620: 2010/08/26(木) 01:21:49.43 ID:R7wShVDc0
京太郎「はいてないて、どんな感じなんだ?」

咲「えっ?」

京太郎「だからパンツはいてないってどんな感じなんだ?」

咲「ど、どんな感じって言われても……これがフツーだし」

京太郎「なんかスースーしてて寒そうだよな」

咲「今夏だし、涼しくていいけど」

京太郎「冬とかヤバくないか?」

621: 2010/08/26(木) 01:31:50.80 ID:R7wShVDc0
咲「確かにそれはあるね」

京太郎「どうしてんの?」

咲「冬はタオルとか持ってきて、椅子に敷く人多いよ。
あとは……ふんどしとかあるけど、さすがにそれはねぇ」

京太郎「だよな、さすがに高校生にもなって、ふんどしはねぇよな。 ハハハハハ……」

咲「あははっ」

623: 2010/08/26(木) 01:40:28.70 ID:R7wShVDc0
京太郎「ハハ……いやぁ昔から気になってたことが聞けてよかったよ。
今ちょうど咲と俺しか部室にいなかったからさ」

咲「そうだったんだー。急に変な事聞いてくるからびっくりしたよ」

京太郎「悪い悪い、みんながいる所じゃ言えないだろ」

咲「そーだ、今の話聞いて思い出したんだけどさぁ…」

京太郎「なんだ?」

咲「聞いてよ、優希ちゃんのことなんだけど……」

624: 2010/08/26(木) 01:50:06.43 ID:R7wShVDc0
一ヶ月前 咲の教室

教師「―――であるからして、このxとyが……」

咲(あーあ、数学の授業退屈だなぁ)

咲(なんか面白いことないかな……あれっ?前の席の優希ちゃんが震えてる?)

優希「………」フルフル

咲(なんか不自然に体ねじったり、姿勢変えたりしてるし……どうしたんだろう?)

咲は教師の目を盗んで、優希に話しかけた。

咲「ねえ、優希ちゃん。どうしたの?」ヒソヒソ

優希「さ、咲ちゃん……な、なんでもないじぇ」フルフル

そう答えたものの、優希は相変わらず体を曲げたり、
貧乏ゆすりを始めたりと落ち着きがなかった。

625: 2010/08/26(木) 02:02:04.58 ID:R7wShVDc0
咲「ねえねえ優希ちゃんホントに大丈夫?」ヒソヒソ

優希「だ、大丈夫……だじぇ。できれば咲ちゃん、私にあんまりさわらないで……」

教師「おい片岡、お前さっきから挙動不審だぞ。どうしたんだ?」

優希「すい…ません……なんでも、ない、です……」プルプル

教師「そうか? ならいいが……で、これによって、のどパイあーる三乗となるわけだ」

和「SOA」

全員「ハハハハハ」

優希「………」プルプルプル

咲「……もう見てられないよ。優希ちゃん、どっか具合悪いんじゃないの? 一緒に保健室に……」グイッ

優希「あ、触っちゃ……あっ!」

ブブブブオォォォン!!!

627: 2010/08/26(木) 02:09:00.10 ID:R7wShVDc0
京太郎「あははははっ!! 優希のヤツ、オナラを我慢してたわけかよっ」

咲「それだけじゃないよ。その後すぐ教室飛び出してさぁ……
なんかオシッコとウンチも両方我慢してたみたいなんだよね」

京太郎「アハハハハハ、マジかよ笑い氏ぬ……」

咲「もー大変だったよ。こっちはそれを至近距離で受けたんだよ。
タコスばっか食ってるせいで、もの凄い臭さだったし」

京太郎「はいてないって大変なんだな」

咲「そうだよー、あははははっ」

ギィ……バタン

京太郎「あれ? 今扉開く音しなかった?」

咲「誰かいたのかな?」

628: 2010/08/26(木) 02:18:27.63 ID:R7wShVDc0
優希「グスン…グスン…」

片岡優希は泣いていた。今まで感じたことのないような絶望を胸に。

優希「ヒック…ヒック…どうして……」

優希(いつも通り部室に行ったら、咲ちゃんと京太郎の声がして……)

優希(何話してるのかと思って聞いてみたら、咲ちゃんがあのことを……
秘密にしてって頼んだのにっ……)

友達だと思っていた咲が、よりにもよって京太郎にあのことを話したという
二つの事実が、優希にはこの上なく辛かった。

629: 2010/08/26(木) 02:28:00.93 ID:R7wShVDc0
優希「ハァ…部活ズル休みしちゃったじぇ。でも、明日からも行きたくない…」

トコトコトコ……

福路「あら、あなたは…」

優希「じょ? 風越のキャプテンさん!」

福路「こんな所で会うなんて奇遇ね……それより、何かあったの?」

優希「い、いや何でもないじぇ」

福路「泣いてたみたいだけど…」

優希「………」

福路「私でよければ相談に乗るわ」ニコッ

優希「ううっ…おねーさーん!」

630: 2010/08/26(木) 02:37:06.39 ID:R7wShVDc0

―――――――

福路「そう…そんな事があったの」

優希「もう部活行きたくないじぇ…」

福路「麻雀をやめるの?」

優希「麻雀はやめたくないけど……もうあの場所には……」

福路「…………」

優希「私、部の中では麻雀強い方じゃないんだじぇ。それなのに威勢だけはよくて……
咲ちゃんから見たら、そーいうのウザかったのかも…」

632: 2010/08/26(木) 02:50:12.04 ID:R7wShVDc0
福路「………私ね」

優希「?」

福路「あなたによく似た人を知ってるの。その人は、あなたと同じようにちっちゃくて、
胸も無くて、たいして強くないのにウザくて、いつも陰口叩かれてたわ」

優希「………」

福路「でもね、その人はそんな状況にもめげずに……むしろ全然気にしなくて、
ウザい自分を貫き通して、ついには風越の大将になったの。(負けたけど…)」

福路「だからあなたも、今は辛くても、いつかきっといいことがあるって信じて頑張り続けてほしいわ」

優希「おねーさん……」ジーン

優希「うん…そうだじぇ。私、辛くても部活は辞めない!」

634: 2010/08/26(木) 02:57:15.87 ID:R7wShVDc0
優希「ありがとう。おえーさんに勇気づけられたじぇ」

福路「よかった、これで安心ね……そうだ、いい物があるわ」

そう言って福路は、持っていた重箱を差し出した。

優希「なんなのだ、これは?」ガチャ

優希が蓋を開けるとそこには、優希の大好物であるタコスがぎっしりと詰められていた。

優希「こ、これは…タコスだじぇ!」キラキラ

635: 2010/08/26(木) 03:01:13.61 ID:R7wShVDc0
福路「部の皆にごちそうするつもりだったんだけど、あなたにあげるわ。
タコス、好きなんでしょう?」

優希「大好きだじぇ! でも、いいのか?」

福路「ふふ、あなたが元気になったお祝いよ。たくさんあるから、
御家族や友達にも分けてあげてね。じゃあ私はそろそろ行かないと」スッ

優希「ありがとーおねーさん。この恩は忘れないじぇー」

福路「ふふ…さようなら」

636: 2010/08/26(木) 03:13:30.84 ID:R7wShVDc0
翌日 麻雀部部室

咲「それでーそのオナラがブブゼラの音にそっくりでー」

久「アハハハ、そんな事があったのー?」

咲「絶対あれ、みの方も出てましたよー」

和「み…宮永さん…下品ですよ…」プルプル

京太郎「そーいう和だって、必氏に笑い堪えてるじゃないか」

和「ち、ちが…」

久「ブブブブオォォォン!!! ブオォォォォォォ!!」←ブブゼラ吹く真似

和「ぶふっ!!」

京太郎「そーいやタコスのやつ、今日学校こなかったよな」

咲「またタコス食べすぎて下痢ピーとかかな?」

京太郎「ははっ、ありえるかも」


ガッチャ…ギィィ…

646: 2010/08/26(木) 09:20:50.10 ID:R7wShVDc0
久「扉が開いた?」

咲「まだ来てない人いたっけ?」

京太郎「今日はタコスが休みで、それ以外は全員ここにいるぞ」

久「じゃあ誰…なの…?」


扉を開けた人物がゆっくりと部室の中に入って来た。
その人物とは―――


和「…って、ゆーき?」

647: 2010/08/26(木) 09:29:57.06 ID:R7wShVDc0
優希「……」

和「ゆーき、今日学校休んだハズじゃ」

優希「……」

久「こらー、学校サボって部活だけ来るのはズルいわよー」

優希「……」

咲「優希ちゃん今日どうしたの? 心配したんだよ」

優希「……」

京太郎「おいタコス、何とか言えよ」



優希「……あータコス食べたいじぇ」


一同「!?」

648: 2010/08/26(木) 09:35:49.23 ID:R7wShVDc0
京太郎「ぷっ、学校サボって部室来て、まず第一声がそれかよ。お前ホント、タコス好きだなー」

久「でもあいにく今タコス切らしてるのよねー」

優希「あータコス食べたいじぇ」

京太郎「まあ今回は俺が買ってきてもいいぜ」

優希「あータコス食べたい」

京太郎「ってオイ、聞いてるのか?」

優希「おっ? きょーたろー、お前うまそうなタコスだな―」

京太郎「はっ? お前何言って…」

優希「食わせろ―」ダダッ


ガブッ

京太郎「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」ブシュゥゥゥゥゥゥ

649: 2010/08/26(木) 09:45:42.41 ID:R7wShVDc0
和「す…須賀く……」ヘナヘナ…

咲「きゃああああああああ!! いやああああああああああ!!」

久「ちょ…優希、アンタなにやってんの!」

優希「うぇぇぇ不味い、こんなのタコスじゃないじぇ…」ペッ

和「ゆ、ゆーき…あなた何言って……」

優希「あっ、のどちゃんだー。のどちゃん、胸に大きなタコスを二つもぶら下げてるじぇ」

和(ゾクッ……!)

654: 2010/08/26(木) 13:39:30.67 ID:R7wShVDc0
優希「おいしそーだじぇー、口直しに食わせてくれー」

和(腰が抜けて……動けない……)

優希「いただきまぁす」ガパッ

和「ひっ」

ドンッ…ガシャァァァァン!


和「!?」

久「立って和! 逃げるわよ!」

655: 2010/08/26(木) 13:45:28.91 ID:R7wShVDc0
部長に突き飛ばされた優希は、麻雀卓に突っ込み転倒した。
しかし、すぐに起き上がろうともがいている。

久「ほら咲も立って!」

咲「部長…京ちゃんは……京ちゃんも一緒に…」

久「須賀君は…あのケガじゃもう……」

656: 2010/08/26(木) 13:47:34.58 ID:R7wShVDc0
京太郎「……あー痛ってえなぁもう」ムクッ

久「!!」

咲「京ちゃん! よかった生きてた……」

久「そんな…あの出血で起き上がれるなんて……」

咲「大丈夫京ちゃん? 一緒に逃げようよ!」

京太郎「あータコス食いてえ」

咲「!!」

657: 2010/08/26(木) 14:08:20.19 ID:R7wShVDc0
なんとか立ち上がれた和と、放心状態の咲を引きずって、久は外に出た。
そこで三人は目撃することになる―――

和「こ、これは…」

阿鼻叫喚の地獄絵図とはこのことだろう。
人が人を襲い、手当たり次第にかぶりつく。
噛みつかれて氏んだ人間も、しばらくすると起き上がり、同じように人に噛みつくようになる。

さっき部室で見たのと同じ光景が、そこにはあった。


久「優希がここに来るまでに、大分派手にやったみたいね」

和「とにかく父に電話を……携帯が通じない!?」

久「しかも、事態はこの学校だけじゃなく外部にまで拡大してるみたいね。
携帯が通じなくなるなんて、ただ事じゃないわ…!」

和「これからどうすれば…?」

久「わからない……とりあえず、今はここを出るのが先決よ」

658: 2010/08/26(木) 14:17:33.98 ID:R7wShVDc0
それから三人はあてどなく市内を彷徨った。

町は、あちこちが警察によって封鎖されていたり、感染者(と、呼ぶことにした)の
群れがいたりして、その度に三人は進路を変えざるを得なかった。

そうこうしているうちに夜―――
 
和「結局学校の近くに戻ってきてしまいましたね……」

久「ここなら周りは田んぼばっかりだし、町中よりは見通しが利いて安全よ」

咲「うう…おうち帰りたいよう…」

久「ごめんね、咲。でも仕方ないわ。町は危険すぎて、徒歩じゃ突破できそうもないもの」


659: 2010/08/26(木) 14:41:29.03 ID:R7wShVDc0
咲「グスン…京ちゃん、なんで氏んじゃったの?
子供の時約束したじゃない……こういう時は私を守ってくれるって」グスグス

和「宮永さん…」スッ

咲「……原村さん?」

和「須賀君のことはとても残念です……でも、彼に代わって私があなたを守ってみせます…
だから心配しないで……泣かないで……」ギュウウ

咲「原村さん…ありがとう……」ギュッ

660: 2010/08/26(木) 14:44:49.83 ID:R7wShVDc0
久「あのー感動的なシーンの最中で悪いんだけど、そろそろ本格的にヤバいわよ」

和「確かに……どこか泊まれる場所を探さないと。夜になっても外を歩くのは自殺行為ですね」

咲「あ…あそこに誰か倒れてるよ」

久(警官の制服?)

661: 2010/08/26(木) 14:52:21.75 ID:R7wShVDc0
久「氏んでる…」

咲「うっ…おええええええっ」

和「大丈夫ですか、宮永さん」スリスリ…

咲「もう嫌だよう、こんなの…」

久(もう氏体に慣れちゃった自分が怖い……)

ガサゴソ

久「……あった、拳銃だわ」

和「窃盗に銃刀法違反ですよ」

久「そんなこと言ってられる状況じゃないでしょ」

662: 2010/08/26(木) 15:01:33.25 ID:R7wShVDc0
久「さて、武器が手に入ったけど扱えるか分からないし、全然安心できないわね」

パパーン

咲「あっ、部長! 向こうに車が…」

和「あの車、こっちに向かって来ますね」

ブォーン

久「……咲、和、下がって」チャキ

咲「ぶ、部長!? どうして銃を抜くんですか?」

久「生きてる人間全員が、私たちに好意的とは限らないわ。警戒は怠れない……」

和「う…撃てるんですか?」

久「分からない。でも脅しくらいにはなるかも」


キキィッ…ウィーン

「お前…久じゃないか?」

久「あなたは…」

663: 2010/08/26(木) 15:07:57.24 ID:R7wShVDc0
ブロロロロロロロロ…

蒲原「いや~奇遇だなぁ。町から出ようとしたら、こんな拾い物をするなんて」ワハハ

ゆみ「おい、その言い方は失礼だろ」

久「いいのよゆみ。その通りなんだから」

妹尾「私はうれしいです。知ってる人に出会えて」

和「あの、ところで鶴賀って確かあと二人…」

モモ「私もいるっすよー」ユラ~

和「……あと一人いらっしゃいませんでしたっけ」

666: 2010/08/26(木) 15:15:08.70 ID:R7wShVDc0
妹尾「………」

蒲原「むっきーのことか…」

ゆみ「彼女は……置いてきてしまった。私たちも逃げるのに必氏で……
くそっ、すまない睦月……」

久「みんな自分が生き残るのにも精一杯なのよ。あなたは自分を責めなくていいわ。
私たちも二人氏んじゃって……今じゃこの三人しか……」

妹尾(……あれ? 清澄高校ってもう一人いたような?)

667: 2010/08/26(木) 15:19:16.02 ID:R7wShVDc0
一時間後

咲&和「すう…すう…」

モモ「ぐー…むにゃむにゃ…」

久「みんな疲れがたまってたのね」

ゆみ「蒲原、ラジオ付けてみろ」

蒲原「あいよ」パチッ

ラジオ『――この現象は全国に拡大しつつあり、空港や港では検疫ゲートを設け……』


ラジオ『――信じがたいことですが、彼らは人間を食料と認識しているようです。
彼らには、絶対に近付かないでください。繰り返します……』

久「……」

668: 2010/08/26(木) 15:25:30.64 ID:R7wShVDc0
ラジオ『――自衛隊が各地に救助活動の名目で派遣されています。
しかし、緊急時の武力行使を許可するかどうかに対しては意見が分かれており……』


ラジオ『――今回の暴動に乗じて、各地で略奪行為や人間同士の暴力事件が多発している模様です。
このラジオをお聞きの皆様は、秩序を保ち、決してそのようなことのないよう……』


ラジオ『――各地に緊急避難所が開設されています。住民の皆様は、
最寄りの避難所に直ちに避難してください』


妹尾「これからどうなるんでしょうか?」

久「さぁ? まだ始まって一日も経ってないのに、このザマよ。
最終的にどうなるかなんて……考えたくもないわ」

ゆみ「とにかく、今はラジオで言ってる避難所とやらを目指そう」

蒲原「ワハハー、もう休憩させてくれよ―」

669: 2010/08/26(木) 15:39:12.28 ID:R7wShVDc0
翌朝

久「ってワケで、避難所を目指すコトにしたわ」

和「でもここから一番近い避難所でも、かなりの距離がありますね」

蒲原「ここは田舎だしなー」

ゆみ「そうすると何回給油が必要になることか……食料も補充しないとな」

久「事態もどんどん悪化してきてるみたいだし、急いだ方がいいわ」

蒲原「まかせろー、ぶっちぎるぞー!」

670: 2010/08/26(木) 15:51:45.02 ID:R7wShVDc0
市街地

ブォーン

蒲原「車があちこちで事故ってるなー。まあ渋滞するよりマシか」

アア…アアア……

久「オマケにあちこちに感染者がうろついてるときた。こりゃガス欠になったら終りね」

モモ「あっ、あれ見るっす!」

671: 2010/08/26(木) 15:56:30.34 ID:R7wShVDc0
感染者「アア……」

バキィッ!

暴徒A「オラァ!氏にやがれこのっ…」ドカッ、バキッ、グシャ

ガシャァァァァン

暴徒B「よっしゃあ! プラズマテレビゲットォォ!」

暴徒C「これで全国地デジ化しても安心だなぁ、ひゃははははっ!」

ワーワー キャー

672: 2010/08/26(木) 16:06:36.39 ID:R7wShVDc0
久「……世も末ね」

和(狂ってる……!)

咲(こ…怖い……)ガタガタ

モモ「あっ、あいつら、こっちに石投げてきたっすよ!」

暴徒A「オラァ! 俺も乗せやがれ!」ブンッ

暴徒C「ひゃははははっ」ブンブン

ゴンッ

蒲原「あー!私の車に傷を…」

ゆみ「気にするな。あいつらは車に追い付けん」

蒲原「買ったばかりなのに…」ブツブツ

673: 2010/08/26(木) 16:16:18.05 ID:R7wShVDc0
妹尾「あ、あそこにガソリンスタンドありますよー」

蒲原「やっと給油できるな―」キキィッ

ゆみ「注意しろ。さっきみたいのがいたら厄介だ」

久「私が周りを警戒するわ。いざとなったらこれで…」チャキッ

ゆみ「ああ頼む。妹尾とモモも周囲を見ててくれ」

妹尾「はい」

モモ「了解っすー」

674: 2010/08/26(木) 16:31:24.10 ID:R7wShVDc0
ガソリンスタンド

蒲原「ダメだゆみちん。このタンクも空っぽだ―」

ゆみ「みな私たちと同じことを考えていたようだ。出遅れたな……」

蒲原「おっ、このタンクは少し残ってるぞー」ガチャガチャ

ゆみ「給油しててくれ。私はスタンド内を見てくる」

蒲原「まかせろー」

675: 2010/08/26(木) 16:37:12.28 ID:R7wShVDc0
スタンド内

和「誰もいませんね」

咲「荒らされてるけど……食べ物まだ残ってるよ」

和「それは売り物ですよ」

ギィ…バタン!

ゆみ「どうだ? 何かあったか?」

咲「うわ、びっくりした」

676: 2010/08/26(木) 16:44:49.40 ID:R7wShVDc0
ゆみ「食料がまだ残っていたか……よし、手分けして持ち出そう」

和「いいんですか? 売り物を勝手に……」

ゆみ「この非常時だ。やむを得まい」

咲「……て、手伝います」

ガサゴソ…ガサゴソ…

和「…………」

和「お金、置いていきますね……」スッ

678: 2010/08/26(木) 16:54:04.94 ID:R7wShVDc0
久「なんとかガソリンと食料が手に入ったわねー」

ゆみ「しかし、給油できたのは僅かだ。このままではもたない」

妹尾「他のスタンドに行けば…」

ゆみ「どこも同じようなものだろう。満足にガソリンが残ってるとは期待できない」

咲「そんな…それじゃあ避難所にたどり着けない……」

ゆみ「なにか別の手も考える必要があるな」

モモ「あっ、あれを見るっすよ―!」

680: 2010/08/26(木) 16:59:09.45 ID:R7wShVDc0
ゆみ「どうした、また暴徒か?」

モモ「いや、なんかこっちに手を振ってるっす」

オーイ、コッチダシー

和「見たところ学生ですかね? 五人ぐらいいて、一人が手を振ってますが…」

オーイ、タスケテクレダシー シニタクナイシー

咲「なんかあの人見たことあるような…」

オーイ、ムシスルナダシー カナチャンガミエナイノカー

妹尾「あれってもしかして…」

久「風越女子?」

681: 2010/08/26(木) 17:09:15.25 ID:R7wShVDc0
蒲原「ワハハ、昨日といい今日といい、知ってる顔によく会うなあ」

久「あなた達は、どうしてこんなところで歩いていたの?」

福路「はい、私たちは部員全員でバスに乗って避難してたのですが……」

未春「どうも部員の中に、噛まれた子がいたらしくて。バスの中で発症して…」

深堀「………」

文堂「私たち五人は、なんとか逃げれたのですが…」

池田「グスッ…コーチが身を挺して守ってくれたおかげだしっ…」

682: 2010/08/26(木) 17:16:46.93 ID:R7wShVDc0
久「そう…大変だったのね」

蒲原「しかし困ったぞー。このワーゲンバスは7人乗りなんだ」

久「……ねえ、あなた達の乗って来たバスってどこにあるの?」

福路「この先にありますけど?」

ゆみ「なるほど、そのバスに乗り換えるということだな」

蒲原「えっ?」

ゆみ「そういうことだ蒲原、運転はまた任せるぞ」

蒲原「ちょ…待っ……」

久「さっそく案内してくれるかしら」

福路「はい、こっちです」

ゆみ「おーい、急げ蒲原。置いてくぞ―」

蒲原「ワハハ……私の…買ったばかりのワーゲン…」

683: 2010/08/26(木) 17:23:43.03 ID:R7wShVDc0
しばらくして――

ゆみ「あれか」

アアアア……

妹尾「まだバスの中に感染者が残ってますね」

福路「私にいい考えがあるわ」

ポンッ

池田「へ?」

福路「陽動は任せたわよ華菜。大声で彼らの注意を引き付けてくれるかしら?」

684: 2010/08/26(木) 17:31:17.80 ID:R7wShVDc0
池田「えっ…キャ、キャプテン…それはちょっと…」

福路「…ダメかしら?」ウルッ

池田「い、いえ! キャプテンのお願いとあらばっ!やってやりますよー」キリッ

福路「ありがとう…華菜」

和(これが氏亡フラグというやつですか)

685: 2010/08/26(木) 17:35:28.08 ID:c4v1m6XG0
キャプテンwwwwwwwwwww

686: 2010/08/26(木) 17:36:38.15 ID:R7wShVDc0
池田「やーい、やーい。お前ら、この風越校内ランキング2位の華菜ちゃんが相手だし!
かかってこいだし!」

感染者「ウ…ウガァァァッ」

福路「凄いわ華菜……感染者たちが、一斉に華菜の方に…!」

久「今よっ!」

ダッダッダッダッダッダッ…

688: 2010/08/26(木) 17:42:56.63 ID:R7wShVDc0
ブォォォォォン!

蒲原「エンジン始動! いつでもいけるぞー」

ゆみ「全員乗ったな? 蒲原、出してくれ!」

蒲原「あいよー」プシュー

池田「うぉぉぉぉぉい、待つし! まだ華菜ちゃん乗ってないし!」

蒲原「ありゃりゃ、素で忘れてたよ」プシュー

690: 2010/08/26(木) 17:51:54.61 ID:R7wShVDc0
バス内

ガタガタガタガタガタガタ

咲「うおぇぇぇぇぇ」

和「これは…うぇっぷ…揺れすぎで…」

蒲原「ワハハ―、すまんなー。バスなんて初めてで…」ダラダラ

妹尾「智美ちゃん……笑うと…おえっ…口の端から漏れてる…うっぷ」

モモ「きゃああああ先輩、ゆれるっすよぉ~おぇあああああ」

ゆみ「や、やめろ抱きつくなぁ~ ゲロがかかるぅぅぅ」

文堂「………」

深堀「………」ドバドバ

未春(文堂さんは目を見開いたまま気絶して…深堀さんは無言のままリバースしてる…)

池田「うおぇあああああああああああ」ゲロゲロゲロゲロ

福路(華菜のリバース……!!) ゾクゾクッ

久「どうしてこうなった」

694: 2010/08/26(木) 18:07:10.76 ID:R7wShVDc0
ブロロロロロロロ

蒲原「ワハハ、大分慣れてきたぞー」

ゆみ「頼むぞ。さっきみたいのはもうご免だからな」

モモ「でもこのバスも、燃料があまりないみたいっすね」

ゆみ「遠くまではいけないか…」

久「別に、避難所にこだわらなくてもいいんじゃない?」

一同「えっ?」

696: 2010/08/26(木) 18:20:29.29 ID:R7wShVDc0
久「実際人が多い場所に行くのもどうかと思うのよ。あなたたちも見たでしょ?
この状況、知らない人間は信用できない」

久「だから避難所でなくとも、十分に食料があって、頑丈で、ライフラインが
しっかりしてるような、そんな場所があればそこに立て篭もればいいわ」

和「ですが…そんな要塞みたいな場所が都合よくあるわけが…」

モモ「あっ、あれを見るっすよ!」

久「……ショッピングモールね」ニヤリ

697: 2010/08/26(木) 18:25:19.82 ID:R7wShVDc0
ゆみ「ホントに行くのか?」

久「このまま不確かな希望に身を委ねるよりいいと思わない?……突っ込んで!」

蒲原「あいあいさー」

久たちを乗せたバスは、感染者の群がる駐車場に突っ込んでいった。

ドン! ドツドツドツドツ…

ゆみ「おい蒲原! 人をはねてるぞ!」

蒲原「そんなこと言っても…数が多すぎて避けられないぞ」ドツドツ

咲「くっ…」

和「目を覆ってください宮永さんっ!」

未春「もう人間じゃないもう人間じゃないもう人間じゃない…」ブツブツブツ

700: 2010/08/26(木) 18:55:51.41 ID:R7wShVDc0
キキイッ! プシュー

久「降りて、さあ速く!」

ゆみ「正面の入口に向かって走れ!」

ダッダッダッダッダ…

池田「入り口にとうーちゃーく! 一番乗りだし! …って開かない?」ガチャガチャ

ゆみ「なんだと…?」

701: 2010/08/26(木) 19:03:14.33 ID:R7wShVDc0
久「ご丁寧に施錠されてるなんて、なんて運の悪い…」

ゆみ「止むをえまい。ここは破壊するしか…」

福路「そういうことなら、深堀さんお願い!」

深堀「ふんっ…!」メキメキ

和(素手で壊した!?)

久「さあ、カギが開いたわ! みんな入って!」

ダッダッダッダッ…

咲「ふう、助かっ……ってあれ…?」

704: 2010/08/26(木) 19:10:32.61 ID:R7wShVDc0
アアアアア…アアアア…アアアア…

文堂「何ですか…この数は……?」

和「完全に囲まれてますっ!このままじゃ…… 」

感染者「アア…タコスくれー」

久「袋のネズミってワケか……」

ゆみ「どうする、久?」

久「……私が注意を引き付けるから、その隙にみんな逃げて」チャキ

ゆみ「何言ってるんだ、そんなことは出来ない!」

久「こうなったのも私の責任だわ。お願いだから言う通りにして」


705: 2010/08/26(木) 19:19:06.57 ID:R7wShVDc0
感染者「アア…タコス…タコス…」

久「と、止まりなさい。止まらないと撃つわよ…」ガチャ

感染者「アア…アア…」

久「くっ…」

パーン!

感染者「ウッ…」バタッ

久(………倒した?)

感染者「ウガァッ!」

久「きゃあっ!?」

707: 2010/08/26(木) 19:23:48.79 ID:R7wShVDc0
久「そんな…心臓を撃ったのに生きてる…?」

感染者「ウガァァァッ!クワセロー!」

ゆみ「久!」

咲「きゃあああー部長!!」

久(ダメだ…殺される…)

久が氏を覚悟したその時――


「そいつらは頭が弱点じゃ!」

ヒュッ― グシャァァ!

久「えっ?」

どこからか飛来した麻雀牌が、感染者の後頭部にめり込んだ。

711: 2010/08/26(木) 19:31:37.37 ID:R7wShVDc0

「うむ、私なりに精一杯」


ゆみ「この声、まさか…」

モモ「むっちゃん先輩っす!」

睦月「うむ」

咲「それに…」


「遅れてすまんのう」


和「あなたは……!」

まこ「これからはわしらの時代じゃあ!」バッ

妹尾(あ…清澄のメガネ枠の人……やっと思い出した)

713: 2010/08/26(木) 19:35:51.22 ID:R7wShVDc0
まこ「行くぞ、津山さん!」

睦月「うむ!」

まこ「染谷流古武術を受けてみんしゃい!」バキッ ドカッ

睦月「うむっ…うむっ…」ヒュッ ヒュッ

文堂「凄い…牌を投げて的確に頭部にめり込ませるなんて…」

未春「まさかあれが伝説の投牌?」

まこ「今のうちに二階に逃げるんじゃ!」

715: 2010/08/26(木) 19:45:15.39 ID:R7wShVDc0
ショピングモール 二階

まこ「ここなら連中の数も少ない」

久「さっきはホントに助かったわ。ありがとう」

まこ「いやぁ、わしのほうこそ、部活に行くのが遅れてなければ一緒に逃げられたのにのぅ」

久(完全に忘れてたなんて言えない……)

ゆみ「津山、置いていってすまなかった」

睦月「いえ、私の方こそ合流できなくてすいません」

ゆみ「よく一人で無事だったな」

睦月「はい、普段から牌投げを練習していたおかげです」

まこ「逃げてる途中で津山さんに会ってな。一緒にここに逃げ込んだわけじゃが」

睦月「まさか先輩たちも逃げ込んでくるとは」

まこ「ま、ここも安全というわけではないし、わしらの隠れ家に案内しようか」

716: 2010/08/26(木) 19:54:21.81 ID:R7wShVDc0
ショッピングモール 三階 守衛室

まこ「どうじゃ? ここなら連中の行動も監視出来て安心じゃろ?」

久「確かに、ここなら隠れ家にはうってつけね」

まこ「長旅で疲れたじゃろ、今日は休みんしゃい。監視はわしと津山さんでやる」

ゆみ「ありがたい、感謝する」

池田「おおっ、ここテレビがあるしっ! しかも液晶だし! これでヘキサゴン観れるし!」

まこ「そりゃ今朝苦労して下の売り場から運んできたんじゃが……もうあんまし役にたたんかもしれんの」

久「どうして?」


ザーザー ザー

池田「ほとんどの局が映らないし…」ガーン

719: 2010/08/26(木) 20:02:28.28 ID:R7wShVDc0

テレビ『ここで、スタジオにお招きした有識者の方々にお話を伺ってみましょう』


久「こんな状況でも放送してるなんて、さすがはテレ東ね」


司会者『ええーと、今回お招きしたのはプロ雀士の…』

藤田『藤田だ……てかなんで私がこんな所に呼ばれるんだ?』

司会者『こっちが聞きたいくらいですよ』

藤田『むっ、お前よく見たら、県予選の時の解説者じゃないか。お前こそどうしてこんな所に?』

司会者『はぁ…どうも人手不足が深刻らしくて』

藤田『私が呼ばれた理由もそんなトコか』

720: 2010/08/26(木) 20:09:30.83 ID:R7wShVDc0
司会者『えー、気を取り直して……今回の事件、暴動を起こしてる者たちは皆一様に
人間がタコスに見えるという奇病にかかっているそうなのですが…』

藤田『突拍子もない話だ……まるでゾンビだな』

司会者『この件に関して藤田プロはどう思われますか?』

藤田『まあ、よっぽどタコスが好きなのだろうな。私がカツ丼好きなように』

司会者『彼らからの被害を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか?』

藤田『そんなに好きならくれてやればいいじゃないか……タコスを』

司会者『はい、既にその方法は試されています。しかし彼らはいくら食べても満腹にはならないようで…』

藤田『贅沢な奴らだな』

721: 2010/08/26(木) 20:14:15.12 ID:R7wShVDc0
司会者『結局のところ、頭部に強い衝撃を与えて脳を破壊し、活動を停止させることが
確実な解決策なのですが、いかんせん数が多すぎて対処しきれていません』

司会者『また、彼らはある程度は人語を解するようで……生前の記憶が残っているようです』

藤田『へぇ…それなら私が噛まれたら、タコスじゃなくてカツ丼を求めるようになるのか?』

司会者『さ…さぁ? どうなんでしょう?(この人ならありえるな……)』

藤田『まあいいや。それよりカツ丼おかわり』モグモグ

司会者(ホント何しに来たんだこの人…)

司会者『えープロ雀士の藤田さんでした。続きまして…』

724: 2010/08/26(木) 20:37:39.21 ID:R7wShVDc0
―――――――――

ゆみ「なあ、今何時だ?」

久「……八時半よ」

ゆみ「いい加減寝たらどうだ? ここに来てまだ一睡もしてないだろ?」

久「あなたもね」

ゆみ「さっきから何か考え事をしているようだが…」

久「別に……」

ゆみ「嘘を付け。一体何を考えている?」

久「…………」

久「ねえ……ここを私たちだけのものにできたら素敵だと思わない?」

725: 2010/08/26(木) 20:43:12.23 ID:R7wShVDc0
ゆみ「……本気で言ってるのか?」

久「折角この場所を選んで逃げ込んだのに、守衛室でゴロゴロしてるだけなんて勿体ないじゃない」

ゆみ「だが下には連中がウヨウヨしているぞ」

久「それについては考えがあるわ。ここにいる全員で協力すれば、連中を追っ払えるかも」

ゆみ「だが、他の皆が賛同するだろうか?」

久「そうね……明日になったらみんなに相談してみましょ」

726: 2010/08/26(木) 20:52:15.39 ID:R7wShVDc0
翌朝

一同「えーっ? ここを占拠する!?」

久「ダメかしら?」

和「ダメっていうか……そもそも現実に可能なんですか!?」

久「だーかーらー、それについては考えがあるって」

福路「私は素敵な案だと思いますが…」

咲「で、でも…やっぱり危険なんじゃ」

久「下には何でもあるのよ? タダでショッピングし放題なんて、女の子の夢じゃない」

池田「な…何でも……」ゴクッ…


ざわ…ざわ… 

727: 2010/08/26(木) 21:00:27.56 ID:R7wShVDc0
久「――で、作戦なんだけど、まずは感染者のこれ以上の侵入を防ぐことが先決ね」

このショッピングモールは出入り口が4箇所、搬入口が1箇所あり、
外部からの侵入を防ぐには、その全てを封鎖する必要があった。


久「搬入口は守衛室からコンピュータ操作で閉鎖出来たし、
他の出入り口も手動でカギを掛けるとして……」

ゆみ「問題は我々が入ってくる時に壊した入り口だな」

文堂「カギごと破壊したから、補修はまず無理ですね」

深堀「……申し訳ない」

久「気にしないで。あの入り口には、乗ってきたバスを使いましょう」

728: 2010/08/26(木) 21:08:54.78 ID:R7wShVDc0
未春「それはつまり……」

久「入り口にバスを横付けして塞ぐのよ」

蒲原「ワハハ、また私の出番か」

妹尾「でも智美ちゃん一人に任せるのはちょっと…」

久「そうね、彼女だけを危険に晒すわけにはいかない…だからみんなで行きましょう」

ゆみ「全員が囮役と陽動を兼ねるわけか」

久「そういうこと。陽動にはこれを使うわ」スッ

一同「タコスを!?」

久「やつらのタコスに群がる性質を逆に利用してやるのよ」ニヤリ

731: 2010/08/26(木) 21:22:45.13 ID:R7wShVDc0
久「二階のタコス売り場でタコスを仕入れて、それを使ってやつらを陽動しながら外に出る。
そして入り口を塞いだ後は、同じ手順で中に戻るのよ」

久「中に戻るときは搬入口を使うわ。だから誰かここに残って、操作してくれる人が必要ね」

久「その人には監視カメラと無線機を使って、私たちが安全にいけるよう、指示を出してほしいんだけど…」

久「誰かやってくれる人、いる?」

一同「……」シーン

ゆみ(みんなの生氏に関わる重要な役割……安請け合いは出来ないが…)

福路「あのう…」 オズオズ

福路「私でよければ。複数のものを同時に見るのには慣れてますし」

久「じゃあ、お願いするわ。頼んだわよ」

732: 2010/08/26(木) 21:31:23.28 ID:R7wShVDc0
ショッピングモール 一階

久「さて、準備はいいかしら?」

一同『………』コクッ

久「全員、無線機のスイッチをオンにして」

ピー ピー ガー

福路『上埜さん聞こえますか? 今なら搬入口付近には敵がほとんどいません。
よって、今から搬入口を開けます』

久「了解…… 聞こえたみんな? 今から外に出るわよ!!」

一同「おうっ!!」

734: 2010/08/26(木) 21:41:07.05 ID:R7wShVDc0
感染者「ウガァァァッ!」

咲「わっ、思ったより数が多いよ!」

久「みんな、タコスを投げて!!」

久たちは、持ってきたタコスを床にばら撒いた。
地面に落ちたタコスに感染者たちが次々群がっていった。

ゆみ「今だ、駆け抜けろ!!」ダッ

735: 2010/08/26(木) 21:45:10.66 ID:R7wShVDc0
ショピングモール 駐車場

アアアアアアアア……

妹尾「バスの周りにもたくさんいますよ」

ゆみ「さっきと同じ作戦でいくぞ」

モモ「でも…もうタコスがないすっよ」

ゆみ「何!?」

池田「さっき調子のって投げすぎたし!」

まこ「意味無っ!」ガーン

久「もうこうなったら正面突破するわよっ!」

737: 2010/08/26(木) 21:56:34.47 ID:R7wShVDc0
まこ「染谷二―ドロップ!」バキッ!

睦月「うむっ…うむっ!」ヒュン ヒュン

深堀「……フンッぬらばっ!」ドカッ!

感染者「ギャァッ!」

まこたちの攻撃によって、感染者が次々なぎ倒されていく。

モモ「みんな凄いっす!」

久「これならいけそうね」

池田(よーし、華菜ちゃんも負けてられないし)

池田「受けてみろだし!華菜ちゃんパーンチ!!」ポス…

感染者「グハッ…」ドサッ

池田(なんだ…こいつら思ったよりも弱いし)

739: 2010/08/26(木) 22:04:08.77 ID:R7wShVDc0
蒲原「ワハハ、バスに乗れたぞー」

ゆみ「よし、みんなもう十分だ! 次の場所行くぞ!!」

池田「おりゃあ! 猫パンチだし!!」ポカポカポカポカ…

文堂「池田せんぱーい!! もう十分です!! 早く移動しましょー!!」

池田「どうだ、思い知ったか! 華菜ちゃんの強さを!!」ポカポカ…

久「池田さーん! はーやーくー!!」

池田「ふっ…トドメは差さないでおいてやる」キリッ

ゆみ(駄目だこいつ…早くなんとかしないと…)

741: 2010/08/26(木) 22:08:18.08 ID:R7wShVDc0
池田(コイツら弱すぎだし! 恐れることなんてないし!)

コーチ「イケダァ!!」

池田「ひっ! すいませんコーチ、調子乗りすぎましたっ!」ビシッ

池田「……ってアレ? コーチはもう氏んだハズ……」

未春「カナちゃーん! 逃げてぇ!!」

池田「にゃっ!?」

コーチ「イケダァ!!」

ガブッ…

743: 2010/08/26(木) 22:11:44.89 ID:R7wShVDc0
ブシュウウウウウウウウ……

池田「くっ…は……コー…チ……」バタン


未春「華菜ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

ゆみ「くそっ、だからあれほど調子に乗るなと……」

ピー ピー ピー

ゆみ「蒲原からの通信?」

蒲原『ゆみちんか? 入り口は塞いだけど、外に連中がたくさんいて、
バスから出れないんだ。助けてくれー』

ゆみ「わかった、今助けに行くぞ!」

744: 2010/08/26(木) 22:21:59.76 ID:R7wShVDc0
まこ「染谷バスター!!」 ドガァッ

睦月「うむァ!!」 ビュン ビュン

深堀「どっせいっ!!」ドギャァァァン

感染者「グワァァ…」ドサッ


モモ「あの三人異常に強いっすね…」

久(別の意味で全国狙えたかも…)

蒲原「お陰で助かったけどなー」ワハハ

ゆみ「蒲原も無事だったことだし、早くモール内に戻るぞ!」


ダッダッダッダッ…

咲「うわっ……!」バターンッ

和「宮永さんっ!?」

748: 2010/08/26(木) 22:27:21.21 ID:R7wShVDc0
久「咲がこけた!?」

まこ「こんな時までドジっ娘かい!!」


咲「みんなー、置いてかないでよぅー」


和「今助けますっ!」ダッ

まこ「のどかー! 戻ると危険じゃぞ―!!」

和「宮永さんは私が守るって約束したんですっ!!」

久「……だったらこれ使って!!」

ヒュー パスッ

和(これは…部長の拳銃……)

749: 2010/08/26(木) 22:37:51.57 ID:R7wShVDc0
咲(足、くじいちゃったみたい)ズキズキ

アアア…

咲「!?」

京太郎「アアア……」

咲「きょ…京ちゃん…」

京太郎「ハラヘッタ…タコスクイタイ…」

咲「ウソだよね…? ねえ、京ちゃん私だよ…」

京太郎「アアア…クワセロー!!」

咲「きゃあああああああ!!」

ガブッ!!

750: 2010/08/26(木) 22:41:51.80 ID:R7wShVDc0
咲「………」

咲「………?」

ポタポタ…

和「……っ…」

咲「は…原村さ…!」

京太郎「グォォォォ…」ガブガブ

和「宮永さんは……痛っ……絶対守りますっ!!」チャキッ

パーン!

752: 2010/08/26(木) 22:45:14.23 ID:R7wShVDc0
京太郎「グハッ……」

バタンッ

咲「原村さん…その腕……私をかばって……」

和「はぁ…はぁ……大…丈夫ですっ…」ズキズキ

咲「う…う…グスッ…ごめんね……私がドンくさいばっかりに…」

和「いいんです……ほら、私の肩につかまってください」

咲「グスッ…グスッ……ヒック…」

和「絶対生き残りましょうね」

咲「グスッ…うん……」

753: 2010/08/26(木) 22:51:12.79 ID:R7wShVDc0
ショッピングモール 搬入口前

まこ「はひーっ、ようやく辿り着いたわー」

久「こちら久よ。福路さん、今すぐゲートを開いて!!」

ガガッ ピーピー ガガガッ

久「無線が通じない!?」

蒲原「ワハハ……ってええっ!?」

まこ「おいっ、カメラで見えてるハズじゃろっ!? ここを開けてくれんか!!」ガンガンガン!!

ゆみ「風越の部長は何をやっているんだ……?」

妹尾「あわわわっ…あれを見てください!」

755: 2010/08/26(木) 22:56:48.18 ID:R7wShVDc0
久「あれは和と…咲?」

まこ「和のやつケガしちょるみたいじゃが…」

妹尾「二人の後ろです!!」

アアアアアアアアアアア……

久「感染者が……」

ゆみ「あんなに…大勢……!」

和は足をくじいた咲に肩をかしているため、のろのろと歩くことしかできず、
感染者に追い付かれるかどうかというスピードで移動していた。

――結果、感染者の群れを引き連れてくることとなったのだ

756: 2010/08/26(木) 23:00:14.69 ID:R7wShVDc0
咲「ハァ…ハァ…足が痛い……もう限界だよぅ」ヨロヨロ…

和「頑張ってください……入り口まであと少しですから…」ヨタヨタ…

感染者「ウガァァァ!」

咲「もう、すぐ後ろに迫ってるよ……私を置いてって」

和「ダメですっ! 私は諦めませんから!!」

感染者「ガァァァッ!!」

咲(ダメ…追い付かれる…!)

758: 2010/08/26(木) 23:05:01.32 ID:R7wShVDc0
バギャアン!

感染者「ギャァァッ!」

深堀「………」ヌッ

咲「……深堀…さん?」

深堀「……ここは私が食い止める……行って」

和「………」コクッ

感染者「クワセロー!クワセロー!」

深堀「ふんっ……」メキメキメキ…

ドカッ バキッ ゴキッ ドシャッ…

761: 2010/08/26(木) 23:16:20.79 ID:R7wShVDc0
和「ハァ…ハァ…遅くなりました」ドサッ

まこ「和…よく頑張ったのぅ」

和「どうして…中に入らないんですか…?」

久「搬入口が開かないのよ!! さっきから無線に呼び掛けてるけど、応答が…」

文堂「ああっ…!深堀先輩が……!!」


感染者「アアア…」

感染者の群れは風越のドムこと深堀を飲み込むと、じりじりと彼女たちに迫ってくる。

ゆみ「もう…ダメなのか…?」

762: 2010/08/26(木) 23:20:18.38 ID:R7wShVDc0
ブーッ! ブーッ!

一同「!!」

アナウンス『今から搬入口が開きます。ご注意ください…』

久「扉が…」

まこ「開いていく!」

ゆみ「よしっ! 早く開いてくれっ!!」

感染者「ウガァァァァ!」ダッ

ゆみ「!」

バキッ!!

モモ「先輩には指一本触れさせないっす!!」

763: 2010/08/26(木) 23:30:41.80 ID:R7wShVDc0
モモ「こぉんのおおおお」ドカッ バキ

睦月「うむっ…うむっ…」ヒュン ヒュン

感染者「ゴハッ!」グシャ

睦月「くっ…もう牌がない…」

睦月「かくなるうえは……うおぉぉぉぉぉ!!」ドカッ

ゆみ「睦月!!」

睦月(みんな…私が押さえ込むから…そのスキに……っ!)

766: 2010/08/26(木) 23:35:26.67 ID:R7wShVDc0
ガシッ!

睦月「!?」

文堂(開眼)「……お供しますよ」

睦月「文堂さん…」

文堂(開眼)「プロ麻雀せんべいのお礼……まだしてなかったですから」

睦月「!!」

睦月「うむ…私はいい友達をもったみたいだ…」

769: 2010/08/26(木) 23:41:39.41 ID:R7wShVDc0
ショッピングモール 一階 搬入口前

アナウンス『扉が閉まります。ご注意ください…』

ゴゥン ゴゥン ゴウン ゴゥン…ピシャッ


一同『ハァ…ハァ…』


未春「カナちゃん…カナちゃん…」ブツブツ

ゆみ「くそっ! 四人も犠牲になるなんて……」

久「……四人? ちょっと待って、一人足りなくない?」

ピー ピー ガガッ

モモ『……聞こえるっすか、先輩』

ゆみ「モモ……!?」

770: 2010/08/26(木) 23:44:46.31 ID:R7wShVDc0
ゆみ「モモ! さっきから姿が見えないと思ったらお前どこに…」

モモ『……すいません。でも、みんなに迷惑はかけられないっすから…』

ゆみ「はっ?」

モモ『さっきの戦闘で噛まれちゃいました……もうそっちにはいられないっす』

ゆみ『なっ……待て、お前今外にいるのか?』

モモ『……最後に……ザザッ……が言いたくて…』

ゆみ「ちょっと待っ…」

モモ『今まで……ガガッ…ありが…っす………ブチッ』

ゆみ「モモ……モモ……モモぉぉぉぉぉぉ!!」

771: 2010/08/26(木) 23:48:58.88 ID:R7wShVDc0
ショピングモール 三階 守衛室

福路「ごめんなさい…ごめんなさい…私のせいで……」ポロポロ

一同「………」

福路「私が…機械オンチなのに……ここに残るって言ったから……」ボロボロ

普段はまるで聖母のような笑顔を見せる福路が、激しく取り乱しながら泣き崩れる姿を前すると、
一体このやるせない気持ちをどこにぶつけたらいいのか、皆は分からなくなってしまった。

福路「もう私……氏んで償うしか……」スッ

そう言って福路は懐から包丁を取り出すと、自分めがけて思い切り振りあげた―――


773: 2010/08/26(木) 23:52:25.76 ID:R7wShVDc0
久「やめてっ!!」

パシッ

福路「上埜さん…」

久「もう……仲間が目の前で氏ぬのはご免よ」

一同「………」

久「元々穴だらけの作戦だったのよ。責めるなら私を責めて」

ゆみ「いや、それに従った我々もどうかしていた。眼前の欲望に目がくらんでいたんだ」

妹尾「確かに…」

蒲原「ワハ…」


和「ゴフッ!」ビチャッ

774: 2010/08/27(金) 00:08:41.74 ID:RUQzi06L0
咲「原村さん、しっかり!!」

まこ「吐血じゃと? 腕を噛まれただけなのに!?」

和「ハァ…ハァ…どうやら私、氏ぬみたいですね…」

咲「そんなっ…原村さん、氏んじゃ嫌っ!!」ガシッ

和「ハァ…ハァ…みや…ながさん……これを…」スッ

775: 2010/08/27(金) 00:14:18.89 ID:RUQzi06L0
咲「そんな…嫌だ……ダメだよ、そんなの…」

和「私が甦ったら…その銃で……」

咲「出来ない…出来ないよそんなのっ!!」

和「わたしは……よみがえりたく…な…」

咲「ダメぇ!氏んじゃダメぇ!!」

和「あなたになら……わたしは……」ガクッ

咲「原村さ……」

776: 2010/08/27(金) 00:18:57.68 ID:RUQzi06L0
まこ「脈がない…」

咲「そんな…ウソ…」

スッ

久「咲……やるのよ」

咲「………嫌……」

久「あなたがやらないなら私がやるわ。これ以上犠牲は増やせない…」

咲「………」

久「和は最後にあなたに撃ってほしいと願った……この意味分かる?」

咲「………」

778: 2010/08/27(金) 00:24:45.72 ID:RUQzi06L0
ガチャ…

咲「原村さん……」

咲「ダメ…やっぱり私できない」

ガシッ

咲「!?」

久「ほら…私が一緒に引き金を引いてあげるから……」

咲「嫌…嫌っ!」

久「早く! もう甦るかもしれない!!」

和「…………ピクッ」

久「撃って! 撃つのよ!!」

咲「いやあぁぁぁぁぁっ!!」

ズドン!

781: 2010/08/27(金) 00:31:25.07 ID:RUQzi06L0
ショピングモール 二階

久「はぁ……作戦は大失敗、モールの中は見下ろす限り、感染者で大混雑…」

ゆみ「最悪の結果だな。こうも数が多いと脱出も難しい」

久「はぁ……こんなハズじゃなかったのになぁ…」


ギュオンギュオン!!

久「……何の音?」

ゆみ「これは…チェーンソーの駆動音か!?」


未春「氏ねぇぇぇぇぇぇぇぇ」ギュインギュイーン

783: 2010/08/27(金) 00:37:40.12 ID:RUQzi06L0
感染者「グァッ」

ズバッ ズバッ ブシュゥゥゥゥ……

未春「みんな氏んじゃえみんな氏んじゃえ! カナちゃんを頃した地獄の悪魔どもっ…!」

ギュオーン ギュオーン グシャァァァァ……

久「吉留さんが一人で暴れてる…?」


バリバリバリバリバリバリ……

ゆみ「いや、それだけじゃない……」


咲「あは、あははっ♪」バリバリバリバリバリバリ

786: 2010/08/27(金) 00:43:07.47 ID:RUQzi06L0
久「ちょ…咲…それ芝刈り機……」

咲「あはは、部長も手伝ってくださいよ。このスーパー雑草が多くて…」バリバリバリバリバリバリ

感染者「ギャァァァァァァァ」グシャグシャグシャ


ブォォォォォォン!

感染者「ギャァ!」ドカッ

妹尾「智美ちゃん、右にもいるよ! 早く轢き頃して!」

蒲原「ワハッ…ワハハ…」ドカドカドカドカッ

久「車が何でこんなトコ走ってんの?」

ゆみ(蒲原…あいつ展示用の車を使ったのか?)

787: 2010/08/27(金) 00:46:25.92 ID:RUQzi06L0
ギュオオオオオン ズバッ グシャッ バリバリバリバリバリ……

久「みんな…みんな急にどうしちゃったっていうのよ?」

咲「あはははは、部長知ってますか?」

久「!?」

咲「本で読んだんですけど…人間って、身の回りにあるほとんどの物で殺せるんですよ。
あははははっ!」

久「………」ゾクッ

ゆみ(とうとうネジがとんだか…?)

ブロロロロロロロロロ ドカッ グシャッ ドドドドドドドドド……

788: 2010/08/27(金) 00:52:52.05 ID:RUQzi06L0
咲「ふぅ、これでよしっ……と」

全ての出入り口を施錠し、散乱していた氏体を処理すると、
いまやモールは楽園へと生まれ変わった。

咲「うわーぃ、本が万引きし放題だよ!」

福路「このスーパー、食材がたくさんあってより取り見取りね」

未春「あ……これ、カナちゃんが好きだった缶詰だ」

まこ「丁度メガネを新調したかったところじゃ」

妹尾「ああ、この服欲しかったんですよー」

蒲原「ワハハ、ここ映画館もあるのかー」

ワイワイ キャッキャッ

789: 2010/08/27(金) 00:57:32.38 ID:RUQzi06L0
ショピングモール 二階 レストラン

咲「ではー、モール占領を記念して……カンパーイ!」

一同「カンパーイ!!」

ワイワイ キャッキャッ


ゆみ「はぁ……あんなことがあったのに、よくはしゃげるな」

久「無理もないわ……人間、こんな状況じゃ狂った方が楽だもの…」

ゆみ「………」

790: 2010/08/27(金) 01:03:01.16 ID:RUQzi06L0
久「東横さんのことは…残念だったわ」

ゆみ「………」

久「でも私は、あなたにまでおかしくなって欲しくないのよ」

ゆみ「心配してくれてありがとう……」

久「だから今は嘘でもいいから勝利の美酒に酔いましょう……嫌な事は忘れて……」

ゆみ「そうだな…それがいいのかもしれない……」


791: 2010/08/27(金) 01:09:46.88 ID:RUQzi06L0
それから、全員は心の傷を埋め合わせるかの如く物欲の海に溺れた。


久「これとこれと……あ、この服も可愛いわねー」

ゆみ(この服、着たらモモが喜んだろうな)

久「ねえ、ゆみー。これとこれ、どっちが似合ってるかしら?」

ゆみ「ここじゃ全部タダだし、どっちも着ればいいじゃないか」

久「むー、そういう意味で聞いたんじゃないのにー」

793: 2010/08/27(金) 01:16:43.53 ID:RUQzi06L0
蒲原「ワハハー、念願のWiiを手に入れたぞ―」

まこ「後でみんなでスマブラでもやるかの」

蒲原「ゲーセンもタダでやりたい放題だなー」

まこ「いっちょ、わしと対戦するか?」

蒲原「クレーンゲームで勝負だー」

咲(あ、エトペンのぬいぐるみだ。取れたら原村さん喜ぶかなぁ…)

ガシャァァァァン!

蒲原「わっ、なんだなんだ―!?」

咲「私、クレーンゲームって苦手だから……こうすれば取り放題ですよね!」

まこ「だからって壊すことなかろうに…」

794: 2010/08/27(金) 01:22:47.59 ID:RUQzi06L0
未春「………」ギュイイイイイイイイン

妹尾「何してるんですか?」

未春「あ、私日曜大工始めたんです。ここ資材たくさんあるから」

妹尾「素敵ですね……今作ってるのは犬小屋ですか?」

未春「カナちゃんのおうちですよ。カナちゃん寒がりだから、これからの冬に備えないと」

妹尾「えっ…」

未春「それにしてもカナちゃんどこ行っちゃったのかな? さっきから見当たらないんですけど…」

妹尾「わ、私はこれで失礼しますね!」タッタッタッ…

未春「カナちゃん…カナちゃん…カナちゃん…」ブツブツブツ

795: 2010/08/27(金) 01:30:41.03 ID:RUQzi06L0
咲「ロン、11600です」

まこ「あちゃー、これで手持ちの金が無くなってしもうた」

咲「まだまだ奥の金庫にたっぷりありますよ」

久「こうやって現金賭けてやってるとヤクザみたいよねー」


福路「みんなー、夕食が出来ましたよー」

まこ「お、もうそんな時間か。あの人の作る料理は最高じゃ」

ブォーン!

蒲原「ワハハー、かっとばすぜー」

妹尾「智美ちゃん、ここで車を走らすのはやめてー!」

ゆみ「やれやれ…」


そんなこんなで、あっという間に月日は過ぎて行った―――

796: 2010/08/27(金) 01:43:26.03 ID:RUQzi06L0
三ヶ月後

咲(………飽きちゃった)

咲(読みたい本は読みつくしたし、雑誌は新しいの入荷しないし…)

蒲原(ゲームも同じのばっかで、さすがにやり飽きたな―)

まこ(賭け麻雀も…金なんて今や紙切れじゃしのー)

妹尾(さすがにショッピングにも新鮮味がなくなりましたね…)

未春(やることやりつくしちゃった感があるなぁ)

福路(かといって外には出れないし……)


一同(ああ…退屈だ……)

797: 2010/08/27(金) 01:52:00.45 ID:RUQzi06L0
久「暇ねー」

ゆみ「退屈だな」

久「こうもすることがないとねー」ゴロゴロ

ゆみ「だからといって昼間からベッドでゴロゴロするなよ…」

久「不健康なのはお互い様でしょー」ゴロゴロ

ゆみ「まずは服を着ろ。だらしないの前に風邪ひくぞ」

798: 2010/08/27(金) 02:01:37.97 ID:RUQzi06L0
タッタッタッ…

まこ「おーい部長!」

久「まこ?」

まこ「加治木さんとおったか……どうじゃろ、これからミントンでもせえへんか?
どうも最近体がなまってのぅ…」

ゆみ「まぁ気分転換にはもってこいだな」

久「じゃあそうしましょうか」

799: 2010/08/27(金) 02:09:40.77 ID:RUQzi06L0
ショッピングモール 屋上

まこ「それにしても……日に日に増えとるの―」

久「なに? ひょっとして体重だったりして」

ゆみ「連中のことだろう。ほら、下の…」

アアアアアアア……

まこ「ヤツらは一体何者なんじゃろう? どうにかして全滅させられないかの…」

久「出来たらとっくにやってるでしょうね……でもあの日からもう三ヶ月よ」

ゆみ「テレビは全チャンネル砂嵐だし、私たち以外に生存者がいるかどうかも微妙だな…」

久「少なくとも、もうこの辺にはいないんじゃないかしら?」



透華「屋上に人影発見……ですわっ!」

800: 2010/08/27(金) 02:11:38.69 ID:RUQzi06L0
純「どうした透華、獲物でもいたか?」

透華「ええ。あのショッピングモール……私たちの次の別荘におあつらえ向きですわ!」

一「でも先客がいるんでしょ? 侵入は難しいんじゃないかなー? 抵抗してきたら厄介だし」

透華「ふむふむ、はじめの言うことにも一理ありますわね」

衣「衣はあそこが気に入ったぞっ!」ピョン!

透華「わっ、衣」

803: 2010/08/27(金) 02:16:30.90 ID:RUQzi06L0
衣「眺望絶佳! あの屋上からの眺めはさぞや壮観なのだろう」

純「たったそれだけの理由でかよ」

衣「それだけじゃないっ! あそこは恐らく衣の好きなタルタルがある!!」

一「そういえばもう二日もろくに食事してないよね」

透華「しかしリスクのことを考えると…うーん」

衣「ダメなのか…?」ウルウルッ

透華「衣…泣き顔は卑怯でしてよ?」

智紀「泣く子と衣には…」

透華「あーもう、決まりですわ!! 今夜あそこを襲撃しますわよ!!」

衣「やたっ!」パァァ

804: 2010/08/27(金) 02:20:38.00 ID:RUQzi06L0
ショピングセンター 三階 守衛室

未春「――それで、カナちゃんたら今日二回も倍満に振り込んだんですよー
もう可笑しくて可笑しくて……」

蒲原「ワハハー」

咲「原村さん、今日誕生日だったんで、プレゼントにぬいぐるみあげたら
とっても喜んでくれたんですよー」

蒲原「ワハハー」

妹尾「あはは…(ああ、いつまで壊れた人たちの相手をしなきゃいけないんだろう…)」

蒲原「ワハハー」

妹尾「智美ちゃん、さっきから笑ってばっかりだね…」

蒲原「ワハハー」

妹尾「………」


ブチッ

一同「!!」

805: 2010/08/27(金) 02:25:22.18 ID:RUQzi06L0
久「停電?」

ゆみ「待て…今に非常電源に切り替わるはずだ」

パッ

まこ「おお意外と早いな―。よかったよかった……ありゃ?」

久「どうしたの?」

ザー ザー

まこ「監視カメラが故障したらしい……どのカメラも映らなくなってしもうた」


カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……

智紀「………ハッキング成功」ニヤリ

806: 2010/08/27(金) 02:28:39.88 ID:RUQzi06L0
透華『ザザッ……あー…聞こえますかしら、庶民の皆様方?』

突然、守衛室のスピーカーから、聞き覚えのある女性の声が流れてきた。

まこ「なんじゃあ、この声は?」

ゆみ「……誰かが無線をこっちに飛ばしているのだろう」

透華『よく聞いてくださいまし…ザザッ…そこは元々龍門渕グループ傘下の店…ガー…
つまり、この龍門渕透華に所有権がありますの!』

久「龍門渕…ですって…?」

透華『つきましては……あなた方には至急、荷物をまとめて出て行ってもらいたいのですわ。
もし抵抗するというのなら、そちらの命の保証はできなくってよ』

福路「そんな…横暴すぎるわ」

透華『十分だけ待ちますから、その間に建物から退去してくださいまし。それではごきげんよう!』ブチッ

807: 2010/08/27(金) 02:32:53.79 ID:RUQzi06L0
妹尾「ど、どうすればいんでしょう…」オロオロ…

ゆみ「落ち着け、冷静になるんだ」

蒲原「ワハハー」

福路「何とか向こうに呼び掛けられないかしら?
こちらが知り合いだと分かれば、彼らも態度を変えるかも…」

ゆみ「どうだろう? ここまで一方的な連中に話が通じるだろうか?」

咲「そうですよー、あっちがその気なら、こっちも戦えばいいじゃないですか。
そのほうが簡単ですし」

まこ「またコイツは無茶苦茶言いよる…」

未春「カナちゃん…カナちゃん…」ブツブツ


久「みんないいかげんにしてっ!」ドンッ

808: 2010/08/27(金) 02:38:52.50 ID:RUQzi06L0
一同「………」シーン

久「戦闘は絶対にダメ! また誰かが傷付くのよ? もうそんなのはうんざり……
それより話し合いで決着を付けましょう」

ゆみ「だが相手が聞く耳を持たなかったらどうする?」

久「その時はここをくれてやればいいわ。そろそろ潮時なのよ、この場所にいるのも」

一同「………」

久「今から全員荷物をまとめて1階に降りましょう。無線機を忘れないでね」

809: 2010/08/27(金) 02:42:35.49 ID:RUQzi06L0
ショピングモール 一階 

ゆみ「あれから十分以上たったが……何の変化もないな」

福路「無線機にも何の呼びかけもな…」ピーピー


透華『どうやら交渉は決裂みたいですわね』

一同「!!」

透華『よろしい、では実力行使といきますわ!』

久「待って! 私たちは…」


ブーッ! ブーッ!

アナウンス『今から搬入口が開きます。ご注意ください…』

まこ「なん…じゃと…?」

811: 2010/08/27(金) 03:06:12.44 ID:RUQzi06L0
カタカタカタカタカタカタカタカタカタ…

智紀「この程度…私の手にかかれば楽勝……」

透華「おーほほほほほっ!! ともきーは使える子ですわ!!」

搬入口が開くと同時に、6つの人影が店内に走り込んできた。


まこ「くっ…ヤツら入ってきおった!」

ゆみ「あの群れの中を突破してきたのか!? 信じられない…」

透華「さあさあ、逆らうものは皆頃しにして差し上げますわ!!」

久「待って!」

透華「おや…どこかで見たことある顔だと思ったら、
あなたたちは清澄に風越……鶴賀の方もいらっしゃるようね」

812: 2010/08/27(金) 03:12:36.12 ID:RUQzi06L0
透華「私たちに歯向かうというのなら、たとえ知り合いでも容赦しませんわよ」

久「違うわ、私たちはあなた達と争う気なんてない!」

透華「ならさっさと出て行ってくれないかしら?」

久「どうしてそうなるのよ? 生き残った者同士、協力しようって考えはないの?」

透華「協力……ですの?」

久「そうよ……私たち、一緒に合宿までした仲じゃない」

透華「まぁ、そこまで言うなら……条件しだいでは講和というのも…」


咲「うらぁあああああっ!!!」ビュッ!

814: 2010/08/27(金) 03:17:38.46 ID:RUQzi06L0
透華「!!」

ハギヨシ「危ない!」

バシッ!

一「萩原さんナイスキャッチ!」

純「投げナイフを素手で受け止めるとか…人間技かよ」

透華(あ、危なかったですわ…)ホッ

透華「……って、いきなり何してくれるんですの!? 危うく氏にかけましたわ!!」

久「ちが…今のは咲が勝手に…」

815: 2010/08/27(金) 03:24:17.90 ID:RUQzi06L0

透華「なるほど。 話し合いに持ち込むと見せかけて、
相手の不意をつく……それがあなたちのやり方……」ビキビキ

久「ご、誤解よ!! 彼女は今、情緒不安定で…」

透華「この龍門渕透華、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れ…」

衣「なぁ、トーカ、トーカ!!」

透華「何ですの!? 今真剣な場面でしてよっ?」

衣「衣たちが入って来た扉、閉めなくていいのか?」

一同「……えっ?」

817: 2010/08/27(金) 03:30:55.55 ID:RUQzi06L0
全員の視線が搬入口へと向けられた。

ウガァァァァァ!!!

開け放たれた入口付近で、店内に入ろうと感染者たちがもがいている。
そして押し合いへし合いの末、少しずつだが彼らは店内に侵入してきていた。


透華「何で扉が閉まってないんですの!?」

まこ「コラァ! うちらがどんだけ苦労してここを占拠したと思っとるんじゃ!!」

ゆみ「はやく入り口を閉じるんだ!!」

純「あの扉って智紀のパソコンでハッキングしたんだよな……アイツどこいったんだ?」

819: 2010/08/27(金) 03:42:33.10 ID:RUQzi06L0
透華「ともきー、ともきーはどこですの!? はやくゲートを閉じないと…」

咲「それってコレのこと? もう氏んじゃってるけど」ズズ

智紀「」ダラダラダラ…

透華「と、ともきー!」

咲「重たいなあ…これだから巨Oは嫌いなんだよ」ドサッ

透華「ともきぃぃぃぃぃぃぃ!!」

820: 2010/08/27(金) 03:48:47.82 ID:RUQzi06L0
透華「もーあったまに来ましたわ! こうなったら全面戦争ですのっ!」

久「そんな…待って!」

透華「問答無用! 撃ち方始めっ!」

ズドドドドドドドドドドドド

妹尾「きゃっ!」

久「みんな隠れて!」

スダダダダダダダダダダ

感染者「アアア…」

まこ「くそっ、感染者たちもどんどん入ってきちょる…」

ゆみ「このままじゃ挟み撃ちにされるぞ! 2階に逃げるんだ!」

透華「逃がしません…ですわ!」ダダダダダダダダ

830: 2010/08/27(金) 08:30:20.15 ID:RUQzi06L0
純「ハハハッー、俺の爆弾の餌食になりたいやつは出てこい!」ヒュン

ドォォォン ドォォォン

妹尾「うう…どうしよう…動けないよう…」

蒲原「ワハハー、まかせろーワハハ」

妹尾「!……智美ちゃん、今……」

蒲原「ワハハー」

831: 2010/08/27(金) 08:33:36.49 ID:RUQzi06L0
純「おっ…早速獲物が出てきたか」

蒲原「ワハハ」スッ

純「なんだ? そんなナイフ一本で俺と闘おうってか?」

蒲原「ワハハ」

純「へらへらしやがって……くらえ!」ヒュン

ドォォォン ドォォォン

蒲原「ワハハー」

純「避けたか…ちょっとはやるみたいだな」

純「だが…この数はどうだっ!?」ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン

蒲原「ワハ?」

ズドォォン ズドォォン ズドォォン ズドォォン

832: 2010/08/27(金) 08:41:06.68 ID:RUQzi06L0
純「やったか…?」

シュウウウウウウウウウ…

蒲原「ワッハッハー」ボタボタボタ…

純「生きてやがったか。しかし、あのケガじゃ動けな…」

蒲原「……ワハハー!」ダッ

純(なっ……まだ向かってくるだと? 体が半分ズタボロなんだぞ?)

蒲原「ワハハ」

純「!!」ゾクッ

純(何だあの目は……何で笑ってられるんだ?)

蒲原「ワハッ!」ダッダッ

純(しまった! 接近されちゃ爆弾が使えな…)


グサッ…

833: 2010/08/27(金) 08:43:43.76 ID:RUQzi06L0
ポタポタ…

蒲原「ワッハッハッハー」

純「チッ…俺の負けか……」ガクッ

蒲原「ワハハ」

純「だがタダじゃ氏なねえ……お前も道連れだ」ガシッ

蒲原「ワハ…」

純「へっ、氏ぬ間際まで笑ってるとは……大したやつだぜ…」ピッ

ドオォォォォォォン

834: 2010/08/27(金) 08:47:27.13 ID:RUQzi06L0
衣「自爆した!?」

衣「純……大義であった」

妹尾「いやああああああっ!!」

衣「ぬっ?」

妹尾「よくも…よくも智美ちゃんを頃したなぁ!」ブンッ

衣「ふっ…塵芥ごときが、衣に素手で挑もうというのか?」

妹尾「頃してやる頃してやる頃してやる」

衣「いいだろう……根堅州国に送ってやる!」ズドドドドドド

妹尾「」スッスッスッ

衣「なにっ、弾が当たらない?」ドドドドドド

妹尾「智美ちゃん返せよオラァ!」

バキィッ

衣「ぐぁっ…」

835: 2010/08/27(金) 08:50:14.61 ID:RUQzi06L0
妹尾「貧Oのくせにバカにしやがってよぉぉぉ!!」ギリギリギリ

衣(く、首が…しまって…)

妹尾「なにがハイテイラオユエだよ、はいてないゆえの間違いだろォ?」ギリギリギリ

衣(意識が…途切れっ…)

妹尾「あやまれ! 氏んであの世で智美ちゃんにあやまれ!
まだ大した活躍もしてないのに氏んでいった智美ちゃんに……ぐはっ!」

衣「?」

836: 2010/08/27(金) 08:53:17.27 ID:RUQzi06L0
妹尾「………」ヘナヘナ~

衣「なんだ? 急に力が抜けて…」

ドシャッ…

衣「氏んだ…」

シュタッ

ハギヨシ「衣様、御無事ですか?」

衣「おお、ハギヨシであったか。危ないところだった。感謝するぞ」

ハギヨシ「いえいえ、衣様が無事で何より」

未春「よくもやったな…」

衣「!?」

未春「また私の仲間を頃したな……お前らみんな頃してやるっ!!」ブォーンブォーン

837: 2010/08/27(金) 08:55:18.55 ID:RUQzi06L0
ショッピングモール 二階 ゲームセンター

ゆみ「なんてことだ。まさか頃し合いが始まるなんて」

スダダダダダダ… ワーワー キャー


ゆみ「下は地獄そのものだ……でもここならまだ…」

一「敵がいないとでも?」チャッ

ゆみ「くっ…」クルッ

一「おっと、動いたら撃つよ。それに僕が用があるのは、君の後ろにいる人さ」

ゆみ「なにっ?」

一「さあ、隠れてないで出てきたら?」


スッ

咲「あはっ、やっぱりバレちゃった?」

838: 2010/08/27(金) 08:57:12.99 ID:RUQzi06L0
ゆみ「宮永…咲……」

一「さっきはうちのともきーが世話になったね。たっぷりお礼をさせてもらうよ」

咲「あはは、その銃で私を撃つの?」

一「僕は頃し合いなんて野蛮な事は趣味じゃない。
それより、もっと僕等らしいやり方で決着をつけない?」

ゆみ「まさか…」

一「そう、麻雀だよ」

839: 2010/08/27(金) 08:59:21.42 ID:RUQzi06L0
一「ルールは普通の麻雀となんら変わらない。
一つ違うのは、勝者は敗者を好きなように出来るってトコかな」

咲「いいよ、そのルールで。さっさと始めようよ」

ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…

ゆみ(この麻雀、絶対に何かあるはず……何かが…)

一「さーて、配牌も終わったし僕の親番から……って、あれぇ?」ピタッ

ゆみ「何だ、どうしたんだ?」

一「ふふふ……悪いねぇ、もう上がってるんだ」

バタッ

ゆみ「バカな……天和だと!?」

咲「………」

840: 2010/08/27(金) 09:06:03.60 ID:RUQzi06L0
一(どうだい? 僕のすり替え、全然見えなかっただろう?)

一(この三ヶ月、生き残るのに必氏だった……生き残るための技を磨くのに必氏だった!)

一(こんな所でぬくぬくとしていた君らとは、気構えが圧倒的に違う!)

ゆみ(くそっ、イカサマか? しかし現場を押さえれなければ……)

一「ははっ、僕の麻雀は君らの打ってきた生ぬるい麻雀とは違うんだよ!
このままなぶり頃しにしてあげるよ!」

咲「………」


841: 2010/08/27(金) 09:08:07.44 ID:RUQzi06L0
ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…

一「また僕の親だね」カチャ…パシ

ゆみ(今回は天和ではなかったか…)ホッ…

一「………ニヤリ」

一「リーチ」クイッ

ゆみ「親のダブリーだと…?」

一(ふふ、次で終わりだ……)

咲「……それカン」バタッ

一「へっ?」

842: 2010/08/27(金) 09:15:06.62 ID:RUQzi06L0
咲「カン…カン…もいっこカン」バタッバタッバタッ

ゆみ「なっ…」

咲「ツモ……嶺上開花、大四喜、四槓子、字一色」

一「そっ…」

咲「はい、私の勝ち。麻雀って楽しいよねーありがとーございましたー」

一「あ……あ……」ガタガタ

咲「……さて、勝者は敗者を……」チラッ

一「ひっ…」

843: 2010/08/27(金) 09:21:29.51 ID:RUQzi06L0
―――――――――

咲「んんー、すっきりした。麻雀って楽しいね」

ゆみ「…………」

咲「さて、私はもう行くよ。まだまだたくさん殺さないといけないし…」

咲「加治木さんも殺されないように気をつけてねー」

タッタッタッタッ…

ゆみ「…………」

ゆみ(宮永咲…お前は…)

ゆみ「……本当にこれでいいのか?」

844: 2010/08/27(金) 09:25:36.59 ID:RUQzi06L0
ショッピングモール 一階

未春「氏ねえぁぁぁぁぁ!!」ギュイーン

ハギヨシ「………」フッ

未春「ちっ…またかわされた…」

ハギヨシ「チェーンソーは強力ですが、小回りが利かないので接近戦では不利かと」

未春「うるさいっ!」ブォーン

ハギヨシ「あなたには何の恨みもありませんが…」スッ

未春「うおおぁぁぁぁ」ギュイーン

ハギヨシ「これも透華お嬢様や衣様のため……」スッスッ

未春「ああああああああ!!」

ハギヨシ「………お許しください」

バシッ

846: 2010/08/27(金) 09:32:17.34 ID:RUQzi06L0
未春「うわっ」ドターン

ハギヨシの付きだした足につまずき、未春は自ら振りかぶったチェンソーの刃に突っ込んだ。

ギュイイイイイイイイイイイン…グシャ メキャ ゴキャ

未春「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」グシャグシャグシャグシャ

ハギヨシ(……………)

未春「…ゴロズ…ゴロズ…ガナヂャン、ガナヂャン……」グシャグシャグシャグシャ…

キュイイイイン……

刃の回転が止まるとともに、彼女の心臓の鼓動も止まった。

847: 2010/08/27(金) 09:38:04.66 ID:RUQzi06L0
ハギヨシ(なんと惨い……)

ハギヨシ「可哀想に……こんなことさえ起きなければ…」

グサッ

ハギヨシ「な…に…」

ハギヨシ「背中に…ナイフが……透華お嬢様…お許しください……」

バタン

福路「ふふふ…」

福路「ありがとう吉留さん。あなたのお陰で、一番手強そうな人を倒せたわ」

848: 2010/08/27(金) 09:45:31.05 ID:RUQzi06L0
透華「いらっしゃいましっ!」ジャキッ

ズダダダダダダダダ

久「マシンガンを二丁も撃ってくるなんて……」

まこ「くっ、部長! なんとかヤツを怯ませられんかのう? 接近さえできれば、わしの古武術で…」

久「そんなこと言われても……火力が違いすぎる!」パーン パーン

透華「おーほっほっほっ、近付けるものなら近付いてみなさいですわ!」ズダダダダダダ

849: 2010/08/27(金) 09:52:42.67 ID:RUQzi06L0
バスッ!

久「きゃあ!」

まこ「部長、大丈夫か!?」

久「くっ…腕を撃たれたみたい…」

まこ「はやく止血せんと……ここはわしに任せて逃げぃ!」

久「そんな…」

まこ「そのケガじゃもう戦力にはならん。それにリーダーのあんたに氏なれては困るんじゃ!」

久「……わかった」

タッタッタッ…


まこ「部長、あんたは氏なんでくれや…」

851: 2010/08/27(金) 09:55:02.98 ID:RUQzi06L0
ズダダダダダダダダダダ…

まこ「くそっ、ヤツに近付くためにはどうすりゃいいんじゃ…」

ダダダダダダダダダダダ…

まこ「ええぃ、こうなったら一か八かじゃ!」

透華「ん? あれは…」

まこ「うおりゃああああ」ダッダッダッ

透華「あの女、氏体を盾に…」ズダダダダダ

まこ「おりゃあああああああああ!!」バスバスバス

透華「くっ…弾が」カチカチ

まこ(よし、 勝機は我にありじゃ!)

まこ「くらえ染谷流古武術、魔手刀閃!」

ゴォォォォォッ!


852: 2010/08/27(金) 10:00:53.45 ID:RUQzi06L0
透華「おっと、危ないですわ」スッ

まこ「なっ、見切られた?」

透華「この私をそこら辺の雑魚と一緒にしないでほしいですわね!」チャキ

ズドンッ


まこ「うぐっ…」バタッ

透華「ふうー、一丁上がりですわね」

<オーイ

透華「ん?」

<トーカー トーカー

透華「おや、あんな所に衣が……おーい、こっちで」

グシャッ

853: 2010/08/27(金) 10:07:24.06 ID:RUQzi06L0
透華「…す、わ?」フラ~

バタンッ


まこ「へへ…油断大敵じゃ……」ハァハァ

まこ「…出血がひどい…どうやらここまでのようじゃな…」


まこ「我が生涯に一片の悔いなし……」バタッ

854: 2010/08/27(金) 10:15:00.88 ID:RUQzi06L0
衣「トーカ、トーカ!」ユサユサ

透華「」

衣「……逝ったか」


シーン

衣「氏屍累々だな……」

衣「衣は……衣はまた独りぼっちになってしまった…」

衣「……後に続く者がいないのは寂しいものだな」

ガタッ

ゆみ「まだだ、まだ私が残っているぞ……天江衣っ!」

衣「!?」

855: 2010/08/27(金) 10:21:19.51 ID:RUQzi06L0
衣「鶴賀の大将か……その刀で私と勝負する気か?」

ゆみ「そうだ……さぁ来い、天江……銃なんか捨ててかかって来いっ!」チャキ

衣「一騎打ちを所望するか。古典的だが……その心意気やよし!」スチャ

ゆみ「行くぞ!うおおおおおおおおおおおっ」ダッ

衣「来いっ!」

856: 2010/08/27(金) 10:29:45.14 ID:RUQzi06L0
咲「みぃーつけた」

優希「…ジョ?」

今やモール内を埋め尽くさんばかりになだれ込んでくる感染者の群れ。
その中に、咲はかつての友人の姿を発見した。


咲「やっぱりいたんだー優希ちゃん。私だよ、覚えてる?」

優希「ジョ…」

咲「ミ・ヤ・ナ・ガ・サ・キ、忘れちゃったの?」

優希「ミヤナガ…サキ……ウガァァァッ!」


咲「この…タコス野郎ォォォ!」

ドガァッ!

859: 2010/08/27(金) 11:10:53.11 ID:RUQzi06L0
優希「グハッ…」ズザァァァ

咲「お前さえ…お前さえいなければこんなととには…」ドカッ バキッ

優希「グハッ、ケハッ」

咲「ふぅ…簡単には殺さないよ……まずは四肢を一本ずつ切断する」

咲「それから腹をかっさばいて、そのタコス臭いはらわたを引きずり出す……
あははっ……頭は最後まで壊さないよ……」

優希「ヤ…ヤメ…」

咲「まずは右腕から!」

グシャ!

優希「ギャァァ!!」

861: 2010/08/27(金) 11:16:10.92 ID:RUQzi06L0
咲「あははっ、これは京ちゃんの分だよ……そして次は……」

優希「ウ…」

咲「原村さんの分!!」

グシャ!!

優希「グワァッ!!」

咲「あれ、切断しきれなかったよ……力ずくで引きちぎってあげるね」

メリメリメリメリ…ブチィ!!

優希「ギャァァァァァ!!」

862: 2010/08/27(金) 11:25:01.92 ID:RUQzi06L0
咲「ふぅ…ふぅ…意外に力がいるんだ……ちょっと疲れたよ」

優希「イタイ…イタイ…イタイ…」シクシク

咲「……痛い?」

ドカッ!バキッ!

咲「てめえ何様のつもりだよ!? 京ちゃんや原村さんを頃したお前らに……
お前たち化け物に人権なんてないんだよ!!」 ドカッ バキッ

優希「……ソッチコソ…ナニサマダ…」

咲「なに…?」

863: 2010/08/27(金) 11:27:44.05 ID:RUQzi06L0
優希「ドッチガ、バケモノダ……コンナニワタシヲ…イタブッテ……」

咲「それはお前が……」

優希「ワタシハシッテイル……フダンカラ、オマエラハ、ワタシヲバカニシテイタ……」

咲「………」

優希「アノヒダッテ…モトハトイエバ、オマエラガ……」

咲「!!」

優希「イ…イチバン、コワイノハ…」


優希「ニンゲン…ダ…ジェ…」

864: 2010/08/27(金) 11:33:15.89 ID:RUQzi06L0
ゆみ「うおおぁぁっ!」

ガァァン!ガァァン!

衣「この…塵芥めがっ!」

ガァァン!ガァァン!

衣(くっ、こいつ…強い…!)

ゆみ「何故だ、何故なんだ? お前たちは…どうしてこんなことを!?」

衣(そ…それは…)

衣(衣は…衣は怖かったんだ…)

865: 2010/08/27(金) 11:36:57.46 ID:RUQzi06L0
衣(秩序が崩壊していく中で……元から友達の少なかった衣は……
さらに他人が信用できなくなっていったんだ)

衣(トーカやみんなは、そんな衣を守ってやるって言ってくれて…それで…それで…!)

ゆみ「どうしてお互い協力しようと思わなかったんだ? 私たちは…争うつもりなんて…」ガキィン!

衣(………)

ゆみ「私たちは……一緒に合宿までした仲じゃなかったのか?
……友達じゃなかったのか!?」

衣(……!!)

866: 2010/08/27(金) 11:42:46.03 ID:RUQzi06L0
衣「……そうか…お前たちは最初から……」スッ

ゆみ(自ら剣を!?)

激しい切り合いの最中、突如として衣は剣をおろした。

ノーガードとなった衣の身体を、加治木の刀が切り裂いた。

ズバッ! ブシュゥゥゥゥゥ……

衣「もっと……もっと早くお前たちと出会えていれば……」ガクッ

867: 2010/08/27(金) 11:46:40.08 ID:RUQzi06L0
福路「ふふふ、どうやら龍門渕は全滅のようね…」

福路「さて、私もそろそろ安全なところに……」

ガブッ!


福路(っ……噛まれた?)

池田「キャプテーン ココニイタシー」

福路「華菜……あなたまだいたの?」

池田「キャプテーン、アタマナデテホシイシ…」

福路「華菜……安らかに眠ってちょうだい…」ブンッ

グシャァァァァァァァァ!

868: 2010/08/27(金) 11:50:35.40 ID:RUQzi06L0
福路(さて、傷は浅かったけど……どうしよう、噛まれてしまった)

福路「……なーんてね」

福路「自分で作ったタコスですもの。ワクチンぐらい用意してあるわ」スッ

福路「これを打てば……」

咲「へえ…そうだったんですか」

福路「!?」

869: 2010/08/27(金) 11:54:09.84 ID:RUQzi06L0
福路「宮永さん…これはね…」

咲「詳しく聞かせてもらえますか?」

福路「………」

福路「確かに今回の事の発端は私だわ。私が人間をタコス中毒者に変えるタコスを作ったの」

咲「どうしてそんなものを作ったんですか?」

福路「さあ? タコスを作ってたら、たまたまそういうのが出来上がったの」

咲「……そんな話、信じられませんよ」

870: 2010/08/27(金) 12:01:52.77 ID:RUQzi06L0
福路「分かってるわ。こんな荒唐無稽な話、信じろってほうが無理よね」

咲「………」

福路「諦めてちょうだい……ただ、今回はこういう筋書きだったってだけの話だから」

咲「……あなたの言ってる意味が分かりません」

福路「今は分からなくてもいいわ」

咲「…?」

871: 2010/08/27(金) 12:05:43.60 ID:RUQzi06L0
咲「じゃあどうして、それをばら撒こうとしたんです?」

福路「……今回みたいに、たまにあり得ないくらい酷いことが起きたりするでしょ?」

そう言って、福路はあの聖母のような笑みを浮かべた。

福路「その度にみんなが泣いたり、ヘコんだりするところを見るとゾクゾクするの…」

咲「……よくわかりました」チャキ

福路「私を頃すの…?」

咲「安心してください…もう人を苦しませて氏なすようなことはしませんから」

福路「あらあら…」

ダァーン! ダァーン!

872: 2010/08/27(金) 12:11:30.22 ID:RUQzi06L0
咲「じゃあどうして、それをばら撒こうとしたんです?」

福路「……今回みたいに、たまにあり得ないくらい酷いことが起きたりするでしょ?」

そう言って、福路はあの聖母のような笑みを浮かべた。

福路「その度にみんなが泣いたり、ヘコんだりするところを見るとゾクゾクするの…」

咲「……よくわかりました」チャキ

福路「私を頃すの…?」

咲「安心してください…もう人を苦しませて氏なすようなことはしませんから」

福路「あらあら…」

ダァーン! ダァーン!

874: 2010/08/27(金) 12:16:21.81 ID:RUQzi06L0
ショッピングモール 一階 エレベーター付近

久「リーダーのくせに傷を負って敗走……我ながら無様ね」

ポタポタ…

久「――痛っ…ダメだ、血が止まらない……」ズキズキ

久「このエレベーターで、隠れ家まで逃げるか……でもその前に…」

ピッ ピッ

久「聞こえる? こちら竹井久よ、聞こえたら誰か返事して!」

875: 2010/08/27(金) 12:21:18.28 ID:RUQzi06L0
ゆみ『……久か? こちら加治木、聞こえてるぞ!』

久「よかった、生きてたのね。そっちの…1階の状況はどうなってるの?」

ゆみ『天江は倒した。だが私も今降りて来たばかりで……他の皆がどうなっているかさっぱりなんだ』

久「わかったわ…今から隠れ家に集合しましょう。他のみんなにも呼び掛けてみるから」

ゆみ『了解……氏ぬなよ?』

久「ええっ、約束する…必ず戻るわ…!」

ピッ

久「さてと…他の皆にも伝えなきゃ…」

876: 2010/08/27(金) 12:27:52.00 ID:RUQzi06L0
咲「………」スッ

咲は無言で、福路の氏体の傍にひざまずいた。

咲(京ちゃん…原村さん…仇はとったよ……)

咲(そして……)

咲「ごめんね優希ちゃん…」

咲(確かに優希ちゃんの言う通り、化け物は私の方だった…)

咲(この事態が起きてから…いやそれ以前から、私は化け物だったのかもしれない)

877: 2010/08/27(金) 12:33:57.38 ID:RUQzi06L0
チャキ

咲は自分のこめかみに拳銃を突きつけた。

咲(こうするのが一番だよね…私がしてきたことを償うには…)

咲(さようなら…みんなっ…)ググッ

―――てください

咲(えっ?)

―――てください――きてください 宮永さん――

咲(頭の中に声が聞こえる? これは……)

―――生きてください! 宮永さん!

咲(原村さんの―――!)

880: 2010/08/27(金) 12:46:53.84 ID:RUQzi06L0
咲「ハッ!」

久『――聞こえる? 誰かこの通信を聞いていたら答えて!』

咲「部長の声…無線機から…」

ピー ピー ガー

咲「無線機が壊れてる?返事が出来ない……」

久『――いい? 全員今から隠れ家に集合よ! 絶対生きて帰るのよ!』

咲「………」

881: 2010/08/27(金) 12:51:28.42 ID:RUQzi06L0
久「はぁ…はぁ…これでよしっと…」ピッ

久「あとはエレベーターを待って…」

ゴゥンゴゥンゴゥン

久「みんな…生きててちょうだい…」ハァハァ

チーン

久「………」ドキドキ

ゴゴゴゴゴゴゴ

エレベーターの扉が開く。そこには誰も乗っていなかった。

久(ふう……感染者が乗っていたらどうしようかと思ったわ)

883: 2010/08/27(金) 12:55:50.56 ID:RUQzi06L0
久「あとはこれに乗って…」

ガシッ

久「えっ…」

ガブッ !

久「痛っ…」

久(…バカな…誰も乗っていなかったハズじゃ…)


モモ「アア……」ユラッ

久(ステルス……能力……)

モモ「アア…センパ…」

久「東横さん…許して…」


久は桃子の頭部に照準すると、引き金を引いた。

884: 2010/08/27(金) 13:01:27.70 ID:RUQzi06L0
ショッピングモール 三階 守衛室

ギィ…バタンッ

ゆみ「誰もいない…一番乗りか……」

ゆみ「私としたことが…ここに来る途中で噛まれるとは……しくじったな……」

ゆみ「はぁ…はぁ…モモ……今そっちに行くからな…」

ヒュッ パスッ

ゆみ「!?」

咲「……それ」

ゆみ「宮永…これは…?」

咲「ワクチンです……使ってください」

ゆみ「ワクチン? なんだってそんなものが…」

885: 2010/08/27(金) 13:06:43.56 ID:RUQzi06L0
――――――――――

ゆみ「そうだったのか。風越の部長が……」

咲「………」

ゆみ「だがお陰で助かった。これからどうする?」

咲「ここで、部長たちを待ちます」

ゆみ「ああ、そうすることにしよう…」

886: 2010/08/27(金) 13:13:07.27 ID:RUQzi06L0
数時間後

ゆみ「………」

咲「…………」

ゆみ「…なぁ」

咲「…なんですか?」

ゆみ「もう何時間も待った……それでも来ないということは……」

咲「…………」

ゆみ「……言いにくいことだが……みんなはもう……」

ゆみ「……氏んでしまったのかもしれない」

咲「…………」

889: 2010/08/27(金) 13:20:05.37 ID:RUQzi06L0

ゆみ「もうすぐ夜が明けるぞ」

咲「そうですか…」

ゆみ「もう脱出しないか?」

咲「……加治木さん一人で逃げてもいいですよ」

ゆみ「そんなことは……」

咲「………」ガチャ

咲「拳銃の弾は…あと一発……」

ゆみ(こいつ…氏ぬ気か…?)

890: 2010/08/27(金) 13:25:08.18 ID:RUQzi06L0
ピンポーン

咲「!?」

ゆみ「エレベーターが作動している?」

チーン ゴゴゴゴゴゴゴゴ

咲「……ドアの開く音」

ゆみ(誰か乗っていたのか…?)

コツ…コツ…コツ…コツ

ゆみ(足音が…こっちの部屋に向かってる…)

コツ…コツ…コツ…ピタッ

咲「来る…!」

891: 2010/08/27(金) 13:30:10.65 ID:RUQzi06L0
ギィ…バタンッ

咲「!!」

ゆみ「!!」

久「………」

咲「部長……」

ゆみ「久…お前……」

久「…アア……」

893: 2010/08/27(金) 13:34:32.50 ID:RUQzi06L0
感染者となった久は、見るも無残な姿だった。
腕を撃ち抜かれ、首筋は噛みちぎられている。

ゆみ「お前……こんな姿になってもまだ…約束を果たそうとして……」

咲「部長」

ゆみ「?」

咲「おかえりなさい…」チャキ

久「アア…」

ダァーン!

895: 2010/08/27(金) 13:36:26.87 ID:RUQzi06L0
ゆみ「………」

咲「加治木さん……いきましょう」

ゆみ「ああ」

二人はエレベーターで地下駐車場に降りた。既にそこにも感染者が群れを成していた。
二人は手早く、脱出用の車に乗り込んだ。

咲「運転できるんですか?」

ゆみ「ああ、蒲原に教えてもらたよ。 時間はたっぷりあったからな!」ギュォォォォ

二人の乗った車は、感染者を次々跳ね飛ばしながらモールの外へと脱出した。

897: 2010/08/27(金) 13:41:13.06 ID:RUQzi06L0
ブロロロロロロ…

咲「………」

車の窓から見えるショッピングモールが、みるみる遠ざかっていった。

ゆみ「まいったな。練習で使ったせいで、ガソリンが残り少ない…」

咲「なんとかなりますよ」

つとめて明るい声で、咲は答えた。

咲(原村さん……私、決めたから。 絶対生き延びてやるって。
もう、狂気に負けたりしないから―――)


狂乱の一夜は明け、夜明けの光が車内の二人を包みこんでいた――


     ドーン・オブ・ザ・タコス  完

次回  京太郎「地獄で会うぜ、ベイビー」

引用元: 咲「ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!」