965: 2010/08/27(金) 19:23:41.05 ID:RUQzi06L0
和「宮永さーん!」
咲「あっ…原村さん。奇遇だね、こんな所で会うなんて」
和「本当に偶然ですね…今暇なんですか?」
咲「あ、うん。ちょっと本を買いにいこうかと思って」
和「よろしければ、私もご一緒していいですか?」
咲「うん!いいよ」
――しかし、この時の咲は知る由もない。
これが偶然を装った、和の作戦だったということに。
咲「…えっ?」
咲(なに…? この声……)
咲「あっ…原村さん。奇遇だね、こんな所で会うなんて」
和「本当に偶然ですね…今暇なんですか?」
咲「あ、うん。ちょっと本を買いにいこうかと思って」
和「よろしければ、私もご一緒していいですか?」
咲「うん!いいよ」
――しかし、この時の咲は知る由もない。
これが偶然を装った、和の作戦だったということに。
咲「…えっ?」
咲(なに…? この声……)
966: 2010/08/27(金) 19:30:26.59 ID:RUQzi06L0
和「すみませんね、こんな所に誘って」
咲「ううん、いいよ。どうせ暇だったし」
――咲が本を買った後、和は彼女をカフェへと誘った。
もちろん、これも和の作戦の内である。
咲「う…うぅ……」
和「宮永さん、どうかしましたか?」
咲「な、なんでもないよ…」
咲(言えるわけないよ……頭の中に、私たちを描写する声が聞こえるなんて…)
咲「ううん、いいよ。どうせ暇だったし」
――咲が本を買った後、和は彼女をカフェへと誘った。
もちろん、これも和の作戦の内である。
咲「う…うぅ……」
和「宮永さん、どうかしましたか?」
咲「な、なんでもないよ…」
咲(言えるわけないよ……頭の中に、私たちを描写する声が聞こえるなんて…)
967: 2010/08/27(金) 19:38:09.35 ID:RUQzi06L0
和(……ああ、宮永さん……)
――和は恍惚の表情で咲を見つめた。
彼女の胸の内には、すでに抑えがたい情欲がこみ上げてきていたのだ。
咲「くぅぅ…」
咲(何なの? さっきから聞こえてくるこの声は一体…?)
和「……宮永さん、本当にどこか具合が悪いのでは?
よければうちに来ませんか? 私が手当てしてあげます…」
――ここぞとばかりに、和は咲を自宅に誘った。よこしまな感情に支配されながら……
咲「原村さん、ごめん!!」ダッ
――和は恍惚の表情で咲を見つめた。
彼女の胸の内には、すでに抑えがたい情欲がこみ上げてきていたのだ。
咲「くぅぅ…」
咲(何なの? さっきから聞こえてくるこの声は一体…?)
和「……宮永さん、本当にどこか具合が悪いのでは?
よければうちに来ませんか? 私が手当てしてあげます…」
――ここぞとばかりに、和は咲を自宅に誘った。よこしまな感情に支配されながら……
咲「原村さん、ごめん!!」ダッ
968: 2010/08/27(金) 19:44:10.58 ID:RUQzi06L0
タッタッタッタッタッ…
咲「ハァ…ハァ…」
――咲はひと気のない場所まで、息を切らして走った。
咲「ねえ…もういいでしょ?」
――咲はぜえぜえ云いながら、呟いた。
咲「もういいかげん出てきてよ!」
――誰もいないにもかかわらず、咲は大声で叫んだ。
咲「あなただよ! 私の行動を描写してる人!」
咲「ハァ…ハァ…」
――咲はひと気のない場所まで、息を切らして走った。
咲「ねえ…もういいでしょ?」
――咲はぜえぜえ云いながら、呟いた。
咲「もういいかげん出てきてよ!」
――誰もいないにもかかわらず、咲は大声で叫んだ。
咲「あなただよ! 私の行動を描写してる人!」
969: 2010/08/27(金) 19:49:42.95 ID:RUQzi06L0
――咲が文句を言っている。どうやら、この解説が気に食わないらしい。
咲「あなたは一体何なの? 説明してくれるまで、私何もしないからね!」
――咲はそう言うと、棒立ちしたまま動かなくなった。
咲「………」
――本当に、動かないままだった。
咲「………」
――このままでは話が進まない。
970: 2010/08/27(金) 19:56:02.61 ID:RUQzi06L0
ゆみ「おーい」
タッタッタッタッ…
咲「……加治木さん? どうしてここに?」
ゆみ「いや、私は加治木ゆみではない」
咲「?」
ゆみ「この話の作者だ」
咲「ええっ!?」
タッタッタッタッ…
咲「……加治木さん? どうしてここに?」
ゆみ「いや、私は加治木ゆみではない」
咲「?」
ゆみ「この話の作者だ」
咲「ええっ!?」
972: 2010/08/27(金) 20:00:22.63 ID:RUQzi06L0
咲「作者って一体…」
ゆみ「分かりやすく言えば、この世界の神だ。 書こうと思ったことを何でも実現できる。
例えば私が今、この場に戦車を走らせようと思ったとする。すると…」
ドドドドドドドドド…
咲「!!」
キュラキュラキュラキュラ…
ゆみ「ほらな、戦車が走っていっただろ?」
咲「うそ…」
ゆみ「お前は私に、どうなってるのか説明しろと言ってきただろ?
だがナレーターは原則、登場人物と会話できない」
ゆみ「分かりやすく言えば、この世界の神だ。 書こうと思ったことを何でも実現できる。
例えば私が今、この場に戦車を走らせようと思ったとする。すると…」
ドドドドドドドドド…
咲「!!」
キュラキュラキュラキュラ…
ゆみ「ほらな、戦車が走っていっただろ?」
咲「うそ…」
ゆみ「お前は私に、どうなってるのか説明しろと言ってきただろ?
だがナレーターは原則、登場人物と会話できない」
974: 2010/08/27(金) 20:05:28.14 ID:RUQzi06L0
ゆみ「そこで、こうして登場人物の体を借りたわけだ。
あくまで登場人物が会話しているということで、私の意思をお前に伝えることが出来るようになった」
咲「そんな…」
ゆみ「これで分かっただろ? ここは作られた世界だ。
お前は物語の登場人物なんだよ」
咲「……!!」
ゆみ「これで説明は終わりだ。私はもう戻るぞ。
元々は和が咲を家に連れ込んで×××しちゃうような話を書く予定だったんだ…」
咲「待って!」ガシッ
あくまで登場人物が会話しているということで、私の意思をお前に伝えることが出来るようになった」
咲「そんな…」
ゆみ「これで分かっただろ? ここは作られた世界だ。
お前は物語の登場人物なんだよ」
咲「……!!」
ゆみ「これで説明は終わりだ。私はもう戻るぞ。
元々は和が咲を家に連れ込んで×××しちゃうような話を書く予定だったんだ…」
咲「待って!」ガシッ
975: 2010/08/27(金) 20:10:29.83 ID:RUQzi06L0
ゆみ「なんだ?」
咲「私、そんな展開望んでないよ! お願いだからやめて!」
ゆみ「……この文章を書いてるのも私だ。
その気になれば、無理やり話を進めることだって出来るんだぞ?」
咲「だったら私、抗うよ!」
咲「私、そんな展開望んでないよ! お願いだからやめて!」
ゆみ「……この文章を書いてるのも私だ。
その気になれば、無理やり話を進めることだって出来るんだぞ?」
咲「だったら私、抗うよ!」
976: 2010/08/27(金) 20:17:04.75 ID:RUQzi06L0
ゆみ「……抗うだと? 神に抵抗できるとでも?」
咲「やってやるよ! 神だか何だか分からないけど、
人の人生を玩具みたいに好き勝手にいじるなんて、許せないよ!」
ゆみ「……だから、この文を書いてるのも私だって………あれ…?
じゃあ何で私は書くのをやめないんだ…?」
咲「?」
ゆみ「咲を黙らせるのは簡単だ……書かなきゃいいんだから。
でも何故だろう……書くのをやめられない……」
咲(この人、さっきからどうしちゃったの?)
咲「やってやるよ! 神だか何だか分からないけど、
人の人生を玩具みたいに好き勝手にいじるなんて、許せないよ!」
ゆみ「……だから、この文を書いてるのも私だって………あれ…?
じゃあ何で私は書くのをやめないんだ…?」
咲「?」
ゆみ「咲を黙らせるのは簡単だ……書かなきゃいいんだから。
でも何故だろう……書くのをやめられない……」
咲(この人、さっきからどうしちゃったの?)
977: 2010/08/27(金) 20:23:34.61 ID:RUQzi06L0
ゆみ「はは……そうか。書いてるうちに、キャラがひとりでに動き出すとはこのことか…」
咲「あのー、大丈夫ですか?」
ゆみ「ああ…すまない、相当疲れてるみたいだ……
もう自分が何を書きたいのかよく分からなくなってきた」
咲「だったら…」
ゆみ「降参だ……もう変な話を書くのはやめにする」
咲「あのー、大丈夫ですか?」
ゆみ「ああ…すまない、相当疲れてるみたいだ……
もう自分が何を書きたいのかよく分からなくなってきた」
咲「だったら…」
ゆみ「降参だ……もう変な話を書くのはやめにする」
978: 2010/08/27(金) 20:30:01.80 ID:RUQzi06L0
ゆみ「で、これからどうする?」
咲「どうするって?」
ゆみ「私はこの世界の神だ。物語の行く末を自由に決められる。お前はどんな結末を望む?」
咲「それは……」
ゆみ「お前を誰とでもカップルにしてやれる。清澄を全国優勝させるのも簡単だ。
姉を仲直りすることも出来るぞ。さあ、お前はどうしたい?」
咲「私は…」
咲「どうするって?」
ゆみ「私はこの世界の神だ。物語の行く末を自由に決められる。お前はどんな結末を望む?」
咲「それは……」
ゆみ「お前を誰とでもカップルにしてやれる。清澄を全国優勝させるのも簡単だ。
姉を仲直りすることも出来るぞ。さあ、お前はどうしたい?」
咲「私は…」
979: 2010/08/27(金) 20:35:52.17 ID:RUQzi06L0
咲「私は……まだ終わりたくないよ!」
ゆみ「?」
咲「私はまだまだ麻雀を打ちたいし、みんなと楽しみたい。
このまま、安易なハッピーエンドへ直行するのはごめんだよ…」
ゆみ「そうか、お前はまだまだ続けたいんだな? この物語を…自分の人生を…」
咲「」コクッ
ゆみ「とは言っても、私はもう物語を書くのに疲れた……
もう長く続けられる力は残ってない。さて、どうするか…」
ゆみ「?」
咲「私はまだまだ麻雀を打ちたいし、みんなと楽しみたい。
このまま、安易なハッピーエンドへ直行するのはごめんだよ…」
ゆみ「そうか、お前はまだまだ続けたいんだな? この物語を…自分の人生を…」
咲「」コクッ
ゆみ「とは言っても、私はもう物語を書くのに疲れた……
もう長く続けられる力は残ってない。さて、どうするか…」
980: 2010/08/27(金) 20:41:23.69 ID:RUQzi06L0
ゆみ「そうだ。私にしてやれる精一杯のことといったら、これだろう…」
咲「……何をするの?」
ゆみ「お前を生みの親の元に帰してやる」
咲「えっ!?」
ゆみ「さっきお前は私の物語の登場人物だと言ったな。
だが、お前の生みの親は私ではない。お前は借りものなんだ」
咲「言っている意味がよく分らないよ……」
ゆみ「では一から説明してやろう。まず、小林立という漫画家が描いた
『咲-Saki-』というマンガがあって……」
咲「……何をするの?」
ゆみ「お前を生みの親の元に帰してやる」
咲「えっ!?」
ゆみ「さっきお前は私の物語の登場人物だと言ったな。
だが、お前の生みの親は私ではない。お前は借りものなんだ」
咲「言っている意味がよく分らないよ……」
ゆみ「では一から説明してやろう。まず、小林立という漫画家が描いた
『咲-Saki-』というマンガがあって……」
982: 2010/08/27(金) 20:46:31.32 ID:RUQzi06L0
咲「じゃあ、私はそのマンガの主人公だっていうの…?」
ゆみ「つい忘れられがちなことだが、事実だ」
咲「私が…主人公……」ポカーン
ゆみ「そのマンガは未だに継続中だ。今からこの話を原作のインターハイ編に繋げてやるから…」
ゆみ「お前はその世界で生き続けろ」
ゆみ「つい忘れられがちなことだが、事実だ」
咲「私が…主人公……」ポカーン
ゆみ「そのマンガは未だに継続中だ。今からこの話を原作のインターハイ編に繋げてやるから…」
ゆみ「お前はその世界で生き続けろ」
983: 2010/08/27(金) 20:51:43.92 ID:RUQzi06L0
ゆみ「この世界に残っていても、待っているのはバットエンドか、
ご都合主義なハッピーエンドのどちらかだ……それよりはマシな結果になるだろう」
咲「そう…なの…?」
ゆみ「私も書く側から一読者に戻るよ。お前の活躍を楽しみにしている」
咲「……うん、わかった」
ゆみ「……まあ、気が向いたらまた書くかもしれんがな」
咲「ええー」
ゆみ「そう言うなよ、神は気まぐれなんだ」
ご都合主義なハッピーエンドのどちらかだ……それよりはマシな結果になるだろう」
咲「そう…なの…?」
ゆみ「私も書く側から一読者に戻るよ。お前の活躍を楽しみにしている」
咲「……うん、わかった」
ゆみ「……まあ、気が向いたらまた書くかもしれんがな」
咲「ええー」
ゆみ「そう言うなよ、神は気まぐれなんだ」
984: 2010/08/27(金) 21:00:16.74 ID:RUQzi06L0
ゆみ「色々辛い目にあわせて悪かったな」
咲「うーん……あんま覚えてないや」
ゆみ「それがいい。ロクなことがなかったからな」
咲「そんなに酷かったの?」
ゆみ「まあな……じゃあ私はもう行く」
咲「うん、わかったよ」
ゆみ「じゃあな」
咲「うーん……あんま覚えてないや」
ゆみ「それがいい。ロクなことがなかったからな」
咲「そんなに酷かったの?」
ゆみ「まあな……じゃあ私はもう行く」
咲「うん、わかったよ」
ゆみ「じゃあな」
987: 2010/08/27(金) 21:04:18.96 ID:RUQzi06L0
8月 東京
咲(うわっ…一気に話が飛んだよ……)
久「さあ、着いたわ。ここが私たちの宿泊する施設よ」
優希「大きいじょ!」
和「…ですね」
まこ「明日に備えて、今日はゆっくり休みんしゃい」
咲(……もう、あの声は聞こえないんだ…)
咲(うわっ…一気に話が飛んだよ……)
久「さあ、着いたわ。ここが私たちの宿泊する施設よ」
優希「大きいじょ!」
和「…ですね」
まこ「明日に備えて、今日はゆっくり休みんしゃい」
咲(……もう、あの声は聞こえないんだ…)
989: 2010/08/27(金) 21:06:45.54 ID:RUQzi06L0
久「今から明日の開会式までは自由時間にしましょう。
各自ハメを外さず、疲れない程度にね」
優希「おー」
まこ「そんなんでええんか?」
久「うん、まずはここの生活に慣れないと……決勝までは長いわ…」
咲「そうだよ…」
咲(私たちの物語は、これからも続いていくんだ…)
「主人公は私だった」 完
ゴールデン咲-Saki-劇場 終
各自ハメを外さず、疲れない程度にね」
優希「おー」
まこ「そんなんでええんか?」
久「うん、まずはここの生活に慣れないと……決勝までは長いわ…」
咲「そうだよ…」
咲(私たちの物語は、これからも続いていくんだ…)
「主人公は私だった」 完
ゴールデン咲-Saki-劇場 終
990: 2010/08/27(金) 21:09:03.59 ID:WMjQNZI10
乙
よく書き切ったな。全編ハズレ無しで面白かったよ
よく書き切ったな。全編ハズレ無しで面白かったよ
991: 2010/08/27(金) 21:09:10.84 ID:RUQzi06L0
元ネタにした映画の数々
フェイス/オフ
フルメタル・ジャケット
星の王子ニューヨークへ行く
ランボーシリーズ
エクソシスト
ザ・ワン
猿の惑星シリーズ
スタンド・バイ・ミー
ゾンビ/ドーン・オブ・ザ・デッド
ターミネーター
主人公は僕だった
フェイス/オフ
フルメタル・ジャケット
星の王子ニューヨークへ行く
ランボーシリーズ
エクソシスト
ザ・ワン
猿の惑星シリーズ
スタンド・バイ・ミー
ゾンビ/ドーン・オブ・ザ・デッド
ターミネーター
主人公は僕だった
992: 2010/08/27(金) 21:10:34.19 ID:7TN3UZWZ0
乙。ここ数日の暇つぶしになった
各話の内容もさることながら、投げずにしっかり完結させたのはすごいぜ
今度俺も咲SS書く予定だから見かけたら読んでくれよな!
各話の内容もさることながら、投げずにしっかり完結させたのはすごいぜ
今度俺も咲SS書く予定だから見かけたら読んでくれよな!
994: 2010/08/27(金) 21:11:34.51 ID:Rf0ohSmc0
面白かったよ
ほんとお疲れ様でした!
ほんとお疲れ様でした!
997: 2010/08/27(金) 21:12:35.28 ID:CNylHQ1M0
ゾンビのが一番面白かったな
乙乙
乙乙
998: 2010/08/27(金) 21:13:40.41 ID:voKWNxMC0
乙!
1スレでいくつも短編読んだのは初めてだったけど面白かった
1スレでいくつも短編読んだのは初めてだったけど面白かった
999: 2010/08/27(金) 21:13:49.13 ID:sLP1JvpN0
DAWN OF THE DEADがあったのがよかった
1000: 2010/08/27(金) 21:14:15.09 ID:yY4JYWL00
すごくよかった、乙
にしても主人公は僕だったとはマニアックだな
にしても主人公は僕だったとはマニアックだな
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