1: 2015/04/27(月) 22:32:52.96 ID:0/74+aLR.net
海未「んん…………」

海未(………………あれ)

海未(…………ここはどこでしょうか)

海未(普通の家の一室のようですが)

海未(私のほかには誰もいません)



海未「…………」

海未(窓に板が打ち付けてあります。光が入らないように、でしょうか…………)

海未(部屋の中は明るいですが、これは照明によるものですか)

2: 2015/04/27(月) 22:36:09.47 ID:0/74+aLR.net
海未(扉は一つ。ただ、変なチェーンがついています)

海未(中からも何かしらの鍵がないと、開けられない仕組みでしょうか?)

海未(ただ、今はそれも外れているようですが…………)



海未(…………なぜ、こんなところに?)

海未(確か今日は……学校に行こうと、いつものように待ち合わせをして―――)


―バタン

ことり「あっ、海未ちゃん!目が覚めたの?」

海未「こ、ことり!」

3: 2015/04/27(月) 22:38:22.37 ID:0/74+aLR.net
ことり「うん、ことりですよー?」

海未「ああ……よかったです。一人こんなところに連れられたのかと思いました」

ことり「大丈夫。海未ちゃん一人じゃないよ」

海未「そうですか。ことりのほかには誰がいるんです?」

ことり「穂乃果ちゃんと、花陽ちゃん」

海未「穂乃果と花陽も…………とにかくここから出ましょう」

ことり「…………」

海未「二人はどこにいるんですか?」

ことり「むこうの部屋にいるよ」

海未「わかりました。呼んできましょう」

4: 2015/04/27(月) 22:42:08.18 ID:0/74+aLR.net
穂乃果「ああ!海未ちゃん起きてる!」

花陽「おはよう、海未ちゃん!」

海未「……ちょうどよかった。今呼びに行こうと思ってたんですよ」

穂乃果「穂乃果たちもね、ちょうどこっちに来ようと思ってたんだ」

海未「そうだったんですか。さあ、こっから出ましょう」

ことり「その必要はないよ、海未ちゃん」

海未「何を言ってるんです。誰かに連れられてきたんですよ?今のうちに逃げて―――」

花陽「変だと思わないかな?」

海未「な、何がです?」

穂乃果「誰かに連れられたんだったら、普通そんな簡単に逃がしてくれないよね?」

海未「それは……そうかもしれません」

5: 2015/04/27(月) 22:45:34.59 ID:0/74+aLR.net
海未「しかし、やはり何か行動しないと!きっと逃げる方法はあるはずです!」

穂乃果「はぁ……………」

ことり「海未ちゃんって鈍感なところがあるよね」

穂乃果「でも、そんな海未ちゃんも好きだよ」

海未「え?何ですかいきなり」

ことり「まだ気づかないの?」

海未「…………?」

穂乃果「あのね、ここに海未ちゃんを連れてきたのは―――」

花陽「―――花陽たちなんですよ?」

6: 2015/04/27(月) 22:48:02.29 ID:0/74+aLR.net
海未「ど、どういうことですか?」

ことり「どういうことって、こういうことだよ」

海未「答えになってません!」

穂乃果「海未ちゃんは、穂乃果たちとここで、ずうっと一緒に暮らすの」

海未「はい……?ここで暮らす?」

ことり「そうだよ。一緒にぷあぷあ、しよ?」

海未「待ってください!え?ええ?」

花陽「落ち着いて海未ちゃん。簡単なことなの」

穂乃果「四人で氏ぬまでここで暮らす。それだけだよ?」

7: 2015/04/27(月) 22:51:45.62 ID:0/74+aLR.net
海未(な、なんですかこれは!悪夢でしょうか……)

海未(早く目を覚ますんです、園田海未!)

ことり「これは、夢なんかじゃないんだよ」

穂乃果「受け入れようね、海未ちゃん」

花陽「大丈夫だよ。怖くなんてないの」

海未「…………一ついいでしょうか」

ことり「なあに?」

海未「なんでこんなことをするんですか?」

8: 2015/04/27(月) 22:54:04.30 ID:0/74+aLR.net
穂乃果「海未ちゃんが大好きだからだよ」

ことり「ずっと昔から大好きだったのに、海未ちゃん気づかないんだもん」

海未「好きというなら、私だって二人のこと好きですよ」

穂乃果「ほら、これだもん」

ことり「うん。やっぱりこうして正解だよね」

海未「なにがですか!」

ことり「海未ちゃんのは友達として―――でしょ?」

穂乃果「穂乃果たちは違うよ。一人の女の子として海未ちゃんが好きなの」

海未「なっ…………」

10: 2015/04/27(月) 22:56:54.39 ID:0/74+aLR.net
ことり「だから好きな人と一緒にいたくなる。それって普通だよね」

海未「…………なんとなくはわかりましたよ」

穂乃果「本当?海未ちゃん、こういうのなかなか分かってくれなさそう」

海未「…………大丈夫です。二人の気持ちはわかりました)

海未「しかし、花陽はどうなんですか?」

ことり「花陽ちゃん?花陽ちゃんもね、海未ちゃんのこと好きだったんだよ」

海未「そんなそぶりは…………」

穂乃果「そんなそぶりって……穂乃果たちにすら気づかないのに、それ言うの?」

花陽「海未ちゃんは鈍感さんだもんね?」

海未「………………」

11: 2015/04/27(月) 22:59:18.81 ID:0/74+aLR.net
穂乃果「かっこいい海未ちゃんに憧れて……一緒に練習して近くで触れ合って……」

穂乃果「そりゃ好きになっちゃうよね」

海未「でっ、でも、私より凛や真姫の方が仲よさそうにしていましたよ?」

ことり「……だから鈍感って言われるんだよ?」

海未「………………」

穂乃果「でも、今回は海未ちゃんが正解。始めは海未ちゃん以外の人が好きだったの」

海未「それなら……」

ことり「だからね……花陽ちゃんには、海未ちゃん一筋になってもらっちゃいました♪」

12: 2015/04/27(月) 23:02:07.68 ID:0/74+aLR.net
海未「…………どういう意味ですか?」

穂乃果「えっとね、ちょっと色々と花陽ちゃんにしてみたんだ」

穂乃果「そしたら、凛ちゃんや真姫ちゃん、にこちゃんたちのこともぜーんぶ忘れて」

穂乃果「もう、穂乃果とことりちゃん。そして海未ちゃんしか覚えてないよ」

海未「な!花陽になにしたんです!?」

ことり「それは…………ヒ・ミ・ツです♪」

海未「……っ」

穂乃果「心配しなくても、花陽ちゃんは今、とっても幸せなんだって」

花陽「そうです!海未ちゃんと一緒に暮らせるなんて!」

穂乃果「ね?」

海未「………………」

13: 2015/04/27(月) 23:05:35.67 ID:0/74+aLR.net
海未「……私にも同じことするんですか」

ことり「しないよ?海未ちゃんには自分から言ってもらいたいもん」

海未「何を言わせる気です」

ことり「ずっとあなたたちと一緒に暮らしたいです、って」

海未「…………言うわけないじゃないですかっ!」

花陽「だから、これから言わせるの」

穂乃果「必ず最後には言ってくれるよ」

ことり「待ってるからね、海未ちゃん」

海未(言うわけない…………早くここから出してください!)

14: 2015/04/27(月) 23:08:57.20 ID:0/74+aLR.net
――――――――
――――


花陽「ふー……ふー……はい、あーん」

海未「あー…………」

花陽「どうかな?おいしいですか?」

海未「うん……おいしいですよ」

花陽「えへへ、嬉しいな!頑張って作ったんだもん」

海未「ありがとうございます……」

花陽「ふー……はいもう一口、あーん」

海未「花陽」

花陽「なにかな、海未ちゃん?」

海未「自分で食べたいのですが」

花陽「それはダメかなあ?」

海未「なんでですか…………」

15: 2015/04/27(月) 23:18:07.36 ID:0/74+aLR.net
海未「何か勘違いしてるようですが」

海未「私の方が力がありますし―――」

海未「あなた一人なら、どうにでもできるんですよ?

花陽「そうかもしれないね」

海未「箸を渡してください

花陽「で、でも、あーんって………」

海未「渡してください」

花陽「…………はい」

海未「ありがとうございます。それじゃあいただきますね」

花陽「…………うん。ぜーんぶ食べてね?」

16: 2015/04/27(月) 23:21:36.75 ID:0/74+aLR.net
海未「ごちそうさまでした。美味しかったですよ」

花陽「お粗末さまでした」

海未「さて…………」

海未「……花陽、私をこの部屋から出してください」

花陽「…………ええぇ!?そ、それはちょっと、できないかな……」

海未「それなら、力づくで行くまでですが」

花陽「…………わ、わかりました。出してもいいよ」

花陽「でも、この部屋から出ても意味がないと思うけど……」

海未「……なんでもいいです。とにかく出しなさい」

花陽「……今、扉のチェーン外すね。ええと、この錠にカギを―――」カチン

花陽「チェーンを引っ張って…………」カチャン

花陽「はい、開けたよ」

海未「ありがとうございます」

17: 2015/04/27(月) 23:24:54.00 ID:0/74+aLR.net
海未(結構あっさりあけてくれましたね……)

海未(まあいいです)



―ガチャ

海未(部屋の外はリビングでしょうか、やはり普通の家といった感じ)

海未(キッチンも見えます。先ほどの料理はここで作ったんですね)

海未(玄関はどっちでしょうか…………)

18: 2015/04/27(月) 23:27:26.82 ID:0/74+aLR.net
海未「花陽、この建物の出口はどっちで―――」

穂乃果「海未ちゃん、なにしてるのかな?」

ことり「部屋から出たらダメだよ」

海未「あっ…………いえ、ちょっとお手洗いに行きくなりまして……」

穂乃果「…………ふーん、そっか。じゃあ穂乃果が連れっててあげるね」

海未「ええ、お願いします……」

ことり「……………………」

花陽「だから言ったのに……いくら海未ちゃんでも、三人相手は無理だよね?」ボソッ

海未(そうでした……よく考えれば当然のことです…………)

19: 2015/04/27(月) 23:29:01.93 ID:0/74+aLR.net
海未「あ、あの穂乃果…………」

穂乃果「ん?どうしたの?」

海未「ええと、非常に恥ずかしいというか…………」

穂乃果「なにが?」

海未「なんで一緒にお手洗いに入ってるんですか」

穂乃果「気にしないでいいよ」

海未「気にしますよ!ずっと見られて―――できるものもできません!」

穂乃果「海未ちゃんってホント、恥ずかしがり屋だもんね」

海未「いやいやいや!これは関係ないでしょう!?」

20: 2015/04/27(月) 23:30:30.89 ID:0/74+aLR.net
穂乃果「大丈夫見てるだけだから」

海未「見られるのが困るのですが」

穂乃果「見てないと海未ちゃん、また逃げようとするでしょ」

海未「…………しませんよ」

穂乃果「えー?本当かなあ」

海未「本当ですから、出てください」

穂乃果「わかったよ。扉の前で待ってるからね」

海未「はい」

21: 2015/04/27(月) 23:32:59.20 ID:0/74+aLR.net
海未「ふぅ…………」

海未(別に、もよおしてはいなかったのですが…………)

海未(ちょっと安心したからでしょうか―――)



――がちゃがちゃっ

穂乃果「海未ちゃーん!終わったんでしょ?」

海未「なっ!ず、ずっと聞いてたんですか!?」

穂乃果「そりゃ扉越しでもばっちり聞こえるもん」

海未「……………………」

穂乃果「穂乃果が拭いてあげるよ?」

海未「結構です!」

22: 2015/04/27(月) 23:35:41.30 ID:0/74+aLR.net
――――――――
――――

海未「………………」

海未(…………なるほど)

ことり「………………」ジー

海未「………………」

海未(そういうことだったんですね)

ことり「………………

ことり「う、海未ちゃん。本を読んでるところ悪いけど、そろそろお風呂入らないかな?」

海未「……ん、ああ、お風呂ですか。入りますよ」

ことり「じゃあことりと一緒に入ろうね」

海未「一人で入らせてください」

ことり「四人で入りたいの?」

海未「…………ことり、二人で入りましょう」

23: 2015/04/27(月) 23:39:21.15 ID:0/74+aLR.net
ことり「ここがお風呂です!」

海未「普通ですね」

ことり「もっとすごいのがよかった?」

海未「別にいいです……」



ことり「……さあ海未ちゃん、ばんざーいってして?」

海未「…………脱げますから!一人で脱げますから!」

ことり「ええぇ?でも……」

海未「いいですから!ことりも自分の服を脱いでください」

ことり「もう、海未ちゃんの恥ずかしがり!」

海未「だから、恥ずかしいとかじゃあないでしょう!」

24: 2015/04/27(月) 23:41:24.79 ID:0/74+aLR.net
ことり「はーい、お背中お流ししますね♪」

海未「結構です」

ことり「そういわないで。背中だけだよ?」

海未「自分で洗えますから」

ことり「海未ちゃん、おねがあい♪」

海未「…………わかりましたよ。背中だけです」

ことり「うん!」

25: 2015/04/27(月) 23:45:04.97 ID:0/74+aLR.net
ことり「どうですかー?気持ちいですかー?」

海未「………………あの、ことり」

ことり「なになに?かゆいところ、ございましたか?」

海未「いや……その……スポンジを使ってください」

ことり「素手の方が気持ちいいよ?」

海未「そういう問題じゃないです」

ことり「どういう問題なの?」

26: 2015/04/27(月) 23:47:09.42 ID:0/74+aLR.net
海未「さっきから洗い方がおかしくないですか?」

ことり「おかしくないと思うけど……」

海未「………………もういいです。背中は十分きれいでしょう?」

ことり「じゃあ前の方も―――」

海未「しなくていいですって!」

27: 2015/04/27(月) 23:49:03.28 ID:0/74+aLR.net
ことり「やっぱり、二人だと狭いね」

海未「……私、出ますね」

ことり「ああ!やっぱり狭くないよ!」

海未「この際広さはどうでもいいです」

ことり「もうちょっとだけ温もろう?」

海未「……ダメです。あがります」

ことり「えー…………」

28: 2015/04/27(月) 23:50:43.81 ID:0/74+aLR.net
花陽「海未ちゃん、そろそろ寝よう?」

海未「……確かに眠くなってきました。どこで寝ればいいんですか?」

花陽「ここに敷き布団持ってくるの。ちょっと待っててね」

海未「はい」

花陽「あっ、そうそう。海未ちゃんは枕、大丈夫?」

海未「大丈夫というのは?」

花陽「あの……自分の枕じゃないと眠れない、とか言うのはないかなって」

海未「ああ……大丈夫ですよ。枕無しでも寝られますし」

花陽「よかったぁ。眠れないですって言われたら、どうしようかと思ったよぉ」

海未「ふふ、心配してくれてありがとうございます」

29: 2015/04/27(月) 23:54:05.76 ID:0/74+aLR.net
花陽「よいしょ……これで、横に四つ並べて―――全員分敷けたね」

ことり「どうしようかな……海未ちゃんの隣の布団は二つ……」

花陽「一人は海未ちゃんから離れちゃう」

穂乃果「じゃあ穂乃果は、海未ちゃんの布団で寝る!」

花陽「それなら、わ、私も!」

ことり「ずるい!ことりも!」

海未「………………暑苦しいです」

花陽「電気消すね。おやすみ海未ちゃん」

海未「え、ちょっと待ってください!このまま寝るんですか!?」

穂乃果「海未ちゃん、寝るよ」

ことり「おやすみ」

30: 2015/04/27(月) 23:56:01.35 ID:0/74+aLR.net
――――――――
――――


穂乃果「海未ちゃん、ごはんだよ」

海未「今度は穂乃果ですか」

穂乃果「うん。たくさん作ったから食べてね」

海未「…………はい」

穂乃果「あー!その顔!不安そうにしないでよ、おいしくできてるんだよ!」

海未「わ、わかってますよ」

穂乃果「もうっ!ほら海未ちゃん、あーん」

海未「あー……」ゴクン

穂乃果「ね?おいしいでしょ?」

海未「本当です。おいしいです」

穂乃果「頑張って勉強したんだから!」

31: 2015/04/27(月) 23:59:44.35 ID:0/74+aLR.net
――――――――
――――


花陽「海未ちゃん、買い物行くんだけど何か欲しい物とかある?」

海未「そうですね……じゃあ、この本の続きと、甘いお菓子お願いします」

花陽「ちょっと待ってね…………よし、本の名前は覚えたよ」

海未「巻数も覚えてくださいね」

花陽「はいっ。―――あ、あの……甘いお菓子ってどういうのかな?」

海未「できれば和菓子がいいです」

花陽「和菓子……わかったよ。じゃあ行ってくるね」

海未「ええ、気を付けてくださいね」

花陽「うん」

32: 2015/04/28(火) 00:04:19.74 ID:64YcF8A6.net
海未(最初の様子から、とんでもないことをされるのかと思いましたが……)

海未(この部屋にいる限り、特になにもされません)

海未(痛いことや苦しいこともさせられず―――)

海未(無理やり襲われることもないですし……)

海未(何がしたいのかよくわかりません)

34: 2015/04/28(火) 00:06:32.44 ID:64YcF8A6.net
海未(部屋では三人のうち、誰か一人が必ずいるのですが―――)

海未(話をするか、じっと見つめてくるかで)

海未(なにもされないのが不思議です…………)

35: 2015/04/28(火) 00:09:00.72 ID:64YcF8A6.net
海未(生活は毎日―――と言うんでしょうか?)

海未(日光や時計が見れないので、時間の感覚が怪しいですが……)

海未(まあ毎日、大体一緒です。三度の食事、風呂、就寝)

海未(この三つは、三人にタイミングを決められています)

36: 2015/04/28(火) 00:13:16.44 ID:64YcF8A6.net
海未(それ以外はかなり自由です)

海未(携帯やパソコンこそ使わせてもらえないですが、本や勉強はさせてもらえます)

海未(トレーニングをしても何も言われないですし)

海未(………………)

37: 2015/04/28(火) 00:16:06.88 ID:64YcF8A6.net
海未(しかし、一つだけ。奇妙なことをさせられます)

海未(三食のうち決まって一回。食べ終わってからのこと)

海未(私は目隠しをさせられ、ある部屋に連れて行かれるんです)

海未(その部屋に着くと私は椅子に座らせられて―――)

海未(手足に拘束具をつけられるんです)

海未(何も見えずまったく動けない)

海未(この生活において、一番怖い時間です)

45: 2015/04/29(水) 22:24:48.43 ID:OiOunWSD.net
――――――――
――――

ことり「じゃあ海未ちゃん、これをつけてね」

海未「なんですか、これは」

ことり「目隠しだよ。ちゃんとつけてほしいの」

海未「は、はい…………」

ことり「どうかな。痛いとか、そういうのある?」

海未「いえ」

ことり「大丈夫そうかな。じゃあことりが海未ちゃんを案内するねっ」

46: 2015/04/29(水) 22:26:44.83 ID:OiOunWSD.net
ことり「はい、そこに椅子があるから―――そうそう、そのまま座って」

ことり「腕を後ろに、背もたれの方に回して―――ちょっと冷たいかもしれないけど」カシャン

海未「……っ!なんですかこれは!」

花陽「足はこのバンドでぎゅーっと…………」

穂乃果「こっち足もイスの脚と―――できた」

海未「…………なんのつもりですか」

ことり「怖がらなくても大丈夫だよ。酷いことはしないから」

海未「椅子に張り付けるので、十分酷いと思いますが」

花陽「すぐに外すよ。がまんしてね……?」

海未「………………」

47: 2015/04/29(水) 22:28:49.14 ID:OiOunWSD.net
海未(何をされるんでしょうか…………)

海未(今まで特に変わったことをされていない分、非常に怖いです……)

海未(暴力でも振るわれるんでしょうか……それとも、変なものを注射されたり……)

穂乃果「じゃあ始めようかな」

海未「ひっ…………」

穂乃果「怖がらないで。リラックスしてね」

ことり「いくよ…………」

48: 2015/04/29(水) 22:30:17.58 ID:OiOunWSD.net
「海未ちゃん♪」

「海未ちゃん♪」

「海未ちゃん♪」

「だあいすきだよ海未ちゃん♡」

「だあいすきだよ海未ちゃん♡」

「だあいすきだよ海未ちゃん♡」

49: 2015/04/29(水) 22:33:08.11 ID:OiOunWSD.net
海未(な、なんですかこれ…………)

海未(三人が耳元でささやいてきます…………)


「凛々しい海未ちゃんが好き」

「悔しがる海未ちゃんが好き」

「嬉しそうな海未ちゃんが好き」


海未(なんか好き好き言われると、くすぐったくなってきますね……)

50: 2015/04/29(水) 22:34:25.13 ID:OiOunWSD.net
穂乃果「お疲れさま。もう終わりだよ」

花陽「すぐに外すからね」

ことり「でも、目隠しはまだとっちゃダメ」

海未「…………はい」



海未(あれから、ひたすら三人にささやかれました)

海未(ちょっと恥ずかしかったりしましたが、特に変わったことはないです)

海未(何を思ってやったのか……ただただ不気味です)

51: 2015/04/29(水) 22:40:30.15 ID:OiOunWSD.net
―――――――――――――
――――――――
――――



海未(もう十回以上行われましたが、さっぱりです)

海未(催眠術か何かなんでしょうか……?全然効いてませんよ?)

海未(………………)

52: 2015/04/29(水) 22:42:35.77 ID:OiOunWSD.net
海未(だんだんこの生活に慣れてきました)

海未(しかし、私には私の生活があります。やはり抜け出さないと)

海未(あの部屋からは、扉からしか出られません)

海未(板が邪魔で窓からは無理でした。外せそうな工具も買ってきてもらえません)



海未(抜け出すタイミングは、買い物の時でしょうか…………)

海未(三人のうち、誰かがたまに買い物に行きます)

海未(この時にもう二人のうち、片方でもどうにかできれば―――)

53: 2015/04/29(水) 22:45:22.85 ID:OiOunWSD.net
―――――――――――――
――――――――
――――

ことり「はい、最後の一口だよ。あーん」

海未「…………」ゴクン

ことり「全部食べてくれたね。嬉しいな♪」

海未「私も嬉しいです。毎日手料理を作ってくれて」

ことり「ホント?えへへ♪」

海未「ええ。三人とも料理が上手で」

ことり「練習したんだもん」

54: 2015/04/29(水) 22:48:18.84 ID:OiOunWSD.net
ことり「―――あ、そうだ海未ちゃん」

海未「なんでしょうか」

ことり「この後穂乃果ちゃんがね、買い物行くみたいなんだけど」

海未「ああ、欲しいものですか?」

ことり「うん」

海未「そうですね…………新しいノートと消しゴムが欲しいです」

ことり「ノートと消しゴムだね。わかった。じゃあ伝えておくね」

海未「お願いします」

55: 2015/04/29(水) 22:50:21.58 ID:OiOunWSD.net
―ガチャ


花陽「海未ちゃん」

海未「今度は花陽が部屋にいてくれるんですか」

花陽「うん。あ、そうだ、この後穂乃果ちゃんが、お買い物にいくんだけど―――」

海未「欲しい物ですか?

花陽「うん」

海未「今さっき、ことりにも聞かれました。ちゃんと伝えておきましたよ」

花陽「そうなんだ。それなら……うん、それならいいんだけど」

海未「さて、なにしましょうか」

花陽「この前買ってきた本は、全部読んだの?」

海未「まだ途中です。―――そうですね、本でも読みましょうか」

56: 2015/04/29(水) 22:53:46.29 ID:OiOunWSD.net
海未「………………ふぅ」

海未(途中といっても、もう30ページくらいしか残ってませんでした)

海未(すぐに読み終わってしまって…………)

花陽「…………すー……すー……」

海未(花陽、寝てますね……)

海未(チャンスかもしれません)

海未「………………花陽」

花陽「…………………ん、あっ、海未ちゃん、なあに?」

海未(簡単に起きちゃいましたか…………)

海未「眠そうですね…………一緒にひと眠りしませんか?」

花陽「え?あ、うん。ちょうど花陽も眠かったんです……」

57: 2015/04/29(水) 22:55:20.91 ID:OiOunWSD.net
花陽「布団持ってくる?」

海未「いえ、暖かいですしこのままでいいでしょう」

花陽「そうだね。もう眠くて動きたくないもん」

海未(布団運んでるところをことりに見られたら、ばれそうですし)

海未「ほら、横に来てください」

花陽「うん…………おじゃまします」

海未「もっとくっついてもいいですよ?」

花陽「えへへ、じゃあ甘えちゃいます」ギュー

海未「……おやすみなさい花陽」ナデナデ

花陽「おやすみ、海未ちゃん…………」

58: 2015/04/29(水) 22:59:33.59 ID:OiOunWSD.net
花陽「……んん……すー……すー……」

海未「………………」

海未(悪いですが、カギはいただきますよ……)ゴソゴソ

海未(ポケットに―――ありました。そーっととれば…………)

花陽「……うーん…………」ゴロン

海未「………………」

海未(もうちょっと…………よし!)

海未(…………うまくいきました)

海未(あとはチェーンを…………)

―カチャン

59: 2015/04/29(水) 23:02:01.69 ID:OiOunWSD.net
海未(……扉は開きました。できるだけことりに見つからないように……)

海未(ことりは……あれ、いませんね)

海未(お手洗いに行ってるんでしょうか。好都合です)



海未(この大部屋には扉が三つ。一つは元の部屋)

海未(残りはあの目隠しの部屋と、玄関への廊下……でしょう)

海未(どっちでしょうか…………)

海未(…………悩んでも仕方がありません。向って右、右の扉!)

60: 2015/04/29(水) 23:05:11.03 ID:OiOunWSD.net
海未「…………やった!」

海未(玄関が見えました。まっすぐの廊下!)

海未(ことりも気づいていないみたいです……このまま玄関の扉まで)


海未(―――よし)

海未(あとは、静かに扉を開けて…………)



―ガ―――チャン





穂乃果「………………どこに行くの」

61: 2015/04/29(水) 23:08:43.91 ID:OiOunWSD.net
――――――――
――――

海未(玄関の戸を開けると、穂乃果が立っていました)

海未(ひるんだ私は、後ろからことりと花陽に押さえつけられ―――)

海未(…………どうやら、初めからお見通しだったみたいです)


海未(今は元の部屋に戻され、おしおき宣告を受けました)

海未(何をされるのかわかりませんが…………)

海未(とにかく怖いです…………)

62: 2015/04/29(水) 23:11:18.46 ID:OiOunWSD.net
―ガチャ

ことり「………………」

海未「あっ―――こ、ことり」

ことり「………………」コトン

海未「……え、な、なんですか……?」

ことり「………………」

63: 2015/04/29(水) 23:13:14.63 ID:OiOunWSD.net
海未(結局なにもされませんでした……)

海未(持ってきたのは、お盆に乗ったごはん)

海未(いつもと一緒です。ただ、手紙がついていますね……)

『一人で食べてもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』

海未(…………おしおきなんでしょうか?箸もついてますし……)

海未「…………いただきます」

64: 2015/04/29(水) 23:16:44.03 ID:OiOunWSD.net
海未(ごはんも普通でした。おいしかったです)


―ガチャ

花陽「………………」

海未「今度は花陽ですか……」

花陽「………………」バサ

海未「バスタオルに着替え…………」

花陽「………………」

65: 2015/04/29(水) 23:18:45.04 ID:OiOunWSD.net
海未(やはりなにもされません……)

海未(風呂に入れということでしょうか)

海未(いつもと一緒です。また、手紙がついていますね……)

『一人でお風呂に入ってもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』

海未(…………まさか感電させてきたりしませんよね?)

海未「…………入って来ましょう」

66: 2015/04/29(水) 23:22:49.04 ID:OiOunWSD.net
海未(普通に風呂でした。久々に一人で入れたので、ちょっと長風呂ギミです……)



―ガチャ

穂乃果「………………」

海未「そして、穂乃果ですか……」

穂乃果「………………」バフ

海未「……布団ですね」

穂乃果「………………」

67: 2015/04/29(水) 23:25:13.53 ID:OiOunWSD.net
海未(………………)

海未(寝ろってことですね)

海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)

『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』

海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)

海未「……おやすみなさい」海未(………………)

海未(寝ろってことですね)

海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)

『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』

海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)

海未「……おやすみなさい」

68: 2015/04/29(水) 23:25:45.82 ID:OiOunWSD.net
海未(………………)

海未(寝ろってことですね)

海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)

『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』

海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)

海未「……おやすみなさい」

69: 2015/04/29(水) 23:30:04.32 ID:OiOunWSD.net
海未「ううん―――朝ですか」

海未(と言っても分かりませんが)

穂乃果「………………」

海未「……あ、あれ、みんな起きてたんですね」

花陽「………………」

海未(って……私、二人に仰向けのまま、押さえつけられてます……)

海未「あの……離してもらえませんか」

70: 2015/04/29(水) 23:32:19.08 ID:OiOunWSD.net
ことり「………………」

海未「な、なんですか、そのクスリは!」

ことり「………………」グイッ

海未「んんんー!」

海未(ことり、私に無理やり飲ませようと―――)

ことり「………………」グッ

海未(鼻をつままれて―――息が……!)

海未「んんん……ぷは…………んぐっ!」

71: 2015/04/29(水) 23:36:44.89 ID:OiOunWSD.net
――――――――
――――

海未「はぁ…………はぁ…………」

海未「…………うぐぅ…………」



海未(あのクスリを飲まされてから、少し経って)

海未(始めは頭がくらくらして、悪寒がする程度でしたが……)

海未(全身が震えだして止まらなくなり―――)

海未(しまいには、少しでも動くと身体中に、痛みが走るようになりました)



海未(今では呼吸するだけで…………)

海未(…………苦しいです)

海未(………………助けてください。穂乃果、ことり、花陽……)

72: 2015/04/29(水) 23:39:57.88 ID:OiOunWSD.net
海未「はぁ……ん…………」

海未(あれから三人は全く姿を現しません)

海未(私は呼吸の痛みに耐えながら、ずっと同じ姿勢)

海未(どうにもしようがありません。治まるまで耐えるしか―――)

海未(でもそれって、いつまででしょうか……)

海未(……………………)

海未(…………)

海未(……)

73: 2015/04/29(水) 23:42:50.76 ID:OiOunWSD.net
穂乃果「う、海未ちゃん!」

花陽「海未ちゃん、大丈夫?」

ことり「海未ちゃんっ!」

海未「んん……こと……り?……いっ!……」

ことり「喋っちゃだめだよ!ほらこれ飲んで!」

穂乃果「飲ませてあげる。頑張って口あけてね」

海未「んあ…………」

海未「…………」ゴクン

花陽「もうちょっとしたら、落ち着くと思うから……」

ことり「じっとしててね」

74: 2015/04/29(水) 23:44:33.86 ID:OiOunWSD.net
穂乃果「どう?落ち着いた?」

海未「……ええ」

ことり「いいですか?また抜け出そうとしたら―――」

花陽「また苦しい思いをするんだよ?」

海未「…………わかりました」

穂乃果「よし!じゃあ、ごはん食べようよ。今日は穂乃果が作ったの!」

海未「…………食べます」

穂乃果「いっぱい食べていいからね。足りなかったら穂乃果の分も……」

海未「……そ、そんなには」

75: 2015/04/29(水) 23:45:15.20 ID:OiOunWSD.net
―――――――――――――
――――――――
――――

海未(おしおきのあと、再び今まで通りの生活が始まりました)

海未(あいも変わらず、ごはん、お風呂、就寝はむこうの手に委ねられています)

海未(しかし、やっぱりそれ以外は特に制限はありません)

82: 2015/04/30(木) 22:34:35.41 ID:zE+HL2ce.net
海未(最近では作詞もするようになりました)

海未(ただし、私のソロか、Printempsのものだけですが)

海未(一度他の曲を作ろうとしたら、穂乃果に止められました)



海未(そうそう、曲と言えば小型の音楽プレイヤーをもらいました)

海未(曲を入れるのは穂乃果たちなので…………とても曲に偏りがありますが……)

83: 2015/04/30(木) 22:36:28.61 ID:zE+HL2ce.net
花陽「海未ちゃんの肌ってきれいだよね」

海未「そうでしょうか?」

花陽「うん!すべすべで…………」

海未「あ、あの、洗ってくれるんですよね?」

花陽「そ、そうだけど」

海未「背中を見つめられても困るんですが……」

花陽「ああ!ごめんなさい…………すぐに洗いますっ」

海未「いえ、別にそんな急いで洗わなくても……」

海未(…………ちなみに素手で洗われます。もう慣れました)

84: 2015/04/30(木) 22:39:00.59 ID:zE+HL2ce.net
穂乃果「海未ちゃんあーんして?」

海未「あー…………」

穂乃果「どうかな?今日は中華にしてみたんだけど」

海未「中華は私も得意ですが、私のよりおいしいです」

穂乃果「よかった。おいしくないって言われたら、どうしようかって……」

海未「別にそこまで味にうるさくないですが…………」

穂乃果「でも、海未ちゃんが食べてくれるんだもん」

穂乃果「絶対おいしいもの食べてもらいたいよ」

海未「…………いつもありがとうございます」

85: 2015/04/30(木) 22:40:54.54 ID:zE+HL2ce.net
ことり「………………」

海未「あの、そろそろこれ、やめませんか?」

ことり「気にしないでね?」

海未「だから気にしますよ……」

ことり「大丈夫、汚いとか思わないよ」

海未「だからそういうのじゃないって!いつも言ってるじゃないですかぁ!

ことり「ね?早くしよう?」

海未「恥ずかしくて出ませんよ!」

ことり「慣れてください!」

海未「慣れません!早くお手洗いから出てってください!」

86: 2015/04/30(木) 22:43:45.78 ID:zE+HL2ce.net
ことり「今日はどうやって寝る?」

穂乃果「そうだね……今日は穂乃果が海未ちゃんの布団!」

花陽「昨日も穂乃果ちゃんだったよぉ!」

ことり「じゃあ今日はことり♪」

海未「…………昨日もなんだかんだ言って、三人とも私の布団でしたよね」

穂乃果「そうだっけ?」

花陽「そ、それじゃあ今日も!」

ことり「四人で一つの布団!」

海未「やめてください。暑苦しすぎて寝れません」

87: 2015/04/30(木) 22:45:33.91 ID:zE+HL2ce.net
「スキスキ♪」

「ぷわぷわ♪」

「スキスキ♪」

海未(言葉に加えて、度々歌を聞かされます)

海未(もう何度も何度も…………)


「ぷわぷわ♪」

「スキスキ♪」

「ぷわぷわ♪」


海未(強烈です……こっちもぷわぷわしてきます……)

海未「………………」

海未(ぷわぷわ…………)

海未(なんだか…………ふふ……) 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

88: 2015/04/30(木) 22:49:01.52 ID:zE+HL2ce.net
―――――――――――――
――――――――
――――

海未(どれだけの月日が経ったでしょうか。数十日は経ってます)

海未(まだ少し寒いな。そう感じる日も少なくなって)

海未(暑さで、うだり。寒さで凍える)

海未(この部屋の中で、そんな経験をしなくてはいけないのでしょうか)

海未(…………いつまでここに、閉じ込められていればいいのです?)

海未(……………………)

89: 2015/04/30(木) 22:50:53.97 ID:zE+HL2ce.net
――――――――
――――


海未「よし……数学は大方終わりですね」

海未「次は英語をやりましょうか」

ことり「あ、海未ちゃん。ちょっと聞いてほしいことがあるの」

海未「ん?どうしましたか?」

ことり「あのね、ちょっと私たち用事があって……」

海未「用事ですか」

ことり「うん」

90: 2015/04/30(木) 22:52:16.01 ID:zE+HL2ce.net
ことり「それでね、今日のごはんまではいるんだけど―――」

ことり「お風呂や寝るのは一人になっちゃうの。いい?」

海未「ええ、大丈夫ですが」

ことり「ごめんね、海未ちゃん……」

海未「しょうがないですよ、用事があるんですから」

ことり「……あ、絶対に外には出ないでね?」

海未「わかっています」

91: 2015/04/30(木) 22:54:37.51 ID:zE+HL2ce.net
花陽「ごめんね海未ちゃん。ちょっと早いけど、ごはんだよ」

海未「ありがとうございます」

花陽「時間がないから……一人で食べてもらえると、その……助かります」

海未「わかりました。箸……もありますね。大丈夫です」

花陽「じゃあね海未ちゃん。ちゃんとここにいてね?」

海未「ええ。いってらっしゃい、花陽」

92: 2015/04/30(木) 22:58:50.77 ID:zE+HL2ce.net
海未「…………本当に行ったんでしょうか」

海未(私を信用してくれた、ということなのですか……?)

海未(それとも―――)

海未「……まずはごはんですね」

海未「いただきます」

93: 2015/04/30(木) 23:00:37.00 ID:zE+HL2ce.net
海未(本当に誰も部屋に来ません…………)

海未(一人じゃ部屋から出られないんですから)

海未(風呂に入れないじゃないですか!)



―ガチャ

穂乃果「………………」

海未「あれ?穂乃果はいるんですか?」

穂乃果「………………」バサ

海未「バスタオルと着替えですね。今から入りますか?」

穂乃果「………………」

94: 2015/04/30(木) 23:02:44.36 ID:zE+HL2ce.net
海未(……何も言わずに出て行ってしまいました)

海未(用事があるのは二人だけ。ということでしょうか?)

海未「………………」

海未(……タオルの上に、前のように手紙が)


『ごめんね、お風呂は一人で入ってね。布団は入浴中に準備するよ』


海未(…………穂乃果はここにいるみたいですね)

95: 2015/04/30(木) 23:04:31.32 ID:zE+HL2ce.net
海未(風呂には何事もなく入れました)

海未(部屋の戸は、穂乃果が開けておいてくれたみたいです)



海未(さて、どうしましょうか…………)

海未(今が脱出のチャンスに見えますが―――)

海未(うかつに出ようとすれば、また…………)

海未(…………)

96: 2015/04/30(木) 23:07:54.86 ID:zE+HL2ce.net
海未(今回のことりと花陽の言葉は露骨でした)

海未(まるで、今がチャンスだといわんばかりの)

海未(きっとこれは罠ですね……)



海未(とりあえず、勉強の続きでもしましょう)

海未(ええと……英語です。英語)

97: 2015/04/30(木) 23:10:17.20 ID:zE+HL2ce.net
――――――――
――――


海未(特に動きはありません…………)

海未(そろそろ眠くなってきましたし、もう寝ましょうか……)

海未(電気を消して―――)

海未「おやすみなさい……」



海未(一人だと少し寒いです……)

98: 2015/04/30(木) 23:12:17.98 ID:zE+HL2ce.net
――――――――
――――

未「ううん…………ん、朝ですか」

海未(と言っても、真っ暗でわかりませんが)

海未「…………うう、なんか寒いですね」

海未「体も震える寒さです…………」

海未「……お手洗いに行きますか」

99: 2015/04/30(木) 23:14:26.75 ID:zE+HL2ce.net
海未「リビングに誰もいません……」

海未(……穂乃果はどこに行ったんでしょうか)

海未(お手洗いや、風呂にはいなかったですし……)

海未(もう一つの部屋ですかね)

海未「………………」

海未(カギがかかって―――いない)

100: 2015/04/30(木) 23:18:23.13 ID:zE+HL2ce.net
海未(開けた部屋の中は、ごく普通の部屋。私の座っていたであろう椅子もありました)

海未(しかし、部屋の中にも穂乃果はいませんでした)

海未(ことりも花陽も帰ってきてませんし……)

海未(…………)

海未「ちょっとだけ。ちょっとだけ外の様子を……」

101: 2015/04/30(木) 23:23:05.92 ID:zE+HL2ce.net
海未(玄関の戸は、普通のつまみで開け閉めするカギのみです)

海未(特殊なカギもいらないみたいで―――)

海未「つまみを…………うう、寒さで手が震えて……」


―カチャン

海未「ふう、やっとカギが開きましたね…………」

海未(ここまで、誰にも止められていません…………)

海未(あとは開けるだけ…………)

102: 2015/04/30(木) 23:26:11.01 ID:zE+HL2ce.net
海未(…………扉の向こうは―――)

海未(至極普通の住宅街です)

海未(映画や小説で、閉じ込められたと思っていたら、実は保護されてた)

海未(そういうのもありますが。違いました)

海未「それはそうですよね……」


海未(どうやら、今は夜中か早朝でしょう)

海未(真っ暗ですし、とても静かです)

103: 2015/04/30(木) 23:30:39.61 ID:zE+HL2ce.net
海未(それにしても寒い。もう春ですし、暖かいはずですが)

海未(やはり日が出ていないからでしょうか。相当冷えます……)

海未(……春といえば。そういえばPrintempsも春という意味でしたね……)



海未(三人はいないみたいです……)

海未(外に出てなお、とめに来ないということは―――)

海未(本当にどこかに出かけたようですね…………)

104: 2015/04/30(木) 23:36:51.81 ID:zE+HL2ce.net
海未(見慣れない風景です。うちからは遠いのでしょうか……?)

海未(まずは……人がいるところに行きましょう)

海未(交番か何かがあればいいのですが)



海未「どっちに向いましょうか…………」

海未「あっちか……こっ……え……ぅ……」

海未「………な……う……ぁ……」

海未(…………なんで……なんで)

105: 2015/04/30(木) 23:39:12.68 ID:zE+HL2ce.net
海未(……体が痛い。前にも経験した、あの痛みです)

海未(あのクスリは飲まされていないはずなのに…………)

海未「……あがぁ…………ぁ……」

海未(…………痛い)

海未(痛い痛い痛い痛い痛い痛い)

海未(……………………)

106: 2015/04/30(木) 23:42:12.59 ID:zE+HL2ce.net
海未「……かは……っぁ…………」

海未(も……う……無……理……)

海未(……誰…………か……助…………け……)


――――――――
――――

107: 2015/04/30(木) 23:45:09.57 ID:zE+HL2ce.net
穂乃果「海未ちゃん!」

花陽「海未ちゃん!」

ことり「海未ちゃんっ!」

海未「………………ん……」

ことり「あっ!気づいたみたいだよ」

花陽「よかった!海未ちゃん?聞こえる?」

海未「……あ……花陽?」

花陽「そうだよ?ちゃんと聞こえてるね?」

海未「は……い……」

108: 2015/04/30(木) 23:46:44.38 ID:zE+HL2ce.net
穂乃果「海未ちゃん!」

ことり「海未ちゃぁん!」

花陽「海未ちゃん!」

海未「…………大丈夫です。聞こえてます」

穂乃果「海未ちゃん!」

ことり「大丈夫?動ける?」

花陽「痛くない?」

海未「ええ、もう平気です」

ことり「よかったぁ……」

109: 2015/04/30(木) 23:50:16.12 ID:zE+HL2ce.net
海未「この部屋まで運んだんですか?」

花陽「そうだよ。外で倒れてるから運んできたの」

穂乃果「できるだけそーっと、運んだけど……変なところない?」

海未「特には……」

ことり「ホントに良かった……ケガでもあったら大変だもん」

花陽「そうだよね……」

110: 2015/04/30(木) 23:53:44.04 ID:zE+HL2ce.net
穂乃果「ところで、海未ちゃん。何で外にいたの?」

ことり「絶対に外に出ないように言ったよね?」

花陽「なんで。何で出ちゃったの?」

海未「……それは……その…………」

ことり「………………」

穂乃果「……やっぱり外に出たいの?」

海未「………………」

112: 2015/04/30(木) 23:56:39.67 ID:zE+HL2ce.net
ことり「ずっといたんだよ」

海未「…………どこにですか」

穂乃果「海未ちゃんの近くに。見てたんだ」

ことり「私たちが居なくなったら、海未ちゃんはどうするかなって」

花陽「海未ちゃんの気持ちを確かめたかったの。いないふりしてね」

穂乃果「海未ちゃんが部屋にいたままなら。それならよかったんだけど」

花陽「外に出ちゃったってことは―――」



「「「私たちと暮らしたくないってことだよね?」」」

113: 2015/04/30(木) 23:59:00.01 ID:zE+HL2ce.net
海未「…………そうなりますね」

ことり「いいよ。それなら、家から出してあげちゃいます」

海未「本当ですか?」

ことり「うん」

海未「ではさっそく―――」

穂乃果「待って!」

花陽「話は最後まで聞いてください」

海未「……わかりました。しかし、何を聞いてもここから出る。それは変わりません」

ことり「ふーん…………」

114: 2015/05/01(金) 00:00:45.93 ID:cS0Q79Si.net
穂乃果「じゃあ話すね。まずは―――この前のおしおきはどうだった?

海未「……思い出したくもないです。苦しかったですよ。全身が痛くて」

花陽「だよね。苦しかったよね?」

海未「ええ…………」

ことり「それじゃあ、いまさっきのはどうだった?」

海未「………………」

花陽「言いたくないくらい、辛かったみたい」

穂乃果「そうだよね。だって、あんなに…………」

115: 2015/05/01(金) 00:02:35.03 ID:cS0Q79Si.net
花陽「ねえ、海未ちゃん。あれはどうして起こると思う?」

海未「どうしてって、あなたたちがクスリを飲ませたじゃないですか!」

ことり「ホントにクスリのせいだと思う?」

海未「…………違うんですか?」

穂乃果「だって、海未ちゃんさ。今日クスリ飲んでないよね?」

海未「そ、それは―――私が寝ている間に飲ませた。そうでしょう?」

ことり「痛みが治まったのは?」

海未「それも、私が気を失っている間に飲ませて…………」

116: 2015/05/01(金) 00:04:44.29 ID:cS0Q79Si.net
穂乃果「…………海未ちゃん面白いね」クスクス

海未「……何がです」

花陽「海未ちゃんに飲んでもらったクスリは―――これです!」

海未「……胃薬?」

花陽「そう、胃薬です!市販のやつだよ」

穂乃果「海未ちゃんは胃薬飲むと、体が震えて激痛が走るのかあ」

ことり「たいへんだねっ♪」

海未「………………」

117: 2015/05/01(金) 00:06:31.05 ID:cS0Q79Si.net
海未「それなら、あの痛みはどうして……」

穂乃果「どうしてだろうね?よーく考えてみて」

花陽「いつもと何か違ったこと、ないかな?」

海未「…………手紙……ですか?」

ことり「そうだね。両方とも手紙があったよね」

118: 2015/05/01(金) 00:08:24.14 ID:cS0Q79Si.net
海未「…………紙に何か塗られてた?」

穂乃果「……もう!ホントに鈍感!」

花陽「私たち、あの時も昨日も……海未ちゃんに声を聞かせなかったよね?」

海未「…………ええ。まったく喋りませんでしたね」

穂乃果「だからなんだ」

海未「………………意味が分かりませんが」

ことり「実はね―――海未ちゃんはPrintemps中毒なの」

119: 2015/05/01(金) 00:10:40.47 ID:cS0Q79Si.net
海未「Printemps中毒…………」

花陽「そうです。定期的に私たちの声を聴かないと、禁断症状が出ちゃうの」

穂乃果「最初は寒気がするとか、身体が震えるくらいだけ」

ことり「だけど…………声を聴かずにいると、症状はひどくなって」

花陽「やがて、氏ぬような痛みが全身を襲っちゃう」

海未「そ……そんなバカなことがありますか!」

穂乃果「あるんだよ。身をもって経験したよね?」

海未「で、ですが―――」

120: 2015/05/01(金) 00:14:27.23 ID:cS0Q79Si.net
海未「ただ声を聴いているだけです。それで中毒だなんて!」

花陽「……ごはん、おいしかったかな?」

海未「おいしかったですが」

ことり「苦労したんだよ?どうやったらばれずに食べてもらえるか」

穂乃果「でもよかったよ。海未ちゃん、全然気づいてないんだもん!」

花陽「ちょっとずつクスリを入れてたのにね」

海未「…………う、ウソですよね?」

ことり「ホントです♪」

121: 2015/05/01(金) 00:16:47.70 ID:cS0Q79Si.net
花陽「クスリの効果は、服用した後に受けた刺激の中毒にしちゃうの」

海未「……刺激」

穂乃果「そう、刺激。もう何の事だかわかるよね?」

海未「あの目隠しの…………」

ことり「そうですっ!あれで、音の刺激だけを受けてもらいました!」

穂乃果「いろいろ考えたんだよ。刺激で一番何がいいか」

花陽「触ったり、見てもらったり…………」

穂乃果「それでね。声を聴いてもらうのが一番いい、ってことになったんだ」

122: 2015/05/01(金) 00:19:04.92 ID:cS0Q79Si.net
海未「そ、そんな…………そんなこと…………」

穂乃果「なんならもう一度苦しんでみる?いいよ、協力してあげる」

海未「……………………いやです」

花陽「……心配しないで」

ことり「大丈夫だよ。そんなことしない」

穂乃果「もっと簡単に確かめられるもん」

123: 2015/05/01(金) 00:20:51.89 ID:cS0Q79Si.net
花陽「私たちの声を聴き続けると、どうなった?」

海未「聴き続けると…………?」

穂乃果「たとえば歌とかを聞いてて―――」

海未「…………あ……ああ…………」

海未(…………あの、視界を奪われ声を聞かされた時)

海未(最初は何にも感じませんでした。しかし―――)

124: 2015/05/01(金) 00:23:08.92 ID:cS0Q79Si.net
ことり「心当たり、あるみたいだね」

花陽「目隠しして声を聴いている海未ちゃん。最初は口は一文字だったけど―――」

穂乃果「だんだん繰り返すたびに緩んできて」

ことり「最近では、だらしなくあけっぱなし。えへへ、気に入ってくれたんだね♪」

穂乃果「気持ちよくなってきちゃう。そうだよね?」

海未「……あ……ぁ…………」ポロポロ

穂乃果「…………どうする?試しに耳にささやいてあげよっか?」

花陽「試す必要もなさそうだよ」

125: 2015/05/01(金) 00:25:49.07 ID:cS0Q79Si.net
ことり「録音された音源で、何とかしよう。そんなこと考えないでね?」

花陽「海未ちゃんは私たちの声、聴き過ぎちゃったの」

穂乃果「生じゃないと満足できない身体なんだよ」

ことり「海未ちゃんはね……もう私たちなしじゃ、生きていけないの」

海未「…………い………ゃ……」

穂乃果「怖がらないで。大丈夫だよ」ナデナデ

花陽「ずっと一緒にいるからね」

ことり「もう苦しくなることはないよ?」

126: 2015/05/01(金) 00:27:59.51 ID:cS0Q79Si.net
ことり「これからも、もっともっと声を聞かせてあげる」

花陽「そうすればね―――今は身体だけだけど……」

穂乃果「最後には心も。心も私たちなしでは、ダメになっちゃうんだから」

ことり「楽しみだね、海未ちゃん?」

海未「…………ぅ……ぁ」

127: 2015/05/01(金) 00:29:24.68 ID:cS0Q79Si.net
海未(…………どうしてこうなってしまったんでしょうか)

海未(私はこれからもあの部屋に氏ぬまで―――)

海未(…………そんなの)

海未(そんな悲しい、辛いこと……耐えられません)




海未(でも――――――)

海未(こんな感情すら、三人の声で壊されてしまうのかも…………)

海未(…………あの声を、歌を聴いている時に私は)

海未(今までに感じたことのない幸福感を)

海未(確かに、感じてしまっていたのですから―――)

128: 2015/05/01(金) 00:31:10.28 ID:cS0Q79Si.net
穂乃果「どうかな?話を聞いて考えは変わった?」

花陽「最後にもう一度、海未ちゃんに聞くよ」

海未「………………」

ことり「選ばせてあげる」

花陽「私たちと一緒に、ここであまーい生活をずぅーとするか―――」

穂乃果「それとも。ここから出て、地獄のような苦しみを味わいながら生きるか」

ことり「どっちがいいかな?」

129: 2015/05/01(金) 00:33:37.47 ID:cS0Q79Si.net
ことり「海未ちゃん。選んでいいよ?」

海未「…………ヒグッ……わ……わたし……は……」

穂乃果「海未ちゃんは?」

海未「……ぅ……ずっと……あなた……たちと……」

花陽「私たちと?」

海未「………いっしょに…………暮らし……たいです……」

130: 2015/05/01(金) 00:35:08.05 ID:cS0Q79Si.net
ことり「…………えへへ♪信じてたよ海未ちゃん!」

穂乃果「やっと言ってくれた!穂乃果嬉しいよ!」

花陽「これでずっと海未ちゃんと一緒♪」

ことり「ことりの夢、かなっちゃいました!」

穂乃果「―――これからもずーと一緒!よろしくね、海未ちゃん!」

海未「………………」



「………………はい」



おわり

131: 2015/05/01(金) 01:19:13.20 ID:PmPDDXsy.net
一転攻勢うみみくん

132: 2015/05/01(金) 01:52:54.65 ID:T9hxpd8I.net
救いはないのか…

137: 2015/05/01(金) 08:14:35.53 ID:yyLAemIT.net
抗うルートはないのかな~(チラッ

引用元: 海未「春にとらわれて」