1: 2012/05/21(月) 19:11:50.11 ID:9lHwPcWj0
全国大会前四校合同合宿中

―― 合宿所 大浴場 ――

優希「おと~ふ? なんのことだじぇ?」

衣「ノノカのあそこ、おと~ふなんだよっ」キャッキャッ

和「ちょっと天江さん! 指差さないでくださいっ」

優希「あそこが豆腐? んん?」

まこ「あそこが『白』ちゅうことじゃろ」ニヤニヤ

優希「おぉう! のどちゃんはパイパンか!」

和「優希、声が大きい!」

久「あらあら、和もまだ子どもね」フフッ

透華「胸部の無駄な脂肪は大人以上ですのに、アンバランスですわね」フフッ

和「そこの二人! 聞こえてますよっ」カアアァ
咲-Saki- 24巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
3: 2012/05/21(月) 19:13:47.64 ID:9lHwPcWj0
純「むしろ、それが狙いなんじゃねえか? ほら、ギャップ萌えとかいうだろ」

智紀「さすがデジタル……、計算高い……」ボソッ

一「ある意味ボク以上だね」

和「そんなんじゃないですっ、露出狂と一緒にしないでくださいっ」

一「だから、ボク以上だって言ってるじゃん。ボクが圧倒的に下だよ、ヘンタイさん」ニヤニヤ

和「ヘンタッ……、もうッ私は先に出ますっ、皆さんごゆっくり!」ザバッ

優希「のどちゃん、怒っちゃったじぇ……」

衣「衣のせいか? 衣が言ったからノノカは怒ったのか……?」シュン

久「天江さんは悪気があったわけではないのでしょう。気にしないでいいわよ」ナデナデ

衣「ふわわっ……、頭撫でるなぁ……」

4: 2012/05/21(月) 19:14:33.80 ID:9lHwPcWj0
透華「それでも、私たちが悪ノリしすぎたかもしれませんわね」

久「そうね……、ちょっとからかいすぎたわ」

智紀「みんなで……、謝る……?」

純「でも、怒ってるときに下手に行くとマズいんじゃねえか」

一「ここはボクが一肌脱ぐよ!」

まこ「もうとっくに裸じゃろうが」

優希「じゃあ、付き合い長い私が行ってくるじぇ!」

久「それは少し面白くないから却下ね……、みんなの期待もあるし」

優希「んん? みんなって誰だじぇ?」

久「それは秘密。――ところで須賀君、さっきから聞いてるでしょう?」

京太郎「ブボァッ!? なんで、なんでバレた!?」ゲホッゴホッ

透華「見事なカマかけ狙い打ちですわね……、まったくもって恐ろしい……」

5: 2012/05/21(月) 19:15:14.18 ID:9lHwPcWj0
久「盗み聞きしてたの許してあげるから、須賀君が原村さんに謝ってきてくれない?」

京太郎「えっ!? 俺が行っていいんですか! 本当に!?」ガタガタ

久「嘘に決まってるじゃない。がっつくオトコは嫌われるわよ」

京太郎「……」ブクブク

まこ「静かになったのぅ……」

透華「茶番はそれくらいにして、結局どうしますの?」

久「そんなの決まってるでしょう。原村さんが一番好きな人に行ってもらうのよ」チラッ

純「原村が……」チラッ

まこ「一番……」チラッ

一「好きな……」チラッ

衣「人……」チラッ

咲「? もう誰もいないですよ……?」チラッ

咲以外みんな「お前だ、お前!」ビシッ

6: 2012/05/21(月) 19:15:51.82 ID:9lHwPcWj0
咲「わっ、私ですかっ!?」

久「あなた以上に最適な人はいないわよ」ニコッ

咲「優希ちゃんは……?」

久「言ったでしょう、面白くないから却下って」

咲「そんな……、私、なにも言ってないのに……」

久「上手くいったら、あなたが読みたがってた本を部費で買ってあげるから、ね」

咲「うぅ……、絶対ですよ……?」

久「部長の名に懸けて守るわ」

咲「わかりました……、謝ってきます……」ザバッ

7: 2012/05/21(月) 19:16:23.34 ID:9lHwPcWj0
透華「あの娘に任せてしまって本当に大丈夫ですの?」

久「大丈夫よ、絶対」

透華「妙に自信がありますわね。なにか根拠があるんですの?」

久「さあね。言ったとしても、デジタルのあなたには信じられないと思うわ」

透華「???」

久「まあ、私たちはゆっくりしていきましょう。宮永さんを信じて、ね」フフッ

透華「……そこまで仰るのなら、あなたを信じますわ」

久「ありがと。――ところで、止めたほうがいいんじゃないかしら、アレ」ピッ

透華「アレ……?」

8: 2012/05/21(月) 19:16:52.88 ID:9lHwPcWj0
衣「わ~い、これが本当のハイテイだぁ~!」ザブンッ

透華「ちょっ、衣! なにしていますの!?」

純「風呂の底まで潜ってくるんだってさ」

透華「『だってさ』、じゃないですわっ! 早く止めなさい!」

衣「ぷはッ……、ん、トーカ?」

透華「衣、ここはプールではありませんことよ! 静かにつかってなさいっ」

衣「じゃあ、あと一回だけ」ザブンッ

透華「待ちなさい、衣っ、ハギヨシ、ハギヨシッ」

純「いや、女湯に男を呼ぶなよ……」

透華「黙りなさい、このオレ女! だいたい、あなたが付いていながら……」ガミガミ

久「ふふっ、龍門淵はにぎやかね。――ウチの宮永さんは上手くいったのかしら」

15: 2012/05/21(月) 19:19:38.99 ID:9lHwPcWj0
久「――で、なんで私たちより先に出た和が倒れてたのかしらね」

咲「さあ……、私が来たときには、もう倒れてたので……」

優希「きっと怒って頭に血が回りすぎたんだじぇ!」

まこ「そんで、精密すぎる頭がオーバーヒートしたんじゃろうて」

咲「たぶん、そうですね……、たぶん」

久「そういうことにしといてあげるわ……、あ、気がついた?」

和「んんっ……、私は……?」

久「部屋の中で倒れてたから布団に寝かせてたのよ」

和「そうですか……、御迷惑おかけしました……」

16: 2012/05/21(月) 19:20:07.98 ID:9lHwPcWj0
優希「のどちゃん、せっかくお風呂入ったのに汗びっしょりだじぇ」

和「本当ですね……、気持ち悪い……」

まこ「ぬるめのシャワーで汗流してきんさい。ほれ、着替え」

和「ありがとう、ございます……」フラッ

久「本当に大丈夫? ふらついてるわよ」

和「大丈夫……ですから……」フラフラ

咲「じゃあ、私がついていきますね」

和「えっ」

17: 2012/05/21(月) 19:20:41.10 ID:9lHwPcWj0
久「そうね、お願いするわ」

咲「はい」

久「長くなって、また倒れないように早くあがってきなさいね」

咲「わかってます、部長。行こっ、原村さん」

和「ちょ、ちょっと宮永さんっ」

咲「今度はお風呂で、だね」ヒソッ

和「ッ!」ビクッ

咲「あれ、私じゃ嫌かな?」

和「今度は……」

咲「ん、なに?」

和「今度は、お手柔らかにお願いします……」


おしまい

18: 2012/05/21(月) 19:21:27.27 ID:9lHwPcWj0
―― 深夜 大浴場 ――

モモ「静かっすね、私たちの他に誰もいないみたいっす」

ゆみ「もう遅いからな。みんな休んでるんだろう」

モモ「貸し切りっすか、なんかワクワクしてきたっす!」

ゆみ「気持ちはわかるが、あんまりはしゃぐな。子どもじゃないんだから」

モモ「モモは16っすよ。まだまだ子どもっす」

ゆみ「マナーに年齢は関係ない」

モモ「マナーって、私と先輩以外、人いないっすよ」

ゆみ「人がいなければなにをしてもいいのか? 違うだろう」

モモ「う……、ごめんなさいっす……」

ゆみ「うん、素直に謝れるのはモモの長所の一つだ。――さあ、ゆっくりしていこう」

モモ「はいっす!」

19: 2012/05/21(月) 19:22:01.17 ID:9lHwPcWj0
モモ「それじゃあ、先輩、お背中流すっす!」

ゆみ「いや、自分で洗うからいいよ。モモはゆっくりしていろ」

モモ「でも、後輩の私が先輩より先にお風呂入るのは、なんだか申し訳ないっす……」

ゆみ「私は別にそういうの気にしないぞ」

モモ「私が気にするっすよ」

ゆみ「その『っす』もだけど、モモはヘンなところで体育会系だよな……、影薄いのに」

モモ「影の薄さは関係ないと思うっす」

ゆみ「……わかった、そんなに流したいのなら好きにするといい」

モモ「了解っす! 私、頑張るっすよ~」

ゆみ「頼んだよ、モモ」

モモ「任せてくださいっす!」

21: 2012/05/21(月) 19:22:36.03 ID:9lHwPcWj0
モモ「――痛くないっすか、先輩」ゴシゴシ

ゆみ「ん、ちょうど良い。気持ちいいよ」

モモ「そう言ってもらえると俄然やる気が出てくるっす」ゴシゴシゴシ

ゆみ「はは、そんなに洗われると背中がスベスベになりそうだな」

モモ「スベスベ通り越してピカピカになるまで頑張るっす!」

ゆみ「いや、さすがにそれはちょっとな……」

モモ「冗談っすよ?」

ゆみ「モモの勢いが凄くて冗談だとは思えない」

22: 2012/05/21(月) 19:23:02.50 ID:9lHwPcWj0
モモ「先輩、ひどいっす……」

ゆみ「ちょっ、痛い痛い! 爪立てるな、モモ!」

モモ「先輩の背中に恨み事を刻んでるっす、孫の代まで祟るっすよ」

ゆみ「ほぅ。孫の代まで私と一緒いるという意味か、それは」

モモ「そ、そんなんじゃないっす~!」

ゆみ「だから、爪を立てるな! 本当に痛いから!」

モモ「先輩がヘンなこと言うからっすよ~!」

23: 2012/05/21(月) 19:23:36.67 ID:9lHwPcWj0
モモ「……すみませんでしたっす、先輩」ゴシゴシ

ゆみ「うん……、私も悪かった。――ところで、モモ」

モモ「はい? なんっすか」ゴシゴシ

ゆみ「いつまで私の背中を洗うつもりだ……?」

モモ「あ……、思わず夢中になってたっす」

ゆみ「そろそろいいだろう」

モモ「そうっすね、じゃあ、次は前洗うっすね」

24: 2012/05/21(月) 19:24:05.56 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「ッ!? いや、前は自分で洗うから!」

モモ「そんな遠慮しなくていいっすよ、先輩」

ゆみ「ちょっ、ヘンなとこ触るなっ、モモ!」

モモ「ヘンなとこ? 先輩の身体にヘンなとこなんてないっすよ? とても綺麗っす」

ゆみ「モモ! 本当にもういいから! やめっ、」ガララッ

久「――あら、あなたは……、加治木さん、よね?」

ゆみ「!?」

25: 2012/05/21(月) 19:24:42.86 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「確か、清澄の――」

久「竹井久よ、久でいいわ。こんな時間にお風呂? 加治木さん」

ゆみ「ん、ああ。打ち続けてて、入るタイミングを逃してな。久もか?」

久「私は一回入ったんだけど、また汗かいちゃったからシャワー浴びたくて。一人で入ってたの?」

ゆみ「いや、」

久「ん、誰かいたの?」

ゆみ「いや、一人だ……(って、なんで消えてるんだ、モモ!)」

(モモ「いきなりだったんで、つい消えてしまったっす……」)

26: 2012/05/21(月) 19:25:16.52 ID:9lHwPcWj0
久「そう。でも、深夜の大浴場に一人って怖くなかったの?」

ゆみ「私は、そういうのあまり気にしない人間だからな……。そんな久こそ、一人だろう」

久「私も気にしないわ。まあ、麻雀における流れとかツモ運みたいなものは信じてるけど」

ゆみ「だから、あんな無茶苦茶な打ち方でも勝てるのか?」

久「ん~、やっぱりヘンに見える?」

27: 2012/05/21(月) 19:25:52.86 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「天江や清澄の大将――宮永、だったか――には劣るが、傍から見れば常軌を逸しているとしか思えない」

久「その宮永さんをチャンカン狙い打ちで止めたあなたも充分凄いと思うけどね」

ゆみ「あれはただ運が良かっただけだ。狙ってチャンカンできるなら連発してたさ」

久「じゃあ、国士無双による宮永さんの暗カン潰しと天江さんのハイテイを差し込んで止めたのも『運』かしら」

ゆみ「――さあ、私にはよくわからない」

久「麻雀歴数年足らずで、その強さ……。まったくもって羨ましいわ」

ゆみ「長野一の麻雀部部長に褒められるとは、光栄だな」

(モモ「先輩楽しそうっすね……、なんだか、私の存在忘れ去られてる気がするっす……」)

28: 2012/05/21(月) 19:26:33.87 ID:9lHwPcWj0
久「羨ましいのは本当よ、才能あるのは確かでしょうし」

ゆみ「才能か、意識したことはないが」

久「本人にはわからない、才能ってそういうものよ」

ゆみ「才能なら久にもあるんじゃないか」

久「えっ」

ゆみ「久の打ち方。恐らくプロでも簡単には真似できないだろう、その意味では久しか持たない立派な才能だ」

久「……それはどうも。お世辞でも嬉しいわ」

ゆみ「お世辞じゃないんだが――なッ!?」ゾクッ

29: 2012/05/21(月) 19:27:19.71 ID:9lHwPcWj0
久「どうかした?」

ゆみ「な、なんでもない、水滴が背中に当たっただけだ……ッ(なにするんだ、モモ!)」

(モモ「なにって、先輩の前を洗ってるだけっすよー」サワサワ)

久「あー、たまにあるわよね、天井の水滴が当たること。ビクッっとしちゃうわ」

ゆみ「あ、ああ、そうだな……ッ!(モモ、止めろ!)」

(モモ「……」モミッ)

ゆみ「ひぁっ!」ビクッ

久「また水滴……?」

ゆみ「い、いや、シャワーが意外に冷たくて……、なッ!(モモ、モモ! 聞いているのか!?)」ビクン

(         )

30: 2012/05/21(月) 19:27:58.66 ID:9lHwPcWj0
久「大丈夫? 顔赤いけど、のぼせたんじゃない?」

ゆみ「大丈夫ッ……、温まって血行が良くなっただけ……んッ!(まさか完全に気配を消したのか、モモ!?)」

(           )

久「私はもう出るけど……、長くなって倒れないようにね」

ゆみ「わかッ…てる……、また明日……くッ」ゾクゾク

久「ええ、おやすみなさい」ガララッ

31: 2012/05/21(月) 19:28:41.21 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「モモ! 出てくるんだ、モモッ!」

モモ「……」スゥー

ゆみ「せっかく久と話していたのに、なにするんだ!」

モモ「楽しんでたみたいっすもんねー、邪魔してごめんなさいっすー」

ゆみ「別に楽しんでたわけじゃない……、清澄について探ってたんだ」

モモ「そうっすかー? 笑ってたっすよ、先輩」

ゆみ「人と話してるときくらい、私だって笑――」

モモ「じゃあ、なんでっ!」

ゆみ「モモ?」

モモ「なんで私と話してるときよりも笑ってたっすか!」

33: 2012/05/21(月) 19:29:11.29 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「モモ……」

モモ「清澄の部長さんと話すのがそんなに楽しかったっすか!?」

ゆみ「落ち着け、モモ」

モモ「私とはできない話ができて良かったっすか!?」

ゆみ「そんなことは言ってないだろう」

モモ「そんなにっ、そんなにあの人が良いならっ! もう、私なんかッ」

ゆみ「それ以上言うな、モモ!」

モモ「――ッ!」ビクッ

34: 2012/05/21(月) 19:29:48.45 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「それ以上言うと本気で怒るぞ、モモ」

モモ「でもっ……」

ゆみ「いいから黙れ」

モモ「……」スゥー

ゆみ「あと、今消えたら絶交だ」

モモ「……ッ」

ゆみ「さっき、久と話をしていてモモの相手が出来なかったのは悪かった」

ゆみ「そのとき、普段モモと話すときよりも笑っていたことも認めよう」

ゆみ「だがな、モモ。あの話はお前の――後輩たちのためにしていたんだぞ」

モモ「えっ……」

35: 2012/05/21(月) 19:30:33.08 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「私はこの合宿を最後に引退するが、モモたちには来年、再来年がある」

ゆみ「そして、清澄は久以外全員残る。だったら、」

モモ「あっ……」

ゆみ「やっと気づいたか、モモ。そうだ、来年に向けて今から情報を集めておいて損はない」

ゆみ「しかも、風呂というリラックスする場所で優勝校の部長と一対一(二)だ」

ゆみ「内部の情報を聞き出す絶好の機会だと思って話に乗ったのだが。それをモモは……」

モモ「あわわ、至らない後輩でごめんなさいっす!」

ゆみ「もう済んだことだから気にするな、モモ」

モモ「本当に申し訳ないっす!」

ゆみ「いいから、顔をあげるんだ」

モモ「でも、先輩……」

ゆみ「まあ、久の話がメインで宮永の話はほとんど聞けなかったがな。当然だが、久も警戒していたようだ」


36: 2012/05/21(月) 19:31:10.08 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「それとな、モモ」

モモ「はい……」

ゆみ「久と話してたときの笑顔、あれは作り笑いだ」

モモ「え……?」

ゆみ「なんだ、気づいていなかったのか」

モモ「でもっ、あんな風に笑ってる先輩なんて……」

ゆみ「初めて見た、か?」

モモ「……」コクッ

ゆみ「初見で当然だ。なんでモモやみんなに作り笑いを見せる必要がある?」

モモ「……やっぱり、先輩には敵わないっすね」

37: 2012/05/21(月) 19:31:49.85 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「あとな……」

モモ「まだなにかあるっすか、先輩?」

ゆみ「私の笑顔についてだが」

モモ「はい」

ゆみ「私は感情表現があまり上手くなくて、自然に笑うのが苦手でな。だから蒲原から仏頂面と言われるんだが……」

モモ「それがどうかしたっすか?」

ゆみ「つまり、その、なんだ」

モモ「?」

38: 2012/05/21(月) 19:32:32.80 ID:9lHwPcWj0
ゆみ「顔に出ていなくても、私は……、私はモモと一緒にいるときが一番楽しい……」

ゆみ「だから、モモは安心し――んんッ!?」

モモ「もう安心したっす! 私、超嬉しいっすよ、先輩!」

ゆみ「モモッ!? ちょっ、危なッ、わかったから! わかったから放せ、モモ!」

モモ「嫌っす~! もう絶対放さないっすよ~! あと、さっきのもう一回言って欲しいっす!」

ゆみ「あんな恥ずかしいこと、二度と言うかッ」

モモ「先輩、顔真っ赤っすよ~! 可愛すぎて、もうヤバいっす~!」

ゆみ「モモ!? 落ち着け、モモーッ!」

モモ「先輩、大好きっす~!」


おしまい

51: 2012/05/21(月) 19:47:06.14 ID:9lHwPcWj0
―― 全国大会前四校合同合宿の夜 清澄高校の部屋 ――

久「ちょっといいかしら」

美穂子「なんでしょう?」

久「あのね――」

優希「それだっ、ローン!」

華菜「くっ、タコスのくせに生意気だし……」

和「私もロンです」

華菜「え」

咲「ごめん、私も……」

華菜「まさかのトリプルロン!? こんなの悪夢だし……」グスッ

美穂子「あらあら、泣かないで。次でオーラスだけど、きっと取り返せるから」

久「あちゃー……、ごめんなさいね。うちの一年が」

美穂子「いえ、良い経験になると思います」

久「そう言ってもらえると助かるわ」

54: 2012/05/21(月) 19:47:54.34 ID:9lHwPcWj0
美穂子「それで、お話の途中でしたよね」

久「その話だけど、やっぱりここでは言いにくいわ。あとで風越の部屋にお邪魔してもいいかしら」

美穂子「うちの部屋に、ですか……?」

久「ダメかしら?」

美穂子「私は構いませんけど……、どんなお話ですか」

久「ん~、私の実力アップについて、かな」

美穂子「麻雀のことなら清澄の皆さんと話されたほうがいいのでは? 私は一応部外者ですし」

久「身内だからこそ訊きにくい、言いにくいことがあるの。同じ人の上に立つ者として分かるでしょう?」

美穂子「そうですね……そういう理由でしたら、私でよければ、お引き受けします」

久「むしろ、あなたじゃないとダメなんだけどね」ボソッ


56: 2012/05/21(月) 19:48:35.33 ID:9lHwPcWj0
美穂子「今なにか……?」

久「いえ、なんでもないわ。じゃ、そういうことだから。しばらくしたら、お邪魔するわね」

美穂子「はい、私は先に部屋に戻ってお待ちしてますね」

久「ありがと。この対局を見終わったら行くから」

美穂子「華菜をよろしくお願いします」ペコリ

久「はーい」

咲「カン。リンシャンツモ」

華菜「うぅ……、こんなの積み込みだし……」グスッ

久「あらら……、咲も容赦ないわね、池田さんのトラウマにならなければいいけど」

58: 2012/05/21(月) 19:49:10.67 ID:9lHwPcWj0
華菜「もう帰る……」

優希「敵前逃亡は許さないじぇ!」グイッ

華菜「違うし、戦略的撤退だし!」

咲「どっちでもいいから、もっと麻雀楽しもうよ」グイグイ

和「そうです、まだ夜は長いですよ」グイグイグイ

衣「衣も来たよ!」

華菜「うわっ、なんで天江まで!?」

60: 2012/05/21(月) 19:49:42.97 ID:9lHwPcWj0
衣「風越の池田が衣と打ちたがってるって聞いて飛んで来たんだよっ! 朝まで衣といっぱい遊ぼうね!」グイグイグイグイ

華菜「これは誰かの陰謀だしっ!」

久「――悪いわね、池田さん。あなたが部屋に戻ると困るのよ」

和「じゃあ、私が天江さんと交代しましょうか」スッ

衣「ありがとう、ノノカ! ノノカの器はおっOいと同じく素敵滅法におっきいね!」

和「胸の大きさは関係ありませんっ」

61: 2012/05/21(月) 19:50:30.55 ID:9lHwPcWj0
優希「このメンツだと、なんだか、私が霞んでる気がするじょ……」

咲「そんなことないよ。だったら、次は優希ちゃんの得意な東風戦にしよっか」

優希「それなら咲ちゃんにだって負けないじぇ!」

咲「私だって勝ちにいくよっ」

衣「衣も頑張るっ」

華菜「せめて……、せめてタコスはトバしてやる……」

優希「ふっ、返り討ちにしてやるじぇ!」

62: 2012/05/21(月) 19:51:03.70 ID:9lHwPcWj0
衣「やたっ! いきなり衣のハイテイだ~!」

咲「私だって……、カン! リンシャンツモ!」

華菜「そんなッ……! こいつら絶対人外だし……」グスッ

優希「哀れだじぇ」クスクス

華菜「……なんだよ、タコス。お前だってダメだし」トン

優希「それだじぇ! ロン!」

華菜「タコスなんかに……、また……」ガックリ

久「――さて、そろそろ行こうかしら。池田さん、頑張ってね」


63: 2012/05/21(月) 19:51:46.78 ID:9lHwPcWj0
―― 風越高校の部屋 ――


久「福路さん、いる?」コンコン

美穂子「カギ開いてますから、どうぞ」

久「お邪魔しまーす」

美穂子「今お茶淹れますから座っててください」

久「別に気ぃつかわなくていいわよ」

美穂子「いえ、お客さんになにもしないと風越の名に関わりますから」

久「なら、お言葉に甘えさせてもらうわ」

美穂子「はい。すぐ淹れますから」

65: 2012/05/21(月) 19:52:17.37 ID:9lHwPcWj0
久「他の部員の方は? 誰もいないみたいだけど」

美穂子「他校の部屋へ。滅多にない試合以外の交流の機会だし、みんな楽しんでますよ」

久「そう。……それにしても、全然散らかってないわね」

美穂子「まだ来たばかりですから」

久「同じく来たばかりのウチの部屋は結構荒れてるわ。特に優希が色々かきまわしちゃって」

美穂子「合宿が嬉しくてはしゃいでるんですよ。――はい、どうぞ」コトッ

久「ん、ありがと。いただくわ」ズズー

美穂子「それで、お話というのは……」

久「私個人の問題なんだけどね……、ウチの部員には話せなくって。長くなるけどいいかしら」

美穂子「みんなが戻るまでまだ時間ありますから、ゆっくり話してもらって大丈夫ですよ」

久「一言で言うとね、私の心の弱さについてなの」

66: 2012/05/21(月) 19:52:48.08 ID:9lHwPcWj0
美穂子「心の弱さ……メンタル面、ですか」

久「はっきり言って、私、プレッシャーに異常に弱いのよ」

美穂子「対局見てても、そんな風には見えませんでしたけど」

久「対局中は気ぃ張ってるから。問題は対局前と終わった後」

久「始まる前は緊張してミスって負けるんじゃないか、前の二人が稼いだ点棒を私が全部無くすんじゃないか、って」

久「終われば、あそこでアレ打ったのは間違ってたとかオリるんじゃなかったとか考え込んじゃって」

久「もう意味ないと分かってても、頭の中でずっとグルグル回ってるの」

美穂子「対局前に不安になったり後で打ち方を後悔するのは誰にでもあることですし、あまり気にしないほうが……」

久「それは分かってる。でも、これはどちらかというと表面上の問題なの」

67: 2012/05/21(月) 19:53:22.60 ID:9lHwPcWj0
美穂子「どういうことでしょうか」

久「根本的な問題はね……、私、怖いの。負けて全てが終わってしまうのが、とても怖い」

美穂子「上埜さん……?」

久「三年生になって、やっと念願の全国に来れて」

久「せっかく、せっかく頑張って部を建て直して、良い後輩にも恵まれたのに……」

久「それがたった一試合、たった数時間で終わるなんて……、私には耐えられない」

久「私は……、私は部のみんなとまだ打っていたい……ぜんぜん打ち足りない……」

久「だから、負けるのがとても怖い……」

68: 2012/05/21(月) 19:53:58.52 ID:9lHwPcWj0
美穂子「――大丈夫ですよ、上埜さん」ギュッ

久「福路……さん……?」

美穂子「清澄は――上埜さんなら、きっと大丈夫ですよ」

久「どうして……?」

美穂子「だって、風越に――私たちに勝ったじゃないですか」

久「でも、」

美穂子「それとも、私に勝ったことは自信になりませんか?」

久「そんなことは、ない、けど」

美穂子「だったら、もっと自信を持ってください。あなたは長野で一番強い高校の麻雀部部長さんなんですから」

久「……そうね。県代表が戦う前から怖気づいてちゃ笑われちゃうわね」

久「清澄の、他校のみんなが――いえ、信州のみんなが見てる。私たちを応援してくれている」

久「負けるわけには、無様な姿を晒すわけには、いかないわね」

美穂子「その意気です、上埜さん。私も応援していますから」ニコッ

久「ありがとう、福路さん。その、話を聞いてくれて」

美穂子「いえ、私も頼ってもらえて嬉しかったです」

69: 2012/05/21(月) 19:54:29.16 ID:9lHwPcWj0
久「――ところで、あの」

美穂子「はい?」

久「そろそろ放してもらってもいいかしら、ちょっと苦しいし」

美穂子「……放しません」ギュッ

久「えっ、ちょっと、福路さん……?」

美穂子「やっと……、やっと見つけたんですから……」

久「見つけたって……、私を捜してたの?」

美穂子「はい。三年前のインターミドルが終わったときから、ずっと」

久「……それは、私と再戦したかったから、かしら?」

美穂子「分かってるくせに、意地悪な人ですね……」チュッ

久「ッ!」

71: 2012/05/21(月) 19:54:59.52 ID:9lHwPcWj0
美穂子「そんなの、また逢いたかったからに決まってるじゃないですか」ニコッ

久「私も……」

美穂子「えっ」

久「私も逢いたかった……」チュッ

美穂子「あっ……、上埜、さん……」

久「……久」

美穂子「えっ」

久「久って呼んでよ、美穂子……」

美穂子「久……やっと逢えた……、ずっと、好きでした……」ギュッ

久「私もよ、美穂子……」ギュッ

72: 2012/05/21(月) 19:55:29.65 ID:9lHwPcWj0
美穂子「そろそろ……」

久「ん、時間?」

美穂子「はい、みんなが戻ってきます」

久「そう、じゃあ私も戻るわね。話聞いてくれてありがと、美穂子」

美穂子「また不安になったらいつでも呼んでくださいね、久さん」

久「それはないわね」

美穂子「えっ……」

73: 2012/05/21(月) 19:56:00.71 ID:9lHwPcWj0
久「もう二度と不安にはならないわ」

美穂子「そうですか……」

久「でも、」スッ

美穂子「んっ……」

久「甘えたくなったら、また来てもいいかしら」

美穂子「はい……、お待ちしてます」ニコッ


おしまい

77: 2012/05/21(月) 19:59:20.84 ID:9lHwPcWj0
被りついでにもう一つ

合宿中 龍門淵の部屋

咲「こんにちは、衣ちゃん」

衣「お前は……清澄のリンシャン使い」

咲「咲でいいよ」

衣「打ちに来たのか? でも、衣以外みんな外出してるぞ」

咲「ううん。今日来たのは衣ちゃんと遊ぶためだよ」

衣「本当か! 衣と遊んでくれるのか!?」

咲「うん。いっぱい遊ぼう!」

衣「わーい!」

咲「あと、衣ちゃんにコレをプレゼント」スッ

衣「これは、リボン?」

78: 2012/05/21(月) 19:59:54.72 ID:9lHwPcWj0
咲「原村さんから。おそろいのリボンだって」

衣「ノノカのリボンか! 嬉しいなっ!」

咲「つけてあげっよか?」

衣「うん! 頼んだ!」

咲「それじゃあ、こっちに来てくれる?」

衣「わかった!」トテトテ

咲「はい、できた」

衣「髪がノノカと一緒になった! 似合ってるか?」

咲「とってもかわいいよ」ナデナデ

衣「ふわあっ! 急に衣の頭なでるな~」

79: 2012/05/21(月) 20:00:23.16 ID:9lHwPcWj0
咲「衣ちゃんの髪の毛サラサラだね」

衣「とゆーか、ちゃんづけするな~衣のほうがお姉さんなんだぞっ」

咲「そうだね、えらいえらい」ナデナデ

衣「だからなでるな~」ビクビク

咲「嫌なら止めるね」ピタッ

衣「ふぇっ?」

咲「じゃあね、また遊ぼうね」スタスタ

衣「ま、まってっ」グイッ

咲「なに?」

衣「衣ともっと遊ぼうよ……」

81: 2012/05/21(月) 20:00:51.60 ID:9lHwPcWj0
咲「じゃあ、お医者さんごっこしようか」ニヤリ

衣「お医者さんごっこ?」

咲「うん。嫌かな?」

衣「嫌じゃない嫌じゃないぞ」ブンブン

咲「じゃ、始めよっか」

衣「衣は何役だ?」

咲「衣ちゃんは患者さんで」

衣「咲が先生か。面白そうだな!」

咲「入ってくるとこからね」

衣「うん!」

83: 2012/05/21(月) 20:01:24.05 ID:9lHwPcWj0
衣「あいたたた……」ヨロヨロ

咲「どうしました?」

衣「何だか、おなかが痛くて……いたっ」

咲「腹痛ですか。昨日は何を食べましたか?」

衣「昨日は咲と一緒に夕食食べたよ?」

咲「衣ちゃん、ごっこなんだから本当のこと言わなくてもいいんだよ」

衣「そうなのか。衣はあんまりごっこ遊びしたことないから分からないんだ」

咲「いいよ。ちょっと前からやり直しね。――で、何を食べましたか?」


84: 2012/05/21(月) 20:01:55.32 ID:9lHwPcWj0
衣「昨日は、ええと、オムライスとエビフライとハンバーグ!」

咲「いっぱい食べましたか?」

衣「満腹至極になるまで食べたよ!」

咲「なら、食べすぎですねー。ほどほどにしないとダメですよ」

衣「う……トーカにも同じこと言われる」

咲「でも、念のため検査しておきましょう」

衣「検査?」

咲「触診って分かるかな?」

衣「衣、知ってるぞ。お医者さんが手で触って調べることだ」

咲「そう。よく知ってるね、えらいえらい」ナデナデ

衣「ふわわ……褒められるのは嬉しいけど、なでるなぁ……」

咲「それで今から調べるから、服脱いで」

85: 2012/05/21(月) 20:02:28.77 ID:9lHwPcWj0
衣「えっ?」

咲「早く」

衣「……本当に脱ぐのか? ごっこじゃないのか?」

咲「嫌なの?」

衣「嫌じゃないけど……」

咲「恥ずかしい?」

衣「うん……」

咲「普段から穿いてないくせに今さら恥じ入ってんじゃねーよ、はよ脱げや」ボソッ

衣「!」

咲「ん? どうしたのかな?」ニコッ

衣「今……」

咲「何かな」ニッコリ

87: 2012/05/21(月) 20:02:58.84 ID:9lHwPcWj0
衣「ううん、何でもないっ」

咲「お医者さんの前で脱ぐのは別に普通のことだよ? だから早く」

衣「う、うん……」シュル

衣「脱いだぞ……」

咲「どうしてこっち向いてくれないのかな?」

衣「だって、」

咲「おなかが痛いんだよね。触診なんだから、おなか触らないと」

衣「でも、///」

咲「胸も背中も大して変わらんまな板のくせに一丁前に隠しやがって」ボソッ

衣「これでどうかなぁ?」

咲「顔だけこっち向けられても検査できないよ」ハァ

89: 2012/05/21(月) 20:03:27.98 ID:9lHwPcWj0
衣「そ、そうだ、衣知ってるぞ。ツボ押しで病気が治るんだ!」

咲「ツボ?」

衣「先生なら背中にある腹痛を治すツボくらい知ってるよね!」

咲「……知ってるけど」

衣「それで治してよ! 良いお医者さんは患者の気持ちを大切にするんだってテレビで見たよ!」

咲「本当にそれでいいの?」

衣「うん!」

咲「まあいいか。じゃあ、触るね」ニヤリ

90: 2012/05/21(月) 20:04:01.65 ID:9lHwPcWj0
咲「ツボ押す前に皮膚の検査ね」ツー

衣「ッ! ん、んんっ!」モゾモゾ

咲「うっわー、衣ちゃんの背中スベスベ。指が全然引っかからない」

咲「背骨も曲がってないし綺麗」ツツー

衣「ふわっ、ふわわぁ…咲ぃ、くすぐったいよぅ……」モジモジ

咲「動かないで。手が滑るから」ツツツ

衣「動くな、って言われても……ひゃんっ!」ゾクッ

咲「ん、どうしたの?」ニヤニヤ

衣「い、いま……なんか……ひゃあっ!」ゾクゾクッ


91: 2012/05/21(月) 20:04:29.67 ID:9lHwPcWj0
咲「だから動いちゃだめだってば」

衣「も、もう、やめてよぅ……何だか変な感じだ……」モゾッ

咲「あ、ころもちゃんがうごいたから、てがすべっちゃったー」グイッ

衣「! 咲、そこはダメだよっ!」

95: 2012/05/21(月) 20:05:32.06 ID:9lHwPcWj0
咲「つい能力使っちゃった……大丈夫、衣ちゃん?」

衣「はぅ…ふわぁ…」グッタリ

咲「今の衣ちゃんの顔、すっごくエOチだよ。気持ちよかった?」

衣「……///」コクッ

咲「続きを――」ハッ

咲「――廊下から声が」


96: 2012/05/21(月) 20:06:00.04 ID:9lHwPcWj0
廊下

透華「――なかなかいいお湯でしたわ」

一「だね。入りすぎてあっついなー」パタパタ

透華「廊下で脱ぐのは止めなさい」

一「はいはい」

98: 2012/05/21(月) 20:06:28.23 ID:9lHwPcWj0
咲「残念だけど、今日はここまでみたいね。人が来る前に帰らなきゃ」

衣「……」

咲「じゃあね、衣ちゃん。今のことは二人だけの秘密だよ?」ニコッ

衣「……咲……待って」ギュッ

咲「ん? なにかな?」

衣「また……、また衣と遊んでほしいな……」


おしまい

103: 2012/05/21(月) 20:09:42.71 ID:9lHwPcWj0
以上で本当におしまいです

引用元: 衣「ノノカのおと~ふ見つけたよっ!」和「見ないでくださいっ」