1: 2010/08/21(土) 21:49:34.00 ID:TRe0YZqU0
咲「ええっ? お姉ちゃんが事故に遭った!?」

ハギヨシ「はい。彼女は現在、我々龍門渕グループの息のかかった病院に搬送されています。
今から私がその病院までお送りいたします」

咲「は、はい…よろしくお願いします」

バタンッ ブロロロロロロロロ…

咲(お姉ちゃん、どうか無事でいて…!)
咲-Saki- 24巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
2: 2010/08/21(土) 21:53:45.21 ID:TRe0YZqU0
長野の病院

透華「お待ちしておりましたわ!」

咲「りゅーもんさん! お姉ちゃんはどうなったんですか!?」

透華「ご安心なさい、そこの病室で眠っていますわ」

照「スー…スー…」

咲「ケガは大丈夫なんですか?」

透華「医師によれば、命に別状はないとのことですわ」

咲「よかった…」

透華「ただ一つ問題がありますの」

3: 2010/08/21(土) 21:59:08.40 ID:TRe0YZqU0
透華「彼女は事故のショックで、深い昏睡状態ですの。ヘタをすれば一生このまま…」

咲「そんな……何とかならないんですか?」

透華「この龍門渕の医療技術は世界一ですから、方法がないわけではないですわ。
ただ非常に特殊な手術になるので、かかる費用は莫大でしてよ?」

咲「そうなると、ウチはお金少ないし、たぶん払えないですよ…」

透華「そこで、あなたに提案がありますの。 ある条件と引き換えに、手術費をタダにしてさしあげますわ」

咲「そ、その条件って一体……?」

5: 2010/08/21(土) 22:05:02.64 ID:TRe0YZqU0
透華「あなたに、白糸台高校にスパイとして潜入してもらいたいのですわ」

咲「ええっ!? お姉ちゃんの高校にですか?」

透華「知っての通り、我が龍門渕高校は県代表としてインターハイに出場します」

先日の県予選で、咲の清澄高校は決勝まで勝ち上がったものの、
天江衣を筆頭とする龍門渕の圧倒的な力の前に敗北を喫していた。

そんなわけで、今年の長野の代表は龍門渕高校なのである。

8: 2010/08/21(土) 22:12:32.60 ID:TRe0YZqU0
透華「全国で一番の強敵になるであろう、白糸台のレギュラーメンバーの情報を、
あなたに収集してほしいのですわ」

咲「でも、私にスパイなんて無理ですよ」

透華「この作戦はあなたにしか出来ないのですわ。 何故なら……」


透華「今からあなたと宮永照の顔を交換するのですから」

咲「ええっ!?」

10: 2010/08/21(土) 22:16:18.33 ID:TRe0YZqU0
透華「より正確にいえば、顔の表面の皮膚をはがして移植するのですわ。
我が龍門渕の技術をもってすれば、簡単な事ですの」

咲「そんな無茶な……」

透華「体格は似ているし、声は小型変声機を喉に埋め込んで変えますの。
なにより、あなたは姉の性格を熟知している……これほどの適任者はいませんわ!!」

咲「でも…でも…」

透華「それとも、自分の姉がこのままでいいですの?」

咲「そ、それは…」

透華「どうなんですの!?」

咲「……わ、わかりましたよぅ」

11: 2010/08/21(土) 22:23:49.69 ID:TRe0YZqU0
こうして、姉妹の顔を交換するという前代未聞の手術が行われた。

手術後――

透華「さあ、鏡を見て」

照(咲)「わっ……お姉ちゃん?」

透華「どうかしら、自分の姉になった感想は?」

照(咲)「すごい……これ、私なんですよね?」

透華「移植による拒絶反応もなんとか押さえられましたわ。さすがは姉妹ってトコかしら」

照(咲)「………」ニパー

透華「何やってるんですの、気持ち悪い」

照(咲)「エヘヘ、お姉ちゃんの顔で笑ってみたくて」

12: 2010/08/21(土) 22:30:04.84 ID:TRe0YZqU0
透華「期限は一週間、それが過ぎたら迎えの者をよこしますわ」

照「お父さんたちには何て説明したんですか?」

透華「表向きは、宮永咲は一週間東京へ行くことになっていますの。
そのための根回しも完璧なので、ご安心なさいな!」

照「はい、わかりました」

透華「期待してますわよ! いい情報を持ち帰ってきてくださいまし!!」

こうして宮永照となった咲は、東京へと旅立った。

13: 2010/08/21(土) 22:39:55.30 ID:TRe0YZqU0
東京 白糸台高校

照(いかにも名門校って感じの、大きい学校だなぁ)

チラチラ ジロジロ

照(みんなこっちを見てる。お姉ちゃん有名人なんだね……
っていけない、今はわたしが宮永照だったんだ)

そのまま、照となった咲は白糸台で一日を過ごした。
当然のことながら、授業は全然分からなかった。

14: 2010/08/21(土) 22:45:08.12 ID:TRe0YZqU0
放課後

照(ここが部室…とっても緊張するよ……)

ここは照たち一軍メンバー専用の練習室らしい。
咲は緊張の面持ちで、その部屋の入り口を開けた。

ガチャ…

部屋の中のソファーに、照以外のメンバー四人が座っていた。

16: 2010/08/21(土) 22:52:06.37 ID:TRe0YZqU0
藍色のロングヘアーをした、照と同じ三年の弘世菫。
短い銀髪がボーイッシュな印象を与える二年、亦野誠子。
ソファーの隅っこでお茶を飲んでいるのが、同じく二年の渋谷尭深。
金髪でぷにぷにしたほっぺが特徴の一年生、大星淡。

いずれも照に負けず劣らずのクールな雰囲気を持つ女性たちだった。
彼女たちは照が入って来たのを見ても、特になんの反応も示さない。

一同「………」シーン

照(空気が重苦しい……何か言った方がいいのかな?)

照「あ、えっと……お、オッス……」

17: 2010/08/21(土) 22:54:55.80 ID:TRe0YZqU0
ガシャァァン!

照「わっ!」

尭深「……すいません、湯のみを落としてしまいました……」

亦野(今の…聞き間違いか…?)

菫(照が……あいさつだと……?)

照「あっ、手伝おうか」

尭深「いえ……先輩の手を煩わせるわけには…」

照「うわっ…」ズルッ

バターン!

18: 2010/08/21(土) 22:58:37.87 ID:TRe0YZqU0

一同「………」

今度こそ本当に、気まずい空気が部屋に流れた。

淡(照先輩が……インターハイの頂点に立つあの照先輩が……!)

菫(人前でこけたッ……!!)

照(やっちゃったよ…これはさすがにマズイよね……)

咲はよろよろと立ち上がった。

菫「……お、おい大丈夫か?」

照「だ、大丈夫……だ…」

19: 2010/08/21(土) 23:01:45.36 ID:TRe0YZqU0
菫「ケガとかしてないか?」

照「あ、ああ。心配してくれてありがと……」

菫「!!」ドキッ

菫(照が……私に素直に礼を言った……?)

照(あ、あれ? なんか不思議そうな顔されてる?)

菫(なんなんだ……こんなの狂ってるのに、ちょっと嬉しいこの気持ちは何だ?)

21: 2010/08/21(土) 23:05:11.91 ID:TRe0YZqU0
部活中

菫「照、それロンだ」

照「うわっ」ビクッ

菫(くっ、なに今の小動物みたいな反応……かわいいじゃないかっ)

照「このお茶おいしい……な」ズズ…

尭深「ブフッ!」

淡「よ、よかったらケーキもありますけど…」

照「あ……じゃあ、いただきます」

亦野(なん…だと…?)

照「うっ…」ガタンッ

菫「どうした? 急に立ち上がって」

照「ト、トイレ行ってきま……行ってくる!」

タッタッタッタッ…

一同「………」

23: 2010/08/21(土) 23:09:33.44 ID:TRe0YZqU0
部活終了後

照「じ、じゃあ…私は帰るから……」

菫「ああ…」

バタン! タッタッタッタッ……

亦野「一体何だったんですか、今日の先輩は?」

菫「私にも分からん…何が起きてるのか」

尭深「……昨日、照先輩が事故にあったのを見たって噂を聞きました……
もしかしたら、あれは本当だったのかも……」

24: 2010/08/21(土) 23:14:56.24 ID:TRe0YZqU0
菫「すると照は、その事故で頭でも打って気が狂ったのか? いや、それしか考えられない」

亦野「今日の先輩は、いつもの先輩らしくありませんでした。
麻雀だって得意の国士じゃなくて、嶺上開花ばっかりであがるし」

尭深「おまけに物腰はやわらか……普段の近寄りがたい雰囲気はどこ吹く風……」

菫「よく何もない所で転びそうになるし、いつからあいつはドジっ娘に……」

淡「でも今日の照先輩……チョー可愛かったですよね」ゴクッ…

25: 2010/08/21(土) 23:19:20.78 ID:TRe0YZqU0
亦野「お、お前なあ……本人に聞かれたら殺されるぞ?
っていうかお前そんなキャラだったのか?」

淡「あ、すいません…つい」

尭深「淡の気持もわかる。普段とのギャップが凄すぎる……」

菫「ああ。私も礼を言われた時は、違和感を感じながらも素直に嬉しかった」

亦野「あの冷徹で、他人に無関心で、いつもそっけない照先輩が………ああ、これが……」

一同(ギャップ萌えってやつか…)

26: 2010/08/21(土) 23:22:49.78 ID:TRe0YZqU0
淡「っていうか、私たちがこれほど話し込んだのも、これが初めてじゃないですか?」

菫「いつも照を筆頭として、みんなが重苦しいオーラー出してたから話しにくかったんだよ」

亦野「そうですね。渋谷だってちゃんと喋れるんじゃないか」

尭深「……きっかけがなかっただけ……照先輩も、本当は明るい人なのかも」

亦野(それはひょっとしてギャグで言っているのか!?)

菫「いや、案外そうなのかもな……」

淡「明日からもっと話しかけてみましょうよ!」

27: 2010/08/21(土) 23:28:19.54 ID:TRe0YZqU0
翌日、長野の病院

咲(照)「ハッ!?」

咲(照)「ここは…どこだ……?」

咲(照)(ここは病室? そうだ思い出したぞ……私は学校の帰りに事故にあって、それから…)

照がベッドから起き上がると、正面にあった鏡に自分の顔が映った。

咲(照)「ななななななっ、なんだこれは……!」

咲(照)(顔が…私の顔が咲の顔に……?)

28: 2010/08/21(土) 23:33:02.91 ID:TRe0YZqU0
咲「なんとか病院から抜け出してこれたが…これからどうすればいいんだ?」

トコトコトコトコ…

和(あれは……宮永さん?)

咲(しかし未だに信じられん……どうして私の顔が咲の顔になってるんだ?)

和「宮永さ―ん!」タッタッタッ…

咲「そうか、これは夢なんだ。そうに違いない」

和「宮永さん、どうしたんですかこんなところで?」

咲「って、こんなリアルな夢があるか……認めたくないが、これは現実だ」

和「あのー、さっきから一人で何をブツブツと……」

咲「ん、 誰だお前?」

和「なっ……」ガーン

29: 2010/08/21(土) 23:41:37.92 ID:TRe0YZqU0
和「じょ、冗談はよしてください! 私です、原村和ですよ!」

咲(はっ…! しまった、今は私が咲だったんだ……こいつは友達か?)

咲「ああ…えっと、そう冗談だよ……和……ちゃん?」

和(えっ!? 宮永さん、今私のこと名前で呼んでくれました……)

咲「あの……どうした……の?」

和「な、何でもありません! さ、早く学校へ行きましょう!」キラキラ

ギュッ

咲(えっ、なにこいつ……いきなり手掴んできて気持ち悪い…)


30: 2010/08/21(土) 23:44:28.88 ID:TRe0YZqU0
和「それにしても、なんで急に帰ってきたんですか?」

咲「えっ? なにが…」

和「宮永さんたら、さっきからとぼけてばっかり……
お姉さんに会いに、一週間東京に行ったって聞きましたよ」

咲(そうなのか?)

咲「あっ…うん。でもやることないし、帰ってきちゃった」

和「あれほど普段から、お姉さんに会いたがったのにですか?」

咲(………)

32: 2010/08/21(土) 23:48:49.58 ID:TRe0YZqU0
和「ところで宮永さん、今日は声がいつもより低くありませんか?」

咲「い、いやちょっと風邪気味でさ…ゴホッゴホッ…」

和「そうですか……マスクぐらいしたほがいいのでは?」

咲「そ、そういえばさ……なんで手ぶらで学校行くの?」

和「もう、からかわないでくださいよ。 私たちは今日から夏休みじゃないですか」

咲「あ、そうだったよね…」

咲(咲の学校はもう夏休みなのか。白糸台とは大違いだな)

和「これからは麻雀に集中できますね」

咲(咲のやつ、麻雀を続けていたか)

33: 2010/08/21(土) 23:52:58.39 ID:TRe0YZqU0
麻雀部部室

和「こんにちわ」

咲「……こんにちわ」ボソッ

優希「おっ、咲ちゃんにのどちゃん!」ダッ

和「ゆーき、来てたんですね」

優希「あったり前だじぇ! 二人とも、タコス食うか―?」パクパク

咲(こいつウザいな……おまけにタコス臭いし)

34: 2010/08/21(土) 23:57:14.41 ID:TRe0YZqU0
ガチャッ

京太郎「ういーっす」

咲「きょ、京ちゃん!」ビクッ

京太郎「? どうした咲、そんなに驚いて?」

咲「いや、なんでもない…」

咲(うわっ、京ちゃん麻雀部だったんだ……つい昔のあだ名で呼んじゃったけど、
ツッコまれないってことはこれでいいのか)

優希「なーんか咲ちゃん、挙動不審だじぇ」

36: 2010/08/22(日) 00:00:50.04 ID:sufaI3Wj0
ガチャッ

まこ「遅れてすまんのー」

久「さーっ始めるわよ!」

優希「染谷先輩に部長、やっと来たじぇ!」

咲(あのワカメが染谷で……おさげが部長か。よし、覚えたぞ)

和「さあ宮永さん、卓に入りましょう」

咲「あ、うん。和ちゃん」

久「あら? いつの間に名前を呼ぶようになったの?」

和「……今朝からです///」

咲(なにっ? そうだったのか…)

38: 2010/08/22(日) 00:04:15.60 ID:sufaI3Wj0
咲「ツモ、国士無双」

優希「またかじょ!?」

京太郎「おいおいすげーな。一緒に打ってる和や部長が気の毒だぜ」

優希「むっ、私はどうでもいいのか?」

京太郎「別に…」

優希「なんだとー、犬の分際で!」

ワーワー ドタバタ ドタバタ

咲(弱すぎる……こんなチームじゃ、全国どころか県予選突破も無理だな)

40: 2010/08/22(日) 00:07:14.18 ID:sufaI3Wj0
久「ホント強いわね、今日の咲は……大会のときがこれだったらなぁ…」

まこ「おい、それは言っちゃダメじゃろ」

久「ゴメンなさい。ちょっと未練感じちゃった……」

咲(そうか、やっぱりこのチーム負けたんだな。 しかも会話の流れから察するに、
咲が頑張れば勝てた試合らしい……まったく、不甲斐ないやつだ)

咲「すいません部長……でも来年は必ず勝って、部長やみんなを全国へ連れて行きますから!」

京太郎「えっ…咲…?」

久「えーっと、それはどういう意味で言ったのかしら?」

41: 2010/08/22(日) 00:11:02.26 ID:sufaI3Wj0
咲「……私、何か間違ったこと言いました?」

優希「おいおい、咲ちゃん……」

まこ「部長は三年じゃから、今年で最後じゃろ?」

咲(なっ……しまった! この二年のワカメがタメ口で話していたから、
てっきり同じ二年だとばかり……つーかこいつ私と同い年かっ!)

咲「あ、すません……そうでしたね…」

京太郎「そうでしたねって……咲お前大丈夫か?」

和(やっぱり今日の宮永さん、どこかおかしいです)

久(……?)

42: 2010/08/22(日) 00:15:54.65 ID:sufaI3Wj0
咲(くそっ…さっきから空気が……)

一同「………」シーン

咲(明らかに私に疑惑の眼差しが向けられている……ここにいてもボロを出すだけだ……)

和「………」チラッ

久「………」ジーッ

咲(ああ…帰りたい。そうだ、なにもここにいる必要はないんだ。適当な理由をつけて帰ろう)

43: 2010/08/22(日) 00:18:41.63 ID:sufaI3Wj0
ガタッ

咲「あの…私、午後から用事があるので、これで帰りますね」

まこ「今日は初日じゃけ、どのみち午前中で終わりじゃ…」

咲「あっ……そうですか、それじゃ…」

タッタッタッタッタッ…

優希「何だったんだー、今日の咲ちゃんは?」

久「……何かあるわね」

44: 2010/08/22(日) 00:23:11.50 ID:sufaI3Wj0
タッタッタッタッタッ…

咲「くそっ…完全に疑われてたぞ、私」

咲(まあいい、二度とあそこには戻るまい……すぐにでも東京へ行かないと)

咲「うわ、懐かしい……この道を行けば、前の家に着くはず」

タッタッタッタッタッ…

咲「着いた……昔となにも変わってないな、この家は」

45: 2010/08/22(日) 00:28:17.39 ID:sufaI3Wj0
宮永家

ガチャッ

咲「ただいま」

咲(本当に久しぶりに、ただいまなわけだが…)

シーン

咲「お父さんはこの時間帯仕事か。失業はしてないみたいだな」

咲「さて、お金は……これだけあれば十分だな」ガサゴソ

46: 2010/08/22(日) 00:31:00.31 ID:sufaI3Wj0
龍門渕邸

透華「逃げ出したですって? 宮永照が!?」

ハギヨシ「正確には宮永咲の顔をした宮永照様が、です。先程病院から連絡が」

透華「あの昏睡から目覚めるなんて……麻酔もかけずに手術したのがいけなかったのかしら?」

ハギヨシ「朝方、まだスタッフが出勤していないうちに脱走したようですね。現在、全力で捜索中です」

透華「急ぎなさい! 彼女が宮永咲に接触したら、大変なことになりますわ!」

47: 2010/08/22(日) 01:01:46.69 ID:sufaI3Wj0
東京 白糸台高校

咲「ふぅ、なんとか戻ってこれたな」

咲(しかしこの顔、この格好で、ここに正面からは入れない……)

照は校舎の外周をぐるりと周った。
そして、麻雀部の部室がある建物へと辿り着いた。

咲(この時間帯は部活の真っ最中のハズ……まずは部室に窓から入って、
みんなにこの顔のことを説明するしかない。菫あたりなら、なんとか信じてくれるかも…)

48: 2010/08/22(日) 01:06:25.22 ID:sufaI3Wj0
照は、窓から麻雀部の部室を覗きこんだ。
室中では照と同じチームメイトの四人が、誰かを囲んで談笑していた。

咲(あいつら何か話しているな……あれは………えっ?)

ワイワイ キャッキャッ

照「もうー、やめてよぅー」

咲(あれは…あれは私じゃないか……っ!!!)

49: 2010/08/22(日) 01:10:15.04 ID:sufaI3Wj0
菫「それにしても驚いたぞ。お前がそんなに楽しいやつだったとはな」

照「あははっ、自分でもびっくりだよ」

亦野「ほんとほんと、正直この部のクールな雰囲気って苦手で……照先輩はその筆頭でしたから」

菫「お互い知らないうちに壁を作っていたわけだ」

尭深「あっ…照先輩お茶どうぞ」サッ

照「ありがとう、尭深ちゃん」ズズ…

50: 2010/08/22(日) 01:14:29.55 ID:sufaI3Wj0
淡「照せんぱーい!」ダキッ

照「うわっ、淡ちゃん!」

淡「ああ、淡ちゃんなんて呼んでもらえる日が来るなんて……
今から先輩のこと、てるてるって呼んでいいですか!?」

照「あ…うん、いいよ」

淡「きゃーやったー! あと私のほっぺ、ぷにぷにーってしてください!」

照「あー、えーっと……こう?」プニプニ

淡「きゃー、気持ちいいーーー!!!」

ワイワイ キャッキャッ

51: 2010/08/22(日) 01:17:29.56 ID:sufaI3Wj0
咲「な……んだ……これはっ……」

照は思わず声に出していた。
頭蓋に、百トンの重りが直撃したような衝撃だった。

咲(一体何が起きている? 私の顔をした誰かがあそこにいて、私のフリを……)

ぐるぐると色々な感情が頭を渦巻く。その中でも一番照を混乱させたのは――

咲(なんで、みんなあんな楽しそうなんだ…?)

52: 2010/08/22(日) 01:22:15.71 ID:sufaI3Wj0
咲(あれは私の偽物だぞ……偽物が本物以上の機能を持っているわけがない!)

しかし現実では、彼女の偽物は彼女よりも部員たちとずっとうまくやっている。

咲(くそっ、亦野や渋谷はあんな顔して笑えたのか……淡はくっつきすぎだ!
おい菫、今度泊まりに行っていいかとか聞くな!)

そしてなによりも――

咲(私の顔が…あんなに楽しそうに笑ってる……)

そのことが、何故か無性に照の胸を痛くした。

53: 2010/08/22(日) 01:28:50.92 ID:sufaI3Wj0
透華「間に合いませんでしたか…」

照の背後から女性の声がした。

咲「お前、確か龍門渕とかいったか……何の用だ?」

透華「察しはついてると思いますが……あなたたち姉妹の顔を入れ替えたのは、
この私たちでしてよ……」

咲「姉妹の顔を…入れ替えた?」

咲(とすると、あそこにいる私の偽物は…)

咲「咲…お前か…!」

55: 2010/08/22(日) 01:33:44.22 ID:sufaI3Wj0
透華「ミッションは中止ですわ…今すぐ二人の顔を元に戻してさしあげます。
もちろん、損害賠償もたっぷりと…」

だが照には、透華の言葉など耳に入っていなかった。

咲(咲…お前はいつも私から何かを奪っていく……私のお年玉、私のプライド……)

咲(私と同等の力を持っていたくせに、いつからか家族麻雀で手を抜くようになった……
そんなお前が私は大嫌いだった)

透華「――ですから裁判沙汰だけはご勘弁を。もっとも話したところで、
誰も信じないような話ですが…って聞いていますの?」

57: 2010/08/22(日) 01:38:46.54 ID:sufaI3Wj0
咲「顔の件はもういい……何もしないから、あと一週間このままにしてくれ」

透華「ええっ!? 今すぐ元に戻してもいいのですわよ?」

咲「失ったものは戻らない。ならば……」

咲(今度はこっちが奪ってやる番だ)

58: 2010/08/22(日) 01:43:07.11 ID:sufaI3Wj0
ピリリリリリ ピリリリリリ

照(電話だ……非通知?)

照「もしもし、宮永照ですが」

『……………』

照「あの、もしもし、悪戯ですか?」

『……お前が宮永照なら、私は宮永咲だ……ブチッ』

ツー ツー

照(今の声……お姉ちゃん?)

59: 2010/08/22(日) 01:50:35.57 ID:sufaI3Wj0
長野の病院

透華「変声機を喉に埋め込みましたわ。これであなたは正真正銘、宮永咲ですわ」

咲「よし、あとは妹をなんとしても長野に来させるな。きっちり一週間、東京に滞在させろ」

透華「分かってますわよ。こちらとしても、その方がありがたいですし」

咲(見てろ咲…お前の人間関係をメチャクチャにしてやる……)

60: 2010/08/22(日) 01:56:00.62 ID:sufaI3Wj0
照(今日の電話…本当にお姉ちゃんだったのかなぁ?)

照(だとしたらマズイよ……お姉ちゃんは、私の顔をしているんだし)

照(でもりゅーもんさんは、今でも宮永照は病院で眠ってるから、安心して任務を続けろって言うし…)

照(いや…もしも、りゅーもんさんがお姉ちゃんとグルだったとしたら!)

照「こうしちゃいられない」

ピッピッピッ プルルルルル…

照「もしもし、私、宮永咲です。信じられないような話があるんですが…」

61: 2010/08/22(日) 02:01:37.48 ID:sufaI3Wj0
翌日 京太郎の家

京太郎「さてと、そろそろ部活へ行く時間だな」

ピンポーン

京太郎「ん? こんな朝っぱらから誰だ?」

ガチャッ

京太郎「はい、どちら様で…」

咲「京ちゃん…お、おはよう」

京太郎「咲!?」

62: 2010/08/22(日) 02:06:01.20 ID:sufaI3Wj0
京太郎「なんで咲が俺ん家来てんの?」

咲「いや…なんか京ちゃんと部活行こうかなって思って」

京太郎「え? いや、まあ別にいいけど…」

咲「じ、じゃあ…行こ?」

京太郎「お、おう」

63: 2010/08/22(日) 02:10:03.91 ID:sufaI3Wj0
咲「そ、それでさー」ベタベタ

京太郎「さ、咲…あんまりくっつくなよ……あ、歩きにくいじゃないか…」

咲「そ、そうかなー?」ベタベタ

咲(くそっ…想像以上に恥ずかしいなこれ……だがこれも計画の為だ)

京太郎(こうやって近くで見ると、咲も案外可愛いかもな……)

64: 2010/08/22(日) 02:15:54.54 ID:sufaI3Wj0
部室

ガチャッ

京太郎「ち、ちぃーっす」

咲「こんにちわ」ボソッ

優希「来たか! 京太郎に咲ちゃ……えっ?」

優希(咲ちゃんが、京太郎と手をつないでいる?)

まこ「ほぅ…朝から見せつけてくれるのぅ」ニヤニヤ

京太郎「さ…咲が朝から離してくれなくて……///」

咲「くっ……」カァァ

65: 2010/08/22(日) 02:19:49.22 ID:sufaI3Wj0
咲(た…耐えろ私……これも咲に復讐するため……)

京太郎「そ、そうだ…和や部長は来てないんですか?」

まこ「さっき連絡があっての…二人とも遅れるそうじゃ」

京太郎「そうですか…」

優希「だったらこの四人で始めるじぇ! おいきょうたろー、いつまで手を握ってるつもりだ!
さっさと離すがいいじぇ!!」

咲「……うるさい、タコス女」ボソッ

優希「じぇ!? ……今何か言ったか咲ちゃん?」

咲「別に何も…」

66: 2010/08/22(日) 02:23:24.24 ID:sufaI3Wj0
咲「ロン、18000」

優希「じょっ!?」

京太郎「また優希がトビか……これで3回連続だぞ」

優希「くぅ……」

咲「どうしたの優希ちゃん? なんだか今日はひどく弱っちいね」

優希「そんな…咲ちゃんひどいじぇ……」

67: 2010/08/22(日) 02:28:42.85 ID:sufaI3Wj0
まこ「おいおい、言いすぎじゃ咲」

咲「……ちっ、ワカメのくせに」ボソッ

まこ「なっ!?」

優希「なんか…今日の咲ちゃん口が悪いじぇ…」

咲「黙れ。タコス臭いんだよ」

優希「」

一同「………」シーン

咲(ふふっ、作戦通りだ……)

68: 2010/08/22(日) 02:34:30.43 ID:sufaI3Wj0
ガチャッ

久「みんなやってるー?」

和「遅くなりました」

まこ「お、おーう……二人ともやっと来おったか」

京太郎(部長と和……なんかたくさん買い物袋持ってるけど、ありゃなんだ?)

咲(来たな、ガチレO女め……よぅし、次の作戦は…)

咲「和ちゃん! 待ってたよ!!」ダッ

69: 2010/08/22(日) 02:39:43.12 ID:sufaI3Wj0
和「えっ…どうしたんですか宮永さん? き、急に抱きついてきて…」

和(ああ…宮永さんの髪の匂い……いい匂いです)

咲「だって、和ちゃんがやっと来てくれて、嬉しかったんだもん」

咲(あー、気持ち悪い……何が嬉しくてこんな奇乳女に抱きつかなきゃいけないんだ)

和「そ、その…もう離してくれませんか宮永さん……」ドキドキ

咲「えへへ…もうちょっとだけ……」

優希「ま、待つじぇ!!」

71: 2010/08/22(日) 02:45:28.86 ID:sufaI3Wj0
咲「なに、優希ちゃん?」

優希「そんなのおかしいじぇ! さっきは京太郎とイチャイチャしてたくせに、
今度はのどちゃんに抱きつくなんて………二股もいいとこだじょ!」

咲(そうだ、そのセリフを待っていた。ナイスだ、タコス女)

咲「いいじゃん、そのくらい。その時の気分ってものがあるんだからさ。
今は和ちゃんとイチャイチャしたい気分だったんだもん」

優希「そんなこと許されるわけないじぇ!」

咲(ククッ、これで咲は二股かけた最低女としてのレッテルを貼られるんだ……
あいつが帰って来たときが楽しみだな)

咲「ねえ、二人もそう思うよね? 私が気分次第で浮気しようが、全然問題ないよね?」

和「……そうですね」

咲「……はっ!?」

72: 2010/08/22(日) 02:49:44.95 ID:sufaI3Wj0
咲(な、何を言っているんだ、この淫乱ピンクは? この暑さで脳みそが溶解でもしたのか!?)

和「宮永さんが私と須賀君の両方が好きというなら、それで問題ない気がします」

京太郎「ああ、和がそう言うなら俺も……」

咲(京ちゃんまで……こんなの穢れてる……田舎はみんなこうなのか!?)

和(宮永さん、あからさまにうろたえていますね……)

久(まさかあの話が本当だったとはね……)

73: 2010/08/22(日) 02:54:35.85 ID:sufaI3Wj0
昨晩

――――――――――

久「顔が入れ替わったですって!?」

照『ええ、だからあれは私のお姉ちゃんなんです』

久「にわかには信じがたい話だけど、確かに昨日の宮永さんはどこかおかしかった…」

照『お願いです、お姉ちゃんが何か変なことをしないよう、見張ってください。
お姉ちゃん、昔からそういうところあるから…』

久「……わかったわ、みんなには私から説明しておくから」

照『ありがとうございます』

――――――――――

74: 2010/08/22(日) 03:00:10.52 ID:sufaI3Wj0
まこ(部長から最初話を聞いた時は信じられんかったが…)

和(これではっきりしましたね)

京太郎(考えてみれば咲があんなこと出来るわけないし)

久(さて、どうからかってやろうかしら?)


優希(そんな……二股公認なんて、あり得ないじぇ……)

75: 2010/08/22(日) 03:05:16.24 ID:sufaI3Wj0
久「さて、全員そろったことだし……今から打ち上げやりまーす!」

一同「ええっ!?」

咲「麻雀はしないんですか?」

久「そうよ、今日は活動お休み」

咲「でも急に打ち上げって、一体なんの…」

久「細かいコトは気にしない! やるったらやるのよ!」

咲「………チッ」

久(今舌打ちしたわね、この子)

76: 2010/08/22(日) 03:12:24.58 ID:sufaI3Wj0
久「ほら、そのために和と二人で色々買ってきたんだから」

優希「やったー! タコスもあるじぇ!!」

京太郎「ちょ、ちょっと部長……」

久「なに? 須賀君」

京太郎「いきなり打ち上げやるなんて、一体どうしたんすか?」ヒソヒソ

久「分からない? ちょっとあの子を……宮永照をからかってやろうと思ってね」ヒソヒソ

京太郎「照さんをですか?」ヒソヒソ

久「あなたも見てみたくない? インターハイの頂点、宮永照のうろたえる姿を」ヒソヒソ

京太郎「それは…ちょっと見てみたいかも」ヒソヒソ

久「といってもフツーに部活してるだけじゃ、彼女にいいようにやられるだけよ。
だったら、こっちのペースに持ち込んでやれば……」ヒソヒソ

京太郎「なるほど…」ヒソヒソ

78: 2010/08/22(日) 03:18:29.77 ID:sufaI3Wj0
優希「タコスうまいじぇー」バクバクッ

和「ケーキも買ってきましたので、皆さん食べてください」

まこ「おやっ? 酒まであるんかい。いいんか部長?」

久「いいのよ、今日は特別。ほら、咲も飲みなさいよ」

咲「えっ……私はお酒はちょっと……」

久「あら、おっかしいわねー? いつもなら真っ先に飛びつくのに」

京太郎「えっ?」

久「ホラ、みんなも合わせて!」ヒソヒソ

京太郎「あ、ああ…そうだな咲、お前酒大好きじゃないか」

咲(なっ…なんだと!?)

80: 2010/08/22(日) 03:27:02.13 ID:sufaI3Wj0
まこ「そうじゃよ、一升瓶ラッパ飲みするのが得意じゃろ?」

和「県予選で負けた後も、ヤケ酒あおってましたよね」

優希「ひょうだったふぇか」バクバクッ

咲(なんてやつだ、しばらく見ないうちに………咲の悪い子、悪い子!!)

久「で、もちろん飲むわよね?」ジッー

咲(今は私が咲なんだ……ここで飲まないと疑われる……)

咲「じ、じゃあ、ちょっとだけなら……」

久「ええー、どうせなら一気にグイッといきましょう、グイッっと」

81: 2010/08/22(日) 03:31:28.76 ID:sufaI3Wj0
京太郎「そうだな。得意のイッキ飲みを見せてくれよ」

咲「えっ…でも……」

まこ「イッキ! イッキ!」

一同「イッキ! イッキ!」

まこに合わせて、全員が手拍子を打ち始めた。

咲(くそっ…こいつら……!)

一同「イッキ! イッキ!」

咲「くう~~~っ」

82: 2010/08/22(日) 03:36:03.16 ID:sufaI3Wj0
咲「かせっ!」バッ

久「ちょっ、いきなりひったくらなくても……」

咲「」グイッ

まこ「おほっ、ホンマにやりよった」

咲「」ゴクゴクゴク…

久(宮永照は、相当の負けず嫌いってトコかしらね)

咲「ぶっはぁぁぁぁっ!」

優希「本当に全部飲んじゃったじぇ」

83: 2010/08/22(日) 03:41:58.57 ID:sufaI3Wj0
咲「ううっ…目まいがする~」ヨロヨロ…

まこ「さっきは凄かったのぅ。まさか本当にやるとは思わんかった」

咲(クソッ…こいつ、今に見てろよ……)

京太郎「にしても最近の咲の麻雀はバカみたいに強いよなー。まるでお姉さんみたいだぜー」

咲「!!」ギクッ

久(あらあら…あんなに分かりやすく動揺しちゃって……)

咲「そ、そうかなー?(アセアセ)」

84: 2010/08/22(日) 03:48:11.21 ID:sufaI3Wj0
京太郎「来年こそ全国に行って、お姉さんに会えるといいな」

咲「お姉ちゃん?」ピクッ

久「そうよ。あなたのお姉さん、宮永照に会えたら何がしたい?」

和(部長…これまたきわどい質問を……)

久(さて、どんな答えが返ってくるかしらね)

咲「………フェイスオフ」

まこ「はっ?」

咲「ちょっとした手術だよ……あいつの……宮永照の顔を……はがしてやるんだ」

和「あっ……」

久「え、えっと………」

咲「ふふっ……冗談、冗談だよ……ちょっとしたジョークだってば……ふふふ」

京太郎(相当キてるな、この人……)

85: 2010/08/22(日) 03:54:34.00 ID:sufaI3Wj0
一同「………」ズーン

京太郎(気まずい……)

久(場の空気を重くするコトに関してはホント、天才的ね)

咲(あーっ、頭がガンガンする……もうどうにでもなれ)

久(なんとかこの雰囲気を変えないと……)

久「ねえ、もうお腹いっぱいだし、みんなでゲームでもしない?」

優希「やるじぇ! パーティにゲームはつきものだからな!」

久「咲もやるでしょ?」

咲(麻雀か……丁度いい。このイライラを発散させてもらおう……)

咲「ええやりますよ……東風戦ですか? それとも半荘……」

86: 2010/08/22(日) 04:00:28.80 ID:sufaI3Wj0
ヒュン ヒュン チーン! チーン!

優希「ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!! だじぇ!」ガチャガチャ

まこ「超! エキサイティン!! じゃなっ!」ガチャガチャ

咲(なんで……なんでバトルドームなんかやってるんだ私は……)

久「四人用ゲームといったらこれよねー……あっ、咲ガード甘いわよ!」ガチャガチャ

ヒュン ヒュン チーン! チーン!

優希「咲ちゃん、もう何点入れられたか分からないじぇ」

咲(くっ……こいつら、あからさまに私を一人狙いしてきてるし……)

まこ「さっきの麻雀の勢いはどうしたんじゃ咲?」ニヤニヤ

87: 2010/08/22(日) 04:06:41.87 ID:sufaI3Wj0
京太郎(考えてみたらシュールな光景だぜ……麻雀では無敵を誇る照さんが、
バトルドームでボコボコにされてるなんて……)

咲(くそっ、麻雀なら…麻雀なら負けないのに……っ!)

咲「く、くそおおおっ!」ガチャガチャガチャッ

ヒュン ヒュン チーン! チーン!

優希「おっ、咲ちゃん中々やるじぇ」ガチャガチャ

久(プーッ、クスクス……本気になってるわこの人)

まこ(これがインターハイの頂点(笑)か……よぅし、もっとやってやれ……)

三人はますます照への攻撃を強めた。

98: 2010/08/22(日) 09:24:29.71 ID:sufaI3Wj0
ヒュンヒュン ヒュンヒュン チーン! チーン! チーン!

咲「ま、負けてたまるか…うおおおおおおおおおっ!!!」ガチャガチャガチャッ

まこ「咲のやつ、この攻撃をよく凌いでいるのぅ」ガチャガチャ

ヒュンヒュン ヒュンヒュン チーン! チーン! チーン!

久(ゲームも終盤ね……玉の量がハンパないわ)

咲「こなくそおおおおおおおおおっ!!!」ガチャガチャガチャッ

ヒュンヒュン ヒュンヒュン チーン! チーン! チーン!

咲「ああああああああああああああっ!!!!」ガチャガチャガチャガチャッ!


バキィッ!!!

京太郎「こwwwwわwwwしwwwたwwwww」

99: 2010/08/22(日) 09:31:55.84 ID:sufaI3Wj0
咲「ハァ……ハァ……」

久「あーあ、やってくれたわね咲……これ、今となっては結構貴重なのよ?」

まこ「わりゃ、弁償できるのか!?」

優希「っていうか熱くなりすぎてゲーム壊すとか……どこの小学生だじぇ」クスクス

咲「くっ……」プルプル

和(ああっ……顔を真っ赤にしてうつむく宮永さん……素敵ですっ……!)

100: 2010/08/22(日) 09:38:28.81 ID:sufaI3Wj0
京太郎「さすがの俺でも今のはひくわー」

優希「咲ちゃんはエキサイティン! しすぎちゃったのかー?」クスクス

まこ「高校生にもなって、恥ずかしいのー」ニヤニヤ

咲「ぐっ……」

和「宮永さん、今度私の家で一緒にバトルドームしましょうね」クスクス

久「ねえ今どんな気持かしら、宮永さん?」ニヤニヤ

咲「うっ…」

一同「?」

咲「うわあああああああっ!!! お前たちなんか嫌いだあああああああああっ!!!」

タッタッタッタッタッタッ……バタン!

103: 2010/08/22(日) 09:48:12.94 ID:sufaI3Wj0
京太郎「ありゃりゃ、飛び出していっちゃいましたね」

久「ちょっとやりすぎたかしら?」

まこ「いやいや、むしろここまで宮永照を追い込んだバトルドーム恐るべし……」

優希「ふえっ!? それはどういうことだじぇ?」

和「ゆーきは聞いてなかったんですか? 実はかくかくしかじか…」

優希「そうだったのかー。つまりあの二股容認宣言は、全部演技だったわけだな?
私はてっきり、のどちゃんが淫乱メス豚化したとばかり……」

和「SOA」

久「さて、問題はこの後彼女をどうするかだけど……」

105: 2010/08/22(日) 09:55:37.80 ID:sufaI3Wj0
旧校舎 女子トイレ

咲「ううっ、ちくしょう……みんなで私をバカにして……ヒック、ヒック」

咲(……あれ? 最初は私が咲のフリして、清澄のやつらをいじめるハズだったのに……どうしてこうなった)

タッタッタッタッタッ…

咲(誰か走ってくる?)

ガチャッ

久「こんな所にいたのね」

咲「く、来るな!」

久「ごめんなさい、さっきは私たちが悪かったわ」

咲「うるさい! 言い訳なんて聞きたくないっ!」

久「私たちは、あなたが宮永照だってことを知ってたの」

咲「……なにっ?」

106: 2010/08/22(日) 10:08:11.70 ID:sufaI3Wj0
咲「どうしてそのことを……」

久「あなた、自分から咲に宣戦布告したそうじゃない」

咲「………」

久(意外に幼稚なのかしらね…)

咲「そうか、バレたんじゃしょうがない……もう煮るなり焼くなり好きにしろ。私は疲れた……」

久「別にあなたをどうこうするつもりはないわよ。ただ、もう元に戻った方がいいんじゃないかしら?」

咲「……そうだな」

107: 2010/08/22(日) 10:14:55.99 ID:sufaI3Wj0
咲「――と、いうわけだ。元に戻してくれ」

透華『ええっ? まだ期限まで四日ありますのよ?』

咲「気が変わったんだ。もう復讐はやめだ。私には向いてなかったんだ」

透華『……失敗したんですのね』

咲「う、うるさいっ! とにかく元に…… 」

透華『それはムリですわ』

108: 2010/08/22(日) 10:19:32.25 ID:sufaI3Wj0
咲「どうして?」

透華『今病院には手術を行えるスタッフがいませんの。みんな昨日から休暇をとってまして…』

咲「呼び戻せばいいだろ?」

透華『あなたが一週間くれと言ったから、私はそのように手配したのですわ。
少しは自分の言ったことに責任を持ってくださいまし!』

咲「ぐっ……確かにそうだけど……」

透華『ではまた四日後に連絡しますから……それまでごきげんよう!』

咲「あっ……き、切るなっ!」

『ガチャッ……ツー、ツー』

咲「………」

111: 2010/08/22(日) 10:26:22.61 ID:sufaI3Wj0
久「どうだった?」

咲「四日後まではムリだって…」

咲(東京にも帰れず、ここでも正体がバレてしまって……私の居場所は一体どこに……)

久「それなら、その日までここにいればいじゃない」

112: 2010/08/22(日) 10:29:38.32 ID:sufaI3Wj0
咲「えっ……だけど、私は咲の偽物で……」

久「いーのよ。細かいコトは気にしない」

和「少しワイルドな宮永さんも新鮮です」

咲「私……ここにいていいのか……?」

優希「歓迎するじぇ!」

京太郎「照さん、東京行ってからの話とか聞かせてくださいよ」

まこ「これから楽しくなりそうじゃ」

114: 2010/08/22(日) 10:37:56.78 ID:sufaI3Wj0
東京 とあるカラオケ店

ピリリリリリ ピリリリリリ

照「あっ、電話だ……ちょっと出てくるね」

菫「ああ」

淡「早く戻ってきてくださいね―」

バタンッ

照「りゅーもんさん、なんですか?」

透華『情報収集は順調ですの?』

照「ええ、バッチリですけど……」

透華『どうかしましたの?』

照「いや…ここでの生活があんまりに楽しいので……もうちょっとこのままでもいいかなーって」

透華(ふむふむ……こちらとしても、長くスパイを続けてくれるのは、ありがたいですわね)

115: 2010/08/22(日) 10:48:10.37 ID:sufaI3Wj0
二週間後

ピリリリリリ ピリリリリリ

透華『もしもし、龍門渕透華ですわ』

咲「おい…まだなのか?」

透華『ですから、スタッフが不慮の事故に遭いまして……回復まではもうちょっとですわ』

咲「……あっそう」

透華『?』

咲「手術の目処がたったら、すぐに電話をくれ。それじゃあ…」ピッ

116: 2010/08/22(日) 10:52:14.15 ID:sufaI3Wj0
久「どうだった?」

咲「まだ手術はムリだって…」

久「そう」

咲「ああ…」

久「……」

咲「……」

久「怒らないの? まだ延期になってるのよ?」

咲「……っ」

117: 2010/08/22(日) 10:57:03.63 ID:sufaI3Wj0
久「それとも、ひょっとしてここにいるのが楽しくなったとか?」ニヤニヤ

咲「そ、そんなことないっ! あー、早く東京に帰りたいな―!」

久「もう、素直じゃないんだから」

まこ(相変わらずこの人はおもしろいのぅ…)

ガチャッ

優希「おーっす、だじぇ!」

まこ「おっ、一年生が来たようじゃな」

京太郎「咲……じゃなくて照さん、今日も来てますね」

和(ああっ……どことなく気だるげな表情の宮永さん……今日も素敵です)

119: 2010/08/22(日) 11:01:54.23 ID:sufaI3Wj0
優希「さて、今日もアレをやるかー!」

和「またですか? よく飽きませんね」

まこ「もはや何部か分からなくなってきたのぅ」

久「いいんじゃない? 最近は宮永さんも強くなってきたことだしね」

咲「………次は負けないぞ」

120: 2010/08/22(日) 11:06:34.18 ID:sufaI3Wj0
ヒュン ヒュン チーン! チーン!

咲「………」ガチャガチャッ

どうしてだろう、最初はあれほど元に戻りたかったのに。
気が付けばここで、清澄の連中とバトルドームを囲む日々が楽しいと思えるようになってしまった。

咲(ああ、そうか……)

ここは殺伐とした白糸台の部活よりも、ほんの少しだけ居心地がいい。
顔が替わって、環境が変わって初めて気付くこともある。

122: 2010/08/22(日) 11:15:15.72 ID:sufaI3Wj0
咲「こういうのも悪くない」ボソッ

久「えっ? 何か言った?」ガチャガチャ

咲「いや……なんでもない」ガチャガチャ

ヒュン ヒュン チーン! チーン!


咲(願わくば、このエキサイティン!な日々をもう少しだけ……)


     宮永姉妹のフェイス/オフ  完


次回  池田「ここが…風越女子……!」



引用元: 咲「ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!」