1: 2009/06/01(月) 21:34:24.49 ID:Zl9D3tUd0
『It's better to burn out than to fade away』

己の心情を長々と書き綴ったノートブックの最後の文章をこんな言葉で締めて、澪は、大きく一つ溜息を吐いた。

澪「やっぱり日本語で書いた方がいいな……。ムギはともかく、律や唯は英語じゃ理解出来ないかもしれない……」

思い浮かぶのは、人生で最も楽しかった時期を一緒に過ごした親友達の顔だった。

澪「もうあの頃には戻れないんだな……」
 
そう呟いて、淹れたばかりの紅茶に口をつける。
あまり美味しいとはいえない味だ。
これはムギから貰った高級なお茶っ葉のはずなのに、やはり入れる人間が違うと味も違うということなのか。

もはや人生の何もかもがどうでもよくなってきてしまった。

澪「……さよなら」

そして澪は床に無造作に転がっていた、どす黒い無骨な光沢を放つショットガンを手に取った。
けいおん!Shuffle 2巻 (まんがタイムKRコミックス)
2: 2009/06/01(月) 21:35:42.22 ID:Zl9D3tUd0
ライヴ前の楽屋。
バンドの登場を今か今かと待ちわびるオーディエンスの熱狂とは裏腹に、シンと静まり返ったこの場所に、秋山澪はいた。

澪「あっ……。んっ……」

目一杯に締め付けたチューブのおかげで、透き通るようなまっさらな腕に浮き出た血管。
そこに鋭く尖った注射針を挿入し、一気に注入する。

澪「んっ……これっ……凄い上物だ」

やがて表現の仕様のない多幸感が、澪の五体を駆け抜ける。
足の先から頭の天辺まで、全身これ全てが性感帯になったかのような、世界最高峰のオーガズムだ。

澪「――――――ッ!!」

そして声にならない声を上げ、澪はそのままバタリと後方に倒れこんだ。
もしそこにソファーがなかったならば、頭を打っていてもおかしくない危険な倒れ方だった。

3: 2009/06/01(月) 21:37:18.00 ID:Zl9D3tUd0
(数十分後)

律「おい! 澪!! 起きろってば!」
澪「んんん……律か……。どうしたんだ?」
律「どうしたもこうしたもあるか。あと少しで私達の出番なのにさ。楽屋に戻ってきたらお前が寝てるから……」
紬「澪ちゃん……いくら揺すっても目が覚めなかったんですよ」
唯「そうそう。心配したよ~」

ああ、そうか。自分は眠ってしまっていたのか――澪はやっとのことで自分が置かれた状況に気付いた。
いや、正確には眠っていたのではなくトンでいたのだが。
そして、ソファーの下に転がるそれに最初に気付いたのは――

4: 2009/06/01(月) 21:39:42.17 ID:Zl9D3tUd0
澪「…………」
律「おい! これはどういうことなんだって聞いてるんだ! 
 これからライヴ本番だって言うのに、そのラリったオメデタイ頭のままステージにあがるつもりか!?」
激高した律が、思わず澪の肩に掴みかかる。
唯「り、律ちゃん、だ、ダメだよ……!」
紬「けんかはいけません!」
律「唯とムギは黙ってろ! こいつには一回ガツンと言ってやらなきゃダメなんだ!」
 二人に制されてもなお、飛び掛らんとする律に、

澪「うるさいなぁ……」

5: 2009/06/01(月) 21:43:49.92 ID:Zl9D3tUd0
澪「うるさいなぁ……。私の勝手だろ」

澪は信じられない言葉を返した。

紬「え……?」
唯「澪ちゃん……」
律「お、お前ッ……!」
澪「クスリの一発や二発ぐらい、何が悪いの? それにこれくらいやらなきゃ……」
律「ふざけるな!」
唯&紬「ダメーッ!」
 二人の制止を振り切り、律は澪の整った顔に拳を飛ばそうと――

「皆さーん、出番ですよ~」

すると、コンサートスタッフと思しき若い男が楽屋のドアから半分身を乗り出して四人に声をかけた。

律「チッ……。とにかく澪、ステージだけはちゃんとこなせよ」
澪「………」
唯&紬「(オロオロ)」

6: 2009/06/01(月) 21:49:03.86 ID:Zl9D3tUd0
澪にとって血管中をモルヒネに支配された状態の身体で立つステージは、
なぜかいつもより遥かに高く感じ、照明も目障りなくらいにいつもより眩かった。
心なしか愛機のフェンダー・ジャズベースがやけに重く感じる。

唯「皆さんこんばんは~。放課後ティータイムです」

ステージのMC役である唯がいつものほんわかした調子でマイクに向かうと、オーディエンス達は一気に沸き上がった。


客1「ウオーーーッ!! 唯ちゃーん!!」
客2「むぎゅううううううううううううっっっっ!!」
客3「律ちゃぁーーーん!! デコ舐めさせてえぇぇぇぇぇ!!」

8: 2009/06/01(月) 21:52:21.24 ID:Zl9D3tUd0
あちらこちらから沸き上がるメンバーへの熱の籠った歓声。
しかし、その熱気が最も向けられていたのは、

客4「澪タソ、ハァハァ……!」
客5「澪タソの縞パン縞パン縞パン縞パン縞パ(ry」
客6「澪タソーーッ! 俺の股間のベースギターもスラップしてくれーー!!」
客7「澪タソーーッ! 俺だぁーー!! 結婚してくれーー!」

誰あろう澪であった。

澪「(こんなバカな客相手に……やってられない)」

唯がハードに刻むギターリフを虚ろな頭で捉えながら、気だるげに澪は歌い出した。

『キミを見てると いつもハードDOKI DOKI~♪』

しかし薬物で靄ががった今の澪に、正確な音程の歌唱とベースプレイを求めるのは無理があった。

紬「(澪ちゃん……ベース音が外れてます……)」
律「(歌も……最悪だ……)」
唯「(表情も……全然ノッてない……)」
澪「揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわ~♪(やっていられない……)」

10: 2009/06/01(月) 21:54:06.70 ID:Zl9D3tUd0
目の前には自分の「女」である部分にしか興味を示さず、音楽など二の次のバカなオーディエンス達。
こいつらは自分の歌や演奏など、ちっとも聴いちゃいない。

澪「いつも頑張る~♪ キミの横顔~♪(早くライヴ終わらないかな……。そうすれば家に帰ってまたキメられる……)」

と、その時――澪の視界に飛び込んできた一人の少女の姿。

澪「(あれは……ッ、あ、梓!!)」

関係者が陣取るVIP席の片隅で、ちょこんと飛び出るツインテール。
それはまさしく澪の軽音部の後輩で、「以前まで」のバンドメイトであった中野梓その人に違いなかった。

梓「(……ふいっ)」

梓はしばらくの間、ステージ上のバンドの姿を眺めていたが、すぐに踵を返すと席を立って行ってしまった。
そして後輩のそんな行為に、

澪「(そうか……私達のこんな酷い演奏なんて見る価値もない。そう言うのか……梓!!)」

澪のイライラは頂点に達した。

11: 2009/06/01(月) 21:55:31.05 ID:Zl9D3tUd0
澪「Ah~神様お願い 二人だけの~♪ ドリームタ………」

律「(澪!?)」
紬「(歌うのを……止めた?)」
唯「(もしかして……歌詞が飛んだ?)」

気付けばいつのまにか、澪のフェンダー・ジャズベースから繰り出されていた重低音も鳴りやんでしまっている。
オーディエンスは何が起こったのか、すぐには把握できずに一様にキョトンとした表情を浮かべている。
他の三人は戸惑いながらもなんとか曲を成立させようと演奏は止めない。だが、

澪「……やってらんない」


澪はマイクに向かって小さくそう呟くと、
澪「もう……やってらんない!!」

愛器のフェンダー・ジャズベースのストラップを外すと、
あろうことかステージの床に、そしてアンプに、思いっきりそれを叩きつけたのだ。
そしてアンプをなぎ倒し、ベースのネックに大きなヒビが入り、ステージ上に断末魔の叫びのようなフィードバック音が響くと、
澪はそのままステージ袖へと逃げるように消えてしまった。

13: 2009/06/01(月) 21:56:39.93 ID:Zl9D3tUd0
律「澪ッッ!! なんだ今日のザマは!!」
唯「律ちゃん、落ちついて……っ!」
律「これが落ち着いていられるかよっ!! だって唯もムギも見ただろ!?
  今日のコイツは最悪だ!! 『ふわふわ時間』のキーもわかっちゃいなかったし、歌詞も飛びまくり。
  しまいにはに曲の途中にベースを破壊して途中退場だなんてお前はどこのシド・ヴィシャスだ!?」
紬「律ちゃん、落ち着きましょう? ね? 澪ちゃんにもきっと何か理由があったんだわ。そうでしょう?」
律「理由もなんもあるか!? コイツがライヴ前にキメるようなバカだから……それに尽きるだろう?
  澪、なんとか言ってみろよ!」
澪「……が来てた」
律「えっ?」
澪「梓が……来てたんだ。関係者席に……。
  で、私達の演奏聴いて……私の歌を聴いて……つまらなさそうに鼻で笑って……途中で帰った」
紬「そ、そんな……」
唯「あ、あずにゃんが……? うそ……。だってあずにゃんは……」
澪「とりあえず今日はそういうことにしておいて。私は……帰る」

14: 2009/06/01(月) 21:58:06.12 ID:Zl9D3tUd0
律「っ! そう言うことってお前なぁ! それに帰ってまたキメるつもりなんだろう!?」
澪「……律には関係ないだろう?」
律「関係なくない!! 今日だって、お前……おかしいぞ!!
  『ふわふわ時間』は私達が初めて演奏したオリジナルの曲で……お前が歌詞を書いたんだろう?
  それなのにどうしてその歌詞を忘れちゃうんだ?」
澪「…………」
律「それにあのフェンダーベースは……私とお前でバンドやろうって言って……お互いにお小遣いを溜めて買った初めての楽器じゃないか……。
 どうしてそんな思い入れのあるベースをあんな風に扱えるんだ? やっぱりお前はおかしいよ……ううう……」
唯「り、律ちゃん……(泣いてる……)」
澪「ごめん。とにかく今日は帰る。お客さんには『秋山澪の体調不良によりライヴは中止しました』とでも何とも言って」
紬「そんな……澪ちゃん」
律「うううっ……お前いったいどうしちゃったんだよ……?」

 楽屋に残された三人の間には、重苦しい空気が漂う。

律「どうしてこんなことになっちゃんだろうな……」
紬「澪ちゃん……昔はあんな状態じゃなかったのに……」
唯「いつから変わっちゃったんだろう……」

15: 2009/06/01(月) 22:01:10.42 ID:Zl9D3tUd0
ここで話は数年前にさかのぼる。
秋山澪、田井中律、琴吹紬、平沢唯の4人――所謂『放課後ティータイム』――がまだ桜が丘女子高校の軽音部で活動をしていた時のことだ。
もっとも当時は、メンバーは4人ではなかったのではあるが。

ある日いつものように、お茶とお菓子を囲んで雑談に耽っていたメンバーの前に、軽音部の顧問である山中さわ子がこんな話を持ちかけた。

さわ子「きゃにゅうふぃー♪ きゃにゅうふぃー ざっ はいぶれっ レイインボウ♪っと。さてと、今日は実はちょっとみんなに聞いてほしい話があるの」

律「なんだよー。新しいコスプレ衣装なら澪で試してくれよなー」
澪「ちょ、ちょっと……律! へんなこと言わないで!」
唯「澪ちゃんのメイド服姿、また見たいなー♪」
紬「見たいなー♪」
梓「いや……そろそろバンドの練習しましょうよ……」

さわ子「ときにあなた達……CDデビューしてみない?」

律澪唯紬梓「えっ?」


17: 2009/06/01(月) 22:03:56.98 ID:Zl9D3tUd0
話を聞くと、さわ子の高校時代の軽音部仲間で、今は音楽業界に身を置く人間が、
この度新しくインディーズレーベルを立ち上げたらしい。

さわ子「それでね、どこかにいいバンドはいないかってその子に聞かれてて。で、思いついたのがあなた達っていうわけ」
澪「ちょっと待ってください……。私達、ライヴの経験だって学園祭でくらいしかないし……。CDデビューなんてそんな……」
さわ子「大丈夫よ。所詮インディーズだし。今は立ち上げたばかりでとにかく所属してくれるバンドがのどから手が出るほど欲しいっていう状況らしいし」
澪「でもお金が……」
さわ子「CDの製作費は殆どレーベルで持ってくれるらしいわ」
澪「いやでも……」
律「いや、それはおいしい話なんじゃないか? タダ同然で私達のCDが作れるんだぞ?」
唯「そうだね~。せっかくみんなで楽しく部活やってるんだから、記念として残るようなCD欲しいな~」
紬「来年の新人勧誘の時に配布して宣伝するのもいいかもしれませんね」
梓「わ、私もっ!! CD作ってみたいです!!」

18: 2009/06/01(月) 22:05:31.46 ID:Zl9D3tUd0
さわ子「アウイエッ! きまりね! それじゃその子には私から連絡しておくから」
澪「そ、そうか……私達がCDデビュー……」
梓「これは……いっぱい練習しなくちゃいけませんね」
紬「音源として残るとなると、中途半端な演奏はできませんからね」
唯「練習の前にお菓子全部食べちゃおうよ~」
律「唯はもう少し緊張感を持て! って、さわちゃん、一応聞いとくけどそのレーベルなんてところなの?」
さわ子「確かボブ・サップ(BOB SUP)っていう名前よ。
    言っておくけど、過度な期待はしないでね? 本当に立ち上げたばかりの弱小レーベルらしいから」

その後、5人はさわ子の紹介でボブ・サップ・レーベル所属バンドのコンピレーションアルバムに提供するための楽曲『ふわふわ時間』のレコーディングにこぎつけた。
さわ子の言うとおり、弱小レーベルだけあって借りられるスタジオも小さく、機材も紬の別荘に備え付けられていたそれより貧相とも思えるようなものだったが、
5人が5人とも初めてのレコーディングを緊張しながらも楽しみ、楽しみながらも真剣にやり遂げたのであった。
そして数ヶ月後、無事発売されたそのCDの参加アーティストには、『放課後ティータイム』の名が確かに記されていた。

20: 2009/06/01(月) 22:07:43.05 ID:Zl9D3tUd0
唯「いやぁ……しかし私達の曲がこうしてCDになるなんて……感慨深いね」
澪「でも地元の高校生バンドばかりが参加したコンピレーションアルバムだろう?
  はたしてどれだけの人が買ってくれるのかな……」
律「贅沢は言うなって。CD出せただけでも凄いことだろう?」
紬「そうですよ♪ 私なんて嬉しくて毎日124回、リピート再生して聴いてます♪」
梓「クラスの子たちも『凄い凄い』って、とても評判ですよ!」

さわ子「アウイエッ! そんなあなた達に朗報よ!」
唯「? さわちゃん?」
律「いつの間に入ってきたんだ……」
梓「朗報って……なんですか?」
さわ子「実はね、あのアルバムの評判、凄くいいらしいの! この辺のレコード店でもどこも完売だって」
律澪唯紬梓「!」



21: 2009/06/01(月) 22:11:38.63 ID:Zl9D3tUd0
さわ子「それでね、アルバムの中でも最も反響の大きかったバンドの名前が……なんと『放課後ティータイム』」
律澪唯紬梓「!!」

さわ子「で、ここからが本題よ。私の同級生のそのレーベルの社長がね、放課後ティータイムの単独音源をぜひリリースしたいって!」
律澪唯紬梓「!!!」

さわ子「と、いうわけであなた達、お菓子食ってダベってるのもいいけど、しっかりバンドの練習もしてね!
     ミニアルバムにしても5曲はオリジナルが必要よ! ちなみにレコーディングは一か月後!」

澪「う、嘘だろ……」
律「私達が……インディーズとはいえ……単独デビュー……?」
紬「夢みたいです……」
梓「私……軽音部入ってよかったです……!」
唯「どうしよう……私、この前追試があったからその勉強したせいでまたCのコードから忘れちゃってるよ……」

22: 2009/06/01(月) 22:23:49.61 ID:Zl9D3tUd0
突然のグッドニュースに、5人は戸惑いつつも大いに喜んだ。
そこから一ヶ月間、5人は普段の「ふわふわ」な部活動風景とは打って変わって、バンドの練習に明け暮れた。
それはまさにストイックと言っても差支えがないほどの、普段の彼女達からは想像できない姿だったが、
5人が5人ともレコーディングという大きな目標があることで、練習の苦痛など微塵にも感じていなかった。
とにかく、軽音部の仲間で音を出すことが楽しい――。
そして、そんな仲間達と一緒に出した音をもう一度CDに出来る――。
そんな純粋な思いで、5人の頭の中は一杯だった。

そしてやって来たレコーディング。
澪と紬がこの日のために作ったオリジナル数曲と『ふわふわ時間』『私の恋はホッチキス』といった既存の曲を、
5人は2日間という短い期間でレコーディングしてみせた。
決して良いとはいえない音質、アレンジの甘さも窺える楽曲、技術的に未熟な演奏……それでもなお、それらの未完成な部分を補って余りある、
キラキラとしたエネルギーと輝く希望が詰まったアルバム『放課後ティータイム』が完成したのだ。

律「あの頃は楽しかったよな……」
唯「うん……。CDも最初はあまり売れなかったけど……少しずつ学校以外のライヴハウスとかでも演奏できるようになって」
紬「澪ちゃんも楽しそうでしたし……」
律「それに梓も……」
唯「いつからこんな風になっちゃったんだろう……」
紬「それはやはり――」

23: 2009/06/01(月) 22:29:10.66 ID:Zl9D3tUd0
アルバムの売り上げは必ずしも思わしいものではなかった。
それでも、少しずつではあるが放課後ティータイムには地元のライヴハウスで演奏をする機会が増えてきた。
律が言うところの「目指せ! 武道館!」の目標はまだまだ遠かったものの、
ライヴハウスで自分達の学校の人間以外のオーディエンスに向けて曲を演奏することは、5人にとって新鮮であり、そして何よりも成長の糧となった。

律「だけど……本当に楽しかったのはそこまでだったんだ」


 いつの頃からか、放課後ティータイムのライヴにはライヴハウスが満員になるほどの客が入るようになっていたのだ。

紬「たしか……私達がインディーズ専門の音楽雑誌に紹介されたのがきっかけでしたね」

 『とびきりの美少女バンドあらわる!』――そう題された雑誌の記事にはバンドの説明やリリースされて程ないアルバムの紹介もそこそこに、
ベースを構えて凛々しくマイクに向かう澪の写真が大きく掲載されていた。

唯「女の子だけのバンドなんて……珍しかったからね」

要するに放課後ティータイムの曲や演奏でなく『彼女達自身』に何らかの偶像的なモノを見出したファン達が集まり始めたのだ。

24: 2009/06/01(月) 22:35:05.23 ID:Zl9D3tUd0
律「あん時の澪の人気は凄かったなぁ……」

もともと整った顔立ちにモデルのような身体つき、そしてバンドではボーカルもこなし、反面、歌詞ではちょっと可愛らしい面も覗かせる
――そんな意外性を持つヒロイン、澪の人気はうなぎ登りであった。
そしてライヴへの集客と比例するかのように、当初は伸び悩んでいたアルバムの売り上げが爆発的に伸びたのだ。

さわ子「アウイエッ! ちょっとちょっと! すごいじゃないあなた達!
    『放課後ティータイム』、ついにオリコンのインディーズアルバムランキング1位よ!?」

律「これは……マジで夢じゃないかもな武道館……」
唯「わわ~、頬をつねってみてもちゃんと痛いし。律ちゃん! これは夢じゃないんだよ!」
紬「今年のフジロックにも出演依頼が来ましたしね。ちょうど夏休みですし良かったです♪」
梓「フジロック……私、憧れたんです……」

律「それもこれも全部澪のおかげだな!! お前のおかげで私達も一躍ロックスター候補だ!!」
唯「またインディーズ雑誌の表紙飾ったしね! すごいよ、澪ちゃん」
紬「新曲の歌詞も評判ですしね」
梓「澪先輩……尊敬します……」

澪「……あ、ああ。そうだな……」

 思えばこの時から既に澪の様子は、おかしくなる兆しを見せていたのだ。

26: 2009/06/01(月) 22:46:07.37 ID:Zl9D3tUd0
そしてついに来るべき時がやって来た。
とある日のライヴ後、楽屋で談笑しながら紬の用意したお茶とお菓子でしばしの休息を楽しんでいた5人の前に、
とあるメジャーレコード会社の担当者を名乗る人間が現れた。
そこで語られたのは他でもない、メジャーレーベルへの移籍話であった。 
勿論、5人は自分達に成功のキッカケを与えてくれたさわ子やバンドを見出してくれたボブ・サップ・レーベルを裏切る形になることは認識しており、
メジャー進出の話に即座に首を縦に振る気にはなれなかった。だが――

さわ子「アウイエッ! そんなの気にする必要はないわ。
    みんながメジャーデビューして……学生時代の私がかなえなれなかった夢をかなえようとしているなんて、
    これほど嬉しいことはないもの」

と、いうさわ子の言葉に後押しされた。
そして、ボブ・サップ・レーベルにも、所属バンドの出世を素直に喜ぶだけの器量が備わっていた。
『放課後ティータイム、満を持してのメジャー進出!!』――このニュースが世の音楽雑誌やインターネットにて一斉に報道されたのは、そのすぐ後のことだった。

27: 2009/06/01(月) 22:48:25.25 ID:Zl9D3tUd0
澪「ただいま……」

 返事など返ってくることのない、薄暗い高級マンションの部屋。
まだうら若き乙女である澪にとって、親元を離れての一人暮らしは当初様々な不安を伴ったものだったが、今となっては慣れ切ってしまっていた。
それに、このマンションは高級なだけあって、セキュリティは無駄なくらいに厳重だ。

澪「それに……今は一人暮らしの方が色々と都合がいいしね……」

そんな独り言をつぶやきながら、澪は懐から煙草を一本取り出すと慣れた手つきで火を点けた。
確かに、親元でこんなに堂々と酩酊に逃避することなんてできない。

澪「……今日ので最後だったんだっけ……。また、アイツに連絡しなきゃな」

この程度の軽いトリップでは、この憂鬱は紛らわせそうになかった。
眠る気にもなれず、手持無沙汰な澪はテレビのリモコンを手に取った。

29: 2009/06/01(月) 22:52:36.34 ID:Zl9D3tUd0
目の前に映し出されたのは、流行りの音楽のミュージッククリップを垂れ流すMTVの番組だった。
猿回しのようなつまらないポップバンドのナヨナヨとしたサウンドや、
盛りのついた雌犬のように腰をふる自称セクシー系女性シンガーの耳障りな歌唱が、澪の気分をさらに憂鬱にさせる。
そして、次に流されたのは……
『放課後ティータイム』のメジャーデビューシングル『ふわふわ時間』――シングルカットするために改めて録音しなおしたもの――であった。

澪「何度見ても……酷い演奏だな」

テレビの中のそのバンドには、かつてあったはずの輝くようなエネルギーは全くなかった。
特に酷いのは……生気のない表情でリードボーカルを取る、バンド内で最も高い人気を誇る“秋山澪”という名のベーシスト――。

澪「――――ッ!」
思わず澪は画面から顔を背けていた。
――すると、視覚に頼らず、耳でのみその酷い演奏をよく聴くと……
今の放課後ティータイムが失ったもう一つのパズルのピース――歌うようにメロディアスなリードギターのサウンドがそこにはあった。

澪「そうか……この頃はまだ梓がいたんだっけ……」

改めて画面を見れば、生気のない自分とはまるで対照的に、
にこやかな表情でご自慢のツインテールを振り乱しながら、小さな身体にみなぎる躍動感をもって、
フェンダー・ムスタングを掻き毟る梓の姿があった。
そこで澪の憂鬱は限界を突破した。たまらず携帯電話を手に取る。

澪「ああ……もしもし、私。久しぶりね……。用件は……わかってるでしょう?
  切れちゃったのよ、アレが……。うん……お金は大丈夫だから、なるべく早く……お願い」

澪が足を踏み入れてしまったトンネルは、まだまだ長く険しい道のりだった。


31: 2009/06/01(月) 22:54:05.33 ID:Zl9D3tUd0
放課後ティータイムのメジャーデビューは、世間にこれ以上ないくらいの好リアクションで迎えられた。
1stシングルとしてリリースした再録バージョンの『ふわふわ時間』はオリコン初登場4位を記録。
その勢いのまま出演した初めてのテレビ番組――金曜8時のあの生放送音楽番組である――においては、
全国の思春期の少年たちや大きなお兄さんたちがテレビに全裸で正座をして待機し、彼女達の演奏を食い入るように見つめた。

律「あの頃からだよな……。澪の様子がマジでおかしくなってきたのは」
唯「澪ちゃんの人気……ちょっと異常なくらいだったもんね……」
紬「傍目から見ても戸惑っているって感じでしたよね……」



32: 2009/06/01(月) 22:55:08.87 ID:Zl9D3tUd0
この頃から、放課後ティータイム全体の人気から、澪の人気が独り歩きし始めるようになった。
彼女が使用していたフェンダー・ジャズベースはあっという間に市場から消え、
PVで使用していたという理由だけでヘッドフォンや携帯電話まで飛ぶように売れた。
それだけではない。音楽雑誌では澪の人気を当て込み、他の4人を差し置いて彼女に単独インタビューを申し込むこともあった。
酷いところでは、「水着グラビアを撮らせてほしい」という雑誌すらあった
。最初こそ、バンドの宣伝になればと思い、律儀に対応していた澪だったが……。

律「きっと私達のことを気にしたのかもしれないな……」
紬「それでなくても澪ちゃん……繊細な子ですからね」
唯「いつからか……取材を嫌がるようになっていったよね」


 そして満を持してのメジャー1stアルバムのレコーディング。
この頃澪は既に自分達の手を離れて暴走し始めるバンドのパブリックイメージに戸惑いを感じ始めていた。

ただ楽しく好きなバンドをやりたかっただけなのにどうしてこんなアイドルみたいな扱いを受けるのか。
ただ信頼できる仲間と一緒にバンドをやりたかっただけなのにどうして自分だけがこんな扱いを受けるのか。
どうして水着になどならければいけないのか。
どうしてPVでヒラヒラの衣装を纏わねばならないのか。
どうしてステージでは演奏よりパンモロを期待されるのか。

 澪の中に大きな葛藤が渦巻いていた。

33: 2009/06/01(月) 22:57:24.83 ID:Zl9D3tUd0
律「それで澪の奴……そんな状況をなんとか打破しようとしたんだろうな」
紬「そうですね……アルバムのセッションの時には、山のように自作曲を書いて持ってきてくれましたしね」
唯「きっと自分はアイドルなんかじゃなくてロックミュージシャンなんだって証明したかったんだよ」

 事実、アルバムのセッションに対する澪の入れ込みようには凄まじいものがあった。
20以上の自作曲をスタジオに持ち込み、歌詞は勿論のこと、演奏のアレンジにまで積極的に意見を出した。が、しかし、

律「結局澪の曲はプロデューサーの判断で数曲しかアルバムには入らなかったんだよな」
紬「その入った数曲も……澪ちゃんではなくプロデューサー主導のアレンジになっていましたし」
唯「それ以外の残りの曲は全部、外の作曲家が作った曲を演奏することになったしね……」

34: 2009/06/01(月) 23:03:13.01 ID:Zl9D3tUd0
結局、澪の「ロックミュージシャン」としての自立心は顧みられることがなかったのだ。
多くの敏腕サウンドスタッフや敏腕プロデューサーによって「作られた」1stアルバム。
そのサンプル音源を5人で始めて聴いた時の澪の複雑な表情は、三人の脳裏を今も離れることがない。
そしてそうやって製作され、リリースされた放課後ティータイムのメジャー1stアルバム『うんたん♪マインド』は皮肉にも売れに売れた。

律「あの時はオリコンチャート1位を取ったけど……」
紬「素直に喜べなかったですよね」
唯「あんな悲しそうな澪ちゃんの様子を見せられちゃ……ね」

そして、決定的な出来事が起こったのはアルバムがオリコンチャートで1位を獲得して程ない頃。
放課後ティータイムが遂に夢にまで見た武道館のステージに初めて立とうとしていた時であった。

36: 2009/06/01(月) 23:11:29.50 ID:Zl9D3tUd0
 テレビに映るミュージッククリップ垂れ流しの番組は、相変わらずくだらなくて辟易することこの上ない。
それでもなぜか消さないでいるのは、消したら最後、何の音も光も温もりも、
自分が逃避することのできる何かがなくなってしまうことがどうしようもなく怖いから――。

澪「寂しい……」

そう呟いた時、部屋のインターホンがけたたましく鳴らされた。それも無遠慮に、何回も連続で。
こんな子供じみた真似をする人間は、少なくとも澪の知る限り律と、あともう一人しか居ない。

男「やぁ、プリンセス。ご機嫌はいかがかな?」

ズカズカと部屋に上がりこんできたその男は、澪が懇意にしていた薬物の売人だった。
もっとも、世間的には、その不良じみたアティチュードで人気を博すとあるロックバンドのメンバーといった方が、通りがよかったが。

澪「さっき電話したばかりなのに、ずいぶんと早いのね……」
男「そりゃあね。何たってあの天下の秋山澪に物寂しげな声色で『早く来て……』なんて囁かれて、のんびりしてられる男なんて世界中捜したってそうはいない」
澪「そ、そういう意味で呼んだんじゃ……!」
男「わかってるよ。ほら約束のブツ、このアタッシュケースの中だ」

37: 2009/06/01(月) 23:13:15.62 ID:Zl9D3tUd0
アタッシュケースと束ねられた札束の交換を終えると、男は部屋のソファーに腰を下ろした。

澪「ちょ、ちょっと……。用件は終わったんだから早く帰ってよ……」
男「別にいいじゃねえか。早速一緒にキメて、ゆっくりしていこうぜ」
澪「そういうわけにはいかないjんだ。それでなくても最近、このマンションの周りを写真週刊誌の連中がうろうろしてるのに……」
男「成る程な。あの秋山澪が、人気バンドのメンバーと夜の密会なんて洒落にならないもんな。しかもその男がヤクの売人だっていうんだから尚更だ」
澪「わかったのならさっさと……」
男「大丈夫だって。俺だってこの道のプロだ。下手はこいたりしない」

 ――と、テレビの中から突如響き渡る雷鳴のような激しいギターリフ。
簡単なコードの組み合わせではあるが、逆にキャッチーで効果的なそのリフに思わず澪は耳を奪われた。
そして画面に映しだされたとあるバンドのPVに、思わず目を見開いた。

澪「梓……」

男「ん? ああ、このバンド、『ギャルズ・アンド・ローゼズ』だっけ。
 最近MTVでも良く流れるよな……って、そういえばこのバンドのギタリスト、一時期『放課後ティータイム』にいたんだよな』

画面の中で最高の笑顔でギターを弾く少女、中野梓。彼女が在籍していたのは一時期どころの話ではない。
放課後ティータイムがまだ高校の軽音部で活動していた頃からのメンバーで、澪にとっては可愛い後輩だったのだ。

澪「気分がわるい……。テレビ、消して」
男「おいおい、せっかく昔の仲間が頑張ってる姿が流れてるんだから見てやれよ」
澪「いいの。この子はもう……仲間じゃないから」
男「随分薄情な話だなぁ」
澪「それより注射器貸して。早くトビたくて仕方がないの」

39: 2009/06/01(月) 23:15:28.20 ID:Zl9D3tUd0
望む形ではない「作られた」1stアルバムがリリースされ、これまた望む形でない大ヒットを記録していた頃、
放課後ティータイムは念願の武道館での初めてのステージに立った。
だが、この時すでに澪の精神状態は限界に近づいていたのだ。

澪「ライヴ……出たくない……」

出番前の楽屋で、突如そんなことを言い出した澪に、他の四人は目を?いた。

律「な……澪! お前、今日は私達が夢にまで見た武道館ライヴだぞ……!?」
紬「もしかして体調でも悪いの?」
澪「そうじゃないんだ……。でも……」
唯「澪ちゃん……もしかして……」

実は皆、薄々気付いてはいたのだ。今の成功が、自分達が望んだものでないことには。

あんなに楽しかったはずの5人でのバンド練習は、新曲のレコーディングのプレッシャーと常に隣り合わせ。
あんなに達成感に満ち溢れていたはずのステージは、まるでアイドルを見に来たかのような勘違いしたファンに占拠され、作り笑いで喜ばせる。
あんなに頑張った曲作りも、出来あがった曲は全て『敏腕プロデューサー』のおかげで台無しに。

そんな不満と葛藤を抱えていたのは、何も澪だけというわけではなかったのだ。

しかし、ただ一人だけは違っていた。

40: 2009/06/01(月) 23:16:41.59 ID:Zl9D3tUd0
梓「澪先輩、どうしてそんなことを言うんですか!?」

本番前の澪の弱音など、それこそ軽音部時代から日常茶飯事で慣れていたはずの梓が、この日初めて己の不満をぶちまけたのだ。

梓「せっかくメジャーデビューできて……CDも売れて……武道館までたどり着いたのに。
どうしてそんな後ろ向きなことを言うんですか!?」
澪「じゃあ逆に聞くけど、梓はこんな形での成功を望んでいたのか?
  私達はただ5人で楽しく音楽を演りたかっただけなのに……動物園の見せ物みたいな今の状況を望んでいたのか?」
梓「私は……自分達の音楽をより多くの人たちに聴いてもらうためには、そういうことも必要なことだと思ってます」
澪「自分達の音楽だって? 今の放課後ティータイムは大人達の操り人形で、
  打ち込まれたデータを無機質に奏でるだけの機械と変わらないじゃないか。そんな私達に自分達の音楽なんか……」
梓「澪先輩の口からそんな言葉を聞くだなんて……見損ないました」

41: 2009/06/01(月) 23:17:35.34 ID:Zl9D3tUd0
律「梓のやつ、昔から澪のこと、尊敬してたからな……」
紬「あんな澪ちゃんの姿を見て、ショックだったのかもしれませんね」
唯「でも、まさかあんなことになるなんて……」

その日の武道館で演奏は、それは酷いものだった。
澪の歌唱に生気はなく、カラオケのような気の抜けた歌声に観客は戸惑いの表情を見せた。
ベースプレイも明らかに精彩を欠き、それに引きずられるように、律のドラムはテンポを乱し、紬のキーボードは不協和音を奏で、
唯は『ふわふわ時間』のコード進行を丸ごと忘れてしまった。
そしてそれとは対照的に、煮え切らない態度の澪とふがいない先輩達へのフラストレーションをぶつけたような梓の激しいギタープレイだけが、バンド内で浮き立っていた。
ちなみにこの日のライヴはあろうことかDVDとして市場に出回ってしまっている。
放課後ティータイムのキャリアの中での初めての汚点であった。

そして終演後の楽屋で、ついに梓は放課後ティータイムからの脱退を申し出た。

43: 2009/06/01(月) 23:22:45.06 ID:Zl9D3tUd0

唯「そ、そんな~っ! あずにゃん……嘘だよね?」
梓「嘘ではありません」
律「いくらなんでも突然すぎるだろう……」
梓「ここ最近、ずっと考えていたんです」
紬「ここまで長い間一緒にやってきたのに……」
梓「先輩達には感謝しています」
澪「……辞めてどうするつもりなの?」
梓「実はあるバンドに誘われてるんです。澪先輩も知ってるでしょう? 『ギャルズ・アンド・ローゼズ』というバンドです」


 『ギャルズ・アンド・ローゼズ』――人呼んで『ギャンズ』。
放課後ティータイムの一年前にメジャーデビューしたガールズロックバンドだ。
ハードロックを下敷きしたにポップな楽曲で人気を博し、
メジャー1stアルバムの『ツルペタイト・フォー・デストラクション』で放課後ティータイムと同じくオリコン1位を獲得している。
今となってはツアーで確実にアリーナ級の会場を埋めてみせるモンスターギャルバンであった。

唯「律ちゃん、ギャンズって確か……」
律「そうだよ……ギャンズは曲の良さもさることながら、メンバーのアイドル性やファッション性で人気を博してきたようなバンドだぞ?」
紬「確か……メンバーのステージ衣装は常にコスプレ。ナースにスク水に猫耳……なんでもありでしたよね」

 一年生の頃、さわ子が持ってきた猫耳を装着するのをあれほど嫌がっていた梓に、ギャンズのギタリストが務まるとはとても思えなかったのだが――。

46: 2009/06/01(月) 23:24:23.60 ID:Zl9D3tUd0


梓「もう決めたんです。私はギタリストとしてもっと上に行きたいんです」
澪「梓……ギャンズになんか入ったらそれこそ本当にただの金稼ぎマシーンになっちゃうよ?」
梓「私のギターで巨万の富が生み出されるというなら、それもまた一つのギタリストとしての生きがいだと思います」
澪「そうか……」
梓「後悔はしていません。きっとギャンズで世界一のギタリストになってみせます」
唯律紬「…………」

こうして梓は放課後ティータイムを脱退した。
その衝撃のニュースは、ほぼ同時のギャンズ加入というこれまた大衝撃のニュースとともに世間へと知れ渡った。
マスコミはこぞって梓脱退の理由を推測し、書きたてた。曰く「メンバー間のギャラの配分を巡ったトラブル」、「音楽性の違い」、
「律にいじめられていた」、「ムギに喰われかけていた」、「唯の残念な子クオリティにいい加減に嫌気がさしていた」……そして「メンバーの中で一人特別扱いの澪と衝突していた」――。


律「澪がマスコミ嫌いになったのはあの時がきっかけだよな……」
紬「雑誌のインタビューにもめったに応えなくなりましたしね……」
唯「あずにゃんが辞めちゃったの……だいぶツラかったみたいだからね」

47: 2009/06/01(月) 23:26:42.83 ID:Zl9D3tUd0

澪の言動もこの頃からおかしくなっていく傾向が見られた。
梓脱退後、嫌々ながらも初めて応えた音楽雑誌のインタビューで、澪は梓を痛烈に批判したのだ。

澪「梓はカネに魂を売った。ギャンズにあるのはパッション(情熱)でなくファッションだけ。あんなバンドに入るなんて、アタマがどうかしているとしか思えない」
澪「梓は札束に股を開くビXチ」
澪「ギャンズに入ってからの梓のギターには輝きが感じられない。氏亡5秒前の蚊の鳴き声みたいに聴こえる」

これには梓も黙っていなかった。同じくインタビューで反論する。

梓「私が放課後ティータイムを抜けたのは、セルアウトすることを執拗に拒もうとする澪先輩の態度に耐えかねたから。
  売れることは悪いことじゃないし、ヒラヒラの衣装を着てギターを弾くことも悪いとは思わない」
梓「澪先輩の言ってることは駄々をこねる子供と同じ。売れることを潔癖なまでに拒もうとするあの態度はガキ臭いだけ」
梓「所詮、放課後ティータイムだって、そういうアイドル性で売れた『商品』バンドだった。
  澪先輩だって高校の頃はヒラヒラの衣装を着て、パンツを丸出しにしてオーディエンスに媚びてた」

この舌戦はしばらくの間、音楽雑誌のゴシップ記事にネタを提供し続けた。

49: 2009/06/01(月) 23:28:28.37 ID:Zl9D3tUd0
澪「んっ……あっ……これ……凄い……」

 澪は男から買ったを早速静脈に注ぎ込んでいた。

男「上物だって言ったろ?」
澪「うん、凄い……。どこかに飛んでいっちゃいそう……」

すると、とろんと蕩けた澪の光悦とした表情を見た男が突如目の色を変えた。
男「そうかい。じゃあもっと遠くまで飛んでってみるか」
澪「えっ……」

 抵抗する暇もなく、澪の身体はソファーに押し倒されていた・

男「知ってるか? キメながらすると、その快感はシラフの時の何十倍にもなるんだぜ?」
澪「や、やめて! 私はそんなつもりであなたを呼んだんじゃ……!」
男「別にいいじゃねえか。お互いヤク中のミュージシャン同士――いや、音楽かじってるヤク中っていうのが正解か。とにかく似た者同士、仲良くやろうぜ?」
澪「イヤーーーーッ!」

50: 2009/06/01(月) 23:29:56.94 ID:Zl9D3tUd0
律「そのすぐ後のことだよ……。澪が薬に手を染め始めたのは」
唯「確か……あの夏、2回目のフジロックに出演した時だよね」
紬「一緒に出演したとあるバンドのメンバーに……ジョーカーがいたんですよね」

男「おっ、君は確か放課後ティータイムの秋山澪じゃないか。テレビで見るより可愛いなあ」

自分達の出番前、相変わらずの憂鬱な気分と気だるさを持て余してステージ裏を一人でぶらついてた澪に声をかけたのは、
同じくフジロックに出演していた『エビル・ホット・チリ・ペッパーズ』――通称『エビチリ』というロックバンドのボーカルを務めていた男だった。

澪「あなたは……?」
男「おおっと。俺のことを知らないっていうのかい? ちょっとはこの業界でも有名になったと思ってたんだけどなあ」
澪「用がないなら話しかけないでください。一人でいたいんです」
男「そう言いなさんなって。別にとって食いやしないから。それより、随分と浮ない顔してるみたいだけど、何かあった?」
澪「別に……」
男「『音楽』をやりたいだけなのに、『アイドル』やらされてるのはそんなに憂鬱かい?」
澪「ッ!!」
男「ハハハ。どうやら図星かな? ところでさ、そんな腐った音楽業界とそれをどうにもできない自分にイラついてるプリンセスに朗報だ。憂鬱な気分吹き飛ばしてみたいと思わない?」

53: 2009/06/01(月) 23:31:17.75 ID:Zl9D3tUd0
こうして澪は男にまんまと騙され、薬物に手を出した。
最初は軽い興奮剤をちょっぴりキメただけだったが、それだけで澪の憂鬱は紛れたのだ。
そこからはもう雪崩のように落ちていくのみ。男経由で手に入る薬物は何でもやった。

律「おい澪、お前最近『エビチリ』のボーカルとつるんでるって聞いたぞ?」
唯「え~、あのよくテレビとかでも見るカッコイイ人? 澪ちゃんまさか……」
紬「男性となんてダメです!」
澪「おいおい……別にそういう関係なわけじゃないよ。ただ作曲とかの相談をよくするだけ」
律「お前は知らないかもしれないがな……あの男、業界内じゃ『コートニー』ってあだ名で通ってるらしい。
 『コートニー』ってのはアメリカのスラングで『最悪のビXチ』って意味なんだぜ?」
唯「ビXチってどういう意味?」
紬「あまり口にだして言いたい言葉じゃないですね……。と、いうことはまさか……」
律「そうだぞ澪、あの男は危険だ。つるむのは止めた方がいい」
澪「別に何もないってば……。もう、皆心配性なんだから」


55: 2009/06/01(月) 23:32:39.33 ID:Zl9D3tUd0
薬物をキメるようになってからの澪は、他の三人から見れば、少しは精神的にはマシになったように思えた。
弱音を吐くことも少なくなったし、インタビューで梓のことをボロクソに言うこともなくなった。
しかし、身体的には別であった。
ステージ上では目の焦点が合わず、虚ろな表情で律のカウントにノリ損ねる。歌詞を飛ばす。
曲のキーを間違える。一人だけ三人とは別の曲を弾いている。
かと思えば興奮して呂律の回らないシャウトを飛ばし、ライヴの終了とともに律のドラムセットに倒れ込む……。

律「なぁ……最近の澪、またおかしくないか?」
紬「そうですね……。精神的にはよくなったのに、なにか挙動が不審というか……調子が悪そうです」
唯「この前なんてトイレですごい吐いてたよ?」

この時、まだ薬物などの音楽業界の闇というものに対して無知だった三人には、
澪が嵌り込んでいる泥沼の深さを測ることができていなかった。

58: 2009/06/01(月) 23:34:45.35 ID:Zl9D3tUd0

それから、売れに売れ続ける1stアルバムのおかげで、
澪達放課後ティータイムのメンバーのレコード会社や所属事務所に対する発言力も多少は増し、
あれだけ嫌だったアイドル的な売り方も、少しずつ改善されてきた。

そしてバンドは満を持してメジャー2ndアルバムのレコーディングに入る。
『もう大人達のいいなりになどならない』――そう決意した四人はプロデューサーを介入させず、全ての楽曲を自分達で作詞作曲し、
アレンジし、主導権を取ってレコーディングセッションを進めた。

「あの放課後ティータイムが次のアルバムではどれだけのものを見せてくれるか!?」――そんな世間の大きな期待を背負って、メジャー2ndアルバム『イン・ユイテロ』は発売された。

律「あのアルバムが……本当の意味でのターニングポイントだったんだ」

結論から言って、『イン・ユイテロ』は失敗作だった。
とは言っても、インディーズ時代の原点に回帰したかのような活気溢れるエネルギッシュなサウンドは、一部の評論家筋では好意的に受け入れられた。

唯「だけど『うんたん♪マインド』に比べたらセールスが悪かったんだよね……」

その通り。『イン・ユイテロ』の売り上げは伸び悩んだ。
1stアルバムのキュートでポップな音づくりや、それまでの澪や他のメンバーのアイドル性に惚れこんで追っかけをしていたようなファンに不評だったのが最大の要因だ。

59: 2009/06/01(月) 23:36:09.18 ID:Zl9D3tUd0
ファン1「なんかあのアルバムの音……激しすぎて受け付けないっていうか……」
ファン2「澪タソの歌声もどこかシリアスすぎる感じだし」
ファン3「やっぱりあずにゃんがいなくなったのはデカイよなあ」
ファン4「やっぱり放課後ティータイムはステージでニコニコ笑顔を振りまくみんなアイドルでいてくれないと」
ファン5「澪タソ……高校時代みたいにパンモロしてくれないかなぁ。俺、あのレアライヴを生で見たんだぜ? すごいだろ?」

紬「せっかく自分達でやりたいようにできて作れたアルバムだったのに……」
唯「ショックだったね……」
律「だけど……誰よりもショックを受けたのは……」

そう。誰よりも『イン・ユイテロ』の不評に心を痛めたのは澪であった。
あんなにセルアウトすることを拒否し、梓の脱退という結果を招いてまで追い求めた自分達の音楽は、世に受け入れられなかったのだ。

澪「私は……間違っていたの?」

ちょうどその頃、新ギタリストとして梓を迎えたギャルズ・アンド・ローゼズが、
同じく発売したばかりのアルバム『あずにゃんず☆でもくらしー』で大ヒットを飛ばしていた。

絶望の淵に突き落とされた澪に残された選択肢は、薬物の霧の中でひたすらに現実逃避をすることだけであった。
そのハマり具合は、ついにクイーン・オブ・薬物こと最悪の薬物であるに手を出すまでに至ってしまった。

60: 2009/06/01(月) 23:37:51.28 ID:Zl9D3tUd0
そして来るべき日がやってくる。

澪「キミを見てると~♪ いつもハートd……」バタッ

唯「……澪ちゃん?」
律「澪ッ!?」
紬「いけません! 早く救急車を……!」

とある日のライヴ。アンコールの『ふわふわ時間』の演奏中に、ついに澪は卒倒した。

楽屋で三人が澪の鞄の中から注射器を発見したのはそのすぐ後のことだった。完全なるオーバードーズ。普通の3倍ものを、その日の澪は接取していたという。

律「あの時は本当に大変だったな……。澪がヤク中なのをバレないように、わざわざムギに病院を手配してもらったりして」
唯「ムギちゃんの家の息のかかった病院なら、マスコミに情報が漏れることがないからね」
紬「マスコミには『秋山澪は高熱で体調不良だった』ということで報道されていましたからね。とにかくあの時は澪ちゃんが無事でよかったです」
唯「何度呼びかけても目を覚まさなかったし……私てっきり……」
律「でも氏んでもおかしくない量のへロインをキメてたのは事実なんだよな……」

61: 2009/06/01(月) 23:39:47.02 ID:Zl9D3tUd0
澪「イヤ、ヤメてッ!」
男「うるせえなぁ。澪だって本当はそう言うつもりで俺を呼んだんだろう?」
澪「違う!!」
男「どうしてそんなに嫌がるかなぁ……って、お前もしかしてまだ……」
澪「……っ!!」
男「図星か? キャハハ!! コイツは傑作だ!! あのロックンロール・プリンセスこと秋山澪がまさかまだ処Oだったとはなぁ!!」
澪「やだよ……やめてよ……こんなこと……」
男「お前のファンのキモオタどもが喜ぶのが目に浮かぶぜ!!
  なにせ奴ら豚みたいに鼻息荒くして『澪タソは処Oだ!!』なんて言って粗末なチンポ握って、マス掻いてるんだろうからな!!』
澪「うう……お願い……やめて……」
男「だけど残念だったなぁ。秋山澪の処O膜を見事ブチ抜くのはどうやらこのおr……」

?「ブチ抜かれるのはオマエのアタマだよッッ!! アホッッ!!」

その瞬間――男の脳天に金色に輝く何かが激しくヒットした。

男「ギブラウェイッ!!??」

男はたまらず倒れ込み、そのまま気絶した。



65: 2009/06/01(月) 23:41:51.68 ID:Zl9D3tUd0

律「いやぁ、なんとか間に合った。それにしてもジルジャン製のシンバルはよく効くのー。
  こーんな私のかよわい細腕で殴っても、大の男があっというまにバタンキューだ」
澪「り、律……!?」
唯「いや……律ちゃん、それは誰でも倒れるって」
澪「ゆ、唯も……!?」
紬「澪ちゃんにオイタしたこの男は去勢してアメリカの刑務所に送っときますから安心してください♪ きっと新たな性癖に目覚めるはずですから」
澪「ムギまで……」
唯「ライヴ後の澪ちゃんの様子がいつにもまして異常だったから……」
紬「私達、いてもたってもいられなくて……」
律「それで急いできてみたらこのザマさ。ったく、だから言ったろ? この男は危ないって」
澪「みんな……」

澪が心底仲間のありがたみを感じたその時だった。

律「さぁ澪、立てよ。早速行くぞ」
澪「行くって……どこに?」
律「決まってるだろ? リハビリ施設だ」
澪「え……?」

66: 2009/06/01(月) 23:43:18.97 ID:Zl9D3tUd0
唯「澪ちゃんがいけないお薬やってるの、実は私たち知ってるの」
紬「とは言っても、このことを知っているのはこの三人と、近しいスタッフだけだから安心して」
律「だから澪、まだ取り返せる内にから足を洗うんだ」
澪「……………」

律「あ、心配は無用だぞ? お前の行くリハビリ施設はムギのお父さんの息がかかったところらしいから」
紬「マスコミに情報が漏れることはありません」
唯「だから澪ちゃん、ゆっくりキレイな身体に戻ろうよ、ね?」
澪「……いやだ」
律紬唯「え?」

澪「嫌だと言ったんだ!!」

律「ど、どうしてそんなことをいうんだよッ!!」
紬「律ちゃん……落ち着いて。でもなんで……」
唯「私達、澪ちゃんのことを思って……」

澪「そうか……そういうことか……」
律紬唯「?」

澪「そうだよな……歌詞も忘れるしまともにベースも弾けない……子供みたいに駄々をこねてセルアウトすることを拒んで……
  結局あんなダメアルバムを作っちゃった私に三人が愛想を尽かすのも無理はないよな」
律「はぁ?」
紬「澪ちゃん……」
唯「わ、私達はそんなこと思ってなんか……」

68: 2009/06/01(月) 23:45:06.82 ID:Zl9D3tUd0
澪「正直に言ってくれていいんだ!! 私が邪魔なんだろう!? 追い出したいんだろう!? 
  だから私からを奪って、リハビリ施設になんて押し込もうとするんだろう!?
  いいさ……三人の気持ちはよーくわかった!! 確かにありなんじゃないか? こんなダメな私なんかいない方がいい!!
  そうさ、それこそギャンズから梓を呼び戻して四人でやればいいじゃないか!! 
  それでいいじゃないか!! こんな私なんか放っておいて……」

律「ダメだ……何を言っても聞いてくれそうにない」
唯「もしかして……またキメてるんじゃ……」
紬「とにかくこのままじゃ埒があきません。澪ちゃん、ごめんなさいね。えいっ」
澪「私なんか……私なんか……あっ……」

紬がどこからか注射器を澪の首筋に突き刺すと、澪は電池が切れたように倒れ込んだ。

紬「睡眠薬を打ちました。メタドンも配合していますので、少しはも中和されるはずです。それより早く澪ちゃんを……」
唯「そうだね……早く運ばないと」
律「よしっ。ムギ、車はもう外につけてあるんだよな?」
紬「ええ。抜かりはありません」

こうして澪は、薬物中毒のリハビリ施設へと半ば強制的に収容されることとなった。

70: 2009/06/01(月) 23:46:30.94 ID:Zl9D3tUd0
施設に収容されてからというもの、澪は地獄のような禁断症状に悩まされ続けた。
そうしてフラッシュバックする過去の思い出。

律に強制的に軽音部に入部させられたあの日。
廃部寸前と知って律と二人で部員集めに奔走したこと。
ムギが入部してくれて律と一緒に喜んだこと。
唯が入部してくれて廃部を免れたこと。
皆で唯のギターを買いに行ったこと。
四人で初めて音を出した瞬間。
海での合宿。
顧問のさわ子との出会い。
初めての文化祭ライヴ。
皆で楽しく過ごしたクリスマス。
素晴らしい演奏だった新歓ライヴ。
そのライヴに感動してくれた梓の入部。
初めてのレコーディング。
インディーズでのCDデビュー。

71: 2009/06/01(月) 23:47:31.69 ID:Zl9D3tUd0
澪「どうして……どうして思い出すのは昔のことばかりなんだ」

 れはその時が澪にとって最高に楽しく、しあわせな『ふわふわ時間』であったから。

澪「それなのにどうして……どうして今、私はこんな狭いベッドの上で苦しんでるんだ」

澪「私は……律とムギと唯と梓と……五人で一緒にいる時間が楽しくて仕方がなくて……そんな仲間と一緒に音をだしていたかっただけなに……」

澪「ああ……神様お願い……あの軽音部のDream Timeを……私にもう一度……」

澪「でも違う……そんな時間を壊したのは……誰もない私……。私なんだ……」

もう決してあの時間を取り戻すことは出来ない。
そう悟った澪がとった行動は――施設からの脱走だった。

76: 2009/06/01(月) 23:56:12.58 ID:Zl9D3tUd0
施設から脱走した澪は辛うじて手元にあったお金で乗車券を買い、東京への新幹線に乗りこんだ。

ふらつく足取りと思い頭でやっとのことで座席に座ると――

梓「……澪先輩?」

なんと隣に座っていたのは誰でもない、今はギャルズ・アンド・ローゼズのギタリストとなった梓であった。

澪「……梓? どうしてここに……」

梓「ソロアルバムのプロモーションで地方に行ってたんです。その帰りで……」

ソロアルバムとは――梓がそこまで出世していたのは、施設に収容され外界の情報からシャットアウトされていた澪にとって初耳だった。

澪「そう……」

梓と澪、一時期はよき先輩後輩として放課後ティータイムのサウンド面を支えた仲だったが、衝突の末、今では犬猿の仲のはずだった。
しかし澪にはなぜか目の前の小さな身体の後輩を、今更憎む気持ちになどなれなかった。

78: 2009/06/01(月) 23:59:31.54 ID:Zl9D3tUd0
梓「澪先輩こそどうしてここに? 最近、放課後ティータイムの活動もほとんどしていないみたいですし……」

世間的には、放課後ティータイムはしばしの充電期間を置く――ということで活動休止扱いになっていた。
これは紬が、デビューの際にすら使うことを是としなかった自分の家のコネというコネを駆使した結果、
マスコミに対してとられた鉄のカーテンの如き報道規制のおかげだ。

澪「ああ……ちょっと……ね」

梓は澪がうつ病の末の中毒という、深い泥沼にハマり込んでいることなど知らない。
澪は適当にお茶を濁し、焦点の定まらない瞳で梓を見た。

その後、特に会話を交わすこともなく、犬猿の仲のはずの二人は東京まで座席を隣にした。
澪は、てっきり梓が血相を変えて席を変えるものだと思っていたが、不思議と梓は澪の隣を離れなかった。

そして別れの時。そそくさと席を立った澪は、背中に梓の視線を感じた。

澪「梓」
梓「はい?」
澪「ごめんね……」
梓「え……?」

それだけ言い残して澪はプラットフォームの人込みの中へ消えていった。

80: 2009/06/02(火) 00:03:24.18 ID:In/YiVs30
久方ぶりの自宅のマンションへ戻ると、部屋は意外にきれいに整理されている。
律か唯か紬か……とにかく誰かが掃除していてくれたのだろう。

身体を投げ出すようにソファーに背を預け、澪は天井を見上げた。
そしておもむろに一枚のCDをステレオにセットし、爆音で再生した。

『キミを見てるといつもハートDOKI DOKI~♪ 揺れる想いはマシュマロみたいにふ~わふわ~♪』

それは、まだ澪が純粋な気持ちで、五人で演奏することを楽しんでいたインディーズ時代、
あのボブ・サップ・レーベルのコンピレーションアルバムに収録されたバージョンの『ふわふわ時間』だった。

澪「結局、バカだったのは私なんだなぁ……」
 
激しい後悔と悲しみとやるせなさと切なさが澪の胸に去来する。

澪「ハハハ……バカだ……私バカだ……。みんなの『ふわふわ時間』を壊したのは私なんだ……」

自分がちょっとだけ我慢をしていれば、律はあんなに不安な目で私を見ることもなかった。
自分がもうちょっとしっかりしていれば、紬に家の力を使わせるまで気を使わせることもなかった。
自分がもうちょっとちゃんと演奏していれば、唯が『ふわふわ時間』のコード進行を丸忘れすることもなかった。
自分がもうちょっとだけ利口なら、梓は放課後ティータイムを出て行かずに済んだ。

でも、どうあがいたって、もうあの頃には戻れない――。
そう思った瞬間、澪の中に得体のしれない感情が浮かんでくる。

そして爆音で流れる自分達の演奏をBGMに、澪は溢れそうな感情をペンにのせ、ノートブックに向かった。

83: 2009/06/02(火) 00:07:07.97 ID:In/YiVs30
『私は音楽を聴いたり、創ったり、そして読むことにも書く事にも随分前から冷めてしまった。
それについては言葉で言い表せないくらいの罪悪感を感じているよ。
例えば、私達がバックステージにいて客電が落ち、オーディエンスの興奮した叫び声が起こっても、
あのフレディー・マーキュリーには効いたような作用は自分にはなかったんだ。
彼はその瞬間を愛しみ、オーディエンスからの愛や崇敬を受ける事を楽しんでいたようだけどね。そんな彼を私は手放しで素晴らしいと思うし、羨ましくもある。
でも、正直私はみんなをごまかせないんだ、みんなの誰をも。それはみんなにとっても自分にとっても公平じゃないから。
私の考える最大の罪は、私が100%楽しんでいるって偽ったり、そんなフリをしてみんなからお金を巻き上げる事なんだ。
時に私はステージに上がる前にタイムカードを押すように感じるときがある。
感謝しなくちゃいけないんだって出来る限りの力を尽くしてがんばってみた。(本当なの、信じて欲しい、それでも足りなかった)。
私や私達が沢山の人達に影響を与え、そして楽しんで貰えた事は重要だと思っている。
私はきっと全てを失ったときに初めてそのありがたみが分るナルシストの一人なのかも知れない。
私は繊細すぎるんだ。子供の頃のような元気を取り戻すにはちょっと鈍感である必要があるんだ。
この何年かの活動で個人的に知り合った人や私達の音楽のファンのみんなへも、今まで以上のありがたみを感じた。
それでもフラストレーションやみんなへの罪の意識やみんなへの感情移入を解決する事はできないんだ。
みんな誰にもいいところがあって、私は人を好きになり過ぎてしまう、そしてそれが強すぎるおかげで、自分がひどく哀しくなるんだ。
私って哀れでちっぽけで、繊細でありがたみを知らない魚座のジーザス女なんだよ、まったく、なんでただ楽しくやれないのかな? 分らないんだ!
 私は野望と思いやりに溢れたがんばり家の親友達を仲間に持ち、その仲間達みんなが私の名前を呼んで私を愛してくれる。
でも、そんなことが私に収拾がつかないほどの恐怖感を与えるんだ――





85: 2009/06/02(火) 00:09:59.25 ID:In/YiVs30
――律や唯やムギや梓が私のように惨めで、自棄なデスロッカーになるなんて想像するだけで耐えられないよ。
いい人生だった。本当にいい人生だったの。でも7いつからか、私は人間嫌いになっていた。
その理由はすぐ人と打ち解け、感情移入してしまうからで……人を愛したり、同情し過ぎてしまうのだと思う。
胸焼けして、むかむかするこの胃袋の底から、ここ何年かの内にメールをくれたり心配してくれたみんなにありがとうと言いたいよ。
私は気難しくて、変人で、気分屋過ぎるから……もう情熱を失ってしまったんだ。


そして、だからこそ思い出してほしいんだ。

錆びついてしまうくらいなら今この瞬間燃え尽きちゃった方がいいよね
(It's better to burn out than to fade away )

ってことを。

Peace, Love, Sympathy……秋山 澪

最後に――。

律、唯、ムギ……そして梓、私は祭壇にいるよ。
みんな、放課後ティータイムの活動、がんばってね。
みんなの人生にとって、私なんかいない方が幸せだと思う。

アイ・ラブ・ユー、アイ・ラブ・ユー! 』

87: 2009/06/02(火) 00:11:53.00 ID:In/YiVs30
ペンを投げ出して、澪はおもむろにステレオの裏側を漁る。
そこには澪を薬物漬けにしたあの男がいつかこの部屋を訪れた時、
『ヤクの代金代わりに手に入れた。せっかくだからやるよ』と言って無理やり置いていったショットガンが眠っていた。

澪「ははは……部屋の掃除をしてくれたのに、ステレオの裏側にまでは気付かないなんて。
こういうところにこそ汚れはたまりやすいのに……。きっと掃除をしてくれたのは律か唯なんだろうな……」

『お気に入りのウサちゃん抱いて~♪』

活き活きとした自分のボーカル。ちょっとナルシストっぽいけど、これを聴きながらっていうのも悪くはない。

澪「さよなら……」

『今夜もお休み~♪」

そして澪はショットガンの銃口を銜え込み、一気に引鉄を引いた――。

91: 2009/06/02(火) 00:15:10.45 ID:In/YiVs30

――とある郊外のライヴハウス。
今夜ここでは明日のメジャーデビューを夢見るアマチュアバンドの登竜門的なライヴイヴェントが行われることになっていた。
そしてそのイヴェントの開演を今か今かと待つ、自称ツウなロックファンが二人、ステージ最前列に陣取り、会話に耽っていた。

客1「そういやさ、ちょっと前に『放課後ティータイム』っていうガールズバンドいたじゃん」
客2「ああ、いたなぁ、そんなバンド。『ふわふわ時間』ってシングルと『うんたん♪マインド』っていうアルバムが滅茶苦茶売れたんだよなー」
客1「そうそう。メンバーみんな可愛かったけど、特にベースボーカルのあの子、名前なんて言ったっけなぁ。忘れちゃったけど特に可愛かったんだよなあ」
客2「ああ、いたなぁそんな子。確か名前は秋山……なんだっけ?」

 するとそんなの会話の輪に入るもうひとりのファン。

客3「秋山澪だろ。つーかお前ら、全然わかってねえな。放課後ティータイムの真骨頂は、インディーズ版の『ふわふわ時間』とその後に出た『放課後ティータイム』だぜ?
   一回聴いてみろよ。演奏の勢いが全然違うから。それにメジャーになってからも『うんたん♪マインド』より『イン・ユイテロ』の方が激しくてかっこいいんだよ。
   ま、リリースされた当初は不評で売れなかったんだけど」


92: 2009/06/02(火) 00:17:08.01 ID:In/YiVs30
客2「で、今も活動してんの? そのバンド」

客1「さぁ? 確かデビュー時にいた小さいギタリストの子が途中で脱退しちゃったんだよなぁ」

客3「ギャンズにいったんだよ、ギャンズ」

客1「どっちにしろそれからかなり下り坂だったみたいで露出もなくなっちゃたらしいしなぁ。もう解散してんじゃね?」

客2「そっかぁ。そんな可愛い子がいたバンドなら、一度見てみたかったなあ」

客3「俺は一度だけインディーズ時代のライヴ見たことあるけど、音の方もなかなかだったぜ?」

そしてまた一人。

客4「おーい。お前らさっきから一体なんのバンドの話してんの?」
客1「ああ、放課後ティータイムってバンド、覚えてる?」

客4「はぁ? 何言ってんだ。放課後ティータイムって言ったらお前、今日の出演バンドに入ってるじゃん。今日のイベントのチラシ、見てないの?」

客123「え?」

その瞬間、暗転していた小さなステージに、まばゆいスポットライトが灯る。

93: 2009/06/02(火) 00:18:32.75 ID:In/YiVs30
そこに立っていたのは、

ドラムセットから身を乗り出し、満足げにフロアを見下ろす、カチューシャのよく似合うドラマー。

まるで我が家に帰って来たかのようにホクホクと穏やかな笑みを浮かべる太眉が特徴的なキーボーディスト。

その細腕には不釣り合いなギブソン・レスポールとなぜかカスタネットを持っているほんわかした雰囲気のギタリスト。

ひときわ小さな身体でフェンダー・ムスタングを抱えて、興奮を隠せないようにパタパタと飛び跳ねるツインテールがよく似合うもう一人のギタリスト。

そして、

客123「マジかよ……」

――ちょっとだけ緊張を隠せない感じにモジモジと、しかしそれでいて悠々と、凛とした表情でフェンダー・ジャズベースを抱える左利きのベーシストであった。

95: 2009/06/02(火) 00:19:55.97 ID:In/YiVs30
澪「さよなら……」

 そう呟いて澪がショットガンの銃口を銜え込み、引鉄を引こうとした時――

――バキバキバキッ!!!

 急に重機でコンクリートを破壊するような衝撃音が、澪の耳を劈いた。

律「そこまでだーッ!!!!!」

 そして次の瞬間、澪が目にしたのは、まっすぐ自分めがけてダイヴをカマす、よく見慣れた律のデコだった。

96: 2009/06/02(火) 00:21:38.42 ID:In/YiVs30
律「澪、確保オオオオオオオオッ!!!!」

大げさな声とともに、力ずくに澪の手からショットガンを奪うと、律はそれを投げ捨てた。

唯「でかした律ちゃん!! さすが!!」
紬「なんとか……間に合いましたね」

澪「律……唯……ムギ……」

目をぱちくりさせる澪。目の前の光景が信じられない。

律「どうしてここにいるって顔してるな……ってお前、カギまでかけるんじゃないよ。
  おかげでまた私のジルジャンのシンバルで、ドアを破壊する羽目になったじゃないか。これでシンバル壊れたら、お前弁償しろよ」
唯「ダメだよ、律ちゃん。もう粉々に割れてるし」
紬「ダイナマイトでドアを爆破した方がスムーズでしたね♪」

澪「三人とも……な……なんで……」

律「おおっと、実は三人だけじゃないんだなこれが。おーい隠れてないで出て来いよ」
 すると三人の後ろからぴょんと飛び出る、あまりにも特徴すぎるツインテール。

澪「うそ……」

梓「澪先輩……」

出てきたのは梓だった。

97: 2009/06/02(火) 00:24:02.38 ID:In/YiVs30
澪「みんな……どうして来たんだ……?」
律「どうして来たんだ?……じゃないよッッ!!!!!」
澪「ッ!!」
律「澪……お前、私達が来る前、あのショットガンで一体何するつもりだったんだ? なあ?」
澪「それは……」
律「あんまりバカなこと考えるなよ……ううう……このバカヤローッ!! うわーんっ!!」
  すると律は大粒の涙を流しながら、澪を抱き締めた。
唯「私だって……澪ちゃんが施設を脱走したって聞いて……もしもって思ったら……うううう、うえ~ん!!」
紬「私だって私だって……グスッ……どれだけ心配したか……うわ~ん!!!」
梓「心配だったのは私も一緒です……。新幹線で会った澪先輩、明らかにヘンでしたから……。
  それで律先輩に最近の澪先輩のこと聞いて……居てもたってもいられなくて……うううううう、うわーーーーーーーーん!!」

 立て続けに3人に抱きつかれ、澪の胸はもう涙だが鼻水だがわからない液体でグショグショだった。


澪「み、みんな……私のこと、邪魔ものだと思ってたんじゃないのか?」
律「そんなこと思ってたらドアぶっ壊してまでお前を助けに来ないだろバカーッ!! うわーん!!」
唯「澪ちゃんがいなくなったら、誰が放課後ティータイムの曲の歌詞を書くの……うえーん!!」
紬「せっかく新しい紅茶を買ってきたんですよ……? 澪ちゃんに飲んでもらいたいなって思って……うわーん!!」
梓「私も……私も……放課後ティータイム辞めるなんて言ってごめんなさい!! うわーん!!」

四方からステレオで襲い来る四人の嗚咽に、澪の胸の中は熱くなった。

澪「そうか……やっぱり私って、バカだったんだ」
律「なんだよぅ!!今更気付いたのかようわーん!!」

澪「ああ。だって、こんなにも私のことを大切にしてくれてる仲間が……うう……いたこと……
  うう……ずっとずっと……忘れてたんだもん……うわ~ん!!」


101: 2009/06/02(火) 00:29:13.07 ID:In/YiVs30
唯「澪ちゃん……ぐすっ……実はね……私達、今のレコード会社……辞めてきたんだよ?」
澪「えっ……?」
紬「唯ちゃんの言う通りです……。だから澪ちゃん、もう悩む必要はないのよ……?」
律「そうだぞ……。アマチュアでもCDが売れなくても武道館のステージに立てなくてもいい! またみんなで昔みたいに楽しくバンドやろうぜ!」
澪「そうだったのか……」

梓「澪先輩……私もギャンズ辞めてきたんです」
澪「えっ?」

梓「あんなこと言って、放課後ティータイムを飛び出して……新しいバンドに入って……
  CDも売れたしギタリストの評価もあがりました……でも、演奏をするのが全然楽しくなかったんです……」
澪「梓……」
梓「どうしてなんだろうって、考えました。そしたら気付いたんです。
  ギャンズでギターを弾くのが楽しくないんじゃなくて、放課後ティータイムで……先輩達と一緒にギターを弾いている時間が幸せで、楽しすぎたんだなって。
  だから……本当にわがままなお願いなんですけど……私をもう一度放課後ティータイムに入れてください!!」
律「はははは! バカだなー、あずにゃんはまだ放課後ティータイムのメンバーだぜ?」
唯「そうそう! ギャンズにはレンタル移籍してただけだもんね?」
梓「唯先輩……サッカーじゃないんですから」
紬「だから澪ちゃん、五人でまたいちからやり直しましょ?」

澪「うううう……ありがとう……みんな……本当にありがとう……」

104: 2009/06/02(火) 00:34:54.13 ID:In/YiVs30
その後、メジャーシーンから姿を消した放課後ティータイムは、オリジナルメンバー五人の編成に戻ると、再度アマチュアバンドへと戻った。
周囲からは「大金をどぶに捨てた」とか「とても正気とは思えない」等、雑音が聞こえてきたが、五人にとってはそんなことはどうでもよかった。

そして放課後ティータイムは改めて、さわ子の元を訪ねる。

さわ子「ボブ・サップ・レーベルに戻りたいですって? アウイエッ! 良いに決まってるじゃないの!!
    正直言って、私もみんなを手放したのは大失敗だったって思ってるの……。
    あなたたちみたいな可愛いリトルバスターズ達――もとい女の子達にコスプレさせたい衝動には四六時中教われるし、
    ムギちゃんの入れる紅茶とお菓子を食べたくて手は震えるしで仕事にならなくてね。そ
    それじゃあ早速澪ちゃんにはこの猫耳メイドのコスプレを……いや、趣向を変えてこのファニー・バニーなウサ耳も……」

澪「イヤーーーッ!!」
梓「ブルブル(次は私の番かも……)」
律「そういやさわちゃん、まだ教師やってるんだなあ」
唯「相変わらず彼氏はいないんだね」
紬「男の人と一緒になるだけが幸せじゃないですよ♪」

こうして放課後ティータイムは新しいスタートを切ったのであった。

108: 2009/06/02(火) 00:38:58.07 ID:In/YiVs30
ライヴハウスに集まったオーディエンス達からは、次々に驚きの声が上がる。
時代のあだ花として消えたはずのあの伝説のガールズバンドが、こんな場末の小さなライヴハウスのステージに立っている。

客2「何だよ!? 放課後ティータイムって解散したんじゃなかったのかよ!?」
客1「おい、マジかよ……。なんであの伝説のバンドがこんな小さなライヴハウスに……」
客3「まさか……またこのバンドのライヴを見れるなんて……」
客4「お前ら知らなかったのか? 確か来月、またボブ・サップ・レーベルからアルバム出すんだぜ?」

律が得意げな笑みを浮かべて軽くスネアを一発叩く。
唯は相変わらず曲の出だしのコードを梓に確認するのに余念がない。
梓はそんな唯に半分呆れながらも、優しく耳打ちして教える。
そしてそんな唯と梓の意味深なやり取りを眺めて、紬が鍵盤を撫でながらこれまた意味深な笑みを浮かべる。

そして――

ざわめく客を尻目に、澪はおずおずと恥ずかしそうにセンターマイクの前に立った。

澪「こんばんは! 放課後ティータイムです!
  それではさっそく1曲目、聴いてください! 『ふわふわ時間』!!」


おわり

109: 2009/06/02(火) 00:40:04.89 ID:qT04tjCv0
乙!感動した!

110: 2009/06/02(火) 00:42:47.64 ID:+uqfJ1rmO
勘当した!

112: 2009/06/02(火) 00:46:05.50 ID:In/YiVs30
終わりです。

ご指摘の通り、ニルバーナというアメリカのロックバンドの活動、
そしてそのメンバーだったカート・コバーンの人生を軽音部と澪に重ねただけの話でした。
澪を主役にしたのは左利きだったからっていう理由だけなんですがw カートと同じギター使ってる梓でもよかったのかな。

遺書についてもカートが書いたものをコピペして澪口調になるよう替えただけです。
おかげでちょっとだけ原文が残って誤字になってたりしますがw

ちなみに梓に速攻で止められたギャンズのボーカリストは、うつ病の余りその後、16年間アルバムが出せなくなってしまったそうです。

最後に誤爆したスレの人、すんませんでしたwwwwwww 吊ってきますwwwww

114: 2009/06/02(火) 00:46:21.61 ID:75Co/FAiO
乙!
おもしろかったぜ!!

>>1は音楽詳しいんだな
澪の「錆び付くくらいなら……」ってのもミュージシャンの言葉なの?

115: 2009/06/02(火) 00:46:29.66 ID:QPG7B5qSO
乙!

116: 2009/06/02(火) 00:48:49.81 ID:2PXGLVSUO
>>114
ニール・ヤング

117: 2009/06/02(火) 00:49:23.70 ID:5TwoKTLd0
>>114
カートコバーンの遺書の中の文章

118: 2009/06/02(火) 00:49:31.53 ID:In/YiVs30
>>114
ニール・ヤングっていうアメリカのミュージシャンの曲「ヘイヘイ・マイマイ」の歌詞の一節で
実際にカートが遺書に引用しています。

この話を考えていたちょうどその時にアニメ版にも出てきたんですよね、カートwww

引用元: 澪「錆びつくくらいなら燃え尽きちゃった方がいいよね」