528: 2010/08/25(水) 09:09:02.62 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「氏体探しに行くだと!?」
それは蒲原の何気ない一言から始まった。
蒲原「ワハハー、正確に言うとちょっと違うなー。今この学校で噂になってる、消える氏体だよ」
ゆみ「なんだそれは」
蒲原「知らないのかゆみちん? 他のみんなはもちろん知ってるよなー?」
妹尾「うん。私たち二年生の間でも噂になってましたよ」
ゆみ「どんな噂なんだ?」
睦月「はい。先日、ここの生徒が学校裏の森に行ったそうなんですが……」
それは蒲原の何気ない一言から始まった。
蒲原「ワハハー、正確に言うとちょっと違うなー。今この学校で噂になってる、消える氏体だよ」
ゆみ「なんだそれは」
蒲原「知らないのかゆみちん? 他のみんなはもちろん知ってるよなー?」
妹尾「うん。私たち二年生の間でも噂になってましたよ」
ゆみ「どんな噂なんだ?」
睦月「はい。先日、ここの生徒が学校裏の森に行ったそうなんですが……」
529: 2010/08/25(水) 09:17:53.86 ID:SNqXtlOg0
睦月「彼女が森を散策していると、茂みの中から人の足がはみ出しているのを見つけたそうで……」
ゆみ「ああ…それで……?」
睦月「それで、誰か倒れてるんじゃないかと思って近付いてみたら……」
ゆみ「………」ゴクッ
睦月「そこには、女性の氏体が……」
モモ「きゃああああああああああっす!!」ガタッ
全員「うわあああっ!?」ビクッ
ゆみ「ああ…それで……?」
睦月「それで、誰か倒れてるんじゃないかと思って近付いてみたら……」
ゆみ「………」ゴクッ
睦月「そこには、女性の氏体が……」
モモ「きゃああああああああああっす!!」ガタッ
全員「うわあああっ!?」ビクッ
530: 2010/08/25(水) 09:22:31.55 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「と、突然現れるなよモモ……びっくりしたぞ」
モモ「驚く先輩も可愛いっすよ」
蒲原「驚くのはまだ早いって……ここからが肝心なんだぞ?」
ゆみ「まだ続きがあるのか?」
睦月「驚いた彼女は、警察に通報しようとしたらしいんですけど……」
妹尾「氏体は、彼女の目の前で煙のように消えてしまったらしいんです」
モモ「驚く先輩も可愛いっすよ」
蒲原「驚くのはまだ早いって……ここからが肝心なんだぞ?」
ゆみ「まだ続きがあるのか?」
睦月「驚いた彼女は、警察に通報しようとしたらしいんですけど……」
妹尾「氏体は、彼女の目の前で煙のように消えてしまったらしいんです」
532: 2010/08/25(水) 09:30:34.79 ID:SNqXtlOg0
モモ「うーん……ミステリーっすねー」
全員(お前がそれを言うのか…?)
ゆみ「なるほど、それで消える氏体か。いかにも作り話っぽいな」
睦月「氏体っていうより、幽霊なんじゃないんですか?」
妹尾「ひゃあぁっ? この学校の近くに幽霊が出るっていうんですか?」
ゆみ「そんな話は聞いたことないが…」
蒲原「というわけで、それを確かめに行くぞ―!」
全員(お前がそれを言うのか…?)
ゆみ「なるほど、それで消える氏体か。いかにも作り話っぽいな」
睦月「氏体っていうより、幽霊なんじゃないんですか?」
妹尾「ひゃあぁっ? この学校の近くに幽霊が出るっていうんですか?」
ゆみ「そんな話は聞いたことないが…」
蒲原「というわけで、それを確かめに行くぞ―!」
533: 2010/08/25(水) 09:36:38.33 ID:SNqXtlOg0
次の日
ゆみ「なあ蒲原…なにも夏休み初日からこんなことしなくても……」
蒲原「ワハハ、今年の夏はうんざりするくらい遊ぼうって言っただろー?
……よっこいしょっと」ドサッ
モモ「けっこうな荷物の量っすね」
蒲原「暇なら車への積み込み手伝ってくれよ―」
睦月「けっこう本格的ですね…」
蒲原「ワハハ、ちょっとした探検隊気分だな―」
ゆみ「なあ蒲原…なにも夏休み初日からこんなことしなくても……」
蒲原「ワハハ、今年の夏はうんざりするくらい遊ぼうって言っただろー?
……よっこいしょっと」ドサッ
モモ「けっこうな荷物の量っすね」
蒲原「暇なら車への積み込み手伝ってくれよ―」
睦月「けっこう本格的ですね…」
蒲原「ワハハ、ちょっとした探検隊気分だな―」
534: 2010/08/25(水) 09:41:04.80 ID:SNqXtlOg0
ブロロロロロロロ……キィィィ
蒲原「森の入口まで着いたぞ―。ここからは歩きだー」
ザザザザザザー
妹尾「うわー、なんだか不気味ですね―」
ゆみ「気のせいだろう。本当に幽霊なんて出るのか?」
蒲原「さーさー、まずはこの荷物を手分けして持ってくれ」ドサッ
睦月「……重っ」
蒲原「森の入口まで着いたぞ―。ここからは歩きだー」
ザザザザザザー
妹尾「うわー、なんだか不気味ですね―」
ゆみ「気のせいだろう。本当に幽霊なんて出るのか?」
蒲原「さーさー、まずはこの荷物を手分けして持ってくれ」ドサッ
睦月「……重っ」
535: 2010/08/25(水) 09:44:44.79 ID:SNqXtlOg0
森の中
蒲原「みんなー、茂みが濃いところとかを重点的に探すんだ―」ガサガサ
妹尾「そんなこと言われても……」
睦月「ロクな手がかりもなく、ただ漠然と探しているだけではらちが明きませんよ?」
蒲原「ワハハ―、そこらへんはテキトーでいいんだ。今この時を楽しめ―」ガサガサ
ゆみ「やれやれ……相変わらずアバウトなやつだ」
トントン
モモ「先輩、何か見つけましたか?」
蒲原「みんなー、茂みが濃いところとかを重点的に探すんだ―」ガサガサ
妹尾「そんなこと言われても……」
睦月「ロクな手がかりもなく、ただ漠然と探しているだけではらちが明きませんよ?」
蒲原「ワハハ―、そこらへんはテキトーでいいんだ。今この時を楽しめ―」ガサガサ
ゆみ「やれやれ……相変わらずアバウトなやつだ」
トントン
モモ「先輩、何か見つけましたか?」
536: 2010/08/25(水) 09:48:44.81 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「いや……こんな不効率なやり方じゃ、見つかるものも見つからないさ」
モモ「私はせんぱ……みんなとこうしているだけで楽しいっすけどね」
ゆみ「ああ……」
ゆみ(案外蒲原もそうなのかも知れないな……)
氏体だか幽霊探しはただの口実――私たち三年は、この三人と遊ぶきっかけを欲していた。
モモ「私はせんぱ……みんなとこうしているだけで楽しいっすけどね」
ゆみ「ああ……」
ゆみ(案外蒲原もそうなのかも知れないな……)
氏体だか幽霊探しはただの口実――私たち三年は、この三人と遊ぶきっかけを欲していた。
545: 2010/08/25(水) 13:58:18.35 ID:SNqXtlOg0
蒲原「ここらにはいないみたいだなー。よし、もっと奥へ行くぞー!」
妹尾「ここの森は案外深いから、あんまり奥まで行きすぎると迷っちゃいますよ?」
蒲原「ワハハ―、なんとかなるさー」
そう言って蒲原は森の奥へずんずん進み始めた。慌てて二年生の二人が後を追う。
ゆみ「……まったく人の忠告を聞かないやつだな」
モモ「先輩、私たちも置いてかれないうちに行くっすよ」
妹尾「ここの森は案外深いから、あんまり奥まで行きすぎると迷っちゃいますよ?」
蒲原「ワハハ―、なんとかなるさー」
そう言って蒲原は森の奥へずんずん進み始めた。慌てて二年生の二人が後を追う。
ゆみ「……まったく人の忠告を聞かないやつだな」
モモ「先輩、私たちも置いてかれないうちに行くっすよ」
546: 2010/08/25(水) 14:05:18.81 ID:SNqXtlOg0
モモ「先輩は……卒業したらどうするんすか?」
ゆみ「えっ……?」
歩き始めてからしばらくして、モモが唐突に切りだしてきた。
モモ「先輩なら大学行くと思いますが……どこの大学へ?」
ゆみ「……っ、それは……」
ゆみ「えっ……?」
歩き始めてからしばらくして、モモが唐突に切りだしてきた。
モモ「先輩なら大学行くと思いますが……どこの大学へ?」
ゆみ「……っ、それは……」
547: 2010/08/25(水) 14:13:06.10 ID:SNqXtlOg0
蒲原「ワハハー、それでさー」
前方から、蒲原の能天気な笑い声が聞こえてくる。
ゆみ(蒲原……あいつは気楽でいいよな……)
蒲原は地元のA大学を受けるらしい。私の偏差値なら楽勝すぎるレベルの大学だ。
それに、失敗しても実家の家業を継ぐらしい。
ゆみ(どちらにしろ、ここに残れるんだ……あいつは)
前方から、蒲原の能天気な笑い声が聞こえてくる。
ゆみ(蒲原……あいつは気楽でいいよな……)
蒲原は地元のA大学を受けるらしい。私の偏差値なら楽勝すぎるレベルの大学だ。
それに、失敗しても実家の家業を継ぐらしい。
ゆみ(どちらにしろ、ここに残れるんだ……あいつは)
548: 2010/08/25(水) 14:21:47.55 ID:SNqXtlOg0
モモ「先輩…ごめんなさいっす」
ゆみ「えっ?」
モモがすまなそうな顔をしてこちらを見ていた。
モモ「受験生に、こんなデリケートな質問するべきじゃないっすよね…」
ゆみ「い、いやそんなことはない……受ける大学はもう決めてある」
モモ「えっ……そ、それはどこっすか?」
ゆみ「それは……」
ゆみ「えっ?」
モモがすまなそうな顔をしてこちらを見ていた。
モモ「受験生に、こんなデリケートな質問するべきじゃないっすよね…」
ゆみ「い、いやそんなことはない……受ける大学はもう決めてある」
モモ「えっ……そ、それはどこっすか?」
ゆみ「それは……」
549: 2010/08/25(水) 14:31:35.36 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「蒲原と同じ、A大学だ…」
モモ「………」
ゆみ「ほら、あそこなら余裕だし、ここからも近い。みんなとも遊べるぞ」
モモ「………」
ゆみ「……モモ?」
モモ「……先輩、それはダメっす」
モモ「………」
ゆみ「ほら、あそこなら余裕だし、ここからも近い。みんなとも遊べるぞ」
モモ「………」
ゆみ「……モモ?」
モモ「……先輩、それはダメっす」
550: 2010/08/25(水) 14:41:54.65 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「!?」
モモ「それは…先輩が本当に行きたい大学じゃないっすよね?」
ゆみ「い、いやそれは…」
ゆみ(お前がそう言うなんて……私はお前と…みんなと一緒にいたくて……)
モモ「先輩が何を考えてるかは分かるっす……でも、私たちとずっと一緒にいたいがために、
自分の将来の可能性まで狭めてしまうのはよくないっすよ」
ゆみ「モモ……」
モモ「それは…先輩が本当に行きたい大学じゃないっすよね?」
ゆみ「い、いやそれは…」
ゆみ(お前がそう言うなんて……私はお前と…みんなと一緒にいたくて……)
モモ「先輩が何を考えてるかは分かるっす……でも、私たちとずっと一緒にいたいがために、
自分の将来の可能性まで狭めてしまうのはよくないっすよ」
ゆみ「モモ……」
551: 2010/08/25(水) 14:49:07.14 ID:SNqXtlOg0
モモ「私は信じてるっす。私の好きな先輩は、そんなに弱くないはずだって」
ゆみ(………!!)
モモ「それに、遠方の大学に行ったって、休みになったら帰ってこれるっす。
いやむしろ、私の方から会いに行くっすよ!!」
ゆみ「モモ……すまなかった、私は……」
蒲原「二人とも何してるんだー? おいてくぞー」
ゆみ(………!!)
モモ「それに、遠方の大学に行ったって、休みになったら帰ってこれるっす。
いやむしろ、私の方から会いに行くっすよ!!」
ゆみ「モモ……すまなかった、私は……」
蒲原「二人とも何してるんだー? おいてくぞー」
552: 2010/08/25(水) 15:01:39.39 ID:SNqXtlOg0
睦月「おーい」
妹尾「二人とも―、 こっちですよー」
気が付けば、ずいぶん三人から引き離されてしまったようだった。
モモ「はーい! 今行くっすよー!」
モモ「さ、行きましょう先輩」サッ
そう言ってモモは私の手をとった。
ゆみ「ああ、行こう」
ゆみ(モモ……まさかお前に気付かされるなんてな……)
私たちは大急ぎで、三人の元まで走って行った。
妹尾「二人とも―、 こっちですよー」
気が付けば、ずいぶん三人から引き離されてしまったようだった。
モモ「はーい! 今行くっすよー!」
モモ「さ、行きましょう先輩」サッ
そう言ってモモは私の手をとった。
ゆみ「ああ、行こう」
ゆみ(モモ……まさかお前に気付かされるなんてな……)
私たちは大急ぎで、三人の元まで走って行った。
553: 2010/08/25(水) 15:14:14.94 ID:SNqXtlOg0
数時間後
蒲原「見つからないなー」ガサガサ
モモ「だんだん日が暮れてきたっすね」
睦月「ここらで引き返したほうがいいのでは?」
ゆみ「私も賛成だ。暗くなる前に帰った方がいい」
蒲原「いやもうちょい……」
ガサガサッ
蒲原「見つからないなー」ガサガサ
モモ「だんだん日が暮れてきたっすね」
睦月「ここらで引き返したほうがいいのでは?」
ゆみ「私も賛成だ。暗くなる前に帰った方がいい」
蒲原「いやもうちょい……」
ガサガサッ
554: 2010/08/25(水) 15:20:27.44 ID:SNqXtlOg0
全員「!?」
妹尾「今何か物音が……」
ガサガサッ
睦月「まただ……結構大きいですよ」
モモ「誰かいるんすか?」
シーン
蒲原「おいおい、これはもしかして……幽霊か!?」
妹尾「今何か物音が……」
ガサガサッ
睦月「まただ……結構大きいですよ」
モモ「誰かいるんすか?」
シーン
蒲原「おいおい、これはもしかして……幽霊か!?」
555: 2010/08/25(水) 15:34:48.30 ID:SNqXtlOg0
睦月
「まさか……まだ夜になってませんよ?」
蒲原「昼間に出るやつもいるって話だぞ―? それとも例の氏体が起き上がって徘徊してるとか……」
妹尾「やだ……気味悪いこと言わないでよ智美ちゃん」
蒲原「ワハハー」
ゆみ「しっ! 静かに……何かこっちに来るぞ」
ガサガサッ…ザザッ!
『グゥ…?』
「まさか……まだ夜になってませんよ?」
蒲原「昼間に出るやつもいるって話だぞ―? それとも例の氏体が起き上がって徘徊してるとか……」
妹尾「やだ……気味悪いこと言わないでよ智美ちゃん」
蒲原「ワハハー」
ゆみ「しっ! 静かに……何かこっちに来るぞ」
ガサガサッ…ザザッ!
『グゥ…?』
557: 2010/08/25(水) 15:45:14.79 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「あっ……」
私たち全員がその場に凍りついた。
茂みの奥から飛び出してきたのは、体長一メートルほどの小グマだった。
クマ『グゥ……』
妹尾「く……クマさん?」
睦月「や、やばいですよ…」
ゆみ「お、落ち着け……こういうときは下手に刺激せずにだな……」
モモ「目を合わたまま、ゆっくり後ろに下がるってテレビで言ってたっす…」
ゆみ「だったらこのまま……」
クマ『グワッ!』
私たち全員がその場に凍りついた。
茂みの奥から飛び出してきたのは、体長一メートルほどの小グマだった。
クマ『グゥ……』
妹尾「く……クマさん?」
睦月「や、やばいですよ…」
ゆみ「お、落ち着け……こういうときは下手に刺激せずにだな……」
モモ「目を合わたまま、ゆっくり後ろに下がるってテレビで言ってたっす…」
ゆみ「だったらこのまま……」
クマ『グワッ!』
559: 2010/08/25(水) 15:55:49.11 ID:SNqXtlOg0
その小グマは二本足で仁王立ちすると、両腕を振り上げて私たちを威嚇した。
クマ『グワッ! グワッ! グワッ!』
睦月「うわっ…」
ゆみ「に、逃げろっ!!」
妹尾「きゃぁぁぁっ!!」
私たちは小グマに背を向け、一目散に走り出した。
モモ「逃げるってどこにっすかー!?」
ゆみ「とにかく走れ!」
蒲原「ワハハー!」
ダッダッダッダッダッダッ……
クマ『グワッ! グワッ! グワッ!』
睦月「うわっ…」
ゆみ「に、逃げろっ!!」
妹尾「きゃぁぁぁっ!!」
私たちは小グマに背を向け、一目散に走り出した。
モモ「逃げるってどこにっすかー!?」
ゆみ「とにかく走れ!」
蒲原「ワハハー!」
ダッダッダッダッダッダッ……
560: 2010/08/25(水) 16:17:13.12 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「ハァ……ハァ……」
睦月「荷物が重いせいで余計疲れた……」
妹尾「もう……追ってこないですよね?」
蒲原「最初から追ってきてないんじゃないかー?」
モモ「っていうか、子グマ相手にどんだけビビってるんですか私たち……」
睦月「荷物が重いせいで余計疲れた……」
妹尾「もう……追ってこないですよね?」
蒲原「最初から追ってきてないんじゃないかー?」
モモ「っていうか、子グマ相手にどんだけビビってるんですか私たち……」
561: 2010/08/25(水) 16:27:16.23 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「それも……そうだな」
睦月「ふふ…」
蒲原「ワッハッハッハー」
自然と笑みがこぼれ、気が付けば全員で笑っていた。
睦月「あの状況で、佳織が『クマさん…』とか……思い出しただけでもお腹痛い……」
妹尾「だって可愛らしかったじゃないですかー。きっと、あっちも私たちが怖かったんですよ」
睦月「ふふ…」
蒲原「ワッハッハッハー」
自然と笑みがこぼれ、気が付けば全員で笑っていた。
睦月「あの状況で、佳織が『クマさん…』とか……思い出しただけでもお腹痛い……」
妹尾「だって可愛らしかったじゃないですかー。きっと、あっちも私たちが怖かったんですよ」
562: 2010/08/25(水) 16:38:21.04 ID:SNqXtlOg0
モモ「っていうかあの時はびっくりしたっすよ。私、自分がステルスできることまで忘れてたっす」
蒲原「一番ビビってたのはゆみちんだなー。冷静なフリしててもバレバレだぞ―」
ゆみ「なっ……違うぞ! 私は決して……」
モモ「子グマに怯えちゃう先輩可愛いっすー!」
ゆみ「モ、モモ……」
蒲原「ワハハ」
楽しい――圧倒的に楽しい時間。これが永遠に続けばいいのにと思った。
蒲原「一番ビビってたのはゆみちんだなー。冷静なフリしててもバレバレだぞ―」
ゆみ「なっ……違うぞ! 私は決して……」
モモ「子グマに怯えちゃう先輩可愛いっすー!」
ゆみ「モ、モモ……」
蒲原「ワハハ」
楽しい――圧倒的に楽しい時間。これが永遠に続けばいいのにと思った。
563: 2010/08/25(水) 17:00:56.76 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「おい、ところでこれからどうする?」
睦月「もうすぐ日が落ちますね……というかここどこです?」
モモ「無我夢中で走ったから……森のかなり奥深くまできちゃったすね」
妹尾「車のところまでは、帰れそうにありませんね」
睦月「ひょっとして、野宿? でも、ロクに食料もないのに……」
蒲原「ワハハ―、それなら持ってきた荷物を開けるんだなー」
睦月「もうすぐ日が落ちますね……というかここどこです?」
モモ「無我夢中で走ったから……森のかなり奥深くまできちゃったすね」
妹尾「車のところまでは、帰れそうにありませんね」
睦月「ひょっとして、野宿? でも、ロクに食料もないのに……」
蒲原「ワハハ―、それなら持ってきた荷物を開けるんだなー」
564: 2010/08/25(水) 17:07:49.02 ID:SNqXtlOg0
ドサッ
モモ「これは…」
妹尾「キャンプセット一式ですか?」
睦月「テントまで入ってる……どうりで重かったわけだ」
蒲原「ワハハ、まあ、こんなことになるんじゃないかと思ってなー」
ゆみ「用意がいいというか……いや、お前にはめられたと言うべきか」
蒲原「ワハハ、いいだろー? たまにはこういうのも」
モモ「これは…」
妹尾「キャンプセット一式ですか?」
睦月「テントまで入ってる……どうりで重かったわけだ」
蒲原「ワハハ、まあ、こんなことになるんじゃないかと思ってなー」
ゆみ「用意がいいというか……いや、お前にはめられたと言うべきか」
蒲原「ワハハ、いいだろー? たまにはこういうのも」
565: 2010/08/25(水) 17:26:43.46 ID:SNqXtlOg0
その後
蒲原「ふっー、食った食ったー」
睦月「カレーおいしかったです。蒲原先輩、料理上手いんですね」
蒲原「ワハハー、昔からキャンプの真似ごとみたいなことはしてたからな―。
それにキャンプの醍醐味は、みんなで協力して料理を作ることにあるんだぞ?」
モモ「みんなで共同作業するのは楽しいっす!」
妹尾「私、こういうの初めてだけど、とってもワクワクして楽しいですね」
蒲原「ふっー、食った食ったー」
睦月「カレーおいしかったです。蒲原先輩、料理上手いんですね」
蒲原「ワハハー、昔からキャンプの真似ごとみたいなことはしてたからな―。
それにキャンプの醍醐味は、みんなで協力して料理を作ることにあるんだぞ?」
モモ「みんなで共同作業するのは楽しいっす!」
妹尾「私、こういうの初めてだけど、とってもワクワクして楽しいですね」
566: 2010/08/25(水) 17:38:18.39 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「さて、ご飯も食べたしそろそろテントの中に入るか」
蒲原「ならトランプやろーや。もちろん、ビリには罰ゲームだぞワハハ」
睦月「えーっ、あんまり変なのはよしてくださいよー」
蒲原「そうだなー。ここは定番で、好きな人を言うとか……」
モモ「それだと私が負けたら……きゃーっ!恥ずかしいーっす!」
妹尾「も、桃子さん……」
ワイワイ キャッキャッ
ゆみ(もう氏体とかどうでもよくなってるな……まあ楽しいからいいか)
蒲原「ならトランプやろーや。もちろん、ビリには罰ゲームだぞワハハ」
睦月「えーっ、あんまり変なのはよしてくださいよー」
蒲原「そうだなー。ここは定番で、好きな人を言うとか……」
モモ「それだと私が負けたら……きゃーっ!恥ずかしいーっす!」
妹尾「も、桃子さん……」
ワイワイ キャッキャッ
ゆみ(もう氏体とかどうでもよくなってるな……まあ楽しいからいいか)
567: 2010/08/25(水) 17:54:28.72 ID:SNqXtlOg0
『グワオオオーーーン!!』
全員「!?」
突如として夜の森に、動物のものと思わしき鳴き声が響き渡った。
『グワオオオーーーン!!』
妹尾「な、なんですかこの声……」
蒲原「オオカミでもいるのかー?」
睦月「絶滅してますよ」
モモ「もしかして……」
全員「!?」
突如として夜の森に、動物のものと思わしき鳴き声が響き渡った。
『グワオオオーーーン!!』
妹尾「な、なんですかこの声……」
蒲原「オオカミでもいるのかー?」
睦月「絶滅してますよ」
モモ「もしかして……」
568: 2010/08/25(水) 18:10:57.70 ID:SNqXtlOg0
『グワッ! グワッ! グワッ!』
ゆみ「多分…昼のクマだと思う……」
モモ「子グマがいるなら親もいるはずっす」
蒲原「ワハッ…」
睦月「今からでも移動しますか? もしここまで来たら…」
ゆみ「もうかなり暗いから移動は危険だ。ここを動かない方がいい」
睦月「じゃあどうするんです?」
ゆみ「多分…昼のクマだと思う……」
モモ「子グマがいるなら親もいるはずっす」
蒲原「ワハッ…」
睦月「今からでも移動しますか? もしここまで来たら…」
ゆみ「もうかなり暗いから移動は危険だ。ここを動かない方がいい」
睦月「じゃあどうするんです?」
569: 2010/08/25(水) 18:24:46.34 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「明かりを消して今日はもう寝よう。その代わり、常に一人が見張りに立つ。これでどうだ?」
妹尾「いい考えだと思います。それで順番はどうしますか?」
蒲原「まあ一番目は佳織で決まりだとして、次からはじゃんけんだなー」
妹尾「どうして私が一番目なの?」
蒲原「ワハハ―、だって一番体力なさそうだし」
妹尾「そんな…」
結局じゃんけんの結果、佳織、睦月、蒲原、私、モモの順番となった。
妹尾「いい考えだと思います。それで順番はどうしますか?」
蒲原「まあ一番目は佳織で決まりだとして、次からはじゃんけんだなー」
妹尾「どうして私が一番目なの?」
蒲原「ワハハ―、だって一番体力なさそうだし」
妹尾「そんな…」
結局じゃんけんの結果、佳織、睦月、蒲原、私、モモの順番となった。
570: 2010/08/25(水) 18:40:53.29 ID:SNqXtlOg0
二時間後
妹尾「津山さん、起きて」トントン
睦月「起きてるよ……蒲原先輩の寝像が悪すぎてちっとも眠れない…」
蒲原「スピー……ワハハー」
妹尾「ふふ、相変わらずだな智美ちゃん」
睦月「まったく、最初はとんでもない先輩だと思ってたけど……この部に入って今まで楽しかったよ」
妹尾「私も半ば強引だったけど……それでも入って良かったなって思ってるよ」
睦月「来年からは三人だけになるけど……お互い頑張ってこの部を盛り上げていこう」
妹尾「うん」
妹尾「津山さん、起きて」トントン
睦月「起きてるよ……蒲原先輩の寝像が悪すぎてちっとも眠れない…」
蒲原「スピー……ワハハー」
妹尾「ふふ、相変わらずだな智美ちゃん」
睦月「まったく、最初はとんでもない先輩だと思ってたけど……この部に入って今まで楽しかったよ」
妹尾「私も半ば強引だったけど……それでも入って良かったなって思ってるよ」
睦月「来年からは三人だけになるけど……お互い頑張ってこの部を盛り上げていこう」
妹尾「うん」
571: 2010/08/25(水) 18:59:29.57 ID:SNqXtlOg0
さらに二時間後
睦月「蒲原先輩、蒲原先輩……起きてくださいよもう」ユサユサ
蒲原「…んぁ? なんだもう朝か―?」
睦月「寝ぼけてないでくださいよ……交代の時間です」
蒲原「……ああー、そういえばそうだったなー」
睦月「しっかりしてくださいよー。私たちの命がかかってるんですから…」
蒲原「ワハハー、すまんすまん」
睦月「じゃあ私は寝るんで…」
蒲原「なあむっきー」
睦月「……なんですか?」
蒲原「頑張れよ新部長……私たちも時々遊びに行くからさ」
睦月「……はい!」
睦月「蒲原先輩、蒲原先輩……起きてくださいよもう」ユサユサ
蒲原「…んぁ? なんだもう朝か―?」
睦月「寝ぼけてないでくださいよ……交代の時間です」
蒲原「……ああー、そういえばそうだったなー」
睦月「しっかりしてくださいよー。私たちの命がかかってるんですから…」
蒲原「ワハハー、すまんすまん」
睦月「じゃあ私は寝るんで…」
蒲原「なあむっきー」
睦月「……なんですか?」
蒲原「頑張れよ新部長……私たちも時々遊びに行くからさ」
睦月「……はい!」
573: 2010/08/25(水) 19:05:22.19 ID:SNqXtlOg0
夢を見ていた。これは部活の夢か?
私を含め五人が、とても楽しそうな顔をして部室で騒いでいた。
蒲原がふざけて、私がそれに突っ込み、佳織がフォローをいれる。
睦月はそれを見てウムとうなずき、モモはとにかく私に抱きつこうとする。
いつもの日常風景だ。
まるでガラスが割れるように――その風景が粉々になった。
ゆみ「あっ……」
私は必氏で散らばった破片を拾い集めようとする。
しかし、砂粒のようなサイズにまで砕け散ってしまったそれはもう元には――
『ゆみちん、ゆみちん!』
私を含め五人が、とても楽しそうな顔をして部室で騒いでいた。
蒲原がふざけて、私がそれに突っ込み、佳織がフォローをいれる。
睦月はそれを見てウムとうなずき、モモはとにかく私に抱きつこうとする。
いつもの日常風景だ。
まるでガラスが割れるように――その風景が粉々になった。
ゆみ「あっ……」
私は必氏で散らばった破片を拾い集めようとする。
しかし、砂粒のようなサイズにまで砕け散ってしまったそれはもう元には――
『ゆみちん、ゆみちん!』
574: 2010/08/25(水) 19:08:48.54 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「はっ……!」
蒲原「どうしたんだー? すごくうなされてたぞ?」
ゆみ「悪い…悪い夢を見ていた……」
蒲原「もう交代の時間だけど、大丈夫か? なんなら休んでても…」
ゆみ「いや、大丈夫だ……心配するな」
こういう時の蒲原の気遣いが、私は好きだった。
蒲原「どうしたんだー? すごくうなされてたぞ?」
ゆみ「悪い…悪い夢を見ていた……」
蒲原「もう交代の時間だけど、大丈夫か? なんなら休んでても…」
ゆみ「いや、大丈夫だ……心配するな」
こういう時の蒲原の気遣いが、私は好きだった。
575: 2010/08/25(水) 19:31:10.30 ID:SNqXtlOg0
蒲原「もうさすがにクマは出ないだろー。見張りやめてもいいんじゃないか?」
ゆみ「一応念のためだ。それにみんなもやったんだし、私もやるさ」
蒲原「そっか。じゃあ私はテントに戻るぞ―」
ゆみ「ああ、そうしろ」
蒲原「ゆみちん」
ゆみ「ん? まだ何かあるのか?」
蒲原「思いっきり楽しもうなー。今も、これからも」
ゆみ「もちろんだ」
ゆみ「一応念のためだ。それにみんなもやったんだし、私もやるさ」
蒲原「そっか。じゃあ私はテントに戻るぞ―」
ゆみ「ああ、そうしろ」
蒲原「ゆみちん」
ゆみ「ん? まだ何かあるのか?」
蒲原「思いっきり楽しもうなー。今も、これからも」
ゆみ「もちろんだ」
576: 2010/08/25(水) 19:42:43.65 ID:SNqXtlOg0
―――――――
ゆみ「モモ、モモ…」ポンポン
モモ「ふぁ……先輩?」
ゆみ「交代の時間だ……といっても、夜明けまでもうすぐだがな」
モモ「そうっすか……でも私しっかり見張るっすよ」
ゆみ「どうせなら、私も一緒にいていいか? 一緒に夜明けを見よう」
モモ「もちろん大歓迎っすよ!!」
ゆみ「モモ、モモ…」ポンポン
モモ「ふぁ……先輩?」
ゆみ「交代の時間だ……といっても、夜明けまでもうすぐだがな」
モモ「そうっすか……でも私しっかり見張るっすよ」
ゆみ「どうせなら、私も一緒にいていいか? 一緒に夜明けを見よう」
モモ「もちろん大歓迎っすよ!!」
577: 2010/08/25(水) 19:49:53.54 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「ふぅ……それにしても、昨日は楽しかったな」
モモ「私は先輩といればどこでも楽しいっす! ……でも、この五人で活動するのも
同じくらい楽しいし、好きな時間っす」
ゆみ「ああ…この時間がいつまでも続けば……」
そこで私は、またあの夢を思い出した。
ゆみ「……っ」
モモ「どうしたっすか?」
ゆみ「いや、なんでも…」
モモ「私は先輩といればどこでも楽しいっす! ……でも、この五人で活動するのも
同じくらい楽しいし、好きな時間っす」
ゆみ「ああ…この時間がいつまでも続けば……」
そこで私は、またあの夢を思い出した。
ゆみ「……っ」
モモ「どうしたっすか?」
ゆみ「いや、なんでも…」
578: 2010/08/25(水) 19:58:32.87 ID:SNqXtlOg0
モモ「私、先輩に見つけてもらうまでは、他人とのコミュニケーションを半ば諦めてたっす。
でも先輩に見つてもらえたおかげで、そのための時間も悪くないってことに気付いったすよ」
ゆみ(なんとなくそうだろうとは思っていたが……モモの口から直接聞くのは初めてだな)
モモ「今じゃ麻雀部以外にも少しずつ友達が出来てきて……」
ゆみ「それはよかった。大切にしろよ? 部活以外の友達も重要だ」
モモ「それでも一番は先輩っす!」
ゆみ「モモ……」
モモ「私にとって、先輩は暗い所にいる私に手を差し伸べてくれた……白馬の王子様っすよ!」
でも先輩に見つてもらえたおかげで、そのための時間も悪くないってことに気付いったすよ」
ゆみ(なんとなくそうだろうとは思っていたが……モモの口から直接聞くのは初めてだな)
モモ「今じゃ麻雀部以外にも少しずつ友達が出来てきて……」
ゆみ「それはよかった。大切にしろよ? 部活以外の友達も重要だ」
モモ「それでも一番は先輩っす!」
ゆみ「モモ……」
モモ「私にとって、先輩は暗い所にいる私に手を差し伸べてくれた……白馬の王子様っすよ!」
579: 2010/08/25(水) 20:05:11.59 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「あっ…そのだな……」
モモ「///」
ゆみ(て、照れるな……何て言ったらいいものか……)
モモ「……あっ! 先輩、日の出っす!」
ゆみ「あ……本当だ」
私たち二人は赤面したまま、美しい日の出を眺めていた。
モモ「きれいっすね…」
ゆみ「ああ…」
ゆみ(そうだ……この素晴らしい時間を終わらせてなるものか)
モモ「///」
ゆみ(て、照れるな……何て言ったらいいものか……)
モモ「……あっ! 先輩、日の出っす!」
ゆみ「あ……本当だ」
私たち二人は赤面したまま、美しい日の出を眺めていた。
モモ「きれいっすね…」
ゆみ「ああ…」
ゆみ(そうだ……この素晴らしい時間を終わらせてなるものか)
580: 2010/08/25(水) 20:12:21.68 ID:SNqXtlOg0
モモ「はっー。楽しかったひと時も、もう終わりっすか」
妹尾「名残惜しいですよねー」
蒲原「ワハハー、まだ私たちの夏休みは始まったばかりだぞー」
ゆみ「受験勉強にも精を出せよ。さあ帰ろうか」
睦月「帰る途中でまたクマに会わないといいんですが…」
妹尾「名残惜しいですよねー」
蒲原「ワハハー、まだ私たちの夏休みは始まったばかりだぞー」
ゆみ「受験勉強にも精を出せよ。さあ帰ろうか」
睦月「帰る途中でまたクマに会わないといいんですが…」
581: 2010/08/25(水) 20:23:22.46 ID:SNqXtlOg0
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
蒲原「いやー、それにしても楽しかった」
ゆみ「そんなに中身のあることはしてないぞ?」
睦月「森に入って、子グマから逃げて、テントを張って、カレー作って、見張りをして…」
妹尾「ホントだ。あんまり大したことしてませんね」
蒲原「ワハハー、おっかしいなー? 予定ではもっと大冒険になるハズだったのになー」
ゆみ「だいたい当初の目的は……」
モモ「あっー!!」
蒲原「いやー、それにしても楽しかった」
ゆみ「そんなに中身のあることはしてないぞ?」
睦月「森に入って、子グマから逃げて、テントを張って、カレー作って、見張りをして…」
妹尾「ホントだ。あんまり大したことしてませんね」
蒲原「ワハハー、おっかしいなー? 予定ではもっと大冒険になるハズだったのになー」
ゆみ「だいたい当初の目的は……」
モモ「あっー!!」
583: 2010/08/25(水) 20:26:40.98 ID:SNqXtlOg0
蒲原「なんだー、どうしたんだモモ?」
睦月「まさかクマ? 勘弁してくださいよ…」
モモ「あ…あの茂みを見るっす……」
全員「!?」
睦月「あ……あそこから何か突き出てる……」
ゆみ(茂みから突き出した両足……まさか)
蒲原「氏体…?」
睦月「まさかクマ? 勘弁してくださいよ…」
モモ「あ…あの茂みを見るっす……」
全員「!?」
睦月「あ……あそこから何か突き出てる……」
ゆみ(茂みから突き出した両足……まさか)
蒲原「氏体…?」
584: 2010/08/25(水) 20:32:05.31 ID:SNqXtlOg0
妹尾「ま…まさか本当だったなんて……」
睦月「ど…どうします?」
蒲原「き、決まってるさー。まずは救急車を……ってあれ?」
ゆみ「………」ザザッ…
蒲原「ゆゆゆ、ゆみちん近付いちゃだめだ」
睦月「そうですよ……もし、ふ、腐敗でもしてたら……」
ゆみ「……氏体の靴を見てみろ」
睦月「ど…どうします?」
蒲原「き、決まってるさー。まずは救急車を……ってあれ?」
ゆみ「………」ザザッ…
蒲原「ゆゆゆ、ゆみちん近付いちゃだめだ」
睦月「そうですよ……もし、ふ、腐敗でもしてたら……」
ゆみ「……氏体の靴を見てみろ」
586: 2010/08/25(水) 20:38:41.61 ID:SNqXtlOg0
妹尾「靴って……あっ!」
睦月「あの靴は学校指定の…」
モモ「ってことは、鶴賀学園の生徒?」
ゆみ「そうだ……あの氏体をこのまま放っておくわけにはいかない」
蒲原「……分かったゆみちん。全員で近付こう」
睦月「あの靴は学校指定の…」
モモ「ってことは、鶴賀学園の生徒?」
ゆみ「そうだ……あの氏体をこのまま放っておくわけにはいかない」
蒲原「……分かったゆみちん。全員で近付こう」
587: 2010/08/25(水) 20:44:20.78 ID:SNqXtlOg0
ザッ…ザッ…ザッ…
私たち五人は、恐る恐る氏体へと近付いた。
ゆみ(まだそんなに腐敗はしてないみたいだ。氏んで日が浅いんだろう…)
ゆみ「いいか…? 顔を見るぞ…」
全員「………」ドキドキ
ゆみ「……」バッ
私は勢いよく茂みをかき分けた。
私たち五人は、恐る恐る氏体へと近付いた。
ゆみ(まだそんなに腐敗はしてないみたいだ。氏んで日が浅いんだろう…)
ゆみ「いいか…? 顔を見るぞ…」
全員「………」ドキドキ
ゆみ「……」バッ
私は勢いよく茂みをかき分けた。
589: 2010/08/25(水) 20:49:29.63 ID:SNqXtlOg0
睦月「……は?」
蒲原「えっ…? でもそんな……」
妹尾「どうしてこんな……どうなってるんですか?」
ゆみ「バカな……こんなことが……」
モモ「……これ、私っすか……?」
蒲原「えっ…? でもそんな……」
妹尾「どうしてこんな……どうなってるんですか?」
ゆみ「バカな……こんなことが……」
モモ「……これ、私っすか……?」
590: 2010/08/25(水) 20:52:22.15 ID:SNqXtlOg0
茂みの中に横たわり、虚ろな眼をして宙を仰いでいる少女の氏体。
それはモモそのものだった。
妹尾「桃子さんはここにるのに……どうして?」
睦月「わけが分からない……頭が…」クラッ
ゆみ(何故……他人の空似? しかし鶴賀の制服を着ている……)
妹尾「!! 桃子さん、足が……」
それはモモそのものだった。
妹尾「桃子さんはここにるのに……どうして?」
睦月「わけが分からない……頭が…」クラッ
ゆみ(何故……他人の空似? しかし鶴賀の制服を着ている……)
妹尾「!! 桃子さん、足が……」
591: 2010/08/25(水) 20:58:33.93 ID:SNqXtlOg0
スーッ
ゆみ「モモ、お前足が消えて…」
モモ「………」シュゥゥゥゥ
ゆみ(か、影まで消えていってる……いつものステルスじゃないのか?)
モモ「……私、考えてみれば二日前の記憶があいまいっす」
蒲原「えっ?」
モモ「部活が終わって、学校を出て……そこで記憶が途切れてるっす。
気が付いたら次の日の朝だったっすよ」
ゆみ「モモ、お前足が消えて…」
モモ「………」シュゥゥゥゥ
ゆみ(か、影まで消えていってる……いつものステルスじゃないのか?)
モモ「……私、考えてみれば二日前の記憶があいまいっす」
蒲原「えっ?」
モモ「部活が終わって、学校を出て……そこで記憶が途切れてるっす。
気が付いたら次の日の朝だったっすよ」
592: 2010/08/25(水) 21:02:55.17 ID:SNqXtlOg0
ゆみ「モモ…」
モモ「先輩……どうして私、幽霊になっちゃったんすかね」シュゥゥゥゥ
ゆみ「その先は言うな……言わないでくれ」
モモの体は既に半分ほど消失していた。
モモ「もしかしたら、みんなに見つけてほしくて…」シュゥゥゥゥ
ゆみ「いやだ……いかないでくれ、モモ…」
モモ「……先輩……見つけてくれて、ありがとう…」
スーッ
モモ「先輩……どうして私、幽霊になっちゃったんすかね」シュゥゥゥゥ
ゆみ「その先は言うな……言わないでくれ」
モモの体は既に半分ほど消失していた。
モモ「もしかしたら、みんなに見つけてほしくて…」シュゥゥゥゥ
ゆみ「いやだ……いかないでくれ、モモ…」
モモ「……先輩……見つけてくれて、ありがとう…」
スーッ
593: 2010/08/25(水) 21:06:57.86 ID:SNqXtlOg0
全員「………」
蒲原(消えた……)
ゆみ「………」
蒲原「ゆみちん…」
ゆみ「……モモを連れて帰るぞ」
蒲原(消えた……)
ゆみ「………」
蒲原「ゆみちん…」
ゆみ「……モモを連れて帰るぞ」
594: 2010/08/25(水) 21:13:19.28 ID:SNqXtlOg0
妹尾「えっ…」
ゆみ「みんな木で担架を作るんだ……モモを連れて帰る」
睦月「ム、ムチャですよ」
ゆみ「いや、やるんだ!」キッ
睦月「うっ…」
蒲原「ゆみちん!」ガシッ
ゆみ「……!」
蒲原「それはムリだよ。警察に電話しよう……」
ゆみ「みんな木で担架を作るんだ……モモを連れて帰る」
睦月「ム、ムチャですよ」
ゆみ「いや、やるんだ!」キッ
睦月「うっ…」
蒲原「ゆみちん!」ガシッ
ゆみ「……!」
蒲原「それはムリだよ。警察に電話しよう……」
595: 2010/08/25(水) 21:19:55.33 ID:SNqXtlOg0
私たちは警察へ電話をかけた。
氏体は発見された。
その後の事情聴取やらなんやらで、かなりの長時間拘束された。
私たちは警察に、今回のことをどう話したらよいのか、まるで分からなかった。
まず第一に、あの噂の出所自体が不明だった。
私はひそかに、幽霊となったモモが無意識のうちに流したのではないか――
そう考えていたが、こんな話を警察が信じるわけがない。
結局、四人が解放されたのは、氏体発見の翌日の朝だった。
氏体は発見された。
その後の事情聴取やらなんやらで、かなりの長時間拘束された。
私たちは警察に、今回のことをどう話したらよいのか、まるで分からなかった。
まず第一に、あの噂の出所自体が不明だった。
私はひそかに、幽霊となったモモが無意識のうちに流したのではないか――
そう考えていたが、こんな話を警察が信じるわけがない。
結局、四人が解放されたのは、氏体発見の翌日の朝だった。
597: 2010/08/25(水) 21:26:38.86 ID:SNqXtlOg0
妹尾「ぐすっ…ぐすっ……うえええっ」
蒲原「佳織…」ポンポン
ゆみ「大丈夫か…?」
蒲原「私は佳織と一緒に帰るよ。それじゃあ…」
トコトコトコトコ…
蒲原「佳織…」ポンポン
ゆみ「大丈夫か…?」
蒲原「私は佳織と一緒に帰るよ。それじゃあ…」
トコトコトコトコ…
598: 2010/08/25(水) 21:31:11.86 ID:SNqXtlOg0
睦月「わ、私も帰ります…」
ゆみ「ああ……」
睦月「それでは…」ペコッ
ゆみ「……睦月」
睦月「は、はい。なんでしょうか…?」
ゆみ「……いや、やっぱり何でもない」
睦月「……?」
ゆみ(また学校で……なんて、言えるわけないじゃないか……っ)
ゆみ「ああ……」
睦月「それでは…」ペコッ
ゆみ「……睦月」
睦月「は、はい。なんでしょうか…?」
ゆみ「……いや、やっぱり何でもない」
睦月「……?」
ゆみ(また学校で……なんて、言えるわけないじゃないか……っ)
599: 2010/08/25(水) 21:39:07.85 ID:SNqXtlOg0
夏休みが終わり、学校が始まって――
私と蒲原は、麻雀部に顔を出さなくなった。
受験に集中していたのもあるが、実際はあの事件のせいだ。
お互いに気まずく、もう四人だけで楽しもうという気にはなれなかった。
佳織と睦月とは、学校の廊下ですれちがった時に軽く会釈を交わす――そんな仲になった。
友達はでき、また離れていく。仕方のないことだ。
そして私は鶴賀学園を卒業し、大学に入り、やがて社会に出た。
私と蒲原は、麻雀部に顔を出さなくなった。
受験に集中していたのもあるが、実際はあの事件のせいだ。
お互いに気まずく、もう四人だけで楽しもうという気にはなれなかった。
佳織と睦月とは、学校の廊下ですれちがった時に軽く会釈を交わす――そんな仲になった。
友達はでき、また離れていく。仕方のないことだ。
そして私は鶴賀学園を卒業し、大学に入り、やがて社会に出た。
600: 2010/08/25(水) 21:49:53.87 ID:SNqXtlOg0
大人になってからも、私は蒲原とは定期的に連絡を取り合っていた。
蒲原の話では、佳織は大学を出た後に結婚し、
今では家事と育児の両方に追われる日々を送っているらしい。
蒲原はというと、なんとか大学に受かり、卒業後は企業に就職したにも関わらず、
自分に合わないという理由で数年で退社、そのまま実家に戻って家業を継いでしまった。
睦月に関しては、卒業後の動向は全く分からなかった。
しかしついこの前、私が何気なくめくった麻雀雑誌の片隅に、彼女の写真が載っていた。
驚いたことに、睦月はプロ雀士としてデビューを果たしていたのだ。
全くもって、人の行く末というのは分からないものである。
蒲原の話では、佳織は大学を出た後に結婚し、
今では家事と育児の両方に追われる日々を送っているらしい。
蒲原はというと、なんとか大学に受かり、卒業後は企業に就職したにも関わらず、
自分に合わないという理由で数年で退社、そのまま実家に戻って家業を継いでしまった。
睦月に関しては、卒業後の動向は全く分からなかった。
しかしついこの前、私が何気なくめくった麻雀雑誌の片隅に、彼女の写真が載っていた。
驚いたことに、睦月はプロ雀士としてデビューを果たしていたのだ。
全くもって、人の行く末というのは分からないものである。
605: 2010/08/25(水) 22:00:54.80 ID:SNqXtlOg0
プルルルルル…ガチャッ
蒲原『ワハハ、久しぶりだなゆみちん』
ゆみ「……そっちも相変わらずのようだな。それで、何かあったのか?」
蒲原『あー……それなんだけどさ……』
ゆみ「どうした? 何か言いにくいことなのか?」
蒲原『ニュースは見ただろ? 殺人事件の時効が廃止されたっていう…』
ゆみ「当然知っている」
蒲原『これでゆみちんにもチャンスが出来た……今からでも間に合うよな?』
ゆみ「ああ……今の仕事を続けていれば、きっとな……」
蒲原『ワハハ、久しぶりだなゆみちん』
ゆみ「……そっちも相変わらずのようだな。それで、何かあったのか?」
蒲原『あー……それなんだけどさ……』
ゆみ「どうした? 何か言いにくいことなのか?」
蒲原『ニュースは見ただろ? 殺人事件の時効が廃止されたっていう…』
ゆみ「当然知っている」
蒲原『これでゆみちんにもチャンスが出来た……今からでも間に合うよな?』
ゆみ「ああ……今の仕事を続けていれば、きっとな……」
606: 2010/08/25(水) 22:08:48.99 ID:SNqXtlOg0
私?
私は大学の法学部を卒業後、法科大学院へと進んだ。
今では一人の法曹として、日々の激務に忙殺される毎日だ。
蒲原『じゃあまた。忙しいのは分かるけど、たまには会おうや』
ゆみ「そうだな……考えておく」
ピッ
私は大学の法学部を卒業後、法科大学院へと進んだ。
今では一人の法曹として、日々の激務に忙殺される毎日だ。
蒲原『じゃあまた。忙しいのは分かるけど、たまには会おうや』
ゆみ「そうだな……考えておく」
ピッ
607: 2010/08/25(水) 22:24:44.85 ID:SNqXtlOg0
それでも、毎年夏になると彼女のことを思い出す。
ほのかに漂ってくる桃の香りと共に――
ゆみ(ひょっとしたら、見えないだけで近くにいるのかもしれないな)
ふと、そんなことを考えてしまうのだ。
ステルス・バイ・ミー 完
次回 京太郎「はいてないってどんな感じなんだ?」
ほのかに漂ってくる桃の香りと共に――
ゆみ(ひょっとしたら、見えないだけで近くにいるのかもしれないな)
ふと、そんなことを考えてしまうのだ。
ステルス・バイ・ミー 完
次回 京太郎「はいてないってどんな感じなんだ?」
610: 2010/08/25(水) 22:32:59.63 ID:cAK+sBsj0
乙乙
切ないはなしだったな…
切ないはなしだったな…
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります