1: 2012/06/06(水) 21:27:04.47 ID:FPaq1jQ6O
アイドルになってから、たくさんの時間が過ぎたの。たくさんキラキラして、楽しい時間。
でも…。

美希「…いま…なんて言ったの?」ギュッ

そんな言葉、アナタから聞きたくなかったの。

P「分かってくれ…美希…」

あの人は、凄く辛そうで…。でも、ミキの眼をしっかり見てお話してくれる。

美希「ミキの、聞き間違いじゃ、ないんだね」

P「すまない。でもな!これは美希にとってチャンスなんだ!」
ぷちます!(14) (電撃コミックスEX)

4: 2012/06/06(水) 21:33:04.29 ID:FPaq1jQ6O
二時間のスペシャルドラマ。しかも、ゴールデンタイムに放送される。それは、確かにチャンスなの。

…でもね?

美希「…ミキ、キスはしたくないの」

そう。キス。そのドラマのラストには、キスシーンがある。

P「すまない…」

あの人の手が、ぎゅって握り締められてる。凄く震えてるの。

美希「…ハニーは…うぅん。プロデューサーは、ミキがキスしても、いいの?」

あの人に聞いてみる。だけど、ミキが期待した答えは返ってこなくて。

P「これが台本だ。いいか?一週間後には、ロケが始まる。台本を、じっくり読んでくれ」

――ガチャッ、バタン

美希「…」

7: 2012/06/06(水) 21:39:20.35 ID:FPaq1jQ6O
――

美希「…」パラッ、パラッ

台本をパラパラ流し読みしてみる。…確かにいい話なの。

幼馴染みとの恋。最初は恋愛感情の無かった幼馴染み同士。だけど、あるきっかけから、お互いを意識するようになって… 。

美希「…あはっ。この娘…ミキとおんなじなの」パラッ

そのきっかけ。トラックに轢かれそうになったヒロインを、幼馴染みの男の子が助ける。

それはまるで、あの時みたいに。

ハニー?ミキ、出来るかな…。

美希「…ミキ、頑張るから…」

台本を読んで、決めたの。ミキ、この娘を演じるって。

8: 2012/06/06(水) 21:44:00.06 ID:FPaq1jQ6O
――

次の日、ミキはあの人に伝えたの。

美希「ハニー。…うぅん、違うね。プロデューサー」

P「ミキ…」

呼び方を変えたミキを見て、ちょっぴり寂しそうな顔してるあの人。

だけど、これはミキのけじめなの。

美希「…プロデューサー。ミキ、この娘になるね」

P「そうか。すまないな」グッ

苦しそうに、でも、少し嬉しそうに、あの人は笑ってくれた。

美希「うん。ミキ、やるからには本気だから」

だから、キスも。

9: 2012/06/06(水) 21:47:17.29 ID:FPaq1jQ6O
――

そして、あっという間に一週間が経って、ロケが始まったの。

P「ミキ、大丈夫か?」

美希「あはっ!ミキは大丈夫なの!」

心配させないように、とびきりの笑顔を作る。…初めてかもしれないね。アナタに、笑顔を作るのは。

P「そっか。じゃあ、頑張ってこい」

美希「当たり前なの!」ニッコリ

そうして、ロケは始まったの。

11: 2012/06/06(水) 21:50:48.76 ID:FPaq1jQ6O
美希「ねぇねぇ、昨日の宿題やってきた?」アタフタ、アタフタ、

――

美希「あ~!私のクレープ、こんなに食べたぁ~!」ムスー

――

美希「ばーか。私がアナタに恋するわけないですよーだ」

――

偽物の幼馴染みとの会話が続く。だけど、ミキの言葉は…。

P「」グッ、フルフル、フルフル、

12: 2012/06/06(水) 21:56:19.50 ID:FPaq1jQ6O
そうして収録が進み、クランクアップを次の日に控えた夜。

美希「ねぇ、プロデューサー」

P「ん?どうした?星井さん」

星井さん。ロケが始まった夜、あの人は私の事を苗字で呼んだ。

美希「…うん。あのね?ミキ、ちゃんと出来てる?」

明日をクランクアップに…キスシーンに控え、わざとこんなことを聞いてみた。

あはっ!だってミキ、いじわるだから。

14: 2012/06/06(水) 22:01:07.76 ID:FPaq1jQ6O
P「うん。よく出来てると思うぞ?なんてったってミキは…星井さんはAランクアイドルだからな!」

美希「ッ!」

久しぶりに聞いた、あの人からの『美希』って言葉。

あはっ!凄く嬉しいの。でも、今はダメ。今は、『星井さん』じゃなきゃ、ダメ。

美希「…あはっ!良かったの!じゃあ、プロデューサー!また、明日っ!」タッタッタッタッ

――ガチャッ、バタン

P「美希…」

美希が出ていった後、俺は今までを振り返っていた。

15: 2012/06/06(水) 22:05:53.09 ID:FPaq1jQ6O
最初はとんでもなく破天荒で、世間知らずで、無茶苦茶で。

だけど、人を…俺を惹き付ける何かがあって。一緒に活動をしていく内に、アイツの事を知っていって…。

そしてあの時。トラックに轢かれそうになったアイツを咄嗟に助けた。

自分の担当アイドルだから?相棒だから?

違うな。いつの間にか俺は、

美希に、恋をしてたんだ。

P「なぁ、美希。俺は、間違ってないよな?」ハァ...

――

美希「…」グスッ

17: 2012/06/06(水) 22:10:52.71 ID:FPaq1jQ6O
――

次の日、最後のロケが始まったの。

美希「じゃあミキ、行ってくるね!」

P「おう!頑張ってこい!」

その言葉は、あくまで『星井さん』としてのミキへの言葉。

美希「うん…」タッタッタッタッ

――

美希「…私…私ね?キミが私にそう言ってくれるのは、凄く嬉しいの」

最後のシーン。私は、この娘を最後まで演じる。

美希「…だからね?…いいよ?キミの、彼女になってあげる!」ギュッ

主役の男の人と抱き合う。そして、ゆっくりと近付くフタリのくちびる。

19: 2012/06/06(水) 22:15:49.50 ID:FPaq1jQ6O
美希「…ふふっ。な~んてっ!」バッ

美希「スキで彼女になるのはホントだよ?だけど、ふふっ」クスクス、

美希「…キスは、だめ」

美希「えっ?何でって?だって私は…いじわるだから」ペチンッ

主役の男の人はオデコにデコピンされて、ボーゼンとしてる。監督さんも、スタッフさんも。

そして、あの人も。

「あっはっは!いいじゃあないか!」

監督さんのひときわ大きい笑い声がして、その後に。

「よしっ!撮影終了!」

監督さんのその一言に、皆がまたビックリしてた。

22: 2012/06/06(水) 22:19:31.34 ID:FPaq1jQ6O
主役の人は何か怒ってたみたいだけど、ミキには関係ないの。元々キョーミ無かったし。

それよりもね?

美希「…ただいま」

美希「プロデューサー。…うぅん、違うね。ハニー」

P「あぁ。おかえり」スッ、

P「美希」ナデナデ、ナデナデ
美希「…あふぅ。やっぱりハニーのなでなでは眠くなるの」クスクス、

――

23: 2012/06/06(水) 22:25:01.29 ID:FPaq1jQ6O
収録が終わったその日の夜。事務所に二人きり。ピヨちゃんも、律子…さんも気を利かせてくれたのかな?とにかく二人きり。

P「美希…どうしてあんなことしたんだ?」

美希「ん?あんなことって?」

P「キス…しなかったじゃないか」

美希「あぁ。その事なの?ふふっ、ミキ言ったよ?いじわるだから、って」クスッ

P「あのなぁ…」ハァ...

美希「…だから」ボソッ

P「えっ?」

美希「…ミキの相手は…ハニーだけ…だから」ギュッ

そう言って、ハニーに抱き着く。久しぶりのハニーの匂い。

P「バカ」ギュッ

美希「むっ!そんな言い方はヒドいと思うの」ムスー
P「ははっ。だけど、ミキ」

美希「…うん?」

P「ありがとう」

24: 2012/06/06(水) 22:31:01.60 ID:FPaq1jQ6O
P「最初に俺が断るべきだったな、この話」ギュッ

そう言って、ミキを抱き締めるあの人。

美希「…ねっ?ハニー?」

P「ん?」

美希「…続き、しよ?」

P「続き?」

美希「うん。撮影の、続き」

26: 2012/06/06(水) 22:31:40.66 ID:FPaq1jQ6O
P「…」ギュッ

美希「…私も、アナタが好きだよ?だからね?」

美希「…彼女になって…あげる」スッ、

美希「それと、ね?」

美希「…私、うぅん。ミキも、ずっとずっと、好きでした」

美希「ちゅっ」チュッ

ミキの、はじめてのキス。ハニーにしかあげない、さいしょのキス。

美希「…ねぇ、ハニー」

美希「…ミキはいま、幸せだよ」

おわり

27: 2012/06/06(水) 22:32:36.20 ID:FPaq1jQ6O
はい。ここまでありがとうございました

28: 2012/06/06(水) 22:32:59.29 ID:G1KDwKns0

34: 2012/06/06(水) 22:36:24.10 ID:bI6CqIg80
呼び方がプロデューサー→ハニーになった辺りから
美希の中で自動的に彼氏になってる気もしないでもないけど
こうやってはっきりさせるのも良いね。乙

引用元: 美希「…キミはいま、幸せ?」