうところだよ」

凛「勝利のために無様を晒せる」

凛「その強さで掴んだ勝利なんだ、棚ぼたでもなんでもないよ」

未央「そーそー!」

未央「みっともなく足掻いたからこそ、最後に水着を取れたわけだしさ!」

卯月「そ、そうですかねっ……」

みく「そのとーりだにゃ」

ヘレン「もうちょっと喜んでもバチはあたらないわよ」

瑞樹「むしろこの大金星でも喜ばないのは、少々無礼にあたるほどよ」

卯月「う、うう……」

卯月「やりましたああああああ!」 ピョイーン

菜々「うんうん、羨ましいですねえ」

夏樹「自分に出来なかったことを後輩がなすってのは、嬉しさ半分悔しさ半分だけどな」 ハハ

762: 2015/02/25(水) 01:44:54.87 ID:YJ4lf4l2o

楓「……」 フラッ

武内P「楓さんっ……!」

楓「……」

楓「どうも」 スッ

武内P「待って下さいっ……!」

楓「……」

武内P「この度は、うちの島村卯月が大変失礼を致しましたっ……」 ガバッ

楓「……」

楓(……“うちの島村卯月”、ね……)

楓(分かってはいたけど……傷つくわ……)

楓(もう、私は貴方のものではないし、貴方にも新しい担当が出来ている……)

楓(分かってはいるの。でも――)

764: 2015/02/25(水) 02:28:46.47 ID:YJ4lf4l2o

楓「……」

楓「こんな人気のないところ、来ている場合じゃないんじゃないですか」

楓「“貴方のところのアイドル”達、勝利に大はしゃぎしてますよ」

武内P「……」

武内P「今回のことのお詫びは、いつか改めてします」

楓「……」

楓「別に、いいです」

武内P「映像が出まわらないように、こちらでも打てる手は打たせて頂きます」

楓「……それも、別に、いいです」

楓「難しいってことくらい、わかりますから」

武内P「それと撮影した写真も、後日全て消させて頂きます」

楓「今消して」

766: 2015/02/25(水) 02:46:13.68 ID:YJ4lf4l2o

武内P「いえ、ですがこれには大事なデビュー大会の記録が……」

楓「消して下さい」

武内P「まだまだ未熟と思っていたアイドルが、一流に勝利する貴重な瞬間が」

楓「いいから」

武内P「決してやましい気持ちなどでは」

楓「いいから」

武内P「……」

楓「……」

武内P「本当に、欠片もやましい気持ちなどなく、あくまでも島村さんを――」

楓「……それはそれで、なんか悔しい」 ボソ

武内P「はい?」

楓「……」

楓「プロデュ……」

楓「……」

楓「“武内さん”は――」

楓「私には女性的魅力を感じていない、口リコンということでしょうか」 プクゥ

武内P「……は?」

楓「……」

武内P「……」 エート

武内P「そういうわけではありませんが……」

楓「あの娘達はたくさん撮るのに、私は撮ってくれないんですね」

武内P「…………」

楓「…………」 プクゥ

武内P「一応、島村さんが勝利した瞬間として、赤面してしゃがみ込む所を連続撮影機能で」

楓「カメラごと消しておきます」 バキャァ


767: 2015/02/25(水) 02:49:06.55 ID:YJ4lf4l2o

武内P「ああ……」

武内P「備品のカメラが……」

楓「すみません、持病のハーミットパープルが」

武内P「はーみ……?」

楓「……弁償はします、後日振り込んでおきますから」

武内P「……はあ」

楓「…………」

武内P「……」

楓「……」 チラッ

武内P「……」

楓(……困ってる)

楓(そういうところは――あの時から、何も変わっていない……)

楓「……それじゃあ、もう、行きます」

楓(……魔法が解けて、シンデレラじゃなくなったのは……)

楓(魔法使いのプロデューサーを、“ただのプロデューサー”としてでなく――)

楓(一人の男性として、好きになってしまったから、なのかしらね……)

768: 2015/02/25(水) 02:53:49.98 ID:YJ4lf4l2o

武内P「あの、この度は、本当に――」

楓「……ねえ、武内さん」

武内P「はい、なんでしょうか……」

楓「追いかけてくれて、ありがとうございました」

楓「でも――」

楓「欲しかった言葉は、そんな言葉じゃ、なかったんですよ」

楓(あんな目に合わせたことのお詫びなんかじゃない)

楓(建設的な今後の話や、賠償や、そんなのでもない)

楓(ただ――優しく慰めてほしかった)

楓(せめて単なる友人としてでもいいから、隣に立って、優しく頭を撫でて欲しかったんですよ――)

769: 2015/02/25(水) 03:00:35.81 ID:YJ4lf4l2o

P「……」

未央「あ、こんなとこにいた!」

P「本田さん……」

未央「どったの、そんな困ったような顔で棒立ちで」

P「いえ……」

P「なんでも、ありません」

みく「てっきり可愛がってた野良猫に逃げられでもしたのかと思ったにゃ」

ヘレン「呆然としてるところを見るに、野良猫に財布を持って行かれたとかの方が妥当じゃない?」

瑞樹「わかるわ」

ワイワイ

P「……」

P(楓さん……)

凛「ほら、行くよ、プロデューサー」

卯月「早目に席をキープしないと、凛ちゃんの試合、良い場所から見られなくなっちゃいますよっ!」

P「……ええ」

P「そうですね……」

P「今、行きます」

卯月「いきましょう、プロデューサー!」 パッ

未央「わっ、手をとった!」

みく「だいた~ん!」

卯月「そ、そういうわけじゃ……///!」 アタフタ

凛「小学生じゃないんだから、さっさと行くよ」 ハァ

ヘレン「そうそう、ワールドワイドに考えれば、このくらい挨拶なんだから」

卯月「い、いいい行きましょうプロデューサー!」

P(例え貴女と敵対し、貴女に嫌われたとしても……)

P(貴女とプロデュース出来た日が無駄にならぬよう、これからも、彼女たちを、導いていきます)

P(だから――)

P(だからどうか貴女も、前を、向いて――)



【準決勝第1試合 勝者・島村卯月】

775: 2015/02/26(木) 00:53:53.67 ID:i/9baUFDo
ぼちぼち更新していきます
ちなみに当初の予定だと楓さんの救済があったけど、このペースだと当分はないです、すまんな

776: 2015/02/26(木) 01:04:37.53 ID:i/9baUFDo

みりあ「わあ!」

みりあ「すごーい、あの楓さんを倒したって!」

莉嘉「……うん」

莉嘉「ちょっとビックリだよね」

みりあ「……」

みりあ「緊張してる?」

莉嘉「え?」

みりあ「いつもみたいに何も考えず馬鹿笑いしてる方がいいよ」

みりあ「その方が見てても楽しいし」 エヘヘ

莉嘉「……うん」

莉嘉「わかってるんだけど、こう……」

莉嘉「どうしても、ね」

みりあ「……お姉ちゃんと同じ舞台に立つんだーって、ずっと言ってたもんね」

莉嘉「うん……」

莉嘉「ここで勝たないと、夢の舞台が遠くなっちゃう」

莉嘉「負けられないんだ」

莉嘉「相手が同じ、シンデレラプロジェクトの友達でも……!」



777: 2015/02/26(木) 01:38:43.93 ID:i/9baUFDo

みりあ「……まあ、しょうがないよね」

みりあ「でも、私だって上がりたかったけど」

みりあ「莉嘉ちゃんが満足できるように譲ってあげたんだもん」

みりあ「私の代わりに、笑ってだしつくしてね!」

莉嘉「……うん」

莉嘉「行ってくる」

莉嘉(あの高垣楓を倒したニュージェネレーションズ……)

莉嘉(お姉ちゃんの見る目は、多分、間違ってないんだろうな……)

莉嘉(でも……)

莉嘉(それでも私は、やっぱりお姉ちゃんと同じ舞台に上がりたい!)

莉嘉「絶対勝つから」

莉嘉「一緒に、あの舞台に上がろ!」

みりあ「……うん!」

779: 2015/02/26(木) 02:13:58.73 ID:i/9baUFDo

ちひろ「さあ、ステージを移動してジャングルフィールド!」

ちひろ「様々な気候を再現する、ここ346植物園からお送りしております!」

ワーワー

ちひろ「先ほどの大番狂わせの熱気冷めやらぬまま、バックダンサー二人目の座を賭けた準決勝第二試合が始まります!」

ちひろ「まずはこの少女の登場!」

ちひろ「大番狂わせを決めた島村卯月選手の相棒!」

ちひろ「クールな瞳に大きな情熱、決めるかニュージェネレーション旋風!」

ちひろ「1回戦で唯一相手を病院送りに出来た猛者・渋谷アァァァァりィィィィィィィィィん!!」

凛「なんだろう、褒められてる気がしない……」

未央「まあ、あんまり病院送りっていいことじゃないしね……」

みく「墓場送りじゃないだけ感謝しなきゃいけない慈悲なき植木鉢だったからにゃあ」

780: 2015/02/26(木) 02:26:34.13 ID:i/9baUFDo

ちひろ「対抗するは同じく初めての映像デビュー!」

ちひろ「新進気鋭のスーパー妹、姉の秘技を発展させて今推参ッ」

ちひろ「最後の壁を引き裂いて、輝く未来を切り開けるんでしょうか!?」

ちひろ「城ヶ崎ィィィィィ莉ィィィィィィィィィ嘉ァァァァァァァァァァァッ!!」

ワアアアアアア

莉嘉「……」

莉嘉(緊張してるし、自分らしくない自覚もある)

莉嘉(でも……乗り越えなきゃ)

莉嘉(お姉ちゃんだって、こういうのを超えてきたんだもん!)

莉嘉(だから……)

バサッバサッ

ちひろ「おーっと、城ヶ崎莉嘉選手、自慢のつけ爪で生い茂る草木を切り払いながらの入場ですっ!」

莉嘉「ぜーったい、負けないよ」

781: 2015/02/26(木) 03:02:37.35 ID:i/9baUFDo

凛「……」

凛(卯月は、泥にまみれて、無様を晒してでも戦って、そして栄光を掴んだ……)

凛(今までの試合を見て分かった)

凛(ライブバトルっていうのは、プロレスみたいなものなんだ)

凛(互いに本気出し、勝ちに行くけど、観客受けと盛り上がりを重視する)

凛(……)

凛(そのうえで、絶対に勝たないといけない、勝ちたい試合)

凛(なら――――)

凛「悪いけど……即効で終わらせるよ」

凛(ヒールだろうと、私も精一杯輝くッ)

782: 2015/02/26(木) 03:11:49.50 ID:i/9baUFDo

莉嘉「ふーん」

莉嘉「じゃあこっちも、容赦しないよっ」

凛「さっき、散々下着を晒したし――」

凛「今回は、布に傷ひとつ付けさせない」

莉嘉「できるかなっ!」 ダッ

鈴帆「飛びかかったッッ」

ちひろ「ご、ゴングゴング!!」



【準決勝第二試合 ―― 試合開始(ゴング)】

783: 2015/02/26(木) 03:19:06.52 ID:i/9baUFDo

莉嘉「私の爪は一撃必殺」

莉嘉「触れさえすれば全てを切り裂くッ!」

莉嘉「いきなり決めるよッ」

莉嘉「ギャルリンの――赤い姉~~~~~~っ!!」

ズバァァッ

ちひろ「なんとぉ!」

ちひろ「開幕からフェイバリットの炸裂~~~~~ッ!」

ベキベキベキベキ

ズズゥゥゥン……

瑞樹「樹林が容易く切り裂かれ、バランスを崩して倒れている……」

ちひろ「すごい威力ですねえ」

莉嘉「……ッ?」

莉嘉(あ、あれ……?)

莉嘉(外した……?)

莉嘉(確かに、狙いをしっかりと――)

785: 2015/02/26(木) 03:59:50.73 ID:i/9baUFDo

凛「……ジャングルで気をつけなくちゃいけないのは、猛獣だけじゃない」

莉嘉「!?」 クラァッ

凛「植物」 

凛「毒があるのは蛇だけじゃない」

凛「命の危機をもたらすものは、何もライオンのような猛獣だけじゃない」

凛「この植物だらけのフィールドに無警戒で踏み入った時点で、決着はついているんだよ」

莉嘉「な……に、を……」

凛「ロイヤルデモンローズ」

凛「さっきの試合の冒頭の時間に、このジャングルに移しておいたんだ」

凛「花屋を相手にジャングルフィールドを引いたのに、警戒をしなかったのが敗因だよ」

莉嘉「ま……だ……ッ!」 シュバッ

凛「ピラニアンローズ!」

未央「ゲェーーーッ! 花びらがまるでピラニアのように襲いかかっているーーーーーッッッ!!! 」


797: 2015/02/27(金) 01:59:28.28 ID:98B1Vgwho

莉嘉「ぐあっ……!」

ちひろ「あーっと、幼い柔肌に薔薇の花が突き刺さっていくーーーーっ!」

瑞樹「いたいけな少女が花弁を散らすなんて……」

莉嘉「この程度っ……!」

ちひろ「さすがは見た目に反して意外とアウトドア!」

ちひろ「多少の擦り傷はなんのそので、渋谷凛選手に突っ込んでいくーーーーっ!」

凛「風華円舞陣ッ」

莉嘉「ぎゃっ……」

凛「悪いけど……指一本触れさせるつもりもないよ……」

798: 2015/02/27(金) 02:31:55.15 ID:98B1Vgwho

莉嘉「ぐうっ……」

莉嘉(痛いよお……でもっ……)

莉嘉「お姉ちゃんと同じ舞台に立つんだーーーっ!」

未央「ゲエーーーーッ!」

未央「つけ爪を射出したーーーーーーっ!!」

ボシュウゥゥゥ――z_____ッ!!!

凛「ッ!」 バッ

ちひろ「あ~~~っと、紙一重でこれをかわすーーーーっ!」

凛(幻覚作用で平衡感覚もなくなってるはずなのに、合わせてきた……!?)

莉嘉「爪弾はまだ残ってる……」

莉嘉「絶対絶対絶~~~~~対諦めないんだからッ」

801: 2015/02/27(金) 02:47:01.21 ID:98B1Vgwho

凛「……ッ」 ズキッ

凛(くっ……また痛んできた……)

凛(痛み止めの薬草をつけていても、激しく動けばこうなるか……)

チラッ

卯月「がんばれー!」

凛「……」

凛(卯月……)

凛(さっきの勝利は多くのファンと同時に、熱烈なアンチも作り出した)

凛(プロデューサーを探してる時に、卯月を闇討ちしようとしてるファンを見つけたのはよかったけど……)

ズキッ、

凛(大事な試合前だっていうのに、怪我しちゃったのは不覚だったな……)

凛(……でも、負けるわけにはいかない)

凛(そのためなら、悪魔になる覚悟だってあるっ……!)

802: 2015/02/27(金) 02:50:05.41 ID:98B1Vgwho

凛(高垣楓のファンに撃たれた傷を少しでも開かせずに勝つには……)

凛(ただの殴り合いじゃなく、トークの面でもねじ伏せて少しでも早く終わらせるっ……!)

凛「ポイズンキッス!」

フワァ

莉嘉「なに……この匂い……」 クラァ

凛「眠気を誘う効果があるよ……」

凛「おとなしく寝てて」

凛「お姉さんの後ろには、私が卯月と立ってくるから」

未央「私は?」

凛「それと、ついでにアレも一緒に代わりに立っておくから」

未央「代名詞扱い」

803: 2015/02/27(金) 03:01:34.83 ID:98B1Vgwho

凛「……莉嘉ちゃんには、感謝してるよ」

凛「莉嘉ちゃんが客観的評価に不満を抱いてくれたからこそこの大会が開けたし」

凛「私達は成長することが出来た」

凛「……成長前から、貴女のお姉さんが私達を指名したように、私達の実力差は明白」

凛「なのにこちらが成長した以上、負ける気はしない」

莉嘉「……ッ」

凛「自分の力をわきまえず突っ走れるのは子供の強みかもしれない」

凛「けれども――」

凛「それだけじゃあ、壁は越せない、崩せない」

凛「壁にぶつかって命を落とすだけだってこと、教えてあげる」

莉嘉「そんな、わけ……」

莉嘉「お姉ちゃんが、私より後輩でオーディションにも本来落ちてた娘達の方にいれこむなんてこと、あるわけないッ!!」 ダッ

805: 2015/02/27(金) 03:05:32.38 ID:98B1Vgwho

莉嘉「くっ……!」

莉嘉(当たらない……意識も、薄れて……)

凛「……気付いてる?」

凛「さっきから、こっちは全然動いてないし、攻撃もしてない」

凛「もう、自滅していくしか道はないんだよ」

莉嘉「~~~~~ッ!」

莉嘉(あと一発の爪弾をぶち込むッ!)

莉嘉(毒草のせいで分身して見えるけど…・・)

莉嘉(右!? いや、左ッ!) ドシュウウウウウウッ

スカッ

莉嘉「ッ!」

凛「もうやめよう」

凛「……私だって鬼じゃないし、大事なシンデレラプロジェクトの仲間を傷つけたくなんてないから」

莉嘉「……ッ」 プルプル

806: 2015/02/27(金) 03:10:40.31 ID:98B1Vgwho

莉嘉「……して」

凛「ん?」

莉嘉「どうして……」

莉嘉「どうして凛ちゃん達なのっ!? 一体どうしてっ!!」

シーン・・・

莉嘉「アタシは努力したよっ!!」

莉嘉「みんなの10倍、いや100倍1000倍したよっ!」

莉嘉「アイドルとしてPくんに認められるために!!」

莉嘉「お姉ちゃんと同じ舞台に立つために!!」

莉嘉「それこそ、朝から晩までLESSONのことだけを考えて……」

莉嘉「アイドルに全てを捧げてきたよ、なのにっ………」

凛「…………」

凛「それは莉嘉にアイドルの才能がないからだよ」

莉嘉「ふざっ……!」

莉嘉「そんなこと、あるわけ……」

凛「そんな大声で喚くことじゃないよ」

807: 2015/02/27(金) 03:13:30.10 ID:98B1Vgwho

凛「……心、折れちゃったかな」

凛「植物の効果もあって、もう立てないよね」

凛(……頼むから、立たないで)

凛(こっちも傷口が痛むし、このまま勝てないと、正直――)

莉嘉「……」 ボーゼン

凛「……このまま決着、かな」

凛(ヒールになるという選択肢に、相手の短所をあげて自分の意識の高さをアピール)

凛(そしてヒールとしての需要をつくることで、決勝戦を消化試合でなく盛り上がるものにする)

凛(それが出来るなら、応援されるのは私でなくてもいい)

凛(私は、憎まれ役でもいい)

凛(卯月が憎まれ役になるより、よっぽど――――)



【準決勝第2試合 勝者・渋谷凛】

817: 2015/03/01(日) 01:35:03.44 ID:Gv7f43n/o

凛「……ふう」

未央「しぶりん!」

凛「!」

凛「未央……」

未央「……」

未央「お疲れ」

凛「……うん」

未央「……あのさ」

凛「……」

凛(さっきの勝ち方……咎められるのかな……)

未央「どっか、怪我してるの?」

凛「!!」

818: 2015/03/01(日) 01:54:16.48 ID:Gv7f43n/o

凛「……なんで……」

未央「まあ、しまむーはいつでもいっぱいいっぱいだし、気付いてないかもしれないけど……」

未央「私はこれでもニュージェネレーションズのリーダーだからね」 フフン

未央「見れば分かるよ、実際の動きがいつもとちょっと違ってたら」

凛「未央……」

凛「別に未央をリーダーなんて認めた覚えは」

未央「誰よりも仲間の様子を見ているリーダー」 フフン

凛「一人だけ一回戦で負k」

未央「痛いのここかな?」 チョン

凛「いったい!!!」 ヒギィ

819: 2015/03/01(日) 02:33:14.09 ID:Gv7f43n/o

未央「……あんまり酷いようなら、医務室行く?」

未央「もうしぶりんもしまむーもステージ入り決定してるし……」

未央「どっちにしても、私を指名してくれるんだから、辞退してもいいと思うけど」

凛「……」

未央「……しぶりん?」

凛「……」

未央「指名私だよね?」

凛「あの幼女の娘には借りがあるな」 ボソ

未央「私指名だよね!?」

凛「……ジョーダンだよ」

未央「……」

凛「……心配してくれるのは嬉しいけどさ」

凛「一応、これ、ニュージェネレーションズがデビューするための最初の関門だったわけじゃん」

凛「じゃあさ……」

凛「最後は、戦わないなんて中途半端なことはしないで、派手に戦って終わりたいよ」

820: 2015/03/01(日) 03:12:23.33 ID:Gv7f43n/o

凛「……悪かったとは、思ってる」

凛「決勝を、消化試合なんかじゃない」

凛「ニュージェネレーションズのガチンコに」

凛「見てる人の心に残る勝負にしたかった」

凛「そのために、少しでもチャンネルをそのままでいてもらうために、ヒールの言動をしたこと」

凛「……後先考えてなかったけど……」

凛「でも、後悔は、してないよ」

凛「今回は勝っても負けても、いずれ卯月が私を乗り越えてくれると信じてるから」

凛「だから私は、卯月というアイドルのポテンシャルを盲信して、ヒールとして振る舞うんだ」

未央「……」

未央「はぁ」

未央「しょうがないな……」

未央「私はリーダーだからね」

未央「しぶりんがそうしたいっていうなら、笑って背中を押してあげて、何か起きたら尻拭いくらいしてあげるってもんよ」

凛「未央……」

未央「その代わり、下手な試合したら承知しないんだからね」

凛「……うんっ」

821: 2015/03/01(日) 04:07:17.17 ID:Gv7f43n/o

ちひろ「さあ、開幕前は予想だにしない展開となりました!」

ちひろ「新進気鋭ニュージェネレーション二人の決勝!」

ちひろ「共に同じチームの友人・本田未央の指名が決定的なので、本来は闘う理由はないのですが――」

ちひろ「互いの意地をかけて、激突が行われますッ!」

ちひろ「まず入場するのはこの人!」

ちひろ「対戦相手の心を取り込み、周囲の力でのし上がりますっ!」

ちひろ「運も周囲も魅了して、勝利の女神も味方にできるのでしょうか!?」

ちひろ「高垣楓をジャイアントキリング、島村ァァァァ卯月ィィィィィィィィィ!!!」

ワアアアアアアアアアア

ブウウウウウ

ワアアアアアアアアアア

卯月「あわわ」

卯月(い、いっぱいの完成と、ちょっとだけどブーイング……!)

卯月(た、たんある当て馬の無名噛ませ犬としてでなく、一人の決勝進出者として声援を受けてるってことだよね……?)

823: 2015/03/01(日) 04:17:23.65 ID:Gv7f43n/o

ちひろ「続きまして、この人!」

ちひろ「冷酷無比なクールアイドル!」

ちひろ「植物からダンスまで、何でもこいのスーパールーキー!」

ちひろ「ここまで二戦、病院送りとワンサイドゲームと圧倒的な強さを見せてます!」

ちひろ「渋谷ァァァァりィィィィィィィィィんッッ!!」

凛「……」

凛「卯月……」

凛「本気で行くよ」

凛「私をこの世界に引き込んだ笑顔の力、見せてもらうから」 ザッ

卯月「凛ちゃん……」

卯月「私だって……負けませんよっ!」


830: 2015/03/01(日) 23:52:29.82 ID:Gv7f43n/o

ちひろ「最終ラウンドのステージはこちら!」

未央「ゲエーーーーッ! プロレスリング!?」

みく「い、いや、あれを見るにゃ!」

鈴帆「り、リングが何やらてらてらと……」

ちひろ「これぞ、ローション・プロレス・デスマッチですっ!!」

未央「な、なに~~~~~~っ!?」

みく「ローション・プロレス・デスマッチにゃあ!?」

ヘレン「世界にもこんなクレイジーなアイドルバトルはそうそうないわね」 ゴクリ

831: 2015/03/02(月) 00:32:48.25 ID:1hP+Frwpo

ちひろ「その名の通り、このローションが撒かれたリングでプロレスをしてもらいますっ!」

ちひろ「プロレスなので衣装は自由、脱げても試合は続行」

ちひろ「勝敗は、相手を倒して特定のカウントを取ることで決まります」

みく「特定のカウント……?」

未央「そこは10カウントなんじゃあ」

ちひろ「これはトークバトルですから」

ちひろ「会話の主導権を握っている方に常に投票してもらい――」

ちひろ「その割合によって、決着までのカウントが変わりますっ」

未央「な、なんだってーーーー!?」

ちひろ「基本は、両者合わせて20カウント」

ちひろ「これを、投票の割合に応じて振り分けますっ」

凛「……なるほど」

凛「要するに、20秒間立てないようなKOをすれば問題ないんだ」

ちひろ「そーいう考えも出来ますね~」

833: 2015/03/02(月) 01:00:21.51 ID:1hP+Frwpo

凛「一つ、いい?」 スッ

ちひろ「はい、渋谷凛さん」

凛「プロレスに詳しいわけじゃないんだけど……」

凛「ダウンって、どうやって判定するの?」

凛「体が全面についたらダメ、とか?」

ちひろ「ふむ」

ちひろ「ここでは、相手の攻撃によって足のうら以外がつくことをダウンと定義しましょうか」

ちひろ「ダウンした後は、足の裏以外が地面から離れたら立ち上がったということで」

凛「なるほど」

凛「私はそれだけ聞ければ十分だけど……」 チラッ

卯月「あっ、私は特に質問は大丈夫ですっ」

ちひろ「そうですか」

ちひろ「それでは、いざ尋常に――――」

ちひろ「ファイトっ!」 カーーン



【決勝戦 ―― 試合開始(ゴング)】

834: 2015/03/02(月) 01:20:10.28 ID:1hP+Frwpo

凛「……」 グッ

未央「クラウチングスタート……?」

卯月「???」

凛(予期せぬ動作を取った場合、卯月は潰しに来ることはない)

凛(純粋な興味こそ抱けど、危機感を伴った警戒心は抱かない)

凛(だから――)

シャァァァァ

未央「おおっ!?」

未央「しぶりんがローションのリングをスケートみたいに滑ってる!」

みく「うーむ、なかなかにやる身のこなしだにゃ」

卯月「わあっ、すごい……!」 パァ

凛(無垢な表情……)

凛(卯月に裏表はない)

凛(未央も、多分得意じゃない)

凛(ニュージェネレーションズが個性をそれぞれ発揮するには、私が小賢しくならなきゃいけない……!)

835: 2015/03/02(月) 01:24:44.23 ID:1hP+Frwpo

凛「……」 シャァァァァ

凛(滑りながら、モニターの位置は確認した)

凛(下から舐めあげるような構図だけど、スカートの中がギリギリ写らないボーダーは分かった)

凛(色気で票が取れることはわかったけど……)

凛(身を切って票を得ても、満足させてしまったら未来がない)

凛(見えそうで見えない色香を使って、グッと視聴者を引きつける)

凛(そのために、わざわざ制服に着替えてきたんだから)

凛「卯月」

卯月「はい?」

凛「卯月の技、パクらせてもらうよ」

卯月「へ?」

凛「ローションで滑る力を、拳に乗せるっ!」 シャァァァァ

卯月「あわわ!」 ツルッ

ドテン

卯月「ひゃうっ!」

未央「だ、だめだーーーっ、この足場じゃ滑っての移動くらいしかまともにできない!」

未央「細かな動きで攻撃を避けるなんてとてもとても……」

凛「球根ナックルーーーーーっ!」

ガゴン

未央「き、キックだーーーーー!」 ガビーン

みく「土壇場でコケられたせいで、膝の方が入れやすかったんだろうにゃあ……」

836: 2015/03/02(月) 01:38:42.50 ID:1hP+Frwpo

卯月「きゃうっ……」

凛「卯月……」

凛「同じシンデレラプロジェクトの、ニュージェネレーションズの仲間だからこそッ」

凛「この場できっちり決着をつけるっ!」

ガシィッッ

未央「あ、あの体勢は~~~~~~っ!」

凛「植物技にはこんなものもある!」

凛「テキサス・クローバー・ホールドーーーーーっ!」 ギリギリギリ

卯月「~~~~~~~っ!?」

未央「あ、あれはまさに四つ葉のクローバーを模したフェイバリットホールド!」

鈴帆「まさに花屋にふさわしいフェイバリットばい!」

838: 2015/03/02(月) 01:46:11.57 ID:1hP+Frwpo

卯月「~~~~っ!」 ジタバタ

ヌルリ

ニュポンッ

凛「!」

卯月「あわわわわ」

ちひろ「おーっと、島村卯月選手、カウント5で辛くも脱出~~~っ」

凛「今は7秒で決着だったのに……」

凛「ローションのせいで、技のロックは甘くなる、か……」

卯月「凛ちゃん……」

凛「……私は卯月に憧がれて、その背中に惹かれてこの世界に入った」

凛「あの日焦がれた背中を、今、超える……!」 ギュオッ

未央「と、跳んだっ!」

凛「しっ!!」

バカン

みく「そ、ソバットッ!」

ヘレン「それも世界でもめったに見ない超至近距離高速ソバットッッ!!」

卯月「うきゃっ……!」 ズデン

凛「悔いのないよう、頃す気でいくよ……」

839: 2015/03/02(月) 02:20:28.02 ID:1hP+Frwpo

凛「ピラニアンローズ!!」

ズバズバズバ

卯月「ああうっ」

ちひろ「あーっと、防戦一方です」

ちひろ「高垣楓選手にも破れなかった鉄壁の水着が傷ついていきますっ」

P「……」

P「あの……」

P「デビュー前の若い少女にやらせるには、このルールは、その……」

ちひろ「?」

P「……少々、性的なのではないかと」

ちひろ「……そのつもりですからね」 フフ

P「!」

ちひろ「いいですか、今島村さんは誰より脱がしやすいアイドルです」

ちひろ「先程高垣さんの水着を奪っているため、彼女がハプニングで脱がされても歓喜の声こそ上がれど怒るファンは少ない」

ちひろ「工口で稼ぐには今がもってこいなんですよ」

P「……」

P「彼女の魅力は……そこにはありません」

P「彼女の魅力は――――」

卯月「やっぱりすごいや、凛ちゃんは!」 パァ

P「あの、いつでも絶えぬ笑顔です」

848: 2015/03/04(水) 01:38:27.65 ID:g5hoYCCpo

凛「この状況で笑う、か……」

凛(そーいうところ、本当に、すごいと思うよ)

凛(でも……)

凛「高垣楓にそうしたように、私からも逃げたくさせてあげるっ!」

凛「はっぱカッター!!」

ヒュンヒュンヒュン

卯月「きゃっ……!」 ズパズパズパ

ちひろ「あーっと、どんどん布地が切られていきますっ!」

ちひろ「あ、結構動画から弾かれてる人もいるみたいですね!」

ちひろ「今ならモバコインで追い出されなくなりますよっ!」

849: 2015/03/04(水) 02:21:38.42 ID:g5hoYCCpo

凛「爪を飛ばされて閃いたんだ」

凛「葉っぱだけ射出しても強いはず、と!」

卯月「う、うぐう……!」

莉嘉「……」

莉嘉(アタシとの戦いで閃いた、かあ……)






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






莉嘉『…………』

みりあ『莉嘉ちゃん……』

莉嘉『……』

莉嘉『なんだったんだろうね……』

みりあ『え?』

莉嘉『アイドルになるんだーって意気込んで、事務所に入って……』

莉嘉『デビューが決まって、でも企画は決まらなくって、それでもレッスンしてたらいつかはって思ってて……』

莉嘉『なのに、後から入ってきた凛ちゃん達にお姉ちゃんのバックダンサーは取られるし、ボロ負けしちゃうし……』

莉嘉『アタシ……才能ないのかなあ……』

850: 2015/03/04(水) 02:44:58.68 ID:g5hoYCCpo

美嘉『ないかもね』

莉嘉『!!』

みりあ『わわっ……』

美嘉『そういうこと言って立ち止まっちゃう人は、あまり才能ないのかも』

莉嘉『お姉ちゃん……』

美嘉『言っとくけど、アタシだって、別に才能豊かな方じゃないからね』

美嘉『既に何度も、失敗だって無様だって晒してる』

みりあ『そういえば、デビュー当時はもっとどぎついコギャルキャラで売ろうとして失敗したって……』

美嘉『うんまあそういう失敗なんだけどソレはちょっとマジで掘り下げられると割りと凹むやつかな』

851: 2015/03/04(水) 03:01:34.07 ID:g5hoYCCpo

美嘉『……まあ、でも、あの経験から得たものもある』

みりあ『ふえ~……例えばどんな……』

美嘉『……』

美嘉『正しい性知識とか』 ボソ

みりあ『?』

莉嘉『?』

美嘉『……なんでもないっ///』

美嘉『とにかく!!』

美嘉『卯月や凛は、戦った相手から、追い詰められた相手から、多くを学び取ってるよ』

美嘉『他の試合を観察して得たものも、血肉にしてる』

美嘉『……才能なんてなくて、日々勉強しなくちゃいけなくて』

美嘉『だから、そうやって少しでも吸収するんだよ』

莉嘉『……』

美嘉『莉嘉はすごいし、アタシを追いかけてくれるのは正直すっごい嬉しいよ』

美嘉『でも――』

美嘉『謙虚な姿勢で、他のアイドルからも技を盗んだ方がいい』

美嘉『そうじゃなきゃ、しんどいよ』

美嘉『ただでさえ、才能溢れる人達の中に飛び込むんだもの』

美嘉『たった一人、自分だけで考えたもので闘うには、あまりにも大変だよ』

莉嘉『お姉ちゃん……』

みりあ『……そっか』

みりあ『いろんなひととの出会いとかで、強くなる、みたいなことかな』

美嘉『そーそー、よくできました』 ナデナデ

みりあ『じゃあ、私のとりえも、莉嘉ちゃんに吸収してもらった方がいいのかな』

みりあ『……でも、私のとりえってなんだろう?』

美嘉『幼女特有の可愛さ』 ハナヂダパー

みりあ『ふえ?』

莉嘉『お姉ちゃん……』

852: 2015/03/04(水) 03:13:36.31 ID:g5hoYCCpo

美嘉『……辞めるなら、止めないよ』

美嘉『楽な仕事じゃないし、疲れたって言うなら、お疲れ様って言って頭を撫でてあげる』

美嘉『でも――』

美嘉『まだ、その胸に燻ってるものがあるなら』

美嘉『頭はまだ撫でてあげられないけど』

美嘉『その分おしり、ひっぱたいてあげる』

莉嘉『お姉ちゃん……』

みりあ『私はやだよ、莉嘉ちゃんがやめちゃうの!』

みりあ『一緒に、楽しくアイドルしたいもん』

莉嘉『……楽しく、か』

莉嘉『そーだね』

莉嘉『最初は……楽しくやりたかっただけだったのにね』

美嘉『それと、これは、言っておきたかったんだ』

美嘉『もう、城ヶ崎美嘉のコピーなんかを目指すのはやめなよ』

美嘉『莉嘉は莉嘉、オンリーワンの素敵なアイドルを目指して』

莉嘉『え……?』

美嘉『城ヶ崎美嘉2世である必要なんてないよ』

美嘉『だからさ、なってみせてよ』

美嘉『城ヶ崎莉嘉1世に』

853: 2015/03/04(水) 03:21:16.70 ID:g5hoYCCpo

莉嘉『……』

美嘉『とりあえず、見てきなよ』

莉嘉『ふえ……?』

美嘉『次の試合』

美嘉『同じプロジェクトのメンバー同士のガチンコバトル』

美嘉『自分を省みるためにも、さ――』






 ☆  ★  ☆  ★  ☆





卯月「うう……てーい!」

みりあ「わあ!」

みりあ「すごい、ローションで滑って移動しながら撃墜してる!」

莉嘉「……」

莉嘉(冷静になると見える)

莉嘉(植物による遠隔攻撃は、はたき落としやすい)

莉嘉(それを物量でカバーしてくるけど、射程を開ければ威力がガタ落ち、もしくは軌道がワンパターンになる……)

莉嘉「……」

莉嘉(みんな……こんなこと考えながら戦ってるんだ……)

莉嘉「ねえ、みりあちゃん……」

みりあ「ん?」

莉嘉「また一緒に……一から、レッスン付き合ってくれる?」

みりあ「うん!」

みりあ「一緒にやろう!」

みりあ「その方が、楽しいよ!」 ニコリ

854: 2015/03/04(水) 03:26:27.61 ID:g5hoYCCpo

卯月「なんとか……葉っぱは落としました……」

卯月「だから、今度はこっちの番……!」

凛「!!!」

凛(しまった……!)

凛(中途半端な追撃のせいで、トドメを指しそこねたっ)

凛(しかも、この流れは――)





夏樹「渋谷凛の不利、だな」

菜々「ですねえ」

菜々「折角のチャンスを手放しちゃいましたね」

菜々「さっきの試合みたいに、自分のターンの状態なら、ワンサイドで殴り続けられますけど……」

夏樹「攻守を交換してしまうと、そうもいかない」

夏樹「あれだけボコボコにしておいて、自分が受けのターンの時に無様に逃げられるのかというとNOだしな」

菜々「相手が水着だったのも不幸ですねえ」

夏樹「よく見てると、乳首やらが見えないギリギリをついてるからな」

夏樹「一定以上は攻撃をわざと外している……そうしないと、見えちまうから」

菜々「その結果、こうしてロープ際まで追い込みながらも、精神的に追い込まれちゃう、と」

855: 2015/03/04(水) 03:33:22.92 ID:g5hoYCCpo

凛(失敗した、これでターンが変わっちゃう……)

凛(卯月みたいに逃げられたらいいけど……)






ヘレン「あの娘、逃げられないわね」

未央「へ?」

みく「さっきの試合圧勝しちゃったからにゃあ」

ヘレン「更に言うなら、初戦も相手を病院送りにしたことばかり話題になっている」

ヘレン「誰も彼女の防御スタイルを覚えていない」

みく「その結果、とにかく強く虐殺をするイメージだけが残っちゃうにゃ」

ヘレン「そんな圧倒的強者に見られた娘が、普通さと明るさがとりえの少女と同じ逃げ方が出来るかしらね」






卯月「ローションでぬるぬるするけど、リングロープを使えば……」

ちひろ「あーっと、島村卯月選手、ロープを使って無理矢理立ったーーーーっ」

卯月「私はこれでもウサミン成人って、認められてるからっ」

卯月「今こそ、その力を見せてあげますっ!」

凛(そこまで宣告されたらっ……)

卯月「よいしょっと」

ちひろ「おーっと、島村卯月選手、一番上のロープへと乗っかっていくーーーーっ」

瑞樹「ローションの影響を受けず、また攻撃を受けにくいいい場所ね」

凛(ここまでされてっ……避けられるわけがっ……)

卯月「必殺っ!」

卯月「ウサミン・ツイスター・プレスッッ」

862: 2015/03/06(金) 00:09:44.50 ID:w6ANFxK+o

夏樹「上手いッ」

菜々「練習してない者が、いきなりウサミンキックを真似たり空中殺法をするのは無理」

菜々「でも、アレならば!」

夏樹「ローション地獄から立ち上がるためのロープの弾力を活かして、上空まで飛び上がる」

夏樹「その後は単純に体から突っ込むだけだし、ある程度のセンスがあれば達成可能」

夏樹「もちろんあんなもん避けられちまったら自分が大ダメージを受けるが――」




凛(なんて無謀な捨て身技ッ)

凛(避ければ自爆、なんなら全身打撲のままローションで滑ってそのままアウトに――)



ヘレン「避けることはもちろん、まともにいなすことも出来ない」

ヘレン「ワンサイドゲームで魅せるなら、立ち上がりに追撃をかけるべきだった」

ヘレン「でもあの娘はワールドワイドな視点を持てず、情に流されロープに登ることを許した……」

ヘレン「高垣楓のように華麗ないなしができるならともかく、半端な回避で場を冷やすことなど、まっとうなアイドルならば出来ない」

未央「そ、そしてしぶりんは笑顔の素敵な普通のアイドルというものを目指しつつある……」

未央「こ、この技は……」



凛(で、でもこの技は避けられないッ)

凛(下手に避けると、観客の心を手放すことになるッッ)

863: 2015/03/06(金) 00:38:55.36 ID:w6ANFxK+o

ドッガァァァッ

ちひろ「決まりましたぁ!」

ちひろ「空中からの派手なボディプレス!」

ちひろ「ローションまみれでアイドル二人がくんずほぐれつですっ!!」

ちひろ「はい、今弾かれてる人達は是非ともモバコインでプレミアムになってくださいねっ!」

瑞樹「……」

春菜「今、一瞬、インパクトの瞬間だけ、膝を僅かに折って威力を頃しましたね」 ヒソ

瑞樹「!」 ビックゥ

春菜「まあ、それをマイクに乗せるほど、私は野暮じゃありませんけど」

瑞樹「た、退院してたの……?」

春菜「私を負かして、準決勝も圧勝だっていう娘の勇姿を見たくて」

春菜「それと、心配してるだろう瑞樹さんに、私はこの通り無事ですよって報告したくて」

比奈「もう、さっきまで集中治療室にいたんだから、匍匐前進で解説者席に近付いたりしたらだめっすよ!」

沙理奈「頭蓋骨ちょっと陥没してるって言われたでしょ!」

瑞樹「心配かけまいとするならそのままベッドで眠っていてほしかったわ」

864: 2015/03/06(金) 00:52:26.88 ID:w6ANFxK+o

春菜「だいじょーぶですよ、なんとメガネをかけたら元気になりましたから!」

春菜「やっぱりメガネってすごいですね、万病に効きますし!」

春菜「私が膝曲げ防御に気がついたのも、ひとえにメガネをしていたから!」

春菜「メガネの有無で人体ってこうも変わるものなんですねっ」

瑞樹「救急車呼んでおいて」

比奈「了解っす」 ピッポッパ

春菜「だから皆さんも是非ともメガネをかけましょう!」

春菜「メガネをかけて無病息災!!」

春菜「千枝ちゃんはこの素晴らしさに気がついて親族の分も合わせてメガネを買ってくれましたよっ!」 ハァハァ

瑞樹「最後のプッシュ、9じゃなくて0にしておいて」

比奈「了解っす」

865: 2015/03/06(金) 01:17:53.56 ID:w6ANFxK+o

凛「ぐっ……」

凛(威力を多少頃しても、やっぱりキツイ……)

凛(レッスンしてきたのはダンスや歌で、肉弾戦じゃなかったからかな……)

卯月「ぐう……」 ヨロ

凛(巻き返すなら、攻撃の反動で卯月がふらつきつつある今!)

凛「どい……てッ!」 ゲシッ

卯月「あうっ!」

ちひろ「あーっと、無慈悲なキックで渋谷凛選手が島村卯月選手を蹴り飛ばしたーーー!」

ちひろ「解説者が何やら通報云々で揉めてるので解説も私がしますと、ローションのせいで一度の蹴りで大分距離があきましたね」

凛「……ッ」 ズキン

凛(くっ……)

凛(やっぱりまた傷が開きつつあるか……) 

866: 2015/03/06(金) 01:22:35.55 ID:w6ANFxK+o

P「……!」 バッ

未央「おっと!」

P「本田さん……」

未央「何しようとしたの」

P「……渋谷さんは、体を痛めたおそれがあります」

P「大事に至る前に、試合を、止めなくては」

未央「……」

未央「プロデューサーなら、そう言うんじゃないかって思ってたよ」

未央「でも……そうはさせないよっ」

未央「しぶりんは、試合前から怪我をしてたのに、それを承知でリングに上がった」

未央「もっと言えば、怪我をする可能性があるのに、それでもなおしまむーを庇って怪我をした」

P「……!?」

未央「どうせ後から連絡網で回るだろうし言っちゃうけど、高垣楓のファンに襲われたんだよ、しぶりん」

みく「にゃにい!?」

ヘレン「そんな……セキュリティは一体なにを……」

未央「高垣楓に憧がれて事務所に入ったアイドル候補生の娘だったからね」

ヘレン「それにしても警備とか……」

未央「まあ、ド新人の私が勝手に敷地をうろつける程度のセキュリティだし」

みく「そういえばみくや莉嘉ちゃんが危険な高所に登っても咎められないし、多分こっそり隠れるくらいは余裕の環境だにゃあ」

ヘレン「ガバガバ」

867: 2015/03/06(金) 02:16:04.69 ID:w6ANFxK+o

未央「とにかく、しぶりんは選んだんだ」

未央「しまむーを守ることを」

未央「そして――それでもリングにあがることを」

未央「だから、しぶりんをリングに下ろしてあげるのは、私やプロデューサーの役目じゃなくて……」 クイッ

卯月「……?」

卯月(今の表情……)

卯月(もしかして、凛ちゃん、どこか痛めてる……?)

未央「――しまむーの、役目なんだよ」

868: 2015/03/06(金) 02:17:33.51 ID:w6ANFxK+o

卯月(……)

卯月(そうだとしたら……)

卯月(そこ、突くしかないよね……)

卯月(あんまり痛そうなことはしたくないけど)

卯月(ここまで真っ向から受けてくれてる凛ちゃんに、手を抜くなんて出来ないもんっ)

卯月(早く終わらせて、凛ちゃんを病院に連れていってあげなくちゃ……!)

未央「私達の仕事は、二人がリングを降りた後のケアだよ」

869: 2015/03/06(金) 02:52:28.37 ID:w6ANFxK+o

凛「大したジャンプ力……」

凛「ウサミン星も、あながち嘘じゃないのかもね……」

凛(アンタが初戦を活かしてくるなら、こっちだって……)

凛「兎が相手なら、こっちはススキか月見草で対抗したほうがいいかな」

凛(初戦を活かして、持ってるカードをゴリ押しするッ)

凛(滑ってもインパクトを残せるし、相手にまともな反応を返させないッ)

卯月(うっ……凛ちゃん、やっぱり上手い……)

卯月(トークに関しては翻弄されっぱなし……)

卯月(かといって肉弾戦でも圧倒的不利……)

卯月(植物によるガードもあるし、一撃で凛ちゃんを沈めるフェイバリットがなくちゃ……)

卯月(でもまた主導権を握り返されたし、今度はボディプレスも避けられるかもしれない……)

卯月(何か、探さないと……)

卯月(私の、フェイバリットホールドを……!)

870: 2015/03/06(金) 03:08:01.46 ID:w6ANFxK+o

凛「隙だらけだよ」

卯月「え?」

凛「さっき倒された時に、タネは巻いておいたんだっ!」

ボフンッ

卯月「ゲーーーーッ!」

卯月「体に蔦が巻き付いて……!」

凛「これぞ花屋奥義・宿木之種ッッ」

凛「決して見せぬ工口スをキープしながら、これ以上衣服を破けないという欠点をリカバリ出来るッ」

卯月「う、うう……」

凛「そして足りない破壊力は、一回戦を参考にしたこの技でッッ!」

沙理奈「あ、あれは……」

千枝「初戦のときに春菜ちゃんがプレゼントしていたメガネ……!?」

凛「ソーラービーム」

凛「集めた太陽光で蔦ごと焦がしてあげる……!」

878: 2015/03/06(金) 23:12:47.36 ID:w6ANFxK+o

卯月「うぐっ……」

卯月(だめ……莉嘉ちゃんみたいに鋭利なものは持ってない……)

卯月(蔦を切る方法が、私には――――)

卯月「がはっ!」

凛「ッ」 ビクゥ

卯月「……」 グッタリ

凛「……え?」

卯月「……」 ダラン

凛「……」

凛「……卯月?」

卯月「」 チョロチョロチョロ

瑞樹「ちょ、ちょっと、カメラ止めて!」

ちひろ「ああ~~~~っ、放送事故になってしまう~~~~~っ!」

P「島村さんッ」 バッ

みく「や、やばいって、氏んでるんじゃないアレ!?」

未央「ばっ、不吉なこと言わないでよ!」

879: 2015/03/06(金) 23:37:22.07 ID:w6ANFxK+o

凛「卯月ッ!」 バッ

卯月「……凛……ちゃん……」

凛「よかった……卯月……」 ホッ

卯月「凛ちゃん……」 ギュッ



卯月「やっと……捕まえたよ……」 フフッ


凛「――――え?」

卯月「ゴングは……まだ鳴ってないッ」

未央「なっ……まさか、今のは!」

みく「え、演技だったにゃ!?」

瑞樹「嘘……あの氏の淵に立たされた顔……まさに氏体そのものだったのに……」

ちひろ(た、助かりました……) ホッ

P「……演技、ですか」

P「……あとで、やっていい演技と悪い演技があることを、よく言って聞かせなくては……」

ちひろ「……そう言うわりには、嬉しそうですね」

P「……彼女が演技の練習をしていたことは、知ってますから」

P「彼女が、この会場全てを騙しきったことは――素直に、嬉しいです」

ちひろ「……親ばかですねえ。あ、プロデューサー馬鹿ですかね、この場合」

881: 2015/03/06(金) 23:55:55.29 ID:w6ANFxK+o

莉嘉「嘘……」

莉嘉「この一撃のために、失禁まで……」

みりあ「すごい……」

莉嘉「なんで、そこまで……」

莉嘉(私に出来る?)

莉嘉(……無理)

莉嘉(無理だよ、それは……)

美嘉「……安いプライド、だろうね」 ニュッ

莉嘉「わっ!」

莉嘉「び、びっくりした……」

みりあ「やすいぷらいど……?」

美嘉「……アイドルは、楽なだけの仕事じゃない」

美嘉「嫌な仕事もいっぱいあるし、月日とともにたくさんの人がドロップアウトしていく」

美嘉「それでも残ってる人は、皆――心のどこかに、安いプライドを持っている」

美嘉「だから、戦えるんだ。何とだって。孤独や貧乏、逆境とだって」

莉嘉「……」

美嘉「プライドのない奴はいっぱい見てきたし、皆すぐに消えていった」

美嘉「でも――あの娘は違う」

美嘉「アイドルとして頂点に立つために、シンデレラになるために、敢えて他のプライドを捨てることができる」

美嘉「プライドを捨てるプライドを持っている」

莉嘉「……」

みりあ「プライド、かあ……」

美嘉「よーく見ておきなよ」

美嘉「今の二人に欠けてるものが、きっと見えてくるからさ」

883: 2015/03/07(土) 00:48:15.68 ID:B0ZdHXCDo

卯月「駆け寄るときにソレを手放さなかったのが、敗因ですよっ」

凛「!!」

凛「しまった、ソーラービームが――!」

凛(だめだ、もう発射され――)

ボガーーーーーーン

凛「きゃあっ……」

ちひろ「あーっと、渋谷凛選手ふっ飛ばされました!」

瑞樹「そうか、あの娘……」

瑞樹「植物を植えたりするために、肥料やら色々体に仕込んでたから……」

比奈「炎が引火して、爆発を起こしたんッスね」

沙理奈「でも、あの程度じゃ軽い火傷」

沙理奈「KOにはなりえない」

千枝「ということは……」

卯月(よし、凛ちゃんが浮いたッ)

卯月「ここで決める!」 ダッ

884: 2015/03/07(土) 01:17:30.95 ID:B0ZdHXCDo

卯月(私には、何もない)

卯月(凛ちゃんの植物みたいな個性も)

卯月(空中殺法やサワーブリッジのようなフェイバリットも)

卯月(何もないけど、でも、だから!)

卯月「皆に……言われたから」

卯月「周りを笑顔にして、その力を借りることが、私の個性なんだって!」

卯月(絶対的なフェイバリットなんて持てない)

卯月(オリジナルのフェイバリットなんて持てない!)

卯月(それでも!)

卯月(皆から得た知識と経験で、私は――)

未央「ゲエーーーーーーーーーーーッ、しまむーがローションで滑っているーーーー!」

みく「あ、あれは準決勝で見せたすてみタックル……!?」

P「いえ……あれは……」

卯月(例え怪我を突いてでも、凛ちゃんを超えたい!)

卯月「勝って、シンデレラになりたい!」

未央「ろ、ロープに突っ込んだっ!」

みく「あ、あの角度、ま、まさか……」

卯月「これが……今までの試合で得た方法でしか戦えない、弱い私の必殺技だよ、凛ちゃん!」 ギュアッ

未央「と、飛んだァァーーーーーーーッ!」

みく「そ、そのまま突っ込んでいくにゃ!」

P「まるで矢、ですね……」

885: 2015/03/07(土) 01:21:17.68 ID:B0ZdHXCDo

凛「くっ……」

凛(さっきの爆発で体を痛めた……)

凛(空中で方向転換が出来ないッ)

卯月「凛ちゃん!」 ギュオッ

凛「……!」

凛(卯月……)

凛(アンタのために怪我した背中、容赦なく狙ってくる、か……)

凛「……ありがとう」

凛(嬉しい、な)

凛(そこまでさせる程度には、私も、アイドルに、なれたのかな――)

みく「と、とらえた!」

未央「そのまま対面のリングロープに突っ込んでいくッ!」

卯月「凛ちゃん……」

卯月「私もッ」

未央「いけっ!」

未央「1000年に1度出るか出ないかのド派手な技で、決めちゃえ、しまむー!!」

みく「あっ、でもなんか喋ってるし、必殺技名叫べなさそうだにゃ!」

未央「ええ!? それじゃ威力半減だよ!!」

未央「しょうがない、私が叫ぶ!」

未央「技名は、うん、1000年に1度の奇跡をしまむーが起こすから、」

卯月「私もありがとう、凛ちゃんっ!」

未央「マッスル・ミレシマムーーーーーーッ!」

ズッガァァァァァァァン

886: 2015/03/07(土) 01:28:34.99 ID:B0ZdHXCDo

凛「がっ……!」 カハッ

ドサッ……

ちひろ「……か、カウントを!」

ワーン

ツー

凛「か……カウントなんて……いらないのに……」

凛「あ、あんな技食らって……」

凛「立てるわけ……ないでしょ……」

卯月「……」 ハァハァ

凛「……おめでとう」

卯月「……凛ちゃん……」

凛「容赦なく傷口せめられて、正直体はすごく痛いけど……」

凛「変だよね」

凛「心は凄く晴れやかで、また、戦いたいなって思ってる」

卯月「……うん」

卯月「私も」

卯月「私も――また、凛ちゃんと一緒に、リングに立ちたい」

887: 2015/03/07(土) 01:41:41.25 ID:B0ZdHXCDo

凛「……そうだね」

凛「ステージでもリングでも、また、一緒に立とう」

凛「今度も、二人で一緒に……」

卯月「……ううん」

卯月「違うよ」

卯月「私達ニュージェネレーション三人一緒に、だよ」

凛「……それじゃ、プロデューサーとかも入れてあげなきゃ可哀想かな」 フフ

卯月「あは……」

凛「……さ、そろそろカウントが終わるかな」

凛「……行ってきなよ、とびきりの笑顔で」

凛「一番高いところの星になれたんだからさ」

卯月「……うん」

カンカンカーン

ちひろ「試合終了~~~~~~っ!」

ちひろ「並み居るアイドルを押しのけて頂点に立ったのは、島村卯月選手ですっ!」

卯月「……」 ウルッ

卯月「プロデューサー、凛ちゃん、みんな……」

卯月「本当に、ありがとうございましたっ!」 エヘ

未央「泣きながら笑う奴があるかーっ」

卯月「あ、あはは……実感わかなくて……」

P「……」

P(おめでとう、ございます) パシャリ



【決勝戦 勝者・島村卯月】

888: 2015/03/07(土) 01:53:17.62 ID:B0ZdHXCDo

未央「よっしゃー、皆でしまむーを胴上げだ!」

みく「次はみくが勝つにゃ」

莉嘉「……うん、今度は負けないよ!」

みりあ「みりあも!」

ヘレン「世界の広さ、今度改めて教えてあげるわ」

鈴帆「胴上げして少しでもモニターに映ったるばい!」

沙理奈「いいアイデアじゃない」

比奈「ブルーナポレオンで固まって胴上げして目立つッスよ」

瑞樹「……あ、でも約一名」

千枝「病院に……」

菜々「やっぱりウサミン星は強かったですねっ☆」

夏樹「アンタは早々に敗退したろー?」 ハハ

紗枝「胴上げ、混ぜてもらいにいこか」

美穂「うん!」

889: 2015/03/07(土) 01:58:19.45 ID:B0ZdHXCDo

凛「……」

P「……お疲れ様です」 スッ

凛「?」

凛「……だめじゃん、こっちの方から来ちゃ」

P「……いや、それが、島村さんの周りには人だかりが……」

凛「……だとしても、行く」

凛「卯月が一番待ってるのは、プロデューサーからの一言なんだから」

P「……」

雫「肩、貸しましょうか?」

薫「大丈夫、おねーちゃん?」

早苗「さ、ここはオネーサン達に任せて、プリンセスを迎えにいったいった!」

P「……」

P「何故貴女が制服でここに……」

早苗「休日出勤してた時に通報来て飛んできてみたらメガネの娘が暴れてて」

P「はあ……」

早苗「楽しそうだから混ざって見ちゃった」

P「セキュリティの向上を打診してみようと思います」

890: 2015/03/07(土) 02:06:44.90 ID:B0ZdHXCDo

未央「あ、プロデューサー!」

未央「プロデューサーも一緒に胴上げしよ!」

P「いえ……私は結構です」

P「写真だけ撮っておきますので……」

未央「つれないこと言わない!」

未央「ほらみんな、かかれーっ!」

莉嘉「おおーっ!」

みりあ「がおーっ!」

P「!?」

卯月「……」

卯月「写真!?」

卯月「ちょ、待っ、せめて水着の下だけでも履き替えさせ――」

美嘉「そんじゃ、皆で今日の主役を胴上げするよっ☆」

卯月「待っ――――」

ワーッショイ!

ワーッショイ!

卯月「ま、まって、さっき出して途中で止めただけだから、急な振動は――」

ワーッショイ!

ワーッショイ!

卯月「…………………………あっ」






【優勝者 島村卯月】

【準優勝 渋谷凛】

【ベスト4 高垣楓】
【ベスト4 城ヶ崎莉嘉】

【特別枠でのステージ参加権獲得 本田未央】

898: 2015/03/10(火) 00:04:35.67 ID:b3HUncLzo

未央「ついにライブかあ」

未央「初めてのステージ、緊張するなあ」

凛「私と卯月は初めてじゃないけどね」

未央「じゃんけんとかいう欠陥ゲームが流行するこんな世の中間違ってる」

卯月「まあまあ」

卯月「KOも肉弾戦もないステージは、私達だって……」

凛「まあ、確かに、対決じゃないステージは初めてか」

未央「主役じゃないステージも、ね」

卯月「うう、緊張してきた……」 ブルッ

899: 2015/03/10(火) 00:16:41.24 ID:b3HUncLzo

未央「まあ何にせよ、入って早々の大抜擢」

未央「美嘉ねえに恥はかかせらんないよねっ」

卯月「はいっ」

凛「あの試合の後、氏にそうだったのにひたすらダンスさせられたしね……」

卯月「氏ぬかと思いましたよね……」

未央「しぶりんに至っては途中から背中の傷ホッチキスで止められてたもんね……」

凛「……でも病室に居たら居たで、気が休まらなかったから」

未央「おっ、ベッドが変わると眠れないタイプ?」

凛「隣のベッドからメガネは傷に効くってフレーズが5分に1回くらいの頻度で聞こえてきて……」

未央「なにそれこわい」

900: 2015/03/10(火) 00:42:12.95 ID:b3HUncLzo

コンコン

未央「はーい」 ガチャ

P「準備は、よろしいですか?」

卯月「はいっ」

P「……先輩たちから、色々学んで下さい」

P「今日の全てが、皆さんにとって、貴重な経験となります」

卯月「はいっ」

凛「はい」

未央「はい!」

ガタッ

未央「ん?」

みく「う……」

凛「そんなとこで何を……」

みく「ま、まだ納得はしてないけど、今日はみくを倒した皆に託すにゃあ!」

みりあ「ライブ、がんばって!」

みりあ「皆と一緒に見てるから!」

901: 2015/03/10(火) 00:52:15.03 ID:b3HUncLzo

卯月「はい、ありがとうございます!」

莉嘉「おねーちゃんと先に立たれるのは悔しいけど……」

みく「先立たれるってまた違う意味に捉えられそーな言い回しを」

みりあ「しっ、真面目なお話中だよっ」

莉嘉「今日はしっかり研究させてもらうからっ」

莉嘉「次は負けないかんねっ!」

凛「……うんっ」

みりあ「次は私も戦いたいなー」

凛「そっか、みりあちゃんは予選で莉嘉を助けるために……」

莉嘉「あれさえなければ、案外今頃このステージにみりあちゃんが立ってたかもね」

みりあ「そうかなー」 テレテレ

みく「みくだって、あの年増うさみみと被ってるなんて言われなきゃ今頃このステージに……」

卯月「それはちょっと……」

未央「高垣楓とか絶対倒せないでしょ」

凛「仮にトーナメントの組み合わせいじったとしても決勝戦まで行けそうにないけど……」

莉嘉「みくちゃんの爪とぎスラッシュ、私のギャルリンの赤い姉の下位互換じゃん」

みりあ「もー、みくちゃんにも夢くらい見せてあげなきゃだめだよぉ!」

みく「君たちは知らないかもしれないけど、みくだって凹むし泣くんだよ?」

902: 2015/03/10(火) 01:09:10.11 ID:b3HUncLzo

P「それでは皆さん、出演者の方々にご挨拶を……」

卯月「あ、はいっ!」

凛「……ライブ前の楽屋って緊張するな……」

未央「あー、なんかちょっと分かるかも」

卯月「私も以前物販のお手伝いしたときはそうでした……」

みく「みくも好きなアイドルの楽屋に忍び込んだときは緊張したにゃ」

莉嘉「うんうん、カブトムシ追いかけてうっかり入り込んじゃった時は本当に緊張した」

みりあ「かくれんぼで使った時も、すっごくドキドキしたよー!」

未央「一緒にしないでねっていうかついてくるんだ」

凛「客席帰りなよ」

905: 2015/03/10(火) 01:37:04.13 ID:b3HUncLzo

卯月「こ、ここ今回バックダンサーを務めさせて頂く、島村卯月ですっ」

未央「本田未央ですっ、本日はよろしくお願いします!!」

凛「渋谷凛です、よろしくお願いします……!」

パイセンドルアイ「「「「よろしくお願いしまーす」」」」

みく「名乗らせていただくにゃ……ジャン・ピエール・前川みく」 ドン

莉嘉「うわっ、マジで突っ込んだ!」

みりあ「すごーい、ちょっと見直すよね……」

美穂「今日が初めてのステージなんですか?」

卯月「は、はい」

美穂「緊張しますよね……私もずっと緊張していて……」

美穂「そもそも私も先の大会で敗退したのに、プロデューサーが怪我した先輩の穴埋めにってバックダンサーどころかソロで……」 キリキリ

莉嘉「うーん、やっぱり早く歌とか出して、こーいう風に並べるようにならないとなあ」

みく「むうー」

未央「いいねー、主題歌いいねえ」

凛「どんな歌になるかな」

みりあ「熱いバトルしてたから、リングに稲妻走るようなやつじゃないかなあ」

906: 2015/03/10(火) 01:39:51.10 ID:b3HUncLzo

茜「はじめまして!」

茜「今日のライブ、全力で熱く燃えましょう!!」

未央「萌えさせるんでなく?」

茜「こちらが燃えれば、燃え移るもの!」

茜「まずはこちらから!」

卯月「なるほど」

未央「私達の胸の炎がマットを焦がして観客席を爆発炎上させるんだね!」

卯月「そのまま話題になってニュースやインターネットでも燃え上がるといいですね!」

凛「不吉な言い回しやめて」

907: 2015/03/10(火) 01:54:34.45 ID:b3HUncLzo

まゆ「初ステージ……」

まゆ「ステージ処O……」

まゆ「素敵ですね」

未央「今しれーっと素敵じゃない単語が」

みりあ「しょじょってなーに?」 キョトン

凛「……」 サッ

卯月「」 サッ

みりあ「ええ?」

みりあ「何で目をそらすのー!?」

未央「大親友の城ヶ崎莉嘉すゎんがきっと解説してくれるからー」 サッ

莉嘉「……まあまあ」

莉嘉「実際処O捨てたら分かるよ」

未央「予想斜め上にかっとんでくこと言いやがった」

まゆ「分からないことがあったらなんでも聞いてくださいね」

凛「その発言、莉嘉がとりあえずでも答えるの待ってから言いましたね……」

卯月「実際、あれ聞かれても困ると思うし、しょうがないですよ……」

909: 2015/03/10(火) 02:53:37.31 ID:b3HUncLzo

瑞樹「あら……」

瑞樹「貴女、この前会った娘ね」

未央「は、はいっ!」

瑞樹「そっか、仲良しトリオなのね」

瑞樹「最初は私も水面下でブルーナポレオンをバックダンサーにしてとか思ってたんだけど」

瑞樹「生憎けが人が出ちゃったから」

凛「うっ……すみません……」

瑞樹「ああ、ごめんなさい、そういうつもりじゃないの」

瑞樹「こういう仕事だもの、よくあることだわ」

瑞樹「今日ステージに立てない友人の想いを背負ってるのは互いに同じ」

瑞樹「一緒にいいステージにしましょう」

凛「はいっ……」

910: 2015/03/10(火) 02:56:20.08 ID:b3HUncLzo

美嘉「おっはよー」

茜「おっはよーうございます!」 ピシガシグッグ

茜「今日は頑張りましょうっ!」

美嘉「うん、勿論!」

美嘉茜「「はい、はい、はいはいはーい!」」 ピシガシグッグ

美嘉茜「「あるある探検隊! あるある探検隊!」」

未央「」 ブフォ

卯月「ふ、不意打ちはずるいですよっ……!」 プルプル

凛「……」

凛(どうしよう、何がどう笑いどころだったのか分からない……)

911: 2015/03/10(火) 03:00:57.45 ID:b3HUncLzo

卯月「……」

美嘉「どったのー」 ヒラヒラ

卯月「……ハッ」

美嘉「……キンチョーしてる?」

卯月「え、えと、まあ……」

みく「リハでも楽屋でも、ガッチガチだったにゃー」

凛「まだ居るんだ……」

みく「なんと席が取れなかった」

未央「なにしてんの」

みく「どっかの世界馬鹿はきっちりいい席確保してたけど、でもみくは舞台袖っていう特等席があるからいいんだにゃ」 フフン

卯月「……」

凛「ああ、卯月が緊張と動揺のあまりとうとう面倒くさいものを見るような目つきに!」

912: 2015/03/10(火) 03:07:53.83 ID:b3HUncLzo

茜「みなさーん、どうですか!? 元気ですか!?」

茜「元気があれば何でも出来る!」

美穂「出るときの掛け声は決まってますか?」

卯月「かっ……掛け声ですか?」

美穂「あったほうがいいですよ!」

莉嘉「やるっつぇブラッキン的な?」

凛「舐められっぱなしじゃこの世に生きてる甲斐がないんだよー、的な……?」

茜「えーっと、好きな食べ物とかがいいと思います!!」

未央「しまむーの失禁でここまで来たようなものだし、奇跡体験アンモニーアブルとか」

卯月「ええ!?」

卯月「それだったら、もっと元気に分かりやすくズガガンガガンガンとか……」

茜「好きな食べ物がいいと思うなっ!!!!!」

凛「ニュージェネレーションズを皆様よろしくおねがいしまーすとか」

未央「ありだね、もっと宣伝してかなきゃ」

美穂「あの、掛け声っていうのは、自分達だけが聞く気合的なので……」

茜「悪いことは言わないから食べ物にしとこ?」

914: 2015/03/10(火) 03:17:09.42 ID:b3HUncLzo

茜「私なら、ホカ!ホカ!ごはーん!ですね」

未央「……」

茜「苦笑いしてるけど、さっきまでの案より数倍マシなんですからね!!」

凛「なるほど、チャーシューメーンみたいなものかな」

卯月「ああ、傘ゴルフの!」

茜「なんかちょっと違う気もしますが、まあいいでしょう!」

美穂「ちなみに私はわー・さん・ぼーーーん、です」

凛「へえ、渋いね」

まゆ「マルモールグーゲルフプフ」

凛「え?」

まゆ「マルモールグーゲルフプフ」

茜「まるもーるぐーげりゅ」 ガブッ

まゆ「マルモールグーゲルフプフ!」

美穂「掛け声選択を失敗すると一緒に登場したくないとか言われちゃうから気をつけて下さいね……」 キリキリ

915: 2015/03/10(火) 03:20:25.31 ID:b3HUncLzo

茜「まあでも食べ物にした方がいいですよ!」

茜「何せエネルギーですからね!!」

茜「ちなみに私はお茶も好きです!!」

美穂「お茶は飲み物だって紗枝ちゃんに言われたんだよね」

みりあ「えーっ、飲み物はダメなんだ……残念」

茜「いいと思いますよ!!」

茜「むしろ一緒にお茶は食べ物同盟を!!」

みりあ「うーん、それはちょっと……」

茜「(´・ω・`)」

916: 2015/03/10(火) 03:23:16.60 ID:b3HUncLzo

美穂「ちなみにどんな飲み物に……?」

みりあ「ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノ」

美穂「……え?」

みりあ「ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノ」

未央「それで登場するんだ……」

凛「大変だね、莉嘉」

莉嘉「さすがにちょっと遠慮するかな」

みりあ「えー、なんでー!」

みりあ「美味しいのにー!」

みりあ「一緒に登場時に叫ぼうよー!」

莉嘉「無理」

みりあ「やってみようよー!」

みりあ「ほら、せーの!」

みりあ「ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノ」

莉嘉「ペンディアドショットヘーゼルナッツアーモ……ああもう、言うの早いって!」

みりあ「ヘーゼルナッツの次はバニラだよ~」

莉嘉「無理。絶対無理」

917: 2015/03/10(火) 03:27:13.49 ID:b3HUncLzo

茜「そういう莉嘉ちゃんは!?」

莉嘉「うーん」

莉嘉「キャラ作りのため、ここはいっそバイアグr」

茜「そこまで!!」

未央「ギャルアイドルでもヤバいもんはヤバいからね!」

みく「ちなみにみくはペディグリーチャム」

凛「さすが猫キャr……犬だよねそれ!?」

未央「猫キャラらしく魚にしときなよ!」

みく「魚はちょっと……」

みく「ペディグリーチャムは意外と白米にマッチしてるにゃ」

未央「食べたの!? ネタとかじゃなくてマジで食べたの!?」

凛「白米に乗せると意外と美味しいのか……」 メモメモ

未央「しぶりん!?」

918: 2015/03/10(火) 03:34:14.13 ID:b3HUncLzo

春菜「メガネだって白米に合うんですよ!!」 ガバッ

凛「うわっ!」 ビックゥ

未央「び、びっくりした……」 

卯月「……」

卯月(ちょ、ちょっと漏れちゃった……) モヂッ

凛「な、なんでここに……」

春菜「まだ病み上がりながら、ブルーナポレオンの仲間の応援にかけつけたんですよ」 キラーン

春菜「さあ、貴女もレッツメガネご飯!!」 グイグイ

未央「この人ヤバい!!」

凛「頭の病気で入院してるんじゃないのこれ!?」

春菜「眼鏡is最高、何せおかずになりますからね!!!!」

凛「植木鉢で何度も殴るってよくなかったのかもしれない」

未央「多分かもは付けなくてもいいレベルでよくないことではあるよ」

936: 2015/03/13(金) 00:22:38.85 ID:hZvLPYjBo

春菜「まあ初心者がいきなり眼鏡丸ごとは抵抗があるでしょうから、まずはフレームだけでも……」

凛「た、食べないから」

みく「ていうかこうしてる間にも出番ドンドン近付いてるにゃ」

未央「あんたら集団で邪魔しにきたの?」

みりあ「応援だよー」

凛「……ちょ、チョコレート」

卯月「ふえ?」

凛「……」

茜「ああ、掛け声ですねっ!」

莉嘉「へー、甘いの好きなんだ」

みく「みくはメルティーキッスが好きだにゃあ」

卯月「な、生ハムメロン!」

凛「えっ、なにそれ!?」

卯月「ワンピースで見かけて、実際食べてみたら美味しくて……」

未央「ふ、フライドチキン!!」

莉嘉「ふつー」

みく「庶民派だにゃ」

未央「うるさいなー、好きなんだもん鶏肉」

春菜「鶏肉なら何でもいいなら、眼鏡を使っt」

未央「食べないから」

みく「未央チャンにはチキンマックナゲットくらいがお似合いだにゃ」

未央「昨今の日本でも五指に入るくらい扱いが難しいチキンを躊躇いなくあげやがって」

みりあ「揚げ物だったら唐揚げもあるよー」

美穂「あ、あの、そろそろ出番……」 オロオロ

937: 2015/03/13(金) 00:43:41.15 ID:hZvLPYjBo

未央「で、プロデューサーは?」

P「?」

凛「時間ないんだから、早くしてよね」

P「……?」

卯月「プロデューサーは、何か好きなものはないんですか?」

P「……私は、結構です」

未央「だーめ!」

未央「前の写真の時はアイドルばっかの流れだったからしょうがないけど」

凛「……今回は、部外者の人達も混ざりまくってるし」 ジロー

みく「言われてるにゃ」

春菜「冷たい人ですねえ」

凛「この場合はみくちゃんもだから」

卯月「既に色んな人が好き勝手言ってますし……」

卯月「ほら、プロデューサーさんもっ」

卯月「何か好きな食べ物を!」

みく「そんで最後はじゃんけんだにゃ」

春菜「そして勝者のあげた食べ物を打ち上げで全員が」

凛「食べないから」

938: 2015/03/13(金) 01:03:52.01 ID:hZvLPYjBo

P「私は……」

P「……肉料理全般が、好きですが……」

未央「おお~~っ」

凛「男の人……って感じだね」

卯月「ふえ~……」

卯月「そっか、プロデューサーさんはお肉が……」

春菜「!」 ハハン

春菜「意中の男性を捕まえるには、胃袋を捕まえるのが一番ですよ」 コソ

卯月「!?」

卯月「な、ななななななにを……」

春菜「そしてプロデューサーと上手くやっていくコツは、互いが互いに染まること……」

春菜「私も自分のプロデューサーさんに美味しい眼鏡料理を作って眼鏡好きにしたものです」 ウンウン

卯月(辞めて訴えられてもおかしくないよーな)

939: 2015/03/13(金) 01:18:25.80 ID:hZvLPYjBo

未央「じゃあさ、フライドチキンも好きだよね!?」

P「そうですね……」

P「チキンな気持ち、臆病さを吹き飛ばす――」

P「素敵なダブルミーニングで、前向きな本田さんらしいと思います」

凛「そんな深い意味が……」

未央「えっ、あっ、うん、もちろん!」

凛「後付でしょ」

未央「いやもうほらこのインテリジェント英語脳的なあれこれが咄嗟にそんなダブルテーピングな単語をチョイス的な?」

みく「ダブルミーニング」

凛「絶対後付」

941: 2015/03/13(金) 01:39:54.62 ID:hZvLPYjBo

P「あとは、ハンバーグとか……牛丼ですかね……」

未央「ひゅーっ、男子ィ~~~!!」

凛「牛丼……一人で夜食べたりしてるの?」

茜「どこの牛丼が一番好きなんです!?」

美穂「あ、あの、時間が……」 オロオロオロ

未央「あ、やっば」

未央「じゃあとりあえずじゃんけんしよっか」

未央「皆でチキンハートをフライさせてあげるんだから!」

莉嘉「ルー大柴みたい」

みく「じゃんけん負けて速攻大会から姿消してた立場なのに何でそんなに強気なんだにゃ」

春菜「眼鏡かけると視力が上がってじゃんけん勝ちやすくなりますよ」

未央「…………」 ズーン

凛「い、今から本番だから、そのくらいに……」

942: 2015/03/13(金) 01:48:32.82 ID:hZvLPYjBo

ホンバンゴビョウマエー

未央「むー、何で勝てないかな……」

卯月「まあまあ……」

凛「……あの結果なら、しょうがないよ」

凛「眼鏡だったら断固拒否してたけど」

卯月「プロデューサーさんも、シンデレラプロジェクトの仲間ですし」

卯月「プロデューサーさんが居てくれなかったら、ここまで来られませんでしたから」

凛「ま、悔しいけど、卯月があの大会に勝てたの、あの人の力も大きいしね」

未央「まあ、私はフライドチキン残してくれたからいいんだけど」

凛「……それじゃ、プロデューサーに一番助けられたんだし、卯月に先陣きってもらおうかな」

卯月「ええ!?」

未央「いいねー」

未央「気合入れなきゃだし、頼むよチャンピオン♪」 ポン

卯月「うう……」

943: 2015/03/13(金) 01:56:38.36 ID:hZvLPYjBo

卯月「牛丼一筋300年!」

凛「早いの!」

未央「美味いのっ!」

卯月「やっすいの!」

未央「そんでもって~~~」

ニュージェネレーションズ「「「フラ!」」」

ニュージェネレーションズ「「「イド!!!」」」

ニュージェネレーションズ「「「チキーーーーーーーン!!!!」」」

946: 2015/03/13(金) 01:59:43.54 ID:hZvLPYjBo

【同時刻、某所】

楓「……」

カチカチ

サジェスト『高垣楓 ポ口リ』

楓「……」

カチッ

ブログ『高垣楓ポ口リ流出wwwwwwwwwwwww』

楓「…………」

947: 2015/03/13(金) 02:30:43.87 ID:hZvLPYjBo

ガチャリ

美波「……」

美波「楓さん……」

楓「……おかえりなさい」

美波「……」

美波「また、パソコン見てるんですね」

楓「……あの人が尽力してくれてるからか、画像はほとんどが消えてる」

楓「でも……」

楓「一度根付いた印象は、消えないわ……」

美波「……」

美波「わかります」

美波「私も、一度色っぽい画を撮られてから、ずーっと心ないアダ名でネット上は呼ばれてますし」

楓「……」

楓(一度じゃきかないような)

948: 2015/03/13(金) 02:43:49.81 ID:hZvLPYjBo

美波「…………」

楓「……」

美波「本当は……」

楓「?」

美波「言うべきか、悩みました」

美波「風化するまでおとなしくする方がいいのか」

美波「気にしてないって風に普段どおりがいいのか」

美波「皆目検討がつかないから……」

楓「……」

美波「それでも、今のまま沈んでいる楓さんを見るのは辛い……」

美波「楓さんが深夜番組でかわいがってくれたから、形はどうあれ私はブレイクできたんです」

美波「ですから……」

楓「……」

美波「……」

美波「私……」

美波「CDデビューが決まりました」

949: 2015/03/13(金) 02:46:23.55 ID:hZvLPYjBo

楓「……!」

楓「よかった……」

楓「そういう吉報は、躊躇うことなく言ってくれていいのよ」

楓「その方が、きっぽ上手くいくわ」 ププ

美波「……」

美波「その……」

美波「346の次世代アイドルCDラッシュの第一弾ということらしく……」

楓「……」

楓「もしかして……」

美波「……」

美波「一緒に、ニュージェネレーションズのデビューもほぼ決まっているって……」

950: 2015/03/13(金) 03:04:13.51 ID:hZvLPYjBo

楓「…………そう」

美波「……」

美波「一応、イベントとかのスケジュールを先に調整する際に……」

美波「彼女たちの、今後しばらくの予定も……」

楓「……」

楓「今は確か、バックダンサーを……」

美波「……成功したら、ツアー全てでやるみたい」

楓「……そう」

美波「……」

美波「もし、まだ納得していないなら――」

美波「リベンジのチャンスは……」

楓「……ええ」

楓「ありがたく――その情報、頂いておくわ……」

951: 2015/03/13(金) 03:37:24.20 ID:hZvLPYjBo

【数時間後、ライブ会場】

バイトリーダー「全プログラム終了です!!」

オツカレサマデシター

パチパチパチパチパチ

卯月「……」 アハ

凛「……」 フフ

未央「……」 イヒッ

美嘉「おっつかれさまー!」

美嘉「初めてにしてはジョーデキじゃん!」

美嘉「アタシの見込みどーりって感じ!」

卯月「ありがとうございます!」

未央「ありがとう、美嘉ねぇ!」

凛「ありがとうございます!」

春菜「その素敵な慧眼、眼鏡をすれば更に良くなりますよ!」

凛「割りと真面目に感動してるところだから邪魔しないでもらえますか」

952: 2015/03/13(金) 04:06:53.37 ID:hZvLPYjBo

美穂「お疲れ様でした!」

茜「会場、すっごく盛り上がってましたね!」

瑞樹「堂々たる初ステージ、かしらね」

まゆ「次のライブも、一緒に出られるといいですね」

卯月「……っ!」 ジーン

凛「……」 ジーン

未央「っ……!」 ジーン

みく「みくもコメントしていい?」

未央「もーちょい、この輝かしい先輩達に囲まれた素敵空間に浸らせて……」 ジーン

みく「みくも先輩なんだけど」

未央「輝かしいかって言われると」

みく「一回戦負けのくせに……」

未央「にゃにおう!」

卯月「ま、まあまあ……」

凛「落ち着いて感動させてもくれないのか……」

953: 2015/03/13(金) 04:11:44.49 ID:hZvLPYjBo

P「……お疲れ様でした」

卯月「!」 パァァ

卯月「プロデューサーさん!」

卯月「あの、今日は……」

卯月「ステージに立たせてくださって、ありがとうございました!!」

P「……いい、ステージでした」

卯月「ううっ……」 キュン

卯月「凛ちゃん……」 ウルッ

未央「しまむー……」 ウルッ

卯月「凛ちゃん……!」 ジワッ

未央「おいしまむー」

954: 2015/03/13(金) 04:13:30.73 ID:hZvLPYjBo

未央「しまむー!」 ガシッ

卯月「あ、あと未央ちゃん!」

未央「にゃろー」

未央「……しぶりんも!」 ガシッ

凛「わっ……」

未央「……やったね」

卯月「……」 ウルッ

卯月「やりました……」

卯月「私達の初ステージ、成功しました!」

未央「なんかもう、全てがきらきらしてた!!」

未央「多分汗も尿もキラキラできたけど、今回しまむーは」

卯月「も、漏らしてなんかいませんっ!」

凛「シリアスやるならちゃんとやろ」

955: 2015/03/13(金) 04:15:56.95 ID:hZvLPYjBo

未央「アイドルってやっぱサイコー!」

卯月「ですよねっ!」

卯月「ですよね、凛ちゃん!」

凛「……うんっ!」

凛「なんか、こう、前の大会の肉弾戦より、思い描いてたアイドル像にも近かったし!」

未央「キラキラしたステージで、キラキラしたお客さんにエールを送られるこの感じ!」

未央「くせになりそう!」

卯月「うう……頑張ってよかった……」

未央「涙腺も脆いなあ、しまむーは」 ハハ

卯月「うう、からかわないでくだい……」 グスッ

卯月「……」

卯月「も?」

956: 2015/03/13(金) 04:23:32.78 ID:hZvLPYjBo

P「今日は、お疲れ様でした」

P「この体験を、しっかり自分のものにしてください」

卯月「はい!」

凛「はい!」

未央「はい!」

みく「はい!」

凛「茶々入れないでって」

莉嘉「はいはーい!」

みく「はいはいはい!」

みく莉嘉「「あるある探検t」」

凛「それさっき見た」

莉嘉「っていうか、次のライブには出られないの!?」

みりあ「今度は私も出して!」

春菜「ブルーナポレオン!」

春菜「ブルーナポレオンもよろしくお願いします!」

みく「にゃっ! 名刺用意してるとは……!」

春菜「これがプロの媚売りというものですよ!」 メガネキラーン

凛「ああもう、総出で感動壊しにくるんだから……!」

957: 2015/03/13(金) 04:49:06.30 ID:hZvLPYjBo

偉いジジイ「実に素晴らしいライブでした」

ヘレン「ふっ、全く大したガール達だわ」 バーン

卯月「ヘレンさん!」

偉いジジイ「スタッフならびに出演者の皆様」

鈴帆「今度闘うときは負けんたいね!」

莉嘉「あ、ずるい、宣戦布告なら私も!」

みく「みくもデビューしたいにゃあ!」

偉いジジイ「今日の成功を胸に」

夏樹「はは、アタシもやってみてーなー」

茜「あっ、その時はぜひ一緒に!!」

紗枝「お疲れ様、よかったえ~」

美穂「わあ、お花……!」

菜々「ふっふっふー」

菜々「ウサミン星の仲間の勇姿、観客席でバッチリ見させて頂きました!」

卯月「わあ、みなさん……!」

偉いジジイ「また次の成功を……」

春菜「私達ブルーナポレオンも負けてられませんねっ!」

沙理奈「そーだけど、この空気の中凸るのはちょっと」

春菜「一緒に輪に入って、眼鏡のアピールしましょうよ!!」

比奈「そこはブルーナポレオンじゃないんっすね……」

千枝「あはは……」

偉いジジイ「目指しましょう……」

偉いジジイ「……」

P「その……」

P「私は聞いてますし、大変有り難く素晴らしい言葉かと……」

偉いジジイ「その優しさは胸に痛いし黙っていてほしかった」

958: 2015/03/13(金) 04:53:32.12 ID:hZvLPYjBo

【その後】

ガンガンガンガンガン

卯月「……」

凛「……」

未央「……」

ズガガンガガンガン

未央「これって、現実なのかな……」

卯月「夢見たい、でしたね……」

凛「……うん」

凛「夢から覚めさせようとするような騒がしさ、あったけどね」

卯月「……それでも魔法がとけないくらい、素敵でした」


959: 2015/03/13(金) 04:58:17.63 ID:hZvLPYjBo

P「みなさん」 ザッ

卯月「プロデューサー!」

P「……」

P「私は最初、皆さんにステージはまだ早いと思ってました」

P「ですが……」

P「皆さんは私が思うよりも速いスピードで成長しています」

P「ですので……」

P「皆様には、CDデビューをして頂きたく思います」

未央「!!!」

卯月「し、CDデビュー!?」

凛「すご……」

凛「……」

凛「あ、ごめん、私達だけ抜け駆けしたみたいで」

未央「何しれっと『皆様』から私を外そうとしてるの」

960: 2015/03/13(金) 05:04:49.29 ID:hZvLPYjBo

凛「ま、それは冗談として……」

卯月「CDデビュー……」 ホエー

未央「まあ、しまむーが大会優勝したおかげなのは否定出来ないかな」

凛「卯月」

凛「呆けるのもわかるけど……これ、別にゴールじゃないよ」

卯月「ふえ?」

凛「目指すんでしょ、アイドル超人」

凛「ならばこれは、、あくまでも最初の関門」

凛「きっちりこなして、これからも戦い続けよ」

卯月「……はい!」

未央「夢は遠くてでっかいけれど、私達三人ならできるっ!」

卯月「果てない夢を追いかけ、スーパーヒーローになりましょうっ!」

凛「うん……!」

未央「ニュージェネレーションズぅ~~~~……」

ニュージェネレーションズ「「「GO FIGHT!!」」」






第2ステージ 終幕

961: 2015/03/13(金) 05:08:07.89 ID:hZvLPYjBo
くぅ疲。

これにて第1ステージ『スカウト編』と第2ステージ『トークバトルショー編』完結です。
本当はサクサクと全部やりたかったですが、構成力の無さと筆の遅さから一旦一区切りとさせていただきます。
アニメ2話の時点でのプロットなので、どこまでアニメにすり合わせるか考えなおして再度スレを立てたく思います。

確かにこのままだと後味悪いですし、少なくとも個人的にやりたかった悪魔アイドル編まではやる予定です。
またどこかで見かけたらよろしくお願いします。
スレタイはまたキン肉マン関係にする予定です。

962: 2015/03/13(金) 05:22:01.14 ID:BtD0xCLoo
おつおつ

出来ればスレタイ決めといてもらえると助かる…(キン肉マンそんなに知らないマン)

964: 2015/03/13(金) 05:28:14.63 ID:hZvLPYjBo
>>962
字数の都合でどうなるかわからないけど、今の時点では
P「流れているんです、愛さえ友情さえ……!」
を予定してます

引用元: 卯月「心に愛がなければスーパーアイドルじゃないんですよ……!」