1: 2016/04/17(日) 17:49:04.29 ID:2KHKwO+n.net
私には、穂乃果ちゃんという幼馴染がいます。







私の大好きな大好きな、だーーいすきな女の子♪



いつも内気で、意気地なしのことりを引っ張っていってくれる大切な存在。



穂乃果ちゃんは、いつでも明るく元気いっぱい☆




暗い雰囲気や、寂しい気分なんか、穂乃果ちゃんがいたらお空の彼方へ吹き飛ばしてくれちゃいます♪




そんな、私たちの太陽みたいな存在。






それが穂乃果ちゃん。

2: 2016/04/17(日) 17:49:44.95 ID:2KHKwO+n.net
私は穂乃果ちゃんに出会うまで、友達が一人もいませんでした。



いつも、仲の良さそうな子たちを遠目から見守るだけの存在。



意気地なしの私は、自分から声をかけるなんてことはできませんでした。



影からおずおずと……。



視線を投げかけるだけの私。




そんな私の視線に気が付き、声をかけ、手を差し伸べてくれたのが穂乃果ちゃんでした。




ほのか「いっしょにあそぼう♪」


ことり「……うん♪」

3: 2016/04/17(日) 17:50:05.94 ID:2KHKwO+n.net
子供の頃に出会っていなかったら、私はどうなっていたんだろう?



ちょっと考えただけでも怖いなって思います。



私の傍には、穂乃果ちゃんがいるのが当たり前。



出会った時から。



いつでも。



どんなときでも。



穂乃果ちゃんが傍にいました。



ううん。



私が穂乃果ちゃんの傍を選んでいました。

4: 2016/04/17(日) 17:51:06.95 ID:2KHKwO+n.net
お陽様の出ている場所じゃないと、凍えてしまうから。



月明かりの夜に、一人で外にはいられないから。







だから、私が穂乃果ちゃんに”恋”をしてしまうのは当然でした。




……だって。




いつも隣りにいるんだもん。




好きになっちゃうよね。




そんなの当たり前だよ。

7: 2016/04/17(日) 17:51:30.17 ID:2KHKwO+n.net
私たち二人が一緒にいることは、当たり前。



それぐらいに私たちは仲良しだったと思います。



毎日、朝から帰る時間まで、一緒にお話をして、遊んで。




おままごとのようなものとはいえ。





それは恋人のような。



新婚さんのような。




そんな関係だったような気がします。












―――でも、そんな私たちの関係に、変化が訪れました。

14: 2016/04/17(日) 17:52:21.70 ID:2KHKwO+n.net
ほのか「みーつけた!」

うみ「ひぅ!?」




ほのか「つぎ、あなたがおにだよ!」



うみ「ふぇぇ……?」



ほのか「いっしょにあそぼう♪」

17: 2016/04/17(日) 17:52:42.79 ID:2KHKwO+n.net
園田海未ちゃん。




私たちの間に、海未ちゃんがやってきました。




海未ちゃんは始めて出会った頃。





今とは全然違い、とっても恥ずかしがり屋さん。




勿論、今でも肝心なところではうじうじしちゃう可愛いところもあるけれど。




子供の頃は本当に超がつく恥ずかしがり屋さんでした。



私が始めて会話したのも、出会って半年ぐらい経ってたんじゃないかなぁ……?

20: 2016/04/17(日) 17:53:14.58 ID:2KHKwO+n.net
いつも怖がりで。





恥ずかしがり屋で。




けれど、寂しん坊の海未ちゃんは。





私と穂乃果ちゃんが遊んでいる公園までは来るけれど。




声をかけることはできず、木陰からじっと見つめるだけ。




そんな海未ちゃんを見兼ねて、いつも穂乃果ちゃんが。

23: 2016/04/17(日) 17:53:51.15 ID:2KHKwO+n.net
ほのか「もー、こっちにおいでよー!」


うみ「……ううっ」


ほのか「それじゃまたあなたがおにだよー?」


うみ「うう……!」フルフル


ほのか「ほーら!あーそーぼっ!」グイグイ

29: 2016/04/17(日) 17:54:38.09 ID:2KHKwO+n.net
そんなやりとりを、穂乃果ちゃんと何回も何回も続けていたら。



いつのまにか海未ちゃんは、私たちの輪に入っていました。





それでも、しばらくの間はびくびくと、凍える寒さに震えていたけれど。




穂乃果ちゃんという太陽が傍にいたから。




徐々に、落ち着きを取り戻していったんだと思います。

32: 2016/04/17(日) 17:55:14.48 ID:2KHKwO+n.net
……私は、それまで穂乃果ちゃんしかいなかったから。




海未ちゃんが現れたことで、ちょっと戸惑っていました。




見知らぬ誰か。



心を許していいのかわからない、他人。




私は子供心に。




穂乃果ちゃんを取られたら嫌だなぁ、という暗々とした想いを抱いてました。

36: 2016/04/17(日) 17:55:45.53 ID:2KHKwO+n.net
だって。




私には穂乃果ちゃんしかいなかったから。




穂乃果ちゃんが良かったから。




まだ”恋”へと変化する前のその想いは、単純な憂鬱。




その憂鬱が、嫉妬に変わってしまうのは。




勿論必然で。




想いが形になるのには、時間は入りませんでした。

38: 2016/04/17(日) 17:56:31.02 ID:2KHKwO+n.net
―――。





―――この頃のことは、あまり思い出したくありません。




私が、海未ちゃんへの嫉妬心を、形に変えてぶつけてしまった頃。




この時の荒んだ想いは、私にとっての忘れたい過去。




封印してしまいたい過ち。





私の……凍てついた心が、どこまでも尖って、歪になっていきました。




……でも。



そんな私の氷のトゲも。



穂乃果ちゃんという太陽にかかれば。








一瞬で、溶けて、丸くなる。

43: 2016/04/17(日) 17:57:05.23 ID:2KHKwO+n.net
ほのか「さいきん、ことりちゃんとうみちゃん、なかがわるい!」

ことり「そ、そんなことないよぉ……」

うみ「……ううっ」

ほのか「んーん!」

ほのか「ほのかにはわかるもん!」

ほのか「ことりちゃん、うみちゃんのめをみてない!」

ことり「っ……」

うみ「……」

ほのか「けんかはよくないよ!どうしてなかよくできないの?」

ことり「……」

うみ「……」





穂乃果ちゃんのせいだなんて、口が裂けても言えませんでした。






だって。

45: 2016/04/17(日) 17:57:35.74 ID:2KHKwO+n.net
ほのか「ふたりともなかよくできないなら、ほのか、ふたりともキライになっちゃうよ!」

ことり「そ、そんなぁ……!」

うみ「うう……っ!」フルフル!



穂乃果ちゃんはズルイよ……。




穂乃果ちゃんに嫌われたら、私たち二人共。




生きていけないよ……。

47: 2016/04/17(日) 17:58:01.77 ID:2KHKwO+n.net
だから。





私の凍ったトゲは。




溶けて、丸くなった。





穂乃果ちゃんに、捨てられたくなかったから。




穂乃果ちゃんに、嫌われたくなかったから。

49: 2016/04/17(日) 17:58:28.72 ID:2KHKwO+n.net
―――。




その一件から、私たちの関係にまた変化が訪れる。





私と海未ちゃんが、穂乃果ちゃんを求める関係性から。





それぞれがそれぞれを求める関係になった。







その後の私たちの、始まりだと思う。






最初は、穂乃果ちゃんに嫌われたくない一心だったと思います。




海未ちゃんと表面的にだけでも仲良くなって、関係を繕うとしていました。

51: 2016/04/17(日) 17:58:54.41 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……うみちゃん?」

うみ「っ……」ビクッ


ことり「……だいじょうぶだよ、もういじわるしたりしないよ」


うみ「……うう……」フルフル


ことり「ことり……ほのかちゃんにきらわれたくないもん……」


うみ「……」


ことり「……だから、あそぼ?」


うみ「……うん」

54: 2016/04/17(日) 17:59:25.25 ID:2KHKwO+n.net
お互いが、穂乃果ちゃんという存在で成り立っている関係だから。




穂乃果ちゃんを盾にすれば。




首を縦にふるしかできなかった。




卑怯だよね、私……。





だから、しばらくの間は仮初めのお友達ごっこでした。




穂乃果ちゃんと遊びたいから、海未ちゃんと遊ぶ。




穂乃果ちゃんと一緒にいたいから、海未ちゃんと一緒にいる。




そんな歪な三人の関係。

57: 2016/04/17(日) 17:59:52.20 ID:2KHKwO+n.net
多分。




あの頃は、互いに無関心であったと思います。




たまに、穂乃果ちゃんだけが三人の場からいなくなってしまうと。




本当に困惑していたのを覚えています。





もともと、海未ちゃんはあまり多く喋る性格じゃなかったし。




会話は続くはずもなく。




なにより、表面的な関係でしかなかったから。




お互いが無関心だから。






ただひたすら、気持ち悪い時間が過ぎていったのを覚えています。

60: 2016/04/17(日) 18:00:17.08 ID:2KHKwO+n.net
そんなある日。





私は海未ちゃんにこんな質問をしてみました。





ことり「ねぇ?」

うみ「っ!?」ビクッ




―――私の言葉に、いちいち大きく反応する海未ちゃん。


今思い出してみれば、それはとても可愛いなって思うけれど。



あの頃の私は、その挙動一つ一つにイライラしてたのを覚えています。




ああ、やめよう。



思い出したくない―――。

63: 2016/04/17(日) 18:00:43.92 ID:2KHKwO+n.net
ことり「うみちゃんは……なんでほのかちゃんがすきなの?」



うみ「……ほのか……ちゃん……?」





穂乃果ちゃんの名前を出した途端に、海未ちゃんははっきりと表情をほころばせていました。







まるでそれは……。






恋する乙女のよう。

66: 2016/04/17(日) 18:01:13.49 ID:2KHKwO+n.net
うみ「……ほ、ほのかちゃんは……///」





穂乃果ちゃんのことを語る海未ちゃんは。





うみ「……わたしにこえをかけてくれた……はじめての……おともだち……///」




本当に幸せそうで。





うみ「ともだちをつくるのがにがてなわたしのてを、とってくれた……///」




きっと。




うみ「……だから、ほのかちゃんのことが……すき……///」






穂乃果ちゃんがいれば、他に何もいらないんだろうなって思いました。






……私と同じ。

71: 2016/04/17(日) 18:01:45.00 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……ことりも」


ことり「ことりもおんなじだよ」


うみ「え……?」




ことり「ことりも、おともだちつくるのにがてだから……」



ことり「はじめてできたおともだちは、ほのかちゃん」



ことり「ほのかちゃんが……こえをかけてくれたの」






ほのか『いっしょにあそぼう!』





ことり「……ことりには……」



ことり「ことりも……ほのかちゃんしかいないんだもん……」



うみ「……」

74: 2016/04/17(日) 18:02:13.01 ID:2KHKwO+n.net
その時に、始めて海未ちゃんのことを理解できたと思います。




私たちは同じなんだと。





穂乃果ちゃんという太陽がいなければ。





生きていくこともままならない存在だと……。






私のお友達は、穂乃果ちゃんと海未ちゃん。






この日、始めて、私たちはそう呼べる関係になれたと思います。

79: 2016/04/17(日) 18:02:39.42 ID:2KHKwO+n.net
―――。




暫くの間は、平和な時間が流れていたと思います。




穂乃果ちゃんが絶対という、私たち二人だけの特別なルールこそあったけれど。






仮初めではない、本当の友人同士の関係性が続いていました。





しかし、人間というのは変わらずにはいられないのです。







良くも悪くも。









私たちは変わっていってしまいます―――。

81: 2016/04/17(日) 18:03:17.82 ID:2KHKwO+n.net
穂乃果「二人共!おはようー!!」

ことり「ほのかちゃん、おはよう♪」

海未「遅いですよ、ほのか」

穂乃果「そ、そんなことないよ……!」アセアセ

海未「待ち合わせ時間を過ぎています!これ以上遅れたら三人とも遅刻してしまうかもしれないんですよ!」

穂乃果「だ、大丈夫だよー!ほら!あと三分あるし!」

ことり「は、走らないとダメかな……?」アハハ

穂乃果「そ、そうだね!ほら、ことりちゃん、うみちゃん!行こう!」

海未「はぁ……急ぎましょう」

穂乃果「うん!」




ことり「……」

89: 2016/04/17(日) 18:04:50.25 ID:2KHKwO+n.net
中学生になって、海未ちゃんが、大きく成長しました。





びくびく、おどおどしていた幼少期と変わって。




落ち着き払い、外見も清楚で、美しく……。



まさに、大和撫子という言葉がぴったり。





みんなのよく知る、あの海未ちゃん。






穂乃果ちゃんと毎日口ゲンカをしている、あの海未ちゃん。

93: 2016/04/17(日) 18:05:34.74 ID:2KHKwO+n.net
―――本当にいつの間にかだった。








いつの間にか海未ちゃんは。














穂乃果ちゃんと対等の位置に居座ってた―――。

97: 2016/04/17(日) 18:06:03.32 ID:2KHKwO+n.net
穂乃果ちゃんは”絶対”なのに。





穂乃果ちゃんに対して意見を言う。




それどころか、穂乃果ちゃんに対して口ごたえすらしている






傍から見ればそれは、ケンカだ。






海未ちゃんにどんな心境の変化があって変わったのかは知らない。





でもそれは。





私たち二人にとって。




破ってはいけない禁忌だったはず。

99: 2016/04/17(日) 18:06:32.89 ID:2KHKwO+n.net
ケンカはダメ……。



穂乃果ちゃんに嫌われるから。



仲が悪いのもダメ……。



穂乃果ちゃんに嫌われるから。

103: 2016/04/17(日) 18:06:58.25 ID:2KHKwO+n.net
それなのに海未ちゃんは……。




穂乃果ちゃんと言い合いをしている。




穂乃果ちゃんに嫌われちゃうよ。




穂乃果ちゃんとケンカをしている。




穂乃果ちゃんに嫌われちゃうよ。

107: 2016/04/17(日) 18:07:25.24 ID:2KHKwO+n.net
あれ……?




でも、穂乃果ちゃんは海未ちゃんを嫌いになってないよ……?




海未ちゃんも、穂乃果ちゃんが嫌いじゃないみたい……。




あれ……。



あれあれ。




おかしいな。




なんでだろ……。

110: 2016/04/17(日) 18:07:57.18 ID:2KHKwO+n.net
穂乃果ちゃんはケンカが嫌いなんじゃないのかな。

穂乃果ちゃんは中が悪いのも嫌なんじゃないのかな。

海未ちゃんとケンカしてるんだよ?

なんでなんでなんでなんで?


海未ちゃんなんて嫌いになればいいのに。
海未ちゃんなんて嫌いになればいいのに。
海未ちゃんなんてキライになればいいのに。
ウミちゃんなんてきらイになればいいのに。











うみちゃんなんてうみちゃんなんてうみちゃんなんてうみちゃんなんてうみちゃんなんてうみちゃんなんてうみちゃんなんてうみちゃんなんて。
キライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライ。






――――。

114: 2016/04/17(日) 18:08:32.10 ID:2KHKwO+n.net
……私は。





穂乃果ちゃんとケンカなんて絶対できない。






だって。






穂乃果ちゃんしかいないから。






穂乃果ちゃんは”絶対”だから。







……だから。








私はまた海未ちゃんが許せなくなった。

117: 2016/04/17(日) 18:09:01.34 ID:2KHKwO+n.net
同じ穂乃果ちゃんを好きな友達だと思ったのに。





違った。




海未ちゃんは成長して変わってしまった。




ううん。




元々、コチラ側の人間じゃなかったのかもしれない。





だから。




穂乃果ちゃんとケンカできるんだ……。




そうじゃないと、説明できない。





私が、説明できない……!

120: 2016/04/17(日) 18:09:30.00 ID:2KHKwO+n.net
海未「ことり」


ことり「……」


海未「次の期末試験の範囲ですが……。こことここで良かったんですよね?」






そういえばいつからだろう。




海未ちゃんが私を呼び捨てにするようになったのは。

128: 2016/04/17(日) 18:10:32.72 ID:2KHKwO+n.net
イライラ……。





あ……。





そういえば、穂乃果ちゃんもだ……。





イライラ……。

130: 2016/04/17(日) 18:11:03.01 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……先生の話、聞いてなかったの?」


海未「あ、すみません……。ちょうどその時、ほのかを気にしていたら……」


ことり「言い訳は良くないよ」


海未「そ、そうですね……」





昔のように。





冷たいささくれだった氷のような心が。





少しずつ鋭利になっていくのがわかりました。

135: 2016/04/17(日) 18:11:39.97 ID:2KHKwO+n.net
穂乃果「うーみちゃん!ことりちゃん!」

ことり「っ……!」

海未「ほのか……」






穂乃果ちゃんに嫌われたくない。
穂乃果ちゃんに嫌われたくない。

穂乃果ちゃんに嫌われたくない!

139: 2016/04/17(日) 18:12:03.60 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……どうしたの?ほのかちゃん」


穂乃果「今度の試験の範囲教えてよぉ~!ほのかぐっすり寝てたから全然わからなくて……!」


海未「……全く、だからあれほど夜更かしするんじゃありませんといったんです!」


穂乃果「だってー!夜のテレビ番組面白いんだもん……!」


海未「録画して次の日に見ればいいでしょう!」


穂乃果「夜更かししながら見るからいいんじゃんか!」


海未「だから授業中に寝てしまうんでしょう!?大体ほのかは……」クドクド

144: 2016/04/17(日) 18:12:35.44 ID:2KHKwO+n.net
イライラ。


イライラ。



穂乃果ちゃんに嫌われたくない。

穂乃果ちゃんに嫌われたくないからケンカはやめて。

ケンカはやめて仲良くして。

仲良くしたいから穂乃果ちゃん嫌わないで。

それに呼び捨てにしないで。

穂乃果ちゃんを呼び捨てにしないで。

やめてやめてやめてやめてイライライライライラキライキライキライキライ。

146: 2016/04/17(日) 18:13:01.10 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……ほ、ほのかちゃん、ことりが教えてあげるから……ね?」


穂乃果「ホント!?」パッ


ことり「へぅ……!///」


海未「ことり……」


ことり「だから……二人共、ケンカはやめよ……?」


穂乃果「うんうん!分かったよぉ~!」


穂乃果「ありがとうことりちゃん~!!」ダキ


ことり「ちゅん!?///」

151: 2016/04/17(日) 18:13:30.81 ID:2KHKwO+n.net
私のマグマのように煮えたぎった嫉妬も。




穂乃果ちゃんに手にかかれば、一瞬で冷えて固まる。







ああ……。





やっぱり私には穂乃果ちゃんしかいない。







穂乃果ちゃんさえいれば、それでいい……。

155: 2016/04/17(日) 18:13:55.20 ID:2KHKwO+n.net
穂乃果「ごめんねー、本当はほのかも一緒に遊びたかったんだけど……」


穂乃果「今日はすぐに帰って店番しろってお母さんが……」


ことり「あはは、しょうがないよ穂乃果ちゃん」


海未「お店のことでしたら仕方がありません。気にしないで先に帰ってください」


穂乃果「うんー!二人共ありがとうー!」


穂乃果「また明日ねー!」フリフリ


ことり「また明日♪」フリフリ


海未「気をつけて帰ってください」フリフリ

158: 2016/04/17(日) 18:14:26.28 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……」

海未「……」


海未「……あの、ことり……」


ことり「いこっか」スタスタ




海未「……あ、はい……」トコトコ

161: 2016/04/17(日) 18:14:57.40 ID:2KHKwO+n.net
穂乃果ちゃんは”絶対”だから。




ケンカはしない。




あの時と同じ過ちは犯さない。






でも、”好き”になる必要はないよ。





好き……?




海未ちゃんなんて、”普通”でいい。




私には穂乃果ちゃんがいればそれでいいんだから。

166: 2016/04/17(日) 18:15:25.11 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……」スタスタ


海未「……」トコトコ…


ことり「……」スタスタ


海未「……あ、あの……ことり……?」





呼び捨てにしないで。





ことり「……何?」



海未「……そ、その……」




海未「もしかして今日は、機嫌が悪いのでしょうか……?」




ことり「……」

169: 2016/04/17(日) 18:15:54.57 ID:2KHKwO+n.net
見て分からないの?


そう

つっけんどんに返そうと思ったけど。



それじゃケンカになっちゃう。




ダメだダメだ……。




穂乃果ちゃんには嫌われたくない。






ことり「……そんなことないよ?」


海未「……そうです……か」


ことり「うん……」





ことり「海未ちゃんの気のせいじゃないかな……?」

174: 2016/04/17(日) 18:16:23.02 ID:2KHKwO+n.net
自分でもびっくりするぐらいに。



暗く冷たい言葉だったと思う。




まるで温度を感じさせない表情で。




けれど。



にっこりと。



笑顔で。




答えてあげた。











なのに。

176: 2016/04/17(日) 18:16:59.69 ID:2KHKwO+n.net
海未「……そうですか」








海未「なら、よかったです」ニコ







ことり「っ……」




満面の笑顔で。




優しい声で。




海未ちゃんは返してくれた。

185: 2016/04/17(日) 18:18:05.82 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……」


海未「それじゃ、行きましょうか」トコトコ…





……なんで。



なんでこんなに冷たくしてるのに。




こんなに……突き放しているのに。






私に笑いかけてくれるの……?

189: 2016/04/17(日) 18:18:32.45 ID:2KHKwO+n.net
海未ちゃん……。






昔とは……。




子供の頃とは違う、海未ちゃんの反応。





あの頃の海未ちゃんなら。





私が冷たくするだけで……。





怯えて、縮こまって、必要以上に私と距離をおいていたと思う。

192: 2016/04/17(日) 18:19:10.29 ID:2KHKwO+n.net
それなのに今は。





私のことを。




私の氷の刃をものともせず。





包み込んで、溶かそうとする……。

196: 2016/04/17(日) 18:19:38.29 ID:2KHKwO+n.net
それはまるで……。





穂乃果ちゃんのよう……。





穂乃果ちゃん?




そんなまさか。




海未ちゃんは……海未ちゃんだ。




穂乃果ちゃんじゃない。

201: 2016/04/17(日) 18:20:07.66 ID:2KHKwO+n.net
穂乃果ちゃんは海未ちゃんじゃない。




海未ちゃんは穂乃果ちゃんじゃない。




……そんなの当たり前だ。




私には穂乃果ちゃんだけ。



私には穂乃果ちゃんだけ。




海未ちゃんはいらない……海未ちゃんは嫌い……海未ちゃんは消えて。


穂乃果ちゃん海未ちゃん穂乃果ちゃん海未ちゃん穂乃果ちゃん海未ちゃん穂乃果ちゃん海未ちゃん穂乃果ちゃん海未ちゃん穂乃果ちゃん海未ちゃん

204: 2016/04/17(日) 18:20:42.31 ID:2KHKwO+n.net
――――。





アレー、キミヒトリー?カワイイネ-




ことり「……」ハッ




コンナトコロデドウシタノー?

ナァナァ、オレラトイッショニアソバナイ?





あれ……?



海未ちゃんは……?





海未ちゃんが……いない。




それに、この人達は……?

211: 2016/04/17(日) 18:21:46.07 ID:2KHKwO+n.net
キミ、ドコノコー?


ッテイウカ、メチャクチャカワイクネ?


ネー?イッショニドッカイカナイ-?





何人もの男の人達に囲まれ。


私はロクに身動きも取れない状態で、びくびくと固まっていました。




私たちが成長したことによって起きた環境の変化の一つ。




初めての体験。



初めて受ける恐怖。

216: 2016/04/17(日) 18:22:20.67 ID:2KHKwO+n.net
何故私はこの場に一人なんだろう。



一人は心細い……。



一人は怖いよ……。




穂乃果ちゃん……。




穂乃果ちゃん……。






穂乃果ちゃん、助けて……!!

220: 2016/04/17(日) 18:22:52.98 ID:2KHKwO+n.net
目を閉じて、心のなかで必氏に訴えかける私を助けてくれたのは―――。








今でもはっきりと覚えています。





細く、美しく、しなやかで、繊細。





けれども、力強く。





私の前に、大きく手を広げ佇むのは……。










海未「……私の大切な友人に、指一本でも触れることは許しません……!」

224: 2016/04/17(日) 18:23:25.34 ID:2KHKwO+n.net
ことり「……っ///」







エー、ナンダヨコイツー


コノコモカワイクネ-?


ホントダー、フタリトモレベルタケー


イッショニドッカイコーヨー





海未「……っ!!」キッ




ナ、ナンカコエエヨコイツ


ヤバインジャネ…?


イコウゼ…?

230: 2016/04/17(日) 18:24:04.85 ID:2KHKwO+n.net
海未「……」



海未「……ふぅ」



海未「……行きましたか……さすがに緊張しましたね」


海未「ことり……?大丈夫ですか……?」


海未「急にいなくなるからびっくりしましたよ……」


海未「探したら男性に囲まれていて更に焦りましたが……」



海未「何事もなくて良かったです」


ことり「……///」



海未「ことり……?」

234: 2016/04/17(日) 18:24:33.59 ID:2KHKwO+n.net
この日を堺に。






私の想いは、めまぐるしく変化していきます。





ぐるぐるぐるぐる。






まるで万華鏡のように。







ぐるぐるぐるぐる。

2: 2016/04/22(金) 17:35:27.14 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「ことりちゃん!!」ダキッ

ことり「ちゅん!?」ドキ



穂乃果「大丈夫!?無事!?変なことされてない!?」ギュウ


ことり「ほ、ほのかちゃん……///」クラリ


海未「ほ、ほのか……ことりが目を回してますよ……///」


ことり「……///」グルグル


穂乃果「ほ、本当だ!!やっぱり何かされたの!?ことりちゃーん!!」ギュウー!


ことり「あうぅぅぅ……///」グルグル





多分これが幸せの絶頂なんだろうなって。




この時私は確信しました。






ぐるぐるぐるぐる。

3: 2016/04/22(金) 17:35:43.86 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「な、なーんだ……無事だったんだね……良かったよぉ」ホッ


ことり「う、うん……///」ドキドキ


穂乃果「海未ちゃんが急に「昨日は男の人に絡まれて大変でした」なんていうから焦っちゃった……」


海未「話を最後まで聞かないほのかが悪いんです!」


穂乃果「だってー!心配だったんだもん!」


ことり「あ、あはは……ことりは大丈夫だよ……♪」





ことり「……海未ちゃんが……助けてくれたから」





キュン

5: 2016/04/22(金) 17:36:17.11 ID:VOYq7fK/.net
え……。




何、今の気持ちは……。





海未ちゃん……?






キュン





……まただ。






よくわからないけど……。






胸が痛む……。

6: 2016/04/22(金) 17:36:53.37 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「……おー、さすがうみちゃんだねー!」


海未「い、いえ……そんな……///」


穂乃果「男の人をバッタバタって感じだったのかなー!?」


海未「そんなことはしていません!!///」


穂乃果「今のうみちゃんだったらやりかねない気もするけど……」


海未「ご、誤解を招く言い方はやめてください!」


穂乃果「あはは♪冗談だよ~!」


海未「も、もう……!」

7: 2016/04/22(金) 17:37:25.23 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「……それにしても、うみちゃん変わったよねぇ」


海未「そ、そうですか……?」


穂乃果「そうだよー!家のこととか部活やりだしてからだよね?」


穂乃果「昔はあんなに泣き虫さんだったのに……」ニシシ


海未「む、昔のことはあまり言わないでください……恥ずかしい……///」


穂乃果「別に恥ずかしがることはないよ、それもこれもぜーんぶうみちゃんだし!」


海未「……///」



穂乃果「ね、ことりちゃん!?」



ことり「……」

8: 2016/04/22(金) 17:37:48.09 ID:VOYq7fK/.net
海未「……?」


穂乃果「ことりちゃん……?」



ことり「え!?」ハッ


ことり「あ……な、なに……ほのかちゃん……?」アセアセ



穂乃果「もー!話聞いてなかったのー!?」


ことり「ご、ごめんなさい……」


海未「ことり……」


ことり「え、えっと……何の話かな……?」


穂乃果「うみちゃんはいつだって、うみちゃんだねっていう話だよ!」


ことり「うみちゃん……?」


海未「それでは意味がわかりませんよ……」


穂乃果「えー?そうかなー?」


ことり「あはは……」

9: 2016/04/22(金) 17:38:13.69 ID:VOYq7fK/.net
海未「……でも、ほのかの言う通りかもしれません」


穂乃果「え?」


海未「私の想いは……いつだって変わりませんから」


海未「私はいつだって、二人のことを信頼していますよ」





ことり「……っ」




海未「だから……私に二人を守れる力があるのなら……全力で守りたい」

海未「ただ、それだけです」ニコ





チクリ





また……。




でも、さっきとは違う……痛み。

10: 2016/04/22(金) 17:38:53.52 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「うみちゃん、カッコイイー!」


海未「……自分で言っておいて、恥ずかしいです……///」


穂乃果「確かに恥ずかしいよねぇ……」


穂乃果「あはは、でもそんなうみちゃんもうみちゃんらしいよ!」バシバシ


海未「どういうことですかっ!?」





ことり「……」





どうして……。




どうして……。







そんな笑顔でいられるの……?

11: 2016/04/22(金) 17:39:23.40 ID:VOYq7fK/.net
何、信頼してるって。






穂乃果ちゃんは分かるよ。





穂乃果ちゃんは”絶対”だもん。





私も、穂乃果ちゃんは信頼する。





穂乃果ちゃんは”絶対”だから。






でも、私は……?

13: 2016/04/22(金) 17:39:53.87 ID:VOYq7fK/.net
なんで私のことも、信頼できるの……?





あんなに……冷たくしたのに。




あんなに……意地悪したのに。




あんなに……虐めたのに。





なんで……こんな私のことを信頼……できるの……?






チクリ






胸が……。





胸が……痛いよ……。

14: 2016/04/22(金) 17:40:34.67 ID:VOYq7fK/.net
―――。





ことり「……」




ことり「……」




穂乃果「ことりちゃーん!」ダッ


ことり「……」




穂乃果「ことり……ちゃん?」


ことり「……」ボー


穂乃果「うーん……ことりちゃんがボーッとしてるなんて珍しい」


穂乃果「ほのかみたい……」


海未「ことりに失礼ですよ」


穂乃果「ひどくないっ!?」ゴーン

15: 2016/04/22(金) 17:41:09.60 ID:VOYq7fK/.net
海未「……」


ことり「……」


海未「ことりにもそういう時はありますよ」


穂乃果「……うん、そうだねー」


海未「話しかけるのも悪い気がしますし、そっとしておきましょう」


穂乃果「うん」




ことり「……」ボー

16: 2016/04/22(金) 17:41:44.03 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果ちゃんと喋る海未ちゃんを遠目に見ながら。



ぼーっと、色々な想いを巡らせていました。




ぐるぐるぐるぐる。




穂乃果「……」ウミチャーン!





穂乃果ちゃん。




私の、大好きで、大好きで、とっても大切な、”絶対”的存在。




穂乃果ちゃんが傍にいなければ。




穂乃果ちゃんという太陽が傍にいなければ、凍えてしまうから。




私は穂乃果ちゃんの隣から離れることはできない。




離れたいとも思わない。

17: 2016/04/22(金) 17:42:18.98 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果ちゃんが全て。




私は穂乃果ちゃんが大好き。




穂乃果ちゃんは”絶対”





穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん。




……。





……大丈夫だ。





私は穂乃果ちゃんのことが大好き。





それは間違えようもない。





大丈夫……。




だって、”絶対”だから……。

18: 2016/04/22(金) 17:42:55.40 ID:VOYq7fK/.net
それじゃあ……。





海未「……」ホノカ!マタアナタトイウヒトハ…!!





海未ちゃん。




キュン





ことり「……っ」ギュ…





何……。



何なのこの胸の痛みは……。

19: 2016/04/22(金) 17:43:59.44 ID:VOYq7fK/.net
私は穂乃果ちゃんのことが好き。




海未ちゃんは嫌い。




チクリ





私は穂乃果ちゃんのことが好き。




海未ちゃんはいらない。



チクリ





私は穂乃果ちゃんのことが好き。




海未ちゃんは消えて……!



チクリ 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

20: 2016/04/22(金) 17:44:32.31 ID:VOYq7fK/.net
……やめてよ!!



どうして海未ちゃんのことを想うと……。




胸が痛むの……!!




穂乃果ちゃんのことを想う時は……。




こんな胸の痛みなかった筈なのに!!





私は穂乃果ちゃんが好き私は穂乃果ちゃんが好き私は穂乃果ちゃんが好き私は穂乃果ちゃんが好き。
ほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃん。

21: 2016/04/22(金) 17:45:34.39 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「……」オセッキョウハヤメテヨー!

海未「……」イイエ!キョウトイウキョウハ……!




海未ちゃんは嫌い……!


穂乃果ちゃんに馴れ馴れしくしないで。



…チクリ



海未ちゃんは嫌い……!


穂乃果ちゃんを呼び捨てにしないで!



……チクリ




海未ちゃんは嫌い……!


穂乃果ちゃんを取らないで!!



………チクリ




海未ちゃん嫌い海未ちゃん嫌いちくり海未ちゃん嫌いちくり海未ちゃんキライちくり海未ちゃんキライ。
やめてやめてやめてやめてやめてキライキライキライキライキライキライ!!


チクリ…

22: 2016/04/22(金) 17:46:09.18 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……うう……」





……。




私は……。




海未ちゃんのことを……。




どう想ってるの……?




ぐるぐるぐるぐる。

23: 2016/04/22(金) 17:46:38.51 ID:VOYq7fK/.net
海未「……」ハァ…ツカレマシタ

穂乃果「……」オコルトカラダニワルイヨ?





海未ちゃんは変わった。



家のこととか、部活をやりだしてから……明確に変わった。



それまでの海未ちゃんとは最早別人だと思う。




臆病で、泣き虫で、意気地なしの頃があったなんて、信じられない程に。



今は……綺麗で、繊細で、それでいて、逞しい。




海未『……私の大切な友人に、指一本でも触れることは許しません……!』





ことり「……///」




キュン

24: 2016/04/22(金) 17:47:09.71 ID:VOYq7fK/.net
どれだけ誤魔化していても。





忘れることはできない。





男の人に囲まれ、困惑している私の前に佇んでいたのは―――。






海未『ことり……?大丈夫ですか……?』






キュン



















うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!


違う違う!ダメ!そうじゃない!違うの!ダメ!ダメなんだってば!

25: 2016/04/22(金) 17:47:41.24 ID:VOYq7fK/.net
私は穂乃果ちゃんが好き!チクリ
わたしは穂乃果ちゃんが好き!チクリ

海未ちゃんはキライ!チクリ
うみちゃんは嫌!チクリ

穂乃果ちゃんは絶対!チクリ
ほのかちゃんは絶対!チクリ
海未ちゃん嫌いチクリうみちゃんいやチクリ海未ちゃん消えてチクリ海未ちゃんいらないチクリ海未ちゃんやだチクリ






ことり「だから嫌いなんだってば!!!!」バン







海未「……ことり……?」


ことり「っ!?」ビク

26: 2016/04/22(金) 17:48:17.64 ID:VOYq7fK/.net
―――気がつけば。



教室には誰もいなくなり。



窓から差し込む夕陽に照らされているのは。




私と海未ちゃんだけ。





カチコチ……カチコチ……





時計の秒針が刻む音だけが、嫌に響いていました。

28: 2016/04/22(金) 17:48:58.15 ID:VOYq7fK/.net
海未「……今日は様子がおかしかったので、心配になって戻ってきてみましたが……」トコトコ


ことり「……」


海未「大丈夫……ですか?」


ことり「……っ」ギュ




色んな感情が混ぜこぜになって。



海未ちゃんの顔をまともに見ることができませんでした。



私は穂乃果ちゃんが好き海未ちゃんは嫌い……。



ぐるぐるぐるぐる。

29: 2016/04/22(金) 17:50:07.69 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……だ、大丈夫……だよ」


海未「そう……ですか?」


ことり「……うん」


海未「とてもそうは思えませんが……」



ほっといてよ……。


優しくしないでよ……。



チクリ



ダメ……。




ケンカだけは……。




穂乃果ちゃんに嫌われちゃう……。

30: 2016/04/22(金) 17:50:38.87 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……あはは……ことりは、大丈夫だから……」


海未「……」


ことり「それより……ことり、さっき一人でなにか言ってなかった……?」


海未「何か……?」




もしかしたら……思い切り外へ、感情を爆発させてしまったかもしれない。



今のこの感情を……海未ちゃんに知られたくはない……。




海未「いえ、特別は何も……」



ことり「……そう」



ことり「それならいいの……」



海未「……」

31: 2016/04/22(金) 17:51:21.67 ID:VOYq7fK/.net
顔ははっきりと見えないけど。




多分、私のことを心配そうに見つめているんだと思う。




そして、どう接していいものか、悩んでいる筈。



海未ちゃんは、優しい人だから。




……。



……何、優しい人って。




私が海未ちゃんの何を知っているというの……?




海未ちゃんなんか嫌……海未ちゃんなんか嫌い……。

32: 2016/04/22(金) 17:53:01.34 ID:VOYq7fK/.net
海未「……やはり、心配です」





放っておいてくれればいいのに。





海未「ことり……」トコトコ





そうやって海未ちゃんは、優しくするから。

33: 2016/04/22(金) 17:54:17.63 ID:VOYq7fK/.net
海未「とりあえず、保健室に行きましょう……」ギュッ



ことり「……っ!!」






パシン





―――想いが、弾ける。























ことり「触らないでよっっっっ!!!!」





海未「っ!!!」





それは、私の二度目の過ち―――。





カチコチ……カチコチ……

34: 2016/04/22(金) 17:57:06.76 ID:VOYq7fK/.net
海未「……こ、ことり」


ことり「気安く名前を呼び捨てにしないでっ!!」

ことり「なんなの……なんなの!!」

ことり「なんで私の中に勝手に土足で踏み込んでくるの!?海未ちゃんは邪魔なんだよ!!ことりには穂乃果ちゃんだけいればいいの!
海未ちゃんはいらないんだよ!こないでよ!どうして私に優しくするの!!私は海未ちゃんにひどいことばっかりしてるんだよ!
嫌ってよ!蔑んでよ!罵ってよ!!!ことりなんか嫌いって言ってよ!!海未ちゃんなんか嫌い!海未ちゃんなんか嫌い!海未ちゃんなんか嫌い!!大っ嫌い!!!!」




海未「……」




ことり「はぁ……ッ!はぁ……ッ!!」

35: 2016/04/22(金) 17:57:51.02 ID:VOYq7fK/.net
海未「……っ」ポロ





ことり「はぁ……っ、はぁ……っ」




海未「ことり……っ」





ことり「お願い……消えて……っ」



海未「……っ!!」ダッ





ガラ!




バタン!





タッタッタッタ…







ことり「……はぁ……はぁ……」

36: 2016/04/22(金) 17:58:22.66 ID:VOYq7fK/.net
―――やってしまった。




海未ちゃんに触れられた瞬間。




全ての想いが混ぜこぜになって。




一瞬で弾け飛んでしまった。





感情の赴くまま……。




海未ちゃんを。




傷つけてしまった。





あの時のように。





そしてそれは、穂乃果ちゃんの嫌う。




ケンカ。





ことり「うう……」ジワ




ことり「うわぁぁぁぁぁぁ……っ!!!!」ボロボロ

37: 2016/04/22(金) 17:58:59.68 ID:VOYq7fK/.net
私は……。





一体自分が何故泣いているのか。




海未ちゃんを傷つけたことが悲しいのか、穂乃果ちゃんに嫌われうことが悲しいのか。




……よく分からなくなっていました。




私の想いは、もう、めちゃくちゃ。




ぐるぐるぐるぐる。

38: 2016/04/22(金) 17:59:47.17 ID:VOYq7fK/.net
ガラ









そんな情緒不安定な状態だったからなのかわかりません。




トコトコ…




私はその人が誰なのか、全く認識できませんでした。






私の前に立ち、






「ねぇ」




無機質な表情と、どこまでも冷たく、暗い目で。





「うみちゃん、泣いてた」





私のことを見下ろしていました。





「何か、知ってる?」

39: 2016/04/22(金) 18:00:17.40 ID:VOYq7fK/.net
私は……。




息も絶え絶えに、一言返すのがやっとでした。




ことり「し、知らな
「嘘だよね」








「ことりちゃん、今、目を見てないもん」







「ねぇ、なんで仲良くできないの」

40: 2016/04/22(金) 18:00:57.63 ID:VOYq7fK/.net
私の目の前にいる人……。




それは……。






「ことりちゃん」








「うみちゃんを泣かせたら」






























「ほのか、ゆるさないよ」

41: 2016/04/22(金) 18:01:39.13 ID:VOYq7fK/.net
ことり「っ」






















―――知らない人が、そこにいました。







カチコチ……カチコチ……

42: 2016/04/22(金) 18:02:13.92 ID:VOYq7fK/.net
誰。



今の、誰。



知らない。


知らない知らない!




私はあんな人、知らない……!






ことり「ぁ……ぐ……ぁ……」

43: 2016/04/22(金) 18:02:42.00 ID:VOYq7fK/.net
息が、できない。




足も、震えたまま動かない。




かなしばりにあったように。




振り向くことすら出来ず。




私は……。





静かに遠ざかっていく足音に、耳を傾けることしかできませんでした。






カチコチ……カチコチ……。

44: 2016/04/22(金) 18:03:59.71 ID:VOYq7fK/.net
―――。






ボフ






ことり「……」





……。




海未ちゃんとケンカしちゃった。




ケンカ……。




ううん。




違う。





あれは、一方的な拒絶だ。

45: 2016/04/22(金) 18:04:44.75 ID:VOYq7fK/.net
……ありったけの罵声を浴びせてしまった





私が海未ちゃんを、激しく嫌うあまりに。





思わず弾けてしまった、醜い感情……。






『海未ちゃんなんか嫌い!海未ちゃんなんか嫌い!海未ちゃんなんか嫌い!!大っ嫌い!!!!』




ズキン



ことり「……っ」ギュッ

46: 2016/04/22(金) 18:05:52.00 ID:VOYq7fK/.net
胸が……苦しい……。



なんで……こんなに苦しいの……?





海未ちゃんなんか嫌いな筈なのに……!




ズキン




ことり「……もう嫌……っ」




ことり「穂乃果ちゃん……っ」













『ほのか、ゆるさないよ』









ことり「っ!!!」ゾク

47: 2016/04/22(金) 18:06:58.39 ID:VOYq7fK/.net
ドッドッドッ




ことり「―――っ」






タッタッタッ




ガチャ





ビチャ……ビチャ……





ジャー





ことり「……うぅ……げほっ……げほっ……!!」






思い出すだけで、身体中の全てが逆流しそうな感覚に襲われた。






あの、無機質な目……。




温度のない淡々とした声……。



震えが止まらない。

48: 2016/04/22(金) 18:07:34.51 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……はぁ……はぁ……」







……ねぇ。




あれは一体誰だったの?




私、知らないよ……!






ほのかなんて、私……知らない……!!





あれは……穂乃果ちゃんなんかじゃない……!

49: 2016/04/22(金) 18:08:24.15 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果ちゃんが……。




私の大好きな穂乃果ちゃんが……!




あんな冷たい目をするもんか……!



あんな表情をするもんか……!!





穂乃果ちゃん……穂乃果ちゃん……!




穂乃果ちゃん嫌わないで穂乃果ちゃん嫌わないで穂乃果ちゃん嫌わないで穂乃果ちゃん嫌わないで……!!





ことり「……はぁ……はぁ……っ、んく…‥っ」

50: 2016/04/22(金) 18:08:50.56 ID:VOYq7fK/.net
……。





明日……。




海未ちゃんにどう接すればいいのかな。





今日のこと、謝れば許してくれるかな。





穂乃果ちゃんに嫌われないように、しっかり仲良くしないとね。






……大丈夫。 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

51: 2016/04/22(金) 18:09:31.77 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果ちゃんは許してくれるよ。





穂乃果ちゃんはどんな時だって。




私のことを導いてくれてきたから。





今回も、大丈夫。






ズキン






ことり「……っ」グス




……胸が、苦しいよ……。




なんで。



なんで……。

52: 2016/04/22(金) 18:10:06.75 ID:VOYq7fK/.net
―――。




穂乃果「ことりちゃん、おっはよーう♪」


ことり「っ……!?」


海未「ことり、おはようございます」





え……?




あれ……?




おかしいな。




いつもと、おんなじだ。

53: 2016/04/22(金) 18:10:45.02 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……あ、う、うん……おはよう……」


穂乃果「ことりちゃん……?どうしたの?」


ことり「へ!?あ、ううん!な、なんでも!」


穂乃果「そうー?」


海未「少し遅れていたようですが……大丈夫ですか?」


ことり「あ、だ、大丈夫だよ!ちょっと寝坊しちゃって……」エヘヘ


穂乃果「あーわかるわかるー、ほのかもたまーに寝坊しちゃうんだよねぇ」


海未「たまにじゃありません!いつも寝坊しているじゃありませんか!」


穂乃果「そ、そんことないよーっ!」


ことり「あ、あはは……」

54: 2016/04/22(金) 18:11:11.74 ID:VOYq7fK/.net
いつもの朝の風景。



中学生からはいつもお馴染みの、二人のケンカ。



全て、昨日までと変わらない。






……夢、だったのかな?





海未「大体ほのかは…‥!!」





ズキン

55: 2016/04/22(金) 18:11:52.16 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……っ」





夢じゃない……よね。




この胸の痛みは……。






でも、それならなんで……?





なんでこの二人はいつも通りなの?

56: 2016/04/22(金) 18:12:33.86 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「わ、わかったよー……明日からはちゃんと早く寝るよぉ……」


海未「今日からですっ!!」




ことり「……」




何も変化が起きていないのなら。




それでもいい。




穂乃果ちゃんに嫌われてさえいなければ。





……でも。








『ほのか、ゆる






ことり「―――っ」

57: 2016/04/22(金) 18:13:16.08 ID:VOYq7fK/.net
全部。





逆流する。




ダメ。







海未「大丈夫ですか!?」ユサユサ




ことり「――」ハッ





気が付くと、海未ちゃんに抱かれていた。




あの時目の前にあった。



細く、美しい。



そして強く、逞しい両の腕。





その中に、私はいた。

58: 2016/04/22(金) 18:13:55.77 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……///」ボン


海未「ことり、大丈夫ですか!?急に倒れそうになるかと思えば、今度は顔が真っ赤に……!!」


ことり「……だ、大丈夫だよ……平気……」


海未「本当ですか……?」


ことり「うん……。むしろ、このままの方が……///」


海未「あっ……///」



パツ




海未「す、すみません……つい勢いで……///」


ことり「う、ううん……こっちこそ、ごめんね……///」

59: 2016/04/22(金) 18:15:11.67 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「ことりちゃん、今日は帰る……?」


ことり「え……?」


穂乃果「無理しない方が良いよ?」


海未「そうですね……無理をして、学校で倒れられでもしたら心配です……」



ことり「……」





休めるものなら、休みたいよ……。





けど。





今の不安な気持ちを抱えたまま、一人でじっとはできない。





一人は……嫌……。

60: 2016/04/22(金) 18:15:51.08 ID:VOYq7fK/.net
ことり「ううん、ことりは平気だよ……?」


ことり「今倒れそうになったのも、軽い貧血だから……」


ことり「学校に着けば大丈夫……♪」



海未「……本当に、大丈夫ですか……?」



ことり「……うん」


海未「……」




海未「わかりました……。ですが、体調が悪くなったら、必ず言ってくださいね」


ことり「わかったよ」


海未「……それじゃ、行きましょうか」

61: 2016/04/22(金) 18:16:36.41 ID:VOYq7fK/.net
……。




夢じゃない……んだよね。




夢じゃないなら……。




何故あなたは、そんなに優しくできるの……?

62: 2016/04/22(金) 18:17:09.66 ID:VOYq7fK/.net
―――。





海未「昨日のこと……ですか?」


ことり「うん」



休み時間。



私は海未ちゃんと二人きりの時に、問いただしてみました。



昨日の、私とのやりとりを。

63: 2016/04/22(金) 18:17:35.98 ID:VOYq7fK/.net
海未「……特別、これといってなかった筈ですが」


ことり「……嘘」


海未「嘘ではありません。昨日は普通にそのまま、三人で帰宅したじゃないですか」




嘘だよ。





なんでそんな嘘をつくの……?




あんなに。




あんなに酷い言葉を浴びせられたのに。






どうして普通でいられるの……?




ズキン




ズキン

64: 2016/04/22(金) 18:18:28.42 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……っ」


海未「……ことり、無理をしているんじゃありませんか?」




してるよ。



海未ちゃんのせいで……。




ことり「大丈夫だよ……」




海未「……」





私はもう。



海未ちゃんがわからない。




海未ちゃんが嫌いなのかどうかもわからない。




海未ちゃんのことを考えると胸が苦しい。




だったら。





海未ちゃんなんかもうどうだっていい―――。





ズキン

65: 2016/04/22(金) 18:19:56.71 ID:VOYq7fK/.net
考えれば考える程に毒になるならば。



いっそ。




考えなければいい。



ズキン




やめよう。


考えるのをやめよう。








穂乃果ちゃん―――。




そうだ、穂乃果ちゃんのところへ行こう。



穂乃果ちゃんさえいれば。



穂乃果ちゃんさえ笑ってくれれば。



私は平気だから。

66: 2016/04/22(金) 18:20:48.75 ID:VOYq7fK/.net
海未「ことり……っ!」


ことり「じゃあね……ウミチャン」




ズキン





穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん



穂乃果ちゃんで想いを浸そう。




穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん
ほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃん
ホノカチャンホノカチャンホノカチャンホノカチャンホノカチャンホノカチャン

67: 2016/04/22(金) 18:21:29.88 ID:VOYq7fK/.net
―――。



海未「……それでは、私は部活へ行ってきますね」


穂乃果「うん!頑張ってね、うみちゃん!」


海未「はい」



海未「……ことり、気をつけて帰ってくださいね」


ことり「ウン……アリガトウミチャン」


海未「……それでは失礼します」



トコトコ……



バタン

68: 2016/04/22(金) 18:22:03.59 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……穂乃果ちゃん、いこ?」



穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん……。





やっと……。




やっと二人きりになれたよ。



ウミチャンはいらない。



穂乃果ちゃんがいいの





ことりの。



ことりの胸の苦しみを癒やしてよ。




ほのかちゃん……。

69: 2016/04/22(金) 18:24:09.53 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「……」


ことり「……穂乃果ちゃん?」








―――その瞬間。




教室の温度が一気に冷え込んだような気がしました。




振り返る穂乃果ちゃんの目。




それは……。











穂乃果「何……?」

70: 2016/04/22(金) 18:24:37.42 ID:VOYq7fK/.net
ことり「―――っ」






夢じゃない。



昨日見た、



私の、



知らない、




誰かの目。

71: 2016/04/22(金) 18:25:21.06 ID:VOYq7fK/.net
ことり「―――っく……はぁっ……」




言葉が、うまく、出てこない。




それなのに、



身体中の全てが逆流しそうになる。





……でも。



喋らなきゃ……。





穂乃果「……」



ことり「ほの……か……ちゃ

穂乃果「気安く名前を呼ばないでよ」



ことり「っ!!」

72: 2016/04/22(金) 18:26:43.42 ID:VOYq7fK/.net
どこかで聞き覚えるのある言葉。






それはまるで。






海未ちゃんに対する私の言葉。





ことり『気安く名前を呼び捨てにしないでっ!!』







……こんなにも。







こんなにも辛いことなんだね。





拒絶されるのは……。




海未ちゃん……。

73: 2016/04/22(金) 18:27:51.92 ID:VOYq7fK/.net
……そして爆発する想いは。




それだけに留まらない。





どこまでも果てしなく。




暗く冷たい。





憎悪と嫉妬―――。

74: 2016/04/22(金) 18:30:22.43 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「ねぇ、よく学校こられたよね」

穂乃果「うみちゃんを泣かせたのに」

穂乃果「よく平気な顔でお話できたよね」

穂乃果「うみちゃんを泣かせたのに…」

穂乃果「ことりちゃんって昔からそうだよね」

穂乃果「うみちゃんを泣かせてばかり」

穂乃果「ねぇ、なんで仲良くできないの」

穂乃果「うみちゃんを泣かせないで」

穂乃果「ねぇ、なんでケンカばかりするの」

穂乃果「うみちゃんを泣かせないでよ」

穂乃果「ことりちゃん、消えてよ」

穂乃果「うみちゃん泣かせるならさ」

穂乃果「ことりちゃんはいらないよ」

穂乃果「うみちゃんに酷いことするなら」

穂乃果「ことりちゃんなんて嫌い」

穂乃果「うみちゃんを泣かせないで」

穂乃果「ことりちゃんなんて嫌い…」

穂乃果「うみちゃんを泣かせないで…」

穂乃果「ことりちゃんなんて嫌い…っ」

穂乃果「うみちゃんを泣かせないで…っ」

穂乃果「ことりちゃんなんて嫌い…っ!」

穂乃果「うみちゃんを泣かせないで…っ!」


穂乃果「ことりちゃんなんて嫌いっ!」

穂乃果「うみちゃんを泣かせないでよっ!!!」

75: 2016/04/22(金) 18:31:21.99 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果ちゃんからの罵声を浴びせられながら。





理解が追いつかない頭の片隅で。




本当に小さく。





こんなことを思っていました。













穂乃果ちゃんは、私と同じなんだ―――。

76: 2016/04/22(金) 18:32:09.36 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果『ことりちゃん、消えてよ』






―――ダメ。



頭が。




穂乃果ちゃんの言葉を受け入れたら。




私は。







壊れてしまう。

77: 2016/04/22(金) 18:32:56.94 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「はぁ……っ!はぁ……っ!」



穂乃果「はぁ……はぁ……っ」



穂乃果「はぁ……」



穂乃果「っ……く……」



穂乃果「……」




穂乃果ちゃんは息を整え直すと。


さっきまであれほど激昂していたのが嘘のように。



冷たい無機質な表情に戻っていました。




穂乃果「……忘れないでよね」



穂乃果「ほのか、ことりちゃんをゆるさいから」

78: 2016/04/22(金) 18:33:58.59 ID:VOYq7fK/.net
ガラ





バタン





……。




ああ……。




あれはやっぱり、穂乃果ちゃんなんだ。



穂乃果ちゃんだったよ。




昨日は理解が追いつかなかったけど。



確かに穂乃果ちゃんだ。



間違えるはずがない。



あれは、私の大好きな穂乃果ちゃん。

79: 2016/04/22(金) 18:34:54.01 ID:VOYq7fK/.net
おかしいな。




私の大好きな穂乃果ちゃんが。




私のことを、嫌いって。




許さないって。




あはは。



あれ、おかしいな。



許さない。



穂乃果ちゃんがことりを許さないって。




それって。





嫌われたってことだよね? 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

81: 2016/04/22(金) 18:36:22.06 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果ちゃん。




穂乃果ちゃん……。




穂乃果ちゃんに……捨てられちゃう。




もういらないって。




ことりはもういらない。



ことりはもういらない……!





―――またひとりぼっち。





穂乃果ちゃんと出会う前の。




誰もいない。




穂乃果ちゃんもいない。




海未ちゃんもいない。

82: 2016/04/22(金) 18:37:45.67 ID:VOYq7fK/.net
やだ。




やだやだやだ。




やだやだやだやだやだ。



穂乃果ちゃん嫌

嫌わないで穂乃果ちゃん


穂乃果ちゃんいや嫌わないで穂乃果ちゃん

穂乃果ちゃんいやだよほのかちゃんいやいや穂乃果ちゃん


いやだいやだいやだいやだやだやだやだやだやだやだよやだよ!!!

83: 2016/04/22(金) 18:38:22.19 ID:VOYq7fK/.net
ガラ!




いやだ!!いやだよほのかぢゃん!!!
まってまって!行かないで!ほのかちゃん!!

ことりを捨てないで!
ことりをおいてかないで!!

まって!いやだ!ほのかちゃん!!



ことりは一人になったら……!!


一人になったら……もう……!!



ほのかちゃんほのかちゃん……!!






ことり「ほのかちゃんっっっ!!!」














パシーン!!








穂乃果ちゃんを追う私の耳に飛び込んできた、乾いた音。

84: 2016/04/22(金) 18:38:50.52 ID:VOYq7fK/.net
海未「……」





穂乃果「……」






そこには。





大きく手を振りかざしている海未ちゃんと。






うずくまる穂乃果ちゃんがいました。

85: 2016/04/22(金) 18:39:20.55 ID:VOYq7fK/.net
え……?


え……?




どうしたの……?


何があったの。



なんで穂乃果ちゃんがうずくまってるの……?




それに、なんで海未ちゃんは穂乃果ちゃんを叩いてるの?




穂乃果ちゃんに嫌われちゃうよ……。



なんで穂乃果ちゃんが、頬を押さえて泣いてるの……。



穂乃果ちゃんに嫌われちゃ……。





海未「……ほのか」


穂乃果「っ……」





海未「ことりに謝ってください!!」

86: 2016/04/22(金) 18:39:55.00 ID:VOYq7fK/.net
あやま……る……?




何したの、穂乃果ちゃん……?



穂乃果ちゃんは”絶対”なんだよ?



何をことりに謝るの……?





あれ……?





あれあれ?





おかしい。





なにかおかしい。

87: 2016/04/22(金) 18:40:49.61 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……うみ……ちゃん……?」



海未「ことり……っ!」ダッ






海未ちゃんは、私の顔を見るやいなや。




脇目も振らず私のもとに駆けつけ。






ギュ…




ことり「っ!?///」





……そっと、私の身体を抱きしめてくれました。

88: 2016/04/22(金) 18:41:18.90 ID:VOYq7fK/.net
海未「……こんなに顔を泣き腫らして……っ!」


穂乃果「……ことりちゃん……」



ことり「……///」






ドクンドクン…





海未ちゃんの心臓の鼓動が、聞こえる……。







ああ……。




暖かい……。




凄く、暖かいよ。

89: 2016/04/22(金) 18:42:09.69 ID:VOYq7fK/.net
海未「ほのか、ことりに……謝ってください」


穂乃果「……」





海未ちゃんは私のことを抱きしめながら。




厳しい視線を穂乃果ちゃんに送っていました。




……私側からは見えないけど。




穂乃果ちゃんはきっと。




悔しそうな顔をしているに違いないと思いました。





だって。




歯を食いしばる音が、響いていたから……。

90: 2016/04/22(金) 18:42:41.19 ID:VOYq7fK/.net
今の穂乃果ちゃんの顔を。





見たくはない。




見たら私は……壊れてしまうから。






だから私は。




海未ちゃんの腕の中で、微睡んでいた。




顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていたけれど。




海未ちゃんは気にしないでいてくれた。







私はそれまでにあった出来事を、ほんのすこしの間全て忘れ。




静かに、微睡んでいた。

91: 2016/04/22(金) 18:43:39.02 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「……だって」




かなりの時間を空けてから、穂乃果ちゃんが駄々っ子のように口を開きました。





海未「ほのかっ!!」キッ



穂乃果「う……っ!」グス





子供の駄々を許さない親の如く。


海未ちゃんが更に視線を鋭くして、穂乃果ちゃんを睨んでいました。




その視線に耐え切れなくなった穂乃果ちゃんは。




やがて。




静かな嗚咽とともに。




泣き出してしまいました。

92: 2016/04/22(金) 18:44:14.75 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」




何に憚れることもなく。



ただただ、本能のままに泣き声をあげる穂乃果ちゃん。




それは本当に。




ただの子供のようでした。




私たちの知っている、太陽ではなく。




どこにでもいる、駄々をこねる、子供の姿でした。

93: 2016/04/22(金) 18:45:16.85 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「だって……!だっで……!!!うう……!こどりちゃんが……っ!うみちゃんにっ!!ひどいことを……っ!!しだと思った……っ!から……っ!!」ボロボロ



穂乃果「えぐっ……!昨日……っ!!うみちゃんが……っ!えぐ……っ!うみぢゃんが泣いて……教室からでできたから……っ!!」ボロボロ



穂乃果「また……っ!ことりちゃんが……っ!うみちゃんを虐めてるんだと思って……っ!!」






あ……。




……。




そっか……。




穂乃果ちゃん、気付いてたんだ……。




子供の頃……。






私が……海未ちゃんに対して、酷いことしてたの……。

94: 2016/04/22(金) 18:45:55.21 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「だから……っ!だがらぁ……っ!!ことりちゃんが……っ!ゆるせなくって……っ!!」ボロボロ






ことり「……うっ……」ジワ




それを見てたら、私も自然と涙が溢れ出してきました。




自然と……涙がぽろぽろと、零れていきました。

95: 2016/04/22(金) 18:46:38.88 ID:VOYq7fK/.net
海未「……」




ギュ…




穂乃果「っ!?///」







海未ちゃんが、私と一緒に、穂乃果ちゃんも。




力強く、優しい両の腕で抱きしめてくれました。

96: 2016/04/22(金) 18:47:04.03 ID:VOYq7fK/.net
海未「……私は、何もされていませんよ」


海未「ことりとは、ただ昔話をしていただけのことです」


海未「それで、昔を懐かしんで……涙を流した。それだけですよ」



穂乃果「ホント……?」



海未「ええ……」



穂乃果「……うわぁぁぁぁーーーーーん!!」


穂乃果「こどりちゃんっ!ことりちゃんごめんなさいーーーー!!!」



海未「……」ギュ…









ことり「嘘だよ」

97: 2016/04/22(金) 18:47:33.98 ID:VOYq7fK/.net
海未「ことり……!」





私は……。



どうしたらいいのか、全然わからなかったけど。



海未ちゃんに抱かれながら、安心していたからなのか。




自分でも驚くほど、その言葉が自然と出ていました。






多分私は。





ズルイ、卑怯者の私は……。





海未ちゃんの温もりがなければ……逃げていたと思います。

98: 2016/04/22(金) 18:48:13.40 ID:VOYq7fK/.net
ことり「何もしてないなんて、嘘だよ」



穂乃果「嘘……?」



海未「ことり……今は黙っていて

ことり「嫌だよ!」



海未「ことり……」




ことり「ことり……海未ちゃんに……嘘はつきたくない……」

99: 2016/04/22(金) 18:48:41.22 ID:VOYq7fK/.net
今までさんざん嘘をついていたのに。



海未ちゃんには、酷いことしかしてないのに。



なのに。



私はそう思いました。




私は……溢れてくる涙を止めることもせず。




ただただ零れゆく涙と共に、言葉を紡ぎだしました。

100: 2016/04/22(金) 18:49:13.66 ID:VOYq7fK/.net
ことり「海未ちゃん……穂乃果ちゃん……ごめんなさい……!!」ボロボロ



ことり「ことりは……!ことりはぁ……!臆病で……卑怯者だからぁ……!」ボロボロ



ことり「穂乃果ちゃんに嫌われたくないと思って……!捨てられたくなくって……!」ボロボロ



ことり「嘘をついてましたぁ……!!」ボロボロ



ことり「本当は……海未ちゃんにたくさん……!!」


ことり「子供の頃からたくさん……意地悪なこともぉ……!!」



ことり「許してもらえないくらい酷いことも……してましたぁ……!!」




ことり「ほのかちゃんを……ほのかちゃんを……取られたくなかったからぁ……!!」



海未「ことり……」



穂乃果「ことりちゃん……」

101: 2016/04/22(金) 18:49:40.12 ID:VOYq7fK/.net
ことり「ことりは……ほのかちゃんがいなかったら……!一人ぼっちになっちゃうからぁ……!!」





ことり「だから……!ことりは……そんな最低なことを……!!」




ギュウ




ことり「っ!?///」







海未「……もう、いいんです」





海未「……私は、何も知りませんよ」



海未「何も、聞いてません……」



ことり「嘘っ!!」

海未「嘘じゃありません」





海未「……だって」



海未「私は、何も嫌な思いなんてしてないんですから」




海未「ね、ことり?」

102: 2016/04/22(金) 18:51:38.22 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……うう……」





海未ちゃん……。



海未ちゃんは、優しすぎるよ……っ!





ことり「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーん!!!!」ギュウ






海未「……」ナデナデ





いつまでも。



いつまでも。





三人で抱き合って、涙を流し続けました。





今までの罪を洗い流すかの如く。




涙はとめどなく溢れて、零れていきました。



犯した罪は、決して洗い流すことはできないのだけれど……。




それでも今は―――。

103: 2016/04/22(金) 18:52:26.01 ID:VOYq7fK/.net
―――。







それから、ひとしきり三人で泣いたあと。




穂乃果ちゃんが静かに口を開きました。






穂乃果「ことりちゃん……」





穂乃果「ごめんなさい」







穂乃果ちゃんが私に対して謝る。






それは今までだったら、ありえないこと。





だって、穂乃果ちゃんは”絶対”だったから。

104: 2016/04/22(金) 18:52:55.30 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「……ことりちゃんがそんな辛い思いをしてるなんて……気づけなかった」



穂乃果「……ことりちゃんがそんな風にほのかのことを見てるなんて、考えもしなかった」





穂乃果「ほのかはバカだから……何も考えず、みんなと仲良くしてた……」






穂乃果「……ほのか……みんなみんな……勝手に仲がいいと……仲が良くなると思ってたけど……」



穂乃果「そうじゃなかったんだね……」




穂乃果「ほのかが何も考えず……うみちゃんと遊んだりしてたから……ことりちゃんはうみちゃんに、嫉妬……しちゃったんだよね」



穂乃果「だから……ごめんなさい」

105: 2016/04/22(金) 18:53:27.52 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……ううん……」




ことり「ことりも……ごめんなさい……」





ことり「だって、ことりが嫉妬したのは……ことりの心が弱かっただけだから」



ことり「海未ちゃんは何も悪くないし……ほのかちゃんだって、ぜんぜん悪く無い」




ことり「悪いのは……全部ことりなの……」



ことり「ことりが……ことりが……!」






海未「ことり」



ことり「っ……」

106: 2016/04/22(金) 18:54:12.14 ID:VOYq7fK/.net
海未「……ことりは何も悪くありませんよ」



海未「そしてほのかも……」




海未「
私は……子供の頃は、本当にどうしようもない弱虫でした」



海未「泣き虫で、臆病で……別に今も、全てを克服なんてしたなんて自惚れるつもりは全くありませんが……」



海未「あの頃は酷いものでした。自分の汚点です」



海未「……そのせいで、ことりに嫉妬させてしまった」


海未「ほのかに、無用な心配をさせてしまった」




穂乃果「そんな……!うみちゃんだって悪くは……!」


ことり「そうだよ…‥!海未ちゃんのせいなんかじゃ……!」

107: 2016/04/22(金) 18:54:49.69 ID:VOYq7fK/.net
海未「……」クス


海未「だから私は……そんな自分が嫌で、家の道場で練習をするようになり、部活にも入った」


海未「弱い心を鍛え直したかったから」



海未「私は……ほのかに頼りきりになるのは嫌でした」


海未「ほのかのことが……どうしようもなく好きだったから」



穂乃果「う、海未ちゃん……///」



海未「そしてそれは、ことりも同じです」



ことり「え……?」

108: 2016/04/22(金) 18:55:24.14 ID:VOYq7fK/.net
海未「私が強くなれば……ことりの心も受け止められる」


海未「そう思ったんです」




ことり「なんで……?」



ことり「なんで……あんなに意地悪してたことりのことなんて……」




海未「……ことり、あなたは勘違いしています」



ことり「勘違い……?」





海未「……私は、ことりのことも大好きなんですよ」



ことり「え……っ///」

109: 2016/04/22(金) 18:56:05.25 ID:VOYq7fK/.net
海未「私にとっては……」



海未「ほのかもことりも……」




海未「一緒に友だちになれた……大切な友人なんです」





ことり「海未ちゃん……」





海未「あの時、声をかけてくれたのは確かに穂乃果でした」




海未「けれど、一緒に輪にいれてくれたのはことりも同じです」





海未「私にとっては、どちらかだけが特別なんてことはありません」



海未「どっちも特別で、大切なんです」

110: 2016/04/22(金) 18:56:49.23 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果「海未ちゃん……///」



ことり「……///」





海未「……///」ゴホン




穂乃果「……?」

ことり「……?」




海未「……ケ、ケンカはダメですよ?」

海未「仲が悪いと、二人のことを嫌ってしまいますからね……?」





穂乃果「……」



ことり「……」

111: 2016/04/22(金) 18:57:13.32 ID:VOYq7fK/.net
思わず、穂乃果ちゃんと顔を見合わせてしまいました。




そしてそれから、二人で吹き出してしまい。




大きな声で笑ってしまいました。




お互いに泣き腫らした目と、ぐちゃぐちゃな顔で、大きく笑いました。





海未ちゃんは恥ずかしそうに俯いていたけど。





でも、嬉しそうでした。

112: 2016/04/22(金) 18:57:40.99 ID:VOYq7fK/.net
ことり「……ほのかちゃん」



穂乃果「……なぁに、ことりちゃん」



ことり「あのね……」





私は……。



私も、今のままじゃダメだと思いました。



穂乃果ちゃんとは……。




穂乃果ちゃんとは、友だちになりたかったから。





改めて、こう言いました。





ことり「ことりと、お友達になってください!!」

113: 2016/04/22(金) 18:58:19.22 ID:VOYq7fK/.net
穂乃果ちゃんからじゃない。



私から。




私が自ら、手を差し出すの。







穂乃果「……」



穂乃果「……あはは♪」



ことり「……///」



穂乃果「……うん!」ギュッ





穂乃果「……一緒に遊ぼう♪」




ことり「……ありがとう♪」

114: 2016/04/22(金) 18:59:01.71 ID:VOYq7fK/.net
この日、私と穂乃果ちゃんは、本当の意味での友達になれた気がしました。





私がただ依存しているだけの、一方通行じゃない。




対等にお互いを求める関係。





穂乃果ちゃんに”絶対”はもうなくなりました。





……それでも、穂乃果ちゃんのことは変わらずに好きだから。




やっぱり、ことりにとって特別かもしれないけど。





……もう一人、友達ができたから。




とってもとっても大切な友達。





だから、穂乃果ちゃんが取られたなんて嫉妬する必要はないんだ。







海未ちゃんだって、友達なんだから。

115: 2016/04/22(金) 18:59:42.91 ID:VOYq7fK/.net
でもね。






海未ちゃんはそれだけじゃないみたい。





だって。




胸の痛みがどんどん増してるんだもん。






キュン

116: 2016/04/22(金) 19:00:44.87 ID:VOYq7fK/.net
ああ……。





もう誤魔化しようがない。







私は……海未ちゃんに恋をしてしまいました。






想いはめぐります。





ぐるぐるぐるぐる。




万華鏡のように。




ぐるぐるぐるぐる。

4: 2016/05/01(日) 20:09:43.08 ID:Dd9sRrLB.net
三角関係に、良い結末はない。



誰かがそんなことを言っていました。











―――私たちの場合は、その大多数が言う”さんかくかんけい”に当てはまるのかな……?

6: 2016/05/01(日) 20:10:43.03 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「むむむ……」




穂乃果「……」





穂乃果「あ……」





穂乃果「あった」





穂乃果「あったぁぁぁぁぁぁっ!!!私の番号!!」







時は流れ……。


私たちは三人は、晴れて高校へと進学することになりました。

7: 2016/05/01(日) 20:11:09.86 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「海未ちゃん!ことりちゃん!!」


海未「おめでとうございます穂乃果」


ことり「おめでとう穂乃果ちゃん♪」


穂乃果「うん!うん!これでまた一緒に過ごせるね!!」




それも、三人とも一緒の高校。




音ノ木坂学院へ、入学することができたのです。

8: 2016/05/01(日) 20:12:17.63 ID:Dd9sRrLB.net
海未「全く……最後の最後まで穂乃果にはひやひやさせられましたが……」


穂乃果「うう……申し訳ない……」


ことり「でも、穂乃果ちゃん本当に勉強頑張ったよね♪」


穂乃果「うん!」


穂乃果「……だって、お母さんもそうだったから、絶対オトノキには行きたかったし」


穂乃果「何より、またみんなで一緒にいたかったからね!」


海未「穂乃果……」


ことり「穂乃果ちゃん……」


穂乃果「えへへ……///」


海未「……だったら、もっと余裕を持って試験勉強初めてほしかったですがね」


穂乃果「あうう……反省してます……」


ことり「あ、あはは……合格したんだから……ね?」

9: 2016/05/01(日) 20:12:51.42 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果ちゃんの言うとおり、私たちは三人で一緒にいることを強く願いました。



あの一件から、三人の絆はより深くなるばかり。



本当の意味での友達になってからは、私たち三人はいつも一緒だったと思います。



遊びも、勉強も、どんな時でもお互いに顔を突き付け合う。




少し窮屈に感じることも、もちろんあったけど。




それは贅沢な悩みなんだなと思う。





いつまでも一緒にいられるということは、幸せなことなんだ。




何よりもかけがえのない時間なんだと……。



……それは、あとになって思い知らされます。

10: 2016/05/01(日) 20:13:21.43 ID:Dd9sRrLB.net
―――。



穂乃果「……」


ことり「……」


海未「……」




凛「んー……っ!今日も練習がんばるにゃー!!」


花陽「……」シー


凛「かよちん?」


花陽「……」アレ


凛「……ん?」




穂乃果「……」


ことり「……」


海未「……」





凛「三人仲良く寝っ転がってるにゃ……」


真姫「……仲いいわよね、あの三人」


花陽「……そうだね♪」

11: 2016/05/01(日) 20:13:56.10 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「はぁー……」


ことり「はぁー……♪」



海未「気持ちいいですね……」


穂乃果「こうやって屋上に寝っ転がるなんて、なかなかできないしねー……」


ことり「……うふふ、なんだかこうやって並んで寝てると家族みたいだね……♪」


海未「か、家族……///」


穂乃果「本当だねー……」



ことり「……♪」


海未「……///」



穂乃果「……いつまでも三人でこうしてたいねー……」


ことり「……うん♪」


海未「……はい」

12: 2016/05/01(日) 20:14:34.87 ID:Dd9sRrLB.net
それは紛れも無く、本心のはずでした。



いつまでもこのままで。



いつまでも三人一緒に。




私たち三人の関係は、ただ無条件に好き合うだけの仲じゃない。



ケンカもして、涙も流し合った……複雑な関係の上に成り立ったものだ。



きっと、何も知らない部外者が私達の前に立ちふさがろうとも。




この関係は、揺らがない。




それだけの強い絆だと、信じていました。

13: 2016/05/01(日) 20:15:29.41 ID:Dd9sRrLB.net
……でもそれは。




あくまで部外者が立ちふさがる場合の話。








結局。







終わりを向かえるのは、いつだって突然で。



永遠に続く絆なんて、存在しない。




強い絆を崩壊させるのは。




そんな強い絆の中に生まれる、小さな綻び。





強ければ強いほど、その綻びから侵食する亀裂は……大きく。





私たちの絆を蝕んでいきます。

14: 2016/05/01(日) 20:15:56.03 ID:Dd9sRrLB.net
私は、海未ちゃんに恋をしてしまった。




これはもう誤魔化しようのない事実。





穂乃果ちゃんに対する好きと、海未ちゃんに対する好きは違う。



穂乃果ちゃんへの好きは、穂乃果ちゃんへと依存している私の弱さ故の好きだ。



それが特別じゃないとは言わないけど、恋とはまた違う……。




海未ちゃんへの好きがその証拠だと思う。




海未ちゃんのことを想えば想うほど。




キュン




どんどん胸の痛みは増していくんだもの……。

15: 2016/05/01(日) 20:16:26.35 ID:Dd9sRrLB.net
初めのうちは。




この痛みと付き合いながら普通に海未ちゃんとも接していました。




恋している、と分かったところで、そう簡単に行動に移せるものじゃありません。




それも、女の子同士の、所謂普通ではない恋愛のそれだ。



男の子へ想いを伝えるのとは訳が違う。




想いを伝えれば、良くも悪くも。




今までどおりにはいられない。




三人一緒になんて、いられるはずもないのです。




それは恐怖。




私は、その恐怖に打ち勝つこともできず。




この胸の痛みを抱えたまま。




燻り続けていました。

16: 2016/05/01(日) 20:16:52.42 ID:Dd9sRrLB.net
1、2、3、4…

5、6、7、8…



1、2、3、4…

5、6、7、8…



絵里「それじゃ次は、二人一組になってー」


絵里「余った人は後で交替ねー」


凛「よーし!今日は真姫ちゃん一緒にやろー!!」


真姫「な、なんで私なのよ……私はあとでいいわ///」


凛「いいからいいから!」


真姫「ちょ、凛!引っ張らないで!///」


花陽「じゃ、じゃあ私は……にこちゃん……?」


にこ「花陽ー?いいわよ、おいで」


花陽「う、うん、お願いします……///」


にこ「なんで顔赤らめてんのよ……こっちまで恥ずかしくなるでしょーが」


花陽「そ、そうだね……」アハハ 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

17: 2016/05/01(日) 20:17:25.12 ID:Dd9sRrLB.net
希「じゃあウチは~♪」




希「海未ちゃん!」



海未「私ですか……?」


希「お相手してくれる?」


海未「な、なんですか……その言い方は///」


希「その方が気分が出てええやろー♪」


海未「もう……いいですよ、お相手しましょう」



ことり「……」




希「……」クス


希「と思ったけど、やっぱりやーめた♪」


海未「え?」

18: 2016/05/01(日) 20:17:59.81 ID:Dd9sRrLB.net
希「海未ちゃんのお相手するには、ウチでは役不足みたいやしねー」


海未「ど、どういうことですか……?」


希「……分かっとるやろ―?」


海未「え……」


希「海未ちゃん達の行く末、ウチ、気になるなー♪」


海未「行く末って……」


希「ふふ……♪」





希「……けどな海未ちゃん」


海未「?」





希「本当に大事なものが何かを選べないかぎり……」




希「その先に、良い未来は待ってないよ……?」

19: 2016/05/01(日) 20:18:41.67 ID:Dd9sRrLB.net
海未「……希」




希「なーんてな♪」


希「海未ちゃんたちならきっと大丈夫やん♪ウチは信じとるよー?」


海未「は、はぁ……」


希「えりち~!傷心のウチを慰めてー♪」


えりち「な、何言ってるのよもう……///」



海未「……」



ことり「……えっと」



ことり「海未ちゃん、一緒にやろ……?」


海未「ことり……」



海未「ええ、いいですよ」ニコ

20: 2016/05/01(日) 20:19:10.31 ID:Dd9sRrLB.net
海未「それじゃあ、ほのかはあとで交替でやりましょう」



穂乃果「……」


海未「……穂乃果……?」


穂乃果「……うん」





穂乃果「あとで……」




穂乃果「あとで一緒にやろーね!それまで一人で柔軟してるから!」


海未「……え、ええ」


ことり「……」



穂乃果「……」

21: 2016/05/01(日) 20:20:28.02 ID:Dd9sRrLB.net
私も穂乃果ちゃんも。



心の中に何を秘めているのか。



多分。




お互いがお互いに。




関係を壊したくないと、心の何処かで思っていたのだと思います。




だから……。




じわじわ襲い来る嫉妬の心を。




誰にも吐露することもできず。





ひたすらに押し込めていました。





きっと。




穂乃果ちゃんも、海未ちゃんのことが好き。



私と同じ。



海未ちゃんのことが好きで好きでしょうがないんだと思う。

22: 2016/05/01(日) 20:21:28.84 ID:Dd9sRrLB.net
何が切っ掛けで……。




穂乃果ちゃんの心を動かしたのかは分からない。




……けど。




中学の時のこともある。





穂乃果ちゃんは、海未ちゃんのことになると感情を露わにする。




激しく。



まるで別人のように、冷酷で、無機質になる。





……あの時味わった背中の震えを。




今でも忘れることはできません……。

23: 2016/05/01(日) 20:21:56.07 ID:Dd9sRrLB.net
……恐らく。





穂乃果ちゃんは、私と同じタイプなんだと思う。




誰にも知られないくらいの心の奥底に、闇が潜んでいる。




果てしなく、醜い、人の心の本性。




私も好きな人を前にしたら、感情をコントロールできなくなる。





……あまりにも激しく、海未ちゃんを傷つけてしまったあの日。




海未ちゃんは何もなかったと言ってくれたけど。




私にはいまでも、後悔という名のしこりが残っている……。




ズキン




この胸の痛みは、私の自分自身への戒めのようなもの……。




感情が昂ぶるたびに、胸の痛みがそれを抑制してくれます。




……穂乃果ちゃんも、同じなのかもしれません。

24: 2016/05/01(日) 20:22:41.55 ID:Dd9sRrLB.net
あれ以来、"あの"穂乃果ちゃんが現れたことは一度もない……。




私達二人は、あの時からちょっとだけ大人になったのかもしれません。





思ったことをそのままぶつけるだけの、子供じゃない……。




ただ、それが良いことなのか悪いことなのか。




それは分かりません。





少なくとも、今の私たちに間に流れる空気は。







穏やかではなかったのです。

25: 2016/05/01(日) 20:23:35.42 ID:Dd9sRrLB.net
―――。



にこ「今日も疲れたわねー」


穂乃果「そうだねー……」


穂乃果「……ねぇねぇ!これからみんなで遊びに行こうよっ!」


にこ「これからー?もう遅いわよ」


絵里「そうよ穂乃果、あまり遅くまで遊んでると明日に響くわよ?」


穂乃果「えぇー?少しくらいだったら大丈夫だよー!」


希「まぁ、少しぐらいやったらええんやない?」


穂乃果「希ちゃん……っ!」ウルウル


にこ「希、甘いわよ!」


にこ「コイツは甘やかしたらとことん甘えるタイプなんだから、少しなんて言っておいて時間いっぱい遊

ぶつもりなのよ」


穂乃果「そ、そんなことないよーっ!」


絵里「穂乃果、今日は帰ってしっかり身体を休めなさい」


穂乃果「そんなぁー!!……ことりちゃんもなんとか言ってよーっ!!」




ことり「……」アハハ

海未「……」フフフ





穂乃果「……ぁ」

26: 2016/05/01(日) 20:24:28.46 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「……」





穂乃果「……」ギュ…


にこ「……」




私はその時、微かに見せた穂乃果ちゃんの嫉妬に気がつくことができませんでした。



たまたま、いつもとは違う組み合わせの中での出来事。



切っ掛けと呼ぶには、あまりにも些細なことだけれど。




恐らく、これが事の発端だったんだと思います。





―――何故、私は気がつけなかったのか。




何故、海未ちゃんとの会話にだけ気を取られていたのか。




もし、を考えても意味のないことはわかっていても。




あの時こうすれば、という想いは……。




いつまでも消えることはありません。

27: 2016/05/01(日) 20:25:13.16 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「絵里ちゃん、希ちゃん、にこちゃん、じゃあねー♪」フリフリ


にこ「気をつけて帰るのよー」フリフリ


ことり「ありがとうにこちゃん♪」フリフリ


海未「それではまた明日」





トコトコ…



絵里「諦めて帰ってくれた良かったわ……」


希「どーかなー?このあと三人だけで遊んでたりして」


絵里「うーん……海未がついてるから大丈夫だと信じたいけど……」


希「なんだかんだで、あの二人には甘いからな―海未ちゃん」


にこ「……心配ね」


絵里「そんなこと言われたらだんだん心配になってくるじゃない……」


にこ「そうじゃないわよ」


絵里「にこ……?」


にこ「……」

28: 2016/05/01(日) 20:25:43.60 ID:Dd9sRrLB.net
希「……んー?どしたん、にこっちー?」


にこ「……あの子たち、普段は仲良く見えるけれど、本当の胸の内はどうなのかしらね?」


希「……」


にこ「……もしかしらたら、あの三人の笑顔は嘘で……本当はもっともっと


希「にこっち、やめとき」


にこ「……」


にこ「……ごめん」


希「……」クス


希「にこっちはそういう想いに敏感やもんなぁ」


にこ「何よ、それ……悪い?」


希「ふふ……ごめんな」


絵里「……私たちにできることは、多分何もない」

29: 2016/05/01(日) 20:29:17.82 ID:Dd9sRrLB.net
にこ「絵里……」


絵里「あの子たち三人の想いは、三人だけで解決しないと」


絵里「他者が介入しても……余計こじれるだけ」


希「……ウチらにできることは、結果がどうなったとしても……暖かく迎えてあげることだけやん?」


にこ「……そう、ね」

30: 2016/05/01(日) 20:29:52.02 ID:Dd9sRrLB.net
にこ「……そういう時こそ、年長者の抱擁力を見せてあげないとね」


希「抱擁力ねぇ……」ジー


にこ「ケンカ売ってんの……っ?」


希「おお、こわっ。そんなことないよー♪」


絵里「ふふふ……」


絵里「……」



絵里「いつかあの三人が……」



絵里「本当の意味で笑い合える日が来るといいわね」

31: 2016/05/01(日) 20:31:01.13 ID:Dd9sRrLB.net
―――。



それから数日後。




私は穂乃果ちゃんから、部活が終わったあとの放課後、教室に来て欲しいと言われました。





必ず、一人で来てと……。




……私はその話を聞かされた後、内心びくびくしていました。




今まで、穂乃果ちゃんにこういう形で呼び出されることなんて、一度も無かったし……。




それに、一人で言うことは……。



それはつまり、海未ちゃんには聞かれたくない話ということ。

32: 2016/05/01(日) 20:31:30.15 ID:Dd9sRrLB.net
……。



それまでに、二人だけの会話が無かったわけじゃない。



良い意味で、海未ちゃんには内緒で驚かせようみたいな、そういう話し合いはあった。




でも今回は……。




教室で二人きり……。

33: 2016/05/01(日) 20:32:27.03 ID:Dd9sRrLB.net
思い出すのは、やはりあの日のこと。






無機質な表情と。




冷酷なあの目……。






……あの時のように、思い返そうとする度に身体が拒否反応を起こすようなことは無くなった。




でも、身体があの恐怖を覚えている。




ことり「……」ガクガク



またあの目で見つめられたらと思うと……。



ことり「……っ」ギュ…



……。




大丈夫。



穂乃果ちゃんとは、仲直りしたもん。




何も心配することはないはず……。

34: 2016/05/01(日) 20:33:30.79 ID:Dd9sRrLB.net
トコトコ……。






ガラ…。





ことり「……」





夕日が落ちかけ、もうすぐ夜の闇が教室を包み込む。




そんな薄暗い教室に一人佇む人間。





そこにいるのは―――。







穂乃果「あ、ことりちゃん」









―――私のよく知る、いつもの穂乃果ちゃんだった。

35: 2016/05/01(日) 20:34:10.16 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「……お待たせ、穂乃果ちゃん」


穂乃果「ううん、そんなに待ってないよ。ごめんね、わがまま言って」


ことり「別に大丈夫だよ♪」


ことり「ただ、海未ちゃんに嘘をつくのは気が引けちゃったな」


穂乃果「あはは……海未ちゃん、さみしがりやさんだからね」


ことり「うふふ……そうだね♪」



何気ないいつも通りの会話。



私の感じていた不安は杞憂であり。



薄暗い教室を包み込むのは。



暖かな空気でした。

36: 2016/05/01(日) 20:34:44.36 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「……」



ことり「それで……話ってなぁに?」


穂乃果「あ、うん……」



穂乃果「……えっと」


ことり「……?」




穂乃果ちゃんはもじもじと気恥ずかしそうに、普段あまり見せない表情していました。



そして言うのを何度か躊躇し、再度、言おうと決心をして、また躊躇するというのを繰返していました。





―――思えば。




この時に予感はありました。




穂乃果ちゃんがこの時、何を言いたいのか。




穂乃果ちゃんが、何を私に伝えたかったのか。

37: 2016/05/01(日) 20:35:13.59 ID:Dd9sRrLB.net
だって。




穂乃果ちゃんのその表情は。



今まで私が一度も見たことがない。




穂乃果「あのね……?」



穂乃果「……ほ、ほのか……」





恋する乙女の顔だったから―――。













穂乃果「ほのか、海未ちゃんのことが好きっっ!!!///」










ことり「――――」

38: 2016/05/01(日) 20:35:49.10 ID:Dd9sRrLB.net
私は。





どんな顔をすればいいのか。





わかりませんでした。








穂乃果「だからね……」


穂乃果「ほのか……海未ちゃんに、告白しよう思うの……///」





……ただ、自然と出たその時の私の表情は。










ことり「……」ニコ








笑顔でした。

39: 2016/05/01(日) 20:36:22.27 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「そっか……」




穂乃果「……ことりちゃん……怒らないの……?」



ことり「……怒る?」


ことり「なんでことりが怒るの?」


穂乃果「だって……」


穂乃果「ことりちゃんは、海未ちゃんのことが好きなんじゃないかなって思ってたから……」


穂乃果「ことりちゃんが海未ちゃんのこと好きなら……ほのかが急に告白するなんて言ったら……」


穂乃果「ことりちゃん、怒るかなぁって……」







ことり「……好きだよ」










穂乃果「やっぱり……そうだよね」

40: 2016/05/01(日) 20:36:52.08 ID:Dd9sRrLB.net
お互いに……。



どういう想いで。



どういう意図があって答えを返し合っていたかわかりません。




少なくとも私は……。




ただただ、自分の想いを吐露するかの如く。



自然に言葉が出ていただけ。



それだけだと思います。

41: 2016/05/01(日) 20:37:25.85 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「私も……海未ちゃんのことが、大好き」



ことり「けどね……」



ことり「ことりも、穂乃果ちゃんが海未ちゃんを好きなこと、分かってたから……」



ことり「だから……」



ことり「もし、穂乃果ちゃんが海未ちゃんに告白するっていうことになったら……」







ことり「諦めようと思ってたの」

42: 2016/05/01(日) 20:38:33.30 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「そんな……なんで……?」



ことり「ことりじゃ……穂乃果ちゃんには勝てないもん……」


穂乃果「そんなこと……!」


穂乃果「ことりちゃん、ほのかなんかより全然かわいいし!多分、ことりちゃんが告白したら……!」


ことり「ううん、ダメだよ」

43: 2016/05/01(日) 20:39:16.12 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「……」



ことり「……だって」



ことり「ことりは……海未ちゃんのこと、さんざん傷付けた……」



ことり「本当は嫌われてもしょうがない位に、虐めてきた……」


ことり「そんな私が……穂乃果ちゃんを差し置いて、告白なんて……できないよ」




穂乃果「ことりちゃん……」

44: 2016/05/01(日) 20:40:15.96 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「だからね、ことりは応援するよ!二人のこと!」





ズキン




……やめて。





ことり「穂乃果ちゃんだったら、海未ちゃんとうまくやっていけると思う♪」




ズキン




お願い……っ。






ことり「ことりが保証しますっ!」





ズキン




止まって……ッ!!






―――。

45: 2016/05/01(日) 20:41:54.50 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「……ことりちゃん、ありがとう……っ」



穂乃果「ほのか……ずっとことりちゃんの返事だけが不安だったんだ……」



穂乃果「ことりちゃんに怒られたらどうしよう……」


穂乃果「ことりちゃんに嫌われたらどうしようって……」



穂乃果「でも……ことりちゃんにそういう風に言われたら……」




穂乃果「勇気が湧いてきたよ……!」

46: 2016/05/01(日) 20:42:23.39 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果「ありがとうことりちゃん……」




穂乃果「ほのか……がんばって告白するっ!」







ズキン





……。





ズルイよ……。




穂乃果ちゃんは……。

47: 2016/05/01(日) 20:43:14.59 ID:Dd9sRrLB.net
何が正解で、何が間違いかなんて。



誰にも分からない。



穂乃果ちゃんと海未ちゃんの恋を傍観するという選択肢は。



間違いだったのかな……。




胸の痛みは酷くなるばかり。





ズキン



ズキン

48: 2016/05/01(日) 20:44:07.40 ID:Dd9sRrLB.net
でも、だからと言って、どうすれば正解?



穂乃果ちゃんから海未ちゃんを奪うの?




ズキン



ズキン





……。





私は……。




私はこの想いを、どこへぶつければいいの?



ズキン



ズキン

49: 2016/05/01(日) 20:45:14.08 ID:Dd9sRrLB.net
―――。



その翌日。



その話題は瞬く間に広がりました。




……何故?








穂乃果「ほのか、海未ちゃんのことが大好きですっっ!!!」






放課後。



穂乃果ちゃんは海未ちゃんを中庭の樹の下に呼び出して、校舎中に響き渡る声で告白したからです。



もはや公開処刑ならぬ、公開告白でした。




……あはは。



穂乃果ちゃんはさすがだなぁ。



やっぱり、穂乃果ちゃんには勝てないよ……。



こんなに公に告白されたら……。




もう、私に付け入る隙はないもの……。

50: 2016/05/01(日) 20:46:29.14 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果ちゃんの告白を、勿論μ'sのみんなも聞いていて。



みんながみんな、顔を赤くして恥ずかしがっていました。



当事者である海未ちゃんは「破廉恥です……っ」と顔を真赤にして俯きながらも……。




その告白に返事をしていました。

51: 2016/05/01(日) 20:48:35.55 ID:Dd9sRrLB.net
晴れて、音ノ木坂学院公認カップルは誕生しました。



二人の告白劇は、恐らく学院内で語り継がれるものになるのでしょう。

52: 2016/05/01(日) 20:50:02.49 ID:Dd9sRrLB.net
勿論、普通とはいえないカップルなわけだから。



みんながみんな祝福の声をあげるわけではなかったけど。



それでも、たくさんの人が嬉しそうな顔をしていました。

53: 2016/05/01(日) 20:50:46.82 ID:Dd9sRrLB.net
好きという想いは、周囲を巻き込んでみんなが幸せな気持ちになれます。



みんなみんな笑顔。




でも、私は……?




ズキンズキン




胸の痛みは、更に酷く。




ズキンズキン




私の心を蝕んでいく……。

54: 2016/05/01(日) 20:52:27.31 ID:Dd9sRrLB.net
私は、本当に祝福できるのかな。

私は、本当に喜べるのかな。

私は、本当に幸せなのかな。

私は、本当に笑顔なのかな。


私は、本当にあの二人が恋人になってよかったと思ってるのかな。

55: 2016/05/01(日) 20:53:07.63 ID:Dd9sRrLB.net
私は、あの二人の傍で見守ることができるのでしょうか。




私は、




ズキンズキン




ああ……。




胸が……痛い……。

56: 2016/05/01(日) 20:55:06.94 ID:Dd9sRrLB.net
―――。





二人が付き合いだしてから暫くの間、私は一人でした。




二人の仲を邪魔することもできなかったし。

57: 2016/05/01(日) 20:55:46.02 ID:Dd9sRrLB.net
何より……。




付き合っている二人の傍にいるのは辛かったから。




穂乃果ちゃんに笑いかける海未ちゃんの顔を見るのが辛かったから。





辛い……?

58: 2016/05/01(日) 20:56:15.25 ID:Dd9sRrLB.net
ああ、やっぱり私は―――。





全然諦められていないんだな。





……そんなことは最初からわかっていたのに。




なんで今になってこんなにも辛くなるんだろう……。

59: 2016/05/01(日) 20:56:45.82 ID:Dd9sRrLB.net
こんな時。




μ'sのメンバーは心配して、私のことを放っておかない。




穂乃果ちゃんと海未ちゃんしかいなかった頃とは違う……。




絆の暖かさを強く感じる。




感じるけど……。




やっぱり何かが違う。

60: 2016/05/01(日) 20:57:19.48 ID:Dd9sRrLB.net
……みんなには悪いけど。




私が今欲しているのは……。






海未ちゃんだけ。





海未ちゃん……海未ちゃん……。




ズキン





やっぱり諦めたくないよ……。





海未ちゃんのこと……。

61: 2016/05/01(日) 20:58:01.70 ID:Dd9sRrLB.net
でも……。





穂乃果ちゃんには、勝てない……。






穂乃果ちゃんの気持ちも裏切りたくない。




私は一体……。





どうすればいいんだろう……。




ぐるぐるぐるぐる。

62: 2016/05/01(日) 20:59:00.50 ID:Dd9sRrLB.net
行き場のない想いはよりいっそう強く。




ぐるぐるぐるぐる。




強くなった想いは、一体どこへ吐き出されるのだろう?




ぐるぐるぐるぐる。




永遠に、出口のない殻の中で回り続けるだけ?




ぐるぐるぐるぐる。



それとも……。

63: 2016/05/01(日) 20:59:29.11 ID:Dd9sRrLB.net
海未「ことり……?」


ことり「え……?」ハッ







―――気が付くと。







部室には誰もいなくなり。






私の目の前には海未ちゃんだけがいた。




あはは……。




私と海未ちゃんって、こんなのばっかりだなぁ……。

64: 2016/05/01(日) 21:01:48.32 ID:Dd9sRrLB.net
海未「大丈夫ですか……?ぼーっとしていたように見えましたが……」


ことり「だ、大丈夫だよ、少し考え事してただけだから……!」


海未「そう……ですか……」


ことり「うん……」

65: 2016/05/01(日) 21:02:37.68 ID:Dd9sRrLB.net
ついさっきまで、海未ちゃんのことばかり考えていたから。


胸のドキドキが収まらない。



ダメだよ……ダメ……。



海未ちゃんは穂乃果ちゃんと付き合ってるんだから。



こんな想いを募らせていちゃダメなんだ……。




ズキン




―――っ。

66: 2016/05/01(日) 21:03:55.62 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「え、えっと……海未ちゃんは……どうしたの……?」


ことり「穂乃果ちゃんと遊ぶんじゃなかったの……?」


海未「いえ、ちょっと忘れ物を取りに戻ってきたのですが……」ゴソゴソ



海未「あ、ありました、作詞で使ってる私のノート」

67: 2016/05/01(日) 21:05:30.05 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「あはは……海未ちゃんおっちょこちょいだね」


海未「本当に……いつもは出しっぱなしにすることはないのですが……」


ことり「うふふ、そんな日もあるよ」


海未「ふふ、そうですね……」

68: 2016/05/01(日) 21:06:20.75 ID:Dd9sRrLB.net
なんてことない会話。



本当に日常的な、世間話。



でもそんなのも、今の私と海未ちゃんにとっては大事な大事な時間。



私に許された二人きりのこの時間。



この一分一秒は、なにより大切。

69: 2016/05/01(日) 21:07:46.66 ID:Dd9sRrLB.net
海未「さて、表に穂乃果を待たせていますし、すぐに行かなければ」



ことり「あ、そうだよね……」



その言葉で、一瞬にして現実に戻されたような気がしました。

70: 2016/05/01(日) 21:08:41.02 ID:Dd9sRrLB.net
穂乃果ちゃんという単語が聞こえただけで。



私のある種高揚していた気持ちは、収まってしまいました。




その理由の正解なんて、考えるまでもないけど。




考えるまでもないのだけど……自然と想いが頭のなかをめぐります。




ぐるぐるぐるぐる。

71: 2016/05/01(日) 21:09:47.62 ID:Dd9sRrLB.net
これは……嫉妬。







穂乃果ちゃんへの明確な嫉妬。







海未ちゃんと付き合っていることへの嫉妬。





海未ちゃんを独占していることへの嫉妬。





穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん……。

72: 2016/05/01(日) 21:10:31.78 ID:Dd9sRrLB.net
あの時に似た感情の様相を呈してはいるけれど。




実際の感情は、まるで正反対。






海未ちゃんへの嫉妬が、そのまま穂乃果ちゃんへ。





穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん

73: 2016/05/01(日) 21:11:08.68 ID:Dd9sRrLB.net
海未「ことり、本当に大丈夫ですか……?」



ことり「あ、うん……大丈夫だよ?」ニコ




海未「……」





私は……。




この嫉妬が表に出ないように。




必氏に笑顔を作っていました。




精一杯の、作り笑顔……。

74: 2016/05/01(日) 21:11:47.01 ID:Dd9sRrLB.net
海未「……やはり、心配です」





海未ちゃんは穂乃果ちゃんの恋人なんだから。




放っておいてくれればいいのに。





海未「ことり……」トコトコ





そうやって海未ちゃんは、優しくするから。

75: 2016/05/01(日) 21:12:56.17 ID:Dd9sRrLB.net
海未「とりあえず、保健室に行きましょう……」ギュッ



ことり「……っ!!」







パシン








―――想いが、弾ける。














ことり「触らないでっっっ!!!!」

76: 2016/05/01(日) 21:13:42.98 ID:Dd9sRrLB.net
海未「っ!!!」






私は、また同じ過ちを―――。







カチコチ……カチコチ……

77: 2016/05/01(日) 21:14:40.57 ID:Dd9sRrLB.net
海未「……こ、ことり」


ことり「ぁっ……!!」






私はまた……!





海未ちゃんを傷つけてしまった……ッ!!




私はまた海未ちゃんを……っ。



海未ちゃんを……ッッ!!

78: 2016/05/01(日) 21:15:23.57 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「……いや、嘘……違う……ちがうの!!」




謝らなきゃ……!



海未ちゃんに謝らないと……ッ!!





ことり「うぅ……っ!!海未ちゃ……ッ」




海未「ことり……落ち着いてください……!」ギュ

79: 2016/05/01(日) 21:16:11.02 ID:Dd9sRrLB.net
ことり「っっ!!」







パシン!!






海未「――っ」



ことり「ッ!!?」

80: 2016/05/01(日) 21:17:54.56 ID:Dd9sRrLB.net
なんで……!



なんで私は、拒絶してしまうの……!!





海未ちゃん、ちがうんだよ……海未ちゃん……!!!




ちがう……ちがうのに……ッ!!

81: 2016/05/01(日) 21:18:34.95 ID:Dd9sRrLB.net
海未ちゃん海未ちゃん……ッ!!






ことり「……っ!!」ダッ



海未「あ、ことり!!」

82: 2016/05/01(日) 21:19:10.00 ID:Dd9sRrLB.net
……。




私は……。






優しくしてくれる海未ちゃんの手を払い除けるだけでなく。






傷付けた海未ちゃんに、謝ることすら出来ず。






私は、その場から逃げ出してしまいました。

83: 2016/05/01(日) 21:19:47.57 ID:Dd9sRrLB.net
行き場の無い強い想いが。





決して、永遠に回り続けることはない。






必ずどこかで、想いは弾ける。

84: 2016/05/01(日) 21:20:46.01 ID:Dd9sRrLB.net
そんなこと……あの時に分かっていたはずなのに。









なんで私は……。







また過ちを繰り返してしまうの……。

85: 2016/05/01(日) 21:21:27.81 ID:Dd9sRrLB.net
海未ちゃん……。






海未ちゃんごめんなさい。






海未ちゃんごめんなさい海未ちゃんごめんなさい海未ちゃんごめんなさい……。

101: 2016/05/04(水) 13:33:11.88 ID:TapbDB3d.net
―――。




海未「……」トコトコ…


穂乃果「♪」トコトコ…



海未「……」トコ…




穂乃果「……?」









海未「……」






穂乃果「海未ちゃん……?」

103: 2016/05/04(水) 13:35:04.42 ID:TapbDB3d.net
海未「……穂乃果」



穂乃果「?」



海未「……私は、間違っていたのでしょうか……」



穂乃果「間違う……?



穂乃果「……何を?」



海未「……ことりに、優しくしてしまったのは……」



穂乃果「……」




海未「……」








海未「私はことりを、傷つけてしまったのでしょうか……」

104: 2016/05/04(水) 13:36:45.10 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……」






穂乃果「……そうだね」












穂乃果「海未ちゃんは間違ってるよ」





海未「穂乃果……」

105: 2016/05/04(水) 13:37:20.61 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「だって、ほのかたち付き合ってるんだよ……?」




穂乃果「海未ちゃんはほのかのものだもん……」




穂乃果「海未ちゃんはほのかのものなのに」



穂乃果「ことりちゃんに触れたら……」




穂乃果「……ほのかだったら、怒っちゃうな」




海未「穂乃……果……?」



穂乃果「……」




海未「ぁ……」

106: 2016/05/04(水) 13:37:54.14 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「ね、海未ちゃん」




海未「は、はい」



穂乃果「ことりちゃんはほのかたちに気を使ってくれてるんだよ?」



海未「え、ええ……」



穂乃果「だったら、それに応えなくちゃ」




海未「……はい」

111: 2016/05/04(水) 13:38:26.40 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……ね、ことりちゃんのことはさ」トテテ…








ギュ…








穂乃果「今は忘れよ?」









海未「……ほ、ほのか……///」








穂乃果「海未ちゃん……ぎゅーってして……///」







海未「……///」







希『本当に大事なものが何かを選べないかぎり……』


希『その先に、良い未来は待ってないよ……?』

117: 2016/05/04(水) 13:39:01.54 ID:TapbDB3d.net
―――。




翌日、私はベッドの上から起き上がることもできず、寝込んでいました。





学校も、体調不良で休んでしまいました。





……今の私の精神状態じゃ……。




きっとまた、想いが暴走してしまう。




μ'sのみんなにも迷惑をかけてしまうし……。




何より、また海未ちゃんに……。




……。

118: 2016/05/04(水) 13:39:40.00 ID:TapbDB3d.net
私は寝ても覚めても、海未ちゃんのことを考えていました。





海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん……。





海未ちゃんごめんなさい海未ちゃんごめんなさい……。




ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。





溢れるのは、海未ちゃんへの謝罪の言葉と、後悔。








そして、どうしようもなく海未ちゃんが好きという想い。

119: 2016/05/04(水) 13:40:16.85 ID:TapbDB3d.net
なんで私は……海未ちゃんが好きなんだろう。




なんで私は……海未ちゃんの隣にいないんだろう。



なんで海未ちゃんの隣には、穂乃果ちゃんがいるんだろう。




なんで穂乃果ちゃんは……海未ちゃんが好きなんだろう。



なんで穂乃果ちゃんは、海未ちゃんの隣りにいるんだろう。



なんで穂乃果ちゃんは、海未ちゃんの恋人なんだろう。

120: 2016/05/04(水) 13:40:54.84 ID:TapbDB3d.net
……好きという想いは、やがて嫉妬へ。





想いが一つの輪の中で。




ぐるぐるぐるぐると。





吐き出すこともできず。





ただひたすら。





ぐるぐるぐるぐる回っています。

122: 2016/05/04(水) 13:41:43.49 ID:TapbDB3d.net
コンコン





ことり「……」






ことり母『ことり?……みんなが心配して来てくれたわよ』


ことり母『どうする?出られる……?』



ことり「……っ」






ことり「会いたくない……」





ことり母『……』






ことり『……分かったわ。そう伝えるわね』

123: 2016/05/04(水) 13:42:26.66 ID:TapbDB3d.net
みんなとは……間違いなくμ'sのみんなだ。





ただ一日休んだだけで心配してきてくれることに対して、嬉しさを感じはするが……。




今の私の酷い顔を見せたくはない……。





それに……。





海未ちゃんと穂乃果ちゃんに、顔を合わせたくない……。






海未ちゃん……海未ちゃん……。




私はどうすればいいの……。




謝りたいのに……顔を合わすことも出来ない。





海未ちゃん海未ちゃん……。





ズキン




うう……胸が……苦しいよ……。

124: 2016/05/04(水) 13:43:31.37 ID:TapbDB3d.net
コンコン





ことり母『ことり……』








ことり母『海未ちゃんが、どうしても会いたいって』






ことり「―――っ」






ことり母『……一応、やんわりと断ったんだけど……それでもって』


ことり母『どうする……?』

125: 2016/05/04(水) 13:45:05.50 ID:TapbDB3d.net
ことり「……」




ことり「……穂乃果ちゃんは……いるの……?」







ことり母『穂乃果ちゃん?……ううん、海未ちゃんだけよ』





ことり「……っ」







会いたくない。




けど、会いたい。




……会いたくない。




……けど、会いたい。





そんな想いだけが、ぐるぐるぐるぐると。

126: 2016/05/04(水) 13:45:40.96 ID:TapbDB3d.net
私は海未ちゃんと話しても……大丈夫なのだろうか……。





また海未ちゃんを傷つけやしないだろうか……。




また逃げ出してしまうんじゃないだろうか……。





あ……。




でも、ここは自分の家だ……。




逃げる場所なんか、どこにもない。







……当たり前じゃないか。






ことり「……」





ことり「いいよ……入ってもらって」



ことり母『……分かったわ、ちょっと待っててね』

127: 2016/05/04(水) 13:46:44.10 ID:TapbDB3d.net
それだけ伝えると、私は重い身体を強引に起こした。




ずっと寝てたから、頭がふらふらする。




あ、そういえば……。




私、パジャマのままだ……。




着替えないと……。





でも、そんな余裕も、体力も……ない。





あはは……。




私の顔、酷いな。





鏡に写る自分の顔をまじまじと見る。





涙を流しすぎてすっかり腫れ上がっちゃってる。




それに、くまも酷い……。




やっぱり、こんな顔見せたくないよ……。

129: 2016/05/04(水) 13:50:05.92 ID:TapbDB3d.net
トコトコトコ…。




でも、海未ちゃんの足音がどんどん近づいてくる。







ああ……海未ちゃんの鼓動が聞こえる気がする。





コンコン





海未ちゃんが……すぐ傍に……!




海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん……!






海未『ことり……扉は開けなくて大丈夫ですよ』






ことり「え……?」

130: 2016/05/04(水) 13:50:37.92 ID:TapbDB3d.net
海未『……きっと、顔を見せたくないと思いますし……』


海未『また……ことりに手を払い除けられたら……』




海未『私が悲しいですしね……』





ことり「……っ」



海未『だから、扉の前で結構です』


海未『声だけ届けられればそれで十分ですよ』




海未ちゃん……。





海未ちゃんは優しすぎるんだよ……。






今の私には、その優しさが……。




苦しい……。

131: 2016/05/04(水) 13:51:35.46 ID:TapbDB3d.net
海未『ことり……昨日は、申し訳ありませんでした』




なんで……?





なんで海未ちゃんが謝るの……?





謝るのは、私の方なのに……。






海未『ことりの気持ちを考えもせず……安易に手を差し伸べてしまった』


海未『それがことりを傷つけてしまうなんて、つゆ知らず……』



海未『辛い想いをさせてしまいました……』



海未『本当に申し訳ありません』




海未『私は……自分で言うのも何ですが、鈍いですから……』




海未『人の想いを受け止めるのが、苦手なのです……』





海未『だから……私は、ことりの気持ちに全く気が付けなかった』

133: 2016/05/04(水) 13:58:51.18 ID:TapbDB3d.net
海未『最近になって……』




海未『穂乃果に想いを寄せられて……ようやく気がつくことができました』




海未『最低ですね……私は』




海未『ことり……』





海未『私は……既に選択肢を選んでしまった身……』




海未『もう変えることは……できませんが』





海未『私にとっては変わらず、あなた達二人が……』




海未『二人とも、大切な存在なのです』




海未『そこに順列なんてない……』




海未『……穂乃果もことりも、大好きなんです』

135: 2016/05/04(水) 13:59:48.63 ID:TapbDB3d.net
海未『こんなこと……許されるはずもありませんが』





海未『それでも、これだけは伝えておきたかったのです』






海未『ことり……』




海未『どれだけ手を払い除けられたとしても』




海未『私は平気ですから』





海未『私は変わらず、ことりのことも大好きです』




海未『だから……また明日、元気な顔を見せてください』






海未『ことり、待っていますよ……』

136: 2016/05/04(水) 14:00:44.48 ID:TapbDB3d.net
海未『……』




海未『……急に押しかけて申し訳ありませんでした』





海未『今日はこれで帰りますね』






海未『それでは……』













ガチャ








海未「こ、ことり……?」

138: 2016/05/04(水) 14:01:51.69 ID:TapbDB3d.net
多分。





普通だったら……。






このまま海未ちゃんを帰して。





枕を涙で濡らしながら、明日を迎え。






ことり「……っ」グイ



海未「な、何を……!」

139: 2016/05/04(水) 14:02:22.46 ID:TapbDB3d.net
少し無理をして、笑顔を作って二人と接する。







根本的には何も解決してないけど。







バタン






ギュ…







時間とともに傷を癒していくような。






そんな日常が待っていたんじゃないかな。

140: 2016/05/04(水) 14:03:33.31 ID:TapbDB3d.net
海未「こ、ことり……///」


ことり「……」ギュ…





海未「ことり……どうしたんですか……?///」






大好きなんて言われてたら……。





この想いを止められるわけないじゃん。






私は、そんないい子じゃないから。






穂乃果ちゃんと付き合ってるから遠慮するなんて……。





できない……っ。

143: 2016/05/04(水) 14:05:30.06 ID:TapbDB3d.net
海未ちゃんは私のこと大好きだって。





私じゃ穂乃果ちゃんに勝てないんじゃないの?






海未ちゃんは私のこと大すきだって。






最初から穂乃果ちゃんのことなんて気にしなければよかったんだ。





海未ちゃんは私のこと大好きなんだもん。





穂乃果ちゃんに海未ちゃんを渡さなければよかったんだ。





海未ちゃんは私のこと大好きなんだから。

144: 2016/05/04(水) 14:06:13.65 ID:TapbDB3d.net
海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん……




海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃんうみちゃんうみちゃんうみちゃんうみちゃんうみちゃん
ウミチャンウミチャンウミチャンウミチャンウミチャン


























ことり「……キス、していい?」

146: 2016/05/04(水) 14:11:25.54 ID:TapbDB3d.net
海未「な……!?///」



ことり「いいよね……?海未ちゃん……?」


海未「だ、ダメです……!私は……穂乃果と……///」



ことり「……」





チュ…




海未「んっ!!?///」

148: 2016/05/04(水) 14:13:36.43 ID:TapbDB3d.net
ことり「ん……ちゅ……♡」




海未「―――///」







ことり「……はぁ……っ♡」






ことり「……///」







ことり「キス……しちゃった……♡」

152: 2016/05/04(水) 14:16:44.58 ID:TapbDB3d.net
海未「はぁ……っ……はぁ……っ……///」



海未「こ、ことり……何故……っ」






ことり「……」





ことり「ねぇ」




ことり「ここには穂乃果ちゃんはいないよ」




ことり「ここには、ことりだけ」







ことり「だから……ことりだけを見て……?」

153: 2016/05/04(水) 14:18:14.03 ID:TapbDB3d.net
海未「ことり……っ!やめて……ください……っ!!」





ことり「なんで?」




ことり「海未ちゃんはことりのこと、大好きなんでしょ?」




海未「いえっ、それは……っ!」




ことり「ことり、この耳で聞いたよ」



ことり「ことりのことが、大好きって……♡」チュ…



海未「ん……///」





ことり「……あはは……♡」




ことり「……だったら、ことりも海未ちゃんのこと独り占めしてもいいよね」





ことり「ねぇ……海未ちゃん……♡」

154: 2016/05/04(水) 14:18:47.92 ID:TapbDB3d.net
私は。







本能のままに。






ただただ、海未ちゃんを求め続けました。







嫌がる海未ちゃんを。





私のものにしたくて。





穂乃果ちゃんの海未ちゃんを。





私色に染め上げたくて。

156: 2016/05/04(水) 14:19:33.87 ID:TapbDB3d.net
穂乃果ちゃんが好きな海未ちゃんを。





私が好きな海未ちゃんに……。






私”だけ”が好きな海未ちゃんにしたくて。






いつまでもいつまでも。





海未ちゃんの抵抗がなくなるまで。





海未ちゃんが、自ら求めてくれるようになるまで。






ただひたすら。













海未ちゃんを私という欲望で汚し続けました。

157: 2016/05/04(水) 14:20:29.62 ID:TapbDB3d.net
―――翌日。




私は元気に登校しました。




昨日までの暗々とした気持ちはどこへやら。




いつもと変わらない笑顔で、みんなと接することができました。




勿論、海未ちゃんや、穂乃果ちゃんとも。




……海未ちゃんは、少し様子がおかしかったけど。




いつも通り笑い返してくれました。




でも、すぐに俯いてしまいます。





ふふふ、へんなの。

159: 2016/05/04(水) 14:20:55.37 ID:TapbDB3d.net
みんな、私の体調を心配してくれてるせいなのか。





やけに気を使ってくれます。




保健室に行ったほういいとも言われちゃうし、




今日は帰ったほうがいいよとも言われました。




私は全然元気なのにね?




みんな、へんなの。

160: 2016/05/04(水) 14:21:36.33 ID:TapbDB3d.net
私は今、幸せな気分です☆




とってもとっても幸せな気持ちでいっぱい♪




昨日まであんなに悩んでいた自分が嘘のように。





ふふふ……悩むなんて、バカらしいよね。





幸せなんて、すぐそこにあるんだもの。





ただ私が手を伸ばせばいいの。






私に用意されたおやつを、ただつまんで口に運ぶだけ。






ねぇ、海未ちゃん……?





海未「……っ」




海未「……」ニコ…

161: 2016/05/04(水) 14:23:00.23 ID:TapbDB3d.net
あはは……☆






海未ちゃんかわいいなぁ……♡





海未ちゃんは……私の……とっておきのおやつ♡






海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん。




海未ちゃんはあたしのもの海未ちゃんはあたしのもの海未ちゃんはあたしのもの。














希「ことりちゃん」

162: 2016/05/04(水) 14:23:43.57 ID:TapbDB3d.net
ことり「……のぞみ……ちゃん?」




どうしたんだろう?



凄い、真剣な顔してる。




こんな真剣な顔の希ちゃん、あんまり見たことないや。




えへ、失礼かな……?





希「ことりちゃん……今のことりちゃんは普通やない」




え……?




普通じゃない……?




なんだかおかしなことを言う希ちゃん。




私はこんなにも元気なのにね。




へんなのぞみちゃん。

163: 2016/05/04(水) 14:25:11.48 ID:TapbDB3d.net
希「……多分、海未ちゃんは……間違った選択肢を選んでしまったんやろな……」





何、間違った選択肢って……。




海未ちゃんは何も悪いことしてないよ。





海未ちゃんは何も間違ってない。




海未ちゃんは正しいよ。





海未ちゃんが正しいなら。





希ちゃんの言ってることが嘘なんだ……。





間違い……?





何を言ってるのか分からないよ。





へんなのぞみちゃん。

164: 2016/05/04(水) 14:26:55.17 ID:TapbDB3d.net
希「ことりちゃん……っ」





あれ……?





涙。






希ちゃん……泣いてるの?






どうして?





どうして希ちゃんが泣くの?






あはは。






……へんな希ちゃん。

165: 2016/05/04(水) 14:27:24.47 ID:TapbDB3d.net
希「お願い……ことりちゃん……」



希「もう……これ以上の間違いは………しないでほしい……っ」




希「じゃないと……三人とも……」





希「果ての果てまで……転がり続けてしまうよ……っ!」





……。




何言ってるかわかんないや。





あはは、希ちゃん、今日はきっと調子が悪いんだね。





だから、よくわかんないことばかり。

167: 2016/05/04(水) 14:27:55.18 ID:TapbDB3d.net
私じゃなくて、希ちゃんの方が早く帰ったほうが良いんじゃないかな。










希「……っ!?」ビクッ





ね、希ちゃん?




今日はもう帰った方が……。






あれ……?





希ちゃん……何を見てるの……?





後ろに誰か……。

















希「……ほ……のか……ちゃん……?」

168: 2016/05/04(水) 14:29:00.20 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……」











ことり「あはは、どうしたの穂乃果ちゃん?」




もう、穂乃果ちゃんいきなり後ろにいるんだもん。




びっくりするよぉ。




希ちゃんだってこんなに驚いちゃってるし。

169: 2016/05/04(水) 14:30:00.53 ID:TapbDB3d.net
どうしたんだろう。




穂乃果ちゃん、怖い顔してる。




へんな穂乃果ちゃん。











穂乃果「ねぇ」





穂乃果「あとで教室に来て……」



希「っ……」

170: 2016/05/04(水) 14:30:27.42 ID:TapbDB3d.net
ことり「教室……?」




ことり「……うん、いいよ☆」







穂乃果「……必ず来てね」





なんだろう……ここじゃ言えないことなのかな。





あはは、なんだろうな……?







希「っ……穂乃果ちゃん!!」

172: 2016/05/04(水) 14:31:36.10 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……何」





希「……お願い……お願いだから……っ!!」





希「三人とも……いつもの仲の良い三人のまま戻ってきて……っ!!」





穂乃果「……」





スタスタ…

174: 2016/05/04(水) 14:32:17.39 ID:TapbDB3d.net
希「……うう……っ」





なんだろう……。





おかしいな。






もう私は元気なはずなのに……。





泣きながらうずくまる希ちゃんを見てたら……。






なんだか……。




胸が痛む……。

175: 2016/05/04(水) 14:33:06.18 ID:TapbDB3d.net
―――。





教室は、既に夜の闇に支配されていた。




月明かりのみが差し込む世界で。




私と穂乃果ちゃんだけが存在していた。






穂乃果「……」




ことり「……」






カチコチ……カチコチ……。






時計の秒針が刻む音だけが、嫌にはっきり聞こえた……。

179: 2016/05/04(水) 14:34:12.26 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……」



ことり「……」







穂乃果「ねぇ、ことりちゃん」



ことり「なぁに穂乃果ちゃん?」





















穂乃果「海未ちゃんに何したの」

181: 2016/05/04(水) 14:35:08.06 ID:TapbDB3d.net
ことり「……何?」








ことり「んっと……ことり、何かしたかなぁ
穂乃果「とぼけないで」





ことり「えっと……」



穂乃果「今日の海未ちゃんはおかしいの」





ことり「おかしい……?」





穂乃果「海未ちゃん、ずっと元気なかった」



穂乃果「海未ちゃん、ずっと俯いてた」



穂乃果「ほのかが笑いかけても、ちょっと笑うだけ」



穂乃果「ずっとずっと……辛そうにしてた」





穂乃果「……っ」ギリ






カチコチ……カチコチ……。

188: 2016/05/04(水) 14:37:02.72 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……」









穂乃果「ねぇ」









穂乃果「海未ちゃんに何したの?」







ことり「……んーと……」





穂乃果「昨日、海未ちゃんに会ってたよね」




ことり「……」





穂乃果「ほのかたちががことりちゃん家から帰ったあと」







穂乃果「海未ちゃん、一人だけで来たよね」

189: 2016/05/04(水) 14:38:07.60 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「海未ちゃん……ことりちゃんのことずっと心配してたから」




穂乃果「ほのかたちには戻るとは一言も言わなかったけど」




穂乃果「ほのか、見てたから」




穂乃果「海未ちゃんがこっそり、ことりちゃん家に戻るのを」




穂乃果「ほのかに内緒で……っ」




穂乃果「……ッ」ギリ




穂乃果「……」





穂乃果「ねぇ」






穂乃果「答えてよ」

191: 2016/05/04(水) 14:39:01.25 ID:TapbDB3d.net
ことり「……」












穂乃果「答えてッッ!!!!」バン!!









ことり「あはは……」






ことり「穂乃果ちゃん、怖いなぁ」

194: 2016/05/04(水) 14:39:36.91 ID:TapbDB3d.net
ことり「……」






ことり「……うん」






ことり「会ってたよ、海未ちゃんと」





穂乃果「やっぱり……ッ!」

ことり「でも」








ことり「それがどうしたの?」






ことり「イケないことなのかなぁ?」

201: 2016/05/04(水) 14:41:43.75 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「っ……」



穂乃果「別に……イケないことじゃない、けど……」



穂乃果「でも……っ!」





穂乃果「今日の海未ちゃんは、絶対におかしいんだよっ!」



穂乃果「昨日までは穂乃果にあんなに笑いかけてくれたのに……」

203: 2016/05/04(水) 14:42:14.43 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「今日の海未ちゃんは……っ」





穂乃果「無理した作り笑いを浮かべるだけ……!!」





穂乃果「そんなの……っ!」





穂乃果「昨日の夜に何かあったとして思えない……ッ!!」




穂乃果「ことりちゃんが……ッ!」




穂乃果「ことりちゃんが何かしたんでしょッッ!!?」

204: 2016/05/04(水) 14:42:56.32 ID:TapbDB3d.net
ことり「……」




穂乃果「はぁ……ッ!はぁ……ッ!!」



穂乃果「はぁ……ッ!!……っく……」



穂乃果「それに……っ!」



穂乃果「ことりちゃんだって……おかしいよ……っ!!」






ことり「……ことり?」




穂乃果「なんで……」







穂乃果「なんでそんなに……っ、冷静でいられるの……ッ!?」

205: 2016/05/04(水) 14:44:25.15 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「なんでそんなに、笑っていられるのッ!!?」




穂乃果「海未ちゃんだよっ!?」




穂乃果「海未ちゃんがあんなにも元気が無いんだよっ!?」




穂乃果「ことりちゃんが気が付かないはずがないよねッ!?」




穂乃果「ことりちゃんだって、海未ちゃんが大好きなんでしょッ!!?」








ことり「……」




ことり「……笑ってる?」




ことり「ことり、今、笑ってるの……?」

207: 2016/05/04(水) 14:45:15.01 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「は、はぁ……ッ!?」



穂乃果「……自分で分からないの……!?」







ことり「……そっか」



ことり「ことり、今、笑ってるんだね……」












ことり「あはは……☆」


穂乃果「ひっ!?」

209: 2016/05/04(水) 14:47:21.60 ID:TapbDB3d.net
ことり「……へんな穂乃果ちゃん」



ことり「海未ちゃんが元気ないわけないよ」



ことり「だって、ことりには微笑んでくれるもん」



ことり「ことりが海未ちゃんに笑いかけたら、優しくニコって……」



ことり「海未ちゃんの笑顔、可愛いよね♪」



ことり「海未ちゃんの笑顔、ことり大好きなんだぁ☆」





ことり「海未ちゃんもね、ことりのことが大好きなんだって……?」






穂乃果「……な……何言ってるの……ことりちゃん……?」

211: 2016/05/04(水) 14:48:11.35 ID:TapbDB3d.net
ことり「昨日……海未ちゃんね」



ことり「ことりのことが、だーいすきって言ってくれたんだ☆」



ことり「ことり、嬉しかったなぁ……♪」



ことり「……海未ちゃんはことりのことが大好き」




ことり「ね?」


ことり「穂乃果ちゃん」



ことり「海未ちゃんがことりのこと大好きなら」







ことり「ことりが海未ちゃんの恋人になっても……いいよねぇ?」

212: 2016/05/04(水) 14:49:22.30 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……な、何それ……?」



穂乃果「何なのそれ!!」



穂乃果「意味分かんないよッ!!」



穂乃果「そんなの……ダメに決まってるよッ!!」




穂乃果「海未ちゃんはほのかの恋人なんだよッ!?」





ことり「……うん、そうだね☆」




ことり「穂乃果ちゃんは海未ちゃんの恋人♪」




ことり「間違ってないよ♪」

213: 2016/05/04(水) 14:50:23.58 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「何なの何なの……ッ!?」



穂乃果「本当に意味分かんないよッッ!!」





ことり「あはは、やっぱりへんな穂乃果ちゃんだね……」




ことり「だって、海未ちゃんが好きって言ってくれたんだもん」




ことり「それ以上の理由が必要かなぁ?」





穂乃果「ふざけないでッッ!!!」バン!!







ことり「……」








穂乃果「……ッ!!!」








ことり「……ことりはふざけてるつもりはないんだけどなぁ」

214: 2016/05/04(水) 14:53:17.43 ID:TapbDB3d.net
ことり「だって……」



ことり「ことりたち、両想いだもん……♡」




ことり「……それにね」





ことり「ことり、昨日、海未ちゃんと……」













ことり「シちゃったから―――♡」






















穂乃果「……なに……それ……」

215: 2016/05/04(水) 14:54:55.13 ID:TapbDB3d.net
ことり「……あはは♪海未ちゃん、可愛かったなぁ……♡」



ことり「最初は海未ちゃん、震えてたけど……」



ことり「だんだんと自分からことりを求めてくれるようになって……♡」



ことり「あぁ……思い出すだけでことりは幸せ……♡」




ことり「海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん……♡」




ことり「海未ちゃん大好きだよぉ……♡」

216: 2016/05/04(水) 14:56:08.70 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……」






穂乃果「……なん……なの……」



穂乃果「……なんで……」



穂乃果「……ことりちゃんが……海未ちゃんと……」



穂乃果「……そんなの……」



穂乃果「嘘……だよね……?」







ことり「んーん、本当♡」

217: 2016/05/04(水) 14:57:20.44 ID:TapbDB3d.net
ことり「……ね?」



ことり「恋人だったら、こういうことするの”フツウ”だよね?」



ことり「だったらことり達、恋人でいいんじゃないかなぁ?」



















穂乃果「………………………ふざけないでふざけないでふざけないでふざけないでッッッ!!!!」

218: 2016/05/04(水) 14:58:30.34 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「なんでッ!!!ことりちゃんが……っ!!!うわぁぁぁぁ!!!ほのかを差し置いて……ッ!!!海未ちゃんと……っ!海未ちゃんと……ッッ!!!うわぁぁぁぁぁぁッッ!!!」



ことり「……穂乃果ちゃん?」



穂乃果「なんで……ッ!!!海未ちゃん……ッ!!海未ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!わぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ!!!!」





ことり「あれれ?」


ことり「もしかして、穂乃果ちゃん」









ことり「海未ちゃんとまだ……シたことないの?」


穂乃果「っ!!?」

219: 2016/05/04(水) 15:00:23.44 ID:TapbDB3d.net
ことり「……」



ことり「……あはは」



ことり「あはは……♡」








ことり「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」



ことり「なんだぁ……♡」



ことり「穂乃果ちゃんは海未ちゃんとシてないのかぁ……」



ことり「あはは……それなら海未ちゃんが震えていたのも分かるなぁ……♪」



ことり「じゃあ……海未ちゃんの初めてはことりがもらっちゃったんだね♡」



ことり「あはは☆」

220: 2016/05/04(水) 15:03:58.19 ID:TapbDB3d.net
ことり「穂乃果ちゃんごめんね……」



ことり「海未ちゃん……ことりのおやつにしちゃったみたい☆」



ことり「あはははは♡」



ことり「海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん……♡」




ことり「海未ちゃんはことりのものなんだぁ……♡」




ことり「穂乃果ちゃんになんて渡さないんだよぉ……♡」




ことり「あはははははははは♡」

221: 2016/05/04(水) 15:04:52.60 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……」




穂乃果「……っ」




穂乃果「……………」




穂乃果「………ゅ…………ぃ………」




穂乃果「……ゆ……な……ぃ……」







穂乃果「……ゆる……さない……」

223: 2016/05/04(水) 15:05:29.13 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……ゆるさない……っ」


穂乃果「………ゆるさない……ゆるさない……ッ!」







ことり「……」



ことり「……許さない……?」



ことり「ことりを……?」

224: 2016/05/04(水) 15:07:11.76 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……ことりちゃんは……」




穂乃果「……ほのかから海未ちゃんを奪った……」




穂乃果「……ことりちゃんは……ほのかから海未ちゃんを奪った……」




穂乃果「……ことりちゃんは……海未ちゃんをほのかかから奪った……」




穂乃果「……ことりちゃんは……海未ちゃんを汚した……」




穂乃果「……ことりちゃんは……海未ちゃんを……」

225: 2016/05/04(水) 15:08:49.50 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……海未ちゃん……」




穂乃果「……海未ちゃん……海未ちゃん……っ」




穂乃果「海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん……ッ!!」




穂乃果「……はぁ……ッ!……はぁ……ッ!」



穂乃果「……はぁ……ッ………はぁ……っ……」







穂乃果「……はぁ……っ…………」



穂乃果「…………」






チチチ…





穂乃果「……」ガタ

226: 2016/05/04(水) 15:09:17.98 ID:TapbDB3d.net
穂乃果「……ことりちゃん」トコトコ…































穂乃果「氏んで」




ことり「―――え」

227: 2016/05/04(水) 15:10:21.25 ID:TapbDB3d.net
―――その時に私が見た、最後の光景は。







暗がりの中で鈍く光る、銀色の刃を振り上げる穂乃果ちゃんと。











私の前に、大きく手を広げ立ち塞がり、守ろうとしてくれる……誰かの影。















ズキン

253: 2016/05/08(日) 17:51:04.20 ID:WH4eDnhz.net
―――。










夢を見ました。







遠い遠い、昔の夢。







私がまだ、一人ぼっちだった頃の夢。

254: 2016/05/08(日) 17:52:34.74 ID:WH4eDnhz.net
ほのか『あなただーれー?』


ことり『ひぅ!?』



ほのか『んんー?……ほのかのことみてたでしょ』


ことり『んん……!』フルフル


ほのか『ぜったいみてたー!』


ことり『んんーっ!!』フルフル


ほのか『むー……』


ことり『……っ』ドキドキ

255: 2016/05/08(日) 17:53:05.53 ID:WH4eDnhz.net
ほのか『もー、なんでみてるのー?』


ことり『……っ』フルフル



ほのか『……もしかして、いっしょにあそびたいの?』



ことり『っ!?』ドキ!



ほのか『……なーんだ、それならそういえばいいのにー!』



ことり『……///』カァァ



ほのか『はい!』パッ




ことり『っ』





ほのか『いっしょにあそぼう♪』



ことり『……///』ドキドキ






ことり『……うん……♪』ギュ…

256: 2016/05/08(日) 17:53:31.26 ID:WH4eDnhz.net
全ての始まりは、ここから……。



穂乃果ちゃんが私に、声をかけてくれたのがキッカケ。




私は穂乃果ちゃんのことが……大好き。





―――の筈だったんだけどなぁ。





どうしてこうなっちゃったんだろう……。

257: 2016/05/08(日) 17:53:56.83 ID:WH4eDnhz.net
ことり『……うみ……ちゃん?』


うみ『ひぅっ!?』


ことり『……むぅ……』


うみ『……?』


ことり『……ほのかちゃんにあまりちかづかないでよね……』


うみ『っ』ビク


ことり『ことりはあなたのこと……キライだから……!』


うみ『……』ガクガク


ことり『わかった!?』


うみ『っ』コクコク





それが、私と海未ちゃんとの始めてだと思う。



最初は海未ちゃんなんか、大嫌い。




―――の筈だったんだけどなぁ。



どうしてこうなっちゃったんだろう……。

258: 2016/05/08(日) 17:54:44.50 ID:WH4eDnhz.net
私は穂乃果ちゃんが大好きで。


海未ちゃんのことが大嫌いで。




―――でもいつしか。




海未ちゃんのことが大好きになり。


穂乃果ちゃんのことが大嫌いになった。




多分、他の二人も……。



誰かが好きで、誰かが嫌い。



そんな感情を何度も何度もめぐらせている。



穂乃果ちゃんが……。



海未ちゃんが……。



私が……。



ぐるぐるぐるぐる。

259: 2016/05/08(日) 17:55:04.17 ID:WH4eDnhz.net
複雑に絡み合った想いは。



長い時をかけて。




ぐるぐるぐるぐると。




めぐっていきました。







しかし、そんな三角関係も……。




終わりの時は必ずやってきます。

260: 2016/05/08(日) 17:55:37.41 ID:WH4eDnhz.net
万華鏡のように回りめぐる華も。




いつしか、散ってしまう運命なのです。






はらはら、はらはらと。







私たち三人は、出会わなければよかったのかなぁ―――。






遠い遠い昔の夢は。





やがて今に吸収されて。





終わっていきます。

261: 2016/05/08(日) 17:56:02.00 ID:WH4eDnhz.net
―――。






ことり「……」






ことり「……ほのか……ちゃん……」





ことり「……ぅ」






ことり「……ぁ……」




ムクリ…




ことり「……うう……」






ことり「ここ……は……?」



ことり「……え……と……」

262: 2016/05/08(日) 17:56:47.40 ID:WH4eDnhz.net
……頭がぼんやりとする。



考えることが、何もできない……。





ことり「……ん」



ここは……病院……?



見たことのない部屋……。



……。



ダメだ……。




視界に色々入ってくるけれど……。




その全てが、すっと、頭のなかをすり抜けていってしまって……。




理解ができない。

263: 2016/05/08(日) 17:57:29.09 ID:WH4eDnhz.net
なんだろう……。



私はどうしちゃったんだろう……。





ギュ…





あ……。




私……手、握られてる……?



誰の……手……?





海未「……」スースー






う……み……ちゃん……?




海未ちゃん……だ。




海未ちゃんの手だ……。



暖かい……。

264: 2016/05/08(日) 17:58:21.93 ID:WH4eDnhz.net
全てがぼんやりした世界の中で……。



その手の温もりだけが、はっきりと輪郭を描いていた。





ズキン





ことり「……っ」



あれ……?



なんだろう……この胸の痛みは……。




……。




そういえば、私……。




海未ちゃんに酷いことを……。





私は、この手を……。







ことり『触らないでっっっ!!!!』





……払い除けてしまったんだ。

265: 2016/05/08(日) 17:59:02.45 ID:WH4eDnhz.net
少しだけ……記憶が形を作っていく……。



私は海未ちゃんに……。



酷いことをしてしまった……。





ことり「海未ちゃん……っ」



ことり「海未ちゃん……ごめんなさい……っ」




たった一言。



この言葉が言えなくて……。



私は苦しんでいた気がする。






ことり「海未ちゃんごめんなさい……っ!海未ちゃんごめんなさい……っ!」

266: 2016/05/08(日) 17:59:50.45 ID:WH4eDnhz.net
手を強く握りながら。




うわ言のように、謝罪の言葉だけを繰り返す。




もう、今更遅いのかもしれないけど……。




もっと早くにこの言葉を言えたのなら……。




違う未来が待っていたのかな……?






海未「……っ」ハッ



ことり「海未ちゃんごめんなさい……っ!海未ちゃん……ごめんなさい……っ!」



海未「ことり……っ、目を覚ましたんですね……っ!」



ことり「海未ちゃんごめんなさい……っ!海未ちゃん……ッ!」




海未「ことり……?」





海未ちゃんが起きたことにも気が付かず。




私は謝罪の言葉を繰り返していました。

267: 2016/05/08(日) 18:00:44.23 ID:WH4eDnhz.net
……やがて。





海未ちゃんはその言葉を理解してくれたのか……。






ダキ…。






ことり「っ」




優しく、私の身体を抱きしめてくれました。




海未「……もう、いいんですよ」



ことり「……っ」ポロ



海未「ことりの気持ちは、わかっていますから……」



海未「だからもう……謝らなくていいんです……」



ことり「海未ちゃん……海未ちゃん……っ!!」



海未「……っ」ギュ




ことり「うう……っ……うう……ッ!!」

268: 2016/05/08(日) 18:01:21.40 ID:WH4eDnhz.net
ぽろぽろと涙を零す私のことを……。



海未ちゃんは強く強く……。




抱きしめてくれました。





ズキン




それでも……。



私の胸の痛みは、引きそうにない……。






私は何か……。





大事なことを忘れている気がする……。




昨日のこと……?





ことり「……っ……」

269: 2016/05/08(日) 18:01:47.52 ID:WH4eDnhz.net
未だに頭はぼんやりしてるけど……。



うっすらと、昨日の出来事がぼんやりと頭に映し出される……。




私は昨日……。






穂乃果『―――』


ことり『―――』






穂乃果ちゃんと……。




……ダメだ。




ほんの微かにしか、思い出すことができない。



穂乃果ちゃんと会話している自分の姿が映しだされはするが……。



どんな会話なのかは、見当もつかない。





……私は穂乃果ちゃんと……何を話したんだろう……。

270: 2016/05/08(日) 18:02:25.90 ID:WH4eDnhz.net
海未「……」




ことり「海未ちゃん……」


ことり「ありがとう……もう大丈夫だよ……」




海未「ことり……」




ことり「ねぇ」



海未「はい……?」



ことり「ことり、どうしてここにいるの……?」


海未「え……」



ことり「あのね……ことり、頭がぼーっとして……記憶があやふやなの……」


海未「……そう……なのですか……」



ことり「……ことり……穂乃果ちゃんと、何か話していたような気がするの……」




ことり「……教室で」




ことり「あの日と同じような……暗い教室の中で……」

271: 2016/05/08(日) 18:03:04.95 ID:WH4eDnhz.net
海未「ことり……」



海未「……話の内容は……覚えていますか……?」






穂乃果『―――』





ことり「……ううん」



ことり「全然……思い出せないよ……」




何か……凄く大切なことだったと思う。




忘れてはいけない、何か……。




大事な記憶が、私の中からキレイに抜け落ちている気がする。



……なんでなんだろう。

272: 2016/05/08(日) 18:03:44.41 ID:WH4eDnhz.net
海未「……ことり」



海未「多分あなたは……疲れていたんです……」



海未「疲れていたから……感情が暴走して、昨日のようなことが起きた……」




暴走して……?




私……何をしちゃったんだろう……。





きっと。




大切な何か……。




穂乃果ちゃん……。





穂乃果ちゃん……?





そういえば……穂乃果ちゃんはどうしたんだろう……?

273: 2016/05/08(日) 18:04:12.62 ID:WH4eDnhz.net
ことり「……海未ちゃん……穂乃果ちゃんは……?」




海未「……」






海未「……隣の病室に、いますよ」





隣の……病室……?




穂乃果ちゃんも……?




……穂乃果ちゃんに何があったんだろう……?




……分からない。




でも……。




そっか……近くにいるんだね……。





穂乃果ちゃんに……会いたいな……。

274: 2016/05/08(日) 18:05:01.18 ID:WH4eDnhz.net
会って……。




謝らないと。





……謝る……?



何を謝るの……?






穂乃果『―――っ』






―――ダメだ。




思い出せない……。





ことり「……海未ちゃん」


ことり「ことり……穂乃果ちゃんに会いたい」ゴソ…


海未「……あ、だ、だめです!ことり!無理をしては……!」


ことり「大丈夫だよ……あっ」クラ…


海未「ほら……起きたばかりで、身体がふらふらじゃないですか……」


ことり「……うん……そうだね……」アハハ…



ことり「でも……それでも穂乃果ちゃんに会いたい……」

275: 2016/05/08(日) 18:05:38.95 ID:WH4eDnhz.net
ことり「……会って……謝らないと……」


海未「謝る……?」


海未「ことり……昨日のことを……思い出したのですか……?」


ことり「……ううん」


ことり「全然思い出せないよ……」


ことり「穂乃果ちゃんが……ことりに何か言ってるのかだけは思い出せるけど……」


ことり「内容とかは全然……」



海未「……なら、何故……?」



ことり「でもね……」



ことり「ことりは……謝らないと行けない気がするの……」


ことり「海未ちゃんにも謝ったように……」


ことり「穂乃果ちゃんにも……ちゃんと謝らないと……」


ことり「取り返しがつかなくなるような気がして……」

276: 2016/05/08(日) 18:06:45.50 ID:WH4eDnhz.net
もしかしたら、もう手遅れなのかもしれない。



私たちが、今、ここでこうしているという現状は……。



多分、そういうことなんだろうと思う……。



でもね……。




今穂乃果ちゃんに会わないと……。




全てを失ってしまう気がして―――。







海未「……」




海未「……そう……ですね……」




海未「分かりました……一緒に、行きましょう」




海未「穂乃果のところへ……」



ことり「……ありがとう、海未ちゃん」

277: 2016/05/08(日) 18:07:19.18 ID:WH4eDnhz.net
海未ちゃんは、起き上がる私を手助けしてくれた。



あはは……。



私、こんなにふらふらなんだ……。



自分じゃないみたい……。



海未ちゃんに肩を貸してもらって立つのがやっとだ……。





トコ……トコ……





海未「……ことり」




トコ…




海未「……穂乃果に会う前に、ことりに伝えなければならないことがあります」

278: 2016/05/08(日) 18:08:07.81 ID:WH4eDnhz.net
ことり「……?」




海未ちゃんは、穂乃果ちゃんの病室の前まで来ると急に立ち止まり。




大分長い間をあけてから、言いました。






海未「私のせいなんです」




海未「……私の意志の弱さのせいで……」



海未「……今回の事件は起きてしまいました」




ことり「……海未ちゃんのせい……?」



海未「……」

279: 2016/05/08(日) 18:08:37.04 ID:WH4eDnhz.net
海未「希に忠告され……」



海未「自分でも、分かっていたはずなのに……」



海未「……私は……どちらかだけを選ぶことができなかった」



海未「どちらかを選ばず……」



海未「いえ……どちらかを選んでも尚、三人でいられると信じていました」



海未「私たち三人は、いつも一緒」



海未「いつまでも一緒」



海未「……私はそんな幻想を、いつまでも信じていた……ただの子供だったんです」

280: 2016/05/08(日) 18:09:47.92 ID:WH4eDnhz.net
海未「でも、実際には……いつまでも一緒にいられるはずがなかった」



海未「私たちは……余りにも近すぎたんです」



海未「普通にいる三人の関係じゃない」



海未「それぞれが、それぞれを求めあい、依存する……そんな三角関係」



海未「一緒にいれば……誰かが傷ついてしまう」




海未「最初は……私が」



海未「次に……ことりが」



海未「最後に……穂乃果が」

281: 2016/05/08(日) 18:10:46.22 ID:WH4eDnhz.net
海未「お互いに求め合ってるのに……」



海未「何故か私たちは……傷つけあってしまった……」




海未「私は……それでも……」




海未「傷つけあいながらでも、三人でも上手くやっていけると思っていました」



海未「私が……強くなれば……」



海未「私が強くなりさえすれば、なんとかなると思っていたのです」

282: 2016/05/08(日) 18:11:13.65 ID:WH4eDnhz.net
海未「……ところが、現実はその逆でした」



海未「私が強くなればなるほど……二人が傷ついていった」



海未「どうしようもなく、傷つき……耐え切れなくなった想いは……」





海未「人を狂わせてしまう」





海未「ことりも……」



海未「穂乃果も……」




海未「私のせいで……!」




ことり「海未ちゃん……」




海未「……っ」

283: 2016/05/08(日) 18:12:56.62 ID:WH4eDnhz.net
狂わせてしまった……。



私を……?



穂乃果ちゃんを……?




やっぱり……。




私は穂乃果ちゃんに……。




海未「……」



海未「ことり……」





海未「穂乃果は私たちを……歓迎してくれはしないでしょう」




ことり「……え……?」




どういうことなのかな……。



歓迎はされないって……。



もう、私のことも……。



海未ちゃんのことも……。



嫌いになったのかな……?

284: 2016/05/08(日) 18:14:15.13 ID:WH4eDnhz.net
海未「ことり……」



海未「穂乃果に……何を言われたとしても……」



海未「私は……あなたの味方ですから……」




ことり「……海未ちゃん」




ことり「……ありがとう」ニコ




ことり「……入ろ?」




海未「……はい」





コンコン





海未「……失礼します」






ガラ…




バタン





トコトコ……。

285: 2016/05/08(日) 18:15:01.81 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果「……」




あ……。




穂乃果ちゃんだ……。




良かった……。




顔を見られたら……安心した……。




なんだか……穂乃果ちゃんがずっと遠いところへ行った気がしていたから……。





ことり「穂乃果ちゃん……っ!」

286: 2016/05/08(日) 18:15:42.89 ID:WH4eDnhz.net
すぐにでも飛びつきたい衝動に駆られたけど。



身体が不自由な状態と。



穂乃果ちゃんから発せられた言葉によって、それは遮られた。











穂乃果「近寄らないで……」






ことり「……ほの……か……ちゃん……?」




海未「……」

287: 2016/05/08(日) 18:17:37.84 ID:WH4eDnhz.net
無機質な表情と……冷たい目……





あの時と……一緒……。





”あの”穂乃果ちゃんだ……。





唯一、違うとすれば……。





その目は、私のことも海未ちゃんも映していなくて……。





生気が宿っていないかのように、虚空を見つめていた。





ことり「穂乃果……ちゃん……」



穂乃果「……」





穂乃果「……何」


ことり「っ!」

289: 2016/05/08(日) 18:18:39.62 ID:WH4eDnhz.net
それでも……”この”穂乃果ちゃんの放つ凄みは……。




今も私を震え上がらせる……。




ことり「ほ、穂乃果ちゃん……あのね……っ」

穂乃果「聞きたくない」


ことり「っ」



穂乃果「出てって」

290: 2016/05/08(日) 18:19:12.35 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果ちゃんは、何にも興味を持たないというふうに。



窓から遠くを見ている。




ことり「……あ、あの……ね……ことり
穂乃果「うるさいな」


穂乃果「聞きたくないって言ってるでしょ」




だんだんと……語気が強くなってくるのが分かる……。



ちくりと……。




私の胸に、トゲが刺さる。

291: 2016/05/08(日) 18:20:07.07 ID:WH4eDnhz.net
ことり「……ほの……か……ちゃん……」



穂乃果「お願いだから……出てって……」



ことり「……」




私は……。




背中の震えを止めることができなかった。




怖い……。



怖いよ……。




今にも逃げたしくなるくらいに、その言葉は凍てついている。








……けど。

292: 2016/05/08(日) 18:21:04.00 ID:WH4eDnhz.net
今は、後ろに海未ちゃんがいるから……。




海未ちゃんが支えてくれているから……。




大丈夫……。




穂乃果ちゃんに伝えよう。




今度こそ、伝えよう。








ことり「ごめんなさい!!」


穂乃果「……っ」

293: 2016/05/08(日) 18:21:55.78 ID:WH4eDnhz.net
ことり「……ことり……穂乃果ちゃんに謝らなきゃいけないの……」



ことり「きっと……」



ことり「昨日……すごい酷いことを穂乃果ちゃんにしたと思うから……」



ことり「ごめんなさい……!」



ことり「ごめんなさいの理由も分からないんだけど……」



ことり「それでも……ごめんなさい……!」

294: 2016/05/08(日) 18:22:23.58 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果「……」



穂乃果「……何それ……」



穂乃果「理由がわかんないって……意味わかんないんだけど……」





海未「ことりはどうやら、昨日の前後の記憶を失っているようなのです……」


穂乃果「っ」

295: 2016/05/08(日) 18:23:48.36 ID:WH4eDnhz.net
ことり「……そう……なの……」


ことり「……だから……ことりが穂乃果ちゃんに何をしたのか……分からない」


ことり「けど……謝らないと、一生後悔する気がして……」



ことり「だから……ごめんなさ
穂乃果「いい加減にしてよッ!!!」バン!



ことり「っ!?」

296: 2016/05/08(日) 18:24:23.66 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果「……何なのそれ……っ?」



穂乃果「理由も分からないけど……ごめんなさいって……っ!」




穂乃果「そんなの……意味わかんないよっ!!」




穂乃果「謝られたって……!」



穂乃果「謝られたって……お前が海未ちゃんを汚したことに変わりはないんだッ!!」

297: 2016/05/08(日) 18:25:32.36 ID:WH4eDnhz.net
汚す……?



海未ちゃんを……。




私が……?




穂乃果「なんなの……っ!そんな都合よく忘れるなんて……っ!!」



穂乃果「信じらんないよッ!!」



穂乃果「お前が……!!」



穂乃果「お前が海未ちゃんを……ッ!!」



穂乃果「お前なんか……ッ!」



穂乃果「お前なんか頃してやる……ッ!!」







穂乃果「頃してやるんだからぁぁぁぁッッ!!!!」





ことり「―――」




記憶が、脳裏をフラッシュバックする。

298: 2016/05/08(日) 18:26:17.50 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果『―――』



穂乃果『―…――』










穂乃果『氏んで』








暗がりの中で鈍く光る、銀色の刃を振り上げる穂乃果ちゃんと。








私の前に、大きく手を広げ立ち塞がり、守ろうとしてくれる……誰かの影。










パシン!!








―――それは、どこかで見た光景。





あの日と同じ、乾いた音が病室に響き渡る。

299: 2016/05/08(日) 18:27:18.16 ID:WH4eDnhz.net
海未ちゃんが大きく手を振りかざし。





穂乃果ちゃんの頬を叩いていた。









海未「……穂乃果」


穂乃果「っ……」







海未「ことりに謝ってください!!」

300: 2016/05/08(日) 18:29:15.84 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果「…………」





穂乃果「……なんで……っ」




穂乃果「なんで……海未ちゃんはこいつの味方ばっかりするのっ!?」




穂乃果「昨日だって……!!」



穂乃果「ほのかがこいつを殺そうとするのを止めて……!」



穂乃果「ほのかのことを思いっきり叩いて……っ!!」




穂乃果「なんで……なんで……っ!!」




穂乃果「なんでほのかばっかり……っ!!」



穂乃果「ほのかばっかりいじめるの……ッ!!」

303: 2016/05/08(日) 18:31:42.36 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果「こいつがいるから……ッ!!こいつがいるからほのかは……ッッ!!」




海未「……穂乃果……っ!」




ダキ…





穂乃果「っ!?」

307: 2016/05/08(日) 18:33:25.18 ID:WH4eDnhz.net
海未「……お願いですから……っ」




海未「……そんな怖いことを言わないでください……」




海未「穂乃果……っ」ギュウ





穂乃果「うう……っ!!」




穂乃果「……だって……」



穂乃果「だって……っ……だっでぇ……!!」

308: 2016/05/08(日) 18:36:13.67 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果「海未ぢゃんが……そいつと……そいづとぉ……っ!!」



海未「ことり……ですよ」



海未「そいつなんて言わないでください……」



海未「大切な……」




海未「大切な友達じゃないですか……」

309: 2016/05/08(日) 18:37:04.70 ID:WH4eDnhz.net
穂乃果「うう……ッ……うう……ッッ!!」



海未「……」







ことり「……」




ことり「……穂乃果ちゃん……海未ちゃん……」



海未「ことり……?」



ことり「思い出したよ……昨日のこと」

310: 2016/05/08(日) 18:38:04.61 ID:WH4eDnhz.net
ああ……。




ようやく頭のなかの霧が晴れた。




穂乃果ちゃんに……強く罵られて……。




私の中の抜け落ちていた記憶が、呼び戻された。





なんで……。





なんで私はこんな大事なことを忘れていたんだろう……。

311: 2016/05/08(日) 18:41:46.16 ID:WH4eDnhz.net
違う。




忘れていたんじゃない……。




現実に耐え切れなくなって、拒絶してしまったんだ。




私は……。



現実だけじゃなく。




自分の記憶からも逃げ出していたのかな……。




最低だ……私……っ。

312: 2016/05/08(日) 18:42:51.47 ID:WH4eDnhz.net
ことり「……穂乃果ちゃん……」



ことり「……穂乃果ちゃんのおかげで……思い出せたよ……」




ことり「ことり……」



ことり「穂乃果ちゃんに殺されても仕方がないことを……しちゃってたんだね……」




海未「ことり……ッ!」

313: 2016/05/08(日) 18:46:57.49 ID:WH4eDnhz.net
ことり「海未ちゃん……」




ことり「二人とも……」







ことり「本当にごめんなさい……ッ!!」




ことり「謝っても許されないのは分かってる……っ」




ことり「けど……っ!」




ことり「ごめんなさい……っ!!」

314: 2016/05/08(日) 18:53:23.58 ID:WH4eDnhz.net
ことり「海未ちゃんのことが……っ」



ことり「好きで好きで……どうしようもなくて……!!」



ことり「頭のなかがぐちゃぐちゃになって……っ」



ことり「気がついたら……海未ちゃんと……ッ!!」



ことり「……ごめんなさい……ッ!!」

315: 2016/05/08(日) 18:53:48.06 ID:WH4eDnhz.net
ことり「ことりは……ッ!」




ことり「穂乃果ちゃんのこと裏切るつもりなんて……なくて……ッ!!」



ことり「だって……ッ!穂乃果ちゃんは……ッ!」








ことり「私の始めての友達だもん……ッ!!」



穂乃果「―――っ」

317: 2016/05/08(日) 18:58:23.82 ID:WH4eDnhz.net
ことり「こんなことするつもりじゃなかったの……ッ!!」



ことり「だから……ごめんなさいッ!!」




ことり「ごめんなさい……ッ!うわぁぁぁぁ……ッ!!うわぁぁぁぁぁぁんッッ!!!」

318: 2016/05/08(日) 18:59:09.04 ID:WH4eDnhz.net
私たちは、何度同じ過ちを繰り返せばいいのだろう。




……きっと、何度でも。




何度でも間違いは起きる。




人と人との感情は、そんなに単純じゃないんだ。





想いがめぐれば……。




感情もまた変化する。

319: 2016/05/08(日) 19:04:29.27 ID:WH4eDnhz.net
あの日……。




三人で涙を流して、二度と罪を犯すまいと反省した日……。




私たち三人は、友達でした。




最高の友達でした。

320: 2016/05/08(日) 19:05:20.83 ID:WH4eDnhz.net
しかし、それが恋に変わり……。




恋愛としての嫉妬が増幅されることによって……。




こうも、三人の関係を引き裂いていくなんて思いもしませんでした。

321: 2016/05/08(日) 19:06:14.40 ID:WH4eDnhz.net
私は海未ちゃんが好き……。



穂乃果ちゃんも海未ちゃんが好き……。



穂乃果ちゃんは海未ちゃんと付き合うことになった……。



穂乃果ちゃんに海未ちゃんを取られる……。




だから……穂乃果ちゃんのことが嫌い……?






ううん。

322: 2016/05/08(日) 19:06:44.53 ID:WH4eDnhz.net
ほのか『いっしょにあそぼう♪』









ことり「私は……穂乃果ちゃんのことも大好きだよ……ッッ!!」








それが、私の気持ち―――。



最初からそれだけは変わっていなかったんだ。

323: 2016/05/08(日) 19:10:07.77 ID:WH4eDnhz.net
私にとって、穂乃果ちゃんは”絶対”だったから。




変わらずに、穂乃果ちゃんも好きだったんだ……。




穂乃果「意味……わかんない……よ……っ!!」

324: 2016/05/08(日) 19:11:51.17 ID:DtPm998S.net
穂乃果「……ことり……ちゃんが……っ!海未ちゃんを……っ!」



穂乃果「取ったことは……っ!変わらないんだよ……ッ!!」



穂乃果「ことりちゃんなんか……っ!ことりちゃんなんか……っ!!」














穂乃果「大好きだよッッッ!!!」

325: 2016/05/08(日) 19:12:58.94 ID:DtPm998S.net
ダメだ……。
寝てろ規制がひどいから、携帯回線から。

326: 2016/05/08(日) 19:13:49.11 ID:DtPm998S.net
穂乃果「そんなのっ!ほのかだって一緒だよ……っっ!!」



穂乃果「海未ちゃんを取られたくないから……っ!たくさんことりちゃんに嫉妬したりしたけど……っ!!」



穂乃果「本当は……っ!ことりちゃんだって……っ!」



穂乃果「同じくらい……大好きなんだよッッ!!」



穂乃果「なんで……っ!なんで……殺そうとなんて思っちゃったんだろう……っ!!」



穂乃果「なんでほのか……っ!!あともう一歩で……っ!」



穂乃果「取り返しの付かないことをするところだった……っ!!」



穂乃果「ことりちゃんごめんなさい……っ!ことりちゃんごめんなさい……ッッ!!」



穂乃果「うわぁぁぁぁっ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

327: 2016/05/08(日) 19:14:26.42 ID:DtPm998S.net
……私たちは、大きな大きな声で泣き続けました。




お互いにふらふらの身体を支えあい。




拒絶し合った存在を、もう一度つなぎとめるかのごとく。




強く強く、抱き合っていました。






―――何か一つ。




あと何か一つ選択肢を間違えただけで……。




きっと、悲惨なことが起きていたのかもしれない。





穂乃果ちゃんが私を刺し頃していた未来があったのかもしれない……。




いや、それどころか……。




私が海未ちゃんを虐め抜いていた未来なんかもあったのかもしれない……。

328: 2016/05/08(日) 19:15:07.35 ID:DtPm998S.net
私たちは、色んな道を辿ってきた。




きっと、道中で沢山のミスを犯してきたと思う。




だって……私たちはこんなにも涙を流しているのだから……。




それでも……。




ここに辿りつけたことは……。





もしかしたら、奇跡なのかもしれない。





それぐらい、私たちの三角関係は歪んでいたから……。

329: 2016/05/08(日) 19:15:47.63 ID:DtPm998S.net
海未「……穂乃果……ことり……」



穂乃果「海未ちゃん……っ」


ことり「……ぐすっ……」






海未「……二人が仲直りできて……本当に良かった……っ」



海未「私は……二人のことが大好きです……」




海未「ですが……それ以上に……」




海未「二人の仲がいいところが……一番好きだったのですよ……っ」




海未「私が入り込むの余地のないくらいに……二人は仲が良かった……」




海未「だから、私がそこに割って入ることで……関係を歪ませてしまったことを……っ」



海未「私は……後悔しました……っ」



海未「私がいることで……本来好き会っていた二人が傷つけあってしまうなんて……」



海未「そんな悲しいこと……っ!あって良い訳ありません……!」

330: 2016/05/08(日) 19:16:16.58 ID:DtPm998S.net
海未「それでも……私も、二人の傍にいたかった……」



海未「手を差し伸べてくれた穂乃果と……ことりと、一緒にいたかった……」



海未「いつまでも三人で一緒にいたかった……っ!」





海未「ですが……そんなのは私の甘えだったんです……」



海未「大事な物を選べないかぎり、良い未来は待ってない……」




海未「……希に、そんなことを言われました」




海未「……本当にその通りだった」




海未「私は、どちらか……」



海未「穂乃果かことりのどちらかを、選ばなければいけなかったんです」

331: 2016/05/08(日) 19:16:52.76 ID:DtPm998S.net
海未「だから私は……今……」



海未「今更かもしれませんが……はっきりと伝えたいと思います……」

















海未「……ことり」












海未「……私は、あなたと付き合うことはできません」









海未「そして、穂乃果……」











海未「私にはあなたとも……付き合い続ける資格はありません」

332: 2016/05/08(日) 19:17:48.62 ID:DtPm998S.net
海未「……最初に」


海未「ことりに、はっきりと……伝えられていれば……」



海未「このような結果は待っていなかったかもしれません……」





海未「ですが……これは私の罰です……」




海未「私が選択できなかった……罰」




海未「私はあなたたちを愛する資格はない……」





海未「だから……二人共……ごめんなさい……ッ!!」








穂乃果「……」



ことり「……」

334: 2016/05/08(日) 19:18:39.26 ID:DtPm998S.net
穂乃果「……くす」



ことり「……あはは……」





穂乃果「あははっ!」


ことり「あはははっ♪」




……思わず、私たちは吹き出してしまいました。




涙でぐちゃぐちゃになった顔だけど。




私たち二人は笑顔で……。



思い切り笑い合いました。




海未「え、えっと……穂乃果……ことり……」




海未ちゃんは急に笑い出す私たちに戸惑っていたけど。



私たちは、そんなのはお構いなしだった。

335: 2016/05/08(日) 19:19:30.97 ID:DtPm998S.net
穂乃果「……あははっ……ことりちゃん……」



穂乃果「ほのかたち……フラれちゃったね……っ」



ことり「そうだね……っ……フラれちゃった……♪」





穂乃果「あはは……っ……ぐす……」



ことり「穂乃果ちゃん……っ」




二人して笑い合い……。




そして、また涙を流しました。






私たちの大好きな海未ちゃんにフラれる。




それはとても悲しいことだけど……。




ああ……なんだろう……。





なんだか、スッキリした……。

336: 2016/05/08(日) 19:20:14.95 ID:DtPm998S.net
はっきりと言われると……こんなにも清々しいんだね……。




あんなにも、海未ちゃんを想って苦しんでいた日々が続いていたのに……。




今はもう……。




胸の痛みが、全く無くなったみたい。





あはは……。




でも悲しいや……。




穂乃果ちゃんも悲しいみたい。




当たり前だよね……。




穂乃果ちゃんは付き合ってたんだから……。

337: 2016/05/08(日) 19:20:50.87 ID:DtPm998S.net
海未『……ケ、ケンカはダメですよ?』

海未『仲が悪いと、二人のことを嫌ってしまいますからね……?』





あははっ。



ケンカした罰、なのかなぁ……。





海未ちゃんに嫌われちゃった……。






……でも、穂乃果ちゃんも同じ気持ちみたい。





海未ちゃんにフラれたことは……凄く悲しいけど……。




何よりも……。




私たちはまた、仲直りすることができたのだから……。





今の私たちの心は、青空のように晴れ渡っています。






ね、穂乃果ちゃん……?

338: 2016/05/08(日) 19:21:21.79 ID:DtPm998S.net
ぐるぐるぐるぐる。





ぐるぐると、めぐりめぐった想いも。





必ず、終わりを迎えます。





万華鏡のようにめぐる華も。





いつしか、散ってしまうのが運命なのです。








はらはら、はらはらと―――。












――――――――――――――。

339: 2016/05/08(日) 19:21:54.14 ID:DtPm998S.net
エピローグ―――。






あれから私たちは、元の三人の関係に戻ることができました。




三人が一緒に仲良く、笑顔でいられる。




……それはとっても幸せなことでした。




μ'sのメンバーもものすごい心配してくれて……。



一番心配してくれた希ちゃんには大泣きされて、ものすごい叱られました。



その後、三人ともかつてない程の強烈なわしわしの刑に処されたのは言うまでもありません。





あはは……。




これもある種の罰なのかな……?

340: 2016/05/08(日) 19:22:35.81 ID:DtPm998S.net
私たちが元気になったことで、μ'sでの練習も、程なくして始まり。



いつも通りの日常が戻ってきました。




しかし、私たちの関係は元通りになったように見えるけど……。





一つだけ、大きな違いがあります。



それはある一つの誓い。








―――恋愛禁止。







あはは。




女の子同士なんだから、当たり前なんだけどね♪

341: 2016/05/08(日) 19:23:07.34 ID:DtPm998S.net
私たちは近すぎれば近すぎるほど……お互いに傷つけあってしまうから。



恋愛だけは、やめよう。




そう誓いました。




……まぁ、あの日に二人共フラれてるから……誓いも何もないんだけど。




……でも。




それでもやっぱり、人間っていうのは同じ過ちを繰り返す人間だと思います。





どうしても、私たちは…‥恋愛感情を止めることは出来ないみたいです。



一緒にいれば、それは当たり前。










だから私は……。







留学を決意しました。

342: 2016/05/08(日) 19:23:42.15 ID:DtPm998S.net
元々、服飾関係の留学の話は既にあったのだけれど……。




海未ちゃんのこともあって、うやむやにしていました。






きっと、このまま同じ場所に居続けたら……また私たちは傷つけあってしまう。




そう思ったから、私は二人から離れることを決意しました。







……もう、嫌い合うのは……嫌だから。

345: 2016/05/08(日) 19:24:46.58 ID:DtPm998S.net
ことり「……今日は見送り、ありがとうね♪」


穂乃果「ことりちゃん……寂しくなるよぉ……っ……うう……っ!」ウルウル


海未「穂乃果……今日は泣かない約束ですよ」


海未「私たちは笑って、ことりを見送ってあげましょう……っ」ポロ…


穂乃果「分かってるよぉ……」


穂乃果「……って!」


穂乃果「海未ちゃんだって、涙ぐんでるじゃん!!」


海未「こ、これは……!あ、あくびをしただけです!泣いてなどいません!」


穂乃果「嘘だーっ!」


ことり「うふふ……♪」



ことり「留学って言っても、別に永遠の別れっていうわけじゃないし、また帰ってくるよ……っ」



ことり「二人共……帰ってきたら……また遊ぼうね……!」ポロ…



穂乃果「ことりちゃん……っ」


穂乃果「……うん!」


海未「……ことりっ」

346: 2016/05/08(日) 19:25:30.86 ID:DtPm998S.net
結局私たちは、涙を流しながら三人で抱き合っていました。



涙を見せない約束だったのに……。



あはは……みんな涙もろいんだから……。





ことり「……あのね、穂乃果ちゃん、海未ちゃん」


ことり「私……」


ことり「二人に、言わなくちゃいけないことがあるんだ……」






私は最後に、どうしても言っておきたいことがあった。



それは勿論……。
















ことり「……海未ちゃん、大好きっ!!」


穂乃果「ちょっ!?」


海未「ことり!?」

347: 2016/05/08(日) 19:26:04.63 ID:DtPm998S.net
ことり「ことりは海未ちゃんのことが世界で一番大好きです!大好き大好きで、胸が張り裂けそうなくらい好きです!」


ことり「ことりと……!付き合ってくださいっ!!!」





ずっと言えなかった、私の告白。




ずっと胸のうちに秘めていた、私の想い。




不幸なことが重なって、変な風に海未ちゃんへと伝わってしまったけど。




正真正銘、私自身の口から好きだと伝えることは……できなかったから。





今……。




別れの瞬間に、言おうと思った。




……勿論、返事はわかってる。

348: 2016/05/08(日) 19:26:41.64 ID:DtPm998S.net
海未「あ、あの……ことり……///」



海未「そ、その……」




穂乃果「恋愛禁止!」



穂乃果「だよ!?ことりちゃん……!!」




海未「そ、そうです……ことり……」



海未「申し訳ありませんが……」







ことり「……」クス






あはは。




二人の焦る表情と、照れた表情と、もしかした怒りもあるかな……?



穂乃果ちゃんは怖いからなぁ……♪




そんな顔を見るのが、私は好きなのかもしれない。

349: 2016/05/08(日) 19:27:17.53 ID:DtPm998S.net
色んなことがありすぎて、私はちょっとおかしくなってるのかなぁ?



だから、こんなことも平気で言えるんだ……♪












ことり「ことりは……穂乃果ちゃんのことも大好きですっ!!」


穂乃果「へ!?」


海未「!?!?」







ことり「ことりは穂乃果ちゃんのことも世界で一番大好きです!大好き大好きで、胸が張り裂けそうなくらい好きです!」

ことり「ことりと……!付き合ってくださいっ!!!」

350: 2016/05/08(日) 19:28:02.83 ID:DtPm998S.net
二人が慌てふためく顔が、実に愉快だった。



あはは♪



二人と付き合うなんて、そんなことできるはずないし……。



私は……これを言いたかっただけだ……。



きっと、胸に秘めたまま遠くへ旅立ってしまったら……。



また、胸の痛みに悩まされるかもしれない。



そう思ったから、私は自分の欲望を素直に打ち明けた。




……これだったら、変にお互いが嫉妬しなくてすむよね?




穂乃果「ことりちゃん……!?どうしちゃったの……!?頭大丈夫……!?」


海未「そうですよことり……!辛さ故にまたおかしく……っ!」




失礼なことを言う二人だ。



でも、大丈夫かどうかは本当にわからない。

351: 2016/05/08(日) 19:28:54.90 ID:DtPm998S.net
ことり「だって、私はもう……三人一緒にいられないから」





ことり「だから、最後に私の想いを伝えておきたかったの」





ことり「……三人一緒じゃなくなるんだから、恋愛禁止は終わりでしょ♪」




穂乃果「ことりちゃん……」


海未「ことり……」




ことり「……穂乃果ちゃん、海未ちゃん」








ことり「大好きだよ……」

352: 2016/05/08(日) 19:30:07.02 ID:DtPm998S.net
穂乃果「……ほのかも……」



海未「……私もです……」





ことり「……二人共」





ことり「私に隠れて恋愛したらダメだからねっ!」


海未「そ、そんな……///」


穂乃果「ぎく」



ことり「あー!ぎくって言ったー!!」



穂乃果「い、言ってないよーっ!」



ことり「言ったもん!ことりはちゃんとこの耳で聞きましたっ!」



穂乃果「そんなことしないもん!ことりちゃんがいない間に海未ちゃんとなんて……!」



ことり「やっぱり海未ちゃんに言い寄る気だったんだーっ!」



ソンナコトナイヨー!!


ウソダー!!




海未「あはは……」

353: 2016/05/08(日) 19:32:15.84 ID:DtPm998S.net
三角関係に、良い結末はない。



誰かがそんなことを言っていました。





―――私たちの場合は、その大多数が言う”さんかくかんけい”に当てはまるのかな……?






……きっと、そんなことないよね♪





結局。




いつもの三人のまま。





私達の三角関係は、いつまでも続いてくのかもしれません―――。










終わり。

372: 2016/05/09(月) 01:02:03.03 ID:3nBY/bkA.net
無事完結してよかった
面白かったし読み応えあった
また次回作に期待
とりあえずお疲れ様

373: 2016/05/09(月) 01:52:59.32 ID:zWB9HP0K.net

これからもがんばれ

引用元: ことり「私たちのさんかく関係」