1: 2014/11/03(月) 16:31:22.98 ID:PA3AIOCG.net
ツバサ「ハァハァ、取ってきたわ!高坂さん家のゴミ袋二袋!」

英玲奈「おかえり、ツバサ。ご苦労だったね」

ツバサ「同じ秋葉原界隈とはいえ、重たい袋をふたつも背負ってくるのはつらいものがあったわ」

あんじゅ「つぎから『調達』の手段を考えましょう」

ツバサ「(ゴミあさりが)始まる……」

ツバサ「さて、ひとふくろ目は……」(ガサガサ……)

ツバサ「白あん、黒あん、つぶあん、求肥の古くなったやつ、売れ残りのおまんじゅうに羊かん」

あんじゅ「完全に生ゴミね。厨房から出たものかしら」

英玲奈「ツバサとしたことがミスったな。よく確認せず持ってくるなんて」

ツバサ「誰か人が来たから、アセってひっつかんできたのよ」

ツバサ「物色してたら、誰かが後ろから全力で走ってきてね」

英玲奈「追いつかれなかったか?」

ツバサ「まあ、巻いたわよ。……それにしても不覚だったわね」

あんじゅ「誰にでも失敗はあるわ。そう落ち込まないで」

ツバサ「あっ、でもコレは食べられそう……モグモグ。二人もどうぞ」

あんじゅ「モグモグ、あら美味しい」

英玲奈「モグモグ……老舗の味とでも言えばいいのだろうか、職人の心尽くしの逸品だ」

3: 2014/11/03(月) 16:35:32.18 ID:PA3AIOCG.net
ツバサ「気を取り直してふたつ目よ」

ツバサ「まず出てきたのは……うっ」

英玲奈「使用済みコンドーム……」

あんじゅ「一個や二個じゃない。一ダースぐらいあるわよ。ふふ、どれだけ絶倫なのかしら? 高坂さんのご両親」

英玲奈「すごい量だ。臭うし、はやく袋に戻そう」

ツバサ「ちょっと待ってふたりとも!」

英玲奈、あんじゅ「!?」

ツバサ「取っておきましょう」

英玲奈「なんだって、これは不必要だ」

あんじゅ「そうよ。第一、臭いわ」

ツバサ「取っておけば、もしかしたらこれを素材に第二の高坂さんを錬成できるかもしれないわ」

ツバサ「今の科学技術の発展はすごいもの、それぐらい可能に決まっている」

あんじゅ「…………」

英玲奈「…………」

あんじゅ「そうね」

英玲奈「リーダーの資質とでも言えばいいのだろうか、なんて的確な判断だ」

5: 2014/11/03(月) 16:38:30.26 ID:PA3AIOCG.net
ツバサ「続いて出てきたのは……ん? これは何?」

英玲奈「フェイスパックのようだな。顔に貼り付けてお肌をツヤツヤにするやつ」

ツバサ「誰の使用済み品なのかしら」

あんじゅ「これは妹の雪穂さんのものね」

ツバサ「穂乃果さんが使ったものかもしれない……それなら私がもらうわ」

英玲奈「お母様のものかもしれないぞ」

ツバサ「それはそれで」

あんじゅ「断言できるわ。このフェイスパックを使ったのは雪穂さん!」

ツバサ「どうしてそう言い切れるの?」

あんじゅ「忘れたの? 雪穂さんの部屋にもカメラを仕掛けて置いたこと……」

ツバサ「あっ」

英玲奈「そういえば……」

ツバサ「念のため仕掛けておいたんだった」

あんじゅ「雪穂さんが毎日これを使用していることはビデオが証明しているわ」

あんじゅ「雪穂さんの使用済みであることは一目瞭然」

6: 2014/11/03(月) 16:39:04.79 ID:PA3AIOCG.net
※注 このSSはツッコミ役不在です

7: 2014/11/03(月) 16:41:06.48 ID:d6/s2cvM.net
アライズェ…

8: 2014/11/03(月) 16:45:18.03 ID:NXo+o2Y0.net
おぉ…

9: 2014/11/03(月) 16:45:43.86 ID:D3c3gYsm.net
言い値で買おう

10: 2014/11/03(月) 16:46:16.44 ID:PA3AIOCG.net
英玲奈「だが、待ってくれ。まだこのパックがお母様か穂乃果さんが使ったものである可能性は捨てきれない」

英玲奈「雪穂さんがフェイスパックを毎日使用しているにしろ、家族のほかの人が使っていることだってある」

英玲奈「カメラに映らないところで、雪穂くんから受け渡しがあったかもしれないじゃないか」

ツバサ「そうよ」

あんじゅ「穂乃果さんが使っていないことはツバサ、あなたが一番よく理解しているはずよ」

あんじゅ「ひんぱんに不法侵入しているんだもの」

ツバサ「……確かに。穂乃果さんがパックしてるのは見たことがないわね」

あんじゅ「第一、考えてみてちょうだい。穂乃果さんにフェイスパックは使えない……」

ツバサ「!?」

あんじゅ「顔に長時間パックを貼り付けておくなんて天真爛漫な穂乃果さんの性格上、無理よ」

ツバサ「なるほど……」

英玲奈「ふむ。パックを貼り付けた顔面がムズムズするのに耐えられなくて、すぐさま強引に剥がしてしまいそうだ」

あんじゅ「それから匂い」

英玲奈「匂い? くんくん……強いシトラス臭がするな」

あんじゅ「こういう刺激的な香りを、中年女性はあまり好まない」

ツバサ「すると、お母様の線も消えて、残るは雪穂さんしかいない、と」

英玲奈「さすがあんじゅ……見事な推理だ」

あんじゅ「ふふっ」

ツバサ「納得したわ。それでもこれは一応もらっておくわね」

12: 2014/11/03(月) 16:52:41.65 ID:PA3AIOCG.net
ツバサ「使用済みティッシュがたくさんあるわね」

英玲奈「まあ、家庭ごみには定番のアイテムだな」

あんじゅ「こればかりは、誰が使ったものかわからないか……」

英玲奈「においを嗅いでみようじゃないか」

あんじゅ「賛成。いい提案ね」

ツバサ「みんな、ティッシュを手にとった? いくわよ」

ツバサ「すうーっ」

あんじゅ「すうーっ」

英玲奈「すうーっ」

ツバサ「無味無臭……ハズレだわ」

あんじゅ「料理の臭いがする。多分食べこぼしを拭いたのに使われたものね」

英玲奈「ツバサと同じく無味無臭。もう一回やってみよう」

ツバサ「みんな、別のティッシュを手にとった? いくわよ!」

ツバサ「すうーっ」

あんじゅ「すうーっ」

英玲奈「すうーっ」

ツバサ「ああ……当たったわ……」

ツバサ「穂乃果さん、穂乃果さんの匂いよ。すうーっ! すうーっ!」

ツバサ「ああ~っ、とぶ~、意識がとぶ~」

ツバサ「おっきな穂乃果さん! おっきな穂乃香さんがみえるの!」

英玲奈「私のは……うう、犬臭い。飼い犬のなにかに使われたものか」

15: 2014/11/03(月) 16:54:44.28 ID:J6GGFp9G.net
とぶ~じゃねえよw

16: 2014/11/03(月) 17:01:53.32 ID:PA3AIOCG.net
ツバサ「だ、大丈夫、英玲奈?」

英玲奈「ああ。こうした事態は想定内だ」

英玲奈「ゴミ漁りをする上で覚悟していたこと……」

ツバサ「……なんて立派な心がけ……。ゴミ漁りストとしての『誇り』で満ちている。感動したわ」

ツバサ「お口直しに、ほのティッシュどうぞ」

英玲奈「穂乃果さんの匂い、すうーっ。すうーっ」

英玲奈「巨大な穂乃果さん! 巨大な穂乃香さんがみえるぞ!」

ツバサ「あんじゅは誰のを引き当てたの?」

あんじゅ「ふふっ、UR(ウルトラレア)なの当てちゃった」

ツバサ「もったいぶらずに教えて。誰のが出たの?」

あんじゅ「――南ことりちゃん。ことりちゃんが鼻をかんだものよ」

ツバサ「なんですって……」

英玲奈「まさか……」

あんじゅ「論より証拠。嗅いでみて」

ツバサ「すうーっ……これは紛れもなく、南さんのものね」

英玲奈「どういうことだ、どうして彼女のものがここに」

ツバサ「そうか……幼なじみの南さんはよく高坂家に遊びに来る……当然ゴミも落としていく」

あんじゅ「そういうこと。園田海未ちゃんのもあるわよ」

英玲奈「なんて豪華なラインナップなんだ……」

ツバサ「くんかくんか……ああ、こうして三つとも同時に嗅いでいると、二年生組が目の前にいるかのよう」

ツバサ「おっきな二年生組が!」

英玲奈「幸運の持ち主とでも言えばいいのだろうか、すごいぞあんじゅ」

18: 2014/11/03(月) 17:12:20.60 ID:PA3AIOCG.net
ツバサ「ほかにめぼしいものは……っと」

あんじゅ「何かしら、くしゃくしゃの便せんがあるわ」

英玲奈「びっしりと書き込みがあるな。詩のようだ」

ツバサ「詩……ということは園田さんが書いたものかしら」

英玲奈「穂乃果さんの部屋の盗撮カメラには、園田さんが作詞作業している光景が、頻繁に写っている」

英玲奈「この詩も、筆跡からいって園田さんのもので間違いない」

あんじゅ「英玲奈は筆跡だけで、μ'sメンバーが判定できるものね。それなら間違いないわ」

あんじゅ「ぱっと見、聞いたこのとのない歌詞ね。もしかしてボツ原稿かしら」

ツバサ「ちょっと待って。捨てられたボツ原稿……」

ツバサ「……すごいわ! μ's幻の歌詞ってことじゃないの」

あんじゅ「さっそく読んでみましょう!」

******

ツバサ「ヒドい歌詞ね……ほんとうにヒドい」

英玲奈「ボツになったはずだ。吐き気がするほどヒドい歌詞だ」

英玲奈「オエッ、オエッ、オエッ……クッ、えづいてしまう」

ツバサ「ほんとうにヒドい」

あんじゅ「傑作の影には、どうしようもない駄作があるんダナ……」

20: 2014/11/03(月) 17:24:47.32 ID:PA3AIOCG.net
ツバサ「そうだわ、これを私たちの新曲の歌詞にしましょう」

あんじゅ「えっ、これを?」

英玲奈「正気か、ツバサ」

ツバサ「いいえ。でも、これを使って園田さんを驚かせたいのよ」

ツバサ「捨てたはずの歌詞が大勢の前で歌われている……きっと彼女びっくりするわよ」

あんじゅ「頭のなかが混乱でフルハウスになる園田さんの顔……ちょっと見てみたいかも」

ツバサ「おもしろそうでしょ? どうかしら、英玲奈」

英玲奈「…………」

ツバサ「え、英玲奈……?」

英玲奈「人の歌詞を勝手に使うこと……それがどういうことか分かっているのか?」

ツバサ「だってボツになったものよ。ちょっとぐらい――」

英玲奈「それは、盗作だツバサ」

ツバサ「うっ……」

あんじゅ「あっ……」

英玲奈「私たちはA-RISE――いちどはスクールアイドルの頂点に立ち、いまや多くのファンを抱えている身だ」

英玲奈「ファンを失望させる行動が許されると思っているのか!?」

ツバサ「その通り……悪かったわ。変な事を言って……」

英玲奈「分かってくれればいいんだ」

英玲奈「さあ、ゴミ漁りを再開しよう」

25: 2014/11/03(月) 18:04:25.01 ID:PA3AIOCG.net
あんじゅ「あらかたチェックし終えたわね。こんなところかしら」

英玲奈「ほかに収穫はなし」

英玲奈「まあ、穂乃果さんの素、フェイスパック、URティッシュを得たことでよしとしよう」

ツバサ「ん? なにかしらこれ」

あんじゅ「どうしたの?」

英玲奈「ほかになにかあったのか?」

ツバサ「これは……四つ折りになったポスターのようね」

あんじゅ「なんのポスターかしら」

英玲奈「開いて見てみよう」

ツバサ「えっ……そんな」

あんじゅ「いや……やめて」

英玲奈「嘘だろう……」

ツバサ「私たち……A-RISEのポスター……」

英玲奈「これは私たちが前にあげたものだな……どうして」

あんじゅ「ああ……穂乃果さん、私たちのこと嫌いになってしまったのかしら?」

英玲奈「穂乃果さんになにか落ち度のあることをしてしまったのだろうか?」

あんじゅ「全然分からない。……どうして?」

ツバサ「本人に聞いてみるしかない」

英玲奈「ツバサ……」

ツバサ「それとなく聞いてみる。どうしてポスターを捨てたのかを」

27: 2014/11/03(月) 18:20:24.96 ID:PA3AIOCG.net
(翌日の夕方、公園にて)

ツバサ「高坂さん、きょうは会ってくれてありがとう」

ツバサ「急に呼び出したりしてすまなかったわね」

穂乃果「ツバサさんからの呼び出しだもん、断れないよ」

ツバサ「ふふっ、ありがとう」

ツバサ「今度私たち、新しくポスターを作ることになったのよ」

ツバサ(ウソだけど)

穂乃果「そうなんですか、おめでとうございます」

ツバサ「刷り上がったら、一部あげるわ」

穂乃果「わぁい、やったあ」

ツバサ「……それでね、古いポスターをリサイクルとして回収することにしたの」

ツバサ「一方的で申し訳ないんだけれど、前にあげたポスター、返してもらってもいいかしら?」

穂乃果「……」

ツバサ(ドキドキ)

穂乃果「分かりました」

ツバサ(ん? 捨てたはずなのにどういうことかしら?)


(物陰で)
あんじゅ「ツバサ、真相はわかったのかしら」

英玲奈「しーっ。まだ話し中のようだ」

29: 2014/11/03(月) 18:36:05.28 ID:5hm994a5.net
おうさらっとユーティライネンさんを登場させるのはやめーや

35: 2014/11/03(月) 19:48:07.48 ID:PA3AIOCG.net
穂乃果「あとでポスター一部返します」

ツバサ「う、うん。お願いするわね」

ツバサ(どうするつもりなのかしら……高坂さん)

穂乃果「実は、前にもらっていたポスターなんですけど」

ツバサ「ええ」

穂乃果「きのう妹が同じの買ってきちゃったんです」

穂乃果「だから、前に貰ったのはかぶっちゃったので、捨ててしまって」

ツバサ(そういうことだったんだ……)

穂乃果「ツバサさん、妹が買ったのを代わりに返しますから」

ツバサ「いえ、そういうことならいいのよ。あはは」

穂乃果「どうしたんですか? やけにうれしそうですけど?」

ツバサ「どうしてかしらね、うふふふふ」

穂乃果「ツバサさん、なんで笑ってるんですか!?」

ツバサ「うふふふふふふふふふふふふ」

(物陰で)

あんじゅ「ツバサ……とうとう発狂しちゃったの?」

英玲奈「いや、あれは勝利の笑いだ」

36: 2014/11/03(月) 19:51:18.18 ID:PA3AIOCG.net
ツバサ「――と、いうわけだったの」

英玲奈「なるほど……」

あんじゅ「よかった……穂乃香さん、私たちのことを嫌いになったというわけではなかったのね」

ツバサ「私、あの子のことがますます好きになったみたい」

あんじゅ「私もよ」

英玲奈「私も同じだ」

ツバサ「これからもずっと、よきライバルでありたい……私たちも頑張っていきましょう!」

あんじゅ「そうね、私たちも負けずにパワーアップしていきたいわ」

英玲奈「そのためには――これからもゴミ漁りだな」

ツバサ「その通り!」

あんじゅ「こんどはどのメンバーにしようかしら?」

ツバサ「西木野邸はパス。もうドーベルマンに追いかけられるのはこりごり」

あんじゅ「うふふふふ」

英玲奈「あはははは」

38: 2014/11/03(月) 19:57:04.37 ID:PA3AIOCG.net
(一方、園田家)

海未「ことり……やられました。私たちのほかに高坂家のゴミをねらうものが」

海未「目の前で持って行かれてしまって……悔しいですっ」

ことり「…………は?」

海未「す、すみません!」

ことり「……海未ちゃん、犯人の顔はみてる?」

海未「いえ、暗かったのではっきりとは」

海未「でも、背格好は分かりました。わたしたちと同じくらいの女の子です」

ことり「それなら大体しぼれるはず……」

海未「明日から捜査を開始します」

ことり「絶対に許さない……穂乃果ちゃんのものは、つめのかけらだって、うぶ毛の一本だって残らず全部私のものなんだから」

海未「私たちのもの、です」

ことり「正体突き止めて、二度とこの街歩けなくしてやる……」



〈おわり〉

40: 2014/11/03(月) 19:58:54.79 ID:PA3AIOCG.net
以上です。読んでくれてありがとうございました

81: 2014/11/08(土) 17:51:32.23 ID:wZ7be4UW.net
続きらしきものをかく

82: 2014/11/08(土) 17:52:53.30 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「あら、ことりさん」

ことり「ツバサさんじゃないですか。あんじゅさんも英玲奈さんも」

あんじゅ・英玲奈「こんばんわ」

ツバサ「最近よく会うわね」

ことり「ほんとうに。……ツバサさん、これ」

ツバサ「これは……まあ、どうしたのこんな素敵なもの……」

ことり「さっき拾ったんです。どうぞお近づきのしるしに……」

ツバサ「ありがとう。とっても嬉しいわ」

ツバサ「申し訳ないけど、こちらはいま返せるものが……」

ことり「いいんです、いいんです。ではわたしは」

ツバサ「えっもう帰っちゃうの?」

ことり「はい。わたしは十分堪能しましたから……それでは」

英玲奈「南ことりさんとはよく会うのか?」

ツバサ「ええ」

英玲奈「ここは高坂家の風呂場の天井裏だというのに?」

83: 2014/11/08(土) 17:54:38.61 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「ことりさんも高坂家侵入の常連なのよ」

英玲奈「なるほど」

あんじゅ「ところで、ことりさんがくれたものってなに?」

ツバサ「毛よ。きっと高坂さんのものね。もしかしたら違う人のかもしれないけれど、DNA鑑定すれば分かるわ」

あんじゅ「へえ、それはけっこうなものを」

英玲奈「ところで、ツバサ。説明を願いたいんだが」

ツバサ「何の?」

英玲奈「何の、じゃない。せっかく眠っていたのをたたき起こして、あんじゅとふたりでここまで連れてきた理由をだ」

英玲奈「ここに来られるのは大歓迎なんだが、理由も分からず連れてこられるのは納得がいかない」

ツバサ「ごめんごめん、忘れてた」

ツバサ「きょうは趣向を変えて、風呂場漁りをしようと思ってね」

英玲奈「風呂場漁り? なんだそれは?」

あんじゅ「そっか、英玲奈は初めてだっけ、風呂場漁り」

英玲奈「詳しく説明を」

84: 2014/11/08(土) 17:57:15.35 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「ひらたくいうと、風呂場のチェックね」

ツバサ「使っているシャンプー、リンス、そのほか化粧品の銘柄を調べたり、あと明らかにゴミになりそうなものは持ち帰ったり」

英玲奈「楽しそうじゃないか。どうしてもっとひん繁にやらないんだ」

あんじゅ「やれる風呂場が少ないのよね。誰かきてもすぐ逃げられるよう、簡単に出入りできる環境じゃないと難しいの」

ツバサ「古風なつくりの高坂家、園田家は天井が板張りだから、ちょこっと外せば、ロープを伝って容易に行き来できる」

あんじゅ「でも、現代的な家の造りだとそうもいかないわけなの」

ツバサ「前には、矢澤家のアパートで窓からの出入りを試みたけど、窓のサッシで足を滑らせて、あやうく転落氏するところだったわ」

あんじゅ「西木野邸の風呂場周辺は高出力レーザーが多数仕掛けられてるし、東條家は邪悪なものを避ける結界が張ってあるから入れないの」

英玲奈「うーん、なかなか難しいんだな」

あんじゅ「それでも、一般家庭の星空家、小泉家が次のターゲットよ。挑戦しがいがあるものほど燃えるわよね?」

英玲奈「いいこというじゃないか、あんじゅ」

ツバサ「まあ、そういうわけで、高坂さんの家は最高。家が少し古くなってるから、天井がギシギシきしんでしまうのが難点だけどね」

86: 2014/11/08(土) 18:00:46.43 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「(風呂場漁りが)始まる……」

英玲奈「ちょっと待て」

ツバサ「何よ?」

英玲奈「風呂場には誰もこないだろうな? 時間的に家人は寝静まっているだろうが、遅れて風呂に入ろうとするひとがいるかもしれない」

ツバサ「それはバッチリ。あんじゅが全員風呂に入るのを確認しているわ」

あんじゅ「高坂家には穂乃果さんの部屋、雪穂さんの部屋、居間、店舗、玄関の計五カ所に盗撮カメラを設置しているの」

あんじゅ「さっき、居間のカメラのデータをチェックしたら、家族全員がほかほかの状態で出てくる姿が確認されているわ」

英玲奈「なるほど、それは頼もしい」

ツバサ「じゃあ、始めるわよ」

ツバサ「あらかじめ切り込みを入れてある天井板を外して……っと。英玲奈、そこ持ち上げるの手伝って」

英玲奈「こうか」

ツバサ「うん、そう。さあ、持ちあげるわよ。わっしょいわっしょい」

あんじゅ「頑丈そうな柱にロープもつないでおいたわよ」

ツバサ「いいわよ、あんじゅ」

87: 2014/11/08(土) 18:03:22.65 ID:wZ7be4UW.net
英玲奈「ここが高坂さんが毎日使っている風呂場か……」

英玲奈「全体的に木材でできてて趣があるな」

ツバサ「いいところでしょ? わたしも侵入するたびに感動するわ」

英玲奈「かすかに温かく、しめっていて、シャンプーの匂いが漂っていて、スーハースーハー」

ツバサ「たまらないわね。スーハースーハー」

あんじゅ「スーハースーハー」

ツバサ「軽く飛んじゃえる……」

英玲奈「いい香りだ……だれの風呂の残り香だろうな。……まさか、お父様じゃ?」

ツバサ「それはないわ。和菓子職人の朝は早い。いつも一番風呂だもの」

ツバサ「その後がお母様、つぎに穂乃果さんか雪穂さんのどちらか」

あんじゅ「さすが、毎晩のように侵入しているだけあって、かなりくわしいわね」

ツバサ「まあ、まかせてちょうだい」

英玲奈「話を聞いて安心した。実は男エキスが一番心配だったんだ」

英玲奈「女性が立て続けに入ることによって、男エキスはかなり浄化されているだろう」

あんじゅ「わたしは男エキス濃厚でもかまわないけどね。クスクス」

ツバサ「おっ、GOD笑いが出たわね」

94: 2014/11/08(土) 18:50:06.55 ID:wZ7be4UW.net
あんじゅ「さあ、まずはバスラックのチェックよ」

英玲奈「シャンプーボトルが何本もある。まあ、女子のいる家庭はどこもこんなもんか」

英玲奈「ボディーソープは一種類だが、シャンプーとリンスはそれぞれ四種類。家族全員違うシャンプーを使っているんだな」

あんじゅ「家族の誰がどれを使っているのか特定してみましょう」

ツバサ「シャンプーとリンスが一体になったもの、花がらがあしらわれた女の子チックな絵柄のもの」

ツバサ「高級感あふれるもの、スーパーなどでよく見かけるシンプルなデザインのもの……の四種類か?」

英玲奈「シャンプー・リンス一体型はおそらく、お父様のだろう。男のひとはシャンプーの銘柄にこだわらないものだ」

ツバサ「このムダに高級感あふれるパッケージのはきっとお母様のものね。いかにも女の子女の子してるやつは雪穂さん」

ツバサ「そして……このシンプルなパッケージのは穂乃香さん。これでどう?」

あんじゅ「正解は……匂いを嗅いでみれば分かるわ」

英玲奈「くんかくんか……あれっ?」

ツバサ「おかしい、雪穂さんのものしか正解してない……これはどういうことなの?」

95: 2014/11/08(土) 18:51:06.11 ID:wZ7be4UW.net
あんじゅ「まず、シンプルなやつだけど、これはスーパー、量販店などで安売りされているもの。つまりは主婦の味方」

ツバサ「なるほど、お母様のものか……」

あんじゅ「それから、高級感あふれるもの。これはお父様のものだわ」

英玲奈「信じられない。男性、とくに中年男性は髪を洗えさえすればシャンプーの銘柄なんてどうでもいいんじゃないのか」

あんじゅ「英玲奈、それは短見というものよ。男の人もシャンプーにこだわらざるを得ない状況が訪れることがあるの」

英玲奈「つまり?」

ツバサ「分かった、そういうことね」

あんじゅ「クスクス」

英玲奈「どういうことなんだ、教えてくれ」

ツバサ「シャンプーは頭皮をきれいにするもの」

ツバサ「だから、頭皮の具合を気にする人はそういうシャンプーを使わなければならないということ。どういうことか分かる?」

英玲奈「なるほど……つまり、アレだな。お父様が使ってるのは、男を上げるアレなわけだ」

ツバサ「それにしても、お父様の頭はまだ黒ぐろとしているような気がするのだけど……」

あんじゅ「その辺の悩みは本人にしかわからないものよ」

英玲奈「ふむ……」

96: 2014/11/08(土) 18:52:56.91 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「そうなると、残りのシャンプー・リンス一体型のは……」

あんじゅ「穂乃香さんのものということになるわね」

英玲奈「納得がいかないな。これってその辺のオヤジや子どもが使ってるものじゃないのか」

あんじゅ「失礼よ、英玲奈」

英玲奈「すまない、口がすべった」

英玲奈「しかしだな、穂乃果さんはスクールアイドルの頂点にいるんだぞ。そんな人がこんな……」

ツバサ「わたしは大いに納得できるわ」

英玲奈「ツバサ……」

ツバサ「穂乃果さんはとっても天真爛漫な性格よ。面倒なことは省略したがるタイプだわ」

ツバサ「シャンプーとリンスが一緒になっていれば一度に二つのことができる。穂乃果さんにとっては大変ありがたいアイテムだわ」

英玲奈「なるほど」

あんじゅ「それに、シャンプーだけが髪のケアじゃないわ。これ、嗅いでみて」

英玲奈「これはヘアオイルじゃないか。くんかくんか……かんきつ系の匂いと、穂乃果さんの匂いがする」

ツバサ「そうか、シャンプーのあとでしっかりとヘアケアしていたのね。その辺はとっても女の子だわ」

97: 2014/11/08(土) 18:54:26.82 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「さて、特定できたところで一回分ずつ持ち帰りましょうか」

英玲奈「持ち帰る? どうやって?」

ツバサ「これよ」(スッ)

英玲奈「ガラス製のシャーレじゃないか。こんなにたくさん。どこに隠し持ってたんだ」

あんじゅ「ふふ、お風呂漁りの必需品よ」

ツバサ「まあ、準備は怠りなく」

あんじゅ「それだけじゃなく、ツバサは不足の事態に備えていろんなものを持っているのよ」

ツバサ「ロープやシャーレもそうだし、試験官、火打ち石、シュノーケル、発煙筒、宇宙食……」

英玲奈「なにに使うのか分からんが、頼もしいな」

ツバサ「回収の前に、味見っと」

ツバサ「ごく……んぐっ……あああああああああ、たまらない匂い! 穂乃香さん! 穂乃香さん!」

英玲奈「ああ、ずるいぞ! 私も!」

あんじゅ「ダメよ、あまり使ってなくなったりしたら、怪しまれるわ」

英玲奈「くぅ~」

ツバサ「悪いわね♪ あとで培養してみんなで楽しみましょう」

102: 2014/11/08(土) 19:12:26.93 ID:wZ7be4UW.net
英玲奈「では気を取り直してボディタオルをチェックしよう」

ツバサ「あまり長居してもいられないわ。だれのか当てるゲームはやめにして、すみやかに穂乃果さんのを特定しましょう」

ツバサ「ハンガーラックにかかってるボディタオルは、ふむ、ナイロン製のものがほとんどね。一部綿のものがある」

あんじゅ「ちょっとまって、ハンガーラックにかかってるタオルは六つあるわよ!?」

英玲奈「ボディタオルなんてひとりにひとつで十分な代物じゃないのか。どういうこと?」

ツバサ「においを嗅いでみればどれが誰のか分かるわ。やってみましょう」

英玲奈「うう、お父様のにあたったら嫌だが、やってみるか」

ツバサ「すうーっ」

あんじゅ「すうーっ」

英玲奈「すうーっ」

ツバサ「うううっ……男臭い……じんましんが……」

あんじゅ「熟女の香り……くんくん、すぅーっすぅーっ、ハァハァ、お母様のね」

英玲奈「当たった! 穂乃果さんだ!」

英玲奈「ボディーシャンプーの香料と入り交じる穂乃果さんの匂い……ああ、これはもう極上のスイーツだ……くちゅくちゅ」

103: 2014/11/08(土) 19:18:50.30 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「じゃあ、二回目のトライアルよ」

ツバサ「すうーっ」

あんじゅ「すうーっ」

英玲奈「すうーっ」

ツバサ「ああ……これは……」

ツバサ「この穂乃果さんをよりフルーティにした感じの匂いは、雪穂さん!」

ツバサ「さっきのオヤジ臭がかき消えるよう……」

ツバサ「ああ、トリップできる~ああ~震えてきた~」

ツバサ「万華鏡をのぞいてるかのようなきらびやかな光がみえるわ~」

あんじゅ「わたしのは……さわやかで情熱あふれるこの香り……海未さん!?」

英玲奈「女の子らしい女の子の濃密な香り……わたしのはことりさんのだ」

ツバサ「なるほど、この前のティッシュの例と一緒ね」

英玲奈「ボディタオルが六つある謎がとけたな。幼なじみの二人はよく泊まりにくる」

英玲奈「だから、常にふたりのタオルが置かれているんだ」

ツバサ「すごく得した気分だわ」

ツバサ「タオルの繊維の一片をシャーレに回収しましょう」

ツバサ「もちろん、ことりさんと海未さんのものね」

英玲奈「保存用と食用にそれぞれ二片ずつたのむよ」

104: 2014/11/08(土) 19:21:31.80 ID:wZ7be4UW.net
あんじゅ「さて、風呂場はあらかたあさり尽くしたわね」

ツバサ「期待していた排水口にはなにもなし……ちょうど掃除されていたらしいわ」

英玲奈「壁や浴そうからも水垢は採取されなかった。残念の限りだ」

ツバサ「まあ、いいわ締めに浴槽の残り湯を回収しましょう」

あんじゅ「用意した500ミリのペットボトルにね。帰ったら沸かして紅茶でもいれましょう」

ツバサ「よし、回収するわよ」(ちゃぽん)

あんじゅ「ボトルの中身をフルハウスにしてね」

ツバサ「!?」

英玲奈「どうした、ツバサ?」

ツバサ「浴そうの温度がやたらと高いわ……」

あんじゅ「本当! 入浴できるくらいにあたたかいわ!」

英玲奈「どういうことだ! さっきまではぬるかったぞ!」

ツバサ「この家では、遠隔操作で風呂を沸かせるシステムになっているようね」

ツバサ「……このままでは誰かが風呂にやってくる!」

英玲奈「まずいぞ、もう脱衣所に人影が! はやくロープを登れ!」

ツバサ「ちょ、ちょっとまってよ!」

あんじゅ「だ、だめ……バレちゃう!」

109: 2014/11/08(土) 19:33:19.78 ID:wZ7be4UW.net
雪穂「とってもとってもみらくる~♪」

雪穂「さて、湯加減はどうかな~。うん、ちょうどいい」

ちゃぷん

雪穂「ああ、いいお湯~。気持ちいい~」

(天井裏)
英玲奈「なんとか逃げ切ることができたな」

あんじゅ「命拾いしたんダナ」

ツバサ「うかつだった。お風呂が好きな雪穂さんは一日に二回はいることがあるの……」

英玲奈「わたしたちも浴そうの温度変化に気付くべきだった」

あんじゅ「それにしても、気持ちよさそうに浸かってるわね。赤らんだ顔が可愛らしい」

ツバサ「そうね。彼女はとっても風呂好きだから」

あんじゅ「きれいなお肌。触れると、ぷるんってしそう」

英玲奈「なかなか肉付きがよく、男好きのする体だな」

ツバサ「おんなの私からみても魅力的よ」

英玲奈「風呂から出て、体を洗い出したぞ」

あんじゅ「ふうん、右腕から洗いはじめるタイプなのね」

ツバサ「ボディーソープじゃなくて、個人用の石けんで体を洗ってるわね」

英玲奈「女の子ともなれば、専用の石けんをもっているものだな」

112: 2014/11/08(土) 19:41:10.89 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「……あの、ひとつ思ったんだけど」

英玲奈「どうした?」

ツバサ「わたしたちがやってるのは『のぞき』じゃないの!?」

あんじゅ「そうだけど、どうしたの?」

英玲奈「『のぞき』……そんなの、『変態』がやることじゃないか!」

あんじゅ「まあ!」

英玲奈「一度はスクールアイドルの頂点に立ったA-RISEが『変態』に堕ちるなど」

ツバサ「ありえない」

あんじゅ「そうね! でも、ちょっとぐらい……」

ツバサ「だめよ! 私たちは紳士でなくてはいけない」

ツバサ「『タフでなければ生きられない。紳士でなくては生きてる資格はない』」

英玲奈「いいこというな。誰の言葉だ」

ツバサ「もちろん、私よ」

ツバサ「さあ、アイテムも手に入ったし、ズラかるとしましょう」

英玲奈「うむ。それがいいな」

あんじゅ「待って! 大変よ!」

英玲奈「どうしたんだ」

あんじゅ「シャーレをひとつ、風呂場に置き忘れてるわ!」

114: 2014/11/08(土) 19:56:02.80 ID:wZ7be4UW.net
ツバサ「本当だ……」

あんじゅ「鏡の真ん前に落ちてる」

あんじゅ「このままじゃ、気が付かれるのは時間の問題よ」

英玲奈「これがバレたらまずいことになる……」

ツバサ「冷静になって考えましょう」

ツバサ「あんなシャーレ見つかったところでなんだか分からないと思わない?」

あんじゅ「たしかに」

英玲奈「甘いな。雪穂さんになにかは分からなくても、彼女はきっと姉に相談する」

英玲奈「姉は、さらに友人に相談するかも知れない」

英玲奈「そして、東條希、絢瀬絵里……勘のいい連中に気づかれる」

あんじゅ「侵入仲間のことりさんにもみ消してもらうのは?」

ツバサ「おそらく『採取』を彼女は許さない……むしろ怒ってくると思う」

英玲奈「最終的に西木野真姫さんに医学的に調査されたらバレるな」

英玲奈「指紋でも取られたら足がつく。指だけど。クスクス」

ツバサ「なんとか取り戻さないと」

あんじゅ「でもどうやって!」

ツバサ「なんとかする……!」

119: 2014/11/08(土) 20:33:44.20 ID:wZ7be4UW.net
(風呂場)
雪穂「りんりんりんがべ~♪」

雪穂「お風呂ってデトックスできて気持ちよくて最高」

雪穂「体重も一度に五キロほど減ってくれないかな~」(お腹もみもみ)

雪穂「のぼせてきちゃった……そろそろ上がろうかな」

雪穂「それにしても……すごい湯気。煙でもたいたみたい……」

(ガサガサ……)

雪穂(だれ……? 湯気の向こうにだれかいる)

雪穂「お姉ちゃん?」

??「ふぁ、ファイトだよっ」

雪穂「やっぱりお姉ちゃんか」

雪穂「もう、また寝ぼけて風呂場にきてるの?」

??「…………」

雪穂「お姉ちゃん?」

雪穂「いなくなっちゃった。変なおねえちゃん」

雪穂「まあ、いいか。いつものことだし」

雪穂「だーからねあげるよゆうき~♪」

121: 2014/11/08(土) 20:39:27.24 ID:wZ7be4UW.net
(天井裏)
ツバサ「ふう……なんとか回収成功」

あんじゅ「やったわね」

英玲奈「まさか、発煙筒がここで役立つことになるとはな」

あんじゅ「持つべきは発煙筒ね」

英玲奈「しかし、風呂場漁りはリスクが高過ぎる。次からは手を引かせてもらうよ」

ツバサ「そうね。たしかにリスクは高い……」

ツバサ「でも、得られるものはすごいわ」

英玲奈「確かにすごい……だが続ける勇気はないな」

あんじゅ「ほら人生ちょっとの♪」

英玲奈「!?」

ツバサ「勇気と♪」

英玲奈「情熱でしょう♪」

三人「What'cha do what'cha do? I do “Private Wars”♪」

三人「ほら正義とズルさ手にして~♪」

英玲奈「分かったよ。これからも続けよう〝風呂場漁り〟を」

ツバサ「分かってくれてうれしいわ」

(浴室から)雪穂「だ、誰! 上に誰かいるの!?」

あんじゅ「あら、バレちゃったわね」

英玲奈「調子にのって大声で歌ってしまったな。反省反省」

ツバサ「撤退でしょう♪」

123: 2014/11/08(土) 20:43:40.35 ID:wZ7be4UW.net
(一方、園田家)
海未「やってしまいました……ことり」

海未「一線を越えてしまいました」

ことり「説明を」

海未「ついつい、A-RISEのみなさんのゴミを盗んできてしまったのです……」

海未「ほかのグループにまで手を出すなんて、最低です、私」

ことり「そんなことないよ。せっかくだし、山分けしよう」

海未「はい……」

海未「それにしても、意外なことに警備は手薄でした」

海未「A-RISEともなれば、親衛隊でも塀の周辺に配置させていそうですが」

ことり「A-RISEの三人となら今夜会ったよ。穂乃果ちゃん家の天井で」

海未「ああ、そうですか」

海未「まってください、彼女たちも天井に!?」

ことり「うんよく会うよ。親密の証に穂乃果ちゃんの前頭部に生えてたのを一本あげたの」

海未「A-RISEのみなさんも……穂乃果をねらっている?」

ことり「まさか……でも」

海未「それが明らかになったら……ただでは置けませんね」

ことり「細かい話は、A-RISEのゴミ漁りを終わらせてからにしようよ……」
〈終わり〉

126: 2014/11/08(土) 20:45:56.88 ID:wZ7be4UW.net
以上です
読んでくださった方々ありがとうございました

155: 2014/11/12(水) 00:06:03.32 ID:ssMr7XhM.net
ツバサ(フーッ、フーッ)

ツバサ(コクン……)

ツバサ「真夜中に飲むお茶というのもいいものね」

英玲奈「ああ、とてもいい」

あんじゅ「心が落ち着くわ」

ツバサ「それにしても香り高い紅茶」

ツバサ「茶葉……いいえ、水がいいのかしら?」

あんじゅ「するどいわね、ツバサ。さっき水洗トイレからくんできたの」

ツバサ「どおりでいい匂いがすると思った」(ウインク)

英玲奈「ロウソク一本の明かりというのも雰囲気があっていいな」

英玲奈「侵入家庭だから堂々と照明をつけられないのもあるが」

あんじゅ「でもすごく雰囲気でてる」

あんじゅ「それに、あまり侵入しない家だから新鮮よね」

ツバサ「うん。矢澤にこさん宅……久しぶりの侵入」

156: 2014/11/12(水) 00:07:45.90 ID:ssMr7XhM.net
英玲奈「侵入家庭の居心地良さに、つい忘れていたが……」

英玲奈「ツバサ、今度こそ家人は戻ってこないんだよな?」

ツバサ「その点、抜かりはないわ」

ツバサ「にこさんは、三年組のメンバーと勉強合宿」

ツバサ「卒業が危ぶまれるぐらい単位が取れてないらしいわよ」

ツバサ「にこママはこころちゃん、ここあちゃん、こたろうくんを連れて実家帰り」

あんじゅ「家族全員が戻るのは明日の昼……ということよね」

ツバサ「そう。一応近所の目があるから、あまり大声は立てられないけど、まあ、一晩ゆっくり過ごせるわ」

英玲奈「それを聞いて安心した」

英玲奈「ゆっくりとゴミ漁り、家探しができるじゃないか」

あんじゅ「……ねえ、思ったんだけど、矢澤にこさんって言ってみれば私たちの信者よね」

英玲奈「ああ、そうだ」

あんじゅ「だったら、こっそり侵入しなくても、『ごみちょうだい』って言えばくれるんじゃない」

英玲奈「それは違うぞ」

159: 2014/11/12(水) 00:09:39.87 ID:ssMr7XhM.net
英玲奈「山登りが楽しいのは、途中の景色を楽しみ、心地よい汗を流せるからだ」

英玲奈「最初からヘリコプターで山頂に行ってもそれは登山とはいわない。ゴミ漁りも同じことだ」

あんじゅ「なるほど……」

あんじゅ「住人にバレるリスク。『アイドルなのにこんなことしてる』っていう後ろめたさ。職質されないかという緊張感――」

あんじゅ「これこそがゴミ漁りの醍醐味なのね」

英玲奈「そういうこと」

英玲奈「さて、小腹がすいたな。生ごみから食材を探してなにか小料理でも作るとしよう」

あんじゅ「賛成」

英玲奈「ん? どういうことだ」

あんじゅ「どうしたの?」

英玲奈「ごみがすべてなくなってるぞ……」

英玲奈「各部屋のゴミ箱、台所の三角コーナー、シンクのゴミ受け、トイレの消臭ボックス……どこにもない」

あんじゅ「この地区の回収日は、明後日のはずよ? どうして!?」

161: 2014/11/12(水) 00:11:56.66 ID:ssMr7XhM.net
ツバサ「矢澤家のごみ袋はね」

ツバサ「もうごみ捨て場に出されてしまっているわ」

あんじゅ「どういうこと!?」

英玲奈「説明してくれ、ツバサ」

英玲奈「それを知っていてなぜ、回収してこないんだ」

あんじゅ「説明がほしいのはそのことだけじゃないわ」

あんじゅ「さっきも言った通り、この地区のゴミ回収は明後日」

あんじゅ「ごみ捨て場に持って行くには、タイミングが早すぎる」

ツバサ「みんなの疑問ももっとも……」

ツバサ「みんなには黙っていたけれど、きょう矢澤さんの家に来たのには理由があるの」

英玲奈「理由だと?」

あんじゅ「ただリゾート目的で侵入したというわけではないというのね」

ツバサ(うなずく)

ツバサ「矢澤家のごみ回収にまつわる謎をとくためよ」

163: 2014/11/12(水) 00:16:49.85 ID:ssMr7XhM.net
ツバサ「ごみは、決められた回収日に、きめられた回収場所に出されるのが常識」

ツバサ「このルールを破る人はいない。だけど、例外が矢澤家なの」

あんじゅ「矢澤家はルール破りしてるってこと?」

英玲奈「それならけしからん話だが……?」

ツバサ「決まった日以外に出してはいけないのは、回収まで置きっぱなしになってしまうから」

ツバサ「夏場に生ごみを置きっぱなしにしたなら最悪。臭いがきつくなって虫もたかってくる」

英玲奈「なにが言いたいんだ、ツバサ」

ツバサ「矢澤家にはね、回収日のルールを無視しても、速やかに回収していく業者がついているの」

あんじゅ「ウソでしょ?」

ツバサ「矢澤さんのごみをチェックしていて不思議に思ったの、回収日にいつもごみがない」

ツバサ「そこで、何かあると、しばらく監視してみたの」

ツバサ「そしたら、矢澤家は回収日を守っていないこと、そして、置かれてから必ず二時間後に回収業者がやって来ることがわかった」

ツバサ「燃えるごみ、燃えないごみ、空き瓶、空き缶、粗大ごみ……」

ツバサ「出す日、出すごみがイレギュラーだったとしても『業者』は必ずくる」

165: 2014/11/12(水) 00:19:12.80 ID:ssMr7XhM.net
英玲奈「それはおかしい。本当にそんなことがあるのか」

あんじゅ「このアパートでは、ごみ回収の方法が普通じゃなくなっている……とか」

あんじゅ「公的に発表されているゴミ出し日は、形がい化していて、いつも業者が適宜きてくれるというあんばいに」

ツバサ「いい読みだけど、ちょっと違うのよね」

ツバサ「『業者』が回収していくのは、あくまで『矢澤家』のごみだけ。間違えて出された別家庭のごみは見向きもされない」

英玲奈「……それはなにかあるな」

あんじゅ「なにものかしら、その業者?」

英玲奈「矢澤家で雇った業者?」

あんじゅ「個人が、わざわざ業者を雇うと思う?」

あんじゅ「そんなことしてたら家計簿が赤字でフルハウスになるわ」

ツバサ「――さて、回収場所にごみを仕掛けてからそろそろ一時間」

英玲奈「あと一時間程度で『業者』がくるな」

ツバサ「『業者』の正体を突き止めるわ」

ツバサ「そして、矢澤家のごみはいただきよ!」

あんじゅ「その前に便所水紅茶をもう一杯飲みたいわね」

167: 2014/11/12(水) 00:24:36.09 ID:ssMr7XhM.net
(ごみステーションのかげで)
ツバサ「そろそろ時間ね」

英玲奈「うむ。ツバサが仕掛けてから二時間経過」

あんじゅ「ほんとうに来るのかしら?」

ツバサ「しーっ。きたぞ」

ブロロロロ……

ツバサ「なんなのこの回収車、暗闇でも赤色とわかるほどのドぎつい色だわ」

英玲奈「奇抜すぎるとでも言えばいいのだろうか、かなりキ○ガイじみている」

あんじゅ「漢字で社名らしきものが振ってるけどよく読めない……せいぼくや?」

英玲奈「速やかに矢澤家のごみを回収している」

あんじゅ「作業員のユニフォームまで赤という徹底ぶり、気持ち悪いわね」

英玲奈「まもなく出発しそうだぞ」

ツバサ「追うわよ」

あんじゅ「どうやって。あっちは車よ」

ツバサ「ヘイ、タクシー」

あんじゅ「いつの間に」

ツバサ「この事態を見越して、待機させておいたのよ」

168: 2014/11/12(水) 00:26:43.28 ID:ssMr7XhM.net
運転手「どちらまで」

ツバサ「あの赤い車を追って」

英玲奈「ツバサ、大丈夫なのかこのタクシー」

ツバサ「大丈夫だけど、どうして?」

英玲奈「運転手が変なマスクしてるし怪しいぞ」

あんじゅ「なにものなのかしら、この運転手?」

運転手「まあ、安心しとき」

運転手「うちはお客さんの秘密は守る主義やから」

ツバサ「ね、信頼できるでしょ」

英玲奈「うーん」

運転手「金次第でな」

ツバサ「A-RISEの財力なら大丈夫」

あんじゅ「なんだかどこかで聞いたような声ね」

運転手「そんなことあらへんよ」

ツバサ「それより、ちゃんと逃さず尾行できるんでしょうね」

運転手「大丈夫、うちのラッキーパワーを信じて」

英玲奈「ラッキーよりもドライビングテクで尾行してくれ」

180: 2014/11/12(水) 22:08:43.41 ID:ssMr7XhM.net
あんじゅ「どこまで向かうのかしら、あの赤い車……」

英玲奈「いまだ秋葉原の街中を進んでいるな」

ツバサ「それにしても目立ってるわね。待ちゆく人達がみんな車を見てるわよ」

英玲奈「おっと、赤い車が車線を変えたぞ、運転手さん!」

運転手「まかしとき」

英玲奈「ばれないように一定距離を置いて尾行している」

英玲奈「運転手さんは、とてもテクニックがありますね」

運転手「そうやろ。なんせまあ、飯の種やからね」

あんじゅ「それにしても、以前どっかで会いませんでしたっけ?」

運転手「知らんな」

あんじゅ「その特徴的な可愛らしい声に、聞き覚えがあるんです」

ツバサ「あんまり詮索するのは失礼よ、あんじゅ」

あんじゅ「そうね、ごめんなさい」

運転手「まあ、ええよ」

181: 2014/11/12(水) 22:12:58.73 ID:ssMr7XhM.net
(十分後)
ツバサ「うーん……尾行は順調なんだけれど」

ツバサ「相手の車がどこに向かっているのか見当がつかないわね」

英玲奈「住宅街に入ったと思ったら、こんどは市街地」

あんじゅ「今度はまた住宅地に入っていったわよ」

ツバサ「なんだかぐるぐる堂々めぐりしてる感じ……」

英玲奈「まさかとは思うが、あの赤い車、ずっと同じ所を走り続けてないか?」

ツバサ「もしかして、尾行に気づかれている……!?」

英玲奈「赤い車が急加速し始めたぞ!」

ツバサ「運転手さん! こっちもスピード上げて!」

運転手「よし、のぞみパワーでたっぷり追跡や!」

あんじゅ「ちょっと! 前の十字路! 赤信号よ!」

英玲奈「あぶない、大型トラックが横切ってくる!」

あんじゅ「ぶつかる!」

キキーッ!

あんじゅ停まった……」

ツバサ「ふぅ……あやうく永遠フレンズの宣伝トラックに激突するところだったわ」

英玲奈「くっ……巻かれてしまったか……」

運転手「事故らなくてラッキーやったやろ? ん?」

182: 2014/11/12(水) 22:14:54.32 ID:ssMr7XhM.net
(矢澤宅に戻る)
英玲奈「せっかく侵入したというのに、ごみはなし……」

あんじゅ「画竜点睛を欠く結果になってしまったわね……」

あんじゅ「ゴミ漁りのない家宅侵入なんて、肉のないすき焼き状態よ」

ツバサ「まあまあ、みんな」

ツバサ「あんじゅ、やけになって矢澤ママの化粧水飲まないの」

あんじゅ「だって~」

英玲奈「これが飲まずにいられるか」

ツバサ「英玲奈も、こたろうくんのベビーオイルなんか飲んじゃダメよ」

ツバサ「……実はみんなにひとつ嘘をついていたの」

あんじゅ「えっ?」

英玲奈「なんだと?」

ツバサ「二人はわたしがみすみすごみを渡すようなマネをすると思う?」

ツバサ「ごみ置き場に仕掛けた〝矢澤〟のごみはダミー。本物は……」

ガラッ

英玲奈「押入れに隠しておいたのか!」

183: 2014/11/12(水) 22:20:34.37 ID:ssMr7XhM.net
あんじゅ「もう、ツバサったらあるならもっと早く言ってよ」

ツバサ「あはは、ごめんね」

英玲奈「五人の女の子が暮らす家庭……どんなごみが出るのか楽しみだ」

あんじゅ「あら英玲奈、こたろうくんは女の子だっけ?」

英玲奈「あのくらいの年齢は女の子にカウントしても問題ないだろう」

ツバサ「その通り」

あんじゅ「……感動した。なんて斬新な視点なの……」

ツバサ「じゃあ、さっそく開封するわよ」

ツバサ「使い古しの化粧用スポンジ、ちぎれた髪留めのゴム、使いきった香水のボトル」

英玲奈「すごいぞ、女の子の秘密が感じられるアイテムばっかりだ!」

あんじゅ「女の園……天国なんダナ」

ツバサ「ハァハァ、さらにいいのないかしら?」(ガサガサ)

ツバサ「ん? こ……これは」

英玲奈「おお……」

あんじゅ「ついに出た、おパンツ!!!」

185: 2014/11/12(水) 22:31:24.01 ID:jhNwfdw5.net
アライズェ

186: 2014/11/12(水) 22:32:07.43 ID:tEEqXM/6.net
英玲奈さんちょっと何言ってんのか良くわかんないです

187: 2014/11/12(水) 22:34:59.40 ID:ssMr7XhM.net
ツバサ「パンツなんてすごくレアよ! URよ、UR」

英玲奈「みたところ、素材は絹。色は光沢のある白で、花がらの刺しゅうあり。サイズは小さめ」

英玲奈「使い古しなのか、ゴムの緩み及びクロッチ部分にかすかな汚れあり」

英玲奈「……プロなら頭にたまらず頭にかぶるだろう」

あんじゅ「だれが使っていたものかしら?」

ツバサ「サイズが小さいからこころちゃん? ここあちゃん?」

英玲奈「こたろうくんの可能性もあるな」

ツバサ「もちろんにこさんの可能性だってある」

ツバサ「夢が広がるわ……」

英玲奈「夜は長い。たっぷり堪能しようじゃないか……」

カチャ……カチャ

三人「!」

英玲奈「どういうことだ……」

あんじゅ「鍵が……鍵が開けられている!?」

ツバサ「なぜ!? きょうはだれも帰ってこないはずよ!」

英玲奈「大変だ、逃れようがないぞ!」

ガチャり

ツバサ「あ、あなたは……」

189: 2014/11/12(水) 22:46:37.16 ID:ssMr7XhM.net
ツバサ「あなたは……西木野真姫さん……」

英玲奈(となりに控えるのは、武闘派で知られるお手伝いさんの和木さんか)

あんじゅ「真姫さんがどうしてここに……」

真姫「こっちのセリフ」

真姫「まったく、最近にこちゃんの周辺をうろついている人がいると思えば」

真姫「まさか、あなたたちだったとはね」

ツバサ「気づいてたの……?」

真姫「うすうすね、でもA-RISEだとは意外だったわ」

ツバサ「それでどうするの?」

真姫「どうするですって?」

真姫「そうね、まずはそのごみ、すべて渡してもらおうかしら」

ツバサ「……まあ、落ち着いてちょうだい」

ツバサ「あなたもごみ狙いでここに来たということでしょう?」

ツバサ「それなら、仲良く山分けに――」

真姫「論外。そのごみはすべて私のものよ」

真姫「その手に持ってるにこちゃんのおパンツも含めてね」

ツバサ(ひと目でにこさんのものと見破るなんて、やはりただ者じゃない……)

193: 2014/11/12(水) 23:02:03.14 ID:ssMr7XhM.net
ツバサ「あなたに敬意を払って、このパンツはあげるわ」(ぽいっ)

あんじゅ「ツバサ!」

真姫(キャッチして頭に装着)

ツバサ「でも、ほかのものは渡さない。わたしが先に手に入れたんだもの」

英玲奈「そうだ。ごみは先取したものに帰属する……それがごみ漁りのマナー」

真姫(ため息)

真姫「あなたたち、立場が分かってないのね」

ツバサ「えっ……?」

真姫「わたしは矢澤家と契約して、報酬と見返りにごみの所有権を有している」

真姫「……つまり、矢澤家からごみを買っているの」

真姫「権利上、矢澤家のごみはすべてわたしのものってわけ」

ツバサ「なんですって!」

英玲奈「じゃあ、あの赤い回収車は……」

真姫「このために私が設立した会社の車よ」

ツバサ「このために会社作るとか……セレブどころの話じゃない」

真姫「ちなみに社長は私」

あんじゅ(じゃあ、あの車の字は〈せいぼくや〉じゃなくて、〈にしきの〉って読むのだったのね)

198: 2014/11/12(水) 23:15:23.92 ID:ssMr7XhM.net
真姫「さっきはダミーのごみをごちそうさま」

真姫「ツバサさんが鼻をかんだティッシュがぎっしりつまってたから、とりあえずひとつだけ食べておいたわ」

あんじゅ「そんな……ティッシュを食べるなんて」

ツバサ「さすがは西木野さん……勝てないわ」

真姫「さ、ごみ袋をはやく渡して」

英玲奈「……いやだと言ったら?」

真姫「ふーん、いい根性じゃない」

英玲奈「このゴミ袋はツバサが心を尽くして各ごみ箱から回収したもの」

英玲奈「おいそれと渡すわけにはいかないんだ!」

真姫「手荒なことはしたくなかったんだけど……」

真姫「和木さん」

和木「御意」

英玲奈「コブラツイストはやめて! コブラツイストはやめて!」

和木「回収しました」

真姫「ご苦労さま」

200: 2014/11/12(水) 23:26:19.40 ID:ssMr7XhM.net
真姫「そう、おとなしく渡してくれればいいのよ」

真姫「でも、さすがA-RISEよね。わたしをここまで手こずらせるなんて」

真姫「ほんとうは、家宅侵入も独占契約してるから追い出したいところだけど」

真姫「きょうのところは勘弁してあげるわ。それじゃ」

ツバサ「待って……」

真姫「まだ何か用?」

和木(ギロッ)

ツバサ「あなたはそれでいいの? ごみを金で買うなんて」

英玲奈・あんじゅ「ツバサ……」

ツバサ「ごみ漁りってロマンにあふれたものでしょう?」

ツバサ「お金で買うなんて……フェアーじゃないわ!」

真姫「…………」

真姫「イミワカンナイ。泥棒するよりましでしょ」

ツバサ「それは……」

ツバサ「言い返せないわね」

あんじゅ「少なくとも相手の了解得てるわけだしね」

英玲奈「今回はわたしたちの負けか」

真姫「ソウネ」

〈終わり〉

220: 2014/11/14(金) 20:02:06.29 ID:j5+zB3kL.net
英玲奈「ハラショー」

ツバサ「ハラショー」

あんじゅ「ハラショー」

英玲奈「またピロシキか」

ツバサ「絢瀬家が一番侵入が楽。しっかりしてるようで警戒感ゼロだから」

ツバサ「それなのに、出るごみがピロシキばっかりってのは」

あんじゅ「キツイわね……」

英玲奈「腹ごなしするにはいいのだが」

ツバサ「まあ、そうなんだけど」

あんじゅ(もぐもぐ)

英玲奈(もぐもぐ)

ツバサ(もぐもぐ)

ツバサ「さすがに飽きてくるわね」

222: 2014/11/14(金) 20:05:19.94 ID:j5+zB3kL.net
ツバサ「前にはペリメニのときもあったけど」

英玲奈「あれはうれしかったな」

あんじゅ「それにしても、なぜこんなにピロシキだらけなのかしら」

英玲奈「さあ。ピロシキ屋でもやる気なのだろうか?」

あんじゅ「そうねえ。失敗作とはいえないようなものが捨てられたりしてるし」

ツバサ「もったいないオバケが出るレベルよ」

ツバサ「食べ物のアウトレットがあったら並べられるレベルだもの」

あんじゅ「いいこというわね、食べ物のアウトレット」

英玲奈「絢瀬絵里は完璧主義なんだな。少しでも完成度の低いものは容赦なく排除する」

ツバサ「それがμ'sの完成度向上にも役立っているのね」

あんじゅ「……もう、ピロシキしか出てこないじゃない!」

あんじゅ「こっちの袋にはダスビダーニャして、もうひとつの袋を漁るとしましょう」

英玲奈「そうだな。こっちはピロシキしか入ってないようだ」

223: 2014/11/14(金) 20:12:15.62 ID:j5+zB3kL.net
ツバサ「こっちの袋、持ってくる時、めちゃくちゃ重かったのよ」

英玲奈「見たところ、なんのへんてつもない袋だが」

ツバサ「持ち上げてみて」

英玲奈「うっ……なんだこれは……!」

あんじゅ「どうしたの!? そんなに重いの!?」

英玲奈「……持ってみろ」

あんじゅ「きゃっ! 私には重くてとてもとても無理!」

ツバサ「でしょう?」

あんじゅ「いったいなにが入っているのかしら?」

ツバサ「とてもいいものが入ってる予感がするのよね!」

英玲奈「絢瀬家といえば、前は絵里さんの汗をたっぷり吸ったタオルが入ってたな」

あんじゅ「亜里沙さんの使い古した枕カバーがあったこともあったわよ」

ツバサ「今回は、それらを上回る〝大物〟が入っている予感がするの」

あんじゅ「待ちきれない、早く開けて!」

224: 2014/11/14(金) 20:28:37.86 ID:j5+zB3kL.net
ツバサ「結び目をほどいて……開帳っと……」

パサッ……

ツバサ「…………」

あんじゅ「…………」

英玲奈「…………」

亜里沙「ハラショー!」

ツバサ「……あなたは、絵里さんの妹の」

亜里沙「亜里沙といいます」

亜里沙「A-RISEのみなさんですね。こんばんわ」

ツバサ「こんばんわ」

あんじゅ「こんばんわ」

英玲奈「こんばんわ」

ツバサ「そうじゃなくて……あなたは一体ごみ袋のなかで何を?」

226: 2014/11/14(金) 20:37:55.24 ID:j5+zB3kL.net
亜里沙「みなさんが、たまにうちのごみを持っていくので」

亜里沙「いったいどこに持っていくのか興味があって」

亜里沙「それでごみ袋のなかに潜んでみたんです」

亜里沙「ここに連れて来られてちょっとびっくりしました」

ツバサ「なんてこと……」

亜里沙「いけませんでしたか!?」

ツバサ「いいとか悪いとかじゃなくてね……」

あんじゅ「恐ろしい子……」

ツバサ「わたしたちの行動が完全バレてたのね……」

英玲奈「不覚だった……亜里沙さんはすごく鋭敏な子だったんだな」

あんじゅ「終わったわね……ゴミ漁りが明るみになってしまう」

亜里沙「ハラショー! 亜里沙は絶対にバラしたりしません!」

亜里沙「だってみなさん、なんだか楽しそうですし」

228: 2014/11/14(金) 20:47:21.60 ID:j5+zB3kL.net
ツバサ「本当? 本当に誰にもいわないのね?」

亜里沙「はい。亜里沙はべつに自分のパンツ見られても平気ですし」

亜里沙「鼻水をかんだティッシュだとか生理用品を盗られても気にしません」

亜里沙「だから、ごみ袋が盗まれていくのも別に気にしません」

あんじゅ「あたしたちが言うのもなんだけど、将来が心配になる子ね……」

ツバサ「こんなんじゃ変態オヤジの餌食になっちゃうわよ」

英玲奈「この子はわたしたちが全力で守らないといけないのではないだろうか?」

亜里沙「?」

亜里沙「ところで、みなさんはものを盗んだりしてどうするんですか?」

ツバサ「……なんてラディカルな問い」

あんじゅ「うーん、どう答えたらいいのかしら」

英玲奈「性的興奮のためだ」

亜里沙「ハラショー!」

230: 2014/11/14(金) 20:52:22.20 ID:j5+zB3kL.net
ツバサ「直球過ぎない?」

英玲奈「下手なごまかしは逆効果だ。ここは正直にいうぞ」

亜里沙「みなさんはひょっとして『変態さん』ですか?」

ツバサ「ノンノン、『紳士』」

亜里沙「ハラショー……」

亜里沙「『紳士』……かっこいいですね」

ツバサ「うふ、そうでしょ。でも憧れたりしたらだめよ」

亜里沙「どうしてですか?」

英玲奈「キミにはまだ早いんだ」

あんじゅ「もうちょっと大人になったらね」

亜里沙「亜里沙……はやく大人になりたいな」

231: 2014/11/14(金) 20:58:53.57 ID:j5+zB3kL.net
亜里沙「ところで、みなさんはごみを盗んでいるんですよね」

英玲奈「ああ、そうだ。見ての通り」

亜里沙「あのですね、知り合いに『ごみを盗んで欲しい』っていうひとがいるんですよ」

ツバサ「『ごみを盗んで欲しいひと』ですって?」

あんじゅ「なにそれ、本当にいるの?」

英玲奈「盗んで欲しいっていうのが解せないな……」

英玲奈「まるで盗んでいるものたちがいることを熟知しているようだ」

ツバサ「ちょうどわたしたちのような人間を知っているかのようね……」

あんじゅ「亜里沙ちゃん、そのひとがどうして盗まれたがっているか分かる?」

亜里沙「お金だそうです。その人にはお金がいるんだそうです」

232: 2014/11/14(金) 22:17:08.24 ID:j5+zB3kL.net
英玲奈「その人はごみがお金になることを知っている……?」

亜里沙「はい。その人のお友達が、ある人にごみを売っているみたいで」

 あんじゅ「きっと西木野真姫さんにゴミを売ってる、矢澤にこさんのことね」(ヒソヒソ)

 ツバサ「なるほど。それを耳にして、自分のも売れないのかと思ったのね」(ヒソヒソ)

英玲奈「それなら、その人も同じ人からごみを買ってもらえばいい話じゃないのか?」

亜里沙「断られたみたいです。買い手のひとも、無尽蔵にお金があるわけじゃないと……」

英玲奈「まあ、当然だな」

ツバサ「どちらにしろ、わたしたちは力になれないわ」

あんじゅ「わたしたちは、お金で動くタイプじゃないの」

英玲奈「感覚のままに、家宅侵入して、お宝を探す……」

ツバサ「そんなロマン探求型のごみ漁りなの」

234: 2014/11/14(金) 22:23:45.70 ID:j5+zB3kL.net
亜里沙「そうですか……」(しょぼん)

あんじゅ「…………」

あんじゅ「亜里沙ちゃん、とっても悲しそう」

英玲奈「うむ……」

ツバサ「他人のことにここまで親身になれるなんていい子ね」

あんじゅ「どうかしら、話だけでも聞いてあげるというのは」

英玲奈「賛成」

ツバサ「ねえ、亜里沙ちゃん」

亜里沙「ツバサさん……」

ツバサ「お話だけでも聞けないかしら……その人のこと」

亜里沙「本当ですか? ありがとうございます。今から電話してみます」

235: 2014/11/14(金) 22:26:02.10 ID:j5+zB3kL.net
?「もしもし、亜里沙ちゃん?」

ツバサ「もしもし」

?「亜里沙ちゃんじゃない! だ、誰?」

ツバサ「あーこんばんわ。あなたがゴミを買って欲しいひと?」

?「……もしかしてゴミを買ってくれるんですか?」

ツバサ「そういうわけじゃないんだけど」

?「なーんだ、期待して損したにゃ」

ツバサ「きっと悩みがあるのよね。力になって上げたいと思って」

?「…………」

?「本当ですか……?」

ツバサ「ええ。わたしは……仮名だけどキサラとでも呼んでくれるかしら」

?「私のことは凛、星空凛と呼んでほしいにゃ」

ツバサ(凛さんだったのね……)

237: 2014/11/14(金) 22:57:46.72 ID:j5+zB3kL.net
ツバサ「お金がいるんですって? それはどうしてなの?」

凛「凛にはかよち……花陽ちゃんっていう親友がいるんです」

ツバサ「へーそうなんだ」

ツバサ(まあ、知ってるけど)

凛「花陽ちゃんってご飯が大好きなんです」

ツバサ「ふんふん」

ツバサ(それも氏ぬほど知ってる)

凛「ご飯が好きすぎて、とうとう米類依存症になってしまって」

ツバサ「えっ、それは深刻ね」

凛「毎日四回、二百グラムの米を投与しないと、禁断症状が出てしまうんです」

凛「凛はかよちんのことが心配で……米を買ってあげているんですけど」

凛「凛のお小遣いだと、一日四百グラムが限界で……」

ツバサ「だから、お金がいるのね」

凛「はい、そうなんです、キサラさん……」

241: 2014/11/14(金) 23:03:45.23 ID:j5+zB3kL.net
ツバサ「――と、こういう事情なの」

英玲奈「なるほど」

あんじゅ「親友のために米代稼ぎか……いい関係じゃない」

英玲奈「しかし、施設に収容したほうがいいんじゃないのか」

英玲奈「パン食療法で、米の呪いから救ってくれるようだぞ」

ツバサ「それも考えたんだけど、少しでも花陽さんが米から離されるのを見たくないんですって」

英玲奈「じゃあ、どうするっていうんだ?」

英玲奈「お金がなくて米が買えないのなら、施設行きもしょうがないだろう」

あんじゅ「わたしたちにできることがあるとすれば――」

あんじゅ「星空凛、小泉花陽の家のごみ漁りをして、なかから使えそうなモノを売る」

あんじゅ「そうやってお金を工面してあげることしかできないんじゃないのかしら」

ツバサ「それだと……たぶん、うまくいかないわね」

243: 2014/11/14(金) 23:08:23.08 ID:j5+zB3kL.net
(夜・星空家前)
英玲奈「ここにきて、ふたりの観察をしようというのか、ツバサ」

あんじゅ「晩御飯中ね、ふたりとも」

あんじゅ「一汁一菜のシンプルなお食事だわ」

英玲奈「いや、後ろにはおひつがふたつほど並べられているぞ」

あんじゅ「本当……あれ全部食べるのかしら?」

英玲奈「どうやら、そのようだな」

あんじゅ「それで、説明してよねツバサ、どうしてごみを売る作戦が成功しないのか」

ツバサ「まあ、見ててちょうだい」

ツバサ「じつは凛さんと花陽さん家のごみは極端に少ないの」

ツバサ「観察していれば、すぐにその理由がわかるはずよ」

あんじゅ「理由……」

英玲奈「いったいどんな事情があるんだ?」

244: 2014/11/14(金) 23:11:54.63 ID:j5+zB3kL.net
(凛の部屋)
凛「ご飯おいしかったね、かよちん」

花陽「そうだね、凛ちゃん」

花陽「あれ、凛ちゃん、ごはんつぶついてるよ」

凛「え? どこどこ? 取ってほしいにゃ」

花陽「ふふっ、口元」(ヒョイパク)

凛「あ、そういうかよちんは服に糸くずついてるにゃ」

花陽「えっどこ?」

凛「ここだよ、肩」(ヒョイパク)

(星空宅前)
あんじゅ「今、衣類の一部を食べてなかった?」

英玲奈「うむ……上級者だな」

ツバサ「こんな調子だから、ごみが一向に溜まらないの」

ツバサ「前には故障した電動歯ブラシとかも食べてたし」

245: 2014/11/14(金) 23:15:23.17 ID:j5+zB3kL.net
花陽「うっ米が……米が切れてきた……」

花陽「はぁーっ、はぁーっ、苦しい! 苦しいよお!」

凛「た、大変にゃ!」

凛「落ち着くにゃ凛、こういうときは落ち着くにゃ……」

凛「机の上に、米粉を何列かに並べて……」

凛「は、はい、かよちんストロー」

花陽(ストローを鼻に当てがう)

花陽「スーッ!」

花陽「あああああ!! きもちぃい……!」

凛「よ、よかったにゃ……」

花陽「スーッ! スーッ!」

凛「米粉、気持ちよさそう……」

凛「良かったね、かよちん……」

250: 2014/11/14(金) 23:25:04.60 ID:j5+zB3kL.net
ツバサ「これは……そうとう深刻」

あんじゅ「なんとかしてあげないと!」

英玲奈「でもどうする気だ? 両家からごみは出ないし、売る作戦もできない」

ツバサ「うーん……困ったわね」

英玲奈「やっぱり施設に入れて上げたほうが……」

亜里沙「こんばんわです、みなさん」

あんじゅ「亜里沙ちゃん」

亜里沙「きょうのゴミの中から差し入れ持ってきました」

亜里沙「姉のつくった、失敗ピロシキです」

ツバサ(正直飽きたんだけどねえ……)

ツバサ「ありがとう、亜里沙ちゃん、いただくわ」

亜里沙「みなさんも」

英玲奈「うむ……(もぐもぐ)しかし、絵里さんもよく飽きもせず毎日つくるな」

251: 2014/11/14(金) 23:29:23.87 ID:j5+zB3kL.net
あんじゅ「そういえば、どうして絵里さんは毎日こんなにピロシキを作るの?」

亜里沙「μ'sのみなさんや、生徒会のみなさんにピロシキをさし上げているんです」

亜里沙「でも、姉はプライドが高いから、変なものはあげられないと」

亜里沙「それで、ちょっとでもキズだったりコゲのあるものはすべて廃棄」

英玲奈「おかげで、絢瀬家のゴミはピロシキだらけなわけね」

亜里沙「そうなんです」

あんじゅ「これだけ美味しいのにもったいないなあ」

亜里沙「亜里沙もそう思います」

ツバサ「それよ……」

英玲奈「ツバサ?」

亜里沙「どうしたんですか、急に?」

ツバサ「使えるわ……このピロシキ」

253: 2014/11/14(金) 23:38:37.23 ID:j5+zB3kL.net
(翌日・星空宅)
花陽「うっ……米成分が切れた……」

花陽「めまいが……動悸がはじまっちゃうよう……」

凛「はい、かよちん、これ!」

花陽「あの、凛ちゃん、これって……」

凛「うん、ピロシキだよ」

花陽「違うよ……凛ちゃん、は、花陽が欲しいのは」

花陽「白い色の気持よくなれるやつだよぉ~ハァハァ」

凛「いいから!」

凛「いいから食べて、かよちん!」

花陽「……うう」

花陽(パク……)

花陽「……! これは……」

凛「どう、かよちん?」

花陽「おい……しい」

254: 2014/11/14(金) 23:43:45.34 ID:j5+zB3kL.net
(星空宅前)
英玲奈「どういうことだ、ピロシキで花陽さんの禁断症状がおさまったぞ」

亜里沙「ハラショー!」

あんじゅ「教えてツバサ、どういう魔法を使ったの?」

ツバサ「魔法なんてもんじゃないわ」

ツバサ「ピロシキの材料にちょっと細工をしたのよ」

英玲奈「なるほど、ピロシキにつかう小麦粉と、米粉を入れ替えたんだな」

亜里沙「ハラショー!」

ツバサ「そう。夜明け前に絢瀬宅に侵入して、入れ替えておいたの」

あんじゅ「米粉でできたピロシキなら、花陽ちゃんも満足というわけね」

ツバサ「ピロシキが大量廃棄される一方、米に飢えている人がいる」

ツバサ「これを解消するのに一石二鳥だと思ってね」

あんじゅ「絢瀬家のゴミから毎日ピロシキを回収して、凛さんに提供する」

あんじゅ「凛さんは、これを花陽さんにあげる……いいサイクルが出来上がるわね」

亜里沙「ゴミ漁りで問題が解決しちゃった……」

亜里沙「……A-RISEのみなさん、スパシーバ」

255: 2014/11/14(金) 23:46:45.29 ID:j5+zB3kL.net
(5日後)
絵里「ねえー、亜里沙」

亜里沙「どうしたのお姉ちゃん」

絵里「私、ピロシキ作りやめるわ」

亜里沙「ハラショー! どうして!」

絵里「飽きたから」

亜里沙「ハラショー!」

絵里「ハラショー!」

(亜里沙の日記より)
「お姉ちゃんはピロシキ作りを本当にやめてしまい、ペリメニすら作らなくなりました」

「花陽さんへの解決方法はふりだしに戻り、A-RISEのみなさんもこれにはお手上げ」

「結局、花陽さんの米類依存症は再問題化し、花陽さんは収容施設送りになりました。おしまい」


〈終わり〉

275: 2014/11/17(月) 21:03:57.50 ID:xEvRpbyc.net
ツバサ「……タクシー」

運転手「どちらまで?」

ツバサ「あら、またあなたなの」

運転手「なんかの縁やろうね」

ツバサ「……あなたは信頼できるからいうわね」

運転手「うん?」

ツバサ「わたしはμ'sの家はあらかたゴミ漁りした」

ツバサ「福岡に遠征してDREAMの実家のゴミもあさった」

運転手「それはそれは遠くまで」

ツバサ「わたしに漁れないゴミはないわ……」

ツバサ「そんなわたしが唯一漁っていないのは」

ツバサ「あんじゅ、英玲奈のゴミ……」

運転手「――そなら、あんじゅさん宅から行くん?」

ツバサ「……頼むわね」

276: 2014/11/17(月) 21:05:08.69 ID:xEvRpbyc.net
(昨夜)
ことり「――手を組みませんか?」

ツバサ「手を組む……ですって?」

海未「おっとお静かに。天井裏から穂乃果に声が届いてしまいます」

海未「穂乃果はすやすや眠っているんですから、起こさないように」

ことり「天井の穴から見下ろす無防備な寝顔……かわいい♪」

ツバサ「……声を上げたのは失礼」

ツバサ「A-RISEとμ'sがゴミ漁りで手を組むということ?」

ことり「正確にはμ'sの一部――ゴミ漁りを嗜むのはμ'sで私と海未ちゃんだけなんです」

海未(無言で頷く)

ことり「お互い穂乃果さんを愛する者同士――ここは仲良くしませんか」

ツバサ「それは願ってもいないことだわ」

ツバサ(握手を求めようとする)

ことり「ただし条件があります」

ツバサ「条件?」

278: 2014/11/17(月) 21:07:32.04 ID:xEvRpbyc.net
ツバサ「――条件とは?」

海未「あまり大人数で動くのは、ゴミ漁りには不適切です」

海未「ゴミ漁りをするのは少数精鋭でなくてはいけない」

ツバサ「なにが言いたいのかしら」

ことり「率直に言います」

ことり「あんじゅさんと英玲奈さんをゴミ漁りのメンバーから外して下さい」

ツバサ「……なんですって?」

ツバサ「そんなことできるわけがないでしょう」

ツバサ「三人で、穂乃果さん家の壁や床まで舐めた仲なのよ」

ツバサ「そんなに簡単に裏切られるわけがないじゃない」

海未(壁や床といいましたか?)

ことり(――抑えて)

ことり「友好的にできないなら、私たちは敵同士ということになりますね」

ツバサ「…………」

ことり「今後穂乃果ちゃんの家に近づいた場合……一切容赦しませんよ」

279: 2014/11/17(月) 21:11:50.46 ID:xEvRpbyc.net
ツバサ「すこし勘違いしているようだけど」

ツバサ「わたしたちは穂乃果さんだけを対象にしているわけじゃない」

ツバサ「可愛い女の子すべてが対象なのよ」

海未「うふふっ」

ことり「あははっ」

ツバサ「何がおかしいの!」

海未「これが笑わずにいられますか!」

ことり「節操なしなんですね……あなた達は」

ツバサ「なんですって!」

ことり「まるでゴミ漁りという目的のためにゴミ漁りしているみたい」

ツバサ「……いけないっていうの?」

ことり「わたし達のゴミ漁りは愛情が高じた、高尚で尊いもの」

ことり「それに比べたら、ツバサさんたちはのら犬の所業です」

ツバサ「くっ……」

283: 2014/11/17(月) 21:17:14.28 ID:xEvRpbyc.net
ツバサ「――主義の違いよ」

ことり(笑みを浮かべ、ツバサに近づく)

ことり(――ツバサのくちびるを人差し指でなぞる)

ことり「ワンちゃんに主義なんてものが分かるのかなあ?」

海未「失礼ですよ、ことり」(嘲笑を浮かべながら)

ツバサ「ゴミ漁りから人が見えてくる」

ツバサ「ゴミ漁りから女の子を好きになるの」

ことり「もう帰って下さい」(憐れむような目で)

ことり「あなたはここにいる資格はありません」

ツバサ(背を向ける)

ことり「もう、二度とここには立ち入らせませんから」

ツバサ「宣言するわ」

ことり・海未「!?」

ツバサ「明後日の燃えるゴミ回収日、高坂家のゴミ捨て場に来る」

ツバサ「――待っててちょうだい」

ことり「……挑戦的ですね。受けて立ちます」

284: 2014/11/17(月) 21:20:56.23 ID:xEvRpbyc.net
運転手「――なるほど……そういう事情があるんやね」

ツバサ「ええ……」

運転手「ほならどうして、あんじゅちゃんと英玲奈ちゃんのゴミも漁らないかんの?」

運転手「余計なことやん」

ツバサ「やらなくてはいけないの……」

運転手「本当に?」

ツバサ「ええ、避けては通れないのよ」

ツバサ「仲間のゴミにも手を付けることで――」

ツバサ「わたしがどれだけ本気かを証明しなくてはいけない」

運転手「そうか」

運転手「みえてきたで、優木家が」

ツバサ(あんじゅの家……見慣れたメンバーの家)

286: 2014/11/17(月) 21:28:53.93 ID:xEvRpbyc.net
運転手「あんじゅちゃんのゴミに、英玲奈ちゃんのゴミ」

運転手「なんだか、ふたり分あっけなく回収できたなあ」

ツバサ「弱みになるから言いたくないのだけど……」

ツバサ「ゴミをあさる人は、自分がその対象になるとは夢にも思ってない」

ツバサ「だから、驚くほど無防備」

ツバサ「驚くほど簡単に盗まれてしまうの」

運転手「なるほど……」

ツバサ「ねえ、運転手さん……」

運転手「ん?」

ツバサ「なんか、このゴミたち悲しそうじゃない?」

ツバサ「ゴミたちが泣いているように見えるの」

運転手「泣いているのは……」

運転手「アンタなんやないかな」

ツバサ(両目をぬぐう)

288: 2014/11/17(月) 21:37:52.24 ID:xEvRpbyc.net
ツバサ「じゃあ、ここで降ろして」

運転手「本当にええんやな。〝基地〟はもっと離れた場所にあるんやろ」

ツバサ「いいの」

ツバサ「もしかしたら、あなたまで仲間だと思われてしまうわ」

運転手「気ぃ使ってくれてんの? 優しい子やなあ」

ツバサ「よく言われるわ」

運転手「……ほな」

ブロロロ……

ツバサ「さて、ゴミ漁りの〝基地〟に行くとしよう」

ツバサ(ふたりともずいぶんゴミが軽いわね、週の中日だからかな)

ツバサ(あーあ、一人でゴミを漁るのもずいぶん久しぶりだなあ)

ツバサ(――そもそも、どうしてゴミ漁りを始めるようになったんだっけ?)

ツバサ(そうだ……μ'sが出始めたとき)

289: 2014/11/17(月) 21:52:09.69 ID:xEvRpbyc.net
(――UTX学院)
あんじゅ「大変、大変よ!」

英玲奈「騒々しい……」

ツバサ「なに? 要件は手短にね」

  ツバサ(――あのころのわたし達はライバル意識が強く、いつもピリピリしていた)

あんじゅ「すごいグループが出てきたのよ!」

ツバサ「ふうん……」

英玲奈「……PV、見せてみろ」

  ツバサ(当初私は無関心だった。英玲奈も)

ツバサ「なんなのこれは……」

  ツバサ(μ'sのパフォーマンスはわたし達の度肝を抜き、わたし達の危機意識に火を付けた)

あんじゅ「どうしよう……このままじゃ」

英玲奈「押し負けるぞ……」

ツバサ「調査よ。彼女たちが何者なのか徹底的に調べましょう」

  ツバサ(それからμ'sへのストーキングが始まった)

290: 2014/11/17(月) 22:02:18.52 ID:xEvRpbyc.net
英玲奈「プロフィール、ステータス、パラメーター……」

英玲奈「すべてだ、すべてを調べたはずなのに!」

あんじゅ「まだ分からない……彼女たちの魅力の秘密が!」

英玲奈「調査不足なんだ。家族の情報もなにもかも調べよう!」

あんじゅ「そうね!」

ツバサ「――そんなの調べてもなにも得られないわ」

英玲奈「……なんだと」

ツバサ「私は第三の道をいく」

英玲奈「どうする気だ? あてもないくせに」

ツバサ「彼女たちのゴミ袋だって漁ってみせるわよ」

英玲奈「バカバカしい。勝手にやれ」

  ツバサ(そして、わたしはほんとうにゴミ漁りを始めた)

ツバサ(くさっ! 生ごみくさっ!)

ツバサ(くじけそう……)

ツバサ(……それでも自分で決めたことだから)

291: 2014/11/17(月) 22:07:10.08 ID:xEvRpbyc.net
(――ある日)
ツバサ(高坂さん家のゴミ袋からおパンツが出てきた……)

ツバサ(――暖かそうなオレンジ色の可愛らしいおパンツ)

ツバサ(なんだろうこのワクワク感……)

ツバサ(きっとパンツ……このパンツがμ'sの強さの秘訣なのよ!)

ツバサ「早く、英玲奈とあんじゅにしらせないと!」

??「ちょっといいかしら」

ツバサ「――!?」

??「私は音ノ木坂学院の理事長」

理事長「最近周辺で変質者が出没していると聞いてね」

理事長「教員と保護者で自警団を組織して辺りをパトロールしているの」

理事長「あなた、どこの学校? なにを手に持っているの?」

ツバサ「…………」

理事長「顔……見せてくれるかしら?」

ツバサ(……まずい)

303: 2014/11/18(火) 22:57:06.24 ID:EWFnaeqV.net
理事長「さあ……顔をみせてちょうだい」

ツバサ(――これまでか)

??「裸の美少年がストリーキングしてるぞ!」

理事長「なんですって!? いくつくらいかしら?」

??「一桁だ!」

理事長「こうしてはいられないわ!」(シュタタタ!)

ツバサ(なんだ男子か……)

英玲奈「――ゴミ漁りをしているのに、警戒心ゼロだぞ」

あんじゅ「――本当、だらしないんだから」

ツバサ「あんじゅ! 英玲奈! じゃあストリーキングはガセ?」

英玲奈「……それは気づいてくれよ」

ツバサ「ねえ、それより見て、このオレンジの縞々おパンツ……」

あんじゅ「これは……クンクン。なにかしら、素晴らしいものを感じる」

英玲奈「ペロッ。うむ……。すごいエネルギーを秘めている

ツバサ「μ'sのことがよく伝わってくるの、ゴミ漁りから!」

あんじゅ「じゃあ、これからは一緒にやりましょう」

英玲奈「三人でな」

304: 2014/11/18(火) 22:59:25.49 ID:EWFnaeqV.net
  ツバサ(この時からわたし達は一緒にゴミを漁るようになった)

ツバサ「見つけたわ、矢澤にこさんのブラジャー」

英玲奈「こっちにはおパンツがあったぞ」

あんじゅ「靴下も一足見つかったわ!」

ツバサ「三人でやると捗るわね!」

  ツバサ(可愛い女の子たちのゴミはわたし達の心を癒してくれ、わたし達の結束はいつの間にか強まっていた)

英玲奈「これが絢瀬絵里の使っていた香水か」

あんじゅ「ボトルのそこにちょっとだけ残ってるわ」

ツバサ「飲んでみましょう」

三人「ごくごく……」

英玲奈「美味だ……」

  ツバサ(いつしかμ'sを調査するという目的は失われ、ゴミ漁りそのものがわたし達の目的になった)

***
ツバサ「――そして、現在に至り――」

ツバサ「ふたりを、いま裏切ろうとしている」

ツバサ「ごめんね……」(ゴミ袋を抱きしめる)

305: 2014/11/18(火) 23:01:58.12 ID:EWFnaeqV.net
ツバサ(さて、あんじゅのゴミから……)

ツバサ(生ゴミ中心ね)

ツバサ「残飯……古いごはんに、天ぷらのカス、野菜の皮、魚のほね」

ツバサ「これ……どこかで」

ツバサ(もしかして、英玲奈のゴミは……)

ツバサ「古びたシャツに、CDの包装ビニール、口紅のついた紙コップ、インクの瓶」

ツバサ(ふっ……)

ツバサ「あはははははは!」

ツバサ「やられたわね!」

ツバサ「いるんでしょう? ふたりとも」

??「感が鈍ったようだな、ツバサ」

??「本当、あたしたちがいても全然きづかないんだもの」

ツバサ「……本当にあなた達の言う通り」

ツバサ「英玲奈、あんじゅ」

306: 2014/11/18(火) 23:03:59.44 ID:EWFnaeqV.net
英玲奈「自分のゴミを漁った気分はどうだ?」

ツバサ「……最低」

ツバサ「ちょっと興奮したけど」

あんじゅ「そう? 楽しんでもらえてよかったわ」

ツバサ「気づいていたのね、わたしがあなた達をねらっていたこと」

あんじゅ・英玲奈(目を合わせる)

英玲奈「ツバサがこうすることは予想の範囲内だった」

ツバサ「なんですって?」

あんじゅ「わたし達も……一部始終を聞いていたから」

英玲奈「ああ、ことりさんから引き抜きのあった昨夜のことを」

ツバサ「本当なの?」

あんじゅ「あら、忘れた? 高坂家の天井裏にも盗聴器を仕掛けていたのよ?」

英玲奈「ツバサの性格上、次に何をしでかすかはわかっていた」

英玲奈「――きっとわたしとあんじゅのゴミを狙うとね」

英玲奈「だから、事前に仕込んでおいたんだ」

308: 2014/11/18(火) 23:08:35.29 ID:EWFnaeqV.net
ツバサ「仲間のゴミに手を付けるなんて……失望したでしょう」

あんじゅ「いいえ」

英玲奈「むしろ興奮した」

ツバサ「なんですって?」

英玲奈「いつかやってくれないかと待っていたんだ」

あんじゅ「きょうのタイミングでなきゃ一生やってくれなかったでしょうね」

ツバサ「……どういうこと?」

英玲奈「わたし達は漁られたい性癖もあるんだ」

あんじゅ「ずっと待っていたのよ、三人でゴミ漁りを始めた時から」

ツバサ「そうだったの……わたし、ぜんぜん気がつかなかった」

英玲奈「あんじゅと私の本物のゴミは、ツバサの部屋においてきた」

あんじゅ「あとでたっぷり漁ってね」

ツバサ「ありがとう、ふたりとも」

英玲奈「――さて、こうしてはいられないぞ」

あんじゅ「あしたの、ことりさんたちとの対決に向けて頑張らないとね」

ツバサ「……うん!」

311: 2014/11/18(火) 23:22:34.62 ID:EWFnaeqV.net
(翌日)
ことり「ねえ、海未ちゃん」

海未「なんです、ことり?」

ことり「予告通りに現れるかな、ツバサちゃん」

海未「彼女はきっと来るはずです」

海未「A-RISEをあそこまで人気にした中心人物……強敵です」

ことり「そうだよねえ」

ことり「それなら、それなりの準備をしないとね……」

海未「ことり、いったい何をする気ですか!?」

***

ツバサ「急ぐわよ! 走って! そろそろ高坂家がゴミを出す時間よ!」

英玲奈「待ってくれ、ツバサ!」

あんじゅ「そうよ、これ扱いが大変なのよ~」

312: 2014/11/18(火) 23:24:55.65 ID:EWFnaeqV.net
ことり「何をするって? なんだと思う、海未ちゃん」

海未「はぁ、見当がつきません」

ことり「ツバサちゃんは、ゴミだったらなんでもいい犬ころ」

ことり「そんなワンちゃんが、一番悲しいのはどんなことかな」

海未「まさかことり……この回収所のゴミをすべて隠す気ですか?」

ことり「ふふふ……」

海未「でもどうやって? ゴミといってもかなりの量になりますよ」

ことり「アルバイトを雇ったの」

矢澤家「金のためならなんでもするわよ!」

****

雪穂「お姉ちゃん、お部屋のゴミ回収に来たよ~」

穂乃果「ありがとう、雪穂。雪穂はお家のお手伝いして偉いねっ」

雪穂「もう、またお菓子の包装ビニールを机に置きっぱなしなんだから!」

穂乃果「あはは~ごめーん」

313: 2014/11/18(火) 23:26:33.85 ID:EWFnaeqV.net
高坂母「ごみは全部あつめた?」

雪穂「うん。お小遣いちょうだい」

高坂母「後でね。じゃあ、お父さん、お願い」

高坂父「おう、じゃあゴミ捨て場まで運ぶか」

高坂父「厨房のものもあるし、毎回結構な量になるな」

*****

ツバサ「幹線道路が渋滞で混雑?」

あんじゅ「うそでしょ!」

英玲奈「これじゃ、間に合わない!」

運転手「こっち、こっちや!」

ツバサ「いつもの運転手さん!」

運転手「裏道使うと早いで~」

あんじゅ「どうして、わたし達の行く先を?」

英玲奈「あまり聞き入るのは失礼だぞ、あんじゅ」

ツバサ「飛ばして、運転手さん!」

314: 2014/11/18(火) 23:29:28.62 ID:EWFnaeqV.net
運転手「さあ、着いたで!」

あんじゅ「ゴミは!?」

英玲奈「なんだこれは!?」

ツバサ「ゴミ捨て場がカラ……?」

あんじゅ「ひとつもない……高坂さんのどころか、近隣住民のものすべて!」

海未「一足遅かったですね」

ことり「ことり、待ちくたびれちゃった~」

ツバサ「――!?」

海未「穂むらの廃棄おまんじゅう、今日もおいしゅうございました。合掌」

ことり「穂乃果ちゃんの鼻水ティッシュも全部たべちゃったよ~」

ことり「あれれ~? ツバサちゃんたちは何しにきたのかな?」

海未「ここにはゴミなんて何ひとつありませんよ、何ひとつ」

315: 2014/11/18(火) 23:31:43.26 ID:EWFnaeqV.net
ツバサ「……すごいわね、町内のゴミを一瞬でなくしちゃうなんて」

ツバサ「一応褒めておく、魔法みたいだわ」

ことり「ふふっ」(勝ち誇った笑み)

ツバサ「――それじゃあ、次はわたし達の番よ」

ことり「……何をするつもり?」

ツバサ「あんじゅ、例のものを」

あんじゅ「はい、どうぞ♪」

ツバサ「ふぅ~」(頭に着用)

海未「ちょ、ちょっと待って下さい! それは!」

ことり「う、海未ちゃん? どうしたの?」

あんじゅ「はい、英玲奈ちゃんも♪」

英玲奈「ふぅ~」(頭に着用)

海未「それは、わたしが一昨日捨てたパンツとブラジャーではないですか!」

ことり「――!?」

316: 2014/11/18(火) 23:34:23.99 ID:EWFnaeqV.net
ツバサ「パンツ! 臭い! 吸引!」

英玲奈「ブラジャー! 捕食! モグモグ!」

海未「なんてことするんですか! やめてください!」(泣)

ツバサ「『高坂家のゴミ捨て場に来る』。一昨日、確かにわたしはそういった」

ツバサ「でも、何をしにくるかまではいってなかったわね」

ことり「……何をするつもりだっていうの?」

ツバサ「わたしがここに来たのは、高坂さんのゴミを取りにきたわけじゃない」

ツバサ「あなた達のゴミを、あなた達の目の前で漁るため!」

ことり(いわゆる〈見せつけゴミ漁り〉……なんて高度なテク!)

ツバサ「わたしたちは美少女ならだれでも大好き」

あんじゅ「……だからあなた達のことも大好きなの!」

英玲奈「受け取れ! わたしたちの愛情表現!」(レロレロレロ)

海未「や、やめてくださ~いっ」

海未「うっ……」(気絶)

317: 2014/11/18(火) 23:35:39.81 ID:dyL5PDgV.net
クソワロタ

318: 2014/11/18(火) 23:37:09.60 ID:EWFnaeqV.net
ことり「――お生憎様。わたしだってμ'sでナンバーワンの変態」

ことり「パンツやブラジャーぐらいで動揺すると思う?」

ことり「海未ちゃんと同じようには考えないで!」

英玲奈「やれやれ、気の強いお嬢さんだ」

ツバサ「そう言うと思っていたわ」

ことり「……?」

ツバサ「あんじゅ、例のものを」

あんじゅ「ふふ、ことりちゃんにはコレぐらいやらなきゃと思ってたの~」

ことり「そ……それ……それってぇええ!」

ツバサ「お待ちかね……」

ツバサ「あなたの使用済みの生理用品よ! 今から切り分けて三人で食べる!」

ことり「い……いやぁあああああ!!!!!」

あんじゅ「パクっ」

英玲奈「ごくっ」

ツバサ「のどごしさわやか」

ことり(気絶)

319: 2014/11/18(火) 23:38:01.99 ID:WaAbP7Jb.net
もしかしてこいつら変態か?

320: 2014/11/18(火) 23:43:55.92 ID:YTuNpmPZ.net
勝った・・・・のか?

323: 2014/11/19(水) 00:04:17.53 ID:EWFnaeqV.net
ことり「……負けました」

ことり「もう、あなた達には、A-RISEには敵いません……」

あんじゅ「ことりちゃん、顔を上げて」

英玲奈「わたしたちは勝ち負けじゃないんだ」

ツバサ「ただ、可愛い女の子の秘密を知って、一方的に親密になりたいだけなの」

あんじゅ「理由は違えど、ゴミ漁りを愛する心は一緒、さあ、『仲間』どうし手を取り合いましょう」

ツバサ(手を差し出す)

ことり(手をにぎり返す)

ことり「分かりました……今度からは仲良く可愛い子のゴミを愛していきましょう!」

ツバサ「ええ、よろしく頼むわね」

ツバサ「……では、わたし達はこれで」

運転手「さあ、三人とも早く乗ってや~」

海未(あのタクシー運転手だれかに似てますね?)

ことり「どこかに行くところなんですか?」

ツバサ「そうね……どこかかわいいスクールアイドルのいるところへ」(ウインク)

〈終わり〉

325: 2014/11/19(水) 00:05:20.12 ID:g0VnZGF4.net
以上です
読んでくださったかたありがとうございました

326: 2014/11/19(水) 00:06:42.47 ID:HEbv2gcg.net

328: 2014/11/19(水) 00:11:02.99 ID:QW/22IWl.net
わろた

引用元: 【SS】綺羅ツバサ「高坂家のゴミ袋盗んできたわよ!」