1: 2011/02/11(金) 19:21:53.59 ID:VdpUsTBA0

・妹達ネタ

・絶対能力者進化実験中のお話です

・台本形式でダラダラ進みます


2: 2011/02/11(金) 19:23:12.95 ID:VdpUsTBA0

天井「実験も今回で第9900次を終わり折り返しへと近づいてきた」

天井「それだけ実験をこなしてきた成果だろう。最近は戦闘時間も大分短縮できるようになったようだな」


一方「……けッ、俺が慣れる慣れねェ以前によォ……どいつもこいつも糞雑魚な上に攻撃もワンパターン何だっつうの」

一方「あいつらの攻撃なんざ電撃か銃撃、せいぜいが爆破ってもンだろォが」

一方「いくらスライム潰しの流れ作業って言ってもよォ、こんなことの繰り返しでマジにレベル6になンかなれンのかァ?」

一方「正直実験開始前と比べて今なンかが変わった気とかしないンですけどォ」


天井「む……この実験は樹形図の設計者による演算結果から導かれた計画だぞ。成功は確約されているんだ。」

天井「お前がいまさらグダグダ口をはさむ必要なんぞ無い!」


一方「はいはい分かってますよォ……俺ァただ変わり映えなさ過ぎて飽きてきたって言ってるだけだっつの」

一方「実験の戦闘計画とか考えてんのはご優秀な研究員の天井クンなんだろォ?」

一方「だったらちったァ俺を追い詰めるような素晴らしい作戦でも考えてやっちャァくれませんかねェ」

一方「あンまりつまんねェ作戦ばっか立ててッと……テメェからプチッと潰しちまうぞコラァァァ!!」

とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の超電磁砲(2) (電撃コミックス)

3: 2011/02/11(金) 19:24:28.17 ID:VdpUsTBA0


天井「 ビクッ!! ) うう……く、くだらんことを……」ビクビク

天井「だ、だが安心しろ。もうじき始まる実験、第10000次実験だがな、これは今までの実験とは違う!」

一方「あン?」

天井「計画の完成の為に第10000次実験においては
『貴様が苦戦を強いられる』ことが要求されている」

一方「この俺が苦戦するだァ?」



天井「そうだ!その為に検体番号10000号には貴様の能力も含めた全データが開示される」

天井「そしてそれを基とした綿密な戦闘計画が作成されることとなっているのだ」


4: 2011/02/11(金) 19:25:33.43 ID:VdpUsTBA0


一方「ハッ!それはそれは……なかなか楽しみな実験になりそうじゃねェか!」

一方「しかし実際のとこ俺があいつら相手に苦戦するなんて状況全く想像がつかねェな」

一方「そりゃどんな戦場になりそうなんだ?ちょこっと教えてくれませんかねェ?」

天井「バッ、バカを言うな!教えられるわけがないだろう!」

一方「へッ、そりゃそうか……まぁ楽しみにしてるゼェ。それじゃまたな天井クン、俺を失望させんなよ」



天井(ぐぬぬ……うっかり第10000次実験のことをあの小僧に話してしまった)

天井(実はいまだにどんな策を立てればいいのか全く思いついてないんだが……)

天井(いざとなったら10000次実験の内容は後回しにして後々帳尻を合わせようと思っていたのに……くそ!)

天井「こうなったからには何が何でもあの小僧に一泡吹かせてやらねば!」



5: 2011/02/11(金) 19:26:37.37 ID:VdpUsTBA0

==============================================

ブゥーーーン……


天井「正常に起動したか?自分の検体番号を言ってみろ」

10000号「……はい、ミサカは自己の検体番号が10000号であると返答するとともに、

1000号「身体・精神・ネットワーク接続、その全てが完全に正常であることを示します」


天井「ふむ、調子はいいらしい。」

天井「お前には学習装置を用い特別に被験者一方通行に関するデータを入力してあるはずだ」

天井「そちらも正常にインプットされているか?」


10000号「あァ、問題ねェ……あいつの戦闘時の癖から好みのLO作家まで全部熟知してるぜェ……」

天井「よし、順調のようだな。ちなみに私の好みは東山翔だ」

10000号「あいつァ浦井民みてェだな」

天井「何、浦井民だと!意外だな……女子中学生メインの人じゃないか。絶対ロボハチやあまじ、雨ガッパあたりだと思ってた」

10000号「中学生はなァ……食べ頃なんだよ」



6: 2011/02/11(金) 19:27:16.91 ID:VdpUsTBA0


天井「むぅ……やつの意外な一面を発見してしまったな。だが運よくお前の外見年齢はやつのストライクゾーンというわけだ」

天井「戦闘を有利に進める為のカードがまた一枚増えたな」


10000号「はい、ミサカは自らの禁断の色気を含めあらゆる手段を使って一方通行を追い詰めることをここに宣言します」


天井「言い覚悟だ!お前は他の妹達とは違いただ殺されるだけでいい、というのではない」

天井「一方通行を苦戦に追い込まねばならないのだ」

天井「難しい役目だが……お前は妹達の記念すべき10000体目!必ずやこの難題をクリアしてくれると信じているぞ」


10000号「天井博士…不詳10000号見事期待にこたえてせます、とミサカは発注元の無理に応じるプロジェクトリーダーのように頷きます」

天井「さて、まずはシステムスキャンだな。お前の性能を調べさせてもらうぞ」

10000号「はい、博士」



7: 2011/02/11(金) 19:28:05.26 ID:VdpUsTBA0


==============================================



ピピピピピッ

天井「レベル2か」

10000号「申し訳ありません博士……」



天井「いや気にするな。確かにレベル3であることが望ましかったが、こればかりは運のようなものだからな」

天井「フルチューニング出来ればよかったんだが、それでは演算結果に歪みが生じかねない……」

10000号「レベルの差は根性で埋めてみせます、とミサカは某7位のように腕を組みながら言い放ちます」



天井「その通りだ。そもそもレベル1だろうがレベル5だろうが電磁能力で一方通行に対抗するのは不可能だ」

天井「何か別の切り口を見つけねば……」

10000号「博士には何かいい策があるのでしょうか?」

天井「いや、正直言って全く思いつかん……」

10000号「……」



天井「私は今までのデータを基にもう一度戦闘計画を練ってみる」

天井「お前には一方通行の能力開発の全過程から絶対能力者進化実験についてまで全ての情報のアクセス権を与えている」

天井「お前も奴への対処法を自分なりに検討しておくがいい」


10000号「了解しました、と返答しつつミサカはパソコンと睨めっこしに与えられた個室へと向かいます」



8: 2011/02/11(金) 19:29:00.21 ID:VdpUsTBA0

==============================================


カタカタカタ


10000号「うーん……なかなかいいアイディアが浮かびませんねぇ」

10000号「データを見れば見るほど相手との絶望的戦力差が浮かびあがってくる…とミサカは若干諦め気味につぶやきます」



10000号「……」 カタカタカタ

10000号「……んと、これは一方通行の能力開発を担当した研究者のデータですか……」

10000号「一方通行に負けず劣らずのすさまじい悪人面ですね」

10000号「しかもなんですかこの筋骨隆々っぷりは?本当に研究者なのか疑わざるを得ない、とミサカは正直な感想を口にします」




10000号「おや?何でしょうこれは……『被験者の自動反射膜への接触と能力発動タイミングのラグについての私見』…」

10000号「……」 カタカタカタ

10000号「……」 カタカタカタ

10000号「……木原神拳?」



9: 2011/02/11(金) 19:30:15.53 ID:VdpUsTBA0

==============================================


ペラペラ

天井「ふむ……」

10000号「どうでしょう博士?」

天井「なかなか面白い理論だな」

天井『一方通行が自動でベクトルを逆向きにしていることを逆手に取り』

天井『放った拳を寸止めの要領で反射の直前に引き戻すこと≪遠ざかる拳≫を内側に反射させる』



10000号「ミサカにはこれが本当に実現可能なのか疑問です、正直無理じゃね?とミサカはぶっちゃけます」

天井「いやいや、そうと決めつけるのは早いぞ」

天井「一方通行の能力について完璧に把握」

天井「その上で高度な格闘技術を身につけ、さらにマイクロマニピュレータにより精密戦闘を補佐させる……」

天井「そうすることで理論上は十分に実現可能だよこれは」



10: 2011/02/11(金) 19:31:01.41 ID:VdpUsTBA0


10000号「ミサカには既に一方通行についてのデータがぎっしりと頭の中に詰まっています」

10000号「また元々軍用のミサカは格闘には多少心得がある、とミサカは酔拳スタイルで応じます」

天井「ああ、それにお前の電磁波を応用すればこの戦闘理論の実行可能性はさらに高まるだろう」

10000号「電磁波を拳から放射して一方通行の反射膜の境界を読み取るのですね、とミサカは酔拳スタイルを維持しながら話します」



天井「その通りだ」

天井「マイクロマニュピレータについては私の方で何とか調達してみよう」

天井「それまでの間お前は一方通行の能力についてより詳細に学ぶとともに」

天井「功夫に励むのだ」



10000号「はい博士、とミサカはもはや酔拳が気に入っている自分を隠さず返事をします」

天井「お前には外出許可を出してある。外界で大いに自己の力を蓄えるがよい」

10000号「では行ってきます!とミサカはググッと拳を握りしめて外界へ向かいます」



11: 2011/02/11(金) 19:32:08.66 ID:VdpUsTBA0
==============================================

テクテクテク

10000号「さて、博士の言うとおり研究所の外に出たはいいですが、これからどうしましょう」

10000号「ミサカには格闘技についての知識は一応インプットされていますが」

10000号「独学で功夫マスターになるのはハッきり言って非効率的です」



10000号「実験は今もハイペースで進行している……ミサカには時間がありません」

10000号「ここは師匠っぽい人を確保して奥義的なものを授けてほしい所です、とミサカはジャッキーの影響から抜け切れていない事を自覚しつつつぶやきます」



ナンダテメェ
ムシシテンジャネェゾ

アン?オレカ


10000号「なんだかうるさいですね」

10000号「外で初めに聞いたのが鳥の鳴き声でも木々のさざめきでもなくチンピラの罵声なことにロマンチストのミサカは軽く失望します」



12: 2011/02/11(金) 19:32:52.86 ID:VdpUsTBA0


ゴミニカカワッテランネェンダヨ キエロ

ア?ガンツケテキヤガッタノハソッチダロクソオヤジガ
イカレタイレズミシヤガッテ


10000号「おやおや、分かりやすいチンピラとヤクザが喧嘩しています」

10000号「学園都市のヴァイオレンス世紀末ぶりは知識として知っていましたが実際に遭遇すると治安の悪さを感じますね」



ウザッテンダヨ!! (バキッ!ドスッ!ボキッ!

グヘァ!?
ゴフッ!!


10000号「むむ?……あれは」

??「たく……ゴミどもが絡みついてきやがって……」

10000号「ま、間違いありません!あれは木原神拳創始者……」

10000号「木原数多!」  木原「あん、何だテメェは?人の名前をフルで読んじゃってよお」


13: 2011/02/11(金) 19:33:57.96 ID:VdpUsTBA0


10000号「す、すみません、とミサカは写真以上の実物の強面ぶりに怯えつつ謝ります」

木原「……お前はあのガキ……一方通行の野郎の実験で使ってるモルモットだな。何でこんな所に居やがる?」

10000号「ミサカや実験のことを知っているのですか?」

木原「……まぁな、俺の手をとうに離れているとはいえあいつの能力研究は長らく俺が担当だったからな」

木原「今もあいつが関わってる実験くらいは把握してるさ…ま、だから何ってわけでもねぇがな」



10000号「……」

木原「で?さっきの質問に答えてもらってねぇんだけどよ」

木原「テメェは何でこんな所に居やがる?そして何故俺の名前を知っている」

木原「お前らモルモットには最低限の生活の為の知識と戦闘技術以外は学習されてないはずだぞ」

木原「まして一方通行のキャリアや能力は基本知らされない上で実験に使用される、つうはずだろうが?」



10000号「……ミサカは他の妹達とは異なる『特別の役割』が与えられています」

木原「『特別の役割』だぁ?」

10000号「実は……とミサカは説明を開始します」



14: 2011/02/11(金) 19:34:55.04 ID:VdpUsTBA0


==============================================


木原「なるほど一方通行のやろうを苦戦に追い込むねぇ……」

10000号「はい、それが第10000次実験の内容であり、絶対能力者進化実験の成功に必要不可欠なことなのです」

木原「クククッ……面白いねぇ…しかし10000回もテメェらをぶっ頃してるたぁあのガキもなかなかやるもんだな」



10000号「これまでの実験ではミサカたちはいとも簡単に一方通行にやられてしまってします」

10000号「一方通行に対抗する…その為にはミサカは絶対に木原神拳を習得する必要があるのです」

木原「ふん……だがはっきり言うがな、あれは俺だから使える戦闘術だ。テメェには無理だな」


10000号「そんな!ミサカには木原神拳が必要なのです。諦めるわけにはいきません、とミサカは木原老師の残酷な宣告にもめげずに答えます」

木原「誰が老師だよ……」

木原「あれを使うには一方通行の能力を完全に把握する必要がある」

木原「『完全に』 だ」



15: 2011/02/11(金) 19:35:56.93 ID:VdpUsTBA0


木原「一方通行の反射の範囲・向きをn単位で感じ取り、さらにはやつの動作・思考までを完璧に読みきる」

木原「そうすることで初めてあいつの能力を逆手にとりダメージを与えることができる」

木原「わかるか?木原神拳を使うにはあいつの感情、心の動き……そういうもんを『理解』しなきゃならねぇんだ」

木原「それができるのは一方通行の能力開発者であり、あいつと長期にわたって接し続けたこの俺だけだ」

木原「昨日今日生まれたばかりで知識としてしかやつを知らねぇテメェに……」

木原「被験者としてしかやつを見れねぇモルモットのテメェに……」

木原「テメェごときに使える安い拳じゃねぇんだよ!!!」


10000号「……」



16: 2011/02/11(金) 19:37:30.88 ID:VdpUsTBA0


10000号「……確かにミサカはいまだ一方通行をデータ上でしか知りません」

10000号「一方通行と関わりの深いあなたから見ればそんな私が木原神拳をマスターしようとするのは滑稽に見えるでしょう」

10000号「ですが!」

10000号「彼を見知らねども……ミサカと彼との繋がりは生半可なものではないのです」

10000号「ミサカは彼と戦う為、その為だけに生み出されました」

10000号「ミサカの全存在は彼を中心として構成されています」

10000号「このミサカだけではありません」

10000号「会わずに氏んだ9999体の妹達」

10000号「会えずにやはり氏にいく10000体の妹達」

10000号「彼女たちもまた一方通行の為に生まれそして氏ぬ」

10000号「妹達は一人で全員、全員で一人」

10000号「このミサカには一方通行との9999回の戦闘が刻まれています」

10000号「そしてこのミサカと一方通行との戦いが10000体の妹達に刻まれていくのです」

10000号「一方通行との20000の因果で繋がれたミサカのこの拳……決して安くはありません!」



17: 2011/02/11(金) 19:38:10.53 ID:VdpUsTBA0


木原「……」

木原「……そうかよ」

木原「いいぜ、テメェがそこまで言うなら…教えてやるよ木原神拳を」


10000号「本当ですか!?とミサカは興奮しながら詰め寄ります」

木原「ああ、だが条件がある……」

木原「木原神拳を使うからには苦戦だ何のなんて言うな!勝つ気で戦え」

10000号「えっ、ですがそれでは実験が……」



18: 2011/02/11(金) 19:39:05.33 ID:VdpUsTBA0


木原「あン?初めから『苦戦に追い込む』なんて目標じゃ瞬殺されるのがオチだ」

木原「容赦なく勝ちにいけ」

木原「それに……もし木原神拳に負けるようなら所詮あいつはそれまでってことだ。絶対能力者になんかなれる器じゃねぇってことよ」


10000号「……わかりました。容赦なく勝つ!とミサカは決意を新たにします」


木原「ああ、それでいい……」

木原「俺はこの後用事があるんで修業は明日からだ。今日のところは帰って研究所でやつのデータでも見直してろ」


10000号「了解しました。明日からよろしくお願いします老師、とミサカは礼儀正しく挨拶した後駆け足で研究所へと戻ります」


19: 2011/02/11(金) 19:39:45.26 ID:VdpUsTBA0

タッタッタッタ


木原「誰が老s…チッもう行っちまいやがった」

木原「あのアマめ………」

木原「…………20000の因果か……」



木原「口が悪いだけ…ただそれだけのあのヒョロっこい悪ガキがもう1万近くも頃したんだな」

木原「俺の手元を離れてから色々たらい回しにあってクソったれな実験ばかりさせられてんのは知ってるが……」

木原「……これからまだ1万以上も[ピーーー]のかあいつは」

木原「……」

木原「……ハッ!別にどうでもいいことだろうが」

木原「あいつが闇の泥沼で這い回ろうが沈み込もうが俺の知ったこっちゃねぇ」



木原「そう知ったこっちゃねぇんだ」

木原「知ったこっちゃねぇから……あいつが[ピーーー]はずのモルモットに殴り飛ばされて絶対能力者になるチャンスを逃してもかまやしねぇんだ」


20: 2011/02/11(金) 19:41:15.38 ID:VdpUsTBA0


==============================================



10000号「ただ今戻りました、とミサカは帰還を報告します」

天井「ん?ああ10000号か……どうだ、外で何か収穫はあったか?」

10000号「はい、予想以上のものがありました。ミサカは今日木原数多老師に弟子入りを認められたのです、とミサカは自分の成果を自慢げに報告します」

天井「なに、あの木原数多博士にか?どうやったか知らんが……でかしたぞ10000号」

10000号「ふっふっふっふ、ミサカは師匠を確保したことで一方通行に勝つ自信を高めています」

天井「……まぁ別に勝つ必要はないんだが」 (むしろ勝たれるとかなりまずいんだが)

天井「確かにそれぐらいの気構えで臨んだ方がいいだろう」

天井「勝つ気で行け10000号」

10000号「はい!とミサカは元気よく返事をします」

天井「お前の実験開始まであと10日前後だ」

天井「一分一秒を惜しんで修業しろよ10000号」

10000号「ガッテン承知です。ではミサカは個室へと向かわせていただきます」 タッタッタッタ



21: 2011/02/11(金) 19:42:00.37 ID:VdpUsTBA0

==============================================



カタカタカタカタ

10000号「ふぅ……一方通行のデータ調査はここら辺で終わりでいいでしょう」

10000号「これ以上知識を増やしても大して意味は無いと思われます」

10000号「明日からの木原老師との修業に備え、今日は早めに寝るとしましょうか」


ベッドイン


10000号「ミサカは栄えある妹達の10000体目、必ずや一方通行をぎゃふんと言わせてみせます……」

10000号「ぎゃふんと…………Zzz」



34: 2011/02/12(土) 18:00:16.96 ID:h8G1be7l0


10000号「陽光が差し込むわけでもない研究所の中ですがやはり朝と言うのはすがすがしいものです、とミサカは身支度を整えながら独り言を言います」

10000号「ではさっそく木原老師のもとに向かうとしますか」


テクテクテク


天井「む、10000号か」

10000号「おや、おはようございます博士」

天井「ちょうどよかった……今朝マイクロマニュピレータが届いたのだ、出かける前に装着していくといい」

10000号「ほうこれが……まるでグローブのようですね」

10000号「ですがなかなかしっくりきます、とミサカはこの装備が気に入ったことをほのめかします」

天井「ふむ、動作も正常なようだな……では修行に向かえ10000号」

10000号「はい、行ってきます!とミサカはグローブを装着した右手を振りつつ出発します」



35: 2011/02/12(土) 18:00:52.75 ID:h8G1be7l0


==============================================


ザッーー

10000号「しかし滝壷に呼び出しとは……実に修行らしくていいですね、とミサカはわくわく気分で老師の下に走ります」



木原「よぉ遅かったじゃねェか」

10000号「これは老師、お待たせしてしまい申し訳ありません、とミサカは師父への敬意をこめて謝罪します」

木原「…まぁ老師でも何でもいいが…お前が手につけてるのはマイクロマニュピレータか?調達できてたんだな」

10000号「はい、とミサカは新装備を見せびらかしながら返答します」

木原「俺の方で何とかしようとも思ってたんだが…まぁ好都合だな」

木原「一方通行に関してのデータは脳ミソにぶっ込んできたか?」

10000号「あァ、バッちりだぜェ…とミサカは口真似をしながら答えます」

木原「いいだろう、んじゃ早速修行に入るぜ」

10000号「はい、老師!」



36: 2011/02/12(土) 18:01:24.52 ID:h8G1be7l0


木原「木原神拳において最も重要なことは敵である一方通行を理解し、やつの行動を先読みすることだが……」

木原「それだけじゃあ木原神拳は使えねェ」

木原「木原神拳を使うにはやつの能力を逆手に取る為の圧倒的な格闘センス……」

木原「つまりこいつが必要だ!!」


シュッシュッ!! ピッ!


10000号「早い!!!」

木原「早いだけじゃねェ!いや!早さ以上に重要なものがある!」

木原「それは『精度』だ!」

10000号「『精度』……ですか?」



37: 2011/02/12(土) 18:03:24.82 ID:h8G1be7l0


木原「そうだ、俺は今この滝から落ちてきた2粒の水滴それぞれに一発ずつジャブを放った」

木原「そしてその内の片方は砕き、もう片方は触れるギリギリのところで拳を返して寸止めした」

木原「当たるか当らないかのn単位の境界……高速で不規則に落ちてくる水滴のそれを見極め拳を打ち込むッ!」



木原「当たり前のことだが一方通行の反射膜は岩みてぇに止まってるわけじゃねえ」

木原「あいつが動けばその分ウネウネ変わりやがるし、ちょいと演算をいじればすぐ不規則に変化しやがる」

木原「それに常に対応しつづけるための絶対的な拳の『精度』……お前はこれを身につける必要がある」



10000号「……」

木原「お前は今からひたすらこの滝を流れ落ちる水滴に拳を打ち込み続けろ」

木原「拳は2発セットだ。一発はギリギリで当て、もう一発はギリギリで止めろ」



10000号「し、しかし今のはハッキリ言って神業です……ミサカにはそもそも拳が水滴に当たったかどうかも視認できませんでした」



38: 2011/02/12(土) 18:04:09.73 ID:h8G1be7l0


木原「当たり前だ……俺の拳がまだ修行を始めてもいないヒヨコちゃんのテメェに捉えられるわけがねぇだろ」

木原「だが、数日中にこれぐらいはできてもらわねぇと困る」

10000号「す、数日中ですか?」



木原「テメェェには時間がねえ―ンだろうが?ここを突破できなきゃ木原神拳を使うなんざ夢のまた夢だぞ」

10000号「ううう……とミサカは明らさまに怖気づいた様子を醸し出します」

木原「……なんだなんだぁ、テメェは結局ただの糞モルモットなのかァ?」

木原「昨日俺に言った言葉は嘘っぱちだったのかよ?」



10000号「う、嘘ではありません!ミサカは一方通行を苦戦に……」

木原「苦戦じゃねぇ!『一方通行に勝つ』だ!昨日そう言っただろうが」

10000号「は、はひ、そうです勝ちます!とミサカはビビりながら答えます」



39: 2011/02/12(土) 18:04:45.77 ID:h8G1be7l0


木原「……」

木原「……もういい」

10000号「……え?」

木原「今日のところはもういい」



木原「テメェのふぬけた拳で砕かれたら滝の水が腐っちまう」

木原「今日は街をランニングだ……基礎体力をつけるのも必要なことだからな」

10000号「ですが……」

木原「さっさと行け!!!休まず走り続けろ!!!」

10000号「は、はい!」



40: 2011/02/12(土) 18:05:35.32 ID:h8G1be7l0


==============================================

タッタッタッタ

10000号「ううう、老師に怒られてしまいました」

10000号「確かに師に口答えしたのはミサカに非がありますが……」

10000号「それにしたってあんなに怒らなくても……」

10000号「だいたいあのようなムチャクチャな業を数日で何とかしろなんて不可能……合理的ではありません、とミサカは愚痴っぽく呟きます」




タッタッタッタ……

タッタッタッタ……


10000号「ふぅ、もう大分走りましたね……

10000号「ここら辺で少し休憩しましょうか、とミサカは博士からもらった小銭でそこの自販機からジュースを買う準備をします」

10000号「おや?あれは……」



ピッピ ガコン

一方「……たっくよォ、ここの自販機は相変わらずまっずい缶コーヒーしか置いてねェな」 ゴクゴクゴク



41: 2011/02/12(土) 18:06:25.48 ID:h8G1be7l0


10000号「これはこれは被験者一方通行ではありませんか?とミサカは初対面ながらフレンドリーに挨拶します」

一方「あン、なんだテメェは?今日の実験はもう終わりじゃなかったンですかァ?」

10000号「残念ながらミサカの実験はまだ先です、と一方通行がミサカに会ったのは単なる偶然であることを教えてあげます」



一方「……実験でもねェのにずいぶン気楽に外を歩いてるじゃねェか?お決まりの研修中ってやつか?」

10000号「いえ、ミサカは実験の成功の為に『修行中』なのです、とミサカは自信たっぷりの顔で答えます」

一方「修行だとォ?」



10000号「その通り!このミサカは妹達栄光の10000体目の10000号であり、第10000次実験においてあなたを追い詰めるミサカなのです!」

10000号「とミサカは自分が10000号であることを強調して自己紹介します」



一方「ああ……そういや天井のやつがンなこと言ってたなァ……俺を苦戦に追い込むだなンんだって」

一方「ヒャッハッハ、ンなこと本気でできるとおもってンのかよテメェは?」

一方「10000人だ……俺はもうテメェらを10000人もぶっ頃してるんだぜ……」

一方「今更テメェがどう小細工しようが俺にかなうわけがねェ―だろうが!」



42: 2011/02/12(土) 18:07:02.89 ID:h8G1be7l0


10000号「……確かにミサカ達は今まであなたに簡単にやられてきました」

10000号「しかし!このミサカは他の妹達と違いあなたに対する策を考える為の情報と時間が与えられています」

10000号「その情報には今まであなたに殺されてきた10000近い妹達の戦闘データの全ても含まれています」

10000号「ミサカはミサカの全力で持ってあなたに勝つ気で戦う、そのことをここに宣言します」



一方「………………俺に勝つだァ?」

一方「………それは…………」

一方「………それは『俺に勝って生き延びてェ』って意味か?」



10000号「?……最初に言ったはずですがミサカが修行しているのは第10000次実験の成功の為です」

10000号「あなたを苦戦に追い込む…その為にはぶン殴って負かしてやるくらいの心構えで挑んだ方がいい」

10000号「と老師や博士から言われているのでそのように決意表明しているのです、とミサカは親切に説明します」



43: 2011/02/12(土) 18:07:46.00 ID:h8G1be7l0


一方「……」

一方「……ハンッ!結局本気で勝つ気があるわけじゃねンだな」

一方「全部『実験の為』ってわけか、実に実験用のお人形らしい考えじゃねェか」

一方「……別に俺ァお前に付き合っていい勝負なンざしてやる義理はねェ」

一方「容赦なくブッ頃しちまうがかまわねェよなァ、それで?」



10000号「無論です。むしろ手加減などされたら計画に支障をきたす恐れがあります」

10000号「被験者一方通行には常に全力で実験に臨んでいただけなければ困る、とミサカは今更ながらあなたの実験への心構えに苦言を呈します」



一方「あァ、言われなくても分かってンよ……実験になったらテメェもいつも通りプチッと潰してやるから安心しろ」

10000号「はい、それではミサカは修行に戻らなくてはならないのでこれで失礼します」

一方「ああ……さっさと行っちまえよ……」

10000号「では」 タッタッタッタ

一方「……」



44: 2011/02/12(土) 18:08:46.18 ID:h8G1be7l0


タッタッタッタ

10000号「やれやれ……一方通行とは本当にデータ通り口の悪い男ですね」

10000号「礼儀正しいミサカとはひどい違いです、とミサカは自画自賛しつつ一方通行の悪口を言います」



10000号「……それにしても『本気で勝つ気があるわけじゃない』……ですか」

10000号「そう言えば木原老師もやけにその事にこだわっていた気がします」

10000号「ミサカは第10000次実験において一方通行を追い詰めねばならない……」

10000号「勝つ気で戦うというのはその為の心構えであり、一種の方便です」



10000号「そうです……実際には勝つ必要はない……万一勝ったら実験は破綻してしてまいます……」

10000号「……だいたい勝てるはずがないのです……樹形図の設計者の演算結果からもその事実は確実です」

10000号「…………」

10000号「……勝てないし……勝ってはいけないのですミサカは……」



45: 2011/02/12(土) 18:09:44.16 ID:h8G1be7l0


==============================================


タッタッタッタ

10000号「はぁ、はぁはぁ……もう限界です……」 ドサッ

10000号「修行というのは本当に疲れるものなのですね……」



木原「ん、テメェは……」

木原「おいおい何そんなとこでグッタリサボっちゃってるんですかァ?」



10000号「ろ、老師!何故ここに!?」

木原「別に……ちょっと仕事があったから研究所の方に顔出した後ぶらついてただけだ」

木原「で?何サボってんだテメェは」



10000号「ミ、ミサカがサボっているとは心外です」

10000号「ミサカは限界まで走りました、よって今は若干の休憩をしているにすぎません、とミサカは抗議します」


木原「俺がいつ休み休み走れって言ったよ?」

木原「俺は『休まず走り続けろ』って命令したはずだぜ」



10000号「休憩なしで走り続けるなど非合理にもほどがあります」

10000号「練習の中適度に休憩をはさむことで効率的に筋肉が形成され、身体能力が向上されるのです」

10000号「研究者である木原老師がその程度のことを知らないはずが……   



46: 2011/02/12(土) 18:10:32.55 ID:h8G1be7l0



木原「黙れ!!!!」


10000号( ビクッ!!??  )



木原「合理的だァ!?効率的だとォ!?」

木原「テメェが極めようとしてるのは『木原神拳』!神の拳だぞ!!!!」

木原「テメェのちっぽけな脳みそで考え付くような合理的な特訓法でその領域に到達できるとでも思ってんのか!!!!!」



10000号「うぐっ……し、しかし」

木原「いいから走り続けろ!ぶっ倒れるまでな」

木原「もし……途中で休みやがったら……俺はこの件から降りる、テメェの修行にはもうつきあわねェ」

10000号「そ、そんな!」



木原「ふぬけをどんなに鍛えても一方通行に一撃入れることすら不可能だからな」

木原「……ふぬけのまま惨めに殺されろ」

10000号「……」

木原「分かったら走れ、止まるんじゃねェぞ」

10000号「……了解しました」



47: 2011/02/12(土) 18:11:44.52 ID:h8G1be7l0


==============================================

タッタッタッタ……

10000号「ぐ、がっ、はぁはぁ、うぅ……」 ドサッ

木原「……ふん、ぶっ倒れやがったか」

木原「まぁいい、初日にしては上出来だ……『ふぬけの割には』だがな」




10000号「…………はァはァ……」

木原「……」

木原「……」


木原「おら!いつまで寝てやがる!さっさと起きろ!」 (ガスッ!

10000号「グウゥ!?」



木原「とっとと研究所に戻って休むんだな。明日も今日と同じくぶっ倒れるまで走らせてやる」

10000号「はァはァはァ……りょ、了解ですとミサカは……」


木原「ふん……じゃあなふぬけちゃん、また明日会おうぜ」

10000号「はァはァはァ……は、はい、また明日……ァはァはァ……」



48: 2011/02/12(土) 18:13:12.30 ID:h8G1be7l0


==============================================


10000号「や、やっと研究所の個室です……ひどい目に会いました、とミサカは修業の辛さを感じながらベッドに倒れこみます」

10000号「……木原老師の修行法は正しいのでしょうか?」

10000号「このオーバーワークに意味があるのかミサカは懐疑的です」



10000号「それに……今日は何度も何度もふぬけと言われました」

10000号「まったくもって失礼な話です!ミサカの根性はサムワン海王なみです!とミサカは憤慨します」

10000号「木原老師はミサカに対するふぬけ発言を撤回すべきです!」



49: 2011/02/12(土) 18:13:56.03 ID:h8G1be7l0





10000号「……」

10000号「……」

10000号「……ミサカは本当にふぬけなのでしょうか……?」

10000号「本気で一方通行に勝つ気のないミサカは……」

10000号「一方通行に『勝ってはいけない』と思っている……そして『勝てるわけがない』と思っているミサカは……」



10000号「……」

10000号「今日はもう寝ましょう……」

10000号「ミサカはふぬけなんかじゃないはずです……」

10000号「栄光の10000号であるミサカはふぬけなんかじゃ……Zzz」





50: 2011/02/12(土) 18:14:47.58 ID:h8G1be7l0



==============================================



10000号「さわやかな朝……という感じではないですね、とミサカは前身の筋肉痛に苦しみながら身支度を整えます」

10000号「筋肉痛は年をとると2日目3日目にくるそうですが、フレッシュなミサカはやはり翌日即きたようですね」

10000号「この筋肉痛の中……今日も走り続けねばならないのですね」

10000号「ミサカは正直だるくてこのままベッドに逃げ込みたい気持ちです……」



10000号「……」

10000号「……しかしそういうわけにはいきません」

10000号「ミサカは特別な目的を背負った10000号……修行から逃げてふぬけ呼ばわりされるわけにはいきません」

10000号「というわけでミサカは今日も元気に研究所から飛び出します」

タッタッタッタ




51: 2011/02/12(土) 18:16:08.35 ID:h8G1be7l0



10000号「おはようございます、老師!」

木原「ああ……早かったな」

10000号「今日も走りこみでしたね?変更がなければこのまますぐ始めたいと思いますが」


木原「あーー?なんだふぬけちゃんはまた合理的がどうとか効率的がどうしたとか泣き言いわねェのか?」

10000号「あれは泣き言ではなく正当な反論です!」

10000号「……ですがミサカは木原老師を師父として仰ぎました」

10000号「ミサカはふぬけではないので師父の修行法に従います」


木原「そうか……」

木原「ならさっさと走ってきな、今日もぶっ倒れるまでだぞ……」

10000号「はい、老師!とミサカは早速走り出しながら答えます」


木原「ふん……」




52: 2011/02/12(土) 18:16:47.31 ID:h8G1be7l0


==============================================



タッタッタッタ

タッタッタッタ

タッタッタッタ



10000号「ぐっ、はァはァ……もう、もう限界です……」

10000号「これ以上続けるのは……はァ、うぐ」

10000号「脱水症状に加え……ぐっ、筋肉や骨に過剰な疲労が蓄積される結果となりミサカの身体にとって……はァはァはァ…非常に有害ですハァハァ」



タッタッタッタ

タッタッタッタ

タッタッタッタ



53: 2011/02/12(土) 18:17:34.82 ID:h8G1be7l0


タッタッタッタ

10000号「で、でも続けないと……ミサカは、ふぬけではないのですから……」

タッタッタッタ

10000号「ミサカは目的の為に……はァはァ……が、頑張れるのです……」

タッタッタッタ

10000号「そう目的の……」

タッタッタッタ

10000号「目的の為に……」

タッタッタッタ



54: 2011/02/12(土) 18:18:10.05 ID:h8G1be7l0




タッタッタッタ

タッタッタッタ

ハァハァ

10000号(…………………………………)

10000号(目的って…………………………)

10000号(目的ってそもそも何でしたっけ…………………?)

ハァハァ

タッタッタッタ

タッタッタッタ




55: 2011/02/12(土) 18:18:44.67 ID:h8G1be7l0







とめどない汗で体はびしょびしょ 口中は唾液でいっぱいです



呼吸が続かない 足がガクガクふるえる 胸が潰れそうになるほど痛いです



頭はクラクラしてまともに働きません 脇腹の痛みで今すぐ吐き出しそうな感覚に襲われます



一歩踏み出すごとにで脳から『もう駄目だ』『もう走るな』『もう倒れろ』



そういう信号が送られてくるのをミサカは感じます







56: 2011/02/12(土) 18:19:26.62 ID:h8G1be7l0





何故ここまで苦しい思いをして修行しているんでしょうか?


目的とは…………ミサカの目的とは………………………………


……………………実験の成功?つまり一方通行に殺されること?


そんなことの為にこんなにつらい思いをしているのですかミサカは?






57: 2011/02/12(土) 18:20:03.46 ID:h8G1be7l0










殺される……負ける……










58: 2011/02/12(土) 18:20:42.46 ID:h8G1be7l0






負ける為に修行をしているのですかミサカは?



負ける為に戦いに行くのですかミサカは?



負ける為に……生まれてきたのですかミサカは?







59: 2011/02/12(土) 18:21:18.26 ID:h8G1be7l0





タッタッタッタ


10000号「ち、違います……ハァウグッ……ハァハァ」

10000号「ミサカが修行しているのは……木原神拳を習得するため……グッカッハァ」

10000号「木原神拳を習得して……一方通行に……ハァハァ」

10000号「一方通行に……………」クラッ



10000号「……一方通行に勝つためです……」 ドッ

木原「……そうだ……その通りだ」 ガシッ






60: 2011/02/12(土) 18:22:08.19 ID:h8G1be7l0


10000号「ろ、老師………ハァハァ」

木原「……木原神拳は勝つ為の拳だ」

木原「負けることしか考えられねェやつの使うものじゃねぇ……」



木原「師父としてハッキリ言うぜ……」

木原「お前は……その拳で勝つために生まれてきたんだ」

10000号「………ハァハァ」



木原「勝て……!勝っていい……!」

木原「そして証明して見せろ……テメェがふぬけのモルモットじゃないってことを!」



10000号「……ハァハァ」

10000号「……はい……勝ちます……」

10000号「ミサカは……ハァハァ……ふぬけなんかじゃありませんから……」ガクッ


木原「……」



61: 2011/02/12(土) 18:22:56.17 ID:h8G1be7l0


==============================================

パチッ

10000号「ここは……ミサカの個室ですか……」



天井「む……起きたようだな10000号」

10000号「博士……ミサカはなぜここに?」

天井「全く……どんな修行をしてるか知らんがやりすぎだな」

天井「オーバーワークは体を痛めるだけでなんの意味もない……」



10000号「はぁ……ところでミサカはなぜここに?」

10000号「ミサカが倒れた場所は公園だったと記憶していますが」

天井「運ばれてきたのだよ、木原数多博士にな」



10000号「老師に……ですか?」

天井「ああ……そして伝言を預かった」

天井「『今日は十分に修業した、だからもう休め』」

天井「『走りこみは今日で終わりだ……明日は滝壺にこい』とのことだ」



62: 2011/02/12(土) 18:23:41.05 ID:h8G1be7l0


10000号「……そうですか」

天井「……」

天井「……ふっ、その様子だと修行は順調のようだな」



10000号「はい…順調です」

10000号「ミサカは……」

10000号「ミサカは木原神拳を習得し……」

10000号「一方通行に勝ちます!」


天井「 ? ああ、それくらいの心構えでな、心構えで」

天井「木原数多博士の指示でもあるが……今日はもう休め」

10000号「はい、ミサカは再度休息に入ることとします」


天井「ああ…じゃあな」 
テクテクテク 

バタン




63: 2011/02/12(土) 18:24:36.76 ID:h8G1be7l0



10000号「……」


10000号「……ミサカは……堂々の妹達10000体目であるミサカは……」


10000号「……ミサカは…一方通行に勝ちます……」


10000号「……木原神拳で……一方通行に……」


10000号「……………………………………」


10000号「……………………勝ちたい……Zzz」




78: 2011/02/13(日) 18:51:00.70 ID:cOL0MZew0


==============================================



10000号「さぁ修行を開始しましょう老師!」

木原「けっ……なんだぁ?ずいぶんとやる気見てぇじゃねえか?」

10000号「当然です、とやる気の塊のミサカは自分が常に全力投球で修行に臨んでいることを伝えます」



木原「クックック……まぁいい、実際時間がねぇからな」

木原「どっかのふぬけの気合を入れなおす為に2日も無駄にしちまったしよ」



10000号「ミ、ミサカは一度もふぬけたことなど……」

木原「おら、無駄話は終わりだ。さっさと始めるぜ」

10000号「……はい、とミサカは素直に頷きます」



79: 2011/02/13(日) 18:52:23.48 ID:cOL0MZew0



木原「やることは初日に説明したとおりだ」

木原「この滝を高速で流れ落ちる水滴にひたすら拳を打ち込め」

木原「拳は2発セットで一発はギリギリで当て、もう一発はギリギリで止めろ」



木原「もう不合理だなんだなんて言うわせねェぞ、お前は木原神拳を習得し一方通行に勝つと誓ったんだ」

木原「この程度の不可能……超越してもらわなきゃ話にならねぇ」



10000号「無論です、とミサカは不可能を可能にする狙撃者のように背中を見せずに答えます」




80: 2011/02/13(日) 18:53:02.34 ID:cOL0MZew0



木原「時間が惜しい、さっさと始めろ」


10000号「はい、とミサカは早速打ち込みながら返事をします」 シュッシュッ!

木原「遅え!そんな速度のパンチじゃ反射に触れる以前に一方通行にかわされるだけだ!」

木原「もっと早く!鋭く!拳を最短距離で目標に突っ込ませろ!」


10000号「はい、老師!」 シュッシュッ!!




81: 2011/02/13(日) 18:53:32.70 ID:cOL0MZew0




木原「テメェには電磁能力がある、拳を電磁波で包みこめ」

木原「拳を覆う電磁波から伝わる情報……」

木原「それをテメェの体全体を覆う“気”の感覚とリンクさせるんだ」

木原「自分の拳の力が及んでいる範囲を明確に意識しろ!」


1000号「はい!」 シュッシュッ!!





82: 2011/02/13(日) 18:54:03.11 ID:cOL0MZew0




木原「常に相手を……一方通行を眼前にイメージし続けろよ」

木原「やつの反射膜は水のように自在に形を変える……」

木原「水の流れ、水滴の落ちる動き……眼で追ってちゃn単位の次元での精度は生み出せねぇ」

木原「予測しろ!感じ取れ!水の……一方通行の力の流れを!」


10000号「はい、老師!」 シュッシュッ!!





83: 2011/02/13(日) 18:54:34.50 ID:cOL0MZew0


==============================================


10000号「はァ……はァ……グゥ……」シュッシュッ!! シュッシュッ!! シュッシュッ!!

木原「よーしもういいだろ、休め」

10000号「は、はい、ミサカは休憩に入ります」




木原「やっぱりテメェはなかなか筋がいい……元が軍用なだけはあるな」

木原「初日でこれなら……実験当日までに拳撃はなんとかなるかもしれねぇ」

10000号「本当ですか!?とミサカは自身の天才性を再確認します ふっふっふっふっふ……」




木原「うぬぼれてんじゃねぇよ!」 ボコッ!

10000号「いたいッ!?」

木原「本当は蹴りや鉄パイプを使っても反射を破れるように訓練したかったんだぜこっちは?」

10000号「ううう……け、蹴りはまだしも鉄パイプであの精度を再現するのはさすがに無理が……」

木原「俺はできるんだよ!」

木原「……木原神拳は底なしに奥が深ぇんだ……ちょっと褒めたくらいで舞い上がるんじゃねえ」

10000号「グぅ……すみません老師……」



84: 2011/02/13(日) 18:55:24.02 ID:cOL0MZew0


木原「まぁいい……さっきも言ったが格闘テクの方はこれから実験開始まで修行し続ければ十分ものになる」

木原「残る問題は、てめぇが一方通行の反射を完全に把握することができるかどうかだ」


10000号「ご心配なさらずとも大丈夫です老師」

10000号「ミサカは一方通行のデータをテスタメントにより脳にインプットするとともに」

10000号「博士から与えられたアクセス権を使い今日までの間に一方通行について膨大な情報を得ています」

10000号「彼が戦闘時どのような判断をし、どのように行動するかを予測することは十分に可能である、とミサカは断言します」



木原「……」

木原「……バカが」

10000号「……え?」



85: 2011/02/13(日) 18:56:06.47 ID:cOL0MZew0


木原「初めに言ったよな『知識としてしかやつを知らねぇテメェに木原神拳は使えねェ』って」

10000号「それは確かに聞きましたが……ミサカの知識は単なる机上のものではありません!」

10000号「今まで実際に他の妹達が一方通行と戦ってきた1万近くの戦場の感覚……それがミサカには刻まれています」

10000号「これは一方通行に対抗するのに有効である、とミサカは判断します」




木原「……………だったら……」

木原「…………だったらその1万近い妹達の中に……」

木原「一人でもあのガキを……一方通行を『理解』できたやつはいんのか?」

10000号「 ? 」



86: 2011/02/13(日) 18:56:35.78 ID:cOL0MZew0


木原「……今日のところは終わりだ。また明日ここに来い」

木原「『一方通行を理解しなきゃ木原神拳は使えねぇ』」

木原「この言葉の意味……もう一度考えてみるんだな……」


10000号「 ? 」

10000号「はい、わかりました……とミサカはよくわかっていないのに返事をします」



87: 2011/02/13(日) 18:57:25.19 ID:cOL0MZew0


==============================================


テクテクテク

10000号「……なんなのでしょう、老師のあの含みのある言い方は」

10000号「『一方通行を理解しなければ木原神拳は使えない』」

10000号「ミサカは十分に一方通行の能力・人格について理解しているはずです……」

10000号「……いったい老師は何が言いたいのでしょうか……」


アレトキワダイジャン カナリカワイクネ?
オーイ、ソコノージョウチャン


10000号「……」 テクテクテク


オイチョットォー


10000号「……」 テクテクテク

スキルアウトA「おいおい、さっきから何シカトこいてんだよ?」

スキルアウトB「常盤台のお嬢様だからってさー他人様を平気で無視するのはいただけないよねぇ」



88: 2011/02/13(日) 18:58:02.39 ID:cOL0MZew0


10000号「……?これは申し訳ありません。考え事をしていたもので全く気づきませんでした」

スキルアウトA「かっー!気付かなかっただってよう」

スキルアウトB「こりゃマジショックだわー俺らなんて意識に入れる価値もないってことかー」



10000号(これは俗に言う『からまれた』という状況でしょうか……)

スキルアウトA「申し訳ないって思ってんだたらさぁ、ちょっと俺らにつきあってくんない?」

スキルアウトB「まぁそんなに無茶なことしないからよ……すこーし遊ばしてもらうだけで」 ガシッ



10000号(……ミサカの格闘術を炸裂させるときですね……)

10000号(よりにもよって功夫マスターであるこのミサカにちょっかいを出すとは愚かなチンピラです)



89: 2011/02/13(日) 18:58:48.28 ID:cOL0MZew0


スキルアウトB「異論なしだよね?じゃあ行こっか早く」



??「おいおいおーイ、人の人形相手に何見苦しいことしてンですかァ?」

スキルアウトB「?」

スキルアウトA「あん?」

10000号「!?」


一方「……さっき実験で愉快に潰してきたばかりの顔をまた見るたァ……まったく、ノイローゼになったらどうすンだおイ?」

スキルアウトA「はっ?なんだお前」

スキルアウトB「割り込んできてんじゃねえよクソガキ」



90: 2011/02/13(日) 18:59:28.17 ID:cOL0MZew0


一方「うざったいンでェ―……とりあえずぶっとンでくれませンかゴミ屑さンどもよォォォーーー!!」


バキッ!ドカッ!ゴキッ!ベキャ!

スキルアウトA「ぐへっ!!??」
スキルアウトB「ごふぁ!!」




10000号「……」


一方「さて……」



91: 2011/02/13(日) 19:00:33.41 ID:cOL0MZew0


一方「テメェはなンなンですかァ?もう今日の実験の予定は無いはずですけどォ?」



10000号「前にも似たようなことを尋ねられましたが……」

10000号「聞かれたならば再び答えましょう!」

10000号「このミサカは輝かしき10000体目のミサカ……すなわちミサカ10000号!貴様を倒すものだと!」



一方「あン?……あー、一昨日の奴か」

一方「……ハッ!なンだァ?まだ修行とか行ってこの辺をウロチョロしてんのかァ?」

一方「無駄だってェのによォ……テメェじゃ俺にかすり傷一つつけられるはずがねェ」



92: 2011/02/13(日) 19:01:05.58 ID:cOL0MZew0


10000号「ずいぶんと余裕のようですが……」

10000号「その油断はあなたの命取りになる、とミサカは宣言します」

10000号「ミサカは第10000次実験で一方通行に……『勝つ』のですからッ!」



一方「はぁ?」

一方「俺に勝つだァー?」

一方「またこの前の『心構え』ってやつかよ……うゼェだけで意味ねェっつうのに」



10000号「心構えではありません」

10000号「ミサカは本気で……本気で一方通行に勝つ気なのです!とミサカは一方通行に発言の訂正を求めます」


一方「………………………あ?」



93: 2011/02/13(日) 19:02:04.93 ID:cOL0MZew0


一方「……」

一方「……クッ、クカコカヒャハハハハハハァッ!!!!!」

一方「いいねェいいねェ!ずいぶンとハッピーな台詞コクじゃねェか……」


一方「…………身の程もわきまえてねェ人形がァァァ!!!」

一方「学園都市最強のこの一方通行に『勝つ』だァ!?」



一方「なにトチ狂ってンのか知らねぇけどよォ」

一方「テメェごときが1万体いようが2万体いようが……」

一方「この俺を止めることなンてできねぇンだよ!!!!!!!」




10000号「……」



94: 2011/02/13(日) 19:02:39.93 ID:cOL0MZew0


10000号「……ミサカも……」

10000号「……ミサカも昨日まではあなたに勝つなんて不可能だ、と結論付けていました」

10000号「ミサカは勝てないし……勝ってはいけない……ただ負ける為だけに生まれた存在だと……」



一方「……けっ、その通りじゃねェか!」

一方「テメェは俺に勝てねェし……実験の為ならおとなしくブチ殺されンだろォが」

10000号「……違います、いや違うとわかりました、とミサカは強い口調で言い放ちます」

一方「はぁ?」



95: 2011/02/13(日) 19:03:25.60 ID:cOL0MZew0


10000号「負ける為に生きている者などいません」

10000号「……みな勝つ為に生まれ、そして生きているのです」

10000号「勝つために努力しているのです」

一方「……」



10000号「……ミサカも今、勝つために修行しています」

10000号「全力で、精一杯頑張っているつもりです」

10000号「あなたに勝つために鍛えているミサカのこの拳……侮らないことですね一方通行!とミサカは忠告します」



96: 2011/02/13(日) 19:04:06.70 ID:cOL0MZew0


一方「……………………ふン」

一方「だったら精々頑張ンだなァ」

一方「言っとくが、テメェが本気でこの俺に勝ちてェっつうンなら……俺も容赦しねェ」

一方「学園都市最強として……全力でたたきつぶすだけだ……」



10000号「ミサカは初めから手加減してもらいたいなど思っていません」

10000号「ボッこボッこにしてやるので覚悟してください、とミサカは挑発します」



一方「そうかよ……」  


スタスタスタ……





10000号「……行ってしまいましたね」

10000号「……またチンピラにからまれるのも面倒なのでミサカも速やかに帰還することとします」

タッタッタッタ……



97: 2011/02/13(日) 19:05:04.90 ID:cOL0MZew0


==============================================




10000号「これといったこともなく無事帰りつきました、と言いながらミサカはベッドにダイブします」 ドサッ

10000号「今日も今日とて修行でクタクタですし特にすることもないのでミサカはさっさと寝ることにします」





10000号「……それにしても……」

10000号「老師から言われた言葉……結局意味がわからないままでした」

10000号「一方通行を『理解』する……」

10000号「ミサカは既に膨大なデータとして一方通行を十分に知っています……何故それで『理解』したことにならないのでしょう?」






98: 2011/02/13(日) 19:05:59.20 ID:cOL0MZew0





10000号「……わかりません」

10000号「……わかりませんが……今日見た一方通行は……」

10000号「……名誉ある10000号のミサカがデータで知る彼よりも…………」

10000号「………………」

10000号「……どこか…………」

10000号「寂しげに……見えました……………Zzz」





123: 2011/02/14(月) 17:33:56.02 ID:+TSgRMMj0

==============================================



    ――――― 5日後 ―――――――




10000号「ハッ!せイッ!」 シュッシュッ!!

木原「……」

木原「……よし、終わりだ。休め」

10000号「は、はい、老師!」 ハァハァ



木原「当初の想定よりだいぶ順調に上達したみてぇだな」

10000号「本当ですか!?とミサカは喜びを隠しきれずに尋ねます」

木原「ああ、本当だ」

木原「この拳の『精度』と『速度』なら木原神拳を使うのに申し分ねぇ」

10000号「ふっふっふっふ、ミサカは勝利の日が近づいてきたことを感じ顔が緩むのをとめられません」 ニヤニヤ



木原「悠長ににやけてる場合かこのアホウがッ!!」 ボコッ!

10000号「いたァ!」



124: 2011/02/14(月) 17:34:49.88 ID:+TSgRMMj0


木原「テメェにはまだ木原神拳は使えねえよ」

木原「テメェは一方通行をいまだに『理解』できてねぇようだからな……」




10000号「……うぅ」ヒリヒリ

10000号「……ですがミサカには彼を『理解』するというのがどういうことなのかがわかりません」

10000号「どうすれば彼を『理解』できるのですか?とミサカはストレートに老師に聞いてみます」




木原「……俺が話しても仕方がねぇ」

木原「俺があいつをどう『理解』してるかを語ったところで、それはお前にとってただの知識にしかならねぇからな」

木原「お前自身があいつから実際に何を感じるか」

木原「あいつのクソったれな人生の中に何を見るか」

木原「必要なのはそういうことだ……」


10000号「……」



125: 2011/02/14(月) 17:35:45.86 ID:+TSgRMMj0


木原「修行は今日で終わりだ……技能的なことで教えるもんはもうねぇ」

木原「テメェの実験が始まるまであと2、3日」

木原「場合によっちゃ明日なのかもしれねぇが……」

木原「残された時間、体を休めながら一方通行のことでも考えてすごしてみろ」

木原「学園都市最強だ、超能力者の化けものだ、っていう上っ面を剥いだ」

木原「ただのヒョロっちい一人ぼっちのクソガキのことをよ……」



10000号「……はい」





10000号「今日までお世話になりました老師」

10000号「もうお会いすることは無いかもしれませんが……」

10000号「老師から授かったこの拳……無駄にはしません」




木原「バカ野郎が……免許皆伝ってわけでもねえのに一丁前に卒業気どりなこと言いやがって」

木原「テメェはまだ半人前にも満たねェヒヨっこなんだからな」

木原「だから……お前が一方通行との戦いで氏に損なったらまた修行の続きをしてやる……」



10000号「………………はい、老師!」



126: 2011/02/14(月) 17:36:56.12 ID:+TSgRMMj0

==============================================







テクテクテク

10000号「……」



天井「む、研究所に戻っていたのか10000号?今日はいつもより早いのだな」

10000号「はい、ミサカの修行は先ほど全課程を終了しましたので……とミサカは報告します」

天井「ほう、修行は終了か」

天井「で、どうだ?木原神拳はマスターできたのか?」



10000号「……いえ」

10000号「いまだミサカの木原神拳は完成に至っていません、とミサカは正直に告白します」



127: 2011/02/14(月) 17:37:42.00 ID:+TSgRMMj0


天井「ぐぐぐっ…そうか……」

天井「だが第10000次実験は2日後と既に決定しているのだ」

天井「それまでに貴様が木原神拳を習得できなければ……実験の成否に大きく影響する」

天井「わかっているんだろうな?」



10000号「……はいわかっています、とミサカは素直に返事をします」



天井「………」

天井「……わかっているのならあと2日でなんとか使いこなせるよう努力するのだぞ!」


スタスタスタ



128: 2011/02/14(月) 17:38:22.38 ID:+TSgRMMj0


10000号「……」

10000号「あと2日……ですか」




10000号「言われずともミサカは木原神拳を習得するために残された日々を精一杯すごします……」

10000号「実験の為ではなく……ミサカの為に」

10000号「ミサカが……一方通行に勝つ為に」



129: 2011/02/14(月) 17:39:10.43 ID:+TSgRMMj0

==============================================


10000号「ドサッ っとミサカは個室のベッドに倒れこみます」

10000号「物思いにふける時はベッドの上でゴロゴロするのがミサカのスタイルなのだとミサカは気づいてきました」



10000号「しかし……どうしたものでしょうか……」

10000号「一方通行を『理解』する……」

10000号「彼というありのままの存在に、彼の今までの人生に思いを馳せる……」

10000号「………………………」



10000号「……やはりミサカには無理なのでしょうか、とミサカは弱音を吐きます」

10000号「ミサカは所詮ほんの8日前人工的に生み出された存在……」

10000号「そんなミサカが他人の存在、他人の人生について考えるなど……」



10000号「………………………」

10000号「………それに………ミサカが実際に彼と会ったのはたった2回だけ……」



130: 2011/02/14(月) 17:40:14.14 ID:+TSgRMMj0


10000号(彼は……初めてあった時彼は私に聞きましたね……)

10000号(『自分に勝って生き延びたいのか』と)

10000号(否定したらひどく失望したような顔をして私を人形と呼びました……)

10000号(…………)





10000号(ただの罵倒や脅しともとれる言葉ですが……)

10000号(彼は他の妹達にも色々と話しかけていたようですね……何度も何度も)

10000号(あれには……何か意味があるのでしょうか……)





131: 2011/02/14(月) 17:41:37.29 ID:+TSgRMMj0


10000号(二度目にあった時……彼はミサカを助けてくれました)

10000号(もっともミレニアムの上をいく10000の番号をもつこのミサカなら一人でも余裕で撃退できましたけどねフフン)




10000号(…………)

10000号(あの時の彼はなんだかとっても寂しげで……弱弱しく見えました)

10000号(学園都市最強の彼が弱弱しいとは……我ながらバカな感想ですね)




10000号(…………………最強の存在)

10000号(皆から恐れられ、憎まれ、敵視される……)

10000号(……………孤独な存在………………Zzz)



132: 2011/02/14(月) 17:42:19.65 ID:+TSgRMMj0

==============================================



10000号「ハッ!?うっかり眠ってしまいました!!もう翌朝……いや昼になってしまっています!!」 ガバッ

10000号「貴重な時間を失ってしまいました、とミサカは一夜漬けに失敗した学生のようにうろたえます」

10000号「とりあえず身支度を整え修行に……と思いましたが修行は昨日で終わっていたことをミサカは思い出します」




10000号「えーとえーと……ではなにを……」

10000号「…………」

10000号「何もすることが思いつきません……」




10000号「思えば生まれてから修行尽くしの日々でそれ以外の行動をとったことがミサカにはありませんでした……」

10000号「することがないというのはなんとも落ち着きませんね、とミサカはワーカーホリックのような言葉を口にします」

10000号「……とりあえず研究所の中でもぶらついてみますか……」



133: 2011/02/14(月) 17:43:31.22 ID:+TSgRMMj0


ブラブラブラ


10000号「……む?」







一方「あ、テメェは……ひょっとして10000号かァ?」

10000号「その通りです、よくミサカが妹達に冠たる10000号だと見抜きましたね」

10000号「やはり10000体目であるミサカは発するオーラが他と違うのでしょうか、とミサカは自分の存在感の強さを再確認します」



一方「なにアホなこと口走ってンだよテメェは……」

一方「そのグローブだグローブ、他の奴らはつけてねェだろ?」

10000号「ああ、これですか。確かにこれはこのミサカ専用装備ですね」



10000号「まぁ、このあまりのカッコよさに一方通行が目を奪われてしまうのは無理ありません」

10000号「羨ましいでしょうがこれはミサカのなのであげることはできないのです、とミサカはグローブを見せびらかします」

一方「チッ、誰が羨ましがるッてンだ……」



134: 2011/02/14(月) 17:44:45.34 ID:+TSgRMMj0


10000号「それで……一方通行は研究所で何をしているのですか?」

一方「別に……たいしたことじゃねェよ、芳川に用だったンだがもう終わったしな」

一方「テメェの実験はそこそこ重要みてェでよォ……」

一方「明日に備え俺は今日オフってことになってンだ」

一方「つまり明日は体力満タンでテメェをぶち殺せるって訳だがなァ!」




10000号「今の発言から察するに……一方通行は今日は暇なのですね?とミサカは確認をとります」

一方「あン?まぁそうなるな」

10000号「では今日一日ミサカに付き合ってくれませんか?とミサカはお願いします」




一方「………………………はァ?」

10000号「俗に言うデートです、と純真なミサカはちょっぴり恥ずかしがりながら言います」



135: 2011/02/14(月) 17:45:35.71 ID:+TSgRMMj0


一方「……頭イカれちゃったンですかァ?」

一方「俺とテメェは明日頃し合いをする敵同士なんだぞ」

一方「そのテメェになんでこの俺が付き合わなきゃならねェンだよ?」




10000号「確かにミサカと一方通行は宿命の敵同士です」

10000号「しかし!敵を知り己を知れば百戦危うからずという言葉もあります」

10000号「ですから、敵であるからこそミサカは一方通行について『理解』せねばならないのです」

10000号「その為にはデートするのが一番なのです、とミサカは3段論法で答えます」




一方「俺を『理解』するだと……」

一方「ンなこと……テメェにできるわけがねェだろうが……」



136: 2011/02/14(月) 17:47:41.86 ID:+TSgRMMj0


10000号「……できないと困るのです」

一方「ン…?」

10000号「ミサカが勝つためには……一方通行を『理解』せねばならないのです……だから……」

10000号「…………それに」

10000号(………それに………)

10000号(…………………それに、ミサカは知りたいのです。一方通行のあの寂しげな姿のわけを)


一方「…………」

一方「ハッ…いいぜ、少しばかり付き合ってやるよ」

10000号「本当ですか!?」



137: 2011/02/14(月) 17:48:45.85 ID:+TSgRMMj0


一方「テメェみてェな三下には塩の一粒も送ってやらねェと俺がつまらねェからな」

一方「もっともちょっと付き合ってやったぐれェでお前が俺に勝てるとも……」

一方「………………………まして俺を『理解』できるとも思っちゃいねェがな」



10000号「ありがとお!とミサカは自分が一方通行のストライクゾーンに直撃であることを自覚しつつかわいらしく謝意を示します」

一方「誰が誰のストライクゾーンに直撃だってンですかァァァァァァァァ!?バカ言ってるとおいてくぞコラァ!」


スタスタスタ




10000号「あ、待ってください、とミサカは小走りで一方通行を追いかけます」

タッタッタッタ



138: 2011/02/14(月) 17:50:01.64 ID:+TSgRMMj0

==============================================


……テクテクテクテク


10000号「どこに向かっているのですか?とミサカは質問します」

一方「とりあえず……飯だな、俺ァ朝飯も食ってねェからよ」

10000号「ほうほう奇遇ですね、とミサカは自分も朝食を抜いていることを報告します」



10000号「では早速一方通行のおごりで最高級レストランに……」

一方「そこのファミレスで十分だバカたれ、ほら入ンぞ」

10000号「むぅ……仕方ありませんね、とミサカは一方通行の甲斐性のなさにあきれます」


バタン 

イラッシャイマセー



139: 2011/02/14(月) 17:50:49.54 ID:+TSgRMMj0


10000号「……ふーむ、なんともリーズナブルなお値段のメニューばかりですね」

10000号「高貴な10000号であるミサカは10000円に遠く及ばないお得な料理がミサカの口に合うのか心配です」

一方「普段錠剤や点滴で栄養補給してるやつらが何贅沢言ってンだか……」




カチャカチャ……




10000号「ふう……ごちそうさまでした、とミサカは包焼ハンバーグの予想外の美味しさに敬意を表しながら言います」

一方「……食い終わったらさっさと出ンぞ」



10000号「まぁまぁ、食後はドリンクバーでねばりつつトークタイムとでも洒落込みましょう、とミサカは提案します」

一方「ふン……別に俺はテメェと話すことなンて何もねェンだがな」



140: 2011/02/14(月) 17:51:29.91 ID:+TSgRMMj0


10000号「……」

10000号「……ミサカにはあなたに聞きたいことがいくつかあります」

一方「あァ?」




10000号「ミサカは……何度かあなたについて考えてみたことがあります」

10000号「あなたという存在、あなたの人生について」




一方「…………お前みたいな人形がいくら考えたところで的外れな考えしかでてこねェよ」

一方「だがまぁ、塩を送るって言った手前もあるしよォ」

一方「言ってみろよ人形ちゃン?オモシロな質問ができたら褒美に答えてやンぜ」



141: 2011/02/14(月) 17:52:40.83 ID:+TSgRMMj0


10000号「……………では質問を開始します」

10000号「あなたは何故…………」

10000号「何故実験に際してミサカ達に話しかけているのですか?」



一方「別にィ……強いて言うならテメェらをビビらせようとしてるだけだよ」

一方「完全無反応な人形じゃァ流石につまらねェからな、こっちァ20000回もお前ら潰さなきゃなんねぇンだぜ?」

一方「少しは恐怖に怯えるようなパフォーマンスくらいはしてもらわなきゃ飽きが来ちまう」




10000号「そうでしょうか……?」

10000号「ミサカは発見しました、あなたの言葉には常にある意味が込められていたと」



一方「あン?なンだとォ?」



142: 2011/02/14(月) 17:53:19.40 ID:+TSgRMMj0


10000号「あなたはいつもミサカ達に『氏にたくないのか』『頃しちまうぞ』、とそういう趣旨の言葉をかけています」

一方「……それが何だってンだ?」




10000号「ミサカは考えます、あなたは『氏にたくない』『殺さないで欲しい』と回答を希望していたのではありませんか?」

一方「……」



10000号「もしかするとあなたは……もう頃したくないのではないですか?」

10000号「誰かに……誰かに止めてほしいのではありませんか、この実験を?とミサカは自分の予想を口にします」



143: 2011/02/14(月) 17:54:15.93 ID:+TSgRMMj0


一方「……」

一方「……はァァァ???」

一方「つっまンねぇ妄想だなオイ……」

一方「あンだけぶっ頃しといて……10000人も頃しといて今更実は戦いたくありませンでした―ってか?」

一方「ふざけンじゃねェェェぞ!!!」 バンッ!



10000号「…………」



一方「……俺は無敵の存在になる、最強から無敵にな……」

一方「誰にも邪魔させねェし……まして止めてもらう気なんざねェよ……」



10000号「……そうですか」



144: 2011/02/14(月) 17:54:44.72 ID:+TSgRMMj0


10000号「………次の質問をさせてください」

一方「チッ……まだあンのかよ」




10000号「あなたはなぜ絶対能力者進化実験に参加を?」

一方「……さっき言ったたろうが?最強から無敵になるためだ」

一方「バカみてぇな三下どもが二度とうざったく寄ってこねェほどの絶対的な強者になァ!」

一方「そうなりゃ俺の周りもちったぁ静かになるだろうからよ……クックックッ」




10000号「……本当にそれがあなたの望みなのですか?」

一方「あン?」



145: 2011/02/14(月) 17:56:15.85 ID:+TSgRMMj0


10000号「前にあった時の、学園都市最強を名乗った時のあなたは……ミサカにはひどく寂しげに見えました」

10000号「絶対的な力を得て孤高の存在になること」

10000号「恐怖や憎しみ、敵意すらむけられない……今よりもさらに孤独な存在になること」

10000号「本当にそれがあなたの望みなのですか?」



一方「これはこれは……予想してはいたがさっきの妄想を上回る的外れっぷリだなァ」

一方「テメェは違うとでも言うのかよ?俺が本当は無敵になりたくねェと?」



10000号「……わかりません」

10000号「ですがあの時の寂しそうなあなたを思い出すと……ミサカにはあなたが孤独を望んでいるとは……」



146: 2011/02/14(月) 17:57:03.78 ID:+TSgRMMj0


一方「……終わりだ」

10000号「……え?」



一方「テメェのくだらねェ戯言をこれ以上聞かせられるのはうンざりなんでなァ」

一方「帰らせてもらうぜ?」



10000号「……了解しました、とミサカは静かに頷きます」



一方「わかってンだろうが……」

一方「明日は容赦しねェ……俺はいつものようにぶち頃すだけだ」

一方「…………あばよ、明日の香典代わりだ、ここの飯代はおごってやンよ」



10000号「はい……それでは明日また実験で……」



一方「………ケッ」

スタスタスタ…





10000号「……」



147: 2011/02/14(月) 17:58:11.49 ID:+TSgRMMj0

==============================================


10000号「ふぅ……とミサカは明日の実験に備えいつものようにベッドにもぐりこみます」 モソモソ

10000号「今日はずいぶんと一方通行と話をしました」

10000号「そしてミサカの彼に対する考えを色々述べてみましたが……」



10000号「……結局ミサカの考えは全て見当違いなものだったのでしょうか?」

10000号「実験を止めてほしいだとか、一方通行が孤独だとか……」



10000号「…………………………………………」

10000号「……………ですがミサカには…………」

10000号「………………彼の寂しそうな姿が忘れられません」



148: 2011/02/14(月) 17:58:52.17 ID:+TSgRMMj0


10000号「……明日になればすべてわかります」


10000号「ミサカの修行に意味があったのか」


10000号「ミサカの木原神拳は彼に通用するのか」


10000号「ミサカが………誇り高き10000の番号を与えられしミサカが……」


10000号「……彼を………………」


10000号「一方通行を…………『理解』できているのかどうか…………Zzz」



157: 2011/02/15(火) 21:51:51.97 ID:PoEztGcM0


10000号「ついにこの日が来たのですね……とつぶやいてミサカは運命の朝に目を覚まします」

10000号「結局……一方通行を『理解』できたのかどうかミサカにはわかりません」

10000号「『一方通行を理解しなければ木原神拳は使えない』」



10000号「…………」



10000号「……今更うだうだ考えても仕方ありません、とミサカは開き直ります」

10000号「修行の成果、持てる力の全てをもって一方通行と戦う」

10000号「そして………勝つ」




ガチャ



天井「む、起きていたのか10000号」

10000号「おはようございます博士、とミサカは朝の挨拶をします」



158: 2011/02/15(火) 21:52:31.22 ID:PoEztGcM0

天井「うむ、体調はどうだ、万全か?」

10000号「はい、昨日十分に休養をとったこともありミサカの体調は最高の状態にある、とミサカは報告します」

天井「……そうか」

天井「第10000次実験の戦場は地形、気候、舞台配置、その他あらゆる点から考えて一方通行にとって不利になるようにセッティングしてある」

天井「後は貴様が木原神拳を使えるかどうか……それにかかっている」

10000号「…………はい、わかっています博士」



10000号「ミサカは木原神拳を習得する為に今日までの日々を過ごしてきました」

10000号「ミサカの拳が一方通行の反射を破るか……あとは実戦で試すのみです」


159: 2011/02/15(火) 21:53:40.91 ID:PoEztGcM0


天井「…………そうだな」

天井「では、身支度を整えたら早速実験開始地点に向かえ」

天井「お前がつくころには一方通行も到着しているだろう」


10000号「……了解しました、とミサカは返答します」

天井「……さらばだ10000号」 


バタン




10000号「……………………」 カチャカチャ

10000号「……………………」 カチャカチャ…

10000号「…………完了です、とミサカは両手に装着したマイクロマニュピレータを握りしめます」 ギュッ

10000号「では………………行くとしましょうか」


スタスタスタスタ……



160: 2011/02/15(火) 21:54:20.27 ID:PoEztGcM0

==============================================


一方「よォーう、遅れずにきたみてェだな」




10000号「……現在時刻は午前09時58分7秒、あと1分53秒後に実験を開始します」

一方「ハッ!お定まりの台詞か!」




一方「……ここが天井くンの想定した俺に不利な戦場ってェわけですかァ」

一方「なるほどォ、周囲にはパッと見ベクトル操作できるもンも見当たらねェ、何もないただの開けた空き地だ」

一方「だが……別に周りのものを利用しなくってもよォ」

一方「俺ァ自分自身のベクトルを操作してテメェを嬲り頃しにすることも………」

一方「テメェの血流を操作して全身の内臓を破裂させることもできるンだぜェェェェェェェ!!!!!」 ダッ!!


10000号「………午前10時00分…………」








10000号「………これより第10000次実験を開始します」 スチャッ







161: 2011/02/15(火) 21:54:47.71 ID:PoEztGcM0


一方「オラッ!初っ端から激しくいくぜェェェ!!」 ダッッ!!シュッ!!




10000号(……速攻でかかってきましたか) スッ

10000号(確かに彼の言うように、この状況でも圧倒的優位なのはなお一方通行の方)

10000号(しかし……接近戦はもとよりミサカの望むところ)

10000号(木原神拳………………今こそ修行で鍛え上げたミサカのこの拳を使うときです!!)




一方「俺に掴まれたらそれで終わりだ、分かってんのかァ?ギャハハハッ!」 シュッ!シャッ!




10000号(流石に……クッ!早いですね……) サッ!

10000号(ですが、木原老師のジャブほどではありません) スッ!

10000号(彼の戦闘パターンから推測していけば……十分に対応可能です) サッ!



162: 2011/02/15(火) 21:55:26.67 ID:PoEztGcM0


一方「へっ、なかなか器用に避けるじゃねェか!」 シュッ!

一方「だが避けてばっかりじゃァ……」 シャッ!

一方「勝てやしねェぜ!オらァァァァァ!!」 ブンッ!


ドガッ!!



10000号「ガッッッ!!!」

ゴロゴロゴロ



ドゴンッッッ!!!!!



163: 2011/02/15(火) 21:56:26.84 ID:PoEztGcM0


10000号「クッ、はァ……」 フラッ



一方「クカカカ!派手に吹っ飛ンだなァおい?」



10000号(……やはり、完全に見切ることは不可能でしたか)

10000号(これ以上ダメージを受けないうちに何とか攻撃に出なければ……)



一方「駄目押しと行くかァ?」

一方「くらいなッ!!」 ブンッ!



10000号(大振り!?チャンスッ!!)

10000号「ハァァァァァァ!!!」 シュッ!!



バキィッ……………!!!



164: 2011/02/15(火) 21:56:58.40 ID:PoEztGcM0


一方「………………………………あン?」


10000号「……グッ!」 ピシィッ

10000号(失敗!?タイミングは完全に合っていたはずです!どうして!?)



一方「………何だ何だよ何ですかァそのザマは?」

一方「自爆とはなァ……テメェは俺の反射についても十分知ってるはずだろ?」

一方「やけっぱちか?お人形さンよォ」

一方「実験人形なら実験人形らしくしっかり俺を苦戦に追い込むっつう役目を果たさねェと……駄目だろうがァァ!!」 ブンッ!


ボゴッ!!



10000号「ガハッ!」



165: 2011/02/15(火) 21:57:42.60 ID:PoEztGcM0


10000号「うううぅ…………」 ヨロッ

10000号(何故です?何故失敗したのです?)

10000号(データ上は完璧に成功しているはずの一撃だったのに……何故?)



一方「クハハハハハハッ!自爆した上に二発目もくらっちまったなァ!」

一方「どうだァ?動かすたびに体が痛ェだろ?」

一方「その体でいつまで動き回ってられっか見ものだな、おい」




10000号「クッ…!」



166: 2011/02/15(火) 21:58:18.27 ID:PoEztGcM0


10000号(一方通行の反射能力の把握、戦闘行動の予測、拳撃の精度とタイミング、必要な条件は全て完璧にクリアしていたはず)

10000号(なのに結果は失敗……いったいどうして……)

一方「おいおいおーイ、何ボケっとしてンですかァ!?」シャッ!



10000号「……ッ!!」 ササッ!


10000号(失敗したということは何か足りないものがあったのです……木原神拳を使うのに必要な何かが)

10000号(それはおそらく……………………)




一方「氏ぬ気で避けねェと」

一方「ホントに氏ンじまうぞコラッ!」シャッ!!



10000号「…………クッ!!」 スッ!

10000号(…………………………………………おそらく老師が何度も言っていた『理解』 )



167: 2011/02/15(火) 21:59:07.37 ID:PoEztGcM0


一方「その調子だぜェ!精々ちょこまか避けてくれよ」 シュッ!


── ──‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐





             『一方通行を理解しなければ木原神拳は使えない』



             木原神拳を使うのに絶対必要なもの………それは『理解』



             ……………ミサカは一方通行を『理解』できていなかった



             やはりデータ上把握しているだけでは『理解』したことにはならないのですね



             ですが、事ここに至ってまだ一方通行を『理解』できていないミサカに



             ……………ミサカに彼を『理解』することなどできるのでしょうか




168: 2011/02/15(火) 21:59:49.54 ID:PoEztGcM0


一方「氏ぬまで逃げてりゃ『苦戦した』っつう条件が達成できたことになるかもしれないぜ?俺がクソだるくなったってェわけでなっ」

一方「ヒャハハハハッ!」 シャッ! シュッ!


── ──‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐



             生まれてから今日までの間、ミサカは一方通行のことはたくさん考えてきました



             パソコンに向かって情報収集していた時



             ランニングで走っていた時



             滝に向かって拳を打ち込んでいた時



             ファミレスで食事をしていた時



             ベッドの上でごろごろしていた時



             どんな時でも常に頭のどこかで彼のことを思っていました




169: 2011/02/15(火) 22:00:30.23 ID:PoEztGcM0


一方「動きが段々鈍くなってきてるぜェ?捕まったら終わりなンだからもうちょいふンばれよ!」 シュッ!


── ──‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐




            最強を名乗りながらどこか弱弱しく寂しげな彼




            強さゆえの孤独


            彼の周りにはだれもいない


            向けられる視線は恐怖と敵意だけ




            それすらも排除しようとさらなる力を求めて実験という名の殺戮を繰り返す彼




170: 2011/02/15(火) 22:01:12.18 ID:PoEztGcM0


一方「そろそろゲームオーヴァーかァ……俺を倒すンだろ?何か策があるならさっさと使った方がいーぜェ」

一方「氏ンじまう前になァ!」 シュッ!!


── ──‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐



               …………でも本当は違う



               彼がさらなる力を求めるのは



               もう誰とも争いたくないから



               繰り返す実験の中でミサカ達に話しかけるのは



               誰かに止めてほしいから




171: 2011/02/15(火) 22:01:41.52 ID:PoEztGcM0


一方「俺を倒せるもンなら……俺を止められるってンなら止めてみやがれェェェェェェェェェ!!!!」 シュッ!!


── ──‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐



                     絶対的な力を手に入れれば



                     何かが変わるかもしれない



                     何かを変えられるかもしれない




                     認めてもらえるかもしれない




                                     誰かに




172: 2011/02/15(火) 22:02:29.94 ID:PoEztGcM0


10000号「感じる……」


── ──‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐









                      彼の寂しさを


                      彼の孤独を


                      彼の哀しみを









173: 2011/02/15(火) 22:03:17.97 ID:PoEztGcM0





一方「……………」

一方「………何だァ?もう終わりかァ?」

一方「実験前あんだけで大口たたいといて蓋開けてみりゃこのザマかよ」



10000号「…………」 フラッ



一方「チッ……もういいだろ?」

一方「……内臓破裂させて……氏ね」 スッ



10000号「……………………」

10000号「……………………」 パシッ



一方「……ァ?」



10000号「……………………」

10000号「……………………」 シュッ!!





     バキィィィッッッ!!






174: 2011/02/15(火) 22:03:55.21 ID:PoEztGcM0


一方「ガッ!?グハッッ………!!!??????」 ヨロッ

10000号「……………………」 スクッ

一方「テ、テメェ……今何しやがった!!??」




10000号「………………………」

10000号「打ち込んだのです………私の心を」

10000号「あなたの拒絶の反射を破り……反射の向こうにあるあなたの心に私の心を」




10000号「……20000の因果の果てに」

10000号「ミサカは『理解』しました……一方通行、あなたのことを」

10000号「『理解』しました……木原神拳の真の意味を」



175: 2011/02/15(火) 22:04:32.97 ID:PoEztGcM0


一方「三下がァ……いったいどンな手品を使ったかは知らねェが……」

一方「もう遊びは終わりだ、ぶち頃してやっから……ガタガタ震えろォォォォ!!!」 ダッ!!

10000号「…………………」



10000号「……ミサカが」

10000号「……ミサカが今あなたに対し感じているのは恐怖でなく哀しみです!」 ベキィ!

一方「グッッッ!?」



10000号「止めてほしいのにだれも手を差し伸べてくれない」

10000号「聞こえるのはあなたの全身から発せられるそんな沈痛な悲鳴ッ!」 ドゴッ!

一方「ゴファッ!!テ…テメッ……」 クラッ




10000号「……ミサカにははっきり見えます、反射膜の内側にひそむあなたの孤独が!」ガスッ!

一方「カハッ!!」



10000号「最強という名の孤独……それにあなたがとらわれているのならミサカがあなたを倒し解き放ちましょう!!」バキィッ!


一方「ゲハァッ………!!!」 ドッッッ!



176: 2011/02/15(火) 22:04:58.98 ID:PoEztGcM0


一方「……………………ッ!」

一方「……グッ……グゥッ…………」ヨロッ

一方「……知ったような口ィききやがってェ」 フラフラ




10000号「…………………一方通行」




一方「テメェがどうやって俺の反射を破って攻撃してきてんのかはわからねェ……だがな……ハァハァ」

一方「お前の攻撃手段はどうやらその拳だけみてェだなァ」

一方「なら!!!こういうのはどうだァァァ!!!」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴッ ………





10000号「……なッ!!!!????」



177: 2011/02/15(火) 22:05:28.82 ID:PoEztGcM0


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴッ ………


一方「空気を圧縮、圧縮、圧縮ゥ!!」

一方「ぎイヤはははははははははははははははは!!!」

一方「とっさの思いつきでやってみたが……どうだ!?なかなか愉快なことになりそうじゃねェかァ!?」




10000号「風が一点に集中して……これは……高電離気体!?」




一方「テメェみてぇな人形ごときにこの俺が『理解』できるわけがあるかッ!」

一方「いや!この俺を!学園都市最強の一方通行を『理解』できるやつなンてこの世のどこにもいるはずがねぇンだッッッ!!」

一方「散々無駄口たたいた罰だぜェ……跡形もなく燃え尽きやがれェェェェェェェェェェェ!!!!!」



178: 2011/02/15(火) 22:06:27.00 ID:PoEztGcM0


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴッ ………




10000号「……………………」

10000号「ミサカのこの拳は……あなたのことを深く『理解』しているある人から授けられたものです」

10000号「あなたが自分の手元から離れても………………自分があなたの傍にいられなくなってからもずっと………」

10000号「あなたの存在を、あなたの人生を、ありのままのあなたを『理解』し続けてきた人から」




一方「あァァァァァァァァァ!!!!!?????」




10000号「木原神拳の神髄は『理解』、すなわち『愛』!!」

10000号「あなたの孤独……あなたの哀しみを背負う拳!!!」




10000号「あなたが自分を最強の存在だというのなら」

10000号「…………それゆえに誰にも『愛』してもらえない孤独な人間だと思っているというのなら…………」

10000号「まずはそのふざけた幻想を……この拳でぶち頃します!!!!!」


   ダッ!!!



179: 2011/02/15(火) 22:06:57.76 ID:PoEztGcM0


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴッ ………





一方「カカカカカクカキコクケカカキコケケケクカコキクカコカヒャハハハハハハァッ!!!!!」



10000号「ハァァァッァアァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!」









カッッッッ!!!!!


バギィィィッッッ!!!!!!!!!!




180: 2011/02/15(火) 22:07:30.43 ID:PoEztGcM0

────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐
──   ────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐
──‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐─────   ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐──   ────  ───‐‐














一方「……………………ゥ」 ピクッ

一方「う……ググッ……」


木原「よぉーーーーーーーーーーーーう、一方通行!!!」 シュタッ

木原「見事に女の子にボッこボッこにされちゃたみてぇじゃんか、カッコわりーーーーったらねぇなぁ、おい!」



一方「クッ…………」 ヨロッ

一方「やっぱり……テメェ……が……かンでやがったのかよ……」

一方「なんで俺の……実験の邪魔ァしやがったンだ……」



木原「………」

木原「フン!」バキィッ!!

一方「グハッ!?」



182: 2011/02/15(火) 22:08:10.88 ID:PoEztGcM0


一方「テメッ……なに…しやがる」 ヨロッ

木原「愛の拳だよバカ野郎」

一方「…………はァ?」



木原「…………テメェに絶対能力者なんざ似合わねぇんだよ」

木原「誰も相対することすらできない絶対無敵の孤高の存在なんてよぉ」





木原「……だからテメェは最強のままでいろ」

木原「間違った道にはまったときに、傍にいる誰かにぶん殴って止めてもらえる程度の最強でな」



一方「……………」

一方「…………クソッ……たれがァ」



一方「……………」

一方「あの女は…………」

一方「10000号はどうなった……?」

木原「………………………あいつは」





183: 2011/02/15(火) 22:08:56.71 ID:PoEztGcM0


10000号「ここにいますが?とミサカは老師の後ろからひょっこり出てきます」 ヒョコ

一方「うおっ!?」



10000号「拳を交えた強敵との再会ですよ?」

10000号「もうちょっと粋なリアクションがとれなかったものか……とミサカは一方通行に駄目出しをします」

一方「……お前……無事だったのか」

一方「直撃しなかったとはいえ……プラズマの余波を喰らったってのに」



10000号「モヤシな一方通行と違いミサカは鍛えていますから」

10000号「拳王の拳を受けても立ち上がります!とミサカは世紀末救世主の貫禄を見せます」

一方「………ふン……しぶてェやつだな」



184: 2011/02/15(火) 22:09:38.58 ID:PoEztGcM0


木原「……今回の実験結果は『第10000次実験において被験者一方通行が実験体に敗北』という形で報告される」

木原「樹形図の設計者がなく、再演算が不可能な現状を考えりゃ……」

木原「実験の中止はまず間違いない」

木原「妹達は調整を受け、学園都市関連の各機関に預けられる、ってぇのが妥当なとこだろうな」



木原「で……………10000号」

木原「テメェはこれからどうする?」



10000号「無論、実験前にお約束した通り老師の下で修行を続けさせていただきたいと思います」

10000号「それと……一方通行の面倒もみてあげねばなりませんね」



一方「ハァァァ!?何でおれがお前に世話してもらわなきゃなンねェンだよ!」



10000号「…………寂しがり屋の一方通行の傍にいて」

10000号「一方通行が止めてほしい時……止めてあげるのはミサカの役目なのですよ」

一方「…………テメェ…………」



185: 2011/02/15(火) 22:10:37.08 ID:PoEztGcM0


10000号「なぜなら!」 バッ!!


10000号「記念すべき妹達の10000体目であり」


10000号「栄光の検体番号10000号であるこのミサカは 」









          10000号「  木原神拳の伝承者なのですから!  」










                                   劇終

188: 2011/02/15(火) 22:11:37.11 ID:PoEztGcM0
というわけで終了です
付き合ってくださった皆さん本当にありがとうございました

アニメでの木原くンと木原神拳の活躍にご期待ください

引用元: ミサカ10000号「……木原神拳?」