1: 2015/04/25(土) 19:49:32.20 ID:K8kDIg7W.net
「31…32…33…」

ブンブン

おおきく、もっとおおきく。 はやく、もっとはやく。


「…」

やをいんとほっすれば はなるるをまて――

…パンッ


~~♪

「…ありがとうございました。」


そのだのあととりとして はじないように。おとうさまやおかあさまのきたいにこたえるために――

2: 2015/04/25(土) 19:58:18.47 ID:K8kDIg7W.net
けいこがおわり、おとうさまからおかりしたほんをよみます。

むずかしいごほんには おとうさまが よみがなを ふってくれています。

「まなびてときにこれをならう―またよろこばしからざるや。」

わたしもよりおおくのことをまなんで、おとうさまのようなりっぱなもののふに―

「とものえんらいより きたる また たのしからざるや」

…とも。とも、とはどのようなものでしょう。

どうじょうのしょうねんのぶ にきている わたしより すこし としうえの こたちでしょうか?


…いえ、なにかちがうきがします。

だいすきな えほんや おとぎばなし のなかにでてくる ともだちとは。



「…」ギュウ

わたしにも いつかできるんでしょうか とも が―



「――わっ!みてみてことりちゃん!これ、じだいげきでみたやつだよ!きっとここにおさむらいさんが―」

「だ、だめだよほのかちゃん!ひとのおうちにかってにはいったら―」

4: 2015/04/25(土) 20:05:42.74 ID:K8kDIg7W.net
「えー?だいじょうぶだよー!ほのかたち、いまにんじゃだし!」


「おや、どうしたんだい君たち?」

「わっ!」

「きゃっ、ごめんなさい!」

「少年道場の子達かな?それにしては…」


「…」

「?」

「おじさん、おさむらいさん?」

「えっ?」

「ほのかね、いっつも『あばれんぼうさむらい』みてるの!しってる? すっっっごぉ~~く!かっこいいんだよ!」

「それでね?ほのか、ほんものの おさむらいさんに あいたくなっちゃったの!それでことりちゃんといっしょに さがしまわってたら テレビにでてきたおうちがあったから…」

「…」

「だからこっそりはいっておさむらいさんが かたなのていれをしてるところ をみようとおもって―あっ、せっかくだからわるいやつをやっつけてるところでもいいよ!」


「――ぷ、ふふふ、あっはっはっは!!」

5: 2015/04/25(土) 20:12:17.04 ID:K8kDIg7W.net
「いやあ、そうかそうか!実に勇敢なお嬢さんたちだ!いや、くのいちかな?」

「くのいち?なにそれ?」

「君たちみたいな女の子の忍者のことだよ。…しかし、残念だな。ここには侍はいないんだ。」

「ええ~っ!そうなの?おさむらいさんのいえなのに?」

「ごめんねえ。でもね、かわいいお姫様はいるから、ご機嫌をとっていってくれないかな?くのいちさん達?」

「おひめさま!それって、さむらいのおひめさまですか?」ズイッ

「わっ、ことりちゃん!」

「ああ、そうだよ。強くて頑固で寂しがり屋のさむらいのお姫様だ。――ほら、ごらん。あそこに―」




「っ!!」

おとうさまがこちらをゆびさしたしゅんかん わたしはいそいで まどからとびのいて はしりました。


「?なにもいないよ?」

「…おや、気づかれてしまったようだな。さすがだなあ。」

6: 2015/04/25(土) 20:18:13.99 ID:K8kDIg7W.net
「…はあ…はあ…」

だれでしょうか あのこたち。

みたことのないこがふたり。

ひとりは よこっちょにおさげをした げんきなこ。

もうひとりは おどおどした かわったかみがたのこ。

このいえにくるひとはだれであれ げんかんのまえで あいさつをしてからはいってきます。

それがこのいえのやくそく。それなのにあのこたちはだまって いつのまにか にわにいて…



――そういえば、にんじゃだといっていました。


もしや おとうさまのいのちをねらい おかあさまをなきものにせんとたくらむ あくのてさきでは?

にちようびの あさ おとうさまのおひざでみているテレビに そういうわるいにんじゃがでていました。


たいへん!これは そのだのいえの いちだいじです! 

わたしがおとうさまとおかあさまをおまもりしないと―

7: 2015/04/25(土) 20:28:28.72 ID:K8kDIg7W.net
「―ありがとう。気をつけてね。」

「はい、おきづかい おそれいります。」

おかあさまのだいこうぶつの おまんじゅうをつつんだふろしきを りょうてでさげて かえります。


「あはは!こっちだよー!」

「まってよ~!」 タタタ

わたしより おおきなこたちが はしりぬけます。


「…」

おもったより はやくかえれそうです。だから… 

だから、すこし こうえんのほうを みていくだけなら おかあさまにしんぱいもかけないでしょう。

「…」

そっと、なにくわぬかおで こうえんのよこをあるきます。

あのこはだれだ。 そんなふうにいわれないように。

よこめでこうえんのなかをぬすみみると


「わ~い!またことりちゃんがオニだ~!」

「あ~もう!く~や~し~い~!」

10: 2015/04/25(土) 20:34:57.15 ID:K8kDIg7W.net
「あ…」

おもわずあしがとまってしまいました。

「あはははは!」 「まってよ~!」 「こっちこっち~!」


「…」

かなあみのこちらとあっち えらいのはおうちのおてつだいをしているわたしのはずなのに。


ギュッ

つかんだかなあみが ぎしぎし おとをたてました。



「あははは!…?」

「あれ、どうしたのほのかちゃん?」

「ううん、みたことないこが…」

「ほんとうだ、どこのこだろうね?」

「でも、すっごくかわいいこだね。なかまにはいりたいのかな?」

「うん、そうかも。ねえ、さそってあげようよ。」

「うん!ねえねえ!って、あれ…?行っちゃった…」

11: 2015/04/25(土) 20:42:33.23 ID:K8kDIg7W.net
――きょうもいますね。

わたしは あのこたちをみはることにしました。

こうえんのまえを こっそりとおって。いそいでいるふうにして こえをかけられないように。


「―げんきなこは ほのか。」

クレヨンでグリグリとリボンをぬります。


「かわったかみがたのこは ことり。」

クレヨンでグリグリとおようふくをぬります。


「…」

クレヨンでグリグリとわたしのかみをぬります。


「―まあ、海未さん。お上手ね。お友達の絵?」

「あっ。」

「海未さん。いつの間にお友達ができたんですか?本当によかった…あなたは少し引っ込み思案だから…」

「いえ、その…」

「今度つれていらっしゃいな。ね、遠慮なんてしなくてもいいのですよ。」

「はい…」

12: 2015/04/25(土) 20:47:16.28 ID:K8kDIg7W.net
「――ほのかちゃん、やめようよ~!」

「へいきへいき!ちょっとみるだけだら!」

「で、でも…もしみつかったら…」


―― なにをしているのでしょうか。ほのかが こうえんのきにのぼっています。


「ぜったいみたんだもん!カラスさんが キラキラしたたからものを すにもっていくの!」

「あっ!ほのかちゃん!」

「えっ、きゃっ!」


カー カー


「うわっ!」

ドシン!



「っ!」

ほのか!

…よかった、けがはしてないみたい。

13: 2015/04/25(土) 20:53:04.64 ID:K8kDIg7W.net
カー!カー!

「わわっ!ごめんなさぁ~い!!」

「きゃあっ!!」

おこったカラスがほのかたちをおそっています。


どうしよう、どうしよう…


わたしは あしもとの こいしをひろいあげました。


「――ごめんなさい!」

わるいのはほのかだけど―いまはアニメのしゅじんこうみたいに―


らぶあろーしゅーと!

ヒュッ


カー!カー!ギャッ!?

「だれかたすけてぇ~!…えっ?」

カラスさん、ごめんなさい…

14: 2015/04/25(土) 21:01:06.54 ID:K8kDIg7W.net
「―おい、海未。どこに行くんだ?もうすぐ飯だぞ。」

「いえ、その…すぐもどりますので…」


ゆうがた、だれもいなくなったのをたしかめてからこうえんにはいります。

「…あのこたちのらくがき…」

じめんに ドレスをきたおひめさまのえがいくつもかいてあります。

「…いけません。」

ほのかがのぼっていたきのしたにたって よびかけます。


「――あの!こんなものじゃゆるしてもらえないかもしれませんが!せめてものおわびです!」

わたしは こっそりとっておいた きょうのおやつをだして じめんにおきました。

「…もしこまったことがあったら そのだのどうじょうにすをかまえなさい。わたしがおとうさまたちをせっとくします―」


ゆうぐれのなか きのうえから からすがいちわ わたしをみおろしていました。

16: 2015/04/25(土) 21:20:32.21 ID:K8kDIg7W.net
「――ことりちゃん!はやくはやく!きえちゃうよ!」

「ま、まってよ~!」


またあるひのこと ほのかとことりが みずたまりをけとばしてかけていくのをみつけました。


「…」

わたしもだまっておいかけます。

すこしさきのまがりかど。ふたりがきょろきょろとあたりをみまわしていました。


「はあ・・・はあ…あれ?ここだとおもうんだけど…」

「はあ…はあ…ほ、ほんとうにここなの?ほのかちゃん。」

「ほんとうだよ!このあたりからにじがでてたもん!」

「でも、なにもないよ?…ほのかちゃんあれ!」

「えっ?…あっ!にげられた!まて~っ!」

「ま、まって~!」


そういってまた、むこうのほうにかけていってしまいました。

そうか、いまのでがてんがいきました。ほのかたちはにじをおいかけていたのです。


ああ、なんて――なんて――




なんて すてきなんでしょう!

17: 2015/04/25(土) 21:27:43.13 ID:K8kDIg7W.net
にじのねもとにはルビーのおさらがある―ごほんでよみました。


「こんどはあっちだ!ことりちゃん!」

「うん!」

ほのかたちはにじを わたしはほのかたちとにじを、ぎんいろのくもがうかぶそらのしたでおいかけました。

みずたまりをとびこして かたつむりさんにてをふって ばれないようにこっそりと


はしってはしって

いくつもほどうきょうをこえて

さかをのぼって おりて

かいだんをかけおりて のぼって


やがて――



「うわぁ~~~ん!!ここどこ~~~!」

19: 2015/04/25(土) 21:45:36.39 ID:K8kDIg7W.net
きがつけば しらないけしき。

「うわぁ~~ん!」

「おかぁさ~ん!」



――ああ、どうしよう。このままじゃ、このままじゃ…


『なかないでください。ほのか、ことり。』

そういってでていけたらどれだけいいか。


「…っ…ほ、ほの…」


「うわぁぁあ~~!!」

「かえりたいよぉ~~!」


「こと……っ…」

「…っ」グッ


カンカン

ことばのかわりに でんちゅうを たたきました。

20: 2015/04/25(土) 21:49:24.71 ID:K8kDIg7W.net
―― おとうさまにおしえてもらいました。

ふかいやまにわけいるときは めじるしをつけておくものだと

みちすがらひろったいしで しるしをつけていたわたしは きっとかえれるでしょう。

でもほのかたちは―


「…?」

おそるおそるほのかたちがちかよってくるけはいをかんじながら つぎのかどまではしります。


カンカン


「…っ!」


またつぎのまがりかど 

またつぎ 

そして またつぎ―


おおどおりにでたとき ほのかたちはかくれているわたしにはきづかずに はしっていきました。



よかった…

22: 2015/04/25(土) 21:54:08.60 ID:K8kDIg7W.net
――きょうも ほのかたちが こうえんをかけまわっています。

「ふふ、あんなめにあったのに。」

きのかげからこっそりとのぞきこみます。


「あはは!またことりちゃんがおにだー!」

「あ~!もうくやしい~!」


おはなしのなかでは こんなんをともにのりこえたなかまは ゆうじょうでむすばれ、ともとなります。


――ですが これは。


わたしとほのかたちは とも といえるのでしょうか?

わたしだっていっしょに―



「―あれ?」

「っ!」

23: 2015/04/25(土) 21:57:59.70 ID:K8kDIg7W.net
どうしよう どうしよう どうしよう みつかった―

「…っ」


――

――――

――――――

「つぎ、あなたがおにだよ!」

「え?」

「いっしょにあそぼ!」

24: 2015/04/25(土) 22:02:06.55 ID:K8kDIg7W.net
「―うわあ!あしはやいねえ!」

「そ、そんな…」

「かみのけきれ~!」

「え、えっと…」

「ねえねえ、あしたもあそぼうよ!ほのかたちここでまってるから!」

「あ、ほのかっていうのはこのこのことで、わたしは」

「ことり。」

「え?」

「あ、いえ!そうよんでいるのをきいたから―」

「そうなんだ!じゃあ、またあした!えっと…」

「ごめん。おなまえ、まだきいてなかったね?」

「…うみ」

「うみちゃん?」




「はい! わたしはそのだうみです!」



~ おしまい ~

25: 2015/04/25(土) 22:02:48.54 ID:K8kDIg7W.net
スーパー幼なじみ設定も好きだけどアニメも好きです。

26: 2015/04/25(土) 22:03:51.34 ID:/RgiejLr.net
イイハナシダナー

27: 2015/04/25(土) 22:19:41.00 ID:DYpv3ROI.net
乙泣いた
うまくアニメの話につなげてきたな

引用元: うみ「…くせもの?」