1: 2017/06/22(木) 16:31:22.54 ID:i0UcVMUE.net
果南「……本当に大丈夫なの?」


千歌「やってみようよっ! 卓球なら千歌達でも出来そうじゃない!? 長い間やってたしかなり得意だし!」

千歌「スクールアイドル兼、卓球!」

果南「うーん……」


千歌「だってだって! 可能性は二倍なわけだよ! スクールアイドルだけで有名になれるかもしれないけど、スクールアイドル卓球をすればそっちで有名になれるかも……」


千歌「オリンピックを目指すような人達は普通の競技としての卓球をするわけだから、すっごい上級者はいないと思うんだ! ねね、それなら再開してもなんとかなると思わない!?」

果南「まあ……」

果南(半分くらいお遊びの卓球ってこと、かな?)


果南「千歌の言うことが本当なら、まあそうかもしれないけど……」

千歌「よしっ! じゃあ曜ちゃんも誘って来る!!」

果南「え!?」


 

千歌「――卓球! しに行こうよ!」

3: 2017/06/22(木) 16:33:07.64 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

曜「えっと、つまり……スクールアイドルスポーツっていうものがあって……スクールアイドルがスポーツで競う、と。強ければ知名度も上がって、本来のスクールアイドルの順位にも大きく影響する……確かに、可愛い女の子がスポーツをやるっていうのは興行的にも……」


千歌「うんっ! ラブライブとは別の日程で行われるんだっ!」

曜「バスケとかバレーとかテニスバドミントン……メジャー競技は大体あるんだね」

曜「でもなんで卓球……」

千歌「千歌が小さい時からやってたからっ!」

曜「あ……やってたね……」

千歌「曜ちゃんもしよ!! 出来るじゃん!」


曜「い、今更なあ……。高飛びとかないの……? それなら自信あるけど……」


千歌「曜ちゃん上手いじゃん! 新しく

果南「水泳ならあるみたいだよ」


曜「あ、そっちの方が良くない?」

4: 2017/06/22(木) 16:34:41.75 ID:i0UcVMUE.net
千歌「水泳なら曜ちゃんは別に練習とか必要ないし、大会出るだけで済むでしょ! じゃあそれもしよっ!!」

曜「そ、それも……? 今のスケジュールに卓球の練習まで入れたら氏んじゃう……」

果南「そうだよ、やるなら私たちぐらいしか」

千歌「……そ、そうだよね。ごめん……」

千歌「あと、水泳だけど、競泳水着じゃなくって普通の水着だからね」

曜「え」

千歌「全国ネットで普通の水着で泳ぐのが放送されるの。曜ちゃんの鍛え上げられた肉体が――」

曜「……そ、それはなんかやだ……」



曜「と、とりあえず今から卓球するんだよね? ちょっと見てるよ」


梨子「――部室にいないって思ったら、何してるの?」


千歌「あ、梨子ちゃん良いところに!」

5: 2017/06/22(木) 16:35:45.54 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇


梨子「いいじゃん! ねね、やろうよ梨子ちゃんも!」

梨子「む、むりむりっ卓球なんて出来ないよ!」

千歌「大丈夫できる! やろ、ね?」

梨子「うぅ……」

千歌「よし決定! ね!」

果南「ほら強引に決めない」


千歌「で、でも……じゃあ! ちょっと見ててよ! 楽しいからっ!」

梨子「う、うん……」


千歌「ここの体育館ねえ、卓球部はあるんだけどみんなほとんど来てないから卓球台、使ってもへーきなんだよ」

梨子「そ、そうなんだ……」


梨子(卓球台が一台、周りには……球が飛んでいっちゃわないようにフェンスがいくつか……練習自体はいつでも出来るんだ、恵まれてるなあ……)


千歌「で、卓球をあんまり知らない梨子ちゃんのために解説! これがラケットだよ」

梨子「というかなんで千歌ちゃんは卓球知ってるの……?」

千歌「家に卓球台が二台あるの!」


果南「千歌のお姉さんさ2人とも昔、卓球をしてて、お客様用も兼ねて買っておいてあるんだって」


曜「私も一時期かなりやってたなあ、卓球」


梨子「あぁ……確かにあったかも」

6: 2017/06/22(木) 16:36:45.76 ID:i0UcVMUE.net
千歌「そうなの~だからね、果南ちゃんとか曜ちゃんと小さい頃からやってたり、たまに流れでお客さんと卓球することも……」

曜(旅館に泊まったら千歌ちゃんと卓球も出来るんだ……サービスになる……のかな? 一応)

千歌「で、話を戻すと。こっちの片面でしか打てないのが"ペンホルダー"ラケットで、こっちの両面で打てるのが"シェークハンド"ラケット!」

千歌「こっちはシャーペンを持つときの形と持ち方が似てるからペンって呼ばれて、こっちのシェークハンドは、握手するみたいにして握るからシェイクハンドラケット! 簡単でしょ?」


梨子「う、うん……ペン? っていうのしか知らなかった……」

千歌「でもねこっちのシェークっていう方が使ってる人は多いんだって! 志満姉が言ってた!!」


梨子「へえ……」


千歌「とりあえず果南ちゃんと打つとこ見て、次は梨子ちゃんもやってみよ!」

千歌「はい果南ちゃんこれ!」

梨子「果南さんはペンホルダー……」


千歌「私はシェークハンドだよー、志満姉のお下がりだけど!」

千歌「じゃあさっそく……」


果南「うー、久しぶり、できるかなあ……このラケットお遊戯用じゃん」

7: 2017/06/22(木) 16:37:55.26 ID:i0UcVMUE.net
千歌「競技用の日ペンなんて都合よく持ってません、いくよー!」

カコンカコン

千歌「いいねー!」

果南「まあ、案外いけるみたい!」


梨子「あれ……ふ、普通に打ち合ってる……ピンポンって感じじゃ……」

曜「千歌ちゃんと果南ちゃん、一時期本当にハマっててさー、普通に出来ちゃうレベルなんだよ」

梨子「そ、そうなんだ……経験者みたい」

曜「経験者だから」アハハ

梨子「そ、そうなんだ」

梨子「曜ちゃんも出来るの?」


曜「まあそこそこくらいかな……」

梨子「そうなんだ……あっ」


果南「――あっ……うぅ、やっぱりバックは苦手だなあ」


梨子「ペンホルダーってバック側を打つとき、手首を捻らなくちゃだけど不利じゃないの?」

果南「不利だね」

千歌「だからシェークが多いんだよ」

梨子「なるほど……」

千歌「メリットもあるんだけどね!」


千歌「ということで、梨子ちゃんはどっちがいい!?」

8: 2017/06/22(木) 16:38:56.52 ID:i0UcVMUE.net
曜「打ちやすい方にしてみたらいいと思うよ」

梨子「じゃあ最初はその、シェークで……」

千歌「はい。じゃあ果南ちゃん、ゆっくり球出ししてね」

果南「おっけー、いくよー」

梨子「え、ちょ……う、打ち方とか……」

千歌「? とりあえずさっき見てた感じでやってみて!」

梨子「え!」


梨子(み、見ただけで真似なんて出来ないよぉ……)

カコンッ

梨子(き、きたっ……えと、えとっ……)

梨子「えいっ」スカッ…


曜「あ……」

梨子「ぅ……」

梨子「察しないでよ曜ちゃんっ!」


曜「ご、ごめんっ」


果南「まあまあ、初めてなんだし、もう一回行くよ、球をよーく見てね」

カコンッ

ブンッポ-ンッ


梨子「あ……」

9: 2017/06/22(木) 16:39:57.52 ID:i0UcVMUE.net
千歌「ホームラン!」

梨子「な、なにこれ難しい……」

千歌「じゃあ打ち方を教えるね」


千歌「卓球のフォアハンドラリーはね三角形を意識してやるんだよ。最初は胸の前、次はそのまま右に引いて右手側に、その後斜め上に振り上げて顔の前。胸、右手側、顔、これを繋ぐようにスイングするの。こうやって」ブンブンッ


梨子「三角形……」


千歌「この打ち方なら、フォア面の角度が自然に真っ直ぐか下の方を向くでしょ? だからホームランする確率も下がるんだよ!」


千歌「はいラケット持って! 千歌が後ろから教えてあげる!」ガシッ

梨子「……///」


梨子(千歌ちゃんが私に密着してる///)


千歌「胸、右手側、顔……胸、右手側、顔……そう、こういう感じだよ腕手離すから、自分で続けてみて」

梨子「うん。胸……右手側、顔……」


千歌「そうそう、最初はぎこちないけど、三角形が楕円っぽくなって来て滑かになるからね」


千歌「で、右手側に引いた時に腕だけじゃなくって、腰も右手側にちょっとひねってみて」


千歌「あー違う違う、ここをこうやって」ガシッ

梨子「///」


千歌「ちょっと腰も落として……」

梨子(自然にお尻触られてる……///)


千歌「果南ちゃん球!!!」

果南「は、はいっ」


曜(すごい気合……)

11: 2017/06/22(木) 16:42:31.30 ID:i0UcVMUE.net
カコンッ

千歌「球見て! 最初は胸、右手側に引くと同時に腰を捻るっ、そして正面を向きながら顔目掛けて振り上げる!」


梨子「は、はいっ!」

カコンッッ

果南「……おお」

千歌「惜しい……もうちょっとで入ってたよ」

梨子(さっきより全然いい球が出せた……)

千歌「果南ちゃんどんどん出して」

千歌「対角線に打つこと、クロス方向を意識して……打った後は手元じゃなくって、自分が狙っている方向を見て! そうっ!!」

曜「おー、入ったね!」

梨子「遅いけど入った……」

果南「十分十分」

千歌「やったー! すごいよ!」ギュッゥ

梨子「///」

曜「……」

千歌「ちょっと続けてみようか!」

12: 2017/06/22(木) 16:43:14.77 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

梨子「三分の一くらいはコートに入るようになってきた……」

千歌「うんっ、次はバックハンドね!」

梨子「うぅ、まだあるんだよね……難しい」

千歌「バックはもっと難しいよー?」

千歌「シェイクバックハンド、フォアと違って身体の前で打球するんだよ」

千歌「フォアの3点打ち、みたいな明確なのは無いから難しいんだけど……ラケットの角度を意識して、身体の正面!」

梨子「そ、それだけ?」

千歌「ちょっとやってみるから見ててね」

カコンッ

千歌「あんまり得意じゃない人は、来た球に対して、ラケットの角度が上を向いてるの。それだとホームランしちゃうからね、こんな風に!」ポ-ンッ

千歌「だから角度は被せ気味か垂直ね! で、こんな風に身体の正面!」カコンッカコンッ

梨子「なるほど……」

千歌「球を迎えに行くんじゃなくって、球を引きつけて十分待ってから打球! 基本だからね!」

千歌「はいっ、やってみて!」

カコンッ

梨子「あ、入った……」

千歌「あれ、バックの方が綺麗……いいね!」

カコンカコンッ

果南「結構いいかも、バックの方が得意なのかもねー」

13: 2017/06/22(木) 16:44:02.93 ID:i0UcVMUE.net
梨子(ラリーちょっとだけど続く……楽しい……かも?)

果南「じゃあさ、次はペン使ってみよ」


果南(まあ、もう結果は見えてそうだけど)

梨子「うん」

梨子「わ……シェイクと全然違う……」


果南「フォアハンドはシェイクとおんなじで3点を意識してみて」

梨子「こ、こう?」カコンッ

果南「そうそう、いい感じ!」

果南「で、問題はバックなんだけど……」


果南「ペンホルダーは構造上ラバー……この赤いやつね、これが片面にしか貼られていないの。だから片面で打つしか基本的にはできない」


果南「さっきから私がやってたから分かると思うけど手首を捻って、打球しなくちゃいけないんだよね。だから絶対に反応が遅れちゃうの、ここに関しては例外はないよ」


梨子「じゃあなんでペンホルダーなんて存在してるの……?」

千歌「フォアハンドが強いんだよ!」

梨子「フォアハンドが?」


果南「そう、バックを犠牲にする代わりにフォアハンドの威力がシェイクより強いって言われてる。その他にも手首の可動域が広いからサーブの回転がかけやすかったり、台上での処理がやりやすかったり……メリットはあるよ」

14: 2017/06/22(木) 16:44:44.83 ID:i0UcVMUE.net
梨子「ぜ、全然わからない……!」

果南「あはは、だよね」

千歌「ペンでのバック打って見てよ! やり方は手首を返して、角度を合わせて打球!」

果南「シェイクと違って面を被せるのは難しいから、最初は角度は上向きでゆっくりて大丈夫だからね」


千歌「球行きまーす!」


カコンッ

梨子「っ」カコンッ

梨子「ぅ……む、難しい……」

果南「梨子ちゃんはシェークだね」

千歌「うん」

梨子「そっか、シェークなんだ私」

曜「まあ、ペンは難しいよねー」

梨子「曜ちゃんもシェーク?」

曜「うん」


千歌「よーしっ、じゃあちょっと1ゲーム果南ちゃんとやってみるから……どんな感じなのか見ててね?」

15: 2017/06/22(木) 16:45:50.53 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇


果南「最初にジャンケンをして、勝ったらレシーブかサーブか選べるの」

千歌「あ、勝った! サーブを選ぶのが有利で一般的ね!」

千歌「じゃあ今回は1セットマッチで!」

果南「11点先取で1セット取れるの」

梨子「じゃあ今回は11点取った方が勝ち?」

千歌「そういうこと! 絶対絶対手加減しないでね!?」

果南「わかってるよ」

千歌「よろしくお願いします!」

千歌「ふー……」カツカツカツ……


梨子(なんか雰囲気が……)

千歌「ふっ」

キュッッ…ググッッ…


梨子「!?」


果南「!」


果南(下回転サーブ、打てないっ!! ツッツキでっ)

16: 2017/06/22(木) 16:47:14.62 ID:i0UcVMUE.net
梨子(打ち方が全然違う……! 下からつっくくように……本当に経験者の打ち方って感じ……)


千歌「っぅ!!」キュッッズドンッ!!!


果南「くっ……」ポ-ンッ


果南(バック側にフォアドライブ……)


千歌「よしっ! 1-0!」

梨子(千歌ちゃんの打った球……なにあれ? 下から持ち上げるようにスイングして……台についた瞬間、ボールが一気に推進した……?)


梨子「さっきの、なに……?」

曜「ツッツキと、ドライブだよ」


曜「千歌ちゃんが出したサーブは下回転って言って、バックスピンが、かかってるの。普通に打つとネットミスするんだ。だから果南ちゃんはツッツキって言う下回転を下回転で返す守備的な打法で返したの」


梨子「ツッツキ……」


曜「そ、千歌ちゃんのサーブが短かったからそうするしかなかったね」


曜「ちなみにペンホルダーだとツッツキみたいな台上でする細かい技術がやりやすいの」


曜「まあ今は果南ちゃん久しぶりみたいだったし、ちょっと浮いちゃったけど」

17: 2017/06/22(木) 16:49:14.01 ID:i0UcVMUE.net
曜「で、千歌ちゃんは果南ちゃんがツッツキで返した球をドライブで返した。ドライブっていうのは卓球で一番使われる技術で、ボールに対して上回転をかける技術なの」

曜「下回転を普通の打球で打つとネットミスになるから、上回転をかけて持ち上げるの。トップスピンがかかった打球は台についた瞬間色んな変化をする」

曜「その代表例が強い前進なんだ。下回転とは逆でラケットに当たった瞬間ポーンって打ち上げやすい。だからとっても攻撃的で、果南ちゃんは打ち上げちゃったんだよ」

梨子「い、一点の間にそんなこと、してたの……?」

曜「やってみるとそんなに考えなくても平気だよ」

梨子「そ、そうなのかな……」

梨子「というか詳しいね……」

曜「私も千歌ちゃんとやってたんだってば」アハハ…

 
 

曜「千歌ちゃんが辞めちゃったから――私もやめたけどね」

 

 


千歌「ふっ!! やった!」

果南「くっ、また……」

千歌「2-0!」

果南(だめだなぁ……全然足動かない……)

梨子「また……」


曜「3球目攻撃って言ってね、下回転サーブを出して、ツッツかせて、ドライブ攻撃。3球目に攻撃するのは一番代表的な点の取り方なんだよ」


曜「次は果南ちゃんのサーブ、おんなじようなことをするはずだよ」

19: 2017/06/22(木) 16:50:50.52 ID:i0UcVMUE.net
果南「……」コツコツ

果南(取り敢えず下回転……普通に考えたら私の弱点のバックハンドにボールを集めてくる。短く出せばツッツキで返してくるだろうから、フォアに来ても見てから反応は出来る。やっぱり下回転だね……でもお遊戯用じゃかからないって)


果南「ふっ」キュッ

千歌(下回転!)ツッツキ


キュッ


果南(よしっ一応かかった、読み通り……)

千歌(バック側に回り込んだ!! フォアドライブ! フォア、バックどっち!?)

果南「んっ!!」キュパッ!!ズンッッ

スパ-ンッッ

千歌「くっ……」

千歌(フォアかあ……速くて触れない……)

果南「よしっ」

梨子「はや……」


曜「ペンのフォアドライブの破壊力は抜群だからね」

梨子(というか2人……こんな特技があったなんて……)


梨子(そういえば千歌ちゃんのプロフィールには特技卓球って書いてあったっけ……)


梨子(特技っていうより、普通に部活やってる人みたい……)


千歌「よしっ5-1!」

20: 2017/06/22(木) 16:53:21.57 ID:i0UcVMUE.net
梨子「ふたりとも本当に上手い気がする……」

曜「千歌ちゃんの場合、お姉さん2人とも東海大会レベルに強かったんだよ。千歌ちゃんがラケット握ったのは小学生より前の頃からだし……その辺りの卓球部の子よりは全然強いかもね」


曜「果南ちゃんと私もそれに付き合ってたって感じで……あはは」


千歌(球が浮いたっ!! スマッシュで……!!)パコ-ンッ!!!!


果南「っ!!」スッッ

千歌「!?」


千歌(バックの深いところ……そんなところに、回りこめるわけ――)


キュパッギュインッ!!!

千歌「!?」


スパ-ンッッ…ギュルルルルルルルルルッッ

千歌「……え」

梨子(フェンスに引っかかってもすごい回転……)


果南「ほ……」


千歌(――な、なに、今の……)


千歌(ラケット、お遊戯用、だよね……?)ゴクッ…

21: 2017/06/22(木) 16:54:40.94 ID:i0UcVMUE.net
梨子「よ、曜ちゃん今のは……?」

曜「フォアゾーンのネット手前にボールを出して、果南ちゃんが前のめりになってツッツいて球が浮いたところを、千歌ちゃんがバックゾーンの深いところにスマッシュしたの。でも果南ちゃんはすぐに回り込んでクロスに前進回転のドライブ」

梨子「でもなんか……さっきの球と動きだけ凄かった、気が」

曜「うん……そうみたいだね」

果南「いやー……まぐれまぐれ、良かった入って」コツコツ

果南「8-7、サーブどうぞ」

曜「……」

千歌「まぐれでも悔しい! 勝つぞー!!」


千歌「ふっ……」ギュンッッ

果南「くっ……」フワンッ…


千歌(浮いたっ、チャンス!!)

千歌「!!」スパ-ンッヅ


果南「オーバー」


千歌「ぅ」

 

果南「チャンスは確実に決めないとだよ」

果南「何事も、いつでもチャンスがあるわけじゃないんだからさ」

 

千歌「わかってるよー!!」

22: 2017/06/22(木) 16:56:12.17 ID:i0UcVMUE.net
――

千歌「10-8!!」


曜「マッチポイントだね、次千歌ちゃんが取ったら勝つよ」

果南「……」

果南(うーん全然だめだ……)


果南(……下くらいしか普段出さないしなぁ、たまにはアレ、やってみよっかな……)スッ…

フッ…キュッッカコンッ


千歌(下回転! 回り込めないくらいバックの深いところにっ……)ツッツキッ


千歌「えっ」ポ-ンッッ

果南(よしっ……狙い通り)


千歌(回転がかかってない……ナックルサーブ……っ!!)


果南(後は、叩き込む、だけ!!)パシ-ンッ!!、


千歌「――っ!? いでっ!!」

果南「ぁ……」


コツコツコ……

千歌「もう! おでこ狙った!?」


果南「ち、違うってば。久しぶりだから全然入らなくて……あはは」


千歌「むぅ、ま、とにかく11-8で千歌の勝ちー!」エヘヘ

千歌「果南ちゃんにまた勝った!!!」ピョンピョンッ!

23: 2017/06/22(木) 16:56:49.99 ID:i0UcVMUE.net
千歌「……手加減してないよね?」

果南「してないよ、だめだね最近は」アハハ…

千歌「ということで梨子ちゃん!」

梨子「は、はい」

千歌「どーだった?」


梨子「えと、うん……凄かったと、思う。素人だからよくわからないけど……」

千歌「やりたい!?」

梨子「えっ」

果南「だから強引に勧誘しない、卓球まで付き合わせちゃだめでしょ」


善子「……」コソコソ

梨子「?」

善子「!!」バッッ

果南「どうしたの?」

24: 2017/06/22(木) 16:57:25.74 ID:i0UcVMUE.net
梨子「う、ううんなんでも……」


善子(た、卓球してる……!!)コソコソ…

善子(ここって卓球部とか活動してないって聞いたけど……)


善子(それに、あっちのポニーテールの人の、さっき一回見せたドライブ……)

善子(うぅ、久しぶりに燃えて来たわ……)

善子「堕天使の寵愛を受ける資格がありそうね……クク……」

善子「はっ……だめだめ」

善子(っていうかあの人たちと知り合いでもなんでもないし……今更卓球なんて……)

善子「……」ソソクサ


梨子「で、でも……ちょっとくらいなら……」

千歌「本当に!? やった!」ギュッ


梨子「い、痛いよ」

曜「……」

25: 2017/06/22(木) 16:58:01.20 ID:i0UcVMUE.net
千歌「じゃあねじゃあね、千歌が教えてあげるねっ!!」

果南「梨子ちゃん、本当に大丈夫?」


梨子「うん、続いた時はちょっと楽しかったし……」

梨子「あ、暑いから離れて……」

千歌「あ、ごめん」

曜「いつやるの?」

千歌「とりあえず暗くなったら体育館に移動して……一時間くらい練習に充てようかなあ?」

果南「一時間も?」

千歌「もっとやりたいけど!」

千歌「みんなも予定あるだろうし……」


果南「まあ、そうだね。それなら曜もできる?」

曜「ま、まあ」


曜(いやーまさか卓球することになるなんて……まあ楽しそうだからいいけど)

27: 2017/06/22(木) 17:00:24.13 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

旅館

千歌「あ、あのー……お客様、良かったら私と卓球……しませんか?」

千歌「あ! 私は、ここの旅館の三女で……」

志満「ちょっと千歌! 申し訳ありません……妹が」


志満「ほら行くよ」グイ

千歌「ぅ……すみませんでした」

リビング

美渡「はぁ、あんたまたなんかしたの?」

千歌「……卓球したかったの」

美渡「馬鹿じゃないの? お客さんのなんだから、やってない時ならともかくやってる時に割り込むなんて」

千歌「してくれる人もいるもん」

美渡「だからってね」

美渡「あんたみたいに体して可愛くない子じゃなくって、美少女に声かけられるっていうならお客さんも嬉しかったかもね」


千歌「な……なにさ!! いいじゃん別に!! 馬鹿!!」

志満「ちょっと、ふたりとも」

志満「千歌ちゃん……どうして急に卓球なんて」


千歌「ん……えっとね」

28: 2017/06/22(木) 17:01:26.93 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇


美渡「あはははっ! スクールアイドルに、卓球? もう、冗談うますぎるって」

千歌「もう! なんでそうやっていちいち笑うの!? さいってい!!」

美渡「いくら普通の卓球と違うって言ったって、高校でやめちゃったけどそれまで強かった人はいるわけでしょ、そんなの無理に決まってるってこと、あんたが一番よく分かってるよね?」

千歌「っ……だって」

美渡「どうせすぐ辞めるんだから、やるの、やめておきなよ」

千歌「うるさい!!」

千歌「いいじゃんやってみたって……」

美渡「……」

志満「美渡ちゃん、すぐ酷いこと言わないの」

美渡「……」


志満「千歌ちゃん、確かに卓球ってあんまり疲れるスポーツってわけじゃないし、年齢関係なく誰でも出来る、でも……簡単じゃないってことはわかるよね?」

千歌「うん……」


志満「スクールアイドルだけじゃだめなの?」

千歌「……うん」

美渡「じゃ、少なくとも高校卒業までには私に勝ってみなよ」


千歌「勝つもん……絶対勝つ!!」


美渡「言ったな、そのくらいの言葉には責任持ちなよ」

29: 2017/06/22(木) 17:02:10.17 ID:i0UcVMUE.net
千歌「うん……」


志満「じゃあ、ラケットも自分の買わなきゃね」

美渡「今志満姉のやつ使ってるんだっけ?」

美渡「千歌の戦型にまるで合ってないじゃんか」


志満「美渡ちゃんのラケットも全然違うしねえ……」

千歌「それも考えとく!!」


志満「うん、今日はもう寝なさい」


千歌「うん……分かった。おやすみ」

ドタドタ


美渡「はぁ、何考えてるんだか」

志満「ちょっと嬉しかった?」


美渡「は? 何言ってんのさ、そんなわけねーし」

30: 2017/06/22(木) 17:03:08.58 ID:i0UcVMUE.net
志満「千歌ちゃんにも卓球して欲しかったから、小さい頃からやらせてたんでしょ」

美渡「ち、違う」

志満「まあ、いいけど……美渡ちゃんが本気でやれるくらい強くなるといいわね」

美渡「……知らない」


美渡「あ、お姉ちゃん」

志満「ん?」

美渡「今のラバーって、やっぱり進化してるかな?」

志満「んー……私に聞かれても、長い間変えてないし……」

美渡「そりゃそうか……」

志満「やる気になった?」


美渡「あの子になんか負けたくないだけだって」

志満「そっか」


美渡「そうだよ。おやすみ」


志満「おやすみ」

31: 2017/06/22(木) 17:04:18.81 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

梨子「……よっ、ふっ」カコンッ…


梨子「わわっ!」ブンッ


千歌「違う違うー! こーやって三角をイメージして……最初は横向きでもいいから……」


梨子「うぅ、壁打ち……難しい」

果南「壁打ちは1人でも出来るレシーブやラリーの基礎固めだからね、同じテンポならとりあえず100回くらいは続かないとだめだよ」

梨子「う、うそ……」


果南「バックは普通に出来てるのにねえ……」

曜「でもさ、初めての壁打ちでバックハンドがあそこまで出来るのはセンスあると思うな」


千歌「ねー、バックの方が最初から得意な人って珍しいよねー」


千歌「でもバックは出来るのにフォアになると空振るの、ちょっと可愛い……」


梨子「う。うぅ……」


千歌「じゃあ台に行こっか」

32: 2017/06/22(木) 17:05:04.82 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

曜「そ、今の感じだよ!」


梨子「う、うん!」

曜「今の感じをどこでも出来るように。だから壁打ちはオススメなの」

梨子「曜ちゃんも普通に壁打ちできるの?」

曜「んー、まあね!」

梨子「どのくらいで出来るようになったの?」

曜「うーん……割と短かったような。ていうか壁打ちから入らなかったから」

梨子「……あはは、曜ちゃんってなんでも出来るんだね、すごいや」

曜「全然! 千歌ちゃんには勝てないしねー」


千歌「うーんっ、やっぱりラケットとラバー……換えなきゃだよね」

果南「それカットマン用でしょ? そのまま練習してても変なクセつくだろうし……やめたほうがいいんじゃない?」

千歌「だよねえ……」

梨子「そのラケット……どこか悪いの?」


千歌「あ、ううん……このラケット自体は悪くないんだけど千歌には合ってないし……ラバーは劣化しきってるけどね」

梨子「え、えっと……?」

千歌「あ、ああ……えっとどこから説明すれば」

 


「――そのラケットはカットマン用、それに、ラバーも守備用の弾まないラバーですわ」

33: 2017/06/22(木) 17:06:47.76 ID:i0UcVMUE.net
千歌「うげ……ダイヤさん……」


曜「なんでステージに……」


ダイヤ「全く……なにやらスクールアイドルなんて訳のわからないものをし始めたかと思えば……今度は何をしていますの?」

千歌「卓球です!」


ダイヤ「……卓球部にでも入ったの?」


千歌「い、いえそういうわけでは……」


果南「部長さんも使わないって言ってて、使わせてって言ったらいいって言ったからさ」


ダイヤ「なるほど。遊び……にしてはちょっとレベルが高いようでしたが」


果南「千歌も小さい頃から中学上がる時まで沼津の方のクラブに入ってたからね」

ダイヤ「へえ……」

千歌「さっきカットマン用のラケットとか言ってましたけど……ダイヤさんも卓球知っているんですか?」

ダイヤ「まあ多少は……そのラケット、貸していただける?」


千歌「は、はい」

ダイヤ(裏裏……)

梨子「……何が始まるの?」

曜「さ、さあ……」

35: 2017/06/22(木) 17:09:17.92 ID:i0UcVMUE.net
果南「……まだ出来るの?」

ダイヤ「当たり前ですわ! ボールを出して」

カツンッ

ダイヤ「ん」パコン

カコンカコンッ

千歌「おお、普通にラリーしてる……ダイヤさんも卓球出来るんですね」

ダイヤ「ええ、そこまででは、ありませんけれど」

果南「良かったよ、自分のラケット持ってきてさ」

梨子(ラリーをしながらちょっとずつ後ろに下がってる……?)

曜(この足の動かし方……)

ダイヤ「お願いですから、手加減してくださいね」

果南「わかってるよ」

千歌「……!」

果南「っ!」ギュインッ

ダイヤ(ドライブ……!!)

キュッッ…ガツンッッ

梨子「!?」

 


千歌「――カットマン……!!!」

36: 2017/06/22(木) 17:10:18.24 ID:i0UcVMUE.net
果南「ふっ」ギュインッ

ダイヤ「っ」バツンッ

梨子「あの打ち方……なに?」


曜「カットって言ってね、上から下に振り下ろすようにして、ドライブの逆、下回転を掛けて相手に返球する打法だよ」

曜「後ろに下がって相手のドライブやスマッシュを返して返して返し続ける……卓球で一番守備的なスタイルなんだよ」

梨子「すごい……」


梨子(果南さんが打つ速いドライブを、ダイヤさんが打つと一気に遅くなってふわんてして、果南さんのコートまで戻っていく……)

梨子(打っても返して返して……ダイヤさんのところに引き寄せられているみたい……)


ダイヤ「っ!!」バツッ…ギュウンッッ!!

果南「!!」


果南(今までのより絶対切れてるっ……それに短い……ツッツキで――)チョン…ズドンッッ


果南「ぁ……」

果南(ネット……)


曜「今みたいにね、強烈な下回転を掛けると、ドライブで攻撃することも出来なくなるの。果南ちゃんはツッツキで合わせようとしたみたいだけれど、それ以上に切れてたみたいだからネットミス。カットマンは相手のミスを誘うの」


梨子「な、なんか……かっこいい」


ダイヤ「わかりましたか? 千歌さんが使っていたこのラケットは私のようなカット主戦型のものなのです」

37: 2017/06/22(木) 17:11:14.41 ID:i0UcVMUE.net
ダイヤ「梨子さん、あなたのそのラケットと比べると……大きくて少し薄いでしょう?」


梨子「本当だ……」


ダイヤ「これは大きい方が当てやすく、薄い方が弾みが抑えられてオーバーミスが防げるためにこのような作りになっていますの。


ダイヤ「それに、ラケットは本来木で出来ていてこの赤と黒のゴムの部分、ラバーは別売りなんですの、ご存知でしたか?」


梨子「え!? で、でも普通に最初から付いて売ってるような」


曜「それはおもちゃみたいなやつだよ、競技用はラバーとラケットは別売りなの」

梨子「そ、そうだったんだ……」


果南「ラバーって意外と高いんだよ、片面8000円するのだってあるし。半年もしたらボロボロだしね、だから最低でも二、三ヶ月に一度くらいは替えないと」

梨子「け、結構お金かかるんだね……」

ダイヤ「ラケットとラバーは奥が深いので、調べてみると面白いと思いますわ」

梨子「は、はいっ」

ダイヤ「ありがとうございました千歌さん」

千歌「……」

ダイヤ「……?」


千歌「やりましょう……一緒に卓球、しましょうよ!!!」

ダイヤ「……は?」


千歌「やっぱりチームに1人はカットマンが欲しいんです! ダイヤさん、みた感じすっごく上手いですし、お願いしますっ!!」


ダイヤ「お断りしますわ」

38: 2017/06/22(木) 17:11:52.97 ID:i0UcVMUE.net
千歌「えー!!」

ダイヤ「そんなに暇じゃありませんの、悪いですけれど、他を当たって」

千歌「そんな簡単にカットマンなんて見つからないですよー!!」ギュッ

千歌「ね、お願いします! 私が勝ちたい人の1人にカットマンがいるんです!! だから練習しないと……カット、打たせてくださいっ!!」キラキラ

ダイヤ「だから、忙しいと……」

千歌「そこをなんとか!!」

果南「千歌」

千歌「だ、だって……」

ダイヤ「……」

千歌「ごめんなさい……」シュン…

ダイヤ「邪魔はしませんから……応援していますわ」スタスタ

千歌「あ、あのっ!」

千歌「考え直してくれたら、いつでも言ってください! 待ってますから!」


千歌「はぁ……」

果南「仕方ないよ、いつも忙しそうだし」

39: 2017/06/22(木) 17:12:46.72 ID:i0UcVMUE.net
千歌「そうだよねえ……」


果南「ダイヤも私と一緒でさ、おんなじ公民館で中学までやってたんだよ」


果南「高校に上がってからは私もあの子もやめちゃったんだけどね」

千歌「そうだったんだ……でもなんとか出来ないかな……」

果南「どうだろうね……家の都合だし」


千歌「はぁ……」

梨子「あの人がやってた打ち方、珍しいの?」


千歌「うん……かなり難しいし、それなら普通にドライブとかを練習した方が勝ちやすいから……」


千歌「だから上手いカットマンなんてなかなか見つからないの」


果南「卓球の強豪校なんかだと、練習台のためだけにカットマン転向させられる人もいたりするんだよ」

梨子「そう、なんだ……」


千歌「はぁ……いいと思ったのになぁ……ダイヤさんなら可愛いし」

果南「……どういう意味?」


千歌「どういう意味って……スクールアイドル卓球なんだから……可愛い方がいいに決まってるでしょ?」

40: 2017/06/22(木) 17:13:50.76 ID:i0UcVMUE.net
果南「大会に出させるつもりだったの?」

千歌「うん! Aqoursにも入って貰って!」

曜「あ、あはは……」

果南「さ、流石に無理でしょ……」

千歌「そうかな……」



善子「……」コソコソ

善子(さっきの人、カットマン……? なにここ、カットマンまでいるの?)ウズウズ…

花丸「――善子ちゃん?」

善子「ひっ、びっくりさせないでよ!」

花丸「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃ」

花丸「何してるの? 最近よく体育館見てるけど……」

花丸「――卓球……?」


善子「べ、別になんでもないってば、あとヨハネね」


花丸「卓球かぁ……マルもちょっとやってたよ」

41: 2017/06/22(木) 17:14:20.42 ID:i0UcVMUE.net
善子「え!?」


善子「部活入ってたの!?」

花丸「あ、部活じゃなくって……内浦にある近所の公民館で……ルビィちゃんもそこで」

善子「な、なによあの子も卓球してたの!? なんで言ってくれないのよ!」

花丸「え、ええ……? だって……言う機会もなかったっていうか……」

善子「ま、まあそうよね……」

花丸「卓球やりたいの? ちょっとなら教えられると思うけど……」


善子「クックックッ……残念だったわね花丸……これでも私、卓球には自信があるのよ……!!」

花丸「そ、そうなの?」


善子「今度ルビィも連れて市民体育館に行くわよ!!」

花丸「え、あ……うん!」

43: 2017/06/22(木) 17:16:40.84 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

週末 卓球ショップ


千歌「んー……何がいいかなあ……」

果南「まずはラケットからだね」


梨子「色々あるんだね……本当だ、ラケットは木だけだ、これがラバー?」


果南「そ、でもやっぱり沼津は田舎だし品揃えはあんまり、かな?。専門店があるだけマシなんだけどね……」

曜「わかるっ! 欲しいのなかったりするよね!」

梨子「確かに……卓球のスペースは小さいかも……」


果南「いっぱいメーカーもあって、それだけラケットやラバーもあるから、全部は置けないんだよ。ラバーだけでも種類に加えて、厚さも五段階くらいあるからね」

梨子「そ、そんなに……」

千歌「ここはね、クラブもあってね、千歌はここで昔卓球してたんだよー!」

梨子「へえ、そうなんだ」

果南「千歌は道具とか適当だったよね」

千歌「うん、大雑把にしか知らない!」


千歌「ちゃんとした方がいいのかなあって……」


カランコロン…

44: 2017/06/22(木) 17:17:33.05 ID:i0UcVMUE.net
千歌「……!!」


ダイヤ「――え」


果南「ダイヤ……?」

ダイヤ「な、なっ……どうしてここにっ!!」

果南「いやこっちのセリフ……」


千歌「……わかった! ダイヤさんも卓球したいんですよね!」ギュッ

千歌「ね!!」キラキラ


ダイヤ「そ、そういう、わけでは……」///


ダイヤ「その……久しぶりに趣味で、やる程度ならと思いまして……ラケットを取り出してみたら、ラバーが劣化していたので、見に来ただけですわ」


果南「そうだ……ダイヤは用具に詳しい方だし、千歌と梨子ちゃんにアドバイスしてあげてよ」


ダイヤ「そうは言われても……わたくしは千歌さんのプレイをあまり見たことがありませんし……」


千歌「……じゃあ卓球しましょ、ダイヤさん!」


ダイヤ「ぅ……そ、そうなりますのね」

千歌「お願いしますダイヤさんっ!!」


ダイヤ「わ、わかりましたわ……少しですわよ」

千歌「やたー!!」


果南「こら、お店の中で騒がない」

45: 2017/06/22(木) 17:18:26.05 ID:i0UcVMUE.net
千歌「はい……」

ダイヤ「で、梨子さんのもの、でしたっけ」

梨子「お、お願いします」


ダイヤ「梨子さんは初心者……よね?」

梨子「はい」

ダイヤ「まずラケットから、初心者の方は基本的には木材のラケットをオススメされると思いますわ」

梨子「木材……鉄のラケットもあるんですか?」

千歌「ぷっ……」

果南「こら」

千歌「だ、だって、て、鉄……振れないってば」クククッ

梨子「ぅぅ」////


ダイヤ「木材の中にカーボンなど弾みが良いものが挟まれているラケットがあるんですの。重さ等はそこまで変わらずに、強い弾みが得られるのでトップ選手や実力がある方に好まれていますわ。それを"特殊素材ラケット"、というのです」

梨子「な、なるほど……」


ダイヤ「特殊素材ラケットは打球感が硬くなるので、コントロールが難しくなるの。だから初心者の梨子さんには、オススメできるとは言えませんわね」

ダイヤ「木材ラケットならば打球感が柔らかいものが多くて、手に掴むような感覚を得られるものもありますの。だからまずはそこから慣れるのがいいと思いますわ」

梨子「こっちが木材……こっちが、特殊素材……?」


ダイヤ「特殊素材ラケットは値段も割高なので、その面でも木材がオススメですわ」


梨子「でも、木材でもいっぱいあるんですね……」


果南「正直、最初は使いやすいって言われてるのから、フィーリングで選んでもいいと思うんだよねー。慣れて来たら自分がラケットに求めるものがわかってくるし」

46: 2017/06/22(木) 17:20:41.18 ID:i0UcVMUE.net
千歌「でもでも! 千歌はわかんないよ?」

果南「それは考えてないからでしょ」

千歌「考えます……」

ダイヤ「あなたは大丈夫なんですの?」


曜「私? 私は卓球の練習に出てるだけで大会出る気はないんだー」

ダイヤ「なるほど」

千歌「曜ちゃんにこれ以上迷惑かけられないからさ」エヘヘ

曜「……」


千歌「ダイヤさん今ラケット持ってますか!?」

ダイヤ「え……持ってます、けど……」


千歌「――市民体育館に行きましょ! 今から!!」

47: 2017/06/22(木) 17:21:21.35 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

市民体育館


善子「堕天使ヨハネが罪を与えるっ!」

花丸「ひゃっ……」ポ-ンッ

花丸(スマッシュ……じゃないっ)


善子「っ……鎮魂の魔宴(サバトレクイエム)13式……」グググッッ…ブツブツ


善子「――"失楽園"!!」


ピョンッ…キュパッ…ッッ 

花丸「!!」


ギュォォンッ…コツンッ…ビュンッッ


花丸「ぅ」ピョ-ン……

花丸(なにこれ……やっぱり、すごい球……こんなの見たことないっ……!!)

ルビィ「11-3で善子ちゃんの勝ち、お疲れ様」

ルビィ「す、すごい……」

花丸「未来ずら……」


善子「未来って何よ、私はどっちかっていうとクラシックスタイルよ!」


花丸「そ、そうなの?」

善子「多分! そう言われてた!」

48: 2017/06/22(木) 17:22:24.82 ID:i0UcVMUE.net
ルビィ「善子ちゃん……そんなに強いのにどうして卓球部に入ってないの?」

善子「だって活動してないじゃない」


花丸「まあ、そうだよね。クラブで続けてればよかったんじゃ……」

善子「……」


善子「目標に向かって全力でするー! とか、なんかクールなヨハネっぽくないでしょ! それだけ!」


ルビィ「そんなに強いのに……勿体無い……」


善子「勿体無くなんかないわ――強い人なんて幾らでもいるしね」

花丸「……」


善子「それより私が驚いたのは! 花丸、あなたが想像以上にまともに卓球経験者してるってこと!! ルビィもだけど!」


花丸「本当? そうかな」エヘヘ

善子「2人の戦型は中々嫌いだけど……」

花丸「よく言われるずら……」

ルビィ「ね」


ルビィ「でも善子ちゃん全然こういうの、効かないんだもん」

善子「対策されちゃうとね、どうしても苦くなるわよねあなた達の闘い方は」


善子「それにしても、偶然ね3人とも卓球が出来るなんて」

花丸「ねー、善子ちゃんがこんなにやってると思わなかったもん」

49: 2017/06/22(木) 17:23:11.73 ID:i0UcVMUE.net
花丸「えーと、最近体育館で卓球してる人達いるよね、その人達に声かけて見たら?」

善子「べ、別にいいってば!」

花丸「千歌さんて人、スクールアイドルしてる人だよね? なんで卓球もしてるんだろう……」

花丸「ルビィちゃんもスクールアイドルしたいんだし、善子ちゃんは卓球がしたい……ちょうどいいずら!」

ルビィ「で、でもルビィはおねえちゃんが……」


千歌「――わ、空いてる空いてるー!!」


ダイヤ「引っ張らないでくださいっ」


ルビィ「――お、おねえちゃんっ!?」


ダイヤ「え……ルビィ! ど、どうして」


花丸「お久しぶりです、ずら!」


ダイヤ「花丸さん!」

果南「おー、卓球してるの? まだ続けてたんだ?」

52: 2017/06/22(木) 17:25:01.37 ID:i0UcVMUE.net
花丸「えへへ、一応……」

千歌「花丸ちゃんにルビィちゃん!! なんで卓球やってるの!?」

花丸「こっちの善子ちゃんが……」

曜「およ……善子ちゃんだ」

善子「ヨハネよ!」

ダイヤ「……善子?」

千歌「善子……」

善子「ヨハネ!」


ダイヤ「津島!」

千歌「善子ちゃん!?」

善子「え、え……?」


梨子「……」キョロキョロ…


梨子(わ、わたし、置いてかれてる……)

55: 2017/06/22(木) 17:26:14.57 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

果南「つまり、私とダイヤとルビィちゃんと花丸ちゃんは一緒に、内浦にある公民館で卓球をしてたってわけ」

千歌「ほえー……ねね、ルビィちゃんに花丸ちゃん、そんっなに可愛くて、卓球も出来るなんて……!! ねえ、スクールアイドルしようよー!」


花丸「わ、私は全然……」

千歌「えー……ルビィちゃんは!?」

ルビィ「ルビィは――」


ダイヤ「――ダメに決まっているでしょう!? 妹まで巻き込まないで」


ルビィ「……」

千歌「お願いしますっー!」

ダイヤ「ダメですわ」

千歌「なんで!」グイッ

ダイヤ「なんでもです!!」グイッ

千歌「むぐぐぐ……」

果南「ストップストップ」

曜「って、いうか、どうして千歌ちゃんとダイヤさんは善子ちゃんのことを?」

善子「ヨハネって呼びなさいヨーソロー魔」

梨子「ヨーソロー魔……」クス…

千歌「こっちが聞きたいよ!」

ダイヤ「本当ですわ!」


曜「私はただ……バスの方面が一緒で……」


善子(一年生? って、いきなり話しかけてくるんだもの、どんなリア充よ)

56: 2017/06/22(木) 17:27:08.61 ID:i0UcVMUE.net
善子(普通なの?)

曜「いやー話し相手がいるといいなーって。今まで千歌ちゃんが降りたら寝てただけだからねー」

善子「ヨハネの魔力に引き寄せられたのね」

千歌「魔力……?」

ダイヤ「先程から、一体……」

花丸「き、気にしないでくださいっ」


千歌(善子ちゃんて、前はこんな子だったかな……?)


千歌「善子ちゃん、私のこと覚えてない? 沼津の卓球クラブで一緒だった、一つ上の高海千歌って言うんだけど……」


善子「高海千歌……? うーん……ごめんなさい覚えてないわ。本当に私? 人違いとか……」

千歌「っ……」


千歌「あ、あはは……そうだよね。善子ちゃんは強かったもんね、私はそうでも無かったし……覚えてなくても無理ないよっ!」


千歌「……」

曜「……」

善子「あ、あの、なんかごめんなさい……」

千歌「ううん、全然!」

57: 2017/06/22(木) 17:28:51.33 ID:i0UcVMUE.net
善子「で、あなたはどうして私のことを?」

ダイヤ「申し遅れましたわ。そこの黒澤ルビィの姉の、ダイヤと申します」


善子「……姉妹揃ってぶっとんだ名前ですね」

ダイヤ「っ」ピキ


ダイヤ「ま、まあ……それは置いておいて、あなたがまだ卓球をしていたとは、驚きですわ」

善子「……私のこと知ってるんですか?」


ダイヤ「ええ、わたくしもルビィと同様中学生までは卓球をしていましたの。この辺りで強い選手のことは多少なりとも頭に入っているつもりですわ」


ダイヤ「全日本卓球選手権。小学校五年生の時にホープスの部。静岡予選優勝、ホープス全国大会ベスト16。小学校六年生ではホープス静岡予選2位、ホープス全国大会ベスト8。」

ダイヤ「中学一年生にてカデットの部、静岡予選2位、カデット全国大会ベスト16。中学2年生にて、カデット静岡予選ベスト4。カデット全国大会ベスト4。同年、ジュニア予選ベスト4……ジュニア全国大会、ベスト8」

善子「……」

果南「それって、す……凄すぎるんじゃ」

梨子「かでっとほーぷす?」


ダイヤ「大会の階級のようなものです。あなたは中学2年生の時には、既に一流の高校生が出場する大会でも上位に入っていた」

善子「気持ちわる……私でもそんなに覚えてないですよ」

ダイヤ「中学二年生を最後に静岡大会で津島善子の名前を聞くことはなくなりましたわ」


善子「当たり前よ、辞めたんだもの。今はこうやって趣味でやるだけ、こっちの方が楽しいし、部活に入ってた訳じゃないし」コンッコンッ

58: 2017/06/22(木) 17:29:57.25 ID:i0UcVMUE.net
千歌「カデット……志満姉と一緒……。勿体無いよ善子ちゃん! なんで辞めちゃったのー」

善子「だからさっき言った通りよ! それ以上言うと呪いで地獄へ幽閉するわよ!!」

千歌「う、うん……?」


梨子「と、とにかくすごい子なの?」

果南「うん、要は小学校5年生の時からずっと静岡ではトップクラス、階級目安を無視するくらい全国区の選手ってことだよ」

梨子「す、すごい……曜ちゃんは高飛びで強化指定されそうだし……なんか凄い人ばかり……」


千歌「あはは、本当だよねー!」

千歌「……」

曜「私の話必要だった……?」

梨子「凄い人繋がりで……」

花丸「善子ちゃんそ、そんなに強かったの……? 確かに強かった、けど……」


善子「自信あるって言ったでしょ!」


花丸「う、うん……。あ、果南さん善子ちゃんね、果南さん達と卓球がしたいんだって」

善子「ちょっ!」


千歌「――それ本当!?」グイッ


千歌「やろうよ善子ちゃんっ!! 一緒に卓球!」


善子「わ、私は……やめとく。一番いい時期に一年半もブランクがあるってことがどういうことか、わかるでしょう?」


千歌「大丈夫だよ! カデットとかそういう大会と違って、スクールアイドルの大会だからレベルも下がるから! 善子ちゃんなら絶対優勝候補になるよ!」

59: 2017/06/22(木) 17:31:18.64 ID:i0UcVMUE.net
善子「スクール、アイドル……それは知ってるけど、卓球……?」

ルビィ「スクールアイドルにはね、一緒にスポーツの大会も開かれてるの。メジャー競技ならあるから、卓球大会も開かれてるんだよ」

ダイヤ「千歌さん達はそれに出場しようと?」

千歌「そうなんです!」

善子「そんなのがあるの……」

ルビィ「どっちかと言うと興行的な面が大きいんだけどね。可愛い子が真剣にスポーツするのを見たいっていうコンセプトだから……」


千歌「ね、ね!? スクールアイドルもやってもらわなきゃなんだけど……可愛いし、絶対出来るよっ!」

善子「か、可愛いのは認めるけど……ヨハネだし」

梨子(認めるんだ……可愛いけどさ)

善子「残念だけど、お断り。他を当たって下さい」

千歌「そう言わないで……お願い!」

善子「嫌よ」

千歌「うぅ、最近フラれてばっかり……千歌、結婚出来ないのかな……」

善子「意味がわからないんだけど……」

千歌「じゃあじゃあ今から千歌と……卓球、して下さい!」

善子「……」

60: 2017/06/22(木) 17:31:58.38 ID:i0UcVMUE.net
◇――――◇

花丸「よ、よろしくお願いします……ずら」

花丸(うぅ、なんでマルが……)


善子『高貴な堕天使ヨハネと一戦交えたいだなんて……無謀もいいところね』クククッ


善子『その前に私のリトルデーモンを倒してからにしなさいっ! リトルデーモンっ、行って!』

花丸『え、え……?』

善子『自信持って! あなたは強いから!』


花丸(そんなこと言われたって……)

練習前ラリー

コツン…フワンッ

千歌「これ……」

千歌「花丸ちゃん粒高?」

花丸「はい、一応」


千歌「うわ……マジかぁ……」


果南「いやー、千歌勝てるかなぁ……」


ダイヤ「花丸さんはちょっと特殊ですからね」

61: 2017/06/22(木) 17:33:01.45 ID:i0UcVMUE.net
梨子「特殊?」

果南「うん、マルのラケット……ペンの握りで両面にラバーがついてるの」

梨子「え、でもペンホルダーって……片面しかないんじゃ」

果南「厳密に言うと違うんだよね。片面しかないのは日本式ペンホルダー。シェイクハンドみたいなブレードの形をした両面にラバーがついてる、中国式ペンて言うのもあるんだよ」


梨子「中国式ペンホルダー……じゃあ花丸ちゃんのはそれ?」


ダイヤ「いえ、あれはそのどちらでも無くて……反転式ペンホルダー、ですわ」


ダイヤ「昔日本では中国式が一般的ではなく、しかし両面で打つために改良された、いわば中国式の亜種です。数も少なくあまり見ることはありませんわね」


曜「ていうか花丸ちゃんて、あれ、粒高ですよね?」

ダイヤ「ええ、そうですわね」


果南「正直、多少は慣れてないとストレートで負けちゃうだろうなあ」


梨子「あ、あのすみません……粒高って……」

善子「あなた初心者なの?」


梨子「う、うん……ごめんなさいっ」


善子「あ、謝らなくていいけど……」

63: 2017/06/22(木) 17:40:47.56 ID:i0UcVMUE.net
善子「粒高っていうのは、ラバーの種類のこと。普段よく使われてるのは表面がツルツルしてて平らなものよね。それが"裏ソフトラバー"。実はアレ、裏返すとツブツブがついてるの、その形状によって色々とまた性能が変わるんだけど……。

善子「ほら私のラケット見て、よく見るとツブツブが透けてるでしょ」

梨子「本当だ……」

善子「これをひっくり返して表面がツブツブになってるラバーがあるの。その粒の高さによって、"表ソフトラバー"と"粒高ラバー"っていう二つのラバーに分類されるのよ」

善子「裏ソフトラバーは回転とか球の威力が強い、その分相手の回転の影響をもろに受けるの」

善子「表ソフトラバーっていうのは粒の高さが中ぐらいで、回転はあんまり掛けられないけど球離れが早くてスマッシュとか弾いたりミート技術がやりやすいから前陣向きね。最後に粒高ラバーなんだけど」


善子「あ、始まる。見ながら説明するわ、よく見てて」


「よろしくお願いします!」



高海 千歌

ラケット   サナリオンD
フォアラバー タキネスチョップ(薄)
バックラバ」 タキネスチョップ(薄)

VS

国木田 花丸

ラケット   ストリークR-H
フォアラバー カールP3(極薄)
バックラバー 狂豹2(薄)



※()の中はラバーのスポンジの厚さ。薄ければ薄いほど飛ばなく、厚ければ厚いほど反発力が強くなる

75: 2017/06/23(金) 00:25:24.14 ID:47EKZNVn.net
千歌(よし、サーブだ……。粒高とか久しぶりすぎて忘れちゃった……どうなるんだっけ……)


千歌(いいや、とりあえずバックに強めの下回転で……長さも中途半端でいいから様子見だね)

キュパッ


花丸(純粋な下回転……)パコンッ

千歌「短っ……」


千歌(でもツッツキだし、ツッツキで繋いで……)スッ…ポ-ンッ


千歌「えっ」

ルビィ「1-0」

花丸「ほ」


千歌(うぅ、やっぱやりにく……)


千歌(次はバック深くに、切れた下回転で……詰まれば浮いて帰ってくるはず、あわよくばエースも)

キュッ


花丸「くっ」


花丸(深いっ)ポ-ンッ


千歌(よしっ、打てるっ!)キュパッギュッイン

76: 2017/06/23(金) 00:26:40.86 ID:47EKZNVn.net
花丸(バックにドライブ! 面合わせて……力抜いて……)カコン…フワン…


千歌「くっ!」


千歌(いやー、普通に返ってくるかぁ、流石粒高……でもちょっと高いっ、もう一発フォアクロスにっ)キュパッ…ストンッッ


シュルルルルッ……


千歌「え」

ルビィ「2-0」


善子「わかった?」

梨子「全然」


善子「そりゃそうよね。あれ、粒高っていうのはちょっと特殊なの。相手の回転の影響をあんまり受けないし、それどころか、相手の回転をそのまま逆にして返すのよ」


梨子「――回転を逆に……?」


善子「そ、千歌さんだっけ? あの人が下回転サーブを出したならそのまま返せば上回転になって、上回転を出されたら下回転になって返る。横回転だと色々ぐちゃぐちゃになってよく分からなくなることが多いわ」


善子「さっき千歌さんは下回転を二本出して、二本目はドライブで攻めたでしょ? ドライブは上回転、それを花丸が角度を合わせて返すと、出された上回転が反転して、そのまま下回転になって千歌さんの所へ返っていくわけ」


梨子「カットマン……みたいな?」

77: 2017/06/23(金) 00:28:12.88 ID:47EKZNVn.net
善子「あー……まあ間違ってはないけど。カットマンは自分から回転を思いっきりかけるけど、粒高は相手の回転を利用するの。だからカットマンでもバックに粒高を貼る選手は多いわ」


千歌「っふ!!」キュパッギュインッ

花丸「っ」カコン…

千歌「っ!?」ギュインッッ

カコンッ


千歌(どんどん、回転がっ……)

ギュインッッッストン……シュルルルルッ


千歌(ぁ、またネットミス……)

ルビィ「6-2」

善子「カットマン相手だと強烈なドライブをかけ続ければなんとかなる、こともある。でもね、ペン粒相手だとドライブを強くかければかけるたび……自分の首を締めることになる」


ギュインッカコンッギュインッッ…ストンッ…


千歌「くっ……」


善子「強くかけたらかけた分だけ、自分の回転が反転されてそのまま強い下回転になる。どんどんボールの威力をあげても、それ以上に強い下回転が返ってくる。右に左にブロックで振り回されてやがて体制が苦しくなって、ネットやオーバーが連発」

78: 2017/06/23(金) 00:29:25.27 ID:47EKZNVn.net
善子「花丸のプレースタイルのペン粒は、そうやって様々な回転を反転させて翻弄しながら戦う、"前陣異質型"なの。基本は台に張り付いてブロックを狙うから、ドライブを掛けるにしてもちゃんとコーナーを狙ってノータッチで抜くとかしないと、苦しいと思う」


千歌「よしっ!!」パコ-ンッ!!!!


果南「いいね、スマッシュみたいなミート系なら回転の影響とか無視して打ち抜ける。千歌は粒高慣れてないからなぁ」


曜「粒高ってそんなに慣れてないと難しいの?」

果南「うん、格上でも粒高に慣れてないとそのまま負けちゃうこともあるからね」


ルビィ「8-4です」


果南「でもペン粒はバックのブロックは強いけど、フォアはブロックしにくいし攻撃力もないから多少甘くなってでもフォアを狙うべきだね」

善子「ま、そうよね」


ダイヤ「でも花丸さんは……」

善子「?」


千歌「ふっ!!」ギュインッ!


千歌(多少甘くなってでもフォアに威力強めのドライブっ! フォアならバックみたいにしつこくブロックは出来ないはず、それに精度だって高くない。浮いたところを回転無しのスマッシュでっ)


花丸「――っ!!!」ガツンッッッ!!!!

79: 2017/06/23(金) 00:33:24.00 ID:47EKZNVn.net
千歌「!?」


コツン……コツン……シュルルルッッ…


千歌「え……」

曜「!?」


梨子「――千歌ちゃんのコートでネットの方にに……戻っ、た?」


花丸「ほ……」

善子「ドライブに対して当てるだけじゃなくて、上り側を捉えて、上から下にガツンと振り下ろすと強烈な反転と合わさって、物凄い下回転になる」

善子「……フォアのカット性ショート……なにあれ、あんなの使えたの」




果南「マルの"カット性ショート"は威力抜群だからね、特に"フォアハンドは"」


果南「善子ちゃんの時にあれをやれなかったのは、多分善子ちゃんのコースが良かったからかもね」

善子「ヨハネよ。まあ確かに、甘いとこには出さないようにしてたけど」


果南「マルのあれはめちゃくちゃ切れるんだけど、コースが甘くないと出来ないから」


善子「なるほどね……バックのカット性ショートなら一般的だけど。花丸もしてきたし」


ダイヤ「そうですわね、バックハンドはブロック、フォアハンドは甘くなると強烈なカット性ショート……狙う場所はフォアの厳しいところ。そこを狙えば」


千歌「あっ……」オ-バ-…


ルビィ「10-4」

80: 2017/06/23(金) 00:36:28.83 ID:47EKZNVn.net
梨子「オーバー……カット性ショートっていうのは……さっきの戻る球?」


善子「ええ、台上でツーバウンドだし、返すだけじゃないってことね」


果南「……善子ちゃんはさ、プッシュ受けたことある」

善子「いや、ないけど」

ダイヤ「やはりあなたは強いのね」


善子「?」


千歌「んぅっ!」


ギュインッガツンッッ


千歌「!?」

千歌(バックでもカット性ショート!? でもフォアの時より回転は反転されてないっ、落ち着いてツッツキで相手のバックサイドに……返ってくる球はナックルか上回転の緩い球……今度こそスマッシュで――)


花丸「っ!!!」パコ--ンッッッ!!!!!


梨子「きゃっ」


果南「おっ、と」パシ…


梨子「あ、ありがとうございます……」

千歌「……え」


千歌(サイドラインから外に、抜けてった……)


ルビィ「11-4、セットポイント花丸ちゃんです」

81: 2017/06/23(金) 00:37:36.75 ID:47EKZNVn.net
曜「な、なに今の!? はやっ」

果南「ちょうどよく見れたね……」


善子「なるほど――バックハンドプッシュ、ね」

梨子「プッシュ……」

善子「相手の下回転や少し浮いた球に対して角度を合わせて押し込む技術よ。スマッシュほど攻撃的じゃないけど粒高使いの中ではかなり攻撃力のある技術」


善子「プッシュっていうのは回転がほとんどかかってないナックル性の球でね、普通に返すだけじゃあんまり飛ばないの。だからしっかり振り切って返さないといけないんだけど、軌道が回転がかかってる球とは全然違うからとにかくやりにくい」


善子「今のは決めにいくプッシュみたいだったけど……おそらく」


果南「今のは効いたんじゃないかなー」


ダイヤ「そうね……」



2セット目

83: 2017/06/23(金) 00:41:35.91 ID:47EKZNVn.net
千歌「くっ……」

千歌(さっきよりは早くないけど、プッシュ返しづらい……なんか勢いはそうでもないのに、重い)

ルビィ「1-0」

千歌「……」コツコツ…

キュパッッ…パコンッ

千歌(下回転に対して止めるんじゃなくて、弱めのプッシュ……さっきと攻め方が違う……)

千歌(回転は少なめ……こっちも回転の少ない角度打ちで合わせて……)カコンッ


梨子(なんか……)


曜「千歌ちゃん、さっきより振り回されてない?」


善子「そうね……。1セット目と違ってプッシュとかフリックとか……そういう弾く系のナックルボールで攻めてるわね。1セット目がネット付近に出させて攻めてたのを、2セット目では台から離れさせて攻めてる」


善子「台から離れるとドライブ自体の攻撃力は上がるけど……時間の余裕が出来るから……」


花丸「ふっ……」ガツンッッッ…


千歌(短いっっ……!!!)バッッッ


コツコツ…シュルルルルッッ

千歌「くっ……」

千歌(届かなかった……)


善子「カット性ショートで反転されて急にネットギリギリに落とされる。そうすると今みたいに追いつけない」

84: 2017/06/23(金) 00:42:48.56 ID:47EKZNVn.net
梨子「すごい……」


曜「千歌ちゃん……」


善子「強烈なプッシュがあるってことを頭に入れてると、前に出て攻めにくくなる。ああなると、なかなかやっかいね」


善子「前に出て攻めにくくなると……」


ガツンッッ

千歌「またっ……」ツッツキッッ


千歌(なんとか繋いだっ……回転もかけたし、プッシュは……)


パコ-ンッッッ


千歌「ぁ……」ポ-ンッッ

善子「カット性ショートへの反応が遅れて前のめりになる、前のめりになると遅めのプッシュでも差し込まれて、得点される」


ルビィ「5-1」


梨子「ど、どうすればいいの……?」


善子「簡単よ、回転を使わなきゃいいの。回転使わない球なら、回転反転もされないし」


果南「千歌思いっきり回転で攻めてるしね、あぁ……また横回転なんて出して……」

ルビィ「6-1」


千歌(どうしよう……負けちゃう)


千歌(サーブは全然効かないし……横出すと訳わからなくなっちゃうし……)


千歌(下……も出しすぎだし、あとは……)


千歌(うん? 粒高は回転を反転させて強くなる……自分からは上手く回転はかけられない)


千歌(てことは……ナックルで攻めたら、どうなるかな)

85: 2017/06/23(金) 00:44:53.51 ID:47EKZNVn.net
千歌(……短いと、フォアならフリック……バックならプッシュで押し込まれる。なら長いサーブで勢いのあるナックルロングサーブなら?)


パコンッッカコンッ


花丸「はやっ」チョコンッ…ストンッ


ルビィ「6-2」


千歌(ネットミス……効いてる)


千歌(花丸ちゃんのサーブは……バックに曲がる横下回転と下回転だけ。サーブは単調……下回転を出してきたらバックのプッシュ狙い。だったら……)

キュパッカツカツッ


千歌(回転弱めの、長いツッツキでっ押し込むっ)バンッ


花丸「っなが!?」ポ-ンッ

千歌(落ち着いて、叩くっ!)

パコ-ンッッッ


千歌「ほ……」

ルビィ「6-3」


花丸(なんか嫌な予感がするずら……とりあえずミス待ちで守ろう)キュパッッ


千歌(横下回転のサーブ! 台からちょっと出る……バックでドライブじゃなくて、角度打ち、速さはいらない、花丸ちゃんの正面じゃないとこにっ)カコンッッ


花丸「っ」カコンッストンッ…


千歌「よしっ!」


ルビィ「6-4」

86: 2017/06/23(金) 00:47:50.59 ID:47EKZNVn.net
善子「あら、さっきの3点はいいんじゃない?」

梨子「な、なにか変わったの?」

善子「ほとんど回転を使ってない。サーブはナックルでロングだし、レシーブも回転を弱めて速度を出して、相手の深いところに」

善子「ナックル回転の球は粒高にとって天敵でね、回転を利用出来ないから。自分からかけられることはかけられるんだけど、どうしても弱いし甘くなりやすい。打ちごろになるってことね」

善子「それに、粒高の場合は台から出るような球は攻めにくいからこれも有効」

果南「うん、いいね」



千歌「しゃっ!!」

ルビィ「6-8」

花丸(ほとんど長い球ばっかり……ドライブもあんまりして来ないし……もう慣れられちゃった……)


ダイヤ「案外慣れるまで早かったですわね」


善子「花丸は技術ひとつひとつはいいけど、基本的な対策をされちゃうと、なんとかなっちゃうパターンのプレイヤーなのね」

果南「そうなんだよね、カット性ショートもドライブ回転でしか威力は強くないし、プッシュも台から出ないくらいの下回転でしか上手く打てない」


果南「だからナックルで長く攻めればマルは対処出来ないんだよね」

ダイヤ「ナックルボールの処理を上手く出来るペン粒と当たるのが、一番やっかいですわね」

善子「でもあんまりいないわよ、そういう人。居てもある程度の実力がある人ならドライブの威力だけでぶち抜ける」

曜「上級者には通用しないってことか!」

善子「そ、だからトップ選手でペン粒なんてほとんどいないでしょ」

善子「言っちゃあれだけど、伸び代がない戦型なのよ」

87: 2017/06/23(金) 00:48:55.77 ID:47EKZNVn.net
果南「善子ちゃんの場合も多分そうだよ。コースが厳しいのかドライブが凄いのかわからないけど、マルはフォアのカット性ショートもプッシュも見せなかった。多分見せられなかったんだよ、チャンスボールがなくって」


善子「あなた褒めるのが上手いわね、堕天使の宝珠をあげてもいいわ」


果南「う、うん……」

梨子(やっぱり変な子だ……)


ルビィ「9-11、セットポイント千歌さんです」


曜「取った! 2セット先取だよね?」


果南「うん、次取った方が勝ち」

千歌「ふー……」コツコツ…

千歌「よしっ」


梨子「すごい……千歌ちゃんがリードしてる」


善子「回転が少ない球を出し続けて花丸の返し方がかなり単調になってるのがわかる? 花丸は棒球で返すか、弱めのカット性ショートで返すことしか出来ない。で、浮いたら」

千歌「しゃっ!!」スマッシュッッ


花丸「くっ……」

ルビィ「1-4」


千歌「ふっ……!」カコンカコンッッ


花丸「ぁぅ」


千歌「よしっ!」

曜「わ……サービスエース……」

89: 2017/06/23(金) 00:53:27.50 ID:47EKZNVn.net
果南「それが出来れば中途半端に浮いた球を裏ソフトで強打することもできるからね。マルも挑戦してた時期はあったんだけどねー、やっぱり難しいみたい」

善子「まあ……それが出来たら完全に上級者のペン粒よね」

梨子「そっか……」

善子「それが出来ない以上……」


千歌「やったー!!!」

ルビィ「11-4、千歌さんの勝ちです」

花丸「負けちゃった……」

千歌「ありがとうございました! ほんと負けちゃうかと思った……」

花丸「えへへ、千歌さん強いですね」

千歌「えへへ、ありがと! 楽しかったよ!」キラキラ

ルビィ(なんか、かっこいい……!)


善子「実力自体は千歌さんの方がずっと上だと思うけど、ペン粒はそういう相手にも勝てちゃったりするから、怖いのよね」

梨子「すごいね……」

善子(千歌さん、結構小さい時からやってるらしいけど、確かにそういう感じはあったわね。やっぱり小さい時にやってたかやってないかだと――全然違うし)

善子(でもなんか……)

ダイヤ「うーん……」

果南「どうしたの?」

ダイヤ「いえ、千歌さんのプレーを見て合う用具を考えたのですが……あまりどれかに特化しているようにも思えないので、無難に性能の高いものがいいかと思って」

90: 2017/06/23(金) 01:02:52.60 ID:47EKZNVn.net
千歌「――善子ちゃん!!」キラキラ


善子「な、なによ」

千歌「試合しよっ!」



曜(千歌ちゃん、楽しそう……強い人とするのは楽しいのかなやっぱり?)



ブブブブ


善子「あ……ごめん用事が」

千歌「え!?」

善子「ほんとよ、帰ってこいって」

千歌「そ、そんな」

千歌「試合したい!」

善子「そ、そんなこと言ったって仕方ないでしょ!」

千歌「うぅ……」

善子「わ、分かったわよ……あなた、私と同じ学校なんだから……暇な時体育館に行くから……」

千歌「本当!? 絶対だからね!」

善子「わ、わかったから」


善子「じゃあルビィ花丸、またね」

ルビィ「うん、ばいばい」

花丸「またね」


善子「あ、他の人も」ペコリ…


曜「ばいばーい」


スタスタ


曜「礼儀正しい時もあるよね」アハハ


梨子「不思議だね……」

91: 2017/06/23(金) 01:04:17.92 ID:47EKZNVn.net
ダイヤ「じゃあ千歌さん、またショップへ行きましょうか」

千歌「え、打たないんですか?」


ダイヤ「もう十分打ったでしょう、ほら行きますわよ」

千歌「ふぁい……」

ダイヤ「じゃあルビィ、また家でね」

ルビィ「あ、うん……」

果南「じゃあね」

千歌「またねっ!」

スタスタ


ルビィ「なんか……卓球してる時の千歌さん、かっこよかったね。それに、楽しそうだった」

花丸「そうだったね……」

ルビィ「……」


花丸「ダイヤさんを説得してさ、やってみたら?」

ルビィ「え……」

92: 2017/06/23(金) 01:04:43.90 ID:47EKZNVn.net
花丸「卓球も今まで通り楽しそう、スクールアイドルもずっとやってみたかった……。好きと好きが一緒に出来るなんて、これ以上ないと思うずら」

ルビィ「……でも」


ルビィ「私が色んな習い事から逃げ出したせいで……お姉ちゃんは好きだった卓球やめて……それなのにルビィがする、なんて……」

花丸「……そっか」


花丸「ダイヤさん……逃げたっていうルビィちゃんのこと、恨んでるのかな……マルは違うと思うけど」


花丸「逃げ出したなら逃げ出したなりに……好きなことを全力でやった方が、いいと思う」

ルビィ「っ……」


花丸「家ではあんまり話さないんだっけ?」


ルビィ「うん……忙しそうだし、話も合わないし……」

花丸「話してみたら? それがだめなら……」

93: 2017/06/23(金) 01:05:53.68 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

卓球ショップ


ダイヤ「あなた、自分の得意な技術は?」

千歌「えっと……なんだろ」

果南「うーん……ドライブ?」

千歌「多分ドライブ!」

ダイヤ「まあそれなら攻撃用で……木材? 特殊素材?」

千歌「あんまり飛びすぎるのも困るし……木材、かな? 特殊素材も使ってみたいけど……」


梨子「これってこんなに種類あるのに……試し打ちとかも出来ないの?」


果南「できるところもあるんだろうけど、沼津じゃあね……」

果南「そもそもラケットにラバーを貼り付けなきゃだから、その時点で売り物にはならなくなるからね……」

梨子「そうなんだ……自分に合うのを見つけるのも大変そう」

果南「大体の人はラバーに合わせるみたいなものだからね」

千歌「いっぱいあって全然わかんない」


ダイヤ「これなんかいかが? 癖はないし、千歌さんのドライブの邪魔をすることはないはずよ」

千歌「うーん……?」


千歌「やっぱりもうちょい考えようかな……」

94: 2017/06/23(金) 01:06:42.03 ID:47EKZNVn.net
ダイヤ「そうですか……」

ダイヤ「梨子さんには自信を持ってオススメできるラケットがありますのよ」

梨子「どれですか……?」

ダイヤ「これですわ。値段も安くて、木材でコントロールもしやすい昔からある定番の名品なのです。これなら上達の妨げにもならないでしょうし、上達してからでも十分使っていけますので、自信を持ってオススメできます」

千歌「あ、それ知ってる! いいやつ!」

梨子「へえ……これなら安いし……」

ダイヤ「インターネットでも調べてみるといいと思いますわ」

ダイヤ「次にラバーですが……これもオススメがありますの」

ダイヤ「考え方にもよりますが、初心者は扱いやすくコントロール性の高いラバーがオススメです」

梨子「そんなに違うんですか?」

ダイヤ「ええ、裏ソフトラバーにも種類があって大きく高弾性、粘着性、テンションラバーの三つです」

梨子「ま、また種類……」

曜「卓球の道具はよくわからなくなるよね、私もあんまりだし」アハハ

ダイヤ「高弾性、これは名の通りスピードが出るラバーですわ」

ダイヤ「粘着性ラバーは、中国のトップ選手が好んで使っていますの」

95: 2017/06/23(金) 01:07:35.34 ID:47EKZNVn.net
曜「中国って卓球強いんだよね!」

ダイヤ「ええ、ここ何年も敵なしの状態が続いていますわね」

梨子「この粘着性ラバーはすごいってこと?」

ダイヤ「粘着性ラバーというのは、表面がペタペタしていてそれが回転を生み出すの。スポンジが硬くて食い込みにくいから、シートに擦ることで威力を出す」

ダイヤ「なのでちゃんと振り切れることが前提のラバーと言えますわね。使いこなせれば粘着独特のぐにゃりと曲がる球が出せたりしますの」

梨子「食い込ませる……擦る……」

ダイヤ「それはまた練習していくうちにわかるようになりますわ」

ダイヤ「次にテンションラバーというものですが……」

梨子「は、はっせんえん……」

ダイヤ「それはテンションラバーの代表的なラバーで、世界のトップ選手からアマチュア選手まで圧倒的な支持を得ているラバーなんですの」


梨子「やっぱりすごいの?」


ダイヤ「ええ、テンションラバーの特徴は、スピンと回転が高い次元で両立されているという点ですわね。世界の主流よ。粘着ラバーは振り切れないと棒球になりますが、テンションラバーだと勝手に前進回転がかかったりかなりサポートしてくれますの」

97: 2017/06/23(金) 01:11:13.68 ID:47EKZNVn.net
果南「でもそうしたら、このメーカー、日ペン単板置いてないってことに……」

果南「他のメーカーにするしかない、なるほど……うぅ、ラケット決めてたのに……廃盤なんてうそ……」

ダイヤ「日ペン?」

果南「もう廃盤なんだって……なにさ、売れないからって……日ペン使いはいるのにさ」ブツブツ

果南「おかしいよ、一番有名なメーカーのくせに……」ブツブツ

曜「凹んでる……」

千歌「果南ちゃんさ、ラケット持ってたよね? あれどうしたの?」

 

果南「壊した」


 

千歌「え?」


ダイヤ「……」


ダイヤ「日ペン単板は厚い木が一枚で構成されていて、合板と違って強度が低いんですの。台に強く当てたりすると、あっさり割れることも」


果南「同じの買おうか迷ったけど高いからさ……それまで適当な合板買って凌いでたんだけど……本格的にやるならって思って……」


果南「はぁ、いいよねシェイクのみんなは……」


梨子「あ、あはは……」

98: 2017/06/23(金) 01:11:57.37 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

スタスタ


千歌「善子ちゃんっ! おはよう!」

善子「お、おはよう」


千歌「ラケット持ってきた!?」

善子「今日はやらないわよ」

千歌「え!?」

善子「え!? じゃないってば」

千歌「待ってるから、絶対きてね!!」

千歌「あ、善子ちゃんてどんなラケット使ってるの!?」

曜「ぐいぐい行くね……」

梨子「そうだね……」

善子「ど、どうしたのよいきなり」


千歌「強い人ってどんなの使ってるのかなーって!!」


善子「それも試合する時に見せてあげるから」


善子「でも、あなた……カットマン用の使ってたわよね? 早く替えた方がいいんじゃ……」

99: 2017/06/23(金) 01:12:35.10 ID:47EKZNVn.net
千歌「そうなんだけどさあ……どれがいいのかなって」

善子「とにかく攻撃用にすれば大分変わると思うけど……それなら多分花丸の時もドライブだけで撃ち抜けたんじゃないですか?」

千歌「えへへ、そうかな。じゃあ早く替えないとだよねー」

千歌「じゃっ、また今度ね!」


◇――――◇


千歌「体験入部……?」

千歌「本当に!?」

花丸「はい、よろしくお願いします」

果南「おー……」

果南「ルビィちゃん、平気?」

ルビィ「が、頑張りますっ……」

千歌「やった!! ねね、これは強制じゃないんだけど……2人は卓球とかする気ない?」

ルビィ「あ、実はそっちもしてみたくて……」

花丸「マルも……」

千歌「ほ、本当に……っ」ウルウル

千歌「やったっ!!! これからよろしくっ!!」

曜「仮だからね」アハハ…

100: 2017/06/23(金) 01:13:34.39 ID:47EKZNVn.net
善子「……た、体験入部?」コソコソ

善子「な、なによお……ふたりして、そんなこと私に一言も……」ウル

◇――――◇

ダイヤ「ふぅ……帰りましょうか」

ダイヤ「ルビィは先に帰ったかしら」

ガチャッ

ダイヤ「?」

ダイヤ「なっ!?」


「――久しぶりね!!」


ダイヤ「ま、鞠莉さん!?」

鞠莉「シャイニー! 身長、大きくなっちゃって!! どのくらい伸びた? 10cmは伸びてる?」ナデナデ


ダイヤ「べたべた触らないで」

ダイヤ「もうっ、一体どうして……」


鞠莉「向こう飽きちゃった!! 大学ではまた向こうに行くし、今くらいこっち戻ってきてもいいかなって!」


ダイヤ「……あ、相変わらず自由奔放ですのね」


鞠莉「ふふー、嬉しいでしょ?」


ダイヤ「あなたね……」



鞠莉「――それに、もう廃校になっちゃうなら、最後くらい戻って来てもいいでしょう?」

101: 2017/06/23(金) 01:20:07.47 ID:47EKZNVn.net
ダイヤ「なるほど……」

ダイヤ「とりあえず座って」

鞠莉「んー、果南は元気?」

ダイヤ「ええ、特に問題なく」


ダイヤ「なんだかよくわからないことをしていますけれど」


鞠莉「?」


◇――――◇


ダイヤ「電話で話した通り、スクールアイドルの中でスポーツ競技をするらしいんですの」


ダイヤ「一応真剣らしいです。わたくしも映像を見たわけではありませんが」

鞠莉「卓球ねえ、いいじゃない。久しぶりにする?」

ダイヤ「わたくしはもう全然できませんわよ」

鞠莉「お家のこと? 忙しい?」


ダイヤ「それもありますけれど、受験もありますし」

鞠莉「あー、なるほど」


ダイヤ「今なら果南さんが体育館にいると思いますわ」


鞠莉「本当? じゃあ行こうよ!」

103: 2017/06/23(金) 01:22:26.42 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇
体育館


ルビィ「うゅ……お、お姉ちゃん」

ダイヤ「ルビィ……先に帰ったんじゃ、なにをしているの?」

ルビィ「え、えっと」

千歌「仮入部したいって!」

ダイヤ「仮入部……?」

ルビィ「……」

ダイヤ「ルビィ、どういうこと? 答えなさい」

ルビィ「……ぅ」

ダイヤ「答えなさい」

ルビィ「……」


花丸「……ルビィちゃん」


ダイヤ「あなた、わたくしは最初に言いましたわよね? 妹だけは巻き込まないでって」


千歌「で、でもルビィちゃんはしたいって」

ダイヤ「――家族の問題に口を出さないで」


千歌「っ……」

ダイヤ「全く、スクールアイドルなんていうわけのわからないものを……」

ダイヤ「ほら、ルビィ帰るわよ」


ルビィ「……はい」


果南「ち、ちょっとダイヤ……」

104: 2017/06/23(金) 01:25:39.25 ID:47EKZNVn.net
鞠莉「――かなーんっ!! シャイニー!!!」

果南「へ」

鞠莉「久しぶりー!!!」ギュッギュッ

果南「ちょ、え、鞠莉!?」

梨子「……だれ?」


鞠莉「……あれ、出てくるタイミング間違った?」スリスリモミモミ…


果南「……揉むな」//

ダイヤ「……」


ダイヤ「向こうがつまらなかったから戻ってきたらしいですわよ」


果南「そんな理由で……」


鞠莉「そんなってなに!? 廃校が決まって、最後の思い出が欲しいって思うのってそんなに不自然?」


果南「そう言われると……」

鞠莉「どうせ卒業したら向こうに行くから」


鞠莉「果南たちもスクールアイドル? っていのも思い出作りでしょ?」

千歌「思い出作りじゃありませんっ!」

鞠莉「?」


千歌「あ、えーと高海千歌です。思い出作りといえば思い出作りかもしれないですけど……でも優勝することしか考えてないですから!」

106: 2017/06/23(金) 01:27:23.65 ID:47EKZNVn.net
鞠莉「おぉ……いい心がけね!」


鞠莉「それに――果南、卓球続けてたんだ?」

果南「……一応ね」

ダイヤ「……」

千歌「?」

鞠莉「よかったねっ! 私も久しぶりにやりたくなってきちゃった」

千歌「卓球出来るんですか!? というかあなたは……」


鞠莉「小原鞠莉三年生よ。、一年生の夏前に海外に行って、明日から戻ってくるの!」


千歌「金髪、ハーフ……可愛い、スタイル抜群……」キラキラ

曜「ぁ……」

ガシッッ

千歌「――鞠莉さん! スクールアイドル、やりませんか!?」

曜「やっぱり」


鞠莉「わたし? 私はそういうの無理だって、柄じゃないっていうの?」


千歌「そんなことないです! 可愛いし、スタイルもいいし……絶対向いてます!」


鞠莉「あはは、そんなに褒めても何も出ないよ?」


ダイヤ「じゃあわたくし達は帰りますわ、また明日」

ルビィ「さようなら……」ペコリ

千歌「あ、うん、またね!」

108: 2017/06/23(金) 01:28:02.77 ID:47EKZNVn.net
梨子「……なんかルビィちゃん大変そうだね」


花丸「……ダイヤさんのことを気にしすぎなんだと思います」


花丸「自分がしたいって、はっきり言えばダイヤさんも、きっと許してくれます。あの人は厳しいけれど、誰よりもルビィちゃんのことを考えてるはずなんです……」

鞠莉「……なんだか訳ありみたいねえ?」


鞠莉「ダイヤかぁ、昔からルビィちゃんのこと話してたよね」


果南「うん、ルビィちゃんには厳しくしてるみたいだけど……」


千歌「どうしたらルビィちゃんに正式に入って貰えるかな……」


梨子「家族の問題だし、ちゃんとルビィちゃんの口から言わないとだめだよね……」


千歌「はぁぁ、難しいなぁ……」

109: 2017/06/23(金) 01:29:31.28 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇





鞠莉「どう? 卓球楽しい?」

果南「うん……まあ、今回はおかげさまで」

鞠莉「じゃあ、私も果南達の練習観に行こうかなー?」

鞠莉「卓球ならまたちょっと私もしたいし! ね、果南久しぶりに打とうよ」

果南「それはいいけど」

鞠莉「楽しく卓球するのが、一番だものね。今度は、上手くいくといいね」

果南「……うん」


◇――――◇

千歌「……善子ちゃんも!?」


善子「だ、だってなによ! 私にも一言くらい言ってくれたっていいじゃないっ!」


花丸「よ、善子ちゃんこういうの興味なさそうだったから……」


善子「少なくとも花丸よりは知ってる自信あるんだから!」

千歌「善子ちゃんスクールアイドルの方に興味あるの!?」


善子「ち、ちょっとだけよ」


善子「どうせこの後卓球するんでしょ、それまで暇だし、様子見!!」

110: 2017/06/23(金) 01:31:11.91 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


千歌「善子ちゃん本当に可愛かった」キラキラ

千歌「ねえ一緒にやらない?」

善子(意外と楽しかった……みんないい人だし)

善子「か、考えておくわ」

千歌「ほんと? えへへ、楽しみにしてるね」

千歌「よし、打とうよ善子ちゃん」

善子「ん……」


千歌「ラケット見せて善子ちゃん!」

善子「はい。あなたまだカットマン用なの?」

千歌「あはは……変えたいけど迷ってて」

千歌「あ、これ粘着?」



果南「運が良かったね、善子ちゃんが卓球してるところ見られるよ」


鞠莉「あの子強いの?」


果南「全国に何回も行ってるんだって」

鞠莉「うそ……果南は試合しないの?」

果南「私はいいってば」


鞠莉「それ今の果南のラケット?」


果南「うん、ラケットもラバーも安いやつだけどね」

鞠莉「あんなに派手に壊したんだものね」クス


果南「それは言わないで」

111: 2017/06/23(金) 01:31:49.88 ID:47EKZNVn.net
鞠莉「本格的にプレーするつもりなら、また買ったら?」


果南「それがさあ、使ってたやつ廃盤になったらしくて」


鞠莉「あら……」

果南「千歌も攻撃型なのにカットマン用使ってるし……みんな道具には苦労してるよ」アハハ…

鞠莉「ふぅん……そうなのね」

鞠莉「じゃ、ちょっと打ちましょ果南♡」

千歌「あ、鞠莉さん打つんですか!? うぅ、みたい」

果南「千歌はそっちに集中しないとだよ」

千歌「はぁい」


曜「じゃあ私たちは3人で打とっか」


曜「私、粒高と打ったことないんだよね」

花丸「最初はなれないかもしれないですけど、慣れたら簡単ですよ」


梨子「ルビィちゃんは帰っちゃった?」


花丸「……はい」


梨子「そっか……」

112: 2017/06/23(金) 01:34:08.97 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

曜「鞠莉さんは中国式ペン……」


鞠莉「そうなの、グローバルに行こうと思って」


曜(果南さんとの練習見てた感じだと、普通くらい?)


梨子「あ、あれ」ヒョイッ


梨子「球が来ない……へ、変な感じ」


花丸「だから粒高は慣れてないとそうなっちゃうんです」

梨子「む、難しいね……」


花丸「あの、曜さんて本当に粒高初めてですか?」

曜「初めてだけど……やっぱり難しいよねー」アハハ


花丸(全然初めてじゃない感じ……確かに最初は出来てなかったけど、すぐに軌道に慣れて……)

 
花丸(――運動神経がいいのかな……?)



千歌「よーしっ、善子ちゃんっ、試合!!」


善子(なんかこうやってると……卓球してた時のこと思い出すっていうか……)


曜「お、始まる……」

曜「善子ちゃんて何がすごいの?」


花丸「何が……えっと、全部……?」


曜「な、なるほど……強い人にはそう言いたくなる気持ちもわかるけど」

花丸「あ、でも……一つすごい技があるんです」


曜「すごい技……」

113: 2017/06/23(金) 01:35:08.56 ID:47EKZNVn.net
果南「さっき見てた感じだと、やっぱり相当強そうだね……左利きだし」

梨子「左利き……」

果南「右と回転が逆になるからね、慣れてないからやりにくいし左特有の球って感じのもある」


鞠莉「こと卓球においては……左のほうが断然有利よね」ギュッ

果南「……くっつきながら見る必要はないと思う」

鞠莉「なんで?」

曜(仲良いなあ……)

花丸「あ、審判行ってきます!」

梨子「あ……わたしがいこっか?」

梨子「その、審判の練習もしたいし」

花丸「いいんですか?」

梨子「うん、まかせて!」

花丸「じゃあ、お願いしますずら」

タッタッ


千歌「うぅ、やっぱり左利きは緊張するなあ」

千歌「そういえば普段から左利きなの? 大変じゃない?」

114: 2017/06/23(金) 01:40:06.19 ID:47EKZNVn.net
善子「普段は右よ、卓球とかスポーツするときは左だけど」

千歌「な、なんかかっこいいっ……!」

善子「ふ、ふふ……そうでしょ」シュビッ

千歌「善子ちゃん、本気出してね!! どれだけ離れても!」

善子「……はぁ、分かった」

善子「じゃ、サーブで」

善子「ふぅ……」

 

「よろしくお願いしますっ」

 

高海 千歌

ラケット   サナリオンD
フォアラバー タキネスチョップ(薄)
バックラバー タキネスチョップ(薄)

VS

津島 善子

ラケット   ティモボルALC
フォアラバー 紅双喜キョウヒョウneo3(特厚)
バックラバー ラクザXソフト(厚)

116: 2017/06/23(金) 02:06:58.48 ID:47EKZNVn.net
千歌(左利き、左利き……てことはサーブとかドライブの回転も全部逆……横回転はフォアに曲がってきて、ドライブはバックに食い込んでくる……おっけー、楽しみ……)ワクワクッ…

善子「……」スッ…フワッ…

千歌(なかでも、フォアにぐにゃんて曲がる横回転サーブは左にしか出せない。当然そこを警戒して――)


千歌(横回転だっ!!)グッ

善子「ふっっ」カコンカコンッッ!!!

千歌「!?」


梨子「――え、えっと……1-0」

梨子(サーブ、はやい……あっという間に千歌ちゃんのバックの方に抜けていった……)

千歌「くー……」

千歌(バックのサイドラインギリギリ……しかも早い。ゆったりしたフォームだったのに……ていうか横回転のフォームだったでしょ……)



鞠莉「わお……いきなりノータッチ」

果南「いやー、いいサーブ……」


鞠莉「いまラケットの角度、ギリギリまで横回転のだったと思う。手首のインパクトだけでよくあそこにコントロール……」


曜(やっぱりすごいんだ……)

117: 2017/06/23(金) 02:08:19.56 ID:47EKZNVn.net
果南「1球目からサイドラインギリギリのロングサーブ……しかもノータッチで抜かれたんだから、これは厳しいね」


果南「いつでもあそこに決められるって思うとチラついて横回転の対処が遅れる」


スッ…キュパッッ


千歌(今度こそ横回転!!)

千歌(速度は速くないっ、このままサイドから出たところをクロスに、ドライブ……!)ググッ


グニャンッッ…ググッッ


千歌「!?」ブンッッ……カツカツ…

梨子「……2-0」


千歌(――ぜ、全然伸びて来ない……あんなに、ぐにゃんって、曲がるなんて……)

千歌(くるってわかってたのに……フォアの短いところに沈みながら曲がっていった……)


千歌(やっぱり……すごいっ)キラキラ


善子(開幕からノータッチ二本でサービスエースされてなんで楽しそうなのよ……まあいいわ)


善子(この人のサーブはそんなに難しいものもないし……)

キュパッ


善子(下回転……)スッ…グッ


千歌(みじかっ、ストップ!?)グイッッチョコンッ



千歌(なんとか取ったっ、でもっ……)

118: 2017/06/23(金) 02:09:57.70 ID:47EKZNVn.net
善子「……」グググッ

千歌(ドライブがくるっ……!!)

善子「鎮魂の魔宴、13式……っ」ブツブツ…ググッ

花丸「あれずら!!」

曜「え!」

千歌(!? い、いつまで待つの!? 身体沈み込ませて、そんなに打球点落として……一体)


善子「"失楽園"」ピョンッッ…ブンッッギュワンッッ


千歌(た、球が上に飛んだ!?)

千歌(ううん、違う……このままじゃ、すごい回転で、弧を描いて、私のコートに……突き刺さる!?)

 

千歌(――ループドライブっ……!!!)

 

ギュワンッ


千歌(深く来るとおもったのにっ、回転が多すぎて一気にネット前で落ちてきた!?)

千歌(大丈夫スピードは遅いっ! 落ちた瞬間ネット付近から加速してくる! 少し下がって……)


善子「……ふふ」


ズドンッギュルルッッッ…ギュオンッッ


千歌「う、うそっ!!」ブン……


コツコツコツ……シュルルルルルルルルルッ……

119: 2017/06/23(金) 02:12:14.35 ID:47EKZNVn.net
梨子(す、すごい回転……フェンスのところでまだ回転してる)

梨子(ネット付近に落ちたボールが一気に加速して――沈んだ……?)


千歌「……ごく」ダラリ…



善子(や、やっぱりこれが決まると気持ちいい!!)ホワワ…


鞠莉「うーん……グレイトね」

曜「今の?」


花丸「うん……ループドライブ、善子ちゃんのあれ、回転がかかりすぎてて、深く入るとかオーバーするって思った球が急にネット前に落ちてくるの」


花丸「それでバウンドした瞬間、跳ねてくるんじゃなくって、ネット付近から一気に沈み込んでくるから、満足な体制で打てなくて」


鞠莉「打つ前に膝を落として思いっきり身体を沈み込ませてた。振りは大きいけれど、打った後に時間はあるし、立て直すのも難しくないように出来てる」


果南「うん、善子ちゃん中国の粘着ラバーって言ってたし……完全に擦る力だけで飛ばしてるから急に軌道がぐにゃって変化するんだろつね」


曜「ループドライブ……繋ぎとかの目的だよね、普通は」

鞠莉「それを必殺の武器にまで磨いたって感じかしら。あれを返したところでおそらく、強打に繋ぐかカウンターをカウンター返しってところまで組み立てられてそうね」


果南「これは……厄介どころじゃないね」

曜「あれが全国レベル……」

千歌「すごい……」


千歌(な、なに今の……すごすぎるよ!!)


千歌(他にどんなのがあるんだろう、もっと、もっと!)ワクワク

善子(なにこの人……気味悪い……)

 

梨子(千歌ちゃんすごい楽しそう……)

120: 2017/06/23(金) 02:14:21.36 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

果南「普通のドライブも、威力っていうより回転重視。でもコースが常にサイドから切れていったり、とにかくいいコントロールだね」


鞠莉「ちかっちの場合は回転でそのまま決まることもあるけど、本来のスタイルは回転で崩してのスマッシュとかカウンターパンチャーって、感じかしら」


果南「多分そんな感じだね、台上もサーブも問題なくうまいし……フォアの範囲もシェイクにしては極端に広い」

果南「クラシックなスタイルって自分で言ってたけど、確かにそうかも」


梨子「――えっと……11-2 11-4 11-2……善子ちゃんの勝ち、です」


善子(こ、これで……いいのよね)


千歌「……」


善子「あ、あの」

千歌「――すごい!! 善子ちゃん、私善子ちゃんともっともっと卓球したくなっちゃった!!」


善子「え!?」

千歌「本当に強いんだねえ」エヘヘ


千歌「ねえ、Aqoursに入って欲しい!」

善子「だ、だから私は……」


千歌「スクールアイドルの方も興味あるんでしょ? 善子ちゃんのいうリトルデーモン……増やせるかも」


善子「!?」

121: 2017/06/23(金) 02:16:27.52 ID:47EKZNVn.net
千歌「堕天使とかをコンセプトにした曲も作れちゃったり……するかも」


梨子(デタラメばっかり……そんなので)

善子「やる!!!」


梨子(……ええ?)


善子「全国にリトルデーモンを増やす!!」

千歌「本当に!?」ガシッ


善子「このヨハネと契約しようというのだから……それなりの覚悟はあるのよね」


千歌「う、うん!」

善子「……ほ、本当にいいの?」


千歌「いいけど……どうしたの?」

善子「う、ううん」

千歌「卓球もしてくれる!?」

善子「……それは」


千歌「せっかく強いのに勿体無いよっ」


善子「……大会には出なくてもいい? 練習だけなら、参加してもいいから」


千歌「……大会、嫌いなの?」

善子「……別にそういうことじゃないけど」

千歌「と、とにかく! 練習だけでも嬉しいよ! じゃあ善子ちゃん、今日からよろしくね!」

善子「……うん」

曜「善子ちゃん入ってくれるんだ!!」

善子「い、一応ね」

果南「よろしく」


鞠莉「んー、新メンバー誕生の瞬間に立ち会えてマリーは幸せだわ」

千歌「これを機に鞠莉さんもいかがですか?」


鞠莉「貪欲ねちかっちは」クスクス

123: 2017/06/23(金) 02:38:39.78 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


ルビィ「……わ」パラパラ


ダイヤ「入るわよ」ガラッ


ルビィ「ぴぎっ……」


ダイヤ「……ルビィ、それは」

ルビィ「あ、あの」


ダイヤ「見せなさい」

ルビィ「ぅ……」

ダイヤ「スクールアイドルの雑誌……」

ダイヤ「こんなもの買って……そんなに好きなの?」

ルビィ「……うん」


パラパラ…


ルビィ「あの」

ダイヤ「ルビィ、これは?」


ルビィ「え……? スクールアイドルの卓球の特集ページ、だよ」


ダイヤ「卓球……ま、待ってこの人……見たことがあるわ」


ルビィ「え? ――Saint Snowの、鹿角聖良さんだよ」

124: 2017/06/23(金) 02:40:03.71 ID:47EKZNVn.net
ダイヤ「鹿角……」

ルビィ「この前のスクールアイドル卓球の大会で聖良さんが個人優勝してね、その特集ページなんだ。個人が優勝したらグループのことも大きく取りあげてくれるの。ほら、インタビューとか写真とか五ページも特集されてる」

ルビィ「この大会をきっかけにスクールアイドルとしても注目されて、どんどん伸びてる二人組グループなんだよ」

ダイヤ「鹿角……思い出したわ。この人、普通の競技としての卓球で……全国トップクラスだったはず。確か妹の方も……」

ルビィ「そう、らしいよね。ルビィはあんまりわからないけど、ここに経歴載ってるよ」


ダイヤ「!!!」


ダイヤ「バンビ、ホープス、カデット……各世代で北海道優勝経験複数あり……全国でもカデット2回、ホープス3回……中学2、3年生時に、ジュニア、カデットの部……全国二連覇……全日本選手権一般の部、ベスト8……。加えて、全中連覇……」

ダイヤ「……ルックスもとても良いのでメディアに取り上げられていましたわね、そういえば」

ルビィ「……」


ダイヤ「まさか、こんな人がスクールアイドルをやっているだなんて。確かに、ここ二年ほど名前を聞かなくなったと思ったら」


ダイヤ「レベルは高いのですわね、侮っていましたわ……」

125: 2017/06/23(金) 02:41:38.74 ID:47EKZNVn.net
ダイヤ「それでもルビィは、やりたいの?」


ルビィ「……う、うん」

ダイヤ「……どうして?」

ルビィ「す、スクールアイドルってね……凄いんだよ。みんな、キラキラ出来て、見てるだけで勇気とかやる気とか、貰えるの」

ルビィ「ルビィも、み、みんなにこの気持ち知って欲しいし、だから……そのためには、与えられるだけじゃなくて、自分でもやってみたいって、そう思って」


ダイヤ「……卓球も?」

ルビィ「うん……好きと好きが、一緒に出来る機会があるなんて、きっとルビィは運がいいんだと思う」


ルビィ「お、おねえちゃんに負担かけてばっかり、だけど……お願いします、やらせて、ください。高校卒業したらちゃんとお家のこともがんばるから、おねえちゃんの分まで取り戻して、見せるから……っ」


ダイヤ「ルビィ……」


ダイヤ「わかったわ、気が済むまでやってきていいわ」

126: 2017/06/23(金) 02:42:41.70 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

二週間後


鞠莉「ルビィちゃんはどんな感じ?」

ダイヤ「楽しそうにしていますわ。まあ、あそこまではっきり言われたら……許すしかないですわ。自分の意思を言えるのは大切なことですから。それが出来ただけでも、嬉しいの」

鞠莉「うんうん」

鞠莉「でもさ、ダイヤの方がその点ではルビィちゃんに劣ってるね?」

ダイヤ「……え?」

鞠莉「だってさ、やりたいんじゃないの?」

鞠莉「さっき携帯で卓球の道具のこと調べてたの見たよ」

ダイヤ「な……あ、あれは……ルビィのラバーを」


鞠莉「カットマン用の見てたのに?」



ダイヤ「ぐ……ぷ、プライバシーの侵害ですわ」


鞠莉「ダイヤみたいなモチベーションが高い人が入れば、果南もしゃきっとすると思うんだけど」

127: 2017/06/23(金) 02:46:12.89 ID:47EKZNVn.net
ダイヤ「一時期に比べれば良くなったと思います」


鞠莉「そうかな? ちょっと打ったけど、全然だったよ。あれなら私でも勝てちゃうかも」


鞠莉「ダイヤはどうしてやらないの?」


ダイヤ「言ったでしょう、忙しいの」


鞠莉「でもダイヤならお家のことも勉強も、全部両立出来る。違う?」

ダイヤ「買い被りすぎよ」


鞠莉「本当はやりたい、でも、そうやって言い訳する。ルビィちゃんより、ずっと自分の意思を出すのがへたっぴね」


ダイヤ「……」


ダイヤ「だ、第一……卓球をするにはスクールアイドルをしなければならないのでしょう? わ、わたくしにはあんなひらひらしたもの……似合わないわ。ルビィみたいに、可愛くないし……」


鞠莉「もー細かいことなんて気にするな! 行くよダイヤ!!」

128: 2017/06/23(金) 02:49:03.20 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


千歌「くっ」

ルビィ「やったっ」

千歌(もうっ……ルビィちゃんも花丸ちゃんみたいな変な感じだ)

千歌「ルビィちゃんは――アンチラバー、か」


梨子「アンチラバーってなに……」

曜「回転が全くかからないラバーなんだって……どんなドライブでもナックル回転で返せるっていう……」

梨子「なにそれ……」

千歌(粒高は回転が反転して返ってきてた)

千歌(ルビィちゃんは前陣に張り付いてブロックを繰り返すタイプだから……花丸ちゃんと同じで、回転で攻めるのはよくない)

千歌(でもっ……)

ルビィ「ふっ!!」バチコ-ンッッ!!!!!

千歌「うっ……」

花丸「ナイスボールルビィちゃんー!」

善子「いいナックルプッシュね、あの子……」

129: 2017/06/23(金) 03:02:41.84 ID:47EKZNVn.net
千歌(粒高は回転が反転して返ってきてた)

千歌(でも要領は同じルビィちゃんは前陣に張り付いてブロックを繰り返すタイプだから……花丸ちゃんと同じで、回転で攻めるのはよくない)

千歌(でもっ……)

ルビィ「ふっ!!」バチコ-ンッッ!!!!!

千歌「うっ……」


千歌(ナイスボール……花丸ちゃんのより速いし、弾むっ)


千歌(普通に当てただけじゃ、ナックルだから沈んでネットするし、少しでも遅れて、擦り上げるだけの推進力の無いドライブを打ったら――)


ルビィ「っ!」パンッッ

千歌「っ」


千歌(回転がほぼ効かないから、ブロックとかプッシュでどんどん振られる)


千歌(まあまあ、焦るな焦るな……。花丸ちゃんと一緒で回転で攻めなきゃいい、だけ)


ルビィ「?」

131: 2017/06/23(金) 03:04:44.21 ID:47EKZNVn.net
千歌「どうかした?」

ルビィ「どうしたのお姉ちゃん」


千歌「?」


千歌「わ……ダイヤさん?」


鞠莉「ねえねえちかっち! 突然だけど、ダイヤもみんなと一緒に活動したいって!!!」

千歌「へ?」

ダイヤ「ち、ちがうのこれは///」

ダイヤ「ま、鞠莉さんに連れてこられた、だけで……」

千歌「善子ちゃんルビィちゃんも加入してくれて、それと一緒に花丸ちゃんも正式入部……ダイヤさんまで? き、奇跡だよぉ!!」


ダイヤ「だ、だから……わたくしは!」

千歌「まあまあゆっくりして言ってください♡」

鞠莉「そうよ、ねえ? 果南お茶!!」

果南「ないってば……」

ルビィ「おねえちゃん……」

ダイヤ「る、ルビィ誤解しないで!」



梨子「一気に賑やかに……」アハハ…

132: 2017/06/23(金) 03:05:44.96 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


果南「11-4、か。いやー……強いね」

善子「……」

善子(この人……)



千歌「やっぱり強いね善子ちゃんは。梨子ちゃんはかなりラリー続くようになってきたね?」


梨子「そ、そうかな」


ダイヤ「ええ、この前までとは別人ですわ。特にバックハンド、綺麗なフォームで弾道もすばらしい。その調子です」


梨子「あ、ありがとうございます」


曜「梨子ちゃんと一番打ってる自信あるけど、いい感じだと思うよ!」


梨子「そんな……私なんて」

ダイヤ「自信を持って」


千歌「大会の予選が一ヶ月後くらいにあるんだよね。試合にも慣れておかないと」


鞠莉「そのことなんだけど……今週末にね、沼津で大きな大会があるの。刺激を受けるために見にいくことをオススメするんだけど、どう?」


千歌「大きな大会……いいね!!」


果南「実際の大会の雰囲気とか味わった方がいいかもしれないね」


千歌「よし、みんなでいこっ!!」

133: 2017/06/23(金) 03:07:21.10 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

週末


善子「うぅ、なんかこの感じ久しぶりでやだ……」

梨子「す、すごい……こんなに人がいるんだ……卓球台多い……これ全部試合やってるの?」

鞠莉「そうよ、男子と女子一緒にやってるけど、どっちの応援もすごいでしょ」

千歌「ダイヤさん注目選手とかは?」

ダイヤ「ええとあそこの高校は強豪校ですわね。時間もいい時間なので、全体的に上位選手が多くなってると思います」

千歌「梨子ちゃん見に行こ!!」ガシ

梨子「う、うんっ」


曜「……」

鞠莉「あらあら、梨子ちゃんに取られちゃったね?」

曜「なっ……」

鞠莉「曜は大会出ないの? 見た感じ、センスは誰よりもあると思うんだけど」


曜「私は……」


曜「なんか、さ……私、昔ね千歌ちゃんに連続で勝ったことがあるんだ。その時の千歌ちゃん、すっごく悲しそうでさ……卓球してる時の千歌ちゃん、いつも楽しそうでしょ?」


曜「でも私とする時は違う。――なんでかわかんない、けどだから……私と卓球するのは、楽しくないんだなって……」


鞠莉「……そうなの」

134: 2017/06/23(金) 03:09:05.44 ID:47EKZNVn.net
曜「まあ、私は今のままでもいいよ。楽しそうな千歌ちゃんを見るのが好きだからさ!」


鞠莉「ふぅん……そっか」

鞠莉「でもそれ、ちかっちのためにならないよね? ちかっちは本気でやろうとしてる、でも曜はちかっちのご機嫌取り……」

曜「そんなつもりはっ!」

鞠莉「真剣にする人のそばに、真剣でない人がいることはね……相手もそうだし、自分も辛くなると、思うよ」

鞠莉「あなたはスポーツ好きだし、よくわかってるでしょ?」


曜「っ……」


鞠莉「ごめんね、部外者がこんなこと言っちゃって……でも、考えてみて欲しいの」


曜「鞠莉さんも、何かあったんですか」


鞠莉「……私はそこまで深刻なことじゃないから」

曜「そう、ですか」

135: 2017/06/23(金) 03:10:48.32 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


果南「なにしてるの」


善子「あの試合見てるの」


果南「そっかあ、強そうだね」


善子「あの人が優勝するのに一票」

善子「当たったらジュース奢って」

果南「いきなりすぎるよ、いいけどさ」


果南「善子ちゃんはああいう人達にも勝てる?」

善子「……どうかしら、昔ならまあいけたんじゃないのないかしら」


善子「――あなたは?」


果南「わ、わたし?」


善子「だってあなた――どうして手加減してるの?」

果南「……」


善子「それも結構……この前はあなたと3セットやってストレートで勝ったけど、私のループドライブ、思いっきりドライブでかけ返したのが何球かあった。あれ、まぐれじゃないでしょ」


果南「たまたま振ったらいい感じになっただけだよ」


善子「そう……別にいいけどね、実力隠すとかかっこいいし」


果南「あはは……」

136: 2017/06/23(金) 03:13:10.37 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


千歌「いやー凄かったねえ」


千歌「なんか感動しちゃった!! 絶対、ぜーったい私もあれくらい強くなるんだから!」


曜「……」

曜(お互い傷つく、か……)


ダイヤ「そのためにはもっと練習しなくてはいけません」


千歌「そうだね……あ、朝練だ!!」


千歌「一時間くらい練習出来る!」


ダイヤ「朝練……いいと思いますわ!」


善子「お、起きるのつらい……」


千歌「でも、このままの練習量じゃ無理だよ! もっと増やさないと!」


ダイヤ「そうです! 千歌さんの言う通りですわ」

千歌「ダイヤさん……!」

鞠莉「ダイヤもすればいいのに♡」


千歌「そうですよ! 結局今日までなんだかんだ練習参加してたじゃないですか!」


ルビィ「そうだよ! おねえちゃんもしようよっ! わたし、せ、生徒会とか、家のお仕事も……手伝うからっ!」


ダイヤ「し、しかし……スクールアイドルの方は、わたくしは」

138: 2017/06/23(金) 05:54:08.32 ID:xRq2WQHD.net
千歌「ダイヤさん、とっても可愛いし……絶対出来ますよ! あ、今度衣装着てみますか?」

ダイヤ「……」


千歌「じゃあ決定! えーと、卓球の方は今まで通り私達のこと、コーチングもお願いします!」

ダイヤ「……あ、あくまでもルビィの監視役ということで。妹を人質に取られていたら、日常生活にも支障が出ますから」

鞠莉「あらあら」

ダイヤ「こ、このわたくしが加わるということは今までのような緩い環境は打ちこわします、それでもいいんですね?」

千歌「はいっ!!」

善子「つらーい……」


曜(……真剣。わたし、結局千歌ちゃんに嫌われたくないだけ……)


曜「そういえば聞いてなかったんだけど、千歌ちゃんはどうして……急に卓球をしようって思ったの?」

千歌「うふふ、えっとねー! スクールアイドル卓球大会の、前回の動画をたまたま見たんだ! そこでね、鹿角聖良さんっていう……優勝した人がいるんだけど、それを見て!」


善子「――鹿角、聖良……?」


ルビィ「ルビィも知ってるよ! 前回前々回大会、圧倒的な強さで優勝した人!」


千歌「知ってるの!? かっこいいよねー! 可愛くて強くて……輝いてた!!」

139: 2017/06/23(金) 05:54:47.09 ID:xRq2WQHD.net
ダイヤ「鹿角聖良さんは、競技としての卓球でも全国トップクラス……優勝するのは当然とも、言えますわね」


善子「ま、待ってよ! 鹿角聖良って……もしかして、左利き!? 北海道!? えっと、高校二年生!?」


ダイヤ「そ、そうですけれど……」

善子「そんな、まさか……」

千歌「知ってるの?」

善子「……一回全国大会で戦ったことある」

千歌「う、うそ!?」

善子「ほんとよ」

千歌「どうだった!?」

善子「……正直、あの人がいるなら優勝とかは諦めた方がいいと思うわ」


善子「魔法みたいな卓球をするの……私は何も出来なかったし、そのおかげで卓球やめたみたいな、ものだし」

千歌「どういう……」


善子「ぼろ負けだったってこと。私、勝つために卓球やってた、勝てば楽しいし、結構勝てたし」


善子「でもあの人とやってから、同い年くらいなのにこんなに差があるんだって、悲しくなった。これからどれだけやっても、あのレベルには達せないって、思ったの」

千歌「……だから、やめちゃったの? だから大会に出ないの?」


善子「ごめん……こんなこといきなり話して」

140: 2017/06/23(金) 05:55:46.42 ID:xRq2WQHD.net
千歌「リベンジしようよ!」

善子「な、何言って」


千歌「勝てなくても、卓球は楽しいよ! 善子ちゃん、楽しそうだったもん! でも、勿論勝った方がいいに決まってる、だから次は勝とう? 絶対善子ちゃんなら出来るって!」

善子「そ、そんなに簡単なことじゃないってことくらいわかるでしょう!? 私は昔、今よりずっと強かった、それより、何倍も強いの! それがどういうことかくらいっ」


果南「……」


ダイヤ「……この前調べたのですが、鹿角聖良は、競技としての卓球からはしばらく離れているようです。なにやら、怪我があったとか」


ダイヤ「全中優勝、カデット、ジュニアの三冠を達成した次の年、高校一年生からはほとんど大会には出ていないようですわ」


鞠莉「つまり、チャンスはあるって、ことね」

善子「……私は」


千歌「善子ちゃん、卓球って楽しいんだよ! 強い人と対戦するだけでドキドキするし、善子ちゃんだってそうでしょ?」


千歌「私はクラブにいるとき、善子ちゃんのこと、強い人だなって遠くで見てるだけだったけど、善子ちゃん他の人やコーチと打ってる時、本当に真剣で、でも楽しそうだった!」


千歌「だからさ、私達と一緒にもう一回頑張ろう? それで、リベンジするの!」


善子「リベンジ……」


千歌「一生懸命なんて似合わないって言ってたけど、違うでしょ?」

141: 2017/06/23(金) 05:57:08.80 ID:xRq2WQHD.net
善子「……」

千歌「試合で負ける度泣いてたって、コーチが。それくらいの気概を持てって毎回毎回善子ちゃんが泣く度――」

善子「わああああ!!!!!」

善子「そ、そんなわけないでしょ!?」

善子「何言ってくれてたのよ!?」


果南「へえ」

花丸「いいことずら」


善子「ちがう、ちがうってば!!」///

善子「……//」


千歌「聖良さんのこともリトルデーモンにしちゃおう!」

善子「……っ!!」


千歌「く……クク、いいのね? このヨハネと、最後の契約まで結ぶことがどういう――」

ギュッ


千歌「やったー!! 結ぶ結ぶ!!」

善子「ま、まだするなんてっ、は、離れなさいっ」


千歌「善子ちゃんが本格的に参加してくれるなんて百人力だよー!」

善子「……と、当然ね」//


千歌「えへへ、ダイヤさん、善子ちゃんこれからよろしくお願いします」

ダイヤ「ええ、こちらこそ」


曜「……」


鞠莉「……」

142: 2017/06/23(金) 05:59:16.86 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇


鞠莉「どんどん本気の人が増えてるね」

果南「そうだね、いいことだよ」

鞠莉「果南は?」


果南「十分本気だよ」

鞠莉「善子ちゃんに見抜かれてたみたいだけど」

果南「盗み聞きが得意だね」


鞠莉「私はストーカーだもの」


果南「……」

鞠莉「きっとあの子達なら、一緒に走れるよ」

果南「考えとく……」

143: 2017/06/23(金) 06:01:14.21 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇

次の日


曜「おはよ」

善子「ヨーソローは?」


曜「たまにはない日もあるよ」

善子「ふぅん」


善子「ねえ」


曜「?」

善子「あなたって、高飛び、オリンピック出れるかもしれないレベルなんでしょ?」


曜「さ、流石にそこまでは……」


善子「でもトップクラスには違いないってことでしょ?」


曜「ま、まあおかげさまで……?」アハハ

善子「……私ね、負けると、すっごく悔しかった。悔しくて悔しくて、絶対次は勝ってみせるって思って卓球してたの」


善子「だからあんまり周りとか見てなかったし、千歌さんのことも覚えてなかったんだと思う」

144: 2017/06/23(金) 06:02:45.70 ID:xRq2WQHD.net
善子「それくらいハマってたはずなのに、鹿角聖良に負けてから、急につまんなくなった。練習すれば、するほど、遠くなるような気がして……近づけば近づくほど、あの人の高さを思い知った」


善子「絶対に勝てないって思ったから、悔しいとか、そういうのも感じなかった」


善子「今も正直、不安なところはあるっていうか……。昔と違って、勝ってやるって気持ちが薄いのに……力になれるかどうか。千歌さんは私が勝つことを期待して誘ってくれたわけだし……」


善子「なんか、なんていうのかしら。私は団体戦とかも無かったし、完全に自分のためだけに卓球してたから……」


曜「力になれなくたって、みんな気にしないと思うよ。勿論いい意味でね。特に千歌ちゃんは、勝つってことも大切だけど、基本的にみんなで何かしたいっていうことの方が強い人なんだと思うよ」

曜「だから善子ちゃんを誘ったのは勝つことを期待するのはそうかもしれないけど、それ以外に善子ちゃんと一緒にしたかったんだよ」

善子「……わ、わたしと」//


善子「じゃあ、尚更……勝たないとよね。みんなのためにも」

曜「今までとはちがう気持ちで再開するっていうのも、楽しいと思う」


善子「……そうかも」


善子「あなたはどうして高飛びしてるの?」


曜「い、いきなり難しいこときくね」

145: 2017/06/23(金) 06:06:50.05 ID:xRq2WQHD.net
曜「私は……たまたま出来ちゃったから、かな?」

善子「?」

曜「ほら、努力するでしょ? なんか、それがすぐ結果に結びついてくれるっていうか……もちろん努力もしてる!!」

善子「――なにそれ、天才っていいたいの?」


曜「わ、わたしはそんなんじゃ! み、みんなそんなこと言うけどさ……あと、勝ってたらみんな応援もしてくれるし!」


善子「そう……」


善子「でもそうよね……高飛びは勿論、水泳部でもエースでスクールアイドルもして、卓球も結構出来て、絵もかけて衣装も作れる……確かにあなたみたいにやることなすこと全部出来たら、楽しいかも……」

善子「――そんなにたくさんのことしてるのに、あなたのを高飛びはいつでもトップクラス。血反吐吐きそうになるくらい必氏でやってもあなたの高さに届かない人が聞いたら……卒倒するわね」


善子「まああなたみたいに色んなのを楽しめるって、いいことよね」


曜「……」



ガラララッ

千歌「おっはよー、おふたりさーん!」

善子「おはよ」


曜「――そうでもないって……」


 
善子「……?」

146: 2017/06/23(金) 06:09:09.64 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇

練習

千歌「わ、梨子ちゃん良かった今の!」

梨子「そ、そう?」

千歌「うんっ、もうラリーも全然問題なく続くし……次はドライブとか回転も混ぜていこーね」

千歌「じゃあまずはドライブの打ち方から……」


曜「……」

曜(なんか、楽しそう……)

曜(私の方が、梨子ちゃんより卓球できるのに……ダンスだって……)

曜(なに考えてるんだろ、わたし……バカみたい)

曜(でもそっか。私が真剣にやってないからだ。真剣にやれば……千歌ちゃん、強い人とやるの楽しそうだったし。私も、強くなれば)


曜「あ、あの千歌ちゃん」


千歌「なあに?」


曜「あの、しばらく考えてたんだけどね……私も大会とか、出てみようかなって思う、んだけど……」

千歌「本当!?」

曜「う、うん」


千歌「いやったー!!! 本当だよね?」ギュッ


曜「ほ、本当だって」

147: 2017/06/23(金) 06:10:56.63 ID:xRq2WQHD.net
鞠莉「あら、出ることにしたんだ? エクセレント♡」

曜「うん」


鞠莉「ちょうど良かった。ちかっち、近いうちにランキング戦……してみたら?」

千歌「ランキング戦……確かに試合の緊張感も持たないとだもんね」


ダイヤ「誰と誰の相性が良いのか悪いのか、それによって個人の対策も変わってきますからね。戦型も違えば対策も違う」

千歌「鞠莉さんは?」


鞠莉「ノンノン、私はそこまで強くないし、果南のこと見てるだけ♡」


果南「ほんとストーカー……」


鞠莉「ねえ果南、ランキング戦……」

 

鞠莉「がんばってよね」

 

果南「……」


千歌「とにかく、千歌達は東京でパフォーマンスしてくるから……もちろん今週はスクールアイドルの方優先で!!」


鞠莉「ダイヤも行くの?」


ダイヤ「いえ、わたくしは。パフォーマンスするわけではありませんし、都会も苦手なので」


鞠莉「そっか。みんな頑張ってねー♡」

148: 2017/06/23(金) 06:15:22.66 ID:xRq2WQHD.net
ここまでが、前回スレが落ちたところまで。

ここからが、新しい部分です。

149: 2017/06/23(金) 06:16:01.43 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇


善子「ん……東京楽しみ」ワクワクッ


善子「早めに寝ておきましょ」


ブルルルッッ

善子「? 誰かしら」

善子「え……」

善子「――鹿角聖良……」

善子「……」

善子「ちょ、ちょっと待って……。あ、そうだ……なんでか知らないけどメールアドレスだけ交換したたんだった……」


善子「結局1回も連絡取ってないからすっかり忘れてたわ」


善子「な、なんでこの時期に……いきなり。えと、内容は」

150: 2017/06/23(金) 06:17:12.21 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇


千歌「どーしたの?」

善子『いや、えっとね……』

千歌「東京が楽しみすぎて眠れなかった?」


善子『それもあるけど、って、ないから!!』


善子『あの、ね。さっき鹿角聖良からメールがあって』


千歌「……は?」


善子『い、いや。全国で試合した時にね、なんか声かけられて……そういえばアドレスだけ交換してて……私もメールアドレスなんて変えてなくて』


千歌「な、なんだって!?」


善子『明日の東京のイベント……出るんだって。参加者にAqoursがいるのを見てチェックしてたら、私のこと覚えてて……見つけたらしくて』


千歌「ほえ……じゃあ明日会えるかもしれないんだ……」


善子『えっと、それなんだけど……卓球続けてるのかって話になって……スクールアイドルのやつで続けてるって言ったら――パフォーマンス終わったら、打たないかって……』



千歌「へ、ほんと!? いいなっ善子ちゃんずるいっ!!」

151: 2017/06/23(金) 06:17:55.97 ID:xRq2WQHD.net
善子『そ、そう言うと思ったから打ってあげて欲しい人がいるって言っておいたんだけど……』

千歌「う、うそ!!

善子『ちゃんとラケット持ってきなさいよ!』

千歌「う、うんっ! ありがとうっ! 大好きっ!!」

千歌「おやすみっ!!」


千歌「うーっ……梨子ちゃーん!」ガララッッ

千歌「梨子ちゃん梨子ちゃん!! りーこちゃーん!!」

ガララ

152: 2017/06/23(金) 06:18:23.18 ID:xRq2WQHD.net
梨子「ど、どうしたのいきなりっ。夜だよ!?」

千歌「聞いてよ! 善子ちゃんと鹿角聖良さんがね、メル友? でね! 明日パフォーマンスが終わったら打ってくれるんだって!!」キラキラ


梨子「え、え? と、突然すぎて……」


千歌「凄くない!? 夢みたいっ!」

梨子「ふふっ良かったね」

梨子「早く寝ないとね! 梨子ちゃんももう寝なさいっ」

梨子「もう、眠ろうと思ってたのに」


千歌「そ、それは失礼しました……」


千歌「おやすみっ!! 楽しみだね!」

梨子「うん……おやすみ」

153: 2017/06/23(金) 06:19:35.26 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇
東京 神田明神


~~♪♪


千歌「……?」

千歌「……!」

聖良「……こんにちは」

千歌「あ……か、鹿角聖良さんですか!?」

千歌「と、理亞さん!!」


聖良「ん……もしかして、Aqoursの皆さんですか?」

善子「……」


聖良「ああ、津島さん。奇遇ですね。ということはAqoursの皆さんで間違いありませんね」


曜(この人が、全国トップ……可愛い……)


聖良「PV、拝見させて頂きました。素晴らしかったです」

千歌「あ、ありがとうございます!!」

聖良「明日のイベント、頑張りましょうね」


千歌「は、はいっ!!」


千歌(や、優しくていい人……)キラキラ


聖良「津島さん、あなたがスクールアイドルをされているだなんて思いませんでした」


善子「こっちのセリフです」

154: 2017/06/23(金) 06:21:49.87 ID:xRq2WQHD.net
聖良「あなたなら、あのまま卓球を続けていれば日本を背負えたかもしれなかったのに」

善子「馬鹿言わないで。私じゃ無理よ、あなたが一番よく分かってるはず」

善子「……あなたこそ、どうしてスクールアイドルなんか」

聖良「きっかけなんて、些細なものですよ」

聖良「それでもAqoursの皆さんは全員がスクールアイドルに卓球をやられているそうで……」

千歌「は、はい一応!」

聖良「お互い対戦出来るように、頑張りましょう。まあ津島さんならば、問題なく全国へ来てくれると思いますが」

善子「と、とーぜんよ!」

聖良「ふふっ、楽しみにしています。明日、打って頂けるんですよね?」

聖良「津島さんと……あと1人と聞いていますが、どなたですか?」

千歌「わ、私です!!」


聖良「高海さん、ですよね。わかりました、明日はよろしくお願いします」ペコリ

千歌「はいっ!!」

千歌(ふああっ)


スタスタ


理亞「……姉様、津島善子だけならともかく、なんであんな人なんかと」


聖良「頼まれたんだから仕方がないでしょう? 津島さんがこのままスクールアイドルの卓球大会に出続けるというなら、あの人の実力なら全国で顔を合わせることになるわ。良い関係を築くのも大切よ。それに、もし本格復帰でもしたら」

155: 2017/06/23(金) 06:22:50.10 ID:xRq2WQHD.net
理亞「……まあそうかもしれないけど」

聖良「それに……相手のことは少しでも知っておいた方がいいから」

聖良「理亞も、明日は誰かと打ったら」


理亞「嫌よ、姉様。姉様だって……ほどほどにしておいた方が……」


聖良「心配してくれてる?」


理亞「当たり前」


聖良「……」


聖良「ええ……そうね」

156: 2017/06/23(金) 06:25:45.20 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇
ホテル


千歌「んーっ」


梨子「まだ起きてるの」

千歌「うん」



千歌「梨子ちゃんはさ、ピアノで全国大会まで、行ったんだよね」

梨子「?」


梨子「うん……そのおかげで練習しかしてなかったんだけど」


千歌「そっか……」

千歌「――みんなさ……すごいよね、本当に」


梨子「?」

千歌「ううん……なんでもない」

千歌「寝よっか! 明日のためにっ!」

梨子「うん……」

157: 2017/06/23(金) 06:26:55.73 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇

卓球場


聖良「昨日のパフォーマンス、お疲れ様でした」

千歌「そ、そちらも! すごかったです!」

聖良「私達なんか全然」


聖良「じゃあ早速、始めましょうか」

聖良「そちらの方々は……」


果南「見学でお願いしますー」

聖良「わかりました」


聖良「では高海さん、少し私と練習しましょうか」

千歌「へ、せ、聖良さんと!?」


聖良「津島さんは、妹と練習した後、ゲームをして貰おうかと」

善子「……よ、よろしく」


理亞「姉様から話は聞いてる、あなたのプレーが変わってないなら良い経験になると思って」

千歌「えっと、聖良さんに憧れて、卓球始めましたっ! よろしくお願いしますっ!」

聖良「私に、ですか?」

158: 2017/06/23(金) 06:28:24.35 ID:xRq2WQHD.net
千歌「前回大会……すっごくかっこよくて爽やかで可愛いくて……私もこんな風にやってみたいって! だ、だから今日は本当に楽しみです!」


聖良「そう、なんですか……嬉しいです」


聖良「じゃあ、始めましょうか」

カコンカコンッ


千歌(緊張する……)

千歌(ラリー、大丈夫、出来てるよね……)

聖良「どれくらい卓球を?」

千歌「えと、小さい頃からクラブで、8年くらい、かな……あとは家で家族と……お姉ちゃんが結構強くて」


聖良「なるほど、小さい頃から」

千歌「聖良さんは?」


聖良「私は……4歳か5歳くらいですね。高海さんと同じくらいですね」

千歌(始めた時期は似たような感じ……)



曜「おお、ラリー出来てる」

梨子「あっちの妹さんも強い、んだよね?」

159: 2017/06/23(金) 06:29:36.51 ID:xRq2WQHD.net
果南「ちょうど今検索してる……お、名前出て来たよ」

果南「……今年の全日本一般の部、ベスト64……」

曜「つ、つよ……」

ルビィ「姉妹揃って、トップクラス……」


善子(な、なんか気まずい……)カコンカコン


理亞「――ドライブ打って」

善子「わ、わかった」

ギュインッッ…カコンッ…


善子「ふっ……」ギュインッッ

善子(表ソフト……)

理亞(ほんとに擦りだけのドライブ……。すごいボールタッチ……いつの時代の人よ)

理亞(普通のドライブがこれなら、姉様が言ってた、ループドライブは……)

ギュインッッッ


理亞(これだっ!! 勢いはほぼない、回転オンリー)スッ…バコンッッ

160: 2017/06/23(金) 06:30:38.61 ID:xRq2WQHD.net
善子「くっ」


善子(表ソフトで押し込まれたっ……)ギュインッ


理亞(カウンターブロックをされた後の戻りも早い、良いプレイヤーね)


花丸「すごい……善子ちゃんのドライブを普通に返してる」


果南「バックに貼ってるの、表ソフトラバーだね。回転の影響を受けにくいラバーだから、回転重視の善子ちゃんとは相性が悪い」


果南「それでも……さっきから難易度の高いこと普通にやってるから……すごいね2人とも」


聖良「カットはしないんですか?」

千歌「へ?」


聖良「だって、カットマン用のラケットですよね?」

161: 2017/06/23(金) 06:41:26.38 ID:xRq2WQHD.net
千歌「あ、これは……変えようと思ってたんですけど、迷ってて……」

聖良「……」


聖良「そうですか」

聖良「ではそろそろ始めましょうか、理亞そっちも」

理亞「わかった」


千歌「ごく……」


千歌(全国を制した人……そんな人と打てることが、どれだけ幸せか……)


善子「……よろしくお願いします」


理亞「よろしくお願いします」


千歌「ふっ……よろしくお願いしますっ!」


津島 善子
ラケット   ティモボルALC
フォアラバー 紅双喜キョウヒョウneo3(特厚)
バックラバー ラクザxソフト(厚)

VS

鹿角 理亞
ラケット   ヒノカーボンパワー
フォアラバー テナジー25(厚)
バックラバー フレアストーム2(特厚)


高海 千歌
ラケット   サナリオンD
フォアラバー タキネスチョップ(薄)
バックラバー タキネスチョップ(薄)

VS

鹿角 聖良
ラケット   インナーフォースレイヤーALC
フォアラバー テナジー05(特厚)
バックラバー テナジー80(特厚)

162: 2017/06/23(金) 06:45:12.96 ID:xRq2WQHD.net
カツカツ

千歌(どんなサーブだろう……左利きだから、横回転にだけは注意して)

聖良「ふっ……」キュパッキュルルルッ


千歌(下回転っ)チョコンッ

グググッギュインッッ


千歌(ドライブ……大丈夫、返せるっ!!)ギュインッ


聖良(ブロックじゃなくてドライブの大きなラリーに持ち込んできた、大胆な姿勢は悪くないですね)ギュウウンッッ


キュハパッギュインッ…ポ-ンッ


千歌「くっ……0-1です」


千歌(打ち上げちゃった。でも、まともに打ちあえた! 善子ちゃんみたいに物凄い回転て訳でもない……なんとか、なるかも? て、ていうか手加減してるだけ、かな?)

曜「案外普通にドライブで打ち合ったね」

果南「形としては良かったね」


花丸「がんばれっ、あ、そこっ」


善子「くっ……」ポ-ンッッ…

理亞「4-1よ」


善子「ふぅ……」

164: 2017/06/23(金) 06:47:26.78 ID:xRq2WQHD.net
善子(バックに打ったら、いや……どこに打っても回転が効きにくい。くるくるラケット反転させて、前で攻めてくる……)

善子(もうちょい深めで、インパクト強く……もっと回転かけて)フッ…キュパッッグググッ

理亞(っ、すごい横回転……沈むっ……)ギュインッッ


善子「……っ」グググッッ


理亞(も、もう、バックに回り込んで――)


バコンッギュルルルルッ

理亞「くっ……」

理亞(ドライブ、さっきより回転も強くて深い……)

善子「4-2」


理亞(サーブの回転が強烈すぎて、打たされた……コースも限定されたし、だから回り込まれて思いっきりドライブでぶち抜かれた。……今のは最悪のパターンね)

165: 2017/06/23(金) 06:50:10.17 ID:xRq2WQHD.net
理亞(でもこっちだって、一回前線から離れたような人に、負けるわけにはいかないんだから)


理亞(姉様に言われるくらい、あなたの才能がどれだけあったって――その才能にあぐらかいてる人なんかにっ!!!)フッ…キュパッッカコンッカコンッ



善子(フォアに長くて速い横回転っ! で威力もあるけど。でも、ある程度の経験者にこんな長い球出すなんて……これじゃ格好のドライブチャンスボールよ)

善子(まあいいわ。フォアは基本的には裏ソフトだし、そっちに思いっきり)ブンッギュインッッ


理亞「っ!!」バチンッッスパ-ンッッ


善子「くっ……」


善子(裏ソフトだったはずなのに……全然回転が効かない……それどころか上から叩かれた)


曜「……」ユサユサ…



曜(なるほど、ああいう風に前に出て打てば相手の打球ペースに合わせないで自分からガンガン攻めて行けるんだ。わざわざ後ろで大きいラリーに付き合う必要がない……よく出来てるなあ)

 

曜(――練習の時やってみようかな)

166: 2017/06/23(金) 06:51:44.74 ID:xRq2WQHD.net
梨子(あんなに強かった善子ちゃんが押されてる……)

曜(あのフットワーク……たん……ばしん)ジッ…

曜(たんっ、ばしんっ)

果南「……?」ユサ…ユサ

果南(なんのリズム取ってるんだろ……?)


曜(善子ちゃんは……とんとん、ばしんっ)


曜(なるほど……)


梨子(千歌ちゃんも……)


カコンッギュインッッ


千歌「くっ」スカッッ…

千歌(打ててる、打ちあえてるのに……なんで点が取れないの……)


聖良「8-0です」


千歌「……っ」

167: 2017/06/23(金) 06:55:13.27 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇
聖良「ふっ」キュパッッ


千歌(横回転サーブっ!!)

ググググッッッッッ…


千歌「えっ」

千歌(さっきよりもっともっと深くっ、沈み込んでっっ)ブン

コツコツ……

聖良「……」

千歌(なにこの、回転……っ、いつもの横回転じゃ、ない?)


ダイヤ「今のはジャイロ回転のサーブ……」

曜「ジャイロ回転……?」


ダイヤ「ええ、軌道は横回転のように曲がりますが……回転はドリルのような回転。その曲がりながら沈み込む幅は驚異的で、特に左利きのジャイロサーブは、右利きのフォアハンドが届かないくらい短く、沈み込む特有のサーブになる……」


曜「……」

ダイヤ「善子さんが時々出しています。バウンドが高くなりやすくて甘いと打ち込まれるので、出す側にも注意が必要なんですよ」


曜「……」ユサユサ…

曜(ああ、違うよっ。右に来る! 今度は左、次はミドル……次は右! ああもうなんで……千歌ちゃんそっちじゃないってば!!)

168: 2017/06/23(金) 06:56:46.75 ID:xRq2WQHD.net
千歌「くっ……」

聖良「……11-2、11-1、11-3です。ありがとうございました」


千歌「あ、ありがとうございました!」

千歌(強い……)


千歌(でも、なんで負けたんだろう……こんなに離れてるのに、圧倒的だっていう、何かがわからなかった……ちゃんと打ちあえてたはず、それでこっちがミスして……それが原因かな)


聖良(高海千歌さん……県大会レベル、と言った感じですか)


聖良(中高で部活もクラブもしていないでこれなら、十分な強さ。やはり小さい時に経験があると違うということね)


千歌「す、すごいですね! やっぱり!」


聖良「いえ、そんなこと……」


千歌「あ、あのっ! 良かったら、れ、連絡先教えてくださいっ!!」

聖良「わ、私の、ですか?」


千歌「は、はいっ……」


聖良「私のものでよければ……」

169: 2017/06/23(金) 06:57:58.17 ID:xRq2WQHD.net
聖良「私のものでよければ……」

千歌「あ、じゃあえと……読み込みたいですか? 読み込まれたいですか!?」

聖良「え?」


千歌「あ、えと……よ、読み込むんでQRお願いします……」///



理亞「――しゃっ!!」


聖良「……」

千歌「あ、ありがとうございます!」

聖良「いえ」

コツコツ…

善子「く……」


理亞「11-7、11-6、7-11、11-8で、セットカウント3-1。よ。ありがとうございました」


善子「……ありがとうございました」


聖良「終わったみたいですね」

千歌「善子ちゃんが……」


聖良「妹とはあまり相性も良くないようでしたね」


聖良「では、津島さん……次は私とお願いできますか?」

170: 2017/06/23(金) 06:59:50.66 ID:xRq2WQHD.net
善子「……わかった」

善子(負けた)

善子(ああっ!! 負けた負けた負けた負けたっ……!! ああ、悔しいっ……。速いピッチについていけなかった、いやだったらペース変えて違う配球にするとか色々やりようはあったはず、それが全然できなかった。さいっあく)ギリリリッッ

曜(善子ちゃん……)


理亞「……」ラバ-フキフキ

善子(同い歳なのに、同い歳なのにっ。こんなっ!!)


聖良「ラケットどうぞ」


善子「ん……」


善子(ふぅ冷静になりなさい……これじゃまた前とおんなじ結果になる。相手は鹿角聖良よ)


善子(なんとか、"アレ"を防がなきゃ)


聖良(粘着ラバー……まだ拘っているんですね。バックは……進歩したようだけど)


果南「お疲れ千歌」

千歌「ありがと」


千歌「いやー……強かった」アハハ…

曜「……」

曜(くやしく、ないの……?)


曜(――あんなに一方的だった、のに)

172: 2017/06/23(金) 07:04:52.11 ID:xRq2WQHD.net
千歌「?」

曜「ううん……」

果南「強かったね、あの子」

千歌「うん……」

千歌「でも、何が強いのか、わかんなかった」

千歌「気がついたら、点取られてて……」

曜「それって……」


曜(遠すぎて、何が強いかも、わからないっていう……ことじゃ)

千歌「あはは、だめだねえ」



善子「怪我したって聞いたけど……」


聖良「ああ……もう少しで本格的に復帰しようかと思っているところです。この一年はスクールアイドルをしながら、理亞のサポートをしていたんです」

善子「そうなの……どうしてあなたがスクールアイドルなんて」

聖良「……まあ、色々あったので。あなたこそ」

善子「わ、私は」

善子(リトルデーモン……だなんて、言えない……)

善子「怪我してるのにスポーツ大会の卓球には出てたんですね」


聖良「ええ、無理をしない程度に」



プルルルッ

173: 2017/06/23(金) 07:06:35.48 ID:xRq2WQHD.net
聖良「ん……失礼」

聖良「はい、はい」

聖良「わかりました、はい、失礼します」

聖良「すみません」ペコリ

善子「え」

聖良「急用が出来てしまって、続けることが出来なくなってしまいました」

善子「そ、そうなの」

聖良「こちらから誘っておいて……本当に申し訳ありません、今日は失礼させてもらいますね。本当に申し訳ないです」

善子「べ、べつに」


聖良「――全国で、待っていますよ」


善子「!!」

千歌「……」


千歌(全国……)


理亞「メーカーの撮影早まったの?」

聖良「ええ」


聖良「行こう、理亞」

174: 2017/06/23(金) 07:07:34.08 ID:xRq2WQHD.net
理亞「うん」

聖良「ああ、高海さん。運営の方から渡して欲しいと預かってるものがあるんです」

千歌「?」

千歌(封筒……)

千歌「なんだろ」ヒラ

聖良「……見てくださった方が、どのスクールアイドルが一番良かったか、投票したものです」

ルビィ「投票……」

千歌「え、Aqours……Aqours……あれ?」


千歌「――ゼロ……?」


聖良「パフォーマンスは素晴らしかったと思います。ただ――ラブライブ決勝大会に出たいというのなら……」


聖良「諦めた方がいいかも、しれません」

千歌「っ……」


聖良「卓球も……津島さんは良いとして、高海さんはおそらく県大会レベル……。趣味でするのなら、これ以上ないほどのレベルだと思います」


聖良「ただ……」

175: 2017/06/23(金) 07:09:32.21 ID:xRq2WQHD.net
聖良「……」フルフル

千歌「っっ……」


理亞「――遊びじゃないの。 津島善子……あなただって、才能がありながら……結局遊んでるだけ……私は、あなたみたいな人には絶対負けない」


善子「っ……」

果南「……」


聖良「すみません、厳しいことを言ってしまって。私たちも……悔しいので」



聖良「お互い、全国大会で顔を合わせられるといいですね。それを、願っています」

千歌「が、がんばります!」


聖良「少なくとも、攻撃型なのにカットマン用のラケットを使っているだなんて……馬鹿にしているようにしか思えません」

千歌「っ……」


聖良「重ね重ね、すみません……」


千歌「い、いえ!! そう……ですよね。でも、今日は本当に楽しかったです! ありがとうございました!!」


聖良「ええ……また、会いましょう」


千歌「はいっ!!」

176: 2017/06/23(金) 07:14:14.55 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇

ガタンゴトンッ

千歌「……」

千歌(諦めた方がいい、か)


ルビィ「泣いてたね……あの子」


善子「でもあんな風にいう必要ないでしょ!」

千歌「でも頑張ったよ! みんな凄いグループばかりだったし! あそこまで出来たんだから、胸張って帰ろ?」

千歌「聖良さんと打ったのもいい経験になったし……幸せだったと思う!」


曜「……くやしく、ないの?」

果南「……」


曜「スクールアイドルもそうだけど、卓球も……」


千歌「そりゃ、少しは悔しいけどさ……まあ、でもみんなでステージに立てて、聖良さんとも結構まともに打ちあえて……幸せだったと思う! だって全国トップレベルの選手なんだよ?」


千歌「私はそれでいいかなって」


曜「……」

善子「……」

果南「……」


曜「そっ、か」

177: 2017/06/23(金) 07:14:42.77 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇

ダイヤ「……そうですか。0人……」

鞠莉「スクールアイドルっていうのは厳しい世界なのね」

千歌「うん……」


千歌「でもでも、みんなでまた、頑張ろうって決めました! 大丈夫です!」


ダイヤ「そうですか……わかりましたわ」


千歌「とりあえず明日からは卓球の練習時間、増やそうと思います!」


千歌「予選ももう少しだしね!」

千歌「頑張ろうね!」

178: 2017/06/23(金) 07:17:05.04 ID:xRq2WQHD.net
◇――――◇

ギュッカコンカコンッッ


千歌「長い長い……もっと短く」

美渡「またなんかやってるよ」

志満「サーブ練習?」

千歌「あ、ふたりとも」」

千歌「……東京でね、カデットとかジュニアで全国優勝した人と打ったんだ」

志満「本当に?」

千歌「うん。でも……全然ダメだった。県大会レベルだって、言われて」

志満「……そう。でも県大会って、結構レベルは高い方よ? 十分頑張ってるんじゃない?」

美渡「十分でしょ」


千歌「……だめだよ、全然」

千歌「なにが足りなかったかな……そりゃ全部だと思うけど」

美渡「何って……そんなの簡単だよ」


千歌「?」

 

美渡「――才能でしょ」

 

千歌「っっ」

179: 2017/06/23(金) 07:23:53.97 ID:xRq2WQHD.net
美渡「うるさい姉だなっていつもみたいに思ってもいいけどさ」

美渡「結局やっぱり、重要だよそういうのは」


千歌「っ……ひどい」


美渡「今はまあこんなんだけどさ……私だってずっと努力してたんだから、そんな簡単なことくらいわかる」

美渡「あんたが精一杯氏ぬだけの努力して初めて気がつくこと、教えてあげてるんだよ」

美渡「色んな時間犠牲にしてからやっとね。ボロボロになって走って走って走った到達点がそこだなんて、だったら見ない方がいい」

志満「美渡ちゃん、ちょっと……」

千歌「っ……」ギリリ

美渡「……もう寝るよ、おやすみ」スタスタ


千歌「……」ウルッ…


志満「……美渡ちゃんだって色々あったの、わかるでしょ? 言い方は酷かったけど、千歌ちゃんのこと考えてるの。悪気はないから……責めないであげて」


千歌「わかっ、てるよ」

千歌「わかってる、けどっ……っ」

千歌「っ……」フルフルフルッ…

千歌「わたしも、寝るっっ」タッタッッ


志満「あ……」


志満「……」

186: 2017/06/23(金) 12:19:30.61 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

朝、海

バシャッバシャッ


千歌(なーんにも……見えない)


千歌(なにやってたんだろう、私……)


梨子「――ちゃんっ、千歌ちゃん!!」

バシャ


千歌「梨子ちゃん?」


梨子「ああ千歌ちゃん、良かった……わたしてっきり」

千歌「?」


梨子「もう……いきなり海に行くなんて……心臓に悪いことしないでよ……どうかしたの?」


千歌「ごめんごめん。んっとね……なんていえば、いいのかな」

千歌「私、今までなにしてたのかなって」


千歌「――私は空を飛べないからさ」

千歌「海に潜って違う世界を見てみれば何か見えるかなって。私は他の人みたいに高いところから何かを見るってこと、したことないから」


梨子「……何か、見えた?」


千歌「ぜんぜんっ!」


千歌「やっぱりこんな風に楽して何か違う世界を見ようだなんて、甘えてるんだよね。みんな、練習して練習して……私たちは、私は、それが足りてなかっただけ。いつも、そう」

187: 2017/06/23(金) 12:24:52.74 ID:47EKZNVn.net
千歌「知ってる……わかってた。周りはみんな何かを続けて、何かを知って、私はなにも続かなくて、すぐ辞めちゃって……なんにも見えない」

千歌「聖良さんと打ってね、気がついたんだ。私は何も見えてない。聖良さんがどれくらい強かったのかも、いまいちわからなかった。離れすぎてる相手だと、何が強いかもよくわからない」

千歌「だって結構打ちあえてるって思ったのにあんなボロボロの点数。きっと全部打たされてただけ、全部サーブも手加減してた」


千歌「私だって、結構やってるつもりだった。相手が全国トップクラスだとか、周りのスクールアイドルのレベルが高いとか昔と違うとか……そんなの、関係ない」


千歌「悔しいよっ……何も出来なかったの、全然そんなレベルにも達してなかったっていうの。だって、トップに立ってる人がいるんだもん、言い訳なんて、なんにも出来ない」

千歌「――だって私たちは過去の人たちと競ってるわけじゃない! 環境が、時代が変わったって、争ってる人もみんなみんな、おんなじなんだもん!!」


千歌「ここで辞めたら……いままでとおんなじ。もう、そんなの嫌だ。スクールアイドルっていう新しい世界に行けば、高く飛べるって思ってたそれだけで輝けるって思ってた……でも、違う。なんにも、なんにも進歩してない!!」


千歌「諦めた方がいいって言われたけど、ぐす……諦めたく、ないよ」


千歌「諦めたくない!!」バシャ-ンッッ


千歌「だから、続けるよ。スクールアイドルも、卓球も」

千歌「生まれた時から決まってるなんて、そんなの嫌だもん」

梨子「千歌ちゃん……」


千歌「ごめん……わたしっ」


梨子「それが本当の気持ち?」

188: 2017/06/23(金) 12:28:17.89 ID:47EKZNVn.net
千歌「うん……」

梨子「ありがとう、聞かせてくれて」ギュッ


千歌「言い出しっぺの私が、聖良さんにボロボロに負けて、投票数もゼロで……だからって、泣くわけに行かないし……ひっぐ……みんな、無理なお願い聞いてくれて……やってくれたのに。こんな私がこんなにしてたら……だめだもん」


梨子「……千歌ちゃんは素直になっていいんだよ、みんな自分のためにしてるんだもん……ね?」


梨子「だからこれからは……感じたことを、ちゃんと声に出そう? みんなで一緒に……違う景色を見るために頑張ろう?」

千歌「う、ん……うん……ぐす、ううっぅぅ」ギュッ

千歌「ごめんね梨子ちゃん……私、いつも梨子ちゃんにばっかり、変なこと言っちゃってる」

梨子「ううん、嬉しい。変に隠されるより、ずっと」

千歌「ありがと……」ギュッ…

梨子「……」ナデナデ

梨子「もどろっか」

千歌「うん……」

梨子「って……し、白いシャツで飛び込むなんて///」

千歌「どしたの?」

梨子(す、す、透けてる……)

梨子「も、もうっ、女の子なんだよ!? ちょっとくらい気を使わないと……」

千歌「あ、これ? えへへ、千歌のなんて誰も見ないよ」

梨子「い、いいから戻るのっ!」///

千歌「えー、ちょ」

189: 2017/06/23(金) 12:29:16.55 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

プルルルルルッッッ

曜「……」

曜「でない」

曜「……千歌ちゃん」



◇――――◇
バス


善子「最悪の気分よ、当たり前でしょ?」

善子「やっぱり訛ってる……それ関係なくしても、あの子強かった、だから最高に悔しい」

曜「そうだよね……」

善子「次は勝つ」

曜「私も絶対そう思うと、思う」

善子「とーぜんでしょ」

曜「気があうね」

善子「そこは知らない」


曜「なんで……」


曜「でもさ……だから私、わからないんだよね。千歌ちゃんのことが」

善子「?」


曜「悔しく、ないのかな」

善子「……」



曜「だって、あんな風に聖良さんに負けて、それで0票で……私は悔しい」

善子「本人に聞いてみたら?」


曜「……そうだよね」


曜「あ、今日卓球の練習付き合ってよ、試したいことがたくさんあるの。鹿角理亞ちゃんの卓球見てたら……なんか似たようなことが出来そうな気がして!!」


善子「……え?」

190: 2017/06/23(金) 12:30:00.88 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


千歌「えっと、みなさんにお話があります」

曜「?」


千歌「東京でのイベント、そして聖良さんと試合したこと……それが終わって、やっぱり悔しかった!」

千歌「ほんとにほんとに悔しかったの。だから……まだ続けたい」

曜「千歌ちゃん……」


千歌「私と、梨子ちゃんは昨日話し合って……続けることにしたの」


曜(え……)


曜(また、梨子ちゃんとふたりで、完結して……)

曜(なんで、私には……そういう話、個人的にしてくれないんだろう……)

 

曜(なんで、なんで――梨子ちゃんなんだろう)ギリ…


鞠莉「……」

191: 2017/06/23(金) 12:31:06.07 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

曜「ふっ……ふっ」カコンカコンッッ


善子「くっ……あっ」スパン

曜「よしっ、いい球!」


善子「ふー……ピッチはやいってば。あなた、急に強くなった気がする」


曜「そ、そう?」


曜「まあ今まで他の人の練習に付き合うって感じだったからさ」

善子「真剣に練習し始めたらもうこれ……末恐ろしいわ」

善子(本当に鹿角理亞みたいな球と打球点が、何回かあった……うそでしょ。なんなのこのヨーソロー魔……)

曜「あ、あはは」


善子「まあ、ヨハネがいる限り好き勝手はさせないけどね」シュピッッ


善子「明後日からのランキング戦……楽しみ!」


曜「私も! どれくらい出来るようになったかなー」


善子「結構いいところまで行くと思うわ!」

曜「えへへ、そうかな」

善子「さー着替えましょ」


スタスタ


 
千歌「――果南ちゃん、これどういうこと!?」

192: 2017/06/23(金) 12:32:40.76 ID:47EKZNVn.net
善子「……?」


果南「……そ、それはなんで」


曜「何かあったの?」

ダイヤ「……」


ルビィ「部室にこんなものが」

善子「賞状……」


曜「全国高校生卓球大会……静岡県予選、準優勝……浦の星女学院――松浦、果南……」


梨子「静岡県で、二番目に強い……?」

千歌「説明してよ果南ちゃん!!」


果南「誰がこんな、もの……確かに捨てたはず、なのに」


鞠莉「――ストーカーっていうのは、今に始まった話じゃないって、言ったはずよ」


果南「……鞠莉」

鞠莉「せっかくの賞状なのに、ぐしゃぐしゃにして捨てちゃうんだもの」


鞠莉「ねえダイヤ、あの時の果南凄かったわよね。今となんか――比べ物にならないくらい」


ダイヤ「……」

千歌「……ダイヤさんも何か知ってるんですか?」

195: 2017/06/23(金) 12:38:09.48 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


鞠莉『どう、楽しい?』


果南『うーんそうだねー、同学年私しかいないし、先輩しかいないけど……まあ誘われたし」

――

鞠莉『県予選準優勝おめでと!』

果南『あはは……ありがと。鞠莉が練習付き合ってくれたおかげだって』


果南『でも、先輩達あんまりやる気ないっていうかさ』

果南『勝ちたくないのかな』


鞠莉『どうなのかしら……』


果南『口だけうるさい後輩じゃなくて、大会でも結果残したし、先輩達もさ……少しはやる気出してくれるかと思ったんだけどな……』


果南『鞠莉は留学の準備で忙しいし、ダイヤと打つしかないかー……」

鞠莉『……』


果南『じゃ、行ってくる!』

鞠莉『うんっ!』


鞠莉『前まですごく楽しそうだったのに』

196: 2017/06/23(金) 12:39:13.74 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


果南『あの、練習しないんですか?』

果南『いえ……だってしないと勝てないですし』

果南『い、嫌味じゃなくて……っ!!』

果南『ダイヤと鞠莉と打ってるのは、先輩達が部活に来ないから……」



果南『か、勝ちたくないんですか!? 悔しくないんですか!?』

果南『そ、そういう、意味じゃ……』

果南『え、帰る? ちょ、練習……1人じゃサーブ練習しか……』

果南『ちょっと待ってください!!』

果南『っ……』

197: 2017/06/23(金) 12:42:37.74 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇

ダイヤ『あら、他の方は?』

果南『帰ったよ』

ダイヤ『?』

果南『別に勝たなくてもいいって。楽しく打てればそれで、いいんだって』

果南『また付き合ってよ、練習。私と誰もしてくれないからさ』

ダイヤ『あ、あのそのことなんですけど。わたくし、生徒会に入ることになって、果南さんの練習に付き合うことはもう……』

果南『っ、そ、そっか……あはは、それなら仕方ないね』

◇――――◇

鞠莉『やめた……?』

果南『うん』

鞠莉『ちょっと待ってよ、東海大会は……?』

果南『出ない。練習相手もいないし勝てるわけないし』

果南『それに、もう……みんなから煙たがられてるからさ、いない方がいいんだって』

鞠莉『……果南』


果南『確かにバカだったよ。新入部員のくせにさ、練習増やそうとか色々言って。弱小校だもん、楽しく卓球するのが一番に決まってた。郷に入れば郷に従えってね……それができなかったんだから追い出されるのも仕方ない』

ダイヤ『本当にそれでいいんですの……?』


果南『私、世渡り上手じゃないみたいだし……そうするしかなかった』


鞠莉『今の果南……辛そうよ。ね、部活の人達と話し合って――』


バンッッバキッッ


鞠莉『ら、ラケット……!!!』


果南『……もうやめるから、いいのこれで。練習付き合ってくれてありがとね、鞠莉もダイヤも。2人のおかげで県大会いい成績残せたし……もう十分』


果南『応援に来てくれたの、顧問の先生と、2人だけだったけど……楽しかったよ』


果南『本当にありがとう』


鞠莉『っ……』

198: 2017/06/23(金) 12:43:42.28 ID:47EKZNVn.net
◇――――◇


果南「先輩達は悪くないし、私が悪かったんだと思う。何事もする環境っていうのがあるし……それを無理やり変えるのはダメなんだと思う」

千歌「だから……千歌達の時も?」

果南「……うん。程よくやろうって決めてた。また、あんな風に、なるのが……嫌でさ」

千歌「逃げないよ!! 千歌達は逃げないっ!!」


果南「……」

千歌「えと、真剣にやるよ! 果南ちゃん、それで自分を抑えるなんて絶対良くない! 練習いっぱいしたいならいっぱいしよっ!! 今の二倍……三倍は辛い、かもしれないけど……少なくとも私は精一杯やるっ!!」


果南「千歌……」


ルビィ「そ、そうですよ果南さん……る、ルビィも下手だけど……頑張ります!」


花丸「確かに思えば、果南さんは公民館でやってる時ももっと強かったずら……」


梨子「私も初心者だけど……みんなについて行こうって思ってます」

善子「どーでもいいけど、私は強いあなたと戦いたいの! いいから次のランキング戦、本気出しなさいよ」


果南「……みんな」

199: 2017/06/23(金) 12:44:50.08 ID:47EKZNVn.net
鞠莉「ほら、みんな真剣だって。果南だけよ、ね、今度は果南がみんなの期待に応えてあげる番じゃない? 今のあなたは、昔あなたが嫌いだった……練習しない先輩と、あんまり変わらないわ」

果南「っ……そう、だね」

果南(確かに、千歌は真剣だった……私は)


果南「……みんな、ごめんなさい。今まで、手抜いてて……私、私……みんなと卓球がしたいっ……」

千歌「うんっ!!」


果南「……ありがとう、鞠莉。鞠莉がこの賞状を持ってなかったら……このまま適当にやってたかもしれない」

鞠莉「ううん。なんて言ったって、私はこのために戻ってきたみたいなものだもの♡」


果南「え……?」


鞠莉「ダイヤがメールと電話で、近況を伝えてくれたからね♡」

ダイヤ「あ、あなた……わたくしとのただの雑談で……戻ってきたの?」

鞠莉「私にとっては、ダイヤも果南も、ただの雑談じゃないの」

果南「鞠莉……」


鞠莉「応援してるわ。また、楽しそうな果南が見れそうで、楽しみよ」

 

鞠莉「はい、これ。――プレゼント」

 


果南「え……これ」


 
果南「――ラケット……」

201: 2017/06/23(金) 12:47:31.50 ID:47EKZNVn.net
鞠莉「果南が使ってたやつよね。廃盤になってたみたいだけど……まあ手に入ったから! ラバーも昔果南が使っていたものよ?」

果南「こ、こんなの貰えないよ……」

鞠莉「だーめ、貰いなさい。それ使って、頑張って」

果南「もう……鞠莉」

鞠莉「道具大切にしないのは最低なんだから、次折ったら怒るから」

果南「ん……」


鞠莉「ふふん、マリーこと好きになった?」

果南「元から好きだってば……ばか」ギュッ


鞠莉「っ、そ、そうよね///」


鞠莉「……////」


果南「ねえ、みんな……鞠莉も一緒にやるっていうの、だめかな?」

千歌「え、大賛成! というか千歌が最初から言ってた!!」

果南「あはは、そうだったね」

果南「どう、鞠莉?」


鞠莉「わ、私は果南が本気になってくれたならそれでいいし……別に私がやるっていうのは」


果南「鞠莉が一緒に練習してくれると楽しいんだけどな」


果南「ね? 一緒にしよう?」

鞠莉「う、うん//」


曜(えー……即落ち……)

202: 2017/06/23(金) 12:48:30.29 ID:47EKZNVn.net
梨子(千歌ちゃんに強引に勧誘するのやめてって散々言ってたのに)


千歌「ちょっと強引じゃない?」

果南「そ、そうだったかな」


ダイヤ「鞠莉さんが加わってくれるのなら、わたくしも嬉しい限りですわ」

鞠莉「スクールアイドルもやるんだよね? 似合うかなヒラヒラしたの。ヘッドバンギングはしちゃだめなのよね」

千歌「似合いますよ! ヘッドバンギングはだめ!」

鞠莉「ジョークジョーク♡」


鞠莉「――あ、そろそろ来たかしら」


善子「え……リムジン?」

鞠莉「こっちこっちー!」

鞠莉「ありがとー! じゃ、部室に運び出して」


曜「わわ、黒服の人達……」


花丸「み、未来ずら」


ダイヤ「ま、鞠莉さんここのダンボール達は……」

204: 2017/06/23(金) 12:55:02.08 ID:47EKZNVn.net
鞠莉「開けていっていいよ♡みんなへの、プレゼント♡」

善子「……?」バリッバリッ

善子「――こ、これ!?」

千歌「ら、ラバー!?」

曜「こっちはラバークリーナーとか、タオルも……」

ダイヤ「ま、鞠莉さん!?」

鞠莉「ふふー、ラバーとかラケットとかボールとか、各種道具のプレゼントデース♡」

果南「ど、どういう……わ、テナジーがこんなに」

212: 2017/06/23(金) 16:32:41.16 ID:Qy3SwdVb.net
善子「他にも、たくさんラバーがある。厚さも大量に……」

ルビィ「これ、ラケットにラバーが貼ってある……」


鞠莉「試打用よ? メーカーの代表的なラケットに代表的なラバーを貼ったものが入ってるの。組み合わせはたくさん用意したから、それで感覚掴んでね」

鞠莉「いっぱいラケットも用意してあるから……試打用でいけそうなの使ってみて、ラバーを選んで貼ってみてね」

千歌「こ、これ……どうするの?」

鞠莉「だからプレゼントよ」

果南「これ、いくらぶん……?」

鞠莉「うーん……」


善子「このラバーの数……ね、値段、3桁は軽く行ってるわよこれ……あ! こっちはキョウヒョウ……しかも」


善子(これ……中国のナショナルチーム用の、ブルースポンジ……)


ダイヤ「スリースターの試合球……こんなに何ダースありますの……」



鞠莉「えっと、500万円くらいかなあ? もしかしたらもっとかも……」



ダイヤ「こ、こんなの頂くわけにはいきませんわ!!」

213: 2017/06/23(金) 16:33:46.80 ID:Qy3SwdVb.net
曜「そ、そうだよ。流石に……」


鞠莉「うーん、それなら捨てるしかないんだけど……それでも? ジャパンは勿体無い精神がすごいのに」

果南「……これだから金持ちは」


千歌「ち、ちょうど今日スポーツショップ行ってラケット買おうとしてたところに……」


鞠莉「ナイスなタイミングだったわけね♡」

鞠莉「みんなも自分に合いそうなの選んでみてね。あ、もちろん無駄遣いは禁止よ? ダイヤに用具のことは聞いてみてね」


ダイヤ「こ、これらはきちんと管理しないといけませんわね……」

千歌「ほ、本当にありがとうございます……っ!」


鞠莉「気にしない気にしない♡オモテナシの精神なんだから」


千歌「うぅ、どのラケットにしようかなあ……ラバーも……」キラキラ


梨子「千歌ちゃん、今日は遅いからそろそろ……」

千歌「うぅ、そうだね」


曜「明日は用具決めになりそうだね……」アハハ…


千歌「そうかも。えっと、みなさんこれからも、Aqoursとして、頑張ろう!!」

214: 2017/06/23(金) 16:35:07.00 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇


鞠莉「また果南が獣みたいに、コートを支配するのが見たいだけ」

果南「獣みたいって……」


鞠莉「だってそうだったよ、荒々しくてでも楽しそうで……蝶々みたいに舞う綺麗な善子ちゃんとは真逆ね」

鞠莉「また、見せてよね」


果南「精一杯やるつもりだよ、ラケットまで貰っちゃったんだし」


鞠莉「ラバーの厚さも合ってるよね?」

果南「ばっちり、流石ストーカー」


千歌「――かなんちゃーん!!」


果南「ん……千歌」


千歌「はぁ、はぁ……果南ちゃんっ、わたし……果南ちゃんと本気で卓球したい! だから」

果南「……わかってる。もう手加減しないよ、ランキング戦……がんばろうね」


千歌「うんっ!!」


千歌「ばいばい! 梨子ちゃんかえろー!!」

215: 2017/06/23(金) 16:36:10.32 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇

次の日


ダイヤ「こ、これはっ!」

ダイヤ「改めてみるとすごいラインナップですわ……最早お店が開けます」キラキラ…

梨子(輝いてる……)

鞠莉「ダイヤも色々試したら? 用具マニアでしょ?」

ダイヤ「用具は好きですけれど、わたくしの用具は基本的に固定ですの」

鞠莉「えーじゃあ道具の知識そんなに持ってても」

ダイヤ「そういうわけではありませんっ! 鞠莉さんだけではなくて、皆さんも道具のことはもっと知識を深める必要があるの!」


ダイヤ「この中では果南さんと善子さんは問題なさそうですが、千歌さん、強くなりたいならば道具の知識は不可欠ですわ!」

千歌「は、はい」


梨子「あの、自分の道具以外に知る必要があるんですか?」

ダイヤ「そうですわね、梨子さんにも説明しておきますわ」

ダイヤ「自分が使う道具を知ることはとても重要です。しかし卓球は相手と球を打ち合うスポーツですわ。すなわち相手の道具を知ることである程度のプレースタイルや弱点がわかってくる」

216: 2017/06/23(金) 16:38:21.13 ID:Qy3SwdVb.net
ダイヤ「善子さんなら粘着ラバーを活かした回転でつき崩すカウンターパンチャー、わたくしならカット用の用具、果南さんなら……テンションラバーを活かした高スピン高反発の速攻型……」

ダイヤ「組み合わせは無限大といってもいい卓球の用具を知ると知らないでは、それだけで勝敗が変わるのですわ!!!」


梨子「な、なるほど」

鞠莉「鼻息鼻息」

ダイヤ「っ///」


ダイヤ「とにかく、鞠莉さんが提供してくれたこの道具を説明しながら、皆さんに合う用具を探していこうと思います」

千歌「私に合うものかあ……」

ダイヤ「鞠莉さん、ここにある試打用のラケットの組み合わせは誰が決めたの?」


鞠莉「私が良さそうって思うものと、もっともっと卓球詳しい人に頼んだ!」


ダイヤ「なるほど、確かに理にかなっている組み合わせが多いですわね」


花丸「マルは道具は今のままがいいんだけど……」


ダイヤ「確かにそうかもしれませんわね。とりあえず今道具を交換しなければならないのは……二年生だけ?」


千歌「そう、かも?」

善子「私も色々試す」

ダイヤ「わかりました、では梨子さんから」

217: 2017/06/23(金) 16:41:26.35 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇

パコンッ


梨子「あ……すごい」

梨子「全然違う、球が伸びる……」

ダイヤ「これが競技用のしっかりとしたラケットです、全然違うでしょう?」

梨子「うん……これなら……」

ダイヤ「今使って貰ったのが木材ラケットに高弾性ラバーを貼った使いやすいもの。ではこの特殊素材ラケットにテンションラバーを貼ったものを使ってみて?」

梨子「特殊素材ラケットは飛ぶラケット、テンションラバーも飛ぶラバー……だよね」

ダイヤ「そう」

梨子「どんな感じなのかな……」

――――

梨子「ツッツキも普段はそこそこ出来てたはずなのにすぐ高くなっちゃうし……オーバーミスが多くなっちゃう……それになんかネットミスも……どうして?」


ダイヤ「テンションラバーは飛ぶラケットです。高い弧線を描きやすく、使い手によってはオーバーミスが多くなりますの。ツッツキなどの台上技術もより繊細なタッチが必要になる」


ダイヤ「ネットに突き刺さる様な軌道が時々出たのは、特殊素材ラケットゆえの硬い打球感、つまりラケットに当てたぢけだと球離れの速さのせいで弧線があがりきらないことも増える、こんな感じね」


梨子「確かに、私には使えなそう……上級者用だね……」



ダイヤ「トッププロは反発力の高いものに回転性能が高いものを使いますが、それはあの人達の技術あってのもの」

ダイヤ「反発力が高い、ということはオーバーミスしやすい、台上の技術が甘くなるということに繋がります」


ダイヤ「回転性能が高いということは、相手の回転の影響もモロに受けるということ」


ダイヤ「それぞれの性能が高ければいいというわけではないのよ」

218: 2017/06/23(金) 16:42:59.90 ID:Qy3SwdVb.net
梨子「最初に使ったラケットとラバーの組み合わせ、私に合ってるのかな?」

ダイヤ「そうですわね、これからの上達の手助けになるでしょう。でも梨子さん、バックハンドの技術の上達がとても早いので、バックハンドは少し上のモデルのラバーを貼るのがいいと思います」

梨子「な、なるほど……よろしくお願いしますっ」

ダイヤ「では部室に戻ったら、張替えをしましょう」

ダイヤ「――ふたりはどうですの?」


千歌「っふっ、あぁっ、もうっ」

千歌「あ、ダイヤさん」

ダイヤ「どう?」

千歌「うーん……ラバーはテンションラバーすっごくいい感じ!」


ダイヤ「千歌さんくらいならば十分テンションラバーでも大丈夫ですわね、ちなみにそのラバー、一枚約8000円……両面で16000円……」

千歌「ぅ……そう聞くと重みが」


千歌「ラバーはいい感じだけどラケットは……木材がいいかも千歌は……なんか特殊素材は打ってる感じがしない」


千歌「ほら、なんていうのかな。――みんなそれぞれ卓球の球にも想いが乗ってると思うんだよね……それを受け止めながら、卓球したいっていうのかな……ごめん何言ってるかわからないかもしれないけれど」


ダイヤ「いえ、なんとなくわかりましたわ。強い人ほど球に信念が乗っているというのには同意です。……そうですね、それならば……」

219: 2017/06/23(金) 16:44:40.92 ID:Qy3SwdVb.net
 、

220: 2017/06/23(金) 16:45:22.91 ID:Qy3SwdVb.net
ダイヤ「これなんかいいと思いますわ」


千歌「これは……」


ダイヤ「初心者から上級者まで使える、木材ラケットの最高峰のものですわ」


ダイヤ「楽器を作る技術を応用して心地よい打球音が特徴ですの」


千歌「ラバーはテンション……よし、打ってみよ!」

曜「あの、私は……」


ダイヤ「曜さんはどんな卓球がしたいんですの?」

曜「……わたしは」


曜(鹿角理亞ちゃんみたいな……超高速の卓球……とにかく前で、早く、早く……)


曜「誰よりも早く、前で、相手の球を強く返したい!」

曜「あとはなんとかするから」



ダイヤ「――前陣速攻。曜さんならば、まあそうでしょうね。それならば……」

221: 2017/06/23(金) 16:46:42.47 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇

千歌「おおっ! このラケットいい! これにするっ!!」

千歌「音も気持ちいいし、球が手に伝わってくる感じ……うん、これだ」

ダイヤ「良かった」

千歌「曜ちゃん、なんかすっごく球速かった!! そのラケットすごい!! 今までと全然違うよっ!!」

曜「そ、そうだよね!」

曜(このラケットなら……)

 

曜(――強くなれる)

 

ダイヤ「ラバーはどうしますか?」

千歌「もうちょっと違うの打ってみようかなあ」

曜「私もっ、もっと、もっと……速いやつ。それ以外はこっちで補うから、だからとにかく! 一番速いやつ!!」


ダイヤ「わ、わかりましたわ」


ダイヤ(曜さん……なんだか変ですわ)

222: 2017/06/23(金) 16:48:43.04 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇


千歌「うーん……とりあえずこのラバーにしとく」

ダイヤ「しっくり来ませんか?」

千歌「何が欲しいのかもよくわからなくね」


ダイヤ「まあそうですわよね。このラケットでプレーしていくうちに何が欲しいのかわかるようになってくると思いますわ」


ダイヤ「だからと言って、すぐにラバーを張り替えたり無駄なことはしないように」

千歌「はーい」


ダイヤ「曜さんはこの組み合わせでいいのね?」

曜「うん」


ダイヤ「では、これからラバーの張り替えをしていきますわ」

ダイヤ「梨子さん千歌さん曜さん、真似しながら自分で出来るようになってくださいね」

梨子「張り替え……」


ダイヤ「まずは……ラバーを剥がす」ベリベリッッ

梨子「ああっっ」


千歌「だいたん……」

223: 2017/06/23(金) 16:50:04.20 ID:Qy3SwdVb.net
ダイヤ「剥がしてしまったラバーは使えないので捨ててくださいね。こうしてラケットを木だけの状態にしたら……ほら、接着剤が表面にこびりついていますの。これを手で丁寧に撫でて取っていくの」コスコス


梨子「それをするとなにが?」


ダイヤ「凹凸が無くなって、ラバーの力を最大限引き出せますの」


千歌「ほえー……千歌たちのラケットは新品だからしなくていいんだよね?」

ダイヤ「ええ、少し待っていてね」コスコス

ダイヤ「で、皆さん準備はよろしくて? この接着剤をラケットに塗っていきます。出来るだけ均等にスポンジで伸ばして……」

千歌「こ、こんな感じ?」

ダイヤ「もう少し」

千歌「ふぁい」

ダイヤ「そしてラバーを開けます」ベリッ

梨子「わ……ラバーって四角いの!? なんで!?」

ダイヤ「ラケットの大きさはものによって違いますから、自分達でカットするのよ」

梨子「そ、そーなんだ」


ダイヤ「丁寧にラケットにも接着剤を貼り付けて……吸着するまでしばらく起きます」

224: 2017/06/23(金) 16:51:12.62 ID:Qy3SwdVb.net
――――


ダイヤ「丁寧に切りなさい丁寧に!」

千歌「ぅ……切りにくい」

曜「出来た!」

曜「おお……すごい……新品ラケットだぁ……」

ダイヤ「サイドテープを巻いたら終わりですわ。自分の分身と同じです、鞠莉さんに感謝しましょうね」

千歌「うんっ!!」

梨子「自分のラケット……」

千歌「あれ、鞠莉ちゃんは?」


鞠莉「――お待たせーっ、て、あれ?」

鞠莉「もうラバー貼り終わっちゃったの?」


千歌「うんっ!」

鞠莉「なんだ、ラバー選びに苦労するだろうから今年の分の各メーカーのカタログも持ってきて貰ったのに……」


千歌「ぬ、抜かりない……一応見せて!」

パラパラ


曜「カタログってなんかかっこいいね……これほとんどこの部室にあるんだよね……」ゴクッ

千歌「確かにそう考えると……」ゴクッ


善子「ほんとよ、あんな超レアラバーまで用意して」

鞠莉「どれのこと?」


善子「あのブルースポンジのやつよ!」

225: 2017/06/23(金) 16:52:45.14 ID:Qy3SwdVb.net
鞠莉「ああ、結構手に入れるの大変だったみたいだし、使ってあげてね♡」

千歌「――ああっ!!!」

曜「あれ、これって!!」

ダイヤ「ど、どうしましたの!?」

千歌「こ、このカタログに載ってるの――聖良さんだよ!!」

梨子「ほ、ほんとだ……」


千歌「ど、どういうこと!?」


ダイヤ「これは……聖良さんがメーカーの、契約選手ということですわ」

千歌「けーやくせんしゅ?」


ダイヤ「メーカー側がスポンサーになって用具を提供することです、活躍すればするほどメーカーの宣伝になりますから」


千歌「確かにここに書いてある用具、使ってたかも……」


ダイヤ「このような方々はメーカー特注で専用のラケットやラバーを提供していることもありますの。ラバーの名前が同じでも、性能はさらに上のものになっていたり、ね」


千歌「なにそれずるい!!」

226: 2017/06/23(金) 16:54:54.19 ID:Qy3SwdVb.net
ダイヤ「トップ選手に対するサポート、ですから。大量生産が困難なデリケートな品質のプロストック品」

千歌「むむむ……じゃあ聖良さんは最高の道具を使ってるってこと?」

ダイヤ「おそらく」

千歌「ただでさえ強いのに、市販のよりすごい性能の道具を使うなんて……」

ダイヤ「このカタログを見てもわかるようにあなたは、いえ、私達は次元の違う人に挑もうとしている……わかってる?」

千歌「……わかってる。絶対、絶対勝つもん!」


千歌(用はプロってこと、か……)

千歌(他の人に比べても、ダントツに可愛いし、きれーな顔……スタイルもいいし……すごいな……)

 

ルビィ「みんな!」

千歌「?」


ルビィ「ラブライブ、スクールアイドルスポーツ大会の詳細が発表されたよ!!」

千歌「うそ!!」


花丸「おお……これが」

千歌「エントリーは!?」


ルビィ「うん……ここから。えと、大会までは……約一カ月、ですね」

花丸「夏休み前……ラブライブ本戦はいつなの?」


ルビィ「えっとまだ詳細が出てないけど、多分予選は夏休み入ってから少し経ってから、くらいかな?」

228: 2017/06/23(金) 17:00:58.94 ID:Qy3SwdVb.net
千歌「じゃあじゃあ、千歌達も個人戦に出た方がいいのかな?」


ダイヤ「ただ、個人戦の方がセイントスノーの方々も出ますし、結果も残し辛いのではなくて?」


ルビィ「そうだと思う、個人戦の方がレベルは高いってどこ見ても書いてあるし」


花丸「じゃあ団体戦に出た方が取り上げてもらいやすいってことだよね」

ルビィ「でも、取り上げられる大きさは個人戦の方が大きいよ、雑誌でもそうだし、ネットでも」

ルビィ「セイントスノーの人達も聖良さんが優勝してから一気に注目されたって感じだし、当時は妹さんじゃなくて違う人とやってたみたいだけど」


鞠莉「ハイリスクハイリターンか、ローリスクローリターンか……どうしよっか?」


千歌「……どうしよう」


善子「……あの人に、全国で待ってるって、言われた」

善子「セイントスノーは二人組だから、団体戦には出てこないんでしょ? ……だから、私は個人戦がいい」



千歌「……私も、個人戦がいい……」

229: 2017/06/23(金) 17:02:05.61 ID:Qy3SwdVb.net
千歌「聖良さんともう一回戦って……本気だってこと、伝えたい」

鞠莉「ハイリスクハイリターンの方がいいって、ことね?」

千歌「……うんっ」


果南「団体戦の方がレベルは低いんでしょ? ならさ、Aqoursは9人もいるんだから上位が個人戦で下位の何人かが団体に出ればいいんじゃない?」


果南「個人戦でAqoursの矛をぶつけるんだから……かなり挑戦的だけど、ね」


ダイヤ「仮に団体戦で善子さんと果南さんを始め、Aqoursの上位の人を中心に組めばかなり良いところまで、いけるかもしれませんわね」

善子「……」

千歌「やっぱり……個人戦がいい」


千歌「もし、もしね……団体戦で良いところまでいけても……後悔すると思う。個人戦に出ればよかったかなとか。だって、個人戦の方が精一杯本気でやってる人が多いんだよね、なら……そういう人達と本気でぶつかって、勝ちたい!!」


善子「いいこと言うじゃない! 私も鹿角聖良ともう一回戦うために出るようなものなんだから!」

ダイヤ「わかりました……」

230: 2017/06/23(金) 17:03:21.10 ID:Qy3SwdVb.net
ダイヤ「調べたところ、準決勝以上では……同じスクールアイドルグループならば、団体戦のように近くで応援することが可能らしいですわね」

千歌「つまり?」

ダイヤ「準決勝以上では実質団体戦……これ以上ない盛り上がりと、注目の中、プレーすることになりますわ」

千歌「ごく……」

曜「次のランキング戦で決めるってこと?」

ダイヤ「そうなりますね、ルビィ、静岡県の枠は?」

ルビィ「えっと……静岡県は4つ、だね」



善子「準決勝まで行けばいいのね」


曜「静岡県予選の次は東海予選?」


ルビィ「ううん、静岡県予選の次はいきなり全国だよ。競技卓球よりは人数も少ないしね……」


善子「県予選から全国なら……全国大会は200人くらいになるのかしら」

231: 2017/06/23(金) 17:04:00.86 ID:Qy3SwdVb.net
千歌「に、200人……」

善子「まあでもそんなものだと思う」


ルビィ「善子ちゃんはシードになれるかも」

善子「そうなの?」


ルビィ「エントリーするときに過去に実績ある人だとそうなるみたい」


善子「ふぅん」

千歌「よし、とりあえず部内ランキング戦だ!」

果南「いつからにする?」


ダイヤ「みなさん新しい用具にしたばかりだし……三日後くらいでいいのでは?」


鞠莉「そのくらいがいいかもね」


千歌「緊張してきたー!」

232: 2017/06/23(金) 17:05:21.56 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇


曜「ふっ……」カコンッ

善子「っ!」ギュインッッ

善子(フォアゾーンギリギリ、このコースのドライブなら)

バッッ…

善子(なっ……追いつい――)

カコンッッ!!!!

曜「ぁあ……」

善子「11-8……ありがと」

曜「だめだー何度やっても勝てないなぁ……」

善子(追いつかないと思った球に追いついて……とにかく前で前で叩いてくる)

善子(打球点も馬鹿みたいに早いし、それをやってのけることも多い……なんなのよ、この人……)

善子(ピッチが早すぎて……ラリーになると――負けることだって。ラケットもラバーもとにかく速くて直線的なもの、あんなの扱えないわよ普通。一体……)


曜「千歌ちゃーん!」


鞠莉「uhh……すごいわねえ曜は」


善子「なに勝ったのは私よっ」

233: 2017/06/23(金) 17:07:27.15 ID:Qy3SwdVb.net
鞠莉「もう、自分もわかってるくせに」

善子「……」

鞠莉「善子ちゃんの回転をかけるボールタッチも天性の才能だけど……あの子の才能も……天性のもの、ね」

善子「……ま。負けないけど」

鞠莉「でしょうね」

鞠莉「ランキング戦はどう? 警戒する相手はずばり!」


善子「そんなの……果南さんに決まってるでしょ」チラッ


果南「――しゃっ!!」


千歌「くっ……」

千歌「強い……」


千歌(なにこのドライブの威力……返せるわけない……)

梨子「すごい……」


鞠莉「さっすが果南!」ギュッ

鞠莉「ラケットいい感じ?」

果南「そう、だね……大分いい感じ」

234: 2017/06/23(金) 17:08:51.93 ID:Qy3SwdVb.net
千歌「果南ちゃん今までどれだけ手加減してたの……ひどい」ジト…

果南「ご、ごめんて……」


善子「ぜ、絶対負けないんだから!!」


果南「……私もいくら善子ちゃんでも、無抵抗では、負けたくないな」

善子「……っ」


バチバチ…


千歌「ごく……」


千歌(千歌も、千歌も絶対負けたくない……今は勝てなくても、絶対……っ)


曜「……」


曜(ランキング戦……誰よりも強ければ、千歌ちゃんも少しは頼ってくれる、かな)


曜(勝ちたい……果南ちゃんと善子ちゃんは無理だと思うけど、他の人には絶対……)

236: 2017/06/23(金) 17:11:21.08 ID:Qy3SwdVb.net
ランキング戦



善子「ふぅ……」カツカツ…

キュパッ

ギュウッ


善子(強引に台上からドライブばっかりっ……だからって)グググッッ


善子(これ以上好きにさせないってば!)ギュウウウッッン


果南(ループドライブ……多量の回転がかかった善子ちゃんのこれはバウンドしてから大きく沈み込む……満足な体制じゃ打ちづらい、けど……)


果南「ふっ!!」ズバンッッ


善子(バックサイドにスピードドライブっ……それは、知ってる!!!)パコンッッ


果南「!?」


果南(回り込んでオープンコートに弾くカウンター……速いっ、追いつけ……っ)バッッ…ギュウンッッ…スパンッッ


善子(なっ、そこまで……っっ)


善子「はぁ……はぁ……」


果南「ほ……入った」

237: 2017/06/23(金) 17:13:04.90 ID:Qy3SwdVb.net
善子「くっ……」

善子(フルセット、8-6で勝ってるけど……今決めておけば……かなり有利になったのに)

善子(落ち着け……果南さんのスピードドライブはとにかく速くて回転もすごいけど……コースはそうでもない)

善子(球の威力は強いけどさわれないこともない、だからとにかく……回転で崩して……)


千歌「すごい……」

梨子「ど、どっちが勝つんだろ……」


ダイヤ「ラバーのシートにだけ擦らせて、天才的なボールタッチ能力だけで飛ばす善子さんのドライブ。その中でもループドライブを軸に回転プレーとカウンターで相手を突き崩す善子さん」

ダイヤ「擦るのではなくてラバーの下のスポンジに球を食い込ませて回転と威力を生み出すパワー重視の果南さん……真逆の戦型が故……予想も出来ませんわね。……正直、果南さんがここまで善戦するとは……」


千歌「って……ダイヤさん試合してたんじゃ」

238: 2017/06/23(金) 17:15:00.83 ID:Qy3SwdVb.net
ダイヤ「あなた方だって早く試合をしてください、進行が遅れますわ」

千歌「だってえ、面白いんだもん……」

千歌(果南ちゃんも善子ちゃんも、全然違う世界にいる人たちだ……いいな、かっこいいな……)

曜「どんな感じー? わ、フルセット……」

千歌「あ、曜ちゃんどうだった?」

曜「ばっちり!」


千歌「ダイヤさんに勝ったの!? すごいすごい!」ピョンピョン

曜「えへへ」


ダイヤ「正直……曜さんの成長速度の速さには驚きましたわ」

千歌「え?」

曜「い、いやーそれほどでも」


ダイヤ「一ヶ月前とは別人のようでした」

千歌「ほえー……」

曜「あはは……」


善子「――しゃあ!!!」

果南「あー……」

239: 2017/06/23(金) 17:15:52.22 ID:Qy3SwdVb.net
善子「やっ、たぁ……はぁ……はぁ」

千歌「あ、善子ちゃん勝った……」


千歌「フルセットで、11-9……」


善子(あ、危なかった……こ、この人どんだけ手加減、してたのよ……今回はなんとか、勝てたけど……でも、次3セット先取でやって――勝てる保証なんて、全然ない……)

果南「ありがと、楽しかった」


善子「……私も、本気でやるのはやっぱり楽しい」

果南「ふふ、私も。次は負けないからね」

善子「私だって」


千歌(すごいな……すごいな……わたし、だって……)ギリリッ…


ダイヤ「ほら千歌さん、試合をする」

240: 2017/06/23(金) 17:22:07.27 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇

千歌「くっ……」キュパッッ

曜「……」

曜(とーん……)

曜(どんっ)スパンッッ!!!!

千歌「っ」

ダイヤ「3-7」

曜(とんとんっ、どんっ)バチンッッ!!!

ダイヤ「3-8」

千歌「はっ、はっ……」

千歌(どこに出しても、何を出しても、前で前で叩いて、きて)

千歌(――なんで、なんで曜ちゃん、こんなに強いの……?)

千歌(道具なら、私だって変えた……それなのにっ)カコンッ

キュッキュッ


曜「っ……」


曜(フォア、そのコースからじゃ次はストレートはない)パコ-ンッッッ



曜(バック……ミドル、短い……次はロング……!!)

スパ-ンッッ!!!!


千歌「ぅ……」


ダイヤ「3-9」

曜「……」

曜(千歌ちゃん……なんで、そんなに単調な攻撃しかしないの? ……そんなの、コースわかっちゃうよ、サーブもドライブも、全然……だめ)

241: 2017/06/23(金) 17:25:00.14 ID:Qy3SwdVb.net
曜(なんで、回転見て、打てばいいだけじゃんっ!!!)


ダイヤ「3-10」


千歌「くっ……」ウル…


千歌(曜ちゃん……すごいや、なんでも、千歌より、できて……)


曜「っ……」フルフル


曜(やめて……やめてよ、これじゃあ)

 
 


曜(――勝っちゃう、よ……)


 
 

曜「あ……」カコンカコン…

ダイヤ「4-10」


曜(またあの悲しそうな顔だ……どうして、どうして私に負けそうになるとそんな顔をするの?)

ダイヤ「6-10」


曜(果南ちゃんや善子ちゃん、強い人に負けても清々しそうな顔するのに……どうして)


曜(私が誰よりも強ければ、認めてくれるんじゃないの? 私は、どうしたら、千歌ちゃんの近くにいけるの……? どうしたら、楽しく、できる、の?)


ダイヤ「9-10……」


千歌「――やめる」

ダイヤ「は?」


千歌「試合、やめる」

242: 2017/06/23(金) 17:25:54.94 ID:Qy3SwdVb.net
曜「千歌ちゃん!?」


千歌「だって……だって、曜ちゃん――手加減してる、もん」

曜「っ!?」

ダイヤ「……」

鞠莉「あらあら……」

千歌「もう一回、本気でやって……じゃなかったら……このセット取られたことにして、負けでいい」

曜「……」

ダイヤ「ちょっと、いきな――」


鞠莉「まあまあ……じゃあ、曜とちかっちの試合は後日に回そ? お互いちょっと話し合って、ね?」

曜「わかった……また今度に、しよ」


ダイヤ「では……本日の部活はおわりですわ」

千歌「……曜ちゃん、久しぶりにさ……泊まりに来ない?」

曜「え……」

千歌「だめ?」

曜「う、ううん……いいけど」

244: 2017/06/23(金) 17:30:58.77 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇


カコンカコン


曜「いいの、夜なのに卓球して」


千歌「へーきだよ、客室までは聞こえない。私たちが叫んだりしなきゃね」

曜「そっか」

千歌「……」

千歌「ね……どうして手加減したの?」


曜「それは……」


曜(なんて、言えば)


千歌「私に気を使うなら……やめてほしいな。曜ちゃんは凄いんだから……私なんかのこと、考えなくて、いいんだよ?」アハハ…

曜「……」


千歌「ほんと、曜ちゃんてば凄いね!」ニッ


曜「そんなこと、ないよ」


千歌「だって、クラブも部活もしてない……小さい頃私とかお姉ちゃん達と打ってただけなのにこんなに強いんだよ? それって凄いことだ、よ!」カコ-ンッッ


曜「ナイスボール」

246: 2017/06/23(金) 17:32:16.32 ID:Qy3SwdVb.net
千歌「でもこんなんじゃ、取られちゃう。――そうでしょ?」


曜「……うん」


千歌「……」


千歌「えへへ、だからね、曜ちゃんはこの調子でがんばって欲しいな」


千歌「次手加減したら本気で怒るんだからね? わかるんだよ、このラケットにしてから……球に乗ってる、人の気持ちって、いうのかな」


曜「私は……」


曜「ううん、なんでもない。じゃあ今度、本気で試合……しようね」

千歌「うん!!」


♪♪♪

千歌「あ、梨子ちゃんからだ!」

曜「!!」

千歌「もしもし、うん、うん! え、泊まりに来るって話じゃないの? なんだー、あはは」

曜「……」

 
 

曜(どうしてだろう……どうしたらこんなに……遠いんだろう)

247: 2017/06/23(金) 17:36:33.65 ID:Qy3SwdVb.net
◇――――◇

曜「っ!!」スパ-ンッッ!!!!

千歌「くっ……ぁ」


ダイヤ「……3-11、マッチトゥ曜さん」


千歌「っはー……負けた」

千歌「こんなに、離れてるなんて……」



曜「……あ、ありがとうございました」

千歌「はーっ……うん! さっすが曜ちゃん、だね!」

ダイヤ「――では、ランキングは……こんな感じになりましたわ」


 

1年生 ランキング戦 結果
no title


2年生 ランキング戦 結果
no title


3年生 ランキング戦 結果
no title

248: 2017/06/23(金) 17:37:56.82 ID:Qy3SwdVb.net
ダイヤ「団体戦はどうしましょう……」


果南「正直、でなくてもいいかもしれないよ」


果南「梨子ちゃんは初心者だし、ルビィちゃんもちょっといきなり大会はきついだろうし……」

鞠莉「私もそう思う、ダブルスだって何もやってないわけだし」

ダイヤ「確かに……」


果南「私たちがいるうちに団体戦は出る、だから団体戦出場は冬のラブライブで、最初で最後にした方がいいと思う」


果南「下手にめちゃくちゃにやられてトラウマみたいになるよりは、ね」


ダイヤ「どうですか、千歌さん」


千歌「……そうかも」

千歌「でも、絶対に冬は出よう! 今回の夏も本気だけど……やっぱり優勝するには、みんな力が足りてないと思う」


千歌「私達の本番は冬のラブライブ! そこに照準を合わせよう!!」

果南「おっけー、じゃ、冬は確実にでるんだから、梨子ちゃんも上手くならないと、ね?」


梨子「は、はいっ!」


ダイヤ「とりあえず、個人戦に出る四人は今回も優勝するつもりで。みんな力はあるんだから、自信を持って」

千歌「うんっ! がんばろーね、曜ちゃん!」


曜「う、うん!」

249: 2017/06/23(金) 17:39:42.97 ID:Qy3SwdVb.net
また夜に。

250: 2017/06/23(金) 17:50:41.71 ID:y1CGt3LD.net
善子以下のメンバーで善子より遥かに格上の相手に勝てるのかね
静岡は余裕だろうが

251: 2017/06/23(金) 17:59:37.17 ID:7K6w+ED5.net
相手の回転を利用するマルは無回転のルビィには負けるけど、上回転の果南、下回転のダイヤ相手には有利なのが相性か

鞠莉はどんなスタイル?

252: 2017/06/23(金) 18:00:34.77 ID:a/ug65KD.net
千歌にストレートなダイヤが果南にセット取ってたりすんのは相性なのかな
つか11-8とかならそんな離れてないような気すんだけど案外それくらい取れちゃうもん?

253: 2017/06/23(金) 18:06:19.06 ID:65av9d+z.net
卓球は流れ次第で10-2だったのが10-12になったりするぞ
1ゲーム目11-3で圧倒してたのに次のゲームでは3-11になったり
案外格上撃破も多い
張本が水谷に勝ったりな

254: 2017/06/23(金) 18:08:25.26 ID:65av9d+z.net
鞠莉のスコアはなんかあるのかとは思う
2-0からの逆転負けが多すぎる

260: 2017/06/23(金) 18:49:34.57 ID:oGroykXF.net