1: 2010/03/17(水) 22:04:28.45 ID:GpbjZDSM0
唯「はー、やっと授業終わったよ~。
  音楽室いこーっと」

ガチャ
唯「ちょりーっす」

梓「遅かったですね、
  もう下校時刻ですよ」

唯「え?」
けいおん!Shuffle 2巻 (まんがタイムKRコミックス)
3: 2010/03/17(水) 22:07:00.76 ID:GpbjZDSM0
唯「いやいや、さっき授業終わったばっかりだよ」

梓「何言ってるんですか、
  時計見てくださいよ」

唯「……あれ、5時?
  さっきまでは3時だったのに」

澪「何を寝ぼけてるんだ」

律「明日は遅刻するなよ」

唯「???」

紬「じゃあ今日はもう帰ろうか」

梓「はい」

澪「ほら唯、いくぞー」

唯「おかしーな……」

6: 2010/03/17(水) 22:11:09.02 ID:GpbjZDSM0
翌日。

唯「ふー、授業終わったー」

律「唯、部活行こうぜ」

紬「あら、唯ちゃんは今週いっぱいは掃除当番でしょう」

律「あ、そうだっけ」

紬「今日は遅刻しないできてね」

唯「あ、うん。大丈夫だよ」

律「じゃー掃除頑張れよ」

唯「はーい……」

7: 2010/03/17(水) 22:15:24.27 ID:GpbjZDSM0
クラスメイト「あ、平沢さん」

唯「さーて、掃除しよう掃除」

ク「何言ってるの、掃除なんてもうとっくに終わったよ?」

唯「え?」

ク「掃除サボってどこ行ってたのよ」

唯「ど、どこって……ずっとここにいたけど」

ク「嘘つかないでよ、
  2時間もずっと気づかれずにここにいたっていうの?」

唯「に、2時間? まだ授業終わったとこじゃ……」

ク「はあ? 時計見てみなさいよ」

唯「ご……ご……5時……!?」

ク「はあ……嘘つくのもいい加減にしてよね」

唯「そ、そんな……」

8: 2010/03/17(水) 22:19:51.75 ID:GpbjZDSM0
唯「……」

律「あ、唯!」

澪「唯ー、部活サボるのもいいかげんにしろよ」

唯「え、ちが……」

梓「やる気あるんですか?」

紬「唯ちゃん……」

唯「いやその……」

ク「平沢さん、掃除だけじゃなく部活までサボったの?」

唯「ち、違うの! 授業が終わって、
  気づいたら5時になってたんだよ……」

澪「そんな下らない嘘ついてないで素直に謝れ」

唯「で、でもお……」

10: 2010/03/17(水) 22:28:11.92 ID:GpbjZDSM0
澪「おい、唯」

梓「唯先輩!」

唯「う……」

ク「平沢さん、子供みたいなこと言ってちゃダメよ」

律「そうだぞ、掃除や部活をサボったんだから
  素直にサボってゴメンナサイとだな……」

唯「サボってない! サボりたくてサボったわけじゃないよ!
  もういいよっ!」だだっ

澪「唯!」

紬「行っちゃった……」

12: 2010/03/17(水) 22:34:01.05 ID:GpbjZDSM0
平沢家。

憂「おかえり、お姉ちゃん」

唯「ういいいいい……」

憂「ど、どうしたのお姉ちゃん!」

唯「みんながあ……」

憂「みんなにイジメられたの!?」

唯「私の話を聞いてくれなくて……」

憂「みんなに無視されたの!?」

唯「放課後がなくなってすぐ下校時刻……」

憂「下校時刻まで居残りさせられたの!?」

唯「誰も信じてくれない……」

憂「私は信じるよお姉ちゃん!」

14: 2010/03/17(水) 22:36:00.58 ID:GpbjZDSM0
唯「ううう……ういいい……」

憂「で、何を信じてもらえないの?」

唯「あのね、6時間目の授業が終わってね、
  放課後になったらね」

憂「うん」

唯「すぐ下校時刻になっちゃうの」

憂「は?」

唯「放課後になったと思ったら、
  一瞬で下校時刻になっちゃうの!」

憂「……」

唯「あー、信じてない!
  憂も信じてくれないんだ!」

憂「そ、そんなことないよ……
  ただ話が突飛すぎて」

17: 2010/03/17(水) 22:41:02.26 ID:GpbjZDSM0
唯「でもほんとなんだよ、
  このせいで掃除当番も部活もできなくって」

憂「そ、そうなんだ」

唯「それでみんなに怒られちゃって」

憂「大変だったね」

唯「明日もこんななのかな……
  どうすればいいんだろ」

憂「うーん……放課後が一瞬で終わっちゃうのは、
  お姉ちゃんだけなんでしょ?」

唯「うん、みんなは普通に放課後を過ごしてる」

憂「じゃあ、誰かと一緒にいてみたらどうかな。
  他の人と一緒なら、時間間隔も共有できるでしょ」

唯「そっか、さすが憂は頭がいいね」

憂「えへへ」

18: 2010/03/17(水) 22:46:49.39 ID:GpbjZDSM0
翌日。

唯「ふー、授業終わった」

律「唯、今日こそ部活来いよ」

ク「今日こそ掃除当番やってよ」

唯「あ、2人とも……
  私と一緒にいてくれない?」

律「はあ?」

唯「一人でいたら、また放課後が一瞬で終わっちゃうから」

律「まだそんなこと言ってんのか」

唯「お願い……」

ク「分かったわよ、見張りも兼ねて一緒にいてあげる。
  どうせ私も掃除当番だし」

律「じゃあ私も、掃除終わった唯を部室まで
  連れて行くためにいてやるよ」

唯「ありがとう……」

21: 2010/03/17(水) 22:52:24.21 ID:GpbjZDSM0
ク「じゃあ、さっさと掃除するわよ」

唯「うん……あ」

ク「何?」

唯「手つないでもらってていい?」

ク「はあ?」

唯「な、なんか不安で……」

ク「私ら二人で手つないだら掃除しにくいでしょうが」

律「じゃあ私がつないでてやるよ、
  ほれ」

唯「ありがと、りっちゃん」ぎゅっ

律「今日は逃がさないからな」

唯「うん」

律と手をつないだことによって安心した唯。
これでもう放課後が一瞬で終わったりしない、
もし終わったとしても律と時間感覚を共有できる……そう確信した。
しかし、唯が無意識のうちにまばたきをして、
まぶたをひらいたその時。

23: 2010/03/17(水) 22:55:02.34 ID:GpbjZDSM0
律「うおっ!」

唯「え?」

澪「ゆ、唯?」

梓「いつのまに……」

唯「え? え?
  ここどこ?」

澪「どこって……昇降口だけど」

梓「今から帰るとこですよ」

唯「…………」

律「唯?」

唯「一応聞くけど、今何時?」

紬「5時よ」

唯「……」

24: 2010/03/17(水) 23:00:26.96 ID:GpbjZDSM0
梓「また部活サボって……
  今までどこにいたんです?」

唯「……ねえりっちゃん、掃除中に……
  手つないでたよね」

律「え? ああ……
  掃除をし終えるまではな」

唯「え?」

律「そんで唯がロッカーにホウキを片付けるとき……
  ちょっと目を離したら、唯がいなくなってて」

唯「……」

律「ホントに一瞬だけ目を離してたんだ、
  でもそんな一瞬のうちに
  気づかれず逃げるなんて……」

澪「な、なんだよ……
  どういうことなんだ?」

26: 2010/03/17(水) 23:07:38.55 ID:GpbjZDSM0
唯「だから、放課後が一瞬で終わっちゃうんだよ」

梓「そんなことあるわけないでしょう。
  バカなこと言わないでくださいよ」

紬「そうよ、唯ちゃん。
  逃げたなら逃げた、サボったならサボったと
  正直に言って。
  別に怒ってるわけじゃないから、ね」

唯「だ、だって……
  りっちゃんは信じてくれるよね……?」

律「うーん……
  何か普通じゃないって感じはするけど……
  よし、じゃあこうしよう。
  明日の放課後、すぐに私達のクラスに集まって、
  唯を監視していよう」

澪「か、監視って……」

唯「監視でもなんでもいいよ、
  誰でもいいから放課後は私と一緒にいてよ……
  もうこんなの怖いよ……」

29: 2010/03/17(水) 23:13:45.59 ID:GpbjZDSM0
翌日。

唯「はあ、授業終わった」

律「よし唯、私たちが見ててやるからな、
  逃げるスキもないくらいに」

唯「助かるよりっちゃん」

紬「私も一応……」

律「すぐ澪と梓も来るからな」

唯「うん」

ガラッ
澪「おーい、律」

律「お、早速来たな」

梓「上級生の教室って緊張しますね」

32: 2010/03/17(水) 23:18:53.56 ID:GpbjZDSM0
律「よし、唯を監視するぞ」

澪「じーっ……」

梓「じーっ……」

紬「じーっ……」

唯「あはは……」

ク「平沢さん、今日の掃除……って何やってんの」

唯「逃げないように監視してもらってるの」

ク「はあ……まあ、監視はいいけど
  掃除はちゃんとやってもらうからね」

唯「そりゃもちろん」

律「気をつけろよ、一瞬でも目を話すといなくなるから」

澪「じーっ……」

梓「じーっ……」

紬「じーっ……」

35: 2010/03/17(水) 23:24:31.01 ID:GpbjZDSM0
ク「……なんかこうも監視されてると
  すごくやりづらいわ」

唯「ご、ごめん……」

ク「まー別にいいわよ、
  逃げられるよりはマシだから」

唯「私も逃げたくないんだけどね」

律「じーっ……」

澪「じーっ……」

梓「じーっ……」

紬「じーっ……」

ク「……あれ?」

唯「どうしたの?」

ク「外が暗いような……」

36: 2010/03/17(水) 23:29:39.74 ID:GpbjZDSM0
唯「え……え?
  まさか……」

ク「あれ? もう5時?」

律「え?」

澪「あ、ほんとだ……もう5時だ。
  ……って」

梓「え? さっきまで確かに3時でしたよね」

紬「嘘、こんなことって……」

唯「ほらね、一瞬で放課後終わっちゃったでしょ!
  私の言うことは正しかったんだよ!」

ク「そうね、疑ってごめん……
  ってそういう問題じゃないわよ」

律「ああ、確かに唯の言うことは本当だった……
  本当だったけど」

唯「けど?」

37: 2010/03/17(水) 23:34:06.08 ID:GpbjZDSM0
澪「なんか取り返しの付かないことに
  なってしまったような気がする」

唯「うーん……
  憂は誰かと一緒にいれば、
  時間感覚を共有できるって言ってたんだけど」

紬「みんなが唯ちゃんの時間感覚に合わさっちゃったわね」

ク「なんだか気味が悪いわね」

律「ああ……」

澪「と、とりあえず今日はもう帰ろう……」

梓「そうですね……」

唯「いやー、みんなに信じてもらえて良かったよ」

澪「私はなんだかイヤな気分だ」

43: 2010/03/17(水) 23:40:54.72 ID:GpbjZDSM0
翌日。

唯「はひー、授業終わったあー」

律「私部活いくわ」

紬「私も」

唯「え? 一緒にいてくんないの?」

律「だって……なあ」

紬「昨日みたいなことになるから……」

唯「そんなあ……
  私一人だけ時の流れから取り残されろっていうの?」

律「そういうわけじゃないけど……」

唯「ひどいよ、2人とも……」

ク「平沢さーん、掃除~」

唯「はーい……」

律「…………あれ?」

45: 2010/03/17(水) 23:44:31.76 ID:GpbjZDSM0
紬「どうしたの、りっちゃん」

律「外がいきなり薄暗くなったような」

紬「ま、まさか……」

律「……5時……だと……!?」

唯「へ?」

ク「あっ、ほんと……5時……!」

ガラッ
澪「おい、唯、律、ムギ!」

梓「い、今、なにがなんだか……」

律「もしかしてお前らも……」

梓「はい、気づいたら5時になってて」

律「……」

47: 2010/03/17(水) 23:48:21.27 ID:GpbjZDSM0
紬「考えたくないんだけど、
  もしかしてこれって……
  一度体験したら、
  あとはずっと起こり続けるとか……」

ク「伝染する……ってこと?」

紬「そういうことになるわね」

唯「わーい、じゃあみんな仲間だねー!」

律「うるせー!
  しょーもない怪奇現象を移しやがって!」

澪「お、落ち着け律……
  唯が悪いわけじゃないだろ」

梓「そうですよ、怒ったって何も解決しません。
  こうなってしまった以上、私達は運命共同体、一蓮托生です」

ク「どうしてこうなった」

48: 2010/03/17(水) 23:55:29.63 ID:GpbjZDSM0
澪「どうしたら元に戻れるんだろ……」

紬「解決法を探るにはまず原因を知ることが先決よ」

梓「原因ですか……
  唯先輩、何か心当たりあります?」

唯「えー? うーん……特にないけど」

梓「部活やるのが嫌だったとか」

唯「部活はやりたいよ」

梓「早く家に帰りたかったとか」

唯「家に帰っても暇だよ」

梓「掃除サボりたかったとか」

唯「そりゃ掃除はイヤだけど
  サボっちゃいけないよ」

梓「……」

51: 2010/03/18(木) 00:01:04.67 ID:/9h52ST+0
律「うーん……」

紬「うむむむむ」

澪「……考えててもアレだしさ、
  今日はもう帰らないか?
  それで明日またみんなで集まろうよ」

律「そうだな……明日は土曜日だし」

澪「じゃあ、明日唯の家ってことでいいか?」

唯「うん、大丈夫だよ~」

ク「私も?」

律「そりゃーあんたも当事者だしな」

紬「じゃあ6人ぶん、お菓子持っていくわね……
  あ、憂ちゃんもいるか」

澪「じゃ、今日は帰るか」

54: 2010/03/18(木) 00:05:55.40 ID:/9h52ST+0
翌日。

澪「こんにちはー」

律「きたぞ唯~」

紬「お菓子持ってきたわよー」

梓「いつ見ても良い家ですね」

ク「へえ、こんなとこに住んでたんだ」

憂「いらっしゃい、軽音部の皆さん……と、
  それから……」

ク「あ、私、平沢さんのクラスメイトで、名前は……」

律「唯はどこにいるんだ?
  まだ寝てるのか?」

澪「まったく仕方ないな唯は……お邪魔しまーす」

紬「憂ちゃん、良かったらこれ……」

憂「あー、ありがとうございます」

ク「……」

59: 2010/03/18(木) 00:11:56.00 ID:/9h52ST+0
ガチャ
澪「おーい、唯ー」

唯「あー、おふぁよー」

梓「おはようじゃないですよ、もう昼ですよ」

律「散らかってんな~」

ク「足の踏み場もないわ」

唯「いやー、昨日ちょっと掃除しててさ」

澪「掃除をし終えてから寝ろよ」

唯「眠くなっちゃってね~。
  まーそのへん座って」

梓「座る場所がないですよ」

唯「じゃあベッドの上にでも腰掛けて」

紬「みんなでひとつのベッド……」

ク「?」

61: 2010/03/18(木) 00:18:05.53 ID:/9h52ST+0
澪「さて本題だ。
  どうしてこんなことになってしまったか」

紬「唯ちゃん、本当に心当たりはないの?」

唯「心当たりって言われてもな~」

ク「頭ぶつけたとか、
  変なクスリを飲まされたとか、
  宇宙人にさらわれてUFOに乗ったとか、
  神様に祈ったとか、
  夢をみたとか」

律「どんどんオカルト方向に進んでいくな」

ク「だって常識じゃ説明つかないでしょ、
  こんなこと」

律「まあそうだけど」

澪「で、何もないのか、唯」

唯「何も思いつかないよ、
  いきなりこんななっちゃったんだもん」

64: 2010/03/18(木) 00:24:42.19 ID:/9h52ST+0
律「うーん……」

梓「病院でも行きます?」

澪「精密検査してもらうか?」

梓「それが確実でしょう」

紬「そんなことで解決できるかしら」

ク「でも何もしないよりはマシだと思う」

律「よし、じゃあ今から病院にいくか」

唯「えー、病院怖いよ~」

律「何いってんだ、ほら行くぞ」

唯「えええ~……」

ガチャ
憂「お姉ちゃ……
  ってあれ、みなさん何やってるんですか?」

律「え?」

65: 2010/03/18(木) 00:28:07.38 ID:/9h52ST+0
憂「朝からベッドで……
  ……!
  あ、いやすみません、失礼しますっ!」

律「ちょっと待て憂ちゃん!
  君は今すごい誤解をしているっ!」

澪「ていうか、今……
  憂ちゃん『朝から』って言わなかったか」

ク「言ってた……」

紬「まさか」

梓「……考えたくありません」

澪「……唯」

唯「ん?」

澪「携帯を開いて今日の日付を確認してくれ」

唯「えーとね、3月15日月曜日……月曜日!?」

澪「\(^o^)/」

69: 2010/03/18(木) 00:36:44.48 ID:/9h52ST+0
唯「え、え、え? どういうこと?」

梓「放課後だけじゃなく休日まで一瞬……」

ク「そんなあ……」

紬「……あの」

律「な、なんだ」

紬「私たちは土曜と日曜がカットされてしまったわけだけど、
  そのあいだ私たちはずっとここにいたのかしら」

律「どういうことだ?」

紬「土日の48時間、私たちがずっと家を出ていたら
  親たちは不審に思うはずだわ。
  でも何の電話もメールも来ていない」

澪「確かにそうだな」

紬「憂ちゃんだってそうよ、
  私たちがずっとこの部屋にいたんなら
  それを知らないはずがないもの」

71: 2010/03/18(木) 00:42:28.85 ID:/9h52ST+0
梓「そう考えると謎ですね、
  どういうことなんでしょう」

ク「時間が飛ばされているんじゃなくて、
  記憶だけが欠落している……とか」

紬「考えられる可能性としてはそうね」

澪「記憶の欠落か」

律「そういう仕組みだったんだな、
  よくできてやがる……」

唯「あ、そろそろ学校行かなきゃ」

澪「え、今何時?」

唯「8時」

梓「ええっ!?
  今から帰って着替えてたら確実に遅刻ですよ」

澪「私もだよ、急いで帰らないと……!」

唯「朝から騒がしいね」

ク「あんたのせいよ」

74: 2010/03/18(木) 00:49:55.09 ID:/9h52ST+0
外。

和「唯~、学校行くわよ~」

ガチャ
澪「あー早く帰んなきゃ」

梓「もう遅刻決定ですよ」

律「はー、日曜まで消えるのは勿体無いな」

紬「斉藤の車でも呼ぼうかしら」

ク「家まで遠いんだよね~」

和「……」

澪「あ、和」

和「朝……唯の家から……
  大勢の女生徒がぞろぞろと……」

澪「和?」

和「不潔……」

澪「のーどーかー……」

82: 2010/03/18(木) 01:00:05.39 ID:/9h52ST+0
学校。

唯「ふわー、授業終わった」

律「よし唯、部活いくぞー」

紬「でもすぐ5時に……」

ク「……なっちゃったわね」

律「どうしたもんかね」

紬「原因もさっぱりだし……」

ク「やっぱ病院で検査とかしてもらったほうがいいのかな、
  記憶の障害なら脳を見れば分かるだろうしさ」

唯「え、脳を切り開かれるの?」

ク「そんなことしなくても、
  なんたらスキャンとかあるんじゃない?」

律「病院か~」

84: 2010/03/18(木) 01:05:57.03 ID:/9h52ST+0
唯「はーあ、ギター弾きたいなー」

律「今弾いちゃえよ」

唯「えー、もう下校時刻なのに」

律「ちょっとくらいいいだろ、な」

紬「そうね」

ク「私も平沢さんのギター聞いてみたいわ」

唯「うーん、じゃあちょっとだけ……
  よいしょっと」

律「唯のギタリスト姿を見るのも久々だな」

唯「じゃあいきまーす、
  わんつーさんしー」

ギュイギュギュジャジャンジャ
ジャラララジャジャジャギュギュギュイーン

律「……」

86: 2010/03/18(木) 01:10:13.18 ID:/9h52ST+0
唯「ふう……どうだった?」

律「どう、って……」

紬「……」

ク「すごいわ、平沢さん!
  こんなに上手いなんて知らなかった!」

唯「えー、そうかな?」

ク「そうよ、プロ並みじゃない?
  ねえ、そうでしょ!」

律「ああ、まさかこんなに上達してたなんて……」

紬「いつのまに練習してたの?」

唯「別に練習なんてしてないけど、
  今弾いたら弾けちゃった」

律「嘘つけ、ぜったい秘密の練習してただろ」

唯「してないよ~」

89: 2010/03/18(木) 01:17:42.85 ID:/9h52ST+0
律「……まさか」

紬「……多分同じことを考えてるわ」

ク「え、なに?」

紬「唯ちゃんは記憶がない間に、猛練習をしていた……」

唯「ええっ!?」

律「というか、この記憶の欠落が
  唯に練習させるためのものだったりして」

紬「そうね、これはきっと催眠のようなものだわ。
  放課後、唯ちゃんは一人で猛練習をする、
  そしてそれが終わるとその記憶をなくす」

律「その結果、唯は知らないうちに上達した……か」

ク「平沢さんが練習していることを知られないように、
  私たちにも伝染するようになってたのね」

唯「へえ、そうだったんだ」

90: 2010/03/18(木) 01:22:33.71 ID:/9h52ST+0
紬「まあまだ仮説なんだけどね」

律「そうだ、私たちも上手くなってたりするんじゃないか?」

紬「ありえるわね」

律「ちょっと音楽室寄ってこうぜ」

唯「えー、もう下校時刻だよ?」

律「気にするな、行くぞ」

ク「あ、私も行っていい?」

律「おう、あんたも当事者だからな」

紬「みんなで行きましょう」

92: 2010/03/18(木) 01:28:38.03 ID:/9h52ST+0
音楽室。

律「おや、ベースとギターの音が……」

澪「あ、律! 聞いてくれ、今弾いてみたら……」

梓「なぜかプロ並みの演奏になってたんですよ!」

紬「へえ、澪ちゃんたちも」

唯「じゃありっちゃんとムギちゃんもなんか弾いてみてよ!」

律「よし、やるぜ!」

どこどこどこどんどこちゃちゃどん

紬「ええ」

たらりらりらららたらりらたりらりらん

澪「おお、ムギすごい!」

ク「田井中さんはあんまりね……」

梓「元がダメですから」

94: 2010/03/18(木) 01:33:35.17 ID:/9h52ST+0
澪「しかし、上手くなったのはうれしいけど
  謎が深まったな」

梓「そうですね……
  でも、これをやった目的は
  『軽音部のレベルを向上させるため』……
  で間違いないでしょう」

澪「だな」

紬「問題は、なぜこんなことが起こったか」

ク「原因は……平沢さん?」

唯「え、私?」

ク「平沢さんが自分に催眠をかけたとか……」

唯「そんな、催眠術なんてできないよ」

律「唯じゃないなら……」

さわ子「そう、私よ」

澪「!」

96: 2010/03/18(木) 01:41:50.11 ID:/9h52ST+0
律「あんたかよ」

さわ子「ごめんなさい……
     あなたたちが上達しないのがもどかしくて、
     ついやってしまったわ」

紬「練習しろって、言ってくだされば良かったのに」

さわ子「練習は充分にやっていると思うわ……
     でも人並みの練習だけでは
     超えられない一線というものが存在する」

唯「超えられない一線……?」

さわ子「学生時代、私はそれを超えられなかった。
     でもその一線さえ超えれば……
     どこまでもどこまでも飛躍していける……
     あなたたちには、私には届かなかった高みまで、
     突き抜けていってほしかったの」

梓「先生……」

さわ子「でも、こんなやり方は間違っていたわ」

97: 2010/03/18(木) 01:45:31.60 ID:/9h52ST+0
律「そんなことないよ!
  私たちのためを思ってやってくれたんなら、
  それが間違いなんてあるはずがない!」

さわ子「りっちゃん……」

律「練習しないで上手くなれたし!」

澪「そっちが本心か」

梓「ていうか上手くなってませんし」

紬「そうだ、欠落した記憶は蘇らないんですか?」

さわ子「蘇るわよ。私の目を見て」

唯「じーっ……」

さわ子「キエー!」

唯「!!!!!」

澪「こ、これは……」

98: 2010/03/18(木) 01:47:54.48 ID:/9h52ST+0
梓「頭が……割れそう!」

紬「く……こんな……」

律「うおおお……!」

ク「先生、これは……!?」

さわ子「ふっ、自分の限界を超えるための努力……
     それは生易しいものではないということよ」

ク「そんな……」

さわ子「そうだわ、あなたも楽器ができるようになってるわよ」

ク「え、そうなんですか?
  何の楽器ですか?」

さわ子「ユーフォニウムよ」

ク「……」

104: 2010/03/18(木) 01:58:11.27 ID:/9h52ST+0
みなさん、こんにちは。
あのあと私は軽音楽部に入りました。
楽器はもちろんユーフォニウム。
バンドの音にはあわないんじゃないかと思っていましたけど、
これがまた意外に相性がいいんです。

自分の限界を超えた軽音楽部の5人は
どんどん上達していき、
今ではもう世界のどんなバンドをも超越するレベルにまで達しました。
世界中のCD会社からスカウトが来ていたり、
いろんなマスコミが私たちのことを「人類史上最高のバンド」ともてはやしたり、
ネットで私たちの演奏を盗撮した動画が1週間で10億回再生を突破したりしましたが
私たちはまだ桜高の音楽室でゆる~りとバンドをやっています。
今はプロデビューよりも、こっちのほうが楽しいのです。

一度だけライブハウスでライブをやりました。
そのときはすごい騒ぎになって、
世界中のミュージシャンや音楽業界の関係者がやってきて
小さなライブ会場がすぐに埋め尽くされ、
会場の外にまで人が溢れ出していました。
そして私たちの演奏が始まると、
客席にいたミュージシャンたちは泣き出し、土下座し、発狂し、
業界人たちは私たちを確保しようとステージに上がってくるので
まともに演奏ができませんでした。
それ以来、ライブハウスには行っていません。

108: 2010/03/18(木) 02:07:07.24 ID:/9h52ST+0
世界の音楽界は崩壊しました。
すべての作曲家が、演奏家が、歌手が、
私たちの前に跪いたのです。
CDも楽器もまったく売れなくなり、
世の人々は私たちの動画を
何度も何度も再生しているそうです。

私たちに国民栄誉賞をくれるとか
ノーベル平和賞を授けるとかいう話もありましたが、
それらはすべて断りました。
賞などもらっても意味がありません。
私たちの音楽は、賞状に変えられるものではないのです。

今日はこれから新入生歓迎会です。
私たちが世に出たのがあと3ヶ月ほど早ければ、
今年の桜高の受験はものすごいことになっていたでしょう。
そういう意味では、今年の新入生は幸せです。
たまたま入った高校に、私たちがいて、
私たちの演奏を生で聞くことができるのですから。

私たち6人は、今、講堂の舞台の上に立っています。

110: 2010/03/18(木) 02:13:51.91 ID:/9h52ST+0
講堂の中には、新入生や教師の他に、
偉い人たちがたくさん押し寄せていました。
天皇だとか大統領だとか法王だとか、
そういった人たちが来ていると聞きましたが、
私たちは人の肩書きなんかに興味はありません。
音楽の前には、人は平等なのです。

講堂の外では数百万人の人々が詰め寄せ、
その混乱を抑えるために自衛隊が出動していました。
しかしその自衛隊も、私たちの演奏が始まれば
なんの意味も持たなくなるでしょう。

講堂にはテレビ局のカメラも入っていました。
私たちのライブは世界中に生中継されるのです。
最初、私たちはそれを嫌がりましたが、
平沢さんの友人である真鍋さんにどうしてもと頼まれて、
承諾することになりました。

今、世界中の人々が、
テレビの前に座っていることでしょう。
男性も女性も、大人も子供も老人も、
白人も黒人も、善人も犯罪者も、
富を持て余している国の人々も、
戦争をして飢えに苦しんでいる国の人々も、
私たちの演奏を今か今かと待ち構えていることでしょう。

113: 2010/03/18(木) 02:23:15.72 ID:/9h52ST+0
平沢さんが、喋り始めました。

唯「あー、テステス……
  みなさん、ご入学おめでとうございます」

その言葉は一字一句余すことなく
全人類の脳髄に染み渡っていきました。
今日の平沢さんの発言は全て
世界最高の名言として歴史に残るでしょう。

講堂の後ろのほうで、天皇が泣いているのが見えました。
法王が跪いて祈りを捧げているのが見えました。
大統領が腰を抜かして泡を吹いていました。
先程も言ったように、肩書きなど意味がないのです。
あの惨めで美しい姿は、まさに人間そのものです。

平沢さんが喋り始めた瞬間、
講堂の外の騒動が収まりました。
もはや騒いでいる余裕などないのでしょう、
騒いでいれば平沢さんの言葉を聞き逃してしまいますから。

テレビ局の人も、
もはや撮影のことは忘れているようでした。
ただこの歴史的瞬間を、
視聴者と同じ立場で眺めていました。

116: 2010/03/18(木) 02:24:49.00 ID:UMJHyYOC0
大統領ww

117: 2010/03/18(木) 02:24:59.78 ID:AN7M3PmXP
超展開過ぎて感動した

118: 2010/03/18(木) 02:30:11.09 ID:/9h52ST+0
歴史的瞬間。
まさにこのライブは、
人類のターニングポイントとなり得るでしょう。
それと同時に、私たちはただのガールズバンドでは
いられなくなってしまいます。
全人類の希望の象徴、到達すべき理想、
新たなる思想を生み出す存在……
そう、神。
私たちは、このライブを機に神になるのです。
もう少しだけ、女子高生としてバンドをやっていたかった気もしますが、
こうなってしまった以上は仕方のないことです。
おとなしく、運命を受け入れるのも悪くはありません。

平沢さんはしゃべり続けました。

唯「私、軽音楽部って軽~い音楽だと思ってたんですよ~」

その瞬間、講堂が爆笑の渦に包まれました。
いや、講堂だけではなく、世界中の人々が
腹を抱えて大笑いしていることでしょう。
それほどまでに平沢さんのこのギャグは
前衛的で、革命的で、人類の笑いのツボを
これでもかとばかりに刺激したのです。
平沢さんは、お笑いの歴史までもを塗り替えてしまったのです。

笑いが収まったのは3時間後でした。

122: 2010/03/18(木) 02:41:24.37 ID:/9h52ST+0
笑い氏んだ生徒たちが運び出されるのを待って、
平沢さんは話し始めました。

唯「私もそんな感じで入部したので、
  みなさんも気軽に軽音部に来て下さい」

平沢さんは気づいていないけれど、
今更そんなことを言っても意味はありません。
なぜならば、実質この学校にはもう軽音部しかないのだから。
私たちがこの学校で初めて演奏をした時から、
すべての部活は活動をやめてしまったのです。
文化部も、運動部も、やっているのが馬鹿らしくなったそうです。
私たちという『ホンモノ』の前に、
自分たちの存在が敵わない、意味が無いと悟ったのでしょう。
まことに愚かなことです。
立ち向かいもせず、諦めるなど……。

唯「じゃあ、最初の曲、いきます」

世界中に緊張が走りました。
ついに今から、
私たちの曲が、
世界中に流されるのです。

123: 2010/03/18(木) 02:47:38.46 ID:/9h52ST+0
あたりは静まり返りました。
誰も微動だにしませんでした。
すべての視線は私たちに向けられていました。
私たちが音をだすのを、
世界中が待っていました。

かつて人類がここまでひとつになれたことがあったでしょうか。
いや、ありはしませんでした。
人は国境や宗教や人種といった壁によって分けられ、
生まれた時からバラバラになることを
余儀なくされていたのです。
しかし今。
人々を隔てる壁は取り払われています。
すべての国の人種が、あらゆる宗教の信者が、
私たちの前にひとつになったのです。

私たちはそれを肌で感じました。
そして、演奏を始めました。

律「ワン・ツー・スリー・フォー」

ジャンジャンジャンジャジャンジャジャジャジャンジャジャーン

126: 2010/03/18(木) 03:02:20.61 ID:/9h52ST+0
私たちが音を出した瞬間、
講堂にいる大半の生徒が白目をむいて卒倒しました。
残りの生徒は体中のすべての水分を出しきってしまうほど
滝のような涙を流して泣きはじめました。

唯「ふでぺんふっふー♪ ふるえるふっふー♪」

教師たちは性的絶頂に達し、
天皇も法王も大統領も喘ぎ這いずり悶絶し、
テレビ局の人々は狂ったように感謝の言葉を吐き続け、
自衛隊員は持っていた武器を叩き壊し、
講堂の外に押し寄せていた数百万の人々は
いっせいにその場にひれ伏しました。

唯「はじめてきみへのグリーティングカード♪」

世界中の人々は、遺跡や文化遺産を破壊しました。
哲学書や思想書などはすべて燃やされました。
マリア像も仏像も木っ端微塵に壊されました。
核保有国の政府は、自らの国の首都に
核兵器を打ち込みました。
おおくの人々が私たちの歌を聞きながら氏にました。

世界が崩壊して行きました。
でもそれでいいのです。
崩壊は新たなる創造に必要なものです。

128: 2010/03/18(木) 03:13:42.69 ID:/9h52ST+0
唯「ときめきパッション♪ あふれてアクション♪」

私たちの歌に、自然までもが呼応していました。
世界中で大地震と大津波が起こりました。
雷と豪雨が世界中に降り注ぎました。
大洪水は陸上にあるものすべてを洗い流しました。
自然は、うちに秘めたすべてのエネルギーを放出しました。
ですがそんなエネルギーはすぐに底をついたのでした。
私たちの歌には、自然でも対応しきれないのです。

人々は泣きながら吐きながら狂いながら
悶えながら氏にながら私たちの歌を聴いていました。
私たちの歌は人々の中にある
思想や意識や価値観をことごとく破壊していきました。
もはや今までの人類の時代は古いものとなっていました。
人類は今、歴史が変わる真っ只中にいました。

私たちは演奏を続けました。
今の私たちは神でした。
世界を壊し、
創造する……
あらゆる思想も文化も制度も
私たちが歌っているうちに
壊され、そして生み出されて行くのです。

130: 2010/03/18(木) 03:17:02.30 ID:pyobO+Va0
このスケール・・・まさにロックだぜ

132: 2010/03/18(木) 03:21:42.05 ID:/9h52ST+0
神が創る、
新たな歴史。
神が生む、
新たな文化。
人類は、
神の下に
変わっていく。
もはや世界には何もない。
あるのはただ、
人類と、神と、そして音楽だけ。
それ以外のものは唾棄すべき前時代の遺物。
ゼロへの回帰。
人の本質へと、
人類はやっとたどり着いた。
神の音楽が、
本当の人を呼び覚ました。
それ以上に、
何を望むことがあろうか。
人はここから、
また歴史を紡いでいく。
私たちは役目を終えた。
これからの神は畏怖と畏敬の対象として、
人類を見守ることにしよう。


      お    わ     り
 
 

133: 2010/03/18(木) 03:22:31.03 ID:/9h52ST+0
あっ、ナレーションが敬語じゃなくなってる……
せっかくカッコつけて締めくくったのに

134: 2010/03/18(木) 03:23:10.21 ID:Z/A5Uc8W0
乙ー。

135: 2010/03/18(木) 03:23:13.11 ID:/9h52ST+0
神が創る、
新たな歴史。
神が生む、
新たな文化。
人類は、
神の下に
変わっていくのです。
もはや世界には何もありません。
あるのはただ、
人類と、神と、そして音楽だけ。
それ以外のものは唾棄すべき前時代の遺物。
ゼロへの回帰。
人の本質へと、
人類はやっとたどり着きました。
神の音楽が、
本当の人を呼び覚ましました。
それ以上に、
何を望むことがありましょうか。
人はここから、
また歴史を紡いでいきます。
私たちは役目を終えました。
これからの神は畏怖と畏敬の対象として、
人類を見守ることにしましょう。


      お    わ     り
 
 

136: 2010/03/18(木) 03:23:55.57 ID:/9h52ST+0
これでおしまい

どうしてこうなった

139: 2010/03/18(木) 03:45:49.24 ID:RHYLgIAG0
後半ワロタww
乙!

144: 2010/03/18(木) 10:26:06.04 ID:GX3/Ffp80
どうしてこうなった
だが乙

152: 2010/03/18(木) 15:04:15.79 ID:/9h52ST+0
早く落とせ

引用元: 唯「授業中の一時間がなんで放課後じゃ一瞬♪」