1: ◆n0J2IfBFxY 2015/01/12(月) 09:28:36.18 ID:RMCy4A7+.net
SS2作目、ですっ!
色々と拙いと思いますが、よろしくお願いします。
注意
・地の文多いです
・独自解釈あり、かも
・書き溜めがあんまりないのでちまちま更新します
・予定では性描写なしです

ではちょっぴり投下します。

2: 2015/01/12(月) 09:30:24.58 ID:RMCy4A7+.net
ことりはぷんぷんです!

なぜって、そりゃあ。わたしの可愛い可愛い穂乃果ちゃんのことを、みーんなが狙ってるみたいなの。

あ、ううん! みんなに怒ってるんじゃないのよ? だって穂乃果ちゃんを好きになるのは仕方ないもん。

ことりが怒ってるのは、ことり自身に、なの。

だってそうでしょ? ことりは、穂乃果ちゃんの幼馴染なんだもん。なんでもっと早く穂乃果ちゃんをモノにしてなかったんだろ~って!

まぁ、ちゃんと理由もあるんです。聞いてくれますか?

3: 2015/01/12(月) 09:32:27.12 ID:RMCy4A7+.net
あれはねぇ、3年くらい前かな? 海未ちゃんにね、告白されたの。

「ことり、私、穂乃果のこと……」

海未ちゃんが言えたのは、そこまでだったんだけれど。ことりには十分、ううん、十二分に伝わってきたの。穂乃果ちゃんへの想いがね。

その時にね、ああ、負けたなぁっ、て。思っちゃったの。

えへへ、おかしいですよね? だって相手は海未ちゃんだよ?

負けるも何も……海未ちゃんには惨敗の二文字の方が似合うんです。けれど……なんだか、自然に。

ことり、負けちゃったなぁ。なんて思ったんです。

きっとそれは、想いの強さ、というか。

ことりは、穂乃果ちゃんも大好きだけど、愛しているけれど、やっぱり、あのモデルさんや俳優さんもカッコよくって、素敵だなぁ、って思っちゃうんです。

お母さんに相談してみたんだけど、


「ことり、それはバイセクシャルって言うのよ。やっぱり親子よねぇ……お母さんも昔はねーー」


なんて、遠い目をされちゃったの。

4: 2015/01/12(月) 09:40:08.04 ID:RMCy4A7+.net
なんだか、理解したような、したくないような……。

お家に、近くのおっきな病院の院長さんの奥様の写真がたくさんあったのと、何か関係があるのかな? なんて、当時はのんきに考えました。
今思うと、真姫ちゃんのお母さんなんだよねぇ……。

と言うことは、お母さんって、真姫ちゃんのお母さんのことが好きだったのかぁ。

お父さんも、お母さんのそういうところを承知で結婚したんだって言ってたの。なんていうか、すごいなぁって。
お父さんはやっぱり、素敵な人です!

あ、そうそう。ことりの初恋も、実はお父さんなんだよ! えへへ。

25: 2015/01/13(火) 08:55:05.16 ID:rAdeTL7m.net
お話が逸れちゃったけど、それで、海未ちゃんに聞いてみたの。

「海未ちゃーん? ことりのこと、好き?」

「はぁ、何言ってるんですかことり。そんなの当たり前でしょう? 私は、ことりのことも、凛や花陽の事も、もちろん大好きですよ?」

「ふぅん、そっか。えへへ~、ありがとっ!
ところで、穂乃果ちゃんのことは? この間穂乃果ちゃんのことが~って言ってたけど」

「なななななななななに言ってるんですか当たり前じゃないですかことりっ! わたっ私は穂乃果の事ももちろんすすすすーーーーああっ、やっぱりダメですっ!!」

こんな風に、純粋で純粋すぎる海未ちゃんの想いには、なんだか勝てないなぁって。

そりゃぁ、ことりだって。穂乃果ちゃんのことが大好きです。大好きすぎて、ことり、穂乃果ちゃんのことを想ってるとちょっぴり湿っぽくなっちゃうんです。いろんな意味で。

あっ、今のは、お父さんにもお母さんにも内緒ですよ♥︎

でもその時点で、不純かなぁーって。

本当は違うと思うの。だって、好きの延長にはやっぱり、えOちなことがしたいっていう感情も、もちろんあるんだと思うの。

それでも、海未ちゃんみたいな、すきすきぷわぷわ~ってした想いとは、なんだか違うかなぁ。って、思うの。

26: 2015/01/13(火) 08:56:45.73 ID:rAdeTL7m.net
ん~まあとにかく、海未ちゃんの純真で無垢な想いには勝てないかなって思って、穂乃果ちゃんに想いを伝えることはしなかったの。
今思えばそのせいだよね!

28: 2015/01/13(火) 09:01:05.09 ID:rAdeTL7m.net
ある日、真姫ちゃんに呼び出されて。いやーな予感がしたんだけれど、案の定。

「わ、私ね? ちょっと変なこと言うんだけど……引かないでね?
その、穂乃果のことがね。好きになっちゃったみたいなの。
女同士なのに、気持ち悪いわよね……」

って。知性溢れる美貌でそんなこと言われたら、ますます穂乃果ちゃんに想いを伝えるのが難しくなっちゃった。

「ううん、真姫ちゃんはおかしくなんてないよ。穂乃果ちゃん、可愛いもん!
それにね、穂乃果ちゃんも、あと海未ちゃんもなんだけど、女の子にモテモテなの!
あとは、絵里ちゃんとか」

「えっ? 穂乃果って女の子にモテるの?
海未とエリーは、まあわからなくはないわね。クールビューティーって言うの? ヘタな男の子よりカッコいいし」

「それを言うなら、真姫ちゃんもクールビューティーだよねっ!
ことり、真姫ちゃんのことカッコいいと思うなぁ……真姫ちゃんもモテるでしょ?」

さすがに幼馴染でもないし、学年も違うから、真姫ちゃんの人気はあんまり窺い知れないんだよね。

でもでも、ライブの後に真姫ちゃんに声援を送るファンの子達がたーくさんいたの!

だから、真姫ちゃんもきっとモテモテなんだろうなぁ。なんて♥︎

30: 2015/01/13(火) 09:09:46.05 ID:rAdeTL7m.net
「うぇえっ!? な、何言ってんの!
私がモテる? ありえないでしょ!」

こういう、自覚のないところがまた、真姫ちゃんらしいというか。クールビューティーだけどとーってもかわいいところだと、ことりは思います!

「えぇ~、真姫ちゃんは可愛いし、クールビューティーだし、モテないわけないと思うんだけどなぁ~」

「っ、んもうっ! そ、れ、よ、り!
穂乃果がモテるって本当なの?
私、好きになっておいてなんだけれど、穂乃果はモテるってイメージにないのよね。
あの子ほら、おバカさんだし、あんまり空気読めないところあるし、猪突猛進だし……それならほら、ことりこそモテそうなものだけれど?」

「んー、ことりは、モテるとは思うんだけど、女の子にモテるわけじゃないと思うの。
オトノキって女子校だから、あんまりモテるっていう実感がないっていうか……」

「あ、モテるのは認めるのね……潔いっていうか、なんていうか。ことりってそんなキャラだったのね。意外」

へぇ、意外なんだぁ。真姫ちゃんってピュアですね!

ことりって、自分ではそこそこ、いや、かなり可愛いと思うし、男の子にはモテると思ってるの。

性格だって、嗜好だって、女の子らしいぷわぷわ~なんだもん!

でもね、穂乃果ちゃんや海未ちゃんには、やっぱり負けちゃう。純粋な子には勝てません。

「んー、ことりは、あくまでもピュアピュア~ってわけじゃなくって、小悪魔でもぷわぷわ~ってかんじだから」

「あー……なんとなくわかるわね。ぷわぷわっていうのはわからないけど」

「ぷわぷわは、ぷわぷわだよ~♥︎
すきすき、ぷわぷわ~」

ことりは、自分でも何を言ってるのかよくわからなかったので、ちょっぴり茶目っ気を出してごまかします。

すると、真姫ちゃんは、

「きみに、とんでけっ! すきすき、ぷわぷわ~……って! 何歌わせてんのよ! 意味わかんない!」

なんて。自分で歌ったくせにね? クスクス♥︎

39: 2015/01/13(火) 23:51:11.06 ID:wmNUCg4P.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


懐かしいことを思い出したので、ちょっとお話しさせてくださいね?

あれは、そう、ちょうど海未ちゃんの告白の一ヶ月くらい後だったかなぁ?

たしか、穂乃果ちゃんの電話から始まったのでした。



~回想~



《♪きみにっ! とんでけ! すきすきぷわぷわ~☆♪》

あ、電話だ。この着信音は穂乃果ちゃんだ!

「もしもし、穂乃果ちゃん?」

『あっ、もしもし! ことりちゃん!
明日お休みでしょ? どこか出かけない?
ちょっと穂乃果お洋服買おっかなぁと思って! ことりちゃん選ぶの手伝ってよ~』

ちゅんっ!? もしかしてデート!? これはデートですかっ!?
……なんて。ひと月ほど前ならまさに巣から飛び立つ小鳥のような羽ばたきっぷりを見せていたんですけどね。

今のことりは海未ちゃんの想いを知ってしまった。もちろん、穂乃果ちゃんを想う心は消えてないんだけれど。

要は、想いを表に出すのが怖いの。
でも、その想いも、思いも。表に出さず。

「うん、いいよ~! 穂乃果ちゃんに似合うとびっきりかわいいかわいいお洋服、選ぼうねっ!
……なんなら、下着屋さんにも、行く?」

なぁんて、下心を覗かせてみたり、想いにぜーんぶ蓋をするわけでもなかったり。こんなことり、ずるいですか?

でも、ずるくてもいい。卑怯でも、臆病でも。

それがことりのやり方です♪

40: 2015/01/14(水) 00:11:49.14 ID:nj3hFJ2j.net
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「(……で? ことりは何でここにいるんですか?)」

「(……海未ちゃんこそ、何でここに?)」

「(私は……その。穂乃果に服を買いに行こうと誘われて……)」

「(ことりもそうなの。穂乃果ちゃん……3人で、って言わなかったからてっきり2人きりだと思ったのに)」

「(デートのお誘い、ではなかったのですね……うう、張り切った私がバカみたいです)」

「ねぇねぇ二人とも! 何こしょこしょばなししてるのーっ! 穂乃果も混ぜてよぉ!」

そうなんです! デートのお誘いじゃあ、やっぱりなかったみたい。海未ちゃんがあからさまに凹んでる……んー、なんだか申し訳ないなぁ。
でも、やっぱりことりはずるいから、海未ちゃんの為に二人きりにしてあげることなんて、できません。
ことりだって、穂乃果ちゃんと一緒に出掛けたいんだもん! もん!
なんて、ことりのわがままなんですけどね。

43: 2015/01/14(水) 00:22:35.34 ID:nj3hFJ2j.net
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「じゃっじゃじゃーん! ことりちゃんセレクト! ほのくまさんだぞぉー! がおーっ!」

ことりが選んだお洋服は、白いくまさんパーカーに、グレーのトップス、それから、濃い緑のチェックスカートです!

んー、とっても似合ってる♥︎

「穂乃果ちゃん! すっごく似合ってる! 可愛い~♥︎」

「こ、これは……さすがことり、といった組み合わせですね。
ふわふわもこもことしていて、穂乃果の魅力を引き出しています。
なんというか、有無を言わさぬ素晴らしさがありますね」

海未ちゃんにここまで褒められるなんて!
確かに穂乃果ちゃんの魅力をうまく引き出せたと思うけど……。

さすがに照れるなぁ。

まぁ、有無を言わさぬってところは、ちょっと引っかかる表現だけど。

「(ことり、ラヴィンユー)」

海未ちゃんがことりにだけわかるようにそう囁く。海未ちゃんって……穂乃果ちゃんのことになるとえらく変な子になるんだよね。
ラヴィンユーって。

44: 2015/01/14(水) 00:27:58.99 ID:nj3hFJ2j.net
「ありがとうございましたー! またお越しくださいませ!」

ショップの店員さんが気持ちよく送り出してくれる。結局、穂乃果ちゃんはことりセレクトのもふもふくまさんコーデを買っちゃったみたいです。

海未ちゃんも可愛いお洋服を選んでいたんだけど、それは、

「んー、可愛いけど、穂乃果よりもことりちゃんに似合いそうだねぇ。ことりちゃん着てみなよ!」

という穂乃果ちゃんの一言で、ことりが試着することになったの。すると海未ちゃんも穂乃果ちゃんも大絶賛!

結局、海未ちゃんコーデのお洋服はことりが買っちゃいました♥︎

白いワンピースにベージュがかったニットのカーディガン。すっごく可愛い!

海未ちゃんってやっぱり、センスがあるなぁ、なんて。

そうだ! お礼に海未ちゃんのお洋服も見繕っちゃおう!

次のお店に向かって、出発進行、です♪

48: 2015/01/14(水) 09:14:17.82 ID:nj3hFJ2j.net
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「……穂乃果、流石にこれは」

「えーっ! 海未ちゃん、似合ってるよ! 可愛いよ! 穂乃果、ひょっとしてセンスある?」

穂乃果ちゃんが選んだのは、薄いピンクのワンピース。海未ちゃんに、あえてものすごーく可愛いお洋服を着せちゃうなんて、穂乃果ちゃんやるぅ!

大きなリボンが胸元を飾っているのもポイントだよね?
海未ちゃんの控えめなバストも、これなら美しく見えちゃいますね!

なにより、リボンのワンポイントがついたカチューシャが、海未ちゃんの凛々しい黒髪に映えます。これは……穂乃果ちゃん、わかってるぅ!

「海未ちゃん、こういう服を着ると、日舞の家元のお家に住んでるイメージが湧かないねぇ~。
こんな可愛い子が日舞も、剣道も、なんでもできちゃうなんて……素敵だと思うなぁ」

「うんっ! ギャップって奴だよね、ことりちゃん!
お休みの日にこの服を着て、お父さんをびっくりさせちゃおうよ~」

「なっ、う、家は関係ないじゃないですかっ!
……でも、変な話、鏡に映った自分が自分じゃないみたいで。新鮮ですね。
ただ、恥ずかしいですけれど……あの、この下にズボンというのは」

「ダメだよ海未ちゃん! 海未ちゃんってば脚が綺麗なんだから、ミニスカートとか短いワンピースもどんどん着てみようよっ! ファイトだよっ!」

穂乃果ちゃん強引だなぁ。いいぞー、もっとやっちゃえ♥︎

49: 2015/01/14(水) 09:22:34.22 ID:nj3hFJ2j.net
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

店員さんが丁寧に送り出してくれる。
海未ちゃん、すっかり上機嫌で、鼻歌なんか歌いながら微かに笑っています。

穂乃果ちゃんに脚を褒められたの、嬉しかったんだろうなぁ。クスクス♥︎

そういえば、脚と言えば、ことりの脚には傷があって、昔は結構気にしていたんです。穂乃果ちゃんと海未ちゃんのおかげで、いまはなんともないんですけれどね!

上機嫌な海未ちゃんに、ここぞとばかりにお願いしてみたの。

「ね、海未ちゃん! みんなでプリクラ撮らない?
せっかくかわいいお洋服買ったんだし、着替えて撮っちゃお♪」

「おっ、ことりちゃんナイスアイデア!
ねー海未ちゃん撮ろうよ撮ろうよ~」

「……そうですね! たまには、そういう格好で撮るのもありです!
さあ、そうと決まれば出発ですよ!」

わぁ、海未ちゃんはやい!
あのお洋服、ずいぶん気に入ってたんだね♪

50: 2015/01/14(水) 10:13:57.52 ID:nj3hFJ2j.net
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はい、とっても懐かしい、三年前のある日の思い出でした♥︎

なんだかんだ、3人でいるのはとっても居心地が良くって。

ことりってば、穂乃果ちゃんの事がとってもとっても大好きで、愛しているっていうのに、海未ちゃんの事も同じくらい大好きで、愛しているって、今更気付いちゃいました。

これも、恋なのかな? なんて。

どくん、どくん。

昔からの想いに、ようやく気付いちゃった。
わたし、穂乃果ちゃんだけじゃなくって、海未ちゃんにも恋をしてたんだね。

気付いてしまえばそれは当たり前のように、ことりの心に染み込んできたの。

ああ、そっか。って。

海未ちゃんに勝てないのも、この想いのせいなんだね?

そのとき、心に振り子が揺れてたの。

穂乃果ちゃんと、海未ちゃん。それぞれの方にゆらゆらと揺れる、迷いの振り子。

ゆらゆら、ゆらゆら。

止まることはもう、ないのかもしれないですね。

54: 2015/01/15(木) 03:19:11.22 ID:NR68JvMO.net
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時は7月。これからうだるような暑さが待ち構えているんだなぁ、って思うと、ちょっぴり身構えちゃいます。

季節は巡るって言うけれど、ことりは夏が結構好きです。

「ことりちゃんは、穂乃果ちゃんみたいにお外を走り回るタイプじゃないから、てっきり過ごしやすい春や秋が好きなんだと思ってた。意外です!」

なんて、花陽ちゃんは言うけれど。

夏になればアイスクリームやかき氷、それに、海未ちゃんも飲める炭酸のラムネだって美味しい季節なんだもん!

幸せな夏へ意識を先走らせていると、大変!

「あっ……もうこんな時間……!
練習、遅れちゃうよぉ~!!」

そうです、今日はμ'sの練習の日!

ぼーっとしてたら遅刻しそうになったなんて、ことり、口が裂けても、嘴が割れても言えません!
恥ずかしいんだもん!

慌てて言い訳を考えます。

ええっと……。

55: 2015/01/15(木) 03:24:18.11 ID:NR68JvMO.net
・寝坊した……!
→ぼうっとしてたよりもっと恥ずかしいから却下!

・お化粧してたら遅くなっちゃった!
→「練習をして汗をたくさんかくのに、なんでことりはお化粧なんかしたんですか?」って海未ちゃんに突っ込まれそう!
きれいのためなら仕方ない、とはいかないよねぇ……。

・女の子の日が来ちゃったの!
→それは大変……ことりちゃん、今日は見学にする? って穂乃果ちゃんに言われそう。それに、申し訳ないよねぇ。

・お腹の調子が……。
→ことりはアイドルだから、お手洗いには行かないんだよー?
って冗談はさておき、すっごい恥ずかしいもんね。これもないなぁ。

……よし、お母さんのお手伝いをしてたことにしよっと。お母さん、ごめんね!

お母さんは理事長だし、普段忙しくて家事まで手が回らないんだもん!

これは、本当のこと。今日は……あんまり忙しそうにしてなかったけど♥︎

今日は家事のお当番だったことにしちゃえ♪

56: 2015/01/15(木) 03:27:36.46 ID:NR68JvMO.net
あっ、いた! 穂乃果ちゃんももう来てる……珍しくことりが一番最後です。

なにやら話し込んでるようで、近づくとどうやらまた海未ちゃんがキザな言葉を穂乃果ちゃんにかけているところでした。

「またまた。私は"うみ"ですから、所詮は太陽の光を反射しているにすぎないです。太陽……穂乃果みたいなね」

ひゅぅ。なんだかカッコいいなぁ、海未ちゃん。こんなことをさらっと言えるから、海未ちゃんは女の子にもモテるんだね!
ことりも言われたいなぁ~。

……あっ、目があった。海未ちゃんと、穂乃果ちゃんと。

どきどき。迷いの振り子は止まるどころか、立ち漕ぎをしたブランコみたいに大きく大きく揺れています。
ああ、二人とも素敵……!

「ごめんね、ちょっとお寝坊しちゃって……待った?」

あっ、しまった! 恥ずかしいから却下したはずの言い訳を使ってしまいました!
やーん、どうしよう!

「いえ、ことり。私達も今しがた着いたばかりです。ね、穂乃果?」

……って、今更この2人相手に恥ずかしいも何もありませんでした。だって、何年も一緒なんだもん♥︎

それにしても、さっきのセリフ……ことりにも言ってもらおうかなぁ。お願いしたら、海未ちゃんなら言ってくれると思うの、

「うんっ! たった今さっき、つい2分ほど前に着いたばかり。海未ちゃんが朝から、これから真夏になろうかっていうのに真冬のごとく寒いこと言うからちょっと待ち遠しかったけど」

あ、穂乃果ちゃんそんな風に思ってたんだ。

海未ちゃんは今にも「そんな! 決まったと思ったのに!」と言いたげな視線を穂乃果ちゃんに投げかけていました。まるでご主人様に遊んでもらえない子犬みたいで可愛かったです♥︎

61: 2015/01/15(木) 18:43:03.41 ID:NR68JvMO.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


学校について、練習着に着替えたことりたちは、ストレッチをはじめたの。

いつもなら穂乃果ちゃんと組むんだけれど、穂乃果ちゃんが何でだか希ちゃんと組み始めたの!

まぁ、気分転換のつもりだろうなぁ、なんて思いながら。さて、誰と組もうかなぁ。

「ことり、私と組まない?」

そう声をかけてきたのは、真姫ちゃんでした。

「ちょっと話したいこともあるしね……うん、ことりと柔軟、しよ?」

「話したいこと……? 新曲の件かしら?
いいわね、衣装のイメージと歌のイメージを考えながら柔軟しましょ」

「そうなのっ! 衣装のことでちょっと相談があって……。
よかったら聞いてくれる?」

ちょうどよかった! 実は、練習が終わった後にお話ししようと思ってたんだよね。
衣装の事と、それと……穂乃果ちゃんのことも、ね!

62: 2015/01/15(木) 18:46:16.71 ID:NR68JvMO.net
「ーーそれにしても、ことりって体が柔らかいわよね。何食べたらこうなるのかしら……」

「……真姫ちゃんは、体、硬いよねぇ。
んー、特別なものを食べてたりするわけじゃあないんだけど……お風呂上がりのストレッチが効いてるのかも♪
ことり、毎晩30分はストレッチしてるから」

ぐっ、ぐっ。真姫ちゃんに背中を押してもらいながら、そんなお話をしています。

真姫ちゃん、さっき背中を押してみたら、びっくりするくらい硬かったの!
まぁ、μ'sで活動していくうちに、いずれ柔らかくなるとは思うんだけど……くすくす♥︎

「そういえば、新曲の件。どんな衣装にするつもりなの? 軽くイメージしているのがあればそれでいいわ。なんてったってこの真姫ちゃんがそれに合う曲を考えるんだから!」

「衣装はねぇ、来週末に原宿に出かけて、古着屋さんで使えそうなのを見繕うつもりなの! それをお直しして……生地から買うよりも安く作れそうだし♥︎
方向性としては、んー、いわゆるファンシー系、っていうのかな? ふわふわ~もこもこ~ふわふわわ~♥︎ って感じのを考えてるのっ!」

「……なんとなくイメージできたわ。要するに、原宿でたまに見かけるようなフリフリの衣装になるのね? 口リータって言うのかしら……」

「そこまではフリフリさせないつもりだけど……真姫ちゃんが言うなら口リータにしようかな?
実は真姫ちゃん、口リータ好きだったりするの?」

「はぁっ!? なっ、何言って……い、い、意味わかんない!! それはことりの方でしょ!? あとはニコちゃんとか!」

「顔赤いよ? 真姫ちゃん。
興味はあるんだねぇ……だったら一緒に見にいこっ? ひとりで行くのは大変だし。真姫ちゃんが口リータを着る姿も、ことり、興味あるなぁ……♥︎」

「そっ、そこまで言うなら行ってあげてもいいわよ? 別にーー私が口リータを着たいわけじゃないんだからねっ!」

もう、真姫ちゃんてば素直じゃないんだから! でも、真姫ちゃんの可愛い一面が見られましたーークスクス☆

63: 2015/01/15(木) 18:57:06.01 ID:NR68JvMO.net
「穂乃果ちゃん、大変! 大変! 鼻血、鼻血出てるよ! あかん、熱中症かもしれへん!」

希ちゃんの慌てた声。
ことりは、反射的に穂乃果ちゃんの方に視線を向けました。
本当だ! 鼻血出ちゃってる! 穂乃果ちゃん、大丈夫かなぁ? 慌てて真姫ちゃんとふたり、穂乃果ちゃんに駆け寄りました。

「穂乃果!? 大丈夫ですか!?」

海未ちゃんが穂乃果ちゃんに問いかける。ことりも、

「穂乃果ちゃんティッシュ! これ使って!!」

と、ポケットティッシュを差し出します。持っててよかった!

真姫ちゃんが、鼻血の手当ての仕方を心得ているらしいので(流石、お医者様の娘! かっこいい♥︎)、応急処置を任せました。

手際もいいし、優しい真姫ちゃんの処置に、みんなで感心します。
ニコちゃんなんか、もう恋する乙女の目で見ちゃってて、可愛かったなぁ♥︎

64: 2015/01/15(木) 21:02:57.22 ID:NR68JvMO.net
花陽ちゃんと凛ちゃんに肩を貸してもらいながら、穂乃果ちゃんは保健室に行くことになりました。

もちろん、練習は一旦中止。みんなでぞろぞろ……穂乃果ちゃんが心配だもんね!

保健室で、先生に熱中症の処置をしてもらっているときも、真姫ちゃんと海未ちゃんは真剣な眼差しで穂乃果ちゃんを見つめていました。

だって、好きな人が熱中症になっちゃったんだもんね。とっても心配するの、わかります。

ことりだって同じだもん。


「いやぁ、めんぼくないね!
元気が取り柄の穂乃果だもん! って言ったそばから熱中症になるなんて、誰も予想してなかったよねぇ。ごめんごめん!」

穂乃果ちゃん、すっかり元気になったみたい!
ホッとしました。

真姫ちゃんも隣で、同じようにホッとした表情を浮かべています。

「まったくです! だいたい穂乃果はいつもいつも、私達に心配をかけて……」

海未ちゃんは、穂乃果ちゃんのお母さんみたいに、お説教を始めちゃいました。それだけ心配してた、っていうことなんですけどね。くすくす♥︎

にこちゃんも、安堵と同時に呆れたような目で穂乃果ちゃんをみつめています。こういうところは、やっぱり先輩なんだなぁって。

海未ちゃんのお説教はとっても長かったんだけど、希ちゃんが宥めてくれました。

「まあまあ、海未ちゃん。そのくらいにしとき? 穂乃果ちゃんかて、なりとうて熱中症になったんと違うんやから。な?
ウチからよう言い聞かせとくさかい、堪忍したってぇな」

海未ちゃん、心配してたのはわかるけど、関係ないことも言いすぎちゃったもんね?
ことりは、思わず苦笑いしちゃいました。

「え、ああ……希がそう言うのなら。穂乃果へのお説教もここまでにしておきましょうかね。
さぁ、元気な私達は屋上でダンスレッスンですよ! 穂乃果はここでお昼まで休憩! お昼はみんなで一緒に食べましょう?」

65: 2015/01/15(木) 21:06:14.06 ID:NR68JvMO.net
変な時間に更新、でした。
また夜中に更新するつもりですが、ひょっとしたら寝るかもしれません。
その場合はすみませんが朝か昼あたりに更新することになります。

そういえば、重いのは1レスあたりの分量が多いせいなのか、はたまた普通にサーバのせいなんですかね? 詳しくはわかりませんが……まあいいや。

んだば、また。

68: 2015/01/16(金) 05:50:56.09 ID:gZ1Xahmi.net
穂乃果ちゃんを保健室で休ませ、ことりたちは練習に戻ることになりました。
重度の熱中症っていうわけでもないみたいだし、ひとまず安心です。

「ーー希? 何やってるの?」

絵里ちゃんが希ちゃんに問いかけます。希ちゃんの手にはーータロット?

「ああ、これか。これはな、エリチ。
占い、や」

「でも、いつもは水晶でやってるじゃない?
どうしたの、急にタロットなんて」

そう、希ちゃんはいつも、怪しげな水晶玉で占っています。オカルト研究会の部長さんだしね♪
でも、なんだかタロットカードを持つのもサマになってる気がします。

「それで? 占いの結果はどうなの、希ちゃん?」

凛ちゃんが興味津々! といった感じで覗き込むと、そこには、empress……女帝のカードが。

「empress。要するに、大事な人と過ごすとええ、っちゅうカードやな。
……ごめん、ウチ、ちょっと用事があるさかい、保健室行ってくるな?
みんなは練習しとってな!」

……そっか、希ちゃんも。
あぁ、穂乃果ちゃんはやっぱりモテるんだ。ことりなんかより、他にもっとふさわしい人がいるんだ。

それに、気づいてた。穂乃果ちゃんがことりのことを見ていないのも。誰のことを見ていたのかも。だって……ずっと、一緒だもんね。

好きです。

たったこれだけの言葉も言えない、そう思うとちょっぴり泣けてきちゃうの。

「ーーことり? どうしたのですか?」

「海未ちゃん、真姫ちゃん、追いかけよう?
ことりたちは、これから現実を見なきゃいけないの。夢ならば覚めないで、なんて、言っていられなくなるのよ。
だから、ことりと来て」

「……いつになく、真剣ですね。ことりらしくもない。
でも、だからこそーーわかりました。追いかけましょう、ことり、真姫」

「ーーええ。行きましょう。私達は知らなきゃいけないわ。
たとえ、辛くてもね」

多分そうかな、と思っていたけど。ことりの想いは、思いは、とっくにふたりにも伝わっていたんだね。
ことり達は、恋敵だった。でもね?
ことり達はもう、同じ夢から覚めなきゃ。そうしなきゃ、いけないの。
現実は残酷だから。

69: 2015/01/16(金) 06:06:29.80 ID:gZ1Xahmi.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


海未ちゃんも、真姫ちゃんも、ことりも。息を潜めて、保健室を覗いています。

どう見ても不審だけれど、幸い今日はお休みの日。

他に生徒はいないし、先生たちも今は職員会議中だし、咎める人は誰もいないもの。

凛ちゃん達は屋上で練習しているし。

穂乃果ちゃんが、ぼそり、と何かを呟いた(実はさっきから中での様子はわかるんだけれど、声ははっきりと聞こえないの。残念ながら)。

と思ったら、悲しそうな顔でにっこりと笑うの。

穂乃果ちゃんってば、ふとした時に艶っぽい表情をするんだから、反則だよね。

あ、希ちゃんも目が覚めたみたい。
穂乃果ちゃんの太ももまくらなんて贅沢なことをしてたんだもん、いい夢が見られたんじゃないかな?

なにやら、お話をしています。うー……すっごく内容が気になるよぉ。
海未ちゃん、読唇術使えたりしないのかな?

「(読唇術なら使えませんよ?
ことりも無茶な事を考えます。私をなんだと思っているのですか?)」

読唇術は使えなくても、読心術の方は使えるのね……。

「(海未って……何者なんだろう……園田家は本当に日舞のお家元ってだけなの? 忍者とかの子孫なんじゃーー)」

それは、なんだか完全に否定しきれない感じもあるのがねぇ。海未ちゃんちなら、それもありそうというかーー

70: 2015/01/16(金) 06:14:12.33 ID:gZ1Xahmi.net
そのとき突然、穂乃果ちゃんが希ちゃんを押し倒した。

何が起こったのかさっぱりわからないし、中で何事か話しているのも相変わらずさっぱり聞こえやしないのです。

海未ちゃんも、真姫ちゃんも、そしてことりも。唖然として、口をぽっかり。

もしかして、肉食系なのにぷわぷわ~な、ほのくまさんも冬眠から目を覚ましていたのかも! 肉食系穂乃果ちゃん……あーん、希ちゃんズルい!


希ちゃんは……ズルい。


ーーこんなの……。ズルいよ。


自然と涙がはらり。当たり前です。

目の前で、好きな子が、別の子に襲いかかっていると思しき現場を見てるんだもん(勝手に覗いているのはことりたちなんだけどね)。


辛いよね。

でもこれが現実なんです。

3人で見ようとしたものは、これだったの。
ことりと海未ちゃんの中にある、アネモネの花を摘み取る必要があったの。
真姫ちゃんの中にも、あったかも知れないけれど。

72: 2015/01/16(金) 07:38:41.25 ID:gZ1Xahmi.net
「うっ……ぐ……ひっく」

声を押し頃して、海未ちゃんも泣いています。真姫ちゃんは、プライドのためなのか、目に涙を溜めて堪えています。
ことりは……涙こそ落ちるけれど、意外と冷静な自分でいられることに少し驚きます。

少しして、ふたりとも落ち着きました。現実を受け止めたみたい。
希ちゃんは、もちろん穂乃果ちゃんの想いを受け入れたんだろう。悲しいとは思わない。
悔しいとは、思う。

「(ことり、いいのですか?)」

「(海未ちゃん……。ことりはね、穂乃果ちゃんが幸せになれるならそれでいいんだ。それを見届けつつ、他の幸せも追いかけてみることにするよ)」

嘘。いいわけ、ないよ。穂乃果ちゃんには幸せになってもらいたいけれど。

誰かとじゃない。
ことりと、幸せになって欲しかった。

でもそれも、叶わぬ願い。
こんなにも好きなのに。

一等星のスピカのように、輝いていたい。
それがおとめ座に産まれた、ことりの願いだったのに。

ああ、これは。
心がこんなにも痛い。
苦しい。これが失恋かぁ。悲劇だなぁ。
深い海に溺れていくような心地だね。

73: 2015/01/16(金) 07:59:43.12 ID:gZ1Xahmi.net
こんなにも、辛く、息が苦しい時にはどうすればいいの?

ことりの迷いの振り子は、もう止まってしまいました。いいえ、動くことを許されなくなってしまったの。

ことりの心が、クロノビタキのように黒く、コンドルのように屈強で、カラスのように図々しければ、すぐにこの気持ちは海未ちゃんに向かっていくんだと思うの。

けれどことりの心は、ハクチョウのように白く、ジャクのようにか弱く、ツバメのように臆病だから。

ーー言えないよ。海未ちゃんのことも、愛してる。なんて。



「(ねぇ、海未ちゃん、真姫ちゃん。今日の練習が終わったら、甘いものでも食べに行かない? つらいことは、甘い物でも食べて忘れちゃお?)」

「(ことり……わかったわ。賛成!)」

「(いいですね。クレープでも食べましょう!)」

ふたりとも、空元気なのは分かっちゃうけれど。それはことりも同じだもん。
だったら、どうせなら、3人で思いっきりはしゃいで、はやいところ本当の元気を取り戻さなきゃ、でしょ?

……とりあえず、それだけ決めて、屋上に戻ることにしました。その前に、たまたま同じタイミングでみんなお手洗いに行きたくなったので、トイレに向かいます。

ーーそれぞれが入った個室からは、なぜか最初から最後まで、音姫の音が響き続けていたんだけれど、きっとみんなお腹の調子が悪かったんだろう、って。そういうことにしておくの。

もちろんことりは……声をあげて大泣きしてたのを隠すために使ったんだけれどね!
えへへ。

80: 2015/01/16(金) 18:25:21.53 ID:IA7SEOMz.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


屋上に向かう道中、こんな会話もしたの。

「いいですか、ことり、真姫。
私達が穂乃果達のことを見ていたのは、あの2人以外にはとっくにバレているでしょう。ですから、もし穂乃果達が結ばれたという話を始めたら、他のメンバーより大きなリアクションを取りましょう……初めて聞いた話で驚きと動揺が隠せない! くらいの」

「そうね、聞きようによっては私たち、デバガメしちゃったみたいに思われちゃうものね。実際デバガメみたいなものだけど……」

「あはは……会話まで聞いてたわけじゃないし、途中からみんなお手洗いに行ってたとかで誤魔化しちゃえばいいんだもん。
穂乃果ちゃんと希ちゃんが寝ちゃったあたりまでは見た、という感じで……」

ここまで話したところで、屋上の扉が見えました。覚悟を決めてドアを開けます。

屋上に着くと、絵里ちゃんに声をかけられました。

「あっ、ことり、海未、真姫。お帰りなさい。……急にどこかに行くんだからびっくりしたじゃないの」

「ええ、ちょっと。穂乃果の様子が気になったものですから」

「直前間で保健室にいたのに? 心配性ねぇ、3人とも。
……それで? 穂乃果の様子は?」

「穂乃果は、希と一緒に寝てしまいましたよ。全く、大したことなさそうで良かったです。
さて、私達のせいでまともにできなかったでしょう?
練習、再開です!」

海未ちゃんの一声で、一気にみんな練習モードに入りました。
もちろん、ことりも、真姫ちゃんも、無理やりですけれど。
海未ちゃんだって空元気で頑張っているんだもん。私達も、ね?

「はいっ!」

みんなで一斉に答えると、いつものようにダンスレッスンを始めました!
お昼休憩になるまで、希ちゃんは帰ってきませんでした。

81: 2015/01/16(金) 18:28:28.65 ID:IA7SEOMz.net
そして、お昼の部室。

「えぇ!? 穂乃果ちゃんと希ちゃんお付き合いしてるのぉ!?」

「そんな! エリチカそんな話聞いてないわ! 認められないわぁ!」

話題は、穂乃果ちゃんと希ちゃんのことでもちきりだった。それもそのはず、だよね。
μ's内にカップルができたんだもの。驚いちゃうのが当たり前でしょう?
ことり達3人は、ひときわ大きくリアクションを取りました。
屋上に向かう途中、そういう風に打ち合わせたから。

口をパクパク、髪の毛をくるくる。ことりは、ちょっとうなだれて、足元のタイルを眺めるの。

あ、海未ちゃん金魚さんみたいで可愛い♥︎
真姫ちゃんは呪文みたいに「意味わかんない」と繰り返しててもはや怖いの域に達しちゃってるけれど……一年生組に任せちゃお。意味わかんない! って言いたいのはかよちゃんと凛ちゃんの方なんだろうけどね。

「わ、わた、私は認めないんだからぁ!」

ばたん。
絵里ちゃんが部室の外に勢いよく飛び出していっちゃった!

「……はっ! り、凛、ちょっとお手洗いにゃ! ごめんねかよちん、真姫ちゃんのことは頼んだよ!」

「えっ、ちょ、凛ちゃん待って! 一人にしないで!
ーーあ、行っちゃった……うぅ、神様助けて~!!」

82: 2015/01/16(金) 18:31:58.61 ID:IA7SEOMz.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


《♪あいしてる、ばんざーい! ここでーよかーったー♪》

着信? この珍しい着信音は、登録するときにかけてもらったっきりなので、聞くのは2回目です。
あんまり電話っていうタイプじゃないもんね。

「もしもし、どうしたの?」

『あっ、ことり? 今時間いいかしら?
この間言ってた原宿の事なんだけど……』

時間は夜の7時。ことりにとっては、晩御飯やお勉強の時間までにはまだちょっぴり早いかなぁ。

「うん、時間は問題ないよ~。
それで、ことりと真姫ちゃんのデートのお話だよね?」

ちょっぴり意地悪を言ってみる。真姫ちゃんって反応が可愛いからついつい♥︎

『で、デートってそんな……私はただ、買い物に付き合うだけだし……ヒマだから』

「またまた。口リータが着たいんでしょ?
素直になりなよ真姫ちゃん♪」

『ち、違うわよっ! ってああ! そうじゃなくて!
その……いいわ、敢えて言うけれど。デートのお話よ。
私ね、その日寄りたいところが一箇所あって……行ってもいいかしら?』

「んー、ことりは、構わないよ?
それで、どこに行くつもりなの?」

真姫ちゃんの寄りたいところって、ジュエリーショップとか高級ブランドとか?

83: 2015/01/16(金) 18:41:54.79 ID:IA7SEOMz.net
『…………』

「真姫ちゃん? おーいっ」

なかなか言い出せないのか、電話口で真姫ちゃんは無言になった。そして、20秒くらい経って、ゆっくりとこう言うの。

『……この間の、クレープ屋さん。
私、クレープの味が忘れられなくって。
せっかくのデート気分なのに申し訳ないけど、海未も誘って。
どう、かしら?』

ーーああ、なるほどね。そういうことかぁ。
真姫ちゃんは強い子だし、乗り越えられたと思ったんだけど。

「…………真姫ちゃん、忘れられないのはあまぁいクレープの味? それとも……ちょっぴり苦い、失恋の味?」

ことりは、そう尋ねたの。もちろん、わかってて聞いてるんだから、意地悪だよね。

『ーーやっぱりことりは、とっても鋭いのね。
そうよ。また、甘いもので忘れたい気分なの』

真姫ちゃん。わかるよ、その気持ち。
きっと、海未ちゃんも同じ気分だよ。ことりにはわかる。

強くて、強すぎる海未ちゃんだから、決して口にはしないけれど、そろそろ甘いものが欲しくなってきているはずなんだ。
そうと決まれば、行動あるのみ、ですよねっ♪

「うん、それもいいかもね! ……よしっ!
海未ちゃんも誘って3人でデートしましょ?
海未ちゃんにも、口リータ着せちゃうんだからっ!」




おわり

84: 2015/01/16(金) 19:26:01.86 ID:l2/AIV75.net
くぅ疲、ですっ!
ことりちゃんは可能性の化け物でした。
これもう誰とかけても美味しいので……。

今回は、ことうみの失恋編というテーマで書かせていただきました。
ちなみに前回はハッピースタートなるテーマがありました。ほののぞはハッピー、しかしその裏でどれだけの思いが砕けたのか、みたいな。
真姫ちゃんには申し訳ないと思ってるので、そのうち幸せにする予定。いやみんな幸せにする予定なのでこれからもよしなに。

次回作は明後日までにスレが立てられるといいなぁ……。前作も含めて覗きにくるので感想くれてもいいのよっ?
ていうか励みになるので是非くださいほんと。
んだば、また。

引用元: ことり「おとめ座α星の悲劇」