12: 2015/05/14(木) 22:42:07.17 ID:f5t2O04/.net
真姫「……」

希「ど、どうしたん真姫ちゃん、この世の終わりみたいな顔してるけど」

真姫「別に……」

希「いやいや絶対になんかあったやん、目の隈すごいしやつれすぎ」

真姫「……」

希「ウチで良かったら相談して? 何か力になれるかもしれんし」

真姫「なれるわけないわよ……こんなこと……」

希「もー、いいから話してよ。何あったん?」

真姫「……女同士なんて気持ち悪い、あり得ないって」

希「へ?」

真姫「にこちゃんが」

希「あー……」

15: 2015/05/14(木) 22:50:41.14 ID:f5t2O04/.net
希「照れ隠しかもしれんやん?」

真姫「そんなわけない……」

希「ほら、にこっちアイドル本気で目指してるし、そういうところは徹底してるんよ」

真姫「本心とは違うことをわざわざ私たちの前で言う訳ないでしょ……」

希「それは……そうかもやけど……」

真姫「本当、最悪よ……」

真姫「やっとこの気持ちに気付いて……ゆっくり伝えて行こうと思ったのに……」

真姫「告白する前から失恋だなんて……」

希「真姫ちゃん……」

真姫「こんな気持ちになるくらいなら……あの人のことを好きになんてなりたくなかった……」

真姫「男の子に生まれて、にこちゃんと出会いたかった……」

20: 2015/05/14(木) 23:06:15.12 ID:f5t2O04/.net
希「……それ、本気なん?」

真姫「え……?」

希「もし仮に男の子になれるとしたら……真姫ちゃんは男の子になる?」

真姫「……何か方法を知ってるの?」

希「ウチも言い伝えくらいしか知らんけどな、中国に呪泉郷っていう場所があってな」

希「そこにある泉に入れば……男の子になれるらしいやん」

真姫「……嘘でしょ」

希「あくまで言い伝えやん」

真姫「……」

希「でも地元だと結構有名な話らしくて、観光名所になってるくらいらしいで?」

希「真姫ちゃんが本気なら……調べてみる価値くらいはあるかもね」

真姫「呪泉郷……」

希「まあ高校生が中国にだなんて、そう簡単には行けるわけないけど……」

真姫「……」

希(あ、そういえば真姫ちゃんってすごいお金持ちで……)

真姫「部活」

希「へ?」



真姫「部活、一週間ほど休むから、みんなに伝えておいて」

28: 2015/05/14(木) 23:24:23.48 ID:f5t2O04/.net
   
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

希(あの日から今日で一週間かぁ……)

穂乃果「真姫ちゃん今日帰って来るんだよね? お土産楽しみだなー」

凛「凛も中国旅行行きたかったにゃー」

花陽「家族旅行に付いて行くのは流石に……」

絵里「でも驚いたわよね、中国旅行だなんて話全然聞かされてなかったし」

にこ「どうせセレブの思いつきでしょ。やることが派手で羨ましいわ」

海未「何はともあれ、真姫には休んだ一週間分の練習を頑張ってもらわないといけません」

海未「今日は普段より厳しめのメニューで練習をしますので、そのつもりでいてくださいね」

希(真姫ちゃん本当に男の子になったんかな……)

希(この一週間連絡取れんかったし、大事になってなかったらええけど……)


ブーブー


希(メール?)

希(って真姫ちゃん……)


真姫『話がしたいから、体育館裏まで来て』

真姫『みんなには内緒で』


希「……」

30: 2015/05/14(木) 23:34:57.27 ID:f5t2O04/.net
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

希(人通りの少ない体育館裏……)

希(そんな目立たない場所にウチを一人だけ呼び出した理由って……)

希(も、もしかして……本当に……)

希(男の子になって……)


 「希」


希「ひゃあ」

希「って、真姫ちゃん……」

真姫「久しぶりね」

希(女の子のままの、いつもの真姫ちゃんや……)

希「って……」

希(あれ? なんで真姫ちゃん制服着てないんやろ……)

希(なんでそんな男の子みたいな服来て……)


希「…………」


真姫「……私の服のこと、考えてるんでしょ」

希「真姫ちゃん……もしかして、本当に……?」

真姫「希には色々協力して欲しいから……だから、このことについても知っていて欲しいの」

32: 2015/05/14(木) 23:45:00.02 ID:f5t2O04/.net
希「このこと……?」

真姫「説明するより見た方が早いわ」

真姫「希、このバケツの水を私にかけて」

希「え……?」

真姫「変なことを言っている自覚はあるわ」

真姫「でも今は黙って私の言うことをきいて」

希「……」

希(真姫ちゃんの考えてることは何もわからんけど……)

希「いくで?」

真姫「頭に思いっきりかけてね」

希「……えいっ!」


 バシャア !!


希(頭から水を被った真姫ちゃん)

希(ゆっくりと顔を上げると……)


真姫?「……」


希(そこには真姫ちゃんとそっくりなイケメンがいました)

37: 2015/05/14(木) 23:53:30.71 ID:f5t2O04/.net
希「ま、真姫、ちゃん……?」

真姫「ええ、そうよ。私は真姫」

希(声、全然違う……)

希「ほ、本当に真姫ちゃん……? さっきの一瞬で別人と入れ替わったとか……」

真姫「そんなことあるわけないでしょ……だからわざわざ水をかけて貰ったのに……」

希「……」

真姫「……」

希「さ、触ってええ?」

真姫「どこを!?」

希「いや、その……胸のあたりとか……」

真姫「別にいいけど……」

希「うわわ、真姫ちゃんのナイスバディがなくなってる……」ペタペタ

真姫「あったら困るわよ……」

希「それになんか身体もガッシリしてて……」ニギニギ

希「うわぁ……うわぁ……」

真姫「も、もういいでしょ。これで分かったでしょ」

希「いや、まだ一番大事な部分が……」

真姫「そこはいいから!!」

39: 2015/05/15(金) 00:00:59.78 ID:iPr0Qdw7.net
希「まさか、本当に男の子になって帰って来るなんて……」

希「いや正確には男の子になれるようになって帰って来て、やけど……」

真姫「水を被ると男になる」

真姫「それが今の私の体質よ」

希「女の子には戻れるん?」

真姫「ええ、お湯を被ると女になるわ」

希「それはまたふざけた体質やね……」

真姫「女に戻れるだけありがたいわ。泉に飛び込んだときは一生男のままを覚悟してたから」

希「しかし本当にこんなことがあるんやなぁ……事実は小説よりも奇なり、やね」

43: 2015/05/15(金) 00:13:07.51 ID:iPr0Qdw7.net
希「でも良かったやん、願いが叶って」

真姫「希のおかげよ。だから、真っ先にお礼が言いたくて」

希「お礼だなんてそんな……」

真姫「本当にありがとう、希」

真姫「貴女が呪泉郷の存在を教えてくれたから、私、男になれるようになって……」

希「いや、90%真姫ちゃんの行動力のおかげや思うから、お礼なんて言わんとって?」

希「それこそ中国行かせるだけ行かせてなんも無かったら、それこそ謝りきれんかったと思うし……」

真姫「私がいない間、みんなの様子はどうだった?」

希「みんな寂しがってたで? 特に凛ちゃんと花陽ちゃんは」

真姫「あの2人からは中国にいる間もいっぱいラインが来たわ」

希「そうなんや、にこっちからは?」

真姫「……部活サボるんじゃないわよ、って。それだけ」

希「ふふ、にこっちらしいね」

希「でも、にこっち結構ぼーっとしてること多かったから、真姫ちゃんのこと考えてたんかも」

真姫「そ、そう……」

希「もしかしたら男の子になる必要なかったかもやね」クス

47: 2015/05/15(金) 00:36:20.97 ID:iPr0Qdw7.net
真姫「万が一、女のままでにこちゃんと通じ合えたとしても……そこに未来なんてないわ」

真姫「そんな関係は偽物で、いつか終わりが来る」

真姫「私はそんなごっこ遊びじゃなくて……本物が欲しいの」

希「……女の子同士は本物じゃない、そういうこと?」

真姫「ええ、そうよ」

真姫「本物じゃないわ、そんな関係」

希「……」

真姫「だから、本当に嬉しいの……男になれて、やっとにこちゃんと恋愛が出来るようになって……」

希「まるでもうにこっちは自分のもの、みたいな良い草やね」

真姫「え?」

希「いくら今の真姫ちゃんがイケメンで細マッチョで高身長でも……にこっち落とすんはそう簡単やないと思うよー?」

真姫「……どういうこと?」

希「知っての通り、にこっちはアイドル本気で目指してるから男の子との恋愛なんて御法度や思ってるやろうし」

希「それに何より……いや、これ以上はやめとくわ」

希「今の真姫ちゃんに言ってもあんまりピンと来ないだろうしね」

真姫「……意味分かんない」

希「男になっても面影たっぷりやね。面白いわ」

54: 2015/05/15(金) 00:54:51.51 ID:iPr0Qdw7.net
真姫「……」

希「その不機嫌な時にするムスっとした表情も……ふふ、にこっちならあっさり気付くかもやね」

真姫「そ、そんなわけないわよ……たぶん……」

希「まあええやん。とりあえずにこっちに会ってみたら?」

希「こんなイケメンに言い寄られたにこっちがどんな反応するかは気になるし♪」

真姫(悪い顔してるわね……)

希「ってことで早速部室行ってみんなにお披露目や!」

真姫「ま、待って! それはダメ!」

希「え、なんで?」

真姫「今の私が西木野真姫だってバレたら意味ないでしょ!?」

希(あー、そっか。真姫ちゃん的には女の子が男の子になれるようになっても元が女の子だからダメ、ってことなんや)

希「えっと、じゃあまったくの別人としてにこっちにアプローチかけるってこと?」

真姫「当たり前でしょ」

希(そっちの方が遠回りな気するし絶対バレると思うけど……)

希(面白そうやから言わんとこ)

希「じゃあ自分のプロフィールくらいは考えとかんとなー。名前とか通ってる高校とか」

真姫「確かに……訊かれた時に答えられないと絶対に怪しまれる……」

57: 2015/05/15(金) 01:09:41.41 ID:iPr0Qdw7.net
希「それと口調やね。その声と姿でそんな喋り方やとオネエみたいやよ?」

真姫「うっ……確かに……」

希「オネエキャラでにこっちに言い寄ってみるとかアリかもやね」クス

真姫「無しに決まってるでしょ!?」

希「なら喋り方も矯正せんとなー」

真姫「プロフィール……喋り方……」

希「まず名前やな……真姫ちゃんが男やからでマキオでいこか」

真姫「ま、マキオって……安直すぎない? もっと面影無い名前の方が……」

希「全然面影無い名前やと呼ばれた時にスルーしてまうやん」

真姫「確かに……」

希「ってことで男の真姫ちゃんは東野マキオね」

マキオ「ひ、ひがしのマキオ……」

希「高校は……裏取られると面倒やから中卒設定でいこか」

マキオ「中卒なんてダメよ!? 中卒の男なんてにこちゃんが振り向くわけないわ!」

希「喋り方。今から気を付けて行った方がええで~?」

マキオ「うっ……」

60: 2015/05/15(金) 01:27:24.06 ID:iPr0Qdw7.net
希「ミュージシャン志望だから高校には行ってないってことにしよか」

希「親がお金持ちやから今は好きなことしろ、っていう教育方針ってことで」

マキオ「中卒でミュージシャン志望とかクズじゃない……じゃなくて、く、クズだろ……」

マキオ「それにお金持ちの子供でそんなことしてるヤツとかにこちゃんがいかにも毛嫌いしそうなタイプだし……」

希「分からんでー? にこっち、将来は売れない自称ミュージシャンのヒモになってそうな感じするやん」

マキオ「しないわよ失礼ね!」

希「あはは、でもにこっちは手のかかる子というか、自分がいなくちゃダメ、みたいな子の方が好きになると思うんや」

マキオ「それは確かに……」

希「だからマキオも完璧超人よりかはちょっと隙がある設定のが受けええと思うよ?」

マキオ「で、でも中卒ミュージシャン志望は流石に……てか絶対にダメ! 」

マキオ「将来結婚するのよ!? そんなアホな設定だと結婚なんて許してくれるわけないわ!」

希「あはは、結婚するつもりなんやね……」

マキオ「当たり前でしょ!」

67: 2015/05/15(金) 01:48:18.90 ID:iPr0Qdw7.net
希「それじゃあ親御さん受けも狙って医者志望でええんやない? 高校は不詳で」

マキオ「それが一番ね……」

希「口調、また素が出てるよー?」

マキオ「うっ……」

希「初対面の印象は大事やから、真姫ちゃんの喋り方してしまったらその時点でアウトかもやん?」

マキオ「……」

希「あんまり喋らんで済む無口キャラでいくのも1つの手やね」

マキオ「無口キャラ……」

希「まあその辺は真姫ちゃんの頑張り次第やね」

希「あと考えとかなアカンのは……出会いのシチュエーションくらいかな?」

マキオ(出会いのシチュエーション……)

希「少女漫画みたいな出会いがあればにこっち一目惚れしてしまうかもやし」

マキオ「どんなシチュエーションがいいと思う?」

希「そうやなぁ……不良に絡まれてるとこ助けるとか?」

マキオ「この辺りで不良なんて見たことない、ぞ……」

希「この街めちゃくちゃ治安ええもんなぁ」

希「にこっちがときめくような出会いか……うーん……」

希「……真姫ちゃん、今日の天気予報見た?」

マキオ「夕方から雨、だろ」



希「ってことでその雨を活かした作戦にしよっか」

71: 2015/05/15(金) 02:17:56.73 ID:iPr0Qdw7.net
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

絵里「真姫、今日は結局来なかったわね」

希「そうやね。まあ旅行帰りってのもあるし、疲れてたんちゃうかな」

絵里「……ねえ希」

希「?」

絵里「今日、20分くらい席を外していた時があったけど……何をしていたの?」

希「真姫ちゃんと話してたんよ?」

絵里「真姫と?」

希「ちょっと相談に乗っててね」

絵里「……そう」


にこ「待たせたわね」


希「鍵の返却、いつもありがとうね」

にこ「何よ急に。いつものことでしょ」

絵里「雨脚が強くなる前に早く帰りましょうか」

74: 2015/05/15(金) 02:31:45.10 ID:iPr0Qdw7.net
 ブーブー


にこ(メール? ラインじゃないなんて珍しいわね、誰からで……)


真姫『まだ学校にいる?』


にこ(……真姫ちゃん?)

絵里「どうしたのにこ? 帰らないの?」

にこ「いや、帰りたいんだけど……真姫ちゃんからまだ学校にいるのか、ってメールが来て……」

絵里「真姫から?」

希「なんの用事なんやろうね」

にこ(てかなんでラインじゃなくてメールで……)ピッピッピ


にこ『いるけど何か用事? 今帰るところなんだけど』


絵里「少し待ちましょうか。真姫からの用事があるみたいだし」

希「そうやね」

にこ「別に待たなくていいわよ、先に帰ってて」

絵里「でも……」

にこ「気遣わなくていいから。真姫ちゃんの用事、時間かかるかもだから」

76: 2015/05/15(金) 02:45:57.46 ID:iPr0Qdw7.net
希「にこっちもそう言ってるし、先帰ろか」

絵里「大丈夫なのにこ? 雨、結構強いけど一人で帰れる?」

にこ「大丈夫よ。もし帰れそうになかったら真姫ちゃんに迎えに来させるから」

希「ふふ、それはいいかもやね」

絵里「そう……なら心配ないわね」

にこ「雨降ってるくらいで大袈裟よ」

希「じゃあねにこっち、また明日ー」

絵里「何か困ったことがあったら電話してね」

にこ「はいはい、ありがとうね。アンタたちも気を付けて帰りなさいよ」



にこ(それにしても一体何の用かしら……)

にこ(学校にいるかどうかを訊かれたってことは、何か取って来て欲しいものでもあったり?)

にこ「……メールの返信来ないし」

にこ「ったくどういうつもりよ、待たされる身にもなりなさいよね……」

79: 2015/05/15(金) 03:02:24.81 ID:iPr0Qdw7.net
     
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
   
にこ(遅い)

にこ(どういうことよ、希たちと分かれてからもう10分くらい時間経ってるんですけど)

にこ(自分からメールしといて返信しないとかマジで意味不明だし)

にこ「って私もアホね……何を呑気に真姫ちゃんから返信来るの待ってるのよ……」

にこ「電話すればいいだけじゃない……はぁ……」


 prr…


真姫『もしもし』

にこ『さっきからずっとメールの返信待ってるんだけど!』

真姫『返信? メールの返信なんて来てないけど……』

にこ『えっ?』

真姫『それより、にこちゃんまだ学校にいるの?』

にこ『いるわよ。アンタが意味深なメールするからずっと待ってあげてたんでしょ』

真姫『ごめんなさい……雨降ってるのに……』

にこ『もう、いいわよ。メールのトラブルなら仕方がないわ』

にこ『で、用事ってなに?』

83: 2015/05/15(金) 03:22:31.60 ID:iPr0Qdw7.net
真姫『さっき学校の近くにいたから、一緒に帰れたら、って思っただけよ』

にこ『えっと……それだけ?』

真姫『そうだけど』

にこ『はぁ……深読みした私がアホだったわ……』

にこ『まさかそれだけなんて……』

にこ『てか近くまで来たなら部室に顔出すくらいしなさいよ』

にこ『何日部活サボってると思ってるわけ?』

真姫『制服着てなかったから、学校には入りづらくかったのよ……』

真姫『部活を休んだのは、ごめんなさい。旅行帰りで疲れてて……』

にこ『……とにかく、明日は絶対に学校来なさいよ。分かった?』

真姫『分かった』

にこ『私もう帰るから。こんなことあったんだし、次から連絡するときはラインか電話でしなさいよ』

真姫『待って』

にこ『なに?』

真姫『今、かなり雨強いけど……大丈夫?』

84: 2015/05/15(金) 03:38:07.45 ID:iPr0Qdw7.net
にこ『……大丈夫じゃなかったらどうするのよ』

真姫『迎えに行くわ』

にこ『いいわよそんなの。旅行帰りで疲れてるんでしょ? ゆっくりしてなさい』

真姫『でも』

にこ『いいから。迎えになんか来たって私もう帰ってるからね』

真姫『知り合いが近くにいるの』

にこ『知り合い?』

真姫『私の従兄弟。3分もしないでそっちに迎えるらしいから、待ってて』

にこ『真姫ちゃん従姉妹なんて居たんだ……ってそれは置いといて、余計なことしなくていいから』

にこ『雨降ってたって一人で帰れるわよ。絵里もそうだけど、アンタたち私を小学生か何かと勘違いして……』

真姫『傘、あるの?』

にこ『あるに決まって……』

にこ(え、嘘……さっきまでここに置いてたのに……なんで……)

真姫『……どうせそんなことだと思ったわ』

真姫『とにかく、そこで待ってて。今から迎えに行かせるから』

にこ『か、傘あったわ! だから大丈』

真姫『待たせた上に風邪なんて引かれたら私が困るの』

真姫『お願いだから言うこと聞いて』

にこ『……分かったわよ』

87: 2015/05/15(金) 03:54:31.58 ID:iPr0Qdw7.net
真姫『どこにいるの?』

にこ『3年の下足室よ』

真姫『……すぐに行かせるから待っててね』



にこ「……」

にこ「行かせるって、従兄弟の人3年の下足室の場所なんて分からないんじゃ……」

にこ「……はぁ」

にこ(もうどうでもいいわ……散々待ったんだし、今さら何分待とうが同じでしょ)

にこ(傘が無くなった時点で一人でも帰れないし……)


 ザァァァァ…


にこ(にしてもすごい雨ね……みんなちゃんと帰れたかしら……)

にこ(ライン見る限りじゃ大丈夫っぽいけど……)


絵里『にこ、家にはちゃんと帰れた?』

穂乃果『え、にこちゃんまだ学校にいるの?』

花陽『大丈夫?』


にこ「……」


にこ『とっくに家にいるから大丈夫よ』

90: 2015/05/15(金) 04:16:57.14 ID:iPr0Qdw7.net
        
         
 ザァァァ…
      
       
にこ(真姫ちゃんの従姉妹かぁ……どんな人なんだろ)

にこ(やっぱり似てるのかな……お母さんとか真姫ちゃんそっくりだったし……)

にこ(てか初対面の人に家まで送ってもらうってちょっと緊張するかも……)

にこ(まあ、言っても相手は真姫ちゃんの従姉妹なんだし……そこまで気負う必要も……)


 「あの」


にこ「?」

マキオ「に、西木野真姫の従兄弟、ですが……」

にこ「……」

マキオ「ま、真姫に言われて……迎えに来ました」

にこ(お、男っ……!?)

95: 2015/05/15(金) 04:35:55.53 ID:iPr0Qdw7.net
マキオ「……」

にこ「……」

マキオ「……えっと」

にこ「あ、っと、ま、真姫ちゃんの友達の矢澤にこです!」

にこ「真姫ちゃんにはいつもお世話になってます!」

マキオ「こ、こちらこそどうも。真姫がいつもお世話になってます」

にこ(や、やばい。予想外過ぎて頭真っ白になってた……)

にこ(てかこの人……)

マキオ「……」

にこ(真姫ちゃんに似過ぎでしょ……瓜二つっていうか、同じDNAなんじゃ……)

にこ(真姫ちゃんが男になったらまさにこんな感じのイケメンになって……)

マキオ「あの」

にこ「は、はい!?」

マキオ「お、俺の顔、何か変ですか?」

にこ「いや、えっと、その。あまりにも真姫ちゃんに似ててビックリして……」

マキオ「……そんなに似てますか?」

にこ「双子を疑うくらいには……」

マキオ(これ、ちょっとでもボロ出したらバレそう……)

96: 2015/05/15(金) 04:51:28.14 ID:iPr0Qdw7.net
マキオ(でも、女が男になるなんてあり得ないんだし……)

マキオ(目の前でお湯を被らない限り、バレないはず……)

にこ「……」

マキオ「……」


 ザァァァ…


マキオ(な、なんか、空気重い……)

にこ(な、何喋ったらいいのか全然分かんない……)

にこ(男っていうのもそうだけど、真姫ちゃんにあまりにも似過ぎてて……)

マキオ(さ、さっきからめちゃくちゃ見られてる……心臓が痛い……)

にこ(てか身長高っ……私と20cmくらい差あるんじゃ……)

マキオ(にこちゃんがいつもより小さく見える……こんな高さで見下ろすの、すごく新鮮で……)


 ブーブー


マキオ「ご、ごめん、ちょっと」

マキオ(こんな時に誰からのメールで……)


希『チューした?』


マキオ「ヴぇっ」

99: 2015/05/15(金) 05:11:34.77 ID:iPr0Qdw7.net
マキオ(の、希……!)

マキオ(会って30分も経ってないのにチューなんて出来るわけないでしょ!? バカじゃないの!?)

にこ「その携帯……」

マキオ「へ?」

にこ「真姫ちゃんと同じ、なんですね」

マキオ「っ!?」

マキオ「そ、そうなんだ。初めて知ったよ」

にこ「ストラップも……」

マキオ「ここ、このストラップは真姫から貰ったヤツなんだ」

マキオ(やばいやばいやばい!)

にこ「……仲良いんですね。携帯もストラップもお揃いだなんて」

マキオ「……ストラップはそうかもしれないけど、携帯は偶然だよ」

にこ「……」

マキオ(話題逸らさないと……怪しまれてる……)

マキオ「えっと、そろそろ行こうか。雨脚も強まってるし、早く帰った方がいい」

にこ「そうですね……」

マキオ「その……傘が一本しかないから、合い傘でもいい?」

にこ「えっ」

101: 2015/05/15(金) 05:26:38.93 ID:iPr0Qdw7.net
マキオ「い、嫌ならいい」

マキオ「に……じゃなくて、君が傘を一人で使ってくれれば。俺は横で歩くから」

にこ「そ、そんなのダメに決まってるでしょ!?」

にこ「てか私だけ傘さしてその横でアンタが濡れネズミになってるとか、どう考えてもおかしいでしょうが!?」

マキオ「ご、ごめん……」

にこ「あ……」

にこ「す、すみません……せっかく来て貰ったのに、失礼なこと言って……」

マキオ「いや、別にいい……君の言う通りだから……」

にこ「……」

マキオ「……」

にこ「その……合い傘、お願いします……」

にこ「そもそも私、断れるような立場じゃないし……」

マキオ「そんなこと……」

にこ「早く行きましょう。これ以上雨に降られたら、帰れなくなるし……」

102: 2015/05/15(金) 05:43:39.62 ID:iPr0Qdw7.net
      
     
 ザァァァ…
     
     
にこ「……」

マキオ「……」

にこ(相合い傘とか、初めてするかも……)

にこ(しかも男の人と……)

マキオ(にこちゃんと相合い傘……)

マキオ(嬉しいはずなのに……嬉しいと思う余裕すらないわ……)

マキオ(すごくドキドキする……こんなにも、にこちゃんが近くて……)

にこ(今更だけど、これ誰かに見られたらまずいわよね……)

にこ(真姫ちゃんの従兄弟だとしても、男と相合い傘してるなんて……)

にこ(アイドルとしての自覚が足りないわ……それこそこんなところ写真にでも撮られたら、大スキャンダルに……)

マキオ(どうしよう……また無言が続いて……)

にこ「……あの」

マキオ「え?」

にこ「わ、私、家すぐそこなんで走って帰ります」

マキオ「すぐそこって……まだ3分も歩いて……」

にこ「その、ありがとうございました! それじゃあ!」

マキオ「ちょっ」

103: 2015/05/15(金) 05:56:34.18 ID:iPr0Qdw7.net
マキオ「ま、待って!」

にこ「っ」

マキオ「……ど、どうして、逃げる?」

マキオ「俺、何かした……?」

にこ「……手」

マキオ「え?」

にこ「手、離してください……」

マキオ「あっ……ご、ごめんっ!!」

にこ「……」

マキオ「……」


 ザァァァァ…
     

にこ「……その、あなたが嫌になったとかじゃないんです」

にこ「ただ、にこはアイドルだから……男の人と親しそうにするのはダメなんです」

マキオ「……」

にこ「それが真姫ちゃんの従兄弟だとしても……」

マキオ「俺が男だから……一緒にはいられない……?」

にこ「わざわざ迎えに来て貰ったのに、その……ごめんなさい」

106: 2015/05/15(金) 06:25:43.72 ID:iPr0Qdw7.net
マキオ「……」

にこ「たかがスクールアイドルのくせに何自惚れてんだ、って思うかもしれないけど……」

にこ「スクールアイドルでも、プロじゃなくても」

にこ「ファンに夢を与えて、笑顔にするのが……アイドルだから」

にこ「たった一人だけだったとしても、そういうことで私を応援してくれている人を悲しませたくないの」

にこ「こんな雨の中、誰も見てないかもしれないけど……そういう気持ちが大切だと思うから」


マキオ(男の子にさえなれば……にこちゃんと恋が出来ると思っていた)

マキオ(手を繋いで、抱き合って、キスをして)

マキオ(そんな幸せな未来があると本気で思っていた)

マキオ(でも、現実は違った)

マキオ(にこちゃんがアイドルであり続ける限り……そんな未来は永遠に来ない)


マキオ(私はこの日、二度目の失恋を経験した)

マキオ(気付いた時にはもうにこちゃんはいなくて……降り注ぐ雨の中、ただ一人立ち尽くしていた)

107: 2015/05/15(金) 06:34:36.86 ID:iPr0Qdw7.net
      
      
 ザァァァァ…
       
     
 「まるで捨てられ子犬やね」


マキオ「……」

希「マキオくん」

マキオ「希……」

希「とりあえず、そこで雨宿りしながら話そっか」

108: 2015/05/15(金) 07:08:57.08 ID:iPr0Qdw7.net
    
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    
希「さて……男の子になってにこっちに言い寄った感想はどう?」

希「真姫ちゃんの言う本物は手に入った?」

マキオ「……あんな場所で濡れ鼠になってた時点で分かるでしょ」

希「ふふ、まあそうやけど」

マキオ「どうしてそんなにも嬉しそうなのよ……ムカつく……」

希「そら嬉しいよー。にこっちが細マッチョで高身長のイケメンとのフラグへし折ったんやから」

マキオ「……こうなるって、分かってたの?」

希「上手に口説けばもしかしたら、とは思ったけど、真姫ちゃんがそんなこと出来るはずもないから」

マキオ「それが出来てたとしても無理よ……」

マキオ「にこちゃんにとっての一番は……自分を応援してくれるファンだから」

希「……にこっちのこと諦めるん?」

マキオ「……」

希「告白もしてないのに」

マキオ「今の関係が壊れるくらいなら、ずっとこのままでいい……」

109: 2015/05/15(金) 07:24:38.40 ID:iPr0Qdw7.net
希「東野マキオと西木野真姫は別人なんやろ? それなら怖がらんとアタックすればええやん」

マキオ「にこちゃんは男だから、って理由で私と一緒にいることすら拒んだのよ……?」

マキオ「アタックしたって意味ないに決まってるでしょ……むしろ嫌われるだけよ……」

希「東野マキオは完全に脈無しってことや」

マキオ「最初からそう言ってるでしょ……」


希「じゃあ西木野真姫に戻ればええやん?」カポ


マキオ「え……?」


 トクトク…


希「ふふ、魔法瓶って便利だよね。いつでもあったかいお湯が手に入るから」

真姫「……何のつもりよ」

希「東野マキオがダメなら西木野真姫ちゃんでアタックすればええだけやん」

希「少なくとも、男だからって理由で一緒におることすら拒まれることはないと思うよ?」

希「さっきの相合い傘も、西木野真姫ちゃんが相手ならにこっちは家まで送り届けられてたやろうね」クス

113: 2015/05/15(金) 08:21:15.36 ID:iPr0Qdw7.net
真姫「……こんなことしても意味ないわ」

真姫「西木野真姫のままじゃ……にこちゃんとは……」

希「なれるよ。恋人同士、本物の関係」

希「女の子同士やからいつか必ず終わりが来るなんて……それは絶対に間違ってる」

真姫「……」

希「一番にはなれない、女の子同士だから無理」

希「最初からそう決めつけて何もしないなら、それこそにこっちのこと諦めた方がいいよ」

真姫「……」

希「女の子の西木野真姫と男の子の西木野真姫」

希「両方でアタックすればにこっち落とせると思うんやけどなぁ」

真姫「でも、男の子になった私はさっき……」

希「真姫ちゃんにそっくりな男の子と男の子になった真姫ちゃんはまったくの別物やん?」

真姫「どういうこと…‥?」

希「まずは自分の気持ちをしっかり伝える。話はそれからやね」

真姫(気持ちを、伝える……)

希「にこっち、近くの公園で雨宿りしてたよ」

真姫「!」

希「ウチの出来るアドバイスはこれで終わりやん」

希「あとは真姫ちゃん次第だよ」

114: 2015/05/15(金) 08:22:38.85 ID:iPr0Qdw7.net
おやすみ

181: 2015/05/16(土) 21:45:06.70 ID:iIh+19Eo.net
                   
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                   
にこ(雨、弱まって来たわね)

にこ(でも傘無しで帰るにはちょっとキツいかも……)

にこ(ったく、誰よ……私の傘パクったヤツ……絶対に許さないんだから……)


 ザァァァ…


にこ(……従兄弟の人、大丈夫かしら)

にこ(ちょっと様子がおかしかったけど……)

185: 2015/05/16(土) 21:53:13.93 ID:iIh+19Eo.net
にこ(てか合い傘拒否されたくらいであの反応は大袈裟でしょ)

にこ(魂取られたみたいに抜け殻になって……話しかけても反応しないし……)

にこ(そもそもこっちはちゃんと理由も説明したんだから、別に後ろめたいことなんて……)

にこ(今さらあれこれ考えてもしょうがないわね……小さい子供でもないんだし、放っといても大丈夫でしょ)

にこ(あんな漫画の中から出て来たような人なら、私じゃなくても他の誰かが気にかけるだろうし)

にこ(それこそ真姫ちゃんとか……)

にこ「……」


 ザァァァ…


にこ「……はぁ」

186: 2015/05/16(土) 22:02:01.27 ID:iIh+19Eo.net
にこ(何考えてるのよ、バカじゃないの……)

にこ(あんなのただの従兄弟でしょ……)

にこ(モデルみたいにイケメンで、高身長で)

にこ(たぶん家柄も良くて、頭も良くて)

にこ(真姫ちゃんにお願いされたら、こんな雨の中でも傘一本で他人を迎えに行くような……)
                  
                       
 『このストラップは……真姫から貰ったヤツなんだ』
                         
                           
にこ「……美男美女同士、お似合いじゃない」
                   
              
 ザァァァ…
          
       
にこ「はぁ……」

にこ(ほんと、鬱陶しい雨ね……さっさと止みなさいよ……)

190: 2015/05/16(土) 22:12:14.09 ID:iIh+19Eo.net
にこ「風邪引いたら承知しないんだから、バカ真姫……」
              
          
 「……誰がバカよ」
               
                
にこ「え……?」
              
                     
 「……」
                     
                    
にこ(従兄弟の人……じゃない)

にこ「真姫ちゃん……?」

真姫「やっと……見つけた……」

にこ「こんなとこで、何して……」

にこ「ってアンタ、なんでこんなに濡れて……!?」


 ギュ…


にこ「っ……!?」

196: 2015/05/16(土) 22:24:28.65 ID:iIh+19Eo.net
真姫「ごめんなさい……私のせいで……」

にこ「え、ちょ、なっ……」

真姫「身体、こんなにも冷たくなって……」

にこ「あ、アホ! こっちの台詞よ! 傘さしてたのになんでずぶ濡れなのよ!?」

にこ「てか、なんで真姫ちゃんがここに……」

真姫「迎えに来たの」

にこ「へ……?」

真姫「私が女の子なら……にこちゃんは一緒に歩いてくれるんでしょ」

にこ「何、言って……」

真姫「一緒に帰りましょう……ちゃんと家まで送るから……」

にこ(……送られるの間違いでしょ、バカ)

198: 2015/05/16(土) 22:35:53.34 ID:iIh+19Eo.net
真姫「……」

にこ「……いつまで抱きついてるのよ」

真姫「ごめんなさい……気持ち悪いわよね……」

にこ「そういうことじゃなくて、このままじゃ帰れないでしょ」

真姫「ごめんなさい……」

にこ「もう、好きにしなさいよ……」

にこ(調子狂うわね……)


 ザァァァ…


真姫「……」

にこ「……」

真姫「にこちゃん」

にこ「なに」

真姫「私に抱きつかれてて……嫌じゃないの?」

199: 2015/05/16(土) 22:41:39.89 ID:iIh+19Eo.net
にこ「……嫌ならとっくに離れてるわよ」

真姫「……」

にこ「まあ、こうしてるとあったかいし、真姫ちゃんだし……」

真姫(私、だから……)

にこ「てかさ、こんなとこで油売ってていいの?」

にこ「あの人のところ、行った方がいいと思うんだけど」

真姫「誰……?」

にこ「誰って、従兄弟の人に決まってるでしょ」

にこ「こんな雨の中顎で使っといて、何も無いなんてどうかと思うわよ」

真姫「……別にいいのよ、あの人のことは」

にこ「いや良くないでしょ」

にこ「出来れば真姫ちゃんにはそっちに行ってもらいたいんだけど……」

真姫「……どういうこと」

201: 2015/05/16(土) 22:50:34.91 ID:iIh+19Eo.net
にこ「せっかく迎えに来てもらったのに、その、逃げるようなことしちゃったから」

にこ「謝っといて欲しいっていうか、フォローしといて欲しいな、って……」

真姫「……ちゃんと事情は聞いてるわ。あの人も怒ってないから気にしないで」

にこ「そっか……」

真姫「男の人と一緒は嫌よね……私の配慮も足らなかったわ」

にこ「べ、別に男が苦手とか接し方が分からないとそんなんじゃないのよ!?」

にこ「ただ、その……アイドルとして相合い傘とかはまずいと思っただけで……!」

真姫「言わなくても分かってるから」

にこ「……あ、アンタも気を付けなさいよね」

真姫「え?」

にこ「その、男と相合い傘とか」

真姫「……」

204: 2015/05/16(土) 23:00:31.40 ID:iIh+19Eo.net
にこ「一応アイドルなんだからさ、その、そういう部分にも気遣った方が良いっていうか……」

にこ「いや、別にするなとは言わないけどさ……年頃の女の子だし、恋愛とかに興味あるのも分かるし……」

にこ「でも、その、節度を持った付き合いというか……やるなら絶対にバレないように……」

真姫「何言ってるの……?」

にこ「だ、だからっ! そのっ……!」

真姫「……?」

にこ「……どう思ってんのよ、あの人のこと」

真姫「あの人……?」

にこ「従兄弟の人! ……気になってたりするわけ」

真姫「しないけど……」

にこ「……携帯、お揃いだったけど」

真姫(お揃いも何も……)

にこ「ストラップも、プレゼントされたって」

真姫「あー……」

にこ「……答えなさいよ」

205: 2015/05/16(土) 23:11:32.60 ID:iIh+19Eo.net
真姫「……別に何もないわよ」

真姫「ストラップも、プレゼントとかそういうのじゃないし……」

にこ「ふーん」

真姫「な、なによ」

にこ「別に」

真姫「なんで不機嫌なのよ……意味分かんない……」

にこ「……そんな服着といて何もないとか、説得力ないんだけど」

真姫「服?」

真姫「あ……」

にこ「惚れた相手にファッションが似るって言うけど、靴下からアクセサリーまで一緒なんてどうかと思うわよ」

真姫「こ、これはそういうのじゃ……!」

にこ「いいわよ別に、言いたくないなら」

207: 2015/05/16(土) 23:20:39.87 ID:iIh+19Eo.net
にこ「こんなこと詮索するのも無粋だし……」

真姫「違うっ!!」

にこ「っ!?」

真姫「私が好きなのは……!」


 ―――イヤよ、女同士なんて気持ち悪い


真姫「っ……」

にこ「真姫、ちゃん……?」


 ―――まずは自分の気持ちをしっかり伝える。話はそれからやね


真姫「私が、好きなのは……」

にこ「……」


 ―――気持ち悪い


真姫「…………」

211: 2015/05/16(土) 23:30:20.86 ID:iIh+19Eo.net
にこ「……無理して言わなくてもいいから」

真姫「……」

にこ「その……ごめん」
          
         
真姫(ばつが悪そうに視線を逸らすにこちゃん)

真姫(罪悪感に囚われているのか、私に対する警戒心は感じられなくて……隙だらけで)
         
         
にこ「え……?」
          
        
真姫(言葉は出せなくても……身体は動いた)
          
        
 「…………」
        
      
真姫(雨に濡れた黒髪が頬に張り付く)

真姫(伝う雫は冷たくて……でも、唇に触れたものは温かかった)

216: 2015/05/16(土) 23:40:14.64 ID:iIh+19Eo.net
真姫(いつまでそうしていたのかは、分からないけれど)

真姫(真っ赤になったにこちゃんの顔を見て、可愛いと思った時にはもう……魔法は解けていた)

真姫「好き……」

にこ「っ~~~!?」

真姫「私が好きなのは貴女よ、にこちゃん」

にこ「な、ななっ……」

真姫「ずっと、言いたかった……でも、怖くて言えなくて……」

にこ「て、てかっ、いきなり何してっ……!?」

真姫「今ならもう、何度でも言える……」

真姫「好き、好きなの。にこちゃん」

にこ「っ……」

真姫「ずっと好きだった、あなたのことが好き……大好き……」

にこ「だ、ダメよ……だって、私は……」

真姫「知ってるわ、アイドルは誰かを好きになっちゃいけない、って……」

にこ「分かってるなら……なんで……」

真姫「私が好きになったのは……アイドルの矢澤にこじゃないから」

218: 2015/05/16(土) 23:47:49.51 ID:iIh+19Eo.net
真姫「私はありのままの、飾らないにこちゃんが好きなの」

真姫「見栄っ張りで、素直じゃなくて、口の悪い……でも、誰よりも優しい貴女が好きなの」

にこ「やめてよ、真姫ちゃん……」

にこ「そんなこと言われても……私は誰のものにもなるわけにはいかないの……」

にこ「真姫ちゃんが好きになったのがどの私だろうと……」

にこ「アイドルであり続ける限り、私は……」

真姫「待つわ」

にこ「え……?」

真姫「何十年でも、何百年でも。にこちゃんがアイドルじゃ無くなるその日まで待つ」

真姫「だから、アイドルをやめたその時でいいから……私の恋人になって」

にこ「っ……」

真姫「私はその日まで……にこちゃん以外の誰も好きにならないから」

221: 2015/05/16(土) 23:55:22.52 ID:iIh+19Eo.net
にこ「ば、バカじゃないの……」

にこ「そんなこと、出来るわけ無いでしょっ……」

真姫(にこちゃん、泣いて……)

にこ「人の気持ちも知らないでっ!」

にこ「ふざけたことばっか言ってるんじゃないわよ!!」

真姫「っ……」

にこ「私がアイドルをやめるその日まで待つ……?」

にこ「待って、恋人になったとして……そのあとはどうするの……?」

にこ「三十路超えギリギリの年齢で……女同士で、子供も出来なくて……」

にこ「数年は幸せになれたとして、それから氏ぬまで幸せに過ごせると思うの……?」

にこ「むしろ辛いことがたくさん待ってる……時間が経つに連れて苦しくなるに決まってるじゃない……」

にこ「私のせいで真姫ちゃんの人生棒に振らせるような真似、出来る訳ないでしょ……」

222: 2015/05/17(日) 00:06:32.08 ID:sDYQCo8k.net
にこ「成功するかも分からないアイドル目指して、ギャンブルみたいな人生送るのは私だけでいいの」

にこ「真姫ちゃんは良い大学行って、お医者さんになって、良い男捕まえて……」

真姫「やめなさいよ……」

にこ「子供産んで、良いお母さんになって、それでずっと幸せに……」

真姫「やめろって言ってるの!!」

にこ「っ……」

真姫「人の幸せを勝手に決めないで!」

真姫「自分の幸せは自分で決めるものでしょ!? そんな幸せ私はいらないっ!」

真姫「私はにこちゃんがいれば、それだけでいいの……」

にこ「やめて……」

真姫「貴女さえ隣にいれば……他に何も……!」

にこ「お願いだからもうやめて!」

228: 2015/05/17(日) 00:18:31.62 ID:sDYQCo8k.net
にこ「私は真姫ちゃんを好きになっちゃダメなの……」

真姫「そんなことっ」

にこ「思い出させないで……もう嫌なの……」


にこ「真姫ちゃんのこと、大好きだから……」


真姫「にこ、ちゃん……」

にこ「だから、忘れさせてよ……こんな気持ち……」

にこ「これ以上真姫ちゃんのことで悩みたくない……」

真姫「……」

にこ「好きになるんじゃなかったとか、真姫ちゃんが男だったらとか……」

にこ「そんなことをもう、考えたくないの……」

230: 2015/05/17(日) 00:28:12.28 ID:sDYQCo8k.net
真姫「……私が男だったら」

にこ「え……?」

真姫「もし私が男だったら……にこちゃんは悩まずに済んだの?」

にこ「……ええ、そうね」

にこ「真姫ちゃんが男だったら……私は真姫ちゃんのこと、好きなままでいられたと思う」

にこ「好きっていうこの気持ちを……ずっと、ずっと大切にして……」

真姫「もし私が男の子になって、にこちゃんにプロポーズしたら……結婚してくれた?」

にこ「……当たり前でしょ」

真姫「!」

にこ「それこそ、宇宙一幸せな花嫁だって、世界中に自慢するくらい喜んだでしょうね」

真姫「……」

にこ「……ごめん、こんなこと言っちゃって」

にこ「あり得ない話しても、虚しいだけなのに……」

真姫(私にそっくりな男の子と、男の子になった私はまったくの別物)

真姫(こういうことだったのね、希……)

にこ「って、真姫ちゃん……?」

232: 2015/05/17(日) 00:37:24.73 ID:sDYQCo8k.net
真姫「……さっきの言葉、忘れたなんて言わせないから」

にこ「……」

真姫(最初からこうすれば良かったなんて思わない)

真姫(遠回りだったけど、この道で良かったと思う)

真姫(今までにこちゃんが何を考えていて、どんな気持ちでいたのかを……知る事が出来たから)

にこ「ちょっと、どこに行くのよ……」

真姫「どこにも行かないわ」


 ザァァァ…


にこ「……」


 「ずっと貴女の……側にいるから」


にこ「真姫、ちゃん……?」



マキオ「にこちゃん、私と……」

マキオ「西木野真姫と結婚してください」

241: 2015/05/17(日) 00:49:14.28 ID:sDYQCo8k.net
                   
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                      
希「で、そのあとどうしたん!?」

真姫「も、もういいでしょ。これだけ話したんだから」

希「いやいや一番ええところやん! にこっちの反応は!? 返事は!?」

真姫「反応は……驚いてたわ。信じられない、って」

希「うんうん」

真姫「あと、希と同じことされたわ」

希「ウチと同じこと?」

真姫「なんか、身体触られた」

希「あはは、普通の反応やね」

希「にこっちには見せたん?」

真姫「なにをよ」

希「きのこ」

真姫「きのこ……?」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

246: 2015/05/17(日) 00:59:02.36 ID:sDYQCo8k.net
真姫「……」

真姫「ああ、アンタバカじゃないのっ!?」

希(この反応……どっちなんやろ……)

真姫「もうっ、からかうなら何も喋らないから!」

希「いやいやからかってないよ。 気になって当然のこと訊いただけやん?」

真姫「とにかく、そういう話はしないから……」

希「えええ、そんな殺生なぁ……」

真姫「そ、そもそもそんなことしてないし……」

希「え、してないんっ!?」

真姫「当たり前でしょ……」

希「ちょっと待って。公園から出て、そのあとはどうしたん?」

真姫「にこちゃんを家まで送って、そのまま帰ったけど……」

248: 2015/05/17(日) 01:08:32.87 ID:sDYQCo8k.net
希「……」

真姫「な、なによ……」

希「信じられへん……」

真姫「だから何がよ!」

希「えっと、プロポーズは成功したんだよね?」

真姫「……そうだけど」

希「2人はその瞬間から将来を誓い合った仲なわけや」

真姫「だ、だからどうしたのよ」

希「……なんでヤらんかったん?」

真姫「あ、アンタほんと頭おかしいんじゃないの!?」

希「おかしくないよ! むしろ真姫ちゃんとにこっちの方がおかしいって!」

252: 2015/05/17(日) 01:17:31.23 ID:sDYQCo8k.net
希「流石に最後まではいかんでも……キスくらい普通するやん?」

真姫「キスならもうしたし……」

希「それは真姫ちゃんが告白する時にした軽いヤツやろ?」

真姫「それの何が悪いのよ」

希「もしかして、男の子モードって性欲無かったりするん……?」

真姫「そ、そういう話はしないって言ったでしょ!」

希「えー、真姫ちゃんがヘタレなのはともかく、にこっちが可哀相やん」

希「もしかしたら獣のように求められたかったかもしれんのに……」

真姫「あり得ないから……にこちゃん、男の私のことすごい警戒してたし……」

希(そういえばにこっちもヘタレやったわ……)

真姫「そもそも、そういうことはにこちゃんがアイドルやめるまでしない、って約束だから」

希「えっ」

254: 2015/05/17(日) 01:28:51.40 ID:sDYQCo8k.net
真姫「当たり前でしょ。にこちゃんはアイドルなんだし……」

希「いや、アイドルって言ってもスクールアイドルで……」

真姫「にこちゃんに怒られるわよ、プロ意識が足りないって」

希「アイドル以前に真姫ちゃんとにこっちは将来を誓い合った仲やん!」

真姫「だ、だったらなんなのよ」

希「……我慢できるん?」

真姫「……」

希「アイドルなんて30超えても続けてる人は続けてるよ?」

真姫「が、我慢するわよ。にこちゃんの夢の邪魔は出来ないわ」

希「うわぁ……うわぁ……」

真姫「なんなのよ!?」

希「ピュアピュアや……プラトニックラブや……」

261: 2015/05/17(日) 01:41:17.71 ID:sDYQCo8k.net
真姫「もうっ、うるさいわね!」

真姫「ピュアでもプラトニックでもいいでしょ! そういう約束なの!」

希「うーん、でもなぁ……」

真姫「なによ」

希「たぶん3ヶ月保たん思うけど……主に真姫ちゃんが」

真姫「ば、バカにしないでよ!? 浮気なんてするわけないでしょ!?」

希「いやそうじゃなくて。絶対にこっち襲うやん?」

真姫「ま、万が一私が我慢出来なくなっても、にこちゃんが拒否するわよ……」

希「いやー、分からんよ? にこっち押しに弱いし」

希「一度身体を許し合ったが最後、若い2人は獣ように互いを求め合って……」

真姫「や、やめなさいよ……」

希「子供が出来てゴールイン! 晴れてにこっちはお嫁さんに!」

真姫「帰る」

希「あーん、可愛い冗談やん」

263: 2015/05/17(日) 01:51:37.62 ID:sDYQCo8k.net
真姫「冗談になってないのよ……」

希「まあそうならんためにも、性欲処理はちゃんとしとかなアカンよ?」

真姫「せ、性欲処理って……バカじゃないの、男にならなかったらいいだけでしょ」

真姫「ちゃんと気を付けていれば、日常生活で水を被るようなことないだろうし……」

希「分からんでー? プールとか雨とかいろいろあるわけやし」

希「それに性欲あるのは女の子もやん?」

真姫「……」

希「でもまあ、何はともあれ2人が結ばれて良かったわ」

希「ここから先が大変そうやけどね」

真姫「……希。言っとくけど、余計なことは」


 トクトク…


マキオ「……」

希「ふふ、相変わらずイケメンやん」

マキオ「のーぞーみー……!!」

265: 2015/05/17(日) 01:58:32.02 ID:sDYQCo8k.net
希「まあウチのタイプではないけど」

マキオ「どういうつもりよ!? ここ学校よ!?」

希「こういう不測の事態もあるから、これからは魔法瓶を常に持ち歩かないとやね」

マキオ「それだけ……? たったそれだけのために私は男にされたの……?」

希「マキオと会いたかったんよ……」

マキオ「お湯! 渡しなさい!」

マキオ「あの魔法瓶持ってるんでしょ!」

希「いやーん、乱暴せんとってー」

マキオ「人聞きの悪い事言わないで!」

希「マキオ知らんでー?」

希「そんな風にか弱い女の子に迫ったりしたら、ラブコメの神様が降りて来て……」


にこ「なにしてるの」


マキオ「……」

希「こうなるやん?」

266: 2015/05/17(日) 02:02:00.00 ID:sDYQCo8k.net
マキオ「ま、待ってにこちゃん! 誤解なの!」

にこ「先生……いや警察……」

マキオ「の、希! 貴女からも何か言って!?」

希「マキオ欲求不満らしいで?」

マキオ「希ぃぃ!!?」

にこ「ほんっと信じらんない……最低……」

にこ「私以外の人には男の姿見せないって約束したのに……」

マキオ「ち、違うのにこちゃん! 話を聞いて!」

希「ふふ、嫉妬するにこっちも可愛いなぁ」

マキオ「アホなこと言ってないで誤解を解きなさいよ!?」

希「いやん、誤解も何もウチとマキオの仲やん♪」

マキオ「ふ、ふざけるのもいい加減に……!」

にこ「……この種馬」

マキオ「」


終わり

267: 2015/05/17(日) 02:04:30.26 ID:sDYQCo8k.net
キリもいいしこの話はこれで終わりで

お疲れ様でした
ありがとうございました

268: 2015/05/17(日) 02:05:22.77 ID:hru2fa37.net
終わっちゃったよwww乙であった

280: 2015/05/17(日) 11:48:30.27 ID:sN/okkZ5.net
乙乙
とても良かった

引用元: にこ「イヤよ、女同士なんて気持ち悪い」 「えっ……」