1:◆x93HPBKLQ2 2011/05/15(日) 21:14:54.45 ID:UT1JPkXi0
ご都合主義のゆるーい設定。
雰囲気を楽しんで頂けると幸いです。

では。

3: 2011/05/15(日) 21:16:36.31 ID:UT1JPkXi0
[ずっと昔:とある林の中]

蒼星石「やぁ」

王ドラ「こんにちは、お元気そうでなによりです」

蒼星石「この前探していた薬草は見つかったかい」

王ドラ「はい、貴方がおっしゃった所を見に行くとありました。ありがとうございます」

蒼星石「ふふ、どう致しまして」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
5: 2011/05/15(日) 21:19:22.59 ID:UT1JPkXi0

ヒュウウウ

王ドラ「いい風ですね」

蒼星石「あぁ。こんな日は植物たちも楽しそうだ」

蒼星石「そうだ、これあげるよ。姉が焼いてくれたんだ」

王ドラ「スコーンですか。ありがとうございます。お師匠様と一緒にいただきます」

蒼星石「姉のスコーンの腕前は僕が保証する。とてもおいしいんだ」

王ドラ「自慢のお姉さんなんですね」

蒼星石「お転婆で人見知り、だけどね」

6: 2011/05/15(日) 21:21:22.35 ID:UT1JPkXi0

王ドラ「蒼星石さん、体の調子はどうですか? 」

蒼星石「あぁ、すっかり良くなったよ。あの時はありがとう」

王ドラ「いえいえ」

蒼星石「道端で倒れていた人を介抱しようとしたらそれは人形で、おまけに動くんだから」

蒼星石「驚いただろう? 」

王ドラ「もちろん驚きましたとも。古書の中でしか出てこないローゼンメイデンが本当に存在するだなんて」

蒼星石「ふふ、僕も驚いたよ。まさか君が未来からきた猫型機械だなんて」

蒼星石「加えて拳法を勉強しに時代を旅してるなんて、ね」

7: 2011/05/15(日) 21:23:32.04 ID:UT1JPkXi0

王ドラ「貴方が世界の裏に存在するローゼンメイデンだからこそ、わたしがロボットだとお教えしたのです」

蒼星石「長い時間を過ごしていると、こんな不思議なこともある。面白いよ」

ヒュウウウウウ

王ドラ「 … 」

蒼星石「 … 」

王ドラ「まだ、あのとき倒れていた理由を教えてはいただけないのですか」

蒼星石「 …あぁ」

8: 2011/05/15(日) 21:25:29.19 ID:UT1JPkXi0

蒼星石「僕を介抱してくれたことには感謝してる。感謝してるからこそ、深くは話せない」

蒼星石「…ごめん」

王ドラ「いえ、わたしの方こそ」

ヒュウウウウウ



蒼星石「そろそろ屋敷に戻るよ」

王ドラ「お気を付けて」

蒼星石「あぁ、それじゃ」ガチャッ

ヒュウウウウウーン…

9: 2011/05/15(日) 21:28:39.19 ID:UT1JPkXi0

王ドラ「 … 」

王ドラ(あのときの怪我は尋常ではありませんでした)

王ドラ(服もボロボロで、まるで何かと闘ったような)

サッ

王ドラ「蒼星石さんの服にたくさんついていたこの黒い羽根に何か理由がありそうですが… 」

10: 2011/05/15(日) 21:31:58.56 ID:UT1JPkXi0


ヒュウウウウウーン…

蒼星石(あの日の晩、水銀燈にやられた僕を見つけてくれたのが彼でよかった)

蒼星石(翠星石だったなら、きっとああなった理由を聞いてきただろう)

蒼星石(あの晩… )

11: 2011/05/15(日) 21:36:19.45 ID:UT1JPkXi0

水銀燈『メイメイ! 』カッ

蒼星石『レンピカ! 』カッ

蒼星石『はぁ…はぁ… 』

水銀燈『あっははは!いい加減諦めればぁ? 』

水銀燈『1人で寂しくないように、貴女の次はちゃんと翠星石を葬ってあげるから安心なさぁい』

12: 2011/05/15(日) 21:39:20.71 ID:UT1JPkXi0

蒼星石『…あいにく、諦めたりはしないよ』

蒼星石『そんな真似を僕はしない! 』

蒼星石『レンピカ! 』カッ

水銀燈『小賢しい! そんなにぼろぼろで何を… 』

蒼星石『ああああああ!! 』ゴオオオオ

水銀燈『くっ』ガキーン

蒼星石『うわっ… 』ドザアアァァァ…

水銀燈『お馬鹿さん、自分から崖に突っ込むなんて。どこまで落ちたのかしら』

水銀燈(とは言っても私も大分やられたわね… )

13: 2011/05/15(日) 21:42:37.79 ID:UT1JPkXi0

水銀燈『聞こえる? 蒼星石、今日は見逃してあげるわぁ。一週間後、またここに来なさい』

水銀燈『来なくても、その時は緑の子を狙うからどっちでもいいけれど』

水銀燈『じゃあね』バサァッ


ガサッ

蒼星石『……うぅ』

蒼星石『ま、待て…… 』

14: 2011/05/15(日) 21:45:49.40 ID:UT1JPkXi0



蒼星石(そのあと気を失った僕をたまたま見つけた王ドラに介抱してもらい、今に至る)

蒼星石「水銀燈の言っていた日まであと2日… 、か」

蒼星石「これ以上ゆっくりしていられないな」

15: 2011/05/15(日) 21:47:50.02 ID:UT1JPkXi0

[水銀燈との約束の日の前日]

王ドラ「こんなに早く続けて来られるとは珍しい」

蒼星石「なに、大したわけはないさ」

蒼星石「ただ前の礼をしたいだけだ」

王ドラ「礼なんて… 。でもせっかくなので、薪割りでもお手伝いしていただきましょうか」

蒼星石「あぁ、わかった」

16: 2011/05/15(日) 21:51:52.49 ID:UT1JPkXi0

バキッ

王ドラ「お上手ですね」

蒼星石「これでも刃物の扱いには慣れてるんだ」

バキッ

蒼星石「薪割りをすると無心になるんだね。嫌なことを忘れられるよ」

王ドラ「はい。何か忘れたいことでもあるのですか? 」

蒼星石「 … 」

17: 2011/05/15(日) 21:53:47.84 ID:UT1JPkXi0

バキッ

王ドラ「すいません。変なことを訊いてしまいましたね」

王ドラ「忘れたいことなんて誰でもお持ちでしょうに」

蒼星石「いや、いいんだ。そうだ、王ドラ」

王ドラ「はい」

蒼星石「手を握らせてくれないか」

王ドラ「へ、手ですか? 女性の方とそんな、いけませ~んいけませ~ん」プシュシュー

18: 2011/05/15(日) 21:58:17.80 ID:UT1JPkXi0

蒼星石「君は1人で見知らぬ土地に来て己を鍛えている」

王ドラ「いけませ~んいけませ…… 」

蒼星石「やめたくなったり、逃げたくなったりしたことはないのかい」

王ドラ「 … 」

王ドラ「ありますが、そうしたことはありません」

蒼星石「何故? 」

王ドラ「逃げた自分を追うのも、また自分だからです」

蒼星石「 … 」

蒼星石「なるほど、ね」

蒼星石「だから」

ギュッ

王ドラ「 ! 」

19: 2011/05/15(日) 22:02:28.42 ID:UT1JPkXi0

蒼星石「そういった君の勇気を少しだけ分けてくれるかな」

王ドラ「蒼星石さん… 」

蒼星石「モチモチして」

ニギニギ

王ドラ「あぁぁ~」

蒼星石「ペタペタして」

ニギニギ

王ドラ「わああぁ~」

蒼星石「フワフワして」

ニギニギ

王ドラ「ふにゃらら~」

蒼星石「そしてあったかい」

蒼星石「…ありがとう」

王ドラ「ふぅ… 、いえいえ」

20: 2011/05/15(日) 22:05:35.11 ID:UT1JPkXi0

王ドラ「もしかして、もうここには来ないおつもりですか? 」

蒼星石「あぁ」

王ドラ「やはり、そうですか… 」

蒼星石「君からはいろいろ教わったよ。ありがとう」

王ドラ「わたしは何もしていません。全て蒼星石さんご自身の力です」

蒼星石「ふふっ」

21: 2011/05/15(日) 22:09:38.38 ID:UT1JPkXi0
[その日の晩]

蒼星石「明日、ここで水銀燈と… 」

蒼星石「大丈夫だよ、レンピカ。翠星石を泣かせるわけにはいかないからね」

蒼星石「それにお父様に会う為にも、負けるわけにはいかない」

蒼星石「レンピカ? 何をそんなに慌てて… 」

サッ

水銀燈「本当にお馬鹿さん」

22: 2011/05/15(日) 22:15:41.91 ID:UT1JPkXi0

シュッ ザクザクッ

蒼星石「ぐぁ! 」

水銀燈「何、勝てる気でいたの? この私に」

蒼星石「水銀燈!? き、今日はまだ… 」

水銀燈「律儀に約束守っちゃって、ほんとのほんとにお馬鹿さぁん」

水銀燈「貴方のことだから、どうせ感傷に浸りにここに来ると思っていたわ」

蒼星石「何て卑怯な… 」

23: 2011/05/15(日) 22:20:11.85 ID:UT1JPkXi0

水銀燈「さ、お喋りはここまでよ。さっさと氏になさい」

シュバババババッ

蒼星石「ああああ! 」

蒼星石(駄目だ、脚が動かない… )

水銀燈「自分の愚かさを恨むことね。ばぁいばーい」

蒼星石(やられる…! )

シュバババババッ

蒼星石「くっ! 」

蒼星石「 … 」

蒼星石「…? 」

水銀燈「…誰? 」

王ドラ「はじめまして、王ドラと申します」

24: 2011/05/15(日) 22:24:51.91 ID:UT1JPkXi0

蒼星石「わ、王ドラ! 」

王ドラ「大丈夫ですか? 」

蒼星石「君は関係無い… 、早くここから逃げろ! 」

水銀燈「蒼星石の知り合い? 」

水銀燈「邪魔する気かしら? アリスゲームに部外者が入り込むんじゃないわよ」

蒼星石「そうだ… 、これは僕たちだけの問題だ。手を出さないでくれ」

王ドラ「……わかりました」

25: 2011/05/15(日) 22:27:42.09 ID:UT1JPkXi0
王ドラ「関係のないわたしが立ちいる話ではないようですね」

水銀燈「そうよ、分かればさっさと出ていきなさい」

蒼星石(すまない、王ドラ… 。気持ちだけはありがたく受け)

王ドラ「ですが蒼星石さんは友達です。傷付いた友達を見捨てるわけにはいきません」

蒼星石「 ! 」

水銀燈「はぁ? 」

26: 2011/05/15(日) 22:31:03.73 ID:UT1JPkXi0

水銀燈「じゃあもういいわ、手負いの妹より貴方を先に頃してあげる」

シュバババババッ

蒼星石「王ドラ! 」

サッ

王ドラ「どこでも窓~」

水銀燈「どっから窓を…ああぁぁぁ!」ザクザクザクッ

水銀燈「な、何が… 」

王ドラ「これ以上蒼星石さんに手出しをするのなら、容赦しません」

27: 2011/05/15(日) 22:36:12.57 ID:UT1JPkXi0

水銀燈「…ちっ」

水銀燈「邪魔者のせいで興が削がれたわ」

バサァッ バサバサバサ…

王ドラ「ふぅ。蒼星石さん、お怪我は? 」

蒼星石「脚をね… 。すぐ治るさ。」

王ドラ「あとでどこでもドアでお送りしますよ」

蒼星石「…君は手を出すべきではなかった」

蒼星石「余計なことをしてくれたね」

王ドラ「勝手なことをしてすいません… 」

蒼星石「だけど嬉しかった、ありがとう」

蒼星石「僕は人形だ。姉妹はいても友達はいない。だからそう呼んでくれて嬉しいよ」

王ドラ「蒼星石さん… 」

蒼星石「実は明日、次の時代へ行く予定なんだ。翠星石と決めて」

28: 2011/05/15(日) 22:40:31.06 ID:UT1JPkXi0

王ドラ「つまりもう会えないということですか? 」

蒼星石「かもね。だけど君はいろんな時間を旅しているんだろう?」

蒼星石「未来で会えるのを楽しみにしているよ」

王ドラ「わたしにとっては過去かもしれませんよ」

蒼星石「ふふ。違いない」

30: 2011/05/15(日) 22:50:20.62 ID:UT1JPkXi0



蒼星石「じゃあ」

王ドラ「お気を付けて」


ガチャッ ヒュウウウウウーン…


王ドラ「明日からは1人で薪を割らなくてはいけませんね」

王ドラ「 … 」

王ドラ「別れの寂しさもまた、修行の一つです」

……………

………




31: 2011/05/15(日) 22:55:33.91 ID:UT1JPkXi0

[現代:裏山]

翠星石「キャッチボールもなかなかですね」

蒼星石「急にやりたいなんて言い出すんだから」

翠星石「文句言うなです。ほれほれ、そっちにボールがいったですよー」

蒼星石「分かった。とってくるよ」

ガサガサッ

蒼星石「この辺に飛んでったはずだけど… 」

< ノビタクンガオニデスネ
< カゾエルヨー、イーチ、ニー

蒼星石「 ? 」

蒼星石「どうやら他に人がいるようだ。見つからないようにしないと」

33: 2011/05/15(日) 23:01:49.38 ID:UT1JPkXi0
ガサガサッ

「この辺に隠れましょうか」

蒼星石(しまった、見つか… )

蒼星石「…あっ! 」

蒼星石「王ドラ… 」

王ドラ「そ、蒼星石さん!? 」

王ドラ「なぜこんなところに… 」

蒼星石「 … 」

蒼星石「 …ふふっ」

王ドラ「ふふふ」



蒼星石「やぁ」

王ドラ「こんにちは、お元気そうで何よりです」



おわり

34: 2011/05/15(日) 23:06:27.49 ID:UT1JPkXi0
終わりです
読んで頂きありがとうございました

次は雛苺とドラリーニョとで、ほのぼのする話を書きたいです

35: 2011/05/15(日) 23:09:50.07 ID:QmqQ8aL00
おう

引用元: 蒼星石「やぁ」 王ドラ「こんにちは、お元気そうでなによりです」